JP2004535400A - 転移阻害のための組成物及び方法 - Google Patents
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Abstract
転移を阻害する化合物、組成物及び方法、並びに化合物を同定するスクリーニング法が明らかにされている。これらの化合物は、CD26/プラスミノーゲンに結合し、かつそのように結合した場合には、MMP-9の形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害する。化合物がシグナル伝達カスケードを阻害するCD26に直接結合する場合、これらは転移を阻害する。これらの化合物が、アンギオスタチンのCD26への結合能及びシグナル伝達カスケードの阻害能を増強する場合、これらは、アンギオスタチンアロステリックプロモーターである。これらの化合物は同じく、ADAのCD26/DPP IVへの結合を阻害する方法でCD26に結合し、このような化合物は、アデノシンの脱アミノ化を阻害する方法で使用される。これらの化合物は、例えば、抗体、抗体断片、酵素、ペプチド、オリゴヌクレオチドのような核酸、又は小分子であることができる。抗体は、モノクローナル、ヒト化、又はポリクローナル抗体であることができる。これらの化合物は、様々な細胞傷害性物質及び/又は標識された化合物と、複合する又は組合せることができる。腫瘍転移を阻害する方法は、このような腫瘍に罹患した患者の治療に使用することができる。
Description
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本出願は、概して転移を阻害する組成物及び方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
腫瘍細胞の侵襲性の挙動を示す能力は、細胞が存在している基底膜の病巣性の分解を提供する機構の活性化に関連している。これらの機構は、新規受容体の発現に関連し、これは、基底膜の成分が正常細胞の生理を発揮する厳密な調節から腫瘍細胞が逃れることを可能にすることに加え、これらは、免疫適格細胞の攻撃からの防御を提供し、これによりそれらの循環中での生存を確実にする。このような受容体のひとつは、ジペプチジルペプチダーゼIV(CD26/DPP IV)である。
【0003】
CD26/DPP IVのほとんどの機能特性は、Tリンパ球において説明されており、ここではこの分子は、その細胞外ドメイン内でCD45と物理的に会合しており、かつアデノシンデアミナーゼ(ADA)の受容体として働くことができ、これら両方共、T細胞活性化及びシグナル伝達の期間に重要であることができる[1-3]。CD26/DPP IVのADAとの会合は、その過剰がリンパ球にとって有毒であるようなアデノシンの迅速な代謝を可能にするのみではなく、更にその表面にCD26/DPP IVを発現している組織又は細胞へのT細胞の付着のためのドッキングタンパク質として働くこともできる[4]。
【0004】
CD26/DPP IVは、リンパ系組織を除き、ほとんどのヒト組織の血管内層において認められ[6]、そこで末梢血管壁へのフィブリンクロットの付着を防止することにより、凝血のダウンレギュレーションにおいて重要な役割を果たしていると仮定されている[6]。肝において、この分子は、組織の破壊及び再生のプロセスに関与している[7]。腎においてこの分子は、専ら糸球体において認められる[7]。肺内皮において、CD26/DPP IVは、肺転移性のラットの乳癌細胞及び前立腺癌細胞の接着分子である[8]。
【0005】
通常Tリンパ球に関連しているタンパク質を欠いている組織におけるCD26/DPP IVの生理的役割は、肝癌細胞株において集中的に研究されている[9]。これらの細胞の抗-CD26 mAbによる刺激は、アポトーシスを誘導する[9]。対照的に、CD26-Jurkat T細胞の同じmAbによる同様の刺激は、これらの細胞を、ヒト免疫不全ウイルス感染後に、アポトーシスから保護し[10]、このことは細胞生理へのCD26/DPP IVの寄与は、複合受容体含量により左右され、かつ異なる細胞型においては異なる機能を発揮することを示唆している。
【0006】
ヒトリウマチ性滑液線維芽細胞[11]及び前立腺癌細胞株1-LN、PC-3及びDU-145[12]において、CD26/DPP IVは、プラスミノーゲン(Pg)の受容体であり、かつウロキナーゼ型(urinary-type)プラスミノーゲンアクチベーター受容体(uPAR)と同時局在される[11,12]。Pgは、この受容体へ、そのオリゴ糖鎖を介し、DPP IV一次配列L313QWLRRIを含むペプチドに結合している[13]。CD26/DPP IVは、フィブロネクチン(FN)受容体でもある[14]。FNの結合は、FN一次配列L1768TSRPAを含むポリペプチドにより媒介される[15]。
【0007】
腫瘍転移を阻害するために利用可能な療法の蓄積に加えるために、新規組成物及び方法を有することは、利点であろう。このような組成物及び方法を同定するための新規方法を有することも利点であろう。本発明は、このような組成物及び方法を提供する。
【発明の開示】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、腫瘍転移を阻害するための化合物、組成物及び方法に関し、かつアンギオスタチンは、プラスミノーゲンがCD26に結合することを阻害する方法でCD26に結合し、かつそのように結合した場合、MMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害するという発見から生じる。本発明は更に、ADAによるアデノシン脱アミノ化を阻害する組成物及び方法にも関する。
【0009】
ひとつの態様において、これらの化合物は、プラスミノーゲンのCD26への結合能を阻害する方法でCD26に結合する(CD26アンタゴニスト)。そのように結合した場合、これらはMMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードも阻害する。
【0010】
別の態様において、これらの化合物は、そうでなければCD26に結合するであろうプラスミノーゲン上のオリゴ糖鎖に結合する(プラスミノーゲンアンタゴニスト)。その後結合したオリゴ糖鎖は、CD26への結合が阻害され、これもMMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害する。
【0011】
第三の態様において、これらの化合物(ADAアンタゴニスト)は、ポリペプチドL340VARを含むCD26/DPP IV一次領域、又はこの領域を立体的に妨害する位置に結合する。ポリペプチドL340VARは、アデノシンデアミナーゼ(ADA)への結合に寄与する。このポリペプチドがADAアンタゴニストにより結合された場合、これらの細胞は、アデノシンの細胞傷害性作用に曝され、かつADAが循環血中腫瘍細胞と血管壁に内層するCD26/DPP IVの間の可能性のあるアンカーとして働くことが妨げられる。
【0012】
これらの化合物は、例えば、抗体、抗体断片、酵素、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドのような核酸、又は小分子であることができる。これらの抗体は、例えば、モノクローナル、ヒト化(キメラ)又はポリクローナル抗体であることができ、かつ、例えば通常の技術を用いて調製することができる。これらの化合物は、様々な細胞傷害性物質及び/又は標識した化合物へ結合することができる。
【0013】
これらの化合物は、様々な組成物、例えば、静脈内、筋肉内、外用、局所的、腹腔内、又は他の投与形に適した組成物に含まれることができる。これらは、毛細血管床に留まり続けかつ所望の位置でこれらの化合物を放出する適当なサイズの微粒子又はリポソームにこれらを組込むことにより、毛細血管床を標的化することができる。
【0014】
これらの方法は、転移性腫瘍を治療するために使用することができる。これらの方法は、適当な抗-転移性化合物(すなわち、CD26アンタゴニスト、アンギオスタチンアロステリックプロモーター、プラスミノーゲンアンタゴニスト、及び/もしくはADAアンタゴニスト)並びに/又はこれらの化合物を含有する組成物を有効量、治療を必要とする患者に投与することに関連している。
【0015】
スクリーニング法を用い、これらの方法に有用な化合物を同定することができる。これらのスクリーニング法は、CD26及び/又はプラスミノーゲンに結合する化合物、特にプラスミノーゲン結合部位(L313QWLRRI)及び/又はADA結合部位(L340VAR)に、又はこれらの部位を立体的に妨害する位置に結合する化合物を同定することに加え、一旦結合した化合物の活性を決定することができる。
【0016】
化合物のコンビナトリアルライブラリー、例えば、ファージディスプレイペプチドライブラリー、小分子ライブラリー及びオリゴヌクレオチドライブラリーをスクリーニングすることができる。CD26又はプラスミノーゲンに結合する化合物は、例えばアフィニティー結合試験を用い、又は当業者に公知のその他のスクリーニング技術を用い、同定することができる。CD26又はプラスミノーゲンに一旦結合した化合物の作用は、例えばCD26へのプラスミノーゲン結合、MMP-9合成、アデノシンデアミナーゼ機能、1-LN細胞によるマトリゲル侵襲の阻害のレベル、並びに腫瘍転移の程度を評価することにより決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
下記説明は、本発明を実行する最良の現在企図された様式を含んでいる。この説明は、本発明の一般的原理を例証することを目的として作成されており、限定の意味を持つものではない。
【0018】
腫瘍転移を促進又は阻害する及び/又はADAによるアデノシン脱アミノ化を阻害する化合物、組成物及び方法が、明らかにされている。ひとつの態様において、これらの化合物は、プラスミノーゲンのCD26に結合する能力を阻害する方法で、CD26に結合している(CD26アンタゴニスト)。そのように結合した場合、これらは、MMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードも阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害する。
【0019】
別の態様において、これらの化合物は、そうでなければCD26へ結合するプラスミノーゲン上のオリゴ糖鎖に、又はCD26のプラスミノーゲンとの結合を立体的に妨害するプラスミノーゲン上の他の位置に結合する(プラスミノーゲンアンタゴニスト)。プラスミノーゲンのCD26との結合の阻害により、MMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードも阻害される。
【0020】
第三の態様において、これらの化合物は、ポリペプチドL340VARを含むCD26/DPP IV一次領域に結合し、これは、アデノシンデアミナーゼ(ADA)への結合に寄与し、かつそのように結合した場合に、この細胞を、アデノシンの細胞傷害性作用に曝し、かつADAが循環血中腫瘍細胞と血管に内層するCD26/DPP IVの間の可能性のあるアンカーとして働くことを妨げる(ADAアンタゴニスト)。
【0021】
更に、MMP-9の形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害する様式でCD26に結合する化合物に加え、アンギオスタチンのCD26に結合する能力を増強する化合物(アンギオスタチンアロステリックプロモーター)を同定するためのスクリーニング法が明らかにされている。このような化合物がCD26、特にプラスミノーゲン及び/又はADA結合部位に結合するかどうかを決定する方法も明らかにされている。CD26結合を阻害する様式でプラスミノーゲンに結合する化合物を同定することに加え、ADAへの結合に寄与するポリペプチドL340VARに結合する化合物を同定するスクリーニング法も明らかにされている。
【0022】
本発明は、アンギオスタチンは、CD26に結合し、かつこの結合により、MMP-9を形成するCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害すること、並びにポリペプチドL340VARを含むCD26/DPP IV一次領域は、ADAへの結合に寄与するということの発見を基にしている。CD26及び/又はプラスミノーゲンに結合する化合物並びに同じくCa2+シグナル伝達カスケードを阻害する化合物も、腫瘍転移を阻害する。ポリペプチドL340VARに結合する化合物又はポリペプチドL340VARのADAとの相互作用を立体的に妨害する部位に結合する化合物は、腫瘍細胞を、アデノシンの細胞傷害性作用に曝し、かつADAが循環血中腫瘍細胞とCD26/DPP IVの間のアンカーとして働くことを妨害する。
【0023】
プラスミノーゲン(Pg)のヒト前立腺癌1-LN細胞表面のCD26/DPP IVへの結合は、ゲラチナーゼB(MMP-9)の合成及び分泌を媒介するCa2+シグナル伝達カスケードを開始する[12]。このプロセスは、マトリゲルで被覆された膜の1-LN細胞侵襲能を促進する。しかし、「実施例」の項においてより詳細に考察されるように、これらの細胞が、Pgと共に、PgのDPP IVとの相互作用を妨害する抗-DPP IVモノクローナル抗体(mAb)の存在下でインキュベーションされる場合、1-LN細胞によるマトリゲルの侵襲は、完全に廃止される。同様の阻害作用は、Pgオリゴ糖鎖のCD26/DPP IVへの結合を妨害する糖であるL-乳糖の存在下で、細胞がPgと共にインキュベーションされる場合にも認められる。これらの両実験において、侵襲活性の欠如は、これらの細胞によるMMP-9の発現の低下に相関していた。
【0024】
血管新生、腫瘍増殖及び転移の強力なインヒビターである、Pgのポリペプチド断片を含有するクリングルであるアンギオスタチン[18-19]により行われた実験も、同じく1-LN細胞によるマトリゲル侵襲の総合的阻害を生じた。同様に、FNペプチドL1768TSRPAは、1-LN細胞によりPg-誘導されたマトリゲル侵襲を、用量依存的方式で阻害した。まとめるとこれらの実験は、1-LN前立腺癌細胞の侵襲能におけるCD26/DPP IVの中心的役割を示唆している。
【0025】
これらの知見は、診断道具として有用なのみではなく、治療戦略の有効性の決定においても有用である。これらの戦略は下記の判定基準を含む:
1.CD26/DPP IVへのPg結合を妨害する物質、特にPgオリゴ糖鎖の付着部位である、一次配列L313QWLRRIに結合する化合物の開発。これらの化合物は、mAb又はこのポリペプチドの結合が可能である他の化合物、例えばPgにおいて認められるものと類似しているオリゴ糖のいずれかであることができる。両方の場合において、その相互作用は阻害され、その結果、MMP-9発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードが妨害される。
2.両方とも、CD26/DPP IVへのPg結合を阻害し、これにより、細胞表面上のPgの活性化を妨害する、アンギオスタチン又はFNポリペプチドL1768TSRPAの使用。これらの物質は両方とも、腫瘍の増殖を阻害するのみではなく、遠位の正常組織の転移増殖(colonization)も阻害する。
3.ADAの結合に寄与するポリペプチドL340VARを含むCD26/DPP IV一次領域に結合するmAb又は他の化合物の開発。これは、腫瘍細胞をアデノシンの細胞傷害性作用に曝すのみではなく、ADAが循環血中腫瘍細胞と血管に内層しているCD26/DPP IVの間の可能性のあるアンカーとして働くことを妨げている。
【0026】
定義
下記定義は、本願明細書において説明された組成物及び方法を理解する助けとなるであろう。
本願明細書において使用される用語「腫瘍転移」は、腫瘍細胞が存在する基底膜から逃れることによる腫瘍の広がりとして定義される。
【0027】
用語「アンギオスタチン」は、プラスミノーゲンのタンパク質分解性の断片を意味し、かつプラスミノーゲンからの少なくとも1個のクリングル、好ましくは少なくとも3個のクリングルを含む。アンギオスタチンは、血管新生及び腫瘍細胞転移の増殖の強力なインヒビターである(O'Reillyら、Cell、79:315328 (1994))。アンギオスタチンの全ての抗-転移型は、本願明細書においてアンギオスタチンの定義に含まれることが意図されている。
【0028】
アンギオスタチンは、プラスミノーゲン分子のクリングル領域により定義されるような特異的三次元立体配置を有する(Robbins, K. C.、「The plasminogen/plasmin enzyme system」、Hemostasis and Thrombosis, Basic Principles and Practice、第2版、Colman, R. W.ら編集、J.B. Lippincott社、340357頁、1987年)。このようなクリングル領域は5種類あり、これは立体配置的に関連したモチーフであり、かつプラスミノーゲン分子のアミノ末端部分において実質的配列相同性を有する。
【0029】
様々なサイレントなアミノ酸置換、付加又は欠失を、先に同定したクリングル断片において作成することができ、これは断片の内皮細胞阻害活性を著しく変更することはない。アンギオスタチン分子の各クリングル領域は、およそ80個のアミノ酸を含み、及び3個のジスルフィド結合を含む。抗血管新生性アンギオスタチンは、クリングル領域間からの変動量のアミノ又はカルボキシ-末端のアミノ酸を含むことができ、かつ還元された天然のジスルフィド結合の一部又は全てを有してもよい。アンギオスタチンは、凝集し非再生の組換え型で提供することもできる。
【0030】
Sottrup Jensenらの論文(Progress in Chemical Fibrinolysis and Thrombolysis、3:191209 (1978))に示されたように、アンギオスタチンは、プラスミノーゲンの限定されたタンパク質分解によりin vitroにおいて生成することができ、この論文の内容は、全ての目的のために本願明細書に参照として組入れられている。これは、38kDaのプラスミノーゲン断片(Va179Pro353)を生じる。アンギオスタチンは同じく、プラスミンの還元によりin vitroにおいて生成することができ(Gatelyら、PNAS、94:1086810872 (1997))、かつチャイニーズハムスター卵巣及びヒト線維肉腫細胞(Stathakisら、JBC、272(33):20641.20645 (1991))において生成することができる。
【0031】
アンギオスタチンは、組換え給源から、動物に移植された遺伝的に変更された細胞から、腫瘍から、及び細胞培養物に加え他の給源から作成することもできる。アンギオスタチンは、血清及び尿を含むが、これらに限定されるものではない体液から単離することができる。組換え技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いるDNA給源からの遺伝子増幅、及び逆転写酵素/PCRを用いるRNA給源からの遺伝子増幅を含む。
【0032】
本願明細書において使用される用語「CD26アンタゴニスト」とは、CD26に結合し、かつそのように結合した場合に、プラスミノーゲンのCD26への結合を阻害し、これは次にMMP-9の形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害するような化合物を意味する。アンギオスタチンは、適当なCD26アンタゴニストの例であるが、アンギオスタチンは、in vivoにおいて比較的短い半減期を有し、かつCD26に対する同様の結合親和性を有するが半減期はより長い別の化合物が好ましいことがある。
【0033】
本願明細書において使用される用語「プラスミノーゲンアンタゴニスト」は、プラスミノーゲンに、ひとつの態様においてそうでなければCD26に結合するであろうオリゴ糖鎖に結合し、かつそのように結合した場合に、プラスミノーゲンのCD26への結合を阻害し、これは次にMMP-9の形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害するような化合物を意味する。
【0034】
本願明細書において使用される用語「ADAアンタゴニスト」は、CD26のADAへの結合を阻害する方式で、CD26/DPP IV上のポリペプチドL340VARに結合するか、又はこの結合を立体的に妨害する位置で結合し、これは次にADAのアデノシンを破壊する能力を阻害し、並びに同じくADAが循環血中腫瘍細胞と血管に内層するCD26/DPP IVの間のアンカーとして働く能力を阻害するような化合物を意味する。
【0035】
本願明細書において使用される用語「アンギオスタチンアロステリックプロモーター」は、CD26に直接結合するが、アンギオスタチンのCD26に結合する能力を増強するような化合物を意味する。
本願明細書において使用される用語「ひとつの(a,an,the)」は、「ひとつ又は複数の」を意味するように定義され、かつ内容が不適切でない限りは、複数を含む。
【0036】
本願明細書において使用される語句「活性物質」又は「活性化合物」は、CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲンアンタゴニスト、ADAアンタゴニスト及びアンギオスタチンアロステリックプロモーターを意味する。適当な生物学的活性化合物/物質の例は、抗体、抗体断片、酵素、ペプチド、核酸及び小分子を含む。
【0037】
本願明細書において使用されるペプチドは、100個未満又は等しいアミノ酸を含むように定義され、かつタンパク質は、100個又はそれよりも多いアミノ酸を含むように定義される。
別に特に記さない限りは、本願明細書において使用される技術用語及び科学用語は全て、通常当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本願明細書に説明されたものと類似の又は同等のその他の材料及び方法は、本発明の実践又は試験において使用することができるが、当該技術分野の実践者に明らかであるように、好ましい方法及び材料がここで説明される。
【0038】
I. 腫瘍転移を阻害する方法
腫瘍転移は、有効量の適当なCD26及び/又はプラスミノーゲンアンタゴニスト(例えば、抗体、抗体断片、及び/又は小分子)を、そのような治療が必要な患者へ投与することにより、阻害することができる。アンギオスタチンアロステリックプロモーターも、単独で又はCD26アンタゴニストと組合せて投与することができる。これらの化合物は、それら自身で腫瘍転移を阻害するか、又はアンギオスタチン(又はCD26もしくはプラスミノーゲンのアンタゴニスト)の転移を阻害する能力をアロステリックに増強するかのいずれかであることができる。これらの方法を使用し、転移性腫瘍に罹患した患者を治療することができる。ADAアンタゴニストも、アデノシンの脱アミノ化を防ぐために投与することができる。
【0039】
本願明細書に説明された治療法及び診断法は、典型的には、本願明細書に説明された組成物を有効量患者に投与することを含む。投与されるべき正確な用量は、組成物の用途に応じて、並びに患者の年齢、性別及び状態に応じて変動し、かつ治療に当たる医師はこれを容易に決定することができる。これらの組成物は、単回投与量として、又はある期間にわたる連続法により投与することができる。投与量は適宜反復することができる。
【0040】
これらの組成物及び方法を用い、結腸直腸癌、胃癌、印環細胞癌(signet ring type)、食道癌、小腸癌、粘液癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、肝癌、喉頭癌、中皮腫、神経内分泌癌、神経外胚葉腫瘍、メラノーマ、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫、平滑筋肉腫、MFII、線維肉腫、脂肪肉腫、MPNT、軟骨肉腫、及びリンパ腫を含む、様々な固形腫瘍の転移を治療することができる。
【0041】
II. 腫瘍転移及び/又はアデノシン脱アミノ化を阻害する化合物
様々な抗体を含む様々な化合物が、CD26に結合し、かつプラスミノーゲン結合を阻害することができる(CD26アンタゴニスト)。様々な抗体を含む様々な他の化合物は、CD26に結合しないが、CD26アンタゴニストのプラスミノーゲン結合を阻害する能力を増強する(アンギオスタチンアロステリックプロモーター)。更に別の化合物は、プラスミノーゲンに結合し、かつプラスミノーゲンのCD26との結合を妨害する。更に他の化合物は、CD26/DPP IVのADAへの結合を妨害する方式で、CD26に結合する。
【0042】
これらの化合物はCD26又はプラスミノーゲンに結合するという単なる事実は、腫瘍転移に対するそれらの最終的作用を決定しない。これらの化合物が結合した場合、これらはプラスミノーゲンのCD26への結合も阻害するはずであり、これは次にMMP-9形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害する。
【0043】
一旦結合したこれらの化合物の活性は、本願明細書に説明されたアッセイを用い、容易に決定することができる。本願明細書に説明された化合物は、特定の分子量に限定されない。これらの化合物は、大分子(すなわち、分子量約1000を上回るもの)又は小分子(すなわち、分子量約1000を下回るもの)であることができる。適当な化合物型の例は、抗体、抗体断片、酵素、ペプチド及びオリゴヌクレオチドを含む。
【0044】
A. 抗体
下記の抗体を作成することができる:
a)CD26へ、特にプラスミノーゲンオリゴ糖鎖の付着部位である一次配列L313QWLRRIにより同定される、CD26のプラスミノーゲン結合部位へ結合する、抗体;
b)プラスミノーゲンのCD26への結合が阻害されるような方式で、プラスミノーゲンへ結合する抗体であり、例えば、そのような結合に関連した、プラスミノーゲンオリゴ糖鎖に結合し、かつ多糖鎖のCD26へ結合する能力をブロックすることにより、プラスミノーゲンのCD26へ結合する能力を阻害する、抗体;
c)CD26/DPP IVのADAへの結合を阻害する方式でCD26に結合する抗体。
【0045】
ポリクローナル抗体の全般的作用が低下した腫瘍転移であるならば、ポリクローナル抗体を使用することができる。しかし、モノクローナル抗体が好ましい。ヒト化された(キメラ)抗体が更に好ましい。
【0046】
これらの抗体は、アンギオスタチン又はFNポリペプチドL1768TSRPAと全く同じ方法で結合することができず、またその必要もない。アンギオスタチンは、いくつかの可能性のある結合部分を有し(恐らく様々なクリングルに関連しているであろう)、及びこれらの抗体は、これらの結合部分の各々を模倣した部分を含まないであろう。しかしこれらの抗体は、実際の結合部位(複数)の全て又は一部との立体的干渉及び/又はこれへの結合により、CD26、プラスミノーゲン又はADAの結合を阻害することができる。
【0047】
転移を直接阻害するか、又は細胞毒性薬物もしくは放射性同位元素又は他の標識を転移部位へ標的化するかのいずれかで使用することができる、CD26及びプラスミノーゲンに対する抗体、特にモノクローナル抗体(mAb)が開発されている。これらの抗体は、極めて特異的であることができる。更に腫瘍に対し細胞毒性薬物を標的化するガン細胞特異的mAbを産生する他の系列の研究とは異なり、これらのmAbは、宿主抗原(すなわち、正常細胞においては認められないCD26)に対して調製される。この方法は、腫瘍の「抵抗性」変種の生成が起こらず、かつ理論的には1種のmAbを用い、あらゆる固形腫瘍を治療することができるという大きい利点を有する。
【0048】
抗体調製
用語「抗体」は、被検体(抗原、この場合はCD26、プラスミノーゲン及び/又はそれらの様々な結合ドメイン、好ましくはヒトCD26及び/又はプラスミノーゲン)に特異的に結合しかつ認識する、1個又は複数の免疫グロブリン、又はそれらの断片により実質的にコードされたポリペプチドを意味する。免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、ε、及びμ定常領域遺伝子に加え、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κ又はλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ又はεとして分類され、これらは次に、各々、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義している。
【0049】
例証的免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2個の同一対から構成され、各対は、1本の「軽」鎖(約25kD)及び1本の「重」鎖(約50-70kD)を有する。各鎖のN-末端は、抗原認識に主に寄与する約100〜110個又はそれよりも多いアミノ酸の可変領域を有する。用語「可変軽鎖」(又は「VL」)及び「可変重鎖」(又は「VH」)は、各々、これらの軽鎖及び重鎖を意味する。
【0050】
抗体は、例えば、無傷の免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼによる消化により作出された多くの良く特徴付けられた抗原-結合断片として存在する。例えば、ペプシンは、抗体を、ヒンジ領域のジススルフィド結合の下側で消化し、F(ab')2断片を作成し、これはそれ自身ジスルフィド結合によりVH-CH1に連結された軽鎖であるFab二量体である。F(ab')2断片は、緩徐な条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊することができ、これによりF(ab')2二量体が、Fab'単量体に転換される。このFab'単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を伴うFabである(Fundamental Immunology、第3版、W.E. Paul (編集)、Raven Press社、N.Y.(1993)参照のこと、この内容は本願明細書に参照として組入れられている。)。様々な抗体断片が、無傷の抗体の消化に関して定義されていると同時に、当業者は、このような断片を、化学的に又は組換えDNA技法を用いるかのいずれかにより、de novo合成することができることを理解するであろう。従って本願明細書において使用される用語「抗体」は、一本鎖抗体、抗原結合しているF(ab')2断片、抗原結合しているFab'断片、抗原結合しているFab断片、抗原結合しているFv断片、一本鎖重鎖又はキメラ(ヒト化された)抗体のような、抗体断片も含む。このような抗体は、抗体全体の修飾により作出するか、又は組換えDNA技法を用いde novo合成することができる。
【0051】
CD26及び/又はプラスミノーゲン(それらの断片、誘導体、及びアナログを含む)を免疫原として用い、このような免疫原に免疫特異性に結合する抗体を作出することができる。このような抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗原結合する抗体断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、又は超可変領域)、及びmAb又はFab発現ライブラリーを含むが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、CD26、プラスミノーゲン又はそれらの断片、誘導体及び/もしくはアナログに対するポリクローナル及び/又はモノクローナル抗体を、作出することができる。更に別の態様において、免疫原性であると同定されたCD26及び/又はプラスミノーゲンの断片は、抗体産生のための免疫原として使用される。
【0052】
当該技術分野において公知の様々な手法を用い、ポリクローナル抗体を作成することができる。様々な宿主動物(ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ラクダなどを含むが、これらに限定されるものではない)を、抗原、断片、誘導体又はアナログの注射により免疫処置することができる。宿主の種に応じて、様々なアジュバントを用い、免疫応答を増強することができる。このようなアジュバントは、例えば、フロイントのアジュバント(完全及び不完全)、水酸化アルミニウムのような無機ゲル、リゾレシチンのような界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油状乳化剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及び他のアジュバント、例えばBCG(カルメット-ゲランウシ型結核菌)及びコリネバクテリウムパルブムを含む。
【0053】
培養における細胞株継代による抗体分子の作成のために提供されるあらゆる技術を使用し、CD26、プラスミノーゲン、それらの断片又はそれらの結合部分に対するモノクローナル抗体を調製することができる。このような技術は、例えば、Kohler及びMilsteinにより最初に開発されたハイブリドーマ技術(例えば、Nature、256:495-97 (1975)参照)、トリオーマ技術(例えば、Hagiwara及びYuasa、Hum. Antibodies Hybridomas、4:15-19 (1993);Heringら、Biomed. Biochim. Acta、47:211-16 (1988)参照)、ヒトB-細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozborら、Immunology Today、4:72 (1983)参照)、及びヒトモノクローナル抗体を作出するためのEBV-ハイブリドーマ技術(例えば、Coleら、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss社、77-96頁(1985)参照)を含む。ヒト抗体を使用することができ、及びヒトハイブリドーマを用いるか(例えば、Coteら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、80:202630 (1983))、又はヒトB細胞をEBVウイルスによりin vitro形質転換すること(例えば、Coleら、前掲参照)により得ることができる。
【0054】
「キメラ」又は「ヒト化」抗体(例えば、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:6851-55 (1984);Neubergerら、Nature、312:604-08 (1984);Takedaら、Nature、3114:452-54 (1985)参照)も調製することができる。このようなキメラ抗体は、典型的には、抗原に特異的な抗体分子の非-ヒト遺伝子を適当な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライシングすることにより調製される。非-ヒト抗体の抗原結合領域(例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、又は超可変領域)を、ヒト抗体のフレームワークへ、組換えDNA技術により導入し、実質的なヒト分子を作成することが望ましい。このような「キメラ」分子を作出する方法は、一般に周知であり、かつ例えば米国特許第4,816,567号;第4,816,397号;第5,693,762号;及び、第5,712,120号;PCT国際公開公報第87/02671号及び第90/00616号;並びに、欧州特許公開第EP 239 400号に開示されている(それらの開示は本願明細書に参照として組入れられている。)。あるいは、ヒトモノクローナル抗体又はその一部は、その内容が本願明細書に参照として組入れられている、Huseらの論文(Science、246:1275-81 (1989))に記された一般的方法に従い、CD26及び/又はプラスミノーゲン又はそれらの断片もしくは結合ドメインに特異的に結合する抗体をコードしている核酸分子に関するcDNAライブラリーの最初のスクリーニングにより同定することができる。その後この核酸分子はクローニング及び増幅され、望ましい特異性の抗体(又は抗原-結合ドメイン)をコードしている配列を得ることができる。ファージディスプレイ技術は、CD26、プラスミノーゲン、それらの断片、誘導体又はアナログ、並びにそれらの結合ドメインに結合する抗体を選択する別の技術を提供する(例えば、国際公開公報第91/17271号及び第92/01047号;Huseら、前掲を参照)。
【0055】
一本鎖抗体を作出する技術(例えば、米国特許第4,946,778号及び第5,969,108号参照)も使用することができる。本発明の追加の局面は、抗原、それらの断片、誘導体又はアナログに対する望ましい特異性を伴うモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にするために、Fab発現ライブラリーの構築について説明された技術を利用する(例えば、Huseら、前掲参照)。
【0056】
この分子のイディオタイプを含む抗体は、公知の技術により作出することができる。例えばこのような断片は、抗体分子のペプシン消化により作成することができるF(ab')2断片、F(ab')2断片のジスルフィド橋の還元により作成することができるFab'断片、抗体分子のパパイン及び還元剤による処理により作成することができるFab断片、並びにFv断片を含むが、これらに限定されるものではない。組換えFv断片も、真核細胞において、例えば米国特許第5,965,405号(その開示は本願明細書に参照として組入れられている。)に開示された方法を用いて作成することができる。
【0057】
抗体スクリーニングは、当該技術分野において公知の技術により実現することができる(例えば、ELISA(固相酵素免疫測定法))。一例において、抗原の特異的ドメインを認識する抗体を使用し、作成されたハイブリドーマを、そのドメインを含むポリペプチドに結合する生成物について、アッセイすることができる。抗原のドメインに特異的な抗体も提供される。
【0058】
CD26及び/又はプラスミノーゲン(それらの断片、誘導体及びアナログ並びに結合ドメインを含む)に対する抗体を、当該技術分野において公知の方法に従い、受動抗体処理に使用することができる。これらの抗体は、前述のように作成することができ、かつポリクローナル又はモノクローナル抗体であることができ、かつ静脈内、経腸的(例えば;腸溶性錠剤形として)、エーロゾルにより、経口的、経皮的、経粘膜的、胸膜腔内、くも膜下、又は他の適当な経路により投与される。
【0059】
少量のヒト化抗体を、CHO細胞における一過性発現システムにおいて作出し、これらがCD26を発現している細胞に結合することを確立することができる。その後安定した細胞株を分離し、精製された材料を大量に作成することができる。
【0060】
マウス抗体及びヒト化抗体の結合親和性は、Krauseらの説明した手法(Behring Inst. Mitt.、87:5667 (1990))を用い決定することができる。簡単に述べると、抗体は、蛍光イソチオシアナート(FITC)を用い蛍光標識し、その後ウシ胎仔血清(FCS)及びアジ化ナトリウムを含有するPBS中において、HUVEC細胞と共に2時間氷上でインキュベーションすることができる。1個の細胞に結合した蛍光量は、FACScanにおいて決定し、かつ標準ビーズを用いてキャリブレーションする。各抗体濃度での1個の細胞に結合した抗体分子の数を決定し、かつスキャッチャードプロットを作成するために使用することができる。連続希釈したヒト化した変種と一緒の標準量のマウス抗体を伴う細胞とのインキュベーション後に、競合アッセイを、結合した抗体のFACScan定量により行うことができる。
【0061】
B. 多価化合物
多価化合物は、本願明細書において、CD26及び/もしくはプラスミノーゲン又はそれらの結合ドメイン又はそれらの断片、アナログ及び誘導体に付着されることが可能な部分を1個よりも多く含む化合物として定義される。
ひとつの態様において、多価化合物は、少なくとも1種のタンパク質及び/又はペプチド鎖を含む。あるいは、この化合物は、前述のような結合特性を持つ複数の部分を伴う小分子を含む。
【0062】
C.mAb ライブラリーのハイスループットスクリーニング法
ハイスループットモノクローナル抗体アッセイを用い、抗体の標的への結合親和性を決定し、更にどの抗体が標的のアンタゴニストとして作用するかを同定することができる。このアッセイは、例えば増加又は減少したMPP9発現、CD26のプラスミノーゲンへの結合、マトリゲル侵襲及び/又は腫瘍転移のレベルもしくは程度を評価することができる。適当なハイスループットアッセイは、例えば、「実施例」に説明されている。同様のハイスループットアッセイを用い、小分子ライブラリーの特性を評価することができる。
【0063】
同様のスクリーニング法を用い、本願明細書に説明された方法において有用な他のクラスの化合物を同定することができる。化合物のコンビナトリアルライブラリー、例えば、ファージディスプレイペプチドライブラリー、小分子ライブラリー及びオリゴヌクレオチドライブラリーを、スクリーニングすることができる。標的に結合する化合物は、例えば、競合結合試験を用い、同定することができる。
【0064】
D. 抗体/薬物複合体
前述の標的に対して生じた抗体、及び特にモノクローナル抗体は、薬物と複合することができる。この薬物/抗体複合体は、その後患者へ投与することができ、かつこの抗体は、比較的高濃度の薬物を所望の組織又は器官へ送達する方式で標的へ結合するであろう。一部の態様において、薬物の抗体への結合は、生分解性の連結であり、その結果この薬物は時間経過と共に放出される。別の態様において、薬物は、抗体に付着され続ける。
【0065】
抗癌剤は、抗体に複合され得る薬物の例である。例えば、抗体は、葉酸拮抗剤であるQFAに、又は腫瘍細胞の二本鎖DNAを切断する抗腫瘍抗生物質であるカリケアマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、もしくはビンカマイシンに複合することができる。抗体に結合することができる追加の腫瘍治療化合物は、BCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチン、リシン、放射性同位元素、及び5-フルオロウラシル並びに他の制癌性ヌクレオシドである。
【0066】
In vivo異種移植片試験を用い、腫瘍転移の阻害に加え限定的正常組織損傷を伴う直接の腫瘍阻害は、これらの抗癌剤に複合した抗体により得られることを示すことができる。これらの抗体/薬物複合体を使用し、そうではなく全身投与した場合には非常に毒性のある化合物を、直接腫瘍に標的化することができる。
【0067】
これらの複合体は、最も有利には、例えば、それらが腫瘍の周囲の毛細血管床に留まりかつ腫瘍部位で該化合物を放出するために、化合物を適当なサイズのリポソーム又は他の微粒子内に配置することによる標的化された薬物送達法と組合せて使用される。あるいは、これらの化合物は、例えば、注射又はカテーテル送達により、腫瘍部位へと又はその周囲へ直接注射することができる。このような方法は、望ましくない全身作用を最小化する。
【0068】
通常のカップリング化学を用い、例えばSPDPのようなヘテロ二官能性試薬を用い、3'又は5'末端のいずれかに遊離の反応性ヒドロキシ基、アミン基、カルボキシ基又はチオール基を持つオリゴヌクレオチドは、抗体上の遊離の反応基に複合することができる。このオリゴヌクレオチドの3'又は5'末端は、例えば、DNAのトレーサーとしての32Pにより、酵素的に標識することができる。最終生成物は、細胞結合活性並びにタンパク質及び結合したオリゴヌクレオチド濃度について試験することができる。これらのオリゴヌクレオチドの活性に応じて、これらの複合体は、治療目的又は診断目的で使用することができる。
【0069】
これらの抗体(又は標的に結合する他の化合物)は、ポルフィリンのような、光増感剤(photosensitizer)と複合し、かつ標的化された光力学的療法において使用することができる。これらの組成物が投与され、標的と結合された後、適当な時間、適当な波長の光の照射により、光力学的療法を行うことができる。
【0070】
標的に結合する抗体は更に、様々なマーカーと共有結合又はイオン結合し、腫瘍の存在を検出するために使用することができる。これは一般に、適量の抗体の患者への投与、抗体が腫瘍部位又はその周辺の標的に結合するまでの待機、並びにマーカーの検出に関連している。適当なマーカーは、当業者に周知であり、例えば放射性標識、蛍光標識などを含み、かつこれらのマーカーの検出法も当業者に周知である。適当な検出技術の例は、陽電子断層撮影法(PET)、オートラジオグラフィー、フローサイトメトリー、放射性受容体結合アッセイ、及び免疫組織化学がある。
【0071】
一般に、これらの化合物のバックグラウンド濃度は、全身の場所で観察されるであろう。しかし比較的高い、検出可能な濃度は、腫瘍が存在する場所で観察されるであろう。この標識は、検出することができ、従ってこれらの腫瘍を検出することができる。
【0072】
E. 小分子
本明細書において使用される小分子は、それらの分子量が約10,000未満(約30mer以下)の場合に小分子と見なされ得るオリゴヌクレオチドの場合を除いて、分子量約2000以下の分子として定義される。多くの会社が現在、小分子ライブラリーを作成しており、かつ特定の受容体に結合する化合物を同定するための小分子ライブラリーを評価するハイスループットスクリーニング法は、当業者に周知である。小分子のコンビナトリアルライブラリー は、スクリーニングすることができ、かつ本願明細書に説明された方法で使用するための適当な化合物は、慣例的実験を用い同定することができる。適当な小分子ライブラリーの一例は、ファージディスプレイライブラリーである。別のこのようなライブラリーは、典型的にはサイズが約100mer未満であるランダムオリゴヌクレオチドを含むライブラリーである。SELEXプロセスを用い、適切な結合特性を有する化合物について、このようなオリゴヌクレオチドライブラリー(DNA、RNA及び他の種類の遺伝的物質を含み、更に天然及び非天然の塩基対を含む)をスクリーニングすることができ、かつ別のアッセイを用い、これらの化合物の腫瘍転移に対する作用を決定することができる。
【0073】
SELEX法は、Goldらの米国特許第5,270,163号に開示されている。簡単に述べると、ランダム化された配列の領域との一本鎖核酸の候補混合物を、標的と接触し、かつ標的への増大した親和性を有するこれらの核酸を、候補混合物の残余から分割することができる。分割された核酸は増幅され、リガンドが濃厚化された混合物を得ることができる。
【0074】
F. ペプチドファージディスプレイライブラリー
標的に結合するペプチドを同定するために有用なひとつの技術は、例えば、「Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual」;Brian K. Kayら編集、Academic Press社、サンディエゴ、1996年に記された、ファージディスプレイ技術であり、その内容はあらゆる目的のために本願明細書に参照として組入れられている。
【0075】
ファージペプチドライブラリーは典型的には、多くの異なるファージクローンを含み、各々はコートタンパク質のひとつの中の挿入断片として一本鎖DNAゲノムにコードされた異なるペプチドを発現している。理想的なファージライブラリーにおいて、個体クローン数は、20n個であり、ここで「n」は、ファージによりコードされたランダムペプチドを構成する残基の数と等しい。例えば、ファージライブラリーが7個の残基ペプチドについてスクリーニングされる場合は、このライブラリーは理論上は207種(又は1.28 X 109種)の可能性のある7残基配列を含むであろう。従って、7-merペプチドライブラリーは、およそ109個の個別のファージを含むはずである。
【0076】
抗体、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及びそれらの断片のような分子の様々な種類の多様な集団を含むライブラリーを調製する方法は、当該技術分野において公知であり、かつ市販されている(例えば、Ecker及びCrooke、Biotechnology、13:351360 (1995)参照、及びそこに引用された参考文献、それらの各々の内容は、あらゆる目的で本願明細書に参照として組入れられている。)。適当なファージディスプレイライブラリーの一例は、ランダムペプチド7-merからなるコンビナトリアルライブラリーである、Ph.D.7ファージディスプレイライブラリー(New England BinLab社カタログ#8100)である。このPh.D.7ファージディスプレイライブラリーは、GlyGlyGlySerの柔軟な(flexible)リンカーを介してM13のpIIIコートタンパク質に融合された線状7-merペプチドからなる。このライブラリーは、2.8 X 109種の個別のクローンを含み、かつアミノ酸の短い一続き中に濃縮された結合エレメントを必要とする標的を同定するのに有用である。
【0077】
標的に結合することができるペプチドをディスプレイするファージクローンは、このライブラリーから選択される。挿入されたペプチドの配列は、ファージクローンのDNA配列から推定される。この方法は、標的タンパク質の一次配列の予めの知識を必要とせず、アミノ酸の線状配列(線状エピトープ)によるか又は一次配列内の互いから離れたアミノ酸の空間的並列(コンホメーショナルエピトープ)のいずれかにより標的内に提示されたエピトープは、両方とも同定可能であり、かつ脂質及び糖質部分のような非-タンパク質性分子に由来したエピトープのペプチド性ミモトープ(mimotope)も作成することができるので、特に望ましい。
【0078】
可能性のある結合ペプチドをディスプレイしているファージのライブラリーは、固定された標的と特異的に結合する組換えペプチドをコードしているクローンを選択するために、固定した標的とインキュベーションすることができる。これらのファージは、異なる回数バイオパンニング(固定した標的への結合)した後、増幅し、かつその後各々異なる組換えタンパク質、又は結合ペプチドを発現している個別のウイルスプラークは、拡大され、結合アッセイを行うのに十分量のペプチドを生じることができる。
【0079】
ファージ選択は、当該技術分野において公知の方法で、製造業者の指示に従い実行することができる。「標的」タンパク質CD26及び/又はプラスミノーゲン、及び特にL313QWLRRIペプチド及び/又はL340VARポリペプチドは、加湿した容器内で高度に結合するプラスチックプレート又はチューブ上を一晩被覆することができる。第一回目のパンニングにおいて、およそ2 X 1011個のファージを、緩く振盪しながら、タンパク質-被覆したプレート上で60分間室温でインキュベーションすることができる。その後プレートを、標準洗浄液を用い洗浄することができる。次に結合ファージを、かつ標的タンパク質を用い溶離後に収集し、増幅することができる。必要ならば、二回目及び三回目のパンニングを行うことができる。
【0080】
最後のスクリーニング後、ファージ-感染した細菌の個別のコロニーを、ランダムに採取し、このファージDNAを単離し、その後ジデオキシ法により配列決定を行う。ディスプレイされたペプチドの配列は、このDNA配列から推定することができる。
【0081】
III. 組成物
本願明細書に説明した化合物を含有する治療的、予防的及び診断的組成物は、典型的には、1種又は複数の活性化合物を、in vivo用途のために、医薬として許容できる賦形剤、希釈剤又は担体と共に含有する。このような組成物は、活性化合物(複数)を適当な賦形剤、希釈剤又は担体と混合することにより、容易に調製することができる。
【0082】
いずれか適量で投与することができる。治療される転移性腫瘍の種類、これらの化合物、担体及び量は、体重、治療される状態の重症度及び当業者により容易に評価されるその他の要因により、非常に広範に変動するであろう。一般に体重1キログラム(kg)につき約1ミリグラム(mg)から体重1キログラム(kg)につき約100mgの間の用量が適している。
【0083】
単位用量は、単独の化合物、又はそれらの他の化合物もしくは他の抗-癌剤との混合物を含んでも良い。単位用量は、希釈剤、増量剤、担体なども含有することができる。この単位は、例えば丸剤、錠剤、カプセル剤などの固体又はゲルの形状であるか、又は経口、経直腸、外用、静脈内注射もしくは非経口投与又は腫瘍へもしくはその周辺への注射に適した液体の形状であることができる。
【0084】
これらの化合物は、典型的には、医薬として許容できる担体と混合される。この担体は、固体又は液体であることができ、その種類は、一般に使用される投与の形を基に選択される。
【0085】
これらの化合物は、治療される特定の転移性腫瘍-媒介した疾患の治療に効果的であるいずれか適当な投与経路で投与することができる。治療は、経口、経直腸、外用、非経口又は静脈内投与であるか、又は腫瘍などへの注射によることができる。適当な担体、追加の癌を阻害する1種又は複数の化合物もしくは投与を促進する希釈剤と共に処方された化合物の静脈内、皮下、又は筋肉内適用による非経口治療は、化合物の投与の好ましい方法であると考えられている。
【0086】
これらの化合物は、治療的投与のために様々な処方に混入することができる。より詳細に述べると、これらの化合物は、適当な医薬として許容できる担体又は希釈剤と組合せて医薬組成物に処方することができ、かつ錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、ゲル剤、スラリー剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤及びエーロゾルのような、固形、半固形、液体又は気体の形状の調製物に処方することができる。従って、これらの化合物の投与は、経口、頬腔内、直腸内、非経口、腹腔内、皮内、経皮的、気管内などへの投与を含む、様々な方法で行うことができる。更にこれらの化合物は、全身的よりもむしろ局所的に投与することができ、例えば化合物を固形腫瘍へ直接注射するか、多くはデポ剤又は徐放性処方内で投与することができる。加えてこれらの化合物は、例えば、本願明細書において説明された抗体により被覆されたリポソームのような、標的化した薬物送達システムにおいて投与することができる。このようなリポソームは、腫瘍に標的化されかつ腫瘍により選択的に取込まれる。
【0087】
加えて、これらの化合物は、一般的賦形剤、希釈剤又は担体と共に処方し、錠剤へ圧縮するか、もしくは都合の良い経口投与、又は筋肉内もしくは静脈内経路による投与のためにエリキシル剤又は液剤として処方することができる。これらの化合物は、経皮的に投与することができ、かつ徐放剤形などで処方することができる。
【0088】
これらの化合物は、単独で、互いに組合せて投与することができ、又はこれらは他の公知の化合物(例えば他の抗-癌剤)と組合せて使用することができる。例えばこれらの化合物は、公知の抗-血管形成性化学療法剤及び/又は抗新生物形成剤(例えば、ビンカアルカロイド、抗生物質、代謝拮抗剤、白金配位錯体など)と共に併用療法において使用することができる。例えばこれらの化合物は、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タキソールなどのビンカアルカロイド;アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びミトマイシン(ミトマイシンC)などの抗生物質;メトトレキセート、シタラビン(AraC)、アザウリジン、アザリビン、フルオロデオキシウリジン、デオキシコフォルマイシン、メルカプトプリンなどの代謝拮抗剤;又は、シスプラチン(cis-DDP)、カルボプラチンなどの白金配位錯体との併用療法において使用することができる。医薬剤形において、これらの化合物は、それらの医薬として許容できる塩の形で投与することができるか、もしくはこれらは単独で、又は他の医薬活性化合物との適当な会合、更には組合せにおいて使用することができる。
【0089】
本発明において使用するための適当な処方は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing社、フィラデルフィア、Pa.、第17版(1985))に認められ、これは本願明細書に参照として組入れられている。更に薬物送達法の簡単な検証のために、Langerの論文(Science、249:1527-1533 (1990))を参照することができ、これは本願明細書に参照として組入れられている。本願明細書に説明された医薬組成物は、当業者に公知の方法、すなわち通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作成、研和、乳化、カプセル封入、内封(entrapping)又は凍結乾燥法で製造することができる。下記の方法及び賦形剤は、単なる例証であり、限定するものではない。
【0090】
注射のために、これらの化合物は、例えば植物油又はその他の同類の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステル又はプロピレングリコールなどの水性又は非水性溶媒中への、それらの溶解、懸濁又は乳化により;並びに、望ましいならば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤及び保存剤のような通常の添加剤を伴い、調製物へ処方することができる。好ましくは、これらの化合物は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理的食塩緩衝液のような生理的に相溶性のある緩衝液中に処方することができる。経粘膜投与のためには、透過される障壁に適した浸透剤がその処方において使用される。このような浸透剤は一般に、当該技術分野において公知である。
【0091】
経口投与については、これらの化合物は、当該技術分野において周知である医薬として許容できる担体と一緒にすることにより、容易に処方することができる。このような担体は、治療される患者の経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、乳剤、親油性及び親水性懸濁剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとしてこの化合物を処方することを可能にする。経口用途のための医薬調製物は、この化合物の固形賦形剤との混合、任意に得られた混合物の研磨、及び望ましいならば錠剤又は糖衣錠コアを得るために適当な助剤の添加後の顆粒混合物の処理により得ることができる。適当な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール又はソルビトールを含む糖類のような充填剤;例えば、コーンスターチ、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などの、セルロース調製物である。望ましいならば、架橋したポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなそれらの塩などの崩壊剤を添加することができる。
【0092】
糖衣錠コアは、適当なコーティングと共に提供される。この目的のために、濃縮した糖溶液が使用され、これは任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー液、及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含有することができる。染料又は顔料を、活性化合物用量の様々な組合せを識別又は特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0093】
経口的に使用することができる医薬調製物は、ゼラチンで製造されたプッシュフィット(push-fit)型カプセル剤に加え、ゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑化剤により製造されたシールされた軟カプセル剤を含む。プッシュフィット型カプセル剤は、活性成分を、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意に安定剤と混合して含むことができる。軟カプセル剤において、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールのような適当な液体に溶解又は懸濁することができる。経口投与のための全ての処方は、このような投与に適した用量である。
【0094】
頬腔内投与のためには、この組成物は、通常の方式で処方された錠剤又はトローチ剤の形状であることができる。
吸入による投与については、本発明に従い使用するための化合物は、通常、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当な気体のような適当な噴射剤を使用する、加圧された容器又はネブライザーから、もしくは噴射剤非含有の乾燥散剤吸入器からのエーロゾル噴霧放出で送達される。加圧したエーロゾルの場合、単位用量は、計量した量を送達するためのバルブを備えることにより決定することができる。吸入器又は吹き入れ器において使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物及び乳糖又はデンプンのような適当な粉末基剤の粉末混合物を含むように処方することができる。
【0095】
これらの化合物は、好ましくは、注射による、例えばボーラス注射又は連続注入による、非経口投与のために処方される。注射用処方は、保存剤が添加された、例えばアンプル又は複数回用量が入った容器中のような単位剤形で提示される。これらの組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又は乳液のような形をとることができ、かつ懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤のような処方剤を含有することができる。
【0096】
非経口投与のための医薬処方は、水溶性の形状の活性化合物の水溶液を含む。更に、活性化合物の懸濁液を、適当に油性の注射用懸濁液として調製することができる。適当な親油性溶媒又はビヒクルは、ゴマ油のような脂肪油、又は合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、又はリポソームを含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどを含有することができる。任意に、懸濁液は更に、適当な安定剤又は高濃度の溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大する物質を含有することもできる。あるいは、この活性成分は、使用前に、例えば滅菌したパイロジェン非含有水などの適当なビヒクルで構成するために散剤の形状であることができる。
【0097】
これらの化合物は、例えば全て体温で溶融するが室温では固化しているような、ココアバター、カルボワックス、ポリエチレングリコール又は他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤を含有する、坐剤又は持続浣腸剤のような直腸用組成物として処方することもできる。
【0098】
前述の処方に加え、これらの化合物はデポ剤として処方することもできる。このような長期作用する処方は、移植(例えば皮下又は筋肉内などへ)により又は筋肉内注射により投与することができる。従って例えば、これらの化合物は、適当な高分子又は疎水性物質(例えば許容できる油中の乳剤として)又はイオン交換樹脂と共に、もしくはやや可溶性の誘導体、例えばやや可溶性の塩として処方することができる。
【0099】
あるいは疎水性医薬化合物のための他の送達システムを使用することができる。リポソーム及び乳剤は、疎水性薬物の送達ビヒクル又は担体の例として周知である。現在の好ましい態様において、長期間血中を循環する、すなわちステルス(stealth)リポソームが使用される。このようなリポソームは一般に、Woodleらの米国特許第5,013,556号に開示されており、その内容は本願明細書に参照として組入れられている。
【0100】
これらの化合物は、例えばその内容は本願明細書に参照として組入れられているRothらの米国特許第5,879,713号に開示されたような、生体活性分子の標的組織への転移を促進するリポソームのようなビヒクル内に封入することもできる。これらの化合物は、媒質が分子を特定の標的へ送達するために適当なサイズの封入媒質を選択することにより標的化することができる。例えば、毛細血管床及び肺胞に侵入するがそこに捕獲され続けるのに適当なサイズの化合物の微粒子、好ましくは生体適合性及び/又は生分解性の微粒子への封入は、患者への注入又は注射による投与後のこれらの生体領域への標的化された送達に使用することができる。
【0101】
好ましい態様において、リポソーム又は微粒子は、体の特定領域に留まるために選択される直径を有する。例えば、毛細血管に留まるように選択された微粒子は、典型的には直径10〜100、より好ましくは10〜25、及び最も好ましくは15〜20μmを有する。いずれかの特定のサイズ範囲のリポソーム及び微粒子を調製する多くの方法が知られている。ゲル微粒子を形成する、又は溶融材料から微粒子を形成するための合成法が公知であり、かつ乳液、噴霧した液滴及び分離された相における重合を含む。固形物質又は予め形成されたゲルについては、公知の方法は、湿式又は乾式摩砕又は粉砕、微粉化、エアージェット又は篩による分級などを含む。
【0102】
微粒子は、当業者に公知である様々な異なる方法を用い、異なるポリマーから加工することができる。溶媒蒸着技術は、例えば、E. Mathiowitzら、J. Scanning Microscopy、4:329 (1990);L. R. Beckら、Fertil. Steril.、31:545 (1979);及び、S. Benitaら、J. Pharm. Sci.、73:1721 (1984)に説明されている。ホットメルト微量封入技術は、E. Mathiowitzら、Reactive Polymers、6:275 (1987)に説明されている。噴霧乾燥技術も、当業者に周知である。噴霧乾燥は、適当なポリマーの適当な溶媒への溶解に関連している。既知量の化合物が、このポリマー溶液中に懸濁(不溶性薬物)又は共-溶解(可溶性薬物)される。次にこの溶液又は分散液は、噴霧乾燥される。使用したポリマーの種類によって左右される形態を持つ1〜10μmの範囲の微粒子が得られる。アルギン酸塩のようなゲル型ポリマーから製造される微粒子は、伝統的なイオンゲル化技術により製造される。これらのポリマーは最初に、水溶液に溶解され、硫酸バリウム又はいくつかの生体活性物質と混合され、その後液滴形成装置を通して押出され、これは場合によっては液滴を破壊するために窒素ガス流れを使用する。形成される微小液滴を捕獲するために、緩徐に攪拌(およそ100〜170RPM)したイオン硬化浴を、押出装置の下側に配置する。これらの微粒子は、ゲル化が生じるのに十分な時間、この浴中でインキュベーションが続けられる。微粒子サイズは、様々なサイズの押出機を用いるか又は窒素ガスもしくはポリマー溶液の流量を変動することで制御される。粒子サイズは、使用される送達法、典型的にはIV注射、かつ適当であるならば放出が望まれる部位での捕獲に従い選択することができる。リポソームは、様々な供給業者から市販されている。あるいはリポソームは、例えば、米国特許第4,522,811号(これはその全体が本願明細書に参照として組入れられている。)に記されたような、当業者に公知の方法により、調製することができる。例えば、リポソーム処方は、適当な脂質(複数)(ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、及びコレステロール)の、後に蒸発され、容器の表面上に乾燥した脂質の薄膜を残留する無機溶媒中への溶解により調製することができる。次に活性化合物又はその一リン酸塩、二リン酸塩及び/又は三リン酸塩誘導体の水溶液が、容器に導入される。その後この容器は、手で旋回され、容器の側面から脂質物質をなくしかつ脂質凝塊を分散させ、これによりリポソーム懸濁液を形成する。
【0103】
本願明細書に説明されたような標的に特異的なモノクローナル抗体を、任意にリポソームへ複合することができ、かつその送達は、この方式で標的化することができる。加えて、異常な腫瘍血管に対するマーカーの標的化を、使用することができる。この標的化部分は、毒性のある薬物又は放射性同位元素と組合せられた場合には、それが必要とされる場合にその薬物を濃縮するように作用するであろう。腫瘍-会合した血管マーカーのリガンドも使用することができる。例えば、腫瘍血管要素表面マーカーに結合する細胞接着分子を使用することができる。特にそれらの表面が腫瘍血管に優先的に担体を方向付けるリガンドを含む場合、リポソーム及び他の薬物送達システムも使用することができる。リポソームは、ほとんどの正常組織から薬物を遮蔽する更なる利点をもたらす。食細胞による及び腫瘍血管-特異的標的化部分による取込みを最小化するために,ポリエチレングリコール(PEG)(すなわち、ステルスリポソーム)で被覆される場合に、リポソームはより長い血漿半減期、より低い非-標的組織毒性及び標的化しない薬物に勝る増大された効率を提供する。前述の方法を用い、これらの化合物は、腫瘍進行の制御に作用するために腫瘍血管に、又は関心のある他の部位(例えば、内皮細胞)へと標的化することができる。
【0104】
ジメチルスルホキシドのようなある種の有機溶媒も使用することができるが、通常はより大きい毒性に経費がかかる。加えてこれらの化合物は、治療用物質を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスのような、徐放システムを用い送達することができる。様々な種類の徐放性材料が確立されており、かつ当業者に周知である。徐放性カプセル剤は、それらの化学的性質に応じて、数日から最大100日まで化合物を放出する。このような徐放性カプセル剤は、典型的には、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトンのような生分解性ポリマー及びそれらのコポリマーを含む。
【0105】
本願明細書に説明された方法における用途に適した医薬組成物は、活性成分が治療有効量含まれているような組成物を含む。投与される組成物の量は、当然、治療される対象、対象の体重、苦痛の重症度、投与の方法及び処方する医師の判断に応じて決まる。有効量の決定は、特に本願明細書に提示された詳細な説明を考慮し、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0106】
本願明細書に説明された化合物の治療有効量は、最初に細胞培養アッセイにより推定することができる。例えば用量は、細胞培養において決定されたIC50(すなわち、細胞培養物の50%が致死的である被験化合物の濃度)、又は細胞培養において決定されたIC100(すなわち、細胞培養物の100%が致死的である化合物の濃度)を含む、循環血中濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。最初の用量は、in vivoデータから推定することもできる。
【0107】
更に、本願明細書に説明された化合物の毒性及び治療効能は、例えば、LD50(集団の50%致死量)及びED50(集団の50%の治療有効量)の決定によるような、細胞培養又は実験動物における標準の薬学的手法により決定することができる。毒性作用と治療的作用の間の用量比は、治療指数であり、かつLD50とED50の間の比で表わすことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトで使用した場合に毒性でない用量範囲の設定において使用することができる。このような化合物の用量は、ほとんど又は全く毒性のないED50を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。用量は、使用した剤形及び使用した投与経路に応じて、この範囲内を変動することができる。正確な処方、投与経路及び用量は、患者の状態を考慮し、個々の医師が選択することができる(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第1章1頁)。
【0108】
治療効果を維持するのに十分である活性化合物の血漿レベルを提供する用量及び間隔は、個別に調節することができる。治療に有効な血清レベルは、毎日の反復投与により達成されることが好ましいであろう。局所投与又は選択的取込みの場合、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度には関連していないことがある。当業者は、必要以上の実験を行うことなく、治療に有効な局所用量を最適化することができるであろう。
【0109】
本組成物は、静脈内(iv)以外の経路により投与することができるが、静脈内投与が好ましい。これは、本療法の標的は、主に腫瘍細胞であり、これは腫瘍に栄養供給する血管に隣接して位置し;従って、本組成物の静脈内投与は、別の投与経路が使用される場合よりも標的化された血管をはるかに迅速に飽和する。加えて、静脈内経路は、特定の組織への更なる標的化の可能性をもたらしている。
【0110】
ひとつの態様においては、組成物を直接標的腫瘍の位置に方向付けるために、カテーテルを使用する。例えば、腫瘍が肝において局在化される場合、その後免疫複合体又は複合されない抗体もしくはそれらの断片が、肝門脈にカテーテルを用いて送達される。この態様において、組成物の全身分布は最小化され、更に可能性のある本療法の副作用を最小化する。
【0111】
IV. スクリーニング法
様々なスクリーニング法を用い、化合物が、腫瘍転移及び/又はCD26/DPP IVのADAへの結合を阻害する能力を決定することができる。本願明細書に説明された方法において、多くの化合物は、CD26及び/又はプラスミノーゲンに結合することができるが、これらはCD26又はプラスミノーゲンに結合するという事実のみでは、腫瘍転移又はADA結合に対するそれらの最終的な作用を決定するものではない。これらのスクリーニング法を用い、CD26のプラスミノーゲンへの結合及び/又はCD26/DPP IVのADAとの結合に対する、一旦結合した化合物の最終的作用を決定することができる。
【0112】
様々なスクリーニング法を用い、これらの標的に結合した化合物の活性を決定することができる。適当なスクリーニング法の例は、MPP-9合成の測定、マトリゲル侵襲の測定、及び腫瘍転移の測定を含む。
これらの化合物は、それらの生物学的活性を決定するために、in vitroアッセイを用い評価することができる。これらのアッセイを、当業者は熟知しており、かつこれはマトリゲル侵襲アッセイを含む。これらのアッセイにおける化合物の転移阻害能は、その化合物が、多かれ少なかれアンギオスタチンのCD26との相互作用を模倣することができることを示すであろう。
【0113】
これらの化合物の生物学的活性は、in vivoにおいても試験することができる。適当なアッセイの例は、B16B16転移アッセイ又はLewis Lung Carcinoma原発性腫瘍又は転移アッセイを含む。このような実験において、化合物の活性は、望ましいならばアンギオスタチンのそれと比較することができる。適当な結合アッセイを以下に詳述する。
【0114】
V. 結合アッセイ
CD26及び/又はプラスミノーゲン、又は単離されたポリペプチド標的IL340VAR及びIL31 3QWLRRIは、適当な培地に存在することができるか、腫瘍細胞の表面に発現することができるか、又はこれらのポリペプチドを発現するように操作された細胞において発現することができる。
【0115】
本願明細書に説明された結合アッセイは、いずれかの標的の短縮型を使用することができる。結合アッセイは、1種又は複数の標的(又はこれを含有する融合タンパク質)を、それが有利なことに、検出可能な標識(例えば、放射性又は蛍光標識)を持つような被験化合物(タンパク質性又は非タンパク質性)と共にインキュベーションする細胞-非含有アッセイを含む。インキュベーション後、遊離の又は被験化合物に結合した標的は、未結合の被験化合物から、様々な技術のいずれかを用いて分離することができる。例えば、これらの標的は、固形支持体(例えば、プレート又はカラム)に結合することができ、かつ未結合の被験化合物が洗浄除去される。その後標的に結合した被験化合物の量が、例えば、使用した標識の検出に適した技術(例えば、放射性標識された被験化合物の場合は液体シンチレーション計測及びγ線計測により、もしくは蛍光光度法分析により)を用いて決定される。
【0116】
結合アッセイは、細胞-非含有競合的結合アッセイの形であることもできる。このようなアッセイにおいて、1種又は複数の標的が、標的と相互作用することが分かっている化合物と共にインキュベーションされ、その化合物は、有利なことに、検出可能な標識(例えば、放射性又は蛍光標識)を有する。被験化合物(タンパク質性又は非-タンパク質性)は、反応系に添加され、かつ標的への結合について既知の(標識された)化合物と競合するその能力がアッセイされる。
【0117】
遊離の既知の(標識された)化合物は、結合した既知の化合物から分離され、かつ結合した既知の化合物量が決定され、被験化合物の競合する能力が評価される。このアッセイは、より容易に未結合の反応体を洗浄除去するために、標的を固形支持体に連結することにより、非常に多数の被験化合物のスクリーニングを促進するように設定することができる。プラスチック製支持体、例えば、プラスチックプレート(例えば、96ウェル皿)が好ましい。前述の標的は、天然の給源(例えば、膜調製物)から単離されるか、もしくは組換え的又は化学的に調製される。これらの標的は、融合タンパク質として、例えば公知の組換え技術を用いて調製することができる。好ましい融合タンパク質は、GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)部分、GFP(グリーン蛍光タンパク質)部分(細胞局在化試験に有用)又はHisタグ(親和性精製に有用)がある。非-標的部分が、標的への融合タンパク質、それらのサブユニット又はそれらの結合ドメインのN-末端又はC-末端に存在することができる。
前述のように、これらの標的は、プラスチック又はガラス製のプレート又はビーズ、クロマトグラフィー樹脂(例えば、Sepharose)、フィルター又は膜を含む、固形支持体に連結して存在することができる。このような支持体へタンパク質を付着する方法は、当該技術分野において周知であり、かつ直接的化学付着及び結合対を介した付着(例えば、ビオチン及びアビジン又はビオチン及びストレプトアビジン)を含む。これらの標的は、遊離の又は固形支持体へ結合しているかに関わらず、標識されないか、もしくは検出可能な標識(例えば、蛍光又は放射性標識)を持つことができる。
【0118】
この結合アッセイは、標的が細胞表面に提示される細胞-ベースのアッセイも含む。このようなアッセイにおける使用に適した細胞は、CD26及び/又はプラスミノーゲンを天然に発現している細胞、並びにCD26及び/又はプラスミノーゲン(又はそれらのサブユニット、それらの結合ドメイン及び/又はこれを含む融合タンパク質)を発現するように操作されている細胞を含む。これらの細胞は、正常であるか又は腫瘍形成性であることができる。ヒトCD26を発現している細胞が使用されることは利点である。適当な細胞の例は、原核細胞(例えば、細菌細胞(例えば、E.coli))、下等真核細胞、酵母細胞(例えば、Promega社のハイブリッドキット(CG 1945及びY190)、並びに菌株YPH500及びBJ5457))並びに高等真核細胞(例えば、昆虫細胞及び哺乳類細胞、例えばヒト肺癌細胞(例えば、A549細胞))を含む。
【0119】
細胞は、プロモーターに機能的に連結された、標的、又はそれらのサブユニットもしくはそれらの結合ドメイン又は融合タンパク質をコードしている配列を含む発現構築体を、選択された宿主へ導入することにより、標的を発現するように操作することができる。様々なベクター及びプロモーターを使用することができる。例えば、T7プロモーターを含むpET-24a(+)(Novagen社)は、pGEX-5X-1のような細菌の使用に適している。適当な酵母発現ベクターは、pYES2(Invitron社)を含む。適当なバキュロウイルス発現ベクターは、p2Bac(Invitron社)を含む。適当な哺乳類発現ベクターは、pBK/CMV(Stratagene社)を含む。この構築体の宿主への導入は、様々な標準のトランスフェクション/形質転換プロトコールのいずれかを用いて実行することができる(Molecular Biology, A Laboratory Manual、第2版、J. Sambrook、E.F. Fritsch及びT. Maniatis、Cold Spring Harbor Press社、1989年参照)。こうして作成された細胞は、関連した宿主に適した確立された培養技術を用いて、培養することができる。培養条件は、標的(又はそれらのサブユニット、結合ドメイン又は融合タンパク質)をコードしている配列の発現を確実にするように最適化することができる。細胞-ベースの結合アッセイに関して、標的(又はサブユニット、結合ドメイン又は融合タンパク質)は、宿主細胞膜上(例えば、宿主細胞の表面上)に発現されるが、他の目的に関しては、このコード配列は、発現産物の培養培地への分泌が確実になるように選択することができる。本願明細書に説明された細胞-ベースの結合アッセイは、被験化合物(有利なことに、検出可能な(例えば、放射性又は蛍光)標識を持つ)、標的(又は、それらのサブユニット、それらの結合ドメイン又はそれを含む融合タンパク質)を発現している細胞が培養される培地への添加、結合に好ましい条件下での被験化合物の細胞とのインキュベーション、その後の未結合の被験化合物の除去、及び細胞に会合した被験化合物量の決定により実行することができる。
【0120】
細胞膜上(例えば、細胞表面上)の標的の存在は、下記「実施例」のもののような技術を用いて同定することができる(例えば、細胞表面を、ビオチン標識し、引き続き該タンパク質を蛍光タグで標識する)。膜に会合したタンパク質(例えば、細胞表面タンパク質)も、ウェスタンブロットで分析することができ、かつそれらのバンドには質量分析が施される。例えば、蛍光タグをつけた抗体を用い、その後これらの細胞を別の蛍光タグ付けたタンパク質でプロービングすることができる。各タグは、例えば、共焦点顕微鏡を用い、異なる波長でモニタリングし、同時局在を明らかにすることができる。
【0121】
細胞-非含有アッセイの場合のように、細胞-ベースのアッセイも同じく、標的に結合することがわかっている(及び好ましくは検出可能な標識で標識された)化合物を、標的(又は、それらのサブユニット、それらの結合ドメイン又はそれを含む融合タンパク質)を発現している細胞と共に、被験化合物の存在及び非存在下でインキュベーションするような、競合アッセイの形をとることができる。被験化合物の標的に対する親和性は、被験化合物の存在下でインキュベーションした細胞に会合した既知の化合物の量を決定し、被験化合物の非存在下で細胞に会合した量と比較することにより評価することができる。
【0122】
1種又は複数の前述のアッセイにおいて標的に結合することが可能であると同定された被験化合物は、潜在的に腫瘍転移、細胞移動、増殖及び細胞周囲のタンパク質分解を阻害することができる。標的に結合するその能力を基に選択された特定の被験化合物の特異的作用を決定するために、アッセイが行われ、例えば様々な濃度の選択された被験化合物の、活性、例えば、細胞(例えば、内皮細胞)転移に対する作用を決定することができる。
【0123】
被験化合物の腫瘍転移への作用を決定するために行うことができるアッセイの種類の例は、Lewis Lung Carcinomaアッセイ(O'Reillyら、Cell、79:315 (1994))及び細胞外移動アッセイ(Boyden Chamber Assay;Kleinmanら、Biochemistry、25:312 (1986)及びAlbiniら、Can. Res.、47:3239 (1987))を含む。
【0124】
従って、これらの方法は、化合物を、プラスミノーゲンのCD26への結合を阻害するそれらの能力についてスクリーニングすることを可能にする。前述の様々な方法に加え、アッセイは、比色定量的に又は時間分解蛍光法を用いモニター可能であるようにデザインすることもできる。
【0125】
別の態様において、本発明は、前述のアッセイを用い、CD26に結合することが可能であり及び/又はMMP-9形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害すると同定された化合物に関する。このような化合物は、新規小分子(例えば、有機化合物(例えば、500ダルトン未満の有機化合物)、及び新規ポリペプチド、オリゴヌクレオチドに加え、新規天然の生成物(好ましくは単離された形)(アルカロイド(alkyloid)、タンニン、グリコシド、脂質、炭水化物などを含む)を含むことができる。CD26に結合する化合物は、例えば腫瘍保持患者において、転移を阻害するために使用することができる。
前述のアッセイにおいて同定された化合物は、医薬組成物として処方することができる。
【0126】
VI. キット
本願明細書に説明されたアッセイを行うのに適したキットを調製することができる。このようなキットは、CD26、又はプラスミノーゲン及び/もしくはそれらのADA結合ドメイン、又はこれを含む融合タンパク質、並びに/又はプラスミノーゲンを含むことができる。これらの成分は、検出可能な標識を有することができる。このキットは、CD26-特異性又はプラスミノーゲン-特異性抗体を含むことができる。
【0127】
キットは、1種又は複数の容器手段中に配置された前記成分のいずれかを含むことができる。更にキットは、このアッセイにおいて使用するための補助的試薬(例えば、緩衝液)を含むことができる。CD26のプラスミノーゲンへの結合に関するアッセイを基にした診断法を用い、腫瘍転移した患者を同定することができる。プラスミノーゲンに結合するCD26がCa2+シグナル伝達カスケードを開始することの実証、並びにCD26及びプラスミノーゲンの結合を阻害するために使用することができる物質を同定する方法の結果的利用可能性は、どの個体が恐らく特定の治療戦略に応答するであろうかということを決定することを可能にする。腫瘍転移に罹患した個体の治療戦略は、より効果的かつ良好な結果の予測可能性をより大きくするようにデザインすることができる。
本発明は更に下記の限定しない実施例を参照しより十分に理解されるであろう。
【実施例】
【0128】
実施例 1:プラスミノーゲンとジペプチジルペプチダーゼIVの相互作用は、前立腺癌細胞によるマトリックスメタロプロテイナーゼ-9の発現を調節するシグナル伝達機構を開始する
プラスミノーゲン(Pg)活性化及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の両方が、悪性細胞転移に必要な事象である、細胞外マトリックス成分のタンパク質分解性崩壊に関連している。高度に侵襲性の1-LNヒト前立腺腫瘍細胞株は、大量のPgアクチベーター及びMMPを合成しかつ分泌している。本発明者らはここで、これらの細胞内の2型Pg(Pg2)受容体が、主に膜糖タンパク質ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)で構成されていることを明らかにする。Pg2は、それらのシアル酸含量が異なる6種のグライコフォームを有する。高度にシアル化されたPg2γ、Pg2δ及びPg2εグライコフォームのみが、DPP IVへ、それらの糖鎖を介して結合し、かつCa2+シグナル伝達カスケードを誘導する;しかし、Pg2εのみが、MMP-9の発現を有意に刺激することができる。本発明者らは更に、1-LN細胞のPg-媒介型侵襲性活性は、Pg2εの有効性に左右されることも明らかにする。これは、MMP-9発現とPg活性化システムの間の直接的関係を最初に明らかにしている。
【0129】
緒言
通常多くの腫瘍の侵襲性の挙動に関連している攻撃的表現型の発生は、細胞外マトリックス(ECM)1の成分を消化することができるプロテイナーゼの発現を増大し、その結果基底膜及び間質障壁を通る悪性細胞の通過を可能にすることに関連している[1]。これらの酵素において、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン(Pg)アクチベーター(u-PA)及びMMP-2及び9を含む様々なマトリックス-分解性メタロプロテイナーゼ(MMP)は、重要な役割を果たす[2-5]。具体的関連は、これらの酵素が、限定されたタンパク質分解により細胞外で活性化されるような不活性チモーゲン(prou-PA、proMMP)として分泌される場合に認められる。微量のプラスミン(Pm)は、prou-PAを活性化することができ[4]、その結果prou-PA活性化がPgのPmへの転換を触媒する自己維持フィードバック機構を作成する。Pg結合は、u-PA/u-PA受容体(uPAR)複合体に密接して生じ、かつPg活性化を促進するために役立ち、Pmを望ましい作用部位へ閉込め、かつPmに加えそのアクチベーターを、それらの各インヒビターから保護する[4]。Pmは、溶液中[6,7]又は両方のMMPが細胞表面に会合した場合[5,8]のいずれかにおいて、proMMP-2及びproMMP-9を直接活性化する。
【0130】
MMP-9の発現及び活性の調節は、ほとんどの他のMMPのそれよりもより複雑である[9]。MMP-9は、ほとんどの細胞により構成的には産生されない[10,11]が、その活性は、細胞型に応じて異なる刺激により誘導され[12,13]、これにより特異的病態生理学的事象に反応してその活性を増大する手段を提供している。例えば、MMP-9は、ヒト前立腺癌により高レベルで発現されるが、正常な前立腺組織には存在しない[14,15]。高度に侵襲性のDU-145、PC-3、及び1-LNヒト前立腺腫瘍細胞株は、大量のu-PA及びproMMP-9を合成しかつ分泌する[16,17]。
【0131】
ヒトのリウマチ性滑膜線維芽細胞において、Pgの細胞結合及びuPAによるその活性化は、細胞表面上のインテグリンαIIbβ3及びジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)とPg/Pmの相互作用[19,20]を介し、細胞質ゾルの遊離のCa2+ [Ca2+]iの有意な上昇を誘導する[18]。DPP IV活性は、同じく悪性ヒト前立腺癌において上昇する[21]。DU-145及びPC-3細胞は、インテグリンαIIbβ3をその表面に発現する[22];しかし、1-LN細胞によるこのインテグリン又はDPP IVの発現は、評価されていない。ヒトメラノーマ、線維肉腫及び卵巣癌細胞によるMMP-2の発現は、受容体-依存型Ca2+流入により調節されるので[23]、本発明者らは、同様の調節シグナル伝達機構が1-LN細胞によるMMP-9産生に関与している可能性を調べた。2型Pg(Pg2)は、それらのシアル酸含量が異なる6種のグライコフォームを有する[24]。集中的研究は、シアル酸含量はPgの活性化のみではなく、その機能にも影響を及ぼすことを明らかにした[24-27]。現在の研究において、本発明者らは、1-LNヒト前立腺癌細胞への結合後の単独のPg2グライコフォームの機能を研究し、かつPg2α及びPg2βが、L-リシン部位-依存型受容体に結合するのに対し、高度にシアル化されたPg2γ、Pg2δ及びPg2εグライコフォームは主にDPP IVに結合することを発見した。本発明者らは更に、Pg2ε単独と会合したDPP IVは、proMMP-9の発現を調節することを示すデータも提示している。
【0132】
実験手法
材料 − 培養培地は、Life Technologies社(Gaithersburg, MD)から購入した。1-[2-(5-カルボキシオキサゾール-2-オキシル-6-アミノベンゾフラン-5-オキシル]-2-(2'-アミノ-5'-メチルフェノキシエタン-N,N,N',N'-四酢酸)-アセトキシメチルエステル(Fura-2/AM)は、Molecular Probes社(Eugene, OR)から入手した。二本鎖の高分子量u-PA(Mr 〜54,000)は、Calbiochem社(Richmond, CA)から得た。色素産生性Pm基質Val-Leu-Lys-p-ニトロアニリド(VLK-pNA, S-2251)及び色素産生性DPP IV基質Gly-Pro-p-ニトロアニリドは、Sigma Chemical社(St. Louis, MO)から購入した。使用した他の試薬は、入手可能な最高級のものであった。
【0133】
抗体 − モノクローナル抗体(mAb)SZ21(IMMUNOTECH社, Westbrook, ME)は、血小板GPIIIa(β3)-サブユニットに特異的に結合する[28]。抗-ジペプチジルペプチダーゼIV mAbクローン236.3[29]は、Dr. Douglas C. Hixson (Brown University, Providence, RI)のご厚意により贈与されたものである。抗-u-PA mAb 390、及びヤギ抗-ヒト組換え組織-型Pgアクチベーター(t-PA)IgGは、両方とも抗-触媒性であり、American Diagnostica社(Greenwich, CT)から購入した。抗-線維芽細胞活性化タンパク質α(FAPα)、mAb F19 [27]は、Dr. Pilar Garin-Chesa (Thomae社, Biberach, 独国)から贈与された。抗-触媒性抗-MMP-9 mAbであるクローン6-6B[28]は、Oncogene Research Products社(Cambridge, MA)から購入した。ヤギ抗-マウスIgG-アルカリホスファターゼ複合抗体は、Sigma Chemical社から購入した。
【0134】
タンパク質 − Pgは、L-リシンSepharose上でヒト血漿からアフィニティクロマトグラフィーにより精製し[32]、かつコンカナバリンA-Sepharose上でのアフィニティクロマトグラフィーにより、2種類のアイソフォーム1及び2型に分離した[33]。Pg2のその6種のグライコフォームへの分画及びシアル酸含量の測定は、先に説明されたように行った[24]。天然のPg2における最初の5種のPg2グライコフォームの平均分布は、5種の個別の調製物からの、FPLCシステムに連結されたMono Pカラム上でのクロマトフォーカシング[24]を用い各々精製したグライコフォームについて得られた収量から算出した。Pgφの割合は、Sambucus nigraアグルチニンレクチン-Sepharoseカラム上での天然のPg2のクロマトグラフィー[34]後に得られたタンパク質量から算出し、かつ更に5種の個別の調製物の平均値を表わした。Markwellの方法により、放射性ヨウ素処理(radiciodination)を行った[35]。放射能を、Pharmacia LKB Biotechnology 1272γカウンター(Rockville, MD)で測定した。125Iの取込みは、〜8 x 106cpm/nmolタンパク質であった。125I-標識したPgは、L-リシン-Sepharose上でのアフィニティクロマトグラフィーにより再精製し、その後結合実験に使用した。
【0135】
細胞培養 − ヒト前立腺腫瘍細胞株1-LNは、10%ウシ胎仔血清、100ユニット/mlペニシリンG、及び100ng/mlストレプトマイシンを補充したRPMI 1640において増殖した。
【0136】
1-LN細胞膜からのDPP IVの精製 − 20培養フラスコ(150cm2)中で増殖した細胞を、ハンクス平衡化塩溶液(HBSS)中の10mM EDTAで剥離し、遠心によりペレット化した。この細胞ペレットを、0.25 Mショ糖及び0.5mg/mlの各下記プロテアーゼインヒビターを含有する20mM Hepes(pH7.2)の10ml中に浮遊させた:アンチパイン-HCl、ベスタチン、キモスタチン、トランスエポキシスクシニル-L-ロイシルアミド-(4-グアニジノ)ブタン(E-64)、ロイペプチン、ペプスタチン、O-フェナントロリン、及びアプロチニン。細胞を、氷上音波処理により溶解した(30秒間隔で10秒間バーストを5回)。全ての手法は、4℃で行った。ホモジネートを、800 x gで15分間遠心し、破壊されない細胞及び核を除去し、引き続き上清を50,000 x gで1時間遠心した。細胞膜を含有するペレットを、1%(v/v)TritonX-100を含有する20mM Tris-HCl(pH8.0)中に懸濁し、膜を可溶化し、再度50,000 x gで30分間遠心し、不溶性の物質を取り除いた。この上清中及び下記の全精製工程の中のDPP IV活性を、DPP IV基質Gly-Pro-pNAを使用する色素産生性アッセイによりモニタリングした[36]。この酵素を、DEAE-Sepharoseイオン交換クロマトグラフィー及びGly-Leu-Sepharoseアフィニティクロマトグラフィーを用い均質となるまで逐次精製し[37]、引き続きコンカナバリンA-Sepharoseでのクロマトグラフィー及びSepharose S-200カラム上でのゲルろ過を行った。これらの工程は、完全に活性のあるDPP IV(〜40μg/1 x 109細胞)を生じた。電気泳動分析は、本質的に均質なタンパク質を示した。このタンパク質試料は、マトリックス-支援レーザー脱離イオン化MSにより分析し、かつ得られた質量スペクトルペプチド地図(30ペプチド)を用い、OWLタンパク質データベースリリース29.6において、DPP IVを同定した[38,39]。
【0137】
タンパク質配列解析 − タンパク質(100pmol)を、気相/液相シークエンサー(モデル477A;Applied Biosystems社、Foster City, CA)において、HPLC(モデル120A;Applied Biosystems社、Foster City, CA)を用いるオンラインPTH分析により、自動式エドマン分解により配列決定した。これらの装置は、製造業者により配布された使用者向け公報及び取扱説明書の推奨に従い操作した。
【0138】
リガンド結合分析 − 細胞は、単層が集密となるまで、組織培養プレートにおいて増殖した。結合アッセイに使用する前に、これらの細胞を、HBSSで洗浄した。全ての結合アッセイは、2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するRPMI 1640において4℃で行った。125I-標識したPg2グライコフォームの濃度を上昇し、各々、48-ウェル又は96-ウェル培養プレートにおいて60分間細胞と共にインキュベーションした。インキュベーション混合物の吸引し、かつ細胞単層を2%BSAを含有するRPMI 1640で3回迅速に洗浄することにより、遊離リガンドを、結合したものから分離した。その後これらの細胞を、0.1M NaOHで溶解し、結合した放射能を、Pharmacia LKB Biotechnology 1272-γカウンターで測定した。結合したリガンド分子は、標識しない100μM Pg2の存在下で測定した非特異的結合を減算した後、算出した。解離定数(Kd)値及びPg2グライコフォームの最大結合(Bmax)の推定値を、データを、Windows版統計プログラムSYStat(商標)を用いLangmuir等温式に直接当てはめることにより決定した。
【0139】
固相放射性リガンド結合試験 − Pg2グライコフォームの1-LN細胞から精製したDPP IVの固定したものへの特異的結合を調べるために、96-ウェルストリッププレートを、DPP IV(0.1M炭酸ナトリウム中1μg/ml、pH9.6、200μl/ウェル、37℃、2時間)で被覆した。被覆後、プレートを、0.05%Tween-80を含有する10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.4(PBS-Tween)の200μlで洗浄し、未結合のタンパク質を除去した。非特異的部位を、2%BSAを含有するPBS-Tweenと共に室温で1時間インキュベーションすることによりブロックした。プレートを、PBS-Tweenの200μlで2回洗浄し、風乾し、4℃で保存した。アッセイのために、125I-標識したPg2グライコフォームの増大する濃度を、50-倍過剰な標識しないリガンドを伴う又は伴わずに、3つ組のウェルに添加し、かつ37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、上清を除去し、プレートを200μl PBS-Tweenで3回洗浄した。ウェルを、プレートから剥がし、かつ放射能を測定した。特異的結合を、標識されないリガンド存在時に測定された非特異的結合を減算することにより算出した。
【0140】
細胞内カルシウムレベルの測定 − 細胞質ゾル遊離カルシウム[Ca2+]iを、先に説明された[18]ように、蛍光指示薬Fura-2/AMを用い、Digital Imaging Microscopy(DIM)により測定した。
【0141】
ゼラチンザイモグラフィー − タンパク質試料を、非還元条件下、SDSの存在するゼラチン-含有する厚さ0.75mmの10%ポリアクリルアミドゲルにおいて電気泳動した[40]。電気泳動で走行が完了した後、これらのゲルを、ふたつの変更点(change)のある2.5%Triton X-100と共に1時間インキュベーションし、その後1mM CaCl2、及び0.1M ZnCl2を含有する0.1Mグリシン-NaOH(pH8.3)中37℃で18時間インキュベーションし、その後クーマシーブリリアントブルーR-250で染色し、溶解バンドを可視化した。
【0142】
溶液中のMMP-9活性 − 組織培養上清中のMMP-9活性は、1-LN細胞馴化培地(10L)からのゼラチン-Sepharose上でのアフィニティクロマトグラフィーにより精製した標準MMP-9を用いる、定量的ザイモグラフィー[41]により測定した[42]。Pg2グライコフォーム及び/又はPg結合又は活性化のインヒビターと共にインキュベーションした、48ウェル培養プレート(1.7 x 106細胞/ウェル)中の1-LN細胞単層からの馴化培地(50μl)を、ゼラチン-含有ゲル上で電気泳動し、かつ溶解の程度を、Gelman ACD-15 Automatic Computing Densitometer (Gelman Instrument社、Ann Arbor, MI)を用い定量した。値は、選択されたバンド密度の積分により決定し、かつ単位(unit) x mm2で表わした。各ゲルは、3回走査し、バンドの積分密度の平均値を用い、同じ条件下で電気泳動した精製された活性MMP-9で作成された検量線からMMP-9のレベルを決定した。このデータの統計解析を、Windows95版のプログラムSYSTAT(商標)を用い、IBM 433 DX/Sコンピュータにおいて行った。平均値間の統計的有意差は、スチューデントt-検定により評価した。MMP-9は、10%SDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)での電気泳動分離により、馴化培地中において陽性に同定され、電気泳動したタンパク質をニトロセルロース膜電気的にブロッティングし、かつ抗-MMP-9 mAb(1μg/ml)と反応し、引き続き二次アルカリホスファターゼ複合した抗-マウスIgGと反応した。検出は、10mM Tris-HCl(pH8.5)を溶媒とするニトロブルーテトラゾリウム存在下でのアルカリホスファターゼ基質5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(各1mM)との反応により行った。
【0143】
ゲル電気泳動 − 電気泳動は、0.1%SDSを含有するポリアクリルアミドゲル(厚さ1.2-mm、14 x 10cm)上で行った。非連続Laemli緩衝系を使用した[43]。タンパク質の可視化は、45%メタノール/10%酢酸を溶媒とする0.25%クーマシーブリリアントブルーR-250によるゲルの染色により行った。ニトロセルロースペーパーへの移動は、ウェスタンブロット法により行った[44]。使用した色素-複合した分子量マーカー(BioRad社, Richmond, CA)は、ミオシン(Mr=218,000)、β-ガラクトシダーゼ(Mr=134,000)、ウシ血清アルブミン(Mr=84,000)、炭酸脱水酵素(Mr=44,000)、及びダイズトリプシンインヒビター(Mr=32,000)であった。
【0144】
フローサイトメトリー − 1-LN細胞を、10%ウシ血清を含有するRPMI 1640中で37℃で、接着単層として増殖した。細胞を、10mM EDTAを含有するCa2+及びMg2+-非含有PBSとの、37℃で5分間のインキュベーションにより剥離し、その後ペレット化した。細胞を、氷冷した染色緩衝液(フェノールレッド-非含有HBSS、1%BSA、0.1%NaN3)中で、濃度1 x 107細胞/mlで再浮遊した。これらの細胞浮遊液のアリコート(100μl)を、FITC-複合した抗-ヒトDPP IV、FITC-複合した抗-ヒトGPIIIa(β3)又はFTIC-複合したイソタイプ対照マウスモノクローナル抗体のいずれかの適宜希釈液と共に、90分間氷上でインキュベーションした。細胞-表面FAPαの分析のために、細胞は、最初に氷上で抗-FAPα mAb F19と共に90分間インキュベーションし、次にFITC-複合した抗-マウスIgGと共に更に90分間インキュベーションした。その後細胞を、氷冷した染色緩衝液で3回洗浄し、氷冷した10%ホルマリン中に再浮遊し、かつ暗所において4℃で、フローサイトメトリーによる分析時まで貯蔵した。波長408nmでの励起後の相対蛍光の平均を、FACScanフローサイトメーター(Becton-Dickinson社, Franklin Lakes, NJ)で、各試料について決定し、かつCELLQUES(商標)ソフトウェア(Becton-Dickinson社, Franklin Lanes, NJ)により解析した。
【0145】
RNA単離 − Pgにより誘導されたMMP-9 mRNAの変化を決定するために、1-LN細胞を、48ウェル培養プレート(1.7 x 106細胞/ウェル)において増殖し、各個別のPg2グライコフォームと共に24時間37℃でインキュベーションした。その後細胞単層を、血清-非含有RPMI 1640で2回洗浄し、かつ総RNAを、RNeach Miniキット(Qiagen社, Chatsworth, CA)を製造業者の指示に従い用い、単工程法で抽出した。
【0146】
逆転写-PCR(RT-PCR)によるMMP-9 mRNAレベルの測定 − 総RNAを、20μl反応混合液中1μgのRNAにより、M-MLV逆転写酵素(200U)及びオリゴd(T)をプライマーとして使用し、42℃で1時間逆転写した。得られたcDNA(5μl)を鋳型として用い、MMP-9 cDNAの212-bpセグメントを、ヒトMMP-9 mRNAの2079-2102位と同じ24-mer上流プライマー(5'-AGTTGAACCAGGTGGACCAAGTGG-3')、及び2270-2298位に相補的な29-mer下流プライマー(5'-AACAAAAAACAAAGGTGAGAAGAGAGGGC-3')を用いて増幅した[45]。グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH, 構成的内部対照)cDNAの600-bpセグメントを、ヒトGAPDH mRNAの212-235位と同じ24-mer上流プライマー(5'-CCACCCATGGCAAATTCCATGGCA-2')、及び786-809位に相補的な 24-mer下流プライマー(5'-TCTAGACGGCAGGTCAGGTCCACC-3')を用い、同時増幅した[46]。増幅は、Techne Thermal Cycler PHC-3で、28サイクル(1サイクル=94℃で45秒間、60℃で45秒間、及び72℃で45秒間)行った。PCR産物を、1.2%アガロース-臭化エチジウムゲル上で分析した。これらのゲルを写真撮影し、かつ個別のMMP-9及びGAPDH mRNAバンドの強度を、Molecular Dynamics Personal Densitometerを用い、レーザー密度走査により測定した。MMP-9 mRNAレベルの変化は、MMP-9 mRNA/GAPDH mRNAバンド強度の相対比として表わした。
【0147】
In Vitro侵襲アッセイ − Matrigel(登録商標)に侵襲する1-LN細胞の能力を決定することにより、in vitroにおける侵襲性の活性を評価した[47]。ポリカーボネートフィルター(孔径8-μm;Becton Dickinson社, Franklin Lakes, NJ)を、マトリゲル(12μg/フィルター)で被覆し、かつ修飾されたBoydenチャンバー内に配置した。細胞(1x105個)を、抗-DPP IV、抗-u-PA又は抗-MMP-9 IgGの存在又は非存在下で、血清-非含有RPMI 1640培地、又は精製したPg2グライコフォーム含有培地が入った上部チャンバーに添加し、かつ湿潤大気中で48時間インキュベーションした。インキュベーション後、侵襲していない細胞を、上部チャンバーから綿棒により除去し、かつフィルターを切出し、Cyto-Quik(商標)(Fisher Scientific社, Fair Lawn, NJ)で染色した。フィルターの下側表面上の細胞を、接眼マイクロメーターを用い、かつ5個の高検出力視野(high-powered field)の最低値を計測することで、数え上げた。各実験は、3つ組試料で2回行った。
【0148】
結果
単独のPg2グライコフォームの1-LNヒト前立腺腫瘍細胞への結合 − 125I-標識した単独のPg2グライコフォームの1-LN細胞への結合は、「実験手法」の項に説明したように決定した。天然のPg2は、それらのシアル酸含量が異なる6種類のグライコフォームを有する[24]。結合実験(図1)は、Pg2α、β、γ、δ及びε(各々、シアル酸1.3、2.2、2.95、5.77及び5.34mol/mol Pg)は、高親和性の用量依存的方法でかつ多数の部位へと1-LN細胞に結合することを示している(表1)。Pg2φ(シアル酸13.65mol/mol Pg)は、1-LN細胞へ結合しない。
【0149】
個別のPg2グライコフォームの1-LN細胞への結合機序を評価するために、本発明者らは、6-アミノヘキサン酸(6-AHA)及びL-乳糖の存在下での各グライコフォームと共にインキュベーションした細胞によるそれらの活性化を試験した。抗線維素溶解性アミノ酸6-AHAは、PgのL-リシン結合部位と、いくつかの細胞膜-会合成分の相互作用を妨害する[48,49]。L-乳糖は、Neu 5-AC (α2-3)又は(α2-6)残基のシアル酸結合タンパク質との結合を妨害し[50]、かつ天然のPg2のリウマチ性滑液線維芽細胞の細胞表面上のDPP IVへの結合を阻害する[20]糖である。漸増濃度の6-AHA存在下での、これらの細胞の、単独のPg2グライコフォームとのインキュベーションは、Pg2α及びPg2βの結合を阻害した(図2A)が、漸増濃度のL-乳糖は、Pg2γ、2δ及び2εの結合を阻害した(図2B)。まとめると、これらの実験は、Pg2α及び2βはそれらのL-リシン結合部位を介し1-LN細胞へ結合すること、並びにPg2γ、δ及びεはそれらの糖鎖を介して結合することを示唆している。Pg2グライコフォームの活性化は、抗-uPA抗体により阻害され、かつ抗-t-PA抗体により影響を受けず、このことは、u-PAが、1-LN細胞表面での主要なPgアクチベーターであることを示唆している(データは示さず)。
【0150】
フローサイトメトリーによるDPP-IV、β3、及びFAPα抗体の1-LN細胞表面への結合の分析 − 1-LN細胞は、「実験手法」の項に説明したように、蛍光標示式フローサイトメトリー(FACS)により分析した。これらの実験には、血小板GPIIIa(β3)抗原に特異的なmAb SZ21及びヒトDPP IVに特異的なクローン236.3を用いた。FITC-標識したIgGと反応した1-LN細胞のFACSにより決定されるように、細胞は抗-DPP IV抗体と反応するが(図3A)、細胞はそれらの表面上に検出可能なGPIIIa(β3)抗原を示さなかった(図3B)。リウマチ性滑液線維芽細胞において、インテグリンβ3は、PgのためのL-リシン結合部位受容体として働くのに対し、DPP IVはPgシアル酸受容体である[19,20]。1-LN細胞にβ3が存在しないことは、これらの細胞におけるPgについて異なるL-リシン結合部位を示唆している。
【0151】
DPP IVは、上皮癌の反応性間質線維芽細胞並びに悪性骨及び軟組織肉腫細胞において選択的に発現された細胞表面抗原[52]は、ヒト線維芽細胞活性化タンパク質a(PAPα)とアミノ酸配列同一性を48%共有した[51]。DPP IV及びFAPαは、アミノ酸配列LQWLRRを共有し[51]、これはリウマチ性滑液線維芽細胞DPP IVは、Pg糖鎖の結合部位として働くので[20]、本発明者らは、1-LN細胞表面上のFAPαの発現を調べた。本発明者らは、FAPαに特異的であるが、DPP IVとは交差反応性でないmAb F19を使用した[52,53]。1-LN細胞はmAb F19と反応し、その後FACSで分析し、それらの表面上に検出可能なFAPαが存在しないことを示した(図3C)。
【0152】
1-LN細胞膜から単離した固定したDPP IVへのPg2グライコフォームの結合 − 一旦Pg受容体として同定された、1-LN細胞膜由来のDPP IVは、「実験手法」の項に説明したように、均質に精製した。これらのタンパク質の電気泳動分析を、図4Aに示している。電気泳動した物質のクーマシーブリリアントブルーR-250染色(図4A, 挿入図:レーン1)は、Mr〜120,000サイズ範囲の主要タンパク質バンドを示している。mAbクローンとのブロット結合アッセイは、Mr〜120,000サイズ範囲である。DPP IVに特異的なmAbクローン236. 3とのブロット結合アッセイ[26]は、Mr〜120,000タンパク質バンドとのみ反応性があることを示している(図4A, 挿入図:レーン2)。細胞培養プレート上のDPP IV固定及びPg2グライコフォームの結合アッセイは、「実験手法」の項に説明したように行った。Pg2γ、δ及びεのみが、このDPP IVへ、用量依存的かつ飽和可能な様式で結合している(図4A)。Pg2α、β及びφとの特異的結合は、認められなかった。漸増濃度のL-乳糖存在下での個別の125I-標識したPg2γ、2δ及び2εの各々(各0.1μM)のDPP IVへの、結合は、漸進的に阻害され(図4B)、このことは、Pgシアル酸残基が、この相互作用に関連していることを示唆している。Pg2γ、δ及びεは、65%を超えるPg2グライコフォーム分布を説明しかつPg2φは結合できないので(表1)、これらの結果は、DPP IVは、1-LN細胞において主要なPg2受容体であることを示唆している。
【0153】
1-LN細胞表面上に結合しているPg2グライコフォームに対する[Ca2+]i反応 − 本発明者らは、各個別のPg2グライコフォームの1-LN細胞表面への結合後の[Ca2+]iの変化を測定した。Pg2α及びβは、いかなる変化も生じなかった(各々、図5A及び5B)。しかし、Pg2γ、δ又はεの結合は、[Ca2+]iの反応を誘起した(各々、図5C、5D及び5E)。Pg2φでは反応は認められなかった(図5F)。同様に、細胞は、高度にシアル化されたグライコフォーム(Pg2γ、2δ、及び2ε)を添加する前に、酵素活性を阻害する抗-u-PA IgG又は抗-β IgG(100μg/ml)と共に37℃で1時間インキュベーションした。いずれの細胞集団も、それらの[Ca2+]i反応において大きな変化を示さなかった(データは示さず)。しかし、Pg糖鎖のDPP IVとの相互作用を妨害する[24]L-乳糖(100mM)は、Pg2γ、δ、又はεにより誘導された反応を阻害することができる(各々、図5G、5H及び5I)。[Ca2+]i反応の同様の阻害(データは示さず)が、細胞がこれらのグライコフォーム添加前に抗-DPP IV mAb 236.3(50μg/ml)と共にプレインキュベーションされた場合に認められた。これらの結果は、先に報告された知見と一致し、このことは、[Ca2+]i反応が、高度にシアル化されたグライコフォーム(Pgγ、δ及びε)と細胞表面上のDPP IVの間の直接の相互作用の結果であり、Pg活性化を必要としないということを示唆している。
【0154】
Pgの1-LN細胞によるMMP-9発現に対する作用 − 細胞を、48-ウェル培養プレートに播種し、かつ10%ウシ胎仔血清を含有するRPMI 1640中において増殖した。その後集密な単層を、RPMI 1640及び0.5%ウシ胎仔血清を含有する静止期培養培地と共に24時間インキュベーションした。各個別のPg2グライコフォーム(0.1μM)を、3つ組の細胞単層に、血清-非含有RPMI 1640の300μl中で添加し、かつ37℃で24時間インキュベーションした。培養培地を収集し、「実験手法」の項に説明したように、MMP-9の分泌を測定した。個別のPg2グライコフォームの存在下で1-LN細胞により培地に分泌されたMMP-9の分析の前に、本発明者らは、Masureらの技法[42]により、馴化培地(5L)からMMP-9を精製した。精製したMMP-9の分析は、図6に示した。精製したタンパク質の電気泳動分析は、Mr〜85,000タンパク質の大きいバンド及びMr〜95,000タンパク質の小さいバンドを示した(図6, レーン1)。抗-MMP-9 mAbによる電気ブロット分析は、この抗体のMr〜85,000及び95,000タンパク質との反応を示している(図6, レーン2)。これらのタンパク質のゼラチンサイモグラフィーは、Mr〜85,000タンパク質との会合における活性のみを示している(図6, レーン3)。アミノ-末端配列分析は、活性MMP-9のアミノ-末端配列に相当する、配列EQTFEGDL[42]を明らかにした。Mr〜95,000タンパク質の同様の分析は、proMMP-9のアミノ-末端配列に相当する、配列APRQRQを得た。これらの結果は、1-LN細胞により培養培地へと分泌されたMMP-9のほとんどは、活性型であることを示唆している。次に本発明者らは、精製されたMMP-9をゼラチンザイモグラフィーによる定量のための標準として使用し、血清-非含有培養培地において個別のPg2グライコフォームと共にインキュベーションした1-LN細胞により培地へ分泌されたMMP-9の分析に進んだ。これらの分析は(図7A)を、Mr〜85,000の活性タンパク質の大きいバンドを示した。このタンパク質の定量(表II)は、Pg2εと共にインキュベーションした1-LN細胞により分泌された活性MMP-9は、他のPg2グライコフォーム又は培養培地と共にインキュベーションされた細胞と比較した場合に、3-倍の刺激を示した(p<0.001)。これらの馴化培地の試料も、還元条件下でSDS-PAGEを施し、ニトロセルロース膜にブロットし、その後抗-MMP-9 mAbと反応した(図7B)。これらの試験は同じく、Pg2εのみが、MMP-9産生を刺激することも示唆している。6-AHA(100mM)及び個別のPg2グライコフォームと同時にインキュベーションされた細胞は、対照と比較した場合に、MMP-9の産生において大きな変化を示さなかった(表II)。L-乳糖(100mM)の存在下各個別のPg2グライコフォームと共にインキュベーションした細胞の馴化培地のザイモグラム(図7C)は、各Pg2グライコフォームに関するMMP-9産生の平均的減少を示したが、Pg2ε以外は、MMP-9産生の1/12の減少を示し(p<0.0001)(表II)、抗-MMP-9 mAbと反応した電気ブロットでは、ほぼ検出不能レベルであった(図7D)。抗-DPP IV mAb 236.3及びPg2εと同時インキュベーションした細胞によるMMP-9産生の1/4の減少(p<0.001)(表II)が、馴化培地において明らかに認められる(各々図8A及び8Bのレーン6)。
【0155】
MMP-9 mRNAレベルの相対変化の測定(図9)は、Pg2εと共にインキュベーションした細胞におけるMMP-9 mRNAの発現の有意な増加を示している。しかしPg2α、2β、2γ、又は2δグライコフォームと共にインキュベーションした細胞は、血清-非含有培地のみと共にインキュベーションした対照細胞と比較した場合に、それらの相対mRNAレベル(MMP-9 mRNA/GAPDH mRNAの比)の有意な変化を示さなかった。Pg2ε及び結合阻害性抗-DPP IV IgGと同時インキュベーションした細胞は、血清-非含有培地のみと共にインキュベーションした対照細胞と比較した場合に、それらの相対MMP-9 mRNAレベルの変化を示さなかった。まとめると、これらの結果は、Pg2εは、MMP-9の発現を有意に刺激するのみではなく、その活性化にも関与していることを示唆している。
【0156】
Pgの1-LN細胞侵襲に対する作用 − Pgは、前立腺癌PC-3及びDU-145細胞株が、合成基底膜マトリゲル(登録商標)に浸潤する能力を増強する[54]。PgがMMP-9の分泌を介して侵襲を調節するかどうかを決定するために、1-LN細胞を、精製したPg2グライコフォームの存在下で、様々な阻害抗体と共にインキュベーションした。表IIIは、Pg2εが、細胞侵襲を6〜7-倍増強することを示している。Pg2εの酵素活性を阻害する抗-u-PA又は抗-MMP-9との同時インキュベーションは、ほぼ検出不能なレベルへと侵襲を減少した。同様の結果が、Pg2ε及び抗-DPP IV IgGと同時インキュベーションした細胞において認められた。これらの結果は更に、Pg2εは、MMP-9の発現を刺激するその能力の結果の作用である、1-LN細胞侵襲活性を有意に増強する唯一のグライコフォームであることを明らかにしている。
【0157】
考察
ECM成分の分解は、腫瘍侵襲及びリウマチ様関節炎を含む、様々な組織リモデリングプロセスにおいて生じる。線維素溶解システム及びMMPを必要とする複雑な機構は、腫瘍間質生成及びリウマチ様関節炎における血管パンヌス発生を支配する[55]。両方の異常において、Pg活性化システム及びMMPの産生はアップレギュレーションされ、リウマチ様関節炎における関節破壊及び播種性癌細胞による基底膜浸潤の両方に寄与するECM成分の分解につながる[55,56]。これらの理由のために、本発明者らは、同様のPg受容体が、同じくヒト前立腺癌細胞中に存在する可能性、並びにこれらがMMP-9の発現及び活性化の調節に関与している可能性を調べた。本発明者らは、高度に侵襲性の1-LNヒト前立腺腫瘍細胞株[57]を試験し、その理由は、これらの細胞は、u-PA及びMMPを大量に合成しかつ分泌するからである[17]。本発明者らは、リウマチ性滑液線維芽細胞とは異なり、膜糖タンパク質DPP IVに会合したβ3インテグリンは認めなかった。本発明者らの知見は、表IVにまとめている。より少なくシアル化されたPg2α及びPg2βは、これらの細胞へ、L-リシン結合部位を介して結合し、これらは、[Ca2+]i反応を誘起せず、かつこれらはMMP-9の分泌又は発現に関与しない。Pg2γ、Pg2δ、及びPg2εは、DPP IVに、それらのシアル酸残基を介して結合し、かつ[Ca2+]i反応を誘導する[20];しかし、Pg2εのみは、MMP-9の発現及び分泌を誘導することができる。滑液線維芽細胞中の[Ca2+]i反応は、Pgのインテグリンβ3への結合及びそれらのDPP IVとの相互作用前のu-PAによる活性化を必要としている[19,20]のに対し、1-LN細胞においては、PgのDPP IVとの直接反応が同様の反応を誘導する。1-LN細胞上のPg2α及び2βのL-リシン依存型受容体の同一性はまだ不明である;しかし、その調節部位としての可能性のために、本発明者らは、その同一性を現在研究している。
【0158】
循環血中において、Pg2濃度は、Pg1よりも2-倍大きい;しかし、血管外空隙において、Pg2の濃度は、Pg1よりもほぼ6-倍大きい[58]。Pg1は、Thr-345に1個のO-グリカン及びAsn-288に1個の二分岐のN-グリカンを含むのに対し、Pg2は、O-グリカン鎖のみを含む[59,60]。Pg1活性化は、u-PA又はt-PAのいずれかによりフィブリンの存在下で、Pg2の場合よりも増強され[61]、このことは、血管内空隙におけるPg1の好ましい役割を示唆している[58]。細胞外空隙におけるPg2のPg1に対する比のシフトは、細胞表面での代謝時のPm形成の好ましい形としての、Pg2グライコフォームの重要な役割を示唆している[62]。この状況において、Pg2εは、細胞表面において優先的に機能するはずであり、そこでその糖含量、一般にはシアル酸含量は、その機能の調節において特に重要な役割を果たし得る。
【0159】
Pg2δ及び2εは、ほぼ同量のシアル酸(シアル酸5.77及び5.34mol/mol Pg)を含有する。しかし、Pg2εのpIはより酸性であるので[24]、このことはMMP-9の発現を誘導するその能力にとって重要であり得るようなその構造の追加の二次的修飾を示唆している。このPg2εのpIのシフトは、Pg分子のリン酸化に関連しているかもしれない[63]。この状況において、Tyr及びSerリン酸化に随伴したu-PAのpIの9.2から7.6へのシフトは、転移性腫瘍細胞におけるpp60 src及びプロテインキナーゼCの活性化に関連している[64.66]。しかし、Pg及びu-PAリン酸化に関与したキナーゼ又はこれらのタンパク質により発揮される複数の生物学的機能におけるそれらの役割に関する入手可能なデータはない。
【0160】
1-LN細胞のPg-媒介型侵襲活性は、u-PA又はMMP-9の酵素活性を阻害するmAbにより、効果的にブロックされ、このことは、腫瘍細胞微小環境中のPmが、ECM成分の直接のタンパク質分解によるか[13,67]、又は細胞表面に結合したproMMP-9の活性化能によるか[5]のいずれかにより、侵襲活性を増強することができることを示唆している。標的化されたt-PA、u-PA又はPg遺伝子の不活性化を伴うマウスにおける最近の研究は[68]、proMMP-9活性化が、t-PA又はu-PAの非存在下でも生じるのに対し、活性MMP-9は、Pgの非存在下では検出されないことを示している。Pgがこの状況において活性化されることの機序は不明である。本発明者らの試験は、Pgは、それのフィブリンを分解するPmの生成能によるのみではなく、それがMMP-9の発現及び活性化を刺激することにもより、細胞移動に影響を及ぼすことを明らかにした。
【0161】
CD26として知られているT細胞にDPP IVが作用する複数の機能[69]に加え、この糖タンパク質は、ラットの乳癌細胞による肺転移を媒介する内皮細胞接着分子であることもわかっている[70]。A2058ヒトメラノーマ癌細胞によるMMP-2及びMMP-9の発現も、受容体-操作したCa2+流入により独立して調節されるが、特異的生理的リガンドは同定されていない[23,71,72]。本発明者らの結果は、DPP IVをPg活性化酵素システム及びMMP-9発現とを関連づける新規証拠を提供しており、かつPgが、細胞外環境においてMMP-9を調節する生化学的機序を示唆している。
【0162】
参考文献
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0163】
脚注:
1 使用した略号:ECM、細胞外マトリックス;MMP、マトリックスメタロプロテイナーゼ;Pg、プラスミノーゲン;Pm、プラスミン;Pg1、1型プラスミノーゲン;Pg2、2型プラスミノーゲン;DPP IV、ジペプチジルペプチダーゼIV(CD26);u-PA、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター;uPAR、u-PA受容体;t-PA、組織型プラスミノーゲンアクチベーター;mAb、モノクローナル抗体;FAPα、線維芽細胞活性化タンパク質α;HBSS、ハンクス平衡化塩溶液;Fura-2/AM、1-[2-(5-カルボキシオキサゾール-2-オキシル)-6-アミノベンゾフラン-5-オキシル]-2-(2'-アミノ-5-メチルフェノ-キシエタン)-N,N,N',N'-四酢酸アセトキシ-メチルエステル;6-AHA、6-アミノヘキサン酸;L-lac、L-乳糖;APMA、p-アミノフェニルメルクリ酢酸;SDS、ドデシル硫酸ナトリウム;PAGE、ポリアクリルアミドゲル電気泳動;FACS、蛍光標示式細胞分別器;RT-PCR、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応。
【0164】
【表1】
【0165】
1 96ウェルストリップ培養プレート中の1-LN細胞単層(2.0 x 104細胞/ウェル)を、漸増濃度の125I-標識したPg2グライコフォームの存在下で、血清-非含有RPMI 1640と共にインキュベーションした。このアッセイ及びPgグライコフォームの分布及び計算並びに結合パラメータは、「実験手法」の項に説明したように行った。示したデータは、3つ組で行った実験から、平均±SDで表わした。
【0166】
【表2】
【0167】
1 48ウェルストリップ培養プレート中の1-LN細胞単層(1.7 x 104細胞/ウェル)を、精製したPg2グライコフォームの非存在又は存在下で、血清-非含有RPMI 1640と共に、容量0.3ml、37℃で24時間、インキュベーションした。天然のPg2の、6-AHA(100mM)、L-乳糖(100mM)又はアプロチニン(1μM)の存在下での作用も評価した。抗-DPP IV IgG及び抗-u-PA IgGを、各々、最終濃度50及び100μg/mlで使用した。培地を収集し、かつアリコート(50μl)を、活性MMP-9についてアッセイした。値は、3回の個別の実験から、平均±SDで表わした。平均間の統計学的有意差は、スチューデントt-検定により評価した。2 nd:決定されず。
【0168】
【表3】
【0169】
1 1-LN細胞(細胞密度1 x 105)を、「実験手法」の項に説明したように、精製したPg2グライコフォーム(0.1μg)の非存在又は存在下で、マトリゲルで被覆した(12μg/フィルター)8-μm孔のフィルターを備えた、変更型Boydenチャンバーに加えた。抗-DPP IV IgG、抗-uPA IgG又は抗-MMP-9 IgGを、各々最終濃度50、100、及び20μg/mlで使用した。37℃で24時間インキュベーションした後、フィルターを切出し、非侵襲細胞を、膜の表面から除き、Cyto-Quik(商標)で染色し、かつ侵襲している細胞を、接眼マイクロメーターを用い数を数え、かつ5個の高検出力視野の最小値を計測した。データは、3つ組で行った実験から、平均±SDで表わした。2 nd:決定されず。
【0170】
【表4】
【0171】
先に引用した文書は全て、それらの全体が本願明細書に参照として組入れられている。前述のことから、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限りは、前述の方法、及び組成物の様々な修飾を行うことができることは、当業者には明かであろう。従って、本発明は、その精神又はそれらの特徴的本質から逸脱しないその他の具体形の態様であっても良い。従って、本態様及び実施例は、全ての点で例証であり、限定ではないとみなされるべきであり、その結果、「特許請求の範囲」と同等の意味及び範囲に収まるあらゆる変更は、本発明内に包含されることが意図されている。本願明細書に引用された全ての文書は、本願明細書に参照として組入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、個別のPg2グライコフォームの1-LNヒト前立腺腫瘍細胞への結合である。漸増濃度の125-I標識したPg2α(○)、Pg2β(●)、Pg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、Pg2ε(□)、又はPg2φ(黒四角)を、1-LN細胞へ添加した。リガンド結合した分子は、「実験手法」の項に説明したような、50-倍過剰な非標識リガンドの存在下で測定した非-特異的結合を減算した後、算出した。データは、3つ組で行われた実験の平均±SDを表わしている。
【0173】
【図2】図2は、個別のPg2グライコフォームの1-LN細胞への結合の阻害である。(A)細胞は、血清-非含有のRPMI 1640中で、単一濃度(0.1μM)の125-I標識したPg2α(○)、Pg2β(●)、Pg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、又はPg2ε(□)と、漸増濃度の6-AHAと共にインキュベーションした。(B)細胞は、血清-非含有のRPMI 1640中で、単一濃度(0.1μM)の125-I標識したPg2α(○)、Pg2β(●)、Pg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、又はPg2ε(□)と、漸増濃度のL-乳糖と共にインキュベーションした。データは、3つ組で行った実験の平均±SDを表わしている。
【0174】
【図3】図3は、1-LN細胞の蛍光標示式細胞分取器分析である。(A)細胞は、FITC-複合した抗-ヒトDPP TVマウスmAb(実線)又はFTIC-複合したイソタイプ対照マウスMab(点線)と共にインキュベーションした。(B)細胞は、FTIC-複合した抗-ヒトGPIIIa(β3)マウスMab(実線)又はFTIC-複合したイソタイプ対照マウスMab(点線)と共にインキュベーションした。(C)細胞は、抗-ヒトFAPα、Mab F19、引き続きFTIC-複合した抗マウスIgG(実線)又はFTIC-複合したイソタイプ対照マウスMab(点線)と共にインキュベーションした。
【0175】
【図4】図4は、個別のPg2グライコフォームの、1-LN細胞膜から単離された固定されたDPP IVに対する結合である。(A)96-ウェルプレートを、1-LN細胞膜由来のDPP IV(1μg/ml)で被覆した。漸増濃度の125-I標識したPg2α(○)、Pg2β(●)、Pg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、Pg2ε(□)、又はPg2φ(黒四角)を、3つ組のウェルに添加し、かつ22℃で1時間インキュベーションした。結合したPgを、「実験手法」の項に記されたように定量した。データは、3つ組で行われた実験の平均±SDで表わしている。差し込み図は、還元条件下での、精製したDPP IV(5μg)の10%SDS-PAGEである。レーン1、クーマシーブリリアントルブーR-250染色したゲル;レーン2、抗-DPP IV IgG(mAb 236.3)とインキュベーションし、その後アルカリホスファターゼ-複合した二次IgGと反応したブロット。(B)漸増濃度のL-乳糖による、125-I標識したPg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、Pg2ε(□) (0.1μM)の、固定したDPP IVへの結合阻害。結合したPgは、「実験手法」の項に記されたように定量した。
【0176】
【図5】図5は、個別のPg2グライコフォームの結合に対する1-LN細胞の[Ca2+]i反応である。細胞は、Fura-2/AMの4μMに、37℃で20分間予備負荷し、[Ca2+]iの変化を、「実験手法」の項に記されたように測定した。矢印は、個別のPg2グライコフォーム(0.1μM)の添加時点を示している。(A)Pg2αによる刺激。(B)Pg2βによる刺激。(C)Pg2γによる刺激。(D)Pg2δによる刺激。(E)Pg2εによる刺激。(F)Pg2φによる刺激。(G)L-乳糖(100mM)の存在下でのPg2γによる刺激。(H)L-乳糖(100mM)の存在下でのPg2δによる刺激。(I)L-乳糖(100mM)の存在下でのPg2εによる刺激。
【0177】
【図6】図6は、1-LN細胞馴化培地から精製したMMP-9の分析である。タンパク質試料(5μg)を、「実験手法」の項に記されたように、連続10%SDS-ポリアクリルアミドゲルにおいて分解し、及びニトロセルロース膜上に電気ブロッティングした。レーン1、クーマシーブリリアントルブーR-250ブルー染色したゲル。レーン2、抗-MMP-9mAbと共にインキュベーションした電気ブロット。レーン3、タンパク質のゼラチン分解(gelatinolytic)活性。主要タンパク質バンドのアミノ-末端配列は、レーン1の左側に示している。
【0178】
【図7】図7は、Pg2グライコフォームの1-LN細胞によるMMP-9の発現に対する作用である。48ウェル培養プレート中の単層細胞(1x106個細胞/ウェル)を、精製したPg2グライコフォーム(0.1μM)の存在又は非存在下で、血清-非含有RPMI 1640と共に、容量0.3ml、37℃で24時間インキュベーションした。ウェスタンブロット分析による、馴化培地でのMMP-9のザイモグラム及び同定の両方は、「実験手法」の項に記されたように行った。(A)各個別のPg2グライコフォームとインキュベーションした細胞の馴化培地(50μl)のザイモグラフ分析。(B)各個別のPg2グライコフォームとインキュベーションした細胞の馴化培地(50μl)のウェスタンブロット。(C)L-乳糖(100mM)の存在下で各個別のPg2グライコフォームとインキュベーションした細胞の馴化培地(50μl)のザイモグラフ分析。(D)L-乳糖(100mM)の存在下で各個別のPg2グライコフォームとインキュベーションした細胞の馴化培地(50μl)のウェスタンブロット分析。各個別のPg2グライコフォームは、各レーンを基に同定した。
【0179】
【図8】図8は、抗-DPP IV IgGの高度にシアル化されたPg2グライコフォームにより誘導されたMMP-9 の発現に対する作用である。48ウェル培養プレート中の単層細胞(1.7x106個細胞/ウェル)を、個別のPg2グライコフォーム(0.1μM)の抗-DPP IV(50μl/μl)存在又は非存在下で、血清-非含有RPMI 1640と共に、容量0.3ml、37℃で24時間インキュベーションした。(A)抗-DPP IV IgGの非存在(各々、レーン1、2、及び3)又は存在(各々、レーン4、5及び6)下での、Pg2γ、Pg2δ又はPg2εと共にインキュベーションした細胞からの馴化培地(50μl)のザイモグラフ分析。(B)抗-DPP IV IgGかつ高度にシアル化されたPg2γ、Pg2δ又はPg2εと共にインキュベーションした細胞からの馴化培地のウェスタンブロット分析。これらのブロットは、抗-MMP-9 IgGと反応した。各個別のPg2グライコフォームは、各レーンを基に同定した。
【0180】
【図9】図9は、Pgは、培養された1-LN細胞におけるMMP-9 mRNA発現を誘導することである。48ウェル培養プレート中の1=LN細胞の単層(1.7x106個細胞/ウェル)を、各個別のPg2グライコフォーム(0.1μM)と共に、血清-非含有RPMI 1640と共に、容量0.3ml、37℃で24時間インキュベーションした。総細胞質RNAの単離及びRT-PCRによるMMP-9 mRNAの測定は、「実験手法」の項に記されたように行った。臭化エチジウム染色したゲルを写真撮影し、かつレーザーデンシトメーター走査により分析した。MMP-9 mRNAレベルは、MMP-9 mRNA/GAPDH mRNA比に関連して発現された。値は、各々2つ組で行われた3回の個別の実験の平均±SDで表わしている。
【0001】
(発明の技術分野)
本出願は、概して転移を阻害する組成物及び方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
腫瘍細胞の侵襲性の挙動を示す能力は、細胞が存在している基底膜の病巣性の分解を提供する機構の活性化に関連している。これらの機構は、新規受容体の発現に関連し、これは、基底膜の成分が正常細胞の生理を発揮する厳密な調節から腫瘍細胞が逃れることを可能にすることに加え、これらは、免疫適格細胞の攻撃からの防御を提供し、これによりそれらの循環中での生存を確実にする。このような受容体のひとつは、ジペプチジルペプチダーゼIV(CD26/DPP IV)である。
【0003】
CD26/DPP IVのほとんどの機能特性は、Tリンパ球において説明されており、ここではこの分子は、その細胞外ドメイン内でCD45と物理的に会合しており、かつアデノシンデアミナーゼ(ADA)の受容体として働くことができ、これら両方共、T細胞活性化及びシグナル伝達の期間に重要であることができる[1-3]。CD26/DPP IVのADAとの会合は、その過剰がリンパ球にとって有毒であるようなアデノシンの迅速な代謝を可能にするのみではなく、更にその表面にCD26/DPP IVを発現している組織又は細胞へのT細胞の付着のためのドッキングタンパク質として働くこともできる[4]。
【0004】
CD26/DPP IVは、リンパ系組織を除き、ほとんどのヒト組織の血管内層において認められ[6]、そこで末梢血管壁へのフィブリンクロットの付着を防止することにより、凝血のダウンレギュレーションにおいて重要な役割を果たしていると仮定されている[6]。肝において、この分子は、組織の破壊及び再生のプロセスに関与している[7]。腎においてこの分子は、専ら糸球体において認められる[7]。肺内皮において、CD26/DPP IVは、肺転移性のラットの乳癌細胞及び前立腺癌細胞の接着分子である[8]。
【0005】
通常Tリンパ球に関連しているタンパク質を欠いている組織におけるCD26/DPP IVの生理的役割は、肝癌細胞株において集中的に研究されている[9]。これらの細胞の抗-CD26 mAbによる刺激は、アポトーシスを誘導する[9]。対照的に、CD26-Jurkat T細胞の同じmAbによる同様の刺激は、これらの細胞を、ヒト免疫不全ウイルス感染後に、アポトーシスから保護し[10]、このことは細胞生理へのCD26/DPP IVの寄与は、複合受容体含量により左右され、かつ異なる細胞型においては異なる機能を発揮することを示唆している。
【0006】
ヒトリウマチ性滑液線維芽細胞[11]及び前立腺癌細胞株1-LN、PC-3及びDU-145[12]において、CD26/DPP IVは、プラスミノーゲン(Pg)の受容体であり、かつウロキナーゼ型(urinary-type)プラスミノーゲンアクチベーター受容体(uPAR)と同時局在される[11,12]。Pgは、この受容体へ、そのオリゴ糖鎖を介し、DPP IV一次配列L313QWLRRIを含むペプチドに結合している[13]。CD26/DPP IVは、フィブロネクチン(FN)受容体でもある[14]。FNの結合は、FN一次配列L1768TSRPAを含むポリペプチドにより媒介される[15]。
【0007】
腫瘍転移を阻害するために利用可能な療法の蓄積に加えるために、新規組成物及び方法を有することは、利点であろう。このような組成物及び方法を同定するための新規方法を有することも利点であろう。本発明は、このような組成物及び方法を提供する。
【発明の開示】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、腫瘍転移を阻害するための化合物、組成物及び方法に関し、かつアンギオスタチンは、プラスミノーゲンがCD26に結合することを阻害する方法でCD26に結合し、かつそのように結合した場合、MMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害するという発見から生じる。本発明は更に、ADAによるアデノシン脱アミノ化を阻害する組成物及び方法にも関する。
【0009】
ひとつの態様において、これらの化合物は、プラスミノーゲンのCD26への結合能を阻害する方法でCD26に結合する(CD26アンタゴニスト)。そのように結合した場合、これらはMMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードも阻害する。
【0010】
別の態様において、これらの化合物は、そうでなければCD26に結合するであろうプラスミノーゲン上のオリゴ糖鎖に結合する(プラスミノーゲンアンタゴニスト)。その後結合したオリゴ糖鎖は、CD26への結合が阻害され、これもMMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害する。
【0011】
第三の態様において、これらの化合物(ADAアンタゴニスト)は、ポリペプチドL340VARを含むCD26/DPP IV一次領域、又はこの領域を立体的に妨害する位置に結合する。ポリペプチドL340VARは、アデノシンデアミナーゼ(ADA)への結合に寄与する。このポリペプチドがADAアンタゴニストにより結合された場合、これらの細胞は、アデノシンの細胞傷害性作用に曝され、かつADAが循環血中腫瘍細胞と血管壁に内層するCD26/DPP IVの間の可能性のあるアンカーとして働くことが妨げられる。
【0012】
これらの化合物は、例えば、抗体、抗体断片、酵素、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドのような核酸、又は小分子であることができる。これらの抗体は、例えば、モノクローナル、ヒト化(キメラ)又はポリクローナル抗体であることができ、かつ、例えば通常の技術を用いて調製することができる。これらの化合物は、様々な細胞傷害性物質及び/又は標識した化合物へ結合することができる。
【0013】
これらの化合物は、様々な組成物、例えば、静脈内、筋肉内、外用、局所的、腹腔内、又は他の投与形に適した組成物に含まれることができる。これらは、毛細血管床に留まり続けかつ所望の位置でこれらの化合物を放出する適当なサイズの微粒子又はリポソームにこれらを組込むことにより、毛細血管床を標的化することができる。
【0014】
これらの方法は、転移性腫瘍を治療するために使用することができる。これらの方法は、適当な抗-転移性化合物(すなわち、CD26アンタゴニスト、アンギオスタチンアロステリックプロモーター、プラスミノーゲンアンタゴニスト、及び/もしくはADAアンタゴニスト)並びに/又はこれらの化合物を含有する組成物を有効量、治療を必要とする患者に投与することに関連している。
【0015】
スクリーニング法を用い、これらの方法に有用な化合物を同定することができる。これらのスクリーニング法は、CD26及び/又はプラスミノーゲンに結合する化合物、特にプラスミノーゲン結合部位(L313QWLRRI)及び/又はADA結合部位(L340VAR)に、又はこれらの部位を立体的に妨害する位置に結合する化合物を同定することに加え、一旦結合した化合物の活性を決定することができる。
【0016】
化合物のコンビナトリアルライブラリー、例えば、ファージディスプレイペプチドライブラリー、小分子ライブラリー及びオリゴヌクレオチドライブラリーをスクリーニングすることができる。CD26又はプラスミノーゲンに結合する化合物は、例えばアフィニティー結合試験を用い、又は当業者に公知のその他のスクリーニング技術を用い、同定することができる。CD26又はプラスミノーゲンに一旦結合した化合物の作用は、例えばCD26へのプラスミノーゲン結合、MMP-9合成、アデノシンデアミナーゼ機能、1-LN細胞によるマトリゲル侵襲の阻害のレベル、並びに腫瘍転移の程度を評価することにより決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
下記説明は、本発明を実行する最良の現在企図された様式を含んでいる。この説明は、本発明の一般的原理を例証することを目的として作成されており、限定の意味を持つものではない。
【0018】
腫瘍転移を促進又は阻害する及び/又はADAによるアデノシン脱アミノ化を阻害する化合物、組成物及び方法が、明らかにされている。ひとつの態様において、これらの化合物は、プラスミノーゲンのCD26に結合する能力を阻害する方法で、CD26に結合している(CD26アンタゴニスト)。そのように結合した場合、これらは、MMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードも阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害する。
【0019】
別の態様において、これらの化合物は、そうでなければCD26へ結合するプラスミノーゲン上のオリゴ糖鎖に、又はCD26のプラスミノーゲンとの結合を立体的に妨害するプラスミノーゲン上の他の位置に結合する(プラスミノーゲンアンタゴニスト)。プラスミノーゲンのCD26との結合の阻害により、MMP-9の発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードも阻害される。
【0020】
第三の態様において、これらの化合物は、ポリペプチドL340VARを含むCD26/DPP IV一次領域に結合し、これは、アデノシンデアミナーゼ(ADA)への結合に寄与し、かつそのように結合した場合に、この細胞を、アデノシンの細胞傷害性作用に曝し、かつADAが循環血中腫瘍細胞と血管に内層するCD26/DPP IVの間の可能性のあるアンカーとして働くことを妨げる(ADAアンタゴニスト)。
【0021】
更に、MMP-9の形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害する様式でCD26に結合する化合物に加え、アンギオスタチンのCD26に結合する能力を増強する化合物(アンギオスタチンアロステリックプロモーター)を同定するためのスクリーニング法が明らかにされている。このような化合物がCD26、特にプラスミノーゲン及び/又はADA結合部位に結合するかどうかを決定する方法も明らかにされている。CD26結合を阻害する様式でプラスミノーゲンに結合する化合物を同定することに加え、ADAへの結合に寄与するポリペプチドL340VARに結合する化合物を同定するスクリーニング法も明らかにされている。
【0022】
本発明は、アンギオスタチンは、CD26に結合し、かつこの結合により、MMP-9を形成するCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害すること、並びにポリペプチドL340VARを含むCD26/DPP IV一次領域は、ADAへの結合に寄与するということの発見を基にしている。CD26及び/又はプラスミノーゲンに結合する化合物並びに同じくCa2+シグナル伝達カスケードを阻害する化合物も、腫瘍転移を阻害する。ポリペプチドL340VARに結合する化合物又はポリペプチドL340VARのADAとの相互作用を立体的に妨害する部位に結合する化合物は、腫瘍細胞を、アデノシンの細胞傷害性作用に曝し、かつADAが循環血中腫瘍細胞とCD26/DPP IVの間のアンカーとして働くことを妨害する。
【0023】
プラスミノーゲン(Pg)のヒト前立腺癌1-LN細胞表面のCD26/DPP IVへの結合は、ゲラチナーゼB(MMP-9)の合成及び分泌を媒介するCa2+シグナル伝達カスケードを開始する[12]。このプロセスは、マトリゲルで被覆された膜の1-LN細胞侵襲能を促進する。しかし、「実施例」の項においてより詳細に考察されるように、これらの細胞が、Pgと共に、PgのDPP IVとの相互作用を妨害する抗-DPP IVモノクローナル抗体(mAb)の存在下でインキュベーションされる場合、1-LN細胞によるマトリゲルの侵襲は、完全に廃止される。同様の阻害作用は、Pgオリゴ糖鎖のCD26/DPP IVへの結合を妨害する糖であるL-乳糖の存在下で、細胞がPgと共にインキュベーションされる場合にも認められる。これらの両実験において、侵襲活性の欠如は、これらの細胞によるMMP-9の発現の低下に相関していた。
【0024】
血管新生、腫瘍増殖及び転移の強力なインヒビターである、Pgのポリペプチド断片を含有するクリングルであるアンギオスタチン[18-19]により行われた実験も、同じく1-LN細胞によるマトリゲル侵襲の総合的阻害を生じた。同様に、FNペプチドL1768TSRPAは、1-LN細胞によりPg-誘導されたマトリゲル侵襲を、用量依存的方式で阻害した。まとめるとこれらの実験は、1-LN前立腺癌細胞の侵襲能におけるCD26/DPP IVの中心的役割を示唆している。
【0025】
これらの知見は、診断道具として有用なのみではなく、治療戦略の有効性の決定においても有用である。これらの戦略は下記の判定基準を含む:
1.CD26/DPP IVへのPg結合を妨害する物質、特にPgオリゴ糖鎖の付着部位である、一次配列L313QWLRRIに結合する化合物の開発。これらの化合物は、mAb又はこのポリペプチドの結合が可能である他の化合物、例えばPgにおいて認められるものと類似しているオリゴ糖のいずれかであることができる。両方の場合において、その相互作用は阻害され、その結果、MMP-9発現につながるCa2+シグナル伝達カスケードが妨害される。
2.両方とも、CD26/DPP IVへのPg結合を阻害し、これにより、細胞表面上のPgの活性化を妨害する、アンギオスタチン又はFNポリペプチドL1768TSRPAの使用。これらの物質は両方とも、腫瘍の増殖を阻害するのみではなく、遠位の正常組織の転移増殖(colonization)も阻害する。
3.ADAの結合に寄与するポリペプチドL340VARを含むCD26/DPP IV一次領域に結合するmAb又は他の化合物の開発。これは、腫瘍細胞をアデノシンの細胞傷害性作用に曝すのみではなく、ADAが循環血中腫瘍細胞と血管に内層しているCD26/DPP IVの間の可能性のあるアンカーとして働くことを妨げている。
【0026】
定義
下記定義は、本願明細書において説明された組成物及び方法を理解する助けとなるであろう。
本願明細書において使用される用語「腫瘍転移」は、腫瘍細胞が存在する基底膜から逃れることによる腫瘍の広がりとして定義される。
【0027】
用語「アンギオスタチン」は、プラスミノーゲンのタンパク質分解性の断片を意味し、かつプラスミノーゲンからの少なくとも1個のクリングル、好ましくは少なくとも3個のクリングルを含む。アンギオスタチンは、血管新生及び腫瘍細胞転移の増殖の強力なインヒビターである(O'Reillyら、Cell、79:315328 (1994))。アンギオスタチンの全ての抗-転移型は、本願明細書においてアンギオスタチンの定義に含まれることが意図されている。
【0028】
アンギオスタチンは、プラスミノーゲン分子のクリングル領域により定義されるような特異的三次元立体配置を有する(Robbins, K. C.、「The plasminogen/plasmin enzyme system」、Hemostasis and Thrombosis, Basic Principles and Practice、第2版、Colman, R. W.ら編集、J.B. Lippincott社、340357頁、1987年)。このようなクリングル領域は5種類あり、これは立体配置的に関連したモチーフであり、かつプラスミノーゲン分子のアミノ末端部分において実質的配列相同性を有する。
【0029】
様々なサイレントなアミノ酸置換、付加又は欠失を、先に同定したクリングル断片において作成することができ、これは断片の内皮細胞阻害活性を著しく変更することはない。アンギオスタチン分子の各クリングル領域は、およそ80個のアミノ酸を含み、及び3個のジスルフィド結合を含む。抗血管新生性アンギオスタチンは、クリングル領域間からの変動量のアミノ又はカルボキシ-末端のアミノ酸を含むことができ、かつ還元された天然のジスルフィド結合の一部又は全てを有してもよい。アンギオスタチンは、凝集し非再生の組換え型で提供することもできる。
【0030】
Sottrup Jensenらの論文(Progress in Chemical Fibrinolysis and Thrombolysis、3:191209 (1978))に示されたように、アンギオスタチンは、プラスミノーゲンの限定されたタンパク質分解によりin vitroにおいて生成することができ、この論文の内容は、全ての目的のために本願明細書に参照として組入れられている。これは、38kDaのプラスミノーゲン断片(Va179Pro353)を生じる。アンギオスタチンは同じく、プラスミンの還元によりin vitroにおいて生成することができ(Gatelyら、PNAS、94:1086810872 (1997))、かつチャイニーズハムスター卵巣及びヒト線維肉腫細胞(Stathakisら、JBC、272(33):20641.20645 (1991))において生成することができる。
【0031】
アンギオスタチンは、組換え給源から、動物に移植された遺伝的に変更された細胞から、腫瘍から、及び細胞培養物に加え他の給源から作成することもできる。アンギオスタチンは、血清及び尿を含むが、これらに限定されるものではない体液から単離することができる。組換え技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いるDNA給源からの遺伝子増幅、及び逆転写酵素/PCRを用いるRNA給源からの遺伝子増幅を含む。
【0032】
本願明細書において使用される用語「CD26アンタゴニスト」とは、CD26に結合し、かつそのように結合した場合に、プラスミノーゲンのCD26への結合を阻害し、これは次にMMP-9の形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害するような化合物を意味する。アンギオスタチンは、適当なCD26アンタゴニストの例であるが、アンギオスタチンは、in vivoにおいて比較的短い半減期を有し、かつCD26に対する同様の結合親和性を有するが半減期はより長い別の化合物が好ましいことがある。
【0033】
本願明細書において使用される用語「プラスミノーゲンアンタゴニスト」は、プラスミノーゲンに、ひとつの態様においてそうでなければCD26に結合するであろうオリゴ糖鎖に結合し、かつそのように結合した場合に、プラスミノーゲンのCD26への結合を阻害し、これは次にMMP-9の形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害するような化合物を意味する。
【0034】
本願明細書において使用される用語「ADAアンタゴニスト」は、CD26のADAへの結合を阻害する方式で、CD26/DPP IV上のポリペプチドL340VARに結合するか、又はこの結合を立体的に妨害する位置で結合し、これは次にADAのアデノシンを破壊する能力を阻害し、並びに同じくADAが循環血中腫瘍細胞と血管に内層するCD26/DPP IVの間のアンカーとして働く能力を阻害するような化合物を意味する。
【0035】
本願明細書において使用される用語「アンギオスタチンアロステリックプロモーター」は、CD26に直接結合するが、アンギオスタチンのCD26に結合する能力を増強するような化合物を意味する。
本願明細書において使用される用語「ひとつの(a,an,the)」は、「ひとつ又は複数の」を意味するように定義され、かつ内容が不適切でない限りは、複数を含む。
【0036】
本願明細書において使用される語句「活性物質」又は「活性化合物」は、CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲンアンタゴニスト、ADAアンタゴニスト及びアンギオスタチンアロステリックプロモーターを意味する。適当な生物学的活性化合物/物質の例は、抗体、抗体断片、酵素、ペプチド、核酸及び小分子を含む。
【0037】
本願明細書において使用されるペプチドは、100個未満又は等しいアミノ酸を含むように定義され、かつタンパク質は、100個又はそれよりも多いアミノ酸を含むように定義される。
別に特に記さない限りは、本願明細書において使用される技術用語及び科学用語は全て、通常当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本願明細書に説明されたものと類似の又は同等のその他の材料及び方法は、本発明の実践又は試験において使用することができるが、当該技術分野の実践者に明らかであるように、好ましい方法及び材料がここで説明される。
【0038】
I. 腫瘍転移を阻害する方法
腫瘍転移は、有効量の適当なCD26及び/又はプラスミノーゲンアンタゴニスト(例えば、抗体、抗体断片、及び/又は小分子)を、そのような治療が必要な患者へ投与することにより、阻害することができる。アンギオスタチンアロステリックプロモーターも、単独で又はCD26アンタゴニストと組合せて投与することができる。これらの化合物は、それら自身で腫瘍転移を阻害するか、又はアンギオスタチン(又はCD26もしくはプラスミノーゲンのアンタゴニスト)の転移を阻害する能力をアロステリックに増強するかのいずれかであることができる。これらの方法を使用し、転移性腫瘍に罹患した患者を治療することができる。ADAアンタゴニストも、アデノシンの脱アミノ化を防ぐために投与することができる。
【0039】
本願明細書に説明された治療法及び診断法は、典型的には、本願明細書に説明された組成物を有効量患者に投与することを含む。投与されるべき正確な用量は、組成物の用途に応じて、並びに患者の年齢、性別及び状態に応じて変動し、かつ治療に当たる医師はこれを容易に決定することができる。これらの組成物は、単回投与量として、又はある期間にわたる連続法により投与することができる。投与量は適宜反復することができる。
【0040】
これらの組成物及び方法を用い、結腸直腸癌、胃癌、印環細胞癌(signet ring type)、食道癌、小腸癌、粘液癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、肝癌、喉頭癌、中皮腫、神経内分泌癌、神経外胚葉腫瘍、メラノーマ、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫、平滑筋肉腫、MFII、線維肉腫、脂肪肉腫、MPNT、軟骨肉腫、及びリンパ腫を含む、様々な固形腫瘍の転移を治療することができる。
【0041】
II. 腫瘍転移及び/又はアデノシン脱アミノ化を阻害する化合物
様々な抗体を含む様々な化合物が、CD26に結合し、かつプラスミノーゲン結合を阻害することができる(CD26アンタゴニスト)。様々な抗体を含む様々な他の化合物は、CD26に結合しないが、CD26アンタゴニストのプラスミノーゲン結合を阻害する能力を増強する(アンギオスタチンアロステリックプロモーター)。更に別の化合物は、プラスミノーゲンに結合し、かつプラスミノーゲンのCD26との結合を妨害する。更に他の化合物は、CD26/DPP IVのADAへの結合を妨害する方式で、CD26に結合する。
【0042】
これらの化合物はCD26又はプラスミノーゲンに結合するという単なる事実は、腫瘍転移に対するそれらの最終的作用を決定しない。これらの化合物が結合した場合、これらはプラスミノーゲンのCD26への結合も阻害するはずであり、これは次にMMP-9形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害し、これは次に腫瘍転移を阻害する。
【0043】
一旦結合したこれらの化合物の活性は、本願明細書に説明されたアッセイを用い、容易に決定することができる。本願明細書に説明された化合物は、特定の分子量に限定されない。これらの化合物は、大分子(すなわち、分子量約1000を上回るもの)又は小分子(すなわち、分子量約1000を下回るもの)であることができる。適当な化合物型の例は、抗体、抗体断片、酵素、ペプチド及びオリゴヌクレオチドを含む。
【0044】
A. 抗体
下記の抗体を作成することができる:
a)CD26へ、特にプラスミノーゲンオリゴ糖鎖の付着部位である一次配列L313QWLRRIにより同定される、CD26のプラスミノーゲン結合部位へ結合する、抗体;
b)プラスミノーゲンのCD26への結合が阻害されるような方式で、プラスミノーゲンへ結合する抗体であり、例えば、そのような結合に関連した、プラスミノーゲンオリゴ糖鎖に結合し、かつ多糖鎖のCD26へ結合する能力をブロックすることにより、プラスミノーゲンのCD26へ結合する能力を阻害する、抗体;
c)CD26/DPP IVのADAへの結合を阻害する方式でCD26に結合する抗体。
【0045】
ポリクローナル抗体の全般的作用が低下した腫瘍転移であるならば、ポリクローナル抗体を使用することができる。しかし、モノクローナル抗体が好ましい。ヒト化された(キメラ)抗体が更に好ましい。
【0046】
これらの抗体は、アンギオスタチン又はFNポリペプチドL1768TSRPAと全く同じ方法で結合することができず、またその必要もない。アンギオスタチンは、いくつかの可能性のある結合部分を有し(恐らく様々なクリングルに関連しているであろう)、及びこれらの抗体は、これらの結合部分の各々を模倣した部分を含まないであろう。しかしこれらの抗体は、実際の結合部位(複数)の全て又は一部との立体的干渉及び/又はこれへの結合により、CD26、プラスミノーゲン又はADAの結合を阻害することができる。
【0047】
転移を直接阻害するか、又は細胞毒性薬物もしくは放射性同位元素又は他の標識を転移部位へ標的化するかのいずれかで使用することができる、CD26及びプラスミノーゲンに対する抗体、特にモノクローナル抗体(mAb)が開発されている。これらの抗体は、極めて特異的であることができる。更に腫瘍に対し細胞毒性薬物を標的化するガン細胞特異的mAbを産生する他の系列の研究とは異なり、これらのmAbは、宿主抗原(すなわち、正常細胞においては認められないCD26)に対して調製される。この方法は、腫瘍の「抵抗性」変種の生成が起こらず、かつ理論的には1種のmAbを用い、あらゆる固形腫瘍を治療することができるという大きい利点を有する。
【0048】
抗体調製
用語「抗体」は、被検体(抗原、この場合はCD26、プラスミノーゲン及び/又はそれらの様々な結合ドメイン、好ましくはヒトCD26及び/又はプラスミノーゲン)に特異的に結合しかつ認識する、1個又は複数の免疫グロブリン、又はそれらの断片により実質的にコードされたポリペプチドを意味する。免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、ε、及びμ定常領域遺伝子に加え、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κ又はλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ又はεとして分類され、これらは次に、各々、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義している。
【0049】
例証的免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2個の同一対から構成され、各対は、1本の「軽」鎖(約25kD)及び1本の「重」鎖(約50-70kD)を有する。各鎖のN-末端は、抗原認識に主に寄与する約100〜110個又はそれよりも多いアミノ酸の可変領域を有する。用語「可変軽鎖」(又は「VL」)及び「可変重鎖」(又は「VH」)は、各々、これらの軽鎖及び重鎖を意味する。
【0050】
抗体は、例えば、無傷の免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼによる消化により作出された多くの良く特徴付けられた抗原-結合断片として存在する。例えば、ペプシンは、抗体を、ヒンジ領域のジススルフィド結合の下側で消化し、F(ab')2断片を作成し、これはそれ自身ジスルフィド結合によりVH-CH1に連結された軽鎖であるFab二量体である。F(ab')2断片は、緩徐な条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊することができ、これによりF(ab')2二量体が、Fab'単量体に転換される。このFab'単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を伴うFabである(Fundamental Immunology、第3版、W.E. Paul (編集)、Raven Press社、N.Y.(1993)参照のこと、この内容は本願明細書に参照として組入れられている。)。様々な抗体断片が、無傷の抗体の消化に関して定義されていると同時に、当業者は、このような断片を、化学的に又は組換えDNA技法を用いるかのいずれかにより、de novo合成することができることを理解するであろう。従って本願明細書において使用される用語「抗体」は、一本鎖抗体、抗原結合しているF(ab')2断片、抗原結合しているFab'断片、抗原結合しているFab断片、抗原結合しているFv断片、一本鎖重鎖又はキメラ(ヒト化された)抗体のような、抗体断片も含む。このような抗体は、抗体全体の修飾により作出するか、又は組換えDNA技法を用いde novo合成することができる。
【0051】
CD26及び/又はプラスミノーゲン(それらの断片、誘導体、及びアナログを含む)を免疫原として用い、このような免疫原に免疫特異性に結合する抗体を作出することができる。このような抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗原結合する抗体断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、又は超可変領域)、及びmAb又はFab発現ライブラリーを含むが、これらに限定されるものではない。一部の態様において、CD26、プラスミノーゲン又はそれらの断片、誘導体及び/もしくはアナログに対するポリクローナル及び/又はモノクローナル抗体を、作出することができる。更に別の態様において、免疫原性であると同定されたCD26及び/又はプラスミノーゲンの断片は、抗体産生のための免疫原として使用される。
【0052】
当該技術分野において公知の様々な手法を用い、ポリクローナル抗体を作成することができる。様々な宿主動物(ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ラクダなどを含むが、これらに限定されるものではない)を、抗原、断片、誘導体又はアナログの注射により免疫処置することができる。宿主の種に応じて、様々なアジュバントを用い、免疫応答を増強することができる。このようなアジュバントは、例えば、フロイントのアジュバント(完全及び不完全)、水酸化アルミニウムのような無機ゲル、リゾレシチンのような界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油状乳化剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及び他のアジュバント、例えばBCG(カルメット-ゲランウシ型結核菌)及びコリネバクテリウムパルブムを含む。
【0053】
培養における細胞株継代による抗体分子の作成のために提供されるあらゆる技術を使用し、CD26、プラスミノーゲン、それらの断片又はそれらの結合部分に対するモノクローナル抗体を調製することができる。このような技術は、例えば、Kohler及びMilsteinにより最初に開発されたハイブリドーマ技術(例えば、Nature、256:495-97 (1975)参照)、トリオーマ技術(例えば、Hagiwara及びYuasa、Hum. Antibodies Hybridomas、4:15-19 (1993);Heringら、Biomed. Biochim. Acta、47:211-16 (1988)参照)、ヒトB-細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozborら、Immunology Today、4:72 (1983)参照)、及びヒトモノクローナル抗体を作出するためのEBV-ハイブリドーマ技術(例えば、Coleら、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss社、77-96頁(1985)参照)を含む。ヒト抗体を使用することができ、及びヒトハイブリドーマを用いるか(例えば、Coteら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、80:202630 (1983))、又はヒトB細胞をEBVウイルスによりin vitro形質転換すること(例えば、Coleら、前掲参照)により得ることができる。
【0054】
「キメラ」又は「ヒト化」抗体(例えば、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:6851-55 (1984);Neubergerら、Nature、312:604-08 (1984);Takedaら、Nature、3114:452-54 (1985)参照)も調製することができる。このようなキメラ抗体は、典型的には、抗原に特異的な抗体分子の非-ヒト遺伝子を適当な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライシングすることにより調製される。非-ヒト抗体の抗原結合領域(例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、又は超可変領域)を、ヒト抗体のフレームワークへ、組換えDNA技術により導入し、実質的なヒト分子を作成することが望ましい。このような「キメラ」分子を作出する方法は、一般に周知であり、かつ例えば米国特許第4,816,567号;第4,816,397号;第5,693,762号;及び、第5,712,120号;PCT国際公開公報第87/02671号及び第90/00616号;並びに、欧州特許公開第EP 239 400号に開示されている(それらの開示は本願明細書に参照として組入れられている。)。あるいは、ヒトモノクローナル抗体又はその一部は、その内容が本願明細書に参照として組入れられている、Huseらの論文(Science、246:1275-81 (1989))に記された一般的方法に従い、CD26及び/又はプラスミノーゲン又はそれらの断片もしくは結合ドメインに特異的に結合する抗体をコードしている核酸分子に関するcDNAライブラリーの最初のスクリーニングにより同定することができる。その後この核酸分子はクローニング及び増幅され、望ましい特異性の抗体(又は抗原-結合ドメイン)をコードしている配列を得ることができる。ファージディスプレイ技術は、CD26、プラスミノーゲン、それらの断片、誘導体又はアナログ、並びにそれらの結合ドメインに結合する抗体を選択する別の技術を提供する(例えば、国際公開公報第91/17271号及び第92/01047号;Huseら、前掲を参照)。
【0055】
一本鎖抗体を作出する技術(例えば、米国特許第4,946,778号及び第5,969,108号参照)も使用することができる。本発明の追加の局面は、抗原、それらの断片、誘導体又はアナログに対する望ましい特異性を伴うモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にするために、Fab発現ライブラリーの構築について説明された技術を利用する(例えば、Huseら、前掲参照)。
【0056】
この分子のイディオタイプを含む抗体は、公知の技術により作出することができる。例えばこのような断片は、抗体分子のペプシン消化により作成することができるF(ab')2断片、F(ab')2断片のジスルフィド橋の還元により作成することができるFab'断片、抗体分子のパパイン及び還元剤による処理により作成することができるFab断片、並びにFv断片を含むが、これらに限定されるものではない。組換えFv断片も、真核細胞において、例えば米国特許第5,965,405号(その開示は本願明細書に参照として組入れられている。)に開示された方法を用いて作成することができる。
【0057】
抗体スクリーニングは、当該技術分野において公知の技術により実現することができる(例えば、ELISA(固相酵素免疫測定法))。一例において、抗原の特異的ドメインを認識する抗体を使用し、作成されたハイブリドーマを、そのドメインを含むポリペプチドに結合する生成物について、アッセイすることができる。抗原のドメインに特異的な抗体も提供される。
【0058】
CD26及び/又はプラスミノーゲン(それらの断片、誘導体及びアナログ並びに結合ドメインを含む)に対する抗体を、当該技術分野において公知の方法に従い、受動抗体処理に使用することができる。これらの抗体は、前述のように作成することができ、かつポリクローナル又はモノクローナル抗体であることができ、かつ静脈内、経腸的(例えば;腸溶性錠剤形として)、エーロゾルにより、経口的、経皮的、経粘膜的、胸膜腔内、くも膜下、又は他の適当な経路により投与される。
【0059】
少量のヒト化抗体を、CHO細胞における一過性発現システムにおいて作出し、これらがCD26を発現している細胞に結合することを確立することができる。その後安定した細胞株を分離し、精製された材料を大量に作成することができる。
【0060】
マウス抗体及びヒト化抗体の結合親和性は、Krauseらの説明した手法(Behring Inst. Mitt.、87:5667 (1990))を用い決定することができる。簡単に述べると、抗体は、蛍光イソチオシアナート(FITC)を用い蛍光標識し、その後ウシ胎仔血清(FCS)及びアジ化ナトリウムを含有するPBS中において、HUVEC細胞と共に2時間氷上でインキュベーションすることができる。1個の細胞に結合した蛍光量は、FACScanにおいて決定し、かつ標準ビーズを用いてキャリブレーションする。各抗体濃度での1個の細胞に結合した抗体分子の数を決定し、かつスキャッチャードプロットを作成するために使用することができる。連続希釈したヒト化した変種と一緒の標準量のマウス抗体を伴う細胞とのインキュベーション後に、競合アッセイを、結合した抗体のFACScan定量により行うことができる。
【0061】
B. 多価化合物
多価化合物は、本願明細書において、CD26及び/もしくはプラスミノーゲン又はそれらの結合ドメイン又はそれらの断片、アナログ及び誘導体に付着されることが可能な部分を1個よりも多く含む化合物として定義される。
ひとつの態様において、多価化合物は、少なくとも1種のタンパク質及び/又はペプチド鎖を含む。あるいは、この化合物は、前述のような結合特性を持つ複数の部分を伴う小分子を含む。
【0062】
C.mAb ライブラリーのハイスループットスクリーニング法
ハイスループットモノクローナル抗体アッセイを用い、抗体の標的への結合親和性を決定し、更にどの抗体が標的のアンタゴニストとして作用するかを同定することができる。このアッセイは、例えば増加又は減少したMPP9発現、CD26のプラスミノーゲンへの結合、マトリゲル侵襲及び/又は腫瘍転移のレベルもしくは程度を評価することができる。適当なハイスループットアッセイは、例えば、「実施例」に説明されている。同様のハイスループットアッセイを用い、小分子ライブラリーの特性を評価することができる。
【0063】
同様のスクリーニング法を用い、本願明細書に説明された方法において有用な他のクラスの化合物を同定することができる。化合物のコンビナトリアルライブラリー、例えば、ファージディスプレイペプチドライブラリー、小分子ライブラリー及びオリゴヌクレオチドライブラリーを、スクリーニングすることができる。標的に結合する化合物は、例えば、競合結合試験を用い、同定することができる。
【0064】
D. 抗体/薬物複合体
前述の標的に対して生じた抗体、及び特にモノクローナル抗体は、薬物と複合することができる。この薬物/抗体複合体は、その後患者へ投与することができ、かつこの抗体は、比較的高濃度の薬物を所望の組織又は器官へ送達する方式で標的へ結合するであろう。一部の態様において、薬物の抗体への結合は、生分解性の連結であり、その結果この薬物は時間経過と共に放出される。別の態様において、薬物は、抗体に付着され続ける。
【0065】
抗癌剤は、抗体に複合され得る薬物の例である。例えば、抗体は、葉酸拮抗剤であるQFAに、又は腫瘍細胞の二本鎖DNAを切断する抗腫瘍抗生物質であるカリケアマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、もしくはビンカマイシンに複合することができる。抗体に結合することができる追加の腫瘍治療化合物は、BCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチン、リシン、放射性同位元素、及び5-フルオロウラシル並びに他の制癌性ヌクレオシドである。
【0066】
In vivo異種移植片試験を用い、腫瘍転移の阻害に加え限定的正常組織損傷を伴う直接の腫瘍阻害は、これらの抗癌剤に複合した抗体により得られることを示すことができる。これらの抗体/薬物複合体を使用し、そうではなく全身投与した場合には非常に毒性のある化合物を、直接腫瘍に標的化することができる。
【0067】
これらの複合体は、最も有利には、例えば、それらが腫瘍の周囲の毛細血管床に留まりかつ腫瘍部位で該化合物を放出するために、化合物を適当なサイズのリポソーム又は他の微粒子内に配置することによる標的化された薬物送達法と組合せて使用される。あるいは、これらの化合物は、例えば、注射又はカテーテル送達により、腫瘍部位へと又はその周囲へ直接注射することができる。このような方法は、望ましくない全身作用を最小化する。
【0068】
通常のカップリング化学を用い、例えばSPDPのようなヘテロ二官能性試薬を用い、3'又は5'末端のいずれかに遊離の反応性ヒドロキシ基、アミン基、カルボキシ基又はチオール基を持つオリゴヌクレオチドは、抗体上の遊離の反応基に複合することができる。このオリゴヌクレオチドの3'又は5'末端は、例えば、DNAのトレーサーとしての32Pにより、酵素的に標識することができる。最終生成物は、細胞結合活性並びにタンパク質及び結合したオリゴヌクレオチド濃度について試験することができる。これらのオリゴヌクレオチドの活性に応じて、これらの複合体は、治療目的又は診断目的で使用することができる。
【0069】
これらの抗体(又は標的に結合する他の化合物)は、ポルフィリンのような、光増感剤(photosensitizer)と複合し、かつ標的化された光力学的療法において使用することができる。これらの組成物が投与され、標的と結合された後、適当な時間、適当な波長の光の照射により、光力学的療法を行うことができる。
【0070】
標的に結合する抗体は更に、様々なマーカーと共有結合又はイオン結合し、腫瘍の存在を検出するために使用することができる。これは一般に、適量の抗体の患者への投与、抗体が腫瘍部位又はその周辺の標的に結合するまでの待機、並びにマーカーの検出に関連している。適当なマーカーは、当業者に周知であり、例えば放射性標識、蛍光標識などを含み、かつこれらのマーカーの検出法も当業者に周知である。適当な検出技術の例は、陽電子断層撮影法(PET)、オートラジオグラフィー、フローサイトメトリー、放射性受容体結合アッセイ、及び免疫組織化学がある。
【0071】
一般に、これらの化合物のバックグラウンド濃度は、全身の場所で観察されるであろう。しかし比較的高い、検出可能な濃度は、腫瘍が存在する場所で観察されるであろう。この標識は、検出することができ、従ってこれらの腫瘍を検出することができる。
【0072】
E. 小分子
本明細書において使用される小分子は、それらの分子量が約10,000未満(約30mer以下)の場合に小分子と見なされ得るオリゴヌクレオチドの場合を除いて、分子量約2000以下の分子として定義される。多くの会社が現在、小分子ライブラリーを作成しており、かつ特定の受容体に結合する化合物を同定するための小分子ライブラリーを評価するハイスループットスクリーニング法は、当業者に周知である。小分子のコンビナトリアルライブラリー は、スクリーニングすることができ、かつ本願明細書に説明された方法で使用するための適当な化合物は、慣例的実験を用い同定することができる。適当な小分子ライブラリーの一例は、ファージディスプレイライブラリーである。別のこのようなライブラリーは、典型的にはサイズが約100mer未満であるランダムオリゴヌクレオチドを含むライブラリーである。SELEXプロセスを用い、適切な結合特性を有する化合物について、このようなオリゴヌクレオチドライブラリー(DNA、RNA及び他の種類の遺伝的物質を含み、更に天然及び非天然の塩基対を含む)をスクリーニングすることができ、かつ別のアッセイを用い、これらの化合物の腫瘍転移に対する作用を決定することができる。
【0073】
SELEX法は、Goldらの米国特許第5,270,163号に開示されている。簡単に述べると、ランダム化された配列の領域との一本鎖核酸の候補混合物を、標的と接触し、かつ標的への増大した親和性を有するこれらの核酸を、候補混合物の残余から分割することができる。分割された核酸は増幅され、リガンドが濃厚化された混合物を得ることができる。
【0074】
F. ペプチドファージディスプレイライブラリー
標的に結合するペプチドを同定するために有用なひとつの技術は、例えば、「Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual」;Brian K. Kayら編集、Academic Press社、サンディエゴ、1996年に記された、ファージディスプレイ技術であり、その内容はあらゆる目的のために本願明細書に参照として組入れられている。
【0075】
ファージペプチドライブラリーは典型的には、多くの異なるファージクローンを含み、各々はコートタンパク質のひとつの中の挿入断片として一本鎖DNAゲノムにコードされた異なるペプチドを発現している。理想的なファージライブラリーにおいて、個体クローン数は、20n個であり、ここで「n」は、ファージによりコードされたランダムペプチドを構成する残基の数と等しい。例えば、ファージライブラリーが7個の残基ペプチドについてスクリーニングされる場合は、このライブラリーは理論上は207種(又は1.28 X 109種)の可能性のある7残基配列を含むであろう。従って、7-merペプチドライブラリーは、およそ109個の個別のファージを含むはずである。
【0076】
抗体、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及びそれらの断片のような分子の様々な種類の多様な集団を含むライブラリーを調製する方法は、当該技術分野において公知であり、かつ市販されている(例えば、Ecker及びCrooke、Biotechnology、13:351360 (1995)参照、及びそこに引用された参考文献、それらの各々の内容は、あらゆる目的で本願明細書に参照として組入れられている。)。適当なファージディスプレイライブラリーの一例は、ランダムペプチド7-merからなるコンビナトリアルライブラリーである、Ph.D.7ファージディスプレイライブラリー(New England BinLab社カタログ#8100)である。このPh.D.7ファージディスプレイライブラリーは、GlyGlyGlySerの柔軟な(flexible)リンカーを介してM13のpIIIコートタンパク質に融合された線状7-merペプチドからなる。このライブラリーは、2.8 X 109種の個別のクローンを含み、かつアミノ酸の短い一続き中に濃縮された結合エレメントを必要とする標的を同定するのに有用である。
【0077】
標的に結合することができるペプチドをディスプレイするファージクローンは、このライブラリーから選択される。挿入されたペプチドの配列は、ファージクローンのDNA配列から推定される。この方法は、標的タンパク質の一次配列の予めの知識を必要とせず、アミノ酸の線状配列(線状エピトープ)によるか又は一次配列内の互いから離れたアミノ酸の空間的並列(コンホメーショナルエピトープ)のいずれかにより標的内に提示されたエピトープは、両方とも同定可能であり、かつ脂質及び糖質部分のような非-タンパク質性分子に由来したエピトープのペプチド性ミモトープ(mimotope)も作成することができるので、特に望ましい。
【0078】
可能性のある結合ペプチドをディスプレイしているファージのライブラリーは、固定された標的と特異的に結合する組換えペプチドをコードしているクローンを選択するために、固定した標的とインキュベーションすることができる。これらのファージは、異なる回数バイオパンニング(固定した標的への結合)した後、増幅し、かつその後各々異なる組換えタンパク質、又は結合ペプチドを発現している個別のウイルスプラークは、拡大され、結合アッセイを行うのに十分量のペプチドを生じることができる。
【0079】
ファージ選択は、当該技術分野において公知の方法で、製造業者の指示に従い実行することができる。「標的」タンパク質CD26及び/又はプラスミノーゲン、及び特にL313QWLRRIペプチド及び/又はL340VARポリペプチドは、加湿した容器内で高度に結合するプラスチックプレート又はチューブ上を一晩被覆することができる。第一回目のパンニングにおいて、およそ2 X 1011個のファージを、緩く振盪しながら、タンパク質-被覆したプレート上で60分間室温でインキュベーションすることができる。その後プレートを、標準洗浄液を用い洗浄することができる。次に結合ファージを、かつ標的タンパク質を用い溶離後に収集し、増幅することができる。必要ならば、二回目及び三回目のパンニングを行うことができる。
【0080】
最後のスクリーニング後、ファージ-感染した細菌の個別のコロニーを、ランダムに採取し、このファージDNAを単離し、その後ジデオキシ法により配列決定を行う。ディスプレイされたペプチドの配列は、このDNA配列から推定することができる。
【0081】
III. 組成物
本願明細書に説明した化合物を含有する治療的、予防的及び診断的組成物は、典型的には、1種又は複数の活性化合物を、in vivo用途のために、医薬として許容できる賦形剤、希釈剤又は担体と共に含有する。このような組成物は、活性化合物(複数)を適当な賦形剤、希釈剤又は担体と混合することにより、容易に調製することができる。
【0082】
いずれか適量で投与することができる。治療される転移性腫瘍の種類、これらの化合物、担体及び量は、体重、治療される状態の重症度及び当業者により容易に評価されるその他の要因により、非常に広範に変動するであろう。一般に体重1キログラム(kg)につき約1ミリグラム(mg)から体重1キログラム(kg)につき約100mgの間の用量が適している。
【0083】
単位用量は、単独の化合物、又はそれらの他の化合物もしくは他の抗-癌剤との混合物を含んでも良い。単位用量は、希釈剤、増量剤、担体なども含有することができる。この単位は、例えば丸剤、錠剤、カプセル剤などの固体又はゲルの形状であるか、又は経口、経直腸、外用、静脈内注射もしくは非経口投与又は腫瘍へもしくはその周辺への注射に適した液体の形状であることができる。
【0084】
これらの化合物は、典型的には、医薬として許容できる担体と混合される。この担体は、固体又は液体であることができ、その種類は、一般に使用される投与の形を基に選択される。
【0085】
これらの化合物は、治療される特定の転移性腫瘍-媒介した疾患の治療に効果的であるいずれか適当な投与経路で投与することができる。治療は、経口、経直腸、外用、非経口又は静脈内投与であるか、又は腫瘍などへの注射によることができる。適当な担体、追加の癌を阻害する1種又は複数の化合物もしくは投与を促進する希釈剤と共に処方された化合物の静脈内、皮下、又は筋肉内適用による非経口治療は、化合物の投与の好ましい方法であると考えられている。
【0086】
これらの化合物は、治療的投与のために様々な処方に混入することができる。より詳細に述べると、これらの化合物は、適当な医薬として許容できる担体又は希釈剤と組合せて医薬組成物に処方することができ、かつ錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、ゲル剤、スラリー剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤及びエーロゾルのような、固形、半固形、液体又は気体の形状の調製物に処方することができる。従って、これらの化合物の投与は、経口、頬腔内、直腸内、非経口、腹腔内、皮内、経皮的、気管内などへの投与を含む、様々な方法で行うことができる。更にこれらの化合物は、全身的よりもむしろ局所的に投与することができ、例えば化合物を固形腫瘍へ直接注射するか、多くはデポ剤又は徐放性処方内で投与することができる。加えてこれらの化合物は、例えば、本願明細書において説明された抗体により被覆されたリポソームのような、標的化した薬物送達システムにおいて投与することができる。このようなリポソームは、腫瘍に標的化されかつ腫瘍により選択的に取込まれる。
【0087】
加えて、これらの化合物は、一般的賦形剤、希釈剤又は担体と共に処方し、錠剤へ圧縮するか、もしくは都合の良い経口投与、又は筋肉内もしくは静脈内経路による投与のためにエリキシル剤又は液剤として処方することができる。これらの化合物は、経皮的に投与することができ、かつ徐放剤形などで処方することができる。
【0088】
これらの化合物は、単独で、互いに組合せて投与することができ、又はこれらは他の公知の化合物(例えば他の抗-癌剤)と組合せて使用することができる。例えばこれらの化合物は、公知の抗-血管形成性化学療法剤及び/又は抗新生物形成剤(例えば、ビンカアルカロイド、抗生物質、代謝拮抗剤、白金配位錯体など)と共に併用療法において使用することができる。例えばこれらの化合物は、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タキソールなどのビンカアルカロイド;アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びミトマイシン(ミトマイシンC)などの抗生物質;メトトレキセート、シタラビン(AraC)、アザウリジン、アザリビン、フルオロデオキシウリジン、デオキシコフォルマイシン、メルカプトプリンなどの代謝拮抗剤;又は、シスプラチン(cis-DDP)、カルボプラチンなどの白金配位錯体との併用療法において使用することができる。医薬剤形において、これらの化合物は、それらの医薬として許容できる塩の形で投与することができるか、もしくはこれらは単独で、又は他の医薬活性化合物との適当な会合、更には組合せにおいて使用することができる。
【0089】
本発明において使用するための適当な処方は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing社、フィラデルフィア、Pa.、第17版(1985))に認められ、これは本願明細書に参照として組入れられている。更に薬物送達法の簡単な検証のために、Langerの論文(Science、249:1527-1533 (1990))を参照することができ、これは本願明細書に参照として組入れられている。本願明細書に説明された医薬組成物は、当業者に公知の方法、すなわち通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作成、研和、乳化、カプセル封入、内封(entrapping)又は凍結乾燥法で製造することができる。下記の方法及び賦形剤は、単なる例証であり、限定するものではない。
【0090】
注射のために、これらの化合物は、例えば植物油又はその他の同類の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステル又はプロピレングリコールなどの水性又は非水性溶媒中への、それらの溶解、懸濁又は乳化により;並びに、望ましいならば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤及び保存剤のような通常の添加剤を伴い、調製物へ処方することができる。好ましくは、これらの化合物は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理的食塩緩衝液のような生理的に相溶性のある緩衝液中に処方することができる。経粘膜投与のためには、透過される障壁に適した浸透剤がその処方において使用される。このような浸透剤は一般に、当該技術分野において公知である。
【0091】
経口投与については、これらの化合物は、当該技術分野において周知である医薬として許容できる担体と一緒にすることにより、容易に処方することができる。このような担体は、治療される患者の経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、乳剤、親油性及び親水性懸濁剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとしてこの化合物を処方することを可能にする。経口用途のための医薬調製物は、この化合物の固形賦形剤との混合、任意に得られた混合物の研磨、及び望ましいならば錠剤又は糖衣錠コアを得るために適当な助剤の添加後の顆粒混合物の処理により得ることができる。適当な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール又はソルビトールを含む糖類のような充填剤;例えば、コーンスターチ、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などの、セルロース調製物である。望ましいならば、架橋したポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなそれらの塩などの崩壊剤を添加することができる。
【0092】
糖衣錠コアは、適当なコーティングと共に提供される。この目的のために、濃縮した糖溶液が使用され、これは任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー液、及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含有することができる。染料又は顔料を、活性化合物用量の様々な組合せを識別又は特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0093】
経口的に使用することができる医薬調製物は、ゼラチンで製造されたプッシュフィット(push-fit)型カプセル剤に加え、ゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑化剤により製造されたシールされた軟カプセル剤を含む。プッシュフィット型カプセル剤は、活性成分を、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意に安定剤と混合して含むことができる。軟カプセル剤において、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールのような適当な液体に溶解又は懸濁することができる。経口投与のための全ての処方は、このような投与に適した用量である。
【0094】
頬腔内投与のためには、この組成物は、通常の方式で処方された錠剤又はトローチ剤の形状であることができる。
吸入による投与については、本発明に従い使用するための化合物は、通常、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当な気体のような適当な噴射剤を使用する、加圧された容器又はネブライザーから、もしくは噴射剤非含有の乾燥散剤吸入器からのエーロゾル噴霧放出で送達される。加圧したエーロゾルの場合、単位用量は、計量した量を送達するためのバルブを備えることにより決定することができる。吸入器又は吹き入れ器において使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物及び乳糖又はデンプンのような適当な粉末基剤の粉末混合物を含むように処方することができる。
【0095】
これらの化合物は、好ましくは、注射による、例えばボーラス注射又は連続注入による、非経口投与のために処方される。注射用処方は、保存剤が添加された、例えばアンプル又は複数回用量が入った容器中のような単位剤形で提示される。これらの組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又は乳液のような形をとることができ、かつ懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤のような処方剤を含有することができる。
【0096】
非経口投与のための医薬処方は、水溶性の形状の活性化合物の水溶液を含む。更に、活性化合物の懸濁液を、適当に油性の注射用懸濁液として調製することができる。適当な親油性溶媒又はビヒクルは、ゴマ油のような脂肪油、又は合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、又はリポソームを含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどを含有することができる。任意に、懸濁液は更に、適当な安定剤又は高濃度の溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大する物質を含有することもできる。あるいは、この活性成分は、使用前に、例えば滅菌したパイロジェン非含有水などの適当なビヒクルで構成するために散剤の形状であることができる。
【0097】
これらの化合物は、例えば全て体温で溶融するが室温では固化しているような、ココアバター、カルボワックス、ポリエチレングリコール又は他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤を含有する、坐剤又は持続浣腸剤のような直腸用組成物として処方することもできる。
【0098】
前述の処方に加え、これらの化合物はデポ剤として処方することもできる。このような長期作用する処方は、移植(例えば皮下又は筋肉内などへ)により又は筋肉内注射により投与することができる。従って例えば、これらの化合物は、適当な高分子又は疎水性物質(例えば許容できる油中の乳剤として)又はイオン交換樹脂と共に、もしくはやや可溶性の誘導体、例えばやや可溶性の塩として処方することができる。
【0099】
あるいは疎水性医薬化合物のための他の送達システムを使用することができる。リポソーム及び乳剤は、疎水性薬物の送達ビヒクル又は担体の例として周知である。現在の好ましい態様において、長期間血中を循環する、すなわちステルス(stealth)リポソームが使用される。このようなリポソームは一般に、Woodleらの米国特許第5,013,556号に開示されており、その内容は本願明細書に参照として組入れられている。
【0100】
これらの化合物は、例えばその内容は本願明細書に参照として組入れられているRothらの米国特許第5,879,713号に開示されたような、生体活性分子の標的組織への転移を促進するリポソームのようなビヒクル内に封入することもできる。これらの化合物は、媒質が分子を特定の標的へ送達するために適当なサイズの封入媒質を選択することにより標的化することができる。例えば、毛細血管床及び肺胞に侵入するがそこに捕獲され続けるのに適当なサイズの化合物の微粒子、好ましくは生体適合性及び/又は生分解性の微粒子への封入は、患者への注入又は注射による投与後のこれらの生体領域への標的化された送達に使用することができる。
【0101】
好ましい態様において、リポソーム又は微粒子は、体の特定領域に留まるために選択される直径を有する。例えば、毛細血管に留まるように選択された微粒子は、典型的には直径10〜100、より好ましくは10〜25、及び最も好ましくは15〜20μmを有する。いずれかの特定のサイズ範囲のリポソーム及び微粒子を調製する多くの方法が知られている。ゲル微粒子を形成する、又は溶融材料から微粒子を形成するための合成法が公知であり、かつ乳液、噴霧した液滴及び分離された相における重合を含む。固形物質又は予め形成されたゲルについては、公知の方法は、湿式又は乾式摩砕又は粉砕、微粉化、エアージェット又は篩による分級などを含む。
【0102】
微粒子は、当業者に公知である様々な異なる方法を用い、異なるポリマーから加工することができる。溶媒蒸着技術は、例えば、E. Mathiowitzら、J. Scanning Microscopy、4:329 (1990);L. R. Beckら、Fertil. Steril.、31:545 (1979);及び、S. Benitaら、J. Pharm. Sci.、73:1721 (1984)に説明されている。ホットメルト微量封入技術は、E. Mathiowitzら、Reactive Polymers、6:275 (1987)に説明されている。噴霧乾燥技術も、当業者に周知である。噴霧乾燥は、適当なポリマーの適当な溶媒への溶解に関連している。既知量の化合物が、このポリマー溶液中に懸濁(不溶性薬物)又は共-溶解(可溶性薬物)される。次にこの溶液又は分散液は、噴霧乾燥される。使用したポリマーの種類によって左右される形態を持つ1〜10μmの範囲の微粒子が得られる。アルギン酸塩のようなゲル型ポリマーから製造される微粒子は、伝統的なイオンゲル化技術により製造される。これらのポリマーは最初に、水溶液に溶解され、硫酸バリウム又はいくつかの生体活性物質と混合され、その後液滴形成装置を通して押出され、これは場合によっては液滴を破壊するために窒素ガス流れを使用する。形成される微小液滴を捕獲するために、緩徐に攪拌(およそ100〜170RPM)したイオン硬化浴を、押出装置の下側に配置する。これらの微粒子は、ゲル化が生じるのに十分な時間、この浴中でインキュベーションが続けられる。微粒子サイズは、様々なサイズの押出機を用いるか又は窒素ガスもしくはポリマー溶液の流量を変動することで制御される。粒子サイズは、使用される送達法、典型的にはIV注射、かつ適当であるならば放出が望まれる部位での捕獲に従い選択することができる。リポソームは、様々な供給業者から市販されている。あるいはリポソームは、例えば、米国特許第4,522,811号(これはその全体が本願明細書に参照として組入れられている。)に記されたような、当業者に公知の方法により、調製することができる。例えば、リポソーム処方は、適当な脂質(複数)(ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、及びコレステロール)の、後に蒸発され、容器の表面上に乾燥した脂質の薄膜を残留する無機溶媒中への溶解により調製することができる。次に活性化合物又はその一リン酸塩、二リン酸塩及び/又は三リン酸塩誘導体の水溶液が、容器に導入される。その後この容器は、手で旋回され、容器の側面から脂質物質をなくしかつ脂質凝塊を分散させ、これによりリポソーム懸濁液を形成する。
【0103】
本願明細書に説明されたような標的に特異的なモノクローナル抗体を、任意にリポソームへ複合することができ、かつその送達は、この方式で標的化することができる。加えて、異常な腫瘍血管に対するマーカーの標的化を、使用することができる。この標的化部分は、毒性のある薬物又は放射性同位元素と組合せられた場合には、それが必要とされる場合にその薬物を濃縮するように作用するであろう。腫瘍-会合した血管マーカーのリガンドも使用することができる。例えば、腫瘍血管要素表面マーカーに結合する細胞接着分子を使用することができる。特にそれらの表面が腫瘍血管に優先的に担体を方向付けるリガンドを含む場合、リポソーム及び他の薬物送達システムも使用することができる。リポソームは、ほとんどの正常組織から薬物を遮蔽する更なる利点をもたらす。食細胞による及び腫瘍血管-特異的標的化部分による取込みを最小化するために,ポリエチレングリコール(PEG)(すなわち、ステルスリポソーム)で被覆される場合に、リポソームはより長い血漿半減期、より低い非-標的組織毒性及び標的化しない薬物に勝る増大された効率を提供する。前述の方法を用い、これらの化合物は、腫瘍進行の制御に作用するために腫瘍血管に、又は関心のある他の部位(例えば、内皮細胞)へと標的化することができる。
【0104】
ジメチルスルホキシドのようなある種の有機溶媒も使用することができるが、通常はより大きい毒性に経費がかかる。加えてこれらの化合物は、治療用物質を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスのような、徐放システムを用い送達することができる。様々な種類の徐放性材料が確立されており、かつ当業者に周知である。徐放性カプセル剤は、それらの化学的性質に応じて、数日から最大100日まで化合物を放出する。このような徐放性カプセル剤は、典型的には、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトンのような生分解性ポリマー及びそれらのコポリマーを含む。
【0105】
本願明細書に説明された方法における用途に適した医薬組成物は、活性成分が治療有効量含まれているような組成物を含む。投与される組成物の量は、当然、治療される対象、対象の体重、苦痛の重症度、投与の方法及び処方する医師の判断に応じて決まる。有効量の決定は、特に本願明細書に提示された詳細な説明を考慮し、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0106】
本願明細書に説明された化合物の治療有効量は、最初に細胞培養アッセイにより推定することができる。例えば用量は、細胞培養において決定されたIC50(すなわち、細胞培養物の50%が致死的である被験化合物の濃度)、又は細胞培養において決定されたIC100(すなわち、細胞培養物の100%が致死的である化合物の濃度)を含む、循環血中濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。最初の用量は、in vivoデータから推定することもできる。
【0107】
更に、本願明細書に説明された化合物の毒性及び治療効能は、例えば、LD50(集団の50%致死量)及びED50(集団の50%の治療有効量)の決定によるような、細胞培養又は実験動物における標準の薬学的手法により決定することができる。毒性作用と治療的作用の間の用量比は、治療指数であり、かつLD50とED50の間の比で表わすことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトで使用した場合に毒性でない用量範囲の設定において使用することができる。このような化合物の用量は、ほとんど又は全く毒性のないED50を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。用量は、使用した剤形及び使用した投与経路に応じて、この範囲内を変動することができる。正確な処方、投与経路及び用量は、患者の状態を考慮し、個々の医師が選択することができる(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第1章1頁)。
【0108】
治療効果を維持するのに十分である活性化合物の血漿レベルを提供する用量及び間隔は、個別に調節することができる。治療に有効な血清レベルは、毎日の反復投与により達成されることが好ましいであろう。局所投与又は選択的取込みの場合、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度には関連していないことがある。当業者は、必要以上の実験を行うことなく、治療に有効な局所用量を最適化することができるであろう。
【0109】
本組成物は、静脈内(iv)以外の経路により投与することができるが、静脈内投与が好ましい。これは、本療法の標的は、主に腫瘍細胞であり、これは腫瘍に栄養供給する血管に隣接して位置し;従って、本組成物の静脈内投与は、別の投与経路が使用される場合よりも標的化された血管をはるかに迅速に飽和する。加えて、静脈内経路は、特定の組織への更なる標的化の可能性をもたらしている。
【0110】
ひとつの態様においては、組成物を直接標的腫瘍の位置に方向付けるために、カテーテルを使用する。例えば、腫瘍が肝において局在化される場合、その後免疫複合体又は複合されない抗体もしくはそれらの断片が、肝門脈にカテーテルを用いて送達される。この態様において、組成物の全身分布は最小化され、更に可能性のある本療法の副作用を最小化する。
【0111】
IV. スクリーニング法
様々なスクリーニング法を用い、化合物が、腫瘍転移及び/又はCD26/DPP IVのADAへの結合を阻害する能力を決定することができる。本願明細書に説明された方法において、多くの化合物は、CD26及び/又はプラスミノーゲンに結合することができるが、これらはCD26又はプラスミノーゲンに結合するという事実のみでは、腫瘍転移又はADA結合に対するそれらの最終的な作用を決定するものではない。これらのスクリーニング法を用い、CD26のプラスミノーゲンへの結合及び/又はCD26/DPP IVのADAとの結合に対する、一旦結合した化合物の最終的作用を決定することができる。
【0112】
様々なスクリーニング法を用い、これらの標的に結合した化合物の活性を決定することができる。適当なスクリーニング法の例は、MPP-9合成の測定、マトリゲル侵襲の測定、及び腫瘍転移の測定を含む。
これらの化合物は、それらの生物学的活性を決定するために、in vitroアッセイを用い評価することができる。これらのアッセイを、当業者は熟知しており、かつこれはマトリゲル侵襲アッセイを含む。これらのアッセイにおける化合物の転移阻害能は、その化合物が、多かれ少なかれアンギオスタチンのCD26との相互作用を模倣することができることを示すであろう。
【0113】
これらの化合物の生物学的活性は、in vivoにおいても試験することができる。適当なアッセイの例は、B16B16転移アッセイ又はLewis Lung Carcinoma原発性腫瘍又は転移アッセイを含む。このような実験において、化合物の活性は、望ましいならばアンギオスタチンのそれと比較することができる。適当な結合アッセイを以下に詳述する。
【0114】
V. 結合アッセイ
CD26及び/又はプラスミノーゲン、又は単離されたポリペプチド標的IL340VAR及びIL31 3QWLRRIは、適当な培地に存在することができるか、腫瘍細胞の表面に発現することができるか、又はこれらのポリペプチドを発現するように操作された細胞において発現することができる。
【0115】
本願明細書に説明された結合アッセイは、いずれかの標的の短縮型を使用することができる。結合アッセイは、1種又は複数の標的(又はこれを含有する融合タンパク質)を、それが有利なことに、検出可能な標識(例えば、放射性又は蛍光標識)を持つような被験化合物(タンパク質性又は非タンパク質性)と共にインキュベーションする細胞-非含有アッセイを含む。インキュベーション後、遊離の又は被験化合物に結合した標的は、未結合の被験化合物から、様々な技術のいずれかを用いて分離することができる。例えば、これらの標的は、固形支持体(例えば、プレート又はカラム)に結合することができ、かつ未結合の被験化合物が洗浄除去される。その後標的に結合した被験化合物の量が、例えば、使用した標識の検出に適した技術(例えば、放射性標識された被験化合物の場合は液体シンチレーション計測及びγ線計測により、もしくは蛍光光度法分析により)を用いて決定される。
【0116】
結合アッセイは、細胞-非含有競合的結合アッセイの形であることもできる。このようなアッセイにおいて、1種又は複数の標的が、標的と相互作用することが分かっている化合物と共にインキュベーションされ、その化合物は、有利なことに、検出可能な標識(例えば、放射性又は蛍光標識)を有する。被験化合物(タンパク質性又は非-タンパク質性)は、反応系に添加され、かつ標的への結合について既知の(標識された)化合物と競合するその能力がアッセイされる。
【0117】
遊離の既知の(標識された)化合物は、結合した既知の化合物から分離され、かつ結合した既知の化合物量が決定され、被験化合物の競合する能力が評価される。このアッセイは、より容易に未結合の反応体を洗浄除去するために、標的を固形支持体に連結することにより、非常に多数の被験化合物のスクリーニングを促進するように設定することができる。プラスチック製支持体、例えば、プラスチックプレート(例えば、96ウェル皿)が好ましい。前述の標的は、天然の給源(例えば、膜調製物)から単離されるか、もしくは組換え的又は化学的に調製される。これらの標的は、融合タンパク質として、例えば公知の組換え技術を用いて調製することができる。好ましい融合タンパク質は、GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)部分、GFP(グリーン蛍光タンパク質)部分(細胞局在化試験に有用)又はHisタグ(親和性精製に有用)がある。非-標的部分が、標的への融合タンパク質、それらのサブユニット又はそれらの結合ドメインのN-末端又はC-末端に存在することができる。
前述のように、これらの標的は、プラスチック又はガラス製のプレート又はビーズ、クロマトグラフィー樹脂(例えば、Sepharose)、フィルター又は膜を含む、固形支持体に連結して存在することができる。このような支持体へタンパク質を付着する方法は、当該技術分野において周知であり、かつ直接的化学付着及び結合対を介した付着(例えば、ビオチン及びアビジン又はビオチン及びストレプトアビジン)を含む。これらの標的は、遊離の又は固形支持体へ結合しているかに関わらず、標識されないか、もしくは検出可能な標識(例えば、蛍光又は放射性標識)を持つことができる。
【0118】
この結合アッセイは、標的が細胞表面に提示される細胞-ベースのアッセイも含む。このようなアッセイにおける使用に適した細胞は、CD26及び/又はプラスミノーゲンを天然に発現している細胞、並びにCD26及び/又はプラスミノーゲン(又はそれらのサブユニット、それらの結合ドメイン及び/又はこれを含む融合タンパク質)を発現するように操作されている細胞を含む。これらの細胞は、正常であるか又は腫瘍形成性であることができる。ヒトCD26を発現している細胞が使用されることは利点である。適当な細胞の例は、原核細胞(例えば、細菌細胞(例えば、E.coli))、下等真核細胞、酵母細胞(例えば、Promega社のハイブリッドキット(CG 1945及びY190)、並びに菌株YPH500及びBJ5457))並びに高等真核細胞(例えば、昆虫細胞及び哺乳類細胞、例えばヒト肺癌細胞(例えば、A549細胞))を含む。
【0119】
細胞は、プロモーターに機能的に連結された、標的、又はそれらのサブユニットもしくはそれらの結合ドメイン又は融合タンパク質をコードしている配列を含む発現構築体を、選択された宿主へ導入することにより、標的を発現するように操作することができる。様々なベクター及びプロモーターを使用することができる。例えば、T7プロモーターを含むpET-24a(+)(Novagen社)は、pGEX-5X-1のような細菌の使用に適している。適当な酵母発現ベクターは、pYES2(Invitron社)を含む。適当なバキュロウイルス発現ベクターは、p2Bac(Invitron社)を含む。適当な哺乳類発現ベクターは、pBK/CMV(Stratagene社)を含む。この構築体の宿主への導入は、様々な標準のトランスフェクション/形質転換プロトコールのいずれかを用いて実行することができる(Molecular Biology, A Laboratory Manual、第2版、J. Sambrook、E.F. Fritsch及びT. Maniatis、Cold Spring Harbor Press社、1989年参照)。こうして作成された細胞は、関連した宿主に適した確立された培養技術を用いて、培養することができる。培養条件は、標的(又はそれらのサブユニット、結合ドメイン又は融合タンパク質)をコードしている配列の発現を確実にするように最適化することができる。細胞-ベースの結合アッセイに関して、標的(又はサブユニット、結合ドメイン又は融合タンパク質)は、宿主細胞膜上(例えば、宿主細胞の表面上)に発現されるが、他の目的に関しては、このコード配列は、発現産物の培養培地への分泌が確実になるように選択することができる。本願明細書に説明された細胞-ベースの結合アッセイは、被験化合物(有利なことに、検出可能な(例えば、放射性又は蛍光)標識を持つ)、標的(又は、それらのサブユニット、それらの結合ドメイン又はそれを含む融合タンパク質)を発現している細胞が培養される培地への添加、結合に好ましい条件下での被験化合物の細胞とのインキュベーション、その後の未結合の被験化合物の除去、及び細胞に会合した被験化合物量の決定により実行することができる。
【0120】
細胞膜上(例えば、細胞表面上)の標的の存在は、下記「実施例」のもののような技術を用いて同定することができる(例えば、細胞表面を、ビオチン標識し、引き続き該タンパク質を蛍光タグで標識する)。膜に会合したタンパク質(例えば、細胞表面タンパク質)も、ウェスタンブロットで分析することができ、かつそれらのバンドには質量分析が施される。例えば、蛍光タグをつけた抗体を用い、その後これらの細胞を別の蛍光タグ付けたタンパク質でプロービングすることができる。各タグは、例えば、共焦点顕微鏡を用い、異なる波長でモニタリングし、同時局在を明らかにすることができる。
【0121】
細胞-非含有アッセイの場合のように、細胞-ベースのアッセイも同じく、標的に結合することがわかっている(及び好ましくは検出可能な標識で標識された)化合物を、標的(又は、それらのサブユニット、それらの結合ドメイン又はそれを含む融合タンパク質)を発現している細胞と共に、被験化合物の存在及び非存在下でインキュベーションするような、競合アッセイの形をとることができる。被験化合物の標的に対する親和性は、被験化合物の存在下でインキュベーションした細胞に会合した既知の化合物の量を決定し、被験化合物の非存在下で細胞に会合した量と比較することにより評価することができる。
【0122】
1種又は複数の前述のアッセイにおいて標的に結合することが可能であると同定された被験化合物は、潜在的に腫瘍転移、細胞移動、増殖及び細胞周囲のタンパク質分解を阻害することができる。標的に結合するその能力を基に選択された特定の被験化合物の特異的作用を決定するために、アッセイが行われ、例えば様々な濃度の選択された被験化合物の、活性、例えば、細胞(例えば、内皮細胞)転移に対する作用を決定することができる。
【0123】
被験化合物の腫瘍転移への作用を決定するために行うことができるアッセイの種類の例は、Lewis Lung Carcinomaアッセイ(O'Reillyら、Cell、79:315 (1994))及び細胞外移動アッセイ(Boyden Chamber Assay;Kleinmanら、Biochemistry、25:312 (1986)及びAlbiniら、Can. Res.、47:3239 (1987))を含む。
【0124】
従って、これらの方法は、化合物を、プラスミノーゲンのCD26への結合を阻害するそれらの能力についてスクリーニングすることを可能にする。前述の様々な方法に加え、アッセイは、比色定量的に又は時間分解蛍光法を用いモニター可能であるようにデザインすることもできる。
【0125】
別の態様において、本発明は、前述のアッセイを用い、CD26に結合することが可能であり及び/又はMMP-9形成を生じるCa2+シグナル伝達カスケードを阻害すると同定された化合物に関する。このような化合物は、新規小分子(例えば、有機化合物(例えば、500ダルトン未満の有機化合物)、及び新規ポリペプチド、オリゴヌクレオチドに加え、新規天然の生成物(好ましくは単離された形)(アルカロイド(alkyloid)、タンニン、グリコシド、脂質、炭水化物などを含む)を含むことができる。CD26に結合する化合物は、例えば腫瘍保持患者において、転移を阻害するために使用することができる。
前述のアッセイにおいて同定された化合物は、医薬組成物として処方することができる。
【0126】
VI. キット
本願明細書に説明されたアッセイを行うのに適したキットを調製することができる。このようなキットは、CD26、又はプラスミノーゲン及び/もしくはそれらのADA結合ドメイン、又はこれを含む融合タンパク質、並びに/又はプラスミノーゲンを含むことができる。これらの成分は、検出可能な標識を有することができる。このキットは、CD26-特異性又はプラスミノーゲン-特異性抗体を含むことができる。
【0127】
キットは、1種又は複数の容器手段中に配置された前記成分のいずれかを含むことができる。更にキットは、このアッセイにおいて使用するための補助的試薬(例えば、緩衝液)を含むことができる。CD26のプラスミノーゲンへの結合に関するアッセイを基にした診断法を用い、腫瘍転移した患者を同定することができる。プラスミノーゲンに結合するCD26がCa2+シグナル伝達カスケードを開始することの実証、並びにCD26及びプラスミノーゲンの結合を阻害するために使用することができる物質を同定する方法の結果的利用可能性は、どの個体が恐らく特定の治療戦略に応答するであろうかということを決定することを可能にする。腫瘍転移に罹患した個体の治療戦略は、より効果的かつ良好な結果の予測可能性をより大きくするようにデザインすることができる。
本発明は更に下記の限定しない実施例を参照しより十分に理解されるであろう。
【実施例】
【0128】
実施例 1:プラスミノーゲンとジペプチジルペプチダーゼIVの相互作用は、前立腺癌細胞によるマトリックスメタロプロテイナーゼ-9の発現を調節するシグナル伝達機構を開始する
プラスミノーゲン(Pg)活性化及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の両方が、悪性細胞転移に必要な事象である、細胞外マトリックス成分のタンパク質分解性崩壊に関連している。高度に侵襲性の1-LNヒト前立腺腫瘍細胞株は、大量のPgアクチベーター及びMMPを合成しかつ分泌している。本発明者らはここで、これらの細胞内の2型Pg(Pg2)受容体が、主に膜糖タンパク質ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)で構成されていることを明らかにする。Pg2は、それらのシアル酸含量が異なる6種のグライコフォームを有する。高度にシアル化されたPg2γ、Pg2δ及びPg2εグライコフォームのみが、DPP IVへ、それらの糖鎖を介して結合し、かつCa2+シグナル伝達カスケードを誘導する;しかし、Pg2εのみが、MMP-9の発現を有意に刺激することができる。本発明者らは更に、1-LN細胞のPg-媒介型侵襲性活性は、Pg2εの有効性に左右されることも明らかにする。これは、MMP-9発現とPg活性化システムの間の直接的関係を最初に明らかにしている。
【0129】
緒言
通常多くの腫瘍の侵襲性の挙動に関連している攻撃的表現型の発生は、細胞外マトリックス(ECM)1の成分を消化することができるプロテイナーゼの発現を増大し、その結果基底膜及び間質障壁を通る悪性細胞の通過を可能にすることに関連している[1]。これらの酵素において、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン(Pg)アクチベーター(u-PA)及びMMP-2及び9を含む様々なマトリックス-分解性メタロプロテイナーゼ(MMP)は、重要な役割を果たす[2-5]。具体的関連は、これらの酵素が、限定されたタンパク質分解により細胞外で活性化されるような不活性チモーゲン(prou-PA、proMMP)として分泌される場合に認められる。微量のプラスミン(Pm)は、prou-PAを活性化することができ[4]、その結果prou-PA活性化がPgのPmへの転換を触媒する自己維持フィードバック機構を作成する。Pg結合は、u-PA/u-PA受容体(uPAR)複合体に密接して生じ、かつPg活性化を促進するために役立ち、Pmを望ましい作用部位へ閉込め、かつPmに加えそのアクチベーターを、それらの各インヒビターから保護する[4]。Pmは、溶液中[6,7]又は両方のMMPが細胞表面に会合した場合[5,8]のいずれかにおいて、proMMP-2及びproMMP-9を直接活性化する。
【0130】
MMP-9の発現及び活性の調節は、ほとんどの他のMMPのそれよりもより複雑である[9]。MMP-9は、ほとんどの細胞により構成的には産生されない[10,11]が、その活性は、細胞型に応じて異なる刺激により誘導され[12,13]、これにより特異的病態生理学的事象に反応してその活性を増大する手段を提供している。例えば、MMP-9は、ヒト前立腺癌により高レベルで発現されるが、正常な前立腺組織には存在しない[14,15]。高度に侵襲性のDU-145、PC-3、及び1-LNヒト前立腺腫瘍細胞株は、大量のu-PA及びproMMP-9を合成しかつ分泌する[16,17]。
【0131】
ヒトのリウマチ性滑膜線維芽細胞において、Pgの細胞結合及びuPAによるその活性化は、細胞表面上のインテグリンαIIbβ3及びジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)とPg/Pmの相互作用[19,20]を介し、細胞質ゾルの遊離のCa2+ [Ca2+]iの有意な上昇を誘導する[18]。DPP IV活性は、同じく悪性ヒト前立腺癌において上昇する[21]。DU-145及びPC-3細胞は、インテグリンαIIbβ3をその表面に発現する[22];しかし、1-LN細胞によるこのインテグリン又はDPP IVの発現は、評価されていない。ヒトメラノーマ、線維肉腫及び卵巣癌細胞によるMMP-2の発現は、受容体-依存型Ca2+流入により調節されるので[23]、本発明者らは、同様の調節シグナル伝達機構が1-LN細胞によるMMP-9産生に関与している可能性を調べた。2型Pg(Pg2)は、それらのシアル酸含量が異なる6種のグライコフォームを有する[24]。集中的研究は、シアル酸含量はPgの活性化のみではなく、その機能にも影響を及ぼすことを明らかにした[24-27]。現在の研究において、本発明者らは、1-LNヒト前立腺癌細胞への結合後の単独のPg2グライコフォームの機能を研究し、かつPg2α及びPg2βが、L-リシン部位-依存型受容体に結合するのに対し、高度にシアル化されたPg2γ、Pg2δ及びPg2εグライコフォームは主にDPP IVに結合することを発見した。本発明者らは更に、Pg2ε単独と会合したDPP IVは、proMMP-9の発現を調節することを示すデータも提示している。
【0132】
実験手法
材料 − 培養培地は、Life Technologies社(Gaithersburg, MD)から購入した。1-[2-(5-カルボキシオキサゾール-2-オキシル-6-アミノベンゾフラン-5-オキシル]-2-(2'-アミノ-5'-メチルフェノキシエタン-N,N,N',N'-四酢酸)-アセトキシメチルエステル(Fura-2/AM)は、Molecular Probes社(Eugene, OR)から入手した。二本鎖の高分子量u-PA(Mr 〜54,000)は、Calbiochem社(Richmond, CA)から得た。色素産生性Pm基質Val-Leu-Lys-p-ニトロアニリド(VLK-pNA, S-2251)及び色素産生性DPP IV基質Gly-Pro-p-ニトロアニリドは、Sigma Chemical社(St. Louis, MO)から購入した。使用した他の試薬は、入手可能な最高級のものであった。
【0133】
抗体 − モノクローナル抗体(mAb)SZ21(IMMUNOTECH社, Westbrook, ME)は、血小板GPIIIa(β3)-サブユニットに特異的に結合する[28]。抗-ジペプチジルペプチダーゼIV mAbクローン236.3[29]は、Dr. Douglas C. Hixson (Brown University, Providence, RI)のご厚意により贈与されたものである。抗-u-PA mAb 390、及びヤギ抗-ヒト組換え組織-型Pgアクチベーター(t-PA)IgGは、両方とも抗-触媒性であり、American Diagnostica社(Greenwich, CT)から購入した。抗-線維芽細胞活性化タンパク質α(FAPα)、mAb F19 [27]は、Dr. Pilar Garin-Chesa (Thomae社, Biberach, 独国)から贈与された。抗-触媒性抗-MMP-9 mAbであるクローン6-6B[28]は、Oncogene Research Products社(Cambridge, MA)から購入した。ヤギ抗-マウスIgG-アルカリホスファターゼ複合抗体は、Sigma Chemical社から購入した。
【0134】
タンパク質 − Pgは、L-リシンSepharose上でヒト血漿からアフィニティクロマトグラフィーにより精製し[32]、かつコンカナバリンA-Sepharose上でのアフィニティクロマトグラフィーにより、2種類のアイソフォーム1及び2型に分離した[33]。Pg2のその6種のグライコフォームへの分画及びシアル酸含量の測定は、先に説明されたように行った[24]。天然のPg2における最初の5種のPg2グライコフォームの平均分布は、5種の個別の調製物からの、FPLCシステムに連結されたMono Pカラム上でのクロマトフォーカシング[24]を用い各々精製したグライコフォームについて得られた収量から算出した。Pgφの割合は、Sambucus nigraアグルチニンレクチン-Sepharoseカラム上での天然のPg2のクロマトグラフィー[34]後に得られたタンパク質量から算出し、かつ更に5種の個別の調製物の平均値を表わした。Markwellの方法により、放射性ヨウ素処理(radiciodination)を行った[35]。放射能を、Pharmacia LKB Biotechnology 1272γカウンター(Rockville, MD)で測定した。125Iの取込みは、〜8 x 106cpm/nmolタンパク質であった。125I-標識したPgは、L-リシン-Sepharose上でのアフィニティクロマトグラフィーにより再精製し、その後結合実験に使用した。
【0135】
細胞培養 − ヒト前立腺腫瘍細胞株1-LNは、10%ウシ胎仔血清、100ユニット/mlペニシリンG、及び100ng/mlストレプトマイシンを補充したRPMI 1640において増殖した。
【0136】
1-LN細胞膜からのDPP IVの精製 − 20培養フラスコ(150cm2)中で増殖した細胞を、ハンクス平衡化塩溶液(HBSS)中の10mM EDTAで剥離し、遠心によりペレット化した。この細胞ペレットを、0.25 Mショ糖及び0.5mg/mlの各下記プロテアーゼインヒビターを含有する20mM Hepes(pH7.2)の10ml中に浮遊させた:アンチパイン-HCl、ベスタチン、キモスタチン、トランスエポキシスクシニル-L-ロイシルアミド-(4-グアニジノ)ブタン(E-64)、ロイペプチン、ペプスタチン、O-フェナントロリン、及びアプロチニン。細胞を、氷上音波処理により溶解した(30秒間隔で10秒間バーストを5回)。全ての手法は、4℃で行った。ホモジネートを、800 x gで15分間遠心し、破壊されない細胞及び核を除去し、引き続き上清を50,000 x gで1時間遠心した。細胞膜を含有するペレットを、1%(v/v)TritonX-100を含有する20mM Tris-HCl(pH8.0)中に懸濁し、膜を可溶化し、再度50,000 x gで30分間遠心し、不溶性の物質を取り除いた。この上清中及び下記の全精製工程の中のDPP IV活性を、DPP IV基質Gly-Pro-pNAを使用する色素産生性アッセイによりモニタリングした[36]。この酵素を、DEAE-Sepharoseイオン交換クロマトグラフィー及びGly-Leu-Sepharoseアフィニティクロマトグラフィーを用い均質となるまで逐次精製し[37]、引き続きコンカナバリンA-Sepharoseでのクロマトグラフィー及びSepharose S-200カラム上でのゲルろ過を行った。これらの工程は、完全に活性のあるDPP IV(〜40μg/1 x 109細胞)を生じた。電気泳動分析は、本質的に均質なタンパク質を示した。このタンパク質試料は、マトリックス-支援レーザー脱離イオン化MSにより分析し、かつ得られた質量スペクトルペプチド地図(30ペプチド)を用い、OWLタンパク質データベースリリース29.6において、DPP IVを同定した[38,39]。
【0137】
タンパク質配列解析 − タンパク質(100pmol)を、気相/液相シークエンサー(モデル477A;Applied Biosystems社、Foster City, CA)において、HPLC(モデル120A;Applied Biosystems社、Foster City, CA)を用いるオンラインPTH分析により、自動式エドマン分解により配列決定した。これらの装置は、製造業者により配布された使用者向け公報及び取扱説明書の推奨に従い操作した。
【0138】
リガンド結合分析 − 細胞は、単層が集密となるまで、組織培養プレートにおいて増殖した。結合アッセイに使用する前に、これらの細胞を、HBSSで洗浄した。全ての結合アッセイは、2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するRPMI 1640において4℃で行った。125I-標識したPg2グライコフォームの濃度を上昇し、各々、48-ウェル又は96-ウェル培養プレートにおいて60分間細胞と共にインキュベーションした。インキュベーション混合物の吸引し、かつ細胞単層を2%BSAを含有するRPMI 1640で3回迅速に洗浄することにより、遊離リガンドを、結合したものから分離した。その後これらの細胞を、0.1M NaOHで溶解し、結合した放射能を、Pharmacia LKB Biotechnology 1272-γカウンターで測定した。結合したリガンド分子は、標識しない100μM Pg2の存在下で測定した非特異的結合を減算した後、算出した。解離定数(Kd)値及びPg2グライコフォームの最大結合(Bmax)の推定値を、データを、Windows版統計プログラムSYStat(商標)を用いLangmuir等温式に直接当てはめることにより決定した。
【0139】
固相放射性リガンド結合試験 − Pg2グライコフォームの1-LN細胞から精製したDPP IVの固定したものへの特異的結合を調べるために、96-ウェルストリッププレートを、DPP IV(0.1M炭酸ナトリウム中1μg/ml、pH9.6、200μl/ウェル、37℃、2時間)で被覆した。被覆後、プレートを、0.05%Tween-80を含有する10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.4(PBS-Tween)の200μlで洗浄し、未結合のタンパク質を除去した。非特異的部位を、2%BSAを含有するPBS-Tweenと共に室温で1時間インキュベーションすることによりブロックした。プレートを、PBS-Tweenの200μlで2回洗浄し、風乾し、4℃で保存した。アッセイのために、125I-標識したPg2グライコフォームの増大する濃度を、50-倍過剰な標識しないリガンドを伴う又は伴わずに、3つ組のウェルに添加し、かつ37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、上清を除去し、プレートを200μl PBS-Tweenで3回洗浄した。ウェルを、プレートから剥がし、かつ放射能を測定した。特異的結合を、標識されないリガンド存在時に測定された非特異的結合を減算することにより算出した。
【0140】
細胞内カルシウムレベルの測定 − 細胞質ゾル遊離カルシウム[Ca2+]iを、先に説明された[18]ように、蛍光指示薬Fura-2/AMを用い、Digital Imaging Microscopy(DIM)により測定した。
【0141】
ゼラチンザイモグラフィー − タンパク質試料を、非還元条件下、SDSの存在するゼラチン-含有する厚さ0.75mmの10%ポリアクリルアミドゲルにおいて電気泳動した[40]。電気泳動で走行が完了した後、これらのゲルを、ふたつの変更点(change)のある2.5%Triton X-100と共に1時間インキュベーションし、その後1mM CaCl2、及び0.1M ZnCl2を含有する0.1Mグリシン-NaOH(pH8.3)中37℃で18時間インキュベーションし、その後クーマシーブリリアントブルーR-250で染色し、溶解バンドを可視化した。
【0142】
溶液中のMMP-9活性 − 組織培養上清中のMMP-9活性は、1-LN細胞馴化培地(10L)からのゼラチン-Sepharose上でのアフィニティクロマトグラフィーにより精製した標準MMP-9を用いる、定量的ザイモグラフィー[41]により測定した[42]。Pg2グライコフォーム及び/又はPg結合又は活性化のインヒビターと共にインキュベーションした、48ウェル培養プレート(1.7 x 106細胞/ウェル)中の1-LN細胞単層からの馴化培地(50μl)を、ゼラチン-含有ゲル上で電気泳動し、かつ溶解の程度を、Gelman ACD-15 Automatic Computing Densitometer (Gelman Instrument社、Ann Arbor, MI)を用い定量した。値は、選択されたバンド密度の積分により決定し、かつ単位(unit) x mm2で表わした。各ゲルは、3回走査し、バンドの積分密度の平均値を用い、同じ条件下で電気泳動した精製された活性MMP-9で作成された検量線からMMP-9のレベルを決定した。このデータの統計解析を、Windows95版のプログラムSYSTAT(商標)を用い、IBM 433 DX/Sコンピュータにおいて行った。平均値間の統計的有意差は、スチューデントt-検定により評価した。MMP-9は、10%SDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)での電気泳動分離により、馴化培地中において陽性に同定され、電気泳動したタンパク質をニトロセルロース膜電気的にブロッティングし、かつ抗-MMP-9 mAb(1μg/ml)と反応し、引き続き二次アルカリホスファターゼ複合した抗-マウスIgGと反応した。検出は、10mM Tris-HCl(pH8.5)を溶媒とするニトロブルーテトラゾリウム存在下でのアルカリホスファターゼ基質5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(各1mM)との反応により行った。
【0143】
ゲル電気泳動 − 電気泳動は、0.1%SDSを含有するポリアクリルアミドゲル(厚さ1.2-mm、14 x 10cm)上で行った。非連続Laemli緩衝系を使用した[43]。タンパク質の可視化は、45%メタノール/10%酢酸を溶媒とする0.25%クーマシーブリリアントブルーR-250によるゲルの染色により行った。ニトロセルロースペーパーへの移動は、ウェスタンブロット法により行った[44]。使用した色素-複合した分子量マーカー(BioRad社, Richmond, CA)は、ミオシン(Mr=218,000)、β-ガラクトシダーゼ(Mr=134,000)、ウシ血清アルブミン(Mr=84,000)、炭酸脱水酵素(Mr=44,000)、及びダイズトリプシンインヒビター(Mr=32,000)であった。
【0144】
フローサイトメトリー − 1-LN細胞を、10%ウシ血清を含有するRPMI 1640中で37℃で、接着単層として増殖した。細胞を、10mM EDTAを含有するCa2+及びMg2+-非含有PBSとの、37℃で5分間のインキュベーションにより剥離し、その後ペレット化した。細胞を、氷冷した染色緩衝液(フェノールレッド-非含有HBSS、1%BSA、0.1%NaN3)中で、濃度1 x 107細胞/mlで再浮遊した。これらの細胞浮遊液のアリコート(100μl)を、FITC-複合した抗-ヒトDPP IV、FITC-複合した抗-ヒトGPIIIa(β3)又はFTIC-複合したイソタイプ対照マウスモノクローナル抗体のいずれかの適宜希釈液と共に、90分間氷上でインキュベーションした。細胞-表面FAPαの分析のために、細胞は、最初に氷上で抗-FAPα mAb F19と共に90分間インキュベーションし、次にFITC-複合した抗-マウスIgGと共に更に90分間インキュベーションした。その後細胞を、氷冷した染色緩衝液で3回洗浄し、氷冷した10%ホルマリン中に再浮遊し、かつ暗所において4℃で、フローサイトメトリーによる分析時まで貯蔵した。波長408nmでの励起後の相対蛍光の平均を、FACScanフローサイトメーター(Becton-Dickinson社, Franklin Lakes, NJ)で、各試料について決定し、かつCELLQUES(商標)ソフトウェア(Becton-Dickinson社, Franklin Lanes, NJ)により解析した。
【0145】
RNA単離 − Pgにより誘導されたMMP-9 mRNAの変化を決定するために、1-LN細胞を、48ウェル培養プレート(1.7 x 106細胞/ウェル)において増殖し、各個別のPg2グライコフォームと共に24時間37℃でインキュベーションした。その後細胞単層を、血清-非含有RPMI 1640で2回洗浄し、かつ総RNAを、RNeach Miniキット(Qiagen社, Chatsworth, CA)を製造業者の指示に従い用い、単工程法で抽出した。
【0146】
逆転写-PCR(RT-PCR)によるMMP-9 mRNAレベルの測定 − 総RNAを、20μl反応混合液中1μgのRNAにより、M-MLV逆転写酵素(200U)及びオリゴd(T)をプライマーとして使用し、42℃で1時間逆転写した。得られたcDNA(5μl)を鋳型として用い、MMP-9 cDNAの212-bpセグメントを、ヒトMMP-9 mRNAの2079-2102位と同じ24-mer上流プライマー(5'-AGTTGAACCAGGTGGACCAAGTGG-3')、及び2270-2298位に相補的な29-mer下流プライマー(5'-AACAAAAAACAAAGGTGAGAAGAGAGGGC-3')を用いて増幅した[45]。グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH, 構成的内部対照)cDNAの600-bpセグメントを、ヒトGAPDH mRNAの212-235位と同じ24-mer上流プライマー(5'-CCACCCATGGCAAATTCCATGGCA-2')、及び786-809位に相補的な 24-mer下流プライマー(5'-TCTAGACGGCAGGTCAGGTCCACC-3')を用い、同時増幅した[46]。増幅は、Techne Thermal Cycler PHC-3で、28サイクル(1サイクル=94℃で45秒間、60℃で45秒間、及び72℃で45秒間)行った。PCR産物を、1.2%アガロース-臭化エチジウムゲル上で分析した。これらのゲルを写真撮影し、かつ個別のMMP-9及びGAPDH mRNAバンドの強度を、Molecular Dynamics Personal Densitometerを用い、レーザー密度走査により測定した。MMP-9 mRNAレベルの変化は、MMP-9 mRNA/GAPDH mRNAバンド強度の相対比として表わした。
【0147】
In Vitro侵襲アッセイ − Matrigel(登録商標)に侵襲する1-LN細胞の能力を決定することにより、in vitroにおける侵襲性の活性を評価した[47]。ポリカーボネートフィルター(孔径8-μm;Becton Dickinson社, Franklin Lakes, NJ)を、マトリゲル(12μg/フィルター)で被覆し、かつ修飾されたBoydenチャンバー内に配置した。細胞(1x105個)を、抗-DPP IV、抗-u-PA又は抗-MMP-9 IgGの存在又は非存在下で、血清-非含有RPMI 1640培地、又は精製したPg2グライコフォーム含有培地が入った上部チャンバーに添加し、かつ湿潤大気中で48時間インキュベーションした。インキュベーション後、侵襲していない細胞を、上部チャンバーから綿棒により除去し、かつフィルターを切出し、Cyto-Quik(商標)(Fisher Scientific社, Fair Lawn, NJ)で染色した。フィルターの下側表面上の細胞を、接眼マイクロメーターを用い、かつ5個の高検出力視野(high-powered field)の最低値を計測することで、数え上げた。各実験は、3つ組試料で2回行った。
【0148】
結果
単独のPg2グライコフォームの1-LNヒト前立腺腫瘍細胞への結合 − 125I-標識した単独のPg2グライコフォームの1-LN細胞への結合は、「実験手法」の項に説明したように決定した。天然のPg2は、それらのシアル酸含量が異なる6種類のグライコフォームを有する[24]。結合実験(図1)は、Pg2α、β、γ、δ及びε(各々、シアル酸1.3、2.2、2.95、5.77及び5.34mol/mol Pg)は、高親和性の用量依存的方法でかつ多数の部位へと1-LN細胞に結合することを示している(表1)。Pg2φ(シアル酸13.65mol/mol Pg)は、1-LN細胞へ結合しない。
【0149】
個別のPg2グライコフォームの1-LN細胞への結合機序を評価するために、本発明者らは、6-アミノヘキサン酸(6-AHA)及びL-乳糖の存在下での各グライコフォームと共にインキュベーションした細胞によるそれらの活性化を試験した。抗線維素溶解性アミノ酸6-AHAは、PgのL-リシン結合部位と、いくつかの細胞膜-会合成分の相互作用を妨害する[48,49]。L-乳糖は、Neu 5-AC (α2-3)又は(α2-6)残基のシアル酸結合タンパク質との結合を妨害し[50]、かつ天然のPg2のリウマチ性滑液線維芽細胞の細胞表面上のDPP IVへの結合を阻害する[20]糖である。漸増濃度の6-AHA存在下での、これらの細胞の、単独のPg2グライコフォームとのインキュベーションは、Pg2α及びPg2βの結合を阻害した(図2A)が、漸増濃度のL-乳糖は、Pg2γ、2δ及び2εの結合を阻害した(図2B)。まとめると、これらの実験は、Pg2α及び2βはそれらのL-リシン結合部位を介し1-LN細胞へ結合すること、並びにPg2γ、δ及びεはそれらの糖鎖を介して結合することを示唆している。Pg2グライコフォームの活性化は、抗-uPA抗体により阻害され、かつ抗-t-PA抗体により影響を受けず、このことは、u-PAが、1-LN細胞表面での主要なPgアクチベーターであることを示唆している(データは示さず)。
【0150】
フローサイトメトリーによるDPP-IV、β3、及びFAPα抗体の1-LN細胞表面への結合の分析 − 1-LN細胞は、「実験手法」の項に説明したように、蛍光標示式フローサイトメトリー(FACS)により分析した。これらの実験には、血小板GPIIIa(β3)抗原に特異的なmAb SZ21及びヒトDPP IVに特異的なクローン236.3を用いた。FITC-標識したIgGと反応した1-LN細胞のFACSにより決定されるように、細胞は抗-DPP IV抗体と反応するが(図3A)、細胞はそれらの表面上に検出可能なGPIIIa(β3)抗原を示さなかった(図3B)。リウマチ性滑液線維芽細胞において、インテグリンβ3は、PgのためのL-リシン結合部位受容体として働くのに対し、DPP IVはPgシアル酸受容体である[19,20]。1-LN細胞にβ3が存在しないことは、これらの細胞におけるPgについて異なるL-リシン結合部位を示唆している。
【0151】
DPP IVは、上皮癌の反応性間質線維芽細胞並びに悪性骨及び軟組織肉腫細胞において選択的に発現された細胞表面抗原[52]は、ヒト線維芽細胞活性化タンパク質a(PAPα)とアミノ酸配列同一性を48%共有した[51]。DPP IV及びFAPαは、アミノ酸配列LQWLRRを共有し[51]、これはリウマチ性滑液線維芽細胞DPP IVは、Pg糖鎖の結合部位として働くので[20]、本発明者らは、1-LN細胞表面上のFAPαの発現を調べた。本発明者らは、FAPαに特異的であるが、DPP IVとは交差反応性でないmAb F19を使用した[52,53]。1-LN細胞はmAb F19と反応し、その後FACSで分析し、それらの表面上に検出可能なFAPαが存在しないことを示した(図3C)。
【0152】
1-LN細胞膜から単離した固定したDPP IVへのPg2グライコフォームの結合 − 一旦Pg受容体として同定された、1-LN細胞膜由来のDPP IVは、「実験手法」の項に説明したように、均質に精製した。これらのタンパク質の電気泳動分析を、図4Aに示している。電気泳動した物質のクーマシーブリリアントブルーR-250染色(図4A, 挿入図:レーン1)は、Mr〜120,000サイズ範囲の主要タンパク質バンドを示している。mAbクローンとのブロット結合アッセイは、Mr〜120,000サイズ範囲である。DPP IVに特異的なmAbクローン236. 3とのブロット結合アッセイ[26]は、Mr〜120,000タンパク質バンドとのみ反応性があることを示している(図4A, 挿入図:レーン2)。細胞培養プレート上のDPP IV固定及びPg2グライコフォームの結合アッセイは、「実験手法」の項に説明したように行った。Pg2γ、δ及びεのみが、このDPP IVへ、用量依存的かつ飽和可能な様式で結合している(図4A)。Pg2α、β及びφとの特異的結合は、認められなかった。漸増濃度のL-乳糖存在下での個別の125I-標識したPg2γ、2δ及び2εの各々(各0.1μM)のDPP IVへの、結合は、漸進的に阻害され(図4B)、このことは、Pgシアル酸残基が、この相互作用に関連していることを示唆している。Pg2γ、δ及びεは、65%を超えるPg2グライコフォーム分布を説明しかつPg2φは結合できないので(表1)、これらの結果は、DPP IVは、1-LN細胞において主要なPg2受容体であることを示唆している。
【0153】
1-LN細胞表面上に結合しているPg2グライコフォームに対する[Ca2+]i反応 − 本発明者らは、各個別のPg2グライコフォームの1-LN細胞表面への結合後の[Ca2+]iの変化を測定した。Pg2α及びβは、いかなる変化も生じなかった(各々、図5A及び5B)。しかし、Pg2γ、δ又はεの結合は、[Ca2+]iの反応を誘起した(各々、図5C、5D及び5E)。Pg2φでは反応は認められなかった(図5F)。同様に、細胞は、高度にシアル化されたグライコフォーム(Pg2γ、2δ、及び2ε)を添加する前に、酵素活性を阻害する抗-u-PA IgG又は抗-β IgG(100μg/ml)と共に37℃で1時間インキュベーションした。いずれの細胞集団も、それらの[Ca2+]i反応において大きな変化を示さなかった(データは示さず)。しかし、Pg糖鎖のDPP IVとの相互作用を妨害する[24]L-乳糖(100mM)は、Pg2γ、δ、又はεにより誘導された反応を阻害することができる(各々、図5G、5H及び5I)。[Ca2+]i反応の同様の阻害(データは示さず)が、細胞がこれらのグライコフォーム添加前に抗-DPP IV mAb 236.3(50μg/ml)と共にプレインキュベーションされた場合に認められた。これらの結果は、先に報告された知見と一致し、このことは、[Ca2+]i反応が、高度にシアル化されたグライコフォーム(Pgγ、δ及びε)と細胞表面上のDPP IVの間の直接の相互作用の結果であり、Pg活性化を必要としないということを示唆している。
【0154】
Pgの1-LN細胞によるMMP-9発現に対する作用 − 細胞を、48-ウェル培養プレートに播種し、かつ10%ウシ胎仔血清を含有するRPMI 1640中において増殖した。その後集密な単層を、RPMI 1640及び0.5%ウシ胎仔血清を含有する静止期培養培地と共に24時間インキュベーションした。各個別のPg2グライコフォーム(0.1μM)を、3つ組の細胞単層に、血清-非含有RPMI 1640の300μl中で添加し、かつ37℃で24時間インキュベーションした。培養培地を収集し、「実験手法」の項に説明したように、MMP-9の分泌を測定した。個別のPg2グライコフォームの存在下で1-LN細胞により培地に分泌されたMMP-9の分析の前に、本発明者らは、Masureらの技法[42]により、馴化培地(5L)からMMP-9を精製した。精製したMMP-9の分析は、図6に示した。精製したタンパク質の電気泳動分析は、Mr〜85,000タンパク質の大きいバンド及びMr〜95,000タンパク質の小さいバンドを示した(図6, レーン1)。抗-MMP-9 mAbによる電気ブロット分析は、この抗体のMr〜85,000及び95,000タンパク質との反応を示している(図6, レーン2)。これらのタンパク質のゼラチンサイモグラフィーは、Mr〜85,000タンパク質との会合における活性のみを示している(図6, レーン3)。アミノ-末端配列分析は、活性MMP-9のアミノ-末端配列に相当する、配列EQTFEGDL[42]を明らかにした。Mr〜95,000タンパク質の同様の分析は、proMMP-9のアミノ-末端配列に相当する、配列APRQRQを得た。これらの結果は、1-LN細胞により培養培地へと分泌されたMMP-9のほとんどは、活性型であることを示唆している。次に本発明者らは、精製されたMMP-9をゼラチンザイモグラフィーによる定量のための標準として使用し、血清-非含有培養培地において個別のPg2グライコフォームと共にインキュベーションした1-LN細胞により培地へ分泌されたMMP-9の分析に進んだ。これらの分析は(図7A)を、Mr〜85,000の活性タンパク質の大きいバンドを示した。このタンパク質の定量(表II)は、Pg2εと共にインキュベーションした1-LN細胞により分泌された活性MMP-9は、他のPg2グライコフォーム又は培養培地と共にインキュベーションされた細胞と比較した場合に、3-倍の刺激を示した(p<0.001)。これらの馴化培地の試料も、還元条件下でSDS-PAGEを施し、ニトロセルロース膜にブロットし、その後抗-MMP-9 mAbと反応した(図7B)。これらの試験は同じく、Pg2εのみが、MMP-9産生を刺激することも示唆している。6-AHA(100mM)及び個別のPg2グライコフォームと同時にインキュベーションされた細胞は、対照と比較した場合に、MMP-9の産生において大きな変化を示さなかった(表II)。L-乳糖(100mM)の存在下各個別のPg2グライコフォームと共にインキュベーションした細胞の馴化培地のザイモグラム(図7C)は、各Pg2グライコフォームに関するMMP-9産生の平均的減少を示したが、Pg2ε以外は、MMP-9産生の1/12の減少を示し(p<0.0001)(表II)、抗-MMP-9 mAbと反応した電気ブロットでは、ほぼ検出不能レベルであった(図7D)。抗-DPP IV mAb 236.3及びPg2εと同時インキュベーションした細胞によるMMP-9産生の1/4の減少(p<0.001)(表II)が、馴化培地において明らかに認められる(各々図8A及び8Bのレーン6)。
【0155】
MMP-9 mRNAレベルの相対変化の測定(図9)は、Pg2εと共にインキュベーションした細胞におけるMMP-9 mRNAの発現の有意な増加を示している。しかしPg2α、2β、2γ、又は2δグライコフォームと共にインキュベーションした細胞は、血清-非含有培地のみと共にインキュベーションした対照細胞と比較した場合に、それらの相対mRNAレベル(MMP-9 mRNA/GAPDH mRNAの比)の有意な変化を示さなかった。Pg2ε及び結合阻害性抗-DPP IV IgGと同時インキュベーションした細胞は、血清-非含有培地のみと共にインキュベーションした対照細胞と比較した場合に、それらの相対MMP-9 mRNAレベルの変化を示さなかった。まとめると、これらの結果は、Pg2εは、MMP-9の発現を有意に刺激するのみではなく、その活性化にも関与していることを示唆している。
【0156】
Pgの1-LN細胞侵襲に対する作用 − Pgは、前立腺癌PC-3及びDU-145細胞株が、合成基底膜マトリゲル(登録商標)に浸潤する能力を増強する[54]。PgがMMP-9の分泌を介して侵襲を調節するかどうかを決定するために、1-LN細胞を、精製したPg2グライコフォームの存在下で、様々な阻害抗体と共にインキュベーションした。表IIIは、Pg2εが、細胞侵襲を6〜7-倍増強することを示している。Pg2εの酵素活性を阻害する抗-u-PA又は抗-MMP-9との同時インキュベーションは、ほぼ検出不能なレベルへと侵襲を減少した。同様の結果が、Pg2ε及び抗-DPP IV IgGと同時インキュベーションした細胞において認められた。これらの結果は更に、Pg2εは、MMP-9の発現を刺激するその能力の結果の作用である、1-LN細胞侵襲活性を有意に増強する唯一のグライコフォームであることを明らかにしている。
【0157】
考察
ECM成分の分解は、腫瘍侵襲及びリウマチ様関節炎を含む、様々な組織リモデリングプロセスにおいて生じる。線維素溶解システム及びMMPを必要とする複雑な機構は、腫瘍間質生成及びリウマチ様関節炎における血管パンヌス発生を支配する[55]。両方の異常において、Pg活性化システム及びMMPの産生はアップレギュレーションされ、リウマチ様関節炎における関節破壊及び播種性癌細胞による基底膜浸潤の両方に寄与するECM成分の分解につながる[55,56]。これらの理由のために、本発明者らは、同様のPg受容体が、同じくヒト前立腺癌細胞中に存在する可能性、並びにこれらがMMP-9の発現及び活性化の調節に関与している可能性を調べた。本発明者らは、高度に侵襲性の1-LNヒト前立腺腫瘍細胞株[57]を試験し、その理由は、これらの細胞は、u-PA及びMMPを大量に合成しかつ分泌するからである[17]。本発明者らは、リウマチ性滑液線維芽細胞とは異なり、膜糖タンパク質DPP IVに会合したβ3インテグリンは認めなかった。本発明者らの知見は、表IVにまとめている。より少なくシアル化されたPg2α及びPg2βは、これらの細胞へ、L-リシン結合部位を介して結合し、これらは、[Ca2+]i反応を誘起せず、かつこれらはMMP-9の分泌又は発現に関与しない。Pg2γ、Pg2δ、及びPg2εは、DPP IVに、それらのシアル酸残基を介して結合し、かつ[Ca2+]i反応を誘導する[20];しかし、Pg2εのみは、MMP-9の発現及び分泌を誘導することができる。滑液線維芽細胞中の[Ca2+]i反応は、Pgのインテグリンβ3への結合及びそれらのDPP IVとの相互作用前のu-PAによる活性化を必要としている[19,20]のに対し、1-LN細胞においては、PgのDPP IVとの直接反応が同様の反応を誘導する。1-LN細胞上のPg2α及び2βのL-リシン依存型受容体の同一性はまだ不明である;しかし、その調節部位としての可能性のために、本発明者らは、その同一性を現在研究している。
【0158】
循環血中において、Pg2濃度は、Pg1よりも2-倍大きい;しかし、血管外空隙において、Pg2の濃度は、Pg1よりもほぼ6-倍大きい[58]。Pg1は、Thr-345に1個のO-グリカン及びAsn-288に1個の二分岐のN-グリカンを含むのに対し、Pg2は、O-グリカン鎖のみを含む[59,60]。Pg1活性化は、u-PA又はt-PAのいずれかによりフィブリンの存在下で、Pg2の場合よりも増強され[61]、このことは、血管内空隙におけるPg1の好ましい役割を示唆している[58]。細胞外空隙におけるPg2のPg1に対する比のシフトは、細胞表面での代謝時のPm形成の好ましい形としての、Pg2グライコフォームの重要な役割を示唆している[62]。この状況において、Pg2εは、細胞表面において優先的に機能するはずであり、そこでその糖含量、一般にはシアル酸含量は、その機能の調節において特に重要な役割を果たし得る。
【0159】
Pg2δ及び2εは、ほぼ同量のシアル酸(シアル酸5.77及び5.34mol/mol Pg)を含有する。しかし、Pg2εのpIはより酸性であるので[24]、このことはMMP-9の発現を誘導するその能力にとって重要であり得るようなその構造の追加の二次的修飾を示唆している。このPg2εのpIのシフトは、Pg分子のリン酸化に関連しているかもしれない[63]。この状況において、Tyr及びSerリン酸化に随伴したu-PAのpIの9.2から7.6へのシフトは、転移性腫瘍細胞におけるpp60 src及びプロテインキナーゼCの活性化に関連している[64.66]。しかし、Pg及びu-PAリン酸化に関与したキナーゼ又はこれらのタンパク質により発揮される複数の生物学的機能におけるそれらの役割に関する入手可能なデータはない。
【0160】
1-LN細胞のPg-媒介型侵襲活性は、u-PA又はMMP-9の酵素活性を阻害するmAbにより、効果的にブロックされ、このことは、腫瘍細胞微小環境中のPmが、ECM成分の直接のタンパク質分解によるか[13,67]、又は細胞表面に結合したproMMP-9の活性化能によるか[5]のいずれかにより、侵襲活性を増強することができることを示唆している。標的化されたt-PA、u-PA又はPg遺伝子の不活性化を伴うマウスにおける最近の研究は[68]、proMMP-9活性化が、t-PA又はu-PAの非存在下でも生じるのに対し、活性MMP-9は、Pgの非存在下では検出されないことを示している。Pgがこの状況において活性化されることの機序は不明である。本発明者らの試験は、Pgは、それのフィブリンを分解するPmの生成能によるのみではなく、それがMMP-9の発現及び活性化を刺激することにもより、細胞移動に影響を及ぼすことを明らかにした。
【0161】
CD26として知られているT細胞にDPP IVが作用する複数の機能[69]に加え、この糖タンパク質は、ラットの乳癌細胞による肺転移を媒介する内皮細胞接着分子であることもわかっている[70]。A2058ヒトメラノーマ癌細胞によるMMP-2及びMMP-9の発現も、受容体-操作したCa2+流入により独立して調節されるが、特異的生理的リガンドは同定されていない[23,71,72]。本発明者らの結果は、DPP IVをPg活性化酵素システム及びMMP-9発現とを関連づける新規証拠を提供しており、かつPgが、細胞外環境においてMMP-9を調節する生化学的機序を示唆している。
【0162】
参考文献
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0163】
脚注:
1 使用した略号:ECM、細胞外マトリックス;MMP、マトリックスメタロプロテイナーゼ;Pg、プラスミノーゲン;Pm、プラスミン;Pg1、1型プラスミノーゲン;Pg2、2型プラスミノーゲン;DPP IV、ジペプチジルペプチダーゼIV(CD26);u-PA、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター;uPAR、u-PA受容体;t-PA、組織型プラスミノーゲンアクチベーター;mAb、モノクローナル抗体;FAPα、線維芽細胞活性化タンパク質α;HBSS、ハンクス平衡化塩溶液;Fura-2/AM、1-[2-(5-カルボキシオキサゾール-2-オキシル)-6-アミノベンゾフラン-5-オキシル]-2-(2'-アミノ-5-メチルフェノ-キシエタン)-N,N,N',N'-四酢酸アセトキシ-メチルエステル;6-AHA、6-アミノヘキサン酸;L-lac、L-乳糖;APMA、p-アミノフェニルメルクリ酢酸;SDS、ドデシル硫酸ナトリウム;PAGE、ポリアクリルアミドゲル電気泳動;FACS、蛍光標示式細胞分別器;RT-PCR、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応。
【0164】
【表1】
【0165】
1 96ウェルストリップ培養プレート中の1-LN細胞単層(2.0 x 104細胞/ウェル)を、漸増濃度の125I-標識したPg2グライコフォームの存在下で、血清-非含有RPMI 1640と共にインキュベーションした。このアッセイ及びPgグライコフォームの分布及び計算並びに結合パラメータは、「実験手法」の項に説明したように行った。示したデータは、3つ組で行った実験から、平均±SDで表わした。
【0166】
【表2】
【0167】
1 48ウェルストリップ培養プレート中の1-LN細胞単層(1.7 x 104細胞/ウェル)を、精製したPg2グライコフォームの非存在又は存在下で、血清-非含有RPMI 1640と共に、容量0.3ml、37℃で24時間、インキュベーションした。天然のPg2の、6-AHA(100mM)、L-乳糖(100mM)又はアプロチニン(1μM)の存在下での作用も評価した。抗-DPP IV IgG及び抗-u-PA IgGを、各々、最終濃度50及び100μg/mlで使用した。培地を収集し、かつアリコート(50μl)を、活性MMP-9についてアッセイした。値は、3回の個別の実験から、平均±SDで表わした。平均間の統計学的有意差は、スチューデントt-検定により評価した。2 nd:決定されず。
【0168】
【表3】
【0169】
1 1-LN細胞(細胞密度1 x 105)を、「実験手法」の項に説明したように、精製したPg2グライコフォーム(0.1μg)の非存在又は存在下で、マトリゲルで被覆した(12μg/フィルター)8-μm孔のフィルターを備えた、変更型Boydenチャンバーに加えた。抗-DPP IV IgG、抗-uPA IgG又は抗-MMP-9 IgGを、各々最終濃度50、100、及び20μg/mlで使用した。37℃で24時間インキュベーションした後、フィルターを切出し、非侵襲細胞を、膜の表面から除き、Cyto-Quik(商標)で染色し、かつ侵襲している細胞を、接眼マイクロメーターを用い数を数え、かつ5個の高検出力視野の最小値を計測した。データは、3つ組で行った実験から、平均±SDで表わした。2 nd:決定されず。
【0170】
【表4】
【0171】
先に引用した文書は全て、それらの全体が本願明細書に参照として組入れられている。前述のことから、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限りは、前述の方法、及び組成物の様々な修飾を行うことができることは、当業者には明かであろう。従って、本発明は、その精神又はそれらの特徴的本質から逸脱しないその他の具体形の態様であっても良い。従って、本態様及び実施例は、全ての点で例証であり、限定ではないとみなされるべきであり、その結果、「特許請求の範囲」と同等の意味及び範囲に収まるあらゆる変更は、本発明内に包含されることが意図されている。本願明細書に引用された全ての文書は、本願明細書に参照として組入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、個別のPg2グライコフォームの1-LNヒト前立腺腫瘍細胞への結合である。漸増濃度の125-I標識したPg2α(○)、Pg2β(●)、Pg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、Pg2ε(□)、又はPg2φ(黒四角)を、1-LN細胞へ添加した。リガンド結合した分子は、「実験手法」の項に説明したような、50-倍過剰な非標識リガンドの存在下で測定した非-特異的結合を減算した後、算出した。データは、3つ組で行われた実験の平均±SDを表わしている。
【0173】
【図2】図2は、個別のPg2グライコフォームの1-LN細胞への結合の阻害である。(A)細胞は、血清-非含有のRPMI 1640中で、単一濃度(0.1μM)の125-I標識したPg2α(○)、Pg2β(●)、Pg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、又はPg2ε(□)と、漸増濃度の6-AHAと共にインキュベーションした。(B)細胞は、血清-非含有のRPMI 1640中で、単一濃度(0.1μM)の125-I標識したPg2α(○)、Pg2β(●)、Pg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、又はPg2ε(□)と、漸増濃度のL-乳糖と共にインキュベーションした。データは、3つ組で行った実験の平均±SDを表わしている。
【0174】
【図3】図3は、1-LN細胞の蛍光標示式細胞分取器分析である。(A)細胞は、FITC-複合した抗-ヒトDPP TVマウスmAb(実線)又はFTIC-複合したイソタイプ対照マウスMab(点線)と共にインキュベーションした。(B)細胞は、FTIC-複合した抗-ヒトGPIIIa(β3)マウスMab(実線)又はFTIC-複合したイソタイプ対照マウスMab(点線)と共にインキュベーションした。(C)細胞は、抗-ヒトFAPα、Mab F19、引き続きFTIC-複合した抗マウスIgG(実線)又はFTIC-複合したイソタイプ対照マウスMab(点線)と共にインキュベーションした。
【0175】
【図4】図4は、個別のPg2グライコフォームの、1-LN細胞膜から単離された固定されたDPP IVに対する結合である。(A)96-ウェルプレートを、1-LN細胞膜由来のDPP IV(1μg/ml)で被覆した。漸増濃度の125-I標識したPg2α(○)、Pg2β(●)、Pg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、Pg2ε(□)、又はPg2φ(黒四角)を、3つ組のウェルに添加し、かつ22℃で1時間インキュベーションした。結合したPgを、「実験手法」の項に記されたように定量した。データは、3つ組で行われた実験の平均±SDで表わしている。差し込み図は、還元条件下での、精製したDPP IV(5μg)の10%SDS-PAGEである。レーン1、クーマシーブリリアントルブーR-250染色したゲル;レーン2、抗-DPP IV IgG(mAb 236.3)とインキュベーションし、その後アルカリホスファターゼ-複合した二次IgGと反応したブロット。(B)漸増濃度のL-乳糖による、125-I標識したPg2γ(△)、Pg2δ(黒三角)、Pg2ε(□) (0.1μM)の、固定したDPP IVへの結合阻害。結合したPgは、「実験手法」の項に記されたように定量した。
【0176】
【図5】図5は、個別のPg2グライコフォームの結合に対する1-LN細胞の[Ca2+]i反応である。細胞は、Fura-2/AMの4μMに、37℃で20分間予備負荷し、[Ca2+]iの変化を、「実験手法」の項に記されたように測定した。矢印は、個別のPg2グライコフォーム(0.1μM)の添加時点を示している。(A)Pg2αによる刺激。(B)Pg2βによる刺激。(C)Pg2γによる刺激。(D)Pg2δによる刺激。(E)Pg2εによる刺激。(F)Pg2φによる刺激。(G)L-乳糖(100mM)の存在下でのPg2γによる刺激。(H)L-乳糖(100mM)の存在下でのPg2δによる刺激。(I)L-乳糖(100mM)の存在下でのPg2εによる刺激。
【0177】
【図6】図6は、1-LN細胞馴化培地から精製したMMP-9の分析である。タンパク質試料(5μg)を、「実験手法」の項に記されたように、連続10%SDS-ポリアクリルアミドゲルにおいて分解し、及びニトロセルロース膜上に電気ブロッティングした。レーン1、クーマシーブリリアントルブーR-250ブルー染色したゲル。レーン2、抗-MMP-9mAbと共にインキュベーションした電気ブロット。レーン3、タンパク質のゼラチン分解(gelatinolytic)活性。主要タンパク質バンドのアミノ-末端配列は、レーン1の左側に示している。
【0178】
【図7】図7は、Pg2グライコフォームの1-LN細胞によるMMP-9の発現に対する作用である。48ウェル培養プレート中の単層細胞(1x106個細胞/ウェル)を、精製したPg2グライコフォーム(0.1μM)の存在又は非存在下で、血清-非含有RPMI 1640と共に、容量0.3ml、37℃で24時間インキュベーションした。ウェスタンブロット分析による、馴化培地でのMMP-9のザイモグラム及び同定の両方は、「実験手法」の項に記されたように行った。(A)各個別のPg2グライコフォームとインキュベーションした細胞の馴化培地(50μl)のザイモグラフ分析。(B)各個別のPg2グライコフォームとインキュベーションした細胞の馴化培地(50μl)のウェスタンブロット。(C)L-乳糖(100mM)の存在下で各個別のPg2グライコフォームとインキュベーションした細胞の馴化培地(50μl)のザイモグラフ分析。(D)L-乳糖(100mM)の存在下で各個別のPg2グライコフォームとインキュベーションした細胞の馴化培地(50μl)のウェスタンブロット分析。各個別のPg2グライコフォームは、各レーンを基に同定した。
【0179】
【図8】図8は、抗-DPP IV IgGの高度にシアル化されたPg2グライコフォームにより誘導されたMMP-9 の発現に対する作用である。48ウェル培養プレート中の単層細胞(1.7x106個細胞/ウェル)を、個別のPg2グライコフォーム(0.1μM)の抗-DPP IV(50μl/μl)存在又は非存在下で、血清-非含有RPMI 1640と共に、容量0.3ml、37℃で24時間インキュベーションした。(A)抗-DPP IV IgGの非存在(各々、レーン1、2、及び3)又は存在(各々、レーン4、5及び6)下での、Pg2γ、Pg2δ又はPg2εと共にインキュベーションした細胞からの馴化培地(50μl)のザイモグラフ分析。(B)抗-DPP IV IgGかつ高度にシアル化されたPg2γ、Pg2δ又はPg2εと共にインキュベーションした細胞からの馴化培地のウェスタンブロット分析。これらのブロットは、抗-MMP-9 IgGと反応した。各個別のPg2グライコフォームは、各レーンを基に同定した。
【0180】
【図9】図9は、Pgは、培養された1-LN細胞におけるMMP-9 mRNA発現を誘導することである。48ウェル培養プレート中の1=LN細胞の単層(1.7x106個細胞/ウェル)を、各個別のPg2グライコフォーム(0.1μM)と共に、血清-非含有RPMI 1640と共に、容量0.3ml、37℃で24時間インキュベーションした。総細胞質RNAの単離及びRT-PCRによるMMP-9 mRNAの測定は、「実験手法」の項に記されたように行った。臭化エチジウム染色したゲルを写真撮影し、かつレーザーデンシトメーター走査により分析した。MMP-9 mRNAレベルは、MMP-9 mRNA/GAPDH mRNA比に関連して発現された。値は、各々2つ組で行われた3回の個別の実験の平均±SDで表わしている。
Claims (33)
- 転移阻害に使用するための組成物であって:
a)CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーター、並びに
b)好適な担体
を含む前記組成物。 - 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、抗体、抗体断片、酵素、ペプチド、及びオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる、請求項1記載の組成物。
- 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、CD26又はプラスミノーゲンに結合しない抗-腫瘍性物質と、CD26又はプラスミノーゲンに結合する化合物との複合体である、請求項1記載の組成物。
- 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、抗体又は抗体断片である、請求項1記載の組成物。
- 前記抗体が、モノクローナル抗体又はその抗体断片である、請求項4記載の組成物。
- 前記抗体が、ヒト化抗体又はその抗体断片である、請求項4記載の組成物。
- 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、静脈内投与に適しているが毛細血管床に留まるサイズをもつリポソーム又は微粒子中に存在するか又はそれらの上に複合体化された、請求項1記載の組成物。
- CD26又はプラスミノーゲンに結合しない抗-腫瘍性物質をさらに含む、請求項1記載の組成物。
- 抗-血管新生性物質をさらに含む、請求項1記載の組成物。
- 転移阻害有効量のCD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターを、治療が必要な患者に投与することを含む、腫瘍転移を阻害する方法。
- 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、抗体、抗体断片、酵素、ペプチド、及びオリゴヌクレオチドからなる群より選択される化合物である、請求項10記載の方法。
- 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、CD26に結合しない抗-腫瘍性物質と、CD26アンタゴニスト及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターとの複合体である、請求項10記載の方法。
- 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、抗体又は抗体断片である、請求項10記載の方法。
- 前記抗体が、モノクローナル抗体又はその抗体断片である、請求項13記載の方法。
- 前記抗体が、ヒト化抗体又はその抗体断片である、請求項13記載の方法。
- 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、静脈内投与に適しているが毛細血管床に留まるサイズをもつリポソーム又は微粒子中に存在するか又はそれらの上に複合体化された、請求項10記載の方法。
- CD26又はプラスミノーゲンに結合しない抗-腫瘍性物質を投与することをさらに含む、請求項10記載の方法。
- 前記CD26アンタゴニスト、プラスミノーゲン・アンタゴニスト、ADAアンタゴニスト、及び/又はアンギオスタチン・アロステリック・プロモーターが、経静脈的、筋肉内、皮内又は皮下に投与される、請求項11記載の方法。
- 被験化合物を、その転移阻害能についてスクリーニングする方法であり、以下のステップ:
i)上記被験化合物を、CD26と、アンギオスタチンが上記被験化合物の不存在下で当該CD26に結合するような条件下、接触させる工程;及び
ii)上記化合物の、CD26への結合親和性を測決する
を含む前記方法。 - 前記化合物が検出可能な標識を担持する、請求項19記載の方法。
- 前記CD26が固形支持体に結合されている、請求項19記載の方法。
- 前記CD26が脂質膜に会合されている、請求項19記載の方法。
- 前記膜が、無傷の細胞の膜である、請求項22記載の方法。
- 前記細胞がCD26を天然に発現している、請求項23記載の方法。
- 前記細胞が、CD26をコードする1種以上の核酸配列で形質転換されている、請求項23記載の方法。
- 請求項19記載の方法において、転移を阻害するものとして同定された化合物。
- 請求項19記載の方法において、アンギオスタチンの、CD26への結合を増強するものとして同定された化合物。
- 被験化合物を、その転移を阻害する能力についてスクリーニングする方法であり、以下のステップ:
i)上記被験化合物を、アンギオスタチンが被験化合物の不存在下でCD26に結合する条件下、並びに他の方法でMMP-9の形成を生じるCa2+シグナリング・カスケードが生じる条件下で、CD26を発現する細胞と、接触させ;
ii)上記化合物が上記CD26と接触した後に形成されるMMP-9の量を測決し;及び
iii)形成されたMMP-9量を、被験化合物が全く添加されないときに形成されるMMP-9のベースライン量と、比較する
を含む前記方法。 - 請求項28記載の方法に従って同定されたCD26アンタゴニスト。
- CD26アンタゴニストとして機能する、CD26に特異的なモノクローナル抗体又はその抗体断片。
- アンギオスタチン・アロステリック・プロモーターとして機能する、モノクローナル抗体又はその抗体断片。
- プラスミノーゲン・アンタゴニストとして機能する、モノクローナル抗体又はその抗体断片。
- ADAアンタゴニストとして機能する、モノクローナル抗体又はその抗体断片。
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