JP2004513710A - 静脈点滴室内の液滴サイズを測定するための装置および方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(背景)
本発明は、概して、流体の体積を測定するための装置および方法に関し、より詳細には、自由空間を通って落下する流体の液滴の体積を測定する装置および方法に関する。
【0002】
従来、静脈内(以後「IV」)輸液注入装置では、倒立瓶または他タイプの流体リザーバ内の医薬品水溶液が、チューブと、患者の血管に挿入するためのカニューレと、クランプなどの様々な流体制御装置と、注射部位と、上流端にある点滴室装置とを備える流体投与セットを通じて患者に供給される。点滴室装置は、その上流端の液滴形成装置と、液滴がそれを通って落下する透明な室と、その下流端にある出口ポートとを含む。液滴形成部分は、通常、所定の体積を有する液滴を形成するように構築される。特定の数の液滴が特定の流体体積に等しくなることを点滴室製造業者が指定することが一般的になってきている。例えば、20滴が1ミリリットルに等しくなるように液滴形成装置を構築することができる。流体が流体リザーバから点滴室に供給されると、液滴形成装置が流体の液滴を形成し、それが透明な室を通って出口ポートに落下する。液滴の存在そのものが、流体投与系内を流体が流れていることを示す。透明な室内を落下する液滴は、目で観察することができ、単位時間にわたって数えて流量を計算することができる。流量は、点滴室装置の上流側のクランプまたは他の装置によって、あるいは輸液注入ポンプなどの下流側の手段によって調節することができる。輸液注入ポンプを使用する場合、輸液注入ポンプを点滴室装置の下流側の投与セットに係合させて、流量を設定するために使用することができる。したがって点滴室を通る液滴の頻度は、輸液注入ポンプでの流量設定によって決まることになる。
【0003】
流体投与セットを通る輸液注入用医薬品の流量をより精確に測定することのできる、信頼性のある系が必要とされている。通常、処置用の流体は、患者について特定の流量に規定されている。規定の処置が送達されるように、その流量を維持することが望ましい。透明な点滴室を使用する場合、流量を制御するために、上流側の弁またはクランプを調節することができる。液滴は、点滴室内で観察され、液滴を数えて、規定の流量が設定されていることを監視する。しかし、初期設定後に流量を変化させることになる多くの要因がある。例えば、液滴形成速度は、流体リザーバのヘッドの高さ/圧力によって決まる。流体の供給が不足すると、液滴形成装置に加わるヘッド圧力が減少し、液滴形成速度および流量の低下を招く。振動または衝撃が、速度制御クランプの調節を変化させることがある。障害物が液滴形成装置に入り込むと、形成される液滴が小さいものになり、流体流量を変化させることがある。また、下流側の輸液注入ポンプによるポンプ動作が一様でないと、液滴の頻度および形状のばらつきを引き起こすこともある。所望の流量を回復させられるように、流量がいつ変化したのか迅速に知ることが有益である。
【0004】
他の考慮事項として、流量は、通常、単位時間当りの液滴の数を数え、次いで実流量を決定する計算を実施することによって決定される。例えば、1分間に40滴を数え、点滴室の仕様が、20滴が1ミリリットルに等しいものである場合、流量が1分当り2ミリリットルと計算される。万一、液滴の実際の体積が特定の点滴室装置に指定された体積と異なる場合には、実際に患者に流れる流体流量が計算された流量と異なることがある。このことも同様に、患者が規定の流量を受け取らないことになるので望ましくない。
【0005】
前述のように、液滴を目で見て観察することによって流量を監視するには、普通、看護師または他の医療従事者による輸液注入の個人監視が必要となる。輸液注入は、通常長期間に及ぶものであり、これに監視が必要になると、特に看護師が不足しているときには、病院職員に相当な問題事となる。流量を決定するには数分間にわたって液滴の時間を計る必要があるので、看護師のかなり時間が費やされ、その結果、他の職務を実行する時間があまり残らなくなる。また、長期にわたる輸液注入の間に、液滴をまた数えるために何度も戻る必要があるので、通常既に非常に多忙なスケジュールの看護師に対する要求を増加させることになる。
【0006】
過去に、監視プロセスを自動化しようとする取組みがなされてきた。多くは、自動液滴計数装置の提供を試みるものであった。そのような系は、有用であることが証明されたが、検出された流体の実際の体積を直接測定によって示すものではない。それらは、液滴が検出されたことを示すにすぎない。したがってそのような自動系は、体積の決定に、点滴室の製造業者が指定する液滴体積を使用している。前述したように、これは必ずしも精確なものではない。
【0007】
従来の一手法は、光学的性質のものであり、検出器の前を通るときの液滴の影のサイズを決定するために使用される、一連の光検出器が含まれる。しかし、点滴室の光学的特質が変動しやすいので、克服困難な課題が提示されてきた。また、点滴室内の結露が室内照明を強めるので、光学系の精度に干渉することもある。光学系の有用性に悪影響を及ぼしてきた他の環境条件は、点滴室の傾斜が非常に大きいために、液滴が部分的にしか光検出器を横断できないことである。さらに液滴の形状は、液滴によって異なる。このように液滴の形状が変化するので、液滴の1つまたは2つの長さ寸法だけを測定してその体積を決定する技術は、望ましい精度に満たないことがある。長さだけなど、1つの長さ寸法だけを測定して液滴の体積を決定する系は、液滴の体積の計算を30パーセント以上誤って計算することがあることが指摘されてきた。また他の光学的方法も、前述の1つまたはそれ以上の理由から、望ましい精度に満たない。
【0008】
Pekkarinen他の米国特許第4,583,975号に開示されている他の方法は、圧電効果に基づくものである。この系は、室内に蓄えられた流体表面の下方で、点滴室の内壁面に取り付けられた圧電フィルムを含む。蓄えられた流体表面に液滴が衝突すると、圧電素子に圧力が加わり、電位差信号が生成される。この方法には、電気回路の電気素子と点滴室内に蓄えられた流体との直接接触が含まれ、この流体が輸液注入時に患者と直接接触するので、多数の理由から望ましくない手法である。
【0009】
他の技術は、静電容量ベース型センサを使用して、点滴室内の流体流量を概算するものである。しかし、これらの方法は、液滴の存在を検出するためにしか使用されない。それらの方法は、液滴の頻度を決定することができ、流量を計算するのに、製造業者が指定する液滴の体積と、液滴体積が一定であるとする仮定とに頼っている。それらの方法では、決定すべき液滴自体の実際の体積を得るのに足る測定値が取得されない。従来技術に見られる静電容量ベース型センサの他の例は、点滴室内に蓄えられた流体のレベルを決定できる測定値を取得し、その値から流量を決定するものであるが、液滴自体の実際の体積を決定できる測定値を取得するものではない。
【0010】
流体の流れ測定では、精度を向上させることが望ましいが、常にコストが関心事になる。より多くの人々がより良い健康管理を受けられるようにするには、コストをできる限り低く維持することが求められる。より多くの人々にとって手頃な価格になるように、医療装置のコストを削減することが望ましい。
【0011】
したがって、当業者には、より精確な流体の流れ測定装置の必要性が認識されてきた。また、液滴の形状の影響を受けず、さらに液滴の光学的特徴の影響も受けない流れ感知系の必要性も認識されてきた。また、実流量をより精確に監視できるように、点滴室内の液滴の体積を決定する必要性も認識されてきた。さらに、製造および使用が容易な流れ測定装置も必要とされている。本発明は、前述および他の必要性を満たすものである。
【0012】
(発明の概要)
簡潔に、かつ総括的に言えば、本発明は、IV点滴室を通過する流体液滴の体積を測定するための静電容量ベース型センサを対象とする。センサには、一定の距離をおいて点滴室の両側に位置決めされた2枚の平行プレートを備えるコンデンサが含まれる。このプレートは、流体液滴がプレート間の空間を通って落下して、プレートによってもたらされるキャパシタンスを変化させるように位置決めされている。このキャパシタンス変化を測定し、感知されたキャパシタンス変化に基づいて、液滴の体積がより精確に計算される。
【0013】
一態様では、平行プレートのキャパシタンスに依存する共振周波数を有する共振回路に平行プレートを組み込むことによって、キャパシタンス変化を測定する。平行プレートのキャパシタンス変化によって引き起こされる、回路の共振周波数の変化を、検出し、測定する。キャパシタンス変化は、共振回路の周波数変化から決定される。本発明による他の態様では、平行プレートを静電容量平衡型ブリッジ回路の一部にすることができ、流体液滴がプレート間を落下するときに、そのキャパシタンスが変化する。
【0014】
前述の両態様ともに、プレート間を落下する液滴によって引き起こされるプレートのキャパシタンス変化を用いて液滴の体積を計算する。本発明の方法には、各液滴の体積を直接測定するので、液滴のサイズまたは形状を仮定しなければならないという欠点が排除される利点がある。さらに、点滴室の光学的特質が液滴の体積の決定に影響を及ぼさないので、液滴のサイズを計算するのに光学的な方法に頼る従来技術の方法の面倒な側面がなくなる。
【0015】
他の態様では、本発明は、ある時間にわたってIV点滴室内を落下する一連の液滴の各体積の測定値を記録し、その結果を積分して、点滴室を通る流体の流量を測定することのできる電子回路を含む。他の態様では、本発明は、測定された流量に基づいて、本発明の装置が点滴室を通る実流量を調節できるようにする電子回路を含む。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原理を一例として示す、添付の図面に即した以下の詳細な説明から明らかになろう。
【0017】
(好ましい実施の形態の詳細な説明)
ここで図面を詳細に参照すると、図面では、類似の参照番号は、いくつかの図で類似または同様の要素を示しており、図1は、静脈内点滴室12内の液滴のサイズを測定するための系10を示している。また、測定系10が流れ制御系14の一部を形成することも示されており、流れは測定系10に従って調節される。図1の測定系10は、点滴室12に取り付けられたセンサ16と、ある実施形態では液滴の体積を決定し、他の実施形態では流量を決定する、測定回路18とを備える。
【0018】
流れ制御系14では、測定系10が、蠕動式輸液注入ポンプなどの流れ制御装置20と共に含まれている。プログラムされた流量を達成するために、測定系10の出力は、流れ制御系14によって下流側流れ制御装置20を制御するために使用される。上流端には、この場合にはバッグ24である医療用流体リザーバが位置決めされており、導管26を介して医療用流体を点滴室12に送り込む。この実施形態では、バッグ24と点滴室12の間に、上流側流れ制御装置22が位置決めされている。一実施形態では、上流側流れ制御装置22に、電気制御式クランプを設けることができる。上流側流れ制御装置22は、下流側流れ制御装置20の代わりに、あるいは下流側流れ制御装置20と併せて使用することができる。プログラムされた流量を達成するために、やはり測定系10の出力を流量制御系14によって使用することができる。ただし、通常は下流側流れ制御装置20だけを使用する。
【0019】
上流側流れ制御装置22を通過した後、医薬品は、点滴室12に流れ込む。そこでは、上流端28にある一体型液滴形成装置が医薬品の液滴30を形成しており、その落下経路が、点滴室の透明な包囲体32内にある。流体の液滴は、出力ポート36が配置された、点滴室12の下流端34に集められる。流体は、出力ポートから導管38を通って下流に流れ、大容量輸液注入ポンプなどの下流側流れ制御装置20を通り、カニューレ40を通って、患者の脈管構造に達する。
【0020】
この実施形態では、センサ16には、一定の距離をおいて固定され、コンデンサを画定する、平行な2枚の導電性金属プレート42が含まれる。本発明の一実施形態では、プレートは、点滴室に対する相対的固定位置で点滴室12の外側に設置されるが、他の実施形態では、プレートを点滴室の壁面に組み込むことができる。
【0021】
図1の実施形態では、2枚のプレート42によって形成されたコンデンサの一目的は、液滴30の体積を測定し、単位時間当りの液滴を数え、流量を精確に決定することであり、これについては以下でさらに詳細に説明する。プレート42のサイズおよび形状は、用途に応じて変更することができる。一実施形態では、プレート42は、湾曲して、点滴室12周りの一部の弧に沿って延在している。
【0022】
点滴室12の透明な包囲体32全体を覆い隠すのでなく、液滴が存在することを看護スタッフがなお目で見て確認できるように、それの透明な部分32を残すことが好ましい。この実施形態では、プレート42の高さ方向長さは、液滴全体がプレートの上縁部と底縁部の間に入るように液滴よりも長く、ただし最高流量で2つ以上の液滴が含まれるほど長すぎないように選択される。さらに、プレート42は、プレート42間の領域に進入する前に液滴が液滴形成装置から完全に離れるように、液滴形成装置よりも下方に十分に離して配置されるべきである。また、プレートは、液滴によって生成される飛沫がプレート間の領域に進入しないように、点滴室12の下流端の流体集積部よりも上方に十分に離しておかれるべきである。
【0023】
図1に示す測定回路18は、計算すべきプレート42間を落下する流体液滴の体積が得られる測定値を取得するように構成されており、これについて以下でさらに詳細に説明する。この実施形態では、液滴形成装置からどれほど小さい球形の流体が落下しても、プレート42によって形成されるコンデンサのキャパシタンスが著しく変化する。より詳細には、一定の距離dをあけて設置され、空気で隔てられたコンデンサを画定する2枚の帯電平行プレート間に流体の液滴が導かれると、プレートのキャパシタンスがδC変化する。これは、次式に従って流体液滴の体積Φにほぼ正比例する。
【数1】
式中、ε0は、自由空間の誘電率を表す。本明細書で使用する符号
は、ほぼ等しいことを表している。プレート42間の間隔「d」が一定で、ε0が既知であり、δCおよびΦだけが変数であるので、キャパシタンスの変化δCを測定すれば流体の液滴の体積Φを計算することができる。式1に表した関係を使用できる測定および信号処理について、以下でより詳細に説明する。
【0024】
図2は、平行プレート42間を落下する液滴の体積を決定する測定回路18の実施形態の様々な特徴を例示している。一つの特徴では、回路18は、平行プレート42に接続された電圧制御発振器を備える共振回路44を含む。共振回路44は、平行プレート42のキャパシタンスに依存し、平行プレート42のキャパシタンスによって変更できる共振周波数を有するように構成される。初期状態、すなわちプレート間に液滴がない状態では、平行プレートのキャパシタンスがC0で、共振回路44の共振周波数がf0である。コンデンサが共振回路の一部であるので、キャパシタンスがδC変化すると、それに比例して共振周波数δfが変化することになる。この、結果的に生じる共振回路44の周波数変化は、共振回路の周波数を、共振回路44の初期状態の周波数f0と周波数が同一になるように調整された位相ロック・ループ回路46の固定周波数と比較することによって測定することができる。次いで、測定された共振回路44の周波数変化δfを、インタプリタ回路48で測定できる電圧に変換することができる。インタプリタ回路48は、数学的に記述される次の公知の関係に従って、共振回路の周波数変化δfに関する電圧情報を、相関のあるプレートのキャパシタンス変化δCに変換するように構成されている。
【数2】
式2で表される関係について、以下でさらに詳細に実証する。
【0025】
さらに、インタプリタ回路48は、結果として得られるプレート42のキャパシタンス変化δCに関する情報を、式1で表される関係に従って、共振回路の周波数変化を引き起こした流体液滴の体積に変換するように構成されている。周波数変化の形の情報を電圧に変換するインタプリタ回路は、当該技術分野で公知であり、本明細書ではこれ以上記載しない。
【0026】
図2に示す実施形態の他の特徴では、インタプリタ回路48は、その情報を積分回路50に渡すことができ、積分回路50では、ある期間内に落下したすべての液滴の体積を記録して積分し、点滴室12内の流体の流量を導出する。本発明の他の特徴では、積分回路50によって決定された流量を流れ調節回路52に送ることができ、流れ調節回路52では、測定された流量に従って該当する通りに上流側流れ制御装置22または下流側流れ制御装置20の設定を変更することによって、点滴室12内の流体の流量を設定することができる。例えば、流れ調節回路52は、測定された流量が所望の流量よりも多い場合には、それに応じて流量を減少させることができ、所望の流量よりも少ない場合には流量を増加させることができる。積分回路および流れ調節回路の動作は、当該技術分野で公知であり、ここでは記載しない。
【0027】
図3は、位相ロック・ループ回路46(図2)に接続された共振回路44の一実施形態を例示しており、これを合わせて使用して、平行プレート42によって画定されるコンデンサのキャパシタンス変化を測定することができる。図3に示す回路は、平行プレート42を、電圧制御発振器(「VCO」:voltage controlled oscillator)によって調整される共振回路44にどのように組み込むことができるかを例示している。測定された共振回路44の周波数は、共振回路44の周波数とそれ自体の固定周波数とを比較する位相ロック・ループ回路46(図2)に送られる。平行プレート42のキャパシタンス変化に起因するものなど、共振回路の周波数変化を検出し、測定して、電圧に変換し、次にそれを前述したようなインタプリタ回路48(図2)および積分回路50(図2)に送ることができる。
【0028】
ここで、図3の共振回路44(VCO)をさらに詳細に参照すると、コンデンサC1は、C2−VARICAPにかかるDC制御電圧と発振器を絶縁する働きをしており、C2−VARICAPのキャパシタンスに比べて大きい。この回路の周波数決定成分は、インダクタLRES、CFO、バリコン(varicap)、C2、およびプレート42間のキャパシタンスである。C2−VARICAPは、電圧制御型コンデンサであり、バックバイアスがかけられている。正の電圧が増加するにつれて、キャパシタンスが減少する。したがって、液滴がプレート42間を通ると、プレート44間のキャパシタンスの増加に比例して制御電圧VKVCOが増加して、全キャパシタンスが一定に保たれ、その結果、出力周波数が一定に保たれる。L1とR4の直列ネットワークは、高周波と制御電圧VKVCOを絶縁する働きをする。コンデンサCFOは、回路の発振を維持するために、コレクタからエミッタにフィードバックする働きをする。コンデンサC4は、エミッタ出力を後続回路に一致させる。C5は、LRESの上部のインピーダンスを確実に低く抑える典型的なバイパス・コンデンサである。抵抗器R1、R2、およびR3は、トランジスタQ1のバイアスとして働く。ダイオードD1は、トランジスタQ1を温度補償するために加えられている。トランジスタQ1は、所望の周波数で発振できるという特徴を備えるバイポーラ・トランジスタである。
【0029】
VCOに加えて、VCOの一定の出力周波数を確立するために、位相ロック・ループ(「PLL」:phase locked loop)回路が周波数基準と併せて使用される。VCOに位相偏差を与えようとすると、回路を周波数安定性に戻すようにVKVCOが変化することになる。使用することのできる集積回路PLLは、モトローラ(Motorola)MC145151−2である。VCOの出力FOUTは、PLL集積回路で使用可能な範囲まで減少させるために、富士通(Fujitsu)MB467によって小さく分割される。
【0030】
回路46の位相ロック・ループ部分を参照すると、使用される周波数標準は、周波数が所望のVCO周波数の倍数に比例する公知の信号に該当する。所望のVCO周波数が120MHzである場合、12個の分割器によって10MHzの出力周波数を与える。周波数標準も10MHzである場合、VCOは、周波数および位相を標準値に確定される。VCO内の共振回路が何らかのものによって摂動すると、VCOが所望の周波数を維持するように、制御電圧がシフトする。この制御電圧またはエラー電圧は、液滴の体積に比例するものとして見ることができ、これがインタプリタ回路48への出力になる。
【0031】
積分回路48は、エラー電圧をデジタル数字に変換するアナログ・デジタル(アナログからデジタルへの)変換器である。デジタル数字は、積分回路50で積分されて流れ調節回路52を制御することができ、あるいは単純に付属機器の較正用に全流れの基準を与えるために使用することができる。
【0032】
本発明の他の実施形態では、それらの間を落下する液滴30によって引き起こされるプレート42のキャパシタンス変化は、前述の実施形態の共振回路44および位相ロック・ループ回路46でなく、平衡型ブリッジ回路を用いて決定することができる。ただし、共振回路を位相ロック・ループ回路と併用することの利点は、前述の実施形態で説明したように、プレートのキャパシタンス変化を平衡型ブリッジ回路で達成できるよりも精密に読み取ることができることである。輸液セット内で通常発生するサイズの流体液滴によって引き起こされるキャパシタンス変化は、非常に小さいものであり、変化を精確に測定するには高感度系が必要である。静電容量ブリッジ回路は、当業者には公知であり、ここではこれ以上は説明しない。
【0033】
特定の理論に拘泥するものではないが、以下で、液滴の体積を決定できる計算について、より数学的に説明する。1対の平行プレートは、キャパシタンスCを有しており、プレート間に誘電性の小球が導かれている。プレート上には固定電荷Qが置かれている。プレート上に蓄えられた電気エネルギーWは、プレートのキャパシタンスCの関数として表すことができ、次式で表される。
【数3】
【0034】
したがって、キャパシタンスδCの変化に起因する、蓄えられた電気エネルギーの変化δWは、次式のように記載でき、
【数4】
あるいは、
【数5】
式中、V=Q/Cは、コンデンサ上の電圧である。
【0035】
さらに、平行プレートのコンデンサの中心では、電界Eが、ほぼ次式によって与えられることが知られており、
【数6】
式中、dは、平行プレート間の間隔である。したがって、
【数7】
【0036】
Stratton(J.A.Stratton,Electromagnetic Theory,McGraw Hill,1941,page 206)から、一様な電界Eに誘電性の球体を導入した結果生じる、蓄えられた電気エネルギーの変化は、次式で与えられることが知られており、
【数8】
式中、rは、誘電性の球体の半径で、k=ε/ε0は、球体の誘電定数で、自由空間の誘電率ε0=8.854×10−12ファラド/メートルに対する球体の誘電率εと記載することもできる。
【0037】
式3〜式8を組み合わせると、次式が得られることがわかった。
【数9】
ただし、医薬品の液滴は、本質的に水から構成される水溶液であり、水の誘電率が60〜80であるので、水の誘電率が自由空間の誘電率に比べて大きいことが明らかである。したがって、ここで想定される装置の物理的構造では、κが1よりもはるかに大きいので、実際には式9から次式のように近似される。
【数10】
【0038】
球形の液滴の体積Φが、Φ=4πr3/3に従って液滴の半径に関係するので、次式が導かれる。
【数11】
これは、前述の式1に記載した式である。
【0039】
式1で表される平行プレート42のキャパシタンス変化の2つの特徴が特に重要であることが明らかである。第1に、キャパシタンス変化は、液滴30の体積に正比例する。第2に、キャパシタンス変化は、液滴の誘電定数の影響を受けない。
【0040】
これらの結果は、液滴が球形であるという仮定の下で導出されたものであるが、平行プレートを通って短い距離を落下する実際の液滴についての実験結果から、式1が、通常液滴が短い距離を落下するときの球形からの変化の影響を受けないことが実証されている。
【0041】
式2によって表される物理的関係が、コンデンサのキャパシタンスがδC変化するときに生じる、コンデンサを有する回路の共振周波数の変化δfを反映していることは、以下のように実証することができる。
【0042】
共振周波数f0を有する共振LC回路では、次式になることが知られており、
【数12】
式中L0は、インダクタンスの既知の値であり、C0は、LC回路に組み込まれたキャパシタンスの既知の値である。したがって、C0の微小変化δCによって引き起こされるf0の微小変化δfは、次式の関係に従う。
【数13】
【0043】
本発明の場合のように、δCがC0に比べて小さいときには、次式になり、
【数14】
これは、前述の式2に記載した式である。
【0044】
平行プレート間を落下する液滴の体積を決定する際に使用される前述の物理的関係の式が、適度な精度が得られる仮定に基づく近似であることが、当業者には明らかである。しかし、本発明を実施する際には、既知体積の流体液滴の体積を正確に測定するのに、測定回路18を備えるものとして記述される回路を初めに設定するために、そのような回路を較正することが有益なことがある。この回路をそのように較正することによって、本発明の実施者は、測定される液滴の体積を実際の体積よりも大きくまたは小さくさせる可能性のある要因(近似に起因するもの、あるいは本発明の原理によって構築された装置の物理的特質に起因するもの)をある程度まで考慮して較正できるので、その後の測定の精度を改善することができる。
【0045】
現時点で好ましい実施形態だけを詳細に説明したが、当業者には明らかなように、本発明の範囲から逸脱することなく本明細書に開示する装置に修正および改良を実施することができる。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一態様による、患者への流体の流れを制御する装置を例示する図であり、より詳細には、本発明の特定の態様による装置および電子回路を使用して点滴室内を落下する液滴の体積を測定する、従来の点滴室を示す図である。
【図2】
図1の電子回路をより詳細に例示する図である。
【図3】
共振周波数を有し、図1に示す点滴室の周りに配置されたコンデンサ・プレートが組み込まれた、共振回路の好ましい実施形態を例示する図であり、共振回路の共振周波数を比較できる位相ロック・ループ回路に接続された状態で示された図である。
Claims (27)
- 所定経路内を移動する流体液滴の体積を決定するための装置であって、
コンデンサを形成する2枚のプレートであって、流体液滴がプレート間を通って所定経路内を移動するときにコンデンサのキャパシタンスを変化させるように、所定経路の両側に離して位置決めされたプレートと、
コンデンサに接続され、2枚の対向プレート間の所定経路を通って流体液滴が移動するときのコンデンサのキャパシタンス変化量を測定するように構成され、2枚の対向プレート間を流体液滴が移動することによって生じたキャパシタンス変化量に基づいて流体液滴の体積を決定するように構成された、体積決定系とを備える装置。 - 前記体積決定系が、2枚の対向プレートで形成されたコンデンサのキャパシタンスによって決定される共振周波数を有する共振回路を備えており、2枚の対向プレートのキャパシタンスが変化すると共振回路の共振周波数がそれに比例して変化し、前記体積決定系が共振周波数に応答して流体液滴の体積をそれから決定する、請求項1に記載の装置。
- 前記体積決定系が、2枚の対向プレートで形成されたコンデンサのキャパシタンスによって決定される発振周波数を有する発振器をさらに含み、発振器の発振周波数に応答して流体液滴の体積をそれから決定する、請求項2に記載の装置。
- 前記体積決定系が、2枚の対向プレートで形成されたコンデンサに結合した静電容量平衡型ブリッジを備えており、プレート間を通る流体液滴によって2枚の対向プレートで形成されたコンデンサのキャパシタンスが変化すると、ブリッジが平衡を失って、キャパシタンス変化を表す不平衡信号を提供し、体積決定系がその不平衡信号に応答して流体液滴の体積をそれから決定する、請求項1に記載の装置。
- 2枚の対向プレートが取り付けられた点滴室をさらに備えており、点滴室が2つの対向プレート間に配置されて所定経路を提供し、流体液滴が点滴室内でプレート間を落下すると2枚の対向プレートで形成されたコンデンサのキャパシタンスが変化する、請求項1に記載の装置。
- 前記体積決定系が、さらに、選択された時間にわたって2枚の対向プレート間を通る流体液滴の決定された個々の体積を積分し、単位時間当りの体積に関する信号を提供するように構成された、請求項5に記載の装置。
- 体積決定回路に接続され、単位時間当りの体積に関する信号を受け取り、その信号に基づいて流体流量を表示する表示装置をさらに備える、請求項6に記載の装置。
- 選択された流体流量を格納する記憶装置と、
記憶装置に接続され、格納された流体流量と単位時間当りの体積に関する信号とを比較し、差分に基づいて流れ制御信号を提供する処理装置と、
流れ制御信号に応答し、それに応じて流体液滴の流れを変化させる流れ制御装置とをさらに備える請求項6に記載の装置。 - 前記体積決定系が、さらに、選択された時間にわたって2枚の対向プレート間を通る流体液滴の決定された個々の体積を積分し、単位時間当りの体積に関する信号を提供するように構成された、請求項1に記載の装置。
- 体積決定回路に接続され、単位時間当りの体積に関する信号を受け取り、その信号に基づいて流体流量を表示する表示装置をさらに備える、請求項9に記載の装置。
- 選択された流体流量を格納する記憶装置と、
記憶装置に接続され、格納された流体流量と単位時間当りの体積に関する信号とを比較し、差分に基づいて流れ制御信号を提供する処理装置と、
流れ制御信号に応答し、それに応じて流体液滴の流れを変化させる流れ制御装置とをさらに備える請求項1に記載の装置。 - 前記プレートが点滴室の壁面に埋め込まれており、前記経路が点滴室内のプレート間に位置する、請求項1に記載の装置。
- 前記プレートが点滴室の壁面の外側に取り付けられており、前記経路が点滴室内のプレート間に位置する、請求項1に記載の装置。
- 壁面を有する医療用導管内の所定経路を通って移動する医療用流体液滴の体積を決定するための装置であって、
コンデンサを形成する2枚のプレートであって、導管の壁面に取り付けられていて、医療用流体液滴がプレート間を通って所定経路内を移動するときにコンデンサのキャパシタンスを変化させるように、所定経路の両側に離して位置決めされたプレートと、
コンデンサに接続された体積決定系とを備えており、前記体積決定系が、
2枚の対向プレート間にある医療用導管内の所定経路を通って医療用流体液滴が移動するときのコンデンサのキャパシタンス変化量を測定し、
2枚の対向プレート間を流体液滴が移動することによって生じたキャパシタンス変化量に基づいて流体液滴の体積を決定し、
選択された時間にわたって2枚の対向プレート間を通る流体液滴の決定された個々の体積を積分し、単位時間当りの体積に関する信号を提供するように構成された装置。 - 体積決定回路に接続され、単位時間当りの体積に関する信号を受け取り、その信号に基づいて流体流量を表示する表示装置をさらに備える、請求項14に記載の装置。
- 選択された流体流量を格納する記憶装置と、
記憶装置に接続され、格納された流体流量と単位時間当りの体積に関する信号とを比較し、差分に基づいて流れ制御信号を提供する処理装置と、
流れ制御信号に応答し、それに応じて流体液滴の流れを変化させる流れ制御装置とをさらに備える請求項15に記載の装置。 - 所定経路を通って移動する流体液滴の体積を決定するための方法であって、
流体液滴が2枚のプレート間を通って所定経路内を移動するときにコンデンサのキャパシタンスを変化させるように、所定経路を横切るコンデンサを画定する2枚の対向プレートを位置決めするステップと、
2枚の対向プレート間の所定経路を通って流体液滴が移動するときのコンデンサのキャパシタンス変化を測定するステップと、
2枚の対向プレート間を流体液滴が移動することによって生じたキャパシタンス変化量に基づいて流体液滴の体積を決定するステップとを含む方法。 - 対向プレート間を流体液滴が移動することによって生じたキャパシタンス変化に応答して、共振回路の共振周波数を変化させるステップをさらに含み、
流体液滴の体積を決定する前記ステップが、共振周波数の変化に基づいて流体液滴の体積を決定することをさらに含む、請求項17に記載の方法。 - 対向プレート間を流体液滴が移動することによって生じたキャパシタンス変化に応答して、発振器の発振周波数を変化させるステップをさらに含み、
流体液滴の体積を決定する前記ステップが、発振周波数の変化に基づいて流体液滴の体積を決定することをさらに含む、請求項17に記載の方法。 - 対向プレート間を流体液滴が移動することによって生じたキャパシタンス変化に応答して、静電容量平衡型ブリッジ回路の平衡を失わせるステップをさらに含み、
流体液滴の体積を決定する前記ステップが、ブリッジの不平衡量に基づいて流体液滴の体積を決定することをさらに含む、請求項17に記載の方法。 - 所定経路を横切るコンデンサを画定する2枚の対向プレートを位置決めする前記ステップが、点滴室がプレートのコンデンサの一部を形成するように、点滴室を横切って2枚の対向プレートを位置決めするステップをさらに含んでおり、点滴室を通過する流体液滴が2枚のプレート間を通って、2枚の対向プレートで形成されたコンデンサのキャパシタンスを変化させる、請求項17に記載の方法。
- 選択された時間にわたって2枚の対向プレート間を通る流体液滴の決定された個々の体積を積分するステップと、
単位時間当りの体積に関する信号を提供するステップとをさらに含む請求項21に記載の方法。 - 単位時間当りの体積に関する信号に応答して流体流量を表示するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
- 選択された流体流量を記憶装置に格納するステップと、
格納された流体流量と単位時間当りの体積に関する信号とを比較するステップと、
それに応じて流体液滴の流れを変化させるステップとをさらに含む請求項22に記載の方法。 - 選択された時間にわたって2枚の対向プレート間を通る流体液滴の決定された個々の体積を積分するステップと、
単位時間当りの体積に関する信号を提供するステップとをさらに含む請求項17に記載の方法。 - 単位時間当りの体積に関する信号に応答して流体流量を表示するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
- 選択された流体流量を記憶装置に格納するステップと、
格納された流体流量と単位時間当りの体積に関する信号とを比較するステップと、
それに応じて流体液滴の流れを変化させるステップとをさらに含む請求項25に記載の方法。
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