JP2004521758A - 多数の溝を用いる切削インサート用切屑制御 - Google Patents

Abstract

上部面（14）及び下部ベース面（16）と、前記面と隣接する側壁（18）と、前記上部面と側壁との交差部に形成される少なくとも一つの切削エッジ（22）と、隣接する側壁の一組の交差部に形成される少なくとも一つの切削隅部（20）とを備える切削インサート（10）である。切屑制御構造（12）は、前記切削エッジの少なくとも有効長に対し前記隅部（20）から前記切削エッジ（22）に沿って延在する前記上部面（14）に形成される。ランド表面（26）は、前記切削エッジ（22）から前記処理構造（22）を隔てる。前記切屑制御構造（12）は半径方向に離間される複数の溝（36）を含み、前記切屑制御構造（12）の溝は、前記ランド（26）から前記インサート（10）の前記中心に向かって概ね減少していく深さを有する。

Description

【技術分野】
【０００１】
本発明は、切屑制御用の多数の溝を含む切削インサートに関する。さらに詳細には、本発明は、幅広い範囲の作業条件、すなわち広範囲にわたる材料の切込み深さ及び送り速度において効果的な切屑制御用の多数の溝を含む切削インサートに関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００２】
切削インサートは公知であり、使い捨て（スローアウェイ throw away）設計のものがそのうちの大きな割合を占める。このようなインサートはツールホルダに着脱可能に締め付けられ、鈍化又は破損すると破棄される。使い捨てインサートは通常、インデックス可能（indexable）及び／又は反転可能で、切削位置に対し選択的に存在させるために少なくとも二つの切削エッジが切削インサートに設けられる。多数の切削エッジを有するインデックス可能及び／又は反転可能インサートは、一つのエッジを使用したあと、インサートを単純に次の使用可能なエッジへと割り出す又は反転すればよいために、より経済的である。このような特徴はインサート作成用材料が高コストであることを考慮すると、特に重要である。
【０００３】
切削作業中、インサートは一般的に、しっかりと、かつ正確にツールホルダ内部に保持されなければならない。インサートが数値制御機械に適用されるような場合には、精度が正確に位置決めされ堅固に保持されたインサートに左右されるので、このことは特に正しい。インサートが充分に大きければ、中心孔を有するインサートとピン型締結装置を備えるツールホルダとを提供することによって、インサートをツールホルダのポケット内部に正確かつ堅固に固定することができる。他の例においては、このようなインサートは当業者に公知のデザインの上部クランプによって所定位置に保持されてよい。
【課題を解決するための手段】
【０００４】
金属機械加工の主な目的は、新しい工作表面を形成することである。機械加工中の切屑の生成には大きな関心が払われてきた。エネルギーの消費は主に、廃棄物である切屑の生成と運動によって起きるためである。よって、どのような金属切削作業であっても、本質的な特徴は効果的な切屑制御にある。主だった切屑の種類に非連続切屑があり、これは切削領域から容易に排出されうる点で実際に有利である。ある種の金属及び合金は非連続切屑を生成するが、多くは非連続切屑を生成しない。したがって切削作業中は工作物の材料及び機械加工の条件にかかわらず、非連続切屑を生成することが非常に望ましい。
【０００５】
切屑制御は金属切削作業において重要な問題であるため、切削インサート用の改善に向けた切屑表面の開発は、金属切削の分野において長年の課題とされてきた。本発明は、幅広い範囲の作業条件、すなわち広範囲にわたる材料切り込み深さ及び送り速度において効果的な切削インサートに向けられたものである。
【０００６】
簡便には、本発明に基づいて、切削インサートが提供される。この切削インサートは、上部面及び下部ベース面と、上下面に隣接する側壁と、上部面及び側壁の交差部に形成される少なくとも一つの切削エッジと、隣接する一組の側壁の交差部に形成される少なくとも一つの切削隅部とを含む。切屑制御構造は、切削エッジの少なくとも有効長に対し、切削エッジに沿って切削隅部から延びるように上部面に形成される。切屑制御構造はランド（land）表面によって切削エッジから隔てられる。切屑制御構造は半径方向に離間される溝を含み、切屑制御構造の溝の深さはインサートの中心に向かって全体として減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００７】
本発明に由来する有利な点のみならず、さらなる本発明の特徴が、図面を参照して成される以下の詳細な説明から明らかとなるだろう。
以下の説明において、同じ参照記号は同じ又は相応する部分を指す。さらに以下の説明において、「下方に」「上方に」「内側方向へ」等の用語は便宜上用いられる用語であって、請求される本発明から逸脱し、これを制限する用語として解釈すべきものではないと理解されるべきである。
【０００８】
図面を参照すると、本発明に基づく切削インサート１０が示される。切削インサート１０は平行四辺形の形状を有し、超硬タングステンカーバイド材料又はサーメットのような当業において公知の硬質材料によって形成される。インサート１０はダイヤモンド形（菱形）に図示されるが、切削インサートが正方形及び三角形を含む所望の形状のほとんどいずれであってもよく、これらが以下にさらに詳細に説明される構造と本質的に類似する切屑制御構造１２を備えるものであればよいことが理解されよう。
【０００９】
インサート１０は上部面１４と略平坦なベース面１６とを有するとともに、面１４及び１６に対して垂直であってそれらを接続する側壁１８を備える。図面に示された特定の実施例においては、ツールホルダ（図示せず）の内にインサートを保持する中央ピン受容孔１２が、インサート１０を貫通して設けられている。湾曲した切削隅部２０が側壁１８の交差部に各々設けられる一方、切削エッジ２２は、各側壁１８及び上部面１４の交差部に各々形成される。
【００１０】
好ましい実施例においては、各図面を通じて示される切削インサート１０はインデックス可能インサートである。したがって、インサートの一つの切削エッジ領域に関して説明される詳細な特徴は、他の切削エッジ領域の切削エッジの少なくとも有効長の範囲内にも含まれる点に注意すべきである。したがって、図１に示される切削エッジ領域２４及びこの切削エッジ領域に直接関するインサート部分のみが、以下で詳細に論述される。
【００１１】
図１及び図２に示されるように、本発明に基づく切屑制御構造１２は、上部面１４に形成され、切削エッジ２２に沿って連続的に延び、ランド表面２６によって切削エッジから離間される。切屑制御構造１２は、床領域２８ａ、２８ｂ及び２８ｃと、デフレクタ表面３０ａ、３０ｂ及び３０ｃとによって各々画定される、半径方向に離間した多数の溝３６ａ、３６ｂ、３６ｃから形成される。
【００１２】
図３及び図４を参照すると、切屑制御構造１２の輪郭がさらに詳細に示される。切屑制御構造１２は、ランド表面２６の内側エッジから第一の下り傾斜表面３２に広がる。第一の下り傾斜表面３２は、ベース面１６に向かって下方向に、そしてインサートの中心に向かって第一の床領域２８ａへと内側方向に延在する。下り傾斜表面３２は、関連するランド表面２６から略１８度の角度でベース面１６に向かって下方向へ傾斜する。一例においては、傾斜の角度は、約１０度から約２０度までと異なる。
【００１３】
切屑制御構造１２は、第一の床領域２８ａから上部面１４に向かって上方向へ、また、インサート１０の中心に向かい第一の切屑デフレクタ表面３０ａに沿って第一の島状部３４まで内側方向へと傾斜する。第一の切屑デフレクタ表面３０ａは、上部面１４に向かって上方向へ略４０度の角度で傾斜する。一例においては、傾斜の角度は、約３５度から約４５度までと異なる。第一の島状部３４は概ね水平な表面であり、その深さはランド表面２６よりも低い。第一の床領域２８ａ及び第一の切屑デフレクタ３０ａは協同して、切屑制御構造１２の第一の溝３６ａを画定する。
【００１４】
本明細書に用いられたように、深さは、ランド表面２６の周縁端及び切削インサート１０の中心島状部３８によって形成されると想定される平面を基準にして決定される。
【００１５】
切屑制御構造１２は、第一の島状部３４からベース面１６に向かって下方向へ延び、第二の下り傾斜表面４０に沿いインサートの中心に向かって内側方向へ第二の床領域へと延在する。下り傾斜表面４０は、ベース面１６に向かって下方向へ約１８度の角度で傾斜する。一例においては、傾斜の角度は、約１０度から約２０度までと異なる。第二の床領域２８ｂは、概ね水平に広がる表面である。第一の床領域２８ａの深さは、第二の床領域２８ｂの深さよりも深くなっている。
【００１６】
切屑制御構造１２は、第二の床領域２８ｂから上部面１４に向かって上方向へ延び、インサートの中心に向かい第二の切屑デフレクタ表面３０ｂに沿って第三の床領域２８ｃへと内側方向へ延在する。第二の切屑デフレクタ表面３０ｂは、上部面１４に向かって約３５度の角度で上方向へ傾斜する。一例においては、傾斜の角度は、約３０度から約４０度までと異なる。第二の切屑デフレクタ表面３０ｂ及び第二の床領域２８ｂは協同して、切屑制御構造１２の第二の溝３６ｂを画定する。第三の床領域２８ｃは、概ね水平に広がる表面であって、第一の島状部３４と概ね同じ深さがある。
【００１７】
切屑制御構造１２は、第三の床領域２８ｃから第三の切屑デフレクタ３０ｃに沿って上部面１４に向かい、かつ、インサートの中心に向かって内側方向に延在する。第三の切屑デフレクタ表面３０ｃは、上部面１４に向かって約３０度の角度で上方向に傾斜する。一例においては、傾斜の角度は、約２５度から約３５度までと異なる。第三の切屑デフレクタ表面３０ｃ及び第三の床領域２８ｃは協同して、切屑制御構造１２の第三の溝３６ｃを画定する。
【００１８】
本発明では三つの溝３６ａ、３６ｂ及び３６ｃのみが図示されるが、切屑制御構造１２の溝の深さがランド２６からインサートの中心に向かって概ね減少していくのであれば、インサート１０の上部面１４に溝がいくつ形成されてもよいことが理解されるであろう。図４に示されるように、本発明の実施例が備える三つの溝すなわち３６ａ、３６ｂ及び３６ｃの深さは、材料切込み深さ及び送り速度の三つの範囲にわたって切屑形成を制御するために具体的に選択されている。さらに詳細には、溝３６ａは浅い切込み深さ及び低速の送り速度に適切な深さであり、溝３６ｂは、中程度の深さ及び中程度の送り速度に適切な深さであって、溝３６ｃは深い切込み深さ及びより高速の送り速度に適切な深さである。溝３６ａは、浅い切込み深さ及び低速の送り速度において充分に切屑形成を制御できるようにもっとも深く、溝３６ｂは、中程度の深さの切削及び送り速度におけるインサートのクレータ摩耗を防ぐためにより浅く、溝３６ｃは、深い切込み深さ及び送り速度においては、切屑は一般に大きくなり、浅い溝でも充分であるという観点から、もっとも浅い。一般的には、一例として、約０．００２〜０．００６ＩＰＲ（一回転あたりのインチ）の範囲の遅い送り速度及び約０．００５〜０．０２５インチの切込み深さ、約０．００６〜０．０１２ＩＰＲ（一回転あたりのインチ）の中程度の送り速度及び約０．０２５〜０．０７５インチの切込み深さ、約０．０１２〜０．０２０ＩＰＲ（一回転あたりのインチ）の範囲の速い送り速度及び約０．０７５〜０．２５０インチの切込み深さである。
【００１９】
切削エッジ２２ｃから溝３６ａまでの寸法は、インサートのＩＣサイズ関数によって相違してよい。ＩＣサイズは、インサート周縁内の最大の内接円の直径として定義される。ＩＣサイズが大きければ大きいほど、切削エッジ２２から溝３６ａまでの距離は長くなる。同様に、溝３６ａから溝３６ｂまでの距離は、切削エッジ２２から溝３６ａまでの距離の関数として選択される。好ましい実施例においては、溝３６ａから溝３６ｂまでの距離は、切削エッジ２２から溝３６ａまでの距離を４５〜５５％上回る範囲で相違してよい。それと対応して、溝３６ａから溝３６ｃまでの寸法は、切削エッジ２２から溝３６ａまでの寸法を９５〜１０５％上回る範囲で相違してもよい。
【００２０】
本発明は、本発明の特定の実施例に関連して特に説明されてきたが、これは図解のための方法であってこれに制限されるものではないと理解されるべきであり、添付された請求項の範囲は従来技術が許す限り広く解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】図１は、本発明に基づく切削インサートの斜視図である。
【図２】図２は、図１のインサートの上面図である。
【図３】図３は、図２の線３−３に沿ったインサートの断面図である。
【図４】図４は、図２の４−４の線に沿ったインサートの断面の部分拡大図である。

Claims (20)

1. 上部面及び下部ベース面と、
   前記面を接続する側壁と、
   前記上部面及び側壁の間の交差部に形成される少なくとも一つの切削エッジと、
   隣接する側壁の交差部に形成される少なくとも一つの切削隅部と、
   前記切削エッジの少なくとも有効切削長に対する前記切削隅部から前記切削エッジに沿って延びる、前記上部面に形成された切屑制御構造と、
   前記切屑制御構造を前記切削エッジから離間するランド表面と、
   半径方向に離間された複数の溝を含む前記切屑制御構造とを備え、前記制御構造の前記溝が、概ね前記ランドから前記インサートの中心に向かい減少する深さを有する、
   切削インサート。
2. 各溝が床領域及び切屑デフレクタ表面を含む、請求項１に記載の切削インサート。
3. 前記切削インサートが三角形の形状を有し、前記上部面と各側壁との交差部に切削エッジが形成される、請求項２に記載の切削インサート。
4. 前記切削インサートが平行四辺形の形状を有し、前記上部面と各側壁との交差部に切削エッジが形成される、請求項２に記載の切削インサート。
5. 前記切削インサートが長方形の形状を有し、前記上部面と各側壁との交差部に切削エッジが形成される、請求項２に記載の切削インサート。
6. 前記切削インサートが菱形の形状を有し、前記上部面と各側壁との交差部に切削エッジが形成される、請求項２に記載の切削インサート。
7. 前記切屑制御構造が、
   前記ランド表面の前記内側端から前記ベース面に向かって下方向へ、かつ前記インサートの中心に向かって内側方向へと、第一の床領域まで広がる、第一の下り傾斜表面と、
   前記第一の床領域から前記上部面に向かって上方向へ、かつ前記インサートの中心に向かって内側方向へと、第一の島状部まで広がる、第一の切屑リフレクタ表面と、
   前記第一の島状部から前記ベース面に向かって下方向へ、かつ前記インサートの中心に向かって内側方向へと、第二の床領域まで広がる、第二の下り傾斜表面と、
   前記第二の床領域から前記上部面に向かって上方向へ、かつ前記インサートの中心に向かって内側方向へと、第三の床領域まで広がる、前記第二の切屑デフレクタ表面と、
   前記第三の床領域から前記上部面に向かって上方向へ、かつ前記インサートの中心に向かって内側方向へと広がる、第三の切屑デフレクタ表面と、
   を含む、請求項１に記載の切削インサート。
8. 前記第一の島状部が概ね水平な表面であって、その深さが前記ランド表面の前記深さよりも深い、請求項７に記載の切屑制御構造。
9. 前記第一の床領域及び前記第一の切屑リフレクタが協同して前記切屑制御構造の第一の溝を画定する、請求項７に記載の切屑制御構造。
10. 前記第二の床領域が概ね水平に広がる表面である、前記請求項７に記載の切屑制御構造。
11. 前記第一の床領域の深さが前記第二の床領域の深さより深い、請求項７に記載の切屑制御構造。
12. 前記第二の切屑デフレクタ表面及び前記第二の床領域が協同して、前記切屑制御表面の第二の溝を画定する、請求項７に記載の切屑制御構造。
13. 前記第三の床領域が概ね水平に延在する表面であって、前記第一の島状部と概ね同一の深さである、請求項７に記載の切屑制御構造。
14. 前記第三の切屑デフレクタ表面及び前記第三の床領域が前記切屑制御構造の第三の溝を形成する、請求項７に記載の切屑制御構造。
15. 上部面及び下部ベース面と、
    前記面に隣接する側壁と、
    前記上部面と側壁との交差部に形成される少なくとも一つの切削エッジと、
    隣接する一組の側壁の交差部に形成される少なくとも一つの切削隅部と、
    前記上部面に形成されて、前記隅部から前記切削エッジに沿って延在する切屑制御構造と、
    前記切削エッジから前記切屑制御構造を隔てるランド表面と、
    を含む切削インサートであって、
    前記切屑制御構造が、
    前記ランド表面の前記内側端から前記上部面に向かって下方向に延び、前記インサートの前記中心に向かって内側方向へと第一の床領域まで延在する、第一の下り傾斜表面と、
    前記第一の床領域から前記上部面に向かって上方向に延び、前記インサートの前記中心に向かって内側方向へと、第一の島領域まで延在する、第一の切屑デフレクタ表面と、
    前記第一の島状部から前記ベース面に向かって下方向に延び、前記インサートの前記中心に向かって内側方向へと、第二の床領域まで延在する、第二の下り傾斜表面と、
    前記第二の床領域から前記上部面に向かって上方向に延び、前記インサートの前記中心に向かって内側方向へと、第三の床領域まで延在する、第二の切屑デフレクタ表面と、
    前記第三の床領域から前記上部面に向かって上方向に延び、前記インサートの前記中心に向かって内側方向に延在する、第三の切屑デフレクタ表面と、
    を含む、前記切削インサート。
16. 前記第一の床領域及び前記第一の切屑デフレクタが協働して、前記切屑制御構造の第一の溝を画定する、請求項１５に記載の切屑制御構造。
17. 前記第二の切屑デフレクタ表面及び前記第二の床領域が協働して、前記切屑制御構造の第二の溝を画定する、請求項１６に記載の切屑制御構造。
18. 前記第三の切屑デフレクタ表面及び前記第三の床領域が前記切屑制御構造の第三の溝を形成する、請求項１７に記載の切屑制御構造。
19. 前記第一の溝、前記第二の溝及び前記第三の溝が半径方向に離間される、請求項１８に記載の切屑制御構造。
20. 前記第一の溝が前記第二の溝よりも深く、前記第二の溝は前記第三の溝よりも深い、請求項１９に記載の切屑制御構造。