JP2004520045A - 癌細胞を検出および/または治療するためにSlug遺伝子またはその遺伝子の転写もしくは発現生成物を使用する方法。 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明はSlug遺伝子またはその遺伝子の転写もしくは発現生成物の異常発現に基き生物検体中の癌細胞の存在を検出するためにSlug遺伝子を使用する方法に関するものである。また、本発明は癌の治療のためにSlug遺伝子、あるいはその遺伝子の転写もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)を使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌治療における近年の進歩は適切な癌治療を計画しかつ正確な予後経過を判断をするために、癌の有無および癌の種類を検出しかつその部位の特定および他の組織への転移の可能性を判断するために癌の段階を検出するための有効な方法を備えることが必要であることを示した。癌の正確な診断はこの疾患を原因とする死者の数を減らし、最適な治療選択肢(化学療法、外科的摘出等)を選ぶことにより患者の生活の質を向上させることができ、治療の最終ポイントを明確にさせることにより患者の不便を軽減することに寄与できる。
【0003】
予後指針は患者の癌治療および癌発育に関する重要な情報を提供する。事実、ある種の初期癌の治療における全身性アジュバント(補助)療法の適用では、患者が高リスク患者であるか低リスク患者であるかの特定が主要目標の1つとなっている。複数の予後指針が公知であり、従来型のものとしては、腫瘍サイズ、リンパ節の状態、組織検査、ステロイド受容体の状態等があり、第二世代指針としては、増殖率、DNA倍数性、癌遺伝子、増殖因子受容体、ある種の糖蛋白質受容体等があり、いずれも治療選択のうえで有用である(マグガイヤー,ダブリュー エル氏著、再発及び生存についての予後要因、臨床腫瘍学の教育パンフレット米国学会、第25回年次総会、第89頁乃至第92頁、1989年及びコンテッソ氏等著、ヨーロッパジャーナル臨床腫瘍学、第25巻、第403頁乃至第409頁、1989年「McGuire, W.L.、Prognostic Factors for Recurrence and Survival in Educational Booklet American Society of Clinical Oncology,25th Annual Meeting,89−92(1989)and Contesso et al., Eur. J. Clin. Oncol.25号、403−409(1989)」。公知の予後指針は高リスク患者と低リスク患者との間を識別する目的を完全に満たすことがないけれど、複数の指針を組み合わせることによって患者の予後予測の質を高めることができ、そのため、癌の予後、その進行、および治療後の残存疾患を確認するために従来の予後指針に付加することができる新たな予後指針のための研究が進められている。
【0004】
他方、核酸の分析に基づいた分子方法は感受性を改善したけれど(バーチル エス エイ 及び セルビー ピ ジェイ氏著、病理学ジャーナル、第190巻、第6頁乃至第14頁、2000年「Burchill S.A. & Selby P.J.,J. Pathol,190,6−14,(2000)」)、癌細胞検出に用いられる方法のほとんどが感受性に制限がある。それにも関わらず、これらの方法は浸潤性腫瘍細胞と非浸潤性腫瘍細胞の識別ができない。
【0005】
Slug遺伝子は脊椎動物に存在する遺伝子である。本遺伝子は上皮−間葉転位に影響を与える「Zinc Fingers」型(Slug)の転写因子をコード化する(ニエト氏等著、サイエンス、第264巻、第835頁乃至第849頁、1994年「Nieto et al.,Science 264,835−849(1994)」)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一般に、間葉性腫瘍細胞のような癌細胞を検出する指針を見出すための問題を取り扱うものである。
【0007】
本発明により提供する解決策はSlug遺伝子の発現が間葉性腫瘍細胞等の癌細胞の存在に関連していることを発明者グループが発見し、係る悪性細胞が対照細胞と較べて、非常に高いレベルのSlug遺伝子、および/またはその遺伝子の転写および発現生成物を発現することを発明者グループが観察できた事実に基づくものである。発明者グループにより行なわれた各種の実験は間葉性腫瘍細胞を有する組織検体の細胞中にSlug遺伝子の生成物が発現されるが、しかし正常組織検体中ではその生成物が発現されないか、あるいはほとんど測定できないレベルで発現されることを示した。特別な実施例において、発見者グループはSlug遺伝子がBCR−ABLを有する白血病細胞の播殖能力を調節することを観察し、これはSlug遺伝子が腫瘍浸潤の役割を演することを意味している。
【0008】
上述した発見から導き出した考えられる応用の1つは腫瘍浸潤を検出するためにおよび/または癌治療の治療目的としてSlug遺伝子またはその遺伝子の転写もしくは発現生成物を使用することにある。
【0009】
従って、本発明の目的はSlug遺伝子またはその遺伝子の転写生成物もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)の発現の評価に基づいて試験検体中の癌細胞の存在を検出する方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、癌の治療における治療目的としてSlug遺伝子またはその遺伝子の転写生成物もしくは発現生成物を使用する方法を提供することにある。
【0011】
本発明は、一般に、癌細胞を検出および/あるいは癌細胞を治療するためにSlug遺伝子またはその遺伝子の転写生成物もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)を使用する方法に関するものである。Slug遺伝子は、上皮−間葉転位に影響を与える「Zinc Fingers」型(Slug)の転写因子をコード化する。癌細胞、特に間葉性腫瘍細胞は正常細胞と比較して非常に高いレベルのSlug遺伝子および/またはその遺伝子の転写生成物もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)を発現することから、Slug遺伝子またはその遺伝子の転写生成物もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)の異常発現に基づき悪性細胞を検出するための方法を確立することができる。
【0012】
1.癌細胞の検出
第1態様において、本発明は、Slug遺伝子またはその遺伝子の転写生成物もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)の異常発現の評価に基づき対照検体中の当該遺伝子あるいは転写生成物もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)の発現との比較から、試験検体中の癌細胞を検出する方法を提供するものである。この方法は、癌細胞を有するおそれがあるあらゆる脊椎動物、特に哺乳動物、例えばヒトに適用することができる。
【0013】
本発明が提供する方法は、Slug遺伝子またはその遺伝子の転写生成物もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)を発現する癌細胞、例えば白血病および肉種のような間葉性腫瘍細胞の検出に適しており、そのため、癌細胞により生じる疾患の診断、ならびにその予後の評価、および治療後の残存疾患の特定という本疾患治療における重要な面に活用できる。
【0014】
本明細書に用いる意味において、用語「試験検体」は間葉性あるいは癌性の腫瘍細胞を有するおそれのある脊椎動物の生物検体を意味する。
【0015】
用語「対照検体」は間葉性あるいは癌性の腫瘍細胞を含有する脊椎動物の疾患予後に関する情報を取得するためにここで使用されるものとして、(i)間葉性あるいは癌性の腫瘍細胞を有していない脊椎動物の生物検体と、(ii)間葉性あるいは癌性の腫瘍細胞を有する脊椎動物の生物検体とを含むものとする。
【0016】
本明細書に用いられている「異常発現」は一般に非腫瘍組織の正常細胞における遺伝子あるいはその遺伝子の転写もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)の発現と比較して、同一腫瘍組織の細胞における上記遺伝子あるいはその遺伝子の転写もしくは発現生成物(RNAあるいは蛋白質)の変質発現として理解されるべきものとする。遺伝子の異常発現には、遺伝子の増幅、遺伝子の過剰発現、および通常その遺伝子を発現しない細胞中の当該遺伝子の発現が含まれる。
1.A Slug遺伝子の異常発現に基づく検出
本発明は、Slug遺伝子の異常発現に基づく試験検体中の癌細胞の存在を検出する方法を提供し、その方法は:
1)癌細胞の保有する疑いのある脊椎動物の生物検体を入手することにより試験検体を得ること。
2)当該試験検体中に含まれている細胞におけるSlug遺伝子の発現を評価すること。
3)試験検体の細胞におけるSlug遺伝子の発現と対照検体の細胞におけるSlug遺伝子の発現とを比較すること。
から成り、対照検体の細胞におけるSlug遺伝子の発現と比較した時に、試験検体の細胞におけるSlug遺伝子の異常発現の存在が試験検体における癌細胞の存在を現わす。
【0017】
特別な実施例において、本発明が提供するSlug遺伝子の異常発現に基づく癌細胞を検出する方法は、癌細胞の保有の疑がいのあるヒトに適用される。ヒトSlug遺伝子のcDNA配列、ならびにcDNAから導出されたアミノ酸配列はニエト氏等の著書(上記に引用したニエト氏等の論文、1994)に開示されている。
【0018】
特別な実施例において、検出される癌細胞は例えば白血病や肉腫の間葉性腫瘍細胞である。
【0019】
試験検体は試験される脊椎動物の生物検体から入手する。当該生物検体は例えば組織の生検あるいは血液抽出の従来型方法により取得することができる。
【0020】
間葉性あるいは癌性の腫瘍細胞におけるSlug遺伝子の異常発現には、Slug遺伝子の増幅、当該遺伝子の過剰発現、および通常当該遺伝子を発現しない細胞における当該遺伝子の発現が含まれる。現在、DNAの増幅が腫瘍の増殖においてきわめて大きな役割をもち、癌細胞によるおびただしい数の遺伝子の調節を可能にすることが認められている。他方、治療に奏効性のない患者では通常、種々の癌の進行中にDNA増幅の頻度、ならびに複写数(コピー数)の増加は増幅目的遺伝子の過剰発現が悪性細胞に選択的有利要因をもたらすことを示唆している。
【0021】
Slug遺伝子の発現は例えばSlug遺伝子に相応するmRNA(Slug mRNA)のレベルの測定、あるいは生成されたSlug遺伝子のコピー数の測定等の適切な従来の方法により評価させ得る。
【0022】
本明細書に使用する意味において、「Slug mRNAのレベルの測定」は試験検体の細胞においてSlug蛋白質に翻訳できるmRNAのレベルと対照検体の細胞におけるSlug mRNAのレベルとの直接的あるいは相対的比較により、mRNAのレベルの質的あるいは量的な測定もしくは評価が可能なあらゆる方法を含む。同様に、「生成されたSlug遺伝子のコピーの数の測定」は試験検体の細胞において生成されたSlug遺伝子のコピーの数と対照検体の細胞における生成されたSlug遺伝子のコピーの数との直接的あるいは相対的比較により生成されたSlug遺伝子のコピーの数の質的あるいは量的な測定が可能なあらゆる方法を含む。特別な実施例において、試験検体の細胞におけるSlug mRNAのレベルあるいは生成されたSlug遺伝子のコピーの数が測定あるいは評価され、続いて対照検体の細胞におけるSlug mRNAのレベルあるいは生成されたSlug遺伝子のコピーの数との比較が行なわれる。
【0023】
特別な実施例において、対照検体は癌細胞、例えば間葉性腫瘍細胞を有していない脊椎動物の生物検体にすることができる。この場合、対照検体において、Slug mRNAのレベルあるいはSlug遺伝子のコピーの数は知られているので、その得られた情報は比較の目的の基準として繰り返し利用することができる。変形例として、対照検体が癌細胞、例えば間葉性腫瘍細胞を有している脊椎動物の生物検体の場合がある。この場合、Slug mRNAのレベルあるいはSlug遺伝子のコピーの数は癌細胞を保有する脊椎動物における癌疾患の予後に関する情報を提供する。
【0024】
Slug遺伝子のコピーの数の測定はSlug遺伝子のヌクレオチド配列を考慮して従来の方法により得られた適切なプローブを用いる細胞融合技術の手段により、例えば染色体外双微体(dmin)あるいは均一染色領域(hsrs)を可視化するような適切な従来の方法により行うことができる(ゲブハルト氏等著、乳癌研究治療、第8巻、第125頁、1986年及びデュトリラーウクス氏等著、癌細胞遺伝学、第49巻、第203頁、1990年「Gebhart,et al., Breast Cancer Res. Treat 8,125(1986)/Dutrillaux et al., Cancer Genet. Cytogenet.49,203(1990)」)。
【0025】
同様に、Slug mRNAのレベルは例えばノーザンブロット分析法(原田氏等著、細胞、第63巻、第303頁乃至第312頁、1990年「Harada,et al.,Cell 63 303−312(1990)」)、S1ヌクレアーゼによるマッピング法(藤田氏等著、細胞、第49巻、第357頁乃至第367頁、1998年「Fujita et al.,Cell 49,357−367(1987)」)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4.683.195号、同第US4.683.202号、同第US4.965.188号明細書)、ポリメラーゼ連鎖反応と結合させた逆転写(RT−PCR)(牧野氏等著、テクニック、第2巻、第295頁乃至第301頁、1990年「Makino et al., Technique 2,295−301(1990)」)、ミクロアレイ細胞融合技術(ウースター アール氏著、遺伝学の傾向、第16巻、第327頁乃至第329頁、2000年「Wooster R., Trends in Genetics 16 327−329(2000)」)のような適切な従来型方法により測定可能である。特別な実施例において、Slug mRNAの発現は、ノーザンブロット分析の手段およびポリメラーゼ連鎖反応と結合させた逆転写(RT−PCR)の手段(下記の「対象および方法」の欄参照)により評価された。
【0026】
本発明によって、対照検体におけるSlug遺伝子の発現との比較において、試験検体におけるSlug遺伝子の異常発現の存在は試験検体における間葉性あるいは癌性の腫瘍細胞の存在を示す。
1.B Slug遺伝子の発現生成物に基づく検出
本発明はSlug遺伝子の発現生成物(Slug蛋白質)の発現に基づく試験検体における癌細胞の存在を検出する法を提供し、該方法は:
a)癌細胞の保有する疑いのある脊椎動物の生物検体を入手することにより試験検体を取得すること。
b)当該試験検体の細胞におけるSlug蛋白質の発現を評価すること。
c)試験検体の細胞におけるSlug蛋白質の発現と対照検体の細胞におけるSlug蛋白質の発現とを比較すること。
からなり、対照検体の細胞におけるSlug蛋白質の発現との比較において、試験検体の細胞におけるSlug蛋白質の異常発現の存在が試験検体における癌細胞の存在を表示する。
【0027】
特別な実施例において検出される癌細胞は例えば白血病あるいは肉腫のような間葉性腫瘍細胞である。
【0028】
前述した[1.a]の変形例と同様に、試験検体は組織生検あるいは血液抽出のような従来の方法にて入手できる例えば、ヒトである試験対象の脊椎動物の生物検体である。
【0029】
Slug蛋白質の発現は抗体利用に基づく技術手段、生体内画像診断に基づく技術手段、流動血球計算の手段、プロテオミックスの手段のような従来の方法で評価可能である。
【0030】
1実施例として、組織内におけるSlug蛋白質の発現は従来の組織学的な免疫学方法を用いることにより検討することができ、該方法において抗Slug抗体によって特別に認識することができ、他の検出方法は適切なマーカー標識を付けた二次抗体を利用することができる。組織内のSlug蛋白質の発現はウエスタンブロットあるいはドット/スロット分析法(ジャルカネン氏等著、細胞生物学ジャーナル、第101巻、第976頁乃至第985頁、1985年及びジャルカネン氏等著、細胞生物学ジャーナル、第105巻、第3087頁乃至3096頁、1987年「Jalkanen et al., J. Cell Biol 101,976−985(1985) and Jalkanen et al., J. Cell Biol 105,3087−3096(1987)」)、ELISA(酵素結合免疫抗体法)のような免疫学的方法、あるいはRIA(放射性免疫測定法)で調べることもできる。
【0031】
更に、Slug蛋白質の発現は例えばX線や核磁気共鳴(NMR)等で検出可能なマーカーのような適切なマーカーと結合した抗Slug抗体を利用する画像診断技術手段から生体内で検出が可能である。腫瘍の画像診断の概要については腫瘍画像化(癌の放射化学検出、エス ダブリュー バーチェル および ビー エー ローデス編集、マッソン パブリッシング インコーポレーテッド、1982「Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer S.W. Burchiel & b.a. Rhodes eds.,Masson Publishing Inc.(1982)」)に記載されている。
【0032】
本発明が提供する方法に使用できる抗Slug抗体は任意に担体に結合させた無損Slug蛋白質に対する抗体あるいは当該蛋白質の抗原性断片に対する抗体にすることができる。当該抗体はハイブリドーマ技術(コーレー氏等著、ネイチャー、第256巻、第495頁1975年「Kohler et al., Nature 256,495(1975)」)により入手可能である多クローン性または好ましくは単クローン性にすることができる。変形例において、抗体断片は例えばFab, F(ab')2 等を利用できる。
【0033】
組織内のSlug蛋白質の発現を測定するための他の方法は流動血球計算(ワード エム エス氏著、病理学、第31巻、第382頁乃至第392頁、1999年「Ward M.S., Pathology 31,382−392(1999)」)、プロテオミクス(パンディ エム及びマン エム氏等著、ネイチャー、第495巻、第837頁乃至第846頁、2000年「Pandey m. & Mann m., Nature 405,837−846(2000)」及びチャンバース氏等著、病理学ジャーナル、第192巻、第280頁乃至第288頁、2000年、「Chambers et al., J.Pathol. 192,280−288(2000)」)がある。
【0034】
本発明にしたがって、試験検体における細胞内のSlug蛋白質の異常発現は対照検体における細胞内のSlug蛋白質の発現との比較において、試験検体における癌細胞の存在を表示する。
2. 癌の治療
第2態様において、本発明は癌の治療、特に白血病および肉腫の間葉性腫瘍細胞のような癌細胞の存在に関連した病理レベルを治療するためにSlug遺伝子あるいはその遺伝子の転写もしくは発現生成物を使用する方法に関するものである。
【0035】
本明細書に使用する意味において、「癌の治療におけるSlug遺伝子あるいはその遺伝子の転写もしくは発現生成物の使用」は、Slug遺伝子、Slug蛋白質に翻訳可能なmRNAのレベル、あるいはSlug蛋白質それ自体に対する質的あるいは量的介入を可能にするあらゆる方法を意味する。
【0036】
この意味において、本発明はSlug蛋白質あるいはその蛋白質の断片を認識する抗体の治療上有効な量、もしくはSlug機能をDNAレベル、RNAレベル、もしくは蛋白質レベル(Slug)で阻害する化合物の治療上有効な量からなる医薬組成物を提供する。前記抗体または化合物には任意に医薬上許容できる添加剤を添加することができる。
【0037】
本発明が提供する医薬組成物に使用できる抗Slug抗体は任意に担体に結合させた無損Slug蛋白質に対する抗体あるいはその蛋白質の抗原性断片に対する抗体にすることができる。その抗体はハイブリドーマ技術(コーレー氏等著、ネイチャー、第256巻、第495頁、1975年「Kohler et al., Nature 256,495(1975)」)を用いることにより取得可能である。変形例として、抗体断片は従来の方法により可能なFab,F(ab')2 等も使用できる。
【0038】
Slug機能をDNAレベルおよびRNAレベルの双方で、あるいは蛋白質レベル(Slug)で阻害する化合物はSlug遺伝子の発現をじゃまする、あるいはアンチセンス・オリゴヌクレオチドもしくはリボソームにより発生させたSlug mRNAを非活性化させる、あるいは抗体の使用によってSlug蛋白質を非活性化させる、もしくは当該蛋白質の作用を負の優性遺伝子と競合させる化合物もしくは化合物の混合物にさせることができる(チョー ワイ氏等著、分子生物学ジャーナル、第273巻、第525頁乃至532頁(1997)及び コバレダ シー 及び サンチェス ガルシア アイ氏著、血液、第95巻、第731頁、第737頁,2000年「Choo, Y.et al., J. Mol. Biol. 273,525−532(1997) and Cobaleda, C.& Sanchez−Garia,I. Blood 95,731−737(2000)」)。
【0039】
本発明が提供する医薬組成物に添加可能な添加剤は、さまざまな条件のなかでも当該医薬品構成物の投与経路に依存する。作用物質の異なる投与経路、使用する添加剤、および製造過程の評論は1993年、ルサン 5 エス エイ 編集、シー ファウリ イ トリロ著、製剤調剤法論文(Treatise on Formulation Pharmacy,C. Fauli i Trillo,Luzan 5,S.A. of Editors,1993)に記載されている。
【0040】
本発明はSlug遺伝子の発現の調節に基づいて抗腫瘍物質の生体内スクリーニング法関するものである。該方法は(i)一定の条件においてSlug遺伝子を発現する細胞システムを生成させ、(ii)該細胞システムを試験される化合物と接触させ、(iii)Slug遺伝子の発現を評価することから成り、Slug遺伝子が発現されない場合、該試験化合物は抗腫瘍物質候補となる。
【0041】
Slug遺伝子の機能は、その発現をじゃまするか、あるいはアンチセンス・オリゴヌクレオチドもしくはリボソームにより発生されるmRNAを非活性化させるか、あるいは抗体を使用することにより蛋白質を非活性化させるか、もしくは負の優性遺伝子に対して該蛋白質の作用を競合させることによりDNAレベルで阻害可能である(Choo,Y.et al.,「J.Mol.Biol.,273,525−532(1997) and Cobaleda,C.&Sanchez−Garcia,I., Blood, 95,731−737(2000)」)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明を以下に発明者グループが実施した効力検定により説明し、Slug遺伝子がBCR−ABLを有する白血病細胞の播種能力を調節していることを示す。
I. 対象および方法
細胞培養
使用した細胞系は、Ba/F3細胞(パラシオス及びステインメス氏著、細胞、第41巻、第727頁、1985年「Palacios and Steinmetz, Cell 41,727(1985)」)およびヒト蛋白質BCR−ABLP1 9 0 (Ba/F3+p190)ならびにBCR−ABLP2 1 0 (Ba/F3+p210)を発現するBa/F3細胞を有する(サンチェス ガルシア及びグルツ氏著、プロセス ナショナル アカデミック サイエンス 米国、第92巻、第5287頁乃至第5291頁、1995年「Sanchez−GarciA and Grutz,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,5287−5291(1995)」)。これらの細胞は10%ウシ胎児血清(FCS)を添加したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)で維持させた。必要に応じ、10%培養基を添加し、IL−3(インターロイキン−3)をもとにWEHI−3Bで調節した。
代表的差異分析
フバンクおよびシャッツ氏(フバンク及びシャッツ氏著、核酸研究、第22巻、第5640頁乃至第5648頁、1994年「Hubnak and Schatz, Nucleic Acid Res.22,5640−5648(1994)」)が記述した通りにRDAが実施された。要約するとmRNAはBa/F3,Ba/F3+p190,Ba/F3+p210細胞から単離された。各細胞個体群から10mgのmRNA検体がRDA用に採取された。cDNAはmRNAから合成され、Dpn IIで分解された。2つのオリゴヌクレオチド(R−24)[SEQ.ID.No.1]、(R−12)「SEQ.ID.No.2]からなるDpn IIで分解したcDNAにアダプターが加えられた。得られた混合物はR−24オリゴヌクレオチド(SEQ.ID.:No.1)でPCRにより増幅され、そしてアダプターはDpn IIで分解された。その後2対目のアダプター(J−24)「SEQ.ID.no.:3」および(J−12)「SEQ.ID.No.4」を、Ba/F3+p190およびBa/F3+p210(検定)細胞からの増幅断片と結合させた。次に、該結合物はBa/F3細胞(誘導体)のR−24[SEQ.ID.No.:1]を有する増幅cDNA断片と1:100の比で20時間にわたって細胞融合された。この細胞融合混合物はPCR増幅用のテンプレートとして用いた。
【0043】
第1段階のPCRの生成物のアリコートからJアダプター[SEQ.ID.No.3およびSEQ.ID.No.4]を取り出し、3対目のオリゴヌクレオチド(N−24)[SEQ.ID.no.:5]および(N−12)[SEQ.ID.no.6]を結合させ、そして誘導アンプリコンと1:1000の比で細胞融合させることにより第2段階の単離が行なわれた。PCR生成物は2.0%アガロースゲル上で分離され、そして個々のバンドがサブクローン化され、異なる発現に関しノーザンブロット分析により検査された。
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PT−PCR)
PH−1の陽性患者におけるヒト細胞系および末梢血液検体におけるSlugの発現を分析するため、50mgのランダム六量体、3μgの全RNA,200ユニットのSuperscript II RNAse H−逆転写酵素(GIBCO/BRL)を含有する20μlの反応においてRTが製造元のプロトコルにしたがって行なわれた。PCR用の熱サイクルのパラメータおよび特別なプライマーの配列は次の通りであった。Slug:94℃で1分間30サイクル、56℃で1分間および72℃で2分間、正常センスプライマー[SEQ.ID.No.7]、およびアンチセンスプライマー[SEQ.ID.No.8];c−ABL:94℃で1分間30サイクル、56℃で1分間および72℃で2分間、通常のセンスプライマー[SEQ.ID.No.9]、およびアンチセンスプライマー[SEQ.ID.No.10]。c−ABLのmRNAの増幅はRNAの各検体の質を評価する対照として作用した。内部プローブの配列は次の通りであった。
【0044】
Slug:SEQ.ID.No.11、および
c−ABL:SEQ.ID.No.12。
PT−PCRによる全長のSlug cDNA全長クローニング
マウスのSlug cDNAがアドバンズプライマー[SEQ.ID.No.13]および逆プライマー[SEQ.ID.No.14]を使用するRT−PCRによりクローン化された(GenBankに対するアクセス番号U70550)。
RNAの分析
全細胞質RNA(10μg)は10mmNa2 HPO4 緩衝液(pH7.0)中において1.4%アガロースゲル上でグリオキシル化されかつ分画された。電気泳動法後、そのゲルは紫外線で処理されたHybond−Nナイロン膜(Amersham)に写しとり、3 2 pで標識を付けたプローブと細胞融合された。フィルターにcDNA βアクチンのcDNAプローブで再処理し、電荷が制御された。プローブとして用いたアンチセンスSlugオリゴヌクレオチドはマウスのSlug cDNAをコード化する配列の最初の34塩基からなっている。
生体内試験におけるプラスミド構造体
マウスのSlug cDNAは制限酵素を添加し、cDNAの5'および3'末端と細胞融合するプライマーを使用し、遺伝子のコード領域全体を含む領域を増幅することによりクローニングを容易にさせるためPCRにより増幅された。マウスのSlug cDNAは、記載された通り(水島及び永田氏著、核酸研究第18巻、第4322頁、199年「Mizushima and Nagata,Nucleic Acid Res.18,4322(1990)」)ヒトG−CSFのcDNAのポリ(A)アデニル酸のシグナルに結合するポリエンガルス(polyengarce)の領域により続くEF1−αプロモーターの配列を含有するpEF−BOSベクターにおけるセンスおよびアンチセンス定位(それぞれ優性遺伝されたBOS−SlugおよびBOS−アンチSlug)でクローン化された。Combi−p190ベクターはCombi−tTAプラスミドのルシフェラーゼのcDNA(シュルツ氏等著、ネイチャー バイオテクノロジー、第14巻、第499頁乃至第503頁、1996年「Schultze et al.,Nature Biotechnology,14,499−503(1996)」)をBCR−ABLP1 9 0 のcDNAに置換させることにより取得された。構造体の確実性はDNA配列法で確認された。
細胞の形質変換
Ba/F3細胞は電気穿孔法(960μF、220V)により1μgのMC1−新発現ベクターと共に20μgのCombi−p190でそれぞれ形質変換された。その細胞(Ba/F3+Combi p190)においては、BCR−ABLの発現はテトラサイクリン(20ng/ml)の存在下および非存在下においてノーザンブロット法により分析された。これらの細胞はテトラサイクリンの存在下で生成された場合、IL−3の非存在に対して耐性があった。
Ba/F3およびBCR/ABLを発現する細胞におけるマウスSlug遺伝子の発現ならびに細胞生存分析試験
Ba/F3、Ba/F3+p190、およびBa/F3+p210細胞は電気穿孔法(960μF、220V)により1μgの純MC1発現ベクターと共に20μgのBOS−SlugおよびBOS−アンチSlugでそれぞれ形質導変換された。これら細胞系において、Slug発現はノーザンブロット法により分析された。それらの細胞はIL−3の非存在に対する耐性に関して選択され、そして細胞増殖力はトリパンブルー色素排除法により測定された。
DNAの分析
低分子量DNAは下記に示した通り単離された。それらの細胞は1.5mlの培地に集め、1,500rpm(400xg)で1分間マイクロ遠心分離にかけ、沈降物が300μlのプロティナーゼK緩衝液で懸濁された。1晩、55℃で培養後、DNAをエタノール中で沈殿させ、50μl/mlのRNAse Aを含有したTE緩衝液200μlのなかで懸濁し、2時間、37℃で培養した。DNAはフェノールおよびクロロホルムで抽出され、エタノールを加えて沈殿させた。DNAアルコート(2μg)は末端にα32−dCTPで標識を付けられ、2%アガロースゲル上で電気泳動法にかけられた。電気泳動法後、ゲルがHybond N(Amersham)に転写され、2時間、−70℃でオートラジオグラフィにかけられた。
表現型分析
血球計算染色法のため、ファーミンゲン(Pharmingen)から下記のモノクローナル抗マウス抗体、即ちリンパマーカーCD45R/B220および骨髄マーカーGr−1を使用した。抗マウスCD32/CD16で従来技術により取得し、Fc受容体結合を阻害するため精製した異なる細胞系の単一細胞の懸濁液が異なる抗体の適切な希釈液で室温あるいは4℃でそれぞれ培養された。検体はPBSで2回洗浄し、PBSで再懸濁した。検体の死亡細胞はヨウ化プロピジウムで染色させることにより排除した。検体およびデータはCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いてFACScanにより分析した。
腫瘍分析試験
種々の細胞系の腫瘍を分析試験するため、リン酸塩で緩衝処理した塩水溶液200μlに再懸濁した106 細胞を、生後2−4週間の雄無胸腺(裸)マウスの両サイドに皮下注入した。マウス腫瘍形成を2ヶ月間検査した。
組織構造分析
腫瘍検体は10%ホルマリン中で1晩固定した。次に検体を処理し、そしてパラフィンブロックに入れた。6μmの切片をヘマトキシリンおよびエオジンで染色し、組織構造を検査し、写真を撮った。全ての切片は解剖用に提供された腫瘍の均質および生存可能な部位から入手したものであった。
II 結果
血液生成細胞におけるSlugの発現を確実に調節するBCR−ABL
ヒトにおける癌と関連性をもつ一定の染色体異常の分子特性は主要結果が腫瘍特別融合蛋白質であることを示している。提唱される一般的見解は、このような蛋白質の生成がアポプトーシス(apoptosis)を阻害する腫瘍特別的標的細胞の正常な生成を変化させるというものであるが(コバレダ氏等著、ビオアッセイ、第20巻、第922頁、1998年「Cobaleda et al., BioAssays 20,922(1998)」)、しかし腫瘍発生過程において最も生命を脅かす要因は浸潤および転移である。悪性表現型の発現の臨床的重要性は正しく評価されているけれども、浸潤に関連する分子作用メカニズムに対する理解の進歩は癌研究の分野において他の進歩を遅らせている。従って、白血病に関連する染色体異常の生成物により媒介となる悪性転換を理解するうえで不可欠な最初の段階はこれらの蛋白質に向けられるものから下流のリポーター遺伝子の特定である。BCR−ABL癌遺伝子は実験モデルとして使用されており、BCR−ABL融合蛋白質をコード化するベクターを形質導入したマウス血液生成前駆体Ba/F3細胞系を使用する細胞システムからメリットが得られた(サンチェス ガルシアおよびグツ氏著、1995年、前述の著書)。Ba/F3におけるBCR−ABLの発現は細胞形質転換を誘発し、サイトカイン非依存増殖をもたらし、アポプトーシスを阻害する(ダレイおよびバルチモアー氏著、プロセス ナショナル アカデミック サイエンス 米国、第85巻、第9312頁、1988年「Daley and Baltimore,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,9312(1988) and Sanchez−Garcia and Grutz,1995,前述の著書)。BCR−ABL機能の潜在的標的を特定するため、代表的差異分析(RDA)のために基質プロセスが選択された。Ba/F3細胞と、BCR−ABLp190を発現したBa/F3細胞(Ba/F3+p190)と、BCR−ABLp210を発現したBa/F3細胞(Ba/F3+p210)のmRNA分子を使用して、cDNAが調合され、そしてフバンクおよびシャッツ氏のRDAプロトコル(Hubank and Schatz,1994,前述の著書)にしたがって、PCRにより3サイクルの配列細胞融合とPCR増幅を受けた。微分的に増幅させたcDNA断片の複数の断片がそれぞれサブクローン化され、そしてBa/F3 RNAのノーザンブロット分析法で種々の遺伝子発現に関し分析試験された。微分的に調節された遺伝子を表わしかつI−1を示したcDNAの断片を特定した。配列の比較は527ヌクレオチドI−1断片がコード化領域の一部およびBLAST研究施設(バイオテクノロジー情報用の国内センター「National Center for Biotechnology Information」)にて特定されたマウスSlug cDNAのみ翻訳3'領域に相当することを示した。
【0045】
Slug mRNAの生成を刺激するためのBCR−ABL癌遺伝子の能力は、ノーザンmRNA Ba/F3、Ba/F3+p190、およびBa/F3+p210細胞フィルター(図1A)との細胞融合により分析試験された。ノーザンブロット分析はBa/F3+p190およびBa/F3+p210細胞中のSlugの発現を示した。本分析試験はBCR−ABLの陽性細胞がSlug mRNAを発現するが、しかし対照細胞が発現しないことを示している。従って、これらのデータはSlug遺伝子の活性化とこのシステムにおけるBCR−ABLの発現との間には明確な関連性があることを示している。
Slugの異常発現に必要なBCR−ABLの存在
上記のデータは融合遺伝子BCR−ABLを保有するSlug I細胞の異常発現を示している。BCR−ABLがSlug遺伝子の転写に必要であるかどうかを定めるために、BCR−ABL遺伝子の発現が外因的に調節できるBa/F3細胞を生成した。トランスアクチベーターと単一プラスミドにて遺伝子発現ユニットを向けるtetオペレーターの最少プロモーターとを有するCombi−tTaシステムが使用された(Schultze et al.,1996、前述の著書)。ウイルスVP16のトランスアクチベーター領域に融合したリプレッサーtet蛋白質が遺伝子工学技術により取得したtetオペレーターの最少プロモーターにテトラサイクリンの非存在下において結合させ、そしてBCR−ABL(Combi−p190)の転写を活性化させた。エフェクター分子の存在下において、上記結合を解き、プロモーターを切片化した(図1B)。この意味において、BCR−ABLP1 9 0 がテトラサイクリンなしのBa/F3+Combip190で検出されたけれども、mRNAはテトラサイクリンの(20ng/ml)で検出されなかった。これらデータはBCR−ABLの誘発がテトラサイクリンによって完全に抑制され得ることを意味している。
【0046】
Slug遺伝子の活性化の特異性はBa/F3+Combi 190細胞においてノーザンフィルターの細胞融合の分析から分析された。2日間の培養後、テトラサイクリンの存在下および非存在下においてSlug発現を調べた。図1Bに示したように、Slug発現は急速に減少し、BCR−ABLPp190のmRNAの発現の減少と合致している。加えて、これらの細胞において、BCR−ABL癌遺伝子のよく知られている2種の下流エフェクターと、Myc(サイヤース氏等著、細胞、第70巻、第901頁乃至第910頁、1992年「Sawyers et al., Cell,70,901−910(1992)」)と、BcL−2(サイチエス−ガルシアおよびダルッツ氏著の前述の著書、1995年およびサンチェス ガルシアおよびマーチン サンカ氏著、分子生物学ジャーナル、第267巻、第255頁、1997年「Sanchez−Garcia and Martin−Zanca,J.Mol.Biol,267,255(1997)」)との発現がBCR−ABLの存在に依存性があるかどうか調べた。図1Bが示したように、BcL−2,Mycいずれの発現もテトラサイクリンなしでBa/F3+Combip190に検出されたが、テトラサイクリンの存在下においてmRNAは検出されなかった(図1B)。この観察は遺伝子発現に認められた変化がBCR−ABLにより刺激されたものであることを裏付けている。
フィラデルフィア染色体について陽性白血病患者の細胞系および末梢血液細胞に存在するSlug発現
BCR−ABLがBa/F3細胞におけるSlugの発現を正に調節しているという発見から、発明者グループはSlug発現のレベルも、癌遺伝子BCR-ABL融合蛋白質の天然標的の一次親細胞におけるBCR−ABLの発現の結果として正に調節されるかどうかを調べることになった(Cobaleda氏等著の前述の著書、2000年及びSanchez−Garcia氏著の前述の著書、2000年)。マウス組織のスペクトルのノーザンブロット分析は、ほとんど例外なしにSlugがマウス組織で広範囲に発現することを示した(図2A)。しかし、末梢血液白血球ではSlugが発現されていない(図2A)。Slugが正常なマウスの末梢血液中では発現されないことを認識したうえで、白血病を有する遺伝子導入BCR−ABLマウスの末梢血液においてBCR−ABLの発現の作用がSlug mRNAのレベルにおよぼす影響を調べた(キャステラーノス氏等著、血液、第90巻、第2168頁、1997年「Castellanos et al., Blood 90,2168(1997)」)。ノーザンフィルターとのBCR−ABLを発現したマウスの親細胞が試験された(図2B)。βアクチンのプローブとの細胞融合により完全性と電荷の観点からRNAの各バンドが評価された(図2B、下部)。Ba/F3細胞で観察した結果によれば、BCR−ABLを保有する初期細胞はSlugの発現の増加を生成した。その後、PH1陽性ヒト白血病患者の初期細胞にもSlugの発現が存在していたかどうかを調べた。Slug遺伝子の発現生成物が正常なヒト検体の細胞に存在していなかったことが示された(図3、バンド1)。これに反し、フィラデルフィア染色体を保有する患者の細胞ではSlug発現が認められた(図3、バンド6−8)。t(9;22)陽性の細胞系K562、Nalm−1、およびTOM−1はPh1陽性LLA患者およびLMC患者から入手した。従って、これらの細胞系はSlugの発現の有無に関しヒト非白血病細胞系と比較された。mRNAにSlug発現があるかどうか逆転写PCRで調べたところ、Slugが全Ph1陽性細胞系で観察されることが明らかになった(図3、バンド9−11)。Slugが形質転換BCR−ABLの発現後の細胞に現われるという発見は、Slug遺伝子がBCR−ABL陽性白血病患者から単離された細胞系および骨髄細胞に認められるという発見とともに、Slug遺伝子の存在はBCR−ABL陽性白血病の浸潤の1つの要素になりうることを示唆している。
他の染色体異常を保有する白血病患者の細胞系に存在するSlug
Slugは中胚葉の形成に関する蛋白質のSnailファミリーの1つであり(Nieto氏等著、1994、前述の著書)、その発現はある程度制御されない(図2)。Slug遺伝子の発現はその後他の間葉性腫瘍で分析された。図3はt(9;22)のない更に4種の白血病細胞系即ち系統B初期697(図3、バンド5)、骨髄U937(図3、バンド3)、KOPTI−K1(図2、バンド4)のRNAの例を示している。図3が示したように、全ての白血病細胞系において、Slug遺伝子の発現が認められている。この意味において、最近の発見は、Slugがt(17;19)白血病細胞において発現すること(イヌカイ氏等著、分子細胞、第4巻、第343頁乃至第352頁、1999年「Inukai et al., Molecular Cell 4,343−352(1999)」)、およびPAX−FKHR転座を発現する横紋筋肉種細胞(カーン氏等著、プロセス ナショナル アカデミック サイエンス 米国、第96巻、第13264頁乃至第13269頁、1999年「Khan等 et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,13264−13269(1999)」)において発現することが明らかになっている。そこでこれら結果を組み合わせると、他の遺伝子変性の支持に基づいて形質転換した間葉性腫瘍(白血病および肉腫双方)においてはSlug遺伝子の発現が少なくないことを示しており、Slug遺伝子が、BCR−ABL陽性白血病だけではなく、おそらく他の間葉性癌においても、癌生態の1つの構成要素となることを示唆している。
Slugの抗アポプトーシス活性
癌生態におけるSlugの機能をさらに理解するため、BCR−ABL融合蛋白質をコード化するベクターを形質導入したBa/F3細胞系も使用した(サンチェス−ガルシアおよびグラッツ氏等著、1995年、前述の著書)。Ba/F3におけるBCR−ABLの発現は細胞質分裂の非依存増殖を与え、アポプトーシスを阻害する(デレイおよびバルチモアー氏著、1988年、前述の著書及びサンチェス−ガルシアおよびグルッツ氏著、1995年、前述の著書)。発明者グループはSlugが腫瘍性蛋白質の非存在下においてこれらの機能を行うかどうか疑問をもった。それ故え、Ba/F3細胞がSlugを発現したベクターで形質変換(図4A)され、そして細胞生存能力がIL−3の非存在下で分析された。図4が示すように、BCR−ABL癌遺伝子を発現したBa/F3細胞はごくわずかな生存能力の喪失を示しただけであり、Slugを発現したこれらの細胞は成長培地からのIL−3の除去後にアポプトーシスを受けることがなかった(図4B、4C)。この観察は先の研究結果(イヌカイ氏等著、1999年、前述の著書)を裏付けることになり、Slugが試験細胞システム中のアポプトーシスを阻害することを示している。したがって、Ph陽性BCR−ABL細胞による規制解除が、t(9;22)細胞の長期生存の特性に寄与しているものと考えられている。Slug遺伝子は成長因子をもたないマウスBA/F3細胞の生存促進においてBCR−ABLに代わることができ、Ph陽性白血病の細胞死特性に対する耐抵抗性およびt(9;22)の陽性白血病の発育に向けての主要段階におそらく関与していることを示唆している。
BCR−ABL白血病細胞の播殖能力に影響を及ぼすBCR−ABL癌遺伝子の腫瘍化能力を高めるSlug遺伝子の抑制
これまでの研究結果はBCR−ABLの発現がSlug遺伝子の経路を誘発するアポプトーシスからその細胞を保護することを示している。この場合において、Slug発現レベルの形質変性でBCR−ABLを発現するBa/F3細胞の成長および腫瘍化中にある変異が生じると考えられている。BCR−ABLを発現するBa/F3細胞はアンチセンスマウスSlug(BOS−アンチSlug)のcDNAを発現するベクターにより増殖され、クローンを生成した(図5A)。RNAが抽出され、SlugのmRNAのレベルが非増殖対照細胞のmRNAのレベルと比較された(図5B)。BOS−アンチSlugで増殖された細胞ではアンチセンスSlugが検出され、BOS−アンチSlugにより増殖させたBCR−ABLを発現するBA/F3細胞ではBCR−ABL量のレベルに影響がなかった(図5A)。他方、アンチセンスSlugにより増殖された細胞ではSlug mRNAが検出されず、Ba/F3−p190およびBa/F3−p210細胞がその中に検出された(図5B)。Slug発現の抑制の結果はBa/F3細胞中のBCR−ABL癌遺伝子により与えられた分化プログラムと裸マウスへの注入から得られた異なる細胞系の生体内腫瘍化能力とを調査することにより評価された。
【0047】
Slug発現が、BCR−ABL癌遺伝子より誘発される分化プログラムにおける重要構成要素そのものであるかどうかを決定するため、発明者グループはSlugの発現が特別的に抑制されているものに増殖されたBCR−ABLを発現する造血前駆細胞を識別する能力を調べた。BCR−ABLを発現するBa/F3細胞中の細胞分化のSlug発現の抑制の影響は異なる細胞系で特別な造血マーカーの発現を分析することにより評価された。図5Cが示すように、BCR−ABL−p190あるいはBCR−ABL−p210癌遺伝子を発現するBa/F3初期細胞はそれぞれ骨髄マーカーGr−1あるいはリンパマーカーB220の存在により特定される通り、骨髄細胞およびリンパ細胞で特別的に分化される。類推により、Slugの発現が特異的に抑制したBCR−ABLを発現したBa/F3細胞の分化は影響されなかった(図5C)。これら結果は分化におけるBCR−ABL癌遺伝子の作用Slugの発現に依存しないことを示している。
【0048】
その後、発明者グループは異なる細胞系の生体内腫瘍化能力を調べた。BCR−ABL癌遺伝子を発現するBa/F3初期細胞は裸マウスで腫瘍として生成した(サンチェス−ガルシア及びグッツ氏著、1995年、前述の著書)。類推により、腫瘍形成はBCR−ABLを発現した細胞系の注入からちょうど5日目に観察された。対照細胞とは対照的に、BCR−ABLおよびアンチセンスSlugを発現したBa/F3細胞は非常に腫瘍化能力が低かった(図6)。腫瘍は細胞注入から20日目に切断して肉眼検査を行った。平均的に見て、BCR−ABLを発現したBa/F3細胞を注入されたマウスの腫瘍量はBCR−ABLおよびアンチセンスSlugを発現した細胞注入マウスの腫瘍量の2倍であった(図6)。生体内浸潤腫瘍の形成中に、腫瘍細胞は臓器境界線の正常状態から逸脱し、他の組織に拡散していた。そのため、Slugの存在下または非存在下で発生されたBCR−ABL腫瘍の組織学検査が実施された。Slugの発現が抑制されていたBCR−ABL発現のBa/F3細胞の結果として発生する腫瘍において、細胞は集積していたものの、増殖は許容領域に系統的に限定されていた(図7)。それとは反対に、Slugの変性発現があったBCR−ABLを発現したBa/F3細胞の結果として発生した腫瘍の場合に、先に規定していた許容領域を超えており、従って、腫瘍が拡大していた。図7にあるように、Slugは明らかにBCR−ABL細胞に転移行動をもたらし、個体細胞として腫瘍細胞の移動が可能である。同様の結果が腫瘍の複数切片およびBCR−ABL癌遺伝子の2つの型(p190とp210)で認められた。したがって、上記結果は、Slug遺伝子が本来の位置から浸潤への腫瘍の転換において重要な役割をもち、個体細胞として腫瘍細胞の移動を可能にしていることを示している。
III. 考察
BCR−ABL細胞の浸潤能力を調節するSlug及び間葉性腫瘍の病原における重要性
白血病誘発において腫瘍細胞は分化(differentiation)が阻止される原始親細胞であるが(コバレダ氏等著、2000年、前述の著書及びサンチェス−ガルシア氏著、2000年、前述の著書)、しかし分化の抑制は標的細胞の生存および増殖が特定微環境に限定されているため、形質転換に十分ではない。そのため、形質転換は、分化を阻害する突然変異体に加えて細胞をその正常環境外で発育させることができる遺伝子変性に依存させねばならない。この仮説を実証するため、造血細胞においてt(9;22)(q34;q11)により融合されたBCR−ABL遺伝子の下流標的遺伝子を特定することを試みた。腫瘍形成特性をもたらす下流遺伝子生成物の特定は白血病誘発作用のメカニズムを完全に理解するための必要条件である。現在の研究において、Slug遺伝子はキメラBCR−ABL融合遺伝子により誘発された白血病発生プロセスに関わる下流標的遺伝子として特定された。本発明者グループの試験は、SlugプロモーターがBCR−ABLの直接標的であるかどうか、または当該遺伝子がキメラ蛋白質により変調に反応する一定の生化学カスケードにおける1要素として関わっている可能性があるかどうかを明確にするものではない。Slugの発現が形質転換BCR−ABLの発現後の細胞に認められること、ならびにBCR−ABL陽性白血病患者から単離された細胞系および骨髄細胞にSlugが認められるという2つの発見は、Slugの存在がBCR−ABLに関し白血病陽性という悪性特性の重要な1要素であることを示している。これはSlugが分化阻害に寄与している可能性および本疾患の播種性の原因になっている可能性を示唆するものである。
【0049】
発明者グループの他の発見はBCR−ABL癌遺伝子に依存する細胞形質変性の関係においてSlugの生物学的機能を特定することにある。ここで示すデータはBCR−ABL癌遺伝子の発現により活性化されたSlugがBa/F3細胞におけるアポプトーシス(apoptosis)の阻害をもたらすことを明らかにしている。更に、BCR−ABLを発現する細胞の成長および腫瘍化の変異があると、Slugの発現のレベルが異なってくる。Slug発現が前もって排除されたBCR−ABL細胞の結果として発生した生体内腫瘍において、細胞は集積していたが、しかし増殖は許容環境に系統的に制限されていた。それに反して、Slug発現が前もって変性されてBCR−ABL細胞の結果として発生した腫瘍においては、許容環境の境界線は広がりを見せ、その結果として、腫瘍は拡大し、正常境界線を逸脱して他の組織に浸潤していた。このように、Slugは明らかに腫瘍の本来の位置から浸潤への転換においてBCR−ABL細胞に転移行動をもたらし、個体細胞として腫瘍細胞の移動を可能にしている。
【0050】
発明者グループの発見は、融合蛋白質BCR−ABLを保有する親細胞が構造的にSlugを発現し、必要となる外部シグナルに関係なく、細胞を正常環境外に増殖させることができる腫瘍標的細胞の異常生存と、欠損標的細胞を異なる環境に転移する移動とを促進させるモデルと一致している(図8)。しかし、Slug発現の増加はBCR−ABL癌遺伝子による形質転換に関わる唯一の結果ではない。その理由は次の通りである。即ち構成性Slugの発現が成長受容体を通して誘発された生存シグナルに代わり、細胞を正常微環境外で成長させることができ、本研究の結果は分化に対するBCR−ABL癌遺伝子の作用がSlugの発現に依存していないことを示している。そのため、BCR−ABL形質転換シグナルを再構成するためにはSlugに加えて他の要素が必要である。
【0051】
発明者グループはBCR−ABL癌遺伝子がSlug発現をそれ自体で誘発するに十分であること、および細胞浸潤におけるこれら癌遺伝子の生物学的機能にSlugが必要であることを示した。Slugは中胚葉の形成に関与する蛋白質であり(Nieto氏等、1994年、前述の著書及びサバグナー氏等著、細胞生物学ジャーナル、第137巻、第1403頁乃至1491頁(1997年))、その発現はある完全に制御させることはできず(図2)、それはBCR−ABLの形質転換に特異的に関与しているというよりは、癌生態のなかでもっと一般的な役割をもつと思われる。そのため、Slugの発現は他の白血病で検出されている融合蛋白質および肉腫に関連する蛋白質のための細胞浸潤の作用機能としての役割を果たしている。事実、Slug発現は、他の遺伝子変性の支持に基づき形質転換された間葉性腫瘍(白血病および肉腫)においてまれではなく(イヌカイ氏等著、1999年、前述の著書およびカーン氏等著、1999年、前述の著書)、このことはSlugがBCR−ABL陽性白血病だけではなく、おそらく他の間葉性癌でも腫瘍浸潤の1成分であることを示唆している。したがって、Slugは、白血病および肉腫のいずれにおいても腫瘍浸潤のメカニズムと思われる。本研究の結果において、BCR−ABLの浸潤能力の原因となる作用機能が確立され、Slugが間葉性腫瘍用の潜在的に広範な腫瘍浸潤メカニズムを有することを示唆する指摘が報告されている。したがって、Slugそのものはヒト癌治療において、治療(悪性マーカーとして考慮可能)および浸潤能力の治療的調節の魅力的な目標を構成することができる。
同一遺伝子制御を有する転移および腫瘍化
自発成長状態を有する細胞における腫瘍性標的細胞の白血病転換(コバレダ氏著、2000年、前述の著書およびサンチエス−ガルシア氏著、2000年、前述の著書)は、一定の特別な遺伝子が増殖/分化の制御を分離しかつ浸潤および細胞拡散中に成長因子の条件を取り替えることができる細胞内シグナルを生成させるために、活性化されねばならないことを意味する。浸潤性腫瘍の発育中に、腫瘍細胞は臓器境界線の正常状態を逸脱し、そして他の組織に浸潤する。正常位置の腫瘍から浸潤性腫瘍に転換中においてのみ、腫瘍細胞は基底上皮膜に浸潤し、そして基礎間質性肉腫に侵入し、肉腫性細胞と相互作用する。転移性腫瘍細胞の行動の定義は組織区画境界線を交差する傾向がありそして複数種の細胞と混合する傾向がある。発明者グループは、BCR−ABL細胞が転移性腫瘍細胞ような動きがあることを示している。分化を阻害することはキメラ融合蛋白質(サンチェス−ガルシア氏著、評論年鑑遺伝学、第31巻、第429頁乃至第453頁、1997年「Sanchez−Garcia、Annu.Rev.Genetics,31,429−453(1997)」)この場合において、BCR−ABLの特性の変更の結果であると想定されている。癌遺伝子以外の遺伝子が腫瘍形成と関連性のある転移を生み出す可能性があるのではないかという疑いがもたれている。しかし、その結果はBCR−ABL癌遺伝子の適切なレセプター細胞への形質転換が腫瘍形成および浸潤の完全な表現型を誘発することを示している。これら発見は融合蛋白質が標的細胞と、腫瘍細胞を浸潤細胞に形質転換させるために必要である浸潤の特別な誘導物質とに変質分化プログラムを与えたことを示している。発見者グループは浸潤のエフェクター遺伝子が新しい腫瘍形成メカニズムの作用を示す同じ融合遺伝子によって腫瘍化をもたらす遺伝子とは無関係に調節可能であることも示している。上記データを合わせた結果、形質転換は単一癌遺伝子の生成/活性化の結果として生成できるという見解が裏打ちされた(サンチェス−ガルシア氏著、1997年、前述の著書)。今後の研究調査の興味深い課題としては、Slugの発現を調節する因子の特定、およびその発現を誘発する他の腫瘍性蛋白質関与の可能性の特定がある。
浸潤および腫瘍発育に関わりをもつSlug
Slugは無脊椎動物および脊椎動物における中胚葉の形成における進化の視点から保持的役割を有する「Zinc フィンガー(Zinc fingers)」を有する転写因子のSnailファミリーのメンバーである(ニエト氏等著、1994年、前述の著書)。ニワトリにおいてはSlugは間葉性細胞に転換中に外胚葉性上皮細胞により発現される。Slugに対して向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理されたニワトリ胚は、上皮細胞から間葉細胞への転換における区画上の細胞移行異常に関連した不適切な中胚葉形成を示す(ニエト氏等著、1994年、前述の著書)。したがって、Slugは、中胚葉形成および神経冠から細胞の移行における上皮から間葉への転換時の細胞移動を誘発する(フーズ氏著、遺伝子および発育、第8巻、第2270頁乃至2281頁、1994年「Fuse et al., Genes&Development,8号,2270−2281(1994)」)。しかし、マウスでは、上皮―間葉転換の活性化はSnail調節下にあり(カノ氏等著、自然細胞生物学、第2巻、第76頁乃至第83頁、2000年「Cano et al., Nature Cell Biology,2,76−83(2000)」)、Snailは上皮細胞の形状において原中胚葉からの移行を可能とする。その結果、Slugを有しないマウスにおいて、正常な発育が認められる(ジアン氏等著、発育生物学、第18巻、第277頁乃至第285頁、1998年「Jianget al., Development Biology,18,277−285(1998)」)。更に、遺伝子Snailは充実性上皮腫瘍における浸潤性表現型の獲得に関連性をもつEMTを活性化し(バトル氏等著、自然細胞生物学、第2巻、第84頁乃至第89頁、2000年「Batlle et al., Nature Cell Biology,2,84−89(2000)」およびカノ氏等著、2000年、前述の著書)、これが転移プロセスの第1段階の結果に寄与することが明らかになっている。したがって、EMT誘発はマウスにおいてSnail遺伝子に特異的関連性をもつ機能と思われる(カノ氏等著、2000年、前述の著書)。
【0052】
ここで示したデータはSlugがEMTを要しない間葉性腫瘍の増殖中に浸潤能力の重要な調節遺伝子であることを示している。この見解は移行する能力の親間葉細胞の一部分の獲得におけるSlugの役割にまで幅を広げることができる。この説を支持するために、本発明者グループの実験は生体内では白血病を有するBCR−ABL遺伝子導入マウスの末梢血液ではSlugが発現されず、間葉細胞における未分化、多能性および移動性表現型を特定することを示している。そこで、Slugの存在は原造血細胞の適切な拡大と生存において正常発育の一定の段階で必要であると考えられている(図8)。同時に、その結果は発育初期段階の調節遺伝子と白血病形成との間の分子的関連性を備え、特に白血病と一般に間葉性腫瘍における浸潤性行動をもたらす分子変性を理解するうえでの手がかりを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】BCR−ABLによるSlug遺伝子の正の調節を示している。
【0054】
Ba/F3(バンド1)、Ba/F3+p190(バンド2)、およびBa/F3+p210(バンド3)細胞から単離した全RNAのノーザンブロット分析の結果を示している。対照実験は空ベクターにより形質変換させたBa/F3細胞にて行った。ナイロン膜にはSlug cDNAの断片を細胞融合し、精製して、そしてβアクチンプローブを再び細胞融合した。
【図1B】BCR−ABLによるSlug遺伝子の正の調節を示している。
【0055】
テトラサイクリンの非存在下で発育したBa/F3+Combi p190細胞(バンド1)、テトラサイクリン存在下で発現したBa/F3+p190細胞(バンド2)およびBa/F3対照細胞(バンド3)からそれぞれ単離した全RNAのノーザンブロット分析の結果を示している。ブロットにSlug cDNA断片、Bc1−2、およびmycを細胞融合し、精製して、βアクチンプローブを再び細胞融合させた。
【図2A】正常マウスの組織におけるSlug mRNAの発現を示す。
【0056】
Slug cDNAプローブを細胞融合し、精製して、βアクチンプローブを再び細胞融合させた異なるマウス組織(肺、末梢血液(PB)、心臓、精巣、脳、小腸、腎臓、筋肉、肝臓、脾臓、胸腺、骨髄(BM))から単離した全RNAのノーザンブロット分析の結果を示す。28Sと18 S RNAの移動度が示されている(末梢血液(PB)、骨髄(BM))。
【図2B】正常マウスの組織におけるSlug mRNAの発現を示す。
【0057】
BCR−ABLP1 9 0 およびBCR−ABLP2 1 0 遺伝子導入マウスのSlug mRNAの発現を示すものであり、cDNAプローブを細胞融合し、精製して、βアクチンプローブを再び細胞融合した対照マウス(バンド1)、BCR−ABLP1 9 0 遺伝子導入マウス(バンド2−4)、およびBCR−ABLP2 1 0 遺伝子導入マウス(バンド5−6)の末梢血から単離した全RNAのノーザンブロット分析の結果をまとめたものである。28Sと18 S RNAの移動度が示されている
【図3】内在性Slugがヒト浸潤細胞系に存在することを示している。各RNA分子を逆転写法(RT)で転写し、PCR生成物をナイロン膜に写しとり、遺伝子ごとに末端に特別に標識を付けた内部オリゴヌクレオチドプローブとの細胞融合により分析した。RNAは非白血病造血細胞系707(バンド1)、骨髄性白血病細胞系U937(バンド2)、AlL−SIL白血病T細胞系(バンド3)、KOPTI−K1(バンド4)、前B白血病697細胞系(バンド5)、t(9;22)を有する患者の検体(バンド6−8)、t(9;22)K562陽性ヒト白血病細胞系(バンド9)、TOM−1陽性ヒト白血病細胞系(バンド10)、およびNalm−1陽性ヒト白血病細胞系(バンド11)に対してて評価された。
【図4A】成長因子の非存在下におけるBa/F3細胞の生存についてのSlug遺伝子の影響を示している。
【0058】
マウスからのSlug cDNAを増殖させたBa/F3細胞(バンド1)、およびBa/F3対照細胞(バンド2)から単離した全RNAのノーザンブロット分析の結果を示している。ナイロン膜にはSlug cDNAの断片を細胞融合し、精製して、βアクチンプローブを再び細胞融合させた。
【図4B】成長因子の非存在下におけるBa/F3細胞の生存についてのSlug遺伝子の影響を示している。
【0059】
IL−3の非存在下でSlug蛋白質を発現したBa/F3細胞の生存を示すグラフ図である。IL−3を有する補充培地で指数関数的に成長した細胞を0日目に5×105 細胞/mlに調整し、その後IL−3の除去後に培養を行った。BCR−ABLを増殖したBa/F3とIL−3の非存在下でSlugを増殖したBa/F3細胞について発育細胞の数が示されている。
【図4C】成長因子の非存在下におけるBa/F3細胞の生存についてのSlug遺伝子の影響を示している。
【0060】
細胞死がIL−3の除去後、インターヌクレオソーム分解によりDNAラダーの出現を伴ったことを示している。低分子量DNAをIL−3の除去から24時間後にBa/F3+Slug細胞(バンド1)、Ba/F3+p210細胞(バンド2)、Ba/F3+p190細胞(バンド3)、および対照Ba/F3細胞(バンド4)から単離した。そのDNAは末端に標識を付け、2%アガロースゲル電気泳動にかけて分解し、オートラジオグラフ法で発育させた。
【図5A】アンチセンスcDNAを耐Slugを有するBCR−ABLを発現するBa/F3細胞のSlug mRNAの抑制を示している。
【0061】
センス配列のないSlug遺伝子(マウスのSlug遺伝子)を発現するベクターを増殖したBa/F3+p210細胞(バンド1)およびBa/F3+p190細胞(バンド2)から全RNAの単離の結果を示している。細胞RNAにはマウスSlugのcDNAプローブを細胞融合した。フィルターが変性され、そしてABLおよびβ−アクチンで再び細胞融合された。
【図5B】アンチセンスcDNAを耐Slugを有するBCR−ABLを発現するBa/F3細胞のSlug mRNAの抑制を示している。
【0062】
増殖BCR−ABLを発現したBa/F3(バンド1−Ba/F3+p210+ASlug、バンド3−Ba/F3+p190+ASlug)および非増殖Ba/F3(バンド2−Ba/F3+p210、バンド4−Ba/F3+p190)のノーザンフィルターの細胞融合の結果を示している。プローブとしてマウスのSlug cDNAをコード化する配列の初期49塩基をもつアンチセンスSlugオリゴヌクレオチドが使用された。
【図5C】アンチセンスcDNAを耐Slugを有するBCR−ABLを発現するBa/F3細胞のSlug mRNAの抑制を示している。
【0063】
Ba/F3細胞においてBCR−ABLP1 9 0 およびBCR−ABLP2 1 0 癌遺伝子によりそれぞれが誘発されたB細胞に特異性をもつリンパ分化および骨髄分化がSlugの抑制により影響されないことを示している。図5Cにおいて、Ba/F3+p190細胞(パネル左上)、Ba/F3+p190+アンチセンスSlug(パネル右上)、Ba/F3+p210(パネル左下)、およびBa/F3+p210+アンチセンスSlug(パネル右下)の発現像を示している。細胞はB220単クローン抗体(特別B細胞マーカー)およびGr−1(特別骨髄マーカー)で染色し、流動血球計算法により分析された。
【図6】BCR−ABLを発現するBa/F3細胞の腫瘍化におけるSlugの条件を示している。BCR−ABL癌遺伝子を発現した一次Ba/F3は裸マウス(REF)において腫瘍として成長した。類推により、腫瘍の形成はBCR−ABLを発現した細胞系の注入後5日目にすでに観察されたことが明らかになった。これらの対照検体に反し、BCR−ABLおよびアンチセンスSlugを発現したBa/F3細胞は腫瘍化が非常に低い。腫瘍は細胞注入後20日目にスライスして肉眼分析が行われた。平均的に、BCR−ABLを発現したBa/F3細胞を注入したマウスに見出された腫瘍の重量はBCR−ABLおよびアンチセンスSlug構造を発現した細胞により誘発された腫瘍の重量の2倍であった。
【図7A】BCR−ABL細胞による腫瘍の発育に対するSlugの影響を示したものである。
【0064】
裸マウスにおけるBa/F3+p190細胞により誘発された腫瘍の肉眼検査の結果を示している。
【図7B】BCR−ABL細胞による腫瘍の発育に対するSlugの影響を示したものである。
【0065】
裸マウスに誘発された腫瘍の組織学的検査を示している。Ba/F3+p190細胞注入後に発育したマウス腫瘍の切片にヘマトキシリン−エオジンで染色させた。Slugを発現するBa/F3+p190細胞は臓器境界線の正常状態から逸脱し、個体細胞として増殖しており異なる部位に転移を形成していた。腫瘍の複数の切片に同様の結果が認められた。図7Bの画像は40倍である。
【図7C】BCR−ABL細胞による腫瘍の発育に対するSlugの影響を示したものである。
【0066】
裸マウスに誘発された腫瘍の組織学的検査を示している。Slug発現が特別に抑制されたBa/F3+p190細胞注入後に発育したマウス腫瘍の切片にヘマトキシリン−エオジンで染色させた。Slugを発現するBa/F3+p190細胞は臓器境界線の正常状態から逸脱し、個体細胞として増殖しており異なる部位に転移を形成していた。腫瘍の複数の切片に同様の結果が認められた。図7Cの画像は40倍である。
【図8A】癌の発育におけるSlugの役割をモデル化した図である。
【0067】
造血システムにおいて、自己再生能力を有する正常な非結合原種細胞が成熟細胞から分化することを示している。この形質転換中に、Slugの発現は低く調整される。これらの正常な非結合原種細胞は生成された成熟細胞の数を調整しかつ原始細胞の自己再生を制限する培地のシグナルに応答することができる。生理学的状況においてこれらの正常な非結合の原種細胞が移動した場合、Slug遺伝子がこれら細胞の生存を促進し、その細胞の機能を行うことができる。これが特定の期間に行われない場合に必要な外部シグナルを拒絶するので、アポプトーシスにいたる。
【図8B】癌の発育におけるSlugの役割をモデル化した図である。
【0068】
白血病誘発のケースを示したものである。このケースにおいて、染色体異常のある標的細胞は非結合原種細胞である(コラレダ氏等著、血液、第95巻、第1007頁乃至第1113頁、2000年およびサンチェス−ガルシア氏等著、現在のゲノム、第1巻、第71頁乃至第80頁、2000年「Colaleda et al., Blood,95,1007−1113(2000)and Sanchez−Garcia,Current Genomics,1,71−80(2000)」)。この結果として、標的細胞の分化は阻止されるが、この分化の抑制は標的細胞の生存および増殖が特別微環境に制限されるためで、形質転換に十分ではない。そのため、分化を阻止する突然変異に加えて、正常環境外での細胞の成長を可能にする他の遺伝子を変化させねばならない。間葉細胞(白血病や充実性腫瘍)に関連する融合癌遺伝子は分化を阻止し(必要となる外部シグナルに関係なく)、欠損標的細胞の生存および他の環境への移動を促進するSlugのような標的遺伝子の活性化能力を有している。これらデータは形質転換が単一癌遺伝子の生成/活性化の結果として生ずるとする考えを裏打ちしている。
Claims (21)
- Slug遺伝子の異常発現を基礎にした試験検体にお
ける癌細胞の存在を検出するための方法であって、
1)癌細胞を保有する疑いのある脊椎動物の生物検体を入手することにより試験検体を得ること。
2)該試験検体の細胞におけるSlug遺伝子の発現を評価すること。
3)試験検体の細胞におけるSlug遺伝子の発現を対照検体の細胞におけるSlug遺伝子の発現と比較すること。
からなり、対照検体の細胞におけるSlug遺伝子の発現と比較した際に、試験検体の細胞におけるSlug遺伝子の異常発現の存在が試験検体における癌細胞の存在を示すことを特徴とする癌細胞の存在を検出する方法。 - 癌細胞が間葉性腫瘍細胞であり、そして白血病と肉腫とからなる請求項1に記載の方法。
- 間葉性腫瘍細胞が白血病と肉腫とからなる請求項2に記載の方法。
- 癌細胞を有する疑いのある脊椎動物がヒトである請求項1に記載の方法。
- 対照検体が(i)癌細胞を有していない脊椎動物の生物検体、および(ii)癌細胞を保有している脊椎動物の生物検体から選択される請求項1に記載の方法。
- Slug遺伝子の発現の評価が生成されたSlug遺伝子のコピーの数を測定することにより行われる請求項1に記載の方法。
- 生成されたSlug遺伝子のコピーの数の測定が二重染色体外断片を視覚化すること、均質統合染色領域を視覚化すること、あるいは細胞融合技術の手段によって行なう請求項6に記載の方法。
- Slug遺伝子の発現の評価がSlug遺伝子(Slug mRNA)に相当するmRNAのレベルを測定することにより行う請求項1に記載の方法。
- Slug mRNAのレベルの測定がノーザンブロット分析、S1ヌクレアーゼでのマッピング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせた逆転写(RT−PCR)、リガーゼ連鎖反応と組み合わせた逆転写(RT−LCR)、細胞融合、あるいはマイクロアレイによって行う請求項8に記載の方法。
- Slug遺伝子の発現生成物(Slug蛋白質)の発現に基づいて試験検体における癌細胞の存在を検出する方法であって、
1)癌細胞を有する疑いのある脊椎動物の生物検体を採取することにより試験検体を取得すること。
2)該試験検体の細胞におけるSlug蛋白質の発現を評価すること。
3)試験検体の細胞におけるSlug蛋白質の発現を対照検体の細胞におけるSlug蛋白質の発現と比較すること。
からなり、対照検体の細胞におけるSlug蛋白質の発現と比較した際に、試験検体の細胞におけるSlug蛋白質の異常発現の存在が試験検体における癌細胞の存在を示すことを特徴とする癌細胞の存在を検出する方法。 - 癌細胞が間葉性腫瘍細胞であり、そして白血病と肉腫とからなっている請求項10に記載の方法。
- 間葉性腫瘍細胞が白血病と肉腫とからなる請求項11に記載の方法。
- 癌細胞を有する疑いのある脊椎動物がヒトである請求項10に記載の方法。
- 対照検体が(i)癌細胞を保有していない脊椎動物の生物検体、および(ii)癌細胞を保有している脊椎動物の生物検体から選択される請求項10に記載の方法。
- Slug遺伝子の発現の評価が生成されたSlug遺伝子のコピーの数を測定することにより行う請求項10に記載の方法。
- Slug蛋白質またはその蛋白質の断片を認識する治療上有効な量の抗体、またはSlug作用をDNAレベル、RNAレベル、もしくは蛋白質レベル(Slug)で阻害する治療上有効な量の化合物と、製薬上許容できる任意の添加剤とからなる癌を治療するための医薬組成物。
- 抗体がヒトSlug蛋白質を認識するかまたはその蛋白質の断片を認識する請求項16に記載の医療組成物。
- Slug蛋白質またはその蛋白質の断片を認識する抗体が単クローン抗体あるいは多クローン抗体である請求項16に記載の医療組成物。
- Slug作用をDNAレベル、RNAレベル、もしくは蛋白質レベル(Slug)で阻害する化合物がSlug遺伝子の発現をじゃまするか、またはSlug mRNAを非活性化するか、あるいはSlug蛋白質を非活性化するか、もしくは負の優性遺伝子を有するその蛋白質の作用と競合する化合物または化合物の混合物である請求項16に記載の医療組成物。
- Slug遺伝子の発現調節に基づく抗腫瘍物質を生体内でスクリーニングする方法であって、
(i)一定の条件下でSlug遺伝子を発現する細胞システムを発生させ、
(ii)該細胞システムを試験対象化合物と接触させ、
(iii)Slug遺伝子の発現を評価し、
Slug遺伝子が発現されない場合、試験化合物が抗腫瘍物質の可能性があることを特徴とする抗腫瘍物質の生体内スクリーニング方法。 - 癌を治療するための薬剤を製造するためにSlug蛋白質またはその蛋白質の断片を認識する抗体、あるいはSlug作用をDNAレベル、RNAレベル、もしくは蛋白質レベル(Slug)で阻害する化合物を使用する方法。
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