JP2004515217A - プロテアーゼ - Google Patents
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Abstract
本発明は、ヒトプロテアーゼ(PRTS)、及びPRTSを同定及びコードするポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニスト、及びアンタゴニストを提供する。更に、本発明は、PRTSの異常な発現に関連する疾患の診断・治療・予防方法を提供する。
Description
【0001】
(技術分野)
本発明は、プロテアーゼの核酸配列及びアミノ酸配列に関する。本発明はまた、これらの配列を利用したペプチド結合の加水分解、胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害の診断・治療・予防に関する。本発明はさらに、プロテアーゼの核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価に関する。
【0002】
(発明の背景)
プロテアーゼは、タンパク質の骨格またはペプチド鎖を形成するペプチド結合部位においてタンパク質及びペプチドを切断する。蛋白分解は、細胞の内外で起こる最も重要かつ頻繁に起こる酵素反応の1つである。蛋白分解は、新生ポリペプチドの活性化及び成熟、誤って折り畳まれたタンパク質及び損傷を受けたタンパク質の分解、細胞内のペプチドの制御された代謝回転を担っている。プロテアーゼは、胚発生中の消化、内分泌機能、および組織形成や、創傷の治癒および正常な成長に関与する。プロテアーゼは、調節タンパク質の半減期を変えることで調節作用において重要な役割を果たしている。プロテアーゼは、炎症、脈管形成、腫瘍の拡散および転移、心血管疾患、神経の疾患、細菌感染、ウイルス感染、および寄生虫感染などの病因または疾患状態の進行に関係する。
【0003】
プロテアーゼは、その基質をどの部位で切断するかによって分類することができる。アミノペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、トリペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ペプチジルジペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、およびω‐ペプチダーゼを含むエキソペプチダーゼは基質の末端における残基を切断する。セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼを含むエンドペプチダーゼは、ペプチド内の残基を切断する。哺乳動物プロテアーゼ、活性部位の構造、動作機構、および全体的な3次元構造によって主に4つの種類に分けられた(See Beynon, R. J.およびJ. S. Bond (1994) Proteolytic Enzymes : A Practical Approach, Oxford University Press, New York NY, pp. 1−5.)。
【0004】
セリンプロテアーゼ
セリンプロテアーゼ(SP)は、タンパク質分解酵素の広範で大きなファミリーであって、消化酵素であるトリプシンおよびキモトリプシン、補体および血液凝固カスケードの成分、細胞内および細胞外マトリックスの巨大分子の分解および代謝回転を調節する酵素を含む。20以上のサブファミリーのほとんどが、それぞれが共通の祖先を持つ6つのクランに分類され得る。これら6つのクランは、少なくとも4つの進化的に異なった祖先に由来すると推定される。SPは、ほとんどのファミリーの活性触媒部位にセリン残基が存在することから命名された。活性部位は、触媒作用に重要な一群の保存されたアスパラギン酸、ヒスチジン、およびセリン残基の3つの触媒三連構造によって形成される。これらの残基が基質の結合を促進する電荷リレーネットワークを形成する。活性部位の外側のその他の残基が、触媒作用中に形成される四面体形遷移中間体を安定化させるオキシアニオンホールを形成する。SPは広範な基質を有し、その基質特異性によってサブファミリーに分けることができる。主なサブファミリーは切断した後の残基から命名され、trypases(アルギニンまたはリシンの後)、aspases(アスパラギン酸の後)、チマーゼ(フェニルアラニンまたはロイシンの後)、metases(メチオニンの後)、およびserases(セリンの後)がある(Rawlings, N. D.およびA. J. Barrett (1994) Meth. Enzymol. 244:19−61)。
【0005】
ほとんどの哺乳動物セリンプロテアーゼは、蛋白分解によって活性化される不活性な前駆体である酵素前駆体として合成される。例えば、トリプシノーゲンは、エンテロペプチダーゼによってその活性型であるトリプシンに変換される。エンテロペプチダーゼは、トリプシノーゲンからN末端断片を除去する腸プロテアーゼである。残った活性断片がトリプシンであって、その他の膵酵素の前駆体を活性化する。同様に、トロンビンの前駆体であるプロトロンビンの蛋白分解によって、3つの異なったポリペプチド断片が生成される。活性型トロンビンを含む2つの断片がジスルフィド結合によって結合している時にN末端断片が切断される。
【0006】
2つの最も大きなSPサブファミリーは、キモトリプシン(S1)ファミリーおよびサブチリシン(S8)ファミリーである。キモトリプシンファミリーのメンバーの中には、このファミリーに固有の2つの構造的ドメインを含むものもある。クリングルドメインは、変動するコピー数に見られる3重ループジスルフィド架橋ドメインである。クリングルドメインは、膜、その他のタンパク質やホスホリピッドなどの媒介物の結合、並びに蛋白分解の調節においてある役割を果たすと考えられる(PROSITE PDOC00020)。Appleドメインは90のアミノ酸からなる反復ドメインであって、それぞれが6個の保存されたシステインを含む。3つのジスルフィド結合によって、第1のシステインと第6のシステイン、第2のシステインと第5のシステイン、および第3のシステインと第4のシステインとが結合されている(PROSITE PDOC00376)。Appleドメインは、タンパク質−タンパク質相互作用に関与する。S1ファミリーメンバーには、トリプシン、キモトリプシン、凝固因子IX−XII、補体因子B、C、およびD、グランザイム、カリクレイン、および組織プラスミノーデンアクチベーターおよびウロキナーゼプラスミノーデンアクチベーターが含まれる。サブチリシンファミリーは、真性細菌、古細菌、真核生物、およびウイルスに見られるメンバーを含む。サブチリシンには、タンパク質−タンパク質エンドペプチダーゼであるkexinおよびfurin、脳下垂体プロホルモンコンバターゼPC1、PC2、PC3、PC6、およびPACE4が含まれる(RawlingsおよびBarrett, 前出)。プロリルオリゴペプチダーゼ(S9)ファミリーには、特異性が大幅に異なる真核生物及び原核生物の酵素が含まれる。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)はCD26と同一であり、ペプチドホルモンの不活性化及びT細胞の成長の調節に関係する(Kahneら (1999) Int. J. Mol. Med. 4:3−15、Mentlein, R. (1999) Regul. Pept. 85:9−24を参照)。DPP−IVの阻害がII型糖尿病の治療に提案され(Holst, J.J. and C.F. Deacon(1998) Diabetes 47:1663−1670)、血清のDPP−IV活性の低下が食思不振及び大食患者に見られた(van Wes, Dら(2000) Eur. Arch. Psych. Clin. Neurosci. 250:86−92)。
【0007】
SPは多くの正常なプロセスにおいて作用するが、SPの中には疾患の病因や治療に関係するものもある。腸消化のインヒビターであるエンテロキナーゼは、腸刷子(intestinal brush)の縁に見られ、そこでトリプシノーゲンから酸性プロペプチドを切断して活性なトリプシンを生成する(Kitamoto, Y.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:7588−7592)。アンギオテンシンIIおよびIII、および[des−Arg9]ブラジキニンなどのペプチドを切断するリソソームセリンペプチダーゼであるプロリルカルボキシペプチダーゼは、セリンカルボキシペプチダーゼおよびプロリルエンドペプチダーゼファミリーの両方のメンバーと配列相同性を共有する(Tan, F.他 (1993) J. Biol. Chem. 268:16631−16638)。プロテアーゼであるニューロプシンは、神経シグナル伝達に応答して海馬におけるシナプス形成およびニューロンの結合に影響を与え得る(Chen, Z.−L.他(1995) J Neurosci 15:5088−5097)。組織プラスミノーゲンアクチベーターは、発作(Zivin, J. A. (1999) Neurology 53:14−19)および心筋梗塞(Ross, A. M. (1999) Clin. Cardiol. 22:165−171)の救急処置に有用である。消化管の至る所で高発現されているある種の受容体(PAR:プロテアーゼ活性化受容体)は、細胞外ドメインの蛋白分解による切断によって活性化される。PAR、トロンビン、トリプシン、および肥満細胞トリプターゼの主なアゴニストは、アレルギーおよび炎症の状態で放出される。プロテアーゼによるPAR活性の調節は、有望な治療標的であると提案された(Vergnolle, N. (2000) Aliment. Pharmacol. Ther. 14:257−266 ; Rice, K. D.他 (1998) Curr. Pharm. Des. 4:381−396)。前立腺特異的抗原(PSA)は、前立腺の上皮細胞のみで合成および分泌されるカリクレイン様セリンプロテアーゼである。血清PSAは前立腺癌においてそのレベルが上昇し、癌の進行および治療による効果をモニタリングするための最も感度の良い生理学的マーカーである。またPSAによって、転移性癌の原発癌として前立腺を同定することができる(Brawer, M. K.およびP. H. Lange (1989) Urology 33:11−16)。
【0008】
シグナルペプチダーゼは、全ての真核細胞型および原核細胞型に見られるSPの或るクラスであって、ある種のタンパク質からのシグナルペプチドのプロセシングに作用する。シグナルペプチドはタンパク質のアミノ末端ドメインであって、リボソーム組み立て部位からそのタンパク質を所定の細胞内或いは細胞外の部位に導く。一旦タンパク質が輸送されると、シグナルペプチダーゼによってそのシグナル配列が除去され、グリコシル化またはリン酸化などの翻訳後プロセシングによってそのタンパク質が活性化される。シグナルペプチダーゼは、酵母および哺乳動物の両方において多サブユニット複合体として存在する。イヌシグナルペプチダーゼ複合体は、5つのサブユニットから成り、その全てのサブユニットがミクロソーム膜と結合し、膜を1回或いは複数回貫通する疎水性領域を含む(Shelness, G. S.およびG. Blobel (1990) J. Biol. Chem. 265:9512−9519)。これらのサブユニットのあるものは、その複合体を膜上の適切な位置に移動させ、別のものは実際の触媒活性を含む。
【0009】
活性部位にセリンを含むプロテアーゼの別のファミリーは、その活性がATPの加水分解に依存する。これらのプロテアーゼは、ATP/GTP−結合モチーフであるPループの存在によって同定することができる調節性ATPアーゼドメインおよび蛋白分解コアドメインを含む(PROSITE PDOC00803)。このファミリーのメンバーには、真核生物ミトコンドリアマトリックスプロテアーゼ、C1pプロテアーゼ、およびプロテアソームが含まれる。C1pプロテアーゼは、初めは植物の葉緑体で見出されたが、原核細胞および真核細胞の両方において広範に存在すると考えられる。早発性捻転ジストニーの遺伝子は、C1pプロテアーゼに関連するタンパク質をコードする(Ozelius, L. J.他 (1998) Adv. Neurol. 78:93−105)。
【0010】
プロテアソームは、ある種の細菌および全ての真核細胞に見られる細胞内プロテアーゼ複合体であって、細胞内の生理機能において重要な役割を果たす。プロテアソームは、全てのタイプの細胞内タンパク質の分解の主な経路であるユビキチン抱合系(ubiquitin conjugation system:UCS)と関連する。その細胞内タンパク質の中には、転写や細胞周期の進行などの細胞プロセスを活性化或いは抑制するように作用するタンパク質も含まれる(Ciechanover, A. (1994) Cell 79:13−21)。UCS経路では、分解標的となるタンパク質に、小さな耐熱性タンパク質であるユビキチンが結合する。次にユビキチンが結合したタンパク質が、プロテアソームによって認識され分解される。得られるユビキチン−ペプチド複合体は、ユビキチンカルボキシル末端ヒドラーゼによって加水分解され、UCSによって再利用されるために遊離ユビキチンが放出される。ユビキチンプロテアソーム系は、有糸分裂周期キナーゼ(mitotic cyclic kinases)、オンコプロテイン、腫瘍抑制遺伝子(p53)、シグナル伝達に関係する細胞表面受容体、転写調節因子、および変異タンパク質または損傷タンパク質の分解に関与する(Ciechanover, 前出)。この経路は、嚢胞性繊維症、Angelman’s症候群、およびリドル症候群を含む様々な疾患に関与する(Schwartz, A. L.およびA. Ciechanover (1999) Annu. Rev. Med. 50:57−74を参照)。マウスプロトオンコジーンUnpは、過剰な発現がNIH3T3細胞の癌化を引き起こす核ユビキチンプロテアーゼ(nuclear ubiquitin protease)をコードする。この遺伝子のヒト相同体は、肺の小さな細胞腫瘍および腺癌においてそのレベルが一貫して高い(Gray, D. A. (1995) Oncogene 10:2179−2183)。ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素は、リンパ芽球白血病細胞系の非分裂成熟状態への分化に関与する(Maki, A.他 (1996) Differentiation 60:59−66)。ヒト神経変性疾患に生じる異常な構造において、ニューロンにおけるユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素(PGP9.5)が高発現する。このプロテアソームは、活性部位が中心腔に向いた4つの7員環に配置された様々なプロテアーゼを含む中心触媒コアと、腔の外側のポートを覆い基質のエントリーを調節する末端ATPアーゼサブユニットとから成る巨大多サブユニット複合体(〜2000 kDa)である(Schmidt, M.他 (1999) Curr. Opin. Chem. Biol. 3:584591を参照)。
【0011】
システインプロテアーゼ
システインプロテアーゼ(CP)は、前駆体タンパク質のプロセシングから細胞内分解に至る多様な細胞プロセスに関係する。既知のCPの約半数がウイルスのみに存在する。CPは、活性部位における主な触媒残基としてシステインを有する。活性部位では、触媒作用がジオエステル中間体によって進行し、近接するヒスチジン残基およびアスパラギン酸残基によって促進される。グルタミン残基も重要であって、オキシアニオンホールの形成を助ける。2つの重要なCPファミリーには、パパイン様酵素(C1)およびカルパイン(C2)が含まれる。パパイン様ファミリーメンバーは、通常はリソソーム酵素または分泌酵素であるためシグナルペプチドおよびプロペプチドから合成される。ほとんどのメンバーは、構造的重要性を有し得るプロペプチドに保存されたモチーフを含む(Karrer, K. M.他 (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3063−3067)。パパインファミリーメンバーの3次元構造は、2つのローブ(lobe)の間に配置された触媒部位を備えた2ローブ分子(bilobed molecule)である。パパインには、カテプシンB、C、H、L、およびS、ある種の植物アレルゲンおよびジペプチジルペプチダーゼが含まれる(Rawlings, N. D.およびA. J. Barrett (1994) Meth. Enzymol. 244:461−486を参照)。
【0012】
或る種のCPは至る所で発現されるが、別の種類のCPは免疫系の細胞によってのみ発現される。注目すべきは、CPが、単球、マクロファージ、および炎症部位に遊走し組織の修復に関与する分子を分泌するその他の細胞によって生成される。これらの修復分子の過剰は、或る種の疾患に役割を果たしている。リウマチ様関節炎などの自己免疫疾患において、システインペプチダーゼカテプシンCの分泌によって、コラーゲン、ラミニン、エラスチン、および骨の細胞外マトリックスに見られるその他の構造タンパク質を分解する。このような分解によって脆弱化した骨はまた、腫瘍の侵入および転移を受け易い。カテプシンLの発現によって、リウマチ様滑液の破壊を進行させる単核細胞の流入が助けられ得る(Keyszer, G. M. (1995) Arthritis Rheum. 38:976−984)。
【0013】
カルパインはカルシウム依存性細胞質エンドペプチダーゼで、N末端触媒ドメインおよびC末端カルシウム結合ドメインを含む。カルパインは、それぞれのアイソホームに固有の触媒サブユニットと様々なアイソホームに共通の調節サブユニットとから成るプロ酵素ヘテロ二量体として発現される。それぞれのサブユニットは、カルシウム結合EFハンドドメインを有する。調節サブユニットはまた、酵素が細胞膜と結合できるようにする疎水性高グリシンドメインを含む。カルパインは細胞内のカルシウム濃度の上昇によって活性化され、構造における変化および制限された自己分解を引き起こす。得られる活性な分子は、その活性のために低いカルシウム濃度が必要である(Chan, S. L.およびM. P. Mattson (1999) J. Neurosci. Res. 58:167−190)。カルパインは主にニューロンで発現するが、その他の組織でも発現する。ALS、パーキンソン病、およびアルツハイマー病を含むある種の慢性の神経変性疾患は、カルパイン発現の上昇に関連する(ChanおよびMattson, 前出)。細胞骨格のカルパイン仲介性分解が、頭部外傷による脳障害に関係すると報告された(McCracken, E.他 (1999) J. Neurotrauma 16:749−761)。カルパイン3は、主に骨格筋で発現され、肢帯筋ジストロフィー2A型に関係する(Minami, N.他 (1999) J. Neurol. Sci. 171:31−37)。
【0014】
カスパーゼはチオールプロテアーゼの別のファミリーであって、アポトーシスの開始および終了に関係する。前アポトーシス信号は、イニシエーターであるカスパーゼを活性化して、タンパク質分解カスパーゼカスケードを開始させ、標的タンパク質の加水分解および細胞の古典的なアポトーシス死を導く。システインおよびヒスチジンの2つの活性部位の残基が、触媒のメカニズムに関係する。カスパーゼは最も特異的なエンドペプチダーゼの1つであってアスパラギン酸残基の後を切断する。カスパーゼは、小さなスペーサー領域によって分離された1つの大きなサブユニット(p20)および1つの小さなサブユニット(p10)、および可変N末端プロドメインとから成る不活性な酵素前駆体として合成される。このプロドメインは、アポトーシスをポジティブ或いはネガティブな影響を与える補助因子と相互作用する。活性化信号による自己蛋白分解によって、特定のアスパラギン酸残基(番号付け規則に従うカスパーゼ1のD297)が切断され、スペーサーおよびプロドメインが除去され、p10/p20ヘテロ二量体が残る。これら2つのヘテロ二量体がそれらの小さなサブユニットを介して相互作用し、触媒的に活性な四量体を形成する。あるカスパーゼファミリーメンバーの長いプロドメインが、プロカスパーゼの二量体化および自己プロセシングを促進することが分かった。ある種のカスパーゼは、そのプロドメインに「死効果ドメイン(death effector domain)」を含み、それによってカスパーゼが、死受容体またはTNF受容体複合体に関連するFADDタンパク質およびその他のカスパーゼと共に自己活性化複合体の中に動員され得る。更に、異なったカスパーゼファミリーメンバーからの2つの二量体が結合して、得られる四量体の基質特異性が変化し得る。内在性カスパーゼインヒビター(アポトーシスタンパク質のインヒビター、またはIAP)も存在する。これらの相互作用の全てがアポトーシスの制御に影響を与えていることが明らかである(ChanおよびMattson, 前出; Salveson, G. S.およびV. M. Dixit (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:10964−10967を参照)。
【0015】
カスパーゼは或る種の疾患に関係する。ある種のカスパーゼが欠損したマウスは、感覚上皮のアポトーシスの失敗による重度の神経系の障害を持ち、早期に死亡する。その他のものは炎症反応における重度の障害を示す。例えば、カスパーゼは、IL−1bのプロセシングに関係し、その他の炎症性サイトカインにも関係する可能性がある(ChanおよびMattson, 前出)。牛痘ウイルスおよびバキュロウイルスは、それらの宿主細胞の死を回避するためおよび感染を成功させるためにカスパーゼを標的とする。加えて、AIDS、神経変性疾患、および虚血性外傷で不適切なアポトーシスが増大し、細胞死の減少が癌に関連することが報告された(SalvesonおよびDixit, 前出: Thompson, C. B. (1995) Science 267:1456−1462)。
【0016】
アスパルチルプロテアーゼ
アスパルチルプロテアーゼ(AP: aspartyl proteases)には、リソソームプロテアーゼカテプシンDおよびE、キモシン、レニン、および胃ペプシンが含まれる。ほとんどのレトロウイルスは、通常はpolポリタンパク質の一部としてAPをコードする。酸性プロテアーゼとも呼ばれるAPは2つのドメインから成る単量体酵素で、各ドメインは自身の触媒アスパラギン酸残基を備えた1/2の活性部位を含む。APはpH2−3の範囲で最も活性であり、そのpHでは1つのアスパラギン酸残基がイオン化しており、その他は中性である。APのペプシンファミリーは多くの分泌酵素を含み、その全てがシグナルペプチドおよびプロペプチドで合成されると思われる。ほとんどのファミリーメンバーは3つのジスルフィドループを含み、第1のアスパラギン酸の後に最大5個の残基からなる第1のループがあり、第2のアスパラギン酸の前に5個から6個の残基から成る第2のループがあり、第3の最も大きいループはC末端に向かって形成されている。一方、レトロペプシン(retropepsins)はペプシンの1つのドメインに類似しており、1/2の活性部位を提供するそれぞれのレトロペプシン単量体を有するホモ二量体として活性化する。レトロペプシンはウイルスポリタンパク質のプロセシングに必要である。
【0017】
APは様々な組織に作用し、あるものは疾患に関係する。レニンは、電解質バランスおよび血圧の調節を担うホルモンであるアンギオテンシンのプロセシングの第1のステップを仲介する(Crews, D. E.およびS. R. Williams (1999) Hum. Biol. 71:475−503を参照)。様々な炎症性の疾患状態においてカテプシンの異常な調節および発現が起こることは明らかである。カテプシンDの発現は、リウマチ様関節炎および変形性関節症の患者の滑液膜組織において増大する。カテプシンの発現の上昇および異なった調節は様々な癌の転移能力に関係する(Chambers, A. F.他 (1993) Crit. Rev. Oncol. 4:95−114)。
【0018】
メタロプロテアーゼ
メタロプロテアーゼは、活性のために通常はマンガン若しくは亜鉛のような金属イオンを必要とする。マンガン金属酵素の例には、アミノペプチダーゼP及びヒトプロリンジペプチダーゼ(PEPD)がある。アミノペプチダーゼPは、様々な炎症反応で活性化されたノナペプチド、即ちブラジキニンを分解しうる。アミノペプチダーゼPは、冠状虚血/再潅流障害に関係する。アミノペプチダーゼP阻害剤をラットに投与にすると、心臓保護効果が見られた(Ersahin, C. ら (1999) J. Cardiovasc. Pharmacol. 34 : 604−611)。
【0019】
ほとんどの亜鉛依存性メタロプロテアーゼは亜鉛結合ドメインにおける共通配列を共有する。この活性部位は、亜鉛リガンドとして作用する2つのヒスチジンと、第1のヒスチジンの触媒グルタミン酸C末端とから成る。このシグネチャ配列を含むタンパク質はmetzincinsとして知られ、アミノペプチダーゼB及びN、アンギオテンシン変換酵素、神経溶解素、マトリックスメタロプロテアーゼ、およびadamalysins(ADAMS)を含む。亜鉛カルボキシペプチダーゼに別の配列が見つかり、その配列では、2つのヒスチジン残基および1つのグルタミン酸残基の3つの保存された残基が亜鉛結合に関与する。
【0020】
アンギオテンシン変換酵素およびアミノペプチダーゼを含むいくつかの中性メタロエンドペプチダーゼは、ペプチドホルモンの代謝に関与する。例えば、高いアミノペプチダーゼB活性が、高血圧のラットの甲状腺および神経下垂体に見られる(Prieto, I.他 (1998) Horm. Metab. Res. 30:246−248)。オリゴペプチダーゼM/神経溶解素は、ブラジキニンおよびニューロテンシンを加水分解し得る(Serizawa, A.他 (1995) J. Biol. Chem 270:2092−2098)。ニューロテンシンは血管作動性ペプチドであって、脳において神経伝達物質として働くことができ、食事摂取の制限に関係すると思われる(Tritos, N. A.他 (1999) Neuropeptides 33:339−349)。
【0021】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、細胞外マトリックス(ECM)の成分を分解できる少なくとも23の酵素のファミリーである。MMPはN末端触媒ドメインを有するZn+2エンドペプチダーゼである。このファミリーのほとんど全てのメンバーが、組織によって生成されるインヒビターまたはECMの基質分子に結合可能なC末端ドメインおよびヒンジペプチド(hinge peptide)を有する(TIMP:メタロプロテアーゼの組織インヒビター; Campbell, I. L.他 (1999) Trends Neurosci. 22:285)。フィブルロネクチン様リピート、膜貫通ドメイン、またはC末端hemopexinase様ドメインの存在を利用して、MMPをコラーゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメライシンおよび膜型MMPサブファミリーに分けることができる。活性型では、活性部位におけるZn+2イオンがプロ配列のシステインと相互作用する。活性化因子が、活性部位を露出させるZn+2システイン相互作用または「システインスイッチ」を阻害する。これによって酵素が部分的に活性化され、次にそのプロペプチドを切断して完全に活性化する。MMPは、セリンプロテアーゼであるプラスミンおよびfurinによって活性化される場合が多い。MMPは、インヒビターとの化学量論的非共有結合相互作用、すなわちプロテアーゼとインヒビターとのバランスによって調節される場合が多く、組織恒常性において極めて重要である。(Yong, V. W.他 (1998) Trends Neurosci. 21:75を参照)。VII C型エーラース‐ダンロス症候群は、プロコラーゲンI N−プロティナーゼ遺伝子の変異によって引き起こされる(Colige, A.ら(1999) Am. J. Hum. Genet. 65:308−317)。
【0022】
MMPは様々な疾患に関与し、その中には骨関節炎(Mitchell, P. ら (1996) J. Clin. Invest. 97 : 761)、アテローム斑破裂(Sukhova, G. K. ら (1999) Circulation 99 : 2503)、大動脈瘤(Schneiderman, J. ら (1998) Am. J. Path. 152 : 703)、非創傷治癒(Saarialho−Kere, U. K. ら (1994) J. Clin. Invest. 94 : 79)、骨再吸収 (Blavier, L. および J. M. Delaisse (1995) J. Cell Sci. 108 : 3649)、加齢性黄斑変性症(Steen, B. ら (1998) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 39 : 2194)、肺気腫(inlay, G. A. ら (1997) Thorax 52 : 502)、心筋梗塞 (Rohde, L. E. ら (1999) Circulation 99 : 3063)、および拡張型心筋症(Thomas, C. V. ら (1998) Circulation 97 : 1708)が含まれる。MMPインヒビターは、ラットにおける乳癌および実験的腫瘍の転移を阻害し、マウスにおけるルイス肺癌、血管腫、およびヒト卵巣癌異種移植片の転移を阻害する(Eccles, S. A.他 (1996) Cancer Res. 56:2815; Anderson他 (1996) Cancer Res. 56:715−718 ; Volpert, O. V.他 (1996) J. Clin. Invest. 98:671; Taraboletti, G.他 (1995) J. NCI 87:293 ; Davies, B.他 (1993) Cancer Res. 53:2087)。MMPはアルツハイマー病で活性化しているであろう。或る種のMMPが多発性硬化症に関与し、MMPインヒビターの投与でその症状の一部を緩和できる(Yong, 前出、を参照)。
【0023】
メタロプロテアーゼの別のファミリーはADAM(disintegrinドメインおよびメタロプロテアーゼドメイン)であり、ヘビ毒メタロプロテアーゼ(SVMP)であるadamalysinsの類似体を共有する。ADAMは細胞表面接着分子およびプロテアーゼの両方の構造を組み合わせたものであって、プロドメイン、プロテアーゼドメイン、disintegrinドメイン、高システインドメイン、上皮成長因子リピート、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を含む。これらの最初の3つのドメインはSVMPにも見られる。ADAMは、蛋白分解、接着、シグナル伝達、および融合の4つの潜在的な機能を有する。ADAMは、metzincin亜鉛結合配列を共有し、TIMP−1などのある種のMMPアンタゴニストによって阻害される。
【0024】
ADAMは、精子−卵結合および融合、筋芽細胞の融合や、サイトカイン、サイトカイン受容体、接着タンパク質およびその他の細胞外タンパク質ドメインのタンパク質外部ドメインのプロセシングまたは分断などのプロセスに関与する(Schlondorff, J.およびC. P. Blobel (1999) J. Cell. Sci. 112:3603−3617)。Kuzbaniaタンパク質は、NOTCH経路の基質を切断し(NOTCH自体も可能)、ショウジョウバエの神経の発達における側方の阻害のためのプログラムを活性化する。TACE(ADAM17)およびADAM10の2つのADAMは、脳におけるアミロイド前駆体タンパク質のプロセシングにおいて類似の機能を果たすと提案された(SchlondorffおよびBlobel, 前出)。TACEもまた、TNF活性化酵素として同定された(Black, R. A.他 (1997) Nature 385:729)。TNFは多面発現サイトカインであって、感染或いは外傷に応じる宿主防御の動員に重要であるが、過剰に発現すると重度の障害を与え、自己免疫疾患で過剰に発現される場合が多い。TACEは、膜結合プロTNFを切断して可溶型を放出する。他のADAMはその他の膜結合分子の類似のプロセシングに関与すると思われる。
【0025】
ADAMTSサブファミリーはADAMファミリーメタロプロテアーゼの全ての特徴を有し、更にトロンボスポンジンドメイン(TS)を含む。プロトタイプADAMTSがマウスで同定され、心臓および腎臓で発現され、炎症誘発性刺激によってアップレギュレートされる(Kuno, K.他 (1997) J. Biol. Chem. 272:556)。これまでにHuman Genome Organizationによって11のメンバーが確認された(HUGO; http://www.gene.ucl.ac.uk/users/hester/adamts.html#Approved)。このファミリーのメンバーは、関節炎の進行により喪失する収縮能力を含む重要な力学的機能を軟骨に与える高分子量のプロテオグリカンであるaggrecanを分解する能力を有する。従って、aggrecanを分解する酵素は、間接の軟骨の分解を防止或いは緩和するための魅力的な標的と考えられる(例えば、Tortorella, M. D. (1999) Science 284:1664; Abbaszade, I. (1999) J. Biol. Chem. 274:23443を参照)。その他のメンバーは、抗血管形成の可能性(Kuno他、 前出)および/またはプロコラーゲンのプロセシングに関係すると報告された(Colige, A.他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2374)。
【0026】
新規のプロテアーゼおよびそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。この新規の組成物は、ペプチド結合の加水分解、胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害において有用であり、また、プロテアーゼの核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価にも有用である。
における外来性化合物の影響についての評価にも有用である。
【0027】
(発明の要約)
本発明は、総称して「PRTS」、個別にはそれぞれ「PRTS−1」、「PRTS−2」、「PRTS−3」、「PRTS−4」、「PRTS−5」、「PRTS−6」、「PRTS−7」、「PRTS−8」、「PRTS−9」、「PRTS−10」、「PRTS−11」、「PRTS−12」、「PRTS−13」、「PRTS−14」、「PRTS−15」、「PRTS−16」、「PRTS−17」、「PRTS−18」、「PRTS−19」、「PRTS−20」、及び「PRTS−21」と呼ぶプロテアーゼである精製されたポリペプチドを提供する。本発明の一実施態様では、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21とからなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択された単離されたポリペプチドを提供する。別法では、SEQ ID NO:1−21のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0028】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。別法では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたポリペプチドをコードする。更なる別法では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:22−42からなる群から選択される。
【0029】
更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドを提供する。別法では、本発明は、この組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。更なる別法では、本発明は、この組換えポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え生物を提供する。
【0030】
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドの生産方法を提供する。この方法は、(a)このポリペプチドの発現に好適な条件下で、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養するステップと、(b)このように発現したポリペプチドを回収するステップとを含む。
【0031】
更に、本発明は(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体を提供する。
【0032】
更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(c)前記(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(d)前記(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(e)前記(a)‐(d)のRNA等価物とで構成される群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。別法では、このポリヌクレオチドは、少なくとも60個の連続するヌクレオチドを含む。
【0033】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(c)前記(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(d)前記(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(e)前記(a)‐(d)のRNA等価物とで構成される群から選択されたポリヌクレオチド配列を有するサンプルにおける標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。この方法は、(a)前記サンプル内の標的ポリヌクレオチドと相補的な配列を含む少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むプローブと前記サンプルをハイブリダイズさせるステップであって、前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片とでハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする、該ステップと、(b)前記ハイブリダイゼーション複合体の存在するか否かを検出し、存在する場合には必要に応じてその収量を測定するステップとを含む。別法では、前記プローブは、少なくとも60個の連続するヌクレオチドを含む。
【0034】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(c)前記(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(d)前記(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(e)前記(a)‐(d)のRNA等価物とで構成される群から選択されたポリヌクレオチド配列を有するサンプルにおける標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。この方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅法を用いて、前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅するステップと、(b)増幅された前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在するか否かを検出し、存在する場合には必要に応じてその収量を測定するステップとを含む。
【0035】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択された有効量のポリペプチド及び好適な医薬用賦形剤を含む組成物を提供する。一実施例では、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む組成物を提供する。本発明は更に、患者にこの組成物を投与することを含む、機能的PRTSの過剰な発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0036】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドのアゴニストとして有効な化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)このポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)このサンプルのアゴニスト活性を検出するステップとを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的PRTSの過剰な発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0037】
更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドのアンタゴニストとして有効な化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)このポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)このサンプルのアンタゴニスト活性を検出するステップとを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアンタゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的PRTSの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0038】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドに特異的に結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)このポリペプチドを好適な条件下で少なくとも1つの試験化合物と結合させるステップと、(b)このポリペプチドとこの試験化合物との結合を検出して、このポリペプチドと特異的に結合する化合物を同定するステップとを含む。
【0039】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。このスクリーニング方法は、(a)このポリペプチドを、その活性が許容される条件下で少なくとも1つの化合物と結合させるステップと、(b)この試験化合物の存在下でのこのポリペプチドの活性を評価するステップと、(c)この試験化合物の存在下でのこのポリペプチドの活性と、この試験化合物の非存在下でのこのポリペプチドの活性とを比較するステップとを含み、この試験化合物の存在下でのこのポリペプチドの活性の変化が、このポリペプチドの活性を調節する化合物の存在を示唆する。
【0040】
更に本発明は、SEQ ID NO:22−42からなる群から選択された配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに有効な化合物をスクリーニングする方法であって、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出するステップとを含む、該スクリーニング方法を提供する。
【0041】
本発明はさらに、試験化合物の毒性を評価する方法を提供する。この方法は、(a)核酸を含む生体サンプルを前記試験化合物で処理するステップと、(b)処理した前記生体サンプルの核酸をプローブとハイブリダイズするステップと、(c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を測定するステップと、(d)前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量を、未処理の生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量とを比較するステップとを含み、前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量の差異が試験化合物の毒性を示唆する。この方法における前記プローブが、(1)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(3)前記(1)に相補的な配列を有するポリヌクレオチドと、(4)前記(2)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(5)前記(1)‐(4)のRNA等価物とで構成される群から選択されたポリヌクレオチドの少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む。また、前記ハイブリダイゼーションは、前記プローブと前記生体サンプルの標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行わる。また、前記標的ポリヌクレオチドが、(1)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(3)前記(1)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(4)前記(2)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(5)前記(1)‐(4)のRNA等価物とで構成される群から選択される。別法では、標的ポリヌクレオチドは、その標的ポリヌクレオチドの断片である。
【0042】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質及び核酸配列、方法について説明する前に、本発明は、ここに開示した特定の装置及び材料、方法に限定されず、その実施形態を変更できることを理解されたい。また、ここで用いられる用語は、特定の実施例のみを説明する目的で用いられたものであり、後述の請求の範囲によってのみ限定され、本発明の範囲を限定することを意図したものではないということも理解されたい。
【0043】
本明細書及び請求の範囲において単数形を表す「或る」、「その(この等)」は、文脈で明確に示していない場合は複数形を含むことに注意されたい。従って、例えば「或る宿主細胞」は複数の宿主細胞を含み、その「抗体」は複数の抗体は含まれ、当業者には周知の等価物なども含まれる。
【0044】
本明細書で用いた全ての科学技術用語は、別の方法で定義されていない限り、本発明の属する技術分野の一般的な技術者が普通に解釈する意味と同じである。本明細書で記述したものと類似、或いは同等の全ての装置及び材料、方法は本発明の実施及びテストに使用できるが、好適な装置及び材料、方法をここに記す。本明細書に記載の全ての文献は、本発明に関連して使用する可能性のある文献に記載された細胞系、プロトコル、試薬、ベクターを記述し開示するために引用した。従来の発明を引用したからと言って、本発明の新規性が損なわれると解釈されるものではない。
【0045】
(定義)
用語「PRTS」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたPRTSのアミノ酸配列を指す。
【0046】
用語「アゴニスト」は、PRTSの生物学的活性を強める、或いは模倣する分子を指す。このアゴニストは、PRTSに直接相互作用するか、或いはPRTSが関与する生物学的経路の成分と作用して、PRTSの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0047】
用語「アレル変異配列」は、PRTSをコードする遺伝子の別の形を指す。アレル変異配列は、核酸配列における少なくとも1つの変異によって生じ、変異mRNA若しくは変異ポリペプチドになり、これらの構造や機能は変わる場合もあれば変わらない場合もある。ある遺伝子は、天然型のアレル変異配列が存在しないもの、1つ或いは多数存在するものがある。一般にアレル変異配列を生じる変異は、ヌクレオチドの自然な欠失、付加、或いは置換による。これらの各変異は、単独或いは他の変異と同時に起こり、所定の配列内で一回或いはそれ以上生じる。
【0048】
PRTSをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、PRTSと同じポリペプチド或いはPRTSの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置でのアレル変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにPRTSをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多形性を含む。コードされたタンパク質も変異され得り、サイレント変化を生じPRTSと機能的に等価となるアミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にPRTSの活性が保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に荷電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、正に荷電したアミノ酸にはリシン及びアルギニンが含まれ得る。類似の親水性の値をもち極性非荷電側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニンが含まれ得る。類似の親水性の値をもち非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン及びチロシンが含まれ得る。
【0049】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0050】
用語「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。一般に増幅は、この技術分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって行われる。
【0051】
用語「アンタゴニスト」は、PRTSの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストは、PRTSに直接相互作用するか、或いはPRTSが関与する生物学的経路の成分と作用して、PRTSの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
【0052】
用語「抗体」は、抗原決定基と結合可能なFab及びF(ab’)2、及びそれらの断片、Fv断片などの無傷の分子を指す。PRTSポリペプチドと結合する抗体は、抗体を免疫する小ペプチドを含む無傷の分子またはその断片を用いて作製可能である。動物(例えば、マウス、ラット、若しくはウサギ)を免疫化するのに使用されるポリペプチド或いはオリゴペプチドは、RNAの翻訳から、或いは化学的に合成可能であり、必要に応じて担体タンパク質と結合させることも可能である。ペプチドと化学的に結合した一般に用いられる担体は、ウシ血清アルブミン、チログロブリン、及びキーホールリンペットヘモニアン(KLH)を含む。次ぎに、この結合したペプチドを用いて動物を免疫化する。
【0053】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質或いはタンパク質の断片が、宿主動物を免疫化するのに用いられるとき、このタンパク質の種々の領域は、抗原決定基(タンパク質上の特定の領域或いは三次元構造体)に特異的に結合する抗体の産生を誘発し得る。抗原決定基は、抗体と結合するために無傷の抗原(即ち、免疫応答を引き出すために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0054】
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列のセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス成分には、DNAと、RNAと、ペプチド核酸(PNA)と、ホスホロチオネートやメチルホスホネート、ベンジルホスホネート(benzylphosphonate)などの修飾された骨格(backbone linkage)を有するオリゴヌクレオチドと、2’−メトキシエチル糖または2’−メトキシエトキシ糖などの修飾された糖を有するオリゴヌクレオチドと、5−メチルシトシンまたは2’−deoxyuracil、7−deaza−2’−deoxyguanosineなどの修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドを含み得る。アンチセンス分子は、化学合成や転写を含む任意の方法で作り出すことができる。相補的アンチセンス分子は、一度細胞に導入されると、細胞によって作られた天然の核酸配列と塩基対となって二重鎖を形成し、転写や翻訳を阻害する。「負」または「マイナス」という表現はアンチセンス鎖であり、「正」または「プラス」という表現はセンス鎖である。
【0055】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のPRTS、合成のPRTSまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0056】
用語「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5’AGT3’」が相補的な配列「3’TCA5’」と対をなす。
【0057】
「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のアミノ酸配列を含む組成物」は広い意味で、所定のヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この組成物は、乾燥した製剤或いは水溶液を含み得る。PRTS若しくはPRTSの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイブリダイゼーションにおいて、プローブは、塩(例えば、NaCl)及び界面活性剤(例えば、SDS:ドデシル硫酸ナトリウム)、その他の物質(例えば、デンハート液、乾燥ミルク、サケ精子DNAなど)を含む水溶液に展開され得る。
【0058】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL−PCRキット(PE Biosystems,Foster City CA)を用いて5’及び/または3’の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び重複の両方によって構築されるコンセンサス配列もある。
【0059】
用語「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。以下に、あるタンパク質の元のアミノ酸が別のアミノ酸に置換される保存的なアミノ酸置換を示す。
一般に、保存されたアミノ酸置換の場合は、a)置換された領域のポリペプチドの骨格構造、例えば、βシートやαヘリックス高次構造、b)置換された部位の分子の電荷または疎水性、及び/または、c)側鎖の大半が維持される。
【0060】
用語「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0061】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。ポリヌクレオチド配列の化学修飾には、例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基、或いはアミノ基による水素の置換がある。誘導体ポリヌクレオチドは、自然分子(未修飾の分子)の生物学的或いは免疫学的機能の少なくとも1つを維持するポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドとは、もとのポリペプチドの生物学的機能、或いは免疫学的機能の少なくとも1つを維持する、グリコシル化、ポリエチレングリコール化、或いは任意の同様のプロセスによって修飾されたポリペプチドのことである。
【0062】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を生成し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
【0063】
「異なる発現」とは、少なくとも2つの異なったサンプルの比較により決められる遺伝子またはタンパク質の発現の上昇即ちアップレギュレーションや、減少即ちダウンレギュレーション、または発現しないことを指す。このような比較は、例えば、処置したサンプルと未処置のサンプルとの間、または病変サンプルと正常なサンプルとの間で行う。
【0064】
用語「断片」は、PRTSまたはPRTSをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と同一であるがその配列より長さが短いものを指す。「断片」の最大の長さは、親配列から1つのヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さである。例えば、ある断片は、5〜1000個の連続するヌクレオチド或いはアミノ酸残基を含む。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子、またはその他の目的に用いる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500個の連続するヌクレオチド或いはアミノ酸残基の長さである。断片は、優先的に分子の特定の領域から選択される場合もある。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示された最初の250若しくは500のアミノ酸(或いは、ポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された連続するアミノ酸の所定の長さを含み得る。これらの長さは一例であり、配列表及び表、図面を含む明細書に記載の任意の長さが、本発明の実施例に含まれ得る。
【0065】
SEQ ID NO:22−42の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:22−42を明確に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含む。SEQ ID NO:22−42のある断片は、例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術、またはSEQ ID NO:22−42を関連ポリヌクレオチド配列から区別する類似の方法に有用である。ある断片と一致するSEQ ID NO:22−42の正確な断片の長さや領域は、その断片の目的に基づいて当分野で一般的な技術によって日常的に測定できる。
【0066】
SEQ ID NO:1−21のある断片は、SEQ ID NO:22−42のある断片によってコードされる。SEQ ID NO:1−21のある断片は、SEQ ID NO:1−21を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1−21のある断片は、SEQ ID NO:1−21を特異的に認識する抗体の開発における免疫原性ペプチドとして有用である。ある断片と一致するSEQ ID NO:1−21の正確な断片の長さや領域は、その断片の目的に基づいて当分野で一般的な技術によって日常的に決定できる。
【0067】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、それに続くオープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0068】
「相同性」は、2つ以上のポリヌクレオチド配列間または2つ以上のポリペプチド配列間の配列類似性である。この配列類似性は配列同一性と言い換えることができる。
【0069】
ポリヌクレオチド配列についての用語「パーセントの同一性」または「%の同一性」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の一致する残基の百分率のことである。このようなアルゴリズムは、標準化され再現できる方法で、2つの配列間のアラインメントを最適化するべく、配列にギャップを挿入して、より意味をもつ2つの配列間の比較を行うことができる。
【0070】
ポリヌクレオチド配列間の同一性のパーセントは、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれるCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメータを用いて決定可能である。このプログラムはLASERGENEソフトウェアパッケージの一部であり、分子生物学分析プログラム一式(DNASTAR, Madison WI)である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G. 及び P.M. Sharp (1989) CABIOS 5:151−153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189−191に記載されている。ポリヌクレオチド配列の対のアライメントの場合、デフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。「重み付けされた」残基重み付け表が、デフォルトとして選択された。同一性のパーセントは、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「類似性のパーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0071】
別法では、National Center for Biotechnology Information (NCBI) Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) (Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403−410)が提供する、広く用いられている無料の配列比較アルゴリズム一式が、NCBI(Bethesda、MD)を含む幾つかのソース及びインターネット(http://WWW.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)で入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールが入手可能であり、2つのヌクレオチド配列の対を直接比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://WWW.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/b12.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、デフォルトを設定するギャップ及び他のパラメータと共に用いられる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較する場合、ある者は、デフォルトパラメータに設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (April−21−2000)でblastnを使用するであろう。そのようなデフォルトパラメータは、例えば、以下のようにする。
【0072】
Matrix: BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: −2
Open Gap: 5 及び Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop−off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter: on
同一性のパーセントは、例えば、特定の配列番号で決められた、所定の配列の全長に対して測定してもよいし、それより短い長さに対して、例えば、ある大きな所定の配列から得られた断片、例えば、連続する少なくとも、20または30、40、50、70、100、200のヌクレオチドの断片の長さに対して測定してもよい。このような長さは単なる例であり、配列表及び表、図面を含む明細書に記載の配列の任意の長さの断片を用いて、同一性のパーセントが測定される長さを示すことができる。
【0073】
高い同一性を示さない核酸配列でも、遺伝子コードの縮重によって類似のアミノ酸配列をコードし得る。縮重を利用して核酸配列を変え、それぞれが実質的に同じタンパク質をコードする様々な核酸配列を作製できることを理解されたい。
【0074】
ポリペプチド配列に用いられる用語「パーセントの同一性」または「%の同一性」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は周知である。アラインメント方法の中には、保存的なアミノ酸置換を考慮したものもある。詳細に上述したこのような保存的な置換は、一般に、置換部位の電荷や疎水性が保存され、ポリペプチドの構造(従って機能も)が保存される。
【0075】
ポリペプチド配列間の同一性のパーセントは、MEGALIGN バージョン3.12e配列アラインメントプログラム(上記)に組込まれるCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメータを用いて決定可能である。CLUSTAL Vを用いる対方式のポリぺプチド配列のアライメントの場合、デフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、及び「diagonals saved」=5と設定する。PAM250マトリクスが、デフォルトの残基重み付け表として選択される。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、アラインメントされたポリペプチド配列の対の同一性のパーセントは、「類似性のパーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0076】
別法では、NCBI BLASTソフトウェア一式が用いられる。例えば、2つのポリペプチド配列を対で比較をする場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (Apr−21−2000)でblastpを使用するであろう。そのようなデフォルトパラメータは、例えば、以下のようにする。
【0077】
Matrix: BLOSUM62
Open Gap: 11 及び Extension Gap: 1 penalties
Gap x drop−off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter: on
同一性のパーセントは、例えば、特定の配列番号で決められた、所定のポリペプチド配列の全長に対して測定してもよいし、それより短い長さに対して、例えば、ある大きな所定のポリペプチド配列から得られた断片、例えば、連続する少なくとも15、20または30、40、50、70、150の残基の断片の長さに対して測定してもよい。このような長さは単なる例であり、配列表及び表、図面を含む明細書に記載の配列の任意の長さの断片を用いて、同一性のパーセントが測定される長さを示すことができる。
【0078】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb(キロベース)〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した有糸分裂染色体の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の小染色体である。
【0079】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0080】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的なハイブリダイゼーションとは、2つの核酸配列が高い相同性を有することを意味する。アニーリングが許容される条件下で、特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成され、洗浄過程の後もハイブリダイズしたままである。洗浄過程は、ハイブリダイゼーションプロセスの厳密性即ちストリンジェンシー(stringency)の決定において特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異的な結合、即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合が減少する。核酸配列間のアニーリングが許容される条件は、当業者によって日常的に決定され、ハイブリダイゼーションの間は一定であるが、洗浄過程は、目的のストリンジェンシーにするためにその最中に条件の変更が可能であり、ハイブリダイゼーション特異性が得られる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0081】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、洗浄過程を行う際の温度によっても左右される。この洗浄温度は通常、所定のイオン強度とpHにおける特定の配列の熱融点(Tm)より約5〜20℃低く選択される。このTmは、(所定のイオン強度とpHの下)標的の配列の50%が完全に一致するプローブとハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーションの条件は、周知であり、Sambrook, J. 他による, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版の1−3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY; 特に2巻の9章に記載されている。
【0082】
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションでは、約0.2x SSC及び約1%のSDSの存在の下、約68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、65℃、60℃、55℃、42℃の温度で行う。SSCの濃度は、約0.1%のSDSが存在の下、約0.1〜2x SSCの範囲である。通常は、ブロッキング試薬を用いて非特異的なハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング試薬には、例えば、約100〜200μg/mlの切断され変性したサケ精子DNAが含まれる。約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドなどの有機溶剤が、例えば、RNAとDNAのハイブリダイゼーションなどの特定の場合に用いることができる。これらの洗浄条件の有用な改変は、当業者には周知である。特に高いストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションは、ヌクレオチド間の進化における類似性を示唆し得る。このような類似性は、それらのヌクレオチド及びコードされたポリペプチドが類似の役割を果たしていることを強く示唆する。
【0083】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は溶液中(例えば、C0tまたはR0t分析)で形成されるか、或いは溶液中の1つの核酸配列と固体の支持物(例えば、紙、膜、フィルタ、チップ、ピン、或いはスライドガラス、または細胞及びその核酸を固定する任意の適当な基板)に固定されたもう一つの核酸配列とで形成され得る。
【0084】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0085】
「免疫応答」は、炎症性疾患及び外傷、免疫異常、感染症、遺伝病などに関連する症状を指す。これらの症状は、細胞系及び全身防衛系に影響を及ぼすサイトカイン及びケモカイン、別の情報伝達分子などの様々な因子の発現という特徴をもつ。
【0086】
用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると、免疫反応を引き起こすPRTSのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を指す。用語「免疫原性断片」はまた、本明細書で開示するまたは当分野で周知のあらゆる抗体生産方法に有用なPRTSのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を含む。
【0087】
用語「マイクロアレイ」は、基質上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
【0088】
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物を指す。
【0089】
用語「調節」は、PRTSの活性の変化を指す。例えば、調節によって、PRTSのタンパク質活性、或いは結合特性、またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0090】
用語「核酸」及び「核酸配列」は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、或いはそれらの断片を指し、一本鎖若しくは二本鎖であって、センス鎖或いはアンチセンス鎖であるゲノム起源若しくは合成起源のDNA或いはRNA、ペプチド核酸(PNA)、任意のDNA様物質、及びRNA様物質である。
【0091】
「機能的に結合した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に結合している。一般に、機能的に結合したDNA配列は、同じ読み枠内で2つのタンパク質をコードする領域が結合する必要がある場合は、非常に近接或いは連続する。
【0092】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリシンで終わるアミノ酸残基のペプチド骨格に結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。この末端のリシンにより、この組成物が溶解性となる。PNAは、相補的な一本鎖DNAやRNAに優先的に結合して転写物の伸長を止め、ポリエチレングリコール化して細胞における寿命を延ばし得る。
【0093】
PRTSの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、PRTSの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0094】
「プローブ」とは、同一配列或いはアレル核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、PRTSやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸配列のことである。プローブは、検出可能な標識またはレポーター分子が結合され単離されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドである。典型的な標識には、放射性アイソトープ及びリガンド、化学発光試薬、酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーがポリヌクレオチドにアニーリングした後、あるDNAポリメラーゼ酵素によって、標的のDNA一本鎖に沿って伸長される。プライマーの組は、例えば、PCR法における核酸配列の増幅(及び同定)に用いることができる。
【0095】
本発明に用いられるプローブ及びプライマーは、既知の配列の少なくとも15の連続するヌクレオチドを含む。特異性を高めるために、より長いプローブ及びプライマーが用いることも可能である。例えば、開示した核酸配列の連続する少なくとも20または25、30、40、50、60、70、80、90、100、150のヌクレオチドを含む。プローブ及びプライマーは、上記した例より相当長いものも用いることができ、本明細書の表及び図面、配列表に示された任意の長さのヌクレオチドも用いることができることを理解されたい。
【0096】
プローブ及びプライマーの準備及び使用方法については、例えば、Sambrook, J.他による、1989年、名称「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版の1−3巻(Cold Spring Harbor Press, Plainview NY)、またはAusubel, F.M. 他による、1987年、名称「Current Protocols in Molecular Biology」(Greene Pubi. Assoc. & Wiley−Intersciences, New York NY)、並びに Innis他による、1990年、名称「PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications」(Academic Press, San Diego CA.)を参照されたい。PCR用のプライマーの組は、例えば、Primer (Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)などのそのような目的のためのコンピュータプログラムを用いて、ある既知の配列から引き出すことができる。
【0097】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドは、当分野で周知のプライマー選択用のコンピュータプログラムで選択される。例えば、OLIGO 4.06ソフトウェアは、それぞれが最大100ヌクレオチドまでのPCR用のプライマーの対の選択、及び32,000塩基までの入力ポリヌクレオチド配列から最大5,000ヌクレオチドまでの大きなポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドの分析に有用である。類似のプライマー選択用プログラムには、能力を拡大する追加の機能が含まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(Genome Center at University of Texas South West Medical Center, Dallas TXより入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択できるため、ゲノムワイドスコープ(genome−wide scope)におけるプライマーの設計に有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research, Cambridge MA1より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「ミスプライミングライブラリ(mispriming libaray)」を入力できる。また、Primer3は、特にマイクロアレイのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後の方の2つのプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれのソースから得ることができ、ユーザーのニーズを満たすように変更することもできる)。PrimerGenプログラム(UK Human Genome Mapping Project Resource Centre, Cambridge UK より入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計するため、アラインメントされた核酸配列の最も保存された領域或いは最も保存されていない領域のどちらかとハイブリダイズするプライマーを選択することができる。従って、このプログラムは、固有及び保存されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記した任意の選択方法で同定されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドの断片は、例えば、PCR法やシークエンシングプライマー、マイクロアレイエレメント、或いはサンプルの核酸の完全或いは部分的に相補的なポリヌクレオチドを同定する特定のプローブなどの、ハイブリダイゼーション技術に有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記した方法に限定されるものではない。
【0098】
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人工の組み合せは、化学合成によって作られる場合も多いが、前出のSambrook に記載されたような遺伝子工学の技術を用いて核酸の離れたセグメントを人工的に操作する方がより一般的である。この「組換え核酸」には、単に核酸の一部の追加または置換、欠失によって変更された核酸も含む。組換え核酸は、あるプロモーター配列に機能的に結合した核酸配列を含む場合もある。このような組換え核酸は、例えば、ある細胞を形質転換するのに用いられるベクターの一部であり得る。
【0099】
別法では、このような組換え核酸は、この組換え核酸を発現する哺乳動物のワクチン接種に用いると、その哺乳動物の防衛的な免疫応答を誘発する、ワクシニアウイルスに基づいたウイルスベクターの一部であり得る。
【0100】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5’及び3’の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写や翻訳、またはRNAの安定性を調節する宿主またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0101】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分が含まれる。
【0102】
本明細書において、DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0103】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。PRTS、PRTSをコードする核酸、またはその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存在するまたは基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
【0104】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、結合する分子によって認識される、例えば、抗原決定基つまりエピトープなどのタンパク質の特定の構造の存在によって左右される。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0105】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましいくは90%以上除去されたものを指す。
【0106】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0107】
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビード、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。この基板には、壁または塹壕、ピン、チャンネル、細孔などの様々な表面形態があり、そこにポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0108】
「転写イメージ」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0109】
「形質転換」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、当分野で周知の種々の方法により、自然或いは人工の条件下で起こり、原核宿主細胞若しくは真核宿主細胞の中に外来核酸配列を挿入する任意の周知の方法によって行うことができる。この形質転換の方法は、形質転換される宿主細胞のタイプによって選択される。この方法には、バクテリオファージまたはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、リポフェクション、及び微粒子照射が含まれるが、これらに限定されるものではない。「形質転換された」細胞には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一時的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0110】
本明細書における「遺伝子組換え生物」とは、当分野で周知の遺伝子組換え技術などを用いて、人間が生物の1つ以上の細胞に異種の核酸を導入した任意の生物であり、動物及び植物を含むが、それらに限定されるものではない。微量注入や組換えウイルスに感染させるなどの慎重な遺伝子操作によって、細胞の前駆体に直接或いは間接的に異種核酸を細胞に導入する。「遺伝子操作」とは、典型的な交雑育種やin vitroでの受精ではなく、組換えDNA分子を導入することである。本発明に従った遺伝子組換え生物には、細菌及びラン藻類、菌類、植物、動物が含まれる。本発明の単離されたDNAは、当分野で周知の、例えば、感染、形質移入、形質転換、トランス接合(transconjugation)などの方法によって、宿主に導入することができる。本発明のDNAをそのような生物に導入する技術は周知であり、前出のSambrook他(1989)に記載されている。
【0111】
特定の核酸配列の「変異配列」とは、デフォルトパラメータ設定の「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9 (May−07−1999)を用いるblastnによって、ある核酸配列のある長さに対する該特定の核酸配列の同一性が、少なくとも40%と決定された核酸配列のことである。このような核酸の対は、ある長さにおいて、例えば、少なくとも50%または60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、或いはそれ以上の同一性を示し得る。ある変異配列は、例えば、「アレル」変異配列(上述)または「スプライス」変異配列、「種」変異配列、「多型」変異配列と表すことができる。スプライス変異配列は基準分子と同一性が極めて高い可能性があるが、mRNAプロセッシング中のエキソンの択一的スプライシングによってポリヌクレオチドの数が多くなったり、少なくなったりする。対応するポリペプチドは、基準分子に存在する追加の機能ドメインを有したり、基準分子に存在するドメインが欠落したりし得る。種変異配列は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。得られるポリペプチドは、互いに高いアミノ酸同一性を有する。多型変異配列は、所定の種と種における特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列が異なる。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1ヌクレオチド多型」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば、或る集団、病態、病態の性向を示唆し得る。
【0112】
特定のポリペプチド配列の「変異体」とは、デフォルトパラメータ設定の「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9 (May−07−1999)を用いるblastpによって、あるポリペプチド配列のある長さに対する該特定のポリペプチド配列の同一性が、少なくとも40%と決定されたポリペプチド配列のことである。このようなポリペプチドの対は、ある長さにおいて、例えば、少なくとも50%または60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、或いはそれ以上の同一性を示し得る。
【0113】
(発明)
本発明は、新規のヒトプロテアーゼ(PRTS)及びPRTSをコードするポリヌクレオチドの発見に基づき、これらの組成物を利用した胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害の診断、治療、及び予防に関する。
【0114】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の識別番号を示す。各ポリヌクレオチドおよびそれに対応するポリペプチドは、1つのインサイトプロジェクト識別番号(Incyte Project ID)に相関する。各ポリペプチド配列は、記載されているようにポリペプチド配列識別番号(Polypeptide SEQ ID NO:)およびインサイトポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)の両方によって示されている。各ポリヌクレオチド配列は、記載されているようにポリヌクレオチド配列識別番号(Polynucleotide SEQ ID NO:)およびインサイトポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte Polynucleotide ID)の両方によって示されている。
【0115】
表2は、GenBankタンパク質(genept)データベースにおいてBLAST解析により同定された本発明のポリペプチドに相同性を有する配列を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(Polypeptide SEQ ID NO:)およびそれに対応するインサイトポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBankの識別番号(Genbank ID NO:)を示す。列4は、各ポリペプチドとそのGenBank相同体との間の一致を表す確率スコアを示す。列5は、GwnBank相同体のアノテーションを示し、更に該当箇所には適当な引用文も示す。これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0116】
表3は、本発明の各ポリペプチドの様々な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するインサイトポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、潜在的なリン酸化部位および潜在的なグリコシル化部位を示す。列6は、シグネチャ(signature)配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0117】
表2および表3は共に、本発明の各ポリペプチドの特性を一覧にしたものであって、これらの特徴が、請求するポリペプチドがプロテアーゼであることを立証する。SEQ ID NO:1が、M1残基からG225残基においてヒトユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼ(GenBank ID g9971757)と48%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2を参照)。BLASTの確率スコアは1.00e−49である。これは、探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示す。また、SEQ ID NO:1がユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼ触媒部位ドメインを含むことが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された(表3を参照)。スコアが53.4ビットであり、探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すE値が4.9e−12である。このモチーフの存在が、BLIMPS(確率スコアが2.6e−4)及びMOTIFS分析により確証された。このことから、SEQ ID NO:1がユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼであることが更に証明された。別の例では、SEQ ID NO:2が、ヒトprostasin、即ちセリンプロテアーゼ(GenBank ID g1143194)のアミノ酸残基の15‐235において45%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2を参照)。探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すBLAST確率スコアは1.3e−46である。また、SEQ ID NO:2がトリプシンファミリーセリンプロテアーゼ活性部位ドメインを含むことが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された。この一致は、確率スコアが2.7e−58である。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN分析により、このドメインの存在が確認された(表3を参照)。また、BLIMPS分析によりkringleドメインも明らかにされ、SEQ ID NO:2がトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼであることが更に証明された。別の例では、SEQ ID NO:7が様々なペプチドを加水分解するジペプチダーゼであり(Kozak, E. and S. Tate (1982) J. Biol. Chem. 257: 6322−6327)、ペネム及びカルバペネムなどの抗生物質のβラクタム環の加水分解に関係する(Campbell ら (1984) J. Biol. Chem. 259: 14586−14590)。SEQ ID NO:7が、ヒトジペプチダーゼ前駆体(GenBank ID g219600)に対して、全長411のアミノ酸の377のアミノ酸において48%の配列同一性を有することが、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された。探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すBLAST確率スコアは1.1e−88である。更に、本発明のプロテアーゼが腎ジペプチダーゼドメインを有することが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された。腎ジペプチダーゼPFAMヒットのHMMスコアは412.7である。更にBLIMPS、MOTIFS、BLAST−DOMO、及びBLAST−PRODOM分析のデータにより、SEQ ID NO:7が腎ジペプチダーゼであることが確証された。BLIMPS−BLOCKSヒットにより、1040‐1537の範囲の局所領域にスコアが付けられた。BLAST−DOMOヒット確率スコアは5.2e−85である。BLAST−PRODOMヒット確率スコアは4.7e−73である。別の例では、SEQ ID NO:8が、ヒト膜貫通トリプターゼ(GenBank ID g6103629)と86%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2を参照)。探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すBLAST確率スコアは3.9e−166である。SEQ ID NO:8は、トリプシンファミリープロテアーゼ活性部位ドメインを含み、確率スコアが5.3e−89であることが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN分析により、このモチーフの存在が確認された。また、BLIMPS分析により、SEQ ID NO:8がkringleドメイン及びI型フィブロネクチンドメインを含むことも示された。HMMERを用いる分析により、膜貫通ドメインの存在が明らかにされた(表3を参照)。これらの分析を総合すると、SEQ ID NO:8がトリプシンファミリーのプロテアーゼの膜貫通メンバーであることが分かる。別の例では、SEQ ID NO:17が、或る部分においてヒト膜貫通型セリンプロテアーゼ1(MT−SP1, GenBank ID g6002714)と同一性が44%であることが、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2を参照)。探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すBLAST確率スコアは5.1e−94である。SEQ ID NO:17がトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼ活性部位ドメインを含むことが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された(表3を参照)。HMMを基にした分析により、更にSEQ ID NO:17のN末端に近い膜貫通ドメインが明らかにされた。低密度リポタンパク質受容体、及びMT−SP1(PDOC00929)を含むその他のタンパク質に見られる或るドメインもこの方法で同定された。トリプシン活性部位モチーフの存在がPROFILESCAN、BLIMPS、及びMOTIFS分析により確認された。BLIMPS分析により、kringleドメイン及びI型フィブロネクチンドメインの存在が明らかにされた。これらのデータを総合すると、更にSEQ ID NO:17がトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼの膜貫通メンバーであることが確証された。同様の方法で、SEQ ID NO:3‐6、SEQ ID NO:9‐16、及びSEQ ID NO:18‐21を分析し、アノテーションを付けた。SEQ ID NO:1‐21の分析に用いたアルゴリズム及びパラメータを表7に記載する。
【0118】
表4に示されているように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列、またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列、或いはこれらの2種類の配列のあらゆる組み合わせを用いて組み立てた。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(Polynucleotide SEQ ID NO:)およびそれに対応するインサイトポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte Polynucleotide ID)を示す。列3は、塩基対における各ポリヌクレオチド配列の長さを示す。列4は、例えば、SEQ ID NO:22−42を同定するため、或いはSEQ ID NO:22−42と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するためのハイブリダイゼーションまたは増幅技術に有用なポリヌクレオチド配列の断片を示す。列5は、cDNA配列、ゲノムDNAから推定されるコード配列(エキソン)、および/またはcDNAおよびゲノムDNAの両方からなる群に対応する識別番号を示す。これらの配列を用いて本発明の完全長ポリヌクレオチド配列を組み立てた。表4の列6および列7はそれぞれ、それぞれの完全長配列に対する列5のcDNA配列及び/またはゲノム配列の開始ヌクレオチド(5’)位置および終了ヌクレオチド(3’)位置を示す。
【0119】
表4の列5に示されている識別番号は、具体的には、例えばインサイトcDNAおよびそれらに対応するcDNAライブラリの識別番号を示す。例えば、7246467T8はインサイトcDNA配列の識別番号であり、PROSTMY01はそれが由来するcDNAライブラリの識別番号である。cDNAライブラリが示されていないインサイトcDNAは、プールされているcDNAライブラリ(例えば、71041539V1)に由来する。または、列5の識別番号は、完全長ポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたGenBankのcDNAすなわちEST(例えば、g5745066)の識別番号の場合もある。または、列5の識別番号は、ゲノムDNAのGenscan分析によって推定されるコード領域の場合もある。例えば、GNN.g7208751_000002_002.editは、Genscan推定コード配列の識別番号であり、g7208751はGenscanに用いた配列のGenBank識別番号である。このGenscan推定コード配列は、配列を組み立てる前に編集する場合がある(実施例4を参照)。また、列5の識別番号は、「エキソンステッチ(exon−stitching)」アルゴリズムによって得られたcDNAおよびGenscan推定エキソンの両方からなる集合体の場合もある。例えば、FL1389845_00001はステッチ配列であり、1389845はアルゴリズムが適用された配列のクラスターの識別番号であり、00001はアルゴリズムによって生成された推定の番号である(実施例5を参照)。または、列5の識別番号は、「エキソンストレッチ(exon−stretching)」アルゴリズムによって得られたcDNAおよびGenscan推定エキソンの両方からなる集合体の場合もある。例えば、FL2256251_g7708357_000002_g6103629は、ストレッチ配列の識別番号であって、2256251はインサイトプロジェクト識別番号であり、g7708357はエキソンストレッチアルゴリズムが適用されたヒトゲノム配列のGenBank識別番号であり、g6103629は最も近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号である(実施例5を参照)。場合によっては、列5に示されている配列の範囲と重複するインサイトcDNAの範囲が得られ、最終的なコンセンサス配列が決定されるが、それに相当するインサイトcDNAの識別番号は示されていない。
【0120】
表5は、インサイトcDNA配列を用いて組み立てられたこれらの完全長ポリヌクレオチド配列が由来する代表的なcDNAライブラリを示す。代表的なcDNAライブラリとは、上記ポリヌクレオチド配列の組み立ておよび決定に用いられたインサイトcDNA配列を最も多く含むインサイトcDNAライブラリのことである。表5に示されているcDNAライブラリを作製するために用いた組織およびベクターが表6に示されている。
【0121】
本発明はまた、PRTSの変異体も含む。好適なPRTSの変異体は、PRTSの機能的或いは構造的特徴の少なくともどちらか一方を有し、かつPRTSアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0122】
本発明はまた、PRTSをコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施例において、本発明は、PRTSをコードするSEQ ID NO:22−42からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。配列表に示したSEQ ID NO:22−42のポリヌクレオチド配列は、窒素系塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖の背骨がデオキシリボースではなくリボースからなる等価RNA配列を含む。
【0123】
本発明はまた、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の特定の実施形態は、SEQ ID NO:22−42からなる群から選択された核酸配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するSEQ ID NO:22−42からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列の変異配列を提供する。上記したポリヌクレオチド変異配列は何れも、PRTSの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードする。
【0124】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るPRTSをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、既知の自然発生する任意の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能なコドン選択に基づいた組み合わせの選択によって作り出され得る可能なポリヌクレオチド配列の変異の全てが含まれ得る。これらの組み合わせは、天然のPRTSのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全ての変異が明確に開示されていると考慮する。
【0125】
PRTSをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のPRTSのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するPRTS或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。特定のコドンが宿主によって利用される頻度に基づいてコドンを選択して、ペプチドの発現が特定の真核細胞または原核宿主に発生する割合を高めることが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えないで、PRTS及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0126】
本発明はまた、PRTS及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成配列を、当分野で良く知られた試薬を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、PRTSまたはその任意の断片をコードする配列の中に突然変異を導入することも可能である。
【0127】
更に本発明には、種々のストリンジェントな条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:22−42及びそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399−407; and Kimmel. A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507−511.を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0128】
当分野で周知のDNAのシークエンシング方法を用いて、本発明の何れの実施例も実行可能である。この方法には、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech Piscataway NJ)、或いはELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)にみられるような校正エキソヌクレアーゼとポリメラーゼとの組み合わせなどの酵素が用いられる。好ましくは、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200 Thermal Cycler200(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800 (PE Biosystems) などの装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373或いは377 DNAシークエンシングシステム(PE Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics. Sunnyvale CA)または当分野で周知の他の方法を用いてシークエンシングを行う。得られた配列を当分野で周知の様々なアルゴリズムを用いて分析する(例えば、Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7; Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, pp. 856−853.を参照)。
【0129】
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配列を利用して、PRTSをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば制限部位PCR法を利用する1つの方法では、一般的なプライマー及び入れ子プライマー(nested primer)を用いてクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic 2:318−322を参照)。逆PCR法を用いる別法では、広範な方向に伸長して環状化した鋳型から未知の配列を増幅するプライマーを用いる。この鋳型は、既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列を含む制限断片に由来する(例えば、Triglia, T.ら(1988)Nucleic Acids Res 16:8186を参照)。キャプチャPCR法を用いる第3の方法は、ヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片のPCR増幅を含む(例えば、Lagerstrom, M.他(1991)PCR Methods Applic 1:111−119を参照)。この方法では、多数の制限酵素による消化及びライゲ−ションを用いて、PCRを行う前に未知の配列の領域の中に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、当分野で周知の別の方法を用いて未知の配列を得ることも可能である。(例えば、Parker, J.D. 他 (1991)Nucleic Acids Res. 19:3055−3060を参照)。更に、PCR、ネスト化プライマー、PROMOTERFINDERライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いれば、ゲノムDNA内の歩行が可能である。この方法ではライブラリをスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部を探すのに有用である。全てのPCR法をベースにした方法では、プライマーは、市販のOLIGO 4.06 Primer Analysis software(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムなどを用いて、長さが22〜30ヌクレオチド、GC含量が50%以上、約68℃〜72℃の温度で鋳型に対してアニーリングするよう設計される。
【0130】
完全長のcDNAをスクリーニングする場合は、大きなcDNAを含むようにサイズが選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、オリゴd(T)ライブラリが完全長のcDNAを産生できない場合は、遺伝子の5’領域を有する配列を含むものが多いランダムに初回抗原刺激を受けたライブラリが有用である。ゲノムライブラリは、5’非転写調節領域への配列の伸長に有用であろう。
【0131】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のヌクレオチド配列のサイズの分析、または確認が可能である。詳しくは、キャピラリーシークエンシングには、電気泳動による分離のための流動性ポリマー、及び4つの異なったヌクレオチドに特異的なレーザーで活性化される蛍光色素、放出された波長の検出に利用するCCDカメラを使用することが可能である。出力/光強度は、適切なソフトウェア(例えば、GENOTYPER及びSEQUENCE NAVIGATOR、PE Biosystems)を用いて電気信号に変換され、サンプルのローディングからコンピュータ分析までのプロセス及び電子データ表示がコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しない場合もあるDNAの小片のシークエンシングに特に適している。
【0132】
本発明の別の実施例では、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列またはその断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にPRTS、その断片または機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作られ得り、これらの配列をPRTSのクローン化及び発現に利用可能である。
【0133】
種々の目的でPRTSをコードする配列を変えるために、当分野で一般的に知られている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。この目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/または発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。ランダムな断片によるDNAの混合や遺伝子断片と合成オリゴヌクレオチドのPCR再組み立てを用いて、ヌクレオチド配列の組換えが可能である。例えば、オリゴヌクレオチド媒介性定方向突然変異誘発を利用して、新しい制限部位を生成する突然変異の導入、グリコシル化パターンの変更、コドン選択の変更、スプライスバリアントの作製等が可能である。
【0134】
本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara CA; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.−C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793−797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259−264; Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315−319)などのDNAシャフリング技術を用いてシャフリングして、PRTSの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのPRTSの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャフリングは、PCR法による遺伝子断片の組換えで遺伝子変異体のライブラリを作製するプロセスである。次に、このライブラリを、目的の特性を有する遺伝子変異体を同定するために選択或いはスクリーニングする。これらの好ましい変異体をプールし、DNAシャフリング及び選択/スクリーニングを繰り返す。従って、人工的な育種及び急速な分子の進化によって多様な遺伝子が作られる。例えば、ランダムな位置に変異がある1つの遺伝子の断片を、目的の特性が最適化するまで、組換え及びスクリーニング、シャフリングを実施することもできる。別法では、所定の遺伝子の断片を、同じ或いは異なった種の同じ遺伝子ファミリーの相同な遺伝子の断片で組換え、それによってプロトコルに従った調節可能な方法で、多数の天然遺伝子の遺伝子多様性を最大にすることができる。
【0135】
別の実施例によれば、PRTSをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.ら(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser 7:215−223; 及びHorn, T.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser.225−232を参照)。別法として、化学的方法を用いてPRTS自体またはその断片を合成することが可能である。例えば、ペプチド合成は種々の固相技術を用いて実行可能である(例えば、Creighton, T. (1984) Proteins. Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, pp. 55−60; Roberge, J.Y.ら(1995) Science 269:202−204を参照)。また、合成の自動化は例えばABI 431Aペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)を用いて達成し得る。更にPRTSのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/または化学的方法を用いた他のタンパク質または任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0136】
このペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィー(例えば、Chiez, R.M. 及び F.Z. Regnier (1990)Methods Enzymol. 182:392−421を参照)を用いて実質的に精製可能である。合成されたペプチドの組成は、アミノ酸分析或いはシークエンシングにより確認することができる(例えば、Creighton、前出、pp28−53を参照)。
【0137】
生物学的に活性なPRTSを発現させるために、PRTSをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。これらのエレメントには、ベクター及びPRTSをコードするポリヌクレオチド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5’及び3’の非翻訳領域などの調節配列が含まれる。このようなエレメントは、その長さ及び特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、PRTSをコードする配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。このようなシグナルには、ATG開始コドン及びコザック配列などの近傍の配列が含まれる。PRTSをコードする配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれなければならない。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、自然及び合成の様々なものから得ることが可能である。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である。(例えば、Scharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 201−18−162.を参照)。
【0138】
当業者に周知の方法を用いて、PRTSをコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる。(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, 及び16−17章; 及び Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章及び13章1−4章を参照)。
【0139】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、PRTSをコードする配列の保持及び発現が可能である。これらには、限定するものではないが、組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物や、酵母菌発現ベクターで形質転換された酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系や、動物細胞系などが含まれる(例えば、前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503−5509、Engelhard、E.K. 他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307−311; The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology (1992) McGraw Hill, New York NY, pp. 191−196、Logan, J. and T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655−3659、Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345−355を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ輸送することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350−356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340−6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813−815; McGregor, D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219−226、Verma, I.M. and N. Somia (1997) Nature 389:239−242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0140】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはpSPORT1プラスミド(GIBCO BRL)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターの多数のクローニング部位にPRTSをコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更に、これらのベクターを用いて、クローニングされた配列のin vitroでの転写、ジデオキシンスクリーニング、ヘルパーファージによる一本鎖の救出、入れ子状態の欠失を作り出すことが可能である(例えば、Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503−5509.を参照)。例えば、抗体の産生のためなどに多量のPRTSが必要な場合は、PRTSの発現をハイレベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力に発現を誘発するT5またはT7バクテリオファージプロモーターを含むベクターを使用できる。
【0141】
PRTSの発現に酵母の発現系の使用が可能である。α因子やアルコールオキシダーゼやPGHプロモーターなどの構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多種のベクターが、酵母菌サッカロミセス−セレビジエまたはPichia pastorisに使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か細胞内への保持のどちらかを誘導し、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来配列を組み込む。(例えば、Ausubel, 1995,前出、Bitter, G.A. ら (1987) Methods Enzymol.153:516−544、及びScorer. C. A. ら (1994) Bio/Technology 121−181−184.を参照)。
【0142】
植物系もPRTSの発現に使用可能である。PRTSをコードする配列の転写は、例えば、CaMV由来の35S及び19Sプロモーターなどのウイルスプロモーターが単独で、或いはTMV(例えば、Coruzzi, G. ら. (1984) EMBO J. 3 : 1671−1680 ; Broglie, R. ら (1984) Science 224 : 838−843 ; および Winter, J. ら (1991) Results Probl. Cell Differ. 17 : 85−105を参照)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて促進される。これらの作製物は、直接のDNA形質転換或いは病原体を介したトランスフェクションによって、植物細胞の中に導入可能である。(例えば、The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology(1992)McGraw Hill NY, pp.191−196を参照)。
【0143】
哺乳動物細胞では、多種のウイルスベースの発現系が利用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にPRTSをコードする配列を結合し得る。ウイルスのゲノムの非必須のE1またはE3領域への挿入により、感染した宿主細胞にPRTSを発現する生ウイルスを得ることが可能である(Logan, J.及びShenk, T.(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. 81:3655−3659を参照)。さらに、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させることが可能である。タンパク質を高レベルで発現させるために、SV40またはEBVを基にしたベクターを用いることが可能である。
【0144】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドで発現しそれに含まれているものより大きなDNAの断片を供給可能である。治療のために約6kb〜10MbのHACsを作製し、従来の輸送方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で供給する。(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat Genet.15:345−355.を参照)。
【0145】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるPRTSの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、PRTSをコードする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製及び/または内在性の発現要素や、同じ或いは別のベクターの上の選択マーカー遺伝子を含む。ベクターの導入の後、細胞を選択培地に移す前に、強化培地で約1〜2日の間増殖させる。選択マーカーの目的は選択的な媒介物に対する抵抗性を与えるとともに、その存在により導入された配列を確実に発現する細胞の増殖及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に好適な組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0146】
任意の数の選択系を用いて、形質転換された細胞系を回収することが可能である。選択系には、以下のものに限定はしないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれ、それぞれtk−またはapr−細胞において使用される。(例えば、Wigler, M. 他 (1977) Cell 11:223−232; 及びLowy, I. 他(1980) Cell 22:817−823を参照)。また代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を選択のベースとして用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG−418に対する耐性を与え、als或いはpatはクロルスルフロン(chlorsulfuron)、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(phosphinotricin acetyltransferase)に対する耐性を与える(例えば、Wigler, M. 他. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567−3570; Colbere−Garapin, F. 他(1981) J. Mol. Biol. 150:1−14を参照)。さらに選択に利用できる遺伝子、例えば、代謝のために細胞が必要なものを変えるtrpB及びhisDが文献に記載されている(例えば、Hartman, S.C.及びR.C. Mulligan(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. 85:8047−51を参照)。アニトシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質GUS,ルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリンなどの可視マーカーが用いられる。緑色蛍光タンパク質(GFP)(Clontech, Palo Alto, CA)も使用できる。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを特定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することが可能である(例えば、Rhodes, C.A.他(1995)Methods Mol. Biol. 55:121−131を参照)。
【0147】
マーカー遺伝子の発現の存在/非存在によって目的の遺伝子の存在が示されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、PRTSをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、PRTSをコードする配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により特定可能である。または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がPRTSをコードする配列と一列に配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常タンデム遺伝子の発現も示す。
【0148】
一般に、PRTSをコードする核酸配列を含み、PRTSを発現する宿主細胞は、当業者に周知の種々の方法を用いて特定することが可能である。これらの方法には、DNA−DNA或いはDNA−RNAハイブリダイゼーションや、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出及び/または数量化のための膜系、溶液ベース、或いはチップベースの技術を含むタンパク質生物学的試験法または免疫学的アッセイが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるPRTSの発現の検出及び計測のための免疫学的な方法は、当分野で周知である。このような技法には、酵素に結合したイムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光標示式細胞分取器(FACS)などがある。PRTS上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two−site, monoclonal−based immunoassay)が好ましいが、競合の結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びその他のアッセイは、当分野では十分に知られている。(例えば、 Hampton. R. 他.(1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV; Coligan, J. E. 他Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience, New York. NY; 及びPound, J.D. (1990) Immunochemical Protocols, Humans Press, Totowa NJ)。
【0150】
種々の標識技術及び結合技術が当業者には周知であり、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイに用いられ得る。PRTSをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、PRTSをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。当分野では周知であり市販されているこのようなベクターを、T7,T3,またはSP6などの好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドの追加によって、in vitroでのRNAプローブの合成に用いることができる。これらの方法は、例えば、Amersham Pharmacia Biotech及びPromega(Madison WI)、U.S. Biochemical Corp(Cleveland OH)が市販する種々のキットを用いて行うことができる。容易な検出のために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、コファクター、インヒビター、磁気粒子、及び放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、色素産生剤などが含まれる。
【0151】
PRTSをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換された細胞から産生されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用されるその配列及び/またはそのベクターによる。PRTSをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するPRTSの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0152】
更に、挿入した配列の発現調節能力または発現したタンパク質を所望の形にプロセシングする能力によって宿主細胞株が選択される。このようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化(lipidation)、及びアシル化が含まれるが、これらに限定されるものではない。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、標的タンパク質、折りたたみ及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための特定の細胞装置及び特徴のある機構をもつ種種の宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38)がAmerican Type Culture Collection(ATCC; Bethesda, MD)より入手可能であり、外来のタンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にするために選択される。
【0153】
本発明の別の実施例では、PRTSをコードする自然或いは変更された、または組換えの核酸配列を上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列に結合させる。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラPRTSタンパク質が、PRTSの活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分が、市販の親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。このような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、c−mc、赤血球凝集素(HA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。GST及びMBP、Trx、CBP、6−Hisによって、固定されたグルタチオン、マルトース、フェニルアルシン酸化物(phenylarsine oxide)、カルモジュリン、金属キレート樹脂のそれぞれで同族の融合タンパク質の精製が可能となる。FLAG、c−mc、及び赤血球凝集素(HA)によって、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いた融合タンパク質の免疫親和性の精製ができる。また、PRTSをコードする配列と異種タンパク質配列との間にあるタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子操作すると、PRTSが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現と精製の方法は、Ausubel. (1995、前出 ch 10).に記載されている。市販されている様々なキットを用いて、融合タンパク質の発現及び精製を促進できる。
【0154】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したPRTSの合成が可能である。これらの系は、T7またはT3、SP6プロモーターと機能的に結合したタンパク質をコードする配列の転写と翻訳をつなげる。翻訳は、例えば、35Sメチオニンである放射能標識されたアミノ酸前駆体の存在の下で起こる。
【0155】
本発明のPRTSまたはその断片を用いて、PRTSに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つまたは複数の試験化合物を用いて、PRTSへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)または小分子が挙げられる。
【0156】
一実施例では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのPRTSの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的な擬態性または自然結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。同様に、化合物は、PRTSが結合する天然受容体、或いは例えばリガンド結合部位などの少なくとも受容体のある断片に密接に関連し得る。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。一実施例では、このような化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてPRTSを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、大腸菌からの細胞が含まれる。PRTSを発現する細胞またはPRTSを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、PRTSまたは化合物の何れかの結合、刺激または阻害を分析する。
【0157】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、フルオロフォア、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたPRTSと結合させるステップと、PRTSとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、細胞遊離剤、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0158】
本発明のPRTSまたはその断片を用いて、PRTSの活性を調整する化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、或るいは部分的または逆アゴニスト等が含まれる。一実施例では、PRTSが少なくとも1つの試験化合物と結合する、PRTSの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、試験化合物の存在下でのPRTSの活性が試験化合物非存在下でのPRTSの活性と比較する。試験化合物の存在下でのPRTSの活性の変化は、PRTSの活性を調整する化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物をPRTSの活性に適した条件下でPRTSを含むin vitroまたは細胞遊離系と結合させてアッセイを実施する。これらアッセイの何れかにおいて、PRTSの活性を調整する試験化合物は間接的に結合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0159】
別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、PRTSまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288−1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre−loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999−2002; Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323−43 30)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0160】
PRTSをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A. 他 (1998) Science 282:1145−1 147)。
【0161】
PRTSをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、PRTSをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について研究し、潜在的な医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばPRTSを乳汁内に分泌するなどPRTSを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55−74)。
【0162】
(治療)
PRTSは、ペプチド結合を加水分解するのに有用である。PRTSのある領域とプロテアーゼのある領域との間に、例えば配列及びモチーフの文脈における化学的及び構造的類似性が存在する。更に、PRTSの発現は血液組織、神経組織、生殖組織、内分泌組織、尿性器組織、病変組織、奇形癌組織、及び腫瘍組織に密接に関連する。従って、PRTSは、胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害においてある役割を果たすと考えられる。PRTSの発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、PRTSの発現または活性を低下させることが望ましい。また、PRTSの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、PRTSの発現または活性を増大させることが望ましい。
【0163】
従って、一実施例において、PRTSの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にPRTSまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患には胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害が含まれ、胃腸疾患の中には、嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、及び後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、肝脂肪症、血色素症、ウィルソン病、α−1−アンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌とが含まれ、心血管疾患の中には、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術(balloon angioplasty)、血管置換術(vascular replacement)、大動脈冠動脈バイパス術移植手術(coronary artry bypass graft suegery)、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、先天性肺異常(congenital lung anomalies)、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束性肺疾患(restrictive pulmonary disease)、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患(diffuse interstitial diseases)、塵肺症、サルコイド症、特発性肺繊維症(idiopathic pulmonary fibrosis)、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎(hypersensivitity pneumonitis)、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans−organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群(diffuse pulmonary hemorrhage syndromes)、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病(pulmonary involvement in collagen−vascular disorders)、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水(inflammatory and noninflammatory pleural effusions)、気胸症、胸膜腫瘍、薬物による肺疾患(drug−induced lung disease)、放射線による肺疾患(radiation−induced lung desease)及び肺移植の合併症などが含まれ、自己免疫/炎症性の疾患の中には、炎症及び日光性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)及び副腎機能不全、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、アテローム斑破裂、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、関節軟骨の分解、骨粗しょう症、膵炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、発生障害も含まれ、その中には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、骨吸収、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith− Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham’s chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、加齢性黄斑変性症、感覚神経性聴力損失が含まれ、上皮の疾患の中には、汗疱状湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、角化上皮症、黒皮症、白斑、日光性角化症、基底細胞癌、扁平上皮癌、脂漏性角化症、毛包炎、単純ヘルぺス、帯状疱疹、水痘、カンジダ症、皮膚糸状菌症、疥癬、昆虫刺症、老年性血管腫、ケロイド、皮膚線維腫、尖端線維性軟肬、じんま疹、一過性棘融解性皮膚症、乾燥症、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、手湿疹、貨幣状湿疹、ビダール苔癬、asteatotic eczema、うっ血性皮膚炎、うっ血性潰瘍、脂漏性皮膚炎、乾癬、扁平苔癬、バラ色粃糖疹、膿痂疹、膿瘡、皮膚糸状菌症、なまず、疣贅、尋常性座瘡、赤鼻、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、妊娠性疱疹、疱疹状皮膚炎、線形性IgA疾患、後天性表皮水疱症、皮膚筋炎、紅斑性狼瘡、強皮症および限局性強皮症、紅皮症、脱毛症、定形皮膚障害(figurate skin lesions)、血管拡張症、色素沈着低下、色素沈着過度、小疱疹/水疱、発疹、皮膚薬物反応、丘疹小結節皮膚障害(papulonodular skin lesions)、慢性非治癒性創傷、感光性疾患、単純表皮水泡症、表皮剥離および非表皮剥離性掌蹠角皮症、ジーメンス水疱魚鱗癬(ichthyosis bullosa of Siemens)、剥脱性魚鱗癬、手掌足底角化症、掌蹠角皮症(keratosis palmoplantarisまたはpalmoplantar keratoderma)、keratosis punctata、Meesmann’s corneal dystrophy、先天性爪肥厚症、白色海綿母斑、多発性皮脂嚢腫、表皮性母斑/表皮剥離性角化型、moniletbrix、trichothiodystrophy、慢性肝炎/特発性肝硬変、結腸直腸過形成が含まれ、神経の疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー及びクロイツフェルト‐ヤコブ病、ゲルストマン症候群、Gerstmann−Straussler−Scheinker症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神薄弱及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分性及び不安性の障害、分裂病性疾患を含む精神病と、季節性障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、及びトゥーレット病と、進行性核上麻痺、皮質基部変性(corticobasal degeneration)及び家族性の前頭側頭性健忘症とが含まれ、生殖障害の中には、プロラクチンの産生異常と、卵管病及び排卵異常、子宮内膜症、発情期異常、月経周期異常、多嚢胞卵巣症候群、卵巣過剰刺激症候群、子宮内膜癌及び卵巣癌、子宮筋腫、自己免疫異常、異所性妊娠、奇形発生を含む不妊症と、乳癌、線維嚢胞性乳腺症、乳漏症と、精子形成異常、生理学上の精子異常、精巣癌、前立腺癌、良性の前立腺過形成、前立腺炎、ペーロニー病、インポテンス、男性乳房及び女性化乳房癌とが含まれる。
【0164】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むPRTSの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、PRTSまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与することも可能である。
【0165】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むPRTSの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製されたPRTSを含む組成物を好適な医薬用担体と共に患者に投与することも可能である。
【0166】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むPRTSの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、PRTSの活性を調節するアゴニストを患者に投与することも可能である。
【0167】
更なる実施例では、PRTSの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にPRTSのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害が含まれる。一実施態様では、PRTSと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはPRTSを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶターゲッティング或いは運搬機構として間接的に用いられ得る。
【0168】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むPRTSの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、PRTSをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを患者に投与することも可能である。
【0169】
別の実施例では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補的な配列、ベクターを別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。当業者は、従来の医薬原理にしたがって併用療法で用いる好適な治療薬を選択可能である。治療薬との組み合わせにより、上に列記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いて少ない量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能であり、広範囲な副作用の可能性を低減し得る。
【0170】
PRTSのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。詳しくは、精製されたPRTSを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてPRTSと特異的に結合するものを同定が可能である。PRTSの抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリによって作られたフラグメントが含まれる。但し、これらに限定されるものではない。治療用には、中和抗体(即ち、二量体の形成を阻害するもの)が特に好ましい。
【0171】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、PRTSまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。このようなアジュバントにはフロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲルアジュバント、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、キーホールリンペットヘモシニアン、及びジニトロフェノールなどの界面活性剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(bacilli CaPRTStte−Guerin)及びCorynebacterium parvumが特に好ましい。
【0172】
PRTSに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド或いはペプチド、またはそれらの断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが望ましい。PRTSアミノ酸の短いストレッチは、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0173】
PRTSに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。これらの技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBV−ハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されるものではない(例えば、Kohler, G. ら. (1975) Nature 256:495−497; Kozbor, D. ら. (1985) .J. Immunol. Methods 81−8−42; Cote, R.J. ら. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026−2030; Cole, S.P. ら. (1984) Mol. Cell Biol. 62:109−120を参照)。
【0174】
更に、「キメラ抗体」作製のために発達したヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81−4851−4855; Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604−608; Takeda, S.ら. (1985) Nature 314:452,454を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、PRTS特異性一本鎖抗体を生成する。関連する特異性を備えるが別のイディオタイプの組成の抗体は、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリから鎖混合によって生成することもできる(例えば、Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. 88:11120−3を参照)。
【0175】
抗体は、リンパ球集団の中のin vivo産生を誘発することによって、または免疫グロブリンライブラリのスクリーニングまたは文献に示されているような、高度に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによって、得ることもできる(例えば、Orlandi, R. 他. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 3833−3837; Winter, G. 他. (1991) Nature 349:293−299を参照)。
【0176】
PRTSに対する特異的な結合部位を含む抗体も得ることができる。例えば、限定するものではないが、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab’)2断片、及びF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を減少させて生成されるFab断片が含まれる。別法では、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速且つ容易な同定が可能となるように、Fab発現ライブラリを作製することもできる(例えば、Huse, W.D. ら. (1989) Science 254:1275−1281を参照)。
【0177】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定する。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的な結合アッセイ、または免疫放射線アッセイの様々なプロトコルが、当分野では周知である。通常このようなイムノアッセイでは、PRTSとその特異的抗体との間で形成された複合体の測定が含まれる。二つの非干渉性PRTSエピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用することができる(Pound、前出)。
【0178】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、PRTSに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でPRTS抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。多数のPRTSエピトープに対して親和性が不均一なポリクローナル抗体医薬のKaは、PRTSに対する抗体の平均親和性または結合活性を表す。特定のPRTSエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体医薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012L/molの高親和性抗体医薬は、PRTS抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107L/molの低親和性抗体医薬は、PRTSが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい。(Catty, D. (1988) Antibodi es, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. and Cryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0179】
ある下流での適用におけるこのような医薬品の品質及び適性を調べるために、ポリクローナル抗体医薬の抗体価及び結合活性を更に評価する。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体医薬は一般に、PRTS抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。様々な適用例における抗体の特異性及び抗体価、結合活性、抗体の品質や使用法の指針は一般に入手可能である。(例えば、Catty, 前出, 及びColigan 他、前出を参照)。
【0180】
本発明の別の実施例では、PRTSをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片や相補配列が、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、PRTSをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA及びRNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは大きな断片が、PRTSをコードする配列の制御領域から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である。
【0181】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を発現する発現プラスミドの形で細胞内に送達することができる(例えば、Slater, J.E. 他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469−475; and Scanlon, K.J. 他 (1995)9(13):1288−1296.を参照 )。また、アンチセンス配列は、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(例えば、Miller, A.D. (1990) Blood 76:271; Ausubel, 前出; Uckert, W. and W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323−347を参照)。その他の遺伝送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ、及び当分野で周知のその他の系が含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217−225; Boado, R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308−1315; and Morris, M.C. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730−2736.を参照)。
【0182】
本発明の別の実施例では、PRTSをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療は、(i)遺伝子欠損症(例えば、X染色体連鎖遺伝(Cavazzana−Calvo, M. 他 (2000) Science 288:669−672)によって特徴づけられる重度の複合型免疫欠損(SCID)−X1)、遺伝性アデノシン−デアミナーゼ(ADA)欠損症(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475−480; Bordignon, C. 他 (1995) Science 270:470−475)に関連する重度の複合型免疫欠損、嚢胞性繊維症(Zabner, J. 他 (1993) Cell 75:207−216: Crystal, R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643−666; Crystal, R.G. 他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667−703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損による血友病(Crystal, 35 R.G. (1995) Science 270:404−410; Verma, I.M. and Somia. N. (1997) Nature 389:239−242)を治療したり、(ii)条件的致死性遺伝子産物(例えば、細胞増殖の制御不能による癌の場合)を発現させたり、及び(iii)細胞内の寄生虫(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395−396; Poescbla, E. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395−11399)や、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生虫、Plasmodium falciparum及びTrypanosoma cruzi等の原虫寄生体)に対する防御機能を有するタンパク質を発現させて行うことができる。PRTSの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からPRTSを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0183】
本発明の更なる実施例では、PRTSの欠損による疾患や異常症は、PRTSをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってPRTS欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的な導入技術には、(i)個々の細胞内へのDNAのマイクロインジェクション、(ii)金粒子の打ち込み、(iii)リポソーム仲介性トランスフェクション、(iv)受容体仲介性遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソン(Morgan, R.A. and W.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191−217; Ivics, Z. (1997) Cell 91:501−510; Boulay, J−L. and H. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445−450)の使用が含まれる。
【0184】
PRTSの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAXベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV−SCRIPT、PCMV−TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET−OFF、PTET−ON、PTRE2、PTRE2−LUC、PTK−HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。PRTSを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT−REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. and H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547−5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766−1769; Rossi, F.M.V. and H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451−456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. and H.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するPRTSをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0185】
市販のリポソーム形質転換キット(例えば、Invitrogenが販売しているPERFECT LIPID及びTRANSFECTION KIT)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能である。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. and A.J. Eb (1973) Virology 52:456−467)若しくは電気穿孔法 (Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841−845)を用いて形質転換を行う。初代細胞にDNAを導入するためには、これらの標準的な哺乳動物トランスフェクションプロトコルを変更する必要がある。
【0186】
本発明の別の実施例では、PRTSの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターのコントロール下でPRTSをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えば、PFB及びPFBNEO)はStratagene社から入手可能であり、公表データ(Riviere, I. 他. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733−6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。このベクターは、VSVg(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647−1650; Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639−1646; Adam, M.A. and A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802−3806; Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463−8471; Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873−9880)等の乱交雑エンベロープタンパク質若しくは標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子を発現する好適なベクター産生細胞系(VPCL)において増殖される。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、ある細胞集団(例えば、CD4+T細胞)の形質導入、並びに形質導入した細胞を患者に戻す方法は、遺伝子治療の分野では周知であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他. (1997) J. Virol. 71:7020−7029; Bauer, G. 他 (1997) Blood 89:2259−2267; Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707−4716; Ranga, U. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201−1206: Su, L. (1997) Blood 89:2283−2290)。
【0187】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、PRTSの発現に関連する1或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にPRTSをコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングは当分野では周知である。複製欠損型アデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島の中に導入するために可変性であることが証明された(Csete, M.E. 他. (1995) Transplantation 27:263−268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターが、米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについてはまた、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511−544; and Verma, I.M. and N. Somia (1997) Nature 18:389:239−242を参照し、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0188】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、PRTSの発現に関連する1或いは複数の遺伝子異常を有する標的細胞にPRTSをコードするポリヌクレオチドを送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にPRTSを導入する際に特に重要である。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは当分野では周知である。複製適格性の単純疱疹ウイルス(HSV)I型系のベクターは、霊長類の眼にレポーター遺伝子を送達するために用いられてきた(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res.169:385−395)。HSV−1ウイルスベクターの作製は、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(Herpes simplex virus swains for gene transfer)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために、好適なプロモーターのコントロールの下で、細胞に導入される少なくとも1つの内在性遺伝子を含むゲノムからなる組換えHSV d92についての記載がある。また上記特許には、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV株の作製及び使用方法が開示されている。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999) J. Virol. 73:519−532 and Xu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152−161を参照し、引用することをもって本明細書の一部とする。クローニングされたヘルペスウイルス配列の操作や、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多数のプラスミドをトランスフェクトした後の組換えウイルスの継代、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は当分野で周知の技術である。
【0189】
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてPRTSをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的な研究が広範に行われ、遺伝子伝達ベクター(gene transfer vector)がSFVゲノムに基づいていることが分かった(Garoff, H. and K.−J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464−469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスカプシドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAが完全長のゲノムRNAより高いレベルで複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に対してカプシドタンパク質が過剰に産生される。同様に、PRTSをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のPRTSをコードするRNAが産生され、高いレベルでPRTSが合成される。通常はαウイルス感染は2〜3日以内の細胞溶解に関係するが、シンドビスウイルス(SIN)の変異体を有するハムスターの正常な腎細胞(BHK−21)の持続的な感染を確立する能力は、αウイルスの溶解性の複製が遺伝子治療に適用できるように好適に変更することが可能であることを示唆している(Dryga, S.A. 他. (1997) Virology 228 :74−83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にPRTSを導入することできる。ある集団における細胞のサブセットの特定の形質導入には、形質導入する前に細胞のソーティングを必要とする場合がある。αウイルスの感染性cDNAクローンの操作、αウイルスcDNA及びRNAのトランスフェクション、並びにαウイルスの感染方法は当分野で周知である。
【0190】
例えば開始部位から約−10から約+10までの転写開始部位に由来するオリゴヌクレオチドを用いて、遺伝子の発現を阻害することが可能である。同様に、三重らせん塩基対合法を用いて阻害することができる。三重らせん構造は、二重らせんがポリメラーゼ、転写因子、または調節分子の結合のために十分に広がるのを阻止するため有用である。三重鎖DNAを用いる最近の治療の進歩は文献に記載されている(例えば、Gee, J.E. ら. (1994) In: Huber, B.E. 及び B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NYを参照)。相補的な配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するように設計できる。
【0191】
酵素性RNA分子であるリボザイムは、RNAの特異的切断を触媒するために用いることができる。リボザイム作用の機構には、相補的な標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションが含まれ、ヌクレオチド鎖切断が続く。例えば、PRTSをコードする配列のヌクレオチド鎖切断を、特異的且つ効果的に触媒する組換え型のハンマーヘッド型リボザイム分子が含まれる。
【0192】
任意の潜在的RNA標的内の特異的なリボザイム切断部位が、後続の配列GUA、GUU、及びGUCを含むリボザイム切断部位に対して、標的分子をスキャニングすることによって初めに同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15個から20個のリボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチドの機能を不全にする二次的な構造の特徴について評価することが可能である。候補標的の適合性も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの容易性をテストすることによって評価することが可能である。
【0193】
本発明の相補的なリボ核酸分子及びリボザイムは、当分野で周知の方法を用いて、核酸分子の合成のために作製することができる。これらの方法には、固相ホスホラミダイト化合物などのオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法が含まれる。別法では、RNA分子がin vitro及びin vivoでPRTSをコードするDNA配列の転写によって生成され得る、このようなDNA配列はT7またはSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモータを用いて、種々のベクターの中に組み入れることが可能である。別法では、相補的なRNAを構成的または誘導的に合成するこれらのcDNA作製物は、細胞株、細胞、または組織の中に導入することができる。
【0194】
RNA分子を修飾することによって、細胞内の安定性を高め、半減期を長くすることができる。可能な修飾には、分子の5’及び/または3’端部でのフランキング配列の追加、または分子のバックボーン内のホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオネートまたは2’Oメチルを用いる修飾が含まれるが、これらに限定されるものではない。PNAの生成に固有のこの概念は、内在性のエンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンのアセチル−、メチル−、チオ−、及び同様の修飾形態だけでなく、イノシン、キュエオシン(queosine)、及びワイブトシン(wybutosine)などの従来のものでない塩基を含めることによって、これらの分子の全体に拡大することができる。
【0195】
本発明の更なる実施例は、PRTSをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。特定のポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物には、限定するものではないが、特定のポリヌクレオチド配列と相互作用可能な非高分子化学物質、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子やその他のポリペプチド転写調節因子が含まれる。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビター或いはエンハンサーとして作用し、ポリヌクレオチドの発現を変化させ得る。従って、PRTSの発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、PRTSをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、PRTSの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、PRTSをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0196】
特定のポリヌクレオチドの発現の変化の有効性を調べるために、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングすることができる。試験化合物は、有効な化合物の化学修飾を含む当分野で周知の任意の方法で得ることができる。このような方法は、ポリヌクレオチドの発現を変化させる場合、一般に市販されている或いは専売の天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づいて化合物を合理的にデザインする場合、更に組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効である。PRTSをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、少なくとも1つの試験化合物に曝露して得る。サンプルには、例えば無傷細胞、透過化処理した細胞、in vitro細胞遊離系または再構成生化学系が含まれ得る。PRTSをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で周知の任意の方法でアッセイする。通常、PRTSをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーションの収量を定量し、その値が1或いは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較における基準となり得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現の変化が検出される場合は、ポリヌクレオチドの発現の変化に試験化合物が有効であることを示している。特定のポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物を調べるために、例えばSchizosaccharomyces pombe遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞株(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8−13)を用いてスクリーニングする。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性を調べるための、各オリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、及び修飾オリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリのスクリーニングを含む(Bruice, T.W. 他 (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0197】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用でき、in vivo、in vitro、及びex vivoでの使用に等しく適している。ex vivoでの治療の場合、患者から採取された肝細胞の中にベクターを導入して、自家移植で同じ患者に戻すためにクローニング増殖される。トランスフェクション、リボソーム注入またはポリカチオンアミノポリマーによる運搬は、当分野で周知の方法を用いて実行することができる(例えば、Goldman, C.K. 他. (1997) Nature Biotechnology 15:462−66:を参照)。
【0198】
上記したいかなる治療方法も、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ及びサルなどの哺乳動物を含む、治療が必要な全ての被験者に適用できる。
【0199】
本発明の別の実施例は、上記した全ての治療効果のために、医学上認められる担体と共に医薬品或いは無菌組成物の投与に関連する。このような組成物は、PRTS、PRTSの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはPRTSのインヒビターなどからなる。この組成物は、単体で、或いは安定剤などの1種類以上の別の薬剤と共に、無菌の生体適合性医薬品担体に投与することができる。このような医薬品担体には、生理食塩水、緩衝食塩水、ブドウ糖、及び水などが含まれるがこれらに限定されるものではない。この組成物は、単独或いは薬物またはホルモンなどの別の薬剤と共に投与することができる。
【0200】
本発明に用いられる組成物は、様々な経路を用いて投与するが可能である。この経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、または直腸が含まれるがこれらに限定されるものではない。
【0201】
肺投与用の組成物は、液状または乾燥粉末状に調製することができる。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば、従来の低分子量有機薬剤)の場合には、速効製剤のエアロゾル輸送が当分野で周知である。高分子(例えばより大きなペプチドやタンパク質)の場合には、肺の肺胞領域を介する肺輸送の技術が近年向上したため、インスリン等の薬剤を実際に血中に輸送することが可能となった(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺輸送は、針注射を用いないで投与できるという点で優れており、潜在的に有毒な浸透エンハンサーが必要でなくなる。
【0202】
本発明に用いる好適な組成物には、目的を達成するため、効果的な量の活性処方成分を含む組成物が含まれる。当業者は、十分に自身の能力で効果的な服用量を決めることができる。
【0203】
PRTSまたはその断片を含む高分子を直接細胞内に輸送するべく、特殊な形態に組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内輸送を促進し得る。別法では、PRTSまたはその断片をHIV Tat−1タンパク質の陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして作製された融合タンパク質は、マウスモデル系の脳を含む全ての組織の細胞に形質導入されることが確認されている(Schwarze, S.R. 他 (1999) Science 285:1569−1572)。
【0204】
どのような組成物であっても、治療に効果的な薬用量は、初めは、例えば腫瘍細胞の腫瘍細胞アッセイで、或いは動物モデルのどちらかで推定することができる。通常、動物モデルには、マウス、ウサギ、イヌ、サル、またはブタなどが用いられる。動物モデルはまた、好適な濃縮範囲及び投与の経路を決めるのに用いることができる。このような治療をもとに、ヒトへの有益な薬用量及び投与経路を決定することができる。
【0205】
医学的に効果的な薬用量は、症状や容態を回復させる、たとえばPRTSまたはその断片、PRTSの抗体、PRTSのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなどの活性処方成分の量に関連する。薬用有効度及び毒性は、たとえば、ED50(服用に対して集団の50%に医薬的効果がある用量)またはLD50(服用に対して集団の50%に致命的である用量)統計を計算するなど、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって決定することができる。毒性効果と治療効果との薬用量比は治療指数であり、LD50/ED50と示すことができる。高い治療指数を示す組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータが、ヒトへの適用のために、薬用量の範囲を調剤するのに用いられる。このような組成物が含まれる薬用量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含む血中濃度の範囲であることが望ましい。薬用量は、用いられる投与形態及び患者の感受性、投与の経路によって、この範囲内で様々である。
【0206】
正確な薬用量は、治療が必要な患者に関する要素を考慮して、実務者によって決められるであろう。薬用量及び投与は、効果的なレベルの活性成分を与えるため或いは所望の効果を維持するために調節される。薬用量の要素として考慮されるものには、疾患の重症度、患者の一般的な健康状態、年齢、体重、及び患者の性別、投与の時間及び頻度、併用する薬剤、反応感受性、及び治療に対する応答が含まれる。作用期間が長い組成物は、三日か四日に一度、一週間に一度、二週間に一度、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって左右され、投与され得る。
【0207】
通常の薬用量は投与の経路によって異なるが、約0.1〜100,000μgまでの最大約1グラムまでである。特定の薬用量及び運搬の方法に関するガイダンスは文献に記載されており、一般に当分野の実務者はそれを利用することができる。当業者は、タンパク質またはインヒビターとは異なったヌクレオチドの製剤を利用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの運搬は、特定の細胞、状態、位置などに対して特異的であろう。
【0208】
(診断)
別の実施例では、PRTSに特異的に結合する抗体が、PRTSの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはPRTSやPRTSのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断に有用な抗体は、治療のところで記載した方法と同じ方法で製剤される。PRTSの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織から採取されたものからPRTSを検出する方法が含まれる。これらの抗体は、修飾をして或いはしないで使用され、レポーター分子の共有結合性或いは非共有結合性の接着によって標識化され得る。当分野で周知の種々のレポーター分子が用いられるが、その内の幾つかは上記した。
【0209】
PRTSを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのPRTSの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なPRTSの発現の値は、複合体の形成に適した条件の下、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とPRTSに対する抗体とを結合させることによって決定する。標準的な複合体形成の量は、測光法(photometric)などの種々の方法で定量され得る。被験者のPRTSの発現の量、制御及び疾患、生検組織からのサンプルが基準値と比較される。基準値と被験者との間の偏差が、診断の指標となる。
【0210】
本発明の別の実施例によれば、PRTSをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いられるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的なRNA及びDNA分子、及びPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、疾患と相関し得るPRTSを発現する生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、PRTSの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のPRTS値の変化を監視する。
【0211】
一実施形態では、PRTSまたは近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を検出可能なPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによって、PRTSをコードする核酸配列を同定することが可能である。例えば5’調節領域である高度に特異的な領域か、例えば保存されたモチーフであるやや特異性の低い領域から作られているかのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントは、プローブがPRTSをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いはアレルや関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかによって決まるであろう。
【0212】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、PRTSをコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:22−42の配列、或いはPRTS遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0213】
PRTSをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、PRTS及びPRTS誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。このようなベクターは市販されており、当業者には周知であり、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられる。ハイブリダイゼーションプローブは、例えば32P或いは35Sなどの放射性核種、或いはアビジン/ビオチン(biotin)結合系によってプローブに結合されたアルカリホスファターゼなどの酵素標識等の種々のレポーターの集団によって標識され得る。
【0214】
PRTSをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、PRTSの発現に関連する疾患を診断することが可能である。限定するものではないが、このような疾患には胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害が含まれ、胃腸疾患の中には、嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、及び後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、肝脂肪症、血色素症、ウィルソン病、α−1−アンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌とが含まれ、心血管疾患の中には、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術(balloon angioplasty)、血管置換術(vascular replacement)、大動脈冠動脈バイパス術移植手術(coronary artry bypass graft suegery)、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、先天性肺異常(congenital lung anomalies)、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束性肺疾患(restrictive pulmonary disease)、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患(diffuse interstitial diseases)、塵肺症、サルコイド症、特発性肺繊維症(idiopathic pulmonary fibrosis)、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎(hypersensivitity pneumonitis)、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans−organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群(diffuse pulmonary hemorrhage syndromes)、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病(pulmonary involvement in collagen−vascular disorders)、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水(inflammatory and noninflammatory pleural effusions)、気胸症、胸膜腫瘍、薬物による肺疾患(drug−induced lung disease)、放射線による肺疾患(radiation−induced lung desease)及び肺移植の合併症などが含まれ、自己免疫/炎症性の疾患の中には、炎症及び日光性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)及び副腎機能不全、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、アテローム斑破裂、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、関節軟骨の分解、骨粗しょう症、膵炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、発生障害も含まれ、その中には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、骨吸収、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith− Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham’s chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、加齢性黄斑変性症、感覚神経性聴力損失が含まれ、上皮の疾患の中には、汗疱状湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、角化上皮症、黒皮症、白斑、日光性角化症、基底細胞癌、扁平上皮癌、脂漏性角化症、毛包炎、単純ヘルぺス、帯状疱疹、水痘、カンジダ症、皮膚糸状菌症、疥癬、昆虫刺症、老年性血管腫、ケロイド、皮膚線維腫、尖端線維性軟肬、じんま疹、一過性棘融解性皮膚症、乾燥症、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、手湿疹、貨幣状湿疹、ビダール苔癬、asteatotic eczema、うっ血性皮膚炎、うっ血性潰瘍、脂漏性皮膚炎、乾癬、扁平苔癬、バラ色粃糖疹、膿痂疹、膿瘡、皮膚糸状菌症、なまず、疣贅、尋常性座瘡、赤鼻、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、妊娠性疱疹、疱疹状皮膚炎、線形性IgA疾患、後天性表皮水疱症、皮膚筋炎、紅斑性狼瘡、強皮症および限局性強皮症、紅皮症、脱毛症、定形皮膚障害(figurate skin lesions)、血管拡張症、色素沈着低下、色素沈着過度、小疱疹/水疱、発疹、皮膚薬物反応、丘疹小結節皮膚障害(papulonodular skin lesions)、慢性非治癒性創傷、感光性疾患、単純表皮水泡症、表皮剥離および非表皮剥離性掌蹠角皮症、ジーメンス水疱魚鱗癬(ichthyosis bullosa of Siemens)、剥脱性魚鱗癬、手掌足底角化症、掌蹠角皮症(keratosis palmoplantarisまたはpalmoplantar keratoderma)、keratosis punctata、Meesmann’s corneal dystrophy、先天性爪肥厚症、白色海綿母斑、多発性皮脂嚢腫、表皮性母斑/表皮剥離性角化型、moniletbrix、trichothiodystrophy、慢性肝炎/特発性肝硬変、結腸直腸過形成が含まれ、神経の疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー及びクロイツフェルト‐ヤコブ病、ゲルストマン症候群、Gerstmann−Straussler−Scheinker症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神薄弱及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分性及び不安性の障害、分裂病性疾患を含む精神病と、季節性障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、及びトゥーレット病と、進行性核上麻痺、皮質基部変性(corticobasal degeneration)及び家族性の前頭側頭性健忘症とが含まれ、生殖障害の中には、プロラクチンの産生異常と、卵管病及び排卵異常、子宮内膜症、発情期異常、月経周期異常、多嚢胞卵巣症候群、卵巣過剰刺激症候群、子宮内膜癌及び卵巣癌、子宮筋腫、自己免疫異常、異所性妊娠、奇形発生を含む不妊症と、乳癌、線維嚢胞性乳腺症、乳漏症と、精子形成異常、生理学上の精子異常、精巣癌、前立腺癌、良性の前立腺過形成、前立腺炎、ペーロニー病、インポテンス、男性乳房及び女性化乳房癌とが含まれる。PRTSをコードするポリヌクレオチド配列は、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術、PCR法、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、ELISA式アッセイ、及び変異PRTSの発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用するマイクロアレイに使用することが可能である。このような質的或いは量的方法は、当分野では周知である。
【0215】
ある実施態様では、PRTSをコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。PRTSをコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件の下、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができるであろう。好適な培養期間の後、サンプルを洗浄し、シグナルを定量して基準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が、制御サンプルと較べて著しく変わっている場合は、サンプル内のPRTSをコードするヌクレオチド配列の変異レベルにより、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセイを用いて、動物実験、臨床試験、或いは個人の患者の治療を監視における、特定の治療効果を推定することが可能である。
【0216】
PRTSの発現に関連する疾患の診断の基準となるものを提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件の下、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、PRTSをコードする配列或いはその断片とを結合させることにより達成され得る。標準的なハイブリダイゼーションは、正常な被験者から得た値と周知の量の実質的に精製されたポリヌクレオチドが用いられる実験からの値とを比較することによって定量可能である。正常なサンプルから得た標準的な値を、疾患の症状を示す被験者から得た値と比較可能である。基準値と被験者の値との偏差を用いて罹患しているかどうを決定する。
【0217】
疾患の存在が確定され、治療プロトコルが開始されると、ハイブリダイゼーションアッセイを通常ベースで繰り返して、被験者における発現のレベルが正常な患者に示される値に近づき始めたかどうかを推定することが可能である。繰り返し行ったアッセイの結果を、数日から数ヶ月の期間の治療の効果を見るのに用いることができる。
【0218】
癌では、個体からの生体組織における異常な量の転写物が、疾患の発生の素因を示し、また実際に臨床的症状が出る前に疾患を検出する方法を提供することが可能である。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法或いは積極的な治療法を早くから利用して、癌の発生または進行を防ぐことが可能となる。
【0219】
PRTSをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。このようなオリゴマーは、化学的な合成、酵素を用いた生成、或いはin vitroで生成され得る。オリゴマーは、好ましくはPRTSをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはPRTSをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件の下、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェントな条件の下、近縁のDNA或いはRNA配列の検出及び/または定量のため用いることが可能である。
【0220】
或る実施態様において、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、ヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となる場合が多いヌクレオチドの置換、挿入及び欠失である。限定するものではないが、SNPの検出方法には、一本鎖立体構造多型(SSCP)及び蛍光SSCP(fSSCP)法が含まれる。SSCPでは、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。このDNAは、例えば病変或いは正常な組織、生検サンプル、体液等に由来し得る。このDNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR産物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。この差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光標識することによって、DNAシークエンシング装置などのハイスループット機器でアンプリマー(amplimer)の検出をすることが可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP:isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、共通のコンセンサス配列の構築に用いられる個々の重複するDNA断片の配列を比較することによって、多型を同定することができる。これらのコンピュータベースの方法は、DNA配列クロマトグラムの自動分析及び統計モデルを用いたシークエンシングエラーや研究室でのDNAの調整に起因する配列のばらつきを排除する。別法では、例えばハイスループットのMASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0221】
PRTSの発現を定量するために用いられ得る方法には、ヌクレオチドの放射標識或いはビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)、及び標準的な曲線に結果が加えられたものが含まれる(例えば、Melby, P.C.ら(1993) J. Immunol. Methods, 159:235−44;Duplaa, C.ら(1993) Anal. Biochem. 229−236を参照)。多数のサンプルの定量速度は、ハイスループット型のアッセイを用いることで速くなるであろう。このアッセイでは、目的のオリゴマーやポリヌクレオチドが様々な希釈液中に含まれ、分光光度法或いは非色応答によって定量が迅速である。
【0222】
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列に由来するオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおける標的として用いることができる。マイクロアレイを、上記したように多数の遺伝子の相対的な発現レベルを同時にモニタリングする転写イメージング技術に用いることができる。マイクロアレイはまた、遺伝子変異、突然変異及び多型の同定に用いることができる。この情報を用いて、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を解明し、疾患を診断し、遺伝子発現に関連する疾病の進行/後退をモニタリングし、疾患の治療における治療薬の開発や活性のモニタリングを行うことができる。特に、患者にとって最適かつ有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを作成することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づいて、患者に対して極めて効果的でありながら副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0223】
別の実施例では、PRTS、PRTSの断片、PRTSに特異的な抗体をマイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようにタンパク質間相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロファイルをモニタリング及び測定することが可能である。
【0224】
特定の実施例は、或る組織または細胞型の転写イメージを生成する本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞型により遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所定の条件下で所定の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析される(Seilliamer 他、米国特許第5,840,484号の”Comparative Gene Transcript Analysis” を参照。この特許に言及することを以って本明細書の一部とする)。従って、特定の組織または細胞型の転写物または逆転写物の全てに本発明のポリヌクレオチドまたはその相補配列をハイブリダイズすることにより、転写イメージが生成され得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその相補配列がマイクロアレイ上に複数のエレメントのサブセットを構成するハイスループット型でハイブリダイゼーションさせる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロファイルとなり得る。
【0225】
転写イメージは、組織、細胞株、生検サンプル、またはその他の生体サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。従って、転写イメージは、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、または細胞株の場合にはin vitroにおける遺伝子発現を反映する。
【0226】
本発明のポリヌクレオチドの発現プロファイルを示す転写イメージはまた、合成化合物または天然化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用され得る。全ての化合物は、作用及び毒性の機構を示唆する、頻繁に分子フィンガープリント若しくは毒性シグネチャ(signature)と称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを引き起こす(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3−159、Steiner, S. and N.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112−113:467−471、また言及することを以って本明細書の一部とする)。試験化合物が、毒性を有する既知の化合物のシグネチャと同一のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性が高い。フィンガープリンまたはシグネチャが、より多くの遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいれば、より有用かつ正確になる。理想としては、発現のゲノム全域にわたって測定し、最高品質のシグネチャを提供することである。任意の試験化合物によっても発現が変化しない遺伝子も同様に重要である。それは、これらの遺伝子の発現レベルを用いて残りの発現データを標準化することができるためである。標準化処理は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャのエレメントへの遺伝子機能を割り当てることは毒性機構の解明に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的な一致には遺伝子機能の知識は必要ではない(例えば2000年2月29日にNational Institute of Environmental Health Sciencesより発行されたPress Release 00−02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒性シグネチャを用いる毒性スクリーニングにおいて、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要でありまた望ましいことである。
【0227】
一実施例では、試験化合物の毒性は、核酸を含有する生体サンプルをその試験化合物で処理して評価する。処理した生体サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1若しくは複数のプローブでハイブリダイズさせ、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量することができる。処理した生体サンプル中の転写レベルを、非処理生体サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差が、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示唆する。
【0228】
別の実施例は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織または細胞型のプロテオームを分析することに関連する。「プロテオーム」という用語は、或る特定の組織または細胞型におけるタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームを構成する各タンパク質は、個々に更なる分析をすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロファイルは、所定の条件下で所定の時間に発現したタンパク質の数及びそれらの相対的な存在量を定量することにより分析する。従って、ある細胞のプロテオームのプロファイルは、特定の組織または細胞型のポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、このような分離は2次元ゲル電気泳動によって行う。この2次元ゲル電気泳動法では、まず、1次元の等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、次に、2次元のドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に従って分離する(前出のSteiner and Anderson)。これらのタンパク質は、通常クーマシーブルーまたはシルバーまたは蛍光染色などの染色剤を用いてゲルを染色して、分散した個別の位置にあるスポットとしてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理済みまたは未処理のいずれかの生体サンプルから得られる等位置にあるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を調べる。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的に切断した後、質量分析する標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基であるその部分的な配列を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列が得られる。
【0229】
プロテオームのプロファイルは、PRTSに特異的な抗体を用いてPRTS発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上のエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝露して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. ら. (1999) Anal. Biochern. 270:103−111、Mendoze, L.G. ら. (1999) Biotechniques 27:778−788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール反応性またはアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0230】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行して分析するべきである。或る組織における或るタンパク質では、転写物の存在量とタンパク質の存在量との相関性が低いことがあるため(Anderson, N.L. and J. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533−537)、プロテオーム毒性シグネチャは、転写イメージにはそれ程影響しないがプロテオームのプロファイルを変化させる化合物の分析において有用たり得る。更に、体液中での転写の分析は、mRNAが急速に分解するため困難である。しがたがって、このような場合にはプロテオームのプロファイル作成はより信頼でき、情報価値がある。
【0231】
別の実施例では、試験化合物の毒性は、タンパク質を含む生体サンプルをその試験化合物で処理して評価する。処理された生体サンプル中で発現したタンパク質を分離して、各タンパク質の量が定量できるようにする。各タンパク質の量を、未処理生体サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプル中のタンパク質の量の差は、処理されたサンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示唆する。個々のタンパク質は、それらのアミノ酸残基をシークエンシングし、これらの部分配列を本発明のポリペプチドと比較することで同定する。
【0232】
別の実施例では、試験化合物の毒性は、タンパク質を含む生体サンプルをその試験化合物で処理することにより評価する。生体サンプルから得たタンパク質を、本発明のポリペプチドに特異的な抗体と共にインキュベートする。その抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生体サンプル中のタンパク質の量を、未処理生体サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差が、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示唆する。
【0233】
当分野で周知の方法でマイクロアレイを準備して使用し、分析する。(例えば、Brennan, T.M. 他 (1995) 米国特許第5,474,796号;Schena, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614−10619; Baldeschweiler 他(1995) PCT出願番号WO95/251116; Shalon, D.他 (1995) PCT出願番号WO95/35505; Heller, R.A. 他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150−2155; 及び Heller, M.J. 他 (1997) 米国特許第5,605,662号を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが周知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, ed. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。また、この文献を引用することを以って本明細書の一部とする。
【0234】
本発明の別の実施例ではまた、PRTSをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コーディング配列または非コーディング配列の何れかを用いることができるが、或る例では、コーディング配列より非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー間にコーディング配列が保存されていることにより、染色体マッピング時に望ましくない交差ハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。この配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる(Harrington, J.J. ら (1997) Nat Genet. 15:345−355、Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127−134、Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149−154等を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて、例えば病状の遺伝と特定の染色体領域やまたは制限断片長多型(RFLP)の遺伝とが相関するような遺伝子連鎖地図を作成可能である(Lander, E.S. and D. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353−7357を参照)。
【0235】
in sit蛍光ハイブリダイゼーション(FISH)は、他の物理的及び遺伝子地図データと相関し得る(例えば、Heinz−Ulrich, 他による(1995) in Meyers, 前出, pp. 965−968を参照)。遺伝子地図データの例は、種々の科学誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のワールドワイドウェブのサイトで見つけることができる。物理的な染色体地図上のPRTSをコードする遺伝子の位置と特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因が、このような疾患と関連するDNA領域の決定に役立つため、更なる位置を決定するクローニングが行われる。
【0236】
染色体標本のin sitハイブリダイゼーション、及び確定した染色体マーカーを用いた結合分析などの物理的マッピング技術を用いて、遺伝子地図を拡張することもできる。マウスなどの別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置させることにより、たとえ正確なヒト染色体の位置が分かっていなくても、関連するマーカーが明らかになる場合が多い。この情報は、位置クローニング或いは別の遺伝子発見技術を用いて遺伝的疾患の研究をしている研究者にとって価値がある。疾患や症候群に関与する1つ或いは複数の遺伝子の位置が、例えば血管拡張性失調症の11q22−23などの特定の遺伝子領域に遺伝子結合によって大まかに決定されると、その領域に対するどの配列マッピングも、さらなる調査のための関連する遺伝子或いは調節遺伝子を表す(例えば、Gatti, R.A.他による(1988)Nature 336:577−580を参照)。また、目的の本発明のヌクレオチド配列を用いて、正常者、保有者、即ち感染者の間の、転位置、反転などによる染色体位置の違いを検出することもある。
【0237】
本発明の別の実施例では、PRTS、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。このようなスクリーニングに用いる断片は、溶液に遊離、固体支持物に固定、細胞の表面上に保持、或いは細胞内に存在する。PRTSと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
【0238】
薬剤スクリーニングに用いる別の方法は、目的のタンパク質に対して、好適な結合親和性を有する化合物のスクリーニング処理能力を高めるために用いられる(例えば、Geysen,他による(1984) PCT出願番号 WO84/03564を参照)。この方法では、相当な数の異なる小さな試験用化合物が、プラスチックピン或いは他の基板の上に合成される。試験用化合物は、PRTS、或いはその断片と反応してから洗浄される。次ぎに、結合されたPRTSが、当分野で周知の方法で検出される。精製されたPRTSはまた、前記した薬剤をスクリーニングする技術に用いられるプレート上で直接被覆することもできる。別法では、非中和抗体を用いて、ペプチドを捕らえ、固体支持物に固定することもできる。
【0239】
別の実施例では、PRTSと結合可能な中和抗体がPRTSと結合するため試験用化合物と特に競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では、抗体が、PRTSと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在も検出する。
【0240】
別の実施例では、発展途上の分子生物学技術にPRTSをコードするヌクレオチド配列を用いて、限定はされないが、現在知られているトリプレット暗号及び特異的な塩基対相互作用などのヌクレオチド配列の特性に依存する新しい技術を提供することができる。
【0241】
当分野の技術者であれば、更なる説明がなくても前述の説明だけで最大限に本発明を利用できるであろう。したがって、以下に記載する実施例は、例示目的であって本発明を限定するものではない。
【0242】
前述した及び以下に記載する全ての特許出願、特許、刊行物、特に米国特許出願第60/212,336号、同第60/213,995号、同第60/215,396号、同第60/216,821号、及び同第60/218,946号に言及することをもって本明細書の一部とする。
【0243】
(実施例)
1 cDNA ライブラリの作製
インサイトcDNAはLIFESEQ GOLD データベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に含まれているcDNAライブラリに由来し、表4の列5に示されている。ある組織をグアニジニウムイソチオシアネート溶液においてホモジナイズして溶解する一方、別の組織を、フェノールにおいて、或いはグアニジニウムイソチオシアネート及びフェノールの単相溶液であるTRIZOL (Life Technologies)などの変性剤の好適な混合液においてホモジナイズして溶解した。この溶解物を塩化セシウムにおいて遠心分離によって、或いはクロロホルムで抽出した。RNAは、イソプロパノール或いは酢酸ナトリウムとエタノールのどちらか、或いは別の一般的な方法でこの溶解物から沈殿させた。
【0244】
RNAの純度を高めるためにRNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理する。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)またはOLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN. Valencia CA)、OLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いてポリ(A+)RNAを単離した。別法では、POLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)などの別のRNA単離キットを用いて組織溶解物から直接単離した。
【0245】
ある場合には、Stratagene社にRNAを提供し、Stratagene社が対応するcDNAライブラリを作製した。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPT プラスミドシステム(Life Technologies)を用いて当分野で周知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成してcDNAライブラリを作製した。(例えば、Ausubel, 1997,前出,ユニット5.1−6.6を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始させた。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに結合させてから、好適な1或いは複数の制限酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリでは、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2B、SEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech)、またはアガロースゲル電気泳動法によってcDNAの大きさ(300〜1000bp)を選択した。PBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、pSPORT1プラスミド(Life Technologies)、pcDNA2.1プラスミド(Invitrogen Carlsbad CA)、PBK−CMVプラスミド(Stratagene)、pINCYプラスミド(Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto CA)、またはそれらの誘導体などの好適なプラスミドのポリリンカーの適合性制限酵素部位にcDNAを結合させた。この組換えプラスミドを、Stratagene社のXL1−Blue, XL1−BIueMRF、SOLR、またはLife Technologies社のDH5αまたはDH10B、ELECTROMAX DH10Bを含むコンピテント大腸菌細胞に導入し形質転換した。
【0246】
2 cDNA クローンの単離
上記実施例1に記載したように得たプラスミドは、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)或いは細胞溶解を利用したin vivo切除によって宿主細胞から回収した。プラスミドの精製には、MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plus、QIAWELL 8 Plus Plasmid、またはQIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、またはREAL Prep 96プラスミドキットの内の少なくとも1つを用いた。沈殿させた後、0.1 mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0247】
別法では、ハイスループットの直接結合PCR法によって宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した。(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1−14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリングステップは、1つの反応混合液で行った。サンプルを処理してから384−ウェルプレートに移して保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度を、PICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFluoroskan II蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光定量的に測定した。
【0248】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したインサイトcDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンシング反応は標準的な方法で行うか、またはHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)或いはMICROLAB 2200 (Hamilton) 液体移送装置と共にABI CATALYST 800 (PE Biosystems) サーマルサイクラー或いはPTC−200 thermal cycler (MJ Research)などのハイスループット装置を用いて行った。cDNAのシークエンシング反応は、Amersham Pharmacia Biotech社の試薬、またはABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reactionキット(PE Biosystems)などのABIシークエンシングキットに含まれる試薬を用いて行った。cDNAシークエンシングの反応物の電気泳動的による分離及び標識したポリヌクレオチドの検出は、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)、標準ABIプロトコル及び塩基対呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(PE Biosystems)、または当分野で周知のその他の配列解析システムを用いて行った。cDNA配列内の読み枠は、標準的な方法(Ausubel, 1997, 前出, unit 7.7)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長した。
【0249】
インサイトcDNAに由来する本ポリヌクレオチド配列の確認は、BLAST、動的プログラミング、およびジヌクレオチドの分布による解析(dinucleotide nearest neighbor analysis)に基づいたプログラム及びアルゴリズムを用いて、ベクター、リンカー、およびポリA配列を取り除き、更にあいまいな塩基対をマスクすることで行った。次に、インサイトcDNA配列およびそれらの翻訳を、公共のデータベースであるGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、および真核生物のデータベース、およびBLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、およびPFAMなどの隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたタンパク質ファミリーのデータベースから選択した配列に対して問合せた(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス主構造を分析する確率的手法である。例えば、Eddy, S. R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6 : 361−365を参照)。このような問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS、およびHMMRに基づいたプログラムを用いて行った。インサイトcDNA配列を組み立てて、完全長ポリヌクレオチド配列を作製した。或いは、GenBank cDNAs、GenBank EST、ステッチ配列(stitched sequence)、ストレッチ配列(stretched sequences)、またはGenscan−推定コード配列(実施例4および5を参照)を用いて、インサイトcDNA群を完全長の配列に伸長した。配列の組み立ては、Phred、Phrap、およびConsedに基づいたプログラムを用いて行い、GeneMark、BLAST、およびFASTAに基づいたプログラムを用いて、オープンリーディングフレームを決定するべくcDAN群をスクリーニングした。完全長のポリヌクレオチド配列を翻訳して対応する完全長ポリペプチド配列を得た。別法では、本発明のポリヌクレオチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基から始まり得る。次に、完全長ポリペプチド配列をGenBankタンパク質データベース(genpept)、SwissProt、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、Prosite、およびPFAMなどの隠れマルコフモデル(HMM)に基づいたタンパク質ファミリーデータベースに対して問合せて分析した。こられの完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PRO ソフトウェア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)およびLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列のアラインメントを、アライメントした配列間のパーセント同一性も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれたCLUSTALアルゴリズムによって指定されたデフォルトパラメータを用いて作成した。
【0250】
表7は、インサイトcDNAおよび完全長配列の組み立て、および組み立てた配列の分析に利用したツール、プログラム、およびアルゴリズム、並びにそれらの説明、引用文献、閾値パラメータを簡単に示す。表7の列1は用いたツール、プログラム、およびアルゴリズム、列2はそれらの簡単な説明、列3は引用することで本明細書の一部とした引用文献、列4の記載されている部分は2つの配列の一致の程度を評価するために用いたスコア、確率値、およびその他のパラメータを示す(スコアが高くなれば高くなるほど即ち確率値が低ければ低いほど、配列間の相同性が高くなる)。
【0251】
完全長のポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の組み立て及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:22−42のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列4に示した。
【0252】
4 ゲノム DNA からのコード配列の同定および編集
推定上のプロテアーゼは、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物に由来するゲノムDNA配列を分析するための汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. および S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268 : 78−94、Burge, C. および S. Karlin (1998) Curr. Opin. Struct. Biol. 8 : 346−354を参照)。このプログラムは推定エキソンを連結して、メチオニンから停止コドンまで伸長した組み立てcDNA配列を構築する。Genscanにより得られる配列は、FASTAデータベースのポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列になる。Genscanによって一回で解析できる配列の最大長さは30kbに設定されている。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列がプロテアーゼをコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいてプロテアーゼについて問合せて分析した。潜在的なプロテアーゼが、プロテアーゼとしてアノテーションが付けられたインサイトcDNA配列に対する相同性を基に同定された。次に、これらの選択されたGenscan推定配列を、BLAST解析を用いてgeneptおよびgbpri公共データベースの配列と比較した。必要に応じて、Genscan推定cDNA配列を、geneptにおいてBLASTで最もヒットした配列と比較して、Genscan推定配列における余分なエキソンや省いてしまったエキソンなどのエラーを修正し、編集した。BLAST解析を用いてGenscan推定cDNA配列を含むインサイトcDNAまたは公共のcDNAを見つけ出すことにより、転写の証拠が得られる。インサイトcDNAがGenscan推定cDNA配列を含む場合、この情報を用いてGenscan推定配列を修正或いは確認できる。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に説明した組み立て方法でGenscan推定コード配列とインサイトcDNAおよび/または公共のcDNA配列を組み立てて作製した。別法では、完全長ポリヌクレオチド配列は、その全てが編集した或いは未編集のGenscan推定コード配列から作製した。
【0253】
5 cDNA 配列データを用いるゲノム配列データの組み立て
ステッチ配列( Stiched Sequence )
部分cDNA配列を、実施例4に記載したGenscan遺伝子同定プログラムによって推定されたエキソンで伸長した。実施例3に記載されたように組み立てられた部分cDNAをゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNAと1或いは複数のゲノム配列から推定されるGenscanエキソンとを含む複数のクラスターに分けた。各クラスターをグラフ理論および動的計画法に基づいたアルゴリズムを用いて分析し、cDNAおよびゲノム情報を統合し、完全長の配列を作製するために、その後に確認、編集、または伸長して潜在的なスプライスバリアントを生成した。クラスターの2つ以上の配列に配列区間の全長が存在する配列区間を同定し、このように同定した区間を推移により等しいと考えた。例えば、或る区間がcDNAおよび2つのゲノム配列に存在する場合、これら3つ全ての区間を等しいと考えた。この方法によって、関連しないが連続するゲノム配列をcDNA配列によって繋ぎ1つにした。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製した。1種類の親配列に沿って連結される区間と区間との繋ぎ合わせ(cDNAとcDNA、またはゲノム配列とゲノム配列)は、親配列の種類が異なる連結(cDNAとゲノム配列)よりも優先された。得られたステッチ配列を翻訳し、BLAST解析でgenpeptおよびgbpri公共データベースにおける配列と比較した。Genscanによって推定された不適当なエキソンを、geneptにおいてBLASTで最もヒットした配列と比較して修正した。必要に応じてこのような配列を更なるcNDA配列若しくはゲノムDNA検査により伸長した。
【0254】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列をBLAST解析に基づいたアルゴリズムで完全長に伸長した。まず、実施例3に記載したように組み立てた部分cDNAを、BLASTプログラムを用いてGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、および真核生物のデータベースなどの公共のデータベースに対して問い合わせた。次に、GenBankの相同性の最も高いタンパク質を、実施例4に記載したインサイトcDNA或いはGenScanエキソン推定配列の何れかと比較した。得られた複数の高スコアのセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を作製し、GenBnakの相同タンパク質上に翻訳した配列をマッピングした。元のGenBnakの相同タンパク質に関連して、キメラタンパク質に挿入や欠失が起こり得る。公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索するために、GenBnakの相同タンパク質およびキメラタンパク質の両方をプローブとして用いた。このようにして、部分DNA配列を相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。得られたストレッチ配列を完全な遺伝子を含んでいるかについて検査した。
【0255】
6 PRTS をコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:22−42を組み立てるために用いた配列を、BLAST及びSmith−Watermanアルゴリズムを用いて、インサイトLIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:22−42と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrap(表7)などの構築アルゴリズムを使用して、連続及び重複した配列のクラスターに組み入れた。Stanford Human Genonse Center (SHGC)、Whitehead Institute for Genome Research (WIGR)及びGenethonなどの公共の情報源から入手できる放射線ハイブリッド(radiation hybrid)及び遺伝子マッピングのデータを用いて、クラスター化した配列がすでにマッピングされているかを調べる。クラスターにマッピングされた配列が含まれている場合は、そのクラスターの全ての配列(特定のSEQ ID NOを含む)をそのマッピング位置に割り当てた。
【0256】
遺伝子地図の位置は、ヒト染色体の範囲または区間によって表される。センチモルガンで示したマッピング位置の範囲は、染色体の短腕(p)の末端から測定したセンチモルガン(cM)は、同一染色体上の遺伝子間の組換え率に基づいた距離を表す単位である。平均すると、1cMはヒトの染色体の1メガベースに概ね等しいいが、組換え率の高い部分と低い部分があるため、大きく変化し得る)。距離cMは、配列がそれぞれのクラスターに含まれている放射線ハイブリッドマーカーの境界を検出できるGenethonによってマッピングされた遺伝子マーカーに基づいている。NCBI「GeneMap99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap)などの公衆が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、上記した区間が既に同定されている疾患遺伝子マップ内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0257】
このようにして、SEQ ID NO:25が、第5染色体の69.60 cM〜76.50 cMの範囲内にマッピングされた。SEQ ID NO:28が、第16染色体の81.80 cM〜84.40 cMの範囲内にマッピングされた。
【0258】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験用技術であり、特定の細胞種或いは組織からのRNAが結合されている膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを伴う(例えば、Sambrook,前出, 7章; 及び Ausubel. F.M. 他、前出, 4章及び16章を参照)。
【0259】
BLASTに用いる類似のコンピュータ技術を用いて、GenBank或いはLIFESEQ(Incyte Pharmaceuticals)のようなcDNAデータベース内の同一或いは関連する分子を検索する。この分析は多くの膜系ハイブリダイゼーションより非常に速度が速い。さらにコンピュータ検索の感度を変更して、任意の特定の一致が、厳密な一致或いは相同的一致の何れかとして分類されるかを確定することができる。検索の基準は、
【0260】
【数1】
として定義される積スコアである。積スコアは、0〜100の標準化された値であり、以下のように求める。BLASTスコアにヌクレオチド配列の一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除す。高スコアのセグメントの対(HSP)において一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不適性塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより離隔される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、BLASTアラインメントの断片的重複と質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合にのみ得られる。積スコア70は、100%の同一性で重畳が70%であるか、或いは88%の同一性で重畳が100%であるかの何れかの場合である。積スコア50は、100%の同一性で重畳が50%であるか、或いは79%の同一性で重畳が100%であるかの何れかの場合である。
【0261】
或いは、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列は、由来する組織に対して分析する。例えば、ある完全長の配列は、少なくとも部分的にインサイトcDNA配列をオーバーラップさせて組み立てられる(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、心血管系、結合組織、消化系、胚構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液および免疫系、肺、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、皮膚、顎口腔系、分類不能/混合、または尿管などの1つの生物/組織のカテゴリーに分類される。各カテゴリーにおけるライブラリの数をカウントし、その合計数を全カテゴリーのライブラリ数で除す。同様に、各ヒト組織は、癌、細胞系、発生、炎症、神経、外傷、心血管、プール(pooled)などの1つの疾患/症状のカテゴリーに分類され、各カテゴリーにおけるライブラリの数をカウントし、その合計数を全カテゴリーのライブラリ数で除す。得られるパーセンテージは、PRTSをコードするcDNAの疾患特異的な発現を反映する。cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0262】
8 PRTS をコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列は、完全長分子の好適な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてその完全長分子の好適な断片を伸長して作製した。一方のプライマーは既知の断片の5’の伸長を開始するために合成し、他方のプライマーは既知の断片の3’の伸長を開始するために合成した。開始プライマーは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは他の適切なプログラムを用いて、約22個から約30個のヌクレオチドの長さで約50%以上のGC含量を有し、かつ約68〜72℃の温度で標的配列にアニールするように設計した。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体が生じないようにヌクレオチドを伸長した。
【0263】
選択されたヒトcDNAライブラリを用いてこの配列を伸長した。2段階以上の伸長が必要な場合、若しくは望ましい場合は、追加或いはネスト化プライマーの組を設計する。
【0264】
当分野で既知の方法を利用したPCR法で高い忠実度で増幅した。PCRはPTC−200 thermal cycler (MJ Research, Inc.)用いて96ウェルブロックプレートで行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、Mg2 +と(NH4)2SO4とβ−メルカプトエタノールを含むバッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保管
別法では、プライマーの組、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 57℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
【0265】
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25% (v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Coming Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。このプレートをFluoroskan II (Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンして、サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量化する。反応混合物の5〜10μlのアリコットを1%のアガロースミニゲル上での電気泳動によって解析し、何れの反応物が配列を伸長することに成功したかを決定する。
【0266】
伸長したヌクレオチドを脱塩及び濃縮してから384ウェルプレートに移し、CviJIコレラウィルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)で消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結する前に音波処理またはせん断を行った。ショットガンシークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上に分離して断片を切断し、寒天をAgar ACE (Promega)で消化した。T4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いて伸長したクローンをpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で制限部位の延び出しを処理してコンピテント大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
【0267】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 72℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を29回繰り返す
ステップ6 72℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNA回収率の悪いサンプルは、上記した条件で再び増幅した。サンプルを20%のジメチルサルホサイド(dimethysulphoxide)(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC DIRECTキット(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reactionキット(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0268】
同様に上述の手順で、完全長のポリヌクレオチド配列を検査したり、或いは完全長のポリヌクレオチド配列を利用して、この伸長のために設計したオリゴヌクレオチドと好適なゲノムライブラリを用いて5′調節配列を得た。
【0269】
9 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用法
SEQ ID NO:22−42から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記すが、より大きなcDNAフラグメントの場合でも基本的に同じ手順を用いる。オリゴヌクレオチドを、OLIGO4.06ソフトウェア(National Bioscience)のような最新式のソフトウェアを用いてデザインし、50pmolの各オリゴマーと、250μCiの[γ‐32P]アデノシン三リン酸(Amersham, Chicago, IL)及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN、Boston MA)とを組み合わせて用いることにより標識する。標識されたオリゴヌクレオチドを、SEPHADEX G−25超精細排除デキストランビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて実質的に精製する。毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを、次のエンドヌクレアーゼ、Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1或いはPvu II(DuPont NEN)の1つを用いて切断したヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において用いる。
【0270】
各切断物からのDNAを、0.7%アガロースゲル上で分画して、ナイロン製メンブラン(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に転写する。ハイブリダイゼーションは40℃で16時間かけて行う。非特異的シグナルを取り除くため、例えば、最大0.1xクエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムの条件の下、ブロットを順次室温にて洗浄する。ハイブリダイゼーションパターンをオートラジオグラフィー或いは別のイメージ化手段で視覚化して比較する。
【0271】
10 マイクロアレイ
マイクロアレイ上のアレイエレメントの連結または合成は、フォトリソグラフィ、ピエゾプリント(インクジェットプリンター、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一な非多孔性の固体とするべきである(Schena (1999).前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。別法では、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱や紫外線、または化学的或いは機械的な結合手段で基板の表面にエレメントを配置して結合させることができる。通常のアレイは利用可能な方法や機械を用いて作製でき、任意の適正な数のエレメントを含めることができる(Schena, M. 他 (1995) Science 270:467−470、Shalon. D. 他 (1996) Genome Res. 6:639−645、Marshall, A. and J. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27−31.を参照)。
【0272】
完全長cDNA、発現遺伝子配列断片(EST)、或いはそれらの断片やオリゴマーが、マイクロアレイのエレメントとなり得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片やオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)などの当分野で周知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。このアレイエレメントを、生体サンプル中のポリヌクレオチドとハイブリダイズさせる。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識またはその他の分子タグに結合する。ハイブリダイゼーションの後、生体サンプルからハイブリダイズしなかったヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントにおけるハイブリダイゼーションを検出する。別法では、レーザー脱離及び質量スペクトロメトリーを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上のエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの相補性の程度及び相対的存在量は、算定することができる。一実施例におけるマイクロアレイの調整及び使用について、以下に詳述する。
【0273】
組織または細胞サンプルの調製
グアニジウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルは、MMLV逆転写酵素、0.05 pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第1鎖緩衝液、0.03単位/μlのRNアーゼインヒビター、500μM dATP、500μM dGTP、500μM dTTP、40μM dCTP、40μM dCTP−Cy3(BDS)またはdCTP−Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。この逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いて、200 ngのポリ(A)+RNAを含む25 ml容量で行う。特異的なコントロールポリ(A)+RNAは、in vitro転写により非コーディング酵母ゲノムDNAから合成する。370℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(一方はCy3標識、他方はCy5標識)は、2.5mlの0.5M 水酸化ナトリウムで処理し、850℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを変性する。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。結合後、2つの反応サンプルを、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール沈殿させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0274】
マイクロアレイの準備
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNA挿入断片を含むベクターを含有する細菌性細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNA挿入断片に隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅されたアレイエレメントは、SEPHACRYL−400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製する。
【0275】
精製したアレイエレメントを、ポリマーコートされたスライドガラス上に固定する。顕微鏡スライドガラス(Corning)は、処理中及び処理後に大量の蒸留水での洗浄と、0.1%のSDS及びアセトン中で超音波による洗浄を行う。スライドガラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で広範囲にわたって洗浄し、95%エタノール中の0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)でコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃の天火で硬化させる。
【0276】
米国特許第5,807,522号に記載されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。この特許に引用することを以って本明細書の一部とする。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。次にこの装置が、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを分注する。
【0277】
マイクロアレイには、STRATALINKER UVクロスリンカー(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1回洗浄し、蒸留水で3回洗浄する。非特異的な結合部位は、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)における0.2%カゼイン中で60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートし、その後上述したように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することによってブロックする。
【0278】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合液を、65℃で5分間加熱し、マイクロアレイ表面上に一定量分注してから1.8cm2 のカバーガラスで覆う。このアレイを、顕微鏡スライドより僅かに大きいキャビティを有する防水チェンバーに移す。チャンバーの角に140μlの5×SSCを加えて、チャンバー内を湿度100%に保持する。このアレイを含むチャンバーを、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間それぞれ3回洗浄し、その後乾燥させる。
【0279】
検出
レポーター標識されたハイブリダイゼーション複合体は、Cy3を励起するための488nm、及びCy3を励起するための632nmのスペクトル線を生成し得るInnova 70混合ガス10 Wレーザー(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。20倍の顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いて、アレイ上に励起レーザー光を集中させる。このアレイを含むスライドを顕微鏡のコンピュータ制御X−Yステージに置き、対物レンズを通してラスタスキャンする。本実施例で用いた1.8cm×1.8cmのアレイは、20μmの解像度でスキャンする。
【0280】
2つの異なるスキャンにおいて、混合ガスマルチラインレーザーは2つの蛍光体を連続的に励起する。放射された光は、波長に基づいて2つの蛍光体に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に分割される。アレイと光電子増倍管との間に配設された好適なフィルタを用いて信号をフィルタリングする。用いる蛍光体の最大発光は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光体からのスペクトルを同時に記録できるが、レーザー源に好適なフィルタを用いて、蛍光体1つにつき1回スキャンし、各アレイを通常2回スキャンする。
【0281】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNAコントロール種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列を含め、その位置におけるシグナルの強度がハイブリダイズする種の重量比1:100,000に相関するようにする。異なる試料(例えば検査細胞及びコントロール細胞を代表する)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光体で標識し、他と異なって発現する遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズさせる場合には、較正は2つの蛍光体を有する較正するcDNAのサンプルを標識して、ハイブリダイゼーション混合液に各々等量を加えて行う。
【0282】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI−835Hアナログ−ディジタル(AID)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、リニア20色変換を用いてシグナル強度が青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲にマッピングされるイメージとして表示される。データはまた、定量的に分析される。2つの異なる蛍光体を同時に励起して測定する場合には、各蛍光体の発光スペクトルを用いて、先ずデータは蛍光体間の光学的漏話(重複発光スペクトルに起因する)に対して補正される。
【0283】
グリッドを蛍光シグナルイメージ上に重畳して、各スポットからのシグナルがグリッドの各エレメントに中央に位置するようにする。各エレメント内の蛍光シグナルを統合し、シグナルの平均強度に対応する数値を得る。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0284】
11 相補的ポリヌクレオチド
PRTSをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のPRTSの発現を低下させるため即ち阻害するために用いられる。約15〜約30個の塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、より小さな或いはより大きな配列の断片の場合でも本質的に同じ方法を用いることができる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びPRTSのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5′配列から相補的なオリゴヌクレオチドを設計し、これを用いてプロモーターがコーディング配列に結合するのを阻害する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがPRTSをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0285】
12 PRTS の発現
PRTSの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でPRTSが発現するために、抗生物質耐性及びcDNAの転写レベルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターには、lacオペレーター調節エレメントに関連するT5またはT7バクテリオファージプロモーター及びtrp−lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)などの好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとPRTSを発現する。真核細胞でのPRTSの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多面性ウイルス(AcMNPV)を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、PRTSをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強いポリヘドリンプロモータによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda (Sf9)昆虫細胞に感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる。(例えば、Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227; Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945.を参照)。
【0286】
殆どの発現系では、PRTSが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、またはFLAGや6−Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製が素早く1回で行うことができる。Schistosoma japonicumからの26キロダルトンの酵素GSTによって、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で固定されたグルタチオンで融合タンパク質の精製が可能となる(Amersham Pharmacia Biotech)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でPRTSからタンパク分解的に切断できる。アミノ酸8個のペプチドであるFLAGで、市販のモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性の精製が可能となる。6個の連続するヒスチジン残基のストレッチである6−Hisによって、金属キレート樹脂(QIAGEN)で精製が可能となる。タンパク質の発現及び精製の方法は、Ausubel (1995,前出, ch 10, 16)に記載されている。これらの方法で精製したPRTSを直接用いて以下の実施例16、17、18、及び19のアッセイを行うことができる。
【0287】
13 機能のアッセイ
PRTSの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのPRTSをコードする配列の発現によって評価する。cDNAを、cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。このようなベクターには、pCMV SPORTTM (Life Technologies.)及びpCR 3.1 (Invitrogen, Carlsbad, CA)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを含んでいる。5〜10μgの組換えベクターを、例えば内皮由来か造血由来のヒト細胞株にリポソーム製剤或いは電気穿孔法によって一時的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入された細胞と形質移入されていない細胞とを区別できる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。このような標識タンパク質には、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、及びCD64またはCD64−GFP融合タンパク質が含まれる。レーザー光学に基づいた技術を利用した自動流動細胞計測法(FCM)を用いて、GFPまたはCD64−GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。また、FCMで、先行した或いは同時の細胞死の現象を診断する蛍光分子の取り込みを検出して計量する。これらの現象には、プロピジウムヨウ化物でのDNAの染色によって計測される核DNA内容物の変化と、ブロモデオキシウリジンの取り込み量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節と、特異的な抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内のタンパンク質の発現の変化と、蛍光複合アネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とが含まれる。流動細胞計測法は、Ormerod, M. G.による (1994) Flow Cytometry Oxford, New York, NY.に記載されている。
【0288】
遺伝子発現におけるPRTSの影響は、PRTSをコードする配列とCD64またはCD64−GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64−GFPは形質転換された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された領域と結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。PRTS及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0289】
14 PRTS に特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 1816−3088−495を参照)または他の精製技術で実質的に精製されたPRTSを用いて、標準的なプロトコルでウサギを免疫化して抗体を作り出す。
【0290】
別法では、PRTSアミノ酸配列をLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて解析して免疫原性の高い領域を決定し、対応するオリゴペプチドを合成してこれを用いて当業者に周知の方法で抗体を生産する。C末端付近の、或いは隣接する親水性領域内のエピトープなどの適切なエピトープの選択については、当分野で周知である(例えば、前出のAusubel, 1995,11章を参照)。
【0291】
通常、約15残基の長さのオリゴペプチドを、Applied BiosystemsのABI 431Aペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)を用いてfmoc法のケミストリにより合成し、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によりKLH(Sigma−Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(例えば、前出のAusubel, 1995を参照)。フロイントの完全アジュバントにおいてオリゴペプチド−KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗PRTS活性を検査するには、ペプチドまたはPRTSを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0292】
15 特異的抗体を用いる天然 PRTS の精製
天然PRTS或いは組換えPRTSを、PRTSに特異的な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr−活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗PRTS抗体とを共有結合させることにより形成する。結合の後、そのレジンを製造者の使用説明書に従ってブロッキング処理し洗浄する。
【0293】
PRTSを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、PRTSを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とPRTSとの結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファー、或いは高濃度の尿素またはチオシアン酸塩イオンのようなカオトロピックイオンで)溶出させ、PRTSを回収する。
【0294】
16 PRTS と相互作用する分子の同定
PRTSまたは生物学的に活性なその断片を、125I Bolton−Hunter試薬(例えば、Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529を参照)で標識する。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したPRTSと共にインキュベートし、洗浄して、標識したPRTS複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なPRTS濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したPRTSの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0295】
別法では、PRTSと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245−246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two−hybrid system)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0296】
PRTSはまた、ハイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2つの大きなライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0297】
17 PRTS 活性の実証
プロテアーゼ活性は、様々な色素分子と結合した適切な合成ペプチド基質の加水分解によって測定する。この測定では、加水分解の程度が、遊離した発色団の分光光度法(または蛍光分析)による吸収により定量される(Beynon, R. J.及びJ. S. Bond (1994) Proteolytic Enzymes : A Practical Approach, Oxford University Press, New York NY, pp. 25−55)。ペプチド基質は、エンドペプチダーゼ(セリン、システイン、アスパラギン酸プロテアーゼ、若しくはメタロプロテアーゼ)、アミノペプチダーゼ(ロイシンアミノペプチダーゼ)、若しくはカルボキシペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼA及びB、プロコラーゲンC−プロテイナーゼ)としてプロテアーゼ活性のカテゴリーに従ってデザインされる。一般的に用いられるクロモーゲンは、2−ナフチルアミン、4−ニトロアニリン、及びフリルアクリル酸である。例えば、アルギニン‐β‐ナフチルアミンをSEQ ID NO:3の基質として用いることができ(Fukasawa, K. M. ら (1996) J. Biol. Chem. 271: 30731−30735)、また、4−phenylazobenzyloxycarbonyl−Pro−Leu−Gly−Pro−D−ArgをSEQ ID NO:4の基質として用いることがでる。別の例では、7‐アミノ‐4‐トリフルオロメチル‐クマリン‐フェニールアラニン‐プロリン‐AFCをSEQ ID NO:3の基質として用いることがでる。アッセイは周囲界温度で実施し、好適なバッファ中に一定量の酵素及び適切な基質を含む。反応は蛍光キュベット内で行い、ペプチド基質の加水分解中に遊離した色素原の吸光度の増減を測定する。吸光度に於ける変化は、アッセイ中の酵素活性に比例する。
【0298】
ユビキチンヒドロラーゼ活性についての代替アッセイでは、ユビキチン前駆体の加水分解を測定する。このアッセイは周囲温度で行い、適当なバッファ中に一定量のPRTS及び適切な基質を含む。SEQ ID NO:1の場合、化学合成されたヒトユビキチン−バリンを基質として用い得る。C−末端バリン残基の基質からの切断は、毛細管電気泳動(Franklin, K.ら(1997) Anal. Biochem. 247 : 305−309)でモニタリングする。
【0299】
別法では、SEQ ID NO:5のユビキチンプロテアーゼ活性は、Sloper−Mould らの方法を用いて測定し得る( (1999) J. Biol. Chem. 274: 26878−26884)。一定分量のPRTSを、5μlの[35S]で標識したユビキチン/GST融合基質と共に好適なバッファにおいて37℃で1時間インキュベートする。サンプルは、12%のSDS−PAGEゲル上で電気泳動により分離する。ユビキチンの切断をゲルの蛍光光度分析によりモニタリングする。
【0300】
別法では、SEQ ID NO:1の活性は、例えばColige らの方法により測定し得る(1999, J. Biol. Chem. 270: 16724−16730)。一定分量のPRTSを、プロペプチドのみに放射線標識したプロコラーゲンI型と共に、250μlの反応液即ち標準的なアッセイバッファ(50 mMカコジル酸ナトリウム, pH 7.5, 200 mM KCl, 2 mM CaCl, 2.5 mM NEM, 0.5 mM PMSF, 及び0.02% Brijを含む)において37℃で1時間インキュベートする。26℃で16時間インキュベートした後、50μlのEDTA溶液(0.2 M EDTA, pH 8, 0.5% SDS, 0.5 M DTT)及び300μlの99%エタノールを加えて反応を停止させる。サンプルを4℃に30分間保った後、9500gで30分間遠心分離する。コラーゲン及び非切断放射活性pN‐コラーゲン基質をペレットにすると、遊離アミノプロペプチドが溶液中に残る。上清のアリコットを液体シンチレーション分光法でアッセイする。
【0301】
別法では、プロテアーゼ活性についてのアッセイは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用する。このFRETは、適切にスペクトルがオーバーラップしている1つのドナーフルオロフォアと1つのアクセプターフルオロフォアが近接すると生じる。PRTSに特異的な切断部位を有するフレキシブルなペプチドリンカーは、緑色蛍光タンパク質の赤色にシフトした変異体(red−shifted variant)(RSGFP4)と青色変異体(BFP5)との間に融合する。この融合タンパク質は、エネルギー移動がBFP5からRSGFP4へと起こったことを示すスペクトル特性を有する。融合タンパク質をPRTSと共にインキュベートすると、基質が切断され二つの蛍光タンパク質に分離する。これにはエネルギー移動の顕著な減少が伴う。この減少はPRTSを添加する前と後における発光スペクトルを比較することで測定できる(Mitra, R. Dら、(1996) Gene 173:13−17)。アッセイは生細胞において行うこともできる。この場合、蛍光基質タンパク質は細胞中で恒常的に発現されるため、PRTSを誘導ベクターに導入してPRTSの存在及び非存在によりFRETのモニタリングができるようにする(Sagot, Iら: (1999) FEBS Lett. 447 : 53−57)。
【0302】
更なる別法では、PRTSジペプチダーゼ活性についてのアッセイでは、ロイコトリエンD4などの様々なジペプチドにおけるPRTSの加水分解活性(Kozak, E. and S. Tate (1982) J. Biol. Chem. 257: 6322−6327)、またはペネムやカルバペネムなどの抗生物質のβラクタム環の加水分解を測定する(Campbell ら, (1984) J. Biol. Chem. 259: 14586−14590)。
【0303】
18 PRTS 基質の同定
ファージディスプレイライブラリを用いて、PRTSの最適基質配列を識別し得る。リンカー及び既知の抗体エピトープが後に続くランダムな六量体は繊維状ファージライブラリ中の遺伝子IIIのN−末端延長としてクローンニングする。遺伝子IIIがコートタンパク質をコードし、エピトープが各々のファージ分子表面上に表示され得る。ライブラリは蛋白分解条件下で、PRTSとインキュベートし、六量体がPRTS切断部位をコードする場合はエピトープが除去されるようにする。エピトープを認識する抗体を、固定したプロテインAと共に添加する。エピトープを有している切断されていないファージは遠心分離によって取り除く。次に表面のファージを増幅し、スクリーニングを更に数回行う。次に個々のファージクローンを単離し、配列決定する。これらペプチド基質の反応速度を、実施例17に於けるアッセイを用いて研究し、最適な切断配列を得ることが可能である(Ke, S. H.ら(1997) J. Biol. Chem 272 : 16603−16609)。
【0304】
この方法は、in vivoPRTS基質をスクリーニングするために、ファージ粒子(T7SELECTTM10−3 ファージディスプレイベクター、 Novagen, Madison, WI)、若しくは酵母細胞(pYD1 酵母ディスプレイベクターキット、Invitrogen, Carlsbad, CA)の表面上にディスプレイされたcDNA発現ライブラリをスクリーンするべく拡張し得る。このような場合、全cDNAは、遺伝子IIIと適切なエピトープとの間に融合する。
【0305】
19 PRTS 阻害剤の同定
実施例17のアッセイで説明したように、試験する化合物を、適切なバッファ及び基質と共に様々な濃度にし、マルチウェルプレートのウェルの中に配列する。各ウェルに対してPRTS活性を測定し、PRTS活性を阻害する各化合物の能力並びに容量反応速度を決定し得る。このアッセイは、PRTSの活性を向上させる分子を同定することにも用い得る。
【0306】
別法では、ファージディスプレイライブラリを用いてペプチドPRTS阻害剤をスクリーニングし得る。候補はプロテアーゼに強く結合するペプチドから見つける。この場合、マルチウェルプレートの各ウェルをPRTSでコーティングし、ランダムペプチドファージディスプレイライブラリ若しくはサイクリックペプチドライブラリと共にインキュベートする(Koivunen, E.ら、(1999) Nat. Biotechnol. 17 : 768−774)。結合していないファージは洗い流し、残ったファージの増幅及びスクリーニングを数回繰り返す。実施例17に記載のアッセイを用いて、候補をPRTSの阻害活性について試験する。
【0307】
当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の記載した方法及びシステムの種々の改変を行うことができるであろう。特定の好適な実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学或いは関連する分野の専門家には明らかな、本明細書に記載の本発明の実施例の様々な改変は、特許請求の範囲に含まれる。
【0308】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列に対する系統的な名称を示す。
【0309】
表2は、本発明のポリペプチドに最も近いGenBankの相同体のGenBankの識別番号およびアノテーションを示す。ポリペプチドとそのGenBankの相同体との間の一致を表す確率値スコアも示す。
【0310】
表3は、推定上のモチーフおよびドメインを含むポリペプチド配列の構造的な特徴、並びにポリペプチドの分析に用いた方法、アルゴリズム、および検索可能なデータベースを示す。
【0311】
表4は、ポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたcDNA断片のリスト、並びにポリヌクレオチド配列の選択された断片のリストを示す。
【0312】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0313】
表6は、表5に示すcDNAライブラリの作製に用いた組織およびベクターを示す付録である。
【0314】
表7は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、及びアルゴリズム、並びにその説明、引用文献、閾値パラメータを示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
(技術分野)
本発明は、プロテアーゼの核酸配列及びアミノ酸配列に関する。本発明はまた、これらの配列を利用したペプチド結合の加水分解、胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害の診断・治療・予防に関する。本発明はさらに、プロテアーゼの核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価に関する。
【0002】
(発明の背景)
プロテアーゼは、タンパク質の骨格またはペプチド鎖を形成するペプチド結合部位においてタンパク質及びペプチドを切断する。蛋白分解は、細胞の内外で起こる最も重要かつ頻繁に起こる酵素反応の1つである。蛋白分解は、新生ポリペプチドの活性化及び成熟、誤って折り畳まれたタンパク質及び損傷を受けたタンパク質の分解、細胞内のペプチドの制御された代謝回転を担っている。プロテアーゼは、胚発生中の消化、内分泌機能、および組織形成や、創傷の治癒および正常な成長に関与する。プロテアーゼは、調節タンパク質の半減期を変えることで調節作用において重要な役割を果たしている。プロテアーゼは、炎症、脈管形成、腫瘍の拡散および転移、心血管疾患、神経の疾患、細菌感染、ウイルス感染、および寄生虫感染などの病因または疾患状態の進行に関係する。
【0003】
プロテアーゼは、その基質をどの部位で切断するかによって分類することができる。アミノペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、トリペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ペプチジルジペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、およびω‐ペプチダーゼを含むエキソペプチダーゼは基質の末端における残基を切断する。セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼを含むエンドペプチダーゼは、ペプチド内の残基を切断する。哺乳動物プロテアーゼ、活性部位の構造、動作機構、および全体的な3次元構造によって主に4つの種類に分けられた(See Beynon, R. J.およびJ. S. Bond (1994) Proteolytic Enzymes : A Practical Approach, Oxford University Press, New York NY, pp. 1−5.)。
【0004】
セリンプロテアーゼ
セリンプロテアーゼ(SP)は、タンパク質分解酵素の広範で大きなファミリーであって、消化酵素であるトリプシンおよびキモトリプシン、補体および血液凝固カスケードの成分、細胞内および細胞外マトリックスの巨大分子の分解および代謝回転を調節する酵素を含む。20以上のサブファミリーのほとんどが、それぞれが共通の祖先を持つ6つのクランに分類され得る。これら6つのクランは、少なくとも4つの進化的に異なった祖先に由来すると推定される。SPは、ほとんどのファミリーの活性触媒部位にセリン残基が存在することから命名された。活性部位は、触媒作用に重要な一群の保存されたアスパラギン酸、ヒスチジン、およびセリン残基の3つの触媒三連構造によって形成される。これらの残基が基質の結合を促進する電荷リレーネットワークを形成する。活性部位の外側のその他の残基が、触媒作用中に形成される四面体形遷移中間体を安定化させるオキシアニオンホールを形成する。SPは広範な基質を有し、その基質特異性によってサブファミリーに分けることができる。主なサブファミリーは切断した後の残基から命名され、trypases(アルギニンまたはリシンの後)、aspases(アスパラギン酸の後)、チマーゼ(フェニルアラニンまたはロイシンの後)、metases(メチオニンの後)、およびserases(セリンの後)がある(Rawlings, N. D.およびA. J. Barrett (1994) Meth. Enzymol. 244:19−61)。
【0005】
ほとんどの哺乳動物セリンプロテアーゼは、蛋白分解によって活性化される不活性な前駆体である酵素前駆体として合成される。例えば、トリプシノーゲンは、エンテロペプチダーゼによってその活性型であるトリプシンに変換される。エンテロペプチダーゼは、トリプシノーゲンからN末端断片を除去する腸プロテアーゼである。残った活性断片がトリプシンであって、その他の膵酵素の前駆体を活性化する。同様に、トロンビンの前駆体であるプロトロンビンの蛋白分解によって、3つの異なったポリペプチド断片が生成される。活性型トロンビンを含む2つの断片がジスルフィド結合によって結合している時にN末端断片が切断される。
【0006】
2つの最も大きなSPサブファミリーは、キモトリプシン(S1)ファミリーおよびサブチリシン(S8)ファミリーである。キモトリプシンファミリーのメンバーの中には、このファミリーに固有の2つの構造的ドメインを含むものもある。クリングルドメインは、変動するコピー数に見られる3重ループジスルフィド架橋ドメインである。クリングルドメインは、膜、その他のタンパク質やホスホリピッドなどの媒介物の結合、並びに蛋白分解の調節においてある役割を果たすと考えられる(PROSITE PDOC00020)。Appleドメインは90のアミノ酸からなる反復ドメインであって、それぞれが6個の保存されたシステインを含む。3つのジスルフィド結合によって、第1のシステインと第6のシステイン、第2のシステインと第5のシステイン、および第3のシステインと第4のシステインとが結合されている(PROSITE PDOC00376)。Appleドメインは、タンパク質−タンパク質相互作用に関与する。S1ファミリーメンバーには、トリプシン、キモトリプシン、凝固因子IX−XII、補体因子B、C、およびD、グランザイム、カリクレイン、および組織プラスミノーデンアクチベーターおよびウロキナーゼプラスミノーデンアクチベーターが含まれる。サブチリシンファミリーは、真性細菌、古細菌、真核生物、およびウイルスに見られるメンバーを含む。サブチリシンには、タンパク質−タンパク質エンドペプチダーゼであるkexinおよびfurin、脳下垂体プロホルモンコンバターゼPC1、PC2、PC3、PC6、およびPACE4が含まれる(RawlingsおよびBarrett, 前出)。プロリルオリゴペプチダーゼ(S9)ファミリーには、特異性が大幅に異なる真核生物及び原核生物の酵素が含まれる。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)はCD26と同一であり、ペプチドホルモンの不活性化及びT細胞の成長の調節に関係する(Kahneら (1999) Int. J. Mol. Med. 4:3−15、Mentlein, R. (1999) Regul. Pept. 85:9−24を参照)。DPP−IVの阻害がII型糖尿病の治療に提案され(Holst, J.J. and C.F. Deacon(1998) Diabetes 47:1663−1670)、血清のDPP−IV活性の低下が食思不振及び大食患者に見られた(van Wes, Dら(2000) Eur. Arch. Psych. Clin. Neurosci. 250:86−92)。
【0007】
SPは多くの正常なプロセスにおいて作用するが、SPの中には疾患の病因や治療に関係するものもある。腸消化のインヒビターであるエンテロキナーゼは、腸刷子(intestinal brush)の縁に見られ、そこでトリプシノーゲンから酸性プロペプチドを切断して活性なトリプシンを生成する(Kitamoto, Y.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:7588−7592)。アンギオテンシンIIおよびIII、および[des−Arg9]ブラジキニンなどのペプチドを切断するリソソームセリンペプチダーゼであるプロリルカルボキシペプチダーゼは、セリンカルボキシペプチダーゼおよびプロリルエンドペプチダーゼファミリーの両方のメンバーと配列相同性を共有する(Tan, F.他 (1993) J. Biol. Chem. 268:16631−16638)。プロテアーゼであるニューロプシンは、神経シグナル伝達に応答して海馬におけるシナプス形成およびニューロンの結合に影響を与え得る(Chen, Z.−L.他(1995) J Neurosci 15:5088−5097)。組織プラスミノーゲンアクチベーターは、発作(Zivin, J. A. (1999) Neurology 53:14−19)および心筋梗塞(Ross, A. M. (1999) Clin. Cardiol. 22:165−171)の救急処置に有用である。消化管の至る所で高発現されているある種の受容体(PAR:プロテアーゼ活性化受容体)は、細胞外ドメインの蛋白分解による切断によって活性化される。PAR、トロンビン、トリプシン、および肥満細胞トリプターゼの主なアゴニストは、アレルギーおよび炎症の状態で放出される。プロテアーゼによるPAR活性の調節は、有望な治療標的であると提案された(Vergnolle, N. (2000) Aliment. Pharmacol. Ther. 14:257−266 ; Rice, K. D.他 (1998) Curr. Pharm. Des. 4:381−396)。前立腺特異的抗原(PSA)は、前立腺の上皮細胞のみで合成および分泌されるカリクレイン様セリンプロテアーゼである。血清PSAは前立腺癌においてそのレベルが上昇し、癌の進行および治療による効果をモニタリングするための最も感度の良い生理学的マーカーである。またPSAによって、転移性癌の原発癌として前立腺を同定することができる(Brawer, M. K.およびP. H. Lange (1989) Urology 33:11−16)。
【0008】
シグナルペプチダーゼは、全ての真核細胞型および原核細胞型に見られるSPの或るクラスであって、ある種のタンパク質からのシグナルペプチドのプロセシングに作用する。シグナルペプチドはタンパク質のアミノ末端ドメインであって、リボソーム組み立て部位からそのタンパク質を所定の細胞内或いは細胞外の部位に導く。一旦タンパク質が輸送されると、シグナルペプチダーゼによってそのシグナル配列が除去され、グリコシル化またはリン酸化などの翻訳後プロセシングによってそのタンパク質が活性化される。シグナルペプチダーゼは、酵母および哺乳動物の両方において多サブユニット複合体として存在する。イヌシグナルペプチダーゼ複合体は、5つのサブユニットから成り、その全てのサブユニットがミクロソーム膜と結合し、膜を1回或いは複数回貫通する疎水性領域を含む(Shelness, G. S.およびG. Blobel (1990) J. Biol. Chem. 265:9512−9519)。これらのサブユニットのあるものは、その複合体を膜上の適切な位置に移動させ、別のものは実際の触媒活性を含む。
【0009】
活性部位にセリンを含むプロテアーゼの別のファミリーは、その活性がATPの加水分解に依存する。これらのプロテアーゼは、ATP/GTP−結合モチーフであるPループの存在によって同定することができる調節性ATPアーゼドメインおよび蛋白分解コアドメインを含む(PROSITE PDOC00803)。このファミリーのメンバーには、真核生物ミトコンドリアマトリックスプロテアーゼ、C1pプロテアーゼ、およびプロテアソームが含まれる。C1pプロテアーゼは、初めは植物の葉緑体で見出されたが、原核細胞および真核細胞の両方において広範に存在すると考えられる。早発性捻転ジストニーの遺伝子は、C1pプロテアーゼに関連するタンパク質をコードする(Ozelius, L. J.他 (1998) Adv. Neurol. 78:93−105)。
【0010】
プロテアソームは、ある種の細菌および全ての真核細胞に見られる細胞内プロテアーゼ複合体であって、細胞内の生理機能において重要な役割を果たす。プロテアソームは、全てのタイプの細胞内タンパク質の分解の主な経路であるユビキチン抱合系(ubiquitin conjugation system:UCS)と関連する。その細胞内タンパク質の中には、転写や細胞周期の進行などの細胞プロセスを活性化或いは抑制するように作用するタンパク質も含まれる(Ciechanover, A. (1994) Cell 79:13−21)。UCS経路では、分解標的となるタンパク質に、小さな耐熱性タンパク質であるユビキチンが結合する。次にユビキチンが結合したタンパク質が、プロテアソームによって認識され分解される。得られるユビキチン−ペプチド複合体は、ユビキチンカルボキシル末端ヒドラーゼによって加水分解され、UCSによって再利用されるために遊離ユビキチンが放出される。ユビキチンプロテアソーム系は、有糸分裂周期キナーゼ(mitotic cyclic kinases)、オンコプロテイン、腫瘍抑制遺伝子(p53)、シグナル伝達に関係する細胞表面受容体、転写調節因子、および変異タンパク質または損傷タンパク質の分解に関与する(Ciechanover, 前出)。この経路は、嚢胞性繊維症、Angelman’s症候群、およびリドル症候群を含む様々な疾患に関与する(Schwartz, A. L.およびA. Ciechanover (1999) Annu. Rev. Med. 50:57−74を参照)。マウスプロトオンコジーンUnpは、過剰な発現がNIH3T3細胞の癌化を引き起こす核ユビキチンプロテアーゼ(nuclear ubiquitin protease)をコードする。この遺伝子のヒト相同体は、肺の小さな細胞腫瘍および腺癌においてそのレベルが一貫して高い(Gray, D. A. (1995) Oncogene 10:2179−2183)。ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素は、リンパ芽球白血病細胞系の非分裂成熟状態への分化に関与する(Maki, A.他 (1996) Differentiation 60:59−66)。ヒト神経変性疾患に生じる異常な構造において、ニューロンにおけるユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素(PGP9.5)が高発現する。このプロテアソームは、活性部位が中心腔に向いた4つの7員環に配置された様々なプロテアーゼを含む中心触媒コアと、腔の外側のポートを覆い基質のエントリーを調節する末端ATPアーゼサブユニットとから成る巨大多サブユニット複合体(〜2000 kDa)である(Schmidt, M.他 (1999) Curr. Opin. Chem. Biol. 3:584591を参照)。
【0011】
システインプロテアーゼ
システインプロテアーゼ(CP)は、前駆体タンパク質のプロセシングから細胞内分解に至る多様な細胞プロセスに関係する。既知のCPの約半数がウイルスのみに存在する。CPは、活性部位における主な触媒残基としてシステインを有する。活性部位では、触媒作用がジオエステル中間体によって進行し、近接するヒスチジン残基およびアスパラギン酸残基によって促進される。グルタミン残基も重要であって、オキシアニオンホールの形成を助ける。2つの重要なCPファミリーには、パパイン様酵素(C1)およびカルパイン(C2)が含まれる。パパイン様ファミリーメンバーは、通常はリソソーム酵素または分泌酵素であるためシグナルペプチドおよびプロペプチドから合成される。ほとんどのメンバーは、構造的重要性を有し得るプロペプチドに保存されたモチーフを含む(Karrer, K. M.他 (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3063−3067)。パパインファミリーメンバーの3次元構造は、2つのローブ(lobe)の間に配置された触媒部位を備えた2ローブ分子(bilobed molecule)である。パパインには、カテプシンB、C、H、L、およびS、ある種の植物アレルゲンおよびジペプチジルペプチダーゼが含まれる(Rawlings, N. D.およびA. J. Barrett (1994) Meth. Enzymol. 244:461−486を参照)。
【0012】
或る種のCPは至る所で発現されるが、別の種類のCPは免疫系の細胞によってのみ発現される。注目すべきは、CPが、単球、マクロファージ、および炎症部位に遊走し組織の修復に関与する分子を分泌するその他の細胞によって生成される。これらの修復分子の過剰は、或る種の疾患に役割を果たしている。リウマチ様関節炎などの自己免疫疾患において、システインペプチダーゼカテプシンCの分泌によって、コラーゲン、ラミニン、エラスチン、および骨の細胞外マトリックスに見られるその他の構造タンパク質を分解する。このような分解によって脆弱化した骨はまた、腫瘍の侵入および転移を受け易い。カテプシンLの発現によって、リウマチ様滑液の破壊を進行させる単核細胞の流入が助けられ得る(Keyszer, G. M. (1995) Arthritis Rheum. 38:976−984)。
【0013】
カルパインはカルシウム依存性細胞質エンドペプチダーゼで、N末端触媒ドメインおよびC末端カルシウム結合ドメインを含む。カルパインは、それぞれのアイソホームに固有の触媒サブユニットと様々なアイソホームに共通の調節サブユニットとから成るプロ酵素ヘテロ二量体として発現される。それぞれのサブユニットは、カルシウム結合EFハンドドメインを有する。調節サブユニットはまた、酵素が細胞膜と結合できるようにする疎水性高グリシンドメインを含む。カルパインは細胞内のカルシウム濃度の上昇によって活性化され、構造における変化および制限された自己分解を引き起こす。得られる活性な分子は、その活性のために低いカルシウム濃度が必要である(Chan, S. L.およびM. P. Mattson (1999) J. Neurosci. Res. 58:167−190)。カルパインは主にニューロンで発現するが、その他の組織でも発現する。ALS、パーキンソン病、およびアルツハイマー病を含むある種の慢性の神経変性疾患は、カルパイン発現の上昇に関連する(ChanおよびMattson, 前出)。細胞骨格のカルパイン仲介性分解が、頭部外傷による脳障害に関係すると報告された(McCracken, E.他 (1999) J. Neurotrauma 16:749−761)。カルパイン3は、主に骨格筋で発現され、肢帯筋ジストロフィー2A型に関係する(Minami, N.他 (1999) J. Neurol. Sci. 171:31−37)。
【0014】
カスパーゼはチオールプロテアーゼの別のファミリーであって、アポトーシスの開始および終了に関係する。前アポトーシス信号は、イニシエーターであるカスパーゼを活性化して、タンパク質分解カスパーゼカスケードを開始させ、標的タンパク質の加水分解および細胞の古典的なアポトーシス死を導く。システインおよびヒスチジンの2つの活性部位の残基が、触媒のメカニズムに関係する。カスパーゼは最も特異的なエンドペプチダーゼの1つであってアスパラギン酸残基の後を切断する。カスパーゼは、小さなスペーサー領域によって分離された1つの大きなサブユニット(p20)および1つの小さなサブユニット(p10)、および可変N末端プロドメインとから成る不活性な酵素前駆体として合成される。このプロドメインは、アポトーシスをポジティブ或いはネガティブな影響を与える補助因子と相互作用する。活性化信号による自己蛋白分解によって、特定のアスパラギン酸残基(番号付け規則に従うカスパーゼ1のD297)が切断され、スペーサーおよびプロドメインが除去され、p10/p20ヘテロ二量体が残る。これら2つのヘテロ二量体がそれらの小さなサブユニットを介して相互作用し、触媒的に活性な四量体を形成する。あるカスパーゼファミリーメンバーの長いプロドメインが、プロカスパーゼの二量体化および自己プロセシングを促進することが分かった。ある種のカスパーゼは、そのプロドメインに「死効果ドメイン(death effector domain)」を含み、それによってカスパーゼが、死受容体またはTNF受容体複合体に関連するFADDタンパク質およびその他のカスパーゼと共に自己活性化複合体の中に動員され得る。更に、異なったカスパーゼファミリーメンバーからの2つの二量体が結合して、得られる四量体の基質特異性が変化し得る。内在性カスパーゼインヒビター(アポトーシスタンパク質のインヒビター、またはIAP)も存在する。これらの相互作用の全てがアポトーシスの制御に影響を与えていることが明らかである(ChanおよびMattson, 前出; Salveson, G. S.およびV. M. Dixit (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:10964−10967を参照)。
【0015】
カスパーゼは或る種の疾患に関係する。ある種のカスパーゼが欠損したマウスは、感覚上皮のアポトーシスの失敗による重度の神経系の障害を持ち、早期に死亡する。その他のものは炎症反応における重度の障害を示す。例えば、カスパーゼは、IL−1bのプロセシングに関係し、その他の炎症性サイトカインにも関係する可能性がある(ChanおよびMattson, 前出)。牛痘ウイルスおよびバキュロウイルスは、それらの宿主細胞の死を回避するためおよび感染を成功させるためにカスパーゼを標的とする。加えて、AIDS、神経変性疾患、および虚血性外傷で不適切なアポトーシスが増大し、細胞死の減少が癌に関連することが報告された(SalvesonおよびDixit, 前出: Thompson, C. B. (1995) Science 267:1456−1462)。
【0016】
アスパルチルプロテアーゼ
アスパルチルプロテアーゼ(AP: aspartyl proteases)には、リソソームプロテアーゼカテプシンDおよびE、キモシン、レニン、および胃ペプシンが含まれる。ほとんどのレトロウイルスは、通常はpolポリタンパク質の一部としてAPをコードする。酸性プロテアーゼとも呼ばれるAPは2つのドメインから成る単量体酵素で、各ドメインは自身の触媒アスパラギン酸残基を備えた1/2の活性部位を含む。APはpH2−3の範囲で最も活性であり、そのpHでは1つのアスパラギン酸残基がイオン化しており、その他は中性である。APのペプシンファミリーは多くの分泌酵素を含み、その全てがシグナルペプチドおよびプロペプチドで合成されると思われる。ほとんどのファミリーメンバーは3つのジスルフィドループを含み、第1のアスパラギン酸の後に最大5個の残基からなる第1のループがあり、第2のアスパラギン酸の前に5個から6個の残基から成る第2のループがあり、第3の最も大きいループはC末端に向かって形成されている。一方、レトロペプシン(retropepsins)はペプシンの1つのドメインに類似しており、1/2の活性部位を提供するそれぞれのレトロペプシン単量体を有するホモ二量体として活性化する。レトロペプシンはウイルスポリタンパク質のプロセシングに必要である。
【0017】
APは様々な組織に作用し、あるものは疾患に関係する。レニンは、電解質バランスおよび血圧の調節を担うホルモンであるアンギオテンシンのプロセシングの第1のステップを仲介する(Crews, D. E.およびS. R. Williams (1999) Hum. Biol. 71:475−503を参照)。様々な炎症性の疾患状態においてカテプシンの異常な調節および発現が起こることは明らかである。カテプシンDの発現は、リウマチ様関節炎および変形性関節症の患者の滑液膜組織において増大する。カテプシンの発現の上昇および異なった調節は様々な癌の転移能力に関係する(Chambers, A. F.他 (1993) Crit. Rev. Oncol. 4:95−114)。
【0018】
メタロプロテアーゼ
メタロプロテアーゼは、活性のために通常はマンガン若しくは亜鉛のような金属イオンを必要とする。マンガン金属酵素の例には、アミノペプチダーゼP及びヒトプロリンジペプチダーゼ(PEPD)がある。アミノペプチダーゼPは、様々な炎症反応で活性化されたノナペプチド、即ちブラジキニンを分解しうる。アミノペプチダーゼPは、冠状虚血/再潅流障害に関係する。アミノペプチダーゼP阻害剤をラットに投与にすると、心臓保護効果が見られた(Ersahin, C. ら (1999) J. Cardiovasc. Pharmacol. 34 : 604−611)。
【0019】
ほとんどの亜鉛依存性メタロプロテアーゼは亜鉛結合ドメインにおける共通配列を共有する。この活性部位は、亜鉛リガンドとして作用する2つのヒスチジンと、第1のヒスチジンの触媒グルタミン酸C末端とから成る。このシグネチャ配列を含むタンパク質はmetzincinsとして知られ、アミノペプチダーゼB及びN、アンギオテンシン変換酵素、神経溶解素、マトリックスメタロプロテアーゼ、およびadamalysins(ADAMS)を含む。亜鉛カルボキシペプチダーゼに別の配列が見つかり、その配列では、2つのヒスチジン残基および1つのグルタミン酸残基の3つの保存された残基が亜鉛結合に関与する。
【0020】
アンギオテンシン変換酵素およびアミノペプチダーゼを含むいくつかの中性メタロエンドペプチダーゼは、ペプチドホルモンの代謝に関与する。例えば、高いアミノペプチダーゼB活性が、高血圧のラットの甲状腺および神経下垂体に見られる(Prieto, I.他 (1998) Horm. Metab. Res. 30:246−248)。オリゴペプチダーゼM/神経溶解素は、ブラジキニンおよびニューロテンシンを加水分解し得る(Serizawa, A.他 (1995) J. Biol. Chem 270:2092−2098)。ニューロテンシンは血管作動性ペプチドであって、脳において神経伝達物質として働くことができ、食事摂取の制限に関係すると思われる(Tritos, N. A.他 (1999) Neuropeptides 33:339−349)。
【0021】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、細胞外マトリックス(ECM)の成分を分解できる少なくとも23の酵素のファミリーである。MMPはN末端触媒ドメインを有するZn+2エンドペプチダーゼである。このファミリーのほとんど全てのメンバーが、組織によって生成されるインヒビターまたはECMの基質分子に結合可能なC末端ドメインおよびヒンジペプチド(hinge peptide)を有する(TIMP:メタロプロテアーゼの組織インヒビター; Campbell, I. L.他 (1999) Trends Neurosci. 22:285)。フィブルロネクチン様リピート、膜貫通ドメイン、またはC末端hemopexinase様ドメインの存在を利用して、MMPをコラーゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメライシンおよび膜型MMPサブファミリーに分けることができる。活性型では、活性部位におけるZn+2イオンがプロ配列のシステインと相互作用する。活性化因子が、活性部位を露出させるZn+2システイン相互作用または「システインスイッチ」を阻害する。これによって酵素が部分的に活性化され、次にそのプロペプチドを切断して完全に活性化する。MMPは、セリンプロテアーゼであるプラスミンおよびfurinによって活性化される場合が多い。MMPは、インヒビターとの化学量論的非共有結合相互作用、すなわちプロテアーゼとインヒビターとのバランスによって調節される場合が多く、組織恒常性において極めて重要である。(Yong, V. W.他 (1998) Trends Neurosci. 21:75を参照)。VII C型エーラース‐ダンロス症候群は、プロコラーゲンI N−プロティナーゼ遺伝子の変異によって引き起こされる(Colige, A.ら(1999) Am. J. Hum. Genet. 65:308−317)。
【0022】
MMPは様々な疾患に関与し、その中には骨関節炎(Mitchell, P. ら (1996) J. Clin. Invest. 97 : 761)、アテローム斑破裂(Sukhova, G. K. ら (1999) Circulation 99 : 2503)、大動脈瘤(Schneiderman, J. ら (1998) Am. J. Path. 152 : 703)、非創傷治癒(Saarialho−Kere, U. K. ら (1994) J. Clin. Invest. 94 : 79)、骨再吸収 (Blavier, L. および J. M. Delaisse (1995) J. Cell Sci. 108 : 3649)、加齢性黄斑変性症(Steen, B. ら (1998) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 39 : 2194)、肺気腫(inlay, G. A. ら (1997) Thorax 52 : 502)、心筋梗塞 (Rohde, L. E. ら (1999) Circulation 99 : 3063)、および拡張型心筋症(Thomas, C. V. ら (1998) Circulation 97 : 1708)が含まれる。MMPインヒビターは、ラットにおける乳癌および実験的腫瘍の転移を阻害し、マウスにおけるルイス肺癌、血管腫、およびヒト卵巣癌異種移植片の転移を阻害する(Eccles, S. A.他 (1996) Cancer Res. 56:2815; Anderson他 (1996) Cancer Res. 56:715−718 ; Volpert, O. V.他 (1996) J. Clin. Invest. 98:671; Taraboletti, G.他 (1995) J. NCI 87:293 ; Davies, B.他 (1993) Cancer Res. 53:2087)。MMPはアルツハイマー病で活性化しているであろう。或る種のMMPが多発性硬化症に関与し、MMPインヒビターの投与でその症状の一部を緩和できる(Yong, 前出、を参照)。
【0023】
メタロプロテアーゼの別のファミリーはADAM(disintegrinドメインおよびメタロプロテアーゼドメイン)であり、ヘビ毒メタロプロテアーゼ(SVMP)であるadamalysinsの類似体を共有する。ADAMは細胞表面接着分子およびプロテアーゼの両方の構造を組み合わせたものであって、プロドメイン、プロテアーゼドメイン、disintegrinドメイン、高システインドメイン、上皮成長因子リピート、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を含む。これらの最初の3つのドメインはSVMPにも見られる。ADAMは、蛋白分解、接着、シグナル伝達、および融合の4つの潜在的な機能を有する。ADAMは、metzincin亜鉛結合配列を共有し、TIMP−1などのある種のMMPアンタゴニストによって阻害される。
【0024】
ADAMは、精子−卵結合および融合、筋芽細胞の融合や、サイトカイン、サイトカイン受容体、接着タンパク質およびその他の細胞外タンパク質ドメインのタンパク質外部ドメインのプロセシングまたは分断などのプロセスに関与する(Schlondorff, J.およびC. P. Blobel (1999) J. Cell. Sci. 112:3603−3617)。Kuzbaniaタンパク質は、NOTCH経路の基質を切断し(NOTCH自体も可能)、ショウジョウバエの神経の発達における側方の阻害のためのプログラムを活性化する。TACE(ADAM17)およびADAM10の2つのADAMは、脳におけるアミロイド前駆体タンパク質のプロセシングにおいて類似の機能を果たすと提案された(SchlondorffおよびBlobel, 前出)。TACEもまた、TNF活性化酵素として同定された(Black, R. A.他 (1997) Nature 385:729)。TNFは多面発現サイトカインであって、感染或いは外傷に応じる宿主防御の動員に重要であるが、過剰に発現すると重度の障害を与え、自己免疫疾患で過剰に発現される場合が多い。TACEは、膜結合プロTNFを切断して可溶型を放出する。他のADAMはその他の膜結合分子の類似のプロセシングに関与すると思われる。
【0025】
ADAMTSサブファミリーはADAMファミリーメタロプロテアーゼの全ての特徴を有し、更にトロンボスポンジンドメイン(TS)を含む。プロトタイプADAMTSがマウスで同定され、心臓および腎臓で発現され、炎症誘発性刺激によってアップレギュレートされる(Kuno, K.他 (1997) J. Biol. Chem. 272:556)。これまでにHuman Genome Organizationによって11のメンバーが確認された(HUGO; http://www.gene.ucl.ac.uk/users/hester/adamts.html#Approved)。このファミリーのメンバーは、関節炎の進行により喪失する収縮能力を含む重要な力学的機能を軟骨に与える高分子量のプロテオグリカンであるaggrecanを分解する能力を有する。従って、aggrecanを分解する酵素は、間接の軟骨の分解を防止或いは緩和するための魅力的な標的と考えられる(例えば、Tortorella, M. D. (1999) Science 284:1664; Abbaszade, I. (1999) J. Biol. Chem. 274:23443を参照)。その他のメンバーは、抗血管形成の可能性(Kuno他、 前出)および/またはプロコラーゲンのプロセシングに関係すると報告された(Colige, A.他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2374)。
【0026】
新規のプロテアーゼおよびそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。この新規の組成物は、ペプチド結合の加水分解、胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害において有用であり、また、プロテアーゼの核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価にも有用である。
における外来性化合物の影響についての評価にも有用である。
【0027】
(発明の要約)
本発明は、総称して「PRTS」、個別にはそれぞれ「PRTS−1」、「PRTS−2」、「PRTS−3」、「PRTS−4」、「PRTS−5」、「PRTS−6」、「PRTS−7」、「PRTS−8」、「PRTS−9」、「PRTS−10」、「PRTS−11」、「PRTS−12」、「PRTS−13」、「PRTS−14」、「PRTS−15」、「PRTS−16」、「PRTS−17」、「PRTS−18」、「PRTS−19」、「PRTS−20」、及び「PRTS−21」と呼ぶプロテアーゼである精製されたポリペプチドを提供する。本発明の一実施態様では、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21とからなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択された単離されたポリペプチドを提供する。別法では、SEQ ID NO:1−21のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0028】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。別法では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたポリペプチドをコードする。更なる別法では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:22−42からなる群から選択される。
【0029】
更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドを提供する。別法では、本発明は、この組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。更なる別法では、本発明は、この組換えポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え生物を提供する。
【0030】
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドの生産方法を提供する。この方法は、(a)このポリペプチドの発現に好適な条件下で、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に結合されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養するステップと、(b)このように発現したポリペプチドを回収するステップとを含む。
【0031】
更に、本発明は(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体を提供する。
【0032】
更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(c)前記(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(d)前記(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(e)前記(a)‐(d)のRNA等価物とで構成される群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。別法では、このポリヌクレオチドは、少なくとも60個の連続するヌクレオチドを含む。
【0033】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(c)前記(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(d)前記(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(e)前記(a)‐(d)のRNA等価物とで構成される群から選択されたポリヌクレオチド配列を有するサンプルにおける標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。この方法は、(a)前記サンプル内の標的ポリヌクレオチドと相補的な配列を含む少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むプローブと前記サンプルをハイブリダイズさせるステップであって、前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片とでハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする、該ステップと、(b)前記ハイブリダイゼーション複合体の存在するか否かを検出し、存在する場合には必要に応じてその収量を測定するステップとを含む。別法では、前記プローブは、少なくとも60個の連続するヌクレオチドを含む。
【0034】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(c)前記(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(d)前記(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(e)前記(a)‐(d)のRNA等価物とで構成される群から選択されたポリヌクレオチド配列を有するサンプルにおける標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。この方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅法を用いて、前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅するステップと、(b)増幅された前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在するか否かを検出し、存在する場合には必要に応じてその収量を測定するステップとを含む。
【0035】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択された有効量のポリペプチド及び好適な医薬用賦形剤を含む組成物を提供する。一実施例では、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む組成物を提供する。本発明は更に、患者にこの組成物を投与することを含む、機能的PRTSの過剰な発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0036】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドのアゴニストとして有効な化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)このポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)このサンプルのアゴニスト活性を検出するステップとを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的PRTSの過剰な発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0037】
更に、本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドのアンタゴニストとして有効な化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)このポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)このサンプルのアンタゴニスト活性を検出するステップとを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアンタゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的PRTSの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
【0038】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドに特異的に結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、(a)このポリペプチドを好適な条件下で少なくとも1つの試験化合物と結合させるステップと、(b)このポリペプチドとこの試験化合物との結合を検出して、このポリペプチドと特異的に結合する化合物を同定するステップとを含む。
【0039】
更に本発明は、(a)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されたポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。このスクリーニング方法は、(a)このポリペプチドを、その活性が許容される条件下で少なくとも1つの化合物と結合させるステップと、(b)この試験化合物の存在下でのこのポリペプチドの活性を評価するステップと、(c)この試験化合物の存在下でのこのポリペプチドの活性と、この試験化合物の非存在下でのこのポリペプチドの活性とを比較するステップとを含み、この試験化合物の存在下でのこのポリペプチドの活性の変化が、このポリペプチドの活性を調節する化合物の存在を示唆する。
【0040】
更に本発明は、SEQ ID NO:22−42からなる群から選択された配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに有効な化合物をスクリーニングする方法であって、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出するステップとを含む、該スクリーニング方法を提供する。
【0041】
本発明はさらに、試験化合物の毒性を評価する方法を提供する。この方法は、(a)核酸を含む生体サンプルを前記試験化合物で処理するステップと、(b)処理した前記生体サンプルの核酸をプローブとハイブリダイズするステップと、(c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を測定するステップと、(d)前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量を、未処理の生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量とを比較するステップとを含み、前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量の差異が試験化合物の毒性を示唆する。この方法における前記プローブが、(1)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(3)前記(1)に相補的な配列を有するポリヌクレオチドと、(4)前記(2)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(5)前記(1)‐(4)のRNA等価物とで構成される群から選択されたポリヌクレオチドの少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む。また、前記ハイブリダイゼーションは、前記プローブと前記生体サンプルの標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行わる。また、前記標的ポリヌクレオチドが、(1)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、(3)前記(1)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(4)前記(2)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、(5)前記(1)‐(4)のRNA等価物とで構成される群から選択される。別法では、標的ポリヌクレオチドは、その標的ポリヌクレオチドの断片である。
【0042】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質及び核酸配列、方法について説明する前に、本発明は、ここに開示した特定の装置及び材料、方法に限定されず、その実施形態を変更できることを理解されたい。また、ここで用いられる用語は、特定の実施例のみを説明する目的で用いられたものであり、後述の請求の範囲によってのみ限定され、本発明の範囲を限定することを意図したものではないということも理解されたい。
【0043】
本明細書及び請求の範囲において単数形を表す「或る」、「その(この等)」は、文脈で明確に示していない場合は複数形を含むことに注意されたい。従って、例えば「或る宿主細胞」は複数の宿主細胞を含み、その「抗体」は複数の抗体は含まれ、当業者には周知の等価物なども含まれる。
【0044】
本明細書で用いた全ての科学技術用語は、別の方法で定義されていない限り、本発明の属する技術分野の一般的な技術者が普通に解釈する意味と同じである。本明細書で記述したものと類似、或いは同等の全ての装置及び材料、方法は本発明の実施及びテストに使用できるが、好適な装置及び材料、方法をここに記す。本明細書に記載の全ての文献は、本発明に関連して使用する可能性のある文献に記載された細胞系、プロトコル、試薬、ベクターを記述し開示するために引用した。従来の発明を引用したからと言って、本発明の新規性が損なわれると解釈されるものではない。
【0045】
(定義)
用語「PRTS」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたPRTSのアミノ酸配列を指す。
【0046】
用語「アゴニスト」は、PRTSの生物学的活性を強める、或いは模倣する分子を指す。このアゴニストは、PRTSに直接相互作用するか、或いはPRTSが関与する生物学的経路の成分と作用して、PRTSの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0047】
用語「アレル変異配列」は、PRTSをコードする遺伝子の別の形を指す。アレル変異配列は、核酸配列における少なくとも1つの変異によって生じ、変異mRNA若しくは変異ポリペプチドになり、これらの構造や機能は変わる場合もあれば変わらない場合もある。ある遺伝子は、天然型のアレル変異配列が存在しないもの、1つ或いは多数存在するものがある。一般にアレル変異配列を生じる変異は、ヌクレオチドの自然な欠失、付加、或いは置換による。これらの各変異は、単独或いは他の変異と同時に起こり、所定の配列内で一回或いはそれ以上生じる。
【0048】
PRTSをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、PRTSと同じポリペプチド或いはPRTSの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置でのアレル変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにPRTSをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多形性を含む。コードされたタンパク質も変異され得り、サイレント変化を生じPRTSと機能的に等価となるアミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にPRTSの活性が保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に荷電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、正に荷電したアミノ酸にはリシン及びアルギニンが含まれ得る。類似の親水性の値をもち極性非荷電側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニンが含まれ得る。類似の親水性の値をもち非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン及びチロシンが含まれ得る。
【0049】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0050】
用語「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。一般に増幅は、この技術分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって行われる。
【0051】
用語「アンタゴニスト」は、PRTSの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストは、PRTSに直接相互作用するか、或いはPRTSが関与する生物学的経路の成分と作用して、PRTSの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
【0052】
用語「抗体」は、抗原決定基と結合可能なFab及びF(ab’)2、及びそれらの断片、Fv断片などの無傷の分子を指す。PRTSポリペプチドと結合する抗体は、抗体を免疫する小ペプチドを含む無傷の分子またはその断片を用いて作製可能である。動物(例えば、マウス、ラット、若しくはウサギ)を免疫化するのに使用されるポリペプチド或いはオリゴペプチドは、RNAの翻訳から、或いは化学的に合成可能であり、必要に応じて担体タンパク質と結合させることも可能である。ペプチドと化学的に結合した一般に用いられる担体は、ウシ血清アルブミン、チログロブリン、及びキーホールリンペットヘモニアン(KLH)を含む。次ぎに、この結合したペプチドを用いて動物を免疫化する。
【0053】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質或いはタンパク質の断片が、宿主動物を免疫化するのに用いられるとき、このタンパク質の種々の領域は、抗原決定基(タンパク質上の特定の領域或いは三次元構造体)に特異的に結合する抗体の産生を誘発し得る。抗原決定基は、抗体と結合するために無傷の抗原(即ち、免疫応答を引き出すために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0054】
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列のセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス成分には、DNAと、RNAと、ペプチド核酸(PNA)と、ホスホロチオネートやメチルホスホネート、ベンジルホスホネート(benzylphosphonate)などの修飾された骨格(backbone linkage)を有するオリゴヌクレオチドと、2’−メトキシエチル糖または2’−メトキシエトキシ糖などの修飾された糖を有するオリゴヌクレオチドと、5−メチルシトシンまたは2’−deoxyuracil、7−deaza−2’−deoxyguanosineなどの修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドを含み得る。アンチセンス分子は、化学合成や転写を含む任意の方法で作り出すことができる。相補的アンチセンス分子は、一度細胞に導入されると、細胞によって作られた天然の核酸配列と塩基対となって二重鎖を形成し、転写や翻訳を阻害する。「負」または「マイナス」という表現はアンチセンス鎖であり、「正」または「プラス」という表現はセンス鎖である。
【0055】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のPRTS、合成のPRTSまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0056】
用語「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5’AGT3’」が相補的な配列「3’TCA5’」と対をなす。
【0057】
「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のアミノ酸配列を含む組成物」は広い意味で、所定のヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この組成物は、乾燥した製剤或いは水溶液を含み得る。PRTS若しくはPRTSの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイブリダイゼーションにおいて、プローブは、塩(例えば、NaCl)及び界面活性剤(例えば、SDS:ドデシル硫酸ナトリウム)、その他の物質(例えば、デンハート液、乾燥ミルク、サケ精子DNAなど)を含む水溶液に展開され得る。
【0058】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL−PCRキット(PE Biosystems,Foster City CA)を用いて5’及び/または3’の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び重複の両方によって構築されるコンセンサス配列もある。
【0059】
用語「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。以下に、あるタンパク質の元のアミノ酸が別のアミノ酸に置換される保存的なアミノ酸置換を示す。
一般に、保存されたアミノ酸置換の場合は、a)置換された領域のポリペプチドの骨格構造、例えば、βシートやαヘリックス高次構造、b)置換された部位の分子の電荷または疎水性、及び/または、c)側鎖の大半が維持される。
【0060】
用語「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0061】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。ポリヌクレオチド配列の化学修飾には、例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基、或いはアミノ基による水素の置換がある。誘導体ポリヌクレオチドは、自然分子(未修飾の分子)の生物学的或いは免疫学的機能の少なくとも1つを維持するポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドとは、もとのポリペプチドの生物学的機能、或いは免疫学的機能の少なくとも1つを維持する、グリコシル化、ポリエチレングリコール化、或いは任意の同様のプロセスによって修飾されたポリペプチドのことである。
【0062】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を生成し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
【0063】
「異なる発現」とは、少なくとも2つの異なったサンプルの比較により決められる遺伝子またはタンパク質の発現の上昇即ちアップレギュレーションや、減少即ちダウンレギュレーション、または発現しないことを指す。このような比較は、例えば、処置したサンプルと未処置のサンプルとの間、または病変サンプルと正常なサンプルとの間で行う。
【0064】
用語「断片」は、PRTSまたはPRTSをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と同一であるがその配列より長さが短いものを指す。「断片」の最大の長さは、親配列から1つのヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さである。例えば、ある断片は、5〜1000個の連続するヌクレオチド或いはアミノ酸残基を含む。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子、またはその他の目的に用いる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500個の連続するヌクレオチド或いはアミノ酸残基の長さである。断片は、優先的に分子の特定の領域から選択される場合もある。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示された最初の250若しくは500のアミノ酸(或いは、ポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された連続するアミノ酸の所定の長さを含み得る。これらの長さは一例であり、配列表及び表、図面を含む明細書に記載の任意の長さが、本発明の実施例に含まれ得る。
【0065】
SEQ ID NO:22−42の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:22−42を明確に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含む。SEQ ID NO:22−42のある断片は、例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術、またはSEQ ID NO:22−42を関連ポリヌクレオチド配列から区別する類似の方法に有用である。ある断片と一致するSEQ ID NO:22−42の正確な断片の長さや領域は、その断片の目的に基づいて当分野で一般的な技術によって日常的に測定できる。
【0066】
SEQ ID NO:1−21のある断片は、SEQ ID NO:22−42のある断片によってコードされる。SEQ ID NO:1−21のある断片は、SEQ ID NO:1−21を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1−21のある断片は、SEQ ID NO:1−21を特異的に認識する抗体の開発における免疫原性ペプチドとして有用である。ある断片と一致するSEQ ID NO:1−21の正確な断片の長さや領域は、その断片の目的に基づいて当分野で一般的な技術によって日常的に決定できる。
【0067】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、それに続くオープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0068】
「相同性」は、2つ以上のポリヌクレオチド配列間または2つ以上のポリペプチド配列間の配列類似性である。この配列類似性は配列同一性と言い換えることができる。
【0069】
ポリヌクレオチド配列についての用語「パーセントの同一性」または「%の同一性」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の一致する残基の百分率のことである。このようなアルゴリズムは、標準化され再現できる方法で、2つの配列間のアラインメントを最適化するべく、配列にギャップを挿入して、より意味をもつ2つの配列間の比較を行うことができる。
【0070】
ポリヌクレオチド配列間の同一性のパーセントは、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれるCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメータを用いて決定可能である。このプログラムはLASERGENEソフトウェアパッケージの一部であり、分子生物学分析プログラム一式(DNASTAR, Madison WI)である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G. 及び P.M. Sharp (1989) CABIOS 5:151−153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189−191に記載されている。ポリヌクレオチド配列の対のアライメントの場合、デフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。「重み付けされた」残基重み付け表が、デフォルトとして選択された。同一性のパーセントは、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「類似性のパーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0071】
別法では、National Center for Biotechnology Information (NCBI) Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) (Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403−410)が提供する、広く用いられている無料の配列比較アルゴリズム一式が、NCBI(Bethesda、MD)を含む幾つかのソース及びインターネット(http://WWW.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)で入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールが入手可能であり、2つのヌクレオチド配列の対を直接比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://WWW.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/b12.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、デフォルトを設定するギャップ及び他のパラメータと共に用いられる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較する場合、ある者は、デフォルトパラメータに設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (April−21−2000)でblastnを使用するであろう。そのようなデフォルトパラメータは、例えば、以下のようにする。
【0072】
Matrix: BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: −2
Open Gap: 5 及び Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop−off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter: on
同一性のパーセントは、例えば、特定の配列番号で決められた、所定の配列の全長に対して測定してもよいし、それより短い長さに対して、例えば、ある大きな所定の配列から得られた断片、例えば、連続する少なくとも、20または30、40、50、70、100、200のヌクレオチドの断片の長さに対して測定してもよい。このような長さは単なる例であり、配列表及び表、図面を含む明細書に記載の配列の任意の長さの断片を用いて、同一性のパーセントが測定される長さを示すことができる。
【0073】
高い同一性を示さない核酸配列でも、遺伝子コードの縮重によって類似のアミノ酸配列をコードし得る。縮重を利用して核酸配列を変え、それぞれが実質的に同じタンパク質をコードする様々な核酸配列を作製できることを理解されたい。
【0074】
ポリペプチド配列に用いられる用語「パーセントの同一性」または「%の同一性」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は周知である。アラインメント方法の中には、保存的なアミノ酸置換を考慮したものもある。詳細に上述したこのような保存的な置換は、一般に、置換部位の電荷や疎水性が保存され、ポリペプチドの構造(従って機能も)が保存される。
【0075】
ポリペプチド配列間の同一性のパーセントは、MEGALIGN バージョン3.12e配列アラインメントプログラム(上記)に組込まれるCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメータを用いて決定可能である。CLUSTAL Vを用いる対方式のポリぺプチド配列のアライメントの場合、デフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、及び「diagonals saved」=5と設定する。PAM250マトリクスが、デフォルトの残基重み付け表として選択される。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、アラインメントされたポリペプチド配列の対の同一性のパーセントは、「類似性のパーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0076】
別法では、NCBI BLASTソフトウェア一式が用いられる。例えば、2つのポリペプチド配列を対で比較をする場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (Apr−21−2000)でblastpを使用するであろう。そのようなデフォルトパラメータは、例えば、以下のようにする。
【0077】
Matrix: BLOSUM62
Open Gap: 11 及び Extension Gap: 1 penalties
Gap x drop−off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter: on
同一性のパーセントは、例えば、特定の配列番号で決められた、所定のポリペプチド配列の全長に対して測定してもよいし、それより短い長さに対して、例えば、ある大きな所定のポリペプチド配列から得られた断片、例えば、連続する少なくとも15、20または30、40、50、70、150の残基の断片の長さに対して測定してもよい。このような長さは単なる例であり、配列表及び表、図面を含む明細書に記載の配列の任意の長さの断片を用いて、同一性のパーセントが測定される長さを示すことができる。
【0078】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb(キロベース)〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した有糸分裂染色体の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の小染色体である。
【0079】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0080】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的なハイブリダイゼーションとは、2つの核酸配列が高い相同性を有することを意味する。アニーリングが許容される条件下で、特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成され、洗浄過程の後もハイブリダイズしたままである。洗浄過程は、ハイブリダイゼーションプロセスの厳密性即ちストリンジェンシー(stringency)の決定において特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異的な結合、即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合が減少する。核酸配列間のアニーリングが許容される条件は、当業者によって日常的に決定され、ハイブリダイゼーションの間は一定であるが、洗浄過程は、目的のストリンジェンシーにするためにその最中に条件の変更が可能であり、ハイブリダイゼーション特異性が得られる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0081】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、洗浄過程を行う際の温度によっても左右される。この洗浄温度は通常、所定のイオン強度とpHにおける特定の配列の熱融点(Tm)より約5〜20℃低く選択される。このTmは、(所定のイオン強度とpHの下)標的の配列の50%が完全に一致するプローブとハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーションの条件は、周知であり、Sambrook, J. 他による, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版の1−3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY; 特に2巻の9章に記載されている。
【0082】
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションでは、約0.2x SSC及び約1%のSDSの存在の下、約68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、65℃、60℃、55℃、42℃の温度で行う。SSCの濃度は、約0.1%のSDSが存在の下、約0.1〜2x SSCの範囲である。通常は、ブロッキング試薬を用いて非特異的なハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング試薬には、例えば、約100〜200μg/mlの切断され変性したサケ精子DNAが含まれる。約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドなどの有機溶剤が、例えば、RNAとDNAのハイブリダイゼーションなどの特定の場合に用いることができる。これらの洗浄条件の有用な改変は、当業者には周知である。特に高いストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションは、ヌクレオチド間の進化における類似性を示唆し得る。このような類似性は、それらのヌクレオチド及びコードされたポリペプチドが類似の役割を果たしていることを強く示唆する。
【0083】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は溶液中(例えば、C0tまたはR0t分析)で形成されるか、或いは溶液中の1つの核酸配列と固体の支持物(例えば、紙、膜、フィルタ、チップ、ピン、或いはスライドガラス、または細胞及びその核酸を固定する任意の適当な基板)に固定されたもう一つの核酸配列とで形成され得る。
【0084】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0085】
「免疫応答」は、炎症性疾患及び外傷、免疫異常、感染症、遺伝病などに関連する症状を指す。これらの症状は、細胞系及び全身防衛系に影響を及ぼすサイトカイン及びケモカイン、別の情報伝達分子などの様々な因子の発現という特徴をもつ。
【0086】
用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると、免疫反応を引き起こすPRTSのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を指す。用語「免疫原性断片」はまた、本明細書で開示するまたは当分野で周知のあらゆる抗体生産方法に有用なPRTSのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を含む。
【0087】
用語「マイクロアレイ」は、基質上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
【0088】
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物を指す。
【0089】
用語「調節」は、PRTSの活性の変化を指す。例えば、調節によって、PRTSのタンパク質活性、或いは結合特性、またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0090】
用語「核酸」及び「核酸配列」は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、或いはそれらの断片を指し、一本鎖若しくは二本鎖であって、センス鎖或いはアンチセンス鎖であるゲノム起源若しくは合成起源のDNA或いはRNA、ペプチド核酸(PNA)、任意のDNA様物質、及びRNA様物質である。
【0091】
「機能的に結合した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に結合している。一般に、機能的に結合したDNA配列は、同じ読み枠内で2つのタンパク質をコードする領域が結合する必要がある場合は、非常に近接或いは連続する。
【0092】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリシンで終わるアミノ酸残基のペプチド骨格に結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。この末端のリシンにより、この組成物が溶解性となる。PNAは、相補的な一本鎖DNAやRNAに優先的に結合して転写物の伸長を止め、ポリエチレングリコール化して細胞における寿命を延ばし得る。
【0093】
PRTSの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、PRTSの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0094】
「プローブ」とは、同一配列或いはアレル核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、PRTSやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸配列のことである。プローブは、検出可能な標識またはレポーター分子が結合され単離されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドである。典型的な標識には、放射性アイソトープ及びリガンド、化学発光試薬、酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーがポリヌクレオチドにアニーリングした後、あるDNAポリメラーゼ酵素によって、標的のDNA一本鎖に沿って伸長される。プライマーの組は、例えば、PCR法における核酸配列の増幅(及び同定)に用いることができる。
【0095】
本発明に用いられるプローブ及びプライマーは、既知の配列の少なくとも15の連続するヌクレオチドを含む。特異性を高めるために、より長いプローブ及びプライマーが用いることも可能である。例えば、開示した核酸配列の連続する少なくとも20または25、30、40、50、60、70、80、90、100、150のヌクレオチドを含む。プローブ及びプライマーは、上記した例より相当長いものも用いることができ、本明細書の表及び図面、配列表に示された任意の長さのヌクレオチドも用いることができることを理解されたい。
【0096】
プローブ及びプライマーの準備及び使用方法については、例えば、Sambrook, J.他による、1989年、名称「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版の1−3巻(Cold Spring Harbor Press, Plainview NY)、またはAusubel, F.M. 他による、1987年、名称「Current Protocols in Molecular Biology」(Greene Pubi. Assoc. & Wiley−Intersciences, New York NY)、並びに Innis他による、1990年、名称「PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications」(Academic Press, San Diego CA.)を参照されたい。PCR用のプライマーの組は、例えば、Primer (Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)などのそのような目的のためのコンピュータプログラムを用いて、ある既知の配列から引き出すことができる。
【0097】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドは、当分野で周知のプライマー選択用のコンピュータプログラムで選択される。例えば、OLIGO 4.06ソフトウェアは、それぞれが最大100ヌクレオチドまでのPCR用のプライマーの対の選択、及び32,000塩基までの入力ポリヌクレオチド配列から最大5,000ヌクレオチドまでの大きなポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドの分析に有用である。類似のプライマー選択用プログラムには、能力を拡大する追加の機能が含まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(Genome Center at University of Texas South West Medical Center, Dallas TXより入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択できるため、ゲノムワイドスコープ(genome−wide scope)におけるプライマーの設計に有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research, Cambridge MA1より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「ミスプライミングライブラリ(mispriming libaray)」を入力できる。また、Primer3は、特にマイクロアレイのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後の方の2つのプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれのソースから得ることができ、ユーザーのニーズを満たすように変更することもできる)。PrimerGenプログラム(UK Human Genome Mapping Project Resource Centre, Cambridge UK より入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計するため、アラインメントされた核酸配列の最も保存された領域或いは最も保存されていない領域のどちらかとハイブリダイズするプライマーを選択することができる。従って、このプログラムは、固有及び保存されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記した任意の選択方法で同定されたオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチドの断片は、例えば、PCR法やシークエンシングプライマー、マイクロアレイエレメント、或いはサンプルの核酸の完全或いは部分的に相補的なポリヌクレオチドを同定する特定のプローブなどの、ハイブリダイゼーション技術に有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記した方法に限定されるものではない。
【0098】
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人工の組み合せは、化学合成によって作られる場合も多いが、前出のSambrook に記載されたような遺伝子工学の技術を用いて核酸の離れたセグメントを人工的に操作する方がより一般的である。この「組換え核酸」には、単に核酸の一部の追加または置換、欠失によって変更された核酸も含む。組換え核酸は、あるプロモーター配列に機能的に結合した核酸配列を含む場合もある。このような組換え核酸は、例えば、ある細胞を形質転換するのに用いられるベクターの一部であり得る。
【0099】
別法では、このような組換え核酸は、この組換え核酸を発現する哺乳動物のワクチン接種に用いると、その哺乳動物の防衛的な免疫応答を誘発する、ワクシニアウイルスに基づいたウイルスベクターの一部であり得る。
【0100】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5’及び3’の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写や翻訳、またはRNAの安定性を調節する宿主またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0101】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分が含まれる。
【0102】
本明細書において、DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0103】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。PRTS、PRTSをコードする核酸、またはその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存在するまたは基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
【0104】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、結合する分子によって認識される、例えば、抗原決定基つまりエピトープなどのタンパク質の特定の構造の存在によって左右される。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0105】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましいくは90%以上除去されたものを指す。
【0106】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0107】
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビード、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。この基板には、壁または塹壕、ピン、チャンネル、細孔などの様々な表面形態があり、そこにポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0108】
「転写イメージ」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0109】
「形質転換」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、当分野で周知の種々の方法により、自然或いは人工の条件下で起こり、原核宿主細胞若しくは真核宿主細胞の中に外来核酸配列を挿入する任意の周知の方法によって行うことができる。この形質転換の方法は、形質転換される宿主細胞のタイプによって選択される。この方法には、バクテリオファージまたはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、リポフェクション、及び微粒子照射が含まれるが、これらに限定されるものではない。「形質転換された」細胞には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一時的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0110】
本明細書における「遺伝子組換え生物」とは、当分野で周知の遺伝子組換え技術などを用いて、人間が生物の1つ以上の細胞に異種の核酸を導入した任意の生物であり、動物及び植物を含むが、それらに限定されるものではない。微量注入や組換えウイルスに感染させるなどの慎重な遺伝子操作によって、細胞の前駆体に直接或いは間接的に異種核酸を細胞に導入する。「遺伝子操作」とは、典型的な交雑育種やin vitroでの受精ではなく、組換えDNA分子を導入することである。本発明に従った遺伝子組換え生物には、細菌及びラン藻類、菌類、植物、動物が含まれる。本発明の単離されたDNAは、当分野で周知の、例えば、感染、形質移入、形質転換、トランス接合(transconjugation)などの方法によって、宿主に導入することができる。本発明のDNAをそのような生物に導入する技術は周知であり、前出のSambrook他(1989)に記載されている。
【0111】
特定の核酸配列の「変異配列」とは、デフォルトパラメータ設定の「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9 (May−07−1999)を用いるblastnによって、ある核酸配列のある長さに対する該特定の核酸配列の同一性が、少なくとも40%と決定された核酸配列のことである。このような核酸の対は、ある長さにおいて、例えば、少なくとも50%または60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、或いはそれ以上の同一性を示し得る。ある変異配列は、例えば、「アレル」変異配列(上述)または「スプライス」変異配列、「種」変異配列、「多型」変異配列と表すことができる。スプライス変異配列は基準分子と同一性が極めて高い可能性があるが、mRNAプロセッシング中のエキソンの択一的スプライシングによってポリヌクレオチドの数が多くなったり、少なくなったりする。対応するポリペプチドは、基準分子に存在する追加の機能ドメインを有したり、基準分子に存在するドメインが欠落したりし得る。種変異配列は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。得られるポリペプチドは、互いに高いアミノ酸同一性を有する。多型変異配列は、所定の種と種における特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列が異なる。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1ヌクレオチド多型」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば、或る集団、病態、病態の性向を示唆し得る。
【0112】
特定のポリペプチド配列の「変異体」とは、デフォルトパラメータ設定の「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9 (May−07−1999)を用いるblastpによって、あるポリペプチド配列のある長さに対する該特定のポリペプチド配列の同一性が、少なくとも40%と決定されたポリペプチド配列のことである。このようなポリペプチドの対は、ある長さにおいて、例えば、少なくとも50%または60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、或いはそれ以上の同一性を示し得る。
【0113】
(発明)
本発明は、新規のヒトプロテアーゼ(PRTS)及びPRTSをコードするポリヌクレオチドの発見に基づき、これらの組成物を利用した胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害の診断、治療、及び予防に関する。
【0114】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の識別番号を示す。各ポリヌクレオチドおよびそれに対応するポリペプチドは、1つのインサイトプロジェクト識別番号(Incyte Project ID)に相関する。各ポリペプチド配列は、記載されているようにポリペプチド配列識別番号(Polypeptide SEQ ID NO:)およびインサイトポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)の両方によって示されている。各ポリヌクレオチド配列は、記載されているようにポリヌクレオチド配列識別番号(Polynucleotide SEQ ID NO:)およびインサイトポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte Polynucleotide ID)の両方によって示されている。
【0115】
表2は、GenBankタンパク質(genept)データベースにおいてBLAST解析により同定された本発明のポリペプチドに相同性を有する配列を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(Polypeptide SEQ ID NO:)およびそれに対応するインサイトポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBankの識別番号(Genbank ID NO:)を示す。列4は、各ポリペプチドとそのGenBank相同体との間の一致を表す確率スコアを示す。列5は、GwnBank相同体のアノテーションを示し、更に該当箇所には適当な引用文も示す。これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0116】
表3は、本発明の各ポリペプチドの様々な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するインサイトポリペプチド配列番号(Incyte Polypeptide ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、潜在的なリン酸化部位および潜在的なグリコシル化部位を示す。列6は、シグネチャ(signature)配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0117】
表2および表3は共に、本発明の各ポリペプチドの特性を一覧にしたものであって、これらの特徴が、請求するポリペプチドがプロテアーゼであることを立証する。SEQ ID NO:1が、M1残基からG225残基においてヒトユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼ(GenBank ID g9971757)と48%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2を参照)。BLASTの確率スコアは1.00e−49である。これは、探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示す。また、SEQ ID NO:1がユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼ触媒部位ドメインを含むことが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された(表3を参照)。スコアが53.4ビットであり、探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すE値が4.9e−12である。このモチーフの存在が、BLIMPS(確率スコアが2.6e−4)及びMOTIFS分析により確証された。このことから、SEQ ID NO:1がユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼであることが更に証明された。別の例では、SEQ ID NO:2が、ヒトprostasin、即ちセリンプロテアーゼ(GenBank ID g1143194)のアミノ酸残基の15‐235において45%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2を参照)。探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すBLAST確率スコアは1.3e−46である。また、SEQ ID NO:2がトリプシンファミリーセリンプロテアーゼ活性部位ドメインを含むことが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された。この一致は、確率スコアが2.7e−58である。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN分析により、このドメインの存在が確認された(表3を参照)。また、BLIMPS分析によりkringleドメインも明らかにされ、SEQ ID NO:2がトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼであることが更に証明された。別の例では、SEQ ID NO:7が様々なペプチドを加水分解するジペプチダーゼであり(Kozak, E. and S. Tate (1982) J. Biol. Chem. 257: 6322−6327)、ペネム及びカルバペネムなどの抗生物質のβラクタム環の加水分解に関係する(Campbell ら (1984) J. Biol. Chem. 259: 14586−14590)。SEQ ID NO:7が、ヒトジペプチダーゼ前駆体(GenBank ID g219600)に対して、全長411のアミノ酸の377のアミノ酸において48%の配列同一性を有することが、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された。探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すBLAST確率スコアは1.1e−88である。更に、本発明のプロテアーゼが腎ジペプチダーゼドメインを有することが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された。腎ジペプチダーゼPFAMヒットのHMMスコアは412.7である。更にBLIMPS、MOTIFS、BLAST−DOMO、及びBLAST−PRODOM分析のデータにより、SEQ ID NO:7が腎ジペプチダーゼであることが確証された。BLIMPS−BLOCKSヒットにより、1040‐1537の範囲の局所領域にスコアが付けられた。BLAST−DOMOヒット確率スコアは5.2e−85である。BLAST−PRODOMヒット確率スコアは4.7e−73である。別の例では、SEQ ID NO:8が、ヒト膜貫通トリプターゼ(GenBank ID g6103629)と86%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2を参照)。探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すBLAST確率スコアは3.9e−166である。SEQ ID NO:8は、トリプシンファミリープロテアーゼ活性部位ドメインを含み、確率スコアが5.3e−89であることが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN分析により、このモチーフの存在が確認された。また、BLIMPS分析により、SEQ ID NO:8がkringleドメイン及びI型フィブロネクチンドメインを含むことも示された。HMMERを用いる分析により、膜貫通ドメインの存在が明らかにされた(表3を参照)。これらの分析を総合すると、SEQ ID NO:8がトリプシンファミリーのプロテアーゼの膜貫通メンバーであることが分かる。別の例では、SEQ ID NO:17が、或る部分においてヒト膜貫通型セリンプロテアーゼ1(MT−SP1, GenBank ID g6002714)と同一性が44%であることが、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2を参照)。探しているポリペプチド配列アラインメントが偶然の一致により得られる確率を示すBLAST確率スコアは5.1e−94である。SEQ ID NO:17がトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼ活性部位ドメインを含むことが、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおける統計的に有意な一致の検索により確定された(表3を参照)。HMMを基にした分析により、更にSEQ ID NO:17のN末端に近い膜貫通ドメインが明らかにされた。低密度リポタンパク質受容体、及びMT−SP1(PDOC00929)を含むその他のタンパク質に見られる或るドメインもこの方法で同定された。トリプシン活性部位モチーフの存在がPROFILESCAN、BLIMPS、及びMOTIFS分析により確認された。BLIMPS分析により、kringleドメイン及びI型フィブロネクチンドメインの存在が明らかにされた。これらのデータを総合すると、更にSEQ ID NO:17がトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼの膜貫通メンバーであることが確証された。同様の方法で、SEQ ID NO:3‐6、SEQ ID NO:9‐16、及びSEQ ID NO:18‐21を分析し、アノテーションを付けた。SEQ ID NO:1‐21の分析に用いたアルゴリズム及びパラメータを表7に記載する。
【0118】
表4に示されているように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列、またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列、或いはこれらの2種類の配列のあらゆる組み合わせを用いて組み立てた。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(Polynucleotide SEQ ID NO:)およびそれに対応するインサイトポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte Polynucleotide ID)を示す。列3は、塩基対における各ポリヌクレオチド配列の長さを示す。列4は、例えば、SEQ ID NO:22−42を同定するため、或いはSEQ ID NO:22−42と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するためのハイブリダイゼーションまたは増幅技術に有用なポリヌクレオチド配列の断片を示す。列5は、cDNA配列、ゲノムDNAから推定されるコード配列(エキソン)、および/またはcDNAおよびゲノムDNAの両方からなる群に対応する識別番号を示す。これらの配列を用いて本発明の完全長ポリヌクレオチド配列を組み立てた。表4の列6および列7はそれぞれ、それぞれの完全長配列に対する列5のcDNA配列及び/またはゲノム配列の開始ヌクレオチド(5’)位置および終了ヌクレオチド(3’)位置を示す。
【0119】
表4の列5に示されている識別番号は、具体的には、例えばインサイトcDNAおよびそれらに対応するcDNAライブラリの識別番号を示す。例えば、7246467T8はインサイトcDNA配列の識別番号であり、PROSTMY01はそれが由来するcDNAライブラリの識別番号である。cDNAライブラリが示されていないインサイトcDNAは、プールされているcDNAライブラリ(例えば、71041539V1)に由来する。または、列5の識別番号は、完全長ポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたGenBankのcDNAすなわちEST(例えば、g5745066)の識別番号の場合もある。または、列5の識別番号は、ゲノムDNAのGenscan分析によって推定されるコード領域の場合もある。例えば、GNN.g7208751_000002_002.editは、Genscan推定コード配列の識別番号であり、g7208751はGenscanに用いた配列のGenBank識別番号である。このGenscan推定コード配列は、配列を組み立てる前に編集する場合がある(実施例4を参照)。また、列5の識別番号は、「エキソンステッチ(exon−stitching)」アルゴリズムによって得られたcDNAおよびGenscan推定エキソンの両方からなる集合体の場合もある。例えば、FL1389845_00001はステッチ配列であり、1389845はアルゴリズムが適用された配列のクラスターの識別番号であり、00001はアルゴリズムによって生成された推定の番号である(実施例5を参照)。または、列5の識別番号は、「エキソンストレッチ(exon−stretching)」アルゴリズムによって得られたcDNAおよびGenscan推定エキソンの両方からなる集合体の場合もある。例えば、FL2256251_g7708357_000002_g6103629は、ストレッチ配列の識別番号であって、2256251はインサイトプロジェクト識別番号であり、g7708357はエキソンストレッチアルゴリズムが適用されたヒトゲノム配列のGenBank識別番号であり、g6103629は最も近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号である(実施例5を参照)。場合によっては、列5に示されている配列の範囲と重複するインサイトcDNAの範囲が得られ、最終的なコンセンサス配列が決定されるが、それに相当するインサイトcDNAの識別番号は示されていない。
【0120】
表5は、インサイトcDNA配列を用いて組み立てられたこれらの完全長ポリヌクレオチド配列が由来する代表的なcDNAライブラリを示す。代表的なcDNAライブラリとは、上記ポリヌクレオチド配列の組み立ておよび決定に用いられたインサイトcDNA配列を最も多く含むインサイトcDNAライブラリのことである。表5に示されているcDNAライブラリを作製するために用いた組織およびベクターが表6に示されている。
【0121】
本発明はまた、PRTSの変異体も含む。好適なPRTSの変異体は、PRTSの機能的或いは構造的特徴の少なくともどちらか一方を有し、かつPRTSアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0122】
本発明はまた、PRTSをコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施例において、本発明は、PRTSをコードするSEQ ID NO:22−42からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。配列表に示したSEQ ID NO:22−42のポリヌクレオチド配列は、窒素系塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖の背骨がデオキシリボースではなくリボースからなる等価RNA配列を含む。
【0123】
本発明はまた、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の特定の実施形態は、SEQ ID NO:22−42からなる群から選択された核酸配列と少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するSEQ ID NO:22−42からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列の変異配列を提供する。上記したポリヌクレオチド変異配列は何れも、PRTSの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードする。
【0124】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るPRTSをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、既知の自然発生する任意の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能なコドン選択に基づいた組み合わせの選択によって作り出され得る可能なポリヌクレオチド配列の変異の全てが含まれ得る。これらの組み合わせは、天然のPRTSのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全ての変異が明確に開示されていると考慮する。
【0125】
PRTSをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のPRTSのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するPRTS或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。特定のコドンが宿主によって利用される頻度に基づいてコドンを選択して、ペプチドの発現が特定の真核細胞または原核宿主に発生する割合を高めることが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えないで、PRTS及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0126】
本発明はまた、PRTS及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成配列を、当分野で良く知られた試薬を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、PRTSまたはその任意の断片をコードする配列の中に突然変異を導入することも可能である。
【0127】
更に本発明には、種々のストリンジェントな条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:22−42及びそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399−407; and Kimmel. A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507−511.を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0128】
当分野で周知のDNAのシークエンシング方法を用いて、本発明の何れの実施例も実行可能である。この方法には、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech Piscataway NJ)、或いはELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)にみられるような校正エキソヌクレアーゼとポリメラーゼとの組み合わせなどの酵素が用いられる。好ましくは、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200 Thermal Cycler200(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800 (PE Biosystems) などの装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373或いは377 DNAシークエンシングシステム(PE Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics. Sunnyvale CA)または当分野で周知の他の方法を用いてシークエンシングを行う。得られた配列を当分野で周知の様々なアルゴリズムを用いて分析する(例えば、Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7; Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, pp. 856−853.を参照)。
【0129】
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配列を利用して、PRTSをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば制限部位PCR法を利用する1つの方法では、一般的なプライマー及び入れ子プライマー(nested primer)を用いてクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic 2:318−322を参照)。逆PCR法を用いる別法では、広範な方向に伸長して環状化した鋳型から未知の配列を増幅するプライマーを用いる。この鋳型は、既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列を含む制限断片に由来する(例えば、Triglia, T.ら(1988)Nucleic Acids Res 16:8186を参照)。キャプチャPCR法を用いる第3の方法は、ヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片のPCR増幅を含む(例えば、Lagerstrom, M.他(1991)PCR Methods Applic 1:111−119を参照)。この方法では、多数の制限酵素による消化及びライゲ−ションを用いて、PCRを行う前に未知の配列の領域の中に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、当分野で周知の別の方法を用いて未知の配列を得ることも可能である。(例えば、Parker, J.D. 他 (1991)Nucleic Acids Res. 19:3055−3060を参照)。更に、PCR、ネスト化プライマー、PROMOTERFINDERライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いれば、ゲノムDNA内の歩行が可能である。この方法ではライブラリをスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部を探すのに有用である。全てのPCR法をベースにした方法では、プライマーは、市販のOLIGO 4.06 Primer Analysis software(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムなどを用いて、長さが22〜30ヌクレオチド、GC含量が50%以上、約68℃〜72℃の温度で鋳型に対してアニーリングするよう設計される。
【0130】
完全長のcDNAをスクリーニングする場合は、大きなcDNAを含むようにサイズが選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、オリゴd(T)ライブラリが完全長のcDNAを産生できない場合は、遺伝子の5’領域を有する配列を含むものが多いランダムに初回抗原刺激を受けたライブラリが有用である。ゲノムライブラリは、5’非転写調節領域への配列の伸長に有用であろう。
【0131】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のヌクレオチド配列のサイズの分析、または確認が可能である。詳しくは、キャピラリーシークエンシングには、電気泳動による分離のための流動性ポリマー、及び4つの異なったヌクレオチドに特異的なレーザーで活性化される蛍光色素、放出された波長の検出に利用するCCDカメラを使用することが可能である。出力/光強度は、適切なソフトウェア(例えば、GENOTYPER及びSEQUENCE NAVIGATOR、PE Biosystems)を用いて電気信号に変換され、サンプルのローディングからコンピュータ分析までのプロセス及び電子データ表示がコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しない場合もあるDNAの小片のシークエンシングに特に適している。
【0132】
本発明の別の実施例では、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列またはその断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にPRTS、その断片または機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作られ得り、これらの配列をPRTSのクローン化及び発現に利用可能である。
【0133】
種々の目的でPRTSをコードする配列を変えるために、当分野で一般的に知られている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。この目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/または発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。ランダムな断片によるDNAの混合や遺伝子断片と合成オリゴヌクレオチドのPCR再組み立てを用いて、ヌクレオチド配列の組換えが可能である。例えば、オリゴヌクレオチド媒介性定方向突然変異誘発を利用して、新しい制限部位を生成する突然変異の導入、グリコシル化パターンの変更、コドン選択の変更、スプライスバリアントの作製等が可能である。
【0134】
本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara CA; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.−C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793−797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259−264; Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315−319)などのDNAシャフリング技術を用いてシャフリングして、PRTSの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのPRTSの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャフリングは、PCR法による遺伝子断片の組換えで遺伝子変異体のライブラリを作製するプロセスである。次に、このライブラリを、目的の特性を有する遺伝子変異体を同定するために選択或いはスクリーニングする。これらの好ましい変異体をプールし、DNAシャフリング及び選択/スクリーニングを繰り返す。従って、人工的な育種及び急速な分子の進化によって多様な遺伝子が作られる。例えば、ランダムな位置に変異がある1つの遺伝子の断片を、目的の特性が最適化するまで、組換え及びスクリーニング、シャフリングを実施することもできる。別法では、所定の遺伝子の断片を、同じ或いは異なった種の同じ遺伝子ファミリーの相同な遺伝子の断片で組換え、それによってプロトコルに従った調節可能な方法で、多数の天然遺伝子の遺伝子多様性を最大にすることができる。
【0135】
別の実施例によれば、PRTSをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.ら(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser 7:215−223; 及びHorn, T.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser.225−232を参照)。別法として、化学的方法を用いてPRTS自体またはその断片を合成することが可能である。例えば、ペプチド合成は種々の固相技術を用いて実行可能である(例えば、Creighton, T. (1984) Proteins. Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, pp. 55−60; Roberge, J.Y.ら(1995) Science 269:202−204を参照)。また、合成の自動化は例えばABI 431Aペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)を用いて達成し得る。更にPRTSのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/または化学的方法を用いた他のタンパク質または任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0136】
このペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィー(例えば、Chiez, R.M. 及び F.Z. Regnier (1990)Methods Enzymol. 182:392−421を参照)を用いて実質的に精製可能である。合成されたペプチドの組成は、アミノ酸分析或いはシークエンシングにより確認することができる(例えば、Creighton、前出、pp28−53を参照)。
【0137】
生物学的に活性なPRTSを発現させるために、PRTSをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。これらのエレメントには、ベクター及びPRTSをコードするポリヌクレオチド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5’及び3’の非翻訳領域などの調節配列が含まれる。このようなエレメントは、その長さ及び特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、PRTSをコードする配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。このようなシグナルには、ATG開始コドン及びコザック配列などの近傍の配列が含まれる。PRTSをコードする配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれなければならない。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、自然及び合成の様々なものから得ることが可能である。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である。(例えば、Scharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 201−18−162.を参照)。
【0138】
当業者に周知の方法を用いて、PRTSをコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる。(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, 及び16−17章; 及び Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章及び13章1−4章を参照)。
【0139】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、PRTSをコードする配列の保持及び発現が可能である。これらには、限定するものではないが、組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物や、酵母菌発現ベクターで形質転換された酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系や、動物細胞系などが含まれる(例えば、前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503−5509、Engelhard、E.K. 他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307−311; The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology (1992) McGraw Hill, New York NY, pp. 191−196、Logan, J. and T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655−3659、Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345−355を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ輸送することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350−356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340−6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813−815; McGregor, D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219−226、Verma, I.M. and N. Somia (1997) Nature 389:239−242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0140】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはpSPORT1プラスミド(GIBCO BRL)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターの多数のクローニング部位にPRTSをコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更に、これらのベクターを用いて、クローニングされた配列のin vitroでの転写、ジデオキシンスクリーニング、ヘルパーファージによる一本鎖の救出、入れ子状態の欠失を作り出すことが可能である(例えば、Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503−5509.を参照)。例えば、抗体の産生のためなどに多量のPRTSが必要な場合は、PRTSの発現をハイレベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力に発現を誘発するT5またはT7バクテリオファージプロモーターを含むベクターを使用できる。
【0141】
PRTSの発現に酵母の発現系の使用が可能である。α因子やアルコールオキシダーゼやPGHプロモーターなどの構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多種のベクターが、酵母菌サッカロミセス−セレビジエまたはPichia pastorisに使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か細胞内への保持のどちらかを誘導し、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来配列を組み込む。(例えば、Ausubel, 1995,前出、Bitter, G.A. ら (1987) Methods Enzymol.153:516−544、及びScorer. C. A. ら (1994) Bio/Technology 121−181−184.を参照)。
【0142】
植物系もPRTSの発現に使用可能である。PRTSをコードする配列の転写は、例えば、CaMV由来の35S及び19Sプロモーターなどのウイルスプロモーターが単独で、或いはTMV(例えば、Coruzzi, G. ら. (1984) EMBO J. 3 : 1671−1680 ; Broglie, R. ら (1984) Science 224 : 838−843 ; および Winter, J. ら (1991) Results Probl. Cell Differ. 17 : 85−105を参照)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて促進される。これらの作製物は、直接のDNA形質転換或いは病原体を介したトランスフェクションによって、植物細胞の中に導入可能である。(例えば、The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology(1992)McGraw Hill NY, pp.191−196を参照)。
【0143】
哺乳動物細胞では、多種のウイルスベースの発現系が利用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にPRTSをコードする配列を結合し得る。ウイルスのゲノムの非必須のE1またはE3領域への挿入により、感染した宿主細胞にPRTSを発現する生ウイルスを得ることが可能である(Logan, J.及びShenk, T.(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. 81:3655−3659を参照)。さらに、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させることが可能である。タンパク質を高レベルで発現させるために、SV40またはEBVを基にしたベクターを用いることが可能である。
【0144】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドで発現しそれに含まれているものより大きなDNAの断片を供給可能である。治療のために約6kb〜10MbのHACsを作製し、従来の輸送方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で供給する。(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat Genet.15:345−355.を参照)。
【0145】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるPRTSの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、PRTSをコードする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製及び/または内在性の発現要素や、同じ或いは別のベクターの上の選択マーカー遺伝子を含む。ベクターの導入の後、細胞を選択培地に移す前に、強化培地で約1〜2日の間増殖させる。選択マーカーの目的は選択的な媒介物に対する抵抗性を与えるとともに、その存在により導入された配列を確実に発現する細胞の増殖及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に好適な組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0146】
任意の数の選択系を用いて、形質転換された細胞系を回収することが可能である。選択系には、以下のものに限定はしないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれ、それぞれtk−またはapr−細胞において使用される。(例えば、Wigler, M. 他 (1977) Cell 11:223−232; 及びLowy, I. 他(1980) Cell 22:817−823を参照)。また代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を選択のベースとして用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG−418に対する耐性を与え、als或いはpatはクロルスルフロン(chlorsulfuron)、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(phosphinotricin acetyltransferase)に対する耐性を与える(例えば、Wigler, M. 他. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567−3570; Colbere−Garapin, F. 他(1981) J. Mol. Biol. 150:1−14を参照)。さらに選択に利用できる遺伝子、例えば、代謝のために細胞が必要なものを変えるtrpB及びhisDが文献に記載されている(例えば、Hartman, S.C.及びR.C. Mulligan(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. 85:8047−51を参照)。アニトシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質GUS,ルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリンなどの可視マーカーが用いられる。緑色蛍光タンパク質(GFP)(Clontech, Palo Alto, CA)も使用できる。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを特定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することが可能である(例えば、Rhodes, C.A.他(1995)Methods Mol. Biol. 55:121−131を参照)。
【0147】
マーカー遺伝子の発現の存在/非存在によって目的の遺伝子の存在が示されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、PRTSをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、PRTSをコードする配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により特定可能である。または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がPRTSをコードする配列と一列に配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常タンデム遺伝子の発現も示す。
【0148】
一般に、PRTSをコードする核酸配列を含み、PRTSを発現する宿主細胞は、当業者に周知の種々の方法を用いて特定することが可能である。これらの方法には、DNA−DNA或いはDNA−RNAハイブリダイゼーションや、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出及び/または数量化のための膜系、溶液ベース、或いはチップベースの技術を含むタンパク質生物学的試験法または免疫学的アッセイが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるPRTSの発現の検出及び計測のための免疫学的な方法は、当分野で周知である。このような技法には、酵素に結合したイムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光標示式細胞分取器(FACS)などがある。PRTS上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two−site, monoclonal−based immunoassay)が好ましいが、競合の結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びその他のアッセイは、当分野では十分に知られている。(例えば、 Hampton. R. 他.(1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV; Coligan, J. E. 他Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience, New York. NY; 及びPound, J.D. (1990) Immunochemical Protocols, Humans Press, Totowa NJ)。
【0150】
種々の標識技術及び結合技術が当業者には周知であり、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイに用いられ得る。PRTSをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、PRTSをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。当分野では周知であり市販されているこのようなベクターを、T7,T3,またはSP6などの好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドの追加によって、in vitroでのRNAプローブの合成に用いることができる。これらの方法は、例えば、Amersham Pharmacia Biotech及びPromega(Madison WI)、U.S. Biochemical Corp(Cleveland OH)が市販する種々のキットを用いて行うことができる。容易な検出のために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、コファクター、インヒビター、磁気粒子、及び放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、色素産生剤などが含まれる。
【0151】
PRTSをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換された細胞から産生されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用されるその配列及び/またはそのベクターによる。PRTSをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するPRTSの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0152】
更に、挿入した配列の発現調節能力または発現したタンパク質を所望の形にプロセシングする能力によって宿主細胞株が選択される。このようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化(lipidation)、及びアシル化が含まれるが、これらに限定されるものではない。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、標的タンパク質、折りたたみ及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための特定の細胞装置及び特徴のある機構をもつ種種の宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38)がAmerican Type Culture Collection(ATCC; Bethesda, MD)より入手可能であり、外来のタンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にするために選択される。
【0153】
本発明の別の実施例では、PRTSをコードする自然或いは変更された、または組換えの核酸配列を上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列に結合させる。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラPRTSタンパク質が、PRTSの活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分が、市販の親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。このような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、c−mc、赤血球凝集素(HA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。GST及びMBP、Trx、CBP、6−Hisによって、固定されたグルタチオン、マルトース、フェニルアルシン酸化物(phenylarsine oxide)、カルモジュリン、金属キレート樹脂のそれぞれで同族の融合タンパク質の精製が可能となる。FLAG、c−mc、及び赤血球凝集素(HA)によって、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いた融合タンパク質の免疫親和性の精製ができる。また、PRTSをコードする配列と異種タンパク質配列との間にあるタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子操作すると、PRTSが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現と精製の方法は、Ausubel. (1995、前出 ch 10).に記載されている。市販されている様々なキットを用いて、融合タンパク質の発現及び精製を促進できる。
【0154】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したPRTSの合成が可能である。これらの系は、T7またはT3、SP6プロモーターと機能的に結合したタンパク質をコードする配列の転写と翻訳をつなげる。翻訳は、例えば、35Sメチオニンである放射能標識されたアミノ酸前駆体の存在の下で起こる。
【0155】
本発明のPRTSまたはその断片を用いて、PRTSに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つまたは複数の試験化合物を用いて、PRTSへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)または小分子が挙げられる。
【0156】
一実施例では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのPRTSの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的な擬態性または自然結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。同様に、化合物は、PRTSが結合する天然受容体、或いは例えばリガンド結合部位などの少なくとも受容体のある断片に密接に関連し得る。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。一実施例では、このような化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてPRTSを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、大腸菌からの細胞が含まれる。PRTSを発現する細胞またはPRTSを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、PRTSまたは化合物の何れかの結合、刺激または阻害を分析する。
【0157】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、フルオロフォア、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたPRTSと結合させるステップと、PRTSとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、細胞遊離剤、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0158】
本発明のPRTSまたはその断片を用いて、PRTSの活性を調整する化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、或るいは部分的または逆アゴニスト等が含まれる。一実施例では、PRTSが少なくとも1つの試験化合物と結合する、PRTSの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、試験化合物の存在下でのPRTSの活性が試験化合物非存在下でのPRTSの活性と比較する。試験化合物の存在下でのPRTSの活性の変化は、PRTSの活性を調整する化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物をPRTSの活性に適した条件下でPRTSを含むin vitroまたは細胞遊離系と結合させてアッセイを実施する。これらアッセイの何れかにおいて、PRTSの活性を調整する試験化合物は間接的に結合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0159】
別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、PRTSまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288−1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre−loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999−2002; Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323−43 30)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0160】
PRTSをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A. 他 (1998) Science 282:1145−1 147)。
【0161】
PRTSをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、PRTSをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について研究し、潜在的な医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばPRTSを乳汁内に分泌するなどPRTSを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55−74)。
【0162】
(治療)
PRTSは、ペプチド結合を加水分解するのに有用である。PRTSのある領域とプロテアーゼのある領域との間に、例えば配列及びモチーフの文脈における化学的及び構造的類似性が存在する。更に、PRTSの発現は血液組織、神経組織、生殖組織、内分泌組織、尿性器組織、病変組織、奇形癌組織、及び腫瘍組織に密接に関連する。従って、PRTSは、胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害においてある役割を果たすと考えられる。PRTSの発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、PRTSの発現または活性を低下させることが望ましい。また、PRTSの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、PRTSの発現または活性を増大させることが望ましい。
【0163】
従って、一実施例において、PRTSの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にPRTSまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患には胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害が含まれ、胃腸疾患の中には、嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、及び後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、肝脂肪症、血色素症、ウィルソン病、α−1−アンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌とが含まれ、心血管疾患の中には、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術(balloon angioplasty)、血管置換術(vascular replacement)、大動脈冠動脈バイパス術移植手術(coronary artry bypass graft suegery)、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、先天性肺異常(congenital lung anomalies)、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束性肺疾患(restrictive pulmonary disease)、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患(diffuse interstitial diseases)、塵肺症、サルコイド症、特発性肺繊維症(idiopathic pulmonary fibrosis)、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎(hypersensivitity pneumonitis)、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans−organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群(diffuse pulmonary hemorrhage syndromes)、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病(pulmonary involvement in collagen−vascular disorders)、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水(inflammatory and noninflammatory pleural effusions)、気胸症、胸膜腫瘍、薬物による肺疾患(drug−induced lung disease)、放射線による肺疾患(radiation−induced lung desease)及び肺移植の合併症などが含まれ、自己免疫/炎症性の疾患の中には、炎症及び日光性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)及び副腎機能不全、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、アテローム斑破裂、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、関節軟骨の分解、骨粗しょう症、膵炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、発生障害も含まれ、その中には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、骨吸収、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith− Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham’s chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、加齢性黄斑変性症、感覚神経性聴力損失が含まれ、上皮の疾患の中には、汗疱状湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、角化上皮症、黒皮症、白斑、日光性角化症、基底細胞癌、扁平上皮癌、脂漏性角化症、毛包炎、単純ヘルぺス、帯状疱疹、水痘、カンジダ症、皮膚糸状菌症、疥癬、昆虫刺症、老年性血管腫、ケロイド、皮膚線維腫、尖端線維性軟肬、じんま疹、一過性棘融解性皮膚症、乾燥症、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、手湿疹、貨幣状湿疹、ビダール苔癬、asteatotic eczema、うっ血性皮膚炎、うっ血性潰瘍、脂漏性皮膚炎、乾癬、扁平苔癬、バラ色粃糖疹、膿痂疹、膿瘡、皮膚糸状菌症、なまず、疣贅、尋常性座瘡、赤鼻、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、妊娠性疱疹、疱疹状皮膚炎、線形性IgA疾患、後天性表皮水疱症、皮膚筋炎、紅斑性狼瘡、強皮症および限局性強皮症、紅皮症、脱毛症、定形皮膚障害(figurate skin lesions)、血管拡張症、色素沈着低下、色素沈着過度、小疱疹/水疱、発疹、皮膚薬物反応、丘疹小結節皮膚障害(papulonodular skin lesions)、慢性非治癒性創傷、感光性疾患、単純表皮水泡症、表皮剥離および非表皮剥離性掌蹠角皮症、ジーメンス水疱魚鱗癬(ichthyosis bullosa of Siemens)、剥脱性魚鱗癬、手掌足底角化症、掌蹠角皮症(keratosis palmoplantarisまたはpalmoplantar keratoderma)、keratosis punctata、Meesmann’s corneal dystrophy、先天性爪肥厚症、白色海綿母斑、多発性皮脂嚢腫、表皮性母斑/表皮剥離性角化型、moniletbrix、trichothiodystrophy、慢性肝炎/特発性肝硬変、結腸直腸過形成が含まれ、神経の疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー及びクロイツフェルト‐ヤコブ病、ゲルストマン症候群、Gerstmann−Straussler−Scheinker症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神薄弱及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分性及び不安性の障害、分裂病性疾患を含む精神病と、季節性障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、及びトゥーレット病と、進行性核上麻痺、皮質基部変性(corticobasal degeneration)及び家族性の前頭側頭性健忘症とが含まれ、生殖障害の中には、プロラクチンの産生異常と、卵管病及び排卵異常、子宮内膜症、発情期異常、月経周期異常、多嚢胞卵巣症候群、卵巣過剰刺激症候群、子宮内膜癌及び卵巣癌、子宮筋腫、自己免疫異常、異所性妊娠、奇形発生を含む不妊症と、乳癌、線維嚢胞性乳腺症、乳漏症と、精子形成異常、生理学上の精子異常、精巣癌、前立腺癌、良性の前立腺過形成、前立腺炎、ペーロニー病、インポテンス、男性乳房及び女性化乳房癌とが含まれる。
【0164】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むPRTSの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、PRTSまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与することも可能である。
【0165】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むPRTSの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製されたPRTSを含む組成物を好適な医薬用担体と共に患者に投与することも可能である。
【0166】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むPRTSの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、PRTSの活性を調節するアゴニストを患者に投与することも可能である。
【0167】
更なる実施例では、PRTSの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にPRTSのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生または発達障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害が含まれる。一実施態様では、PRTSと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはPRTSを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶターゲッティング或いは運搬機構として間接的に用いられ得る。
【0168】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むPRTSの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、PRTSをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを患者に投与することも可能である。
【0169】
別の実施例では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補的な配列、ベクターを別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。当業者は、従来の医薬原理にしたがって併用療法で用いる好適な治療薬を選択可能である。治療薬との組み合わせにより、上に列記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いて少ない量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能であり、広範囲な副作用の可能性を低減し得る。
【0170】
PRTSのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。詳しくは、精製されたPRTSを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてPRTSと特異的に結合するものを同定が可能である。PRTSの抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリによって作られたフラグメントが含まれる。但し、これらに限定されるものではない。治療用には、中和抗体(即ち、二量体の形成を阻害するもの)が特に好ましい。
【0171】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、PRTSまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。このようなアジュバントにはフロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲルアジュバント、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、キーホールリンペットヘモシニアン、及びジニトロフェノールなどの界面活性剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(bacilli CaPRTStte−Guerin)及びCorynebacterium parvumが特に好ましい。
【0172】
PRTSに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド或いはペプチド、またはそれらの断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが望ましい。PRTSアミノ酸の短いストレッチは、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0173】
PRTSに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。これらの技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBV−ハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されるものではない(例えば、Kohler, G. ら. (1975) Nature 256:495−497; Kozbor, D. ら. (1985) .J. Immunol. Methods 81−8−42; Cote, R.J. ら. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026−2030; Cole, S.P. ら. (1984) Mol. Cell Biol. 62:109−120を参照)。
【0174】
更に、「キメラ抗体」作製のために発達したヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81−4851−4855; Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604−608; Takeda, S.ら. (1985) Nature 314:452,454を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、PRTS特異性一本鎖抗体を生成する。関連する特異性を備えるが別のイディオタイプの組成の抗体は、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリから鎖混合によって生成することもできる(例えば、Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. 88:11120−3を参照)。
【0175】
抗体は、リンパ球集団の中のin vivo産生を誘発することによって、または免疫グロブリンライブラリのスクリーニングまたは文献に示されているような、高度に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによって、得ることもできる(例えば、Orlandi, R. 他. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 3833−3837; Winter, G. 他. (1991) Nature 349:293−299を参照)。
【0176】
PRTSに対する特異的な結合部位を含む抗体も得ることができる。例えば、限定するものではないが、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab’)2断片、及びF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を減少させて生成されるFab断片が含まれる。別法では、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速且つ容易な同定が可能となるように、Fab発現ライブラリを作製することもできる(例えば、Huse, W.D. ら. (1989) Science 254:1275−1281を参照)。
【0177】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定する。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的な結合アッセイ、または免疫放射線アッセイの様々なプロトコルが、当分野では周知である。通常このようなイムノアッセイでは、PRTSとその特異的抗体との間で形成された複合体の測定が含まれる。二つの非干渉性PRTSエピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用することができる(Pound、前出)。
【0178】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、PRTSに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でPRTS抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。多数のPRTSエピトープに対して親和性が不均一なポリクローナル抗体医薬のKaは、PRTSに対する抗体の平均親和性または結合活性を表す。特定のPRTSエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体医薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012L/molの高親和性抗体医薬は、PRTS抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107L/molの低親和性抗体医薬は、PRTSが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい。(Catty, D. (1988) Antibodi es, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. and Cryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0179】
ある下流での適用におけるこのような医薬品の品質及び適性を調べるために、ポリクローナル抗体医薬の抗体価及び結合活性を更に評価する。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体医薬は一般に、PRTS抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。様々な適用例における抗体の特異性及び抗体価、結合活性、抗体の品質や使用法の指針は一般に入手可能である。(例えば、Catty, 前出, 及びColigan 他、前出を参照)。
【0180】
本発明の別の実施例では、PRTSをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片や相補配列が、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、PRTSをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA及びRNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは大きな断片が、PRTSをコードする配列の制御領域から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である。
【0181】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を発現する発現プラスミドの形で細胞内に送達することができる(例えば、Slater, J.E. 他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469−475; and Scanlon, K.J. 他 (1995)9(13):1288−1296.を参照 )。また、アンチセンス配列は、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(例えば、Miller, A.D. (1990) Blood 76:271; Ausubel, 前出; Uckert, W. and W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323−347を参照)。その他の遺伝送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ、及び当分野で周知のその他の系が含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217−225; Boado, R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308−1315; and Morris, M.C. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730−2736.を参照)。
【0182】
本発明の別の実施例では、PRTSをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療は、(i)遺伝子欠損症(例えば、X染色体連鎖遺伝(Cavazzana−Calvo, M. 他 (2000) Science 288:669−672)によって特徴づけられる重度の複合型免疫欠損(SCID)−X1)、遺伝性アデノシン−デアミナーゼ(ADA)欠損症(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475−480; Bordignon, C. 他 (1995) Science 270:470−475)に関連する重度の複合型免疫欠損、嚢胞性繊維症(Zabner, J. 他 (1993) Cell 75:207−216: Crystal, R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643−666; Crystal, R.G. 他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667−703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損による血友病(Crystal, 35 R.G. (1995) Science 270:404−410; Verma, I.M. and Somia. N. (1997) Nature 389:239−242)を治療したり、(ii)条件的致死性遺伝子産物(例えば、細胞増殖の制御不能による癌の場合)を発現させたり、及び(iii)細胞内の寄生虫(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395−396; Poescbla, E. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395−11399)や、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生虫、Plasmodium falciparum及びTrypanosoma cruzi等の原虫寄生体)に対する防御機能を有するタンパク質を発現させて行うことができる。PRTSの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からPRTSを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0183】
本発明の更なる実施例では、PRTSの欠損による疾患や異常症は、PRTSをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってPRTS欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的な導入技術には、(i)個々の細胞内へのDNAのマイクロインジェクション、(ii)金粒子の打ち込み、(iii)リポソーム仲介性トランスフェクション、(iv)受容体仲介性遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソン(Morgan, R.A. and W.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191−217; Ivics, Z. (1997) Cell 91:501−510; Boulay, J−L. and H. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445−450)の使用が含まれる。
【0184】
PRTSの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAXベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV−SCRIPT、PCMV−TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET−OFF、PTET−ON、PTRE2、PTRE2−LUC、PTK−HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。PRTSを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT−REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. and H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547−5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766−1769; Rossi, F.M.V. and H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451−456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. and H.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するPRTSをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0185】
市販のリポソーム形質転換キット(例えば、Invitrogenが販売しているPERFECT LIPID及びTRANSFECTION KIT)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能である。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. and A.J. Eb (1973) Virology 52:456−467)若しくは電気穿孔法 (Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841−845)を用いて形質転換を行う。初代細胞にDNAを導入するためには、これらの標準的な哺乳動物トランスフェクションプロトコルを変更する必要がある。
【0186】
本発明の別の実施例では、PRTSの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターのコントロール下でPRTSをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えば、PFB及びPFBNEO)はStratagene社から入手可能であり、公表データ(Riviere, I. 他. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733−6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。このベクターは、VSVg(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647−1650; Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639−1646; Adam, M.A. and A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802−3806; Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463−8471; Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873−9880)等の乱交雑エンベロープタンパク質若しくは標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子を発現する好適なベクター産生細胞系(VPCL)において増殖される。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、ある細胞集団(例えば、CD4+T細胞)の形質導入、並びに形質導入した細胞を患者に戻す方法は、遺伝子治療の分野では周知であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他. (1997) J. Virol. 71:7020−7029; Bauer, G. 他 (1997) Blood 89:2259−2267; Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707−4716; Ranga, U. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201−1206: Su, L. (1997) Blood 89:2283−2290)。
【0187】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、PRTSの発現に関連する1或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にPRTSをコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングは当分野では周知である。複製欠損型アデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島の中に導入するために可変性であることが証明された(Csete, M.E. 他. (1995) Transplantation 27:263−268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターが、米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについてはまた、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511−544; and Verma, I.M. and N. Somia (1997) Nature 18:389:239−242を参照し、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0188】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、PRTSの発現に関連する1或いは複数の遺伝子異常を有する標的細胞にPRTSをコードするポリヌクレオチドを送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にPRTSを導入する際に特に重要である。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは当分野では周知である。複製適格性の単純疱疹ウイルス(HSV)I型系のベクターは、霊長類の眼にレポーター遺伝子を送達するために用いられてきた(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res.169:385−395)。HSV−1ウイルスベクターの作製は、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(Herpes simplex virus swains for gene transfer)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために、好適なプロモーターのコントロールの下で、細胞に導入される少なくとも1つの内在性遺伝子を含むゲノムからなる組換えHSV d92についての記載がある。また上記特許には、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV株の作製及び使用方法が開示されている。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999) J. Virol. 73:519−532 and Xu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152−161を参照し、引用することをもって本明細書の一部とする。クローニングされたヘルペスウイルス配列の操作や、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多数のプラスミドをトランスフェクトした後の組換えウイルスの継代、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は当分野で周知の技術である。
【0189】
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてPRTSをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的な研究が広範に行われ、遺伝子伝達ベクター(gene transfer vector)がSFVゲノムに基づいていることが分かった(Garoff, H. and K.−J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464−469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスカプシドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAが完全長のゲノムRNAより高いレベルで複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に対してカプシドタンパク質が過剰に産生される。同様に、PRTSをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のPRTSをコードするRNAが産生され、高いレベルでPRTSが合成される。通常はαウイルス感染は2〜3日以内の細胞溶解に関係するが、シンドビスウイルス(SIN)の変異体を有するハムスターの正常な腎細胞(BHK−21)の持続的な感染を確立する能力は、αウイルスの溶解性の複製が遺伝子治療に適用できるように好適に変更することが可能であることを示唆している(Dryga, S.A. 他. (1997) Virology 228 :74−83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にPRTSを導入することできる。ある集団における細胞のサブセットの特定の形質導入には、形質導入する前に細胞のソーティングを必要とする場合がある。αウイルスの感染性cDNAクローンの操作、αウイルスcDNA及びRNAのトランスフェクション、並びにαウイルスの感染方法は当分野で周知である。
【0190】
例えば開始部位から約−10から約+10までの転写開始部位に由来するオリゴヌクレオチドを用いて、遺伝子の発現を阻害することが可能である。同様に、三重らせん塩基対合法を用いて阻害することができる。三重らせん構造は、二重らせんがポリメラーゼ、転写因子、または調節分子の結合のために十分に広がるのを阻止するため有用である。三重鎖DNAを用いる最近の治療の進歩は文献に記載されている(例えば、Gee, J.E. ら. (1994) In: Huber, B.E. 及び B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NYを参照)。相補的な配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するように設計できる。
【0191】
酵素性RNA分子であるリボザイムは、RNAの特異的切断を触媒するために用いることができる。リボザイム作用の機構には、相補的な標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションが含まれ、ヌクレオチド鎖切断が続く。例えば、PRTSをコードする配列のヌクレオチド鎖切断を、特異的且つ効果的に触媒する組換え型のハンマーヘッド型リボザイム分子が含まれる。
【0192】
任意の潜在的RNA標的内の特異的なリボザイム切断部位が、後続の配列GUA、GUU、及びGUCを含むリボザイム切断部位に対して、標的分子をスキャニングすることによって初めに同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15個から20個のリボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチドの機能を不全にする二次的な構造の特徴について評価することが可能である。候補標的の適合性も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの容易性をテストすることによって評価することが可能である。
【0193】
本発明の相補的なリボ核酸分子及びリボザイムは、当分野で周知の方法を用いて、核酸分子の合成のために作製することができる。これらの方法には、固相ホスホラミダイト化合物などのオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法が含まれる。別法では、RNA分子がin vitro及びin vivoでPRTSをコードするDNA配列の転写によって生成され得る、このようなDNA配列はT7またはSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモータを用いて、種々のベクターの中に組み入れることが可能である。別法では、相補的なRNAを構成的または誘導的に合成するこれらのcDNA作製物は、細胞株、細胞、または組織の中に導入することができる。
【0194】
RNA分子を修飾することによって、細胞内の安定性を高め、半減期を長くすることができる。可能な修飾には、分子の5’及び/または3’端部でのフランキング配列の追加、または分子のバックボーン内のホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオネートまたは2’Oメチルを用いる修飾が含まれるが、これらに限定されるものではない。PNAの生成に固有のこの概念は、内在性のエンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンのアセチル−、メチル−、チオ−、及び同様の修飾形態だけでなく、イノシン、キュエオシン(queosine)、及びワイブトシン(wybutosine)などの従来のものでない塩基を含めることによって、これらの分子の全体に拡大することができる。
【0195】
本発明の更なる実施例は、PRTSをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。特定のポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物には、限定するものではないが、特定のポリヌクレオチド配列と相互作用可能な非高分子化学物質、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子やその他のポリペプチド転写調節因子が含まれる。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビター或いはエンハンサーとして作用し、ポリヌクレオチドの発現を変化させ得る。従って、PRTSの発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、PRTSをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、PRTSの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、PRTSをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0196】
特定のポリヌクレオチドの発現の変化の有効性を調べるために、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングすることができる。試験化合物は、有効な化合物の化学修飾を含む当分野で周知の任意の方法で得ることができる。このような方法は、ポリヌクレオチドの発現を変化させる場合、一般に市販されている或いは専売の天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づいて化合物を合理的にデザインする場合、更に組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効である。PRTSをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、少なくとも1つの試験化合物に曝露して得る。サンプルには、例えば無傷細胞、透過化処理した細胞、in vitro細胞遊離系または再構成生化学系が含まれ得る。PRTSをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で周知の任意の方法でアッセイする。通常、PRTSをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーションの収量を定量し、その値が1或いは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較における基準となり得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現の変化が検出される場合は、ポリヌクレオチドの発現の変化に試験化合物が有効であることを示している。特定のポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物を調べるために、例えばSchizosaccharomyces pombe遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞株(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8−13)を用いてスクリーニングする。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性を調べるための、各オリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、及び修飾オリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリのスクリーニングを含む(Bruice, T.W. 他 (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0197】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用でき、in vivo、in vitro、及びex vivoでの使用に等しく適している。ex vivoでの治療の場合、患者から採取された肝細胞の中にベクターを導入して、自家移植で同じ患者に戻すためにクローニング増殖される。トランスフェクション、リボソーム注入またはポリカチオンアミノポリマーによる運搬は、当分野で周知の方法を用いて実行することができる(例えば、Goldman, C.K. 他. (1997) Nature Biotechnology 15:462−66:を参照)。
【0198】
上記したいかなる治療方法も、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ及びサルなどの哺乳動物を含む、治療が必要な全ての被験者に適用できる。
【0199】
本発明の別の実施例は、上記した全ての治療効果のために、医学上認められる担体と共に医薬品或いは無菌組成物の投与に関連する。このような組成物は、PRTS、PRTSの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはPRTSのインヒビターなどからなる。この組成物は、単体で、或いは安定剤などの1種類以上の別の薬剤と共に、無菌の生体適合性医薬品担体に投与することができる。このような医薬品担体には、生理食塩水、緩衝食塩水、ブドウ糖、及び水などが含まれるがこれらに限定されるものではない。この組成物は、単独或いは薬物またはホルモンなどの別の薬剤と共に投与することができる。
【0200】
本発明に用いられる組成物は、様々な経路を用いて投与するが可能である。この経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、または直腸が含まれるがこれらに限定されるものではない。
【0201】
肺投与用の組成物は、液状または乾燥粉末状に調製することができる。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば、従来の低分子量有機薬剤)の場合には、速効製剤のエアロゾル輸送が当分野で周知である。高分子(例えばより大きなペプチドやタンパク質)の場合には、肺の肺胞領域を介する肺輸送の技術が近年向上したため、インスリン等の薬剤を実際に血中に輸送することが可能となった(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺輸送は、針注射を用いないで投与できるという点で優れており、潜在的に有毒な浸透エンハンサーが必要でなくなる。
【0202】
本発明に用いる好適な組成物には、目的を達成するため、効果的な量の活性処方成分を含む組成物が含まれる。当業者は、十分に自身の能力で効果的な服用量を決めることができる。
【0203】
PRTSまたはその断片を含む高分子を直接細胞内に輸送するべく、特殊な形態に組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内輸送を促進し得る。別法では、PRTSまたはその断片をHIV Tat−1タンパク質の陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして作製された融合タンパク質は、マウスモデル系の脳を含む全ての組織の細胞に形質導入されることが確認されている(Schwarze, S.R. 他 (1999) Science 285:1569−1572)。
【0204】
どのような組成物であっても、治療に効果的な薬用量は、初めは、例えば腫瘍細胞の腫瘍細胞アッセイで、或いは動物モデルのどちらかで推定することができる。通常、動物モデルには、マウス、ウサギ、イヌ、サル、またはブタなどが用いられる。動物モデルはまた、好適な濃縮範囲及び投与の経路を決めるのに用いることができる。このような治療をもとに、ヒトへの有益な薬用量及び投与経路を決定することができる。
【0205】
医学的に効果的な薬用量は、症状や容態を回復させる、たとえばPRTSまたはその断片、PRTSの抗体、PRTSのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなどの活性処方成分の量に関連する。薬用有効度及び毒性は、たとえば、ED50(服用に対して集団の50%に医薬的効果がある用量)またはLD50(服用に対して集団の50%に致命的である用量)統計を計算するなど、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって決定することができる。毒性効果と治療効果との薬用量比は治療指数であり、LD50/ED50と示すことができる。高い治療指数を示す組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータが、ヒトへの適用のために、薬用量の範囲を調剤するのに用いられる。このような組成物が含まれる薬用量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含む血中濃度の範囲であることが望ましい。薬用量は、用いられる投与形態及び患者の感受性、投与の経路によって、この範囲内で様々である。
【0206】
正確な薬用量は、治療が必要な患者に関する要素を考慮して、実務者によって決められるであろう。薬用量及び投与は、効果的なレベルの活性成分を与えるため或いは所望の効果を維持するために調節される。薬用量の要素として考慮されるものには、疾患の重症度、患者の一般的な健康状態、年齢、体重、及び患者の性別、投与の時間及び頻度、併用する薬剤、反応感受性、及び治療に対する応答が含まれる。作用期間が長い組成物は、三日か四日に一度、一週間に一度、二週間に一度、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって左右され、投与され得る。
【0207】
通常の薬用量は投与の経路によって異なるが、約0.1〜100,000μgまでの最大約1グラムまでである。特定の薬用量及び運搬の方法に関するガイダンスは文献に記載されており、一般に当分野の実務者はそれを利用することができる。当業者は、タンパク質またはインヒビターとは異なったヌクレオチドの製剤を利用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの運搬は、特定の細胞、状態、位置などに対して特異的であろう。
【0208】
(診断)
別の実施例では、PRTSに特異的に結合する抗体が、PRTSの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはPRTSやPRTSのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断に有用な抗体は、治療のところで記載した方法と同じ方法で製剤される。PRTSの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織から採取されたものからPRTSを検出する方法が含まれる。これらの抗体は、修飾をして或いはしないで使用され、レポーター分子の共有結合性或いは非共有結合性の接着によって標識化され得る。当分野で周知の種々のレポーター分子が用いられるが、その内の幾つかは上記した。
【0209】
PRTSを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのPRTSの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なPRTSの発現の値は、複合体の形成に適した条件の下、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とPRTSに対する抗体とを結合させることによって決定する。標準的な複合体形成の量は、測光法(photometric)などの種々の方法で定量され得る。被験者のPRTSの発現の量、制御及び疾患、生検組織からのサンプルが基準値と比較される。基準値と被験者との間の偏差が、診断の指標となる。
【0210】
本発明の別の実施例によれば、PRTSをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いられるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的なRNA及びDNA分子、及びPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、疾患と相関し得るPRTSを発現する生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、PRTSの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のPRTS値の変化を監視する。
【0211】
一実施形態では、PRTSまたは近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を検出可能なPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによって、PRTSをコードする核酸配列を同定することが可能である。例えば5’調節領域である高度に特異的な領域か、例えば保存されたモチーフであるやや特異性の低い領域から作られているかのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントは、プローブがPRTSをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いはアレルや関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかによって決まるであろう。
【0212】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、PRTSをコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:22−42の配列、或いはPRTS遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0213】
PRTSをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、PRTS及びPRTS誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。このようなベクターは市販されており、当業者には周知であり、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられる。ハイブリダイゼーションプローブは、例えば32P或いは35Sなどの放射性核種、或いはアビジン/ビオチン(biotin)結合系によってプローブに結合されたアルカリホスファターゼなどの酵素標識等の種々のレポーターの集団によって標識され得る。
【0214】
PRTSをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、PRTSの発現に関連する疾患を診断することが可能である。限定するものではないが、このような疾患には胃腸疾患、心血管疾患、自己免疫/炎症性の疾患、細胞増殖異常、発生障害、上皮の疾患、神経の疾患、および生殖障害が含まれ、胃腸疾患の中には、嚥下障害、消化性食道炎、食道痙攣、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化障害、胃炎、胃癌、食欲不振、悪心、嘔吐、胃不全麻痺、洞または幽門の浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、イレウス、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁うっ滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、硬変症、肝臓の受動性うっ血、ヘパトーム、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリー‐ヴァイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性腸症候群、短小腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、及び後天性免疫不全症候群(AIDS)腸症、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝炎、肝脂肪症、血色素症、ウィルソン病、α−1−アンチトリプシン欠損症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝梗塞、門脈循環閉塞及び血栓、小葉中心壊死、肝臓紫斑病、肝静脈血栓、肝静脈閉塞症、子癇前症、子癇、妊娠性急性肝脂肪、妊娠性肝臓内胆汁うっ滞と、結節性再生及び腺腫、癌腫を含む肝癌とが含まれ、心血管疾患の中には、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術(balloon angioplasty)、血管置換術(vascular replacement)、大動脈冠動脈バイパス術移植手術(coronary artry bypass graft suegery)、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、先天性肺異常(congenital lung anomalies)、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束性肺疾患(restrictive pulmonary disease)、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患(diffuse interstitial diseases)、塵肺症、サルコイド症、特発性肺繊維症(idiopathic pulmonary fibrosis)、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎(hypersensivitity pneumonitis)、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans−organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群(diffuse pulmonary hemorrhage syndromes)、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病(pulmonary involvement in collagen−vascular disorders)、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水(inflammatory and noninflammatory pleural effusions)、気胸症、胸膜腫瘍、薬物による肺疾患(drug−induced lung disease)、放射線による肺疾患(radiation−induced lung desease)及び肺移植の合併症などが含まれ、自己免疫/炎症性の疾患の中には、炎症及び日光性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)及び副腎機能不全、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、アテローム斑破裂、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、関節軟骨の分解、骨粗しょう症、膵炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、発生障害も含まれ、その中には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、骨吸収、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith− Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham’s chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、加齢性黄斑変性症、感覚神経性聴力損失が含まれ、上皮の疾患の中には、汗疱状湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、角化上皮症、黒皮症、白斑、日光性角化症、基底細胞癌、扁平上皮癌、脂漏性角化症、毛包炎、単純ヘルぺス、帯状疱疹、水痘、カンジダ症、皮膚糸状菌症、疥癬、昆虫刺症、老年性血管腫、ケロイド、皮膚線維腫、尖端線維性軟肬、じんま疹、一過性棘融解性皮膚症、乾燥症、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、手湿疹、貨幣状湿疹、ビダール苔癬、asteatotic eczema、うっ血性皮膚炎、うっ血性潰瘍、脂漏性皮膚炎、乾癬、扁平苔癬、バラ色粃糖疹、膿痂疹、膿瘡、皮膚糸状菌症、なまず、疣贅、尋常性座瘡、赤鼻、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、妊娠性疱疹、疱疹状皮膚炎、線形性IgA疾患、後天性表皮水疱症、皮膚筋炎、紅斑性狼瘡、強皮症および限局性強皮症、紅皮症、脱毛症、定形皮膚障害(figurate skin lesions)、血管拡張症、色素沈着低下、色素沈着過度、小疱疹/水疱、発疹、皮膚薬物反応、丘疹小結節皮膚障害(papulonodular skin lesions)、慢性非治癒性創傷、感光性疾患、単純表皮水泡症、表皮剥離および非表皮剥離性掌蹠角皮症、ジーメンス水疱魚鱗癬(ichthyosis bullosa of Siemens)、剥脱性魚鱗癬、手掌足底角化症、掌蹠角皮症(keratosis palmoplantarisまたはpalmoplantar keratoderma)、keratosis punctata、Meesmann’s corneal dystrophy、先天性爪肥厚症、白色海綿母斑、多発性皮脂嚢腫、表皮性母斑/表皮剥離性角化型、moniletbrix、trichothiodystrophy、慢性肝炎/特発性肝硬変、結腸直腸過形成が含まれ、神経の疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー及びクロイツフェルト‐ヤコブ病、ゲルストマン症候群、Gerstmann−Straussler−Scheinker症候群を含むプリオン病と、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神薄弱及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分性及び不安性の障害、分裂病性疾患を含む精神病と、季節性障害(SAD)と、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、及びトゥーレット病と、進行性核上麻痺、皮質基部変性(corticobasal degeneration)及び家族性の前頭側頭性健忘症とが含まれ、生殖障害の中には、プロラクチンの産生異常と、卵管病及び排卵異常、子宮内膜症、発情期異常、月経周期異常、多嚢胞卵巣症候群、卵巣過剰刺激症候群、子宮内膜癌及び卵巣癌、子宮筋腫、自己免疫異常、異所性妊娠、奇形発生を含む不妊症と、乳癌、線維嚢胞性乳腺症、乳漏症と、精子形成異常、生理学上の精子異常、精巣癌、前立腺癌、良性の前立腺過形成、前立腺炎、ペーロニー病、インポテンス、男性乳房及び女性化乳房癌とが含まれる。PRTSをコードするポリヌクレオチド配列は、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術、PCR法、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、ELISA式アッセイ、及び変異PRTSの発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用するマイクロアレイに使用することが可能である。このような質的或いは量的方法は、当分野では周知である。
【0215】
ある実施態様では、PRTSをコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。PRTSをコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件の下、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができるであろう。好適な培養期間の後、サンプルを洗浄し、シグナルを定量して基準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が、制御サンプルと較べて著しく変わっている場合は、サンプル内のPRTSをコードするヌクレオチド配列の変異レベルにより、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセイを用いて、動物実験、臨床試験、或いは個人の患者の治療を監視における、特定の治療効果を推定することが可能である。
【0216】
PRTSの発現に関連する疾患の診断の基準となるものを提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件の下、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、PRTSをコードする配列或いはその断片とを結合させることにより達成され得る。標準的なハイブリダイゼーションは、正常な被験者から得た値と周知の量の実質的に精製されたポリヌクレオチドが用いられる実験からの値とを比較することによって定量可能である。正常なサンプルから得た標準的な値を、疾患の症状を示す被験者から得た値と比較可能である。基準値と被験者の値との偏差を用いて罹患しているかどうを決定する。
【0217】
疾患の存在が確定され、治療プロトコルが開始されると、ハイブリダイゼーションアッセイを通常ベースで繰り返して、被験者における発現のレベルが正常な患者に示される値に近づき始めたかどうかを推定することが可能である。繰り返し行ったアッセイの結果を、数日から数ヶ月の期間の治療の効果を見るのに用いることができる。
【0218】
癌では、個体からの生体組織における異常な量の転写物が、疾患の発生の素因を示し、また実際に臨床的症状が出る前に疾患を検出する方法を提供することが可能である。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法或いは積極的な治療法を早くから利用して、癌の発生または進行を防ぐことが可能となる。
【0219】
PRTSをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。このようなオリゴマーは、化学的な合成、酵素を用いた生成、或いはin vitroで生成され得る。オリゴマーは、好ましくはPRTSをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはPRTSをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件の下、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェントな条件の下、近縁のDNA或いはRNA配列の検出及び/または定量のため用いることが可能である。
【0220】
或る実施態様において、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、ヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となる場合が多いヌクレオチドの置換、挿入及び欠失である。限定するものではないが、SNPの検出方法には、一本鎖立体構造多型(SSCP)及び蛍光SSCP(fSSCP)法が含まれる。SSCPでは、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。このDNAは、例えば病変或いは正常な組織、生検サンプル、体液等に由来し得る。このDNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR産物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。この差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光標識することによって、DNAシークエンシング装置などのハイスループット機器でアンプリマー(amplimer)の検出をすることが可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP:isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、共通のコンセンサス配列の構築に用いられる個々の重複するDNA断片の配列を比較することによって、多型を同定することができる。これらのコンピュータベースの方法は、DNA配列クロマトグラムの自動分析及び統計モデルを用いたシークエンシングエラーや研究室でのDNAの調整に起因する配列のばらつきを排除する。別法では、例えばハイスループットのMASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0221】
PRTSの発現を定量するために用いられ得る方法には、ヌクレオチドの放射標識或いはビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)、及び標準的な曲線に結果が加えられたものが含まれる(例えば、Melby, P.C.ら(1993) J. Immunol. Methods, 159:235−44;Duplaa, C.ら(1993) Anal. Biochem. 229−236を参照)。多数のサンプルの定量速度は、ハイスループット型のアッセイを用いることで速くなるであろう。このアッセイでは、目的のオリゴマーやポリヌクレオチドが様々な希釈液中に含まれ、分光光度法或いは非色応答によって定量が迅速である。
【0222】
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列に由来するオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおける標的として用いることができる。マイクロアレイを、上記したように多数の遺伝子の相対的な発現レベルを同時にモニタリングする転写イメージング技術に用いることができる。マイクロアレイはまた、遺伝子変異、突然変異及び多型の同定に用いることができる。この情報を用いて、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を解明し、疾患を診断し、遺伝子発現に関連する疾病の進行/後退をモニタリングし、疾患の治療における治療薬の開発や活性のモニタリングを行うことができる。特に、患者にとって最適かつ有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを作成することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づいて、患者に対して極めて効果的でありながら副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0223】
別の実施例では、PRTS、PRTSの断片、PRTSに特異的な抗体をマイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようにタンパク質間相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロファイルをモニタリング及び測定することが可能である。
【0224】
特定の実施例は、或る組織または細胞型の転写イメージを生成する本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞型により遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所定の条件下で所定の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析される(Seilliamer 他、米国特許第5,840,484号の”Comparative Gene Transcript Analysis” を参照。この特許に言及することを以って本明細書の一部とする)。従って、特定の組織または細胞型の転写物または逆転写物の全てに本発明のポリヌクレオチドまたはその相補配列をハイブリダイズすることにより、転写イメージが生成され得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその相補配列がマイクロアレイ上に複数のエレメントのサブセットを構成するハイスループット型でハイブリダイゼーションさせる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロファイルとなり得る。
【0225】
転写イメージは、組織、細胞株、生検サンプル、またはその他の生体サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。従って、転写イメージは、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、または細胞株の場合にはin vitroにおける遺伝子発現を反映する。
【0226】
本発明のポリヌクレオチドの発現プロファイルを示す転写イメージはまた、合成化合物または天然化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用され得る。全ての化合物は、作用及び毒性の機構を示唆する、頻繁に分子フィンガープリント若しくは毒性シグネチャ(signature)と称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを引き起こす(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3−159、Steiner, S. and N.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112−113:467−471、また言及することを以って本明細書の一部とする)。試験化合物が、毒性を有する既知の化合物のシグネチャと同一のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性が高い。フィンガープリンまたはシグネチャが、より多くの遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいれば、より有用かつ正確になる。理想としては、発現のゲノム全域にわたって測定し、最高品質のシグネチャを提供することである。任意の試験化合物によっても発現が変化しない遺伝子も同様に重要である。それは、これらの遺伝子の発現レベルを用いて残りの発現データを標準化することができるためである。標準化処理は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャのエレメントへの遺伝子機能を割り当てることは毒性機構の解明に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的な一致には遺伝子機能の知識は必要ではない(例えば2000年2月29日にNational Institute of Environmental Health Sciencesより発行されたPress Release 00−02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒性シグネチャを用いる毒性スクリーニングにおいて、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要でありまた望ましいことである。
【0227】
一実施例では、試験化合物の毒性は、核酸を含有する生体サンプルをその試験化合物で処理して評価する。処理した生体サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1若しくは複数のプローブでハイブリダイズさせ、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量することができる。処理した生体サンプル中の転写レベルを、非処理生体サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差が、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示唆する。
【0228】
別の実施例は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織または細胞型のプロテオームを分析することに関連する。「プロテオーム」という用語は、或る特定の組織または細胞型におけるタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームを構成する各タンパク質は、個々に更なる分析をすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロファイルは、所定の条件下で所定の時間に発現したタンパク質の数及びそれらの相対的な存在量を定量することにより分析する。従って、ある細胞のプロテオームのプロファイルは、特定の組織または細胞型のポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、このような分離は2次元ゲル電気泳動によって行う。この2次元ゲル電気泳動法では、まず、1次元の等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、次に、2次元のドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に従って分離する(前出のSteiner and Anderson)。これらのタンパク質は、通常クーマシーブルーまたはシルバーまたは蛍光染色などの染色剤を用いてゲルを染色して、分散した個別の位置にあるスポットとしてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理済みまたは未処理のいずれかの生体サンプルから得られる等位置にあるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を調べる。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的に切断した後、質量分析する標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基であるその部分的な配列を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列が得られる。
【0229】
プロテオームのプロファイルは、PRTSに特異的な抗体を用いてPRTS発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上のエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝露して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. ら. (1999) Anal. Biochern. 270:103−111、Mendoze, L.G. ら. (1999) Biotechniques 27:778−788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール反応性またはアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0230】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行して分析するべきである。或る組織における或るタンパク質では、転写物の存在量とタンパク質の存在量との相関性が低いことがあるため(Anderson, N.L. and J. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533−537)、プロテオーム毒性シグネチャは、転写イメージにはそれ程影響しないがプロテオームのプロファイルを変化させる化合物の分析において有用たり得る。更に、体液中での転写の分析は、mRNAが急速に分解するため困難である。しがたがって、このような場合にはプロテオームのプロファイル作成はより信頼でき、情報価値がある。
【0231】
別の実施例では、試験化合物の毒性は、タンパク質を含む生体サンプルをその試験化合物で処理して評価する。処理された生体サンプル中で発現したタンパク質を分離して、各タンパク質の量が定量できるようにする。各タンパク質の量を、未処理生体サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプル中のタンパク質の量の差は、処理されたサンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示唆する。個々のタンパク質は、それらのアミノ酸残基をシークエンシングし、これらの部分配列を本発明のポリペプチドと比較することで同定する。
【0232】
別の実施例では、試験化合物の毒性は、タンパク質を含む生体サンプルをその試験化合物で処理することにより評価する。生体サンプルから得たタンパク質を、本発明のポリペプチドに特異的な抗体と共にインキュベートする。その抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生体サンプル中のタンパク質の量を、未処理生体サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差が、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示唆する。
【0233】
当分野で周知の方法でマイクロアレイを準備して使用し、分析する。(例えば、Brennan, T.M. 他 (1995) 米国特許第5,474,796号;Schena, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614−10619; Baldeschweiler 他(1995) PCT出願番号WO95/251116; Shalon, D.他 (1995) PCT出願番号WO95/35505; Heller, R.A. 他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150−2155; 及び Heller, M.J. 他 (1997) 米国特許第5,605,662号を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが周知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, ed. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。また、この文献を引用することを以って本明細書の一部とする。
【0234】
本発明の別の実施例ではまた、PRTSをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コーディング配列または非コーディング配列の何れかを用いることができるが、或る例では、コーディング配列より非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー間にコーディング配列が保存されていることにより、染色体マッピング時に望ましくない交差ハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。この配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる(Harrington, J.J. ら (1997) Nat Genet. 15:345−355、Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127−134、Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149−154等を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて、例えば病状の遺伝と特定の染色体領域やまたは制限断片長多型(RFLP)の遺伝とが相関するような遺伝子連鎖地図を作成可能である(Lander, E.S. and D. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353−7357を参照)。
【0235】
in sit蛍光ハイブリダイゼーション(FISH)は、他の物理的及び遺伝子地図データと相関し得る(例えば、Heinz−Ulrich, 他による(1995) in Meyers, 前出, pp. 965−968を参照)。遺伝子地図データの例は、種々の科学誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のワールドワイドウェブのサイトで見つけることができる。物理的な染色体地図上のPRTSをコードする遺伝子の位置と特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因が、このような疾患と関連するDNA領域の決定に役立つため、更なる位置を決定するクローニングが行われる。
【0236】
染色体標本のin sitハイブリダイゼーション、及び確定した染色体マーカーを用いた結合分析などの物理的マッピング技術を用いて、遺伝子地図を拡張することもできる。マウスなどの別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置させることにより、たとえ正確なヒト染色体の位置が分かっていなくても、関連するマーカーが明らかになる場合が多い。この情報は、位置クローニング或いは別の遺伝子発見技術を用いて遺伝的疾患の研究をしている研究者にとって価値がある。疾患や症候群に関与する1つ或いは複数の遺伝子の位置が、例えば血管拡張性失調症の11q22−23などの特定の遺伝子領域に遺伝子結合によって大まかに決定されると、その領域に対するどの配列マッピングも、さらなる調査のための関連する遺伝子或いは調節遺伝子を表す(例えば、Gatti, R.A.他による(1988)Nature 336:577−580を参照)。また、目的の本発明のヌクレオチド配列を用いて、正常者、保有者、即ち感染者の間の、転位置、反転などによる染色体位置の違いを検出することもある。
【0237】
本発明の別の実施例では、PRTS、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。このようなスクリーニングに用いる断片は、溶液に遊離、固体支持物に固定、細胞の表面上に保持、或いは細胞内に存在する。PRTSと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
【0238】
薬剤スクリーニングに用いる別の方法は、目的のタンパク質に対して、好適な結合親和性を有する化合物のスクリーニング処理能力を高めるために用いられる(例えば、Geysen,他による(1984) PCT出願番号 WO84/03564を参照)。この方法では、相当な数の異なる小さな試験用化合物が、プラスチックピン或いは他の基板の上に合成される。試験用化合物は、PRTS、或いはその断片と反応してから洗浄される。次ぎに、結合されたPRTSが、当分野で周知の方法で検出される。精製されたPRTSはまた、前記した薬剤をスクリーニングする技術に用いられるプレート上で直接被覆することもできる。別法では、非中和抗体を用いて、ペプチドを捕らえ、固体支持物に固定することもできる。
【0239】
別の実施例では、PRTSと結合可能な中和抗体がPRTSと結合するため試験用化合物と特に競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では、抗体が、PRTSと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在も検出する。
【0240】
別の実施例では、発展途上の分子生物学技術にPRTSをコードするヌクレオチド配列を用いて、限定はされないが、現在知られているトリプレット暗号及び特異的な塩基対相互作用などのヌクレオチド配列の特性に依存する新しい技術を提供することができる。
【0241】
当分野の技術者であれば、更なる説明がなくても前述の説明だけで最大限に本発明を利用できるであろう。したがって、以下に記載する実施例は、例示目的であって本発明を限定するものではない。
【0242】
前述した及び以下に記載する全ての特許出願、特許、刊行物、特に米国特許出願第60/212,336号、同第60/213,995号、同第60/215,396号、同第60/216,821号、及び同第60/218,946号に言及することをもって本明細書の一部とする。
【0243】
(実施例)
1 cDNA ライブラリの作製
インサイトcDNAはLIFESEQ GOLD データベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に含まれているcDNAライブラリに由来し、表4の列5に示されている。ある組織をグアニジニウムイソチオシアネート溶液においてホモジナイズして溶解する一方、別の組織を、フェノールにおいて、或いはグアニジニウムイソチオシアネート及びフェノールの単相溶液であるTRIZOL (Life Technologies)などの変性剤の好適な混合液においてホモジナイズして溶解した。この溶解物を塩化セシウムにおいて遠心分離によって、或いはクロロホルムで抽出した。RNAは、イソプロパノール或いは酢酸ナトリウムとエタノールのどちらか、或いは別の一般的な方法でこの溶解物から沈殿させた。
【0244】
RNAの純度を高めるためにRNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理する。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)またはOLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN. Valencia CA)、OLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いてポリ(A+)RNAを単離した。別法では、POLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)などの別のRNA単離キットを用いて組織溶解物から直接単離した。
【0245】
ある場合には、Stratagene社にRNAを提供し、Stratagene社が対応するcDNAライブラリを作製した。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPT プラスミドシステム(Life Technologies)を用いて当分野で周知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成してcDNAライブラリを作製した。(例えば、Ausubel, 1997,前出,ユニット5.1−6.6を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始させた。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに結合させてから、好適な1或いは複数の制限酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリでは、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2B、SEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech)、またはアガロースゲル電気泳動法によってcDNAの大きさ(300〜1000bp)を選択した。PBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、pSPORT1プラスミド(Life Technologies)、pcDNA2.1プラスミド(Invitrogen Carlsbad CA)、PBK−CMVプラスミド(Stratagene)、pINCYプラスミド(Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto CA)、またはそれらの誘導体などの好適なプラスミドのポリリンカーの適合性制限酵素部位にcDNAを結合させた。この組換えプラスミドを、Stratagene社のXL1−Blue, XL1−BIueMRF、SOLR、またはLife Technologies社のDH5αまたはDH10B、ELECTROMAX DH10Bを含むコンピテント大腸菌細胞に導入し形質転換した。
【0246】
2 cDNA クローンの単離
上記実施例1に記載したように得たプラスミドは、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)或いは細胞溶解を利用したin vivo切除によって宿主細胞から回収した。プラスミドの精製には、MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plus、QIAWELL 8 Plus Plasmid、またはQIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、またはREAL Prep 96プラスミドキットの内の少なくとも1つを用いた。沈殿させた後、0.1 mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0247】
別法では、ハイスループットの直接結合PCR法によって宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した。(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1−14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリングステップは、1つの反応混合液で行った。サンプルを処理してから384−ウェルプレートに移して保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度を、PICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFluoroskan II蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光定量的に測定した。
【0248】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したインサイトcDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンシング反応は標準的な方法で行うか、またはHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)或いはMICROLAB 2200 (Hamilton) 液体移送装置と共にABI CATALYST 800 (PE Biosystems) サーマルサイクラー或いはPTC−200 thermal cycler (MJ Research)などのハイスループット装置を用いて行った。cDNAのシークエンシング反応は、Amersham Pharmacia Biotech社の試薬、またはABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reactionキット(PE Biosystems)などのABIシークエンシングキットに含まれる試薬を用いて行った。cDNAシークエンシングの反応物の電気泳動的による分離及び標識したポリヌクレオチドの検出は、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)、標準ABIプロトコル及び塩基対呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(PE Biosystems)、または当分野で周知のその他の配列解析システムを用いて行った。cDNA配列内の読み枠は、標準的な方法(Ausubel, 1997, 前出, unit 7.7)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長した。
【0249】
インサイトcDNAに由来する本ポリヌクレオチド配列の確認は、BLAST、動的プログラミング、およびジヌクレオチドの分布による解析(dinucleotide nearest neighbor analysis)に基づいたプログラム及びアルゴリズムを用いて、ベクター、リンカー、およびポリA配列を取り除き、更にあいまいな塩基対をマスクすることで行った。次に、インサイトcDNA配列およびそれらの翻訳を、公共のデータベースであるGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、および真核生物のデータベース、およびBLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、およびPFAMなどの隠れマルコフモデル(HMM)を基にしたタンパク質ファミリーのデータベースから選択した配列に対して問合せた(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス主構造を分析する確率的手法である。例えば、Eddy, S. R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6 : 361−365を参照)。このような問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS、およびHMMRに基づいたプログラムを用いて行った。インサイトcDNA配列を組み立てて、完全長ポリヌクレオチド配列を作製した。或いは、GenBank cDNAs、GenBank EST、ステッチ配列(stitched sequence)、ストレッチ配列(stretched sequences)、またはGenscan−推定コード配列(実施例4および5を参照)を用いて、インサイトcDNA群を完全長の配列に伸長した。配列の組み立ては、Phred、Phrap、およびConsedに基づいたプログラムを用いて行い、GeneMark、BLAST、およびFASTAに基づいたプログラムを用いて、オープンリーディングフレームを決定するべくcDAN群をスクリーニングした。完全長のポリヌクレオチド配列を翻訳して対応する完全長ポリペプチド配列を得た。別法では、本発明のポリヌクレオチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基から始まり得る。次に、完全長ポリペプチド配列をGenBankタンパク質データベース(genpept)、SwissProt、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、Prosite、およびPFAMなどの隠れマルコフモデル(HMM)に基づいたタンパク質ファミリーデータベースに対して問合せて分析した。こられの完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PRO ソフトウェア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)およびLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列のアラインメントを、アライメントした配列間のパーセント同一性も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれたCLUSTALアルゴリズムによって指定されたデフォルトパラメータを用いて作成した。
【0250】
表7は、インサイトcDNAおよび完全長配列の組み立て、および組み立てた配列の分析に利用したツール、プログラム、およびアルゴリズム、並びにそれらの説明、引用文献、閾値パラメータを簡単に示す。表7の列1は用いたツール、プログラム、およびアルゴリズム、列2はそれらの簡単な説明、列3は引用することで本明細書の一部とした引用文献、列4の記載されている部分は2つの配列の一致の程度を評価するために用いたスコア、確率値、およびその他のパラメータを示す(スコアが高くなれば高くなるほど即ち確率値が低ければ低いほど、配列間の相同性が高くなる)。
【0251】
完全長のポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の組み立て及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:22−42のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列4に示した。
【0252】
4 ゲノム DNA からのコード配列の同定および編集
推定上のプロテアーゼは、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物に由来するゲノムDNA配列を分析するための汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. および S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268 : 78−94、Burge, C. および S. Karlin (1998) Curr. Opin. Struct. Biol. 8 : 346−354を参照)。このプログラムは推定エキソンを連結して、メチオニンから停止コドンまで伸長した組み立てcDNA配列を構築する。Genscanにより得られる配列は、FASTAデータベースのポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列になる。Genscanによって一回で解析できる配列の最大長さは30kbに設定されている。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列がプロテアーゼをコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいてプロテアーゼについて問合せて分析した。潜在的なプロテアーゼが、プロテアーゼとしてアノテーションが付けられたインサイトcDNA配列に対する相同性を基に同定された。次に、これらの選択されたGenscan推定配列を、BLAST解析を用いてgeneptおよびgbpri公共データベースの配列と比較した。必要に応じて、Genscan推定cDNA配列を、geneptにおいてBLASTで最もヒットした配列と比較して、Genscan推定配列における余分なエキソンや省いてしまったエキソンなどのエラーを修正し、編集した。BLAST解析を用いてGenscan推定cDNA配列を含むインサイトcDNAまたは公共のcDNAを見つけ出すことにより、転写の証拠が得られる。インサイトcDNAがGenscan推定cDNA配列を含む場合、この情報を用いてGenscan推定配列を修正或いは確認できる。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に説明した組み立て方法でGenscan推定コード配列とインサイトcDNAおよび/または公共のcDNA配列を組み立てて作製した。別法では、完全長ポリヌクレオチド配列は、その全てが編集した或いは未編集のGenscan推定コード配列から作製した。
【0253】
5 cDNA 配列データを用いるゲノム配列データの組み立て
ステッチ配列( Stiched Sequence )
部分cDNA配列を、実施例4に記載したGenscan遺伝子同定プログラムによって推定されたエキソンで伸長した。実施例3に記載されたように組み立てられた部分cDNAをゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNAと1或いは複数のゲノム配列から推定されるGenscanエキソンとを含む複数のクラスターに分けた。各クラスターをグラフ理論および動的計画法に基づいたアルゴリズムを用いて分析し、cDNAおよびゲノム情報を統合し、完全長の配列を作製するために、その後に確認、編集、または伸長して潜在的なスプライスバリアントを生成した。クラスターの2つ以上の配列に配列区間の全長が存在する配列区間を同定し、このように同定した区間を推移により等しいと考えた。例えば、或る区間がcDNAおよび2つのゲノム配列に存在する場合、これら3つ全ての区間を等しいと考えた。この方法によって、関連しないが連続するゲノム配列をcDNA配列によって繋ぎ1つにした。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製した。1種類の親配列に沿って連結される区間と区間との繋ぎ合わせ(cDNAとcDNA、またはゲノム配列とゲノム配列)は、親配列の種類が異なる連結(cDNAとゲノム配列)よりも優先された。得られたステッチ配列を翻訳し、BLAST解析でgenpeptおよびgbpri公共データベースにおける配列と比較した。Genscanによって推定された不適当なエキソンを、geneptにおいてBLASTで最もヒットした配列と比較して修正した。必要に応じてこのような配列を更なるcNDA配列若しくはゲノムDNA検査により伸長した。
【0254】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列をBLAST解析に基づいたアルゴリズムで完全長に伸長した。まず、実施例3に記載したように組み立てた部分cDNAを、BLASTプログラムを用いてGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、および真核生物のデータベースなどの公共のデータベースに対して問い合わせた。次に、GenBankの相同性の最も高いタンパク質を、実施例4に記載したインサイトcDNA或いはGenScanエキソン推定配列の何れかと比較した。得られた複数の高スコアのセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を作製し、GenBnakの相同タンパク質上に翻訳した配列をマッピングした。元のGenBnakの相同タンパク質に関連して、キメラタンパク質に挿入や欠失が起こり得る。公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索するために、GenBnakの相同タンパク質およびキメラタンパク質の両方をプローブとして用いた。このようにして、部分DNA配列を相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。得られたストレッチ配列を完全な遺伝子を含んでいるかについて検査した。
【0255】
6 PRTS をコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:22−42を組み立てるために用いた配列を、BLAST及びSmith−Watermanアルゴリズムを用いて、インサイトLIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:22−42と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrap(表7)などの構築アルゴリズムを使用して、連続及び重複した配列のクラスターに組み入れた。Stanford Human Genonse Center (SHGC)、Whitehead Institute for Genome Research (WIGR)及びGenethonなどの公共の情報源から入手できる放射線ハイブリッド(radiation hybrid)及び遺伝子マッピングのデータを用いて、クラスター化した配列がすでにマッピングされているかを調べる。クラスターにマッピングされた配列が含まれている場合は、そのクラスターの全ての配列(特定のSEQ ID NOを含む)をそのマッピング位置に割り当てた。
【0256】
遺伝子地図の位置は、ヒト染色体の範囲または区間によって表される。センチモルガンで示したマッピング位置の範囲は、染色体の短腕(p)の末端から測定したセンチモルガン(cM)は、同一染色体上の遺伝子間の組換え率に基づいた距離を表す単位である。平均すると、1cMはヒトの染色体の1メガベースに概ね等しいいが、組換え率の高い部分と低い部分があるため、大きく変化し得る)。距離cMは、配列がそれぞれのクラスターに含まれている放射線ハイブリッドマーカーの境界を検出できるGenethonによってマッピングされた遺伝子マーカーに基づいている。NCBI「GeneMap99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap)などの公衆が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、上記した区間が既に同定されている疾患遺伝子マップ内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0257】
このようにして、SEQ ID NO:25が、第5染色体の69.60 cM〜76.50 cMの範囲内にマッピングされた。SEQ ID NO:28が、第16染色体の81.80 cM〜84.40 cMの範囲内にマッピングされた。
【0258】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験用技術であり、特定の細胞種或いは組織からのRNAが結合されている膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを伴う(例えば、Sambrook,前出, 7章; 及び Ausubel. F.M. 他、前出, 4章及び16章を参照)。
【0259】
BLASTに用いる類似のコンピュータ技術を用いて、GenBank或いはLIFESEQ(Incyte Pharmaceuticals)のようなcDNAデータベース内の同一或いは関連する分子を検索する。この分析は多くの膜系ハイブリダイゼーションより非常に速度が速い。さらにコンピュータ検索の感度を変更して、任意の特定の一致が、厳密な一致或いは相同的一致の何れかとして分類されるかを確定することができる。検索の基準は、
【0260】
【数1】
として定義される積スコアである。積スコアは、0〜100の標準化された値であり、以下のように求める。BLASTスコアにヌクレオチド配列の一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除す。高スコアのセグメントの対(HSP)において一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不適性塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより離隔される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、BLASTアラインメントの断片的重複と質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合にのみ得られる。積スコア70は、100%の同一性で重畳が70%であるか、或いは88%の同一性で重畳が100%であるかの何れかの場合である。積スコア50は、100%の同一性で重畳が50%であるか、或いは79%の同一性で重畳が100%であるかの何れかの場合である。
【0261】
或いは、PRTSをコードするポリヌクレオチド配列は、由来する組織に対して分析する。例えば、ある完全長の配列は、少なくとも部分的にインサイトcDNA配列をオーバーラップさせて組み立てられる(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、心血管系、結合組織、消化系、胚構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液および免疫系、肺、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、皮膚、顎口腔系、分類不能/混合、または尿管などの1つの生物/組織のカテゴリーに分類される。各カテゴリーにおけるライブラリの数をカウントし、その合計数を全カテゴリーのライブラリ数で除す。同様に、各ヒト組織は、癌、細胞系、発生、炎症、神経、外傷、心血管、プール(pooled)などの1つの疾患/症状のカテゴリーに分類され、各カテゴリーにおけるライブラリの数をカウントし、その合計数を全カテゴリーのライブラリ数で除す。得られるパーセンテージは、PRTSをコードするcDNAの疾患特異的な発現を反映する。cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0262】
8 PRTS をコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列は、完全長分子の好適な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてその完全長分子の好適な断片を伸長して作製した。一方のプライマーは既知の断片の5’の伸長を開始するために合成し、他方のプライマーは既知の断片の3’の伸長を開始するために合成した。開始プライマーは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは他の適切なプログラムを用いて、約22個から約30個のヌクレオチドの長さで約50%以上のGC含量を有し、かつ約68〜72℃の温度で標的配列にアニールするように設計した。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体が生じないようにヌクレオチドを伸長した。
【0263】
選択されたヒトcDNAライブラリを用いてこの配列を伸長した。2段階以上の伸長が必要な場合、若しくは望ましい場合は、追加或いはネスト化プライマーの組を設計する。
【0264】
当分野で既知の方法を利用したPCR法で高い忠実度で増幅した。PCRはPTC−200 thermal cycler (MJ Research, Inc.)用いて96ウェルブロックプレートで行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、Mg2 +と(NH4)2SO4とβ−メルカプトエタノールを含むバッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保管
別法では、プライマーの組、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 57℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
【0265】
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25% (v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Coming Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。このプレートをFluoroskan II (Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンして、サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量化する。反応混合物の5〜10μlのアリコットを1%のアガロースミニゲル上での電気泳動によって解析し、何れの反応物が配列を伸長することに成功したかを決定する。
【0266】
伸長したヌクレオチドを脱塩及び濃縮してから384ウェルプレートに移し、CviJIコレラウィルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)で消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結する前に音波処理またはせん断を行った。ショットガンシークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上に分離して断片を切断し、寒天をAgar ACE (Promega)で消化した。T4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いて伸長したクローンをpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で制限部位の延び出しを処理してコンピテント大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
【0267】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 72℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を29回繰り返す
ステップ6 72℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNA回収率の悪いサンプルは、上記した条件で再び増幅した。サンプルを20%のジメチルサルホサイド(dimethysulphoxide)(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC DIRECTキット(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reactionキット(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0268】
同様に上述の手順で、完全長のポリヌクレオチド配列を検査したり、或いは完全長のポリヌクレオチド配列を利用して、この伸長のために設計したオリゴヌクレオチドと好適なゲノムライブラリを用いて5′調節配列を得た。
【0269】
9 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用法
SEQ ID NO:22−42から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記すが、より大きなcDNAフラグメントの場合でも基本的に同じ手順を用いる。オリゴヌクレオチドを、OLIGO4.06ソフトウェア(National Bioscience)のような最新式のソフトウェアを用いてデザインし、50pmolの各オリゴマーと、250μCiの[γ‐32P]アデノシン三リン酸(Amersham, Chicago, IL)及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN、Boston MA)とを組み合わせて用いることにより標識する。標識されたオリゴヌクレオチドを、SEPHADEX G−25超精細排除デキストランビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて実質的に精製する。毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを、次のエンドヌクレアーゼ、Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1或いはPvu II(DuPont NEN)の1つを用いて切断したヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において用いる。
【0270】
各切断物からのDNAを、0.7%アガロースゲル上で分画して、ナイロン製メンブラン(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に転写する。ハイブリダイゼーションは40℃で16時間かけて行う。非特異的シグナルを取り除くため、例えば、最大0.1xクエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムの条件の下、ブロットを順次室温にて洗浄する。ハイブリダイゼーションパターンをオートラジオグラフィー或いは別のイメージ化手段で視覚化して比較する。
【0271】
10 マイクロアレイ
マイクロアレイ上のアレイエレメントの連結または合成は、フォトリソグラフィ、ピエゾプリント(インクジェットプリンター、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一な非多孔性の固体とするべきである(Schena (1999).前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。別法では、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱や紫外線、または化学的或いは機械的な結合手段で基板の表面にエレメントを配置して結合させることができる。通常のアレイは利用可能な方法や機械を用いて作製でき、任意の適正な数のエレメントを含めることができる(Schena, M. 他 (1995) Science 270:467−470、Shalon. D. 他 (1996) Genome Res. 6:639−645、Marshall, A. and J. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27−31.を参照)。
【0272】
完全長cDNA、発現遺伝子配列断片(EST)、或いはそれらの断片やオリゴマーが、マイクロアレイのエレメントとなり得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片やオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)などの当分野で周知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。このアレイエレメントを、生体サンプル中のポリヌクレオチドとハイブリダイズさせる。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識またはその他の分子タグに結合する。ハイブリダイゼーションの後、生体サンプルからハイブリダイズしなかったヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントにおけるハイブリダイゼーションを検出する。別法では、レーザー脱離及び質量スペクトロメトリーを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上のエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの相補性の程度及び相対的存在量は、算定することができる。一実施例におけるマイクロアレイの調整及び使用について、以下に詳述する。
【0273】
組織または細胞サンプルの調製
グアニジウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルは、MMLV逆転写酵素、0.05 pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第1鎖緩衝液、0.03単位/μlのRNアーゼインヒビター、500μM dATP、500μM dGTP、500μM dTTP、40μM dCTP、40μM dCTP−Cy3(BDS)またはdCTP−Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。この逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いて、200 ngのポリ(A)+RNAを含む25 ml容量で行う。特異的なコントロールポリ(A)+RNAは、in vitro転写により非コーディング酵母ゲノムDNAから合成する。370℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(一方はCy3標識、他方はCy5標識)は、2.5mlの0.5M 水酸化ナトリウムで処理し、850℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを変性する。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。結合後、2つの反応サンプルを、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール沈殿させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0274】
マイクロアレイの準備
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNA挿入断片を含むベクターを含有する細菌性細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNA挿入断片に隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅されたアレイエレメントは、SEPHACRYL−400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製する。
【0275】
精製したアレイエレメントを、ポリマーコートされたスライドガラス上に固定する。顕微鏡スライドガラス(Corning)は、処理中及び処理後に大量の蒸留水での洗浄と、0.1%のSDS及びアセトン中で超音波による洗浄を行う。スライドガラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で広範囲にわたって洗浄し、95%エタノール中の0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)でコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃の天火で硬化させる。
【0276】
米国特許第5,807,522号に記載されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。この特許に引用することを以って本明細書の一部とする。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。次にこの装置が、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを分注する。
【0277】
マイクロアレイには、STRATALINKER UVクロスリンカー(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1回洗浄し、蒸留水で3回洗浄する。非特異的な結合部位は、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)における0.2%カゼイン中で60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートし、その後上述したように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することによってブロックする。
【0278】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合液を、65℃で5分間加熱し、マイクロアレイ表面上に一定量分注してから1.8cm2 のカバーガラスで覆う。このアレイを、顕微鏡スライドより僅かに大きいキャビティを有する防水チェンバーに移す。チャンバーの角に140μlの5×SSCを加えて、チャンバー内を湿度100%に保持する。このアレイを含むチャンバーを、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間それぞれ3回洗浄し、その後乾燥させる。
【0279】
検出
レポーター標識されたハイブリダイゼーション複合体は、Cy3を励起するための488nm、及びCy3を励起するための632nmのスペクトル線を生成し得るInnova 70混合ガス10 Wレーザー(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。20倍の顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いて、アレイ上に励起レーザー光を集中させる。このアレイを含むスライドを顕微鏡のコンピュータ制御X−Yステージに置き、対物レンズを通してラスタスキャンする。本実施例で用いた1.8cm×1.8cmのアレイは、20μmの解像度でスキャンする。
【0280】
2つの異なるスキャンにおいて、混合ガスマルチラインレーザーは2つの蛍光体を連続的に励起する。放射された光は、波長に基づいて2つの蛍光体に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に分割される。アレイと光電子増倍管との間に配設された好適なフィルタを用いて信号をフィルタリングする。用いる蛍光体の最大発光は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光体からのスペクトルを同時に記録できるが、レーザー源に好適なフィルタを用いて、蛍光体1つにつき1回スキャンし、各アレイを通常2回スキャンする。
【0281】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNAコントロール種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列を含め、その位置におけるシグナルの強度がハイブリダイズする種の重量比1:100,000に相関するようにする。異なる試料(例えば検査細胞及びコントロール細胞を代表する)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光体で標識し、他と異なって発現する遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズさせる場合には、較正は2つの蛍光体を有する較正するcDNAのサンプルを標識して、ハイブリダイゼーション混合液に各々等量を加えて行う。
【0282】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI−835Hアナログ−ディジタル(AID)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、リニア20色変換を用いてシグナル強度が青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲にマッピングされるイメージとして表示される。データはまた、定量的に分析される。2つの異なる蛍光体を同時に励起して測定する場合には、各蛍光体の発光スペクトルを用いて、先ずデータは蛍光体間の光学的漏話(重複発光スペクトルに起因する)に対して補正される。
【0283】
グリッドを蛍光シグナルイメージ上に重畳して、各スポットからのシグナルがグリッドの各エレメントに中央に位置するようにする。各エレメント内の蛍光シグナルを統合し、シグナルの平均強度に対応する数値を得る。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0284】
11 相補的ポリヌクレオチド
PRTSをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のPRTSの発現を低下させるため即ち阻害するために用いられる。約15〜約30個の塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、より小さな或いはより大きな配列の断片の場合でも本質的に同じ方法を用いることができる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びPRTSのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5′配列から相補的なオリゴヌクレオチドを設計し、これを用いてプロモーターがコーディング配列に結合するのを阻害する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがPRTSをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0285】
12 PRTS の発現
PRTSの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でPRTSが発現するために、抗生物質耐性及びcDNAの転写レベルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターには、lacオペレーター調節エレメントに関連するT5またはT7バクテリオファージプロモーター及びtrp−lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)などの好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとPRTSを発現する。真核細胞でのPRTSの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多面性ウイルス(AcMNPV)を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、PRTSをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強いポリヘドリンプロモータによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda (Sf9)昆虫細胞に感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる。(例えば、Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224−3227; Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937−1945.を参照)。
【0286】
殆どの発現系では、PRTSが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、またはFLAGや6−Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製が素早く1回で行うことができる。Schistosoma japonicumからの26キロダルトンの酵素GSTによって、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で固定されたグルタチオンで融合タンパク質の精製が可能となる(Amersham Pharmacia Biotech)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でPRTSからタンパク分解的に切断できる。アミノ酸8個のペプチドであるFLAGで、市販のモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性の精製が可能となる。6個の連続するヒスチジン残基のストレッチである6−Hisによって、金属キレート樹脂(QIAGEN)で精製が可能となる。タンパク質の発現及び精製の方法は、Ausubel (1995,前出, ch 10, 16)に記載されている。これらの方法で精製したPRTSを直接用いて以下の実施例16、17、18、及び19のアッセイを行うことができる。
【0287】
13 機能のアッセイ
PRTSの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのPRTSをコードする配列の発現によって評価する。cDNAを、cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。このようなベクターには、pCMV SPORTTM (Life Technologies.)及びpCR 3.1 (Invitrogen, Carlsbad, CA)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを含んでいる。5〜10μgの組換えベクターを、例えば内皮由来か造血由来のヒト細胞株にリポソーム製剤或いは電気穿孔法によって一時的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入された細胞と形質移入されていない細胞とを区別できる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。このような標識タンパク質には、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、及びCD64またはCD64−GFP融合タンパク質が含まれる。レーザー光学に基づいた技術を利用した自動流動細胞計測法(FCM)を用いて、GFPまたはCD64−GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。また、FCMで、先行した或いは同時の細胞死の現象を診断する蛍光分子の取り込みを検出して計量する。これらの現象には、プロピジウムヨウ化物でのDNAの染色によって計測される核DNA内容物の変化と、ブロモデオキシウリジンの取り込み量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節と、特異的な抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内のタンパンク質の発現の変化と、蛍光複合アネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とが含まれる。流動細胞計測法は、Ormerod, M. G.による (1994) Flow Cytometry Oxford, New York, NY.に記載されている。
【0288】
遺伝子発現におけるPRTSの影響は、PRTSをコードする配列とCD64またはCD64−GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64−GFPは形質転換された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された領域と結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。PRTS及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0289】
14 PRTS に特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 1816−3088−495を参照)または他の精製技術で実質的に精製されたPRTSを用いて、標準的なプロトコルでウサギを免疫化して抗体を作り出す。
【0290】
別法では、PRTSアミノ酸配列をLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて解析して免疫原性の高い領域を決定し、対応するオリゴペプチドを合成してこれを用いて当業者に周知の方法で抗体を生産する。C末端付近の、或いは隣接する親水性領域内のエピトープなどの適切なエピトープの選択については、当分野で周知である(例えば、前出のAusubel, 1995,11章を参照)。
【0291】
通常、約15残基の長さのオリゴペプチドを、Applied BiosystemsのABI 431Aペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)を用いてfmoc法のケミストリにより合成し、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によりKLH(Sigma−Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(例えば、前出のAusubel, 1995を参照)。フロイントの完全アジュバントにおいてオリゴペプチド−KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗PRTS活性を検査するには、ペプチドまたはPRTSを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0292】
15 特異的抗体を用いる天然 PRTS の精製
天然PRTS或いは組換えPRTSを、PRTSに特異的な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr−活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗PRTS抗体とを共有結合させることにより形成する。結合の後、そのレジンを製造者の使用説明書に従ってブロッキング処理し洗浄する。
【0293】
PRTSを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、PRTSを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とPRTSとの結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファー、或いは高濃度の尿素またはチオシアン酸塩イオンのようなカオトロピックイオンで)溶出させ、PRTSを回収する。
【0294】
16 PRTS と相互作用する分子の同定
PRTSまたは生物学的に活性なその断片を、125I Bolton−Hunter試薬(例えば、Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529を参照)で標識する。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したPRTSと共にインキュベートし、洗浄して、標識したPRTS複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なPRTS濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したPRTSの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0295】
別法では、PRTSと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245−246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two−hybrid system)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0296】
PRTSはまた、ハイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2つの大きなライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0297】
17 PRTS 活性の実証
プロテアーゼ活性は、様々な色素分子と結合した適切な合成ペプチド基質の加水分解によって測定する。この測定では、加水分解の程度が、遊離した発色団の分光光度法(または蛍光分析)による吸収により定量される(Beynon, R. J.及びJ. S. Bond (1994) Proteolytic Enzymes : A Practical Approach, Oxford University Press, New York NY, pp. 25−55)。ペプチド基質は、エンドペプチダーゼ(セリン、システイン、アスパラギン酸プロテアーゼ、若しくはメタロプロテアーゼ)、アミノペプチダーゼ(ロイシンアミノペプチダーゼ)、若しくはカルボキシペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼA及びB、プロコラーゲンC−プロテイナーゼ)としてプロテアーゼ活性のカテゴリーに従ってデザインされる。一般的に用いられるクロモーゲンは、2−ナフチルアミン、4−ニトロアニリン、及びフリルアクリル酸である。例えば、アルギニン‐β‐ナフチルアミンをSEQ ID NO:3の基質として用いることができ(Fukasawa, K. M. ら (1996) J. Biol. Chem. 271: 30731−30735)、また、4−phenylazobenzyloxycarbonyl−Pro−Leu−Gly−Pro−D−ArgをSEQ ID NO:4の基質として用いることがでる。別の例では、7‐アミノ‐4‐トリフルオロメチル‐クマリン‐フェニールアラニン‐プロリン‐AFCをSEQ ID NO:3の基質として用いることがでる。アッセイは周囲界温度で実施し、好適なバッファ中に一定量の酵素及び適切な基質を含む。反応は蛍光キュベット内で行い、ペプチド基質の加水分解中に遊離した色素原の吸光度の増減を測定する。吸光度に於ける変化は、アッセイ中の酵素活性に比例する。
【0298】
ユビキチンヒドロラーゼ活性についての代替アッセイでは、ユビキチン前駆体の加水分解を測定する。このアッセイは周囲温度で行い、適当なバッファ中に一定量のPRTS及び適切な基質を含む。SEQ ID NO:1の場合、化学合成されたヒトユビキチン−バリンを基質として用い得る。C−末端バリン残基の基質からの切断は、毛細管電気泳動(Franklin, K.ら(1997) Anal. Biochem. 247 : 305−309)でモニタリングする。
【0299】
別法では、SEQ ID NO:5のユビキチンプロテアーゼ活性は、Sloper−Mould らの方法を用いて測定し得る( (1999) J. Biol. Chem. 274: 26878−26884)。一定分量のPRTSを、5μlの[35S]で標識したユビキチン/GST融合基質と共に好適なバッファにおいて37℃で1時間インキュベートする。サンプルは、12%のSDS−PAGEゲル上で電気泳動により分離する。ユビキチンの切断をゲルの蛍光光度分析によりモニタリングする。
【0300】
別法では、SEQ ID NO:1の活性は、例えばColige らの方法により測定し得る(1999, J. Biol. Chem. 270: 16724−16730)。一定分量のPRTSを、プロペプチドのみに放射線標識したプロコラーゲンI型と共に、250μlの反応液即ち標準的なアッセイバッファ(50 mMカコジル酸ナトリウム, pH 7.5, 200 mM KCl, 2 mM CaCl, 2.5 mM NEM, 0.5 mM PMSF, 及び0.02% Brijを含む)において37℃で1時間インキュベートする。26℃で16時間インキュベートした後、50μlのEDTA溶液(0.2 M EDTA, pH 8, 0.5% SDS, 0.5 M DTT)及び300μlの99%エタノールを加えて反応を停止させる。サンプルを4℃に30分間保った後、9500gで30分間遠心分離する。コラーゲン及び非切断放射活性pN‐コラーゲン基質をペレットにすると、遊離アミノプロペプチドが溶液中に残る。上清のアリコットを液体シンチレーション分光法でアッセイする。
【0301】
別法では、プロテアーゼ活性についてのアッセイは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用する。このFRETは、適切にスペクトルがオーバーラップしている1つのドナーフルオロフォアと1つのアクセプターフルオロフォアが近接すると生じる。PRTSに特異的な切断部位を有するフレキシブルなペプチドリンカーは、緑色蛍光タンパク質の赤色にシフトした変異体(red−shifted variant)(RSGFP4)と青色変異体(BFP5)との間に融合する。この融合タンパク質は、エネルギー移動がBFP5からRSGFP4へと起こったことを示すスペクトル特性を有する。融合タンパク質をPRTSと共にインキュベートすると、基質が切断され二つの蛍光タンパク質に分離する。これにはエネルギー移動の顕著な減少が伴う。この減少はPRTSを添加する前と後における発光スペクトルを比較することで測定できる(Mitra, R. Dら、(1996) Gene 173:13−17)。アッセイは生細胞において行うこともできる。この場合、蛍光基質タンパク質は細胞中で恒常的に発現されるため、PRTSを誘導ベクターに導入してPRTSの存在及び非存在によりFRETのモニタリングができるようにする(Sagot, Iら: (1999) FEBS Lett. 447 : 53−57)。
【0302】
更なる別法では、PRTSジペプチダーゼ活性についてのアッセイでは、ロイコトリエンD4などの様々なジペプチドにおけるPRTSの加水分解活性(Kozak, E. and S. Tate (1982) J. Biol. Chem. 257: 6322−6327)、またはペネムやカルバペネムなどの抗生物質のβラクタム環の加水分解を測定する(Campbell ら, (1984) J. Biol. Chem. 259: 14586−14590)。
【0303】
18 PRTS 基質の同定
ファージディスプレイライブラリを用いて、PRTSの最適基質配列を識別し得る。リンカー及び既知の抗体エピトープが後に続くランダムな六量体は繊維状ファージライブラリ中の遺伝子IIIのN−末端延長としてクローンニングする。遺伝子IIIがコートタンパク質をコードし、エピトープが各々のファージ分子表面上に表示され得る。ライブラリは蛋白分解条件下で、PRTSとインキュベートし、六量体がPRTS切断部位をコードする場合はエピトープが除去されるようにする。エピトープを認識する抗体を、固定したプロテインAと共に添加する。エピトープを有している切断されていないファージは遠心分離によって取り除く。次に表面のファージを増幅し、スクリーニングを更に数回行う。次に個々のファージクローンを単離し、配列決定する。これらペプチド基質の反応速度を、実施例17に於けるアッセイを用いて研究し、最適な切断配列を得ることが可能である(Ke, S. H.ら(1997) J. Biol. Chem 272 : 16603−16609)。
【0304】
この方法は、in vivoPRTS基質をスクリーニングするために、ファージ粒子(T7SELECTTM10−3 ファージディスプレイベクター、 Novagen, Madison, WI)、若しくは酵母細胞(pYD1 酵母ディスプレイベクターキット、Invitrogen, Carlsbad, CA)の表面上にディスプレイされたcDNA発現ライブラリをスクリーンするべく拡張し得る。このような場合、全cDNAは、遺伝子IIIと適切なエピトープとの間に融合する。
【0305】
19 PRTS 阻害剤の同定
実施例17のアッセイで説明したように、試験する化合物を、適切なバッファ及び基質と共に様々な濃度にし、マルチウェルプレートのウェルの中に配列する。各ウェルに対してPRTS活性を測定し、PRTS活性を阻害する各化合物の能力並びに容量反応速度を決定し得る。このアッセイは、PRTSの活性を向上させる分子を同定することにも用い得る。
【0306】
別法では、ファージディスプレイライブラリを用いてペプチドPRTS阻害剤をスクリーニングし得る。候補はプロテアーゼに強く結合するペプチドから見つける。この場合、マルチウェルプレートの各ウェルをPRTSでコーティングし、ランダムペプチドファージディスプレイライブラリ若しくはサイクリックペプチドライブラリと共にインキュベートする(Koivunen, E.ら、(1999) Nat. Biotechnol. 17 : 768−774)。結合していないファージは洗い流し、残ったファージの増幅及びスクリーニングを数回繰り返す。実施例17に記載のアッセイを用いて、候補をPRTSの阻害活性について試験する。
【0307】
当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の記載した方法及びシステムの種々の改変を行うことができるであろう。特定の好適な実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学或いは関連する分野の専門家には明らかな、本明細書に記載の本発明の実施例の様々な改変は、特許請求の範囲に含まれる。
【0308】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列に対する系統的な名称を示す。
【0309】
表2は、本発明のポリペプチドに最も近いGenBankの相同体のGenBankの識別番号およびアノテーションを示す。ポリペプチドとそのGenBankの相同体との間の一致を表す確率値スコアも示す。
【0310】
表3は、推定上のモチーフおよびドメインを含むポリペプチド配列の構造的な特徴、並びにポリペプチドの分析に用いた方法、アルゴリズム、および検索可能なデータベースを示す。
【0311】
表4は、ポリヌクレオチド配列の組み立てに用いたcDNA断片のリスト、並びにポリヌクレオチド配列の選択された断片のリストを示す。
【0312】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0313】
表6は、表5に示すcDNAライブラリの作製に用いた組織およびベクターを示す付録である。
【0314】
表7は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、及びアルゴリズム、並びにその説明、引用文献、閾値パラメータを示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
Claims (86)
- 単離されたポリペプチドであって、
(a)SEQ ID NO:1乃至SEQ ID NO:21(SEQ ID NO:1−21)からなる群から選択されたアミノ酸を含むポリペプチドと、
(b)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、
(c)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な断片と、
(d)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択されることを特徴とする単離されたポリペプチド。 - SEQ ID NO:1−21からなる群から選択された請求項1の単離されたポリペプチド。
- 請求項1のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項2のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:22−42からなる群から選択された請求項4の単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項3のポリヌクレオチドに機能的に結合されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
- 請求項6の組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞。
- 請求項6の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え生物。
- 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、
(a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に結合されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養するステップと、
(b)そのように発現したポリペプチドを回収するステップとを含むことを特徴とする請求項1のポリペプチドの生産方法。 - 請求項1のポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体。
- 単離されたポリヌクレオチドであって、
(a)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、
(b)SEQ ID NO:22−42からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、
(c)前記(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、
(d)前記(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドと、
(e)前記(a)乃至(d)のRNA等価物とで構成される群から選択された単離されたポリヌクレオチド。 - 請求項11のポリヌクレオチドの少なくとも60個の連続するヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
- サンプルにおける請求項11に記載のポリヌクレオチド配列を有する標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって、
(a)前記サンプルをプローブでハイブリダイズするステップであって、前記プローブが、前記サンプル内の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含む少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含み、前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする、該ステップと、
(b)前記ハイブリダイゼーション複合体が存在するか否かを検出し、存在する場合には必要に応じてその収量を測定するステップとを含むことを特徴とする標的ポリヌクレオチドの検出方法。 - 前記プローブが少なくとも60個の連続するヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
- サンプルにおける請求項11のポリヌクレオチド配列を有する標的ポリヌクレオチドを検出する方法であって、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅法を用いて、前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅するステップと、
(b)増幅された前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在するか否かを検出し、存在する場合には必要に応じてその収量を測定するステップとを含むことを特徴とする標的ポリヌクレオチドの検出方法。 - 請求項1のポリペプチド及び医薬的に容認できる賦形剤を含む組成物。
- 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項16の組成物。
- 機能的なPRTS(新規のプロテアーゼ)の発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項16の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1のポリペプチドのアゴニストとして有効な化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、
(b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。 - 請求項19の方法によって同定されたアゴニスト化合物及び医薬的に容認できる賦形剤を含む組成物。
- 機能的なPRTSの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項20の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1のポリペプチドのアンタゴニストとして有効な化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、
(b)前記サンプルにおけるアンタゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。 - 請求項22の方法によって同定されたアンタゴニスト化合物及び医薬的に容認できる賦形剤を含む組成物。
- 機能的なPRTSの過剰な発現に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項23の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1のポリペプチドに特異的に結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを好適な条件下で少なくとも1つの試験化合物と結合させるステップと、
(b)請求項1のポリペプチドと前記試験化合物との結合を検出して、請求項1のポリペプチドと特異的に結合する化合物を同定するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。 - 請求項1のポリペプチドの活性を変化させる化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを、そのポリペプチドの活性が許容される条件下で少なくとも1つの試験化合物と結合させるステップと、
(b)前記試験化合物の存在下での請求項1のポリペプチドの活性を評価するステップと、
(c)前記試験化合物の存在下での請求項1のポリペプチドの活性と、前記試験化合物の非存在下での請求項1のポリペプチドの活性とを比較するステップとを含み、
前記試験化合物の存在下での請求項1のポリペプチドの活性の変化が、請求項1のポリペプチドの活性を変化させる化合物の存在を示唆することを特徴とするスクリーニング方法。 - 請求項5の配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに有効な化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、前記標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、
(b)前記標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出するステップと、
(c)様々な量の前記化合物の存在下での前記標的ポリヌクレオチドの発現と、前記化合物の非存在下での前記標的ポリヌクレオチドの発現とを比較するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。 - 試験化合物の毒性を評価する方法であって、
(a)核酸を含む生体サンプルを前記試験化合物で処理するステップと、
(b)処理した前記生体サンプルの核酸を、請求項11のポリヌクレオチドの少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むプローブとハイブリダイズさせるステップであって、このハイブリダイゼーションが、前記プローブと前記生体サンプルの標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項11のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列またはその断片を含むポリヌクレオチドである、前記ステップと、
(c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量するステップと、
(d)前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量を、未処理の生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量と比較するステップとを含み、
前記処理した生体サンプルにおけるハイブリダイゼーション複合体の収量の差が試験化合物の毒性を示唆することを特徴とする試験化合物の毒性評価方法。 - 生体サンプルにおけるPRTSの発現に関連する病態または疾患の診断テストであって、
(a)請求項10の抗体と前記ポリペプチドとの結合に好適な条件下で、前記生体サンプルを請求項10の抗体と結合させて、抗体/ポリペプチド複合体を形成するステップと、
(b)前記複合体を検出すステップとを含み、
前記複合体の存在が、前記生体サンプルにおける前記ポリヌクレオチドの存在と相関性を有することを特徴とする診断テスト。 - 前記抗体が、
(a)キメラ抗体、
(b)一本鎖抗体、
(c)Fab断片、
(d)F(ab’)2断片、または
(e)ヒト化抗体であることを特徴とする請求項10に記載の抗体。 - 請求項10の抗体及び許容される賦形剤を含む組成物。
- 患者において、PRTSの発現に関連する病態または疾患を診断する方法であって、請求項31の組成物を前記患者に有効量投与することを含むことを特徴とする方法。
- 前記抗体が標識されていることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
- 患者において、PRTSの発現に関連する病態または疾患を診断する方法であって、請求項33の組成物を前記患者に有効量投与することを含むことを特徴とする方法。
- 請求項10の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を作製する方法であって、
(a)抗体反応が起こる条件下で、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列またはその免疫原性断片を有するポリペプチドで動物を免疫化するステップと、
(b)前記動物から抗体を単離するステップと、
(c)前記単離された抗体を前記ポリペプチドでスクリーニングして、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合するポリクローナル抗体を同定するステップとを含むことを特徴とするポリクローナル抗体作製方法。 - 請求項35の方法により作製された抗体。
- 請求項36の抗体及び適当な担体を含む組成物。
- 請求項10の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を作製する方法であって、
(a)抗体反応が起こる条件下で、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列またはその免疫原性断片を有するポリペプチドで動物を免疫化するステップと、
(b)前記動物から抗体を産生する細胞を単離するステップと、
(c)前記抗体産生細胞を不死化細胞と融合し、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞を形成するステップと、
(d)前記ハイブリドーマ細胞を培養するステップと、
(e)SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する前記培養モノクローナル抗体から単離するステップとを含むことを特徴とするモノクローナル抗体作製方法。 - 請求項38の方法で作製したモノクローナル抗体。
- 請求項39の抗体及び適当な担体を含む組成物。
- Fab発現ライブラリのスクリーニングにより得られた請求項10の抗体。
- 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより得られた請求項10の抗体。
- サンプルにおけるSEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを検出する方法であって、
(a)請求項10の抗体と前記ポリペプチドとの特異的な結合が許容される条件下で、前記抗体を前記サンプルと共にインキュベートするステップと、
(b)特異的な結合を検出するステップとを含み、
前記特異的な結合が、前記サンプルにSEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドが存在することを示唆することを特徴とする方法。 - SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをサンプルから精製する方法であって、
(a)請求項10の抗体と前記ポリペプチドとの特異的結合が許容される条件下で、前記抗体を前記サンプルと共にインキュベートするステップと、
(b)前記サンプルから前記抗体を分離して、SEQ ID NO:1−21からなる群から選択されたアミノ酸配列を有する精製されたポリペプチドを得るステップとを含むことを特徴とする方法。 - SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:22のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:23のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:24のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:25のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:26のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:27のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:28のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:29のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:30のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:31のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:32のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:33のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:34のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:35のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:36のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:37のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:38のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:39のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:40のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:41のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:42のポリヌクレオチド配列を含む請求項11に記載のポリヌクレオチド。
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