JP2004526902A - 方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、添加剤を燃料に投入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[DRFの再生]
金属を含有する燃料添加剤(「燃料燃焼触媒」又はFBC)が、トラップ又はDPFに蓄積したススの燃焼温度を下げるのに有効であることは、当業者にはよく知られている。この点に関する先行技術は十分に確立されている。2000年3月にデトロイトでのSAE世界会議で発表されたSalvat et alの文献(参考文献:SAE2000−01−0473)には、DPFに対する20年に及ぶ関心が示され、当該分野に従事する人間による多くの文献が列挙されている。
【0003】
鉄系の燃料可溶性添加剤がこの点で有効であることは周知である。Mayerは、1998年2月にデトロイトでのSAE国際会議及び博覧会で発表した自身の文献SAE980539において、鉄系の燃料可溶性添加剤を、DPFに付着したススの焼却に触媒作用を及ぼすものとして記述している。Mayerはまた、セリウム系及び銅系添加剤の触媒作用についても述べており、1998年には、これらの市販されている添加剤を入手してDPFと併用することができたと示している。
【0004】
また、本発明者らの以前の公開公報であるWO99/36488号には、DPF中のススの燃焼に触媒作用を及ぼすための、鉄とカルシウム又はストロンチウムのいずれかとを組み合わせた調製物の使用方法についての充分な記載がある。
【0005】
内燃エンジン用の液体炭化水素燃料に金属添加剤を適用するには、金属含有添加剤の適切な調製物を作製して、確実に燃料本体へ完全に分散させることが必要になる。これは種々の方法で行ってもよく、その方法のひとつとして、燃料中の金属含有化合物のコロイド懸濁液を作製することが挙げられる。酸化セリウムをコロイド懸濁液に組み込んでディーゼル燃料へ注入するのが可能であることは、よく知られている。Salvat et alは、自身の文献SAE2000−01−0473にて、乗用プロダクションカーに用いる商業システムについて記載している。
【0006】
好適な代替的方法に、炭化水素燃料に溶解可能な有機金属化合物を作製することがある。この方法が好適とされるのは、目的の金属イオンと、炭化水素ディーゼル燃料に溶解可能な適切な有機分子とを組み合わせることにより、目的の金属が分子状態で燃焼室に導入されるためである。しかし、フランスでPSA Peugeot Citroen社により製造されたプロダクションカーは、DPFに付着したススの燃焼プロセスの補助という点で、燃料に注入されるコロイド懸濁液中のセリウム酸化物の使用に依存している。この方法が、理想的ではないとしても満足できるものであることは明らかである。
【0007】
他の金属含有添加剤としては、単一の金属からなるもの、又は1つ以上の金属と組み合わせて使用したものが、付着したススの燃焼温度を下げるのに有効であると当業者に知られている。こうしたものとして、鉄、鉄とストロンチウム、鉄とカルシウム、鉄とセリウム、ナトリウムとストロンチウム、セリウムと白金、銅、マンガンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0008】
選択した金属種を燃焼室に導入する方法が必要とされているのは明らかであり、これにより、燃焼プロセス中に発生したススと結合している目的の金属が生じる。触媒となる金属種は非常に細かく細分化され均一に分散することが好ましい。これは、DPFにおけるススの焼却に触媒作用を及ぼすには理想的といえる好適な状態である。目的の金属種が燃料可溶性であること又はコロイド状であることは、かかる金属種を燃料に導入する手段として非常に有益である。
【0009】
[工場で装着する投入システム]
当業者には周知のことだが、現代の乗用車には、マイクロプロセッサを組み込んだ電子制御システムが搭載されている。この装置は、一般にエンジン管理システムと称される制御装置を含む各種変換機器からの入力値をモニターし、取り扱うものである。Salvat et alはSAE2000−01−0473において、再生、すなわちDPFに付着したススの燃焼を制御するため又は起こさせるための、かかる装置の使用方法について記載している。
【0010】
コモンレール噴射式ディーゼルエンジンを動力とする車両にDPFを装備すると、DPFを能動的に制御する機会が得られる。そのため、ススの受動的焼却に通常必要とされる温度と圧力の条件がそろうまで待機する必要がない。制御されたシステムによるススの焼却は、SAE2000−02−0473に記載のとおり、ポスト燃料噴射という技法によって可能である。
【0011】
ディーゼル燃料を内包する事実上の加圧型流体貯蔵部であるコモンレールから、燃焼プロセスの最後期において、過剰な燃料が噴射される。追加した燃料は、排気ガスの温度を、ひいてはDPFの温度を上昇させ、蓄積したススを焼却する原因となり、DPFの再生又は洗浄を行うことになる。同じ文献に、添加剤投入システムが記載されている。かかるシステムにより、再生プロセスに必要な燃料添加剤が確実に燃料へ添加される。
【0012】
Salvat et alによるSAEの文献番号2000−01−0473の図9に記載の全体的制御システムは、添加剤がタンク中の燃料まで確実に到達して、添加剤と燃料の比率が要求どおりの比率となるのに必要な、該投入システムの要素を数多く示している。これらの要素には、(i)タンク内の貯蔵量を感知し、それによりタンクへの燃料の追加(「燃料補給」)を検出することが可能なタンクレベルゲージ、(ii)添加剤コンテナ、(iii)添加剤コンテナ内ポンプ、(iv)タンク内の燃料に有機金属添加剤を添加することが可能な噴射装置、及び(v)正確な投入速度を確保するために、主要な燃料タンクシグナルを操作し、燃料への添加剤の添加をモニターする電子制御装置が含まれる。これらの要素を図1の図解に示す。
【0013】
記載したシステムの洗練度は、部分的には、軽装備車両用のディーゼル噴射ポンプの特質によるものである。当業者には周知のように、こうした装置は、単にエンジンに燃料を補給するのに必要な速度と比べてかなりの高速で燃料のポンピングを行う。あらゆる操作条件において、ポンピングされた燃料の多大な過剰分は、かかるポンプによって提供される。したがって、エンジンが、かかる車両又はエンジンの運転者又は操作者に要求された動力を提供するのに必要な分の燃料を消費する一方、過剰分の燃料は「戻り配管」から燃料タンクに戻される。
【0014】
エンジンが動力を提供するために必要な量を超えた、多大な過剰燃料量をポンピングするような配置は、部分的には、噴射ポンプそれ自体を冷却して潤滑油を補給する必要から生じるものである。この結果、SAE2000−01−0473に記載のシステムの場合、タンクの内容物に必要な正確な量の添加剤とともに燃料補給後に燃料を投入するためには、かなり複雑な事態が生じる。必要とされるレベルまでいったん燃料が投入されると、投入システム制御装置が閉じて、次の燃料補給まで、添加剤がそれ以上燃料に添加されないようにする。
【0015】
DPF及び投入システムを備えた車両は、多数の異なる操作条件及び物理状態に遭遇すると思われるため、燃料補給を正確に検出するのは瑣末な作業ではない。例えば、車両が水平面以外の場所、前後方向若しくは左右方向のいずれか、又はその両方が坂となっている場所で運転された場合、燃料貯蔵タンク内の燃料は、タンク内でその相対的な位置を変える。タンク内のレベル表示器は、この変化を燃料補給と解釈する場合がある。同様に、加速、制動又はコーナリングのいずれかの、車両の動きによる動態的作用の結果、車両に燃料が補給されたかのようにタンクレベル表示器が反応し、誤って添加剤を燃料に添加してしまう場合がある。これが発生すると、燃料中のDPF再生添加剤の過剰処理が有意に生じることがある。これを発生させないためには、別の連動装置及び予防手段が必要となる。これにより、複雑さとコストが増大する。
【0016】
新しく設計される新型車両にDPF添加剤用投入システムを提供するのは、該システムが車両管理システムに完全に組み込まれるとはいえ瑣末な仕事ではないが実現可能であり、全体的な設計及び製造プロセスの一部として行われるのであれば、完全に実施可能である。そうしたシステムを搭載する場合の主な短所は、主としてコスト及び複雑さを考慮して生じるものであり、かかる短所が長期信頼性に影響する場合もある。EP1158148A2号は、投入ユニットが全体的電子制御システムの一部を形成している場合に、添加剤が確実に燃料補給の後にだけ燃料に投入されるようにするために必要な複雑な論理を図示している。
【0017】
[後付けの投入システム]
世界中に無数に存在する使用過程車が、粒子状排出物を削減する有効な手段としてDPFを使用するのは完全に実現可能なことである。DPFを使用過程車に装着する(「後付けする」)ことにより粒子状排出物の削減に成功したと立証する文献は無数にあるが、例として、SAEの文献番号2000−01−0474及び2000−01−2849が、使用過程車へのDPFの後付けに関する実現可能性を示すものとして役に立つであろう。
【0018】
SAE2000−01−0474は、DPFシステムを後付けした、軽装備及び重装備の各種車両の操作について記述している。SAE2000−01−2849は、DPFを未装備で80,000km走行した後にDPFを装備してさらに80,000km走行した車の操作について記述している。既存の車両へのDPFの後付けについての実現可能性は、International Congress on 21stCentury Emissions Technologyで発表された文献において個別に確認された。この会議は、Institution of Mechanical Engineersの主催で2000年12月にロンドンにて開催された。
【0019】
文献番号C588/021/2000は、DPFを後付けした車両によって排出物の減少が促進されることについて示している。こうした促進の程度は、標準装備として最初からDPFが装着され、PSA Peugeot Citroen社の文献SAE2000−01−0473に記載された型の独自の投入システムを備えた新型車両による促進の程度に匹敵する。
【0020】
SAE文献2000−01−0474、2000−01−2849、及びI. Mech Eの文献C588/021/2000に記載のDPF後付け車両はすべて、事前処理済燃料を用いて操作された。車両に投入システムを装備しなくてもいいように、燃料補給前に添加剤をかかる車両用の燃料に投入した。市販により入手可能な添加剤投入システムは、DPFを後付けした車両で使用されており、これらは一般に、燃料補給を検出するレベルゲージに依存している。これは電気信号の発生を伴うということであり、これを利用して、電動式装置によって添加剤を燃料に注入する。
【0021】
必要量の添加剤を燃料に添加するために、電気信号及び一つ以上の電子装置を利用する投入システムは、燃料補給後に必要とされる添加剤の必要量を計算するためにマイクロプロセッサーも利用する場合が多い。そのため、このアプローチでは、複雑さのレベルが全体的投入システムと同程度となり、新品購入時の装備品と同程度の電子的接触面及び制御ユニットが後付けのために必要となる。燃料へ添加剤を投入する際の基準として燃料補給を検出することに依存している投入システムにとって重要な要件とは、工場で装着する設備に関してすでに述べたように、連動装置及び予防手段を提供し、燃料が確実に補給されるようにすることである。これを行わないでいると、燃料が補給されていないときに誤って添加剤を何度も燃料に投入するかもしれないというリスクを抱えることになる。このことにより、貯蔵されている燃料添加剤が非常に早く使い果たされるだけではなく、処理済燃料に含まれる過剰な金属量によりDPF中の灰負荷が増大する。
【0022】
燃料投入システムに関して上記の複雑さを軽減させることが可能である。DE4332933C2号には、燃料流量に比例してDPF添加剤を投入する、ディーゼルエンジン搭載車両の燃料パイプに配置した装置の使用が記載されている。DE4332933C2号から採用した実用的原則の図を、図2に示す。
【0023】
図2に示されているように、このタイプの装置は、登録名「SATAcenR」という添加剤の特質、すなわち、加圧と焼結により燃料可溶性ペレットにすることが可能であることに依存している。かかるペレットは、図中で1と印がつけられている容器に入っており、図中3と印がつけられている位置に燃料接触用開口部がある。ペレットは、図中4で示される器具に誘導されて、燃料との接触面積に比例して溶解し、添加剤のペレットが貯蔵されているコンテナに接触する。こうして、添加剤コンテナに接触しているすべての燃料は、ペレットがゆっくりと溶解するにつれて添加剤を投入されることになる。燃料に投入すべきすべての添加剤が、固形で入手できるわけではない。そのため、このタイプの装置の応用には、限界がある。
【0024】
液状の可溶性添加剤用に、パイプライン中の燃料又はチャンバーを通過する燃料の流量に比例して添加剤を燃料に投入する装置もある。これらの装置の一般原則は、当該産業において周知である。石油やガソリンを動力とするエンジンのキャブレターは、二つの流体を混ぜ合わせるためにベンチュリ又は開口部を通過する流れが他の流体の流れを引きこんでいるという原則に基づいている。キャブレターの場合、ベンチュリ又は開口部を流れる主な流体は空気であり、その空気と混合させる第二の流体は燃料であって、普通は石油又はガソリンと称されている。
【0025】
流れを引きこむのは、混合方法として他の流体に応用可能であり、この原則は当業者に周知である。フローエダクターは、流体が両方とも液相である場合に主要成分と微量成分を混合するために用いる装置の一例である。入念な設計により、開放エダクター管の端部を通過する第一の流体の流れによってかすかな減圧が生じ、この減圧が第一の流体の流速に比例した第二の液体の流れを誘発する。このようにして、単純な機械装置によって流れと混合のバランスを取ることができる。
【0026】
当業者に周知のとおり、電気機械装置も、電流により電気ソレノイドが移動するように、そしてその際に一つの流体の流れが他の流れと混合するように、簡単に配置することが可能である。一つの流体を正確な量で、パルス状又はジェット状で他の流体に注入するために、ソレノイドは電流の影響下で移動するのが好ましい。これを応用するため、燃料に添加する添加剤にソレノイド装置の作用を受けさせ、適切な連結配置を行って、ソレノイド装置から放出されたパルス状又はジェット状の添加剤を、この場合はディーゼル燃料である第二の流体へと送り出す。波形又はシグナルを発生する電気回路により制御された周波数で一連のパルスを操作するように、ソレノイド装置を配置することができる。このように、燃料に到る添加剤の流量を、投入装置を流れる燃料に基づいて制御できる。
【0027】
記載の方法は、一つの主要成分と一つの微量成分の機械的又は電気機械的な混合の原則を示す。その際、一つ又は両方の成分が液相であることが好ましい。
【0028】
ガソリンを動力とする使用過程車は、通常はキャブレターである燃料計量装置、(「ワンススルー」)、を通過する燃料をほとんど例外なく全部消費する。そのため、現代の多くのガソリンエンジン設備、及びすべてのディーゼルエンジン設備の場合とは異なり、未燃焼燃料が燃料タンクに戻ってくる流れはない。
【発明の開示】
【0029】
本発明は、先行技術の問題点を軽減するものである。
【0030】
一つの態様において本発明は、燃料添加剤を燃料に投入する方法であって、(i)燃料コンテナから投入装置経由で燃料を送ること、(ii)該投入装置経由で送られる燃料に基づく量の添加剤を、燃料中の添加剤の濃度とは無関係に該燃料に投入すること、(iii)該燃料の一部分(「戻し部分」)を該コンテナに戻すことを特徴とする燃料添加剤を燃料に投入する方法を提供する。
【0031】
燃料に投入する添加剤の量は、投入装置経由で送られる燃料に基づいて、燃料中の添加剤の濃度とは無関係に決定される。当然のことながら、投入する添加剤の量は、燃料中の添加剤の濃度に基づいて制御されることはない。しかし、燃料中の添加剤の濃度が高い結果として投入が減少したり妨げられたりする場合、すなわち、添加剤が燃料中で「飽和」したことによりさらなる投入が阻害された場合は、これを本発明の範囲から除外することはない。
【0032】
一つの態様において本発明は、燃料貯蔵コンテナが、操作中の燃料を該コンテナから燃焼室へ添加剤投入装置経由で送るように設計され、操作中に発生した燃焼ガスをフィルターを含む排気システム経由で送るものであって、該投入装置が、該投入装置経由で送られる燃料に基づく量の添加剤を、燃料中の添加剤の濃度とは無関係に燃料に投入し、燃料の一部分(「戻し部分」)を該コンテナに戻すように設計されていることを特徴とする燃焼エンジン及び排気システムを提供する。
【0033】
本発明の詳しい態様は、添付するクレームに定義されている。
【0034】
投入装置経由で送られる燃料に基づいた量の添加剤が(燃料中の添加剤の濃度とは無関係に)投入される単純な投入システムを応用するのは、燃料の一部分が燃料タンクに戻るディーゼルエンジンや改良型ガソリンエンジンでは実現不可能だと以前は思われていた。燃料が戻ることにより、添加剤と燃料との比率が多少変動する。これは、「ワンススルー」を応用する際には見られないものである。燃料への投入は燃料が投入装置を通過するたびに行われるため、燃料が戻るということは、燃料が確実に多数回にわたって添加剤投入を受けるということである。しかし、驚いたことに本発明者らは、DPF搭載車両に典型的に使用される燃料投入返送システムにおいて単純な投入装置を使用できるようにするいくつかの重要な因子があることを見い出した。
【0035】
本発明者らは、添加剤と燃料との比率は小さな変動であり、DPFの応用において、戻ってくる流量の比率が変化したことによって生じる触媒とススとの比率の変動を、車両タンク内の燃料レベルの低下によって生じる添加剤と燃料との比率の変動によって無視できることを見い出した。燃料補給の直後、燃料中の添加剤の濃度は非常に低くなる。これは、必要とされる平均投入レベルよりも低いレベル(一般的には、必要とされる平均投入レベルの10〜15%)で投入するように投入装置を設定していることに起因する。タンクのレベルが低下するにつれ、燃料の反復的な投入により添加剤の濃度が次第に増大する。
【0036】
タンクがほぼ空になると、タンクが満杯の場合と比較して、燃料中の添加剤のレベルは非常に高いレベル(一般的には、最初の投入レベルの50〜100倍)に達する。図3は、本件の投入装置をハイリターンフロー燃料設備において使用することによって生じる添加剤濃度のパターンを示す。燃料補給後の最初の燃料供給では、有効添加剤含量は低い(ppm金属)が、燃料が消費されるにつれて有効含量が急激に増大する。この増大は、有効含量が非常に高くなる燃料補給直前まで続く。
【0037】
この投入パターンの実際の作用は、図1及びSAEの文献番号2000−01−0473の図9に記載されたタイプのシステムに関しては、添加剤処理速度が一定ではないため、不利なものであると思われていた。しかし、多くのシステムにおいて、本発明者らはこれが利点であることを見い出した。例えば、DPFシステムにおいては、エンジンに由来しDPF中に蓄積するススに含まれる触媒レベル、すなわち、触媒とススとの比率は、当初は低いものの、その後付着したススでは、触媒とススとの比率がどんどん高くなっていく。しかし、燃料タンクが満杯の状態では、触媒とススとの比率の平均値は、複雑な投入システムで生じるもの、例えば、平均20ppmという触媒燃料処理速度によって提供されるものと同等となる。
【0038】
タンクがほぼ空になっている状態で比較的少量の燃料を消費している間、燃料補給の直前に、非常に高い有効投入速度が実現する。これはまったく不利なものではなく、再生が生じるという点で、とりわけ都市での操作の場合に有意な利点をもつ。経時的な平均添加剤処理速度は、例えば20ppm金属という有効処理速度のように、望ましい速度又はそれに近い速度を維持しているため、DPF中に蓄積した灰に関して、複雑な投入システムの場合と比べて有意な差はない。
【0039】
タンク内の燃料レベルが低い場合、単純な投入装置により、触媒とススとの全体的比率が平均値前後のDPF中でススが生じるのは、比較的短い時間であり、これによって、FBCの触媒活性が増大する。そのため、再生には都市での操作という難問が伴う可能性が高く、排気温度が低いとススの焼却が難しくなるのは周知である。このように、本投入装置は、電子管理システムを利用した費用のかかる複雑なバッチ投入システムに対し、操作上の大きな利点を有している。
【0040】
本発明のシステムを用いたDPFの再生性能は、本発明の投入装置が有する特徴によりさらに向上すると思われる。タンク内燃料レベルの変化に伴って燃料中の添加剤濃度が変化するのは一見欠点だと思われるが、燃料燃焼触媒を使用したときの特徴である、DPF中のスス貯蔵、その後の定期的な燃焼又は再生という特徴を考えれば、実際に操作上の利点となりうる。
【0041】
本発明者らは、当該技術における教示とは逆に、本発明のシステムを用いて投入した燃料中の燃料添加剤の濃度変化は、関連する使用期間中の燃料添加剤の平均濃度に実質的に影響しないことを見い出した。例えば、DPF再生触媒の投入に使用する場合では、車両に搭載されたDPFで再生を補助するために燃料添加剤を使用するものは、バッチプロセス装置と見なされるべきである。Johnson Matthey連続再生トラップ(CRT)は、気相触媒二酸化窒素に依存してDPF内のスス粒子を酸化しており、基本的に、通常操作ではDPF中にススは蓄積しない。しかし、燃料燃焼触媒(FBC)は、燃焼によるススの内部に深く入りこんで作用する。このススは、温度条件又は圧力条件によってススの焼却が助長されるまで、DPFに蓄積する。これは、ベッドエンジンテスト及び車両テストの両方で示されている。SAEの文献982654には、DPFベッドエンジンテストにおいて、ススがまず蓄積し、その後燃焼する際の、排出システム圧力の標準的な上昇及び下降が示されている。一方、SAEの文献番号2000−01−2849は、DPFを搭載したテスト車両での同じプロセスを示している。これらを図4及び5にそれぞれ示す。
【0042】
一般にススは通常の車両操作が200〜500kmに達するころに蓄積するため、触媒とススとの全体的比率(「金属とススの比率」)が維持されているのであれば、添加剤と燃料の比率における少々の変化は重要ではない。したがって、スス蓄積相のどの時点でも、200〜500kmに達するまで、金属とススとの比率は、戻ってくる流量に比例した変化により適度に狭い範囲内で変化するが、これらの変化は重要ではない。
【0043】
単純な投入装置による添加剤の添加が、投入装置を経由する燃料に基づいて行われるにもかかわらず、必ずしも内蔵式の流量計を使用して燃料流量を測定しなくてもよいことも、驚きとともに見い出された。燃料流量計を使用すると、投入装置を経由して流れる燃料へ投入する添加剤の量を変更する際に使用可能な情報が得られるが、驚いたことに、流量計を除去しても、依然としてDPFを申し分なく再生できることがわかった。
【0044】
実際のディーゼルエンジン燃料システムでは、主要噴射ポンプによってポンピングされた燃料は、回転速度によって容積効率が変化するため、エンジン速度の一次関数にはならない。低速回転時の1ストロークあたりのポンピング容積は、高速回転時の1ストロークあたりのポンピング容積よりも多い。したがって、非限定的な例を挙げると、エンジン速度が1000rev/min〜4000rev/minの範囲内の場合、1000rev/min時の燃料流量は、4000rev/min時の流量の1/4よりもかなり大きい。DPFが、処理される前のススの蓄積を介して金属とススとの比率を平均化する装置として作用するとすれば、添加剤の投入レベルを、エンジンへ流れる最大燃料量に必要とされる理想的な値と最小燃料量に必要とされる理想的な値との平均値で固定することが可能である。上述のように燃料流量が非線形であることにより、このプロセスは容易なものとなり、単純な投入装置内から流量計を除去できるようになる。燃料の流れがタンクに戻るように配置する場合の特徴として、エンジン低速時の添加剤投入速度がエンジン高速時よりも比例的に高くなるという作用も挙げられる。エンジン高速時よりもエンジン低速時のほうが、エンジン噴射ポンプにより送り出される燃料総量のうちでタンクに戻る量が多いからである。これによって生じる実際的な結果としては、高速での操作を持続すると、燃料中の添加剤濃度、及び金属とススとの比率は、経時的に低いレベルに減少する傾向がある一方、都市部での操作を持続すると、燃料中の添加剤濃度、及び金属とススとの比率は、経時的に増大する傾向があることが挙げられる。
【0045】
単純な投入装置を一定の処理速度で操作すると、車両を使用した結果として、排出温度の変化を相殺する効果がある。都市部での低速操作では、一般に排出温度は低くなるが添加剤投入レベルは経時的に増大するため、DPFの再生を補助することになる。高速では排出温度がかなり高くなるが、添加剤投入レベルは経時的に減少する。しかし、高速を持続するとDPFの再生に非常に好適な条件が生じることは当業者に周知であり、その条件のもとでは、添加剤導入速度の低さ、及びそれによる金属とススとの比率の低さが不利とはならない。非常に入り組んだ車両操作パターンが生じた場合には、一定の添加剤投入速度を使用すると、DPF中の金属とススの比率の平均値に実質的に影響することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
[好ましい態様]
燃料
好ましくは、燃料はディーゼルである。
【0047】
添加剤
好ましくは、燃料添加剤は、ディーゼル微粒子除去装置の再生に触媒作用を及ぼすことができる。
【0048】
好ましくは、燃料添加剤は金属であるか、金属を含んでいる。好ましくは、金属は、鉄、ストロンチウム、カルシウム、セリウム、ナトリウム、白金、銅、マンガン、及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、金属は鉄である。
【0049】
好ましくは、燃料添加剤は燃料可溶性である。燃料可溶性の添加剤を利用すると、燃料中での処理速度をより低くできるため、金属化合物などの添加剤のコロイド懸濁液と比較して、付加的な利益が得られる。これは主として、燃料中に懸濁している活性物質のコロイド粒子の大きさが、有機金属分子よりも数桁大きいという理由による。燃料可溶性添加剤の使用によって金属種をさらに微細な形態に分割できるようになるために、より大きな触媒活性が得られるのである。
方法
一つの態様においては、添加剤は、投入装置を経由する燃料の瞬間流量に正比例して、燃料中に添加される。
【0050】
一つの態様においては、添加剤は、投入装置経由で送られる燃料の経時的平均流量に基づいて、燃料中に添加される。すなわち、添加剤は、投入装置経由で送られる燃料流量の平均値に基づいて、燃料中に添加される。平均値が測定される時間は、当業者により決定される。平均値が測定される時間は一般的に、1分、1時間、10時間、100時間、1000時間及び10,000時間である。
【0051】
好ましくは、コンテナに戻されない部分の燃料は、燃焼室に送られる。より好ましくは、コンテナに戻される部分の燃料は、投入装置経由で送られる燃料の少なくとも80%である。
【0052】
当然のことながら、必然的に生じる多重投入を勘案するには、投入装置経由で送られる燃料に対する添加剤投入量の比率を減らす必要がある。この態様は、燃焼室へ送りこむ前、又は燃料コンテナに戻る途中のいずれかで添加剤を燃料に投入でき、添加剤と燃料との比率をかなり正確ものに維持できるため、有利である。
【0053】
添加剤投入速度は、好ましくは、目的とする添加剤処理速度の平均値の5〜25%である。より好ましくは、添加剤投入速度は、目的とする添加剤処理速度の平均値の10〜15%である。
【0054】
投入装置は、燃料コンテナから出発してまた燃料コンテナに戻ってくるまでの燃料の通過経路のどこに設置してもよい。
【0055】
好ましくは、かかる方法には、戻された燃料のうち少なくともある程度の部分を投入装置経由でさらに1回以上送り、その一部分をコンテナに戻すことも含まれる。
【0056】
投入装置
一つの態様においては、投入装置には、SATAcenR鉄有機金属添加剤のペレットなどの固形燃料可溶性添加剤を内包し、下端に開口部を備え、その開口部によってパイプラインを流れる燃料が添加剤と接触するような添加剤コンテナが配置されている。かかる配置を図2に示す。添加剤を燃料に溶解するこの手段は、DE4332933C2に記載されている。
【0057】
別の態様においては、該投入装置は、液体燃料可溶性添加剤を内包する添加剤コンテナであって、添加剤を計測し、該装置を経由して流れる燃料に基づいて添加剤を燃料へ添加する電気機械的装置に接続している添加剤コンテナを含むものである。好ましくは、かかる電気機械的装置は、燃料に混合する添加剤の量を制御し、該装置を通して流れる燃料に対して所望の比率で混合するようにする、電気を動力とするソレノイドである。好ましくは、かかるソレノイド装置は、波形又はシグナルを発する電気回路により制御される頻度の一連のパルスを操作するように配置される。このようにして、燃料へと向かう添加剤の流量は、該装置を経由して流れる燃料に基づいて制御される。ソレノイド装置からの流出物が、適切な流体連通(fluid communication)手段によりエンジンに送られる燃料と混合するような配置がなされている。
【0058】
一つの態様においては、該投入装置は、該投入装置経由で送られる燃料と流体連通している(in fluid communication with)添加剤コンテナに装備された液体添加剤を包んでいる。かかる液体添加剤は、電磁気装置によって、該投入装置経由で送られる燃料に投入される場合がある。かかる電磁気装置は、制御された頻度で添加剤を投入する電気回路により制御される場合がある。かかる電気回路は、燃料の流量に比例して制御された頻度で添加剤を投入する場合がある。かかる電気回路は、燃料の流量とは無関係の一定のレベルで制御された頻度で添加剤を投入する場合がある。一つの態様においては、かかる電磁気装置はソレノイドである。
【0059】
別の態様においては、該投入装置は、該投入装置経由で送られる燃料と流体連通している添加剤コンテナ内に装備された固形燃料可溶性添加剤を包んでいる。該投入装置経由で送られる燃料は、電磁気装置によって制御される場合がある。かかる電磁気装置は、該投入装置を経由する燃料の流量を制御するための電気回路により制御される場合がある。かかる電気回路は、コンテナからの燃料の流量に比例して、該投入装置を経由する燃料の流量を制御する場合がある。かかる電気回路は、コンテナへ戻る燃料の流量に比例して、該投入装置を経由する燃料の流量を制御する場合がある。かかる電気回路は、コンテナへの又はコンテナからの燃料の流量とは無関係に、該投入装置を経由する燃料の流量を制御する場合がある。一つの態様においては、かかる電磁気装置はソレノイドである。
【0060】
流体連通は、各種方法で行ってもよい。電気機械的装置を出た添加剤を、添加剤の混合が行われる燃料パイプと電気機械的装置との間を連結する硬質管又はたわみ管を経由して送ることができる。この方法を採用する場合は、噴射部又は類似の装置を、添加剤供給管と燃料パイプとの連結部に装備すると有利であろう。この噴射部又は類似の装置の目的は、電気機械的装置からの流出を制御すること、及び電気機械的装置と燃料パイプとを連結するパイプへの燃料の流入を防止することである。すなわち、非常に短い連結パイプが使用されているときには、噴射装置は省略される場合があるということである。
【0061】
あるいは、かかる電気機械的装置からの流出物が直接燃料に流れ込むように、かかる電気機械的装置を燃料パイプに直接取りつけることもできる。その他の適応としては、燃料が電気機械的装置を経由して軸方向に流れるような配置にすることができる。それにより冷却が行われ、同時に電気機械的装置からの流出物と、その上を流れる燃料との混合も可能になる。
【0062】
燃料と混合するための添加剤を電気機械的装置に送るために、同様の配置を施すことができる。完全な投入システムには、例えば、操作の範囲が何千キロメートルにもわたる場合に車内で貯蔵するのに便利なように、必要量の添加剤を貯蔵してエンジンに処理済燃料を送る添加剤貯蔵部又は添加剤タンクが含まれている。電気機械的装置によって添加剤を燃料に注入するには、添加剤貯蔵容器とこの装置を連結する必要がある。硬質管又はたわみ管で連結して添加剤が投入装置に流れ込むように、添加剤貯蔵コンテナを投入装置から遠くに配置してもよい。他の配置としては、硬質管を用いて添加剤コンテナを直接投入装置に連結してもよい。さらに他の配置としては、投入装置からの流出物がエンジンに燃料を送るパイプに流れ込むように、投入装置を添加剤コンテナの内部に装備してもよい。
【0063】
これより、添付の図面のみを参照した実施例を用いて、本発明をさらに詳しく記載する。添付図面中、
図1は、投入システムを示すものである;
図2は、投入システムを示すものである;
図3は、グラフを示すものである;
図4は、グラフを示すものである;
図5は、グラフを示すものである;
図6は、グラフを示すものである;
図7は、グラフを示すものである;
図8は、グラフを示すものである;
図9は、グラフを示すものである;
図10は、グラフを示すものである;
及び、図11は、グラフを示すものである;
これより本発明を下記の実施例にてさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0064】
単純な添加剤投入装置を、テストベッドに載せた1.9リットルのプジョーディーゼルエンジンXUD9型とともに用いた。テストエンジンの排気システムには、ベッドエンジンから発生するスス粒子を捕らえるディーゼル微粒子除去装置(DPF)を装備した。テスト中に使用データを作成するため、ベッドエンジンの排気管には圧力変換機を装備し、DPFの上流及び下流には熱電対を装備した。荷重吸収装置又は動力計が稼動するようにベッドエンジンを配置し、エンジンテスト関係者には周知のコンピュータ制御システムを該ベッドエンジンに装備した。こうした装備の結果、エンジンを制御して所望のスピード条件及び荷重条件で長期にわたって操作できるようになり、手動操作を介入させる必要はなくなった。
【0065】
ベッドエンジン用燃料を、容量50リットルのタンク内から供給管中へ送った。該タンクから供給された燃料が、ディーゼルエンジンの噴射ポンプに入る前に投入装置を経由するようにした。該投入装置は、添加剤貯蔵タンク、電気機械的噴射ユニット、電気パルス発生器及び装置類の連結に必要な配管などから構成されていた。該投入装置による燃料処理は、一定比率の添加剤を使用し、DPFの再生に必要な目的とする平均処理速度の約10%から15%の範囲内の処理速度で行われた。
【0066】
一般的には、DPFの再生に必要な処理速度は、5〜30mg(鉄)/kg(燃料)の範囲内であり、好ましい処理速度は一般的に、20mg(鉄)/kg(燃料)である。投入装置は、エンジン噴射ポンプによって送り出された燃料の一般的には80%〜95%がタンクに戻ったときに、1.5mg(鉄)/kgという処理速度を達成した。したがって、ベッドエンジン燃料の大半は、最終的にベッドエンジンにより消費される前に何度も投入装置を経由したことになる。投入装置を経由するたびに有効な添加剤処理速度が増し、これにより燃料中の鉄含有量が増大した。
【0067】
金属添加剤を含む燃料を燃焼させると、当業者には周知のように、燃焼プロセスで発生したススに金属化合物、一般的に金属酸化物が取りこまれる。その結果、好適な鉄系有機金属添加剤を燃料への投入に使用する場合、DPF中に存在するススの鉄含有量は、燃料に添加剤を何度も投入するにつれて増大した。エンジンへの供給に使用したタンク内燃料のレベルが低下するにしたがい、燃料中の金属含有量は図3に示したものと同様に増大した。このように、燃料供給タンク内の燃料レベルが低下するにつれてDPFに付着したスス中の金属含有量は増大した。
【0068】
DPF中にススを十分に蓄積させて、再生、すなわち蓄積したススの焼却を起こさせるために、XUD9ベッドエンジンを用いたテストは何時間にもわたって続けられ、一定のスピード条件及び荷重条件で行われた。当業者にはよく知られているように、DPF中にススが蓄積すると、エンジン稼動後数時間で排気管圧力が増大する。これは、ススがDPFの溝で行き場を失い蓄積したために、排気ガスの流れに対する抵抗が増大したことによるものである。
【0069】
例えば、スピードが1550rev/minで荷重が20Nm、又は2710rev/minで荷重が30Nmといった、一定のスピード条件及び荷重条件下、一般的に適度な荷重条件下では、DPF圧力は図4に示すとおりになる。ススの焼却が自然に発生する場合があり、その後、発熱反応を伴って排気管圧力が急低下する。これにより、DPFの上流及び下流にある熱電対で測定したとおり、排気ガスに温度差が生じる。ススの蓄積と焼却を繰返すと、図4に示される排気圧力の特徴的な「のこぎり歯」パターンが生じる。図4は、DPF内部のスス焼却による発熱が排気ガス温度に及ぼす作用も示している。
【0070】
DPF装着排気管を備えたテストベッドエンジンを、鉄系有機金属添加剤で処理した燃料で操作すると、図4に示したものと類似した圧力と温度のパターンが現れた。好適な鉄系有機金属添加剤は、電気機械的ソレノイドにより操作され、エンジンへの燃料流量とは無関係な一定の投入速度で動いている投入システムを用いて、前述の方式で燃料に添加された。未燃焼燃料はエンジン噴射ポンプから燃料貯蔵タンクへ戻され、結果的に、上述のとおり、何度も燃料に添加剤が投入された。また、エンジンへの供給を行う貯蔵タンク中に残った燃料中の鉄濃度は、タンク中の燃料レベルが低下するにつれて増大した。
【0071】
経時的な燃料添加剤濃度が非線形となるように添加剤を投入したにもかかわらず、テストで現れたのは古典的なススの蓄積と焼却のパターンだった。単純な投入装置を使用することにより、結果的に、効果的なススの焼却すなわちDPFの再生が行われたとはいえ、均一に投入される燃料として許容される要件である、事前に決定した一定量の金属が燃料中に含まれるという状態とはかけ離れた状態が生じたのは明らかである。エンジン操作は、排気温度の低い、かなりの低速及び低荷重という条件で、及び、それよりも排気温度の高い、かなりの高速及び高荷重という条件で行われた。エンジンの燃料要求量に違いがあるにもかかわらず、どちらのエンジン操作条件においても、投入装置はソレノイドの操作頻度により決定した同一の定値条件で稼動した。
【0072】
エンジン操作で現れたトレースを図示し、再生プロセスを説明する。エンジンに供給される燃料中の実際の瞬間的添加剤含有量、及び何度も燃料補給を受けた燃料中の添加剤の平均レベルに関する計算結果も、説明のために図に入れておく。
【0073】
燃料中の金属に対する正確で一定した比率が経時的に維持されている事前処理済燃料を用いたエンジン操作で現れたトレース、及びDPFに生じた再生も、比較のために示す。事前処理済燃料中の添加剤処理レベルが低下すると、排気背圧の上昇がDPF中で観察される。これに対し、燃料中で事前処理される添加剤のレベルが高くなると、排気背圧は低くなる。図6の上部のトレースは、燃料中に10mg/kg及び20mg/kgの金属を含有する事前処理済燃料の排気背圧トレースを示すものである。単純な投入バルブを使用し、タンク内の燃料レベルが下がるにつれて燃料添加剤レベルが上がる場合は、DPF中の排気背圧は、燃料中の事前処理済金属が20mg/kgの場合に得られるレベルに近づくまで経時的に下がることがわかる。下部のトレースは、投入装置を使用して生じた、燃料中の経時的な金属濃度変化を算出して示したものである。
【0074】
図7では、エンジン操作が2710rev/minでトルクが30Nmの場合について、類似したトレースが示されている。上部パネルは、事前処理済燃料のトレースを示し、15mg/kg及び20mg/kgの場合を含んでいる。下部パネルは、単純な投入装置を用いた燃料中の金属処理速度変化を算出して示している。また、数回にわたって燃料補給を行った後の燃料中の、対応する平均金属濃度をも示している。燃料が補給されると、未処理燃料がタンク内に新しく導入されるため、燃料中の金属含有量が急低下する。燃料補給を繰り返すと、図7の下部パネルに顕著に見られる特徴的な添加剤濃度パターンが生じる。
【0075】
図8は、2つの異なるエンジン操作条件、すなわち1260rev/minでトルクが5Nmの場合(上部パネル)及び2710rev/minでトルクが30Nmの場合(下部パネル)における、排気背圧トレースを示す。どちらの場合においても、ソレノイドが操作する投入装置の操作頻度により、燃料の添加剤処理速度が34mg/hという一定した同一の速度になるように、単純な投入装置を設定する。未燃焼燃料がタンクへ戻され何度も処理されることによって、燃料中の添加剤の経時的濃度が着実に上昇することは、一般的には操作開始から15〜20h後の、DPFのより頻繁な再生に反映されている。エンジン操作条件及び燃料消費レベルが大きく異なる場合に一定の添加剤処理速度を使用すると、どちらの条件でも、DPFが申し分なく再生されるという驚くべき結果になる。
【0076】
図9は、燃料に対する一定の添加剤処理速度が34mg/hの場合における、2つのエンジン操作条件での燃料含有量の経時的な変化を算出して示している。上部の2つのパネルは、1260rev/minで5Nmというエンジン操作条件での計算結果を示している。下部の2つのパネルは、2710rev/minで30Nmというエンジン操作条件での計算結果を示している。「のこぎり歯」の形状はそれぞれ、燃料補給とも記載される燃料レベル低下後の新しい燃料の添加による作用を示している。燃料を補給する都度、経時的な平均金属濃度は累進的に増大し、やがて安定するのが認められている。34mg/hという同一で不変の添加剤処理速度を低速低荷重操作で常時使用すると、安定した平均金属濃度は30mg/kgをわずかに上回る程度になるのが認められており、高速高荷重条件の場合、同じ添加剤処理速度では、安定した平均金属濃度が約7mg/kgになるのが認められている。DPFを申し分なく再生するには燃料添加剤の金属含有量を正確に制御することが必要であるとの以前の見解にもかかわらず、車両タンク内での燃料レベルの変化に伴う経時的変化だけではなく、大きく異なるエンジン操作条件と一定の添加剤投入速度とが併用されている場合のエンジンスピード及び荷重の変化など、さまざまな変化が生じても、申し分のない再生が行われるという驚くべき結果が示されている。
【0077】
図10は、DPFを搭載し、本発明の原理で稼動する添加剤投入装置も備えた車両のデータロガートレースを示す。該投入装置は、電気機械的ソレノイド装置を用いて、車両の噴射ポンプにつながる燃料パイプまで有機金属燃料添加剤を送達した。添加剤処理速度は、投入装置経由で送ることができる燃料の最大流量及び最小流量に基づいて計算したが、ソレノイドの操作は、燃料の実際の流量とは関係なく一定の頻度で行った。
【0078】
図10には、20ppmの金属を送達する処理速度にて、同じDPF再生添加剤で事前処理した燃料を用いて操作される車両における再生を描いた図5との類似点がいくつか見うけられる。
【0079】
両方のトレースに共通の特徴は、DPF後の排気ガス温度がDPF前の排気ガス温度よりも高いレベルに上昇することと、エンジンスピードが実質的に一定であるにもかかわらず、DPF前のガス圧が減少することである。これらの現象の組み合わせは、発熱に至り結果としてガス温度が上昇するDPF中でのススの燃焼、及びその後のスス焼却時の圧力減少を示すものである。
【0080】
図10は、本発明の特徴を体現する添加剤投入装置がDPF搭載車両に備えられた場合の再生が、添加剤で事前処理した燃料を用いて行った再生と基本的に非常に類似したものになることを示すものである。
【0081】
図11は、約10日間にわたって採取した燃料サンプルを観察した、燃料中の添加剤濃度プロフィールを示すものである。該サンプルは、DPFを搭載し、本発明の特徴を体現する添加剤投入装置も備えた同一の路上走行車から採取したものである。燃料サンプルを採取している間、燃料中の添加剤の濃度変化から明らかなように、かかる車両は何度か燃料補給を受けている。燃料補給を受けると、燃料中の燃料添加剤濃度は、タンクがほぼ空のときの高いレベルから燃料補給直後の非常に低いレベルへと低下した。このことは、本発明の特徴を体現する投入装置を使用した場合に予想され計算された、燃料中の添加剤濃度パターンと一致する。
【0082】
上記明細書中で述べた刊行物はすべて、ここに参考文献として組み込んである。
当業者であれば、本発明の要旨から逸脱することなく、ここに記載した本発明の方法及びシステムに多様な改良及び変更を加えるのは容易である。ここまで本発明を、特定の好ましい実施形態に関連して記述してきたが、クレーム記載の本発明がそうした特定の実施形態に不当に制限されるべきではないことは、承知されてしかるべきである。特に、ここに記述した、本発明を実施する形態に対して種々の改良を施すことは、化学分野又は関連分野の人間にとっては自明であるが、そのような改良を施したものについても、下記のクレームの範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】投入システムを示すものである。
【図2】投入システムを示すものである。
【図3】グラフを示すものである。
【図4】グラフを示すものである。
【図5】グラフを示すものである。
【図6】グラフを示すものである。
【図7】グラフを示すものである。
【図8】グラフを示すものである。
【図9】グラフを示すものである。
【図10】グラフを示すものである。
【図11】グラフを示すものである。
Claims (28)
- 燃料添加剤を燃料に投入する方法であって、
(i)燃料コンテナから投入装置経由で燃料を送ること、
(ii)該投入装置経由で送られる燃料に基づく量の添加剤を、燃料中の添加剤の濃度とは無関係に該燃料に投入すること、
(iii)該燃料の一部分(「戻し部分」)を該コンテナに戻すことを特徴とする燃料添加剤を燃料に投入する方法。 - 投入装置を経由する燃料の瞬間流量に正比例して、添加剤を燃料に添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 投入装置経由で送られる燃料の経時的平均流量に基づいて、添加剤を燃料に添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 燃料がディーゼルであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の方法。
- 燃料添加剤が、ディーゼル微粒子除去装置の再生に触媒作用を及ぼせることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の方法。
- 燃料添加剤が、金属であること又は金属を含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
- 金属が、鉄、ストロンチウム、カルシウム、セリウム、ナトリウム、白金、銅、マンガン、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。
- 金属が、鉄であることを特徴とする請求項7記載の方法。
- 燃料添加剤が、燃料に溶解可能であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか記載の方法。
- コンテナに戻さない部分の燃料が、燃焼室に送られることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の方法。
- コンテナに戻す部分の燃料が、投入装置経由で送られる燃料の少なくとも80%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の方法。
- さらに、戻し部分のうち少なくともある程度の部分を、投入装置経由でさらに1回以上送ること、及び、その一部分をコンテナに戻すことを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の方法。
- 投入装置が、添加剤コンテナ内に配置された固形の燃料可溶性添加剤を含み、該添加剤コンテナが、投入装置経由で送られる燃料と流体連通していることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の方法。
- 投入装置経由で送られる燃料が、電磁気装置によって制御されていることを特徴とする請求項13記載の方法。
- 投入装置を経由する燃料の流量を制御するために、電磁気装置が電気回路によって制御されていることを特徴とする請求項14記載の方法。
- 電気回路が、コンテナからの燃料の流量に比例して、投入装置を経由する燃料の流量を制御することを特徴とする請求項14又は15記載の方法。
- 電気回路が、コンテナへ戻る燃料の流量に比例して、投入装置を経由する燃料の流量を制御することを特徴とする請求項14又は15記載の方法。
- 電気回路が、コンテナへの燃料の流量又はコンテナからの燃料の流量とは無関係に、投入装置を経由する燃料の流量を制御することを特徴とする請求項14又は15記載の方法。
- 電磁気装置がソレノイドであることを特徴とする請求項14〜18のいずれか記載の方法。
- 投入装置が、投入装置経由で送られる燃料と流体連通している、添加剤コンテナ内に配置された液体添加剤を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の方法。
- 液体添加剤が、投入装置経由で送られる燃料に、電磁気装置によって投入されることを特徴とする請求項20記載の方法。
- 制御された頻度で添加剤を投入するために、電磁気装置が電気回路によって制御されていることを特徴とする請求項21記載の方法。
- 電気回路が、燃料の流量に比例して、制御された頻度で添加剤を投入することを特徴とする請求項22記載の方法。
- 電気回路が、燃料の流量とは無関係に一定のレベルにて、制御された頻度で添加剤を投入することを特徴とする請求項22記載の方法。
- 電磁気装置がソレノイドであることを特徴とする請求項21〜24のいずれか記載の方法。
- 燃料貯蔵コンテナが、操作中の燃料を該コンテナから燃焼室へ添加剤投入装置経由で送るように設計され、操作中に発生した燃焼ガスをフィルターを含む排気システム経由で送るものであって、
該投入装置が、該投入装置経由で送られる燃料に基づく量の添加剤を、燃料中の添加剤の濃度とは無関係に燃料に投入し、燃料の一部分(「戻し部分」)を該コンテナに戻すように設計されていることを特徴とする燃焼エンジン及び排気システム。 - 実質的に前記のとおりの製造方法であり、添付図面の図1〜11のいずれかを参照した製造方法。
- 実質的に前記のとおりの燃焼エンジン及び排気システムであり、添付図面の図1〜11のいずれかを参照した燃焼エンジン及び排気システム。
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