JP2004528561A - プリオンタンパク質含有サンプルをPrPSc型の存在可能性について試験する方法 - Google Patents

プリオンタンパク質含有サンプルをPrPSc型の存在可能性について試験する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プリオンタンパク質含有サンプルのPrPSc型の存在可能性の、より確実な結果を導き出せるようにした試験方法を提供する。
【解決手段】a)サンプルにプロテアーゼを加えてプロテアーゼ感受性タンパク質又はタンパク質領域を消化し、b)消化後に前記サンプルをプリオンタンパク質のPrPSc型におけるプロテアーゼ耐性であるプリオンタンパク質領域PrP27−30の存在について試験し、更に、c)PrP27−30の検出を前記サンプル中のPrPScの存在を示す決定的な証拠としてとる、プリオンタンパク質含有サンプルをPrPSc型の存在可能性について試験する方法において、工程b)において前記サンプルに対してプリオンタンパク質のプロテアーゼ感受性領域が消化されたか否かについても試験する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前提部分の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この前提部分の方法は、現在、哺乳類、例えば、屠殺用動物の伝染性の退行性神経疾患についてのスクリーニングに支配的に用いられていることがわかっている。集約してスポンジ様脳症又はプリオン病と呼ばれるこの種の疾病は、例えば、ウシではBSEとして、ヒツジではスクレイピー(ヒツジ赤痢)として、またヒトではクル(笑い病)もしくはクロイツフェルトヤコブ病として現れることが知られている。
【0003】
前記のようにプリオン病は伝染性であるが、その感染性は十分には解明されていない。これまでに感染性病原体と関連があるとわかっている唯一の分子は、疾病特異的プリオンタンパク質(PrPSc)であり、これは機能未知の正常な哺乳類タンパク質(PrPc)の異常なイソ型である。この2種のイソ型、PrPScとPrPcは、分子量及びアミノ酸配列に関しては同一であるが、3次元折りたたみパターンが異なる。
【0004】
PrPScが、前記の疾病の誘発において中心的な役割を果たしているのであろうということを示す多くの証拠、すなわち、プリオン中にはPrPSc以外の分子がなく、特に核酸がないという証拠がある。PrPScタンパク質は、正常なPrPcタンパク質を疾病特異的折りたたみパターンに変換できると推定されており、これによりPrPScタンパク質の感染特性を説明できよう。
【0005】
したがって、前提部分の試験では、PrPScが中心的な疾病付与分子であると仮定し、ゆえに一例として哺乳類脳サンプルに含まれるプリオンタンパク質の少なくとも一部がPrPSc型として存在するかどうかを調べる。この試験が陽性であれば、この知見によりサンプルを採取した哺乳類は感染していたと判断される。
【0006】
前記のように、感染源由来のサンプルは全くPrPScだけを含むわけではなく、PrPc型のプリオンタンパク質も幾分か含む。したがって、前記方法はPrPc型と存在し得るいずれかのPrPSc型との識別を提供しなければならない。
【0007】
この問題には、PrPc型はプロテアーゼで完全に消化され得るのに対し、PrPSc型のC末端領域のみがプロテアーゼ感受性であり、一方でPrP27−30と呼ばれるプリオンタンパク質領域はプロテアーゼの作用に対し耐性であるという事実を利用することで対応している。
【0008】
したがって、従来の試験ではプロテアーゼ消化後には正常サンプルではプリオンタンパク質のプロテアーゼ感受性領域は残存せず、且つ、感染サンプルではPrPSc型のプロテアーゼ耐性領域、PrP27−30のみが残存するという仮定の基に、試験サンプルをまず第1の工程(工程a)においてプロテアーゼで消化する。その結果、消化に続くこれらの試験の第2の工程(工程b)では、試験サンプルにおいてPrP27−30領域が検出可能であるかどうかのみを調べる。検出には、これらの試験は一例としてPrP27−30領域内で特異的に結合する抗体を用いる。次いで、このように形成されるいくつかの抗体−PrP27−30複合体を、一般的な検出法、例えば、ELISAアッセイ〔モイナフ(Moynagh) 及びスキメル(Schimmel);ネイチャー 1999年7月8日,400(6470):105〕で検出する。これらの試験での陽性の知見、すなわち、一例として抗体−PrP27−30複合体の検出は、サンプル中のPrPScの存在を示す証拠としてとられ、このことは言い換えれば、サンプルが由来する生物が感染していたということを意味する。
【0009】
従来の試験の欠点の一つは、病原体の間接的な検出を用いるということである。言い換えれば、消化後に検出可能であるいくらかのPrP27−30が、これがPrPScのプロテアーゼ耐性領域に由来したということを示す決定的な証拠としてとられるが、この試験法は、この領域とPrPc由来の対応する領域との間の明確な識別を提供するものではない。好ましくない条件下では、例えば、サンプル材料が処理しにくい場合には、少なくとも理論上は、このことが偽陽性結果をもたらし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、より確実な結果を導き出せるよう前提部分の方法を更に発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、特許請求の範囲の請求項1の特徴を有する方法によって解決される。
【0012】
本発明の方法は、消化工程(工程a)後の工程bにおいて、サンプルを、領域、PrP27−30の存在について調べるだけでなく、サンプルがプリオンタンパク質のプロテアーゼ感受性領域を依然として含んでいるかどうかも調べることを考慮するものである。
【発明の効果】
【0013】
したがって、本発明の方法は、消化されたサンプルにおいてPrP27−30の有無の可能性と、消化が完全であったかどうかの双方を考慮して、結論を導き出すことを可能にする。
【0014】
消化されたサンプルにおいてPrP27−30が検出される場合には、消化されたサンプルにおいてプリオンタンパク質のプロテアーゼ感受性領域が検出可能でない限りは、これはPrPScの存在のみを示す証拠としてとられる。対照的に、サンプルが消化後にこれらのプロテアーゼ感受性領域を依然として含む場合には、起こり得るPrP27−30の検出はPrPScの存在を示す決定的な証拠としてはとられず、むしろPrPc型の対応する領域の消化が不完全であった可能性があるということを意味する。こうした状況下では、サンプルを例えば、より高濃度のプロテアーゼで、又はより長時間の消化を用いて再試験しなければならないであろう。
【0015】
したがって、本発明の方法は、特に確実、且つ、単純な方法で偽陽性結果を排除するために使用できる。特に、プリオン病などの珍しい感染症については、偽陽性結果の数を最小に維持することは試験の有効性にとって極めて重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態では、プリオンタンパク質のPrP27−30及びプロテアーゼ感受性領域を、プリオンタンパク質のそれぞれの領域内で特異的に結合する分子によって検出するが、本明細書においてこれらは分子A(プロテアーゼ感受性領域に特異的)、及び分子B(PrP27−30領域に特異的)と示すものとする。
【0017】
この実施の形態の典型的な方法では、工程aでサンプルを消化し、その後消化されたサンプルに分子A及びBを加え、次いで、そのサンプル中にプリオンタンパク質と分子A及び/又は分子Bとの複合体が形成されたかどうかを調べる。したがって、結果の解析は、複合体が形成されたかどうか、及びどちらの複合体が形成されたかによって異なる。
【0018】
分子Bとプリオンタンパク質との複合体のみが検出される場合には、サンプルは確かにPrPScを含んでいる。しかしながら、分子Aを含む複合体も存在する場合には、偽陽性結果を得ている危険がある。複合体がない場合、又は分子Aを含む複合体のみが検出される場合にサンプルは陰性である。
【0019】
プリオンタンパク質のそれぞれの領域を特異的に認識する抗体は、分子A及びBとして用いるのに特によく適している(以下、抗体AおよびBという)。しかしながら、特異的結合を示す他の分子、例えば、RNA分子も本目的のために同様に十分に使用できる。
【0020】
PrP27−30を認識する抗体は、深く掘り下げて記載され、実証されており、したがって本明細書では更に詳しく記載しない。
【0021】
PrPのプロテアーゼ感受性N末端領域を認識する抗体は、例えば、「ブレイン・リサーチ(Brain Research),545,(1991)p.319−321(抗血清 抗PrP−N)」、「ブレイン・パソロジー(Brain Pathology) ,2002;12;p.1−11(抗体FH11、BG4)」、「プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミック・サイエンス・オブ・ユーエスエー(Proceedings of National Academic Science of USA),95巻p.8812−8815,1998年7月(抗体5B2)」、又は「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Reserch Communications),273,p.136−139(2000)(抗体8B4)」から周知である。前記の参照文献は、抗体の特性とその製造の双方を記載している。
【0022】
複合体の形成は、標準的な方法によって検出すればよい。通常、形成された複合体の2成分のうちの一方を担体に結合することが考慮される。
【0023】
したがって、一例として、消化後のサンプル材料を例えば、マイクロタイタープレート又はビーズ上に固定し、次いで、標識付けした分子A及びB、特に抗体A及びBを用いて検出を実施することが考えられる。この目的に好ましい抗体類は、サンプル材料のただ1つのアリコートと共に、同時にか逐次にインキュベートしてもよい。しかしながら、サンプルの2つのアリコートを平行して準備し、次いで、各サンプルに2つの抗体A及びBのどちらか一方を加えることが理想的である。
【0024】
分子A及びB、好ましくは抗体A及びBの各々を、その表面で生じる分子の相互作用に応じて検出可能なシグナルを発生し得るチップ上に、固定化することも考えられる。この種のチップは、EP887645から周知である。固定化抗体A又はBを保持するこの種のチップを、消化後に得たサンプル材料と共にインキュベートすることで、サンプル材料がチップ表面に固定化抗体によって結合されているかどうかを、例えば、光屈折によって測定する容易な手法が提供される。
【0025】
検出にはサンドイッチ・イムノアッセイ(immunoassay )を用いるのが好ましい。原則として、この種のサンドイッチ・イムノアッセイは、各分析物につき2 種の抗体を用い、これらの抗体は分析物の異なるエピトープと結合する。通常、これらの抗体の一方は、固定化して固相に分析物を結合するために用い、もう一方の抗体は標識付けして検出抗体として用いる。
【0026】
この場合、本発明は、PrPの異なる領域を認識する抗体A及びBに加え、PrP27−30を認識するもう1 つの抗体、抗体Cを用いることを考慮し、ここで抗体Cは抗体Bとは異なるエピトープを認識する。
【0027】
ここでいくつかの異なる選択肢を示す。
【0028】
抗体Cを担体に固定化し、この担体を消化後に得たサンプル材料と共にインキュベートし、次いで、検出のために標識抗体A及びBを加えることが考えられる。
【0029】
もう1つの選択肢は、抗体A及びBを担体に固定化し、この担体をサンプル材料と共にインキュベートし、次いで、検出のために標識抗体Cを加えることである。
【0030】
2つの後者の変法は、求めるシグナル解像度、標準化に関するいくらかの困難、及び3重の反応機構に関する複雑さを伴い得る。
【0031】
こうした困難は、反応を分離することで、例えば、抗体を異なる担体上に固定化してサンプルの別個のアリコートと共にインキュベートすることで解決することができる。
【0032】
特に好ましい実施の形態は、消化後に得たサンプル材料をまず固定化抗体Aと共にインキュベートし、次いで、固定化抗体Bと共にインキュベートするといったサンプルのただ1つのアリコートの使用を考慮する。検出には、前述のように標識抗体Cを加える。この実施の形態では、工程を逐次実施することによって、PrPのいずれかのプロテアーゼ感受性領域が、結合反応の反応機構がプロテアーゼ耐性領域での分子Bとなる抗体の付隨アタック(concomitant attack)によって影響を受けることなく特異的抗体Aと結合するための単純な手法を提供する。
【0033】
一例として、サンプルにそれぞれの抗体で標識付けしたビーズを逐次加えること、又は、それを通してサンプル材料が流れ、それによって抗体A又はBのいずれか一方が固定されている領域と逐次接触する装置を用いて試験を実施することが考えられる。
【0034】
前述のように、形成されるいずれかの複合体は、標識分子を用いて、特に標識抗体を用いて検出される。担体上に標識が検出又は観察されれば、これをこの標識を保持する抗体が結合されたということを示す証拠としてとり、実験の設定の詳細にもよるが、このことは特定の複合体の存在の証拠を提供し得る。
【0035】
分子A及びB及び抗体Cは、同一もしくは異なる蛍光マーカー又は酵素(ELISA)又は他の好適なマーカーで標識付けすればよい。原則として、直接又は間接検出又は測定のいずれかを可能にする全てのマーカーが好適である。前記で概説した手法のために、分子、特に抗体を好適に標識付けする種々の手法、及びこれらの手法の一部としてそれらを検出することは当業者には周知であり、したがって、本明細書では詳細に論じない。

Claims (6)

  1. プリオンタンパク質含有サンプルをPrPSc型の存在可能性について試験する方法であって、
    a)前記サンプルにプロテアーゼを加えてプロテアーゼ感受性タンパク質又はタンパク質領域を消化し、
    b)消化後に前記サンプルをプリオンタンパク質のPrPSc型におけるプロテアーゼ耐性であるプリオンタンパク質領域、PrP27−30の存在について試験し、更に
    c)PrP27−30の検出を前記サンプル中のPrPScの存在を示す決定的な証拠としてとる方法において、
    工程b)において、前記サンプルをプリオンタンパク質のプロテアーゼ感受性領域が消化されたかどうかについても試験することを特徴とする方法。
  2. 工程b)において、プリオンタンパク質結合分子A及びBを前記サンプルに加え、分子AがPrPタンパク質のプロテアーゼ感受性領域内で結合し、且つ、分子BがPrP27−30領域内で結合し、且つ、前記サンプル中で形成されるプリオンタンパク質と分子A及び/又はBとの複合体のいずれをも検出することを特徴とする請求項1に係る方法。
  3. 工程b)で用いる前記分子A及びBが抗体であることを特徴とする請求項2に係る方法。
  4. 形成されるプリオンタンパク質と分子A及び/又はBとの複合体をサンドイッチ・イムノアッセイで検出することを特徴とする請求項3に係る方法。
  5. 消化後に得られたサンプルをまず分子Aとなる固定化抗体と接触させ、次いで分子Bとなる固定化抗体と接触させ、更に、PrP27−30を認識する標識付け抗体を用いて、形成され得たプリオンタンパク質と固定化抗体との複合体のいずれをも検出することを特徴とする請求項4に係る方法。
  6. 工程b)において、前記サンプルをまず2つのアリコートに分割し、次いで、分子A又はBのどちらか一方を各アリコートに加えることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に係る方法。
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