JP2004523579A - 血管疾患治療用hmgb1蛋白質インヒビタおよび/またはアンタゴニスト - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、分子生物学の分野、特に、血管形成を原因とする疾患を含む血管疾患の治療のために使用される、HMGB1蛋白質インヒビタおよびHMGB1アンタゴニストに関する。
【0002】
HMGB1蛋白質(2001年前はHMCとして知られていた;Bustin,2001、Trends Biochem. Sci.,26,152−153)は、HMGと呼ばれる、DNA結合ドメインの存在により特徴付けられる、HMG−ボックスファミリーの典型的な蛋白質である。HMG1は、哺乳類の間で高度に保存された配列を具えた、215アミノ酸の、小さい25−kD蛋白質である。HMGB1分子は3つのドメインに組織化される。すなわち、2つのDNA結合ドメイン、HMGボックスAおよびボックスBであり、これらは30のグルタミン酸およびアスパラギン酸残基からなる酸性COOH末端が続く。2つのHMGボックス、ボックスAおよびボックスBは、L型三次元構造(Hardman等、1995年、Biochemistry,34:16596−16607;Read等、1993年、Nucleic Acids Res.,21:3427−3436;Weir等、1993年、EMBO J.、12:1311−1319)を有する80のアミノ酸セグメント(29%の同一性、65%の類似性)である。
【0003】
HMGB1は、偏在的に発現された、豊富な核蛋白質として、元々は確認された。これは、単一の核当たり100万より多いコピーに存在し、配列特異性のない、ダブルストランドDNAに結合する。その代わり、HMGB1は、よじれたかまたは曲がったDNAおよび4方向(four-way)ジャンクションのような、特異的DNA構造に高親和性を持って結合する。しかし、HMGB1は、幾つかの異なるDNA結合蛋白質との相互作用によりダブルストランドDNAに強化される。ダブルストランドDNAに結合する場合、構造歪みをもたらし、核蛋白質複合体を形成させる。この複合体では、幾つかのDNA結合蛋白質が、それぞれDNA同族体部位に結合しつつ、互いに接触する(Muller等、2001年、EMBO J.,16:4337−4340および本発明で引用する他の参考文献)。Hmgb1−/−マウスの表現型はこのモデルに一致する(Calogero等、1999年、Nat. Genet.,22:276−280)。
【0004】
最近、細胞核外側のHMGB1に対する付加的な役割が焦点となってきた。すなわち、HMGB1はエンドトキシン誘導死亡率の後期媒介物、およびマウスの急性肺炎として作用し、さらに、敗血症患者のHMGB1の高血清レベルが予知マーカーである(国際特許出願WO00/47104パンフレット)。HMGB1はサイトカインおよびバクテリアエンドトキシンに応答して培地中で下垂体細胞およびマクロファージにより分泌され得る(Abraham等、2000年、J.Immunol.,165:2950−2954;Wang等、1999年、Surgery(St.Luis),126:389−392;Wang等、1999年、Science,285:248−251)。マウス赤白血病細胞からのHMGB1の放出は細胞分化に関連しており、その蛋白質はこれらの細胞における原形質膜結合型に見いだすことができる(Passalacqua等、1997年、FEBS Lett.,400:275−279;Sparatore等、1996年、Biochem.J.,320:253−256)。HMGB1に配列が同一であるアンホテリンという蛋白質は、ニューロン細胞の核および細胞質ならびに細胞外スペースにおいて見いだされる、脳において説明されてきた。外因的に添加された場合には、HMGB1は神経突起の成長を媒介し、神経芽細胞腫およびグリオーム(glioma)細胞のラミニン依存移動はHMGB1に対する抗体により阻害される(Fages等、2000年、J.Cell Sci.,113:611−620;Merenmies等、1991年、J.Biol.Chem.、266:16722−16729;Parkkinen等、1993年、J.Biol.Chem.,268:19726:19738;Rauvala等、1988年、J.Cell Biol.、107:2293−2305)。HMGB1とプラスミノーゲン活性系、特にt−PA(組織型プラスミノーゲンアクチベータ)との間の相互作用によりプラスミン形成を強化する(ParkkinenおよびRauvala、1991年、J.Biol.Chem.,266:16730−16735)。細胞外マトリクス蛋白質の分解は細胞移動プロセスにおいて重要な段階であり、細胞外プロテアーゼ活性のHMGB1促進増加は細胞の移動を可能にする。
【0005】
HMGB1はRAGEレセプタ(グリコシル化最終生成物に対するレセプタ)に結合するリガンドの一つとして確認された(Hori等、1995年、J.Biol.Chem.,270:25752−25761)。RAGEはイムノグロブリンスーパーファミリのマルチリガンドレセプタであり、内皮細胞、平滑筋細胞、単核食細胞、およびニューロン等の多くの細胞型において発現される(Brett等、1993年、Am.J.Phathol.,143:1699−1712;Neeper等、1992年、J.Biol.Chem.,267:14998−15004)。また、これは糖尿病、アミロイド症、アテローム性動脈硬化症等の幾つかの異なる病理学的プロセスに関係する(Schmidt等、1999年、Circ.Res.,84:489−497)。HMGB1とRAGEとの相互作用は神経突起成長を誘導し、2つの蛋白質は胎児が発達している間に神経突起を進歩する前縁において共存する(Huttunen等、1999年、J.Biol.Chem.,274:19919−19924)。HMGB1およびRAGEの間の相互作用を防止することにより、腫瘍成長および転移のブロックが観察される。さらに、この相互作用の阻害が、マイトジェン活性化蛋白質(MAP)キナーゼの活性化およびマトリックスメタロプロテイキナーゼ、腫瘍増殖および侵入に重大にリンクした分子の発現を抑制する(タグチ等、2000年、ネイチャー、405:354−360)。
【0006】
本発明の発明者は、HMGB1が、RAGEが表面で発現される細胞型の一つである平滑筋細胞(SMC)における強力な生物学的効果を持つことを証明した。血管SMC細胞はより大きい血管の最も優性な細胞である。つまり、細胞外マトリックスに埋設される中膜に位置する。無傷の血管において、SMC細胞は収縮状態にあり、血管壁硬度および弾性維持および血圧制御のための細胞分裂および移動がないことにより特徴付けられた表現型を示す。
【0007】
機械的かまたは炎症性の傷の後に内皮が損傷した場合、SMC細胞は合成型に切り替わり、細胞分裂および細胞移動を受ける。中膜から内膜へのSMC細胞の移動により、内膜が厚くなり、冠動脈血管形成後のアテローム性動脈硬化症および再狭窄等の多くの血管損傷の病理生理学に重要な役割を果たす。前記合成状態では、SMC細胞はより多量の細胞外プロテイナーゼ成長因子、およびサイトカインを生成し、繊維性細胞外マトリックスを分泌する。血管壁損傷の後、単球、マクロファージおよび血小板を循環することによりまたは損傷した内皮細胞により、幾つかの成長因子および/または化学誘引物質が放出され、これにより、収縮から合成型へSMC細胞の切替を誘導でき、SMC細胞を血管内膜に向かって移動させることができる。これらの因子の中で、bFGFは最も重要なものの一つである。しかし、SMC細胞も血管形成の刺激に応答して移動を開始可能である(Schwartz,1997年、J.Clin.Invest.、99:2814−2816;Van Leeuwen,1996、Fibrinolysis、10:59−74)。
【0008】
HMGB1がRSMC細胞移動を誘導する作用およびメカニズムを規定する試みにより、発明者はHMGB1が強い化学誘引物質であり、細胞型変更、および細胞骨格再組織化を誘導することを示した。これらの事象は、抗RAGE抗体の添加によりおよび百日咳毒素により阻害され、RAGEおよびGi/o蛋白質の両方がその経路に含まれるであろうことを強調する。さらに、HMGB1が燐酸化ERK1および2蛋白質の核への移行を促進する証拠は、MAPキナーゼ経路の関連を示す。その後、HMGB1が内皮細胞を含む多くの細胞型の損傷またはネクロシスにより放出されることを示した。
したがって、HMGB1は、血管損傷の後のアテローム性動脈硬化症および再狭窄を促進可能な分子の顕著な特徴を全て有する。
【0009】
発明者は、HMCボックスに相当するHMGB1フラグメントが、完全な全長さ分子よりもより有効であり、HMGボックスファミリーの他の蛋白質のHMGボックスドメインでさえも同じ効果を誘導できることを証明した。
結論として、HMGB1およびそのRAGEレセプタ間の相互作用を遮断できる各種の分子(すなわち、阻害剤クラスに属する全分子:抗体または抗体フラグメント、4方向DNA;およびHMGボックスアンタゴニストクラスに属する全分子:HMGボックスドメインを含むHMGB1フラグメント分子)は、血管形成のために血管上皮の損傷後、アテローム性動脈硬化症および再狭窄を回避するか、遅らせるか、または阻害するために、薬理的調薬の製造のために効果的に使用できる。
【0010】
HMGB1結合分子またはHMGB1阻害剤は血管形成手術のために使用される器具により射出または放出可能であり、あるいは前記分子は器具表面に結合可能である。
本発明の目的は、血管疾患治療用の治療薬の調薬のためにHMGB1およびRAGE間の相互作用を遮断できる分子を使用することである。
【0011】
本発明の好ましい態様では、前記分子は、前記手術中または手術後、血管形成のための、カテーテル、外科的器具、または血管形成用ステントにより放出される。
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照して、以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【0012】
HMGB1および誘導体の発現および精製
最初の段階で、HMGB1および誘導体の発現および精製が必要である。
全長HMGB1の発現はpT7−7rHMG1cmプラスミド(ケンブリッジ大学、J.O.Thomas教授から送られた)で形質転換したE.coliにおいて行われ、精製は以下の既知のプロトコル(Muller等、2001年、Biochemistry,40:10254−10261)で実施された。
イーストPichia Pastoriaの全長HMGB1の発現および精製を以下の既知のプロトコル(Mistry等、1997年、Biotechniques,22:718−729)で実施した。
【0013】
周知のプラスミドpRNHMG1/M1−V176,pT7HMG1bA,およびpT7HMG1bBを、ボックスA+ボックスB、ボックスA、およびボックスBの発現および精製のために使用し、それぞれシングルボックスおよびダブルボックスの、周知の精製手順にしたがった(Bianchi等、1992年、EMBO J.、11:1055−1063)。
【0014】
HMGB1の効果を実証するために、3つの独立の細胞移動アッセイを実施した:つまり、走化性アッセイ、化学運動性アッセイ、およびインビトロ障害アッセイである。HMGB1誘導細胞移動および非休止細胞の形態学的な変化(すなわち、アクチン繊維再組織化、細胞延長および細胞の形状分極)の間の機能関連を研究した。
【0015】
走化性アッセイ
走化性アッセイを周知のプロトコル(Degryse等、1999年、Blood,94:649−662)を使用して行った。変法ボイデンチャンバーを0.5μmポアサイズのフィルタ(Corning,Acton、MA)と共に使用し、フィブロネクチン(10μm/ml)のコラーゲンI(0.5Mの酢酸中100μg/ml)(Roche)で処理した。RSMC細胞(ミラン、バイヤーリサーチ研究所、Marco Bertulli博士により送られた)をDMEM血清フリー中で培養し、20.000−40.000細胞のサンプルをボイデンチャンバーの上部ウェルに添加した。試験されるべき分子を同じ血清フリー培地で培養し、下方ウェルに添加した。
【0016】
異なるHMGB1調製物を使用した。つまり、子牛胸腺から精製したHMGB1(スペイン、バルセロナ、C.S.I.C.,J.Bernuesから送られた)、E.coli発現組換えHMGB1、およびイーストPichia Pastoris(Mistry等、1997年、Biotechniques,22:718−729,)にて製造された軽度に改変したHMGB1形態(N−末端に結合したEAEAYVEFアミノ酸含有)である。
【0017】
必要な場合には、ポリクローナルラビット抗HMGB1(CA、Torrey Pines,Pharmingen BD),百日咳菌(シエナ、I.R.I.S.、M.G.Pizza博士から送られた)からの百日咳毒素(PT)、または前記阻害剤を両ウェルに添加した。
【0018】
一晩、細胞移動を37℃で行った。その後、フィルタの上部表面に残った細胞を掻き取り、フィルタをメタノール中に固定し、20%メタニール中10%クリスタルバイオレット溶液で染色した。全実験を少なくとも2回三重で行った。
図1−A、1−B、1−C、1−Dに示すように、結果は、フィルタあたり10の高倍率フィールドでカウントされ、コントロールを超えたホールドとして発現された、細胞数の平均値±SDである。ランダム細胞移動(すなわち、化学誘引物質が無い状態の移動)は100%の任意の値を付与した。
統計的分析を、処理したペアでの比較のために、スチューデントのtテストを使用して、あるいは、試薬の高投与量を用いた処理の評価のために、ANOVAモデルを使用して実施した。
【0019】
子牛胸腺からのHMGB1は、濃度依存性態様でRSMCの移動を刺激する。0.1ng/ml投与量で開始し、100ng/mlにおける2.5倍の最大応答を示した(図1−A)。HMGB1の効果を特徴が明確な誘引物質fMLPおよびbFGFの効果と増幅して比較される(図1−B)。HMGB1に対するポリクローナル抗体は非特異的コントロール抗体ではないが、移動応答を全体的に遮断し(図1−C)これは特にHMGB1が原因であることを示す。これらの抗体は、ポジティブコントロールとして使用した化学誘引物質ペプチドfMLPの効果を変更しなかった。類似の結果をイーストP.pastorisで生産した組換えHMGB1を用いて得た(図1−D)。
【0020】
免疫蛍光アッセイ
15.000−20.000のサンプルを、20−40%の密集度で、2cm2ウェルのガラスカバースリップにまき、DMEMプラス10%FCS中で24時間培養し、PBSで洗浄し、FCSの無いDMEM中でさらに24時間培養した。RSMCを、37℃で5〜120分の増加時間間隔で、HMGB1,100ng/mlを用いて刺激した。刺激後、RSMCを、3%のパラホルムアルデヒド、PBS中2%スクロース、pH7.5の溶液を用いて、室温で20分間固定し、PBS−BSA0.2%を用いて3回洗浄した。細胞を20mMヘペスpH7.4、300mMサッカロース、50mMNaCl,3mMMgCl2、0.5%(V/V)TritonX−100で4℃、3分間透過させ、再び、3回PBS−BSA0.2%で洗浄した。その後、RSMCをPBS−BSA2%で15分間37℃でインキュベートし、プライマリ抗体で37℃30分間インキュベートし、3回PBS−BSA0.2%で洗浄し、PBS−BSA2%で15分間インキュベートした。最後に、細胞をセカンダリ抗体および/または繊維性アクチンの可視化のためのロダミンと結合したファロイジンで染色し、場合によって、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−ヘニリンドロ、ロシュ)を使用して核をラベル化した。
【0021】
次のインキュベションの後、カバースリップをPBS−BSA0.2%で3回洗浄し、蒸留水で2回洗浄し、PBS中20%Mowiolを入れ、Axiophot顕微鏡(Carl Zeiss)で分析した。蛍光写真をT−Max400かまたはEPH P1600Xフィルム(イーストマンコダック)でZeiss400および100Neofluarレンズを使用して撮影した。
【0022】
図2−Aの、低倍率の写真は、ストレス繊維含有量、細胞の形および大きさ、および細胞骨格組織化が30分以内に変わり、120分後に逆になることを示す。より高い倍率の写真(図2−B)は、刺激前に多くのストレス繊維が充分に可視化され、細胞形が非分極であることを示す。15〜30分以内に、形態および細胞骨格組織化の完全な変化が生じる。すなわち、RSMCはアクチン細胞骨格の空間的な再配列を反映する、延長した、分極した形態を示す。HMGB1の効果はゆっくり減少する。1〜2時間後、ストレス繊維含量は初期レベルに増加し、細胞形態は未刺激のコントロール細胞の形態に類似して戻る。
【0023】
実験では、細胞を抗体またはPTまたは阻害剤で一晩前処理した。図2−Bに示すように、HMGB1に対する抗体は全体的に細胞骨格再組織化およびHMGB1により誘導されたRSMCの形態的変化を阻害する。コントロール抗体はHMG1効果を阻害することができない。
【0024】
最後に、RSMCにおいて観察したHMGB1の効果が実際に休止から活動状態への動的遷移を反映するかどうかを決定するために、異なる各状態において細胞の割合を定量した。低倍率写真と撮影し、細胞を2つの状態に分類した。
−状態1:ここでは、細胞は、多数のストレス繊維および非分極細胞形により特徴付けられた未刺激細胞の典型的な外観を示す。
−状態2:ここでは、RSMCが低ストレス繊維含有量、膜波うち、アクチンセミリング、または延長形を示す。
【0025】
未刺激培地における60%の細胞が状態1に、そして40%が状態2にあることが図2−Cから明らかである。刺激後、5分以内に状態2の細胞が60%になり、15〜30分で80%になる。HMGB1での刺激後1時間で、これらの割合は未刺激培地の値と逆になる。つまり、状態1でRSMC60%、状態2で40%である。これらのデータは、HMGB1効果が一時的であり、休止から移動状態に変化することを表している。これらのデータはHMGB1がRSMCに対する化学誘引物質であるという走化性の結果を確認した。
【0026】
インビトロ損傷アッセイ
2cm2ウェルのガラスカバースリップで成長した、RSMCの密集培養物をPBSで1回洗浄し、血清フリーDMEMで24時間FCS飢餓にした。その後、損傷を刺激するために、単層の中央領域にペプチドのチップで単線を形成した。このように処理した単層をPBSで1回洗浄し、HMGB1(100ng/ml)で補助したまたは補助しない血清フリー培地で48時間再生した。その後、細胞を固定し、TRITCファロイジンで染色した。移動の定量化を低倍率の写真にとり、細胞の無い空間に移動した細胞数を係数することにより行った。データは平均値±SDを表し、100%の値は刺激の無い状態で移動した細胞の数(基礎移動)に相当する。
図4に示すように、HMGB1刺激は5−2−倍だけ移動細胞の数を増加する。ボックスAおよびボックスB(10ng/ml)も試験して、両方共細胞移動を1.8−倍を刺激する。最終的に、bFGF(50ng/ml)との比較により、上記分子がより効果的であることを強調される。損傷の治癒が走化性および化学運動性の同じ信号伝達経路に基づくことを仮定可能である。
【0027】
信号伝達経路
後で、信号伝達経路を検出した。移動信号として作用するために、HMGB1は応答細胞の膜に到達してリセプタに結合する必要がある。HMGB1がRSMCの表面に結合するかどうかを試験するために、百万の細胞をトリプシン処理し、20分間4℃で、ボックスA+Bペプチド800ngおよび5μgBSA含有PBS中でインキュベートした。ボックスA+ボックスBポリペプチドは内皮全長HMGB1より僅かに小さく、したがって、SDS−PAGEゲルで容易に区別できる。その後、細胞はペレット化され、上澄みは保存された。500μlの冷いPBSで2回洗浄した後、細胞をSDS−PAGEサンプルバッファー中に再懸濁し、100℃で5分間加熱し、12%のトリシン−SDSゲルに置いた(ラインP)。隣に20μlの上澄みを置いた(ラインS)。その後、ゲルをイモビロンフィルタにブロットし、インディアインクで染色した。
【0028】
図5−Aにおいて、SDS−PAGEゲルを示す。これから、細胞ペレット中でおよび上澄み中で回復したボックスA+Bの量を計算可能である。そして、500000より多いボックスA+B分子がシングルRSに結合することを評価できる。この結果は、細胞外HMGB1がRSMCに結合できるが、実際のレセプタ数を反映しないことを示している。実際、HMGB1はヘパリンおよびプロテオグリカンに結合することが既に示されている(Bianchi,1988年、EMBO J.、7:843−849;NairおよびJungalwala、1997年、J.Neurochem.、68:1286−1297;Salmivirta等、1992年、Exp.CellRes.,200:444−451)。HeLaにおける発明者により既に説明されたように、HMGB1はRSMCによって生産された細胞外マトリックスにも結合し得る。ここでは、ほんの少量のHMGB1が細胞に結合するのみであり、これらの細胞は細胞外マトリックスを殆ど生産しない。
【0029】
HMGB1は、広い範囲の細胞型によって発現されるRAGEに結合することが報告された。RAGEがRSMC膜に存在することを説明するために、百万RSMCをSDS−PAGEサンプルバッファー(50mMトリスpH6.8、2%の2−メルカプトエタノール、4%SDS、12%グリセロール、0.05%ブルモフェノールブルー)含有プレートに溶解し、100℃で5分間変性し、そして12%アクリルアミド上で分離した。分離した蛋白質を、タンクブロットシステム、25mMトリスpH7.5、0.192Mグリシン、20%メタノールを使用して、イモビロン(ミリポアより)でブロットした。このブロットを1時間室温で5%スキムミルク/TBST(20mMトリス、pH7.5、137mMのNaCl、0.1%Tween20)中でブロットし、3回TBSTで洗浄し、抗HMGB1抗体と共にTBST−0.01%BSA中でインキュベートした。TBST−0.01%BSAで洗浄した後、セカンダリ抗体と共にインキュベートした。蛋白質をECLシステム(アメシャム)で検出した。RAGEの存在を抗RAGE抗体(ニューヨーク、コロンビア大学、A.M.シュミット博士から送られた)を使用して検出した。図5−Bに示される結果は、RAGEがRSMCに存在することを示している。さらに、HMGB1走化性は、図5−Cに示すように、抗HMGB1抗体によって阻害されるのみならず、抗RAGE抗体によっても阻害される。抗RAGE抗体は、HMGB1移動信号に応答して、RSMCの細胞骨格再組織化および形態学的変化を遮断する。つまり、無関係な抗体は細胞骨格再組織化を遮断できない。
【0030】
これらのデータはRAGEレセプタがRSMCのHMGB1誘導応答に必要であることを示す。
多くの化学誘導物質が、蛋白質(G蛋白質)に結合するヘテロ三量体のGTPに結合した膜レセプタを介して作用することを知るために、G蛋白質がHMGB1信号伝達に関連するかどうかを試験した。百日咳毒素が特異的サブクラスのG蛋白質すなわちGi/o蛋白質を阻害し、信号伝達経路における関与を明らかにするので、百日咳毒素(PT)を使用した(Baggiolini等、1994年、Adv.Immunol.,55:97−179;Haribabu等、1999年、.Biol.Chem.,274:37087−37092)。mPTつまりPTの不活性変異体をコントロールとして使用し、RSMCをPTまたはmPT(50ng/ml)で6時間前処理し、HMGB1(100ng/ml)、ボックスAまたはボックスB(10ng/ml)で30分間刺激した。走化性アッセイを前記のように行った。データは平均値±SDを表し、100%値は刺激剤の無い状態における基礎移動に相当する。図6−Aにおいて、HMGB1誘導走化性におけるPTの阻害効果を示す。これらのデータは、HMGB1により制御された信号伝達経路におけるGi/o蛋白質の関与を示唆する。図6−Bにおいて、細胞骨格再組織化を示す。アクチンフィラメントを前記にように可視化した。その後、HMGB1誘導信号伝達がMAPキナーゼ経路を含むかどうかを研究した。事実、これらの蛋白質はRAGEにより活性化され、細胞内運動性機構の調製に直接役割を果たすことが知られている。RSMCをPD98059(50mM)で1時間前処理するかまたは前処理せず、子牛胸腺(100ng/ml)からのHMGB1で30分間刺激し、リン酸化ERK1/2(ニューイングランドバイオラボズ、Beverly、MA)およびDAPIに対する特異的抗体で染色した。細胞の別のサンプルをTRITCファロイジンで染色し、細胞骨格の再組織化を可視化した。図7では、30分間で、いかにしてHMGB1刺激がRSMCにおいてERK1/2蛋白質の活性化を誘導するか、および核転移を誘導するか、逆に、リン酸化ERK蛋白質が殆ど検出されず、未刺激のRSMCの細胞質に位置するかを示す。さらに、PD98059,MEKの選択的阻害剤、ERKの上流レギュレータはHMGB1誘導ERKリン酸化および核転移ならびにRSMC移動および細胞骨格再組織化を阻害する。したがって、これらのデータはMAPキナーゼ経路がHMGB1誘導細胞移動において本質的な役割を果たしていることを示す。
【0031】
細胞損傷の誘導
技術状態を考慮して、ネクロシスを受ける損傷細胞が細胞外培地中にHMGB1を放出できるかどうかを検出した。
5μMのイオノマイシン(シグマ)および20μMのCCCP、またはmMデオキシグルコースおよび10mMアジ化ナトリウムで処理することにより、HeLa細胞およびHUVECを誘導してネクロシスさせた。37℃で16時間後、ネクロシスを受けた細胞の数を形態学的に記録し、50%に達したとき、上澄みを集めた。
【0032】
ウェスタンブロット分析のために、処理細胞および未処理細胞からの培地を集め、AmiconUltrafree−MCフィルタを使用して50倍に濃縮し、細胞をSDS−PAGEサンプルバッファーに溶解した。
免疫蛍光分析のため、細胞を4%PFAで固定し、抗HMGB1抗体でインキュベートし、セカンダリ抗体およびDAPIで染色した。細胞の透過化処理を、PBS中0.1%NP−40を使用して行った。
図8−Aにおいて、上澄み中の蛋白質および細胞ペレットのウェスタンブロット分析を表し、HMGB1をネクロシス細胞および損傷細胞の両方の上澄み中で回収した。図8−Bにおいて、シングルリビングおよびネクロシスHeLaにおいて実施された免疫蛍光アッセイを示す。HMGB1はネクロシス細胞の残物に結合しない。
【0033】
図9では、免疫組織学アッセイの結果を示す。これらのデータはHMGB1が、RSMCの核ではなくヒト動脈にある内皮細胞の核に含まれることを確認する(図9−Aでは低い倍率;図9−Bでは高い倍率)。実際、平滑筋細胞の殆どの核は非検出量のHMGB1を含む(図9−Bにおけるフレーム)。図9−Cでは、ウェスタンブロット分析はHeLa細胞に比べたRSMCにおけるHMGB1の発現レベルをしめし、RSMCのインビトロ培養物はHeLa細胞に比べて少量のHMGB1を含むことを示す。
【0034】
結局、これらのデータは、HMGB1分子において、血管平滑筋細胞への信号が単に近傍細胞の機構的損傷またはネクロシスにより起こり得ることを示唆する。
結論として、上記の実験データつまり本発明の基礎は、核HMGB1蛋白質が、機構的損傷および/または炎症後に生じる血管再構築の強い媒介物であることおよび損傷またはネクロシス細胞により受動的に放出されうることを示す。
特に、これらのデータは以下のことを示唆する。
【0035】
HMGB1は化学誘導物質として作用する
HMGB1は走化性アッセイおよび損傷アッセイにおけるbFGFまたはfMLPとして強力な化学誘導物質であり、プロ−ウロキナーゼでの観察に類似した細胞形および細胞骨格組織化の変化を促進する。これらの効果は特にHMGB1に起因し、潜在的な汚染物質に起因しない。さらに、HMGB1に対する抗体は、細胞移動における効果を阻害するが、非特異的コントロール抗体はそのようにはできない。
【0036】
RAGEへの結合がRSMCにおけるHMGB1信号伝達経路を開始させる
上記報告の実験は、RAGEがRSMCにおいて発現されること、および抗RAGE抗体がRSMCにおけるHMGB1の効果を阻害することを示す。
MAPキナーゼがRSMCのHMGB1誘導細胞移動に関与することが確認された。その理由は、ERK1/2がリン酸化されHMGB1刺激において細胞核に転位され、MEK阻害剤PD98059がHMGB1誘導細胞移動を遮断できるからである。さらに、データは、Gi/o蛋白質がHMGB1により活性化される工程に関与することも示す。その理由は、HMGB1誘導細胞移動はBordetella百日咳毒素により遮断され得るからである。G蛋白質は通常、7−膜貫通型−エリックスレセプタ(7TM)に結合するが、現時では、RAGEとG蛋白質の間の直接の関係は説明されていない。これまで、HMGB1がRAGEに加えて7TMレセプタ/G蛋白質レセプタに結合するために必要であるか、G蛋白質がRAGEの下流でまたはフィードバック機構で関与するかが知られている。
【0037】
HMGB1パラクリン機能
細胞が機械的に損傷を受けるかまたはネクロシスを受けるとき、HMGB1は非調整的な態様で放出される。これは、サイトカインまたはリポ多糖体で刺激した際を意味する。こうして、HMGB1はパラクリンの態様で近傍の細胞に個々の細胞の損傷または破壊を信号伝達することができる。細胞外HMGB1に応答する細胞はHMGB1を殆ど含まないことが明らかであり、核内には殆どない。RSMCはHeLa細胞または内皮細胞と比較してHMGB1を殆ど含まず、殆ど含まれないHMGB1は主には細胞質に存在する。移動性RSMCは細胞のリーディングエッジにおいて表面上にHMGB1を濃縮する傾向がある。移動性細胞のリーディングエッジにおけるHMGB1の濃縮により近傍細胞のHMGB1誘導応答を呼び起こす。つまり、インテグリン、ウロキナーゼレセプタまたはc−Src等の細胞移動に関与する分子の再配置は、運動性RSMCの特徴である。移動は細胞外プロテアーゼの活性化を伴い、HMGB1およびプラスミノーゲン活性化システム間の相互作用は細胞外マトリックス内で細胞移動を促進し得る。
【0038】
脈管障害におけるHMGB1の役割
HMGB1に対する平滑筋細胞の応答性、内皮細胞は多量のHMGB1を含むが、血管SMCは殆ど含まないという観察、および機械的損傷を受ける細胞からのHMGB1の放出、上記これらの全結果はアテローム性動脈硬化症および再狭窄において生じる組織再構築の間におけるHMGB1の潜在的な役割を示す。
本発明の目的である、HMGB1およびRAGEレセプタ間の相互作用を阻害できる分子の同定が可能な上記特別な実験結果は、分子の構造的なおよび機能的な特徴を考慮し、以下のとおりである。
1.HMGB1アンタゴニスト:HMGB1フラグメント、HMGボックス類似体、完全な全長分子よりもより効果的である、およびHMGボックスドメイン含有蛋白質、最後の2つは両方ともRAGEレセプタに結合可能である。
2.HMGB1阻害剤:分子、抗体または抗体フラグメントおよび4方向DNA、HMGボックスボメインに結合し、かつHMGB1がRAGEに結合するのを回避する。
これらの分子は、脈管形成後に生じる事象を含む、血管上皮損傷後のアテローム性動脈硬化症および/または再狭窄を防止するか、遅らせるか、または最小限にする薬理的調製用に有利に使用される。
【0039】
さらに、本発明の発明者は、HMGB1はマウス胎児繊維芽細胞における強い生物学的効果を有することを示した。繊維芽細胞は結合組織の主な細胞成分であり、結合性細胞外マトリックスの維持および合成の原因であることが知られている。特に、HMGB1は繊維芽細胞に対する強い化学誘引物質としてインビトロにおいて作用し、抗RAGE抗体はこの効果を遮断する。
【0040】
したがって、積極的に規制する薬理的薬剤の調製のために、完全な全長蛋白質として、HMGB1とホモロジーを有する各種の分子を使用することができ、したがって、繊維芽細胞の細胞移動を促進および/または誘導することができる。同様に、HMGB1およびそのRAGEレセプタ間の相互作用を遮断できる各種分子(すなわち、阻害剤グループに属する全分子:抗体または抗体フラグメント、4方向DNA;およびHMGボックスアンタゴニストグループに属する全分子)は、結合組織再生成を避けるか、遅らせるか、または減じるために、効果的に薬理的薬剤の製造のために使用できる。
本発明の付加的な目的は、繊維芽細胞移動を促進および/または誘導し、その結果積極的に結合組織再生成を調整する治療的薬剤の調製のために、HMGB1、HMGボックスに対応するHMGB1フラグメント、HMGボックスファミリーに属する他の蛋白質のHMGボックスドメイン、およびHMGボックスファミリーの他の蛋白質の使用である。
【0041】
本発明の完全な部分は、以下の実験により明らかにされる、結合組織再生成を減少、遅延、回避する治療的薬剤の調製のために、HMGB1およびRAGEレセプタ間の相互作用を阻害する、全分子、アンタゴニストおよび/または阻害剤の使用である。
【0042】
繊維芽細胞の走化性アッセイ
走化性アッセイは周知のプロトコルを使用して実施される(Degryse等、1999年、Blood、94:649−662)。0.5μmポアサイズ(Corning,Acton,MA)を有するフィルタを具えた変法ボイデンチャンバーを使用して、コラーゲンI(0.5Mの酢酸中の100μg/ml)およびフィブロネクチン(10μg/ml)(Roche)を処理した。マウス胎児繊維芽細胞を周知のプロトコルにしたがって培養した(Calogero等、1999年、Nat.Genet.,22:276−280)および24時間の血清飢餓の後、20.000−40.000細胞のサンプルをボイデンチャンバーの上方ウェルに添加した。E.coli発現組換えHMGB1を同じ血清フリー培地に希釈し、下方ウェルに添加した。
【0043】
抗RAGE抗体(1000ng/ml)(ニューヨーク、コロンビア大学、A.M.シュミット博士から送られる)を両ウェルに添加した。
37℃で一晩中細胞移動をさせた。その後、フィルタの上方表面に残る細胞を書き取り、フィルタをメタノール中で固定し、20%メタノール中10%のクリスタルバイオレットの溶液中で染色した。全実験を少なくとも2回、三重に行った。
【0044】
図10に示すように、結果は、フィルタ当たり10倍の高倍率で係数した細胞の数の平均値±SDであり、未処理コントロールを超えたホールドとして発現される。ランダム細胞移動(すなわち、化学誘導物質の不存在下の移動)に、100%の任意値を与える。統計的な分析を、増加する投与量の薬剤での処理の評価に対するANOVAモデルを使用して行った。
【0045】
E.coli発現組換えHMGB1は、濃度依存態様での繊維芽細胞を刺激し、0.1ng/mlの投与量で、100ng/mlにおける最大応答で開始し、より高い投与量(1000ng/ml)で応答はコントロールより低い。抗RAGE抗体(1000ng/ml)は全体的に移動応答(図10のグラフの右側)を遮断する。これはHMGB1に特に起因することを示す。
【0046】
結合組織再生成の調整におけるHMGB1の役割
HMGB1への繊維芽細胞の応答性は、外傷または外科手術に起因する損傷の後生じる結合組織再構築の間、HMGB1の潜在的な役割を指摘する。さらに、抗RAGE抗体が前記応答を遮断する事実は細胞表面上のRAGEレセプタおよびHMGB1間の相互作用がHMGB1に対する繊維芽細胞感受性へ至る基本的な事象であることを示す。
【0047】
結論:
−HMGB1および/またはHMGボックスに対応するHMGB1フラグメント、HMGボックスファミリーにおよびHMGボックスファミリーの他の蛋白質に属する他の蛋白質のHMGボックスドメインは、結合組織再生成を積極的に調節、すなわち促進および/または誘導する薬理的調製のために有利に使用される。
−アンタゴニストグループに属する、(RAGEレセプタに結合可能)、阻害剤グループに属する、(すなわち、RAGEレセプタにHMGボックスドメインブロッキングHMGB1結合を結合可能)HMGB1およびRAGE間の相互作用を阻害できる各種類の分子は、結合組織再生成を調製、すなわち遮断、遅延、または減少する薬理的調製のために有利に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、変法ボイデンチャンバーを使用して行われる走化性アッセイにおいてRSMCにおけるHMGB1走化性活性を示す。100%値は、刺激剤が無い状態における細胞移動(ランダム細胞移動)の数に相当する。データは平均値±SD(n=3)を表す。図1−Aは、子牛の胸腺からの精製されたHMGB1に対するRSMCの濃度依存移動応答を示す。図1−Bは、化学誘引物質fMLPおよびbFGFの効果と、子牛の胸腺から精製したかまたはイーストにおいて発現された、HMGB1蛋白質の走化性効果の比較を示す。図1−Cは、fMLP−およびHMGB1−誘導移動における抗HMGB1抗体の効果を示す。星印(*)は、移動性応答が、スチューデント試験においてp=0.0001限界を超えてコントロールと統計的に異なった処理を示す。図1−Dはイースト(Pichia pastoris)において発現したHMGB1へのRSMCの濃度依存性移動性応答を示す。
【図2】図2は、RSMCの形態学および細胞骨格組織化におけるHMGB1の効果を示す。図2−Aは子牛胸腺から精製された、またはRSMCのサブコンフルエントな培地におけるイーストまたはE.coliにおいて発現されたHMGB1の効果を示す。アクチンフィラメントをTRICファロイジンを使用して可視化した。図2−Bは、抗HMGB1ラビット抗体がHMGB1刺激性細胞骨格再組織化を阻害する様子を示す。休止細胞(状態1)は多くのストレスファイバーを示す。非休止細胞(状態2)はアクチン細胞骨格の再組織化を示す。
【図3】図3はHMGB1のHMGボックスドメインへのRSMCの走化性応答を示す。図3−Aは共にE.coliで発現された、ボックスAおよびBへの濃度依存性応答を示す。ランダム細胞移動は100%移動として示す。データは平均値±SD(n=3)を示す。結果の統計的有意性は、ボックスAおよびBの両方に対して、ANOVAモデルでp<0.0001である。図3−BはE.アクチン細胞骨格組織化における、coliで発現した全長HMGB1、ボックスA+B、ボックスA、またはボックスBの効果を示す。アクチンフィラメントはTRICファロイジンを使用して可視化した。
【図4】図4は、傷へのRSMC移動におけるHMGボックスおよびHMGB1の効果を示す。100%値は刺激剤の存在しない状態における細胞移動の数(基礎移動)に相当する。データは平均値±SD(n=5)を表す。統計的有意性は、bFGFおよび全長バクテリア作成HMGB1で治療するためには0.05<p<0.01、ボックスAおよびボックスBで治療するためには0.01<p<0.001、および子牛胸腺HMGB1で治療するためには0.001<p<0.0001である。
【図5】図5はいかにしてHMGB1がRSMCの表面に結合し、RAGEを介して細胞運動性を刺激するかを示す。図5−Aは多量のHMGB1がRMSC表面に結合することを示す。図5−Bにおいて、RAGEを発現するRSMCが示される。図5−Cはいかにして抗RAGE抗体がHMGB1誘導RMSC移動を阻害するかを示す。統計的有意性はHMGB1およびHMGB1プラス非特異的抗体で治療するためには0.001<p<0.0001である。
【図6】図6はいかにして百日咳毒素(PT)がHMGB1誘導RSMC移動およびアクチン細胞骨格再組織化を阻害するかを示す。図6−Aに、変法ボイデンチャンバーを使用して実施された走化性アッセイが示される。100%の値は、刺激剤の無い状態で基礎細胞移動に相当し、データは平均値±SDを表す。図6−Bは明らかな細胞骨格再組織化を示し、アクチンフィラメントを結合TRICファロイジンを使用して可視化した。
【図7】図7はMAPキナーゼ経路がHMGB1信号伝達に伴われることを示す。細胞はリン酸化ERK1/2およびDAPIに対する特異的抗体で染色され、細胞の別のサンプルはTRICファロイジンで染色し細胞骨格の再組織化を可視化する。
【図8】図8はHMGB1が壊死および損傷細胞により放出されることを示す。図8−Aは壊死または透過HeLaにより放出された蛋白質のウェスタンブロット分析の結果を示す。HMGB1の存在はライン1およびライン3において明らかである。図8−Bは壊死および生きているHeLaにおいて実施された免疫蛍光アッセイの結果を示す。
【図9】図9はHMGB1が内皮細胞の核に存在するが、血管SMCの核には存在しないことを示す。図9−Aおよび9−Bでは、HMGB1が内皮細胞の核に存在するが、低倍率(A)および高倍率(B)にて、抗HMGB1抗体で染色された、およびヘマトキシリンで対比染色されたヒト膵臓動脈の一部の血管平滑筋細胞の核には検出されないことが示される。赤枠は図Bにおいて示された領域の位置を示し、矢印はSMCの核を指す。図9−Cでは、ウェスタンブロット分析がHeLa細胞に比較した、RSMCにおけるHMGB1の発現レベルを示す。
【図10】図10は、抗RAGE抗体(1000ng/ml)の存在または非存在下における、変法ボイデンチャンバーを使用して実施された走化性アッセイにおけるマウス胎児繊維芽細胞におけるHMGB1の走化性効果を示す。100%の値は刺激剤の無い状態(ランダム細胞移動)における細胞移動の数に相当する。データは平均値±SD(n=3)を表す。
Claims (9)
- 血管疾患の治療のための治療薬調製のための、HMGボックス結合分子の使用法。
- 前記分子が、抗体または抗体フラグメント、阻害剤および4方向DNAを有するグループに属する、請求項1記載のHMGボックス結合分子の使用法。
- 血管疾患治療のための治療薬調製のための、HMGボックスとの配列ホモロジーを有しかつレセプタの機能的HMGボックス結合ドメインに結合できるアンタゴニスト分子の使用法。
- 血管疾患が、血管形成の間に生じるアテローム性動脈硬化症および再狭窄を含む、請求項1〜3のうちいずれか1項またはそれ以上に記載の分子の使用法。
- 前記分子がカテーテル、外科用器具または血管形成用ステントにより放出される、請求項1〜4のうちいずれか1項またはそれ以上に記載の分子の使用法。
- 結合性組織再生成を促進および/または誘導する治療薬の調製のための、HMGボックス、HMGボックスファミリーに属する他の蛋白質のHMGボックスドメインおよびHMGファミリーの他の蛋白質に対応するHMGB1フラグメントおよび/またはHMGB1の使用法。
- 結合性組織再生成を遮断、遅延または減少する治療薬の調製のための、HMGボックス結合分子の使用法。
- 前記分子が、抗体または抗体フラグメント、阻害剤および4方向DNAを有するグループに属する、請求項7記載のHMGボックス結合分子の使用法。
- 結合性組織再生成を遮断、遅延、または減少する治療薬の調製のための、HMGボックスと配列ホモロジーを有しかつレセプタの機能的HMGボックス結合ドメインに結合可能なアンタゴニスト分子の使用法。
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