JP2004512050A - 核酸の増幅およびプロファイリングに関連する物質および方法 - Google Patents

核酸の増幅およびプロファイリングに関連する物質および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、核酸配列のメチル化プロファイルの確定および対応する対照配列と比較した場合の標的核酸配列中の1以上の塩基の変化の判定のための改善された方法を提供する。これらの方法は、PCRなどの公知の増幅技法と併合できる一段法である。本発明はまた、メチル化プロファイルによる、または1以上の塩基の突然変異のための核酸配列の変化の判定方法を提供する。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は、改善された核酸の増幅およびプロファイリングに関連する物質および方法に関する。限定するものではないが、特に、例えば蛍光解離曲線分析による試験管内(in−tube)DNAメチル化プロファイリングに関する。
【0002】
発明の背景
5−メチルシトシン(mC)は、CpGジヌクレオチドの形態で存在し、脊椎動物のゲノム内で最も豊富な共有結合的に修飾されている塩基である。CpGジヌクレオチドの密度が高い領域、いわゆる「CpGアイランド」は、ゲノム全体にわたって散在しており、通常は遺伝子のプロモーター領域に位置している。プロモーターのCpGアイランドのメチル化は、ヒストンの脱アセチル化および転写サイレンシングと関わっており(1)、正常な胚の発達、ゲノムインプリンティングおよびX染色体の不活性化に不可欠である。近年、腫瘍抑制遺伝子内のCpGアイランドの体細胞性de novoメチル化は腫瘍発生に関与しており、インプリント遺伝子の異常なメチル化は幾つかのヒトの遺伝性疾患に関わっている(1〜3)。正常なプロセスにおいても疾患に関連するプロセスにおいてもDNAメチル化が中心的役割を担っていることから、生物学的および臨床的な検体において正常および異常なメチル化パターンを検出し特性決定するための種々の方法が得られている。
【0003】
標準的なPCRおよびクローニング法において、ゲノムDNAにおけるmCおよび他の共有結合的塩基修飾についての情報は失われる。したがって、特定の遺伝子においてmCを検出およびマッピングするための現行のPCR法は、増幅の前に、ゲノムDNAをメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼまたは亜硫酸水素ナトリウムで処理することに基づいている。亜硫酸水素は、非メチル化シトシンをウラシルへと変換し、一方、メチル化シトシンは不活性のままである(4)。特定の標的配列は、続いて、亜硫酸水素で変換されたDNAに特異的なプライマーを用いて増幅し、そのmC含量について調べることができる。亜硫酸水素法の中でも極めて有効なものは、実質的にあらゆるDNA伸長鎖において特定のCpG部位にmCが存在することを呈示するゲノムシークエンシングである(5)。亜硫酸水素で変換されたDNAを鋳型として用いるもっと簡単な方法としては、メチル化特異的PCR(MSP)(6)、メチル化感受性一塩基プライマー伸長(7)および制限エンドヌクレアーゼの使用に基づく方法(8;9)が挙げられる。
【0004】
上記の方法には明らかな利点があるが、それらの方法は全て、最初のPCR増幅とその後の生成物分析(通常はゲル電気泳動による)からなる2段階の手順を必要とする。更に、それらは、ゲノムシークエンシングを除いて、設定毎に1箇所または数箇所のCpG部位の分析に限定される。
【0005】
発明の概要
本明細書において、本発明は、異常DNAメチル化を検出するための新規な試験管内PCRアッセイを記載するものであり、このアッセイは、シグナル検出装置(例えばフルオリメーター(fluorimeter)(ライトサイクラー)(10)を備えるサーマルサイクラーを用い、亜硫酸水素処理の後でのメチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子との解離温度(Tm)の差を利用するものである。
【0006】
したがって、本発明は、標的核酸配列についてのメチル化プロファイルを確定するための方法であって、
(a)核酸配列を亜硫酸水素(好ましくは亜硫酸水素ナトリウム)で処理して、その核酸配列内の非メチル化シトシンをウラシルに変換して、変換型核酸配列を作製すること;
(b)処理した核酸配列を、上記の変換型核酸配列に対してのみ特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅すること、但し、その増幅条件には、増幅された核酸におけるシグナル物質の取込みが含まれ、そのシグナル物質は二本鎖核酸と一本鎖核酸とを区別できるようにするものである;
(c)温度変化により起こる二本鎖と一本鎖との間での核酸の変換(トランジション)の際にそのシグナル物質の量を検出すること;
(d)その温度変化の際に検出されたシグナル物質の量を測定することにより、標的核酸配列のメチル化プロファイルを確定すること;
を含む上記方法を提供する。
【0007】
本発明の1つの好ましい実施形態において、核酸のトランジションとは、温度の上昇により起こる二本鎖から一本鎖になることである。あるいはまた、シグナルの変化は、温度の低下によって起こる一本鎖から二本鎖へのトランジションの際に検出してもよい。
【0008】
標的核酸配列は、動物、植物または真核生物に由来するいずれの核酸配列であってもよい。好ましくは、標的核酸配列はヒト由来のものである。
【0009】
最も都合が良いのは、シグナル物質が、光量計を用いて検出可能な色素(例えば蛍光色素)であることである。好ましい検出方法は、フルオリメーター(10)の使用である。DNAの解離曲線は、ある温度変化の際に二本鎖DNAに結合している蛍光色素(例えばSYBR Green I)の蛍光を測定することにより得られる。温度変化は、直線状でもよいし、あるいは道理上可能な限り直線状に近いものであってもよい。
【0010】
SYBR Green Iは本発明における好ましい発蛍光団であるが、当業者であれば、他の発蛍光団も同様に使用可能であることが理解されよう。そうした発蛍光団の例としては、アクリジンオレンジ、ヨウ化プロピジウム、臭化エチジウム、ミトラマイシン、クロモマイシン、オリボマイシン(olivomycin)、Hoechst(ヘキスト)H33258、Hoechst H33342、DAPI(4’,6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール)、TOPRO、TOTO、YOPRO、YOYOおよびPicogreenが挙げられる。
【0011】
あるいはまた、シグナル物質の検出は、適切なシグナル物質を使用する紫外線またはエネルギーの伝達機構を用いて達成できる。シグナル物質は、実際には、組み合せて使用される2種類の色素から成るものとすることができる。例えば、ヌクレオチドを色素標識して、その色素がそのDNAに共有結合的に結合しているようにすることが可能である。一本鎖核酸と二本鎖核酸との識別を可能にする二色素系を作製してもよい。
【0012】
上記で述べたように、本発明は、シグナル検出装置を備えたサーマルサイクラーを用いて実施できる。しかし、この方法は、標準的なPCR装置をサンプルの加熱およびシグナルの検出を可能にするもう1つの装置と組み合せて使用して実施することも可能である。そのようなもう1つの装置の一例は、Dash−system(ThermoHybrid)である。このもう1つの装置は、本発明を実施するためのキットの一部として提供してもよい(後記を参照)。
【0013】
メチル化プロファイルの確定は、対照との比較により達成できる。例えば、試験する標的核酸が腫瘍(例えばメラノーマ)に由来するものである場合、対照は正常なメラノサイトに由来する核酸配列とすることが好都合であると考えられる。
【0014】
本発明の第2の態様において、本発明者らは、上記で記載した解離曲線分析を、一塩基突然変異を試験管内検出するためのPCRと組み合わせることを可能にする方法を提供する。
【0015】
理論的および実験的な研究から、DNAが、各工程が「解離ドメイン(melting domain)」と呼ばれる個々のセグメントの解離を意味する一連の工程で解離することが示された。
【0016】
一塩基置換または他のタイプの突然変異はそのドメインのTmを変化させることができ、その変化は0.5℃以下である。解離特性の差異に基づく突然変異の解析は、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)により達成でき、この場合、変性剤の勾配の増大がゲル内での温度勾配をシミュレートする(AbramsおよびStanton, 1992)。温度を非常に正確に段階的に上昇させるための機器を用いて、Schaefferら(1983)は、一塩基置換により相違しているDNA断片同士が、UV吸光度測定値により判定した場合に、異なるTmを示すことを示した。近年、微量フルオリメーターと急速温度サイクラーとを兼ね備えた機器が利用できるようになった。これらの機器を用いれば、解離曲線は、PCRの直後に、直線的に温度を変化させている際に二本鎖DNA色素の蛍光を測定することによって得ることができる。これは、配列相同性のない無関係なPCR産物同士を識別するのに用いられている(Ririeら, 1997)。しかし、これらの微量フルオリメーターを備えたサーマルサイクラーを用いることによる小さな突然変異の検出は、次の幾つかの理由により、非常に困難になる。
【0017】
1)幾つかの突然変異では、溶液中にホモ二本鎖およびヘテロ二本鎖が存在していても、正味のTmは変化しない。
【0018】
2)塩および色素の濃度は、PCR産物の解離ピークの幅および絶対的位置に有意に影響を及ぼす可能性がある。
【0019】
3)急速な温度の変化および比較的厳密性に欠ける温度の調節は、絶対的なTmに影響を及ぼし、試験管間の有意なバラツキの原因となる可能性がある。
【0020】
したがって、1つの塩基の変化によるTmの僅かな変化の検出は、適切な内部対照を添加することによってのみ達成可能である。
【0021】
この本発明の第2の態様の原理は、Tmについての内部対照がPCR産物自体の内部に含まれることである。図5Aに、N−ras原癌遺伝子の第2エキソンの解離マップを示す。図5Bに、対照低温解離ドメイン(「a」)および高温解離ドメイン(「GCクランプ」)(「c」)を人為的に付加した後の同じ領域の解離マップを示す。これらの人為的なドメインはPCRプライマーにより容易に取り込まれる。GCクランプは、新しい最高温解離ドメインを導入し、鎖同士を保持するための「ハンドル」として作用する。対照ドメインは、対象の配列を含むドメインのTmよりも2〜3℃低いTmを有する。この対照ドメインの解離ピークの高さおよび幅、その解離ピークの下の面積、ならびにその解離ピークのTmが対照パラメーターとして用いられる。したがって、本発明の第2の態様は、標的核酸配列内の1以上の塩基の突然変異の検出方法であって、
(a)核酸配列に、対照低温解離ドメインおよび高温解離ドメイン(GCクランプ)を組み込むステップ;
(b)対照低温解離ドメインおよびGCクランプが組み込まれた核酸配列を、オリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅するステップ;
(c)増幅した線状核酸を、二本鎖核酸配列と一本鎖核酸配列とを識別するシグナル物質と共に提供するステップ;
(d)温度の上昇により起こる核酸の二本鎖から一本鎖へのトランジションの際の、上記のシグナル物質のシグナルの変化を検出するステップ;そして
(e)標的核酸配列内の1以上の塩基の突然変異の存在を、その解離ピークを、同等の条件下で試験した対照核酸配列のものと比較することにより判定するステップ;
を含んでなる、上記方法を提供する。
【0022】
対照低温解離ドメインおよびGCクランプは、PCR増幅工程の一部として組み込まれることが好ましい。好ましくは、これらの配列を含み、したがって得られるPCR二本鎖増幅産物がこれら2つのドメインならびに標的核酸配列(中温の解離ドメイン)を含むPCRプライマーが提供される。
【0023】
標的核酸配列が、対照の核酸配列と比較して1以上の突然変異(相違)を含むか否かを判定するために、本発明のこの第2の態様の方法は、同等の(好ましくは同一の)条件下で双方の配列(標的および対照)について行う。例えば、標的核酸配列は腫瘍細胞(例えばメラノーマ細胞)に由来するものとすることができ、対照はそれに対応する正常な細胞(例えばメラノサイト)に由来するものとすることができる。この例において、この方法の工程(e)に従って行われる判定は、標的核酸配列の中間解離ドメインおよび低解離ドメインと対照核酸配列の中間解離ドメインおよび低解離ドメインとの比較である。示されている実施例の詳細な説明を参照されたい。
【0024】
上記で述べたように、シグナル物質は、二本鎖核酸には特異的に結合するが一本鎖核酸には結合しないシグナルとすることができる。したがって、核酸配列が加熱されて鎖が変性すると、シグナルは消失し始め、変化が測定できる。あるいはまた、複数のシグナルを用いることも可能であり、この場合、シグナルタイプの変化は、二本鎖核酸配列と一本鎖核酸配列との違いを同定する。
【0025】
本発明の全ての態様は、核酸のメチル化プロファイルに関連する疾患状態の診断を支援するために使用できる。例えば、哺乳動物細胞に関しては、発達および細胞分化の異常が、核酸のメチル化レベルと関連する場合が多い。したがって、本発明は、これらのレベルまたはレベルの差を測定しモニターできる迅速かつ効率的な方法を提供する。同様に、植物の育種では、植物DNAのメチル化レベルの変化を知ることが重要である場合が多い。更に、本発明は、疾患の診断で使用するための、核酸のメチル化プロファイルのデータベースを提供するのに使用できる。本発明のこれらのデータベースまたは方法は、医療目的の治療方法において医療従事者を支援するのに使用できる。
【0026】
本発明の更に別の態様において、上記に記載した本発明の方法を実施するための研究用ツールまたはキットが提供される。このツールまたはキットは、異なる病理を判定するように設計された数種の核酸プライマーを含むことができる。キットは、核酸配列のメチル化プロファイルまたは数を測定するための複数のプライマーが固定されている固相支持体を含んでなるチップまたはビーズの形態を取ることができる。また、キットは、好ましくは、PCR反応を実施するのに必要な成分ならびに検出用化合物(例えば発蛍光団)も含む(上記を参照のこと)。キットはまた、本発明の第1または第2の態様による方法を行うための成文化された指示書も含むことができる。
【0027】
したがって、本発明には、医療目的の研究診断および治療の分野において多くの用途がある。本発明の方法は、新規および既知の遺伝子を異常なDNAメチル化または突然変異のパターンについて調べるための研究用ツールとして使用できる。これらの方法は、既知/新規の遺伝子と遺伝的疾患もしくは病理との新規な相関関係を同定するためのスクリーニングアッセイとして使用できる。
【0028】
本発明の最も重要な使用の1つは、診断の分野においてである。例えば、上記の方法は、異なる癌タイプ、遺伝的障害、代謝性疾患、または年齢に関連する病理などの他の病理と関連する特定のメチル化パターンを同定するのに使用できる。そのような方法から得られる結果は、患者に必要な治療のタイプを確定する上で医療従事者を支援する。更に、上記の方法は、化学療法に対する腫瘍の応答性を予測できる特定のメチル化パターンを同定するのに使用できる(例えばManel Estellelら, New England J. Medicine, 第343巻, No.19, 2000を参照)。
【0029】
図面の説明
各図面の簡単な説明は後述する。
【0030】
本発明の態様を、例として添付の図面を参照しながらここに更に詳細に説明するが、それらは一例であって、限定しようとするものではない。本発明の更なる態様は、当業者には明らかであろう。本明細書中で引用される全ての文献は参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0031】
詳細な説明
非メチル化シトシンを亜硫酸水素ナトリウムでウラシルへと変換し、続いてウラシルをチミンへとPCRにより変換した後では、メチル化対立遺伝子および非メチル化対立遺伝子は、それらのGC含量が異なるために熱安定性が違っていると予測される(Guldbergら, 1998)。TmがGC含量に依存性であることの主な理由は、G:C塩基対が3つの水素結合を含み、A:T塩基対(2つの水素結合しか含まない)よりも安定なことである。図1に、どのようにして増幅産物のTmが元のDNAサンプル中のメチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子との比較によって測定されるのかを概略的に示す。全ての対立遺伝子が完全にmCを含んでいない場合は、全てのシトシンはチミンへと変換され、Tmが比較的低いPCR産物が生じる(図1A)。これに対して、全ての対立遺伝子が全てのCpGジヌクレオチドにおいてmCを含んでいる場合は、PCR産物のTmはそれより有意に高い(図1B)。DNAサンプルがメチル化されていないか完全にメチル化されている対立遺伝子の混合物を含んでいる場合、増幅によって、それぞれ低いTmおよび高いTmを有する2種の異なるPCR産物が生じる(図1C)。最後に、標的配列がメチル化「モザイク現象」を示す場合、すなわち同一サンプル中の個々の対立遺伝子間でmCの数が異なっている場合、PCR産物は異なるTmを有する分子のプールとなり、全体として中間のTmを示す(図1D)。
【0032】
Tmの差を最適に解析できるためには、DNA配列の解離特性を考慮することが重要である。後記で記載するように、DNA配列のTmは、単にA:T塩基対およびG:C塩基対の含量の関数ではない。
【0033】
DNA 解離理論
60℃以下の温度に保たれた水溶液中で、DNAは、向かい合う鎖の塩基対間での水素結合および同一鎖上の隣接塩基間のスタッキング相互作用(stacking interactions)により保持された二本鎖のらせん構造をとる。温度を急激に上昇させると、二本の鎖は離れ、一本鎖のランダムコイル構造をとる。このらせん鎖からランダム鎖へのトランジションは「DNA解離」と呼ばれ、化学的変性剤によっても誘導できる。DNAらせんを保持する力としては塩基対合とスタッキング相互作用の両者が含まれ、DNA分子の解離温度(Tm)は、GC含量によってではなく、配列全体により決定される。
【0034】
DNA分子を段階的な加熱に供すると、その分子は一連の工程で解離し、その各々の工程は「解離ドメイン」と呼ばれる個々のセグメントの解離に相当する(AbramsおよびStanton, 1992)。1つのDNA分子は数個の解離ドメインを含むことができ、それぞれ25〜300個の連続する塩基対からなり、一般に60〜90℃の範囲のTmを有する。各ドメインは、紫外線吸光度により測定した特異なハイパークロミシティプロファイルでピークをもたらし得る(20)。最も低い温度で解離するドメインは「最低解離ドメイン(lowest−melting domain)」と呼び、最も安定なドメインは「最高解離ドメイン(highest−melting domain)」と呼ぶ。
【0035】
DNA 解離特性(解離マップ)の理論的予測
Leonard Lermanの研究室で作成されたMELT84およびMELT94プログラム(Lerman LS. Silverstein K: Computational simulation of DNA melting and its application to denaturing gradient gel electrophoresis(DNA解離のコンピューターによるシミュレーションおよび変性勾配ゲル電気泳動へのその応用). Methods Enzymol 1987; 155: 482−501;およびLerman LS, Silverstein K. Fripp B, Sauer P, Dresselhaus C. http://web.mit.edu/osp/www/melt.htm)により、既知のDNA配列についての解離マップ(すなわち、配列の各塩基対がらせん構造と解離している構造との間で50:50の平衡になっている中間温度のプロット)が得られる。これらのプログラムは、DNA解離のためのPolandアルゴリズムのFixman−Friere変法を用いるものである。DNA断片の各解離ドメインは一本の横線として現れ、通常は両側で隣接するドメインとはっきり区切られている。MELTプログラムの修正バージョンは市販されているが(例えばBio−Rad社製のMacMELTTMプログラム)、鎖解離速度(生体分子の解離;後記を参照)を算出するための機能は備えていないことがある。MELTプログラムは、DNA分子のドメインパターンを予測するには非常に有用であるが、Tmの予測には有用ではない(AbramsおよびStanton, 1992)。
【0036】
一分子 DNA 解離 対 二分子 DNA 解離
MELTプログラムを用いて作製した解離マップは、一分子成分のDNA解離のみを表わすので、無制限に高いDNA濃度でのみ適合する。実験上適切な濃度では、二分子成分のDNA解離が重要となり、解離マップにより示されるように、最高ドメインの解離より低い温度においてDNA鎖の完全な解離が起こる。鎖解離速度は、所与温度における解離平衡定数により求められ、MELTプログラムを用いて見積もることが可能である。鎖解離温度は、GCクランプが結合することにより上昇し得る(Myersら, 1985)。
【0037】
断片の設計
メチル化含量の差異を解析するためには、最適なPCR増幅および増幅産物の最適な解離挙動が確実になるようにプライマー対を慎重に設計しなければならない。実験を設計するときに従わなければならない厳密な規定はなく、メチル化状態の違いは最適ではない条件下でも検出可能であるが、最適に解析を実行するには次のガイドラインが推奨される:
I.メチル化配列と非メチル化配列とのTmの差が、解離曲線分析による解析を可能にするのに十分高いものであることを確実にする;
II.(非メチル化配列およびメチル化配列の双方について)分析しようとする配列全体が1つの低解離ドメイン内に含まれることを確実にする;
III.鎖解離温度が対象の解離ドメインの解離温度よりも高いことを確実にする;
IV.プライマーが、亜硫酸水素塩で完全に変換されたDNAのみを増幅し、メチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子とを区別しないことを確実にする;
V.プライマーが、メチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子とを増幅レベルで区別しないことを確実にする。
【0038】
ポイントIについて 増幅された配列のTmは、元の鋳型内のメチル化部位の数と広く相関関係をとる。mCが1個違うだけでTmは異なりうるが(後記を参照)、装置固有のバラツキが制約となる。理想的には、標的配列内のCpG部位(または他のメチル化シトシン)の数は、比較的大きな温度変化率においてさえも解離ピーク同士が重ならないようにするのに十分多いものでなければならない。
【0039】
ポイント II について PCR産物中の複数の解離ドメインは、それに対応する数の解離ピークをもたらす。但し、これは、鎖解離が無視できるほど小さい場合である(これは読取りに有意に悪影響を及ぼす可能性がある)。更に、特定のCpGジヌクレオチドのメチル化状態の変化は、そのCpGが存在する解離ドメインのTmに対してのみ影響を及ぼす。好ましくは、標的領域の全てのCpG部位が増幅産物の1つの低解離ドメイン内に含まれるべきである。解離プロファイルの調整は、PCRによるGCクランプ化によって効率的に達成できる(Sheffieldら, 1989)。
【0040】
ポイント III について 鎖解離が有意なものになると如何に読取りが有意に悪影響を受け得るのか、そしてGCクランプの長さを長くすることにより如何に鎖解離温度が上昇し得るのか、についての一例を後記に示す。
【0041】
ポイント IV について プライマーの設計については、通常はClarkらにより提供されたガイドライン(Clarkら, 1994)に従うべきである。好ましくは、プライマーは、DNA領域が完全にCpGジヌクレオチドを含まないように設計されるべきであり、鋳型のGC含量が少ないために比較的長いもの(典型的には25〜30bp)とすべきであり、限られた範囲の内部相補性および限られた範囲のプライマー対同士の相補性を示すべきである。特にCpGアイランドにおいては、CpGを含まない領域を見い出して同定することは不可能であろう。この場合、プライマーはCpGを極力含まないようにしなければならず、メチル化配列および非メチル化配列の双方に対するミスマッチはCpGジヌクレオチドのC残基において組み込まれていなければならない(Clarkら, 1994)。増幅産物の純度は、nested PCRにより向上できる(Clarkら, 1994)。
【0042】
ポイントVについて 非メチル化DNA配列とメチル化DNA配列とは、亜硫酸水素処理した後のGC含量が異なる。したがって、亜硫酸水素処理したDNAの分析に付き物の落とし穴は、これら2種類の配列が等しい効率で増幅されず、有意な偏りを生じることである(Warneckeら, 1997)。現在、そのようなPCRにおける偏りを防止するのに利用できる一般的法則は存在しないので、メチル化DNAおよび非メチル化DNAの双方を(好ましくは1:1の割合で)含むサンプルを分析にすることによって実験的に排除すべきである。
【0043】
GC クランプ化についての要件
上記のように、1分子成分および2分子成分のDNA解離は共に、実験上適切なDNA濃度において有意なものになる。如何にしてこのことが解離転移に影響し得るのかについての一例を、MDR1遺伝子の107bp領域について示す(図6A)。解離マップ内の実線は、完全にメチル化されている構造(CpGジヌクレオチド内の全てのシトシンがメチル化されているもの)の上部DNA鎖についての1分子成分のDNA解離を表わす。解離マップ内の破線は、MELT94により算出した場合の計算上の鎖解離定数が10−6Mである等価温度(すなわち、鎖解離が起こると予測される温度)を示す。理論と実験データとの相関性は十分に文献記載されている(Myersら, 1985)。この解離マップの2つの特徴は重要である。まず第1に、この107bp断片は、約9℃だけ違っている2つの主要な解離ドメインを有する。第2に、鎖解離は、低解離ドメインのTmより高いが高解離ドメインのTmよりは低い温度で起こっている。したがって、高解離ドメインは、低解離ドメインが解離している間は二本鎖構造を取り続けているはずであるが、鎖解離はわずかに高い温度(1℃未満)で起こっている。これらの温度推移の各々が1つの解離ピークを生じるので、この断片の解離分析によって、Tmがわずかに異なる2つの解離ピークからなる複合的なプロファイルが得られる。これには2つの欠点がある。まず第1は、データの判読が非常に難しくなることであり、第2には、高解離ドメインにおけるメチル化含量の差異が解析されないままになる可能性があることである(Myersら, 1985;AbramsおよびStanton, 1992)。
【0044】
対象とする配列へのGCクランプのPCRによる結合は、2つの目的に役立つ(これは図6Bに例示されている)。まず第1に、GCクランプ化を用いて、(非メチル化配列およびメチル化配列の双方について)対象とする配列全体を1つの低解離ドメインへと変換できる。第2に、それを用いて、鎖解離温度を、対象とする配列を含む解離ドメインのTmよりずっと高く上昇させることができる。幾つかの増幅配列では、鎖解離が起こる温度は、1分子性解離が起こる温度よりも低くなることがある。そのような場合、GCクランプ化は必要ないと思われる。
【0045】
材料および方法
DNA サンプル
健常な個体およびアンジェルマン症候群もしくはプラダー−ウイリー症候群に罹患している患者からの末梢血、または急性骨髄性白血病(AML)に罹患している患者からの骨髄から単核細胞を得た。皮膚悪性メラノーマは、手術直後に液体窒素中で瞬間凍結し、使用まで−80℃で保存した。ゲノムDNAは、Puregene DNA単離キット(Genetra Systems)を用いて単離した。白血病細胞系MOLT−4およびHL−60からのDNAを、それぞれp15Ink4bメチル化についてのポジティブ対照およびネガティブ対照とした(11)。普遍的メチル化DNAは、製造元の指示書に従って正常な末梢血の単核細胞から単離されたゲノムDNAをSssIメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs)で処理することにより作製した。インフォームドコンセントを行った後で血液および骨髄のサンプルを得て、全ての手順は1975年のヘルシンキ宣言の現行バージョンに従った。
【0046】
亜硫酸水素ナトリウムによる変換
ゲノムDNAを、本質的に先に記載されているようにして亜硫酸水素ナトリウムで処理した(12、参照により本明細書に組み入れられる)。簡単に説明すると、約2μgのDNAを、0.3M NaOH中で37℃にて15分間変性した後、亜硫酸水素ナトリウムを最終濃度3.1Mで、そしてヒドロキノンを最終濃度2.5mMで添加した。55℃で16時間インキュベートした後、そのDNAサンプルをGeneClean IIキット(Bio 101 Inc.)を用いて回収し、0.3M NaOH中で脱スルホン化し、エタノール沈殿させた。DNAをTEに再懸濁し、直ちに使用するか、あるいは使用まで−80℃で保存した。
【0047】
プライマーの設計および PCR 増幅
解離マップは、MELT94プログラム(13)を用いて作製した。亜硫酸水素塩で変換したアンチセンス鎖DNAに特異的なプライマーを選択して、低分子量リボ核タンパク質関連ポリペプチドN遺伝子(SNPRN)プロモーターのCpGアイランドの一領域(GenBankアクセッションL32702、153〜305番目の塩基)を増幅した。この領域は、アンジェルマン症候群およびプラダー−ウイリー症候群において特異にメチル化されていることが知られている領域(14)の内部にある。プライマーはSNRPN−A [CGGGCGGGGG]−CATACTCAAACTAAAATATATACTAAACCTACCおよびSNRPN−B [CGCCCGCCGCGCCCCGCGCCCGTCCCGCCGCCCCCGCCCG]−AGAGAAGTTATTGGTATAGTTGATTTTGTTとした。APCプロモーター1AのCpGアイランドのセンス鎖(GenBankアクセッションU02509)を増幅するためのプライマーは、[CGCC]TGGGAGGGGTTTTGTGTTTTATT(APC−MC−A)およびCGCCCGCCGCGCCCCGCGCCCGTCCCGCCGCCCCCGCCCG]−CCATTCTATCTCCAATAACACCCTAA(APC−MC−B)とした。カッコ内のヌクレオチドはGCクランプを示す。P15Ink4bプロモーターのCpGアイランドを増幅するためのプライマーは、先に記載されているとおりとした(11)。PCRは、100〜200ngの亜硫酸水素処理したDNA、10mMのTris−HCl(pH 8.3)、50mMのKCl、1.5mMのMgCl、0.2mMのdNTP、0.4μMの各プライマーおよび1UのAmpliTaqポリメラーゼ(Perkin−Elmer)を含む最終容量25μlで行った。PCRは、ブロックサーモサイクラー(GeneAmp PCR System 9600;Perkin−Elmer)を用いて、ホットスタートで開始し、続いて94℃で30秒、55℃で30秒および72℃で30秒を39サイクル行い、72℃で5分の最終伸長を行った。PCR産物を、2〜3%のアガロースゲル(FMC)での電気泳動により調べた。
【0048】
LightCycler(Roche Molecular Biochemicals)での増幅では、LightCycler DNA Master SYBR Green Iキット(Roche Molecular Biochemicals)を使用した。増幅の前に、2μlの10×LightCycler DNA Master SYBR Green Iを0.16μlのTaqStart Antibody(Clontech)と混合し、室温で5分間インキュベートした。PCRを、2μlの10×LightCycler DNA Master SYBR Green I、3mMのMgCl(最終濃度)、200ngの亜硫酸水素処理したDNAおよび0.5μMの各プライマーを含む20μlの反応物中で行った。PCRは、95℃で1分間インキュベートして開始してTaqStart Antibodyを変性させ、続いて95℃で5秒、55℃で10秒および72℃で15秒を40〜50サイクル行った。SYBR Green Iの蛍光は、各サイクル毎に1回測定して、鋳型の増幅をモニターした。
【0049】
解離曲線および解離ピークの作製
DNA解離曲線は、LightCyclerで、70℃から100℃まで0.1℃/秒で直線的に温度変化させた間でのSYBR Green Iの蛍光(F)を測定することにより得た。蛍光データは、LightCyclerソフトウエア(バージョン3.39)を用いて、蛍光/温度の負の導関数対温度(−dF/dT対T)でプロットすることにより、解離ピークに変換した。ブロックサーモサイクラーで作製したPCR産物については、5μlのPCR産物を10 Lの1.5×PCR緩衝液および5μlのSYBR Green I(Molecular Probes)の1:5,000希釈液、5μlのPicogreen(Molecular Probes)の1:1,250希釈液もしくは5μlの臭化エチジウム(Sigma)の1:1,250希釈液と混合した後で、解離曲線分析を行った。特に指示しない限り、解離曲線分析は、SYBR Green Iの存在下で行った。LightCyclerで作製したPCR産物については、解離曲線分析は、増幅の直後に行った。
【0050】
結果
DNA メチル化プロファイリングについての解離曲線分析の基本原理
二本鎖DNA分子を段階的加熱に供すると、一連の工程(各工程がいわゆる「解離ドメイン」と呼ばれる個々のセグメントの解離に相当する)で解離する。一般に、解離ドメインのTmは、GC含量が高いほど増大する。亜硫酸水素ナトリウムにより非メチル化シトシンからウラシルへと変換し、続いてPCRによりウラシルをチミンへと変化した後では、メチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子は、それらのGC含量の違いによって熱安定性が違っていると予測される(15)。
【0051】
図1に、どのようにして増幅産物のTmが元のDNAサンプル中のメチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子との比較によって求められるのかを概略的に示す。全ての対立遺伝子が完全にmCを含んでいない場合は、全てのシトシンはチミンへと変換されて、比較的Tmが低いPCR産物を生じる(図1A)。これに対して、全ての対立遺伝子が全てのCpGジヌクレオチドにおいてmCを含んでいる場合は、PCR産物のTmはそれよりも有意に高い(図1B)。DNAサンプルがメチル化されていないまたは完全にメチル化されている対立遺伝子の混合物を含む場合は、増幅によって、それぞれ低いTmおよび高いTmを有する2種の異なるPCR産物が生じる(図1C)。最後に、標的配列がメチル化「モザイク現象」(すなわち、mCの数が同一サンプル中のそれぞれの対立遺伝子間で異なる)を示す場合は、PCR産物は異なるTmを有する分子のプールとなり、その結果、全体として中間のTmを示す(図1D)。
【0052】
SNRPN 遺伝子の試験管内解離曲線分析
低分子量リボ核タンパク質関連ポリペプチドN(SNRPN)をコードする遺伝子は、DNAメチル化の異なる対立遺伝子コンステレーション(constellations)の解離プロファイルを調べるのには都合の良いモデルである。SNRPNは、15q11−q13染色体のインプリント調節領域に位置し、そのプロモーターは通常、母系染色体上では完全に(全てのCpGジヌクレオチドの96%を超える)メチル化されており、父系染色体上では完全にメチル化を欠如している(14)。プラダー−ウイリー症候群およびアンジェルマン症候群の2種の遺伝性発達障害は、このSNRPN領域の大きな欠失、片親性ダイソミーまたはインプリント突然変異により引き起こされる。正常な個体はメチル化SNRPN対立遺伝子および非メチル化SNRPN対立遺伝子の双方を有するが、プラダー−ウイリー症候群に罹患している患者はメチル化対立遺伝子しか有さず、アンジェルマン症候群に罹患している患者は非メチル化対立遺伝子しか有しない(16)。
【0053】
図2Aに、11のCpGジヌクレオチドを含むSNRPNのCpGアイランドの153bpのゲノムDNA領域の解離マップを示す。この領域は、67%のGC含量を有し、推定される最大Tmは85℃である。亜硫酸水素ナトリウムで処理し、続いてPCRを行ったところ、元の鋳型のmC含量により求めたGC含量およびTmを有する2種の異なる非相補的鎖が形成される。アンチセンス鎖では、完全メチル化配列は、33%のGC含量および70℃の最大Tmを有するが、非メチル化配列は26%のGC含量および66℃の最大Tmを有する(図2A)。
【0054】
正常な個体、プラダー−ウイリー症候群に罹患している患者およびアンジェルマン症候群に罹患している患者からのDNAサンプルを亜硫酸水素ナトリウムで処理し、続いてSNPRNプロモーターのCpGアイランドを、亜硫酸水素処理したDNAには特異的であるがメチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子とを区別しないプライマーを用いて増幅しGCクランプ化した。メチル化SNPRN対立遺伝子または非メチル化SNPRN対立遺伝子に由来する増幅産物の解離マップを図2Bに示す。非メチル化SNRPN領域を含むGCクランプ化配列は、推定Tmが64.9℃である低温解離ドメインを有するが、完全メチル化配列では、このドメインのTmは68.3℃である(図2B)。慣用のPCRにより、全てのサンプルは予想どおりの長さの産物を生じ、意図しない産物は生じなかった(図示せず)。
【0055】
3種のPCR産物の解離分析から、二本鎖DNA色素SYBR Green Iの蛍光(F)の単相性または二相性の低下が示された(図3A)。解離曲線を、蛍光の負の導関数を温度対温度(−dF/dT対T)でプロットすることにより解離ピークに変換すると、それら3種のサンプルは容易に区別できるようになった(図3B)。アンジェルマン症候群に罹患している患者からの亜硫酸水素処理したDNAでは、見掛けのTmが77.4℃である単一の解離ピークが観察され、一方、プラダー−ウイリー症候群に罹患している患者からのDNAでは、見掛けのTmが80.3℃である単一のピークが得られた。正常な個体からのDNAでは、見掛けのTmがそれぞれ77.3℃および80.3℃である2つの解離ピークが観察された(図3B)。
【0056】
この方法の再現性を調べるために、本発明者らは、SNRPNモデルを使用して、試験管間(inter−tube)およびサンプル間(inter−sample)でのバラツキを調べた。正常な個体のDNAから作製した同一のSNRPN PCR産物を7つの個々のガラスキャピラリーに分配したところ、Tmは非メチル化のピークおよびメチル化のピークの双方について約0.3℃ずつ違っていた。同じDNA鋳型を7種の独立した反応物中で増幅して解離曲線分析に供した場合、Tmのバラツキは約0.4℃であった。4人の異なる個体からのDNAを用いて更にもう1回一連の実験を行った場合は、Tmのバラツキは0.6℃未満であり、平均Tmはいろいろな日数について行った実験間で変わらなかった。これらのデータから、固定したアッセイ条件下では解離ピークのデータは再現性が高いこと、およびTmのほんの僅かなバラツキは、少なくとも一部は、サンプルの円形コンベア(caroussel)の温度の差が原因である可能性があることが示唆され、これはLightCyclerシステムの技術仕様書(LightCyclerオペレータマニュアル、バージョン3.0)と一致する。最初の加熱および解離プロファイルの前の再アニーリングは、おそらく増幅されたDNAと過剰なプライマーとのヘテロ二本鎖および/またはハイブリッドが形成されるためである(データは示さず)。
【0057】
不均一メチル化パターンの試験管内検出
解離曲線分析による不均一(heterogenous)メチル化パターンの解析の実現可能性を調べるために、本発明者らは、p15Ink4b腫瘍抑制遺伝子のプロモーターCpGアイランドを調べたところ、急性骨髄性白血病(AML)に罹患している患者の間で、メチル化密度の個体内および個体間での高程度のバラツキを示した(11;17)。AML患者および対照細胞系からの亜硫酸水素処理したDNAを、27のCpGジヌクレオチドを含むp15Ink4bの領域に隣接するプライマー(11)を用いて増幅しGCクランプ化した。図5に示すように、非メチル化細胞系HL−60からのDNAは、見掛けのTmが81.3℃である解離ピークを示し、一方、メチル化MOLT−4細胞系からのDNAでは、見掛けのTmが88.9℃のピークが観察された。不均一にメチル化されているp15Ink4b対立遺伝子を高比率で含むことが先に示されている2種のAMLサンプルからのDNA(11)では、解離転移は広がる傾向があり、解離ピークはそれぞれ84.4℃および86.2℃のTmを有していた。したがって、理論に従えば(図1D)、不均一にメチル化されているDNAを含むサンプルは、それに対応する非メチル化配列と完全メチル化配列との間の解離ピークのTm値を示す。
【0058】
解離曲線の取得をLightCyclerでの市販のキットの成分を用いるPCRと組み合わせた場合、HL−60およびMOLT−4のp15Ink4b解離ピークプロファイルは、ブロックサーモサイクラーで作製したPCR産物を用いて得られたものとほぼ同じであった(データは示さず)。しかし、解離ピークは有意にシフトしており(HL−60ではTm=83.6℃、MOLT−4ではTm=92.4℃)、これはおそらく、MgClの濃度が違うこと、およびdTTPのdUTPによる置換による可能性がある。
【0059】
実施例
このセクションには、本発明の各種態様の実施例が含まれる。実験的な実施例は、次のように5つのカテゴリーに分類されている。メチル化DNA配列と非メチル化DNA配列とを識別するための「基本的」アッセイの実施例(A);ヒト遺伝性疾患において異常なDNAメチル化を検出するための実施例(B);ヒト腫瘍において異常なメチル化を検出するための実施例(C);mCの数の僅かな差異を検出するための実施例(D);異なる二本鎖DNA結合色素を用いて異常なメチル化を検出するための実施例(E)。
【0060】
A.解離曲線分析による DNA メチル化の解析
以下の2つの実施例は、PCR解離曲線分析によるヒト遺伝子における特異なDNAメチル化の解析を示す。標準的な手順は、次のものを含むものとした:
I.ゲノムDNAの単離
II.ゲノムDNAの亜硫酸水素ナトリウムによる処理
III.ブロックサーマルサイクラーでのPCR産物の作製
IV.アガロースゲル電気泳動による増幅産物の分析
V.LightCyclerシステムを用いた二本鎖DNA結合蛍光色素SYBR Green Iの存在下での解離曲線分析。
【0061】
両方の場合において、PCR増幅およびGCクランプ化のためのオリゴヌクレオチドプライマーは、セクション5.4に記載されている一般原理に基づいて選んだ。in vitroでSssIメチルトランスフェラーゼで処理したDNAを、メチル化対立遺伝子のポジティブ対照として用いた(下記のポイントVIを参照)。
【0062】
HIC1
HIC1遺伝子(アクセッションNo. NM 006497)のメチル化状態を調べるために、亜硫酸水素処理したDNAの上部鎖の117bp領域(76位〜192位)を増幅するためのプライマーを作製した。プライマー結合部位には二重線がひいてある。5’末端プライマーは40bpのGCクランプを用いて伸長し、3’末端プライマーは9bpのGCクランプを用いて伸長した(カッコ内に示す)。プライマー結合部位間の領域は、9つのCpGジヌクレオチド部位(一本線を引いてある)を含む。最終増幅産物は166bpである。
【0063】
5’[cgcccgccgcgccccgcgcccgtcccgccgcccccgcccg]ataattagCGtattaagggttttttgtgCGCGtgattatCGtggtgtagaaCGttttttttCGCGCGtataagaaCGtgttggCGgt tagtagCGtttattttaagtttttggtgg[gccgcccgc]3’
MELT94アルゴリズムを用いて作製した解離マップによれば、低解離ドメインは、メチル化配列については70.9℃および非メチル化配列については66.8℃のTmを有する。SssIでメチル化したDNAおよび正常な末梢血リンパ球からのDNAを亜硫酸水素ナトリウムで処理し、上記のプライマー対を用いて増幅した。双方のDNAサンプルは、予想どおりの長さの産物を生じ、非特異的な産物は生じなかった。PCR産物をSYBR Green Iと混合し、解離分析に供した。蛍光/温度の負の導関数対温度(−dF/dT対T)でプロットすることにより解離曲線を解離ピークに変換したところ、正常なリンパ球からの亜硫酸水素処理したDNAでは見掛けのTmが82.63℃である単一のピークが観察され、亜硫酸水素処理したSssIメチル化DNAでは見掛けのTmが84.97℃である単一のピークが観察された(図7)。
【0064】
DAPK
DAP−キナーゼ(DAPK)遺伝子(アクセッションNo. X76104)のメチル化状態を調べるために、亜硫酸水素処理したDNAの上部鎖の103bp領域(17位〜119位)を増幅するためのプライマーを作製した。プライマー結合部位には二重線がひいてある。5’末端プライマーは40bpのGCクランプを用いて伸長し、3’末端プライマーは5bpのGCクランプを用いて伸長した(カッコ内に示す)。プライマー結合部位間の領域は、6つのCpGジヌクレオチド部位(一本線を引いてある)を含む。最終増幅産物は148bpである。
【0065】
5’[cgcccgccgcgccccgcgcccgtcccgccgcccccgcccg]CgagttaaCGtCGgggattttgttttttttaCGgaggggattCGgtaattCGtagCGgtagggtttggggtCGCGtttgggagggatttgCGttttttattt[ccgcc]−3’
MELT94アルゴリズムを用いて作製した解離マップによれば、低温解離ドメインは、メチル化配列については73.5℃および非メチル化配列については68.5℃のTmを有する。SssIでメチル化したDNAおよび正常な末梢血リンパ球からのDNAを亜硫酸水素ナトリウムで処理し、上記のプライマー対を用いて増幅した。双方のDNAサンプルは、予想どおりの長さの産物を生じ、非特異的な産物は生じなかった。PCR産物をSYBR Green Iと混合し、解離分析に供した。蛍光/温度の負の導関数対温度(−dF/dT対T)でプロットすることにより解離曲線を解離ピークに変換したところ、正常なリンパ球からの亜硫酸水素処理したDNAでは見掛けのTmが84.63℃である単一のピークが観察され、亜硫酸水素処理したSssIメチル化DNAでは見掛けのTmが87.84℃である単一の解離ピークが観察された(図8)。
【0066】
B.ヒト遺伝性障害(プラダー ウイリー症候群およびアンジェルマン症候群)における異常 DNA メチル化の検出
低分子量リボ核タンパク質関連ポリペプチドN(SNRPN)をコードする遺伝子は、15q11−q13染色体のインプリント調節領域内に位置し、そのプロモーターは通常、母系染色体上では完全に(全てのCpGジヌクレオチドの96%を超える)メチル化されており、父系染色体上では完全にメチル化が欠如している(Zeschnigkら, 1997)。プラダー−ウイリー症候群およびアンジェルマン症候群の2種の遺伝性発達障害は、このSNRPN領域の大きな欠失、片親性ダイソミーまたはインプリント突然変異により引き起こされる。正常な個体はメチル化SNRPN対立遺伝子および非メチル化SNRPN対立遺伝子の双方を有するが、プラダー−ウイリー症候群に罹患している患者はメチル化対立遺伝子しか有さず、アンジェルマン症候群に罹患している患者は非メチル化対立遺伝子しか有しない(Nichollsら, 1998)。
【0067】
SNRPN遺伝子(受託番号L32702)のメチル化状態を調べるために、亜硫酸水素処理したDNAの下部鎖の153bp領域(pos. 153〜305)を増幅するためのプライマーを作製した。プライマー結合部位には二重線がひいてある。5’末端プライマーは10bpのGCクランプを用いて伸長し、3’末端プライマーは40pbのGCクランプを用いて伸長した(カッコ内に示す)。プライマー結合部位間の領域は、11のCpGジヌクレオチド部位(一本線を引いてある)を含む。最終増幅産物は203pbである。
【0068】
Pos.153
3’[cgcccgccgc]gtatgagtttGCttttatatatGCtttggatgGCgatgatgttGCttagattGCgttttattttGCtgGCGCttttatggattGCgtagatagattttttGCtagttattGCGCtattttGCttgttttagttgatatgGCtattgaagaga[cgcccgccgcgccccgcgcccgtcccgccgcccccgcccg]5’ Pos.305
MELT94アルゴリズムを用いて作製した解離マップによれば、低解離ドメインは、メチル化配列については68.3℃および非メチル化配列については64.9℃のTmを有する。見掛け上は健常な個体、プラダー−ウイリー症候群に罹患している患者およびアンジェルマン症候群に罹患している患者からのDNAサンプルを亜硫酸水素ナトリウムで処理し、上記のプライマー対(セクションAに記載されている条件)を用いて増幅した。全てのDNAサンプルは、予想どおりの長さの産物を生じ、非特異的な産物は生じなかった。PCR産物をSYBR Green Iと混合し、解離分析に供した。蛍光の負の導関数を温度対温度(−dF/dT対T)でプロットすることにより解離曲線を解離ピークに変換したところ、見掛けのTmがそれぞれ77.3℃および80.3℃である2つの解離ピークが観察された(図3A)。アンジェルマン症候群に罹患している患者からの亜硫酸水素処理したDNAでは、見掛けのTmが77.4℃である単一の解離ピークが観察され、一方、プラダー−ウイリー症候群に罹患している患者からのDNAでは見掛けのTmが80.3℃である単一のピークが観察された(図3B)。
【0069】
C.固形腫瘍(悪性メラノーマ)における APC プロモーターのメチル化の検出
大腸腺腫症遺伝子(APC)は、家族性および散発性の癌に関連する腫瘍抑制遺伝子である。生殖細胞系APC突然変異は、家族性大腸腺腫症(FAP)の原因であり、突然変異または異常なプロモーターメチル化によるAPCの体性不活性化は、散発性の結腸直腸癌、胃癌、乳癌および肺癌において実証されている。APCの機能不全は、β−カテニンの細胞内蓄積を引き起こす。
【0070】
APCプロモーターメチル化がメラノーマ細胞におけるβ−カテニンの異常蓄積に関与するか否かを調べるために、APCプロモーター1Aのメチル化状態を、悪性メラノーマに罹患している患者からの原発性および転移性腫瘍における解離曲線分析により分析した。メラノーマ検体からのDNAを、亜硫酸水素ナトリウムで処理し、プライマーAPC−MC−AおよびAPC−MC−Bを用いて増幅した。正常なメラノサイトからの亜硫酸水素処理したDNAを、非メチル化APC対立遺伝子のポジティブ対照とし、14のmCを提示するクローン(上記を参照)をメチル化APC対立遺伝子のポジティブ対照とした。その後の解離曲線分析の例を図9に示す。幾つかのメラノーマサンプルは2つの明確な解離ピークを示し(図9C〜F)、それぞれ非メチル化APC対立遺伝子および完全メチル化APC対立遺伝子のピークに該当する。2つのピークの高さはサンプル間で異なっており、これはおそらく、メチル化APC対立遺伝子と非メチル化APC対立遺伝子との割合が異なることを反映していると思われる。これらのサンプル中でのメチル化APC対立遺伝子の存在は、メチル化特異的PCR分析により確認した(未公表のデータ)。これらのデータから、解離曲線分析が固形腫瘍(かなりの量の正常な非癌性組織を含む)においてDNAメチル化を検出するのに使用できることを実証される。
【0071】
D. 含量の些少の差の解析
Cが1つだけ異なる2種の対立遺伝子は、亜硫酸水素で処理した後で1つの塩基対(A:T対G:C)が違ってくる。理論上、このGC含量の差異はTmを変化させ、その大きさは標的配列の長さおよび配列内でのその塩基の違いの正確な位置に依存する。本発明の感度を調べるために、異なる数のmCを保有する対立遺伝子に対応する個々にクローニングしたPCR産物を分析した。メラノーマ細胞系(FM91)からの亜硫酸水素処理DNAから作製したPCR産物の3つのクローン(これらは異なるAPCプロモーター1Aのメチル化を示す(未公表のデータ)を、LightCyclerでプライマーAPC−MC−AおよびAPC−MC−Bを用いて増幅した。これらのプライマーは、APCプロモーター1A内に15のCpG部位を含む240bpのPCR産物を産生する。同じプライマーを用いて、正常なメラノサイト(APCプロモーター1Aメチル化の証拠を何も示さない(未公表のデータ))からの亜硫酸水素処理DNAを増幅した。増幅産物の解離曲線分析から、全てのサンプルについての1つの解離ピークが明らかになった(図10)。見掛けのTmは、非メチル化対照(メラノーマ細胞)では83.7℃、6つのmCを提示するクローンでは84.7℃、8つのmCを提示するクローンでは85.3℃、14のmCを提示するクローンでは86.4℃であった。これらのデータから、わずかなmC含量の違いであっても解離曲線分析によって解析できることが実証される。
【0072】
E.別の二本鎖 DNA 特異的色素
多数の蛍光色素が、二本鎖DNAに結合すると、それらの蛍光特性を変化させる。臭化エチジウムは、二本鎖DNAに結合した後に30倍増大する適度な特有の蛍光を有する。それよりも新規な生成色素(例えばPicoGreenおよびSYBR Green I)は、溶液中で遊離している時は本質的に非蛍光性であるが、二本鎖DNAに結合すると高度に蛍光性となる。
【0073】
解離曲線分析によるDNAメチル化の解析における各種の二本鎖DNA特異的色素の適用可能性を調べるために、SssIでメチル化したDNAおよび正常な末梢血リンパ球からのDNAを亜硫酸水素ナトリウムで処理し、プライマーAPC−MC−AおよびAPC−MC−Bを用いて増幅して、APCプロモーター1A内に15のCpG部位を含むPCR産物を得た。5μlのPCR産物を、10μlの1.5×PCR緩衝液および5μlのSYBR Green Iの1:5,000希釈液、5μlのPicoGreenの1:1,250希釈液もしくは5μlの臭化エチジウムの1:1,250希釈液物と混合した。DNA解離曲線は、LightCyclerにて、SYBR Green I、PicoGreenおよび臭化エチジウムの蛍光をそれぞれ測定し、続いて蛍光の負の導関数を温度対温度(−dF/dT対T)でプロットすることにより解離ピークに変換することによって得た。図11に示すように、3種の色素は全て、メチル化APC対立遺伝子および非メチル化対立遺伝子の解析を可能にしたが、臭化エチジウムを用いて得られたピーク(図11A)はPicoGreen(図11B)またはSYBR Green I(図11C)を用いて得られたものよりも明確ではなかった。非メチル化APC対立遺伝子についての見掛けのTmは、臭化エチジウムでは84.42℃、PicoGreenでは84.88℃、SYBR Green Iでは84.95℃であった。これに対応するメチル化APC対立遺伝子についてのTmは87.83℃、87.39℃、87.49℃であった。これらのデータから、各種の二本鎖DNA特異的色素が解離曲線分析によるDNAメチル化の解析に使用できることが実証される。
【0074】
可能な装置の例
図12に、PCR産物が固定されているスライドガラスフォーマット上で解離アッセイを行うための装置を示す。チャンバーは温度制御されており、PCR産物の解離温度は、それらが固定されている位置で蛍光シグナルを検出することにより測定できる。CCDカメラを使用すれば、複数のシグナルを同時に観察することができる。この図中で使用されるナンバリングシステムは次のとおりである:1.スライド、2.反応チャンバー、3.サンプル容器、4.チャンバーの蓋、5.シリンジポンプへのチューブ、6.加熱要素、7.ペルチェ要素、8.加熱シンク、9.放射状仕切体(radiation partitioner)、10.CCDカメラ、11.反射光学系、12.フィルター(発光波長用)、13.フィルター(活性化波長用)、14.集光光学系、および15.光源。
【0075】
上記で述べたように、本発明は、予め調製されているキットを用いて行うことができる。このキットは、本発明の第1または第2の態様の方法を実施するのに必要な種々の要素を含み得る。これらの要素としては、本発明の第1の態様における変換型の標的核酸または本発明の第2の態様における試験核酸および対照核酸のための特異的プライマーが挙げられる。本発明の1つの実施形態において、これらのプライマーの1つは、チップなどの固相支持体上に固定することができる。この実施形態を説明する2つの実施例を以下に示す。
【0076】
1.上記で記載したようなプライマーを用いた増幅は、固相上に固定された1つのプライマーおよび溶液の形態の第2のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応を用い、緩衝液にシグナル物質を添加して行うことができる。好ましくは、図12に示すような装置のセットアップを使用する。固相表面上の異なる位置に、違った標的核酸配列に特異的な異なるプライマーを固定することができるので、異なる既知のPCR産物が別々の既知の位置で合成される。シグナル物質はここでもまた、二本鎖核酸と一本鎖核酸とを区別できるようにするものである。取り込まれたシグナル物質の量は減少するが、DNAは解離し、これは固相の大部分について同時に測定される。表面は温度制御することができ、温度が上昇すると、蛍光シグナルは固相表面上の各スポットでDNAの解離の関数として低下する。
【0077】
2.第2の実施例では、この方法を、測定に関しては上記に記載されているのと同様にして行うが、PCR産物の固定は別のやり方で行う。この方法を用いると、1つ以上のサンプルからの多数の異なるPCR産物がそれぞれ2つのプライマーを用いて作製される。各々の対のプライマーの少なくとも一方は、それが固相表面上に結合するように(例えばチオールもしくはアミノ修飾を用いて)修飾され、それは市販されている。他の特異的結合メンバーは当業者には公知であり、例えばビオチン/アビジン、抗体/抗原または酵素/リガンドが挙げられる。市販されており当業者には公知であるチップスポット装置を用いて、これらのPCR産物が表面に固定される。続いて、上記で記載したような測定を行う。
【0078】
考察
本発明者らは、蛍光解離曲線分析が、異常DNAメチル化パターンの検出のためのPCRと完全に併合できる、迅速で費用対効果の高い方法であることを示した。サンプルDNAの亜硫酸水素による変換を行ってしまえば、サンプルのスクリーニングは、標準的なPCR試薬を用いることにより、45分以内に完了することができる。手作業によりPCR産物を移す必要がないのでPCRによるコンタミネーションが有意に低減することを考慮すると、この方法は、従来のゲルを用いるメチル化アッセイの魅力的な別法となる。
【0079】
解離曲線分析によるメチル化解析を成功させるためには、PCRプライマーを適切に設計することが重要である。まず第1に、プライマーは、メチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子とをヌクレオチドレベル(18)でも増幅レベル(19)でも区別してはならない。第2に、PCR産物内に複数の解離ドメインが存在すると、それに対応する数の解離ピークが生じるので(20)、特定のCpGジヌクレオチドのメチル化状態の変化は、そのCpGが存在する解離ドメインのTmに対してのみ影響を及ぼす。好ましくは、標的領域の全てのCpG部位が増幅産物の1つの低解離ドメインに含まれるべきである。解離プロファイルの調節は、幾つかの利用可能なコンピューターアルゴリズムの中の1つをPCRによるGCクランプ化と組み合せて用いることにより容易に達成できる(21)。この研究において用いられるMELT94アルゴリズムは、実験値よりも有意に低い理論上のTm値を与えるが、DNA分子のドメイン構造を予測する上では非常に正確である(未公表のデータ)。
【0080】
温度変化率ならびに塩および色素の濃度は、PCR産物の解離ピークの幅および絶対的位置に大きな影響を及ぼす可能性があり(20;22;23)、再現性のある結果を得るためには適切に調節されなければならない。ルーチンなハイスループットの用途では、温度変化率は、速度と解像度との最良の兼ね合いとして選べばよいと思われる。変化率が大き過ぎると、ピークが広くなり、メチル化対立遺伝子と非メチル化対立遺伝子とを区別しにくくなることがある。ヒトSNRPN遺伝子について図3に示すように、0.1℃/秒の変化率で11のCpG部位を含む領域の単一対立遺伝子メチル化を分析すると、通常は、重なり合うが区別可能であり約3℃のTm差を有する2つの解離ピークが生じる。この変化率では、解離曲線分析は4分以内に完了できる。温度変化率を下げること、標的配列内のCpG部位の数を増やすこと、または解離分析の際の温度調節の精度を高めることにより、重なり合わない解離ピークを得ることが可能である。
【0081】
SYBR Green Iまたは他のPCRに適合する二本鎖DNA特異的色素の使用による解離曲線分析に特有の可能性のある落とし穴は、目的のPCR産物と意図しない産物(プライマー二量体など)との区別が不可能である場合があることである。したがって、例えば「ホットスタート」および「タッチダウン」の工程を組み入れることによって意図しない配列の不注意な増幅を完全に防止するPCRプロトコールを開発する必要がある。可能性のあるもう1つの意図しない産物の発生原因は、PCRの間に伸長しつつあるプライマーが別の鋳型へジャンプする「ジャンピングPCR」(24)である。鋳型DNAがメチル化対立遺伝子および非メチル化対立遺伝子の双方を含む場合、早まって終結してしまった産物が、配列相同性が高いために、逆のタイプの鋳型を伸長させることがあり、これにより、混成のメチル化パターンおよび中間のTmを有するキメラ分子のin vitro形成が起こる可能性がある。
【0082】
本発明の方法の最も強力な特徴の1つは、不均一なメチル化パターンを解析できることである。AMLに罹患している患者からの骨髄サンプルの先の研究から、幾つかの腫瘍抑制遺伝子のプロモーター配列内のmCの含量および分布が、同一患者からの各種の細胞間で有意に相違することが実証されている(11;17;25;26)。更に、非癌性組織におけるプロモーターCpGアイランドの不均一メチル化は、プロラクチンおよび成長ホルモンをコードする遺伝子について実証されており(27)、この現象が生物学的プロセスでは、従来評価されていたものよりもずっとよく見られることが示唆される。p15Ink4b遺伝子プロモーターについて図4に示されているように、不均一にメチル化されているAMLサンプルは、解離分析により、非メチル化対立遺伝子のTmと完全メチル化対立遺伝子のTmとの間の全てひっくるめたTmを有する広い解離ピークによって容易に識別できる。解離曲線分析は個々の対立遺伝子もしくは個々のCpGのメチル化状態についての情報は提供しないが、特定の遺伝子および遺伝子座における全体的なメチル化状態についてサンプルを迅速にスクリーニングするのには非常に有用である。
【0083】
近年、MSPとリアルタイム定量PCRとを組み合せたメチル化方法が開発された(28;29)。慣用のMSPと比較したリアルタイムMSPの重要な利点は、試験管内フォーマットおよびその定量範囲である。この方法の欠点は、それが高価なハイブリダイゼーションプローブを必要とすること、各設定毎に標準曲線を作製しなければならないこと、不均一なメチル化が検出できない可能性があること、およびメチル化対立遺伝子および非メチル化対立遺伝子の分析を別々の試験管内で行わなければならないことである。一方、解離曲線分析は、高価な試薬を必要とせず、不均一なメチル化を解析し、1つの反応でメチル化対立遺伝子および非メチル化対立遺伝子を半定量的な様式で検出する。
【0084】
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本発明の第2の態様に関連する参考文献
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【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、DNAメチル化パターンを解析するための解離曲線分析の原理を示す。
【図2】
図2は、(A)未処理のゲノムDNA(曲線「a」)および亜硫酸水素ナトリウムで処理した後のDNA(曲線「b」、メチル化下部鎖;曲線「c」、非メチル化下部鎖)におけるSNRPNプロモーターの153bp領域のコンピューター処理した解離マップ、(B)203bpのGCクランプ化SNRPN PCR産物(曲線「d」、メチル化されたもの;曲線「e」、メチル化されていないもの)について算出した解離マップを示す。
【図3】
図3は、SNRPN遺伝子についての蛍光解離曲線(A)および解離ピーク(B)を示す。亜硫酸水素処理したDNAは、プラダー−ウイリー(Prader−Willi)症候群に罹患している患者(曲線「a」)、正常な個体(曲線「b」)およびアンジェルマン(Angelman)症候群に罹患している患者(曲線「c」)から増幅した。解離曲線のための蛍光データは、SYBR Green Iの存在下でPCR産物を70℃から98℃まで0.1℃/秒の変化率で加熱することにより得た。解離ピークは、蛍光の負の導関数を温度対温度(−dF/dT対T)でプロットすることにより得た。
【図4】
図4は、p15Ink4b遺伝子についての蛍光解離ピークを示す。亜硫酸水素処理したDNAは、2種の対照細胞系HL−60(メチル化されていないもの、曲線「a」)およびMOLT−4(完全にメチル化されているもの、曲線「b」)ならびにAMLに罹患している患者からの骨髄細胞(曲線「c」および「d」)から増幅した。
【図5】
図5は、本発明の第2の態様に関連する。図5Aは、N−ras原癌遺伝子の第2エキソンの解離マップを示す。図5Bは、対照低温解離ドメイン(「a」)および高温解離ドメイン(「GCクランプ」)(「c」)を人為的に付加した後の同じ領域の解離マップを示す。
【図6】
図6は、MDR1遺伝子の107bp領域の解離転移を示す(図6A)。解離マップ内の実線は、完全にメチル化されている形態(CpGジヌクレオチド中の全てのシトシンがメチル化されているもの)の上部DNA鎖についてのDNA解離の一分子成分を表わす。解離マップ内の破線は、MELT94により算出した場合の計算上の鎖解離定数が10−6Mである等価温度(すなわち、鎖の解離が起こると予測される温度)を示す。関心の持たれる配列へのGCクランプのPCRによる結合は、図6Bに示す。
【図7】
図7は、HIC1遺伝子についての蛍光解離ピークを示す。Sss I処理したDNA(曲線「M」)および正常なリンパ球からのDNA(曲線「U」)を亜硫酸水素ナトリウムで処理し、PCT増幅した。PCR産物をSYBR Green Iと混合し、解離分析に供した。
【図8】
図8は、DAPK遺伝子についての蛍光解離ピークを示す。Sss I処理したDNA(曲線「M」)および正常なリンパ球からのDNA(曲線「U」)を亜硫酸水素ナトリウムで処理し、PCT増幅した。PCR産物をSYBR Green Iと混合し、解離分析に供した。
【図9】
図9は、APC遺伝子のプロモーター1Aについての蛍光解離ピークを示す。正常なメラノサイト(A)およびメラノーマの生検(B〜F)からの亜硫酸水素処理したDNAを増幅し、解離曲線分析に供した。
【図10】
図10は、APC遺伝子のプロモーター1Aについての蛍光解離ピークを示す。正常なメラノサイトからの亜硫酸水素処理DNA(メチル化されていないもの、曲線「0」)および6つ、8つおよび14のメチル化CpG部位を提示するプラスミドDNA(曲線「6」、「8」および「14」)を増幅し、解離曲線分析に供した。
【図11】
図11は、APC遺伝子のプロモーター1Aについての蛍光解離ピークを示す。正常なメラノサイトからの亜硫酸水素処理DNA(「非メチル化APC」)および14のメチル化CpG部位を提示するプラスミドDNA(「メチル化APC」)を増幅し、臭化エチジウム(A)、PicoGreen(B)またはSYBR Green I(C)の存在下での解離曲線分析に供した。
【図12】
図12は、PCR産物を固定したスライドガラスフォーマット上で解離アッセイを行うための装置を示す。

Claims (26)

  1. 標的核酸配列のメチル化プロファイルを確定するための方法であって、
    (a)核酸配列を亜硫酸水素で処理して、その核酸配列内の非メチル化シトシンをウラシルに変換して、変換型核酸配列を作製すること;
    (b)処理した核酸配列を、上記の変換型核酸配列に対してのみ特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅すること、但し、その増幅条件には、増幅された核酸におけるシグナル物質の取込みが含まれ、そのシグナル物質は二本鎖核酸と一本鎖核酸とを区別できるようにするものである;
    (c)温度変化により起こる核酸の二本鎖と一本鎖とのトランジションの際のシグナル物質の量を検出すること;
    (d)その温度変化の際に検出されたシグナル物質の量を測定することにより、その標的核酸配列のメチル化プロファイルを確定すること;
    を含む上記方法。
  2. 標的核酸配列が動物由来である、請求項1に記載の方法。
  3. 標的核酸配列がヒト由来である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 標的核酸が腫瘍細胞由来である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 標的核酸配列が植物または原核生物由来である、請求項1に記載の方法。
  6. シグナル物質が蛍光団である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 亜硫酸水素が亜硫酸水素ナトリウムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 疾病症状に関連する核酸メチル化プロファイルの存在の判定方法であって、試験核酸を予め候補疾患細胞から得ておくこと、ならびに
    (a)核酸配列を亜硫酸水素で処理して、核酸配列内の非メチル化シトシンをウラシルに変換して、変換型核酸分子を作製するステップ;
    (b)処理した核酸配列を、その変換型核酸配列に対してのみ特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅するステップ、但し、その増幅条件は増幅された核酸におけるシグナル物質の取込みを含み、そのシグナル物質は二本鎖核酸と一本鎖核酸とを区別できるようにするものである;
    (c)温度変化により生じる核酸の二本鎖と一本鎖とのトランジションの際のシグナル物質の量を検出するステップ;そして
    (d)その温度変化の際のシグナル物質の量を測定し、その結果を非疾患細胞由来の対照核酸を用いて得られるものと比較することにより、上記の標的核酸配列のメチル化プロファイルを確定するステップ;
    を含む、上記方法。
  9. 疾病症状が、癌、遺伝的障害、代謝性疾患および年齢関連障害からなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
  10. 疾病症状が癌である、請求項9に記載の方法。
  11. シグナル物質が蛍光団である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 亜硫酸水素が亜硫酸水素ナトリウムである、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 核酸のトランジションが温度の上昇により起こる二本鎖から一本鎖へのものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 標的核酸が、対照低温解離ドメインおよび高温解離ドメイン(GCクランプ)を含む、請求項13に記載の方法。
  15. 対照解離ドメインおよび高温解離ドメイン(GCクランプ)がオリゴヌクレオチドプライマーにより標的核酸に取り込まれている、請求項14に記載の方法。
  16. 標的核酸配列内の1以上の塩基の突然変異の検出方法であって、
    (a)上記核酸配列に、対照低温解離ドメインおよび高温解離ドメイン(GCクランプ)を組み込むステップ;
    (b)対照低温解離ドメインおよびGCクランプが組み込まれている核酸配列を、オリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅するステップ;
    (c)増幅した核酸を、二本鎖核酸配列と一本鎖核酸配列とを識別するシグナル物質と共に提供するステップ;
    (d)温度の上昇により起こる核酸の二本鎖から一本鎖へのトランジションの際の上記のシグナル物質のシグナルの変化を検出するステップ;そして
    (e)標的核酸配列内の1以上の塩基の突然変異の存在を、その解離ピークを、同等の条件下で試験した対照核酸配列のものと比較することにより判定するステップ;
    を含む、上記方法。
  17. オリゴヌクレオチドプライマーによる増幅ステップの際に、対照低温解離ドメインおよび高温解離ドメイン(GCクランプ)が変換型核酸配列に導入される、請求項16に記載の方法。
  18. シグナル物質が二本鎖核酸に特異的に結合する化合物である、請求項16または17に記載の方法。
  19. 試験核酸および対照核酸が動物細胞に由来する、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 動物細胞がヒト細胞である、請求項19に記載の方法。
  21. 試験核酸配列が腫瘍細胞に由来し、対照核酸配列がそれ対応する正常細胞に由来する、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 試験核酸および対照核酸が植物細胞に由来する、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
  23. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、変換型核酸配列に特異的なプライマーを含む上記キット。
  24. 請求項16〜22のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、標的核酸配列に特異的なプライマーを含む上記キット。
  25. プライマーが低温解離ドメインおよび/またはGCクランプを含む、請求項24に記載のキット。
  26. 更に、その表面にプライマーが固定されている固相支持体を含む、請求項23〜25のいずれか1項に記載のキット。
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