JP2004518776A - テトラパルテートプロドラッグ - Google Patents
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Abstract
テトラパルテートプロドラッグを提供する式1の化合物[式中、Llは、二官能連結基であり、Dは、脱離基である基、または細胞中に送達される化合物の残基であり、Zは、[D]yに共有結合しており、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々独立して、O、S、またはNR12であり、R11は、一価または二価のポリマー残基であり、R1、R4、R9、R10、およびR12は、独立して、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキルおよび置換C1−6ヘテロアルキルからなる群から選択され、R2、R3、R5、およびR6は、独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル, C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシル−、C1−6カルボキシアルキルおよびCl−6アルキルカルボニルからなる群から選択され、Arは、式(I)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して0または1であり、(p)は、0または正の整数であり、(y)は、1または2である]を提供し、また上記の新規テトラパルテートプロドラッグを調製する方法および使用方法も提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラパルテート(tetrapartate)プロドラッグに関する。本発明は、特に、例えば、抗腫瘍剤などとして、効力を高めるのに効果的な取り込み促進成分に結合した活性剤を送達するテトラパルテートプロドラッグを提供するポリマーコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、生物学的に有効な物質を哺乳動物に投与するいくつかの方法が提案されてきた。例えば、医薬剤などをはじめとする多くの生物学的に有効な物質は、水溶性塩として利用することが可能であり、比較的容易に医薬製剤中に含有させることが可能である。所望の生物学的に有効な物質が水溶液に不溶である場合か、或いはin vivoで急速に分解される場合に問題が生じる。例えば、アルカロイドは、特に溶液に難溶である場合が多い。
【0003】
生物学的に有効な物質を可溶化する一つの方法は、可溶性プロドラッグの一部としてそれらを含有させることである。従って、プロドラッグとしては生物活性物質または親化合物の化学的誘導体が挙げられ、投与すると最終的にin vivoで親化合物を放出する。プロドラッグによって、当業者はin vivoで薬剤作用の開始および/または持続の改変が可能となり、体内での薬物の輸送、分布または溶解度を改変することが可能である。さらに、プロドラッグ製剤によって、毒性を低減させ、および/または医薬製剤を投与する際に直面する困難を克服することができる場合が多い。
【0004】
プロドラッグの典型的な例には、有機リン酸エステル、或いはアルコールまたはチオアルコールのエステルが挙げられる。「Remington´s Pharmaceutical Sciences」, 16th Ed., A. Osol, Ed. (1980) を参照のこと (その開示内容は参照により本明細書に組み入れられている) 。
【0005】
プロドラッグは、定義上、親化合物または活性化合物の一形態である。通常、プロドラッグの加水分解速度(これに限定されない)による活性薬物の放出速度は、いくつかの因子の影響、特に、活性薬物を修飾基に結び付ける結合のタイプの影響を受ける。十分な量の親化合物が放出される前に、腎臓系または網状内皮系等などを介して排出されるプロドラッグを調製しないように注意しなければならない。プロドラッグ系の一部としてポリマーを組み込んで、薬物の循環半減期を拡大することが可能である。しかしながら、例えば、アルカロイドなどのいくつかの場合において、約10,000ダルトン未満の1種または2種のポリマーだけをコンジュゲートさせると、特に、幾分加水分解耐性の結合を用いた場合、得られたコンジュゲートは、in vivoですぐに排出されることが測定されている。実際、上記のコンジュゲートは、体内から非常に急速に排出されるので、加水分解されやすいエステル結合を用いたとしても、十分な親分子がin vivoで再生されない。このことは、加水分解耐性の結合を用いる場合でさえ、タンパク質、酵素などの成分とは関係がない場合が多い。上記の場合、それぞれ約2〜5 kDaの分子量を有する多種のポリマー鎖を用いることで、分子量および循環半減期がさらに高められる。
【0006】
これらの問題に取り組んでいる一例は、例えば、共有に係る特許出願第09/183,557号(1998年10月30日出願)および08/992,435号(1997年12月17日出願)に記載されている。これらは、様々な生物学的に有効な物質のポリマーコンジュゲートを含有する二重プロドラッグ、つまりトリパルテート(tripartate)、および上記のコンジュゲートを形成する方法を教示する。投与した後適切な時間内に、例えば1,4−アリールまたは1,6−アリール(例えばベンジル)脱離反応によって、十分な量の「第二の」、より一層反応性の高いプロドラッグ化合物を生成する速度にてin vivoで加水分解するように二重プロドラッグの結合を選択することで、多種の低分子量の薬物、薬剤などの薬物動態の制御の改善がもたらされる。しかしながら、さらなる可能性、特に、合理的に設計したプロドラッグコンジュゲートによる、対象の組織または細胞への診断薬剤および/または治療薬剤の選択的ターゲティングについての可能性は残っている。
【0007】
特に、プロドラッグについての所望の標的組織の1つは、腫瘍組織である。腫瘍が、一般的に、透過性の亢進および滞留の効果(「EPR(enhanced permeability and retention)効果」)を特徴とする異常血管透過性を呈することは良く知られている。このEPR効果によって、有利に、生物学的に有効な物質が、巨大分子、例えばタンパク質(酵素および/または抗体、およびそれらの誘導体またはフラグメントなど)の形態で、腫瘍細胞間質組織腔に容易に入れるようになる (例えば、Maedaらによる評論記事「2000, J. of Controlled Release」 65: 271−284 (参照により本明細書に組み入れらている)を参照のこと)。腫瘍に加えて、ある種の他の組織も、炎症などの状態下で、同一のEPR効果を呈することが可能である。
【0008】
要するに、EPR効果の働きに関するいかなる理論や仮説に縛られることなく、EPR効果によって、巨大分子または巨大分子物質(ポリマーベースの送達系を含めて)が浸透するようになると考えられている。このことにより、腫瘍組織腔(例えば、腫瘍間質腔)へのポリマーコンジュゲートのかなり選択性のある送達がもたらされる。しかしながら、その後、同一のEPR効果によって、放出されたプロドラッグおよび/または任意の新たに放出された比較的低分子量の生物学的に有効な物質が、ターゲット組織の細胞外組織腔からすばやく拡散するようになると考えられる。周囲細胞が十分な速度で放出された活性剤を吸収できないならば、該活性剤は、放出部位から離れて、血流またはリンパ流中に拡散すると考えられる。
【発明の開示】
【0009】
従って、多段階のプロドラッグ概念によって利益を得て、かつ、EPR効果を呈する腫瘍細胞および/または対象の他の組織の細胞中への放出された生物学的に有効な物質のより迅速な取り込みまたは輸送を可能にすることによってEPR効果を補整または制御するプロドラッグを作製するさらなる技術を提供する必要性が継続している。
【0010】
概して、本発明は、式I:
【化1】
で表される化合物の形態のテトラパルテートプロドラッグを提供する。
上記式中、L1は二官能連結基である。
【0011】
概して、Dは、脱離基である基、または細胞に送達される化合物の残基である。さらに特定すると、Dは、生物活性物質の残基、またはHであり、(y)は、1以上の正の整数である。(y)は、1〜約5の範囲であるのが好ましい。(y)が1より大きい場合、各D基は、独立して選択される。
【0012】
Dは、治療を要する動物の標的細胞または細胞への送達が望まれる任意の生物活性物質、例えば抗炎症剤、解毒剤、抗癌剤 、およびそれらのまたはその他のいずれかの症状に関する診断剤などでありうる。
【0013】
好ましくは、Dは、抗癌剤、抗癌剤プロドラッグ、検出タグ、およびそれらの組み合わせである。テトラパルテートプロドラッグに結合可能である抗癌剤または適切なタグのいずれも企図する。上記の例として少しだけ例を挙げるとすれば、アントラサイクリン系化合物、トポイソメラーゼI阻害物質、ダウノルビシン、ドキソルビシン、p−アミノアニリンが挙げられる。
【0014】
Dが脱離基である場合、Dは、例えば、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N−ヒドロキシフタルイミジル、p−ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジルおよび/またはチアゾリジニルチオンでありうる。
【0015】
Zは、[D]yに共有結合しており、Zは、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせである。場合によっては、Zは、一価、多価、またはさらに好ましくは二価であり、式中、(y)は、1または2である。Z自体には、場合によって、アミノ酸残基、糖残基、脂肪酸残基、ペプチド残基、C6−18のアルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=O)、−C(=S)、および−C(=NRI6)[式中、RI6は、以下に定義する通りである]が含まれる。
【0016】
Zに少なくとも1種のアミノ酸残基が含まれる場合、アミノ酸は、例えば少しだけ挙げるとすれば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、および/またはそれらの組み合わせである。Zにペプチドが含まれる場合、ペプチドのサイズは例えば約2〜約10個のアミノ酸残基の範囲である。好適な一実施形態において、ペプチドは、Gly−Phe−Leu−GlyまたはGly−Phe−Leuである。
【0017】
さらに、Y1〜Y4は、独立して、O、S、またはNR12であり、R11は、一価または二価のポリマー残基である。
【0018】
R1、R4、R9、R10、R12、およびR16は、独立して、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、および/または置換C1−6ヘテロアルキルである。
【0019】
R2、R3、R5、およびR6は、独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアン−、カルボキシル−、C1−6カルボキシアルキルおよび/または置換Cl−6アルキルカルボニルである。
【0020】
Arは、式(I)に含まれる場合、 多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、式中、(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して0または1であり、(p)は、0または正の整数である。ある好適な実施形態において、(p)は、1である。
【0021】
L1は、独立して、以下の基:
【化2】
[式中、Mは、XまたはQ(ここで、Xは、電子求引基であり、Qは、
【化3】
から3〜6の原子の位置に自由電子対を有する基である)である]のうちの一つである。例を挙げると、Qは、NH、O、S、−CH2−C(O)−N(H)−、および/またはオルト置換のフェニルからなる群の基で置換されたC2−4アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキル基うちの1つであり、Xは、例えば、O、NR20、
【化4】
S、SO、およびSO2のいずれか1つであり、(a)と(n)は、独立して、0または正の整数であり、(b)は、0または1であり、(g)は、1以上の正の整数であり、(q)は、3または4であり、R7、R8、R14、R15、R17、R18、およびR20は、R1を定義した同じ群から独立して選択され、Y5、およびY6、は、独立して、O、S、またはNR12である。(y)が1より大きい場合、D基の各々は、それぞれ同一か、もしくは異なることが理解されるだろう。
【0022】
(g)の範囲は1〜約20、またはそれ以上が好ましく、しかしさらに典型的には、1〜約10の範囲である。場合によっては、
【化5】
は、天然または非天然のどちらかのアミノ酸残基を含有する。
【0023】
R11は、例えば、数平均分子量約2,000〜約100,000ダルトンを有する一価のポリマーまたは二価のポリマーである。
【0024】
本発明のテトラパルテートプロドラッグを製造する方法も提供する。一実施形態において、上記方法には、式 (III):
【化6】
で表される化合物と、式(IV):
(IV) Lx − Z − [D]y
[式中、Bは、式(III)については脱離基であり、Dが脱離基である場合について上記した通り定義される]で表される化合物とを反応させることが含まれる。
【0025】
Lxは、式(IV)については脱離基であり、Dが脱離基である場合、上記の通り定められる。
【0026】
L1、Ar、Z、D、Rl−R6、R9−R11、Yl−Y3および整数は上記の通り定義される。(III)と(IV)の反応は、溶媒と塩基の存在下で実施されるのが好ましい。溶媒は、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン、ジメチルホルムアミド、および/またはそれらの組み合わせである。ジメチルホルムアミドが、一般的に好ましい。塩基は、例えば、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、および/またはそれらの組み合わせである。
【0027】
さらに別の本発明のテトラパルテートプロドラッグを製造する方法は、式(V)
【化7】
[式中、Laは、Dが脱離基である場合に定義した通りの脱離基である]で表される化合物と生物活性物質とを反応させて実施される。L1、Ar、Z、D、Rl−R6、R9−R11、Yl−Y3および整数を上記の通り定義される。
【0028】
(V)と生物活性物質との反応は、カップリング剤(例えば、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、ジアルキルカルボジイミド、2−ハロ−l−アルキル−ハロゲン化ピリジニウム、1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド、1−プロパンホスホン酸の環状無水物、フェニルジクロロリン酸塩、および/またはそれらの組み合わせ)の存在下で実施する。(V)と生物活性物質の反応は、溶媒と塩基の存在下で、例えば、従来の合成法に関して上記に記載の通りに実施される。
【0029】
例えば、式Iの化合物を必要とする動物に有効量の式1の化合物を含有する薬学的に許容できる組成物を投与することによって動物における疾患または障害を治療することにおける、本発明のテトラパルテートプロドラッグの使用方法を提供する。特に、生物活性物質Dでの治療を要する細胞に生物活性物質Dを送達する方法を提供する。この方法は、式Iの化合物を該細胞が存在する動物に投与するプロセスによるものであり、ここで、式Iの化合物は、in vivoで細胞外にて加水分解されて、式I−(i)
【化8】
[式中、Y*は、Y2の残基であり、HO−、HS−、またはHNR12−からなる群から独立して選択される]で表される化合物が生じた後、式I−(i)は、式I−(ii)
【化9】
[式中、Y**は、Y*の残基であり、O、S、またはNR12からなる群から独立して選択される]で表される化合物と、C02と、式I−(iii):Z−[D]yに自然に加水分解され、Z−[D]yは、細胞膜を通過し、細胞膜で加水分解されて、Dを遊離する。
【0030】
従って、本発明は、例えば、腫瘍細胞などの特定の重要な標的細胞に生物活性物質を送達するための三重プロドラッグ組成物(以下「テトラパルテート」プロドラッグという)を提供し、また、テトラパルテートプロドラッグの合成法および使用法も提供する。本発明のテトラパルテートプロドラッグ組成物には、ポリマー部分と生物活性物質との加水分解可能な結合が含まれる。生物活性物質は、例えば、生物活性のある求核性試薬から誘導された成分、つまり、天然の薬物もしくは未修飾の薬物、または診断タグである。上記の結合は、適切な時期に、生物学的に活性な親化合物を十分な量生じる速度で加水分解するように設計されたエステル結合および/またはアミド結合が好ましい。本発明の目的にとって「十分な量」という用語は、治療効果がある量を意味する。
【0031】
本発明は、概して、ポリマーベースのプロドラッグコンジュゲート(例えば、上記で論じたような二重プロドラッグ組成物)への組み込みに適切である生物活性物質自体が、結合していた組成物から加水分解によって放出された後には不活性であるが、さらなる化学プロセス/化学反応を受けた後に活性となりうる物質/化合物でありうるとする原理に基づくので、本発明は、三重作用性プロドラッグを提供する。本発明のコンジュゲートは本質的に4つの部分で提供されるので、本明細書では上記の三重作用のプロドラッグを「テトラパルテート(tetrapartate)」プロドラッグと称する。
【0032】
本発明のテトラパルテートプロドラッグに関して、上記の二重プロドラッグ輸送系によって血流に移送される治療薬剤または診断薬剤は、対象の標的細胞に入り込むか或いは能動輸送されるまで不活性を保ち、標的細胞内に入るか能動輸送されると、細胞内の化学物質によって(例えば、組織または細胞に存在する酵素または酵素系によって)活性化されうる。
【0033】
特に、ある種の追加の基を、上記の二重プロドラッグコンジュゲートの一部分として生物活性物質に結合させると、多くのこのような生物活性物質の有効性が、このような追加の基を持たない類似のプロドラッグで観察される有効性と比較して著しく増加することが今や発見された。本発明のテトラパルテートプロドラッグコンジュゲートは、例えば、ある種の生物活性物質(例えば、特に低分子量の治療薬剤および診断薬剤)の送達および活性において、例えば治療および/または診断活性について、有効性の増大をもたらすものと考えられる。ポリマーベースのコンジュゲートがin vivoで加水分解するように調製された本発明のテトラパルテートプロドラッグは、細胞外液中で生物活性物質を放出するようにコンジュゲートを切断するが、一方で生物活性物質は前記の追加の基に結合したままである。生物活性物質は、非限定であるが、低分子量の治療薬剤および/または診断薬剤であるのが好ましい。以下に例証する通り、好適な一実施形態において、これらは低分子量の抗腫瘍剤であり、治療する組織は、腫瘍組織である。
【0034】
本発明がいかに機能するかに関し、いかなる理論または仮説にも拘束されるものではないが、輸送エンハンサーとして選択された追加の基に依存して、生物活性物質の腫瘍細胞への輸送速度は、例えばEPR効果を呈する組織の細胞外組織腔に生物活性物質を保護された形態および/または輸送増大形態で送達することによるものであると考えられる。記述の便宜上、本明細書では、上述した「追加の基」を「輸送エンハンサー」と記載する。
【0035】
しかしながら、上記の便宜上に記載した用語の提供するにあたり、標的細胞への生物活性物質の輸送を専ら高める追加の基だけに本発明の範囲を限定するものではない。なぜなら、本発明のテトラパルテートプロドラッグが有利である一因には、細胞外の加水分解酵素活性からZ−[D]yを保護するといった追加のまたは代替のメカニズムにもありうると考えられるからである。
【0036】
またさらに任意選択において、輸送エンハンサーは、細胞膜の輸送系についての公知基質の中から選択される。単に例を挙げると、細胞が、ある種の栄養分および内分泌因子などを能動輸送することは公知であり、そのような栄養分またはその類似体を用いることにより標的細胞中への生物学的に有効な物質の能動輸送が容易に高められる。上記の栄養分の例には、アミノ酸残基、ペプチド(例えば、約2〜約10残基またはそれ以上のサイズ範囲の短鎖ペプチド)、単純糖および脂肪酸、内分泌因子などが挙げられる。
【0037】
望ましいアミノ酸残基には、公知の天然L−アミノ酸全てが含まれる。例えば、以下に提供する例では、輸送エンハンサーとしてのL−イソロイシンを例証する。驚くことに、Dアミノ酸も、輸送エンハンサーとして有用であることが発見された。例えば、D−アラニンとL−アラニンの両方、その他の類似のアミノ酸の光学異性体は、同一の活性を示す。天然アミノ酸の誘導体および類似体、さらに当技術分野では公知である種々の非天然型アミノ酸(D またはL)、疎水性または非疎水性アミノ酸も、本発明の範囲内であると考える。単なる例として、アミノ酸類似体および誘導体には、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、ベータ−アラニン、ベータ−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、n−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチルイソロイシン、6−N−メチルリシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、その他(多すぎて列挙できないが、それらは、63 Fed. Reg., 29620, 29622に列挙されており、参照により本明細書に組み入れられている)がある。
【0038】
短鎖ペプチドは、例えば、上述の通り、アミノ酸残基が2〜約10の範囲、またはそれ以上のペプチドである。本発明の本実施形態において、上記ペプチド輸送エンハンサーは、疎水性である必要はないと考えられているが、結合した低分子量の薬剤の取り込みを高めるため、および/または低分子量の薬剤が通常の血流において早期に加水分解するのを回避するために他の様式で機能すると考えられている。例えば、ペプチド輸送エンハンサー、および他の同程度の分子量範囲を有する輸送エンハンサーは、血漿性の加水分解酵素による生物活性剤からの切断を立体的に妨害するものと考えられるが、その後、標的細胞内で様々なペプチドおよび/またはカテプシンなどのプロテアーゼによって切断される。
【0039】
輸送エンハンサーは疎水性基であるのが好ましい。疎水性がいかに有効性に貢献しているかに関していかなる理論または仮説に縛られるものではないが、疎水性基は、細胞外組織腔(例えば、血漿)内に存在する加水分解酵素等の攻撃を抑制することによって、生物活性剤からの輸送エンハンサーの細胞外切断を抑制すると考えられている。ゆえに、好適な輸送エンハンサーには、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンなどの疎水性アミノ酸、および上記のような非天然生成の誘導体やそれらの類似体が含まれる。
【0040】
さらなる任意選択において、輸送エンハンサーは、疎水性の有機基である。単に例を挙げると、有機基は、C6−18またはそれ以上のアルキル、アリール、または置換ヘテロアリールまたは非置換ヘテロアリールである。有機基輸送エンハンサーは、例えば、−C(=S)および/または−C(=Y3)をはじめとする有機官能基を網羅し含むものである。
【0041】
本発明の本質を理解するために、いくつかの定義および説明を以下に提供する。用語「テトラパルテート」は、プロドラッグコンジュゲートを意味し、特に、上記で論じた通りの二重プロドラッグの特徴と、生物活性化合物の残基とポリマー基の間に位置する輸送エンハンサーとしての追加の基とを組み込んだコンジュゲートを意味し、4部構造を形成しており、生物活性剤がコンジュゲートの第4部分である。この構造によって、生物活性化合物の残基は、標的細胞への輸送と放出が実質的に最適化される。ゆえに、「テトラパルテート」の4番目の要素は、生物活性化合物の残基そのものである。さらに、検出タグを組み込んだ診断用のテトラパルテートコンジュゲートも考えられ、本明細書で本発明のコンジュゲートに関する用語「テトラパルテートプロドラッグ」または単に「プロドラッグ」の使用には、指定または区別しない限り、概して、タグ付けされた薬剤を含むコンジュゲート、ならびに診断試薬を製造する方法および送達する方法も含まれる。
【0042】
特に明記しない限り、本発明の意図する用語「生物活性物質」、「生物活性化合物」および/または「生物活性剤」などは区別なく用いられる。これらの用語は、例えば、薬物または医薬品、および/または診断薬剤または診断試薬(検出標識またはマーカなど)を意味する。本明細書における用語「薬物」「薬剤」「医薬」および「活性剤」は、特に明記しない限り、特に動物にin vivo投与した場合に有用な活性を有する化合物、および/またはその前駆体を意味する。
【0043】
前述の通り、生物活性は、例えば医療目的および/または診断目的のために、動物またはヒトにおいて有用であるような物質または化合物などの任意の特性である。生物活性は細胞内腔で現れるのが好ましい。つまり、非限定であるが、薬物または診断薬剤が、対象の1種以上の標的細胞の細胞質および/または核に送達/放出されたら有用であるのが好ましい。
【0044】
本発明の目的上、単数または複数の使用は、言及する項目または対象の数量を限定する意味ではない。従って、特に明記しない限り、細胞、ポリマー、または薬物に関して単数を用いる場合は、1個の細胞だけを取り扱うのではなく、1個の分子だけを調製もしくは利用するのではなく、および/または1つの薬物だけを利用するのではなく、複数を用いる場合は、単数の関連する項目への適用を除外するものではない。さらにこの点に関し、本発明の目的上、用語「細胞」「細胞型」「標的細胞」などは、特に明記しない限り区別なく用いられ、単数および複数細胞の両方を意味するが、治療する動物または患者の正常なまたは病的な組織(単数)、組織(複数)もしくはその他の系または構成成分に組織化される細胞である。
【0045】
本発明の目的上、用語「残基」は、例えば利用可能なヒドロキシル基またはアミノ基の修飾により結合した状態の生物活性化合物の一部を意味するものと解釈されるべきであり、生物活性化合物は反応に付された後、プロドラッグキャリアー部は、例えば各々エステルまたはアミド基を形成する。
【0046】
本発明の目的上、用語「アルキル」には、例えば、直鎖状、分岐状、置換されたC1−12アルキル(アルコキシ、C3−8シクロアルキルまたは置換シクロアルキルなどを含む)が含まれると解釈するべきである。
【0047】
本発明のプロドラッグに、共有に係る特許出願第09/832,557号および08/992,435号によって教示される二重プロドラッグが含まれる場合、ポリマー部分が加水分解によって最初に放出された後、結果として生じる「第二プロドラッグ」成分が、1,4−または1,6−アリール(例えば、ベンジル)脱離反応を経て、例えば、さらなるプロドラッグを含有する成分を再生するのが通常好ましい。その後に、放出された成分が、拡散および/または標的細胞内に輸送され、組み込まれたプロドラッグの残りの実質的な部分が、さらに細胞内酵素によって切断または加水分解されて、生物活性化合物を放出する。
【0048】
さらに、用語「癌」または「腫瘍」は、抑制されない異常な細胞増殖を呈する細胞を特徴とする無数の疾患を網羅する臨床上記述的な用語である。用語「腫瘍」は、組織に適用する場合、一般的に、任意の異常な組織成長、つまり過度の異常な細胞増殖を意味する。用語「癌」は、悪性腫瘍またはそれから起こる疾患状態を記述するのに一般に用いる比較的に古い用語である。場合によっては、当技術分野では、新生物としての異常な成長、および悪性の新生物としての悪性の異常な成長を意味する。上記の一般的な臨床用語は、本明細書において細胞、組織、および/または疾患または障害とみなされる1種以上の状態に関連して使われる場合、特に指定しない限り、区別なく使用され、同義語であることを意図する。
【0049】
A. 式(1 )
本発明の一態様において、式(I)
【化10】
[式中、Llは、二官能連結基であり、例えば、Llは、独立して以下の基
【化11】
うちの1種である]で表される化合物を提供する。
【0050】
簡潔に例を挙げると、任意の一実施形態において、Llは、
【化12】
である。
【0051】
さらなる実施形態において、Zは、Dに共有結合している輸送エンハンサーおよび/または保護基であり、Zは、細胞中へのZ−[D]yの細胞内送達が、Zを持たないDの細胞内送達よりも増大または改善されるように選択される。
【0052】
ある実施形態において、Zとしては、場合によっては、以下の基、すなわちアミノ酸残基、糖残基、脂肪酸残基、ペプチド残基、C6−l8アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=O)、−C (=S)および−C(=NR16)、および/またはそれらの組み合わせのうち1種が挙げられる。
【0053】
Dは、脱離基である基、または細胞に送達される化合物の残基である。非限定であるが、Dは、生物活性物質またはHであるのが好ましい。
【0054】
当業者ならば、各Dは、独立して選択することが可能であり、その結果、対象の標的細胞に送達するためにZに結合する5種以上もの様々な種類の基がありうることを理解するだろう。Dが、治療薬剤または薬物であるのが好ましいが、Dは、場合によっては、診断薬剤である。
【0055】
簡潔に例証すると、さらなる任意選択の実施形態において、yは、2であり、Zは、二価であり、Dは、同一細胞型または対象の組織型の細胞へ送達される治療薬剤と診断タグの両方を含む2種の成分でありうる。その上さらに、上記の複数のD成分は、好ましくは1種の細胞を標的とした複数の異なる治療薬剤を含有し、送達されて一緒に放出された場合には、その様々な薬剤が相乗的に作用して、所望の治療効果を達成する。好適な任意選択の一実施形態において、Dは、1種以上の抗癌剤および/または抗癌剤プロドラッグ、またはそれらの残基である。
【0056】
さらなる実施形態において、Dは、H、または
【化13】
[式中、Bは、H、脱離基、アミン含有成分の残基、またはヒドロキシル含有成分の残基であり、
Y1−6は、独立して、O、SまたはNR12であり、
Mは、XまたはQ(ここでは、Xは、電子求引基であり、Qは、
【化14】
から3〜6原子の位置に自由電子を有する基である)である]
であり、
R1、R4、R7、R8、R9、R10、R12、R14、R15、R16、およびR18は、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3 − 8シクロアルキル、C1 − 6置換アルキル、C3 − 8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1 − 6ヘテロアルキル、および置換C1 − 6ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、
R2、R3、R5およびR6は、水素、C1 − 6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1 − 8ヘテロアルキル、C1 − 8ヘテロアルコキシ、置換C1 − 6アルキル、C3 − 8シクロアルキル、C3 − 8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシル−、C1 − 6カルボキシルアルキル、およびC1 − 6アルキルカルボニルからなる群から独立して選択され、
Arは、式(I)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(b)、(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して 0または1であり、
(a)と(n)は、独立して0または正の整数であり、
(p)は、0または正の整数であり、
(q)は、3または4であり、
R11は、ポリアルキレンオキシドなどのポリマーである。
【0057】
B. Ar 基の説明
式(I)に関して説明すると、Arは、式(I)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であると解釈しうる。主要な特徴は、Ar基が本質的に芳香族であることである。一般的に、芳香族であるためには、環状分子平面の上下両方の「電子雲」内に、α電子を共有しなければならない。さらに、α電子の数は、ヒュッケル則(Huckle rule)(4n+2)を満たさなければならない。当業者は、芳香族性の要件を満たし、本明細書での使用に適切である基が非常に多くあることを理解するだろう。
【0058】
好適な芳香族炭化水素の基には、限定することなく、
【化15】
が含まれる。
【0059】
上記に列挙した芳香族の基において、JはO、S、またはN−Rl9であり、EとZは、独立して、C−Rl9またはN−Rl9であり、Rl9は、式(1)におけるR9を定義するのと同じ基(例えば、水素、C1−6アルキルなど)から独立して選択される。5員環および6員環の異性体もまた同様に考えられ、ベンゾおよびジベンゾ系ならびにその関連同族体も考えられる。ヒュッケル則に従うならば、芳香族環を、場合によっては、O、S、NRl3などのヘテロ原子で置換することが可能であることを当業者ならば理解するだろう。さらに、このような用語が当技術分野で一般的に理解されているように、芳香族または複素環式構造は、場合によっては、ハロゲンおよび/または側鎖で置換されていてもよい。しかしながら、本発明のAr基に適切なすべての構造は、以下の式I−AおよびI−B
【化16】
[式中、全ての可変記号は式(I)に関して上記に定義した通りである]に示す通り、Y3およびC(Rl)(R4)基を同一平面でパラまたはオルト配置に配置させることが可能である。
【0060】
Ar基が、Y3およびC(Rl)(R4)基をパラ配置で含む場合、本発明の好適な態様は、(r)、(s)、(t)、および(u)を1と定義し、R2およびR6をメチル、Cl−6アルキル、メチル、Cl−6アルコキシ、およびメトキシからなる群から独立して選択されると定義する。さらに好ましくは、R2およびR6は、両方ともメチルまたは両方ともメトキシ基のどちらかである。さらに、R3およびR5は、両方とも水素であるのが好ましく、RlおよびR4は水素、CH3、またはCH2CH3のいずれかであるのが好ましい。Y1からY4まで(例えば、Y1 − 4)は、OまたはNR12であるのが好ましい[式中、R12は、HまたはC1−6アルキルまたは置換アルキルである]。Y1およびY4がOであるのがさらに好ましい。
【0061】
本発明の目的上、置換アルキルには、カルボキシルアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、およびメルカプトアルキルが含まれ、置換シクロアルキルには、4−クロロシクロヘキシルなどの基が含まれ、アリールには、ナフチルなどの基が含まれ、置換アリールには、3−ブロモフェニルなどの基が含まれ、アラルキルには、トルイルなどの基が含まれ、ヘテロアルキルには、エチルチオフェンなどの基が含まれ、置換ヘテロアルキルには、3−メトキシ−チオフェンなどの基が含まれ、アルコキシには、メトキシなどの基が含まれ、およびフェノキシには、3−ニトロフェノキシなどの基が含まれる。ハロは、フルオロ、クロロ、ヨード、およびブロモが含まれると解釈すべきである。
【0062】
C. リンカー基 L 1
上記に示す通り、本発明には、
【化17】
と結合した場合、アミノ酸残基リンカーを形成し、或いは、(p)が1より大きい場合ペプチド残基リンカーを形成する二官能連結基L1が含まれる。
【0063】
適切なアミノ酸残基は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはプロリンをはじめとする天然または合成(つまり非天然)のアミノ酸から選択することが可能である。いくつかの好適なペプチド残基としては、Gly−Phe−Leu−GlyおよびGly−Phe−Leuが含まれる。アミノ酸残基またはペプチド残基の末端アミノ基は、R11(つまりポリマー)に隣接しうることを記しておく。ペプチドは、容易に合成することが可能であるか、或いは、本明細書に包含される市販品から入手可能である。
【0064】
別の実施形態において、L1としては、電子求引基(本明細書でXと称す)もしくは、
【化18】
(本明細書でQと称す)から3〜6原子の位置に自由電子対を有する基のいずれかの基(M)が挙げられる。特に好適な実施形態において、本発明のテトラパルテートコンジュゲートは、置換ベンジルである芳香族基に基づき、in vivoでのプロドラッグ内の最初の2箇所での切断は、1,4または1,6ベンジルの脱離メカニズムに基づいている。本実施形態は、図1に図示するようなコンジュゲートを提供する。図1において、以下に提供する実施例1〜5で生成する化合物の合成にしたがう一般的な反応体系の概要を示す。前駆体化合物(図1、化合物a)を、ロイシン−ドキソルビシン(「leu−dox」)、ジメチルアミノピリジン、ジメチルホルムアミドの存在下で反応させて、(図1の化合物b)を合成した[図中の記号を以下の表1に示す]。
【0065】
【表1】
【0066】
D. 二重プロドラッグ結合部
L1を、
【化19】
に結合させている、テトラパルテートプロドラッグ系の最初の不安定な結合は、投与後適切な時間内に、十分な量の「第二」のプロドラッグ化合物を生成する速度で、エステラーゼ触媒による加水分解などによってin vivoで加水分解するように選択される。本発明の目的上、用語「十分な量」は、後に、in vivoで十分な1,4または1,6−ベンジル脱離を受けて未変性の化合物を放出し、所望の効果を達成しうる量を意味するものとする。(n)は、1〜約12の整数であるのが好ましい。さらに好ましくは、(n)は、1または2である。
【0067】
1. 電子求引基 X
上記態様の式(I)において、式中、L1には、Mが含まれ、その基は、本明細書でXと示す電子求引基でありうる。本発明の目的上、「電子求引基」は、共有電子を引っ張って、炭素をさらに電気的に陽性にする傾向がある基である。その結果、今度は、カルボニル基が不安定になり、さらに急速な加水分解が起こる。ゆえに、Xがエステルに対してα位である場合、Xは、加水分解速度および酵素による切断速度を調整する。
【0068】
特に、Xは、O、NR20、
【化20】
[式中、Y6は、Y1を定義したのと同じであり、R12およびR17は、上記の定義の通り(つまり、H、C1−6アルキル、分岐アルキル、アリールなど)である]、S、SO、SO2などの基でありうる。R1は、上記式Iを定義したのと同じである。しかしながら、XがNR20である場合、R20は、H、メチルもしくはエチルなどのC1−6のアルキル、または置換C1−6アルキルであるのが好ましい。Xが、OまたはNR20のどちらかであるのが好ましい。
【0069】
2. L 1 の Q 部分
場合によっては、L1にQが含まれる場合(ここで、Qは、
【化21】
基から3〜6原子の位置に自由電子対を有する基である)、ポリマーR11は、酸素などのヘテロ原子を介してQと結合するのが好ましい。好適な実施形態において、自由電子対は、このヘテロ原子である酸素から5個の原子にある。Qは、限定するものではないが、C2−4アルキルまたはシクロアルキル、O、S、およびNR12からなる群のメンバーで置換されたアリールまたはアラルキル基から選択することができる。自由電子対は、自由電子対とY4の間に規定の間隔が保たれる限り、Q基に沿ってどこにでもに位置することが可能である。
【0070】
上記の実施形態において、R11は、NR12、OまたはSを介してQに結合する。従って、Qは、アンキメリックアシスタンス(隣接基効果)によってプロドラッグの結合の加水分解を促進する。なぜなら、好ましくはエステル結合の加水分解の際に、自由電子対部分が、3員環〜6員環、好ましくは5員環の副産物を生じ得るからである。
【0071】
Qは、また、NH、O、S、−CH2−C(O)−N(H)−、および
【化22】
[式中、R21は、上記のR12を定義したのと同じ基から選択され、Tは、Qに結合するいずれかの基である]などのオルト置換フェニルからなる群のメンバーで置換されたC2−4アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル基からなる群から選択することも可能である。
【0072】
3. プロドラッグの加水分解による薬物の生成
本発明のプロドラッグ化合物は、加水分解の半減期(t1/2)が血漿での排出(elimination)の半減期(t1/2)よりも小さくなるように設計される。化合物に含まれる結合は、血漿中で、親化合物(つまり、アミノまたはヒドロキシル含有の生物活性化合物)との輸送増大コンジュゲートを排出前に十分量放出させるのに十分短い時間のin vivo加水分解速度を有する。本発明の好適な化合物(つまり、(n)が1である化合物)には、血漿中での加水分解に対するt1/ 2が約5分〜約12時間の範囲である化合物もある。好ましくは、組成物は約0.5〜約8時間の範囲の血漿加水分解t1/ 2を有し、最も好ましいのは、約1〜約6時間である。
【0073】
4. 1,4 または 1,6− ベンジル脱離:
取り込みエンハンサーに結合した未変性薬物の放出および輸送エンハンサーからの未変性薬物の細胞内放出
コンジュゲートの二重プロドラッグ部がin vivoで一旦加水分解されると、通常、エステラーゼ活性またはpH緩和活性(pH moderated activity)または環形成反応によって、ポリマー残基が切断され、その結果第二プロドラッグ成分が残る。
【0074】
本発明のテトラパルテートコンジュゲートまたはプロドラッグがどのように作用するかに関して、いかなる理論または仮説によっても拘束されるものではないが、取り込みに関連した生物学的に有効な物質が一旦標的細胞に入ると、様々な細胞内のペプチダーゼおよび/またはプロテアーゼ(例えばカテプシンを含む)が、例えば酵素的加水分解によって輸送エンハンサー成分を切断して、標的細胞内に生物学的に有効な物質を放出する。以下の分解スキームは例証する目的のために提供され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0075】
図2Aおよび2Bを参照すると、Arがベンジル誘導体である場合、1,4または1,6−ベンジル脱離(または、他の芳香族基との類似反応)がin vivoで起こり、電子移動によって所望の輸送が高められた未変性化合物が生成し、不可逆分解が起こり、輸送が高められた未変性化合物が放出される。
【0076】
従って、図2Aは、in vivoでの分解反応を概略的に図示するものであり、式中の出発物質であるテトラパルテート化合物の可変記号は、式Iに関して上記で記載した通りに定義される。図2を参照すると、図示したテトラパルテートプロドラッグは、in vivoで(a)と表示された制御可能な速度の切断を受け、Rllが除去される。残った化合物(b)は、直ちに水の存在下で高速加水分解され(c)、(b)を分離し、Z−Dを遊離し、エンハンサープロドラッグは殆どが細胞外組織腔にZ−Dとして遊離する(d)。次に、Z−Dは周囲細胞によって取り込まれ、細胞内で加水分解されて、Dを遊離する(e)。細胞内組織腔に遊離されうるDはいずれも、血液または血漿流によって直ちに排除されると考えられ、治療または診断効用の見地からは、Dは、殆どまたは全く追加の利益を提供しないと考えられる。
【0077】
さらに幾分詳細に説明すると、図2Bは、化合物14および17(例えば、以下の合成についての実施例を参照)に対して起こると考えられるin vivoでの分解反応の概略図を提供する。図2Aのスキームと同様に、化合物14はin vivoで(a)と表示された制御可能な速度の切断により分解され、PEGが除去される。残った化合物(b)は、直ちに水の存在下で高速加水分解(c)され、(b)を分離し、とりわけ、図.2AのZ−Dに類似する(d)を遊離する。エンハンサー−ドキソルビシンプロドラッグは、ほとんど細胞外組織腔内に放出される(d)。次に、エンハンサー−ドキソルビシンプロドラッグは、周囲細胞に取り込まれ、細胞内で加水分解されて(e)、活性ドキソルビシンを放出する。類似の分解反応プロセスを、化合物17に関して図2Bに記載し、類似のプロセス段階を(a´)、(b´)、(c´)、(d´)、および(e´)と表示する。反応(f)および(f´)は各々副反応であり、その反応においては、プロドラッグから切断された芳香族残基がは水溶性のヒドロキシル誘導体に変換される。
【0078】
E. 実質上非抗原性のポリマー
本発明の「テトラパルテートプロドラッグ」組成物には、水溶性ポリマーRllが含まれる。場合によっては、Rllには、キャッピング基Aが含まれる。キャッピング基Aには、例えば、水素、C1−6アルキル基、カルボキシルアルキル、ジアルキルアシル尿素アルキル、および/または以下の式 (II)
【化23】
[式中、G´は、Dと同じであるか、もしくはDによって定義される基の別のメンバーであり、vは、0または1であり、残りの可変記号は、式(I)に関して上記に示す通りである]に示すビス系を形成する化合物が含まれる。
【0079】
上記のポリマーの適切な例には、また好ましくは実質上非抗原性であるポリエチレングリコールなどの酸化ポリアルキレンが含まれる。PEGおよびその誘導体の一般式はA´−O−(CH2CH2O)x−(CH2)n−Aである[式中、(x)は、重合度(つまり、10〜2,300)またはポリマー鎖中の繰り返し単位の数を表し、ポリマーの分子量によって決まり、(n)は、0または正の整数であり、Aは、本明細書に定義する通りのキャッピング基(つまり、−H、アミノ、カルボキシル、ハロ、C1−6アルキル、またはその他の活性基)であり、A´は、Aと同じかもしくは別のA基である]。ポリプロピレングリコール、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,643,575号明細書に記載されたもののような分岐PEG誘導体、「star−PEG´s」およびShearwater Polymers, Inc. カタログ「ポリエチレングリコールの誘導体(Polyethylene Glycol Derivatives)」(1997−1998年)に記載されたような多分岐PEGもまた有用であり、各々の開示内容は参照により本明細書に組み入れられている。水溶性ポリマーは、本明細書におけるM、XまたはQを介して結合部位に結合するように官能化されていると理解されるだろう。例として、プロドラッグのPEG部分には、限定するものではないが、以下の化合物
【化24】
[式中、Y7はOまたはSであり、A、R12、(n)、および(x)は、上記に定義した通りである]がなりうるだろう。
【0080】
本発明の種々の態様において、一置換ポリマーを所望の場合、ポリエチレングリコール(PEG)、モノ活性化C1 −4アルキル末端PAO(モノ−メチル−末端ポリエチレングリコール(mPEG)など)が好ましい。二置換プロドラッグを所望の場合、ビス活性化ポリエチレンオキシドが好ましい。
【0081】
所望の加水分解可能な結合部を提供するために、モノまたはジ−PEGアミンおよびモノまたはジ−PEGジオールだけでなく、PEG酸またはPEG二酸などの一酸または二酸活性化ポリマーも用いることができる。最初にmPEG−OHをエチルエステルに変換した後、鹸化して、適切なPAO酸を合成することが可能である。Gehrhardt, H.ら、「Polymer Bulletin」18:487(1987年)、およびVeronese, F. M.ら、「J. Controlled Release」10; 145(1989年)を参照のこと。場合によっては、mPEG−OHをt−ブチルエステルに変換した後、酸によって切断して、PAO酸を合成することも可能である。例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,605,976号明細書を参照のこと。前述の各々の開示内容は、 参照により本明細書に組み入れらている。
【0082】
PAOおよびPEGの数平均分子量は、かなりの範囲に及びうるが、約2,000〜約100,000ダルトンの範囲のポリマーを通常、本発明の目的のために選択する。約20,000〜約50,000の分子量が好ましく、20,000〜約40,000が特に好ましい。「テトラパルテートプロドラッグ」に包含されるように選択されるポリマーの数平均分子量は、輸送エンハンサーを除去する前に「テトラパルテートプロドラッグ」の十分な循環を提供するのに十分であることが必要とされる。化学療法剤および有機成分に関する一部の態様において、上記に規定した範囲内で、少なくとも20,000の分子量範囲を有するポリマーが好ましい。ある種のタンパク質、酵素などの一部の求核試薬の場合において、約12,000〜約20,000の分子量範囲を有するポリマーが好ましい。
【0083】
本明細書に包含される高分子物質は、室温で水溶性であるのが好ましい。上記ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらの共重合体およびそれらのブロック共重合体(但し、ブロック共重合体の水溶解度が保持されるという条件で)が挙げられる。
【0084】
PEGのようなPAO系について本明細書に記載したように同じタイプの活性化を採用するならば、PAO系ポリマーに代わるものとして、デキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物系ポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、およびそれらの共重合体などの実質上非抗原性の材料を用いることも可能である。当業者ならば、前述のリストは、単なる具体例にすぎず、本明細書に記載する特性を有する全ての高分子材料が考慮に入れられることを理解するだろう。本発明の意図するところの「実質上非抗原性」は、非毒性であり、哺乳類に感知できるほどの免疫応答を誘導しないとして、当技術分野で理解される全ての高分子材料を意味する。
【0085】
F. 高分子テトラパルテート輸送系の合成
代表的な特異的プロドラッグ合成を実施例に示す。しかしながら、通常、数種の方法で、本発明の輸送が高められたプロドラッグを調製することが可能である。従って、一つの方法としては、式(III)
【化25】
で表される化合物と、式(IV)Lx−Z−[D]yの化合物とを反応させる方法が挙げられる。
【0086】
本実施形態において、Llは、二官能連結基であり、
BとLxは、独立して選択される脱離基であり、Dが脱離基である場合にそれについて上記したように定義され、
Zは、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせであり、Zは、アミノ酸残基、C6−18アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=Y4)、−C(=S)、−C(=NR16)(式中、R16は、R1 2と同一の基から選択される)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるのが好ましく、
R1、R4、R9、R1 0、およびR1 2は、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、および置換C1−6ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、
R2、R3、R5、およびR6は、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシル−、C1−6カルボキシルアルキル、C1−6アルキルカルボニルからなる群から独立して選択され、
Arは、式(III)に含まれ、次に式(I)含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して、0または1であり、
(p)は、0または正の整数であり、
Y1−4は、独立して、O、S、またはNR12であり、ここでR12の定義は、上記の式Iについて定義されたとおりであり、
(y)は、1または2であり、
R11は、一価または二価のポリマー残基である。
【0087】
通常、溶媒および塩基の存在下で(III)と(IV)を反応させる。溶媒は、不活性溶媒(つまり反応物および生成物に不活性な溶媒)が好ましい。代表的な溶媒には、簡潔に例を挙げると、クロロホルム、トルエン、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、およびそれらの組み合わせがある。 通常、ジメチルホルムアミドが好ましい。代表的な塩基性溶媒には、簡潔に例を挙げると、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミンおよびそれらの組み合わせが含まれる。通常、ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0088】
場合によっては、式(V)
【化26】
で表される化合物を、生物学的に有効な物質(例えば、薬物または診断タグなどの生物活性化合物)と反応させて、本発明のテトラパルテートプロドラッグを調製することも可能である。本実施形態において、
Laは、Dが脱離基である場合、Dに対して定義した通りの式Vの脱離基である。
【0089】
L1は、二官能連結基であり、
Zは、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせであり、好ましくは、Zは、アミノ酸残基、C6 −18アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=Y4)、−C(=S)、−C(=NR16)およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
R1、R4、R9、R10、R12、およびR16 は、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、および置換C1−6ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、
R2、R3、R5、およびR6は、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシ−、C1−6カルボキシルアルキル、およびC1−6アルキルカルボニルからなる群から独立して選択される。
【0090】
Arは、式(V)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して、0または1であり、
(p)は、0または正の整数であり、
Y1−4は、独立して、O、S、またはNR12であり、ここで、R12は、上記の式Iの通りに定義され、
R11は、一価または二価のポリマー残基である。
【0091】
場合によっては、例えば、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、ジアルキルカルボジイミド、2−ハロ−l−アルキル−ハロゲン化ピリジニウム、1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド、1−プロパンホスホン酸の環状無水物、フェニルジクロロホスフェート、およびそれらの組み合わせなどのカップリング剤の存在下で、(V)と生物学的に有効な物質とを反応させる。さらに、通常、溶媒および塩基の存在下で、(V)と生物活性物質を反応させる。溶媒および塩基はそれぞれ式(III)と(IV)の反応に関して上記に記載した通りに定義される。さらに、塩基はジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0092】
テトラパルテートプロドラッグに関して生物学的に有効な物質を以下に論じる。
【0093】
G. 脱離基または残基部分の「 D 」
1. 脱離基
上記の通り、Bが脱離基であり、さらにLzおよび/またはLa脱離基に関連している場合のこれらの態様において、適切な脱離基としては、限定するものではないが、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N−ヒドロキシフタルイミジル、p−ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジルなどの基、チアゾリジニルチオン、または当業者には明白であるその他の良好な脱離基が挙げられる。当業者ならば、過度の実験をすることなく、本明細書で使用および記載の合成反応を理解するだろう。
【0094】
例えば、アシル化された中間化合物(III)を、4−ニトロフェニルクロロホルメート、ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、カルボニルジイミダゾール、チアゾリジンチオンなどと反応させて、所望の活性誘導体を得ることができる。
【0095】
p−ヒドロキシベンジルアルコールまたはp−アミノベンジルアルコール、およびo−ヒドロキシベンジルアルコールまたはo−アミノベンジルアルコールのアシル化は、例えば、チアゾリジンチオン活性化ポリマー、スクシンイミジルカーボネート活性化ポリマー、カルボン酸活性化ポリマー、ブロックされたアミノ酸の誘導体を用いて実施することが可能である。
【0096】
PEGプロドラッグ(またはブロックされたプロドラッグ)が、一旦、適切に「活性化」されると、アミンまたはヒドロキシル含有化合物といつでもコンジュゲートできる状態になる。好適な活性化された輸送形態の一部を以下に示す。
【0097】
2. 生物活性物質の残基
概して、本明細書に包含される適切な生物学的に有効な物質のタイプにおける唯一の制約は、取り込みエンハンサー基に共有結合するのに利用可能な少なくとも1つの部位があることである。簡単に例を挙げると、上記の部位とは、例えばアミド結合を形成することによって、キャリアー部位と反応して結合することが可能である(第一級または第二級の)アミン含有部位または官能基のことでありうる。取り込みエンハンサー基に共有結合するその他の部位には、例えばエステル結合を形成するヒドロキシル官能基がある。勿論、当業者は、対象の生物学的に有効な物質と取り込みエンハンサーとの間の選択された結合が、コンジュゲートの二重プロドラッグ部が、輸送エンハンサーと結合状態の親化合物を放出した後、殆ど生物活性を喪失しないような結合であることを理解するだろう。
【0098】
コンジュゲート後、残ったアミン含有化合物を非コンジュゲート化合物の残基と称する。
【0099】
I. アミン含有化合物の残基
本発明の一部の態様において、例えば、プロドラッグ輸送が形成された後、Dは、アミン含有の有機化合物の残基である。有機化合物には、限定するものではないが、アントラサイクリン系化合物(ダウノルビシン、ドキソルビシンなど)、p−アミノアニリンマスタード、メルファラン、Ara−C(シトシンアラビノシド)、および関連する代謝拮抗化合物(例えば、ゲムシタビンなど)の成分がある。
【0100】
約50ダルトン〜約2,500ダルトン、またはそれ以上のサイズの範囲であって、in vivoで生物活性を示す、ポリペプチド、核酸、ペプチド核酸、およびそれらの組み合わせのいずれかの部分も本明細書に含まれる。上記には、例えば、ペプチド、少なくとも1種のアミン官能基を有する核酸(DNA、RNA)(例えば、ペプチド核酸など)が含まれる。
【0101】
従って、本発明の好適な態様において、生物学的に有効な物質は、このような治療が望まれる状態にある、動物(例えば、鳥類および/またはヒトを含めた哺乳類)の治療において、医療または診断に用いるのに適切な生物活性化合物である。前述の列挙した生物材料は、例証するのが目的であって、改質されうる化合物について限定するものではない。当業者は、過度の実験をすることなく、他の同種の化合物を同様に改質することが可能であると理解するだろう。つまり、上記の生物活性物質として、特に記載しないが適当なアミノ基を有するものも意図され、本発明の範囲に含まれることは理解される。
【0102】
II. ヒドロキシル含有の化合物の残基
a. カンプトテシンおよび関連のトポイソメラーゼ I 阻害物質
カンプトテシンは、中国に自生するカンレンボク(Camptotheca accuminata)樹木およびインドに自生するクサミズキ(nothapodytes foetida)樹木から生成される、水に不溶な細胞障害性のアルカロイドである。カンプトテシンおよび関連化合物、および類似体も、潜在的な抗癌剤または抗腫瘍剤であることは公知であり、in vitroおよびin vivoで上記の活性を呈することが明らかにされている。カンプトテシンおよび関連の化合物も、本発明のテトラパルテートプロドラッグへ変換するための候補物質でもある。
【0103】
カンプトテシンと特定の関連する類似体は、構造式
【化27】
を共有する。
【0104】
このコア構造から、数種の既知の類似体が調製されている。例えば、10−位と11−位のどちらか一方、或いは両方において、A環をOHで置換することが可能である。A環の9−位は、場合によってヘテロ原子(つまり−0またはS)によって結合されていてもよい、直鎖または分岐のC1−30アルキルまたはC1−17アルコキシで置換されていてもよい。B環の7−位は、直鎖または分岐のC1−30アルキルまたは置換アルキル、C5 −8シクロアルキル、C1−30アルコキシ、フェニルアルキルなど、カルバミン酸アルキル、アルキルカルバジド、フェニルヒドラジンの誘導体、アミノ−、アミノアルキル−、アラルキルなどで置換することが可能である。その他の置換は、C、D、およびE環で可能である。
【0105】
例えば、米国特許第6,111,107号、同5,004,758号、同4,943,579号、米国再発行特許第32,518号明細書を参照のこと(その内容を、参照して本明細書に組み入れる)。過度の実験をすることなく、公知の合成技法を用いて、上記の誘導体を合成することが可能である。本明細書に用いる好適なカンプトテシン誘導体には、20−OHを含む化合物もしくは本明細書に記載するポリマー輸送系の活性化状態と直接に反応しうる別のOH基を含む化合物、または結合基中間体(例えば、イミノ二酢酸など)に結合した後に、PEGなどのポリマーに結合する化合物が挙げられる。
【0106】
本明細書のカンプトテシン類似体についての言及は、例示する目的のためであって、限定するものではない。
【0107】
b. タキサンおよびパクリタキセル誘導体
本発明のテトラパルテートプロドラッグ組成物に含有される化合物の1クラスは、タキサンである。本発明の目的上、用語「タキサン」には、テルペンのタキサン類に含まれる全ての化合物が含まれる。従って、タキソール(パクリタキセル)、3´−置換のt−ブトキシカルボニルアミン誘導体(タキソテール)など、並びに標準の有機技法を用いて容易く合成されるその他の類似品、または、Sigma Chemical (St. Louis, Missouri) などの市販業者から入手可能であるその他の類似品は、本発明の範囲内である。
【化28】
典型的なタキサンを以下に示す。
パクリタキセル:R´1=C6H5;R´2=CH3CO; タキソテール:R´1=(CH3)3CO;R´2= H
【0108】
上記の誘導体は、効果的な抗癌剤であると見出されている。多数の研究により、上記薬剤は、数種の悪性腫瘍に対して活性を有することを示している。これまで、それらの使用は、とりわけ供給不足、水溶性の低さ、および過敏性によって厳しい制約を受けていた。本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,622,986号明細書および同5,547,981号に開示の7−アリールカルバメートおよび7−カルバゼート(carbazate)を含む他のタキサンを本発明のテトラパルテートプロドラッグに含ませることも可能であると理解される。前述の米国特許明細書の内容は、参照して、本明細書に組み込んでいる。タキサンに関する唯一の制約は、例えば2´位において、ヒドロキシルベースの置換反応が起こりうる必要があることである。しかしながら、パクリタキセルは、好適なタキサンである。
【0109】
c. さらなる生物活性成分
前述の分子に加えて、本発明のテトラパルテートプロドラッグ製剤は他の多種の化合物を用いて調製できる。例えば、ゲムシタビン、エトポシド、トリアゾール系抗真菌薬(フルコナゾールなど)、および/またはシクロピロックスを用いることが可能である。
【0110】
テトラパルテートプロドラッグ形態に選択される親化合物は、実質的に水に不溶である必要はないが、本発明のポリマーベースのテトラパルテートプロドラッグは、水に不溶な化合物を送達するのに特によく適している。他の有用な親化合物としては、例えば、ある種の低分子量の生物活性タンパク質、酵素およびペプチド(ペプチドグリカンを含む)、さらにその他の抗腫瘍剤、心血管薬(ホルスコリンなど)、抗悪性腫瘍薬(コンブレタスタチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、ara−C、メイタンシンなど)、抗感染薬(バンコマイシン、エリスロマイシンなどの)、抗真菌剤(ニスタチン、アンホテラシンB、トリアゾール、パプロカンジン、ニューモカンジン、エチノカンジン、ポリオキシン、ニッコマイシン、プラジミシン、ベナノミシンなど;「Antibiotics That Inhibit Fungal Cell Wall Development」Annu. Rev. Microbiology, 1994, 48:471−97を参照のこと、この内容は参照により本明細書に組み入れられる)、抗不安剤、胃腸剤、中枢神経系活性化剤、鎮痛剤、排卵誘発剤または避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、抗尿毒症剤、心血管剤、血管拡張剤、血管収縮剤などが挙げられる。
【0111】
コンジュゲート後、残ったアミンまたはヒドロキシル含有化合物を、非コンジュゲート化合物の残基と称する。
【0112】
3. 高分子ハイブリッド
本発明の別の態様においては、本明細書に記載する高分子テトラパルテートプロドラッグ輸送系のハイブリッドタイプを提供する。特に、ハイブリッド系には、上記の可逆的な二重プロドラッグ系だけでなく、さらに永続型の結合をベースとした第二ポリマー輸送系も含まれる。このハイブリッドは、少なくとも2通りの方法で調製することが可能である。例えば、ベンジル脱離ベースのプロドラッグを最初に合成した後に、チアゾリジニルチオンまたはスクシンイミジルカーボネート活性化PEGなどの当技術分野で認知のいずれかの活性化ポリマーを用いてポリエチレングリコール化(PEG化)することが可能である。場合によっては、最初に、さらに永続的なコンジュゲート反応を行い、得られたコンジュゲートを用いて、本明細書に記載するテトラパルテートコンジュゲートの二重プロドラッグ部を形成することが可能である。ハイブリッド系は、複数のアミノ基がポリマー輸送形態の結合に利用できる、タンパク質、酵素などにさらに良好に適すると理解されるだろう。本発明目的上、「活性ポリマー」には、酵素、タンパク質などで見出されるようなα−アミノ基、ε−アミノ基、ヒスチジン窒素、カルボキシル基、メルカプト基などのうち1種以上と反応可能な1個以上の末端基、並びに合成により調製された有機化合物に見出されるかかる基を含有するポリマーが含まれると理解されるだろう。以下に記載の活性化基を用いて、上記の活性化された輸送形態を形成することが可能であるともさらに理解されるだろう。
【0113】
活性化末端基は、本発明の二重プロドラッグ輸送系を合成する前または後のどちからに、ポリマーと、生物活性物質(すなわちタンパク質、酵素など)とのコンジュゲートを容易にする任意の基であるうる。例えば、米国特許第4,179,337号明細書を参照のこと(その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている)。 上記の活性化基は:
1.以下a)〜f)などのアミノ基と反応させることが可能である官能基、
a)p−ニトロフェニル、またはスクシンイミジルなどのカーボネート(例えば、米国特許第5,122,614号明細書を参照のこと、その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている)、
b)カルボニルイミダゾール、
c)アズラクトン(例えば、米国特許第5,321,095号明細書参照のこと、その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている)、
d)環状イミドチオン(例えば、米国特許第5,349,001号明細書を参照のこと、その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている)、
e)イソシアナートまたはイソチオシアナート、または
f)N−ヒドロキシ−スクシンイミジルまたはN−ヒドロキシベンゾトリアゾリルなどの活性エステル;
II.以下a)〜b)などのカルボン酸基および反応性カルボニル基と反応させることが可能である官能基
a)一級アミン、または
b)ヒドラジンおよびヒドラジド官能基(例、アシルヒドラジド、カルバゼート、セミカルバメート、チオカルバゼートなど);
III.メルカプトまたはメルカプト基(フェニルグリオキサールなど)と反応させることが可能な官能基(例えば、米国特許第5,093,531号明細書を参照のこと、その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている);
IV.(カルボン)酸などのヒドロキシル基と反応させることが可能な官能基、或いは、求電子中心と反応させることが可能な他の求核性試薬;から選択される基でありうる。例えば、限定するものではないが、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシル、チオール基、活性メチレンなどが挙げられる。
【0114】
活性化成分には、ポリマーに隣接して位置するスペーサー部分も含まれうる。スペーサー部分は、18個までの炭素原子を有するヘテロアルキル、アルコキシ、アルキルでもよく、或いは追加のポリマー鎖であってもよい。スペーサー部分は、標準の合成技法を用いて付加することができる。
【0115】
H. 治療方法
本発明の別の態様は、概して、治療または診断薬剤などの生物活性物質を、そのような生物活性が望まれる細胞に送達する方法を提供する。本発明のテトラパルテートプロドラッグを用いると、動物の体に見出される広範囲の様々な細胞に生物活性物質が容易く送達されるが、特定の適用例が好適である。例えば、本発明のテトラパルテートプロドラッグは、上記で論じたEPR効果を呈する組織に存在する細胞内に薬物および/または診断薬剤などの生物活性物質を送達する際に特に有用である。EPR効果を呈する多種の組織型は、炎症、様々な種類の中毒反応、並びに固形腫瘍を被っている組織を含めて、様々な疾患および障害で現れる。
【0116】
従って、適用範囲の広い方法には、生きている組織と、本発明のテトラパルテートプロドラッグとの接触が含まれる。組織がEPR効果を呈するのが好ましく、その結果、ポリマー結合コンジュゲートが上記組織に入るのが好ましい。勿論、当業者ならば、薬剤が一旦標的細胞内に送達され活性化されると、その後、該細胞によって薬剤が放出されて、他の組織腔に生物活性をもたらすことが可能であることを理解するだろう。
【0117】
簡潔な例として、例えば炎症を起こし、その結果EPR効果を生じている疾患過程中、適切な状況下で肝臓または膵臓の外分泌細胞に送達される本発明の非活性のプロドラッグは、標的細胞の細胞質内で活性化され、次いで活性化された薬物または診断薬剤は、治療および/または診断目的のため、胃腸(「G.I」)管液腔内に分泌されうる。ゆえに、本例において、適切な薬剤(例えば抗癌剤または抗ウイルス剤)を目標を定めて送達することによって、G.I.管のある種の疾患または障害の治療および/または診断が容易になる。他の器官および/または組織系に対しても、類似の治療方法および類似の生物活性物質送達方法をすぐにでも企図できる。
【0118】
好適な一実施形態において、組織は、腫瘍または癌組織であり、本発明のテトラパルテートプロドラッグは、上記の状態の治療および/または診断に適切な薬剤を含んでなる。ゆえに、テトラパルテートプロドラッグ組成物は、とりわけ、親化合物(例えば、哺乳類における、腫瘍性疾患の治療、腫瘍量の減少、腫瘍または新生物の転移抑制、および腫瘍再発防止/腫瘍増殖防止に適切な化合物を含む)で治療される疾患と同様の疾患の治療に有用である。治療を受ける動物は、哺乳類が好ましく、ヒト患者がさらに好ましい。本発明のプロドラッグを獣医学で使用する場合は、通常、哺乳類種に用いるが、一般的に獣医学実践および畜産学分野の範囲内で、例えば、非常に貴重な、哺乳類以外の外来種の動物を含めた他の種に、該プロドラッグを進んで用いることができるとさらに考える。
【0119】
プロドラッグおよび/または診断用のテトラパルテートタグの投与量は、プロドラッグに含まれる親分子の量によって決まりうる。一般的に、治療方法に用いるテトラパルテートプロドラッグの量は、哺乳類において所望の治療または診断結果を効果的に達成する量である。種々のプロドラッグ化合物の適用量が、親化合物、in vivoでの加水分解速度、ポリマーの分子量などで幾分変わりうるのは当然である。一般的に、テトラパルテートプロドラッグの高分子誘導体は、天然薬物に基づいて1日あたり約5〜約500mg/m2の範囲の量で投与する。上記に示す範囲は例示的なものであり、当業者は、臨床上の経験と治療の適応に基づいて、選択したプロドラッグに至適な適用量を決定するであろう。当業者ならば、過度の実験を行うことなく、実際の投与量は明白であろう。
【0120】
本発明のプロドラッグを含有する組成物は、それを必要とする動物への投与のため1種以上の適切な医薬組成物に含有されうる。医薬組成物は、溶液、懸濁剤、錠剤、カプセルなどの形態で、当技術分野で公知の方法に基づいて調製可能である。当業者の必要に応じて、経口および/または非経口経路によって、上記組成物を投与してもよいと考える。組成物の溶液および/または懸濁液を、例えば、当技術分野では公知である任意の方法(例えば、静脈内、筋内、皮下注射など)によって組成物を注入又は浸潤させるための担体ビヒクルとして利用してもよい。
【0121】
体腔または腔内への注入によって、さらに吸入および/または鼻腔内経路によって、上記の投与を行ってもよい。しかしながら、本発明の好適な態様において、プロドラッグは、プロドラッグを必要とする哺乳類に非経口経路で投与される。
【0122】
本発明に係る新規な治療法または投与法には、プロドラッグの多段階切断がさらに含まれ、、その結果、標的細胞内に薬物またはタグなどの生物活性物質が放出される。
【0123】
I. in vivo での診断
本発明のさらなる態様は、任意に診断タグを上記の輸送エンハンサーに結合することで調製された本発明のテトラパルテートコンジュゲートを提供し、ここでこのタグは診断またはイメージング目的のために選択される。従って、任意の適切な基(例えば、アミノ酸残基)を、任意の当技術分野で標準である放射性同位体、放射線不透過性ラベル、 磁気共鳴ラベル、または磁気共鳴画像に適切なその他の非放射性同位体ラベル、蛍光タイプのラベル、可視色を呈するラベルおよび/または紫外線、赤外線、または電気化学的な刺激下で蛍光を放ちうるラベルに結合させることによって適切なタグを調製して、外科的処置中および処置後に、腫瘍組織の画像化することができる。場合によっては、コンジュゲートされた治療効果のある成分に診断タグを組み入れるおよび/または結合させ、動物またはヒト患者の体内で治療目的の生物活性物質の分布をモニターすることができる。
【0124】
本発明のさらなる態様において、本発明のタグ付けしたテトラパルテートコンジュゲートは、当技術分野で公知の方法に従い、いずれかの適切なラベル(例えば、放射性同位体ラベルなど)を用いて容易に調製される。簡潔に例を挙げると、これらには、in vivoにおける腫瘍細胞への選択的取り込みのための放射免疫シンチグラフィー造影剤を生成する131ヨウ素、1 25ヨウ素、99mテクネチウムおよび/または1 11インジウムがある。例えば、ペプチドをTc−99mに結合させる当技術分野で公知の方法は非常に多く、簡潔な例として、米国特許第5,328,679号明細書、同5,888,474号、同5,997,844号、および同5,997,845号で、示される例が挙げられる(これらは参照により本明細書に組み入れらる)。
【0125】
概して、患者の腫瘍組織の解剖学的位置確認のため、テトラパルテートコンジュゲートタグを、腫瘍を有すると疑われる患者または動物に投与する。ラベルした免疫グロブリンが腫瘍部位に局在化するのに十分な時間が経過した後に、例えば、目視で、X線撮影法、コンピュータ断層撮影、MRI、機器分析によるルミネッセンス標識の検出、ガンマカメラなどのフォトスキャナー装置による方法、またはその他の選択した標識の性質に適した方法または機器を用いて、ラベルにより生じるシグナルを探知する。
【0126】
次いで検出したシグナルを画像に変換するか、或いは解剖学的および/または生理学的に腫瘍部位を確認する。画像によって、in vivoで腫瘍の位置を突き止め、適切な治療方針を考案できる。タグ付けした成分自体が治療薬剤である上記の実施形態において、検出したシグナルは、治療中に、解剖学的位置確認の証拠を提供するものであり、追跡診断および治療介入のためのベースラインを提供する。
【0127】
J. 実施例
以下の実施例で、合成される全ての化合物および図1〜9で図示される全ての化合物に関して、上述の通り、当技術分野では公知である他の変形形態が容易に採用されるが、「PEG」は、
【化29】
であることを記しておく。さらに、以下の実施例に用いるPEGは、約40kDaの分子量を有した。
【0128】
以下の実施例は、本発明をさらに理解するために提供するものであり、本発明の有効範囲を限定することを意味するものではない。
【実施例1】
【0129】
化合物 2 の合成
以下の方法の1つを用いて、化合物2(図3)を調整した。
方法 1
ロイシン−ドキソルビシン(130mg、0.198ミリモル)とジメチルアミノピリジン(「DMAP」121 mg、0.99ミリモル)を、無水ジメチルホルムアミド(「DMF」)40mLに約40kDa(2.4g、0.060ミリモル、図1)のPEG鎖を有する化合物1を溶かした溶液に添加した。混合物を室温で一晩攪拌した。エチルエーテル(〜200 mL)を反応混合物に加えて、PEG誘導体を沈殿させ、固体をろ過して、2プロパノール (「IPA」) 80 mLから2回再結晶させ、化合物2 (1.85 g、75 %、図3)の純生成物を得た。
【0130】
方法 2
(ステップ1) 無水塩化メチレン80 mLに化合物1 (4.5 g、0.111ミリモル、図4)を溶かした溶液に、ロイシンt−ブチルエステル(248 mg、1.11ミリモル)とDMAP(136 mg、1.11ミリモル)を加えた。反応混合物を18時間室温で攪拌した。混合物を減圧下で気化させ、残留物をIPAから再結晶させ、化合物3 (4.5 g、99 %、図4)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDC13)により構造を同定した。ピーク:δ171.55, 155.24, 152.88, 150.24, 133.79,128.68,120.48,81.05,69.0−72.5 (PEG), 52.51, 41.26,27.40,24.19,22.27,21.44。
【0131】
(ステップ2) 化合物3 (4.70 g, 0.114 ミリモル)を、トリフルオロ酢酸22.5 mLと塩化メチレン45 mLに溶解して、室温で2時間攪拌した。エチルエーテルを加えて、 PEG誘導体を沈殿させた。粗生成物をろ過して、エチルエーテルで洗浄し、化合物4 (4.4 g、94 %、図. 4)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDC13)により構造を同定した。ピーク:δ173. 30,155.36,152.94,150.24,133.81,128.67,120.52,69.0−72.5 (PEG), 52.65, 41.20,24.18,22.44,21.31。
【0132】
(ステップ3) ドキソルビシン(57 mg、0.0984ミリモル)とDMAP(42 mg、0.344ミリモル)を、無水塩化メチレン(20 mL)に化合物4 (1.0 g, 0.0246 ミリモル、図.4)を溶かした溶液に、0℃で20分にわたって添加した。塩酸1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド(「EDC」、28 mg、0.148ミリモル)を加え、反応混合物を徐々に室温まで温め、一晩攪拌した。溶液を比重によってろ過し、溶媒を気化させた。残留する固体をIPA (50 mL)から再結晶させて、純粋な化合物2(0.656 g、67%)を得た。
【0133】
構造を13C NMR(67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ213.56,186.82,186.50,171.27,160.76,155.93,155.50,153.21,150.51,135.55, 135.22,133.84,133.47,129.05,120.81,119.53,118.24,111.26,111.00,100.40, 69.0−72.5(PEG), 68.43,67.46,67.16,65.86,56.41,53.39,45.15,41.40,35.23,29.21, 24.35,22.72,21.57,16.61。
【実施例2】
【0134】
化合物 6 の合成
ロイシン−ドキソルビシン(130 mg、0.198ミリモル、図3)とDMAP(121 mg、0.99 ミリモル)を、無水DMF(30mL)に化合物5 (2.2 g、0.054ミリモル、図5)を溶かした溶液に加えて、化合物6 (図5)を調製した。室温で一晩攪拌した後、エチルエーテル(〜100mL)を反応混合物に加え、沈殿した固体をろ過した。固体 をIPA(70 mL)から2度再結晶させて、純生成物(2.09 g、93 %)を得た。
【0135】
構造を13C NMR (67.8 MHz、CDC13) によって同定した。ピーク: δ213. 40,186.56,186.23,171.23,160.61,155.83,155.65,155.23,154.25,150.51, 135.41,134.99,133.43,133.25,132.79,128.85,121.26,120.40,119.36,118.17, 111.06,110.88,100.34,69.0−72.5 (PEG), 68. 33,67.10,65.89,65.08,56.28,53.27, 45.03,41.20,40.61,40.41,35.25,33.50,29.07,24.23,22.65,21.40,16.52。
【実施例3】
【0136】
化合物 8 の合成
ロイシン−ドキソルビシン(80mg、0.122ミリモル)を、無水DMF30 mLに化合物7(1.6 g、0.41ミリモル、図4)を溶かした溶液に加えることで、上記の実施例2に記載した方法によって化合物8(図6)を調製し、混合物を反応させて、IPAから再結晶させて生成物8(1.44 g、85 %)を得た。
【0137】
構造を13C NMR(67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ 8 213. 64,186.80,186.42,171.32,171.21,160.76,155.97,155.41,154.30,150.68, 135.54,135.19,133.50,133.38,129.06,127.52,121.41,119.54,118.25,111.26, 111.06,100.47,69.0−72.5(PEG),68.54,67.20,66.13,65.25,56.43,53.48,45.11, 41.24,38.97,37.10,35.40,35.06,33.64,29.25,24.39,22.75,21.55,16.64。
【実施例4】
【0138】
化合物 10 の合成
ロイシン−ドキソルビシン(97mg、0.147ミリモル、図.7A)を、無水DMF30 mLに化合物9(2.0g、0.049ミリモル、図7A)を溶かした溶液に加えることで、上記実施例2に記載した方法によって化合物10(図7A)を調製した。IPAから再結晶させて、純化合物10(1.70 g、83 %)を得た。
【0139】
構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDC13)により同定した。ピーク:δ213. 71,186.93,186.55,171.35,168.14,160.88,156.03,155.51,135.61,135.31, 133.67,133.50,130.08,128.38,120.69,119.64,118.31,111.38,111.19,100.50, 69.0−72.5 (PEG),68.64,67.13,66.28,65.33,56.51,53.60,45.23,41.43,35.50,33.80, 29.47,24.49,22.79,21.68,16.69。
【実施例5】
【0140】
化合物 12 の合成
ロイシン−ドキソルビシン(134 mg、0.204ミリモル、図7B)を、無水DMF30 mLに化合物11(2.0g、0.049ミリモル)を溶かした溶液に加えることで、上記実施例2に記載した方法によって、化合物12(図7B)を調製した。IPAからの再結晶化によって、化合物12を精製した(1.69 g、82 %)。
【実施例6】
【0141】
化合物 14 の合成
化合物14(図8)を以下の通り調製した。
(ステップ1) 無水DMF90 mLに化合物1(6.88 g、0.170ミリモル、図.8)を溶かした溶液に、12−アミノドデカン酸(0.15 g、0.680ミリモル)とDMAP(0.114 g、0.934ミリモル)を加えた。その結果得られた反応混合物を50〜60℃の温度で18時間攪拌した。混合物をろ過し、ろ液を減圧下で気化させて、残留物をIPAから再結晶させて、化合物13 (6.2 g、90)を得た。構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDC13)で同定した。ピーク:δ 174. 58,155.79,152.97,150.20,134.19,128.77,127.31,120.52,69.0−72.5(PEG), 40.54,33.32,29.42,28.90,28.70,28.59,26.17,24.87, 24.36。
【0142】
(ステップ2) 上記のステップ1で得た化合物13(3.0 g、0.074ミリモル)、塩酸ドキソルビシン(256 mg、0.441ミリモル)、4−メチルモルホリン(「NMM」、130μL、1.18ミリモル)、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(「HOBT」、60mg、0.441ミリモル)を無水DMF/塩化メチレン(1:1) 80 mLに溶かした溶液に、EDC(113 mg、0.589ミリモル)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を気化させ、残留物をIPA(100 mL)から再結晶させ、純化合物14(2.80 g、91 %)を得た。
【0143】
構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ 213. 40,186.56,186.18,172.11,160.56,155.97,155.83,155.22,153.04,150.26, 135.41,134.96,134.23,133.45,133.26,128.83,127.38,120.60,120.38,118.14, 111.00,110.81,100.50,69.0−72.5 (PEG), 68.28, 67.28,67.04,65.89,65.02,56.26, 44.61,40.60,40.41,35.88,35.26,33.43,29.46,29.30,28.93,28.86,26.20,25.12, 16.55。
【実施例7】
【0144】
化合物 17 の合成
化合物17を、図9に図示する通りに調製した。
(ステップ1) 無水塩化メチレン50 mLに化合物13 (5.20 g、0.128ミリモル)を溶かした溶液に、ロイシンt−ブチルエステル(0.287 g、1.28ミリモル)、DMAP(0.281 g、2.30ミリモル)、およびEDC(0.197 g、1.02ミリモル)を加えた。反応混合物を室温で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、残留物をIPAから再結晶させて、15(4.8 g、92 %、図9)を得た。構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ 172.22,171.87,155.79,152.98,150.22,134.20,128.78,120.54,69.0−72.5(PEG), 50.62,41.37,40.55,35.96,29.43,28.88,28.73,27.49,26.19,25.05,24.89,24.39, 22.32,21.65。
【0145】
(ステップ2) 化合物15(4.70 g、0.114ミリモル)を、トリフルオロ酢酸25 mLと塩化メチレン50 mLに溶解させて、室温で2時間攪拌した。エチルエーテルを加えて、PEG生成物を沈殿させた。固体をろ過して、新たなエチルエーテルで洗浄して、化合物16(4.4 g、94 %、図9)を得た。構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDCl3)によって同定した。ピーク:δ 173.50,172.50,155.83,153.01,150.22,134.20,128.80,120.55,69.0−72.5 (PEG), 49.85,41.16,40.57,35.91,29.43,28.84,28.66,26.17,25.04,24.35,24.47,21.52。
【0146】
(ステップ3) 無水DMFと塩化メチレン(1: 1)90 mLに化合物16(3.3 g、0.080ミリモル)、塩酸ドキソルビシン (280 mg、0.480ミリモル)、NMM (130 uL、1.18ミリモル)、およびHOBT (74 mg、0.480ミリモル)を溶かした溶液に、EDC(120 mg、0.640ミリモル)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を気化させ、残留した固体をlPA (100 mL)から再結晶させ、純化合物17(2.90 g、85 %)を得た。
【0147】
構造を13C NMR(67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ 213. 30, 186.44,186.16,172.77,171.23,160.55,155.75,155.13,153.04,150.26, 135.37,134.91,134.22,133.38,133.19,128.81,127.38,120.58,120.38,119.27, 118. 14,110.97,110.79,100.24,69.0−72.5(PEG),68.26,67.27,67.01,65.10,56.21, 51.11,45.08,41.02,40.60,35.91,35.23,33.39,29.43,28.90,28.69,26.22,25.05, 24.23,22.58,21.61,16.48。
【実施例8】
【0148】
ドキソルビシン関連テトラパルテートプロドラッグの有効性の確認
ヌードマウスに注入した皮下のヒト卵巣癌(A2780)に対するPEG−leu−ドキソルビシン類似体の有効性を以下の通り検定した。
【0149】
少なくとも1週間順化した後、各ヌードマウスの左腋窩隣接領域にある皮下部位1箇所に、1x lO6(100,000)の採取したA2780卵巣癌細胞を注入することによって、腫瘍をヌードマウス内に定着させた。腫瘍注入部位を、週2回観察し、1回触診して評価した。カリパスで2寸法を測定し、式:腫瘍体積= (長さ x 幅2)/2)を用いて計算して、各マウスの腫瘍体積を測定した。腫瘍が平均体積およそ80 mm3に達した場合、マウスを、賦形剤(0.6 % NaCI中に20 m Mナトリウムリン酸塩 )の対照群、leu−ドキソルビシン、実施例1の化合物1、実施例4の化合物10、および実施例5の化合物12からなる実験群に分けた。腫瘍サイズが均一なるようにマウスを分類して、1ケージ当たり6匹のマウスになるようにグループ分けし、一生消えない識別をするためにイヤーパンチをした。1週間に1度の割合で3週間、尾の静脈から薬物を静脈注射で投薬した(Qd7 x 3)。マウスの体重および腫瘍のサイズを、試験開始時と、週に2回、5週間にわたって測定した。
【0150】
治療終了の1週間後に、腫瘍の全体的な成長を平均腫瘍体積として計算した。対照群の腫瘍サイズのメジアンが、およそ800〜1100 mm3 に達した場合と、治療後1週間にもう一度、対照に対する治療の百分率(T/C)の値も計算した。T/C 値(%)は、抗腫瘍の有効性に関する非定量的指標である。
【0151】
データを以下の表2に示す。
【0152】
【表2】
α=定着した腫瘍(〜80 mm3)を有するヌードマウスにおける静脈注射治療、n=6/群。
β=対照群の腫瘍体積のメジアンがおよそ1000 mm3 に達した場合と、最終服用(21日目)の1週間後に、治療群および対照群の腫瘍体積のメジアンを測定して、比較した。1000 mm3でT/C<42%を、米国国立がん研究所(NCI)の薬物評価部門(Drug Evaluation Branch)による、有意な抗腫瘍活性とみなした。
【0153】
従って、表2で示されるデータからわかるように、leu−ドキソルビシンのPEGコンジュゲート形態は、非コンジュゲートの親化合物よりも効果がある。
【実施例9】
【0154】
化合物 19 の合成
(ステップ 1) 本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,127,355号明細書、実施例21(その内容は、参照として、本明細書に組み込んでいる)に記載の通り、TFA・アラニン−カンプトテシン18を調製した。
【0155】
(ステップ 2) 18(185 mg, 0.36 ミリモル)を、無水塩化メチレン50 mLとDMAP(49 mg、0.40ミリモル)中に9 (4 g、0.0982ミリモル)を含有する溶液に加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、残留する固体を2−プロパノール(80 mL)から2回再結晶させ、純化合物19(3.5 g、86%)を得た。13C NMR (67.8 MHz、CDCl3)δ170.80, 167.30,166.08,156.33,151.53,147.99,146.72,145.53, 142.07,133.55,130.46,129.61,129.27,128.89,127.94,127.44,127.02,119.09, 107.16,95.35,69.74−65.23 (PEG), 59.13,49.17,39.32,30.76,21.02,16.45,15.36, 6.69.。
【実施例10】
【0156】
化合物 20 の合成
TFA・アラニン−カンプトテシン(185 mg、0.36ミリモル)18を、無水塩化メチレン50 mL とDMAP(49 mg、0.40ミリモル)に11(4.0 g、0.0983ミリモル)を溶かした溶液に加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、残留する固体を2−プロパノール(80 mL)から2回再結晶させ、純化合物20(3.5 g、86%)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDC13) 6 170. 83,166.23,156.50,155.21,152.10,151.39,148.20,145.70,144.62, 130.75,130.00,129.76,129.04,128.25,128.03,127.54,127.19,119.45,107.70, 95.44,69.91−65.25 (PEG), 49.31,44.90,30.98,16.82,15.31,15.20,6.81.。
【実施例11】
【0157】
化合物 21 の合成
TFA・アラニン−カンプトテシン(102 mg、0.179ミリモル)18 とDMAP (37 mg、0.30ミリモル)を、無水塩化メチレン40 mLに5 (2.0 g、0.0493ミリモル)を溶かした溶液に加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、残留する固体を2−プロパノール(60 mL)から2回再結晶させ、純化合物21(1. 77 g、87 %)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDC13) 8 171. 00,166.00,161.07,156.09,154.00,151.00,148.00,145.50,135.75, 130.55,129.56,128.81,127.75,127.41,127.02,126.69,120.70,119.00,107.70, 72.69−67.00 (PEG), 50.70,48.38,40.06,36.86,30.32,16.20,6.65.。
【実施例12】
【0158】
化合物 22 の合成
トルエン(75 mL)に化合物4 (5 g, 0.123 ミリモル)を溶かした溶液を共沸させて、25 mLの留出液を得た。反応混合物を30℃まで冷却した後、塩化オキサリル(0.031 g、0.246ミリモル)とジメチルホルムアミド一滴を加える。この混合物を30〜40℃で3時間攪拌した後に、2−メルカプトチアゾリン(0.044 g、0.369ミリモル)を加える。反応混合物を1時間還流した後、ろ過して減圧下で溶媒を除去する。粗残留物をIPA(100 mL)から再結晶させて、化合物22(4 g、90 %)を得る。13C NMRによって、構造を同定する。
【実施例13】
【0159】
化合物 23 の合成
100 mMのリン酸ナトリウム(pH 8.4)/65 mM NaCl緩衝液中の天然ウシヘモグロビン(bHb)を改質して、コンジュゲート化合物23を以下の通りに合成する。ポリプロピレン製の容器に、20 mL の22(4℃で、20 mMのリン酸ナトリウムリン/65 mMのNaCl緩衝液中に0.8 g溶解したもの)を、20 mLのbHb に、4℃ (11 mg/mLで、22.2 g) で、適度に攪拌しながら加える。反応のpHをモニターする。混合物を1時間攪拌して、グリシンを添加して反応をクエンチして、さらに15分間攪拌を続ける。システイン(4℃で、100 mMのリン酸ナトリウム/65 mM NaCl緩衝液中に最終濃度30 mMで溶解したもの)を加え、酸化ヘモグロビン(met−Hb) 構成体を還元し、反応混合物を4℃で16時間攪拌する。PEG−Hbを希釈し、製剤化バッファー(formulation buffer)(5 mMの重炭酸ナトリウム、4 mMのNa2HP04、1mMのNaH2 P04、150 mMのNaCI、pH 7.4)中にダイアフィルトレーションして、未反応のPEGおよび/またはPEG−グリシンコンジュゲートを除去した後に、化合物23を60 mg/mLまで濃縮する。PEG−Hbの純度を、サイズ排除HPLCによって測定する。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】実施例1〜5の方法によるドキソルビシンのテトラパルテートプロドラッグを調製する反応の概略を示す図であり、式中の芳香族は、ベンジル誘導体である。
【図2A】式Iの化合物の逐次加水分解によるテトラパルテートプロドラッグの分解についての一般的な概略を示す図である。図1の可変記号は上記の式Iの通りに定義される。反応段階の記号: (a): 制御可能な速度でのin vivo切断; (b)「第一」プロドラッグ ; (c) 水の存在下での高速反応; (d) Z−D は「第二」プロドラッグであり、実質的に細胞外腔に放出される; (e)細胞内へZ−Dの取り込みおよび細胞内での酵素加水分解によるD放出。
【図2B】化合物14(上の図)および17(下の図)として、本明細書で同定したテトラパルテートプロドラッグ化合物の分解についての特異的反応を示す図である。両系は、結果として、細胞内に実質的に放出される最終生成物ドキソルビシンを生じる。反応段階に関する記号は、図2Aの記号と類似しているので、(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)は、化合物14のin vivoでの分解反応に類似した反応段階であり、 (a´)、(b´)、(c´)、(d´)、および(e´)は、化合物17のin vivoでの分解反応に類似した反応段階である。段階(e´)の生成物は、D とZであるが、図は、Zの大部分がさらにC12の酸とロイシンに分解されるのを示す。
【図3】実施例1の方法1に記載する通りの化合物2の合成の概略図を示す。
【図4】実施例1の方法2に記載する通りの化合物2の合成の概略図を示す。
【図5】実施例2に記載する通りの化合物6の合成の概略図を示す。
【図6】実施例3に記載する通りの化合物8の合成の概略図を示す。
【図7A】実施例4に記載する通りの化合物10の合成の概略図を示す。
【図7B】実施例5に記載する通りの化合物12の合成の概略図を示す。
【図8】実施例6に記載する通りの化合物14の合成の概略図を示す。
【図9】実施例7に記載する通りの化合物17の合成の概略図を示す。
【0001】
本発明は、テトラパルテート(tetrapartate)プロドラッグに関する。本発明は、特に、例えば、抗腫瘍剤などとして、効力を高めるのに効果的な取り込み促進成分に結合した活性剤を送達するテトラパルテートプロドラッグを提供するポリマーコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、生物学的に有効な物質を哺乳動物に投与するいくつかの方法が提案されてきた。例えば、医薬剤などをはじめとする多くの生物学的に有効な物質は、水溶性塩として利用することが可能であり、比較的容易に医薬製剤中に含有させることが可能である。所望の生物学的に有効な物質が水溶液に不溶である場合か、或いはin vivoで急速に分解される場合に問題が生じる。例えば、アルカロイドは、特に溶液に難溶である場合が多い。
【0003】
生物学的に有効な物質を可溶化する一つの方法は、可溶性プロドラッグの一部としてそれらを含有させることである。従って、プロドラッグとしては生物活性物質または親化合物の化学的誘導体が挙げられ、投与すると最終的にin vivoで親化合物を放出する。プロドラッグによって、当業者はin vivoで薬剤作用の開始および/または持続の改変が可能となり、体内での薬物の輸送、分布または溶解度を改変することが可能である。さらに、プロドラッグ製剤によって、毒性を低減させ、および/または医薬製剤を投与する際に直面する困難を克服することができる場合が多い。
【0004】
プロドラッグの典型的な例には、有機リン酸エステル、或いはアルコールまたはチオアルコールのエステルが挙げられる。「Remington´s Pharmaceutical Sciences」, 16th Ed., A. Osol, Ed. (1980) を参照のこと (その開示内容は参照により本明細書に組み入れられている) 。
【0005】
プロドラッグは、定義上、親化合物または活性化合物の一形態である。通常、プロドラッグの加水分解速度(これに限定されない)による活性薬物の放出速度は、いくつかの因子の影響、特に、活性薬物を修飾基に結び付ける結合のタイプの影響を受ける。十分な量の親化合物が放出される前に、腎臓系または網状内皮系等などを介して排出されるプロドラッグを調製しないように注意しなければならない。プロドラッグ系の一部としてポリマーを組み込んで、薬物の循環半減期を拡大することが可能である。しかしながら、例えば、アルカロイドなどのいくつかの場合において、約10,000ダルトン未満の1種または2種のポリマーだけをコンジュゲートさせると、特に、幾分加水分解耐性の結合を用いた場合、得られたコンジュゲートは、in vivoですぐに排出されることが測定されている。実際、上記のコンジュゲートは、体内から非常に急速に排出されるので、加水分解されやすいエステル結合を用いたとしても、十分な親分子がin vivoで再生されない。このことは、加水分解耐性の結合を用いる場合でさえ、タンパク質、酵素などの成分とは関係がない場合が多い。上記の場合、それぞれ約2〜5 kDaの分子量を有する多種のポリマー鎖を用いることで、分子量および循環半減期がさらに高められる。
【0006】
これらの問題に取り組んでいる一例は、例えば、共有に係る特許出願第09/183,557号(1998年10月30日出願)および08/992,435号(1997年12月17日出願)に記載されている。これらは、様々な生物学的に有効な物質のポリマーコンジュゲートを含有する二重プロドラッグ、つまりトリパルテート(tripartate)、および上記のコンジュゲートを形成する方法を教示する。投与した後適切な時間内に、例えば1,4−アリールまたは1,6−アリール(例えばベンジル)脱離反応によって、十分な量の「第二の」、より一層反応性の高いプロドラッグ化合物を生成する速度にてin vivoで加水分解するように二重プロドラッグの結合を選択することで、多種の低分子量の薬物、薬剤などの薬物動態の制御の改善がもたらされる。しかしながら、さらなる可能性、特に、合理的に設計したプロドラッグコンジュゲートによる、対象の組織または細胞への診断薬剤および/または治療薬剤の選択的ターゲティングについての可能性は残っている。
【0007】
特に、プロドラッグについての所望の標的組織の1つは、腫瘍組織である。腫瘍が、一般的に、透過性の亢進および滞留の効果(「EPR(enhanced permeability and retention)効果」)を特徴とする異常血管透過性を呈することは良く知られている。このEPR効果によって、有利に、生物学的に有効な物質が、巨大分子、例えばタンパク質(酵素および/または抗体、およびそれらの誘導体またはフラグメントなど)の形態で、腫瘍細胞間質組織腔に容易に入れるようになる (例えば、Maedaらによる評論記事「2000, J. of Controlled Release」 65: 271−284 (参照により本明細書に組み入れらている)を参照のこと)。腫瘍に加えて、ある種の他の組織も、炎症などの状態下で、同一のEPR効果を呈することが可能である。
【0008】
要するに、EPR効果の働きに関するいかなる理論や仮説に縛られることなく、EPR効果によって、巨大分子または巨大分子物質(ポリマーベースの送達系を含めて)が浸透するようになると考えられている。このことにより、腫瘍組織腔(例えば、腫瘍間質腔)へのポリマーコンジュゲートのかなり選択性のある送達がもたらされる。しかしながら、その後、同一のEPR効果によって、放出されたプロドラッグおよび/または任意の新たに放出された比較的低分子量の生物学的に有効な物質が、ターゲット組織の細胞外組織腔からすばやく拡散するようになると考えられる。周囲細胞が十分な速度で放出された活性剤を吸収できないならば、該活性剤は、放出部位から離れて、血流またはリンパ流中に拡散すると考えられる。
【発明の開示】
【0009】
従って、多段階のプロドラッグ概念によって利益を得て、かつ、EPR効果を呈する腫瘍細胞および/または対象の他の組織の細胞中への放出された生物学的に有効な物質のより迅速な取り込みまたは輸送を可能にすることによってEPR効果を補整または制御するプロドラッグを作製するさらなる技術を提供する必要性が継続している。
【0010】
概して、本発明は、式I:
【化1】
で表される化合物の形態のテトラパルテートプロドラッグを提供する。
上記式中、L1は二官能連結基である。
【0011】
概して、Dは、脱離基である基、または細胞に送達される化合物の残基である。さらに特定すると、Dは、生物活性物質の残基、またはHであり、(y)は、1以上の正の整数である。(y)は、1〜約5の範囲であるのが好ましい。(y)が1より大きい場合、各D基は、独立して選択される。
【0012】
Dは、治療を要する動物の標的細胞または細胞への送達が望まれる任意の生物活性物質、例えば抗炎症剤、解毒剤、抗癌剤 、およびそれらのまたはその他のいずれかの症状に関する診断剤などでありうる。
【0013】
好ましくは、Dは、抗癌剤、抗癌剤プロドラッグ、検出タグ、およびそれらの組み合わせである。テトラパルテートプロドラッグに結合可能である抗癌剤または適切なタグのいずれも企図する。上記の例として少しだけ例を挙げるとすれば、アントラサイクリン系化合物、トポイソメラーゼI阻害物質、ダウノルビシン、ドキソルビシン、p−アミノアニリンが挙げられる。
【0014】
Dが脱離基である場合、Dは、例えば、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N−ヒドロキシフタルイミジル、p−ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジルおよび/またはチアゾリジニルチオンでありうる。
【0015】
Zは、[D]yに共有結合しており、Zは、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせである。場合によっては、Zは、一価、多価、またはさらに好ましくは二価であり、式中、(y)は、1または2である。Z自体には、場合によって、アミノ酸残基、糖残基、脂肪酸残基、ペプチド残基、C6−18のアルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=O)、−C(=S)、および−C(=NRI6)[式中、RI6は、以下に定義する通りである]が含まれる。
【0016】
Zに少なくとも1種のアミノ酸残基が含まれる場合、アミノ酸は、例えば少しだけ挙げるとすれば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、および/またはそれらの組み合わせである。Zにペプチドが含まれる場合、ペプチドのサイズは例えば約2〜約10個のアミノ酸残基の範囲である。好適な一実施形態において、ペプチドは、Gly−Phe−Leu−GlyまたはGly−Phe−Leuである。
【0017】
さらに、Y1〜Y4は、独立して、O、S、またはNR12であり、R11は、一価または二価のポリマー残基である。
【0018】
R1、R4、R9、R10、R12、およびR16は、独立して、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、および/または置換C1−6ヘテロアルキルである。
【0019】
R2、R3、R5、およびR6は、独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアン−、カルボキシル−、C1−6カルボキシアルキルおよび/または置換Cl−6アルキルカルボニルである。
【0020】
Arは、式(I)に含まれる場合、 多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、式中、(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して0または1であり、(p)は、0または正の整数である。ある好適な実施形態において、(p)は、1である。
【0021】
L1は、独立して、以下の基:
【化2】
[式中、Mは、XまたはQ(ここで、Xは、電子求引基であり、Qは、
【化3】
から3〜6の原子の位置に自由電子対を有する基である)である]のうちの一つである。例を挙げると、Qは、NH、O、S、−CH2−C(O)−N(H)−、および/またはオルト置換のフェニルからなる群の基で置換されたC2−4アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキル基うちの1つであり、Xは、例えば、O、NR20、
【化4】
S、SO、およびSO2のいずれか1つであり、(a)と(n)は、独立して、0または正の整数であり、(b)は、0または1であり、(g)は、1以上の正の整数であり、(q)は、3または4であり、R7、R8、R14、R15、R17、R18、およびR20は、R1を定義した同じ群から独立して選択され、Y5、およびY6、は、独立して、O、S、またはNR12である。(y)が1より大きい場合、D基の各々は、それぞれ同一か、もしくは異なることが理解されるだろう。
【0022】
(g)の範囲は1〜約20、またはそれ以上が好ましく、しかしさらに典型的には、1〜約10の範囲である。場合によっては、
【化5】
は、天然または非天然のどちらかのアミノ酸残基を含有する。
【0023】
R11は、例えば、数平均分子量約2,000〜約100,000ダルトンを有する一価のポリマーまたは二価のポリマーである。
【0024】
本発明のテトラパルテートプロドラッグを製造する方法も提供する。一実施形態において、上記方法には、式 (III):
【化6】
で表される化合物と、式(IV):
(IV) Lx − Z − [D]y
[式中、Bは、式(III)については脱離基であり、Dが脱離基である場合について上記した通り定義される]で表される化合物とを反応させることが含まれる。
【0025】
Lxは、式(IV)については脱離基であり、Dが脱離基である場合、上記の通り定められる。
【0026】
L1、Ar、Z、D、Rl−R6、R9−R11、Yl−Y3および整数は上記の通り定義される。(III)と(IV)の反応は、溶媒と塩基の存在下で実施されるのが好ましい。溶媒は、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン、ジメチルホルムアミド、および/またはそれらの組み合わせである。ジメチルホルムアミドが、一般的に好ましい。塩基は、例えば、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、および/またはそれらの組み合わせである。
【0027】
さらに別の本発明のテトラパルテートプロドラッグを製造する方法は、式(V)
【化7】
[式中、Laは、Dが脱離基である場合に定義した通りの脱離基である]で表される化合物と生物活性物質とを反応させて実施される。L1、Ar、Z、D、Rl−R6、R9−R11、Yl−Y3および整数を上記の通り定義される。
【0028】
(V)と生物活性物質との反応は、カップリング剤(例えば、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、ジアルキルカルボジイミド、2−ハロ−l−アルキル−ハロゲン化ピリジニウム、1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド、1−プロパンホスホン酸の環状無水物、フェニルジクロロリン酸塩、および/またはそれらの組み合わせ)の存在下で実施する。(V)と生物活性物質の反応は、溶媒と塩基の存在下で、例えば、従来の合成法に関して上記に記載の通りに実施される。
【0029】
例えば、式Iの化合物を必要とする動物に有効量の式1の化合物を含有する薬学的に許容できる組成物を投与することによって動物における疾患または障害を治療することにおける、本発明のテトラパルテートプロドラッグの使用方法を提供する。特に、生物活性物質Dでの治療を要する細胞に生物活性物質Dを送達する方法を提供する。この方法は、式Iの化合物を該細胞が存在する動物に投与するプロセスによるものであり、ここで、式Iの化合物は、in vivoで細胞外にて加水分解されて、式I−(i)
【化8】
[式中、Y*は、Y2の残基であり、HO−、HS−、またはHNR12−からなる群から独立して選択される]で表される化合物が生じた後、式I−(i)は、式I−(ii)
【化9】
[式中、Y**は、Y*の残基であり、O、S、またはNR12からなる群から独立して選択される]で表される化合物と、C02と、式I−(iii):Z−[D]yに自然に加水分解され、Z−[D]yは、細胞膜を通過し、細胞膜で加水分解されて、Dを遊離する。
【0030】
従って、本発明は、例えば、腫瘍細胞などの特定の重要な標的細胞に生物活性物質を送達するための三重プロドラッグ組成物(以下「テトラパルテート」プロドラッグという)を提供し、また、テトラパルテートプロドラッグの合成法および使用法も提供する。本発明のテトラパルテートプロドラッグ組成物には、ポリマー部分と生物活性物質との加水分解可能な結合が含まれる。生物活性物質は、例えば、生物活性のある求核性試薬から誘導された成分、つまり、天然の薬物もしくは未修飾の薬物、または診断タグである。上記の結合は、適切な時期に、生物学的に活性な親化合物を十分な量生じる速度で加水分解するように設計されたエステル結合および/またはアミド結合が好ましい。本発明の目的にとって「十分な量」という用語は、治療効果がある量を意味する。
【0031】
本発明は、概して、ポリマーベースのプロドラッグコンジュゲート(例えば、上記で論じたような二重プロドラッグ組成物)への組み込みに適切である生物活性物質自体が、結合していた組成物から加水分解によって放出された後には不活性であるが、さらなる化学プロセス/化学反応を受けた後に活性となりうる物質/化合物でありうるとする原理に基づくので、本発明は、三重作用性プロドラッグを提供する。本発明のコンジュゲートは本質的に4つの部分で提供されるので、本明細書では上記の三重作用のプロドラッグを「テトラパルテート(tetrapartate)」プロドラッグと称する。
【0032】
本発明のテトラパルテートプロドラッグに関して、上記の二重プロドラッグ輸送系によって血流に移送される治療薬剤または診断薬剤は、対象の標的細胞に入り込むか或いは能動輸送されるまで不活性を保ち、標的細胞内に入るか能動輸送されると、細胞内の化学物質によって(例えば、組織または細胞に存在する酵素または酵素系によって)活性化されうる。
【0033】
特に、ある種の追加の基を、上記の二重プロドラッグコンジュゲートの一部分として生物活性物質に結合させると、多くのこのような生物活性物質の有効性が、このような追加の基を持たない類似のプロドラッグで観察される有効性と比較して著しく増加することが今や発見された。本発明のテトラパルテートプロドラッグコンジュゲートは、例えば、ある種の生物活性物質(例えば、特に低分子量の治療薬剤および診断薬剤)の送達および活性において、例えば治療および/または診断活性について、有効性の増大をもたらすものと考えられる。ポリマーベースのコンジュゲートがin vivoで加水分解するように調製された本発明のテトラパルテートプロドラッグは、細胞外液中で生物活性物質を放出するようにコンジュゲートを切断するが、一方で生物活性物質は前記の追加の基に結合したままである。生物活性物質は、非限定であるが、低分子量の治療薬剤および/または診断薬剤であるのが好ましい。以下に例証する通り、好適な一実施形態において、これらは低分子量の抗腫瘍剤であり、治療する組織は、腫瘍組織である。
【0034】
本発明がいかに機能するかに関し、いかなる理論または仮説にも拘束されるものではないが、輸送エンハンサーとして選択された追加の基に依存して、生物活性物質の腫瘍細胞への輸送速度は、例えばEPR効果を呈する組織の細胞外組織腔に生物活性物質を保護された形態および/または輸送増大形態で送達することによるものであると考えられる。記述の便宜上、本明細書では、上述した「追加の基」を「輸送エンハンサー」と記載する。
【0035】
しかしながら、上記の便宜上に記載した用語の提供するにあたり、標的細胞への生物活性物質の輸送を専ら高める追加の基だけに本発明の範囲を限定するものではない。なぜなら、本発明のテトラパルテートプロドラッグが有利である一因には、細胞外の加水分解酵素活性からZ−[D]yを保護するといった追加のまたは代替のメカニズムにもありうると考えられるからである。
【0036】
またさらに任意選択において、輸送エンハンサーは、細胞膜の輸送系についての公知基質の中から選択される。単に例を挙げると、細胞が、ある種の栄養分および内分泌因子などを能動輸送することは公知であり、そのような栄養分またはその類似体を用いることにより標的細胞中への生物学的に有効な物質の能動輸送が容易に高められる。上記の栄養分の例には、アミノ酸残基、ペプチド(例えば、約2〜約10残基またはそれ以上のサイズ範囲の短鎖ペプチド)、単純糖および脂肪酸、内分泌因子などが挙げられる。
【0037】
望ましいアミノ酸残基には、公知の天然L−アミノ酸全てが含まれる。例えば、以下に提供する例では、輸送エンハンサーとしてのL−イソロイシンを例証する。驚くことに、Dアミノ酸も、輸送エンハンサーとして有用であることが発見された。例えば、D−アラニンとL−アラニンの両方、その他の類似のアミノ酸の光学異性体は、同一の活性を示す。天然アミノ酸の誘導体および類似体、さらに当技術分野では公知である種々の非天然型アミノ酸(D またはL)、疎水性または非疎水性アミノ酸も、本発明の範囲内であると考える。単なる例として、アミノ酸類似体および誘導体には、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、ベータ−アラニン、ベータ−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、n−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチルイソロイシン、6−N−メチルリシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、その他(多すぎて列挙できないが、それらは、63 Fed. Reg., 29620, 29622に列挙されており、参照により本明細書に組み入れられている)がある。
【0038】
短鎖ペプチドは、例えば、上述の通り、アミノ酸残基が2〜約10の範囲、またはそれ以上のペプチドである。本発明の本実施形態において、上記ペプチド輸送エンハンサーは、疎水性である必要はないと考えられているが、結合した低分子量の薬剤の取り込みを高めるため、および/または低分子量の薬剤が通常の血流において早期に加水分解するのを回避するために他の様式で機能すると考えられている。例えば、ペプチド輸送エンハンサー、および他の同程度の分子量範囲を有する輸送エンハンサーは、血漿性の加水分解酵素による生物活性剤からの切断を立体的に妨害するものと考えられるが、その後、標的細胞内で様々なペプチドおよび/またはカテプシンなどのプロテアーゼによって切断される。
【0039】
輸送エンハンサーは疎水性基であるのが好ましい。疎水性がいかに有効性に貢献しているかに関していかなる理論または仮説に縛られるものではないが、疎水性基は、細胞外組織腔(例えば、血漿)内に存在する加水分解酵素等の攻撃を抑制することによって、生物活性剤からの輸送エンハンサーの細胞外切断を抑制すると考えられている。ゆえに、好適な輸送エンハンサーには、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンなどの疎水性アミノ酸、および上記のような非天然生成の誘導体やそれらの類似体が含まれる。
【0040】
さらなる任意選択において、輸送エンハンサーは、疎水性の有機基である。単に例を挙げると、有機基は、C6−18またはそれ以上のアルキル、アリール、または置換ヘテロアリールまたは非置換ヘテロアリールである。有機基輸送エンハンサーは、例えば、−C(=S)および/または−C(=Y3)をはじめとする有機官能基を網羅し含むものである。
【0041】
本発明の本質を理解するために、いくつかの定義および説明を以下に提供する。用語「テトラパルテート」は、プロドラッグコンジュゲートを意味し、特に、上記で論じた通りの二重プロドラッグの特徴と、生物活性化合物の残基とポリマー基の間に位置する輸送エンハンサーとしての追加の基とを組み込んだコンジュゲートを意味し、4部構造を形成しており、生物活性剤がコンジュゲートの第4部分である。この構造によって、生物活性化合物の残基は、標的細胞への輸送と放出が実質的に最適化される。ゆえに、「テトラパルテート」の4番目の要素は、生物活性化合物の残基そのものである。さらに、検出タグを組み込んだ診断用のテトラパルテートコンジュゲートも考えられ、本明細書で本発明のコンジュゲートに関する用語「テトラパルテートプロドラッグ」または単に「プロドラッグ」の使用には、指定または区別しない限り、概して、タグ付けされた薬剤を含むコンジュゲート、ならびに診断試薬を製造する方法および送達する方法も含まれる。
【0042】
特に明記しない限り、本発明の意図する用語「生物活性物質」、「生物活性化合物」および/または「生物活性剤」などは区別なく用いられる。これらの用語は、例えば、薬物または医薬品、および/または診断薬剤または診断試薬(検出標識またはマーカなど)を意味する。本明細書における用語「薬物」「薬剤」「医薬」および「活性剤」は、特に明記しない限り、特に動物にin vivo投与した場合に有用な活性を有する化合物、および/またはその前駆体を意味する。
【0043】
前述の通り、生物活性は、例えば医療目的および/または診断目的のために、動物またはヒトにおいて有用であるような物質または化合物などの任意の特性である。生物活性は細胞内腔で現れるのが好ましい。つまり、非限定であるが、薬物または診断薬剤が、対象の1種以上の標的細胞の細胞質および/または核に送達/放出されたら有用であるのが好ましい。
【0044】
本発明の目的上、単数または複数の使用は、言及する項目または対象の数量を限定する意味ではない。従って、特に明記しない限り、細胞、ポリマー、または薬物に関して単数を用いる場合は、1個の細胞だけを取り扱うのではなく、1個の分子だけを調製もしくは利用するのではなく、および/または1つの薬物だけを利用するのではなく、複数を用いる場合は、単数の関連する項目への適用を除外するものではない。さらにこの点に関し、本発明の目的上、用語「細胞」「細胞型」「標的細胞」などは、特に明記しない限り区別なく用いられ、単数および複数細胞の両方を意味するが、治療する動物または患者の正常なまたは病的な組織(単数)、組織(複数)もしくはその他の系または構成成分に組織化される細胞である。
【0045】
本発明の目的上、用語「残基」は、例えば利用可能なヒドロキシル基またはアミノ基の修飾により結合した状態の生物活性化合物の一部を意味するものと解釈されるべきであり、生物活性化合物は反応に付された後、プロドラッグキャリアー部は、例えば各々エステルまたはアミド基を形成する。
【0046】
本発明の目的上、用語「アルキル」には、例えば、直鎖状、分岐状、置換されたC1−12アルキル(アルコキシ、C3−8シクロアルキルまたは置換シクロアルキルなどを含む)が含まれると解釈するべきである。
【0047】
本発明のプロドラッグに、共有に係る特許出願第09/832,557号および08/992,435号によって教示される二重プロドラッグが含まれる場合、ポリマー部分が加水分解によって最初に放出された後、結果として生じる「第二プロドラッグ」成分が、1,4−または1,6−アリール(例えば、ベンジル)脱離反応を経て、例えば、さらなるプロドラッグを含有する成分を再生するのが通常好ましい。その後に、放出された成分が、拡散および/または標的細胞内に輸送され、組み込まれたプロドラッグの残りの実質的な部分が、さらに細胞内酵素によって切断または加水分解されて、生物活性化合物を放出する。
【0048】
さらに、用語「癌」または「腫瘍」は、抑制されない異常な細胞増殖を呈する細胞を特徴とする無数の疾患を網羅する臨床上記述的な用語である。用語「腫瘍」は、組織に適用する場合、一般的に、任意の異常な組織成長、つまり過度の異常な細胞増殖を意味する。用語「癌」は、悪性腫瘍またはそれから起こる疾患状態を記述するのに一般に用いる比較的に古い用語である。場合によっては、当技術分野では、新生物としての異常な成長、および悪性の新生物としての悪性の異常な成長を意味する。上記の一般的な臨床用語は、本明細書において細胞、組織、および/または疾患または障害とみなされる1種以上の状態に関連して使われる場合、特に指定しない限り、区別なく使用され、同義語であることを意図する。
【0049】
A. 式(1 )
本発明の一態様において、式(I)
【化10】
[式中、Llは、二官能連結基であり、例えば、Llは、独立して以下の基
【化11】
うちの1種である]で表される化合物を提供する。
【0050】
簡潔に例を挙げると、任意の一実施形態において、Llは、
【化12】
である。
【0051】
さらなる実施形態において、Zは、Dに共有結合している輸送エンハンサーおよび/または保護基であり、Zは、細胞中へのZ−[D]yの細胞内送達が、Zを持たないDの細胞内送達よりも増大または改善されるように選択される。
【0052】
ある実施形態において、Zとしては、場合によっては、以下の基、すなわちアミノ酸残基、糖残基、脂肪酸残基、ペプチド残基、C6−l8アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=O)、−C (=S)および−C(=NR16)、および/またはそれらの組み合わせのうち1種が挙げられる。
【0053】
Dは、脱離基である基、または細胞に送達される化合物の残基である。非限定であるが、Dは、生物活性物質またはHであるのが好ましい。
【0054】
当業者ならば、各Dは、独立して選択することが可能であり、その結果、対象の標的細胞に送達するためにZに結合する5種以上もの様々な種類の基がありうることを理解するだろう。Dが、治療薬剤または薬物であるのが好ましいが、Dは、場合によっては、診断薬剤である。
【0055】
簡潔に例証すると、さらなる任意選択の実施形態において、yは、2であり、Zは、二価であり、Dは、同一細胞型または対象の組織型の細胞へ送達される治療薬剤と診断タグの両方を含む2種の成分でありうる。その上さらに、上記の複数のD成分は、好ましくは1種の細胞を標的とした複数の異なる治療薬剤を含有し、送達されて一緒に放出された場合には、その様々な薬剤が相乗的に作用して、所望の治療効果を達成する。好適な任意選択の一実施形態において、Dは、1種以上の抗癌剤および/または抗癌剤プロドラッグ、またはそれらの残基である。
【0056】
さらなる実施形態において、Dは、H、または
【化13】
[式中、Bは、H、脱離基、アミン含有成分の残基、またはヒドロキシル含有成分の残基であり、
Y1−6は、独立して、O、SまたはNR12であり、
Mは、XまたはQ(ここでは、Xは、電子求引基であり、Qは、
【化14】
から3〜6原子の位置に自由電子を有する基である)である]
であり、
R1、R4、R7、R8、R9、R10、R12、R14、R15、R16、およびR18は、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3 − 8シクロアルキル、C1 − 6置換アルキル、C3 − 8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1 − 6ヘテロアルキル、および置換C1 − 6ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、
R2、R3、R5およびR6は、水素、C1 − 6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1 − 8ヘテロアルキル、C1 − 8ヘテロアルコキシ、置換C1 − 6アルキル、C3 − 8シクロアルキル、C3 − 8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシル−、C1 − 6カルボキシルアルキル、およびC1 − 6アルキルカルボニルからなる群から独立して選択され、
Arは、式(I)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(b)、(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して 0または1であり、
(a)と(n)は、独立して0または正の整数であり、
(p)は、0または正の整数であり、
(q)は、3または4であり、
R11は、ポリアルキレンオキシドなどのポリマーである。
【0057】
B. Ar 基の説明
式(I)に関して説明すると、Arは、式(I)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であると解釈しうる。主要な特徴は、Ar基が本質的に芳香族であることである。一般的に、芳香族であるためには、環状分子平面の上下両方の「電子雲」内に、α電子を共有しなければならない。さらに、α電子の数は、ヒュッケル則(Huckle rule)(4n+2)を満たさなければならない。当業者は、芳香族性の要件を満たし、本明細書での使用に適切である基が非常に多くあることを理解するだろう。
【0058】
好適な芳香族炭化水素の基には、限定することなく、
【化15】
が含まれる。
【0059】
上記に列挙した芳香族の基において、JはO、S、またはN−Rl9であり、EとZは、独立して、C−Rl9またはN−Rl9であり、Rl9は、式(1)におけるR9を定義するのと同じ基(例えば、水素、C1−6アルキルなど)から独立して選択される。5員環および6員環の異性体もまた同様に考えられ、ベンゾおよびジベンゾ系ならびにその関連同族体も考えられる。ヒュッケル則に従うならば、芳香族環を、場合によっては、O、S、NRl3などのヘテロ原子で置換することが可能であることを当業者ならば理解するだろう。さらに、このような用語が当技術分野で一般的に理解されているように、芳香族または複素環式構造は、場合によっては、ハロゲンおよび/または側鎖で置換されていてもよい。しかしながら、本発明のAr基に適切なすべての構造は、以下の式I−AおよびI−B
【化16】
[式中、全ての可変記号は式(I)に関して上記に定義した通りである]に示す通り、Y3およびC(Rl)(R4)基を同一平面でパラまたはオルト配置に配置させることが可能である。
【0060】
Ar基が、Y3およびC(Rl)(R4)基をパラ配置で含む場合、本発明の好適な態様は、(r)、(s)、(t)、および(u)を1と定義し、R2およびR6をメチル、Cl−6アルキル、メチル、Cl−6アルコキシ、およびメトキシからなる群から独立して選択されると定義する。さらに好ましくは、R2およびR6は、両方ともメチルまたは両方ともメトキシ基のどちらかである。さらに、R3およびR5は、両方とも水素であるのが好ましく、RlおよびR4は水素、CH3、またはCH2CH3のいずれかであるのが好ましい。Y1からY4まで(例えば、Y1 − 4)は、OまたはNR12であるのが好ましい[式中、R12は、HまたはC1−6アルキルまたは置換アルキルである]。Y1およびY4がOであるのがさらに好ましい。
【0061】
本発明の目的上、置換アルキルには、カルボキシルアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、およびメルカプトアルキルが含まれ、置換シクロアルキルには、4−クロロシクロヘキシルなどの基が含まれ、アリールには、ナフチルなどの基が含まれ、置換アリールには、3−ブロモフェニルなどの基が含まれ、アラルキルには、トルイルなどの基が含まれ、ヘテロアルキルには、エチルチオフェンなどの基が含まれ、置換ヘテロアルキルには、3−メトキシ−チオフェンなどの基が含まれ、アルコキシには、メトキシなどの基が含まれ、およびフェノキシには、3−ニトロフェノキシなどの基が含まれる。ハロは、フルオロ、クロロ、ヨード、およびブロモが含まれると解釈すべきである。
【0062】
C. リンカー基 L 1
上記に示す通り、本発明には、
【化17】
と結合した場合、アミノ酸残基リンカーを形成し、或いは、(p)が1より大きい場合ペプチド残基リンカーを形成する二官能連結基L1が含まれる。
【0063】
適切なアミノ酸残基は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはプロリンをはじめとする天然または合成(つまり非天然)のアミノ酸から選択することが可能である。いくつかの好適なペプチド残基としては、Gly−Phe−Leu−GlyおよびGly−Phe−Leuが含まれる。アミノ酸残基またはペプチド残基の末端アミノ基は、R11(つまりポリマー)に隣接しうることを記しておく。ペプチドは、容易に合成することが可能であるか、或いは、本明細書に包含される市販品から入手可能である。
【0064】
別の実施形態において、L1としては、電子求引基(本明細書でXと称す)もしくは、
【化18】
(本明細書でQと称す)から3〜6原子の位置に自由電子対を有する基のいずれかの基(M)が挙げられる。特に好適な実施形態において、本発明のテトラパルテートコンジュゲートは、置換ベンジルである芳香族基に基づき、in vivoでのプロドラッグ内の最初の2箇所での切断は、1,4または1,6ベンジルの脱離メカニズムに基づいている。本実施形態は、図1に図示するようなコンジュゲートを提供する。図1において、以下に提供する実施例1〜5で生成する化合物の合成にしたがう一般的な反応体系の概要を示す。前駆体化合物(図1、化合物a)を、ロイシン−ドキソルビシン(「leu−dox」)、ジメチルアミノピリジン、ジメチルホルムアミドの存在下で反応させて、(図1の化合物b)を合成した[図中の記号を以下の表1に示す]。
【0065】
【表1】
【0066】
D. 二重プロドラッグ結合部
L1を、
【化19】
に結合させている、テトラパルテートプロドラッグ系の最初の不安定な結合は、投与後適切な時間内に、十分な量の「第二」のプロドラッグ化合物を生成する速度で、エステラーゼ触媒による加水分解などによってin vivoで加水分解するように選択される。本発明の目的上、用語「十分な量」は、後に、in vivoで十分な1,4または1,6−ベンジル脱離を受けて未変性の化合物を放出し、所望の効果を達成しうる量を意味するものとする。(n)は、1〜約12の整数であるのが好ましい。さらに好ましくは、(n)は、1または2である。
【0067】
1. 電子求引基 X
上記態様の式(I)において、式中、L1には、Mが含まれ、その基は、本明細書でXと示す電子求引基でありうる。本発明の目的上、「電子求引基」は、共有電子を引っ張って、炭素をさらに電気的に陽性にする傾向がある基である。その結果、今度は、カルボニル基が不安定になり、さらに急速な加水分解が起こる。ゆえに、Xがエステルに対してα位である場合、Xは、加水分解速度および酵素による切断速度を調整する。
【0068】
特に、Xは、O、NR20、
【化20】
[式中、Y6は、Y1を定義したのと同じであり、R12およびR17は、上記の定義の通り(つまり、H、C1−6アルキル、分岐アルキル、アリールなど)である]、S、SO、SO2などの基でありうる。R1は、上記式Iを定義したのと同じである。しかしながら、XがNR20である場合、R20は、H、メチルもしくはエチルなどのC1−6のアルキル、または置換C1−6アルキルであるのが好ましい。Xが、OまたはNR20のどちらかであるのが好ましい。
【0069】
2. L 1 の Q 部分
場合によっては、L1にQが含まれる場合(ここで、Qは、
【化21】
基から3〜6原子の位置に自由電子対を有する基である)、ポリマーR11は、酸素などのヘテロ原子を介してQと結合するのが好ましい。好適な実施形態において、自由電子対は、このヘテロ原子である酸素から5個の原子にある。Qは、限定するものではないが、C2−4アルキルまたはシクロアルキル、O、S、およびNR12からなる群のメンバーで置換されたアリールまたはアラルキル基から選択することができる。自由電子対は、自由電子対とY4の間に規定の間隔が保たれる限り、Q基に沿ってどこにでもに位置することが可能である。
【0070】
上記の実施形態において、R11は、NR12、OまたはSを介してQに結合する。従って、Qは、アンキメリックアシスタンス(隣接基効果)によってプロドラッグの結合の加水分解を促進する。なぜなら、好ましくはエステル結合の加水分解の際に、自由電子対部分が、3員環〜6員環、好ましくは5員環の副産物を生じ得るからである。
【0071】
Qは、また、NH、O、S、−CH2−C(O)−N(H)−、および
【化22】
[式中、R21は、上記のR12を定義したのと同じ基から選択され、Tは、Qに結合するいずれかの基である]などのオルト置換フェニルからなる群のメンバーで置換されたC2−4アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル基からなる群から選択することも可能である。
【0072】
3. プロドラッグの加水分解による薬物の生成
本発明のプロドラッグ化合物は、加水分解の半減期(t1/2)が血漿での排出(elimination)の半減期(t1/2)よりも小さくなるように設計される。化合物に含まれる結合は、血漿中で、親化合物(つまり、アミノまたはヒドロキシル含有の生物活性化合物)との輸送増大コンジュゲートを排出前に十分量放出させるのに十分短い時間のin vivo加水分解速度を有する。本発明の好適な化合物(つまり、(n)が1である化合物)には、血漿中での加水分解に対するt1/ 2が約5分〜約12時間の範囲である化合物もある。好ましくは、組成物は約0.5〜約8時間の範囲の血漿加水分解t1/ 2を有し、最も好ましいのは、約1〜約6時間である。
【0073】
4. 1,4 または 1,6− ベンジル脱離:
取り込みエンハンサーに結合した未変性薬物の放出および輸送エンハンサーからの未変性薬物の細胞内放出
コンジュゲートの二重プロドラッグ部がin vivoで一旦加水分解されると、通常、エステラーゼ活性またはpH緩和活性(pH moderated activity)または環形成反応によって、ポリマー残基が切断され、その結果第二プロドラッグ成分が残る。
【0074】
本発明のテトラパルテートコンジュゲートまたはプロドラッグがどのように作用するかに関して、いかなる理論または仮説によっても拘束されるものではないが、取り込みに関連した生物学的に有効な物質が一旦標的細胞に入ると、様々な細胞内のペプチダーゼおよび/またはプロテアーゼ(例えばカテプシンを含む)が、例えば酵素的加水分解によって輸送エンハンサー成分を切断して、標的細胞内に生物学的に有効な物質を放出する。以下の分解スキームは例証する目的のために提供され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0075】
図2Aおよび2Bを参照すると、Arがベンジル誘導体である場合、1,4または1,6−ベンジル脱離(または、他の芳香族基との類似反応)がin vivoで起こり、電子移動によって所望の輸送が高められた未変性化合物が生成し、不可逆分解が起こり、輸送が高められた未変性化合物が放出される。
【0076】
従って、図2Aは、in vivoでの分解反応を概略的に図示するものであり、式中の出発物質であるテトラパルテート化合物の可変記号は、式Iに関して上記で記載した通りに定義される。図2を参照すると、図示したテトラパルテートプロドラッグは、in vivoで(a)と表示された制御可能な速度の切断を受け、Rllが除去される。残った化合物(b)は、直ちに水の存在下で高速加水分解され(c)、(b)を分離し、Z−Dを遊離し、エンハンサープロドラッグは殆どが細胞外組織腔にZ−Dとして遊離する(d)。次に、Z−Dは周囲細胞によって取り込まれ、細胞内で加水分解されて、Dを遊離する(e)。細胞内組織腔に遊離されうるDはいずれも、血液または血漿流によって直ちに排除されると考えられ、治療または診断効用の見地からは、Dは、殆どまたは全く追加の利益を提供しないと考えられる。
【0077】
さらに幾分詳細に説明すると、図2Bは、化合物14および17(例えば、以下の合成についての実施例を参照)に対して起こると考えられるin vivoでの分解反応の概略図を提供する。図2Aのスキームと同様に、化合物14はin vivoで(a)と表示された制御可能な速度の切断により分解され、PEGが除去される。残った化合物(b)は、直ちに水の存在下で高速加水分解(c)され、(b)を分離し、とりわけ、図.2AのZ−Dに類似する(d)を遊離する。エンハンサー−ドキソルビシンプロドラッグは、ほとんど細胞外組織腔内に放出される(d)。次に、エンハンサー−ドキソルビシンプロドラッグは、周囲細胞に取り込まれ、細胞内で加水分解されて(e)、活性ドキソルビシンを放出する。類似の分解反応プロセスを、化合物17に関して図2Bに記載し、類似のプロセス段階を(a´)、(b´)、(c´)、(d´)、および(e´)と表示する。反応(f)および(f´)は各々副反応であり、その反応においては、プロドラッグから切断された芳香族残基がは水溶性のヒドロキシル誘導体に変換される。
【0078】
E. 実質上非抗原性のポリマー
本発明の「テトラパルテートプロドラッグ」組成物には、水溶性ポリマーRllが含まれる。場合によっては、Rllには、キャッピング基Aが含まれる。キャッピング基Aには、例えば、水素、C1−6アルキル基、カルボキシルアルキル、ジアルキルアシル尿素アルキル、および/または以下の式 (II)
【化23】
[式中、G´は、Dと同じであるか、もしくはDによって定義される基の別のメンバーであり、vは、0または1であり、残りの可変記号は、式(I)に関して上記に示す通りである]に示すビス系を形成する化合物が含まれる。
【0079】
上記のポリマーの適切な例には、また好ましくは実質上非抗原性であるポリエチレングリコールなどの酸化ポリアルキレンが含まれる。PEGおよびその誘導体の一般式はA´−O−(CH2CH2O)x−(CH2)n−Aである[式中、(x)は、重合度(つまり、10〜2,300)またはポリマー鎖中の繰り返し単位の数を表し、ポリマーの分子量によって決まり、(n)は、0または正の整数であり、Aは、本明細書に定義する通りのキャッピング基(つまり、−H、アミノ、カルボキシル、ハロ、C1−6アルキル、またはその他の活性基)であり、A´は、Aと同じかもしくは別のA基である]。ポリプロピレングリコール、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,643,575号明細書に記載されたもののような分岐PEG誘導体、「star−PEG´s」およびShearwater Polymers, Inc. カタログ「ポリエチレングリコールの誘導体(Polyethylene Glycol Derivatives)」(1997−1998年)に記載されたような多分岐PEGもまた有用であり、各々の開示内容は参照により本明細書に組み入れられている。水溶性ポリマーは、本明細書におけるM、XまたはQを介して結合部位に結合するように官能化されていると理解されるだろう。例として、プロドラッグのPEG部分には、限定するものではないが、以下の化合物
【化24】
[式中、Y7はOまたはSであり、A、R12、(n)、および(x)は、上記に定義した通りである]がなりうるだろう。
【0080】
本発明の種々の態様において、一置換ポリマーを所望の場合、ポリエチレングリコール(PEG)、モノ活性化C1 −4アルキル末端PAO(モノ−メチル−末端ポリエチレングリコール(mPEG)など)が好ましい。二置換プロドラッグを所望の場合、ビス活性化ポリエチレンオキシドが好ましい。
【0081】
所望の加水分解可能な結合部を提供するために、モノまたはジ−PEGアミンおよびモノまたはジ−PEGジオールだけでなく、PEG酸またはPEG二酸などの一酸または二酸活性化ポリマーも用いることができる。最初にmPEG−OHをエチルエステルに変換した後、鹸化して、適切なPAO酸を合成することが可能である。Gehrhardt, H.ら、「Polymer Bulletin」18:487(1987年)、およびVeronese, F. M.ら、「J. Controlled Release」10; 145(1989年)を参照のこと。場合によっては、mPEG−OHをt−ブチルエステルに変換した後、酸によって切断して、PAO酸を合成することも可能である。例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,605,976号明細書を参照のこと。前述の各々の開示内容は、 参照により本明細書に組み入れらている。
【0082】
PAOおよびPEGの数平均分子量は、かなりの範囲に及びうるが、約2,000〜約100,000ダルトンの範囲のポリマーを通常、本発明の目的のために選択する。約20,000〜約50,000の分子量が好ましく、20,000〜約40,000が特に好ましい。「テトラパルテートプロドラッグ」に包含されるように選択されるポリマーの数平均分子量は、輸送エンハンサーを除去する前に「テトラパルテートプロドラッグ」の十分な循環を提供するのに十分であることが必要とされる。化学療法剤および有機成分に関する一部の態様において、上記に規定した範囲内で、少なくとも20,000の分子量範囲を有するポリマーが好ましい。ある種のタンパク質、酵素などの一部の求核試薬の場合において、約12,000〜約20,000の分子量範囲を有するポリマーが好ましい。
【0083】
本明細書に包含される高分子物質は、室温で水溶性であるのが好ましい。上記ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらの共重合体およびそれらのブロック共重合体(但し、ブロック共重合体の水溶解度が保持されるという条件で)が挙げられる。
【0084】
PEGのようなPAO系について本明細書に記載したように同じタイプの活性化を採用するならば、PAO系ポリマーに代わるものとして、デキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物系ポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、およびそれらの共重合体などの実質上非抗原性の材料を用いることも可能である。当業者ならば、前述のリストは、単なる具体例にすぎず、本明細書に記載する特性を有する全ての高分子材料が考慮に入れられることを理解するだろう。本発明の意図するところの「実質上非抗原性」は、非毒性であり、哺乳類に感知できるほどの免疫応答を誘導しないとして、当技術分野で理解される全ての高分子材料を意味する。
【0085】
F. 高分子テトラパルテート輸送系の合成
代表的な特異的プロドラッグ合成を実施例に示す。しかしながら、通常、数種の方法で、本発明の輸送が高められたプロドラッグを調製することが可能である。従って、一つの方法としては、式(III)
【化25】
で表される化合物と、式(IV)Lx−Z−[D]yの化合物とを反応させる方法が挙げられる。
【0086】
本実施形態において、Llは、二官能連結基であり、
BとLxは、独立して選択される脱離基であり、Dが脱離基である場合にそれについて上記したように定義され、
Zは、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせであり、Zは、アミノ酸残基、C6−18アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=Y4)、−C(=S)、−C(=NR16)(式中、R16は、R1 2と同一の基から選択される)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるのが好ましく、
R1、R4、R9、R1 0、およびR1 2は、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、および置換C1−6ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、
R2、R3、R5、およびR6は、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシル−、C1−6カルボキシルアルキル、C1−6アルキルカルボニルからなる群から独立して選択され、
Arは、式(III)に含まれ、次に式(I)含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して、0または1であり、
(p)は、0または正の整数であり、
Y1−4は、独立して、O、S、またはNR12であり、ここでR12の定義は、上記の式Iについて定義されたとおりであり、
(y)は、1または2であり、
R11は、一価または二価のポリマー残基である。
【0087】
通常、溶媒および塩基の存在下で(III)と(IV)を反応させる。溶媒は、不活性溶媒(つまり反応物および生成物に不活性な溶媒)が好ましい。代表的な溶媒には、簡潔に例を挙げると、クロロホルム、トルエン、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、およびそれらの組み合わせがある。 通常、ジメチルホルムアミドが好ましい。代表的な塩基性溶媒には、簡潔に例を挙げると、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミンおよびそれらの組み合わせが含まれる。通常、ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0088】
場合によっては、式(V)
【化26】
で表される化合物を、生物学的に有効な物質(例えば、薬物または診断タグなどの生物活性化合物)と反応させて、本発明のテトラパルテートプロドラッグを調製することも可能である。本実施形態において、
Laは、Dが脱離基である場合、Dに対して定義した通りの式Vの脱離基である。
【0089】
L1は、二官能連結基であり、
Zは、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせであり、好ましくは、Zは、アミノ酸残基、C6 −18アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=Y4)、−C(=S)、−C(=NR16)およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
R1、R4、R9、R10、R12、およびR16 は、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、および置換C1−6ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、
R2、R3、R5、およびR6は、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシ−、C1−6カルボキシルアルキル、およびC1−6アルキルカルボニルからなる群から独立して選択される。
【0090】
Arは、式(V)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して、0または1であり、
(p)は、0または正の整数であり、
Y1−4は、独立して、O、S、またはNR12であり、ここで、R12は、上記の式Iの通りに定義され、
R11は、一価または二価のポリマー残基である。
【0091】
場合によっては、例えば、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、ジアルキルカルボジイミド、2−ハロ−l−アルキル−ハロゲン化ピリジニウム、1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド、1−プロパンホスホン酸の環状無水物、フェニルジクロロホスフェート、およびそれらの組み合わせなどのカップリング剤の存在下で、(V)と生物学的に有効な物質とを反応させる。さらに、通常、溶媒および塩基の存在下で、(V)と生物活性物質を反応させる。溶媒および塩基はそれぞれ式(III)と(IV)の反応に関して上記に記載した通りに定義される。さらに、塩基はジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0092】
テトラパルテートプロドラッグに関して生物学的に有効な物質を以下に論じる。
【0093】
G. 脱離基または残基部分の「 D 」
1. 脱離基
上記の通り、Bが脱離基であり、さらにLzおよび/またはLa脱離基に関連している場合のこれらの態様において、適切な脱離基としては、限定するものではないが、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N−ヒドロキシフタルイミジル、p−ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジルなどの基、チアゾリジニルチオン、または当業者には明白であるその他の良好な脱離基が挙げられる。当業者ならば、過度の実験をすることなく、本明細書で使用および記載の合成反応を理解するだろう。
【0094】
例えば、アシル化された中間化合物(III)を、4−ニトロフェニルクロロホルメート、ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、カルボニルジイミダゾール、チアゾリジンチオンなどと反応させて、所望の活性誘導体を得ることができる。
【0095】
p−ヒドロキシベンジルアルコールまたはp−アミノベンジルアルコール、およびo−ヒドロキシベンジルアルコールまたはo−アミノベンジルアルコールのアシル化は、例えば、チアゾリジンチオン活性化ポリマー、スクシンイミジルカーボネート活性化ポリマー、カルボン酸活性化ポリマー、ブロックされたアミノ酸の誘導体を用いて実施することが可能である。
【0096】
PEGプロドラッグ(またはブロックされたプロドラッグ)が、一旦、適切に「活性化」されると、アミンまたはヒドロキシル含有化合物といつでもコンジュゲートできる状態になる。好適な活性化された輸送形態の一部を以下に示す。
【0097】
2. 生物活性物質の残基
概して、本明細書に包含される適切な生物学的に有効な物質のタイプにおける唯一の制約は、取り込みエンハンサー基に共有結合するのに利用可能な少なくとも1つの部位があることである。簡単に例を挙げると、上記の部位とは、例えばアミド結合を形成することによって、キャリアー部位と反応して結合することが可能である(第一級または第二級の)アミン含有部位または官能基のことでありうる。取り込みエンハンサー基に共有結合するその他の部位には、例えばエステル結合を形成するヒドロキシル官能基がある。勿論、当業者は、対象の生物学的に有効な物質と取り込みエンハンサーとの間の選択された結合が、コンジュゲートの二重プロドラッグ部が、輸送エンハンサーと結合状態の親化合物を放出した後、殆ど生物活性を喪失しないような結合であることを理解するだろう。
【0098】
コンジュゲート後、残ったアミン含有化合物を非コンジュゲート化合物の残基と称する。
【0099】
I. アミン含有化合物の残基
本発明の一部の態様において、例えば、プロドラッグ輸送が形成された後、Dは、アミン含有の有機化合物の残基である。有機化合物には、限定するものではないが、アントラサイクリン系化合物(ダウノルビシン、ドキソルビシンなど)、p−アミノアニリンマスタード、メルファラン、Ara−C(シトシンアラビノシド)、および関連する代謝拮抗化合物(例えば、ゲムシタビンなど)の成分がある。
【0100】
約50ダルトン〜約2,500ダルトン、またはそれ以上のサイズの範囲であって、in vivoで生物活性を示す、ポリペプチド、核酸、ペプチド核酸、およびそれらの組み合わせのいずれかの部分も本明細書に含まれる。上記には、例えば、ペプチド、少なくとも1種のアミン官能基を有する核酸(DNA、RNA)(例えば、ペプチド核酸など)が含まれる。
【0101】
従って、本発明の好適な態様において、生物学的に有効な物質は、このような治療が望まれる状態にある、動物(例えば、鳥類および/またはヒトを含めた哺乳類)の治療において、医療または診断に用いるのに適切な生物活性化合物である。前述の列挙した生物材料は、例証するのが目的であって、改質されうる化合物について限定するものではない。当業者は、過度の実験をすることなく、他の同種の化合物を同様に改質することが可能であると理解するだろう。つまり、上記の生物活性物質として、特に記載しないが適当なアミノ基を有するものも意図され、本発明の範囲に含まれることは理解される。
【0102】
II. ヒドロキシル含有の化合物の残基
a. カンプトテシンおよび関連のトポイソメラーゼ I 阻害物質
カンプトテシンは、中国に自生するカンレンボク(Camptotheca accuminata)樹木およびインドに自生するクサミズキ(nothapodytes foetida)樹木から生成される、水に不溶な細胞障害性のアルカロイドである。カンプトテシンおよび関連化合物、および類似体も、潜在的な抗癌剤または抗腫瘍剤であることは公知であり、in vitroおよびin vivoで上記の活性を呈することが明らかにされている。カンプトテシンおよび関連の化合物も、本発明のテトラパルテートプロドラッグへ変換するための候補物質でもある。
【0103】
カンプトテシンと特定の関連する類似体は、構造式
【化27】
を共有する。
【0104】
このコア構造から、数種の既知の類似体が調製されている。例えば、10−位と11−位のどちらか一方、或いは両方において、A環をOHで置換することが可能である。A環の9−位は、場合によってヘテロ原子(つまり−0またはS)によって結合されていてもよい、直鎖または分岐のC1−30アルキルまたはC1−17アルコキシで置換されていてもよい。B環の7−位は、直鎖または分岐のC1−30アルキルまたは置換アルキル、C5 −8シクロアルキル、C1−30アルコキシ、フェニルアルキルなど、カルバミン酸アルキル、アルキルカルバジド、フェニルヒドラジンの誘導体、アミノ−、アミノアルキル−、アラルキルなどで置換することが可能である。その他の置換は、C、D、およびE環で可能である。
【0105】
例えば、米国特許第6,111,107号、同5,004,758号、同4,943,579号、米国再発行特許第32,518号明細書を参照のこと(その内容を、参照して本明細書に組み入れる)。過度の実験をすることなく、公知の合成技法を用いて、上記の誘導体を合成することが可能である。本明細書に用いる好適なカンプトテシン誘導体には、20−OHを含む化合物もしくは本明細書に記載するポリマー輸送系の活性化状態と直接に反応しうる別のOH基を含む化合物、または結合基中間体(例えば、イミノ二酢酸など)に結合した後に、PEGなどのポリマーに結合する化合物が挙げられる。
【0106】
本明細書のカンプトテシン類似体についての言及は、例示する目的のためであって、限定するものではない。
【0107】
b. タキサンおよびパクリタキセル誘導体
本発明のテトラパルテートプロドラッグ組成物に含有される化合物の1クラスは、タキサンである。本発明の目的上、用語「タキサン」には、テルペンのタキサン類に含まれる全ての化合物が含まれる。従って、タキソール(パクリタキセル)、3´−置換のt−ブトキシカルボニルアミン誘導体(タキソテール)など、並びに標準の有機技法を用いて容易く合成されるその他の類似品、または、Sigma Chemical (St. Louis, Missouri) などの市販業者から入手可能であるその他の類似品は、本発明の範囲内である。
【化28】
典型的なタキサンを以下に示す。
パクリタキセル:R´1=C6H5;R´2=CH3CO; タキソテール:R´1=(CH3)3CO;R´2= H
【0108】
上記の誘導体は、効果的な抗癌剤であると見出されている。多数の研究により、上記薬剤は、数種の悪性腫瘍に対して活性を有することを示している。これまで、それらの使用は、とりわけ供給不足、水溶性の低さ、および過敏性によって厳しい制約を受けていた。本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,622,986号明細書および同5,547,981号に開示の7−アリールカルバメートおよび7−カルバゼート(carbazate)を含む他のタキサンを本発明のテトラパルテートプロドラッグに含ませることも可能であると理解される。前述の米国特許明細書の内容は、参照して、本明細書に組み込んでいる。タキサンに関する唯一の制約は、例えば2´位において、ヒドロキシルベースの置換反応が起こりうる必要があることである。しかしながら、パクリタキセルは、好適なタキサンである。
【0109】
c. さらなる生物活性成分
前述の分子に加えて、本発明のテトラパルテートプロドラッグ製剤は他の多種の化合物を用いて調製できる。例えば、ゲムシタビン、エトポシド、トリアゾール系抗真菌薬(フルコナゾールなど)、および/またはシクロピロックスを用いることが可能である。
【0110】
テトラパルテートプロドラッグ形態に選択される親化合物は、実質的に水に不溶である必要はないが、本発明のポリマーベースのテトラパルテートプロドラッグは、水に不溶な化合物を送達するのに特によく適している。他の有用な親化合物としては、例えば、ある種の低分子量の生物活性タンパク質、酵素およびペプチド(ペプチドグリカンを含む)、さらにその他の抗腫瘍剤、心血管薬(ホルスコリンなど)、抗悪性腫瘍薬(コンブレタスタチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、ara−C、メイタンシンなど)、抗感染薬(バンコマイシン、エリスロマイシンなどの)、抗真菌剤(ニスタチン、アンホテラシンB、トリアゾール、パプロカンジン、ニューモカンジン、エチノカンジン、ポリオキシン、ニッコマイシン、プラジミシン、ベナノミシンなど;「Antibiotics That Inhibit Fungal Cell Wall Development」Annu. Rev. Microbiology, 1994, 48:471−97を参照のこと、この内容は参照により本明細書に組み入れられる)、抗不安剤、胃腸剤、中枢神経系活性化剤、鎮痛剤、排卵誘発剤または避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、抗尿毒症剤、心血管剤、血管拡張剤、血管収縮剤などが挙げられる。
【0111】
コンジュゲート後、残ったアミンまたはヒドロキシル含有化合物を、非コンジュゲート化合物の残基と称する。
【0112】
3. 高分子ハイブリッド
本発明の別の態様においては、本明細書に記載する高分子テトラパルテートプロドラッグ輸送系のハイブリッドタイプを提供する。特に、ハイブリッド系には、上記の可逆的な二重プロドラッグ系だけでなく、さらに永続型の結合をベースとした第二ポリマー輸送系も含まれる。このハイブリッドは、少なくとも2通りの方法で調製することが可能である。例えば、ベンジル脱離ベースのプロドラッグを最初に合成した後に、チアゾリジニルチオンまたはスクシンイミジルカーボネート活性化PEGなどの当技術分野で認知のいずれかの活性化ポリマーを用いてポリエチレングリコール化(PEG化)することが可能である。場合によっては、最初に、さらに永続的なコンジュゲート反応を行い、得られたコンジュゲートを用いて、本明細書に記載するテトラパルテートコンジュゲートの二重プロドラッグ部を形成することが可能である。ハイブリッド系は、複数のアミノ基がポリマー輸送形態の結合に利用できる、タンパク質、酵素などにさらに良好に適すると理解されるだろう。本発明目的上、「活性ポリマー」には、酵素、タンパク質などで見出されるようなα−アミノ基、ε−アミノ基、ヒスチジン窒素、カルボキシル基、メルカプト基などのうち1種以上と反応可能な1個以上の末端基、並びに合成により調製された有機化合物に見出されるかかる基を含有するポリマーが含まれると理解されるだろう。以下に記載の活性化基を用いて、上記の活性化された輸送形態を形成することが可能であるともさらに理解されるだろう。
【0113】
活性化末端基は、本発明の二重プロドラッグ輸送系を合成する前または後のどちからに、ポリマーと、生物活性物質(すなわちタンパク質、酵素など)とのコンジュゲートを容易にする任意の基であるうる。例えば、米国特許第4,179,337号明細書を参照のこと(その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている)。 上記の活性化基は:
1.以下a)〜f)などのアミノ基と反応させることが可能である官能基、
a)p−ニトロフェニル、またはスクシンイミジルなどのカーボネート(例えば、米国特許第5,122,614号明細書を参照のこと、その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている)、
b)カルボニルイミダゾール、
c)アズラクトン(例えば、米国特許第5,321,095号明細書参照のこと、その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている)、
d)環状イミドチオン(例えば、米国特許第5,349,001号明細書を参照のこと、その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている)、
e)イソシアナートまたはイソチオシアナート、または
f)N−ヒドロキシ−スクシンイミジルまたはN−ヒドロキシベンゾトリアゾリルなどの活性エステル;
II.以下a)〜b)などのカルボン酸基および反応性カルボニル基と反応させることが可能である官能基
a)一級アミン、または
b)ヒドラジンおよびヒドラジド官能基(例、アシルヒドラジド、カルバゼート、セミカルバメート、チオカルバゼートなど);
III.メルカプトまたはメルカプト基(フェニルグリオキサールなど)と反応させることが可能な官能基(例えば、米国特許第5,093,531号明細書を参照のこと、その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられている);
IV.(カルボン)酸などのヒドロキシル基と反応させることが可能な官能基、或いは、求電子中心と反応させることが可能な他の求核性試薬;から選択される基でありうる。例えば、限定するものではないが、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシル、チオール基、活性メチレンなどが挙げられる。
【0114】
活性化成分には、ポリマーに隣接して位置するスペーサー部分も含まれうる。スペーサー部分は、18個までの炭素原子を有するヘテロアルキル、アルコキシ、アルキルでもよく、或いは追加のポリマー鎖であってもよい。スペーサー部分は、標準の合成技法を用いて付加することができる。
【0115】
H. 治療方法
本発明の別の態様は、概して、治療または診断薬剤などの生物活性物質を、そのような生物活性が望まれる細胞に送達する方法を提供する。本発明のテトラパルテートプロドラッグを用いると、動物の体に見出される広範囲の様々な細胞に生物活性物質が容易く送達されるが、特定の適用例が好適である。例えば、本発明のテトラパルテートプロドラッグは、上記で論じたEPR効果を呈する組織に存在する細胞内に薬物および/または診断薬剤などの生物活性物質を送達する際に特に有用である。EPR効果を呈する多種の組織型は、炎症、様々な種類の中毒反応、並びに固形腫瘍を被っている組織を含めて、様々な疾患および障害で現れる。
【0116】
従って、適用範囲の広い方法には、生きている組織と、本発明のテトラパルテートプロドラッグとの接触が含まれる。組織がEPR効果を呈するのが好ましく、その結果、ポリマー結合コンジュゲートが上記組織に入るのが好ましい。勿論、当業者ならば、薬剤が一旦標的細胞内に送達され活性化されると、その後、該細胞によって薬剤が放出されて、他の組織腔に生物活性をもたらすことが可能であることを理解するだろう。
【0117】
簡潔な例として、例えば炎症を起こし、その結果EPR効果を生じている疾患過程中、適切な状況下で肝臓または膵臓の外分泌細胞に送達される本発明の非活性のプロドラッグは、標的細胞の細胞質内で活性化され、次いで活性化された薬物または診断薬剤は、治療および/または診断目的のため、胃腸(「G.I」)管液腔内に分泌されうる。ゆえに、本例において、適切な薬剤(例えば抗癌剤または抗ウイルス剤)を目標を定めて送達することによって、G.I.管のある種の疾患または障害の治療および/または診断が容易になる。他の器官および/または組織系に対しても、類似の治療方法および類似の生物活性物質送達方法をすぐにでも企図できる。
【0118】
好適な一実施形態において、組織は、腫瘍または癌組織であり、本発明のテトラパルテートプロドラッグは、上記の状態の治療および/または診断に適切な薬剤を含んでなる。ゆえに、テトラパルテートプロドラッグ組成物は、とりわけ、親化合物(例えば、哺乳類における、腫瘍性疾患の治療、腫瘍量の減少、腫瘍または新生物の転移抑制、および腫瘍再発防止/腫瘍増殖防止に適切な化合物を含む)で治療される疾患と同様の疾患の治療に有用である。治療を受ける動物は、哺乳類が好ましく、ヒト患者がさらに好ましい。本発明のプロドラッグを獣医学で使用する場合は、通常、哺乳類種に用いるが、一般的に獣医学実践および畜産学分野の範囲内で、例えば、非常に貴重な、哺乳類以外の外来種の動物を含めた他の種に、該プロドラッグを進んで用いることができるとさらに考える。
【0119】
プロドラッグおよび/または診断用のテトラパルテートタグの投与量は、プロドラッグに含まれる親分子の量によって決まりうる。一般的に、治療方法に用いるテトラパルテートプロドラッグの量は、哺乳類において所望の治療または診断結果を効果的に達成する量である。種々のプロドラッグ化合物の適用量が、親化合物、in vivoでの加水分解速度、ポリマーの分子量などで幾分変わりうるのは当然である。一般的に、テトラパルテートプロドラッグの高分子誘導体は、天然薬物に基づいて1日あたり約5〜約500mg/m2の範囲の量で投与する。上記に示す範囲は例示的なものであり、当業者は、臨床上の経験と治療の適応に基づいて、選択したプロドラッグに至適な適用量を決定するであろう。当業者ならば、過度の実験を行うことなく、実際の投与量は明白であろう。
【0120】
本発明のプロドラッグを含有する組成物は、それを必要とする動物への投与のため1種以上の適切な医薬組成物に含有されうる。医薬組成物は、溶液、懸濁剤、錠剤、カプセルなどの形態で、当技術分野で公知の方法に基づいて調製可能である。当業者の必要に応じて、経口および/または非経口経路によって、上記組成物を投与してもよいと考える。組成物の溶液および/または懸濁液を、例えば、当技術分野では公知である任意の方法(例えば、静脈内、筋内、皮下注射など)によって組成物を注入又は浸潤させるための担体ビヒクルとして利用してもよい。
【0121】
体腔または腔内への注入によって、さらに吸入および/または鼻腔内経路によって、上記の投与を行ってもよい。しかしながら、本発明の好適な態様において、プロドラッグは、プロドラッグを必要とする哺乳類に非経口経路で投与される。
【0122】
本発明に係る新規な治療法または投与法には、プロドラッグの多段階切断がさらに含まれ、、その結果、標的細胞内に薬物またはタグなどの生物活性物質が放出される。
【0123】
I. in vivo での診断
本発明のさらなる態様は、任意に診断タグを上記の輸送エンハンサーに結合することで調製された本発明のテトラパルテートコンジュゲートを提供し、ここでこのタグは診断またはイメージング目的のために選択される。従って、任意の適切な基(例えば、アミノ酸残基)を、任意の当技術分野で標準である放射性同位体、放射線不透過性ラベル、 磁気共鳴ラベル、または磁気共鳴画像に適切なその他の非放射性同位体ラベル、蛍光タイプのラベル、可視色を呈するラベルおよび/または紫外線、赤外線、または電気化学的な刺激下で蛍光を放ちうるラベルに結合させることによって適切なタグを調製して、外科的処置中および処置後に、腫瘍組織の画像化することができる。場合によっては、コンジュゲートされた治療効果のある成分に診断タグを組み入れるおよび/または結合させ、動物またはヒト患者の体内で治療目的の生物活性物質の分布をモニターすることができる。
【0124】
本発明のさらなる態様において、本発明のタグ付けしたテトラパルテートコンジュゲートは、当技術分野で公知の方法に従い、いずれかの適切なラベル(例えば、放射性同位体ラベルなど)を用いて容易に調製される。簡潔に例を挙げると、これらには、in vivoにおける腫瘍細胞への選択的取り込みのための放射免疫シンチグラフィー造影剤を生成する131ヨウ素、1 25ヨウ素、99mテクネチウムおよび/または1 11インジウムがある。例えば、ペプチドをTc−99mに結合させる当技術分野で公知の方法は非常に多く、簡潔な例として、米国特許第5,328,679号明細書、同5,888,474号、同5,997,844号、および同5,997,845号で、示される例が挙げられる(これらは参照により本明細書に組み入れらる)。
【0125】
概して、患者の腫瘍組織の解剖学的位置確認のため、テトラパルテートコンジュゲートタグを、腫瘍を有すると疑われる患者または動物に投与する。ラベルした免疫グロブリンが腫瘍部位に局在化するのに十分な時間が経過した後に、例えば、目視で、X線撮影法、コンピュータ断層撮影、MRI、機器分析によるルミネッセンス標識の検出、ガンマカメラなどのフォトスキャナー装置による方法、またはその他の選択した標識の性質に適した方法または機器を用いて、ラベルにより生じるシグナルを探知する。
【0126】
次いで検出したシグナルを画像に変換するか、或いは解剖学的および/または生理学的に腫瘍部位を確認する。画像によって、in vivoで腫瘍の位置を突き止め、適切な治療方針を考案できる。タグ付けした成分自体が治療薬剤である上記の実施形態において、検出したシグナルは、治療中に、解剖学的位置確認の証拠を提供するものであり、追跡診断および治療介入のためのベースラインを提供する。
【0127】
J. 実施例
以下の実施例で、合成される全ての化合物および図1〜9で図示される全ての化合物に関して、上述の通り、当技術分野では公知である他の変形形態が容易に採用されるが、「PEG」は、
【化29】
であることを記しておく。さらに、以下の実施例に用いるPEGは、約40kDaの分子量を有した。
【0128】
以下の実施例は、本発明をさらに理解するために提供するものであり、本発明の有効範囲を限定することを意味するものではない。
【実施例1】
【0129】
化合物 2 の合成
以下の方法の1つを用いて、化合物2(図3)を調整した。
方法 1
ロイシン−ドキソルビシン(130mg、0.198ミリモル)とジメチルアミノピリジン(「DMAP」121 mg、0.99ミリモル)を、無水ジメチルホルムアミド(「DMF」)40mLに約40kDa(2.4g、0.060ミリモル、図1)のPEG鎖を有する化合物1を溶かした溶液に添加した。混合物を室温で一晩攪拌した。エチルエーテル(〜200 mL)を反応混合物に加えて、PEG誘導体を沈殿させ、固体をろ過して、2プロパノール (「IPA」) 80 mLから2回再結晶させ、化合物2 (1.85 g、75 %、図3)の純生成物を得た。
【0130】
方法 2
(ステップ1) 無水塩化メチレン80 mLに化合物1 (4.5 g、0.111ミリモル、図4)を溶かした溶液に、ロイシンt−ブチルエステル(248 mg、1.11ミリモル)とDMAP(136 mg、1.11ミリモル)を加えた。反応混合物を18時間室温で攪拌した。混合物を減圧下で気化させ、残留物をIPAから再結晶させ、化合物3 (4.5 g、99 %、図4)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDC13)により構造を同定した。ピーク:δ171.55, 155.24, 152.88, 150.24, 133.79,128.68,120.48,81.05,69.0−72.5 (PEG), 52.51, 41.26,27.40,24.19,22.27,21.44。
【0131】
(ステップ2) 化合物3 (4.70 g, 0.114 ミリモル)を、トリフルオロ酢酸22.5 mLと塩化メチレン45 mLに溶解して、室温で2時間攪拌した。エチルエーテルを加えて、 PEG誘導体を沈殿させた。粗生成物をろ過して、エチルエーテルで洗浄し、化合物4 (4.4 g、94 %、図. 4)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDC13)により構造を同定した。ピーク:δ173. 30,155.36,152.94,150.24,133.81,128.67,120.52,69.0−72.5 (PEG), 52.65, 41.20,24.18,22.44,21.31。
【0132】
(ステップ3) ドキソルビシン(57 mg、0.0984ミリモル)とDMAP(42 mg、0.344ミリモル)を、無水塩化メチレン(20 mL)に化合物4 (1.0 g, 0.0246 ミリモル、図.4)を溶かした溶液に、0℃で20分にわたって添加した。塩酸1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド(「EDC」、28 mg、0.148ミリモル)を加え、反応混合物を徐々に室温まで温め、一晩攪拌した。溶液を比重によってろ過し、溶媒を気化させた。残留する固体をIPA (50 mL)から再結晶させて、純粋な化合物2(0.656 g、67%)を得た。
【0133】
構造を13C NMR(67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ213.56,186.82,186.50,171.27,160.76,155.93,155.50,153.21,150.51,135.55, 135.22,133.84,133.47,129.05,120.81,119.53,118.24,111.26,111.00,100.40, 69.0−72.5(PEG), 68.43,67.46,67.16,65.86,56.41,53.39,45.15,41.40,35.23,29.21, 24.35,22.72,21.57,16.61。
【実施例2】
【0134】
化合物 6 の合成
ロイシン−ドキソルビシン(130 mg、0.198ミリモル、図3)とDMAP(121 mg、0.99 ミリモル)を、無水DMF(30mL)に化合物5 (2.2 g、0.054ミリモル、図5)を溶かした溶液に加えて、化合物6 (図5)を調製した。室温で一晩攪拌した後、エチルエーテル(〜100mL)を反応混合物に加え、沈殿した固体をろ過した。固体 をIPA(70 mL)から2度再結晶させて、純生成物(2.09 g、93 %)を得た。
【0135】
構造を13C NMR (67.8 MHz、CDC13) によって同定した。ピーク: δ213. 40,186.56,186.23,171.23,160.61,155.83,155.65,155.23,154.25,150.51, 135.41,134.99,133.43,133.25,132.79,128.85,121.26,120.40,119.36,118.17, 111.06,110.88,100.34,69.0−72.5 (PEG), 68. 33,67.10,65.89,65.08,56.28,53.27, 45.03,41.20,40.61,40.41,35.25,33.50,29.07,24.23,22.65,21.40,16.52。
【実施例3】
【0136】
化合物 8 の合成
ロイシン−ドキソルビシン(80mg、0.122ミリモル)を、無水DMF30 mLに化合物7(1.6 g、0.41ミリモル、図4)を溶かした溶液に加えることで、上記の実施例2に記載した方法によって化合物8(図6)を調製し、混合物を反応させて、IPAから再結晶させて生成物8(1.44 g、85 %)を得た。
【0137】
構造を13C NMR(67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ 8 213. 64,186.80,186.42,171.32,171.21,160.76,155.97,155.41,154.30,150.68, 135.54,135.19,133.50,133.38,129.06,127.52,121.41,119.54,118.25,111.26, 111.06,100.47,69.0−72.5(PEG),68.54,67.20,66.13,65.25,56.43,53.48,45.11, 41.24,38.97,37.10,35.40,35.06,33.64,29.25,24.39,22.75,21.55,16.64。
【実施例4】
【0138】
化合物 10 の合成
ロイシン−ドキソルビシン(97mg、0.147ミリモル、図.7A)を、無水DMF30 mLに化合物9(2.0g、0.049ミリモル、図7A)を溶かした溶液に加えることで、上記実施例2に記載した方法によって化合物10(図7A)を調製した。IPAから再結晶させて、純化合物10(1.70 g、83 %)を得た。
【0139】
構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDC13)により同定した。ピーク:δ213. 71,186.93,186.55,171.35,168.14,160.88,156.03,155.51,135.61,135.31, 133.67,133.50,130.08,128.38,120.69,119.64,118.31,111.38,111.19,100.50, 69.0−72.5 (PEG),68.64,67.13,66.28,65.33,56.51,53.60,45.23,41.43,35.50,33.80, 29.47,24.49,22.79,21.68,16.69。
【実施例5】
【0140】
化合物 12 の合成
ロイシン−ドキソルビシン(134 mg、0.204ミリモル、図7B)を、無水DMF30 mLに化合物11(2.0g、0.049ミリモル)を溶かした溶液に加えることで、上記実施例2に記載した方法によって、化合物12(図7B)を調製した。IPAからの再結晶化によって、化合物12を精製した(1.69 g、82 %)。
【実施例6】
【0141】
化合物 14 の合成
化合物14(図8)を以下の通り調製した。
(ステップ1) 無水DMF90 mLに化合物1(6.88 g、0.170ミリモル、図.8)を溶かした溶液に、12−アミノドデカン酸(0.15 g、0.680ミリモル)とDMAP(0.114 g、0.934ミリモル)を加えた。その結果得られた反応混合物を50〜60℃の温度で18時間攪拌した。混合物をろ過し、ろ液を減圧下で気化させて、残留物をIPAから再結晶させて、化合物13 (6.2 g、90)を得た。構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDC13)で同定した。ピーク:δ 174. 58,155.79,152.97,150.20,134.19,128.77,127.31,120.52,69.0−72.5(PEG), 40.54,33.32,29.42,28.90,28.70,28.59,26.17,24.87, 24.36。
【0142】
(ステップ2) 上記のステップ1で得た化合物13(3.0 g、0.074ミリモル)、塩酸ドキソルビシン(256 mg、0.441ミリモル)、4−メチルモルホリン(「NMM」、130μL、1.18ミリモル)、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(「HOBT」、60mg、0.441ミリモル)を無水DMF/塩化メチレン(1:1) 80 mLに溶かした溶液に、EDC(113 mg、0.589ミリモル)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を気化させ、残留物をIPA(100 mL)から再結晶させ、純化合物14(2.80 g、91 %)を得た。
【0143】
構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ 213. 40,186.56,186.18,172.11,160.56,155.97,155.83,155.22,153.04,150.26, 135.41,134.96,134.23,133.45,133.26,128.83,127.38,120.60,120.38,118.14, 111.00,110.81,100.50,69.0−72.5 (PEG), 68.28, 67.28,67.04,65.89,65.02,56.26, 44.61,40.60,40.41,35.88,35.26,33.43,29.46,29.30,28.93,28.86,26.20,25.12, 16.55。
【実施例7】
【0144】
化合物 17 の合成
化合物17を、図9に図示する通りに調製した。
(ステップ1) 無水塩化メチレン50 mLに化合物13 (5.20 g、0.128ミリモル)を溶かした溶液に、ロイシンt−ブチルエステル(0.287 g、1.28ミリモル)、DMAP(0.281 g、2.30ミリモル)、およびEDC(0.197 g、1.02ミリモル)を加えた。反応混合物を室温で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、残留物をIPAから再結晶させて、15(4.8 g、92 %、図9)を得た。構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ 172.22,171.87,155.79,152.98,150.22,134.20,128.78,120.54,69.0−72.5(PEG), 50.62,41.37,40.55,35.96,29.43,28.88,28.73,27.49,26.19,25.05,24.89,24.39, 22.32,21.65。
【0145】
(ステップ2) 化合物15(4.70 g、0.114ミリモル)を、トリフルオロ酢酸25 mLと塩化メチレン50 mLに溶解させて、室温で2時間攪拌した。エチルエーテルを加えて、PEG生成物を沈殿させた。固体をろ過して、新たなエチルエーテルで洗浄して、化合物16(4.4 g、94 %、図9)を得た。構造を、13C NMR (67.8 MHz、CDCl3)によって同定した。ピーク:δ 173.50,172.50,155.83,153.01,150.22,134.20,128.80,120.55,69.0−72.5 (PEG), 49.85,41.16,40.57,35.91,29.43,28.84,28.66,26.17,25.04,24.35,24.47,21.52。
【0146】
(ステップ3) 無水DMFと塩化メチレン(1: 1)90 mLに化合物16(3.3 g、0.080ミリモル)、塩酸ドキソルビシン (280 mg、0.480ミリモル)、NMM (130 uL、1.18ミリモル)、およびHOBT (74 mg、0.480ミリモル)を溶かした溶液に、EDC(120 mg、0.640ミリモル)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を気化させ、残留した固体をlPA (100 mL)から再結晶させ、純化合物17(2.90 g、85 %)を得た。
【0147】
構造を13C NMR(67.8 MHz、CDC13)によって同定した。ピーク:δ 213. 30, 186.44,186.16,172.77,171.23,160.55,155.75,155.13,153.04,150.26, 135.37,134.91,134.22,133.38,133.19,128.81,127.38,120.58,120.38,119.27, 118. 14,110.97,110.79,100.24,69.0−72.5(PEG),68.26,67.27,67.01,65.10,56.21, 51.11,45.08,41.02,40.60,35.91,35.23,33.39,29.43,28.90,28.69,26.22,25.05, 24.23,22.58,21.61,16.48。
【実施例8】
【0148】
ドキソルビシン関連テトラパルテートプロドラッグの有効性の確認
ヌードマウスに注入した皮下のヒト卵巣癌(A2780)に対するPEG−leu−ドキソルビシン類似体の有効性を以下の通り検定した。
【0149】
少なくとも1週間順化した後、各ヌードマウスの左腋窩隣接領域にある皮下部位1箇所に、1x lO6(100,000)の採取したA2780卵巣癌細胞を注入することによって、腫瘍をヌードマウス内に定着させた。腫瘍注入部位を、週2回観察し、1回触診して評価した。カリパスで2寸法を測定し、式:腫瘍体積= (長さ x 幅2)/2)を用いて計算して、各マウスの腫瘍体積を測定した。腫瘍が平均体積およそ80 mm3に達した場合、マウスを、賦形剤(0.6 % NaCI中に20 m Mナトリウムリン酸塩 )の対照群、leu−ドキソルビシン、実施例1の化合物1、実施例4の化合物10、および実施例5の化合物12からなる実験群に分けた。腫瘍サイズが均一なるようにマウスを分類して、1ケージ当たり6匹のマウスになるようにグループ分けし、一生消えない識別をするためにイヤーパンチをした。1週間に1度の割合で3週間、尾の静脈から薬物を静脈注射で投薬した(Qd7 x 3)。マウスの体重および腫瘍のサイズを、試験開始時と、週に2回、5週間にわたって測定した。
【0150】
治療終了の1週間後に、腫瘍の全体的な成長を平均腫瘍体積として計算した。対照群の腫瘍サイズのメジアンが、およそ800〜1100 mm3 に達した場合と、治療後1週間にもう一度、対照に対する治療の百分率(T/C)の値も計算した。T/C 値(%)は、抗腫瘍の有効性に関する非定量的指標である。
【0151】
データを以下の表2に示す。
【0152】
【表2】
α=定着した腫瘍(〜80 mm3)を有するヌードマウスにおける静脈注射治療、n=6/群。
β=対照群の腫瘍体積のメジアンがおよそ1000 mm3 に達した場合と、最終服用(21日目)の1週間後に、治療群および対照群の腫瘍体積のメジアンを測定して、比較した。1000 mm3でT/C<42%を、米国国立がん研究所(NCI)の薬物評価部門(Drug Evaluation Branch)による、有意な抗腫瘍活性とみなした。
【0153】
従って、表2で示されるデータからわかるように、leu−ドキソルビシンのPEGコンジュゲート形態は、非コンジュゲートの親化合物よりも効果がある。
【実施例9】
【0154】
化合物 19 の合成
(ステップ 1) 本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,127,355号明細書、実施例21(その内容は、参照として、本明細書に組み込んでいる)に記載の通り、TFA・アラニン−カンプトテシン18を調製した。
【0155】
(ステップ 2) 18(185 mg, 0.36 ミリモル)を、無水塩化メチレン50 mLとDMAP(49 mg、0.40ミリモル)中に9 (4 g、0.0982ミリモル)を含有する溶液に加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、残留する固体を2−プロパノール(80 mL)から2回再結晶させ、純化合物19(3.5 g、86%)を得た。13C NMR (67.8 MHz、CDCl3)δ170.80, 167.30,166.08,156.33,151.53,147.99,146.72,145.53, 142.07,133.55,130.46,129.61,129.27,128.89,127.94,127.44,127.02,119.09, 107.16,95.35,69.74−65.23 (PEG), 59.13,49.17,39.32,30.76,21.02,16.45,15.36, 6.69.。
【実施例10】
【0156】
化合物 20 の合成
TFA・アラニン−カンプトテシン(185 mg、0.36ミリモル)18を、無水塩化メチレン50 mL とDMAP(49 mg、0.40ミリモル)に11(4.0 g、0.0983ミリモル)を溶かした溶液に加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、残留する固体を2−プロパノール(80 mL)から2回再結晶させ、純化合物20(3.5 g、86%)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDC13) 6 170. 83,166.23,156.50,155.21,152.10,151.39,148.20,145.70,144.62, 130.75,130.00,129.76,129.04,128.25,128.03,127.54,127.19,119.45,107.70, 95.44,69.91−65.25 (PEG), 49.31,44.90,30.98,16.82,15.31,15.20,6.81.。
【実施例11】
【0157】
化合物 21 の合成
TFA・アラニン−カンプトテシン(102 mg、0.179ミリモル)18 とDMAP (37 mg、0.30ミリモル)を、無水塩化メチレン40 mLに5 (2.0 g、0.0493ミリモル)を溶かした溶液に加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、残留する固体を2−プロパノール(60 mL)から2回再結晶させ、純化合物21(1. 77 g、87 %)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDC13) 8 171. 00,166.00,161.07,156.09,154.00,151.00,148.00,145.50,135.75, 130.55,129.56,128.81,127.75,127.41,127.02,126.69,120.70,119.00,107.70, 72.69−67.00 (PEG), 50.70,48.38,40.06,36.86,30.32,16.20,6.65.。
【実施例12】
【0158】
化合物 22 の合成
トルエン(75 mL)に化合物4 (5 g, 0.123 ミリモル)を溶かした溶液を共沸させて、25 mLの留出液を得た。反応混合物を30℃まで冷却した後、塩化オキサリル(0.031 g、0.246ミリモル)とジメチルホルムアミド一滴を加える。この混合物を30〜40℃で3時間攪拌した後に、2−メルカプトチアゾリン(0.044 g、0.369ミリモル)を加える。反応混合物を1時間還流した後、ろ過して減圧下で溶媒を除去する。粗残留物をIPA(100 mL)から再結晶させて、化合物22(4 g、90 %)を得る。13C NMRによって、構造を同定する。
【実施例13】
【0159】
化合物 23 の合成
100 mMのリン酸ナトリウム(pH 8.4)/65 mM NaCl緩衝液中の天然ウシヘモグロビン(bHb)を改質して、コンジュゲート化合物23を以下の通りに合成する。ポリプロピレン製の容器に、20 mL の22(4℃で、20 mMのリン酸ナトリウムリン/65 mMのNaCl緩衝液中に0.8 g溶解したもの)を、20 mLのbHb に、4℃ (11 mg/mLで、22.2 g) で、適度に攪拌しながら加える。反応のpHをモニターする。混合物を1時間攪拌して、グリシンを添加して反応をクエンチして、さらに15分間攪拌を続ける。システイン(4℃で、100 mMのリン酸ナトリウム/65 mM NaCl緩衝液中に最終濃度30 mMで溶解したもの)を加え、酸化ヘモグロビン(met−Hb) 構成体を還元し、反応混合物を4℃で16時間攪拌する。PEG−Hbを希釈し、製剤化バッファー(formulation buffer)(5 mMの重炭酸ナトリウム、4 mMのNa2HP04、1mMのNaH2 P04、150 mMのNaCI、pH 7.4)中にダイアフィルトレーションして、未反応のPEGおよび/またはPEG−グリシンコンジュゲートを除去した後に、化合物23を60 mg/mLまで濃縮する。PEG−Hbの純度を、サイズ排除HPLCによって測定する。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】実施例1〜5の方法によるドキソルビシンのテトラパルテートプロドラッグを調製する反応の概略を示す図であり、式中の芳香族は、ベンジル誘導体である。
【図2A】式Iの化合物の逐次加水分解によるテトラパルテートプロドラッグの分解についての一般的な概略を示す図である。図1の可変記号は上記の式Iの通りに定義される。反応段階の記号: (a): 制御可能な速度でのin vivo切断; (b)「第一」プロドラッグ ; (c) 水の存在下での高速反応; (d) Z−D は「第二」プロドラッグであり、実質的に細胞外腔に放出される; (e)細胞内へZ−Dの取り込みおよび細胞内での酵素加水分解によるD放出。
【図2B】化合物14(上の図)および17(下の図)として、本明細書で同定したテトラパルテートプロドラッグ化合物の分解についての特異的反応を示す図である。両系は、結果として、細胞内に実質的に放出される最終生成物ドキソルビシンを生じる。反応段階に関する記号は、図2Aの記号と類似しているので、(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)は、化合物14のin vivoでの分解反応に類似した反応段階であり、 (a´)、(b´)、(c´)、(d´)、および(e´)は、化合物17のin vivoでの分解反応に類似した反応段階である。段階(e´)の生成物は、D とZであるが、図は、Zの大部分がさらにC12の酸とロイシンに分解されるのを示す。
【図3】実施例1の方法1に記載する通りの化合物2の合成の概略図を示す。
【図4】実施例1の方法2に記載する通りの化合物2の合成の概略図を示す。
【図5】実施例2に記載する通りの化合物6の合成の概略図を示す。
【図6】実施例3に記載する通りの化合物8の合成の概略図を示す。
【図7A】実施例4に記載する通りの化合物10の合成の概略図を示す。
【図7B】実施例5に記載する通りの化合物12の合成の概略図を示す。
【図8】実施例6に記載する通りの化合物14の合成の概略図を示す。
【図9】実施例7に記載する通りの化合物17の合成の概略図を示す。
Claims (34)
- 式I:
Llは、二官能連結基であり、
Dは、脱離基である基、または細胞中に送達される化合物の残基であり、
Zは、[D]yに共有結合しており、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々独立して、O、S、またはNR12であり、
R11は、一価または二価のポリマー残基であり、
R1、R4、R9、R10、およびR12は、独立して、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキルおよび置換C1−6ヘテロアルキルからなる群から選択され、
R2、R3、R5、およびR6は、独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル, C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシル−、C1−6カルボキシアルキルおよびCl−6アルキルカルボニルからなる群から選択され、
Arは、式(I)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して0または1であり、
(p)は、0または正の整数であり、
(y)は、1または2である]
で表される化合物。 - yが2である場合、2つのD基の各々が、同一かまたは異なることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- Zが、アミノ酸残基、糖残基、脂肪酸残基、ペプチド残基、C6−18アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、−C(=O)、−C(=S)、および−C(=NR16)[式中、R16は、R12と同一の群から選択される]からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- 前記アミノ酸残基が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびプロリンからなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の化合物。
- 前記ペプチドのサイズが、約2〜約10個のアミノ酸残基の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の化合物。
- 前記ペプチドが、Gly−Phe−Leu−GlyまたはGly−Phe−Leuであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
- 各D基が、独立して、生物活性物質の残基、またはHであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- 各D基が、独立して、抗癌剤、抗癌剤プロドラッグ、検出タグ、およびそれらの組み合わせの残基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- 前記抗癌剤または抗癌剤プロドラッグが、アントラサイクリン系化合物またはトポイソメラーゼI阻害物質を含有することを特徴とする請求項9に記載の化合物。
- 前記抗癌剤または抗癌剤プロドラッグが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、p−アミノアニリンマスタード、メルファラン、シトシンアラビノシド、ゲムシタビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
- 少なくとも1個のD基が、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N−ヒドロキシ−フタルイミジル、p−ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N−ヒドロキシスクシンイミジル、チアゾリジニルチオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される脱離基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- 前記アミノ酸残基が、天然アミノ酸残基および非天然アミノ酸残基からなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の化合物。
- (p)が1であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- Xが、OおよびNR12からなる群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の化合物。
- Qが、NH、O、S、−CH2−C(O)−N(H)−、およびオルト置換のフェニルからなる群の基で置換されたC2−4アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキル基からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
- (n)が、1または2であることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
- (m)が、0であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- Y1、Y2、Y3、およびY4が、Oであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- Rllがポリアルキレンオキシド残基を含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- 前記ポリアルキレンオキシド残基が、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項23に記載の化合物。
- 前記ポリマー残基が、約2,000〜約100,000ダルトンの数平均分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- 前記ポリマー残基が、約20,000〜約40,000ダルトンの数平均分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- 前記ポリエチレングリコール(PEG)が、約20,000〜約40,000ダルトンの数平均分子量を有することを特徴とする請求項28に記載の化合物。
- Dが細胞に送達される化合物の残基である請求項1に記載の化合物の薬学的にまたは診断上有効な量と、前記化合物のin vivo投与が必要な動物へのin vivo投与に許容できる担体とを含有する組成物。
- 式:
IV Lx−Z−[D]y
で表される化合物と反応させることを含むテトラパルテートプロドラッグの製造方法。
[式中、Bは式IIIの脱離基であり、
L1は、二官能連結基であり、
Dは、脱離基である基、または細胞に送達される化合物の残基であり、
Lxは、式IVの脱離基であり、
Zは、[D]yに共有結合しており、Zは、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
R1、R4、R9、R10、およびR1 2は、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、および置換C1−6ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、
R2、R3、R5、およびR6は、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシル−、C1−6カルボキシルアルキル、およびC1−6アルキルカルボニルからなる群から独立して選択され、
Arは、式(III)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して、0または1であり、
(p)は、0または正の整数であり、
(y)は、1または2であり、
Y1、Y2、Y3、およびY4は、各々独立して、O、S、またはNR12であり、
R11は、一価または二価のポリマー残基である] - 式
L1は、二官能連結基であり、
Laは、式Vの脱離基であり、
Zは、少なくとも1種の生物活性物質に共有結合し、標的細胞に能動輸送される基、疎水性基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
R1、R4、R9、R10、およびR1 2は、水素、C1−6アルキル、C3−12分岐アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6置換アルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1−6ヘテロアルキル、および置換C1−6ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、
R2、R3、R5、およびR6は、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェノキシ、C1−8ヘテロアルキル、C1−8ヘテロアルコキシ、置換C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ハロ−、ニトロ−およびシアノ−、カルボキシル−、C1−6カルボキシルアルキル、およびC1−6アルキルカルボニルからなる群から独立して選択され、
Arは、式(V)に含まれる場合、多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する基であり、
(m)、(r)、(s)、(t)、および(u)は、独立して、0または1であり、
(p)は、0または正の整数であり、
Y1、Y2、Y3、およびY4は、独立して、O、S、またはNR12であり、
R11は、一価または二価のポリマー残基である]
で表される化合物を、少なくとも1種の生物活性物質と反応させることを含むテトラパルテートプロドラッグの製造方法。 - 動物における疾患または障害を治療する方法であって、Dが脱離基である基であるか、または細胞に送達される化合物の残基である請求項1に記載の化合物を含有する薬学的に許容できる組成物の有効量を、かかる治療を必要とする動物に投与することを含む方法。
- 生物活性物質Dを、それによる治療を必要とする細胞に送達する方法であって、前記細胞を有する動物に請求項1に記載の化合物を投与するプロセスを含み、式Iがin vivoで細胞外にて加水分解されて、式I−(i)
およびC02に自然に加水分解され、式I−(iii)
Z−[D]y
で表される化合物が放出され、Z−[D]yが細胞膜を通過し、そこで加水分解されて、Dが遊離されることを特徴とする方法。
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