JP2004507117A - ナノ電子回路の製造 - Google Patents

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Abstract

シリコン基板は1又はそれ以上のレジスト層で被覆される。1番目と2番目の回路パターンが、互いにクロスするように連続して露光される。パターンが形成されたレジスト層は、それらのパターンが交差する部分に穴(基板に届くような穴)を開口させるために現像される。これらの穴は、固体量子コンピュータのため、単リンイオンを基板に注入するのに好適なマスクを与える。レジスト層のさらなる現像は、ナノ電子回路の付着のためのマスクを形成し、その結果、単電子トランジスタはリンイオンに対して位置調整されることとなる。

Description

【0001】
[技術分野]
本発明は、ナノ電子回路の製造、特に、固体量子コンピュータコントロール及びリードアウトに好適なナノ電子回路の製造方法に関する。さらには、その方法を用いて製造される回路に関する。
【0002】
[背景技術]
固体量子コンピュータ(SSQC)を製造するために提案された1つの構成は、量子ビット(qubit)を与えるために、シリコンマトリクスに埋め込まれたリン31(31P)原子の配列を有している。このデザイン1,2においては、キュービット情報は、低い温度で大変長いスピン緩和時間を持つリン原子の原子核スピンに符号化される。キュービットの間の相互作用は、ゲート電極を使って都合よくコントロールされる、リン原子のドナー電子によって仲介される。代わりに、キュービット情報は電子スピンに簡単に符号化できるけれども、その場合、電子スピン緩和時間が原子核スピン緩和時間よりもかなり短くなるので、量子コンピュータはデコヒーレンスエラー(decoherence errors)の影響をより受けやすくなる。
原子核スピン及び電子スピン量子コンピュータデザインの両方におけるキュービットリードアウトは、単電子のスピン状態を決定する能力を必要とする。Kane1,4により提唱された方法は、一対のリン原子の近くの単一電子トランジスタ(SET)デバイスを使う。該SETは、パウリの排他律の現象を使い、2つの電子のスピン状態を決定する。それゆえ、SSQCのためのナノ電子回路にとても必要なことは、(single charge displacementを感知し、キュービット・リードアウトを形成するために使用される)SETデバイスの近くへの(キュービットの原子核または電子スピンを操作するために使用される)導電性コントロールゲートの統合(integration)である。SETデバイスは、ダブル・アングル・メタル蒸着技術5,6を使ったアルミニウム/酸化アルミニウム(Al/Al)から都合よく作製されることができる。そのコントロールゲート及びSETは、下にある31Pドナー(SSQCのキュービットを構成するもの)に対して位置調整されなければならない。
【0003】
2つの位置の間の動きをチャージするためのSETの感度は、関心のある領域の両側の、(2つのデバイスの)出力を関連付ける2つのSETを使うことにより増加させることができる。このアプローチは、最初は、1997年に、Amlani等による量子ドット・セルラー・オートマトンの研究にてなされた。
【0004】
[発明の概略]
この発明は、ナノ電子回路を製造する方法についてのものであり、次の工程を含む。
【0005】
・ 半導体基板を1層又はそれ以上のレジストで被覆すること
・ そのレジスト層に回路パターンを露光し(書き込み)、もし必要なら、引き続いて、このパターンを現像すること
・ もし必要なら、この基板を1層又はそれ以上の付加的レジスト層にて被覆すること
・ 前に露光されたパターンと交差するように、レジスト層に2番目の回路パターンを露光する(書き込む)こと。
・ それらのパターンが互いに交差する部分にのみ、半導体基板にまで届く穴を開けるために、そのパターン化されたレジスト層を現像すること
・ 各穴にイオンを注入すること
【0006】
・ 半導体基板表面の、その穴の周りにさらなるエリアを開口させるように(穴を広げるように)、レジストをさらに現像すること
・ 半導体表面(注入されたイオンと関連した位置)にアクティブデバイスやコントロールゲートを形成するために、残存しているレジスト層を通り抜けるようにして異なる角度(蒸着角度によって決定されるところの角度)で金属を蒸着させること
【0007】
一方の回路パターンは、アクティブデバイスや導電性コントロールゲートの形状を規定し、他の回路パターンは、イオン注入のために穴を開ける位置を規定する。両回路パターンは、その精度で整合させることができないかも知れないが、同じ解像度や精度で書き込むことができる。この場合、それらの回路パターンそれ自体が、この不正確さの不利を改善するように設計されるかも知れない。特に、アクティブデバイスやコントロールゲートのためのパターンが一連の平行な直線であり、他のパターンがその直線を横切る直線とされるかも知れない。この場合、一方のパターンは、アクティブデバイスや導電性ゲートを横切る直線に(その直線が正確な位置に配置されていなくても)イオンが注入されることを保証する。
固体量子コンピュータコントロール及びリードアウトに適したナノ電子回路の製造方法は、
・ 各穴に1又はそれ以上のイオンが注入される、3(又はそれ以上)層のレジストと、
・ SETのようなアクティブデバイスや、注入されたイオンに十分な精度で一致された“A”及び“J”ゲートのようなコントロールゲートを形成するためのダブル(又はトリプル)アングルメタル付着と、
を利用する。最近提唱された原子核スピン及び電子スピン量子コンピュータでは各穴に1つのイオンのみが注入されることが認識されている。
【0008】
そのような製法の一例は、次のような工程を含む。
・ 1番目のレジスト(レジスト1)で半導体基板を被覆すること
・ レジスト1に、イオンの配置位置のための最初のパターン(パターンA)を書き込むこと
・ その最初のパターン(パターンA)を現像すること
・ 2番目のレジスト(レジスト2)、及び該レジスト2よりも低い感度の3番目のレジスト(レジスト3)で被覆すること。レジスト2及びレジスト3の両方は、レジスト1と異なる現像液(又は現像工程)を用いる。
・ (2番目のパターンが)最初のパターンと交差するように、レジスト層の中にメタル回路のための2番目のパターン(パターンB)を書き込むこと
・ その2番目のパターン(パターンB)を部分的に現像すること。その結果、パターンBが形成された部分にのみレジスト2及び3に溝が形成され、パターンA及びBが交差する部分にのみシリコン基板に到達する穴が開けられる。
・ 各穴に単イオンを注入すること
・ レジスト3の下の穴部分を形成するために、パターンBを完全に現像すること
・ その穴の中に横たわるレジスト1の残りを取り除くこと
・ 前記レジスト層を通って第1の角度で金属を蒸着させること
・ 第1の金属層の表面を酸化させること
・ 前記レジスト層を通って第2の角度で金属を蒸着させること
・ 前記レジスト層を通って第3の角度で金属を蒸着させること
・ 装置完成のため溶剤で全ての層を取り除き、必要に応じて、その表面を皮膜で保護したり、グラスベイト(glassivate)処理したりすること
・ ドーパントを活性化しイオンビームダメージを除去するために、そのサンプルをアニールすること
電子ビームリソグラフィ(EBL)の場合、位置調整は、高解像度パターンの露光のために必要とされる低ビーム電流での合焦能力により制限される。したがって、50nmよりも良い位置調整を達成することは難しく、SSQCデバイスのためには十分ではない。ここで説明したダブル露光プロセスの長所(キーアドバンテージ)は、超高精度位置調整が要求されないことである。交差される露光パターンは、コントロールゲートに対して一方向に完全に位置調整されたイオン注入のためのマスクを構成する。さらに、SSQCのキュービットを構成するドナーイオンは、全て互いに正確に位置調整される。
【0009】
SET電極とコントロールゲートとを同時に形成することの長所(キーアドバンテージ)は、全てのメタル回路を形成するための高解像度リソグラフィ露光が1つだけ必要とされる点である。もし、SET電極とコントロールゲートが2つの異なる工程(それぞれに異なる材料が使われたなら、そのようなケースが起こりえるかも知れない)で形成されるとすれば、SETとコントロールゲートとの距離よりも良い精度で2つの回路パターンを位置調整する必要があるだろう。ここで述べられた技術は、全ての金属部分が1つのパターン露光で形成され、金属部分の完全な自己整合(self−alignment)を達成する。
【0010】
この方法を使った場合、キュービットコントロールゲートとしてのSET電極(ソース、ドレイン、島、プランジャ)は同じ材料(例えば、蒸着されたアルミニウム)から作ることができる。
【0011】
電子ビームリソグラフィ(EBL)、X線リソグラフィ、走査プローブリソグラフィ、又は、他の高解像度リソグラフィプロセスがパターンを書き込むのに使われるかも知れない。これらの内、最も便利で良く発達しているのはEBLである。
【0012】
アルミニウムの導電部分は、熱的蒸発法か電子ビーム蒸発によって作ることができる。
【0013】
1987年に最初にFultonとDolanにより提唱されたように、SETリードアウトデバイスの作製のため、コントロールされた薄い絶縁層を形成するために、コントロールされた量の分子酸素が、溶着の間に供給されても良い。
【0014】
従来の製造法と違って、本アプローチは、全てのメタルゲートや相互接続を形成するために1つのEBL露光のみを要求し、制御可能なトンネルジャンクションを形成するため、正確な位置でのアルミニウムの酸化を許容する。
【0015】
その上に設けられるレジスト3よりも電子ビーム露光に対して感度の良いレジスト2は、オーバーハングを有する断面形状を形成するために用いられる。オーバーハングしているレジストは蒸着5,6のときの「シャドウ部材(shadowing element)」として作用する。
【0016】
蒸着は異なる角度から実施される。したがって、ジャンクションはオーバーラップ部に形成される。このオーバーラップ部のサイズは、トンネルジャンクション容量やトンネル抵抗を決定し、そして、デポジションアングルを変えることにより変化させることができる。
【0017】
そのプロセスは、完全なマルチキュービットデバイスのため、メタル回路を31Pドナーに一致させるために用いられても良い。1つのみのEBL露光やダブルアングル蒸着による2層レジストを用いる同様のプロセスは、ツインSET SSQC リードアウト・シミュレーション・デバイスのためのメタル回路を作るために用いられることができる。
【0018】
[発明のベストモード]
(i)SETとコントロールゲート の位置調整
SSQC用のナノ電子回路においては、(キュービットの原子核または電子スピンを操作するために使用される)導電性コントロールゲートを、(single charge displacementを感知し、キュービット・リードアウトを形成するために使用される)SETデバイスの近くに統合することが都合が良い。それらのコントロールゲート及びSETも、また、下にある31Pドナー(SSQCのキュービットを構成するもの)に対して位置調整されなければならない。我々は、SETとコントロールゲートとの位置調整を、特異な例であるツインSETシミュレーションデバイスの製造に使用することを最初に考えた。この方法をコントロールゲートとドナーの位置調整に適用するため、セクション(ii)で、我々は、fully−configured few−qubit SSQCデバイスをデザインすることに拡張した。
種々のタイプのSET構造が実施されてきたが、SETコントロールゲートを構成するために最も都合の良い構成は、EBLやダブルアングルシャドウ蒸着5,6によって作製されたAl/Al構造である。その理由は、導電部分(両タイプの導電部分)を同じ工程で形成することができ、キュービットコントロールゲートとしてのSET電極(ソース、ドレイン、島、プランジャ)を同一材料、特に蒸着されたアルミニウムで形成することができるからである。SSQCにおけるゲートとゲートとの間の距離(原子核スピンキュービットのためには約20nmで、電子スピンキュービットのためには約200nmである)が紫外光(UV)リソグラフィの分解能限界よりもかなり下方にあるので、電子ビームリソグラフィ(EBL)や極端紫外光(EUV)リソグラフィやX線リソグラフィや走査プローブリソグラフィのような高解像度リソグラフィプロセスを使うことが必要である。これらの内、最も便利で良く発達しているのはEBLである。
【0019】
アルミニウム導電部分は、アルミ金属の熱的蒸発法か電子ビーム蒸発法によって作ることができる。その回路パターンは、EBL(又は他の技術)を使ってレジスト層の中に書き込むことができる。露光されたレジストを現像した後、残存しているレジストは蒸着金属のマスクを形成し、このようにして、そのパターンが、レジストから基板表面のアルミニウム回路に置き換えられる。
【0020】
もし、アルミニウム部分のすべてを1つの金属蒸着工程において付着させることができたら、SETとコントロールゲートの自己整合プロセスは簡単になる。しかしながら、Al/AlのSETを形成するためには、Alソース及びドレイン電極から分離された金属付着部分にAl島電極を形成することが絶対に必要である。これらの2つの付着工程の間に、管理できる薄さ(およそ1−10nm)のAl層を形成するために、Al表面は、コントロールされた量の分子酸素(O)に晒される。ソースと島との間、及びドレインと島との間にあるこの高絶縁Al層は、量子機械トンネリングを除く電子モーションに対するバリアとして作用し、単一電子トンネリングトランジスタ(SET)としてのデバイスの操作のために必要である。
【0021】
統制されたAl/Al/Alトンネルジャンクションは、図1に示すようなダブルアングルシャドウ蒸着(として知られている方法)を用いて作製されることができる。その方法は、フォトレジストを使ってDolanにより発明され、人工的に作られたトンネルジャンクションを使用するSETデバイスの最初のデモンストレーションのために1987年にFultonやDolanによって使用されたものである。従来の製造法と違って、このアプローチは、デバイス全体を作製するために1つのEBL露光のみを要求する。そして、管理できるトンネルジャンクションを形成するため、Alの正常位置の酸化を許容する。下方のレジスト11が上方のレジスト12よりも電子ビーム露光の感度が高くなるように設定された2層レジスト構造は、図1に示すように、大きいオーバーハング13を持つレジスト断面形状を形成する。そのオーバーハングしているレジスト13は、2つのAl蒸着14及び15の「シャドウ部材(shadowing element)」として作用する。トンネルバリアを形成するため、蒸着の間の蒸着チャンバ内にて、真空(状態)を中断させることなしにAlが酸化される。
【0022】
その蒸着14,15は、2つの異なる角度から実施される。したがって、実際のジャンクションはオーバーラッピング領域16に形成される。この領域のサイズは、トンネルジャンクションキャパシタンスとトンネルレジスタンスとを決定し、デポジションアングルを変えることによって変化させることができる。
【0023】
SETとコントロールゲートの自己整合を成し遂げるためには、不必要な異物を形成することなしにSET及びコントロールゲートの両方を形成するELB露光パターンを設計することが必要である。そのようなパターンの一例が図2に示される。このパターンは、ダブルアングルシャドウ蒸着の後に、「ツインSETリードアウト・シミュレーション・デバイス」を作り出すけれども、「31Pドナーを組み込んだ完全なマルチ・キュービット・デバイス」のためには、下の(ii)で述べるように、その基本概念をメタル回路に等しく適用することが必要となる。
【0024】
図3は、ダブルアングルシャドウ蒸着の後の、ツィンSETデバイスの、完全に自己整合されたSETとコントロールゲートの配列を示す。この図において、領域31は最初のアルミニウム蒸着で付着された金属を示し、領域32は2番目のアルミニウム蒸着で付着された金属を示す。領域33は、薄いAl層によって分離された、2つの層がオーバラップする小さな領域を示す。
【0025】
完全に作製されたツィンSETデバイスが図4に示される。ライカ・リソグラフィ・マイクロシステムズのEBL−100システムが、3nmのスポットサイズで、図2に示されるような最初のパターンを作製するために使用された。
【0026】
2つのSETの島41及び42の中心と中心との距離は750nmである。それに対して、ナノ構造全体(プランジャからプランジャまで)は1400nmに含まれる。個々のコントロールゲートの幅は、SETのソース電極やドレイン電極と同様、60nmである。これらのサイズのすべては、EBLスポット・フォーカスを改善したりレジストパラメータを調整することによって、10又はそれ以上のファクターによって減少させることができる。EBLの解像度限界は、使用される電子感度レジストの解像度により設定され、PMMAの場合は5nmである。示されたデバイスのディメンジョンは、電子スピンキュービットとしての31Pを含むデバイスのために十分である。原子核スピンキュービットとしての31Pを含むデバイスのためには、レジスト解像度の電流限界でEBLを実行する必要がある。
【0027】
次に、図4に示すデバイスの製造の詳細を概説する。
【0028】
2層レジスト構造は、より感度の高い下方層としてP(MMA−MAA)コポライマーを使用する。その下方層は、450nmの厚さと、MMA中に17.5%の組成のMAAを持つ。コポリマー層の感度は、90分間の深紫外光露光によって増加する。感度の低い上方層は、60nm厚で平均分子量が950,000のPMMAである。EBL−100リソグラフィツールを用いたEBL露光の後、そのレジストは、IPA:MIBKが2.7:1の現像液中で現像される。Alは熱的蒸発システムを用い2つの異なる角度(そのパターンの正確な自己整合のために必要なオフセットにより決定された角度)から付着される。その2つのAl層のいずれもが30nmの厚さをもつ。Alトンネルバリアは、その2つの蒸着(蒸着工程)の間に、200mTorrの圧力のOに3分間、その表面(Al表面)を晒すことにより形成される。
【0029】
コントロールゲートとドナーの位置調整はSSQCのためにとても重要だけれども、SETの大変高いチャージ感度のために、コントロールゲートやドナーに対するSETの位置調整を緩めることができるであろう。この場合、ゲートを付着させるためのもの(蒸着工程)から分離させた金属蒸着工程にてSETのための金属を付着させることができる。ゲートは、最初のELB露光で単層レジスト層に形成することができ、Al/AlSETは、後のEBL露光で2層レジストに形成することができる。コントロールゲートは、SiOの表面バリア層を通り抜ける低い拡散度を持つ、Al以外の金属によって形成することができる。さらに、SETは、イオン注入やアニール工程(SSQCの操作を害するところの、イオン注入工程により生じる格子欠陥を取り除くのに効果的な、400℃より高温のアニール温度が使用される工程)の後に形成される。Alトンネルバリアの品質が400℃以上では低下するので、SET形成の後に実行されるアニールはそれよりも低い温度に制限される。
(ii)コントロールゲートとドナーとの位置調整
SETとコントロールゲートの間の位置調整に加え、SSQCのキュービットを構成する31Pドーパントを、Aゲートの直下、又はSETの直下に位置決めすることが必要である。このため、コントロールゲートとドナーとの位置調整が必要となる。
【0030】
SSQCにおける31Pドナーの配置には、2つの対照的な技術が考慮される。1つ目は、走査プローブリソグラフィを使って原子レベルに31Pドナー配列を構成するための”ボトムアップ”デザインを利用する。2つ目は、SET及びコントロールゲートを形成する前か後のイオン注入を使用して、構造物中の所望の深さ(表面下、5−100nm)に31Pドナーを注入する“トップダウン”デザインを使用する。通常のキュービット配列は、適当な間隔で一連の穴が形成された、31イオンに抵抗力のあるマスクを使用することによって成し遂げられる。マスクを通過させてのイオン注入は、現行の工業的半導体プロセスである。このアイデアは、Vrijen等によって電子スピンに基く2ドナーテストデバイスを作製する方法として最初に討論された。
【0031】
注入中におけるイオン位置のランダムな拡散のため、“トップダウン”製造手順は、few−qubit構造のためにのみ実行できる。このことは、Vrijen等によって討論されていて、平均1つの31イオンのみがマスクの1つの穴を通り抜けるようにイオン注入量をもし調整したなら、1つの31Pイオンを正確に得ることができる確率はP=0.367となる。(各穴に0,1,2,3,…のイオンを入れることができるので、Pが0.5にならないことを注意する。)1つの31PイオンでNのドナーポジションを得ることのできる確率はP=P である。4ドナーシステム(原子核スピンキュービットやSETリードアウトを有する2キュービット・デバイスのために使用され得る)のためには、0.367=0.018、約50分の1の量となる。
【0032】
量は低いけれども、イオンの通過を適切な位置に同じ検知方法でマークできる技術を考察することが可能となり、後工程のために選ばれた、完全に形成されたデバイスが可能となる。これらは単イオンによりイオン衝撃を引き起こすfragmentとして知られているので、1つの案は、注入の前にその表面に50C分子量の単層フィルムを使用するというものである。
【0033】
”トップダウン”(マスクを通り抜けてのイオン注入)技術により作製された31Pドナー配列は、コントロールゲートの幅の半分よりも良い精度で、SETやコントロールゲートに対して位置決めされなければならない。
【0034】
これは、自己整合技術を使用して成し遂げることができる。該技術は、一の方向(例えば、x方向)の位置調整が1つのEBLパターン露光によって得られるというものである。2番目のEBLパターンは、y方向に位置付けするために露光される。これらのパターンは、固有のプロセスのために使用されるレジスト層の選択に依存し、順に露光される。1つのパターンの他への位置調整は、1つのEBL位置調整工程を必要とし、その工程は、キュービット・リード・アウトのために使用されるSETと31Pドナーの配列の間に、Δymax=100nmの最大誤差をy方向に生じさせる。Δymaxの正確な値は、整合(registration)の精度や、EBLツールの技術によって設定される。SETデバイスのチャージ感度が高いため、そのような誤差は容認できる。x方向の位置調整は、後述する自己整合のために完璧である(すなわち、Δx=0)。
【0035】
製造工程は詳細に述べた。それらは、レジスト(3層で、電子に感度のあるレジスト)プロセス、2ステージのEBL露光、図5(a) に示すようなイオン注入、そして、図5(b) に示すようなトリプル・アングル・シャドウ蒸着工程を含む。
テストケースI:4ドナー・デバイス
最初のテストケースとして、我々は、図6の4−ドナーデバイスを考察した。このデバイスは、隣接する4つの31Pドナーを有し、それぞれの(ドナーの)上方には controlling surface Aゲートを有し、それらの間には coupling surface Jゲートを有する。加えて、その配列の両端には(プランジャゲートを持つ)リードアウトSETを有する。そのデバイスは、また、SETと外側のドナーとの間に、2つの付加的なゲートを有する。それらは、トリプル・アングル・シャドウ蒸着製造工程の副産物である。もし、電気的に浮かされた(float)なら、これらのゲートは、計算のリードアウトサイクル中に外側のドナーへSETを選択的に連結するために使用され得る。SETの高い感度は、この場合においてリードアウトが可能となることを保証する。計算サイクルの間、リードアウトが誤ってデコヒーレンスとなったとき、SETをドナーからシールドするため、これらのゲートは接地され得る。
【0036】
図6に示された4ドナーデバイスは、図7(a) 〜(h) に模式的に示された工程を使って製造することが出来る。次に、各製造ステップを順番に説明する。与えられた各工程のパラメータは代表的な値に過ぎない。
1.酸化物の形成:
高品質シリコン基板に高品質酸化物(一般的には2−10nm)を形成する。
2.電子ビームリソグラフィで位置調整マークを書く:
50nmで950,000〜2,000,000分子量のPMMAでそのウェハを被覆し、vernier combや位置調整(coarse alignment)マークを書き、そのパターンを現像し、10nmのチタン(Ti)金属や40nmの金(Au)を蒸着し、余分な金属を除き、ウェハをきれいにする。プラチナやパラジウムやポリシリコンのような他の材料が、EBLによるパターン認識のための位置調整マークとして用いることが出来る。
3.イオン注入のための位置を規定する(パターンA);
PMGI(例えば、電子ビーム及び光に感度のある、及び/又はイオンに感度のあるレジスト)のようなレジスト1でウェファを被覆する。注:レジスト1が、レジスト2及び3とは異なる現像液を使用し、また、レジスト2及び3と僅かに混ざり合うように、そのレジスト工程は設定されている。
【0037】
EBL位置調整マーク(+/−100nm)を合わせ、次のイオン注入の位置を限定するパターンAを書き込む。選択した現像液(PMGIレジストのためにはAZ351が使われるだろう)でパターンAを現像する。ステップ6における除去を助けるため、PMGIレジストを感光するため、240〜280nmの波長のDUVでその表面を露光する。注;DUV感光はイオン注入(ステップ5)の後にも実施しても良い。注:レジスト1は、また、PMGIのような有機レジストで被覆した後に、Siのような無機レジストのプラズマ付着により形成され得る。クロスパターンがEBLで有機パターンに書き込まれて現像され、次いで、適当なエッチング液を使用して無機レジストが現像される。このアプローチの長所は、後工程(ステップ6参照)にて、無機エッチング液が後のレジスト層を現像せず、有機現像液がこの有機レジストを現像しないことである。
4.コポリマー/PMMAの2層レジストの上へのパターンBの形成
P(MMA−MAA)(プロセスの要求に応じて、MMA中のMAAが8%〜25%)のようなコポリマーであるレジスト2と、PMMA(950,000〜2,000,000分子量のPMMAであるが、ゲルマニウム(Ge)や二酸化シリコン(SiO)のような硬いマスク材料が考えられるかも知れない。)のようなレジスト3とでそのウェハを被覆し、EBL位置調整マークを合わせ、SETやA及びJゲートのためのEBLパターンBで露光する。
【0038】
レジストの断面形を図5(a) に示すようにするため、その露光されたPMMA及びコポリマーをPMMA現像液(IPA:MIBK=2:1)で部分的に現像する。その結果、レジスト2及び3には、5−50nmの幅の一連の溝が形成される(図7(b) 参照)。パターンA及びBの交差部は、Si/SiO基板が完全に露出された直線部分(図7(b) 中の白部分)に一連の4つの穴を形成することに注意する。
5.自己整合ドーパントの注入
各穴に平均1個のイオンが入るような「面量(areal dose.図7(c) 参照)」で31Pイオンを注入する。20nmの穴径の場合、1011イオン/cmの量である。イオン発生源は気体のPHや固体のリンであり、所望の注入深さを得るため、注入エネルギは1−15keVとされる。
6.SET及びゲートパターンの現像
図5(b) や図7(d) に模式的に示されるようなアンダーカット形状を作成するために、SET及びゲートパターン(パターンB)をPMMA/コポリマー現像液で完全に現像する。底のレジスト1(PMGI)を、(Microchem社の‘AZ351’現像液のような)選択した現像液で除去する。レジスト1は穴の端にまでに限って除去され、レジスト2(コポリマー)の未現像部分の下方には残存することに注意する。Microchem社の‘ナノリムーバー PG’フォトレジスト・リムーバのような剥離液がPMGIの除去に使われ得ることに注意する。それは、ステップ3のDUVにより感度を高めることの要求を不要とするであろう。
7.第1の角度での蒸着
12.5度(その角度は、要求されるレジスト厚やパターンの分離に依存する)のような正の角を使用し、ゲート金属(Al)を30−40nmに蒸着し、SETのためのAlトンネルバリアを形成するためにAlを1−2nm酸化させる。要求に応じて、他の導電層やSETバリアが使用され得る。
8.第2の角度での蒸着
マイナス12.5度のような負の角を使用し、ゲート金属(Al)を30−40nmに蒸着する。
9.第3の角度での蒸着
0度の角度を使用し、ゲート金属(Al)を30−40nmに蒸着する。
10.金属の除去(リフトオフ)
装置完成のため、溶剤で全ての層(レジスト層)を取り除く。必要に応じて、その表面を皮膜で保護したり、グラスベイト(glassivate)処理したりする。
11.アニーリング
31Pドナーイオンを活性化させるため、及び注入工程(上記ステップ5)から受けるダメージを解消するために必要な温度に、暫くの間、加熱(アニール)する。具体的な細かな点は、注入ダメージの解消の必要性と、イオン拡散及びSETデバイスへのポテンシャルダメージの両方を最小にする必要との間で妥協されるであろう。
【0039】
図8(a) は、部分的に現像された3層レジスト(下から上へPMGI,コポリマー及びPMMAを利用したものであって、EBLを使用して露光された交差ライン配列を有するもの)のイメージである。垂直ラインは、2μmのピッチでPMGIにEBL露光され現像されたものである。コポリマー/PMMAがそのサンプルの表面に配置され、水平ラインは、5μmのピッチで全ての層にEBL露光されたものである。IPA:MIBK=1:1(の現像液)を用いた部分的な現像はコポリマー/PMMAに溝を開けたが、PMGIは要求通り変化していない。フッ化水素酸溶液でエッチングした後においては、ラインが互いにクロスした部分にのみエッチピットが形成されたことを、図8(b) (c) の原子間力顕微鏡イメージが示す。この結果は、この工程に用いられる3つのレジストの相互の適合性を立証するものである。
テストケースII;6ドナーデバイス
第2の見本として、両端にSETリードアウトデバイスを持ち、6つの31Pドナーイオンを組み込んだSSQCデバイス(図9参照)の製造を、我々は考察した。このデザインの中央部分は、4ドナーデザインと同じ考え方を取り入れている。実際に、N(Nは大)キュービットのデバイスを作製するためにA及びJゲートを付加することは可能である。このアプローチの限界は、各Aゲートの下の正確な1つの31Pドナーでデバイスを構成することができる確率が、P=P (但し、P=0.367)となる確率のNで減少することである。
【0040】
6ドナーデバイスの製造工程は、異なるELBパターンがSET及びゲート(ステップ4)のために使用されることを除き、4ドナーデバイスのためのものと同じである。このパターン(EBLパターン)は図10に示される。このパターンがSETの周辺でやや異なるレイアウトを持つことに注意する。
【0041】
図11は、6ドナーデバイスのためのSETやA及びJゲート回路を示すSEM顕微鏡写真を含み、それら(SET等)はトリプルアングルAl蒸着を使用して付着されている。SEMイメージ中の暗い領域は、コポリマー(レジスト2)中に存在するアンダーカット形状の範囲を示す。PMMA層(レジスト3)が、2μmの長さ以上自立していることに注意する。図11におけるSEMイメージの下の図は、XY線に沿った概略断面図を示す。その図は、31Pイオンの予定された位置を示すが、このサンプルではイオン注入は実施されなかった。EBLパターンのために、その回路中のJゲートは2層の金属層を有することに注意する。これが、Aゲートよりもやや幅広のJゲート(図11のSEMイメージ参照)をもたらすが、もしデポジションアングルが正確に制御されるならJゲートを狭くすることも可能である。このことは、図12にて実証されている。この図は、図10のEBLパターンを使用した、Jゲートのダブル・アングル蒸着を示す。この場合、ゲートの幅は45nmである。この場合、第3の角度(0度)のデポジションが行われていないので、Aゲートが現れていない。
テストケースIII;2ドナーデバイス
第3の見本として、2つの31Pドナーイオンと、各ドナーのそばにSETリードアウトデバイスを有するSSQCデバイス(図13参照)の製造を、我々は考察した。
【0042】
このデバイスのための製造工程は、異なるELBパターンがSET及びコントロールゲートのために使用されることを除き、上述の4及び6ドナーデバイスのためのものと同じである。このパターンは図13(a) に示される。図13(b) は、図13(a) のEBLマスクとトリプルアングル蒸着とによって得られたゲートやSET配列を示す概略図である。
【0043】
この2ドナーデバイスのためのSET及びA及びJゲート回路の実験的試行は、図13(c) に示される。その図は、外部との電気接続のためのリード配列を明示している。図13(d) は、そのデバイスの中央部分の詳細な眺めを示す。この回路は、異なるEBLパターンにてトリプルアングル蒸着工程が実施されることを除き、図4に示されるツインSETデバイスのために述べられたと同様のステップを用いて製造される。このデザインを用いて1回のイオン注入が実行され、2つのドナーの間に位置するJゲートを除き、そのデバイスは、ツインSETリードアウト・シミュレーション・デバイスに似たようになる。より重要なことに、電子スピン及び原子核スピン緩和時間を測定するために、完全な形状のデバイスが用いられ得るということである。
(iii)本技術を用いて製造されるナノ電子回路 − SSQCのリードアウト
単電子又は原子核のスピン状態を感知する能力は、それ自身にではなく、量子コンピュータへの応用という理由から大変に興味がある。単スピン感知のための1つのアプローチとしては、例えば走査型磁気共鳴力マイクロプローブ(a scanning magnetic resonance force microprobe)を用いて、その磁場を直接感知することがある。代わりのアプローチとしては、スピン依存トンネル現象を感知し、電子スピンを引き出すことがある。そのような実験の模式的な配列は、Kaneにより提案されたように、図14に示される。そして、上述の技術を用いてそのような構造を製造できることが理解されるだろう。
【0044】
ゲート電極は、1つの原子から他への電子のトンネルを促進させる電場を発生させるために使用される。しかしながら、パウリの排他律のため、もし2つの電子が同じスピン状態にあれば、このトンネリングはブロックされる。他方では、もし2つの電子が、反平行の電子スピンで1重項状態にあるなら、トンネリングは許可される。このようなスピン依存トンネリングの測定は、Kaneが述べるように、キュービットのスピン状態を決定するために用いられる。この単電子トンネリング現象は、単電子トランジスタのような高感度電位計によって感知されることができる。SETのコンダクタンスは、electrostatic landscapeに対して極端に感度が良く、SETは、単電子の1つのドナー原子から他への移動を感知することができる。
【0045】
図16に、標準の2層レジストや電子ビームリソグラフィやダブルアングルシャドウ蒸着5,6を用いて作製されたAlのSETを示す。そのSETの形状は図15に模式的に示される。低温では、単電子のチャージングのために、プランジャゲートの電圧バイアス(Vg)が増加するに従って、SETのコンダクタンス(G)は周期的に振動する(図17参照)。そのデータは、高い再現性を持ち、また、ソース−ドレインバイアスが増加するに従ってその振動がなくなることを示す。その振動の周期はΔVg=e/Cgにより与えられる。ここで、Cgは、プランジャゲートと島との間の容量である。これと他のデータの解析より、我々は、Cg=2.3aFであり、ドットのチャージングエネルギが0.12meVであると概算した。
【0046】
しかしながら、そのSETは、我々が感知したいスピン依存トンネリングプロセスだけでなく、その周辺の、如何なるチャージに対しても感度が高い。このことは、図17のデータ(Vg=129mVで‘キンク’が生じている)にて明らかに確認することができる。そのキンクは、図17のどの線でも同じVgで生じているので、ランダムなトンネル現象により引き起こされたものではない。もし、コンダクタンスの最大(conductivity maxima)が生じるプランジャゲートバイアスを、図18に示すように、ピークインデックスに対してプロットしたなら、生データでキンクが生じたところ、つまりVg=129mVで突然の不連続を見ることができる。しかしながら、その線の傾き、つまり期間ΔVgはこの不連続部とは関係なく一定に維持される。
【0047】
この不連続部は、シリコン酸化層中のトラップがそのイオン化状態を変化させることを原因とするものであり、SETにより感知される、突然の静電位変化を引き起こすものである。これらのトラップをチャージするのに必要なゲート電圧は再現できないけれども、それらがいつも同じプランジャゲート電圧で引き起こされるという点において再現性はある。ここで述べたようなトラップのチャージングは、実際のSSQCにおいて発生しそうであるが、そのSSQCにおけるスピン依存トンネル現象と、SETの近くのトラップ状態への(或いは、からの)チャージのトンネリングとを見分けるための方法を持つことが必要である。
【0048】
そこで、我々は、図19に示す構成を考え出した。ここでは、SETは、スピン依存トンネリングが生じる2つのリン原子の両側に配置される。このツィンSETデザインは、スピン依存トンネル現象から、SETの1つの近くのランダムな現象を見分けることを可能にする。ランダムなチャージング現象は、同様の方法で両方のSETに影響を及ぼすが、多分、そのトラップに最も近いSETが、より強く影響を受けるだろう。しかしながら、電子が1のリン原子から他へトンネルするに従い、それは、2つのSETに等しく、しかし逆の感じで影響を与えるだろう。左側のSETは、1番目のリン原子からの電子の離脱を示し、右側のSETは2番目のリン原子での電子の到達を示す。このような2つのSETの出力の反相関関係の測定は、ランダムなチャージ変動に起因する、システムからの不必要な信号をほとんど排除することを可能にする。
【0049】
最も簡単な測定のシナリオは、2つのAゲート間の異なるバイアスを次第に増加させ、単電子トンネリングの信号としてツインSETの反相関の出力を求めることである。実際に、このコンセプトは、量子ドット・セルラー・オートマトン(4つの量子ドットの矩形格子がそれらのドットの分極に情報を保存するために使用される)にて既に実証されている。
【0050】
この技術のさらなる工夫は、Aゲートに供給されるDCバイアス(電子トンネリングを生じさせる電場を調節するもの)に、AC変調を重ね合わせることである。このようにして、単(電子)トンネル現象の感知を試みる代わりに、この周波数での、相互に関係のあるツインSETの応答をlock inすることができ、この人工の2原子分子の分極率を感知することができる。もし電子スピンが反平行なら、2つの電子雲の間にパウリの排他律は存在せず、その分子は分極化される。しかしながら、電子スピンがもし配列されているなら、パウリの排他律は、このシステムの分極化を減少させる。このようにして、2重量子ドット系の分極化のAC測定は、AC変調周波数で測定するだけでバックグラウンドノイズを著しく減少させて、電子スピン状態を読み出すのに用いることができる。無線周波数でSETを操作した場合、1/fノイズが特徴である低周波数10から遠ざかることにより、不必要なノイズのさらなる除去を達成する。
【0051】
この測定構成をテストするために、図20に示すように、2つのリン原子の代わりであるトンネルジャンクションによって連結された2つのメタル・ドットを有し、Jゲートを有さないデバイスが設計された。このデザインは、参考文献[7]の量子ドットセルラー構造よりもかなりコンパクトであり、そして、ゲートやAl島やSETの配列は、SSQCにおける単スピン感知のために必要なデバイスに近似している。それらは、図4に示されるようなデバイスを作製するところの、上述したと同様の技術を利用して作製された。
【0052】
このテスト構成のために、測定は次の手順に沿って行う。
【0053】
2つのSETのコンダクタンスは、2つの独立した測定回路で別々にモニターされる。プランジャゲートバイアスは、2つのSETが、G−Vg特性曲線中で最も感度のあるポイント(δG/δVgが最大となるところ)に位置するように調節される。図21(a) は、ツインSETデバイスにおける1つのSETのI−Vg特性を示し、そして図21(b) は、同じデバイスのための、Vgを関数とした(ドットチャージングエネルギを決定するための)ソース−ドレイン電圧の特性を示す。
【0054】
コントロールAゲートのDCバイアスは、次第に増大され、中央のAl島の1つから他への電子のトンネルを引き起こす。このDCバイアスに重ねあわされた、周波数がfの小さなAC変調は、バックグランドノイズを排除し、SETの出力をこの周波数へ固定する。コントロールAゲートによりセットアップされた電場が電子のトンネルを許容する程度に十分に大きくなったとき、2つのSETのコンダクタンスは、逆の感じで似たように変化するだろう。そして、反相関関係の測定はこのようにして単チャージトンネリングを感知できる。図22(a) は、ゲートA1を強調させた、ツインSETデバイスのSEM顕微鏡写真である。図22(b) 及び(c) は、このデバイスに関して得られたデータであり、ゲートA1の電圧を関数としてトンネル電流の測定値を実験的にプロットしたものである。予想通り、一対のメタルドットのトンネルジャンクションを通過する、コントロールされた単チャージの転送により発生したものである。
【0055】
図23(a) は、ゲートA1及びA2を強調させた、ツインSETデバイスのSEM顕微鏡写真である。図23(b) は、3つの異なるプランジャゲート電圧で測定された、ゲートA1の電圧を関数としたトンネル電流のグラフである。ゲートA1の電圧は、ダブルドット構造の磁場勾配が導入されるため、ゲートA2に供給される電圧の逆極性(VA1=−VA2)とされる。VA1=−VA2のバランスによって、SETで見られる平均ポテンシャルはほぼ一定に維持される。そして、平均電流Iacが「最大ピークレベル(Imax−300pA)」の約半分となるレベルに選択される。VA1は変化するので、その電流を大体一定に維持するようにVA3が保証する。しかしながら、VA1=−VA3の変化は、1つのドットから他への電子トンネリング現象を引き起こすだろう。これらの現象は、図23(b) のIacの振動として観測される。
【0056】
この測定技術のさらなる工夫は、G−V特性で最も感度のあるポイントにSETを維持するように、2つのプランジャゲート電圧を継続的に調整することである。この場合、測定される出力信号は、STM測定におけるエラーフィードバック信号に似た、プランジャゲート電圧である。
参考文献;
[1] B.E.Kane,Nature 393,13(1998)
[2] B.E.Kane,Patent Application PCT/AU98/00777
[3] R.Vrijen et al.,Phys.Rev.A62,012306(2000)
[4] B.E.Kane,Patent Application PCT/AU98/00778
[5] G.J.Dolan,Appl.Phys.Lett.31,337(1977)
[6] T.A.Fulton and G.J.Dolan,Phys.Rev.Lett.59,109(1987)
[7] I.Amlani,A.O.Orlov,G.L.Snider and G.H. Bernstein,J.Vac.Sci.Technol.B15,2382(1997).
[8] W.Chen and H.Ahmed,Appl.Phys.Lett.62,1499(1993)
[9] P.C.Hammel,Z.Zhang,G.J.Moore and M.L.Roukes,J.Low Temp.Phys.101,59(1995)
[10]R.J.Schoelkopf,P.Wahlgren,A.A.Kozhevnikov,P.Delsing,D.E.Prober,Science 280,1238(1998)
広く説明された本発明の思想又は範囲から逸脱しない限り、多くのバリエーション及び/又は変更が、実施例で示された本発明になされ得ることが当業者により解釈される。従って、本実施例は、全ての観点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
図1は、ダブルアングルシャドウ蒸着技術の概略断面図である。
図2は、ツインSET SSQC リードアウト・シミュレーション・デバイスを作製するための技術に使用されるEBL露光パターンである。
図3は、図2のパターンのダブルアングルシャドウ蒸着により形成された、自己整合されたSET及びコントロールゲートの配列である。
図4は、SSQCリードアウトシミュレーションのための、2つの島構造を有するツインSETデバイスの走査型電子顕微鏡(SEM)のイメージである。
図5(a) は、イオン注入工程のための3層レジスト断面形状を示す概略断面図であり、(b) はトリプルアングルシャドウ蒸着工程のためのレジスト断面形状を示す。
図6は、本技術を用いて製造された、端部にSETリードアウトを有する、完全な4ドナーSSQCデバイスを示す断面図である。
図7は、図6のデバイスを作製するための製造プロセス図であり、次の工程を有する。
a.イオン注入のための位置の規定(パターンA)
b.クロスパターンを形成するための、2層レジストへの、SET及びゲートのEBLパターンBの露光
c.イオン注入
d.SET及びゲートパターンの現像
e.最初の金属蒸着
f.2番目の金属蒸着 − SET及びJゲートの形成
g.3番目の金属蒸着 − Aゲート及びプランジャの形成
h.金属をリフトオフしてきれいにした後のコンピュータデバイス
図8(a) は、3層レジストに露光され現像されたクロスパターンの実験的試行を示す図であり、(b) 及び(c) エッチングしてレジストを除去した後の基板のAFM(原子間力顕微鏡)イメージを示す図である。
図9は、本技術を用いて製造された、端部にSETリードアウトを有する、完全な6ドナーSSQCデバイスを模式的に示す。
図10は、6ドナーSSQCデバイスを作製する技術に用いられるEBLの露光パターンである。
図11は、本技術を用いて作製された6ドナーSSQCデバイスのためのゲート配列及びSETのSEM顕微鏡写真である。下の図はXY線の断面図を示す。
図12は、2つの異なる角度からの金属付着部が空間的に一致するために正確に位置調整され、2倍の厚みであり、線幅はたったの45nmであるテストパターンを示すSEM顕微鏡写真である。
図13(a) は、2ドナーデバイスを作るのに使われる「EBLの露光パターン」であり、(b) は、トリプル・アングル・シャドウ蒸着により形成されたゲート配列及びSETを示す図であり、(c) 及び(d) は、(a) に示されたパターンを用いて形成された金属のSEM顕微鏡写真である。
図14は、Kaneにより提案されたところの、スピンリードアウトに用いられるSETデバイスの模式図である。
図15は、シングルAl−AlSETの模式図である。
図16は、「シリコンウェハに作られたSETデバイス」のSEM顕微鏡写真である。
図17は、ソース・ドレイン・バイアスを異ならせた場合における、SETの低温のコンダクタンス特性である。
図18は、ピークインデックスの関数とした、SETのコンダクタンスが最大となるゲートバイアス(測定値)のグラフであり、Vg=129mVで不連続部を示す。
図19は、スピン依存トンネル現象を感知するための、ツインSET構造を示す図である。
図20は、ツインSETリードアウト構造のためのテスト構造である。
図21は、ツィンSETデバイスからのデータであり、
(a) SETプランジャゲート電圧の関数としてのトンネル電流(測定値)を示し、クーロン閉塞現象を示し、
(b) プランジャゲート電圧の関数としてのソースドレイン電圧をプロットしたものである。
図22(a) はツィンSETのSEM顕微鏡写真であり、(b) 及び(c) ゲートA1に供給される電圧の関数としてトンネル電流(測定値)のグラフである。
図23(a) はツィンSETデバイスのSEM顕微鏡写真であり、(b) 及び(c) は、3つの異なるプランジャゲート電圧の、ゲートA1に供給される電圧(VA1=−VA2)を関数として測定されたトンネル電流のグラフである。

Claims (23)

  1. 1又はそれ以上の層のレジストで半導体基板を被覆する工程と、
    その1又はそれ以上の層のレジストの中に最初の回路パターンを露光する工程と、
    先に露光したパターンに交差させるように、そのレジスト層の中に2番目の回路パターンを露光する工程と、
    前記パターンが交差する部分にのみ、それらレジスト層を貫通して半導体基板に到達する穴を開けるためにそのレジスト層を現像する工程と、
    を備えたナノ電子回路の製造方法。
  2. 最初の回路パターンの露光工程に引き続いて、そのパターンの現像を実施する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のナノ電子回路の製造方法。
  3. 最初のパターンの露光工程に引き続いて、1又はそれ以上の付加的レジスト層で被覆する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のナノ電子回路の製造方法。
  4. 各穴にイオンを注入する工程を含む、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナノ電子回路の製造方法。
  5. 半導体基板表面であって前記穴の周りにさらなるエリアを開口させるように、パターンが形成されたレジスト層をさらに現像する工程、
    を備えた請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナノ電子回路の製造方法。
  6. 半導体基板表面であって、注入されたイオンと関連する位置にアクティブデバイス及び導電性コントロールゲートを形成するために、残存しているレジスト層を通り抜けるように異なる角度(蒸着角度にて決定される角度)にて金属を蒸着する工程、
    を備えた請求項1乃至5のいずれか1項に記載のナノ電子回路の製造方法。
  7. 一の回路パターンがアクティブデバイスや導電性コントロールゲートの形状を規定し、他の回路パターンが、イオン注入のために穴を開ける位置を規定する、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のナノ電子回路の製造方法。
  8. 両方の回路パターンが同じ解像度と精度で書かれる、
    請求項1乃至7のいずれか1項に記載のナノ電子回路の製造方法。
  9. アクティブデバイスと導電性ゲートのためのパターンが一連の平行な直線であり、他のパターンがその直線を横切る直線である、
    請求項7、又は請求項7及び8に記載のナノ電子回路の製造方法。
  10. 1又はそれ以上のイオンが各穴を通って注入される多層レジストと、その注入されたイオンの上方に配置されるアクティブデバイス及びコントロールゲートを形成するために用いられるマルチアングル金属形成法とを利用する、
    固体量子コンピュータコントロール及びリードアウトに好適な、請求項6記載のナノ電子回路の製造方法。
  11. 3層レジスト、及びダブルアングル又はトリプルアングル金属形成法が使用される、
    固体量子コンピュータコントロール及びリードアウトに好適な、請求項6又は10記載のナノ電子回路の製造方法。
  12. 1番目のレジストで半導体基板を被覆する工程と、
    その1番目のレジストに、イオンの配置位置のための最初のパターンを書き込む工程と、
    その最初のパターンを現像する工程と、
    1番目のレジストとは異なる現像工程が共に用いられる、2番目のレジスト、及び該2番目のレジストよりも低い感度の3番目のレジストで被覆する工程と、
    最初のパターンと交差するように、それらのレジスト層の中にメタル回路のための2番目のパターンを書き込む工程と、
    その2番目のパターンを部分的に現像し、2番目のパターンが形成された部分にのみ、2番目及び3番目のレジストに溝が形成され、最初及び2番目のパターンが交差する部分にのみシリコン基板に到達する穴が開けられる工程と、
    を備えた請求項10又は11に記載のナノ電子回路の製造方法。
  13. 各穴に単イオンを注入する工程、
    を備えた請求項12に記載のナノ電子回路の製造方法。
  14. 3番目のレジストの下の穴部分を形成するために、2番目のパターンを完全に現像する工程、
    を備えた請求項13に記載のナノ電子回路の製造方法。
  15. 前記穴の中に横たわる1番目のレジストの残りを取り除く工程、
    を備えた請求項14に記載のナノ電子回路の製造方法。
  16. 前記レジスト層を通って第1の角度で金属を蒸着させる工程、
    を備えた請求項15に記載のナノ電子回路の製造方法。
  17. 前記第1の金属層の表面を酸化させる工程、
    を備えた請求項16に記載のナノ電子回路の製造方法。
  18. 前記レジスト層を通って第2の角度で金属を蒸着させる工程、
    を備えた請求項17に記載のナノ電子回路の製造方法。
  19. 前記レジスト層を通って第3の角度で金属を蒸着させる工程、
    を備えた請求項18に記載のナノ電子回路の製造方法。
  20. 装置完成のため溶剤で全てのレジスト層を取り除く工程、
    を備えた請求項19に記載のナノ電子回路の製造方法。
  21. 必要に応じて前記表面を皮膜で保護したり、グラスベイト(glassivate)処理したりする工程を備えた、
    請求項20に記載のナノ電子回路の製造方法。
  22. ドーパントを活性化しイオンビームダメージを除去するために、そのサンプルをアニールする工程、
    を備えた請求項21に記載のナノ電子回路の製造方法。
  23. 請求項1乃至22に記載の方法により製造されたナノ電子回路。
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