JP2004534601A - 樹脂状凍結境界面速度が制御される冷凍保存システム - Google Patents

樹脂状凍結境界面速度が制御される冷凍保存システム Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂状凍結境界面の速度を制御できる冷凍保存技術を提供する。
【解決手段】生物薬剤材料の冷凍保存システム(100)は、外側表面領域を有する容器(104)を備え、容器は、凍結及び融解するための生物薬剤材料(110)を収容するようにつくられ、この容器を受容するように構成された内部キャビティ(108)を有する極低温冷却室(106)に受容され、極低温冷却室は、極低温冷却室の内部キャビティに容器が受容されると容器の外側表面領域に接触するようになっている少なくも1つの熱伝達面を有し、また、冷凍装置(114)は、極低温冷却室に熱的に結合し、流体を少なくも1つの熱伝達面に流して、その熱伝達面の温度と容器内の生物薬剤材料の温度とを制御し、流体は容器との接触から隔離され、温度センサ(130)は、極低温冷却室、少なくも1つの熱伝達面、流体及び冷凍器の少なくとも一つとに熱的に結合している。
【選択図】図1

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は生物薬剤材料の冷凍保存の方法及びシステムに関するものであり、より詳細に述べれば、容器内に収容された生物薬剤材料の制御凍結、例えば制御された樹枝状凍結境界面速度を維持する生物薬剤材料の冷凍保存システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物薬剤材料の冷凍保存は、この種の材料の製造、使用、保存及び販売において重要である。例えば、生物薬剤材料は諸工程間、及び保存中に凍結するというやり方で冷凍保存されることが多い。同様に、場合によって、生物薬剤材料は、開発プロセスの一部分として、その品質を高め、または開発プロセスを単純化するのに、凍結及び融解される。
【0003】
冷凍保存を利用する際には、生物薬剤材料が実質的な分解を受けることなく、その生物薬剤材料の相対的な品質、特に薬物学的活性が保持されることが望ましい。
【0004】
現在、ある態様において、生物薬剤材料の冷凍保存は、その生物薬剤材料を含む容器をキャビネットまたはチェスト型フリーザ内に置いて、この生物薬剤材料を凍結させることを含んでいる。現在の冷凍保存方法では、生物薬剤材料を含む容器はキャビネットまたはチェスト型フリーザの板状またはワイヤーフレームの棚の上に置かれる。これらの生物薬剤材料は、固形状になるまで凍らせるために、制御されていない状態で放置される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の技術を用いると、生物薬剤材料の活性に著しい損失が認められる。例えば、観察の結果、溶質の濃度またはpHなどの変数に何ら顕著な変化がないにもかかわらず、生物薬剤材料の安定性及び立体構造だけが低温によって影響を受けることが認められた。
【0006】
さらに、従来の冷凍保存方法は、凍結濃縮や、凍結部分から未凍結部分への生物薬剤材料を含む溶質の再分布を起こし、未凍結部分の溶質濃度が著しく上昇する可能性がある。凍結濃縮の結果、pH変化に通ずる緩衝剤成分の結晶化が起こり得る。pH変化は、生物薬剤材料の安定性、折りたたみに影響を与え、不都合な化学反応を引き起こし、また、開裂を起こすことさえある。低温効果と関連した凍結濃縮は、生物薬剤材料の溶解度の低下を引き起こし、その結果、沈殿が生ずることもある。さらに、生成物の凝集(それは、分子量を増加させる)が認められることもある。
【0007】
その上、従来の冷凍保存技術を使用した場合、容器の損傷が認められる。容器の損傷は、凍結中における容器内の水を含む生物薬剤材料の体積膨張による凍結の変形作用によって生ずると思われる。容器の破裂や容器の完全性を損なうことは、好ましいものではない。なぜならば、それは無菌性を危うくし、生物薬剤材料の汚染、または、生物薬剤材料の漏れや損失を起こすからである。
【0008】
当業者が直面するもう1つの問題は、生物薬剤材料の冷凍保存のために現在使用できる工程による方法、そして、装置設計は、概して、満足できるリニアスケーラビリティを示さないことである。生物薬剤材料の製造においては、簡単で効率的、かつ予測可能な規模の拡大が常に必要とされる。研究段階及びパイロット試験段階で開発される方法は、生物薬剤材料の品質(例えば、生物薬剤材料の生物学的活性)、または、工程の生産性を落とすことなく、そのまま生産的規模に移行できなければならない。小規模で開発された情報に基づく工程の動きの予測能力は、しばしば、リニアスケーラビリティと呼ばれる。
【0009】
冷凍保存工程の規模を大きくする際、ビン、大型ガラスビン、タンク、または同様な単独の容器といった個別になった容器が、様々なサイズで利用できる。ほとんど全ての場合に、各容器内で生物薬剤材料を凍結する速度及び完全に凍結するまでの時間は、冷却面からの最大距離に関係する。したがって、同じ冷却面温度が維持されるならば、より大きい容器の内容物を凍結するためには、より長い時間が必要である。このようなより長い時間は、より低いプロセス処理量をもたらすため、好ましくない。さらに、緩慢な凍結は、凍結濃縮効果をもたらし、それが生成物に不都合な効果を与えることが知られている。
【0010】
この規模拡大での問題を軽減するため、種々の方策が採用された。より多くの量を凍結するために、例えば、複数の比較的小さい容器を使用することができる。しかし、フリーザ内に複数の容器を隣接して置くことは、それぞれの容器間に熱条件の差、及び、温度差をつくり出す。凍結速度及び生成物の品質は、実際のフリーザ負荷、容器間の間隔、容器の形、そして、フリーザ内の空気の動きに依存する。その結果、個々の容器の内容物に対して異なる熱履歴が生じ、当業者には理解できるように、製造管理及び品質管理規則(GMP)遵守する上で問題が生じる。より大きいバッチでは、そのロットを多数のサブユニットに分けることも、時間がかかり、逆効果である。容器の表面及び容器数にある程度比例するため、生産物のロスが重大になってくると思われる。
【0011】
よって、上記の欠点を解決する生物薬剤材料冷凍保存のための装置及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、外側表面領域を有する容器であって、凍結及び融解するための生物薬剤材料を収容する容器を含んでなる生物薬剤材料冷凍保存システムを提供する。このシステムは、さらに容器を受容するように構成された内部キャビティを有する極低温冷却室を含む。極低温冷却室の内部キャビティがその容器を受容すると、少なくも1つの熱伝達面が容器の外側表面に接触する。システムは、さらに極低温冷却室に熱的に結合する冷凍器を含む。それは流体を少なくも1つの熱伝達面に流し、熱伝達面の温度及び容器内の生物薬剤材料の温度を制御する。流体は、容器との接触から隔離されているが、熱伝達面に流れ、または、熱伝達面と熱的に接触して、容器及びその中の生物薬剤材料に、または容器及びその中の生物薬剤材料から、熱を伝達することができる。また、温度センサが、極低温冷却室、少なくも1つの熱伝達面、流体、冷凍器の少なくとも1つと熱的に結合する。
【0013】
さらに、少なくも1つの熱伝達面が容器の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)と接触するようになっている。少なくも1つの熱伝達面は容器の外側総表面積の少なくも50パーセント(50%)と接触するようになっているのがより好ましく、少なくとも75パーセント(75%)と接触するようになっているのが最も好ましい。その上、少なくも1つの熱伝達面は互いに対置する2つの熱伝達面を含むことができる。容器の外側表面領域は、第1の熱伝達面に接触するようになっている第1の外側表面領域と、第2の熱伝達面に接触するようになっている第2の外側表面領域を含むことができる。第1の外側表面領域と第2の外側表面領域との組み合わせ表面領域は、容器の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)を有し、容器の外側総表面積の50パーセント(50%)を有するのがより好ましい。第1及び第2の外側表面領域が容器の外側表面積の少なくも75パーセント(75%)を有するのが最も好ましい。また、容器は柔軟性で、極低温冷却室の内部キャビティの形に合うように適合できる。
【0014】
本発明は第2の態様において生物薬剤材料の冷凍保存方法を提供する。この方法は外側表面領域を有する容器内に生物薬剤材料を収容し、容器内で生物薬剤材料を凍結及び融解することを含む。容器は、この容器を受容するようにつくられた内部キャビティを有する極低温冷却室内に受容される。少なくも1つの熱伝達面が極低温冷却室内の容器の外側表面領域と接触する。冷凍器は極低温冷却室に熱的に結合し、冷却流体が少なくも1つの熱伝達面に流れてその熱伝達面及び容器内の生物薬剤材料の温度をコントロールする。流体は容器から隔てられているが、熱伝達面に流れ、または熱伝達面と熱的に接触して、容器及びその中の生物薬剤材料に、または容器及びその中の生物薬剤材料から熱を伝達することができる。また温度センサが極低温冷却室、少なくも1つの熱伝達面、流体、及び/または冷凍器と熱的に結合する。
【0015】
さらに、少なくも1つの熱伝達面は、容器の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)と接触する構成になっている。より好ましくは、少なくも1つの熱伝達面は、容器の外側総表面積の少なくも50パーセント(50%)と接触する構成になっており、少なくとも75パーセント(75%)と接触する構成になっているのが最も好ましい。加えて、上記の少なくも1つの熱伝達面は、互いに対向する2つの熱伝達面を有することができる。容器の外側表面領域は、第1の熱伝達面に接触する第1の外側表面領域と、第2の熱伝達面に接触する第2の外側表面領域を有することができる。第1の外側表面領域と第2の外側表面領域とを組み合わせた表面積は、容器の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)からなり、容器の外側総表面積の50パーセント(50%)からなることがより好ましい。第1及び第2外側表面領域は、容器の外側表面積の少なくも75パーセント(75%)からなることが最も好ましい。また、容器は柔軟性を有し、極低温冷却室の内部キャビティの形と同じになることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂状凍結境界面の速度を制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者は、生物薬剤材料の冷凍保存及び冷凍処理における凍結速度の制御が前述の問題を解決し得ることを予期せず見いだした。本発明の一態様により、生物薬剤材料の凍結速度を所望範囲内に確実に維持するように制御して生物薬剤材料を冷凍保存または冷凍処理することによって、上に明らかにした問題は、部分的または完全に解決する。
【0018】
例えば、冷凍保存するための細胞等の生物薬剤材料を処理する場合、その細胞の水分含有量が高過ぎて、細胞凍結が速すぎる場合、その細胞には細胞内氷晶が生成する可能性がある。その結果、細胞は壊れるか、生育しなくなるか、または、それらの両方の状態となる。他方、細胞凍結が遅すぎる場合、細胞は長時間濃い溶質にさらされることになり、この場合も、細胞損傷に至る。
【0019】
凍結速度は、凍結部分内の生物薬剤材料分布に影響を与え、生物薬剤材料の不均一な分布は、有害な結果に至る場合がある。一実施形態では、凍結速度の制御は、冷却された壁から生物薬剤材料の大部分に移動する樹枝状境界面に関係し、樹枝状凍結境界面速度の制御としてあらわされる。凍結速度は、生物薬剤材料の保護特性、または、生物薬剤材料の損傷特性を有する最終的な凍結した基質にも影響を与える。例えば、樹枝状氷晶間のガラス質状部分に生物薬剤材料が埋め込まれている状態の凍結した基質は、生物薬剤材料を保護するタイプである。生物薬剤材料を損傷する基質は、異なる形をとる。例として、(1)非常に緻密な細胞氷晶基質、または、(2)非常に多数の微細氷晶の集合であって、生成物が結晶境界に沿った非常に薄い層に位置する基質がある。凍結した基質の特性は、氷晶構造に依存し、好ましい構造は、樹枝状氷晶構造である。このような所望の基質構造は、主として凍結境界面速度に依存し、その他の二次的に重要な要因は、温度勾配、溶質の組成と濃度、そして、凍結容器の形状である。
【0020】
本発明により、樹枝状氷晶の凍結境界面(以後、「樹枝状凍結境界面」と称する)の速度を約5ミリメータ/時間から約250ミリメータ/時間の範囲、より好ましくは約8ミリメータ/時間から約180ミリメータ/時間の範囲、または、最も好ましくは約10ミリメータ/時間から約125ミリメータ/時間の範囲に維持することが、生物薬剤材料に対する損傷を最小にし、または回避するための、広範囲のシステムに好適な冷凍処理条件、そして、適した作動マージンをもたらす。
【0021】
一例として、以下の説明は、生物薬剤材料の凍結に関して、樹枝状凍結境界面と凍結樹枝状結晶の大きさ及び間隔との関連性を示すものである。
【0022】
樹枝状凍結境界面の速度が約5ミリメータ/時間より遥かに小さい場合、樹枝状結晶は小さく、樹枝状凍結境界面に密にかたまっている。したがって、樹枝状凍結境界面は、固体界面として振る舞い、溶質及び生物薬剤材料類は、その固形塊に一体化せず、その代わり、排除され、滅菌した柔軟な容器の中央部に向かって押され、生物薬剤材料の液相に深刻な凍結濃縮を引き起こす。
【0023】
樹枝状凍結境界面の速度が増加したが、樹枝状凍結境界面の速度が約5ミリメータ/時間未満であるとき、樹枝状結晶はサイズが幾らか大きくなり、さらに分離して、セル形状または円柱形状になる。この場合、溶質または生物薬剤材料のほんのわずかなパーセンテージだけが固形塊に埋め込まれる。これに対して、大部分の溶質及び生物薬剤材料は、前進する樹枝状凍結境界面によって前方に押され、液相の生物薬剤材料110の濃度が高くなる。この状況では、まだ生物薬剤材料にダメージが与えられ得る。
【0024】
樹枝状凍結境界面の速度が増加したが、樹枝状凍結境界面の速度が約5ミリメータ/時間未満であるとき、樹枝状結晶はサイズが幾らか大きくなり、さらに分離して、セル形状または円柱形状になる。この場合、溶質または生物薬剤材料のほんのわずかなパーセンテージだけが固形塊に埋め込まれ得る。これに対して、大部分の溶質及び生物薬剤材料は、前進する樹枝状凍結境界面によって前方に押され、液相の生物薬剤材料110の濃度が高くなる。この状況では、まだ生物薬剤材料にダメージが与えられ得る。
【0025】
樹枝状凍結境界面の速度が約250ミリメータ/時間より増加すると、樹枝状結晶の大きさは小さくなり始め、より緻密になり、これによって、生物薬剤材料に含まれる溶質や粒子を凍結境界面に適切に埋め込む能力が失われる。
【0026】
樹枝状凍結境界面速度が約250ミリメータ/時間より遥かに大きくなると、生成する固形塊は、微細な氷晶の無秩序で非平衡状態の構造を有するようになる。このような速やかな極低温冷却は、例えば少量の生物薬剤材料を過冷却することによって、薄い層での生物薬剤材料の凍結によって、または、少量の生物薬剤材料を液体窒素またはその他の冷媒中に沈めることによって行うことができる。
【0027】
例えば、液相において過冷却にさらされ、その後、急速に氷晶が成長した生物薬剤材料では、凍結境界面の速度は、1000mm/secを超えることがある。このように速い境界面速度は、生物薬剤材料を含む固形塊を生成し得るが、その固形塊は、平衡状態の氷晶から形成されてはいない。これらの非平衡状態の固形塊では、氷の再結晶が起きがちであり、その際、比較的小さい氷晶の溶解及び比較的大きい氷晶の成長が生物薬剤材料に過度の機械的力を加える可能性がある。さらに、非平衡状態の固形塊中の生物薬剤材料は、氷晶間に、粒子境界上の非常に薄い層となって分布する。これは非常に多数の小氷晶による生成物と氷との大きな接触界面領域を作り出し、生物薬剤材料にとって有害である。
【0028】
樹枝状結晶間の隙間は、システムから出る熱の増減によって(熱の増減は、熱効果に影響を与え、その結果、樹枝状凍結境界面の速度にも影響を与える)、また、溶質の選択及び濃度によって調節できる。
【0029】
自由樹枝状結晶(free dendrites)の長さは、一つには境界面速度によって、そして、一つには樹枝状結晶に沿った温度勾配によって決まる。自由樹枝状結晶では、液相に突き出した樹枝状結晶の長さ、または、「どろどろした領域(mushy zone)」または「2層領域」の厚さ、例えば、樹枝状針状氷晶とそれらの間にある液相との混合物の厚さが関係する。樹枝状結晶の先端では、温度は0℃に近く、樹枝状結晶の長さに沿って、または、境界面から離れた固形化物になるほど、温度は徐々に低下して壁温と等しくなる。樹枝状結晶間の液体温度も、低温の壁に近くなるほど低下する。極低温冷却(cryocooling)が続くと、塩類のようなある種の溶質では溶質濃度が共晶濃度及び温度に達する。
【0030】
樹枝状結晶間の溶液は、その後固化し、完全またはほぼ完全な、または、固体の樹枝状結晶状態になる。この状態は、樹枝状氷晶と、これら樹枝状氷晶間の共晶状態の固化溶質とのマトリックスである。ある溶質類(例えば炭水化物)は、共晶混合物を形成しない。その代わり、それらは、ガラス質状態を形成したり、樹枝状氷晶間で結晶化したりする。ガラス質状態は、生物薬剤材料を保護し、結晶状態は、生物薬剤材料に有害効果を与える可能性がある。樹枝状氷晶は、アール・ウィスニウスキー(R. Wisniewski)著、「生物薬剤系のための大規模冷凍保存システムの開発(Developping Large-Scale Cryopreservation Systems for Biopharmaceutical Systems)」、BioPharm、11巻(6号)、1998年、p.50−56、及び、アール・ウィスニウスキー(R. Wisniewski)著、「細胞、細胞成分及び生物学的溶液の大規模冷凍保存(Large Scale Cryopreservation of Cells, Cell Component, and Biological Solutions)」、BioPharm、11巻(9号)、1998年、p.42−61に詳細に記載されている。この全ては参考として本明細書に編入されている。
【0031】
上記の知識を利用して設計し、発明した機器が図1に示される。この図は、本発明による生物薬剤材料の冷凍保存システムを示す。生物薬剤材料の冷凍保存システム100は、凍結システム102、滅菌した柔軟な容器104といった容器、内部キャビティ108を有する極低温冷却室106、生物薬剤材料110、制御装置112、冷凍装置114、アクセス口116、冷凍剤投入流部118、冷凍剤排出流部120、冷凍剤122、固形塊124、樹枝状凍結境界面126、樹枝状結晶128、温度センサ130、そして、ホース132を含んでいる。
【0032】
構造的に、滅菌した柔軟な容器104は、極低温冷却室106の中に置かれる。3個の内部キャビティ108が図1に示されているが、これより多いか、または、少ないキャビティ108、すなわち1、2、4個またはそれ以上のキャビティ108も本発明の範囲内である。便宜上、本明細書では、内部キャビティ108は、図1−図5を参照すればわかるように、テーパー状のスロット108として描かれる。しかし、この1個以上の内部キャビティは、テーパー状スロット以外の形にできる。また、生物薬剤材料の冷凍保存システム100の容量の増加を望むならば、テーパー状スロット108を含む追加のキャビティを加えることもできる。一例として、6個のテーパー状スロットキャビティ108を有する生物薬剤材料冷凍保存システム100では、図1に示す生物薬剤材料冷凍保存システム100のおよそ2倍の容量を有する。生物薬剤材料冷凍保存システム100の容量の減少を望むならば、テーパー状スロット108の数を減らすことができる。本発明を適用したテーパー状スロット108の最小数は、1つのテーパー状スロット108である。
【0033】
一実施形態では、滅菌した柔軟な容器104は、本発明による生物薬剤材料の冷凍保存また凍結処理に使用する前に滅菌される。すなわち。滅菌した柔軟な容器104は、予め滅菌される。処理中、生物薬剤材料の無菌性を維持することが望まれる場合、予め滅菌した柔軟な容器104のその後の操作には十分注意しなければならない。
【0034】
滅菌した柔軟な容器104は、生物薬剤材料110との相対的な適合性を高め、滅菌した柔軟な容器104の成分の生物薬剤材料110中への望ましくない漏出を回避するため、生体適合性ポリマー材料で形成されている。本願の背景として、生体適合性を有する材料の特徴は、例えば生物薬剤材料110の構造、活性及び効率がマイナスの影響を受けず、生育能力のある細胞及び組織生成物が毒性作用にさらされないような、生物学的生成物との良性の相互作用を含んでいる。本発明の範囲内の適切な生体適合性ポリマー材料としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリプロピレン類、ポリ弗化ビニリデン、ポリウレタン類、ポリ塩化ビニル類、そして、これらの混合物またはラミネートなどある。
【0035】
無菌柔軟性容器104には、生物薬剤材料110が収容される。一実施形態では、生物薬剤材料110には、蛋白質溶液、蛋白質組成物、アミノ酸溶液、アミノ酸組成物、ペプチド溶液、ペプチド組成物、DNA溶液、DNA組成物、RNA溶液、RNA組成物、核酸溶液、核酸組成物、生物学的細胞懸濁液、生物学的細胞フラグメント懸濁液(細胞小器官、核、封入体、膜蛋白質、そして、膜の少なくとも1つを含む)、組織フラグメント懸濁液、細胞集合体懸濁液、生物学的組織溶液、臓器の溶液、胚の溶液、細胞増殖培地、血清、生物製剤、血液製剤、保存溶液、発酵培地、細胞を含む細胞培養液または細胞を含まない細胞培養液、これらのものを含む混合物、そして、生体触媒や、それらのフラグメントがある。
【0036】
滅菌した柔軟な容器104は、種々の大きさにでき、広範囲の生物薬剤材料の量に適応させられる。滅菌した柔軟な容器104のサイズは種々あるので、滅菌した柔軟な容器104に合うようにテーパー状スロット108のサイズを種々変えることが必要である。一方、テーパー状スロット108を異なる高さの滅菌した柔軟な容器104、つまり、異なる容積の滅菌した柔軟な容器104に合わせることができる。テーパー状スロット108のサイズは、従来の技術を用いて決めることができる。好ましい実施形態では、滅菌した柔軟な容器104は、約20ミリリットルから約1000リットルの範囲、より好ましくは、約500ミリリットルから約250リットルの範囲内である。別のより好ましい実施形態では、滅菌した柔軟な容器104は、約100ミリリットルから約500ミリリット、約1リットルから約20リットル、または約0.5ミリリットルから約100リットルの範囲内の容量を有する。
【0037】
生物薬剤材料110は、固形塊124、樹枝状凍結境界面126及び樹枝状結晶128を含む。温度センサ130は、テーパー状スロット108の外側表面の1つ以上の場所に位置する。さらに、センサ130は、テーパー状スロット108の内面に置ことができ、また、テーパー状スロット108と一体化することもできる。センサ130は、制御装置112または冷凍装置114に特定位置の温度の示度を与える。1以上の温度センサ130と熱力学の原理とを使用することにより、生物薬剤材料110の温度は、与えられた位置で適時に測定される。よって、制御装置112及び冷凍装置114は、生物薬剤材料110の温度を調節し、その凍結または融解を調節することができる。また別の実施形態では、温度センサ130は、冷凍剤中で検知される温度差に基づいて生物薬剤材料110の温度が調節するため、冷凍剤を受容するホース132内に位置させることができる。例えば、温度センサ130を冷凍剤排出流部120及び冷凍剤投入流部118の中に置き、それらの間の温度差を利用して生物薬剤材料110の温度を測定し、それによって冷凍剤の流れそして温度の少なくとも一方を望み通りに調節できる。温度センサ130には、熱電対、サーミスタ、RTD、または、寒冷環境での使用に適したその他の一般的温度検知デバイスで形成できる。また、別の実施形態では、温度センサ130は、滅菌した柔軟な容器104の外に置くことができ、例えば、赤外温度検知デバイスのような温度の遠隔検知デバイスであることできる。
【0038】
アクセス口116は、無菌口で、ここを通して生物薬剤材料110を滅菌した柔軟な容器104内へ導入したり、生物薬剤材料110を滅菌した柔軟な容器104から回収したりできる。また、別の実施形態では、口116は、次のようなタイプの口を一つ以上含むことができる。それは、充填口、排出口、吐き出し口、試料採取口、付加的温度測定口(好ましい実施形態では、キャップをした先端部を有する)、分光分析または光−プローブチューブ口(好ましい実施形態では、光ファイバー分光分析プローブまたは光学的樹枝状凍結境界面検知プローブに適合する光透過性または透明なレンズでキャップをした先端部を有する)、超音波樹枝状凍結境界面検知プローブ口、導電性またはpH電極に合わせた口などである。口116は、キャップ117を除去したときに容器104の内部と外部との間で液体の出し入れができるようにするため、容器104のステム(図示せず)に脱着可能に結合できるキャップ117を含むことができる。また、口116は、容器104の内部に突き出て、延びていることもできる。
【0039】
もう1つの実施形態では、追加の口、好ましくは無菌口が、柔軟性容器104の上面に機械的に結合され、滅菌した柔軟な容器104内に突き出て延びていることができる。一例において、滅菌した柔軟な容器104の上面に機械的に結合した内部温度センサ無菌口230が、図4及び図5に描かれているように、内部温度センサ216が容器104内の生物薬剤材料110の位置で内部温度を直接測定する内部温度センサ216の導入を可能にする。また、追加の口204及び追加の口206の少なくとも1つが、温度センサの付加的通路、または容器104の内部にアクセスするための付加的通路を提供するため含まれることも可能である。このような口は、柔軟な容器104内に突き出して延びるか、または、容器内部に突き出たり延びたりせずに、単に容器104の内部と外部との間の液体の出入りをもたらすものにできる。
【0040】
滅菌した柔軟な容器104は、構造的な柔軟性を示す。構造的な柔軟性とは、滅菌した柔軟な容器104の壁が、滅菌した柔軟な容器104内部の生物薬剤材料の定常水頭下で変形することを意味する。もう1つの実施形態では、滅菌した柔軟な容器104は、折り畳むことができるか、または、空になったとき自然につぶれるような軟らかい壁を有する容器を始め、形状的及び構造的特徴が多岐にわたる。一方、滅菌した柔軟な容器の代わりに、硬質または半硬質容器を使用することもできる。このような容器は、柔軟性を有する壁を有し、つぶれた形で保存できるが、空になったときでもその形を幾らかは保持できる比較的しっかりしたデザインのものから、空になったときにその形を保持できるもの、生成物で充満したときだけ幾分変形するもの、または、その両方の特徴を有するより硬質タイプのもの(すなわち、それは極低温の冷却壁の形に適合するだけの十分な柔軟性を有する)までの範囲にわたるものにできる。しかし、望ましいのは、そのような容器が、極低温冷却室106の内部キャビティ内に受容される形を有していることである。
【0041】
滅菌した柔軟な容器104の利点は、テーパー状スロット108の形と同じになるという特性である。この特性は、滅菌した柔軟な容器104とテーパー状スロット108との間の熱的接触の質及び再現性を向上する上において重要である。滅菌した柔軟な容器104とテーパー状スロット108との間の熱的接触の質及び再現性が向上すればなるほど、生物薬剤材料の冷凍保存システム100の冷凍保存性能は向上する。樹枝状凍結境界面速度は、特に、熱流束に依存し、熱流束自体は熱的接触の質に依存する。滅菌した柔軟な容器104の壁とテーパー状スロット108との間の熱的接触は、滅菌した柔軟な容器104の壁とテーパー状スロット108との隙間にある絶縁性をもった空気の量に依存する。よって、滅菌した柔軟な容器104の壁をテーパー状スロット108に対して押しつけることは熱的接触の質及び再現性を改善するのに役立つ。熱的接触の質及び再現性の精度は、種々の方法によって高められる。すなわち、例えば不活性ガスブランケットを使用して、滅菌した柔軟な容器104にわずかな内圧を与えるなど様々な方法で向上できる。また、滅菌した柔軟な容器104の頂部に荷重をかけ、何らかの生物薬剤材料110を含む滅菌した柔軟な容器104の内容物を滅菌した柔軟な容器104の壁に対して押し付けられ、それによって熱的接触の質及び再現性の精度を向上することもできる。また、サーマルグリースも使用できる。
【0042】
一実施形態では、滅菌した柔軟な容器104は、保存または輸送のために折り畳まれ、本発明による冷凍保存または凍結処理のために使用前に広げることができる。関連する実施形態では、滅菌した柔軟な容器104に結合した全ての無菌口は、種々の度合いの柔軟性を有し、滅菌した柔軟な容器104を容易に折り畳んだり広げたりできるようにし、滅菌した柔軟な容器104と一緒に折り畳まれることができる。一例において、内部温度センサ口230(図4及び図5)は、非柔軟性で、滅菌した柔軟な容器104のほぼ中心部分に位置する。この実施形態においては、滅菌した柔軟な容器104は、内部温度センサ口230に沿って、また、滅菌した柔軟な容器104に結合したその他の全ての無菌口に沿って縦方向に折り畳まれる。
【0043】
凍結システム102は、制御装置112、冷凍装置114及び1つ以上の温度センサ130を含む。凍結システム102は、テーパー状スロット108を介して滅菌した柔軟な容器104に取り外し可能に結合する。凍結システム102は、滅菌した柔軟な容器104及びテーパー状スロット108を介して生物薬剤材料110と熱的に結合する。制御装置112は、1つ以上の温度センサ130と冷凍装置114に接続されている。一実施形態では、制御装置112及び冷凍装置114は、極低温冷却室106の外部に位置し、かつ、極低温冷却室106に接続されている。別の実施形態では、極低温冷却制御装置112は、極低温冷却室106の内部で、滅菌した柔軟な容器104の外部に置かれる。
【0044】
冷凍装置114は、冷凍剤投入流部118及び冷凍剤排出流部120を含み、冷凍剤投入流部118及び冷凍剤排出流部120の両方ともが極低温冷却室106に連結され、それによって冷凍装置114を極低温冷却室106に連結させている。極低温冷却室106は、冷凍剤122を含み、冷凍剤122は、生物薬剤材料110に熱的に結合している。極低温冷却室106は、冷凍剤122が、ホース132を通って各滅菌した柔軟な容器104を次々と直列に流れるようにつくられている。もう1つの実施形態では(図1には示されない)、冷凍剤122が滅菌した柔軟な容器104を並列に流れる。一実施形態では、冷凍剤122には、空気またはその他のガス類(強制流動条件下で使用する際に特に有効である)、または、液体シリコーン熱伝達液、アルコール、フレオン、ポリエチレングリコール、凍結用塩類系ブライン(例えばCaClブライン)、または、液体窒素が含まれる。また、別の例では、テーパー状スロット108は、1つ以上の熱交換コイルを含む熱伝達面を一つ以上含む。冷凍剤122は、ホース132を通ってこのコイルに流れ、熱伝達面を冷却または加熱し、それによって容器104内の生物薬剤材料110を凍結または融解する。さらにもう1つの例によれば、テーパー状スロット108の熱伝達面は、容器104の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)と接触するようになっており、好ましくは、熱伝達面が容器104の少なくも50パーセント(50%)と接触する。最も好ましくは、熱伝達面は、容器の外側表面積の少なくも75%と接触する。また、テーパー状スロット108は、容器104の第1の表面領域と接触するようにつくられた第1熱伝達面及び容器104の第2の表面領域と接触するようにつくられた第2熱伝達面を含むことができる。第1の表面領域は第2の表面領域に対置し、第1の表面領域及び第2の表面領域の総表面積は容器104の外側総表面の少なくも10パーセント(10%)に接することができる。好ましくは、第1表面領域及び第2表面領域が容器104の外側表面の少なくも50%に接触し、最も好ましくは、第1及び第2表面領域が容器104の外側表面の少なくも75パーセント(75%)と接触する。また、容器は、柔軟性を有し、極低温冷却室の内部キャビティの形と同じになるようになっている。
【0045】
凍結システム102の諸要素は、フィードバックループを構成するようにつくられている。フィードバックループは、1つ以上の温度センサ130からのフィードバック情報に基づいて容器内の生物薬剤材料の凍結を制御する構成、例えば、生物薬剤材料内の樹枝状凍結境界面126の速度(すなわち成長速度)を約5ミリメータ/時間から約250ミリメータ/時間の範囲内に制御する構成になっている。
【0046】
作動中、冷凍装置114は、極低温冷却室106の内容積を、その容積から熱を除去することにより冷やす。冷凍装置114が極低温冷却室106内部から熱を除去すると、極低温冷却室106の内側で、滅菌した柔軟な容器104の外側の温度が低下する。この結果、滅菌した柔軟な容器104の外側で、極低温冷却室106の内側にある冷凍剤122の容積と、より温かい生物薬剤材料110の容積との間で温度勾配が生ずる。この温度勾配の結果として、しかも滅菌した柔軟な容器104の表面を介して熱交換が起こるため、熱は生物薬剤材料110から除去され、それによって生物薬剤材料110は極低温冷却される。こうして冷凍装置114は、間接的に生物薬剤材料110を冷却する。
【0047】
冷凍装置114は、冷凍剤投入流部118によって冷凍剤122を極低温冷却室106に供給する。冷凍装置114は、冷凍剤122を、冷凍剤再循環器120を介して除去することによって、冷凍剤122を極低温冷凍室106を通過させ再循環させる。好ましい実施形態では、生物薬剤材料110が冷却されつつあるとき、冷凍装置114によって冷凍剤投入流部118から極低温冷却室106に供給される冷凍剤122の温度は、冷凍剤再循環器120を通って除去される冷凍剤122の温度より低い。したがって、この実施形態では、冷凍剤122が極低温冷却室106に再供給される前に、冷凍装置114が冷凍剤122を処理してその温度を低下させる。
【0048】
冷凍装置114は、極低温冷却室106に供給される冷凍剤122と、極低温冷却室106から除去される冷凍剤122との温度差を変えることによって、または、冷凍剤122が極低温冷却室106を通って循環する速度を変えることによって、生物薬剤材料110の温度変化の速度や方向を変えることができる。好ましい実施形態では、生物薬剤材料110が凍りつつある場合、生物薬剤材料110の凍結速度を高めるために、冷凍装置114は、冷凍剤122をさらに冷却することによって、極低温冷却室106に供給される冷凍剤122と生物薬剤材料110との温度差を大きくする。もう1つの関連する好ましい実施形態では、冷凍装置114は、極低温冷却室106に供給される冷凍剤122と極低温冷却室106から除去される冷凍剤122との間の温度差は変えずに維持し、その代わりに、冷凍装置114を介して冷凍剤の流速を高めることにより、冷凍剤122が極低温冷却室106を循環する速度を大きくすることによって、同じ目的を達成する。
【0049】
一実施形態では、冷凍剤122の流速を高め、冷凍剤122の出口温度を低くする。この調節は、冷凍剤122の平均温度を低下させるのに役立ち(平均値は入り口温度と出口温度との平均である)、凍結のためのより高いエネルギー(生物薬剤材料110と、冷凍剤122の平均温度(入口−出口)との平均温度差)をもたらし、樹枝状凍結境界面の速度を高める。冷凍剤の流速をより高くすると、テーパー状スロット108の冷凍剤122側の熱伝達効率も高まり、それによって、生物薬剤材料110から引き出される熱流束は増加し、さらに樹枝状凍結境界面の速度も高まる。
【0050】
別の好ましい実施形態では、生物薬剤材料110が冷やされているとき、生物薬剤材料110の凍結速度を増減するため、冷凍装置114は、冷凍装置114が冷やす冷凍剤の量を減らすことによって、極低温冷却室106に供給する冷凍剤122と極低温冷却室106から除去する冷凍剤122との間の温度差を小さくする。別の関連する好ましい実施形態では、冷凍装置114は、極低温冷却室106に供給する冷凍剤122と、極低温冷却室106から除去する冷凍剤122との温度差は変えずに維持し、冷凍装置114を通過する冷凍剤の速度を低下または上昇させることによって、冷凍剤122が極低温冷却室106を再循環する速度を低下または上昇させる。
【0051】
一実施形態では、冷凍剤122の温度または冷凍剤122が極低温冷却室106を通って再循環する速度を変えることによって、冷凍装置114は、生物薬剤材料110の低温冷却/凍結速度、または、加熱速度を制御する。この実施形態において、温度センサ130は、生物薬剤材料110の温度を連続的にモニターし、その情報を制御装置112に伝達する。別の実施形態では、複数の温度センサがテーパー状スロット108に配設されるか、テーパー状スロットと一体化されるか、または、その両方により、複数の位置で生物薬剤材料110の温度が測定される。これらの複数の温度センサは、制御装置のために複数の入力を与えることができ、制御装置は、複合的なアルゴリズムによって、冷凍剤122の流速及び温度を調節し、凍結速度を精確に制御することができる。冷凍装置114は、冷凍剤112が極低温冷却室106に入ったり、出たりする際に、冷凍剤122の温度を測定し、その情報を制御装置112に伝達する。その後、制御装置112は、冷凍装置114を作動させ、冷凍剤122の流量を適切に変化させる。また、別の実施形態では、内部温度センサ216または複数の温度センサ216を使用して口230または複数の口230を通過する生物薬剤材料の温度をモニターすることができる(図4及び図5)。
【0052】
一実施形態では、冷凍剤122が滅菌した柔軟な容器104から熱を除去すると、生物薬剤材料110の温度は低下する。その結果、このプロセスが十分長い時間続くと、生物薬剤材料110内では、滅菌した柔軟な容器104の外面の近くで相転移が始まる。生物薬剤材料110の温度が下がり続けると、生物薬剤材料110は、滅菌した柔軟な容器104の面近くで凍結し固化し、それによって固形塊124が生成し、樹枝状凍結境界面126は、生物薬剤材料110の容積の大部分に徐々に移動する。
【0053】
本発明は、テーパー状スロット108の温度、冷凍剤122の温度または生物薬剤材料110の直接的温度から生物薬剤材料110の温度を決めるフィードバックループを有する。一般的なキャビネット型またはチェスト型フリーザは、冷凍剤として作用するキャビネット型またはチェスト型フリーザ内の空気の温度を制御するフィードバックループを有する構成となっている。その際、キャビネット型またはチェスト型フリーザ内に位置する容器内の凍結境界面の制御はほとんどまたは全く不可能である。キャビネット型またはチェスト型フリーザ内の容器の位置、キャビネット型またはチェスト型フリーザ内の容器の数、容器の形状、容器の壁の厚さ、容器の構成材料といった複数の変数が組合わさって、容器内の凍結境界面の実質的制御を困難にまたは不可能にしている。
【0054】
これに対して、本発明は、1つ以上の温度センサ130(図1及び図2)及び1つ以上の内部温度センサ216(図4及び図5)の少なくとも一方からの生物薬剤材料110に関するフィードバック温度情報によって、生物薬剤材料110内の樹枝状凍結境界面126の速度を制御できる。このフィードバックループは、生物薬剤材料110からの熱の除去をより精確に制御でき、樹枝状凍結境界面126の速度を前に列挙した範囲内に容易に制御する。極低温冷却室106内の位置、滅菌した柔軟な容器104の壁の厚さ、滅菌した柔軟な容器104とテーパー状スロット108との間の熱抵抗などの変数は、フィードバックループによって自動的に斟酌される。
【0055】
樹枝状凍結境界面126は、固形塊124として存在する生物薬剤材料110を、液体状の生物薬剤材料110から分離し、それによって樹枝状結晶128が形成されつつある固体−液体界面が生じる。生物薬剤材料110からの熱除去が続くと、樹枝状凍結境界面126は、滅菌した柔軟な容器104の内面から離れる方向に進み、残りの液体生物薬剤材料110は凍結して固形塊124になる。本発明の実施形態では、樹枝状凍結境界面の速度とは、樹枝状凍結境界面126が進む速度である。
【0056】
一実施形態では、熱が生物薬剤材料110から除去される速度(すなわち熱流束)が樹枝状凍結境界面126の速度を決める。生物薬剤材料110と冷凍剤122との間の温度勾配は、熱が生物薬剤材料110から除去される速度と相関するため、樹枝状凍結境界面126の速度は、冷凍剤122の温度をコントロールすることによって制御できる。
【0057】
好ましい実施形態では、熱は、生物薬剤材料110から除去される速度は、生物薬剤材料110の実質的な全容積内での樹枝状凍結境界面126の実質的に均一な前進を促進する速度、または、樹枝状凍結境界面126の実質的に一定の速度で生物薬剤材料110から除去される。本発明の実施形態によれば、滅菌した柔軟な容器104内の樹枝状凍結境界面126の速度を実質的一定に維持することが好ましい。なぜならば、それは、冷凍する容積での冷却熱伝達面までの距離とは無関係に、樹枝状氷晶を円滑に成長させるための実質的に定常状態の条件をもたらすからである。
【0058】
図2は、図1に描かれる生物薬剤材料の冷凍保存システム100の一部を示す図である。内部キャビティ108は、テーパー状スロット108の形状のものであり、それは、図2において、テーパー角208を有する。テーパー角208は、1度から89度までの間であり、より好ましくは、約75度から約88度までの間に変化し得る。テーパー角208は、固定されているか、または、ある実施形態では調節できる。テーパー角は、種々の理由で調節される。テーパー角の選択は、生物薬剤材料の組成及び濃度に依存する。例えば、生物薬剤材料の濃度がより高い場合、より小さいテーパー角が用いられ、生物薬剤材料の濃度がより低い場合、より大きいテーパー角が用いられる。本発明の実施にあたっては、テーパー状スロット108の側壁の位置を調節する一般的な機械的メカニズム、例えば、位置決めスクリュー、アクチュエータまたは位置決めモータが使用される。
【0059】
さらに、テーパー状スロット108の壁は、複雑な形状にできる。図2には真っすぐな壁が示されているが、本発明によるテーパー状スロット108の壁は、湾曲していてもよく、複数のセグメントまたはカーブを有することもできる。例えば側面の冷却壁は平らでもよいし、特殊な凍結パターンを誘起するために凹凸でもよい。複数のセグメントまたはカーブが存在する実施形態において、これらセグメントは、垂直軸に対して同じ角度を有するか、または、異なる角度を有し得る(例えばあるプレートは75度であり、別のプレートは80度である)。また、テーパー状スロット108の複数の側面冷却壁は、全体として互いに異なる角度でもよく、この場合、非対称テーパー状スロットが形成される。
【0060】
別の実施形態では、テーパー状スロット108全体が、垂直軸に対して角度をなすことができる。この実施形態において、テーパー状スロット108の1つの壁が滅菌した柔軟な容器104の「底部」を凍結し、他の壁が頂部を凍結する。頂部の壁は、滅菌した柔軟な容器104に対して押し付けられていなければならず、滅菌した柔軟な容器104は、その上面にガスポケットとなるポケット(例えばヘッドスペース)を有していなければならない。
【0061】
テーパー状スロット108は、滅菌した柔軟な容器104内の生物薬剤材料110の凍結(及び融解)において複数の役割を果たす。それは主として凍結中の熱除去及び融解中の熱供給に役立つ。テーパー状スロット108は、凍結中に、上方への生成物の自由膨張を可能にすることによって、ストレスの少ない制御された凍結を促進する。これは、テーパー状スロット108の形がテーパー状であることによって実現する。生物薬剤材料110が凍結すると、流動性の水相は、固体状態に達するまでに約9−10%膨張する。テーパー状スロット108が存在しない場合、樹枝状凍結境界面126が互いに近づくにつれて液体生物薬剤材料110のポケットが最初に生成する。固形塊124及び無菌柔軟性容器104の少なくとも一方の壁に取り囲まれたこの液体のポケットは、滅菌した柔軟な容器104の外形及び立体形状、滅菌した柔軟な容器104の壁(容器壁の未冷却または非断熱部分、突き出ている放熱体(バルブ、ノズルのようなものなど))を介した局所的熱の受け取り、固体−液体界面の複雑な形状、表面凍結(ヘッドスペースのガスが冷却される場合)、容器に挿入された伝熱要素(センサハウジングのようなもの)によって生成し得る。
【0062】
液体ポケットがその後凍結すると、液体ポケットは膨張し、液体ポケットを取り巻く固形塊124にかかるストレスは増加する。このストレスは生物薬剤材料110に不都合な複数の効果を生ずる、生物学的細胞は破壊され、蛋白質は折り畳まれず、ガスや溶質の溶解度が変化し(その後の沈殿に通ずる)、圧力のもとで氷晶の構造も変化することがある。これらの効果は圧力だけでも生物薬剤材料110にマイナスの影響を与え、また、目的とする制御された樹枝状構造から離れる方向に固形塊124の構造を変える。
【0063】
加えて、このようなストレスのもとでは、外部の(液体ポケット周囲の)固形塊124がそのストレスにもはや耐え切れずに、無秩序に割れる(このような無秩序は液体ポケットの形成を制御しなかったためと考えられる)という状態が起こる。9%の体積変化は、ひどくひび割れた固形塊124にズレを起こす可能性がある。このストレス形成及び固形塊124の亀裂は、内部の微小構造を損傷(樹枝状氷晶の割れまたは生物薬剤材料110が埋め込まれているガラス質状態の変形)するため、正しく凍結した固形塊124中の生物薬剤材料を損傷する。
【0064】
固形塊124の無秩序な亀裂は、滅菌した柔軟な容器104の壁に力を及ぼす。ストレス形成及び亀裂は、固形塊124の諸部分にズレを生じさせ、亀裂の進行の仕方及び凍結した材料の諸部分のズレ方によっては、滅菌した柔軟な容器104の壁に損傷を与える。滅菌した柔軟な容器104の壁の損傷は、生物薬剤材料110の漏れや損失、または、汚染または無菌状態の喪失をもたらす。
【0065】
凍結中のテーパー状スロット108のテーパーの作用は、ボトム−アップ(下から上への)凍結を促進することである。この状況において、樹枝状凍結境界面126は、テーパー状スロット108の底部で、最初に互いに近づく。樹枝状凍結境界面126が互いに近づき続けると、液体生物薬剤材料110は、滅菌した柔軟な容器104に存在するヘッドスペースへと全て上方に押し上げられ、樹枝状凍結境界面126間または滅菌した柔軟な容器104内のどこか別の部分に液体ポケットとして通常は捕捉されない。このようにしてテーパー状スロット108は生成する液体ポケットの数を減らし、それによってストレスの小さい(低ストレス)凍結が生ずる。このように低ストレス凍結とは、形成された後に膨張したり、ストレスを生じたりする液体ポケットの数が、大きい液体ポケット(すなわち凍結容積の10%より大きいポケット)に関してはゼロであり、小さい液体ポケット(すなわち凍結容積の10%以下である液体ポケット)に関しては5未満であるような凍結と判断できる。
【0066】
ボトム−アップ凍結を促進するため、テーパー状スロット108の壁に垂直方向成分を有する温度勾配をつけることができる。これは種々の方法で実現される。例えば、極低温冷却流体122は、極低温冷却室106の底部に導入され、頂部で出る。その他の実施形態は、熱伝達係数の操作を含む、つまり、テーパー状スロット108の壁の底部では熱伝達係数をより高い数値に、頂部ではより低い数値にする。これは、テーパー状スロット108の頂部と底部とで異なる熱流束をもたらし、生成した熱流束勾配は、ボトム−アップ凍結、すなわち低ストレス凍結をもたらす。
【0067】
また、テーパー状スロット108は、滅菌した柔軟な容器104を支持し、滅菌した柔軟な容器104が生成物で満たされた後にとると考えられる滅菌した柔軟な容器104の最終的な形の鋳型となる。テーパー状の立体形状は、滅菌した柔軟な容器104を、凍結に重要な、スロットの寸法に形づける。上に詳細に述べたように、テーパー状スロット108は、滅菌した柔軟な容器104の壁からテーパー状スロット108の壁への水圧の分布によって、十分な熱的接触ももたらす。
【0068】
滅菌した柔軟な容器104の温度のモニタリングは、テーパー状スロット108上の一つ以上の位置及びテーパー状スロットに一体化した一つ以上の位置の少なくとも一方で行われる。この実施形態において、1個以上の温度センサが働き、種々の機能のなかでも、特に、テーパー状スロット108と容器104との接触を介した凍結の終点が示される。このような実施形態において、1つ以上のセンサ130が樹枝状境界面の成長速度に関する情報を提供し、フィードバックループの一部として機能する。
【0069】
図3A−図3Bは、テーパー状スロット生物薬剤材料冷凍保存システム300の図を示す。
【0070】
図3Aは、高さ302、スラブ長さ304、及びテーパー角306を一定に保つ一方、テーパー状スロットの数の増加によってリニアスケーラビリティが実現できることを示す。この考え方は上にも述べた。
【0071】
図3Bは、リニアスケーラビリティを実現するもう1つの方法を示す。ここでも高さ302、スラブ長さ304、及びテーパー角304は一定に保たれる。この実施形態において、最適寸法及び凍結境界面速度が決まったならば、寸法「z」の増加または減少によってシステムの凍結容量を直線的に増やしたり減らしたりすることができる。例えば寸法zが1/2zであるテーパー状スロット310は、テーパー状スロット312の4分の1の容量を有し、4zという寸法zを有するテーパー状スロット316の8分の1の容量を有する。例えば、テーパー状スロット314において見られるように、容量は直線的に増加し、テーパー状スロット314の寸法zは3であり、テーパー状スロット316の寸法zは4である。したがって、テーパー状スロット314の容量は、テーパー状スロット316の容量より25%少ない。
【0072】
使用時に、冷却システムの熱除去能力はその容器の長さに比例して変化するが、同じ冷却表面温度を維持することができる。言い換えれば、単位表面積あたりの熱流束を維持できる。長さの異なる容器を、柔軟性を有する重合体材料を使用して形成する限り、容器の最適横断面サイズ及び形状に応じた共通の縦横比を有する冷却装置をベースにして、異なる規模のプロセスを設計できる。このように、小さい容積でも大きい容積でも同様な熱履歴を有し、これにより、生成物の品質は、規模には無関係に一定に保たれる。
【0073】
別の実施形態では、生成物ロットを保存、凍結及び融解するために異なる容量の滅菌した柔軟な容器を複数使用することができ、これによって、さらに融通性が高まる。例えば、同じ横断面形状を有するが、容積のほんの一部分だけが入っているサンプリングバッグをプロセスバッグの近くで凍結することができる。凍結した後、そのサンプルバッグを取り、その内容物を分析する。サンプリングバッグ中で凍結、融解したサンプルは、対応する大規模のバッグで処理された生成物と同一の熱履歴を有する。
【0074】
付加的な融通性として、所定の冷却プレートアセンブリーにおいて、そのプレートの寸法によって許容される寸法よりも小さい長さzのバッグを凍結することもできる。この場合、エンドエフェクトを最小にするため、バッグは、プレートの中心の2つの断熱パッドの間に置かれる。
【実施例1】
【0075】
以下の実施例は、スラブ法を利用したスケールアップを説明するものである。スラブの長さは一定で12cm、高さは40cmである。10cmまたは42cm長さの容器を平行に配列して凍結することによって40倍の容量増加が得られる。凍結時間及び凍結速度は一定値に保たれる。
【表1】
Figure 2004534601
【0076】
図4は、本発明を適用してなる生物薬剤材料の冷凍保存システム200を示す。これは、内部温度口230及び内部温度センサ216が温度センサ130に代えて設けられていることを除けば、生物薬剤材料の冷凍保存システム100とほとんど同じである。
【0077】
図5は、本発明による生物薬剤材料冷凍保存システム300の一部を示す。生物薬剤材料の冷凍保存システム300は、滅菌した柔軟な容器104、テーパー状スロット108、生物薬剤材料110、内部温度センサ216、冷凍剤122、固形塊124、樹枝状凍結境界面126、樹枝状結晶128、内部温度センサ口230、第2温度センサ204、第三温度センサ206、及びテーパー角208を含んでいる。
【0078】
生物薬剤材料の冷凍保存システム300の配置及び動作は、第2温度センサ204及び第3温度センサ206が存在することを除けば、生物薬剤材料の冷凍保存システム200とほとんど同じである。第2温度センサ204及び第3温度センサ206は、移動する凍結境界面126に関する情報、そして、壁に垂直に存在する温度勾配に関する情報を提供するのに役立つ。例えば、第2温度センサ204及び第3温度センサ206は中心線から離れて設置されている(例えば滅菌した柔軟な容器104の中心線と壁との間)。2つ以上の温度センサを並べて配置すると、凍結境界面の移動及び生成物中の温度勾配に関する詳細な情報が得られる。図5に示すように、複数の位置の温度センサによって、または、複数の温度センサの使用によって勾配を直接読み取ることができる。
【0079】
一実施形態では、複数の読み取りは、次のようになし得る。それは、滅菌した柔軟な容器104の壁近くに位置する第3温度センサ206、滅菌した柔軟な容器104の壁からある距離だけ離れた第2温度センサ204、及び中心線にある温度センサ116による。第2温度センサ204及び第三温度センサ206は、固形塊124中の温度勾配をモニターするのに役立つが、中心線のセンサは凍結の終わりを示す。固形塊124中で測定された温度勾配は、凍結境界面の速度に関連するため、制御装置によって利用できる。樹枝状結晶の成長は、熱流束/境界面速度によって制御されるから、測定された温度勾配を用いて樹枝状結晶の成長を制御できる。並んで配置された2つより多い温度センサは、凍結境界面の移動及び生成物中の温度勾配に関する詳細な情報をもたらす。
【0080】
上の説明から、内部キャビティ108及び容器104の少なくとも一方は、立方体形、球形、円筒形、円錐形、並びにこれらの種々の組み合わせを含む多くの異なる形から、制限されることなく形成できることは当業者には明らかである。立方体形を有する内部キャビティ108の例が、相応する立方体形を有する容器104と共に図6に示される。また、この例においては、本発明者の米国特許出願第09/863,126号に記載されているように、容器104及びキャビティ108の少なくとも一方は、直接凍結剤122に浸漬される。容器は、ここでは柔軟性を有する容器として記されているが、半硬質または硬質材料で形成することもできる。例えば、半硬質材料は、空になったときも生物薬剤材料を充填したときも、その形を保持することができるか、それ自体で立つことができるか、またはその両方が可能である。このような半硬質容器の例としては、ポリエチレンなどからつくられる標準的プラスチック製牛乳パックと同様の容器がある。
【0081】
さらに本発明の冷凍保存システム構成要素、システム及び方法において、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、種々の改良及び変形が行われ得ることは、当業者には明らかである。かくして本発明は、添付の請求項及びそれらと同等物の範囲に入る限り、本発明の改良及び変形を網羅するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明による生物薬剤材料の冷凍保存システムの側面断面図である、
【図2】図1の生物薬剤材料の冷凍保存システムの一部の側面断面図である、
【図3A】図1の生物薬剤材料の冷凍保存システムの直線的規模拡大の斜視図である。
【図3B】図1の生物薬剤材料の冷凍保存システムの直線的規模拡大の斜視図である。
【図4】本発明による生物薬剤材料の冷凍保存システムの別の実施形態の側面横断図である。
【図5】本発明による生物薬剤材料の冷凍保存システムのまた別の実施形態の一部の側面断面図である。
【図6】本発明による生物薬剤材料の冷凍保存システムのさらに別の実施形態のブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
100 冷凍保存システム
104 容器
106 極低温冷却室
108 内部キャビティ
110 生物薬剤材料
112 制御装置
114 冷凍装置
130 温度センサ

Claims (41)

  1. 外側表面領域を有する容器であって、その中で凍結及び融解する生物薬剤材料を収容するのに適応した前記容器と、
    該容器を受容するための内部キャビティを有する極低温冷却室と、
    該極低温冷却室の内部キャビティが前記容器を受容する際に、前記容器の外側表面領域と接触するための前記極低温冷却室内の少なくも1つの熱伝達面と、
    前記極低温冷却室に熱的に結合し、流体を前記少なくも1つの熱伝達面に流し、前記少なくも1つの熱伝達面の温度及び前記容器内の生物薬剤材料の温度を、前記流体が前記容器との接触から隔離された状態で制御するための冷凍器と、
    前記極低温冷却室、前記少なくも1つの熱伝達面、前記流体及び前記冷凍器の少なくも一つに熱的に結合する温度センサとを備えた生物薬剤材料の冷凍保存システム。
  2. 前記外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)からなることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
  3. 前記外側表面領域が、前記容器の前記外側総表面積の少なくも50パーセント(50%)からなることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
  4. 前記外側表面領域が、前記容器の前記外側総表面積の少なくも75パーセント(75%)からなることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
  5. 前記外側表面領域が、第1の表面領域と第2の表面領域とを有し、前記少なくも1つの熱伝達面が、前記第1の表面領域と接触するための第1熱伝達面と、前記第2の表面領域と接触するための第2熱伝達面とを有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
  6. 前記第1の表面領域及び前記第2の表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)からなることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
  7. 前記第1の表面領域及び前記第2の表面領域が、前記容器の外側総表面の少なくも50パーセント(50%)からなることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
  8. 前記第1表面積及び前記第2表面積が、前記容器の外側総表面の少なくも75パーセント(75%)からなることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
  9. 前記第1の表面領域が、前記第2の表面領域と対向していることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
  10. 前記容器は、柔軟性を有し、前記生物薬剤材料で満たされると前記極低温冷却室の前記内部キャビティの形と同じになり、前記少なくも1つの熱伝達面が前記外側表面領域と接触することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
  11. 前記容器の外側表面領域が、前記容器の総表面積の少なくも10パーセント(10%)からなることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
  12. 前記容器は、テーパー状の断面を有することを特徴とする請求項11に記載のシステム。
  13. 前記容器は、硬質または半硬質で、空のときでも前記極低温冷却室の前記内部キャビティの形と同じになることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
  14. 前記外側表面領域が、前記容器の総表面積の少なくも10パーセント(10%)からなることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
  15. 前記外側表面領域が、前記容器の総表面積の少なくも50パーセント(50%)からなることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
  16. 前記外側表面領域が、前記容器の総表面積の少なくも75パーセント(75%)からなることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
  17. 前記容器は、テーパー状の断面を有することを特徴とする請求項14に記載のシステム。
  18. 前記温度を制御する冷凍器は、生物薬剤材料内の樹枝状凍結境界面速度を約5mm/時間から約250mm/時間の範囲内に制御する冷凍器からなることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
  19. 前記温度を制御する冷凍器は、生物薬剤材料内の樹枝状凍結境界面速度を約8mm/時間から約180mm/時間の範囲内に制御する冷凍器からなることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
  20. 前記温度を制御する冷凍器は、生物薬剤材料内の樹枝状凍結境界面速度を約10mm/時間から約125mm/時間の範囲内に制御する冷凍器からなることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
  21. 外側表面領域を有する容器内に凍結及び融解するための生物薬剤材料を収容し、
    前記容器を受容するような形になっている内部キャビティを有する極低温冷却室内に前記容器を受容し、
    前記極低温冷却室内の少なくも1つの熱伝達面を前記容器の外側表面領域と接触させ、
    冷凍器を前記極低温冷却室に熱的に結合し、冷却流体を前記少なくも1つの熱伝達面に流し、前記熱伝達面の温度及び前記容器内の生物薬剤材料の温度を、前記流体が前記容器から隔離された状態で制御し、
    温度センサを前記極低温冷却室、前記少なくも1つの熱伝達面、前記流体及び前記冷凍器の少なくも一つに熱的に結合することを含む生物薬剤材料の冷凍保存方法。
  22. 前記外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも大部分からなることを特徴とする請求項21に記載の方法。
  23. 前記外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)からなることを特徴とする請求項21に記載の方法。
  24. 前記外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも50パーセント(50%)からなることを特徴とする請求項21に記載の方法。
  25. 前記外側表面領域が、前記容器の前記外側総表面積の少なくも75パーセント(75%)からなることを特徴とする請求項18に記載の方法。
  26. 前記外側表面領域が、第1の表面領域と第2の表面領域とを有し、前記少なくも1つの熱伝達面が、前記第1の表面領域と接触するための第1熱伝達面と、前記第2の表面領域と接触するための第2熱伝達面とを有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
  27. 前記第1の表面領域及び前記第2の表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも大部分からなることを特徴とする請求項26に記載の方法。
  28. 前記第1の表面領域が、前記第2の表面領域に対向することを特徴とする請求項26に記載の方法。
  29. 前記容器は、柔軟性を有し、前記生物薬剤材料で満たされたときに前記極低温冷却室の前記内部キャビティの形と同じになり、前記少なくも1つの熱伝達面が前記外側表面領域と接触することを特徴とする請求項21に記載の方法。
  30. 前記容器の前記外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも10パーセント(10%)からなることを特徴とする請求項29に記載の方法。
  31. 前記容器の外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも50パーセント(50%)からなることを特徴とする請求項29に記載の方法。
  32. 前記容器の外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも75パーセント(75%)からなることを特徴とする請求項29に記載の方法。
  33. 前記容器は、テーパー状の断面を有することを特徴とする請求項30に記載の方法。
  34. 前記容器は、硬質または半硬質で、空のときでも前記極低温冷却室の内部の形と同じになることを特徴とする請求項21に記載の方法。
  35. 前記外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも10%からなることを特徴とする請求項34に記載の方法。
  36. 前記外側表面領域が、前記容器の総表面積の少なくも50パーセント(50%)からなることを特徴とする請求項34に記載の方法。
  37. 前記外側表面領域が、前記容器の外側総表面積の少なくも75パーセント(75%)からなることを特徴とする請求項34に記載の方法。
  38. 前記容器は、テーパー状の断面を有することを特徴とする請求項35に記載の方法。
  39. 前記温度の制御が、生物薬剤材料内の樹枝状凍結境界面速度を約5mm/時間から約250m/時間の範囲内に制御することを含むことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
  40. 前記温度の制御が、生物薬剤材料内の樹枝状凍結境界面速度を約8mm/時間から約180mm/時間の範囲内に制御することを含むことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
  41. 前記温度の制御が、生物薬剤材料内の樹枝状凍結境界面速度を約10mm/時間から約125mm/時間の範囲内に制御することを含むことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
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