JP2004506443A - 心血管状態の診断および処置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、心血管状態の診断および処置のための方法および組成物に関する。より詳細には、本発明は心臓のアポトーシス性細胞死を阻害するために用い得る単離分子を含む診断薬および治療薬に関する。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は、心血管状態の診断および処置のための方法および組成物に関する。より詳細には、本発明は、心臓のアポトーシス性細胞死を阻害するため、とくに、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全を含む血管および心血管状態の処置に用いることができる単離分子に関する。
【0002】
発明の背景
治療における有意な進歩にもかかわらず、心血管疾患は、先進国世界で疾病率および死亡率の単一の最も共通の原因のままである。したがって、心筋梗塞および卒中などの心血管状態の予防および治療は、公共の健全さの重要性の範囲である。近年、将来の心血管障害のいくつかの危険因子が記述され、高い危険での個々の検出において広く臨床的に用いられている。このようなスクリーニングテストは、全コレステロールレベルおよびHDLコレステロールレベルの評価を含む。しかしながら、心血管障害の大多数は、危険の特徴を抑えるのには見かけ上低い個体に生じ、このような患者を同定する可能性が制限される。さらに、蓄積したデータは、心血管障害の危険があるかまたは有することが知られている患者に対するある予防および治療処置有益な効果が、異なる患者群の間で大きく異なることを示唆する。しかしながら、同時に、ある治療がより大きなまたは小さな効果を期待できるか否かを決定するための診断テストを記載するデータが欠けている。
【0003】
発明の概要
本発明は、心血管状態の診断および処置のための方法および組成物を提供する。より詳細には、本発明者らは、機械的に誘導された変形を受けた場合に心臓細胞において上方調節される多数の遺伝子を同定した。予想外にも、このような上方調節が心臓細胞のアポトーシスの阻害を導くことを発見した。この知見の観点から、本発明の分子が、心臓細胞死の阻害のため、およびとくに、血管状態および心筋梗塞、卒中、動脈硬化、および心不全を含む心血管状態などの心臓細胞のアポトーシス性細胞死により特徴づけられる状態の処置のために用いることができることが確信される。
【0004】
加えて、前述の血管状態および心血管状態並びに心臓肥大のいずれかの診断においてこれらの分子を用いる方法もまた提供される。
さらに、アポトーシス性細胞死を調節する目的でin vivoまたはin vitroでこれら分子を用いる方法、このような細胞死に関連する状態を処置する方法、および前述の状態の処置のための治療用製剤の製造に有用な組成物もまた提供される。
したがって、本発明は、いくつかの面において、心臓細胞のアポトーシス活性を調節するポリペプチド、それらポリペプチドをコードする単離核酸、前述のものの機能的修飾体および変異体、前述のものの有用な断片、並びに、これらに関する、治療および診断、検査方法、組成物およびツールを含む。
【0005】
本発明の一面によれば、(a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなる分子とストリンジェントな(stringent)条件下でハイブリダイズし、心臓細胞の抗アポトーシス活性を有する機械的誘導血管受容体1(echanically nduced ascular eceptor 1、MIVR−1)ポリペプチドをコードする核酸分子、(b)心臓細胞の抗アポトーシス活性を有するMIVR−1ポリペプチドをコードする(a)の欠失体、付加体および置換体、(c)遺伝暗号の縮重によるコドン配列において(a)または(b)の核酸分子と異なる核酸分子、および(d)(a)、(b)または(c)の相補体からなる群から選択される単離核酸分子が提供される。
ある態様において、単離核酸分子は、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、配列番号:3に記載のヌクレオチド配列またはその断片からなる。
【0006】
本発明は、他の面において、(a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列のユニーク断片、および(b)(a)の相補体からなる群から選択され、但し、(a)のユニーク断片は、(1)配列番号14〜16または17の配列、(2)(1)の相補体、および(3)(1)および(2)の断片からなる配列群から選択されるいかなる配列とも同一ではない連続ヌクレオチドの配列を含む、単離核酸分子を提供する。前述の態様のいずれかにおいて、相補体は、全長の相補体を指す。
【0007】
1つの態様において、連続ヌクレオチドの配列は、(1)配列群とは同一でない少なくとも2つの連続ヌクレオチド、(2)配列群とは同一でない少なくとも3つの連続ヌクレオチド、(3)配列群とは同一でない少なくとも4つの連続ヌクレオチド、(4)配列群とは同一でない少なくとも5つの連続ヌクレオチド、(5)配列群とは同一でない少なくとも6つの連続ヌクレオチド、(6)配列群とは同一でない少なくとも7つの連続ヌクレオチドからなる群から選択される。
他の態様において、断片は、少なくとも:8ヌクレオチド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、14ヌクレオチド、16ヌクレオチド、18ヌクレオチド、20ヌクレオチド、22ヌクレオチド、24ヌクレオチド、26ヌクレオチド、28ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、75ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオチド、1000ヌクレオチドおよびこれらの間のすべての整数からなる群から選択される大きさを有する。
他の面によれば、本発明は、前記核酸分子を含む、発現ベクター、およびそのような発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞を提供する。
【0008】
本発明の他の面によれば、単離ポリペプチドを提供する。単離ペプチドは、前述の本発明の核酸分子によりコードされる。いくつかの態様において、単離ポリペプチドは配列番号:1の核酸によりコードされ、心臓細胞の抗アポトーシス活性を有する配列番号:2の配列のポリペプチドを生じる。他の態様において、単離ポリペプチドは、ヒトゲノム内の配列ユニークを提示するのに充分な長さの前述のものの断片または変異体であってよく、そして心臓細胞の抗アポトーシス活性を有するポリペプチドと同じであるが、但し、断片は、配列番号14〜16および17からなる群から選択される核酸配列によってコードされるいかなる配列とも同一ではない連続アミノ酸配列を含む。他の態様において、前記ポリペプチド分子の免疫原性断片を提供する。免疫原性断片は心臓細胞の抗アポトーシス活性を有していても、いなくてもよい。
【0009】
本発明の他の面によれば、単離結合ポリペプチドは、前述の本発明の核酸分子によりコードされるポリペプチドに選択的に結合するものを提供する。好ましくは、単離結合ポリペプチドは、配列番号:2の配列を含むポリペプチドまたはその断片に選択的に結合する。
好ましい態様において、単離結合ペプチドは、抗体および抗体の断片(例えば、Fab、F(ab)、FdおよびMIVR−1ポリペプチドと選択的に結合するCDR3領域を含む抗体断片)を含む。ある態様において、抗体はヒトのものである。いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。1つの態様において、抗体はポリクローナル抗血清である。さらなる態様において、抗体はヒト化される。さらなる態様において、抗体はキメラである。
【0010】
本発明のさらなる面によれば、対象中のMIVR−1発現レベルを決定する方法を提供する。本方法は、対象中のMIVR−1発現レベルを決定するための対象からのテスト試料中のMIVR−1の発現を測定することを含む。ある態様において、テスト試料中の測定されたMIVR−1発現は、既知のMIVR−1発現レベルを含む対照中のMIVR−1発現と比較される。発現は、MIVR−1 mRNAの発現、MIVR−1ポリペプチドの発現として定義され、MIVR−1心臓細胞抗アポトーシス活性は、本明細書中他の場所で定義されている。発現を測定するために種々の方法が用いることができる。本発明の好ましい態様は、mRNA発現の測定のためのPCRおよびノーザンブロッティング、MIVR−1ポリペプチド発現を測定するための試薬としてのMIVR−1モノクローナル抗体またはMIVR−1ポリクローナルMIVR−1抗血清、並びにMIVR−1心臓細胞抗アポトーシス活性を測定する方法を含む。
【0011】
ある態様において、生検試料などのテスト試料、および血液などの生物的液体が、テスト試料として用いられる。対象のテスト試料中のMIVR−1発現は、対照中のMIVR−1発現と比較される。
本発明の他の面によれば、分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性を調節することにおいて有用な剤を同定する方法を提供する。本方法は、(a)候補剤と心臓細胞の抗アポトーシス活性を有する分子とを接触させること、(b)分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性を測定すること、および(c)分子の測定した心臓細胞の抗アポトーシス活性を対照と比較し、候補剤が分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性を調節するかを決定することを含み、ここで分子がMIVR−1、IEX−1(配列番号4)、VDUP−1(配列番号6)、BTG−2(配列番号8)およびTIS−11d(配列番号10)からなる群から選択される核酸分子またはそれらの発現産物である(例えば、それぞれ配列番号2、5、7、9および11)。ある態様において、対照は、候補剤が存在しないで測定された分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性である。
【0012】
本発明のさらに他の面によれば、核酸分子またはその発現産物の正常でない発現により特徴づけられる状態を診断する方法を提供する。本方法は、対象からの生物学的試料と、核酸分子、その発現産物、またはその発現産物の断片に特異的に結合する剤を接触させること、および核酸分子、その発現産物の発現が正常でなく、正常でない発現が障害の診断である場合、結合した剤の量を測定することおよびそれより測定することを含み、ここで核酸分子がMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される少なくとも1つの核酸分子である。いくつかの態様において、障害は、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される心血管状態である。1つの態様において、障害は心臓肥大である。
【0013】
本発明のさらに他の面によれば、核酸分子またはその発現産物の正常でない発現によって特徴づけられる対象中の血管の状態の退行、進行または発症を決定する方法を提供する。本方法は、対象中の血管の状態の退行、進行または発症の決定として、パラメーターのために、(i)MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される核酸分子、(ii)該核酸分子によりコードされるポリペプチド、(iii)該ポリペプチド由来のペプチド、および(iv)該ポリペプチドまたはペプチドに選択的に結合する抗体からなる群から選択される患者からの試料をモニターすることを含む。いくつかの態様において、試料は前述の態様のいずれかに記載の生物的液体または組織である。
【0014】
ある態様において、モニタリングの工程は、試料と、(a)(i)の核酸分子とストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズする単離核酸分子、(b)(ii)のポリペプチドまたは(iii)のペプチドと選択的に結合する抗体、および(c)(iv)の抗体に結合するポリペプチドまたはペプチドからなる群から選択される検出剤とを接触させることを含む。抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは核酸は、放射能活性標識または酵素で標識化され得る。さらなる態様において、本方法は、さらにペプチドに対し試料をアッセイすることを含む。さらなる態様、試料のモニタリングは時間範囲を越えて起こる。
【0015】
本発明の他の面によれば、キットを提供する。本キットは、前述のMIVR−1単離核酸のいずれかまたはその発現産物と選択的に結合する剤、および前述のMIVR−1単離核酸のいずれかまたはその発現産物と、剤の結合の測定値を比較するための対照を含むパッケージを含む。
いくつかの態様において、対照は測定値と比較するための予測値である。ある態様において、対照は、前述のMIVR−1単離核酸のいずれかの核酸の発現産物のエピトープを含む。1つの態様において、キットはさらに、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子および/またはその発現産物と選択的に結合する第二の剤、および該核酸分子またはその発現産物との第二の剤の結合の測定値と比較するための対照をさらに含む。
【0016】
本発明のさらなる面によれば、対象中の心臓細胞のアポトーシス性細胞死を処置する方法を提供する。本方法は、対象中の心臓細胞のアポトーシス性細胞死を阻害するのに有効な量で、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子の発現を調節する剤をこのような処置を必要とする対象に投与することを含む。ある態様において、心血管状態は、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される。いくつかの態様において、本方法は、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、繊維素溶解剤、脂質減少剤、直接トロンビン阻害剤、グリコプロテインIIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子と結合し、白血球の該分子に付着する能力を阻害する剤、カルシウムチャネルブロッカー、ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、またはアンギオテンシン系阻害剤からなる群から選択される剤を共投与することをさらに含む。
【0017】
本発明の一面によれば、心血管状態を処置するための方法を提供する。本方法は、心血管状態を処置するのに有効な量で、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子をこのような処置を必要とする対象に投与することを含む。ある態様において、心血管状態は、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される。いくつかの態様において、本方法は、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、繊維素溶解剤、脂質減少剤、直接トロンビン阻害剤、グリコプロテインIIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子と結合し、白血球の該分子に付着する能力を阻害する剤、カルシウムチャネルブロッカー、ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、またはアンギオテンシン系阻害剤からなる群から選択される剤を共投与することをさらに含む。
【0018】
本発明の一面によれば、細胞のアポトーシス性細胞死を阻害する方法を提供する。本方法は、細胞のアポトーシス性細胞死を阻害するのに有効な量で、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子と、該単離核酸分子を細胞に入れることを可能にする状態下の細胞とを接触させることを含む。いくつかの態様において、細胞は、心筋細胞および血管内皮細胞からなる群から選択される。
【0019】
本発明のさらに他の面によれば、対象中の血管内皮細胞の増大したアポトーシス性細胞死によってもたらされる状態を処置する方法を提供する。本方法は、血管内皮細胞の増大したアポトーシス性細胞死を阻害するのに有効な量で、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子をこのような処置を必要とする対象に投与することを含む。いくつかの態様において、分子は核酸である。ある態様において、分子はポリペプチドである。
本発明の他の面によれば、心臓肥大を処置するための方法を提供する。本方法は対象中の心臓肥大を処置するのに有効な量で、心臓細胞死を増大する剤をこのような処置を必要とする対象に投与することを含み、ここで心臓細胞死を増大する剤が、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される核酸分子またはその発現産物の阻害剤である。
【0020】
本発明のさらなる面によれば、対象中で発生する心血管状態の危険を低減するための対象を処置する方法を提供する。本方法は、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子の減少したレベルを発現することが知られる対象に、将来の心血管障害を発生する対象の危険を下げるのに有効な量で、心血管障害の危険を低減するための剤を投与することを含み、ここで剤が、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、繊維素溶解剤、脂質減少剤、直接トロンビン阻害剤、グリコプロテインIIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子と結合し、白血球の該分子に付着する能力を阻害する剤、カルシウムチャネルブロッカー、ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、またはアンギオテンシン系阻害剤、またはMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子の発現を調節する剤である。
【0021】
本発明の一面によれば、心血管状態の処置に有用な候補剤を認知する方法を提供する。本方法は、候補剤が存在しないで、核酸分子のセットの最初の発現量を可能にする条件下での心臓細胞または組織において、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸分子のセットの発現を決定すること、心臓細胞または組織を候補剤と接触させること、および核酸分子のセットのテスト発現量を検出することであって、候補剤の存在下での核酸分子のセットのテスト発現量の最初の発現量に対する増加が、候補剤が心血管状態の処置に有用であることを示すことを含む。ある態様において、心血管状態は、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される。いくつかの態様において、核酸分子のセットは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される。
【0022】
本発明の他の面によれば、心臓肥大の処置に有用な候補剤を認知する方法を提供する。本方法は、候補剤が存在しないで、核酸分子のセットの最初の発現量を可能にする条件下での心臓細胞または組織において、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸分子のセットの発現を決定すること、心臓細胞または組織を候補剤と接触させること、および核酸分子のセットのテスト発現量を検出することであって、候補剤の存在下での核酸分子のセットのテスト発現量の最初の発現量に対する減少が、候補剤が心臓肥大の処置に有用であることを示すことを含む。ある態様において、核酸分子のセットは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される。
【0023】
本発明の他の面によれば、医薬組成物を提供する。本医薬組成物は、心血管状態を処置するのに薬学的に有効な量の、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子、またはその発現産物を、好ましくは心血管状態の処置に有効な量で含む剤、および薬学的に許容し得る担体を含む。いくつかの態様において、剤は、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子の発現産物である。ある態様において、心血管状態は、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される。
本発明のさらに他の面によれば、心臓肥大を処置するための医薬組成物を提供する。本組成物は、心臓肥大を処置するのに薬学的に有効な量の、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子の阻害剤またはその発現産物である、心臓細胞死を増大する剤、および薬学的に許容し得る担体を含む。いくつかの態様において、処置が必要な対象は、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される核酸分子またはその発現産物の増大したレベルを発現することが知られている。
本発明のさらなる面によれば、心血管状態および/または心臓肥大の処置に有用な医薬を製造するための方法を提供する。
【0024】
本発明のさらに他の面によれば、固相核酸分子アレイを提供する。本アレイは、実質的に核酸分子のセット、その発現産物またはその(核酸またはポリペプチド分子の)断片からなり、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択されるそれぞれの核酸分子が固相基質に固定される。いくつかの態様において、固相アレイは、さらに少なくとも1つの対照核酸分子を含む。ある態様において、核酸分子のセットは、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの核酸分子を含む。
本発明のこれらおよび他の目的は、本発明の詳細な記載に関連して、さらに詳細に記載する。
【0025】
配列の簡単な説明
配列番号:1は、ヒトMIVR−1 cDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号:2は、ヒトMIVR−1(配列番号:1)の転写産物の予想されるアミノ酸配列である。
配列番号:3は、配列番号:2(即ち、配列番号:1のヌクレオチド413〜1273)のポリペプチドをコードするヒトMIVR−1 cDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号:4は、ヒトIEX−1 cDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号:5は、ヒトIEX−1 cDNA(配列番号:4)の転写産物の予想されるアミノ酸配列である。
配列番号:6は、ヒトVDUP−1 cDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号:7は、ヒトVDUP−1 cDNA(配列番号:6)の転写産物の予想されるアミノ酸配列である。
配列番号:8は、ヒトBTG−2 cDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号:9は、ヒトBTG−2 cDNA(配列番号:8)の転写産物の予想されるアミノ酸配列である。
配列番号:10は、ヒトTIS−11d cDNAのヌクレオチド配列である。
【0026】
配列番号:11は、ヒトTIS−11d cDNA (配列番号:10)の転写産物の予想されるアミノ酸配列である。
配列番号:12は、マウスMIVR−1 cDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号:13は、マウスMIVR−1 cDNA (配列番号:12)の転写産物の予想されるアミノ酸配列である。
配列番号:14は、配列番号:1と部分的な相同性を有するGenBank Acc. No. AI761441.1のヌクレオチド配列である。
配列番号:15は、配列番号:1と部分的な相同性を有するGenBank Acc. No. AI594390のヌクレオチド配列である。
配列番号:16は、配列番号:1と部分的な相同性を有するGenBank Acc. No. NM_004338のヌクレオチド配列である。
配列番号:17は、配列番号:1と部分的な相同性を有するGenBank Acc. No. AQ177461のヌクレオチド配列である。
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は、機械的に誘導されたひずみ変形を受けた場合に心臓細胞において上方調節される多数の遺伝子の発見を含む。予想外にも、このような上方調節が心臓細胞のアポトーシスの阻害を導くことを発見した。この知見の観点から、本発明の分子が、心臓細胞死の阻害のため、およびとくに、血管状態および心筋梗塞、卒中、動脈硬化、および心不全を含む心血管状態などの心臓細胞のアポトーシス性細胞死により特徴づけられる状態の処置のために用いることができることが確信される。
加えて、前述の血管および心血管状態並びに心臓肥大のいずれかの診断において、これらの分子を用いる方法もまた提供する。
さらに、アポトーシス性細胞死を調節する目的でin vivoまたはin vitroでこれらの分子を用いる方法、このような細胞死に関連する状態を処置する方法、および前述の状態の処置のための治療用製剤の製造に有用な組成物もまた提供する。
【0028】
アポトーシス(プログラム細胞死としても知られる)は、形態学的および生化学的特徴づけによって定義される細胞死の形態である。アポトーシスは正常な発達過程の特徴であり、またストレスまたは他の環境的傷害に対する細胞の応答である。アポトーシスは、膜泡(membrane blebbing)、細胞および細胞質の収縮、染色体の断片化および縮合、並びに特徴的な180 bp DNA ラダーを引き起こすエンドヌクレアーゼの活性化により特徴づけられる。この過程の間に、核ラミンズ(lamins)がその分解を誘導しながら開裂される。細胞は隣接細胞による食作用を受けるアポトーシス体を形成するので、アポトーシスは炎症性応答を誘導しない。多数のストレスが、in vitroおよびin vivoでのアポトーシスを誘導する。グルココルチコイド(glucocorticoids)の投与、ホルモンおよび/または増殖因子レベルの低減、化学療法(毒性薬剤)、機械的傷害およびDNA損傷はいずれもアポトーシスを引き起こすことが可能である。アポトーシスは、正常でない細胞周期の活性によっても誘導され、抗体または天然のFasリガンドと架橋しているFas受容体を発現する細胞において惹起され得る。アポトーシス性細胞死の高い頻度は病理学的障害の種々のアレイに関連する。多数の標準的なテストが、細胞および/または組織における細胞死を検出するため、この分野で知られている。例えば、TdT介在性ビオチン−dUDPニック末端標識(TUNEL)染色および縮合したクロマチンの外観および電子顕微鏡でのアポトーシスの他の形態学的な特徴によって、本発明および他の細胞型の細胞におけるアポトーシスを評価するために用いることができる(例のセクション参照)。
【0029】
本明細書で用いる「上方調節された(upregulated)」とは、遺伝子および/またはそれがコードするポリペプチドの増大した発現を示す。増大した発現とは、本発明の核酸(MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11d)のいずれかの複製、転写および/または翻訳が増大すること(即ち、検出限界まで)を示す。なぜなら、これらの過程のいずれかの上方調節は、該遺伝子(核酸)によりコードされるポリペプチドの濃縮/量の増加を引き起こすからである。逆に、下方調節(downregulation)または減少した発現は、遺伝子および/またはそれにコードされるポリペプチドの減少した発現を示す。遺伝子発現の上方調節または下方調節は、対照と比較して、それぞれ核酸ハイブリダイゼーションまたは抗体検出方法などの当該分野で知られた適切な手段を用いて、遺伝子に対するmRNAのレベル、または遺伝子がコードするポリペプチドの蛋白質発現のレベルにおいて、それぞれ増大または減少を検出することによって直接的に決定され得る。遺伝子発現の上方調節または下方調節は、遺伝子の心臓細胞の抗アポトーシス活性における変化を検出することによってもまた間接的に決定され得る。
【0030】
「心臓細胞の抗アポトーシス活性」は、例えば、この分野で知られる標準的なテスト(例えば、TUNEL染色−例のセクション参照)を用いて決定され得る心臓細胞のアポトーシス性細胞死を妨害または阻害するための分子の能力を示す。心臓細胞は、心筋細胞および血管内皮細胞(平滑筋細胞を含む)を含む。本明細書でいう「分子」とは、「核酸」および「ポリペプチド」の両方を包含する。MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11d分子は、in vivoおよびin vitroの両方で心筋細胞および/または血管内皮細胞(平滑筋細胞を含む)などの細胞のアポトーシス性細胞死を阻害することができる。
【0031】
本明細書でいう「発現」とは、核酸および/またはポリペプチドの発現並びにポリペプチド分子の活性(例えば、分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性)を示す。
本発明の1面は、MIVR−1をコードするcDNAのクローニングを含む。本発明のMIVR−1は、配列番号:1の核酸分子を含み、心臓細胞の抗アポトーシス活性を有するポリペプチドをコードする単離核酸分子である。ヒトMIVR−1 cDNAの配列は、配列番号:1として示し、蛋白質産物をコードするこのcDNAの予想されたアミノ酸配列は、配列番号:2として示す。
【0032】
本明細書で用いたように、対象は哺乳類またはヒトでない哺乳類である。すべての態様において、ヒトMIVR−1およびヒト対象が好ましい。
したがって、本発明は1面で、単離MIVR−1ポリペプチド、このポリペプチドをコードするcDNA、前述のものの機能的修飾体および変異体、前述のものの有用な断片、並びにそれらに関する診断薬および治療薬を含む。
【0033】
核酸に関して本明細書で用いられる用語「単離」は、(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによるin vitroでの増幅;(ii)クローニングによって組換的に産生;(iii)切断およびゲル分離によるような精製;または(iv)例えば、化学合成による合成を意味する。単離核酸は、この分野でよく知られる組換DNA技術によって既に操作されてものである。したがって、5’および3’の制限サイトが知られているかまたはそのためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマー配列が開示されているベクターに含まれるヌクレオチド配列は、核酸配列がその天然の宿主のありのままの位置に存在する核酸配列でなくても、単離していると考える。例えば、クローニングまたは発現ベクター内の単離された核酸は、とても小さなパーセンテージだけ、それが存在する細胞中の物質を含むかもしれないというような純粋さではない。しかしながら、このような核酸は明細書中で用いられている用語のように単離されている。それは、当業者に知られた標準の技術によって既に操作されているからである。
【0034】
ポリペプチドに関して本明細書で用いられている用語「単離」は、本発明の目的のいずれか1つのために操作または用い得るために充分に純粋な形で、その天然の環境から分離されていることを意味する。したがって、単離は、(i)抗体を惹起するおよび/または単離する、(ii)アッセイにおける試薬として、(iii)配列決定のために、(iv)治療薬としてなどに用いられるほど充分に純粋であることを意味する。
本発明によれば、心臓細胞の抗アポトーシス活性を有するMIVR−1ポリペプチドをコードする単離核酸分子は、(a)配列番号1のヌクレオチド配列からなる分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、心臓細胞の抗アポトーシス活性を有するMIVR−1ポリペプチドをコードする核酸分子、(b)心臓細胞の抗アポトーシス活性を有するMIVR−1ポリペプチドをコードする(a)の欠失体、付加体および置換体、(c)遺伝暗号の縮重によるコドン配列において(a)または(b)の核酸分子と異なる核酸分子、および(d)(a)、(b)または(c)の相補体を含む。本明細書で用いられる「相補体」は、(a)、(b)または(c)の全長の相補体または100%の相補体を含む。
【0035】
本発明のMIVR−1核酸の相同体および対立遺伝子は通常の技術で同定し得る。したがって、本発明の面は、MIVR−1ポリペプチドをコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号:1のコード領域からなる核酸分子とハイブリダイズするこれら核酸分子である。本明細書で用いられる用語「ストリンジェントな条件」はこの分野でよく知られているパラメーターを示す。核酸について、ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、低イオン強度でDNAハイブリッド複合体の融点(T)をほんの少し下回った温度(典型的には、約ハイブリッドのTの約3℃下)の条件下でストリンジェントであるべきだといわれる。高いストリンジェンシー(stringency)は、プローブ配列と標的との間のより特異的な相関に寄与する。核酸のハイブリダイゼーションに用いられるストリンジェントな条件は、この分野でよく知られており、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkなどの、このような方法を編纂した文献において見出されるだろう。「ストリンジェントな条件」の例として、6 x SSC中、65℃でのハイブリダイゼーションが挙げられる。
【0036】
ストリンジェントな条件の他の例として、3.5 x SSC、0.02% フィコール(Ficoll)、0.02% ポリビニルピロリドン、0.02% ウシ血清アルブミン、2.5mM NaHPO[pH7]、0.5% SDS、2mM EDTAからなるハイブリダイゼーション用緩衝液中、65℃でのハイブリダイゼーションが挙げられる。(SSCは、0.15M 塩化ナトリウム/0.15M クエン酸ナトリウム、pH7; SDSは、ドデシル硫酸ナトリウム; およびEDTAは、エチレンジアミン四酢酸である。)ハイブリダイゼーション後、DNAを転写した膜を室温で2 x SSCで洗浄し、次いで68℃までの温度で0.1 x SSC/0.1 x SDSで洗浄した。さらなる例では、水溶性のハイブリダイゼーション溶液の代替としては、ホルムアミドハイブリダイゼーション溶液の使用がある。したがって、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、50%ホルムアミド溶液および42℃を用いることで達成され得る。用いられ得る他の条件、試薬等々があり、同様な程度のストリンジェンシーの結果となろう。熟練した技術者は、このような条件をよく知っており、したがって、それらはここでは挙げない。しかしながら、熟練した技術者は、本発明のMIVR−1核酸の相同体および対立遺伝子の明確な同定を可能にする方法での条件を操作することは可能であろう。熟練した技術者はまた、患者の核酸分子の単離および配列決定に続く細胞のスクリーニングのための方法論および次いで日常的に単離されるこのような分子の発現用ライブラリーに精通している。
【0037】
一般的に、相同体および対立遺伝子は典型的に、配列番号:1および配列番号:2に対して、それぞれ、少なくとも40%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも50%のアミノ酸同一性を共有し、ある場合には少なくとも50%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも65%のアミノ酸同一性を共有し、さらに他の場合には少なくとも60%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも75%のアミノ酸同一性を共有している。さらなる場合において、相同体および対立遺伝子は、典型的には、配列番号:1および配列番号:2に対して、それぞれ、少なくとも90%、95%または99%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも95%、98%または99%のアミノ酸同一性を共有する。相同性は、変異体、公然と利用可能なNCBI (Bethesda, Maryland)によるソフトウェアツールを用いて算出することができる。模範的なツールは、BLASTとしても知られる、Altschul SF, et al., (J Mol Biol, 1990, 215:403−410)の発見的アルゴリズム(heuristic algorithm)を含む。PairwiseおよびClustalWのアライメント(BLOSUM30マトリックスセッティング)並びにKyte−Doolittleのハイドロパシー分析(hydropathic analysis)は、公的に(EMBL, Heidelberg, Germany)および商業的に(例えば、Oxford Molecular Group/enetics Computer Group, Madison, WIからのMacVector配列分析ソフトウェア)得ることができる。前述の核酸のワトソン−クリックの相補体は本発明によって包含される。
【0038】
MIVR−1の相同体および対立遺伝子などのMIVR−1関連遺伝子のスクリーニングにおいて、サザンブロットは、放射能活性のプローブとともに前述の条件を用いて行なわれ得る。DNAが最終的に転写された膜を洗浄した後、膜を、放射能活性シグナルを検出するためにX線フィルムまたはホスホイメージャープレート(phosphoimager plate)に対向して置くことができる。
全長のヒトMIVR−1 cDNAクローンの本明細書での教示を提供することによって、ヒトMIVR−1遺伝子に対応するマウスcDNAクローンなどの他の哺乳類の配列を、標準的なコロニーハイブリダイゼーション技術を用いて、cDNAライブラリーから得ることができる。
【0039】
本発明はまた、天然材料に存在するものの代替コドンを含む変性核酸を含む。例えば、セリン残基は、コドンTCA、AGT、TCC、TCG、TCTおよびAGCによってコードされる。したがって、当業者には、セリンをコードする任意のヌクレオチドトリプレットを延長されたMIVR−1ポリペプチドにセリン残基を組み込むために、in vitroまたはin vivoで蛋白質合成装置にむけて用いてもよいことは明らかである。同様に、他のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列トリプレットは、これに限定されないが、CCA、CCC、CCGおよびCCT(プロリンコドン); CGA、CGC、CGG、CGT、AGAおよびAGG (アルギニンコドン); ACA、ACC、ACGおよびACT(トレオニンコドン); AACおよびAAT(アスパラギンコドン);並びにATA、ATCおよびATT(はイソロイシンコドン)を含む。他のアミノ酸残基は多数のヌクレオチド配列によって同様にコードされていてもよい。したがって、本発明は、遺伝暗号の縮重によるコドン配列において生物学的に単離された核酸と異なる変性核酸を包含する。
【0040】
本発明はまた、配列番号:1もしくは配列番号:3の、またはそれらの相補体の単離ユニーク断片を提供する。ユニーク断片は、大きな核酸の「痕跡」である。例えば、ユニーク断片は、その正確な配列が前記で定義したMIVR−1核酸(およびヒト対立遺伝子)以外でヒトゲノム内の分子に見出されないことが保証されるほど充分に長い。当業者は、断片がヒトゲノム内でユニークであれば、決定するための日常的な手法だけを適用してよい。しかしながら、ユニーク断片は、配列番号14〜16および17からなる群から選択されるヌクレオチド、および/またはこの出願の出願日として既に公開された他の配列(例えば、GenBank Acc. No. AL035541)から完全に構成される断片を除外する。
【0041】
前述のGenBank寄託に記載される配列から完全に構成される断片は、本発明の配列に対してユニークな任意のヌクレオチドを含んでいないものである。したがって、本発明のユニーク断片は、GenBank寄託のそれらのまたはその断片の正確な配列以外のヌクレオチド配列を含まなくてはならない。差異は、GenBank配列に関する付加体、欠失体または置換体であってよく、またはGenBank配列から完全に分離した配列であってよい。
【0042】
ユニーク断片は、このような核酸を同定するためのサザンおよびノーザンブロットアッセイのプローブとして用いることができるか、またはこれらを用いるPCRなどの増幅アッセイに用いることができる。当業者に知られているとおり、200、250、300またはそれより大きなヌクレオチドなどの大きなプローブは、サザンおよびノーザンブロットなどのある使用で好ましく、一方、小さな断片は、PCRなどでの使用で好ましい。ユニーク断片はまた、例で示すように、抗体を作り出すためまたはポリペプチドの結合を決定するための、または免疫アッセイ用成分を作り出すための融合蛋白質の産生のために用いることができる。同様に、ユニーク断片は、例えば、抗体、免疫アッセイまたは治療上適用するものの製造に有用であるMIVR−1ポリペプチドの融合していない断片を産生することが可能である。ユニーク断片はさらに、それぞれMIVR−1核酸およびポリペプチドの発現を阻害するアンチセンス分子として用いることができる。
【0043】
当業者が認めるであろうとおり、ユニーク断片の大きさは、遺伝暗号におけるその保存(conservancy)に依存する。したがって、配列番号:1または配列番号:3のいくつかの領域および相補体は、ユニークであるために長いセグメントが要求され、一方、他のものは短いセグメントだけ、典型的には、12〜32ヌクレオチド長の間(例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31および32塩基)またはそれより大きく、記載の配列の完全長までが要求される。上記のとおり、この開示は、第一ヌクレオチド、第二ヌクレオチドなどから始まり、最後の手前8ヌクレオチドまでであり、そして書く配列のヌクレオチド番号8、9、10などのどこかで終わり、まさに最後のヌクレオチドまでの(配列が上記のとおりユニークであることを提供する)、各配列のそれぞれおよびすべての断片を包含することを意図する。実質的に、20またはそれより大きいヌクレオチド長の、ヌクレオチド1で始まりヌクレオチド1321で終わる配列番号:1、またはヌクレオチド1で始まりヌクレオチド861で終わる配列番号:3、またはそれらの相補体の領域の任意のセグメントがユニークである。確認的ハイブリダイゼーションおよび配列決定分析をin vitroで行なってもよいが、当業者は、典型的には必要なすべての既知のデータベース上のそれらに対する断片のヒトゲノムの他の配列から、関心のある配列を選択的に区別するためのユニーク配列の能力に基づく典型的な、このような配列を選択する方法を熟知している。
【0044】
前記のとおり、本発明は、MIVR−1活性を低減するために、MIVR−1ポリペプチドをコードする核酸分子に選択的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドを包含する。
本明細書で用いるとおり、用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または「アンチセンス」は、とくに遺伝子を含むDNAとまたは遺伝子のmRNA転写産物と生理学的条件下でハイブリダイズし、それにより遺伝子の転写および/またはそのmRNAの転写を阻害する、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドを表す。アンチセンス分子は、標的遺伝子または転写産物とのハイブリダイゼーションで、標的遺伝子の転写または翻訳を妨害するように設計される。当業者は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの正確な長さおよびその標的と相補的な程度が、標的の配列および配列を含む特定の塩基を含む、選択された特異的な標的に依存することを認識する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、生理学的な条件下で標的と選択的に結合するために、即ち、生理学的条件下で標的細胞において他の任意の配列よりも標的配列に実質的にハイブリダイズするように構築され、またアレンジされる。
【0045】
配列番号:1または相同体のゲノムおよび/またはcDNA配列に基づいて、当業者は、本発明に関する使用のための多数の適切なアンチセンス分子を容易に選択し、合成できる。ある場合には、7塩基長の短さの修飾オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドとして首尾よく用いられるが(Wagner et al., Nat. Med, 1995, 1(11):1116‑1118; Nat. Biotech., 1996, 14:840−844)、充分に選択的で阻害の効力があるためには、このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも10の、およびより好ましくは少なくとも15の連続した標的に相補的である塩基を含むべきである。最も好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは20〜30塩基の相補的な配列を含む。
【0046】
オリゴヌクレオチドは、遺伝子またはmRNA転写産物の任意の領域に対するアンチセンスであるものが選択され得るが、好ましい態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、翻訳開始点、転写開始点またはプロモーターサイトなどのN−末端または5’上流サイトに対応する。加えて、3’−非翻訳領域は、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより標的化され得る。mRNAのスプライシングサイトに対する標的化もまたこの分野において用いられるが、代替的なmRNAスプライシングが起きた場合、あまり好ましくないかもしれない。加えて、アンチセンスは、好ましくは、mRNAの二次構造が期待されず(例えば、Sainio et al., Cell Mol. Neurobiol. 14(5):439−457, 1994参照)、蛋白質が結合しないサイトに対して標的化される。最終的に、配列番号:1はcDNA配列を開示するが、当業者は、容易にこの配列に対応するゲノムDNAを得ることができる。したがって、本発明は、配列番号:1に対応するゲノムDNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供する。同様に、対立遺伝子のまたは相同的なMIVR−1 cDNAおよびゲノムDNAに対するアンチセンスを過度の実験なしに得られる。
【0047】
一組の態様において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、「天然の」デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはそれらの任意の組み合わせから構成されてもよい。即ち、1つの天然のヌクレオチドの5’末端および他の天然ヌクレオチドの3’末端が、ホスホジエステルヌクレオチド間結合を介して天然の系でのように共有結合されてもよい。これらオリゴヌクレオチドは、手動で行なわれてもよい方法または自動合成機による方法を認める技術により製造され得る。ベクターにより組換的に産生されてもよい。
しかしながら、好ましい態様において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、「修飾」オリゴヌクレオチドを含んでもよい。即ち、オリゴヌクレオチドは、その標的とハイブリダイズすることを妨げないが、その安定性もしくは標的化を増強し、または他方で治療的効果を増強する多数の方法で修飾され得る。
【0048】
本明細書で用いられる用語「修飾オリゴヌクレオチド」は、(1)そのヌクレオチドの少なくとも2つが合成ヌクレオチド間結合を介して共有結合し(即ち、1つのヌクレオチドの5’末端と他のヌクレオチドの3’末端の間のホスホジエステル結合以外の結合)、および/または(2)化学的な基がオリゴヌクレオチドに共有的に結合している核酸と通常関連していないオリゴヌクレオチドを表す。好ましい合成ヌクレオチド間結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、ホスフェートエステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、カルバメート、カーボネート、リン酸三エステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0049】
用語「修飾オリゴヌクレオチド」はまた、共有的に修飾された塩基および/または糖を備えたオリゴヌクレオチドを包含する。例えば、修飾オリゴヌクレオチドは、3’位の水酸基以外のおよび5’位のリン酸基以外の低分子量の有機的な基が共有的に結合される糖骨格を有するオリゴヌクレオチドを含む。したがって修飾オリゴヌクレオチドは、2’−O−アルキル化リボース基を含んでもよい。加えて、修飾オリゴヌクレオチドは、リボースの代わりにアラビノースなどの糖類を含んでもよい。したがって、本発明は、生理学的条件下でMIVR−1ポリペプチドをコードする核酸と相補的で、ハイブリダイズ可能な修飾アンチセンス分子を含む、薬学的に許容し得る担体を伴った、医薬製剤を考慮している。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、医薬組成物の部分として投与され得る。
【0050】
このような医薬組成物は、この分野で知られている任意の標準的な生理学的および/または薬学的に許容し得る担体と組み合わせて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。組成物は滅菌されるべきであり、患者へ投与するのに適した重量または容量の単位中、治療に有効な量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。用語「薬学的に許容し得る」は、活性成分の生物学的活性の効果を妨げない無毒性材料を意味する。用語「生理学的に許容し得る」は、細胞、細胞培養物、組織または器官などの生物学的な系と親和性である無毒性材料をいう。担体の特徴は投与経路に依存する。生理学的におよび薬学的に許容し得る担体は、希釈剤、増量剤、塩、緩衝液、安定化剤、可溶化剤およびこの分野で周知の材料を含む。
【0051】
本発明は、MIVR−1蛋白質および断片およびその変異体をコードする発現ベクター並びにそれら発現ベクターを含む宿主細胞もまた含む。異種DNAまたはRNAで形質転換でき、培養において増殖または維持される、実質的にいかなる細胞、原核細胞または真核細胞、が本発明の実施において用い得る。例には、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞およびマウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類などの哺乳動物細胞が含まれる。それらは広く種々の組織タイプであってよく、肥満細胞、線維芽細胞、卵母細胞およびリンパ球を含み、またそれらは初代細胞(primary cells)または細胞系であってもよい。特別な例として、CHO細胞およびCOS細胞が含まれる。細胞フリーの転写系もまた細胞の代わりに用い得る。
【0052】
本明細書で用いられるように、「ベクター」は、所望の配列を異なる遺伝環境の間の転移のためまたは宿主細胞での発現のために制限処理およびライゲーションにより挿入し得る任意の多数の核酸であり得る。RNAベクターもまた利用可能であるが、ベクターは典型的にはDNAから構成される。ベクターは、限定されないが、プラスミド、ファージミドおよびウイルスゲノムを含む。クローニングベクターは、宿主細胞で複製可能であり、さらに、ベクターが決定的な形で切断でき、新しい組換ベクターが宿主細胞で複製できるように保つために所望のDNA配列をライゲーションすることができる1または2以上のエンドヌクレアーゼ制限サイトにより特徴づけられるものである。プラスミドの場合、所望の配列の複製は、宿主細菌内でプラスミドがコピー数において増大するにつれて多数回または宿主が有糸分裂によって再生する前に宿主毎に丁度1回起きることができる。ファージの場合、複製は、溶菌相(lytic phase)の間活発に、または溶原相(lysogenic phase)の間不活発に起こり得る。
【0053】
発現ベクターは、調節配列と作動可能に(operably)つながれるように所望のDNA配列を制限処理およびライゲーションにより挿入してもよく、RNA転写産物として発現してもよい。ベクターは、ベクターで形質転換またはトランスフェクトしたかまたはしていない細胞の同定における使用に適した1または2以上のマーカー配列をさらに含んでいてもよい。マーカーは、例えば、抗生物質または他の化合物に対する抵抗性または感受性を増大または低減する蛋白質をコードする遺伝子、活性がこの分野で知られる標準的な分析(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼなど)により検出可能である酵素をコードする遺伝子、および形質転換されたまたはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニーまたはプラークの表現型に視覚的に影響を与える遺伝子(例えば、緑色蛍光蛋白質など)を含む。好ましいベクターは、自律的な複製が可能であり、作動可能につながれたDNAセグメントに存在する構造遺伝子産物の発現が可能であるものである。
【0054】
本明細書で用いられるように、コード配列および調節配列は、調節配列の影響または制御下にコード配列の発現または転写が置かれるような方法でそれらが共有的に結合している場合、「作動可能に」つながれているといわれる。コード配列が機能的蛋白質へ翻訳されることを望むのであれば、2つのDNA配列は、5’調節配列のプロモーターの誘導によってコード配列の転写が起きる場合、および2つのDNA配列の間の結合の性質によって、(1)フレームシフト変異が引き起こされず、(2)コード配列の転写に向けられるプロモーター領域の能力を妨げず、または(3)蛋白質に翻訳される対応するRNA転写産物の能力を妨げない場合に、作動可能につながっているといわれる。したがって、得られた転写産物が所望の蛋白質またはポリペプチドに翻訳されるように、プロモーター領域がDNA配列の転写に影響を与え得るのであれば、プロモーター領域は作動可能にコード配列とつながれている。
【0055】
遺伝子発現に必要な調節配列の正確な性質は、種または細胞の型の間で変化し得るが、一般的に、必要に応じ、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などのそれぞれ転写および翻訳の開始点を含む5’非転写および5’非翻訳配列を含む。特に、5’非転写調節配列などは、作動可能につなげられた遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列は、記載のとおり、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列をも含んでいてもよい。本発明のベクターは、随意的に5’リーダーまたはシグナル配列を含んでいてもよい。適切なベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量のうちである。
【0056】
すべての発現に必要な要素を含む発現ベクターは、商業的に入手可能であり、当業者に知られている。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照。MIVR−1ポリペプチドまたは断片またはそれらの断片をコードする異種のDNA(RNA)の細胞への導入により、細胞は遺伝学的に設計される。この異種のDNA(RNA)は、宿主細胞内で異種のDNAの発現を可能にする転写の要素を作動可能な制御下に置かれる。
【0057】
哺乳類細胞でのmRNA発現の好ましいシステムは、G418抵抗性を付与する遺伝子などの選択マーカー(これは安定にトランスフェクトされた細胞系の選択を容易にする)およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー−プロモーター配列を含むpRc/CMV(Invitrogen, Carlsbad, CAより入手可能)などのものである。加えて、霊長類またはイヌの細胞系での発現に適切なものは、多コピーの染色体外要素としてのプラスミドの維持を容易にするEBウイルス(Epstein Barr virus;EBV)の複製起点を含むpCEP4ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)である。他の発現ベクターは、in vitroでの効果的な転写を刺激するポリペプチド伸長因子(Elongation Factor)1αのプロモーターを含むpEF−BOSプラスミドである。該プラスミドは、Mishizuma and Nagata (Nuc. Acids Res. 18:5322, 1990)により記載され、そのトランスフェクションの実験での使用は、例えばDemoulin (Mol. Cell. Biol. 16:4710−4716, 1996)により開示されている。なおもう1つの好ましい発現ベクターは、E1およびE3蛋白質が欠損するStratford−Perricaudetにより記載のアデノウイルスである(J. Clin. Invest. 90:626−630, 1992)。Adeno.P1A組換え体としてのアデノウイルスの使用は、P1Aに対する免疫のためにマウスに皮内注射することがWarnier et al.により開示されている(Int. J. Cancer, 67:303−310, 1996)。
【0058】
本発明はまた、熟練した技術者が所望の発現ベクターまたはベクターを製造することを可能にするいわゆる発現キットを包含する。このような発現キットは、先に議論したコード配列の少なくとも分離した部分を含む。他の構成成分は、要求される、先に述べた配列に含まれる限り、所望により加えてもよい。本発明は、宿主細胞および細胞系(原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、酵母発現系および昆虫細胞での組換バキュロウイルス発現))をトランスフェクトするための前記の発現ベクターを含むMIVR−1 cDNA配列の使用を包含することが認められるだろう。特に有用であるのは、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類などの哺乳類細胞である。それらは広く種々の組織タイプであってよく、初代細胞または細胞系を含む。特別な例として、樹状細胞、U293細胞、末梢血白血球、骨髄幹細胞および胚性幹細胞を含む。本発明はまた、細胞および動物でのMIVR−1遺伝子「ノックアウト(knock−outs)」の構築を可能にし、MIVR−1活性のある面を研究するための材料を提供する。
【0059】
本発明は、前述のMIVR−1核酸によりコードされる単離ポリペプチド(蛋白質全体および部分的な蛋白質を含む)を提供し、配列番号:2のポリペプチドおよびそのユニーク配列を含む。このようなポリペプチドは、例えば、単独または融合蛋白質の部分として、免疫アッセイの構成成分としての抗体などの産生に有用である。ポリペプチドは、組織または細胞磨砕物を含む生物学的試料から単離することができ、発現系に適した発現ベクターを構築すること、発現ベクターを発現系に導入すること、および組換的に発現した蛋白質を単離することにより、種々の原核生物および真核生物の発現系において、組換的に発現させることもできる。抗原ペプチド(免疫認識のために細胞表面にような)を含む短いポリペプチドもまた、ペプチド合成のよく確立された方法を用いて化学的に合成することができる。
【0060】
MIVR−1ポリペプチドのユニーク断片は、一般的に、核酸と関連した前に議論のユニーク断片の外観および特徴を有する。当業者に認識されるだろうとおり、ユニーク断片の大きさは、断片が保存された蛋白質ドメインの部分を構成するか否かなどの因子に依存する。したがって、配列番号:2のいくつかの領域は、ユニークとなる、より長いセグメントを要求する一方で、他は単に短いセグメント、典型的には5および12の間のアミノ酸が要求される(例えば、5、6、7、8、9、10、11および12アミノ酸長またはそれ以上で287アミノ酸長の全長までの各整数を含む)。ポリペプチドのユニーク断片は、好ましくは、ポリペプチドの明確な機能的能力を保持する断片である。ポリペプチドのユニーク断片で維持され得る機能的能力は、抗体との相互作用、他のポリペプチドまたはその断片との相互作用、他の分子との相互作用などを含む。1つの重要な活性は、ポリペプチドを同定するための標示として作用する能力である。当業者は、典型的には、ファミリーでないメンバーから興味ある配列を選択的に識別するユニーク断片の能力に基づく、ユニークアミノ酸配列を選択する方法によく精通している。断片の配列と典型的に知られているデータベースとの比較が必要なだけである。
【0061】
本発明は、前記の種々のMIVR−1ポリペプチドを包含する。本明細書で用いるように、MIVR−1ポリペプチドの「変異体」は、MIVR−1ポリペプチドの一次アミノ酸配列の1または2以上の修飾を含むポリペプチドである。MIVR−1ポリペプチド変異体を作り出す修飾は、1)MIVR−1ポリペプチドの活性を低減するかまたは除去するため、2)発現系での蛋白質の安定性または蛋白質−リガンド結合の安定化などのMIVR−1ポリペプチドの特性を増強するため、3)抗原エピトープの付加または検出可能な部分の付加などの新規な活性または特性をMIVR−1ポリペプチドに提供するため、または4)MIVR−1ポリペプチドレセプターまたは他の分子に等価のまたはよりよい結合を提供するために、典型的に、MIVR−1ポリペプチドをコードする核酸に行なわれ、欠失、点変異、切り取り(truncations)、アミノ酸置換、およびアミノ酸もしくは非アミノ酸部分の付加を含むことができる。代替的に、修飾は、開裂、リンカー分子の付加、ビオチンなどの検出可能な部分の付加、脂肪酸の付加などによって、直接的にポリペプチドに行われ得る。修飾はまた、MIVR−1アミノ酸配列の全体または部分を含む融合蛋白質を包含する。当業者は、蛋白質の配列における変化の、蛋白質のコンホメーションへの効果を予測するための方法をよく知っており、したがって、既知の方法にしたがい変異体MIVR−1ポリペプチドを「設計する」ことができる。このような方法の1例は、Dahiyat and Mayo in Science 278:82−87, 1997に記載されており、これによって蛋白質は、新規に(de novo)設計され得る。本方法は、ポリペプチド配列の一部分だけを変化させるために既知の蛋白質に適用し得る。Dahiyat and Mayoのコンピューターを利用した方法を適用することによって、MIVR−1ポリペプチドの特異的な変異体が提案され、変異体が所望のコンホメーションを維持しているか否かを決定するためにテストされる。
【0062】
変異体は、生理学的活性に関係しないポリペプチドの特徴を特異的に変えるために修飾されたMIVR−1ポリペプチドを含み得る。例えば、しステイン残基は、望まれないジスルフィド結合を防ぐために、置換または欠失させることができる。同様に、あるアミノ酸を、発現系でのプロテアーゼによる蛋白質分解を除くことによって、MIVR−1 ポリペプチドの発現を増強するように変化させることができる(例えば、KEX2プロテアーゼ活性が存在する酵母発現系における二塩基アミノ酸残基)。
MIVR−1ポリペプチドをコードする核酸の変異は、好ましくは、コード配列のアミノ酸のリーディングフレームを保ち、好ましくは、変異体ポリペプチドの発現に有害であり得るヘアピンまたはループなどの二次構造を形成するようにハイブリダイズしがちな核酸における領域を作り出さず、
【0063】
変異は、アミノ酸置換を選択することにより、またはポリペプチドをコードする核酸の選択したサイトのランダム変異により行なうことができる。変異体ポリペプチドは、次いで、どの変異が所望の特性を備えた変異体ポリペプチドを提供するかを決定するために1またはそれ以上の活性を発現させ、テストされる。さらに、変異は、ポリペプチドのアミノ酸配列についてはサイレントであるが、特定の宿主での翻訳に好ましいコドンを提供する変異体(または変異体MIVR−1ポリペプチド)に行われ得る。例えば、大腸菌における核酸の翻訳に好ましいコドンは当業者によく知られている。なお他の変異は、MIVR−1の非コード配列またはポリペプチドの発現を増強するためのcDNAクローンに行われ得る。
【0064】
熟練した技術者は、保存的アミノ酸置換が、前述のポリペプチドの機能的に等価な変異体即ち、MIVR−1ポリペプチドの機能的な能力を保持する変異体を提供するためにMIVR−1ポリペプチドにおいて行なわれてもよいことを理解する。本明細書で用いるように、「保存的アミノ酸置換」は、三次構造および/またはポリペプチドの活性を有意に変えないアミノ酸置換を示す。変異体は、当業者に知られるポリペプチド配列を変える方法にしたがって製造することができ、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkなどのこのような方法を編纂した文献に見られるものを含む。典型的なMIVR−1ポリペプチドの機能的に等価な変異体は、配列番号:2の保存的アミノ置換を含む。アミノ酸の保存的置換は、以下の群のなかのアミノ酸の間で行なわれる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g) E、D。
【0065】
したがって、MIVR−1ポリペプチドの機能的に等価の変異体、即ち、天然のMIVR−1ポリペプチドの機能を保持したMIVR−1ポリペプチドの変異体は、本発明によって考慮されている。MIVR−1ポリペプチドの機能的に等価の変異体を産生するためのMIVR−1ポリペプチドのアミノ酸配列における保存的アミノ酸配列は、典型的には、MIVR−1ポリペプチドをコードする核酸 (配列番号:1、3)の変更によって行なわれる。
このような置換は、当業者に知られた種々の方法によって行われ得る。例えば、アミノ酸置換は、PCRによる変異(PCR−directed mutation)、クンケル(Kunkel)法に準ずる部位特異的変異(site−directed mutagenesis)(Kunkel, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 82: 488−492, 1985)によって、またはMIVR−1ポリペプチドをコードする遺伝子の化学合成によって行なわれる。MIVR−1ポリペプチドの機能的に等価の断片の活性は、細菌または哺乳類発現ベクターへ変更したMIVR−1ポリペプチドをコードする遺伝子をクローニングすること、ベクターを適切な宿主に導入すること、変更したMIVR−1ポリペプチドを発現すること、および本明細書に開示のように(例えば、心臓細胞の抗アポトーシス活性など)、MIVR−1ポリペプチドの機能的能力をテストすることによってテストすることができる。
【0066】
ここに記載の本発明は、いくつかが他のところに記載されている多数の使用を有している。第一に、本発明はMIVR−1ポリペプチドの単離を可能にする。熟練した実行者によく知られた種々の方法論が、単離MIVR−1分子を得るために有用である。ポリペプチドは、天然で該ポリペプチドを産生する細胞から、クロマトグラフィーの手法または免疫学的認識によって精製してもよい。代替的に、ポリペプチドの産生を生じるように細胞へ発現ベクターを導入してもよい。他方、mRNAの転写産物は、コードされたポリペプチドを生じるように細胞へマイクロクロインジェクションして、または他の導入を行なってもよい。網状赤血球溶解物系などの細胞フリーの抽出物でのMIVR−1 mRNAの翻訳は、MIVR−1ポリペプチドを産生するのに用いてもよい。当業者は、直ちにMIVR−1ポリペプチドを単離する既知の方法を続けることができる。これらには、制限されないが、免疫クロマトグラフィー、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび免疫アフィニティ−クロマトグラフィーを含む。
【0067】
本発明はまた、ある態様において、MIVR−1ポリペプチド由来の「ドミナントネガティブ」ポリペプチドを提供する。ドミナントネガティブポリペプチドは、細胞機構と相互作用することにより、その細胞機構との相互作用からの活性蛋白質を置き換えるか、または活性蛋白質と競争し、それにより活性蛋白質の効果を低減する蛋白質の不活性な変異体である。例えば、リガンドに結合するがリガンドの結合に応答するシグナルを伝達しないドミナントネガティブ受容体は、リガンドの発現の生物学的効果を低減することができる。同じように、標的蛋白質に普通に相互作用するが、標的蛋白質をリン酸化しないドミナントネガティブの接触分解不活性なキナーゼは、細胞シグナルに応答する標的蛋白質のリン酸化を低減することができる。同様に、遺伝子の制御領域のプロモーターサイトと結合するが、遺伝子の転写を増大させないドミナントネガティブな転写因子は、転写を増大させることなしにプロモーター結合サイトを支配することにより正常な転写因子の効果を低減することができる。
【0068】
細胞でのドミナントネガティブポリペプチドの発現の最終結果は、活性蛋白質の機能における低減である。当業者は、蛋白質のドミナントネガティブ変異体の能力を評価することができ、1またはそれ以上のドミナントネガティブ変異体ポリペプチドを作り出す標準的な変異技術を用いることができる。例えば、米国特許第5,580,723号およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照。次いで熟練した技術者は、選択された活性の減少および/またはそのような活性の保持に対する変異させたポリペプチドの集団をテストし得る。蛋白質のドミナントネガティブ変異体を作り出したり、テストしたりする他の同様な方法は当業者に明らかであろう。MIVR−1 cDNAの単離は、熟練した技術者に、MIVR−1の正常でない発現によって特徴づけられる障害を診断することを可能にもする。これらの方法はMIVR−1遺伝子および/またはそれらに由来するMIVR−1ポリペプチドの発現を決定することを含む。先の状況において、このような決定は、任意の標準的なポリメラーゼ連鎖反応を含む核酸決定アッセイまたは後に説明するような標識化したハイブリダイゼーションプローブを用いてアッセイすることを介して行なうことができる。後の状況で、このような決定は、例えば、選択されたMIVR−1蛋白質と結合する抗体を用いた任意の標準的な免疫アッセイを介して行なうことができる。
【0069】
本発明はまた、例えば、抗体または抗体の断片(「結合ポリペプチド」)であることが可能で、MIVR−1ポリペプチドと選択的に結合し得る単離ペプチド結合剤を包含する。抗体は、従来の方法論にしたがい製造されるポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。ある態様において、本発明は、配列番号14〜17からなる群より選択される配列を有する核酸によりコードされるポリペプチドに結合する結合剤(例えば、抗体)を除く。重要なことに、この分野でよく知られているように、抗体分子の小さい部分、パラトープ(paratope)だけが、抗体の結合においてそのエピトープに含まれる(一般的には、Clark, W.R. (1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley & Sons, Inc., New York; Roitt, I. (1991) Essential Immunology, 7th Ed., Blackwell Scientific Publications, Oxford参照)。例えばFc’およびFc領域は、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合において含まれない。pFc’領域から酵素的に切断されたか、またはpFc’領域を用いないで産生されF(ab’)断片を設計された抗体は、両方の完全な抗体の抗原結合サイトを保持する。同様に、Fc領域が酵素的に切断されたか、またはFc領域を用いないで産生されFab断片を設計された抗体は、完全な抗体分子の1つの抗原結合部位を保持する。続けてさらに、Fab断片は、共有結合している抗体軽鎖およびFdを示す抗体重鎖の蛋白質からなる。Fd断片は抗体の特異性(単一のFd断片は、抗体特異性を変えることなく10までの異なる軽鎖と関連し得る)の主要な決定基であり、Fd断片は溶液中でエピトープ結合能力を保持する。
【0070】
この分野でよく知られているように、抗体の抗原結合部のなかに、抗原のエピトープに直接的に相互作用する相補性決定領域(CDR)、およびパラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域がある(一般的にClark, 1986; Roitt, 1991参照)。重鎖Fd断片およびIgG免疫グロブリンの軽鎖の両方に、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR1からCDR3)により分けられている4つのフレームワーク領域(FR1からFR4)がある。CDR、特にCDR3領域、およびさらには重鎖CDR3が、抗体特異性に対する大部分原因である。
【0071】
哺乳類の抗体の非CDR領域が、元の抗体のエピトープ特異性を維持していて、同種または異種の抗体の同様の領域と置き換わってもよいことがこの分野で今やよく確立されている。このことは、非ヒトCDRを機能的な抗体を産生するためにヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域と共有的につなげた「ヒト化」抗体の開発および使用において最も明確に明らかになる。例えば、米国特許第4,816,567号、第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,762号および第5,859,205号参照。したがって、例えば、PCT国際公開番号WO 92/04381は、マウスのFR領域の少なくとも一部分がヒト由来のFR領域で置き換えられているヒト化マウスRSV抗体の開発および使用を教示している。抗原結合能力を備えた完全な抗体の断片を含むこのような抗体は、しばしば「キメラ」抗体と呼ばれる。
【0072】
したがって、当業者に明らかであるとおり、本発明はまた、F(ab’)、Fab、FvおよびFd断片;Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同性のヒトまたは非ヒト配列で置き換わっているキメラ抗体; FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同性のヒトまたは非ヒト配列で置き換わっているキメラF(ab’)断片抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同性のヒトまたは非ヒト配列で置き換わっているキメラFab断片抗体;並びにFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が相同性のヒトまたは非ヒト配列で置き換わっているキメラFd断片抗体を提供する。本発明はまた、いわゆる単鎖抗体も含む。
【0073】
したがって、本発明は、多数のサイズおよびMIVR−1ポリペプチドと特異的に結合する型のポリペプチド、並びにMIVR−1ポリペプチドおよびそれらの結合パートナーの両方の複合体を含む。これらのポリペプチドは、抗体技術以外のソース由来でもよい。例えば、このようなポリペプチド結合剤は、細菌フラジーラペプチドディスプレイライブラリーとして、またはファージディスプレイライブラリーとして、固定化された形で、溶液中直ちに調製される得る同義性を持つペプチドライブラリーによって提供され得る。1または2以上のアミノ酸を含むペプチドのコンビナトリアルライブラリーもまた合成され得る。ペプチドおよび非ペプチド合成部分のライブラリーがさらに合成され得る。
【0074】
ファージディスプレイは、本発明に記載の有用な結合ペプチドの同定において特に効果的であることができる。簡単にいえば、ファージライブラリーを(例えば、m13、fd、またはラムダファージを用いて)調製し、従来の手順を用いて4から約80アミノ酸残基までのインサートをディスプレイする。該インサートは、例えば、相補的な縮重(completely degenerate)または偏ったアレイ(biased array)を表す。次いで、MIVR−1ポリペプチドまたはMIVR−1と結合パートナーの複合体と結合するファージ運搬インサートを選択することができる。この方法は、MIVR−1ポリペプチドまたは複合体と結合するファージの数サイクルの再選択を通じて繰り返すことができる。繰り返されたラウンドによって、特異的配列を運搬するファージの豊富化が導かれる。DNA配列アッセイは、発現ポリペプチドの配列を同定するために行なうことができる。MIVR−1ポリペプチドまたは複合体に結合する配列の最小限の直線部は決定できる。最小限の直線部またはすべてを含むインサートと1または2以上の付加的なその上流または下流の縮重した残基を含む偏ったライブラリーを用いる手順を繰り返すことができる。酵母のツーハイブリッドスクリーニング方法もまた、MIVR−1ポリペプチドと結合するポリペプチドの同定のために用いることができる。したがって、本発明のMIVR−1ポリペプチドまたはその断片またはMIVR−1と結合パートナーとの複合体は、本発明のMIVR−1ポリペプチドのペプチド結合パートナーを同定し選択するため、ファージディスプレイライブラリーを含むペプチドライブラリーをスクリーニングするのに用いることができる。このような分子は、記載のごとく、スクリーニングアッセイのため、精製プロトコールのため、MIVR−1の機能性を直接妨げるため、そして当業者に明らかな他の目的のために用いることができる。
【0075】
MIVR−1ポリペプチドまたはその断片はまた、それらの天然の結合パートナーの単離にも用いることができる。結合パートナーの単離は、既知の方法に従って行ない得る。例えば、単離MIVR−1ポリペプチドは基材に付着することができ、次いで、MIVR−1結合パートナーが含まれると疑われる溶液を基材へ適用し得る。MIVR−1ポリペプチドの結合パートナーが溶液に存在する場合、基材結合MIVR−1ポリペプチドと結合する。次いで、結合パートナーは単離される。MIVR−1の結合パートナーである他の蛋白質は、過度の実験を行なわずに同様の方法により単離され得る。
【0076】
本発明はまた、対象中のMIVR−1発現レベルを測定する方法を提供する。これは、最初に、対象からテスト試料を得ることによって行なうことができる。テスト試料は、組織または生物的液体であってよい。組織には、脳、心臓、血清、乳房、結腸、膀胱、子宮、前立腺、胃、精巣、卵巣、膵臓、脳下垂体、副腎、甲状腺、唾液腺、乳腺、腎臓、肝臓、腸、脾臓、胸腺、血管、骨髄、気管および肺が含まれる。ある態様において、テスト試料は、心臓および血管組織、および血液、唾液および尿を起源とする。浸潤性および非浸潤性の両方の技術が、このような試料を得るために用いることができ、この分野でよく記載されている。分子レベルでPCRおよびノーザンブロッティングの両方によって、ここに記載の本発明の方法およびこのような方法を編纂する文献にみられるこの分野で周知のプロトコールを用いて、MIVR−1 mRNAのレベルの決定に用いることができる。蛋白質レベルで、MIVR−1発現は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗−MIVR−1血清を標準的な免疫アッセイと組み合わせて用いることで決定することができる。好ましい方法は、テスト試料のMIVR−1発現の測定したレベルと対照とを比較する。対照は、既知量の核酸プローブ、MIVR−1エピトープ(MIVR−1発現産物など)、または制御されている対象の、もしくはMIVR−1発現が「正常」レベルの同様のテスト試料が含まれる。
【0077】
MIVR−1ポリペプチドは、このようなポリペプチドは生物学的抽出物から単離されるのであるが、好ましくは組換的に産生される。組換的に産生されたMIVR−1ポリペプチドは、MIVR−1蛋白質と、例えば、蛋白質−蛋白質結合を提供し得るかまたは増強し得るポリペプチド、配列特異的核酸結合し得るもの(GAL4など)、アッセイ条件下でMIVR−1ポリペプチドの安定化を増強し得るもの、または緑色蛍光蛋白質などの検出可能部分を提供するものなどの他のポリペプチドとの融合蛋白質を含むキメラ蛋白質を含む。MIVR−1ポリペプチドまたは断片と融合したポリペプチドもまた、例えば、免疫認識または蛍光標識などにより、融合蛋白質を直ちに検出する手段を提供する。
【0078】
本発明はまた、ヒトでない形質転換動物の作出において有用である。本明細書で用いるように、「ヒトでない形質転換動物」には、生殖細胞系および/または体細胞に組み込まれた1または2以上の外来核酸分子を有するヒトでない形質転換動物を含む。したがって、該形質転換動物は、相同性組換による同種または異種の遺伝子破壊を有する「ノックアウト」動物、エピソームまたは染色体に組み込まれた発現ベクターを有する動物などを含む。ノックアウト動物は、この分野でよく知られているように、胚性幹細胞を用いた同種組換によって作出され得る。組換は、例えば、cre/lox系または当業者に周知の他のリコンビナーゼ系などを用いて容易に行われ得る。ある態様において、リコンビナーゼ系自体は、例えば、ある胚性のまたは胚性後の発育段階でのある組織または細胞型において、条件付で発現し、発現を増大または減少させる化合物などの付加により誘導される。一般的に、このような系で用いられる条件付発現ベクターに、所望の遺伝子発現パターン(例えば、一時的または空間的(spatial))を与える種々のプロモーターが用いられる。条件付プロモーターはまた、調節された、または条件付の方法でMIVR−1の発現を増大するため、MIVR−1核酸分子と作動可能に連結され得る。トランスに働く(trans−acting)MIVR−1活性または発現のネガティブレギュレーターは、前記のような条件付プロモーターと作動可能に連結できる。このようなトランスに働くネガティブレギュレーターは、アンチセンスMIVR−1核酸分子、ドミナントネガティブMIVR−1分子をコードする核酸分子、MIVR−1に特異的なリボザイム分子などを含む。ヒトでない形質転換動物は、増大または低減したMIVR−1発現に特徴づけられる状態のしんだんまたは治療の生化学的または生理学的効果をテストするのに向けた実験に有用である。他の用途は当業者に知られている。
【0079】
本発明はまた、遺伝子治療も考慮している。ex vivoでの遺伝子治療を行なうための手順は、米国特許第5,399,346号、およびが公的に入手可能な書類である該特許のファイルヒストリーに提出された提出物に概観されている。一般的に、遺伝子の不完全なコピーを含む対象の細胞へ遺伝子の機能的なコピーをin vitroでの導入、および遺伝学的に設計された細胞を対象へ戻すことを含む。遺伝子の機能的なコピーは、遺伝工学的に設計された細胞での遺伝子発現を可能にする調節要素の作動可能な制御下にある。多数のトランスフェクションおよび形質導入技術並びに適切な発現ベクターが当業者に周知であり、いくつかはPCT出願WO95/00654に記載されている。アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよび標的化リポソームなどのベクターを用いたin vivoでの遺伝子治療もまた本発明にしたがって考慮される。
【0080】
本発明はさらに、同定剤またはMIVR−1またはMIVR−1断片依存細胞機能のレベルで剤活性のためのリード化合物の同定に効果的な方法を提供する。特に、このような機能は、他のポリペプチドまたは断片との相互作用を含む。一般的に、スクリーニング方法は、MIVR−1心臓細胞抗アポトーシス活性を増大する化合物も本スクリーニング方法を用いてアッセイすることができるが、MIVR−1活性(MIVR−1心臓細胞抗アポトーシス活性など)を妨げる化合物に対してアッセイすることを含む。このような方法は、化合物の自動高速処理(high throughput)スクリーニングに適合可能である。標的の標示は、心臓細胞の抗アポトーシス活性などのMIVR−1による調節された細胞のプロセスを含む。
【0081】
標識されたin vitroでの蛋白質−リガンド結合アッセイ、電気泳動移動度シフト分析、免疫アッセイ、ツー−またはスリー−ハイブリッドスクリーニングなどの細胞に基づくアッセイ、発現アッセイなどを含む、候補剤(薬理学的な)のためのアッセイの広い多様性が提供される。トランスフェクトされた核酸が、例えば、コンビナトリアルペプチドライブラリーまたはcDNAライブラリーなどをコードし得る。GAL4融合蛋白質などのこのようなアッセイに利便性のある試薬は、この分野において既知である。模範的な細胞に基づくアッセイは、GAL4 DNA結合ドメインと1または2以上のGAL4結合サイトなどの遺伝子発現調節領域と作動可能に結合したレポーター遺伝子をコードする核酸を融合したMIVR−1ポリペプチドをコードする核酸で細胞をトランスフェクトすることを含む。MIVR−1およびレポーター融合ポリペプチドがレポーター遺伝子の転写を可能にするように結合したときにレポーター遺伝子転写の活性化が起きる。細胞の機能を仲介されたMIVR−1ポリペプチドを調節する剤は、次いでレポーター遺伝子の発現の変化を通して検出される。レポーター遺伝子の発現における変化の決定方法はこの分野で周知である。
【0082】
該方法に用いられるMIVR−1断片は、トランスフェクトされた核酸によって賛成されないとき、単離ポリペプチドとしてアッセイ混合物に添加される。MIVR−1ポリペプチドは、このようなポリペプチドは生物学的抽出物から単離してもよいが、好ましくは、組換的に産生される。組換的に産生されたMIVR−1ポリペプチドは、MIVR−1蛋白質と、例えば、蛋白質−蛋白質結合を提供し得るかまたは増強し得るポリペプチド、配列特異的核酸結合し得るもの(GAL4など)、アッセイ条件下でMIVR−1ポリペプチドの安定化を増強し得るもの、緑色蛍光蛋白質またはFlagエピトープなどの検出可能部分を提供するものなどの他のポリペプチドとの融合蛋白質を含むキメラ蛋白質を含む。アッセイ混合物は、MIVR−1と相互作用可能な天然の細胞内MIVR−1結合標的を含む。天然の細胞内MIVR−1結合標的を用いられるが、しばしば、部分(例えば、ペプチドまたは核酸断片)、MIVR−1結合標的の類似体(即ち、アッセイの目的のための天然の結合標的のMIVR−1結合部分を模した剤)、並びにアッセイで測定可能なMIVR−1断片と親和性および結合活性の結合を提供する部分または類似体を用いることが好ましい。
【0083】
アッセイ混合物はまた、候補剤を含む。典型的には、複数のアッセイ混合物は、種々の濃度に対する異なる応答を得るために異なる剤の濃度と並行して行なわれる。典型的には、これら濃度の1つはネガティブな対照、即ち、剤のゼロ濃度またはアッセイの検出限界より低い剤の濃度として供される。候補剤は、典型的には、有機化合物であるが、多数の化学分類(chemical classes)を包含する。好ましくは、候補剤は、小さな有機化合物、即ち、分子量50から約2500、好ましくは約1000より小さく、より好ましくは、約500より小さい化合物である。候補剤は、ポリペプチドおよび/または核酸と構造的な相互作用を必要とする化学官能基を含み、典型的には、少なくとも、アミン、カルボニル、ヒドロキシまたはカルボキシル基を含み、好ましくは、少なくとも2つの化学官能基を含み、さらに好ましくは、少なくとも3つの化学官能基を含む。候補剤は、前記官能基の1または2以上を有する、環状炭素または複素環式構造および/または芳香または多芳香(polyaromatic)構造を含み得る。候補剤はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジン、前記の誘導体または構造的類似体、たまはそれらの組合わせはどであってよい。剤が核酸であれば、本明細書に記載の修飾核酸も考慮されるが、剤は典型的には、DNAまたはRNA分子である。
【0084】
候補剤は、合成または天然化合物のライブラリーを含む広範なソースから得られる。例えば、多数の手段が、ランダムオリゴヌクレオチドの発現、合成有機コンビナトリアルライブラリー、ランダムペプチドのファージディスプレイライブラリーなどを含む、有機化合物および生体分子の広範なランダムおよび直接的な合成に利用可能である。代替的に、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形の天然化合物のライブラリーが利用できるか、またはすぐに作製される。加えて、天然のおよび合成により作製されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段で修飾することができる。さらに、既知の(薬理学的な)剤を、剤の構造的類似体を製造するために、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの直接的またはランダムな化学修飾してもよい。
【0085】
種々の他の試薬もまた、混合物に含まれ得る。これらには、最適な蛋白質−蛋白質および/または蛋白質−核酸結合を促進するために用いてもよい塩、緩衝液、中性蛋白質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などが含まれる。このような試薬はまた、反応成分の非特異的なまたはバックグランドの相互作用を低減し得る。プロテアーゼ、阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤などの効果を改善する他の試薬も用いてもよい。前述のアッセイ材料の混合物は、候補剤の存在がなければ、MIVR−1ポリペプチドが細胞結合標的、その部分またはその類似体と特異的に結合する条件下でインキュベートされる。成分の添加の順序、インキュベーションの温度、インキュベーションの時間およびアッセイの他のパラメーターは、直ちに決定され得る。このような実験は、単にアッセイのパラメーターの最適化を含むだけで、アッセイの基本的な構成ではない。インキュベーション温度は典型的には、4℃〜40℃である。インキュベーション時間は、好ましくは、迅速な高速処理スクリーニングを容易にするために最小化され、典型的には、0.1〜10時間である。
【0086】
インキュベーション後、MIVR−1ポリペプチドと1または2以上の結合標的との間の特異的結合があるか、またはないかが、使用者に利用可能な適した任意の方法によっても検出される。細胞フリーの結合型アッセイのために、分離工程が、結合成分を非結合成分から分離するためにしばしば用いられる。該分離工程は、様々な方法で達成され得る。好適には、該成分の少なくとも1つが、固相基質に固定化され、これからは非結合成分が簡単に分離され得る。固相基質は、広範な形状で広範な材料から作らることができ、例えば、マイクロタイタープレート、マイクロビーズ、ディップスティック(dipstick)、樹脂粒子などである。基材は、好ましくは、ノイズの比率に対してシグナルを最大化し、一次的には、バックグランドの結合を最小化し、並びに、分離と労力を簡易にするために選択される。
【0087】
分離は、例えば、貯蔵槽からビーズまたはディップスティックを除去すること、マイクロタイタープレートのウェルなどの貯蔵槽を空にするまたは希釈すること、ビーズ、粒子、クロマトグラフィーカラムまたはフィルターを洗浄液または溶媒でリンスすることによって、達成され得る。分離工程は、好ましくは、多数回のリンスまたは洗浄を含む。例えば、固相基質がマイクロタイタープレートである場合、ウェルは、洗浄液で数回洗浄され、それには典型的には、塩、緩衝液、界面活性剤、非特異的蛋白質などの特異的結合に参加しないインキュベーション混合物の成分を含む。固相基質が磁気ビーズである場合、ビーズは、洗浄液で1または2回以上洗浄され、磁気を用いて単離される。
【0088】
検出は、ツー−またはスリーハイブリッドスクリーニングなどの細胞−ビーズアッセイに適した任意の方法で達成し得る。標的分子と相互作用するMIVR−1ポリペプチドのレポーター遺伝子転写アッセイの結果の転写産物は、典型的には、例えば、β−ガラクトシダーゼ活性、ルシフェラーゼ活性などの直接のまたは間接の検出可能な産物をコードする。細胞フリー結合アッセイのために、成分の1つは常に検出可能な標識を含むかまたは結合している。広範なラベルが用いられ、これらは直接的な検出(例えば、放射能活性、蛍光、光学的または電子密度など)、または間接的な検出(例えば、FLAGエピトープのエピトープタグ、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)を提供する。標識は、MIVR−1結合パートナーと結合され、または結合パートナーの構造に組み込まれる。
【0089】
種々の方法が、標識および他のアッセイ成分の性質に依存しながら、標識を検出するために用いられ得る。例えば、標識は、固相基質と結合するかまたは続いて固相基質から分離されるが、検出され得る。標識は、光学または電子密度、放射能活性の放射、非放射能活性なエネルギー移動などを介して直接的に検出されるか、または抗体接合、ストレプトアビジン−ビオチン接合などで間接的に検出される。標識を検出する方法は、この分野で周知である。
本発明は、MIVR−1特異的結合剤、該剤を同定および作製する方法、および診断、治療および医薬開発におけるそれらの使用を提供する。例えば、MIVR−1特異的な薬理学的な剤は、種々の診断および治療での適用、特に、疾患または疾患の予後が変換したMIVR−1結合特性に関連する場合に有用である。新規のMIVR−1特異的結合剤は、MIVR−1特異的抗体、細胞表面受容体、およびツーハイブリッドスクリーニングによって同定される他の天然の細胞内および細胞外の結合剤、および化学ライブラリーのスクリーニングにおいて同定される天然でない細胞内および細胞外の結合剤などである。
【0090】
一般的に、特定の分子に対するMIVR−1結合の特異性は、結合平衡定数により決定される。MIVR−1ポリペプチドに選択的に結合可能な標的は、好ましくは、少なくとも約10−1、さらに好ましくは少なくとも約10−1、最も好ましくは少なくとも約10−1の結合平衡定数を有する。広範な細胞に基づくおよび細胞フリーのアッセイは、MIVR−1特異的結合を示すために用い得る。細胞に基づくアッセイは、ワン、ツーおよびスリーハイブリッドスクリーニング、MIVR−1仲介転写が阻害または増大されるアッセイなどを含む。細胞フリーアッセイは、MIVR−1−蛋白質結合アッセイ、免疫アッセイなどを含む。MIVR−1ポリペプチドと結合する剤をスクリーニングするために有用な他のアッセイは、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer;FRET)および電気泳動移動度シフト分析(electrophoretic mobility shift analysis;EMSA)を含む。
【0091】
本発明の他の面によれば、本発明の分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性を調節することにおいて結うような剤を同定する方法を提供する。該方法は、(a)候補剤と心臓細胞の抗アポトーシス活性を有する分子とを接触させること、(b)分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性を測定すること、および(c)分子の測定した心臓細胞の抗アポトーシス活性を対照と比較し、候補剤が分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性を調節するかを決定することを含み、分子がMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される核酸分子またはそれらの発現産物である。「接触」は、心臓細胞に対する抗アポトーシス活性を有する分子と候補剤の直接的接触および間接的接触の両方に関する。「間接的」接触は、候補剤が、第3剤(例えば,メッセンジャー分子,レセプターなど)を介して分子の心臓細胞に対する抗アポトーシス活性に対して作用を発揮することを意味する。ある態様において、対照は、候補剤なしで測定した、分子の心臓細胞に対する抗アポトーシス活性である。アッセイ方法および候補剤は,前記のMIVR−1に関する態様に記述した通りである。
【0092】
本発明のさらに他の側面によると、核酸分子、その発現産物,またはその発現産物の断片の正常ではない発現を特徴とする障害の診断方法が提供される。この方法は、対象から単離した生物学的試料を、該核酸分子、その発現産物、またはその発現産物の断片と特異的に結合する剤と接触させ、剤と核酸分子または発現産物を、障害の決定因子として定量することを含み、ここで、核酸分子は、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される。いくつかの態様において、障害は、心筋梗塞、卒中、動脈硬化、および心不全からなる群から選択される心血管状態である。1つの態様において、障害は心臓肥大である。
【0093】
該分子が核酸分子の場合、このような定量は、ポリメラーゼ連鎖反応を含む標準的な核酸定量アッセイのいずれか、または、本明細書に例示されているような標識ハイブリダイゼーションプローブによるアッセイで行うことができる。該分子が核酸分子の発現産物または核酸分子の発現産物の断片である場合、このような定量は、例えば、任意のポリペプチド発現産物にも結合する抗体を用いた、標準的な免疫学的アッセイのいずれかで行うことができる。
【0094】
「正常でない発現」は、前述の任意の分子(MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11d、核酸および/またはポリペプチド)の、対照(つまり、健康なまたは「正常な」対象における同一分子の発現)に比較して減少した発現(過少発現)または増大した発現(過剰発現)に関する。本明細書中において用いる「健康な対象」は、将来心血管状態を患う危険にない対象に関する(既述の議論およびHarrisonの議論を参照)。健康な対象は、その外、疾患の症状を呈していもいない。換言すると、このような対象は、医療専門家が診察した場合、健康で、心血管障害の症状がなく、または、心血管障害を患う危険にないことを特徴とする。
【0095】
障害が、心筋梗塞、卒中、動脈硬化、および心不全からなる群から選択された心血管状態であるとき、前述の任意の分子の、対照(例えば健康な対象)に比較して減少した発現は障害の存在を示し、または、将来このような障害を患う危険性を示す。
障害が心臓肥大であるとき、前述の任意の分子の、対照(例えば健康な対象)に比較して増大した発現は障害の存在を示し、または、将来このような障害を患う危険性を示す。
【0096】
本発明はまた、本発明の核酸のレベル、または本発明の発現産物の測定に用いることができる新規なキットを提供する。
1つの態様において、キットは、前述のMIVR−1単離核酸分子、またはその発現産物のいずれにも選択的に結合する剤、および、該剤と前述のMIVR‐1単離核酸またはその発現産物との結合の測定値に比較するための対照を含むパッケージを含む。いくつかの態様において、対象は、測定値に比較するための規定値である。ある態様において、対象は、前述のMIVR‐1単離核酸のいずれかの発現産物のエピトープを含む。1つの態様において、該キットはさらにIEX−1、VDUP−1、BTG−2、TIS−11dからなる群から選択された単離核酸分子、および/またはその発現産物に選択的に結合する第2剤、および、該第2剤の該単離核酸分子またはその発現産物への結合の測定値に比較するための対照を含む。
【0097】
核酸を検出する場合、本発明の核酸分子を増幅するためのプライマーのペアを含めることができる。好ましいキットは、既知の量の核酸プローブなどの対象、エピトープ(IEX−1、VDUP−1、BTG−2、TIS−11dの発現産物など)または抗エピトープ抗体、ならびに説明書またはその他の印刷物を含むことができる。ある態様において、印刷物は、アッセイに基づき、心血管条件を患う危険性を特徴付けることができる。試薬は容器に包装されていても、および/または、ウェルに既定量コートされていてもよく、該キットは、標識免疫試薬(標識抗IgG抗体など)などの標準物質を含んでもよい。1つのキットは、MIVR‐1タンパク質をコートしたポリスチレン製マイクロタイタープレートを包装したものと、標識された抗ヒトIgG抗体を含む容器である。プレートのウェルは、例えば生物的液体と接触し、洗浄後に抗IgG抗体と接触する。次に標識を検出する。本発明の特徴を具現するキットは、図1に図示されており、一般的に番号11で示される。キット(11)は、次の主要な要素からなる:包装(15)、本発明の剤(17)、対照剤(19)および説明書(21)。包装(15)は、本発明の剤(17)を含むバイアル(または多数のバイアル)、対照剤(19)を含むバイアル(または多数のバイアル)、および説明書(21)を保持するために箱様の構造をしている。当業者は、包装(15)を個々の必要に適するように容易に変更することができる。
【0098】
本発明の他の側面によると、心臓肥大の処置法が提供される。該方法は、このような処置を必要としている対象に、心臓細胞死を増加させる剤を、該対象の心臓肥大の処置に有効な量を投与することを含み、ここで心臓の細胞死を増加させる剤は、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択された核酸分子、またはその発現産物の阻害剤である。
核酸分子またはその発現物質の阻害剤の種類は、当該分野でよく知られている。これらは、所望する分子の発現を下方調節することに用いることができる、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびヌクレオチド、デコイプロモーター、およびドミナントネガティブ体を含む。
【0099】
本明細書中に用いる「発現の下方調節」は、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される核酸分子、またはその発現産物の複製、転写、および/または翻訳を阻害する(つまり検出可能な程度に低減する)ことに関し、これは、これらの過程のいずれかの阻害が、この遺伝子でコードされたポリペプチドの濃度/量の減少をもたらすからである。該用語はまた、ポリペプチドの翻訳後の修飾(例えばそのリン酸化)の阻害にも関し、これは、このような修飾の阻害が、コードされたポリペプチドの本来の発現(つまり野生型細胞におけるような発現)を予防するからである。該用語はまた、ポリペプチドの分解の増加または容易化にも関する(例えばをユビキチン化を介して)。ポリペプチドの代謝回転は、当該分野でよく知られており、本明細書に記載した方法を用いて定量することができる。遺伝子発現の阻害は、該遺伝子のmRNAレベル、または、該遺伝子のタンパク質の発現レベルの低下を、それぞれ、核酸ハイブリダイゼーションまたは抗体検出法などの、当該分野で知られた好適な手段のいずれかを用いて検出することで、直接定量することができる。遺伝子発現の阻害はまた、該分子の心臓細胞抗アポトーシス活性の変化を全体として検出することで、間接的に定量することもできる。
【0100】
本発明はまた、心血管状態の処置方法を含む。いくつかの態様において、該方法は、このような処置が必要な対象に、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択した分子を、該心血管状態の処置に有効な量を投与することを含む。ある態様において、該方法は、このような処置が必要な対象に、前述の分子のいずれか(MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11d)の発現を調節する剤を、該心血管状態の処置に有効な量を投与することを含む。
【0101】
本明細書で用いる場合、核酸またはポリペプチドの「発現を調節する剤」は、当該分野に知られており、センスおよびアンチセンス核酸、ドミナントネガティブ核酸、該ポリペプチドに対する抗体などに関する。分子の発現を調節する(および本明細書に記載されているように、その活性を調節する)剤はいずれも本発明にとって有用である。
本発明のさらなる側面によると、対象の心臓細胞のアポトーシス性細胞死を処置する方法が提供される。該方法は、このような処置が必要な対象に、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択した分子を、対象の心臓細胞のアポトーシス性細胞死を阻害するのに有効な量を投与することを含む。
【0102】
ある態様において、分子は核酸である。いくつかの態様において、核酸は、心筋細胞および/または血管内皮細胞(平滑筋細胞を含む)などの神格細胞内で、核酸分子の発現を指向する遺伝子発現配列に作動可能に連結している。「遺伝子発現配列」は、プロモーター配列またはプロモーター‐エンハンサーの組み合わせなどの調節ヌクレオチド配列であって、それが作動可能に連結している核酸の有効な転写および翻訳を容易にするものである。遺伝子発現配列は、例えば構成性または誘導性プロモーターなどの哺乳類プロモーターまたはウイルスプロモーターであってもよい。構成性哺乳類プロモーターは、次の遺伝子のプロモーターを含むが、それに限定されるものではない:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、α‐アクチンプロモーターおよびその他の構成性プロモーター。真核細胞中で構成性に機能する代表的なウイルスプロモーターは、例えば、シミアンウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの末端反復配列(LTR)、および、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターを含む。他の構成性プロモーターは当業者に知られている。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターはまた、誘導性プロモーターを含む。誘導性プロモーターは誘導剤の存在下で活性化される。メタロチオネインプロモーターは、ある金属イオンの存在で活性化され、転写および翻訳を増大させる。他の誘導性プロモーターは当業者に知られている。
【0103】
一般的に、遺伝子発現配列は、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの、それぞれ転写および翻訳の開始に関連する、5’非転写配列および5’非翻訳配列を必ず含まなければならない。とりわけ、このような5’非転写配列は、作動可能に連結している核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含むことができる。遺伝子発現配列は、要すればエンハンサー配列または上流活性化配列を任意に含む。
【0104】
好ましくは、本発明の核酸分子(例えばMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11d)のいずれも、心筋細胞および/または血管内皮細胞(平滑筋細胞を含む)などの細胞における該核酸分子の発現を許容する遺伝子発現配列と連結している。より好ましくは、該遺伝子発現配列は、細胞(心筋細胞および/または血管内皮細胞など)において該核酸分子の発現を許容し、神経細胞、線維芽細胞および造血系の細胞からなる群から選択した細胞における発現を許容しない。心筋細胞および/または血管内皮細胞などの細胞において該核酸分子の発現を許容する配列は、このような細胞種において選択的に活性を有し、それによりこれらの細胞に該核酸分子の発現をもたらす。心臓ミオシン重鎖遺伝子プロモーターは、例えば、心筋細胞における前述の本発明の核酸分子のいずれかを発現させるために用いることができ;フォンウィルブランド因子遺伝子プロモーターは、例えば、血管内皮細胞において核酸分子を発現するために用いることができる。当業者は、本発明の好ましい細胞のいずれかに核酸分子を発現することが可能な代替プロモーターを容易に同定できる。
【0105】
核酸配列および遺伝子発現配列は、それらが、核酸コーディング配列(例えばMIVR−1の配列番号3場合)が遺伝子発現配列の影響下または制御下にあるように、共有結合で連結しているとき、「作動可能に連結」しているという。核酸配列が機能的タンパク質に翻訳されることを所望するならば、2つのDNA配列は、もし5’遺伝子発現配列におけるプロモーターの誘導が、該核酸配列の転写をもたらし、この2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト変異を誘導せず、(2)核酸配列の転写に向けるプロモーター領域の能力に干渉せず、および/または(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力に干渉しなければ、作動可能に連結していると言われる。このように、遺伝子発現配列が当該核酸配列の転写を果たし、得られる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるという条件の下で、遺伝子発現配列は核酸配列に作動可能に連結される。
【0106】
本発明の分子は単独で、または、ベクターと共に本発明の好ましい細胞種に送達されることができる。「ベクター」は、その広義の意味では、(1)標的細胞への分子の送達および/または(2)該分子の標的細胞への取込みを容易にすることができる媒体である。好ましくは、ベクターは、ベクターなしの場合に起こるであろう劣化の範囲に比べてより軽度の劣化で、分子を標的細胞に輸送する。ターゲティングリガンドに対応するレセプターを表面上に発現している細胞にベクターを選択的に送達するために、「ターゲティングリガンド」をベクターに任意に付着させることができる。このようにして、ベクター(核酸またはタンパク質を含む)を例えば心筋における心筋細胞に選択的に送達することができる。ターゲティングの方法は、米国特許第5,391,723号に記載されているようなコンジュゲートを含む。よく知られているその他のターゲティング媒体の例はリポソームである。リポソームはGibco BRLから商業的に入手できる。標的リポソームの製造に関する多くの方法が公開されている。好ましくは、本発明の分子は、心筋細胞および/または血管内皮細胞への送達を目標とする。
【0107】
一般的に、本発明に有用なベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス、本発明の核酸配列の挿入または組込みにより操作された、ウイルスまたは細菌源由来のその他の媒体、および、本発明の核酸配列に付着させることができる追加の核酸断片(例えばエンハンサー、プロモーター)を含むが、それに限定されない。ウイルスベクターは好ましい種類のベクターであり、次のウイルスからの核酸配列を含むが、それに限定されない:アデノウイルス;アデノ関連ウイルス;モロニ−マウス白血病ウイルスを含むレトロウイルス;ハーベイマウス肉腫ウイルス;マウス乳腺腫瘍ウイルス;ラウス肉腫ウイルス:SV‐40ウイルス;ポリオーマウイルス;エプシュタイン‐バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;およびレトロウイルスなどのRNAウイルス。指定していないが、当該技術で知られた他のベクターを容易に用いることができる。
【0108】
ある適用のために特に好ましいウイルスは、2本鎖DNAウイルスであるアデノ関連ウイルスである。アデノ関連ウイルスは広範囲の細胞種および種に感染することが可能で、非増殖性に設計できる。さらに、該ウイルスは熱および脂質溶媒に対する安定性、造血細胞を含む様々な系統の細胞における高い形質導入頻度、複数の連続した形質導入を可能にする重複感染阻害の欠如などの利点を有する。報告によると、アデノ関連ウイルスは、ヒト細胞のDNAに部位特異的に組込まれることができ、これにより挿入突然変異誘発の可能性および挿入された遺伝子発現の可変性が最小化される。さらに、野生型のアデノ関連ウイルスの感染は、組織培養中、選択圧力なしに100回以上の継代について追跡されており、これは、アデノ関連ウイルスによる遺伝子組込みが比較的安定したイベントであることを示す。アデノ関連ウイルスはまた、染色体外でも機能できる。
【0109】
一般的に、その他の好ましいウイルスベクターは、非必須遺伝子を、対象とする遺伝子に置き換えた非細胞変性性の真核細胞性ウイルスに基づく。非細胞変性性ウイルスはレトロウイルスを含み、その生活環に、ウイルスRNAのDNAへの逆転写と、それに続くプロウイルスの宿主細胞のDNA中への組込みを伴う。アデノウイルスおよびレトロウイルスは、ヒトの遺伝子治療の治験に承認された。一般的に、レトロウイルスは非増殖性である(つまり、所望するタンパク質の合成を指向することはできるが、感染性粒子を構築することはできない)。このように遺伝子操作したレトロウイルス発現ベクターは、in vivoでの高効率の遺伝子導入に、一般的な有用性を有する。非増殖性レトロウイルス作製の標準的プロトコル(外来遺伝子材料のプラスミドへの組込み工程、パッケージング細胞系のプラスミドによる感染工程、パッケージング細胞系による組換えレトロウイルスの生産工程、組織培養培地からのウイルス粒子の回収工程、および標的細胞のウイルス粒子による感染工程を含む)が、Kriegler、M.、「Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual」, W.H. Freeman C.O.、New York (1990)およびMurry、E.J. Ed.「Methods in Molecular Biology」,vol. 7、Humana Press、Inc.、Cliffton、New Jersey (1991)に提供されている。.
【0110】
他の好ましいレトロウイルスベクターは、Nabel、E.G.、et al.、Science,1990、249:1285−1288に記載されている、モロニ−マウス白血病ウイルスに由来するベクターである。報告によると、これらのベクターは、メディア(media)を含む血管壁の3つの層全てへの遺伝子の送達に有効である。他の好ましいベクターは、Flugelman、et al.、Circulation、1992、85:1110−1117に開示されている。本発明の分子の送達に有用な追加のベクターが、米国特許第5,674,722号にMulligan、et. alにより記載されている。
上述のベクター以外に、心筋細胞および/または血管内皮細胞などの細胞に,本発明の分子を送達し、それにより取込みを容易にするためにその他の送達方法を用いてもよい。
【0111】
本発明の好ましいこのような送達方法は、コロイド拡散系である。コロイド分散系は、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質をベースにした系を含む。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vivoまたはin vitroの送達ベクターとして有用な人工の膜容器である。0.2〜4.0μmの大きさの大きな一枚膜リポソーム(LUV)が、大きな高分子を封入できることが示されている。RNA、DNAおよび無処理のビリオンを内水相に封入し、生物学的に活性を持つかたちで細胞に送達することができる(Fraley、et al.、Trends Biochem. Sci.、1981、6:77)。リポソームが有効な遺伝子輸送ベクターであるためには、以下の特徴を1つまたは2つ以上有していなければならない:(1)対象とする遺伝子を、生物学的活性を保ったまま、高効率で封入すること;(2)非標的細胞に比べ標的細胞に優先的かつ実質的に結合すること;(3)小胞の水性内容物を標的細胞の細胞質に高効率で送達すること;および(4)遺伝子情報を正確かつ有効に発現すること。
【0112】
リポソームは、リポソームをモノクローナル抗体、糖、糖脂質またはタンパク質などの特異的リガンドにつなげることにより、心筋または血管細胞壁などの特定の組織を標的とすることができる。リポソームを血管壁にターゲティングするのに有用なリガンドは、センダイウイルスのウイルス外被タンパク質を含むが、これに限定されるものではない。さらに、ベクターは核酸を宿主細胞の核に向ける核ターゲティングペプチドにつながっていてもよい。
【0113】
リポソームはGibco BRLから、例えば、N−[1−(2,3ジオレイロキシ)−プロピル]−N,N,N−塩化トリメチルアンモニウム(DOTMA)および臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)などのカチオン性脂質から形成されたLIPOFECTIN(登録商標)およびLIPOFECTACE(登録商標)として、商業的に入手できる。リポソームの製造方法は当該技術によく知られており、多数の出版物に記載されている。リポソームはまた、Gregoriadis,G.によりTrends in Biotechnology、V. 3、p. 235−241 (1985)に総説されている。核酸を含む高分子の細胞内送達のための新規なリポソームが、PCT国際出願PCT/US96/07572に記載されている(公開番号WO 96/40060、名称は「高分子の細胞内送達(Intracellular Delivery of Macromolecules)」)。
【0114】
1つの特別な態様において、好ましい媒体は、哺乳類レシピエントへの移殖に好適な生物学的適合を有する微粒子またはインプラントである。この方法に関して有用な代表的な生体内崩壊性インプラントは、PCT国際出願番号PCT/US/03307に記載されている(公開番号WO 95/24929、名称は「高分子遺伝子送達システム(Polymeric Gene Delivery System)」、米国特許優先権主張番号213、668、1994年3月15日出願)。PCT/US/0307には、適切なプロモーターの制御下にある外来遺伝子を含む、生物学的適合性を有した、好ましくは生分解性のポリマーマトリクスが記載されている。ポリマーマトリクスは、外来遺伝子の患者への持続的な放出を達成するために用いられている。本発明によれば、本明細書に記載された核酸は、PCT/US/03307号に開示された、生物学的適合性を有し、好ましくは生物分解性のポリマーマトリクス内に封入または分散されている。ポリマーマトリクスは、好ましくはマイクロスフェアなどの微粒子(そこに核酸が固体ポリマーマトリクスに分散されている)またはマイクロカプセル(そこで核酸がポリマーシェルの核に保存されている)の形態である。本発明の核酸を含むためのポリマーマトリクスのその他の形態は、フィルム、コーティング、ゲル、インプラントおよびステントを含む。ポリマーマトリクスデバイスのサイズおよび組成は、該マトリクスデバイスが移殖された組織において有利な放出動態をもたらすように選択する。ポリマーマトリクスデバイスのサイズは、さらに、用いられる送達方法、通常は、組織への注射、または鼻および/または肺領域へのエアロゾルによる懸濁液の投与に依存する。ポリマーマトリクスの組成は、有利な分解速度を有するため、および、デバイスが血管表面に投与されるときに移送の効率をさらに増大させるために、生物接着性の材料で形成されるために選択することができる。また、マトリクスの組成は、分解しないように、というよりはむしろ、長期間にわたる核酸によって放出するように選択することができる。
【0115】
非生物分解性および生物分解性ポリマーマトリクスの両方を、対象へ本発明の核酸を送達するために用いることができる。生物分解性マトリクスが好ましい。このようなポリマーは天然または合成ポリマーであってもよい。合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、一般的には数時間から1年、またはそれ以上の程度である放出を所望する期間に基づいて選択される。通常は、数時間から3〜12ヶ月におよぶ期間にわたる放出がもっとも望ましい。ポリマーは、任意に、その重量の約90%までの水を吸収できるヒドロゲルの形態であり、さらに任意に、多価イオンまたはその他のポリマーに架橋している。
【0116】
一般的に、本発明の核酸は、生体内崩壊性インプラントを用い、拡散、またはより好ましくは、ポリマーマトリクスの分解により送達される。生物分解性送達システムを形成するために用いることができる代表的な合成ポリマーは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルおよびメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸ナトリウムセルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、酢酸ポリビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドンを含む。
【0117】
非生物分解性ポリマーの例は、エチレン酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、コポリマーおよびそれらの混合物を含む。
生物分解性ポリマーの例は、酪酸およびグリコール酸のポリマー、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(ブチック酸(butic acid))、ポリ(バレリアン酸)、およびポリ(ラクチド‐コカプロラクトン(lactide−cocaprolactone))などの合成ポリマー、および、アルギナート、および、デキストランおよびセルロース、コラーゲンそれらの化学的誘導体(置換、例えばアルキル、アルキレンなどの化学基の付加、水酸化、酸化、および当業者が通常行なうその他の修飾)、アルブミンおよびその他の親水性タンパク質、ゼインおよびその他のプロラミンおよび疎水性タンパク質などの天然ポリマー、コポリマーおよびそれらの混合物を含む。一般的に、これらの材料は、表層性又はバルク(bulk)侵食による、酵素的な加水分解またはin vivoでの水への暴露のいずれか一方により分解される。
【0118】
特に興味深い生物接着性ポリマーは、H.S. Sawhney、C.P. Pathak and J.A. Hubell in Macromoleculesにより記述され、該教示が本明細書に組込まれている生体内崩壊性ヒドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリアンヒドリド、ポリアクリル酸、アルギナート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)を含む。このように、本発明は、本発明の上記の組成物の医薬としての利用、該医薬の調整方法、および、該医薬のでの持続性放出のための方法を提供する。
【0119】
また、凝縮剤を本発明のベクターと組合せて用いることができる。「凝縮剤」は、本明細書で用いる場合、核酸の負の電化を中和し、核酸が微粒子に凝縮することを可能にする、ヒストンなどの剤に関する。核酸の凝縮は、標的細胞による核酸の取込みを容易にする。凝縮剤は単独で、つまり本発明の単離核酸を細胞により効率的に取込まれる形態で送達するために用いることができ、またはより好ましくは1つまたは2つ以上の上述のベクターと組合せて用いることができる。
標的細胞による本発明の核酸の取込みを容易にするために用いることができるその他の代表的な組成物は、リン酸カルシウムおよびその他の細胞間輸送の化学伝達物質、微量注入組成物、電気穿孔および同種組換え組成物(例えば、核酸を標的細胞染色体内の事前に選択した部位に組込むためのもの)を含む。
【0120】
また、本発明は、血管および心血管障害の診断および治療法を提供する。このような障害は、心筋梗塞、卒中、動脈硬化、心不全および心肥大を含む。
本発明の方法は、上述のいずれの状態の急性処置および予防処置の両方に有用である。ここで、急性処置とは、特定の状態を有する対象の処置に関する。予防処置は、該状態を有する危険性があるが、現在該状態の症状を有していないかまたは経験していない対象の処置に関する。
【0121】
最も広義な意味では、「処置」または「処置する」なる語は、急性および予防処置の両方に関する。処置を要する対象が状態を経験している場合(または特定の状態を有したかまたは有している場合)、状態を処置するとは、該状態または該状態に起因する1つまたは2つ以上の症状を改善し、軽減し、または、除去することに関する。いくつかの好ましい態様では、状態を処置するとは、該状態による特定の症状または症状の特定のサブセットを改善し、軽減しまたは除去することに関する。処置を要する対象に状態を有する危険性がある場合、対象を処置するとは、該状態を有する対象の危険性を軽減することに関する。
【0122】
卒中(本明細書では、虚血性脳卒中および/または脳血管虚血にも関する)は、工業世界において、虚血性心疾患および癌に次ぐ最も多い死因の第三位としてしばしば挙げられる。卒中は、米国において年間約300,000件の死の原因となっており、入院および長期障害の主要な原因である。それゆえ、卒中の社会経済的影響およびそれに付随する社会への負担は実際上計り知れない。
「卒中」は、世界保健機構により、脳機能の局所的または全体的障害の急速に進行する臨床徴候であり、症状が少なくとも24時間続くものと定義されている。卒中は、血管由来の効果以外に顕著な原因がない死にも関与している。
【0123】
卒中は、典型的には、脳への血管または脳内の血管の閉鎖または閉塞により起こる。完全閉塞の場合、脳循環の停止により、神経の電気的活動が数秒以内に停止する。エネルギー状態およびイオン恒常性の悪化後数分以内に、高エネルギーリン酸の枯渇、膜イオンポンプの破綻、細胞内ナトリウムの流出、塩化ナトリウムおよび水の流入、および膜の脱分極が生じる。閉塞が5〜10分以上継続すると、非可逆的な損傷が発生する。しかしながら、不完全虚血では、予後を評価するのは困難であり、残留潅流および酸素の利用可能性に大幅に依存している。脳血管の血栓性閉塞後、虚血はまず全体性ではない。通常いくつかの残留血流が、側副血流および局所潅流圧に依存して、虚血領域に残っている。
【0124】
脳血流は、平均動脈圧が90から60mmHgへ降下しても自己調整により代償できる。この現象は、下流の抵抗性血管の拡張を伴う。自己調節の下限(約60mmHg)より下では、血管拡張が不適切であり、脳血流が減少する。しかしながら、脳は脳血流の低下を代償できる潅流予備能を有している。この予備能は、通常状態で、血液により送達された酸素を約35%しか抽出していないことにより存在している。したがって、正常酸素濃度および正常二酸化炭素濃度が存在する条件で、増加した酸素抽出が行なわれることができる。遠位血圧がおよそ30mmHg以下に降下した場合、この2つの代償機構(自己調節および潅流予備能)は、酸素送達の破綻を予防するには不適切である。
【0125】
血流が、虚血閾値の23ml/100g/分以下に降下すると、組織低酸素症の症状が進行する。重篤な虚血は致死的となることがある。虚血が軽度の場合、「半影(penumbra)」が生じる。神経学的な文脈では、半影は、軽度の虚欠と神経機能の麻痺を伴う、適切な潅流の回復により可逆的な脳組織の領域に関する。半影は、その内部で梗塞が生じた重篤な虚血の核を取り巻く、側副循環により潅流されている組織の領域を形成する。換言すれば、半影は救助することができ、本質的に生と死の間の状態にある組織の領域である。
【0126】
虚血イベントは血管系のどこでも起こり得るが、頚動脈分岐および内頚動脈起始部が、脳虚決を引き起こす脳血管血栓性閉塞の最も頻発する部位である。狭窄または血栓による血流低下の症状は、中大脳動脈疾患により起こるものと類似している。眼動脈中の血流は、しばしば一過性黒内障または一過性単眼盲を起こすのに十分な程度影響を受ける。重篤な両側の内頚動脈狭窄は、脳半球の低潅流を引き起こすことがある。前交通動脈遠位の1つの前大脳動脈の虚血をもたらす閉塞または血流減少は、対側の脚および、ときに、近位の腕に運動性および感覚中枢性症状を起こす。前大脳動脈の閉塞または低潅流のその他の症状は、歩行失調、および、ときに前頭葉傍矢状部の損傷による尿失禁を含む。自発的発話の減少として発現される言語障害が、精神運動活性の全体的低下に伴うことがある。
【0127】
多くの虚血性卒中は、多くの場合心臓または頭蓋外頚動脈からの塞栓が生じている、中大脳動脈の一部または全領域を伴う。塞栓は、中大脳動脈の主幹を閉塞することもあるが、上枝または下枝のいずれかの遠位閉塞をより頻繁に起こす。上枝の閉塞は、脱力および感覚喪失をもたらし、これは顔面および腕より重度である。後大脳動脈の、その穿通枝より遠位の閉塞は、完全な対側の視覚喪失をもたらす。読書の困難性(難読症)および計算の困難性(計算力障害)が、優位側後大脳動脈の虚血に次いで生じることがある。後大脳動脈近位の閉塞は、カラミック(calamic)構造および辺縁構造へ侵入する血管枝の虚血をもたらす。臨床的には、経時的に障害側の難知性の疼痛(視床痛)に変化する片感覚障害をもたらす。
【0128】
卒中を有する対象は、このように、経験した症状および/または、CTおよびMRイメージングなどの介入および非介入診断器具を含む理学的検査により診断される。本発明の方法は、卒中対象の様々な臨床症状の処置に有利である。卒中を有する対象は、以下の症状を1つまたは2つ以上呈することがある:麻痺、脱力、感覚および/または視力の減退、しびれ、うずき、失語症(例えば、発話ができない、発話が不正確、読みまたは書きが困難)、失認(つまり、感覚刺激が認識または同定できない状態)、記憶の喪失、協調困難、無気力、嗜眠または意識消失、膀胱または腸制御の欠如および認知の減退(例えば、痴呆、制限された注意持続時間、集中することができない状態)。医療イメージング技術を用いて、卒中を有する対象を、梗塞を有する者または脳に出血を有する者として同定することができる。
【0129】
本発明の重要な態様は、虚血性卒中の異常に高い危険性を伴う対象の処置である。本明細書中で用いる場合、虚血性卒中の異常に高い危険性を有する対象は、従来の医療行為により決定されたカテゴリーである(前述の議論を参考);このような対象は、また、従来の医療行為で、卒中についての既知の危険因子を有する者、または、脳血管イベントについて増大する危険性を有する者としても同定されることがある。このカテゴリーは例えば、血管手術を行なったことがある対象を含む。一般的に、心臓疾患に関する危険因子は、卒中に関するものと同じである。第一の危険因子は、高血圧、高コレステロール血症および喫煙を含む。心房細動または最近起きた心筋梗塞もまた、重要な危険因子である。さらに、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される核酸分子、またはその発現産物の発現レベルの変化も、本発明によれば、重要な危険因子である。
【0130】
ここで、虚血性卒中の異常に高い危険性を有する対象は、また、血栓の放出、血圧の低下、または脳血流の減少を生じる恐れのある、頚動脈血管内膜切除術、脳血管造影などの外科的手順または診断手順、血管が圧迫または閉塞される神経外科的手順、心カテーテル、バルーン血管形成を含む血管形成、冠動脈バイパス手術、または類似の手順を行なう個体も含む。虚血性卒中の異常に高い危険性を有する対象はまた、心房細動、心室性頻脈、拡張型心筋症、およびその他の抗凝固処置を必要とする心臓状態などの、脳への血流の減少を導くことがある何らかの心臓状態を有する個体を含む。虚血性卒中の異常に高い危険性を有する対象はまた、狼瘡に起因したものなどの動脈症または脳血管炎、CADASIL症候群などの先天性血管疾患、または特に長いエピソードの偏頭痛を含む状態を有する個体を含む。
【0131】
卒中の処置は、卒中を経験した患者のために行なうことも、または、予防的措置であることもできる。短期予防措置は、血栓の放出、血圧の低下または脳血流の減少を生じる危険性のある外科的または診断手順を受けた対象に、該手順の結果として生じる何らかの虚血性イベントによる障害を減少するため適応される。長期または慢性予防処置は、脳への血流の減少を導き得る心臓条件、または、直接脳血管に影響を与える条件を有する対象に適応される。予防の場合、処置は、上記のような虚血性卒中の異常に高い危険性を有する対象のためのものである。卒中対象への急性処置は、本発明の剤を、その状態の症状の開始または開始から48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内、より好ましくは6時間以内、そしてさらにより好ましくは該状態の症状の開始から3時間以内に投与することを意味する。
【0132】
高コレステロール血症の対象および/または高トリグリセリド血症の対象を定義する基準は当該分野でよく知られている(例えば、Harrison’s Principles of Experimental Medicine、13th Edition、McGraw−Hill、Inc.、N.Y.− hereinafter 「Harrison’sを参照)。高コレステロール血症の対象および高トリグリセリド血症の対象は、早期の冠動脈性心疾患の増大する発生率を伴う。高コレステロール血症の対象は、LDAレベルが160mg/dL超または130mg/dL超であり、男性の性別、早期の冠動脈性心疾患の家族歴、喫煙(一日10本超)、高血圧、低HDL(35mg/dL未満)、糖尿病、高インシュリン血症、異常な肥満、リポタンパク(a)の高値、および脳血管疾患または閉塞性末梢血管疾患の個人歴からなる群から選択された少なくとも2つの危険因子を有する。高トリグリセリド血症の対象は、トリグリセリド(TG)のレベルが250mg/dLを超える。したがって、高脂血症の対象は、そのコレステロールおよびトリグリセリドレベルが、高コレステロール血症および高トリグリセリド血症の対象の両方に関して設定した限界と同一かそれを越える対象である。
【0133】
「心筋梗塞」は、心臓組織の不適切な潅流によって生じた壊死巣である。心筋梗塞は一般的に、冠動脈血流の急激な減少と、それに続く、事前に動脈硬化で狭くなった冠動脈の血栓性閉塞により起こる。一般的に、梗塞は、アテローム性プラークが裂け、断裂し、または、潰瘍化し、および、壁性血栓が形成され、それにより冠動脈が閉塞するときに起こる。
【0134】
対象における心筋梗塞の診断は、対象を本発明の方法により処置する必要があるかを決定する。当該分野でよく知られた多くの臨床試験が、例えばハリソンのPrinciples of Internal Medicine (McGraw Hill、Inc.、New York)に記載されている。一般的に、試験は4つの主要なカテゴリーに分けられる:(1)組織壊死および炎症の非特異的指標、(2)心電図、(3)血清酵素の変化(例えばクレアチンホスホキナーゼレベル)、および(4)心臓イメージング。当業者は、対象が心筋梗塞の危険性を有しているか、心筋梗塞を患っているかまたは患っていた場合に上記のいずれの試験も定量のために容易に行うことができる。さらに、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択した核酸分子、またはその発現産物の発現の減少したレベルも、本発明によれば、重要な危険因子である。陽性に同定された対象は、したがって、本発明の処置方法の恩恵を受けることができる。
【0135】
本発明によれば、該方法は心筋梗塞を有する対象に、上記の分子(MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11d)のいずれかを、対象の心血管障害を処置するのに有効な量を投与することを伴う。「心筋梗塞を有する」とは、対象が心筋梗塞を発症する危険性があるか、現在心筋梗塞を有しているか、または心筋梗塞を有していたことを意味する。該分子を即座に投与することにより、梗塞の前の、又はそれに続く心筋細胞(梗塞により最も影響を受けた細胞)のアポトーシス性細胞死を阻害することで、患者に多大な恩恵を与えることができると考えられる。「即座に」とは、投与が心筋梗塞の前(もし診断が間に合えば)、または、心筋梗塞から48時間以内に行なわれることを意味するが、このエピソードの14日後までの投与もまた、対象にとって有益なことがある。
【0136】
本発明の他の重要な態様は、動脈硬化に起因する虚血性状態の処置である。動脈硬化は、動脈壁の肥厚および硬化を記載するのに用いる用語である。これは、米国および最も西洋化した社会において、主要な死の原因になっていると考えられる。アテローム性硬化症は、動脈硬化の一種であり、多くの冠動脈疾患、動脈瘤、および下肢の動脈疾患(末梢血管動脈症を含む)の原因であり、ならびに、脳血管疾患に寄与していると考えられる。アテローム硬化症は、米国における主要な死因である。
【0137】
正常な動脈は、通常、その内側に一層の内皮細胞の層である脈管内膜のみで裏打ちされている。この脈管内膜は、単一の細胞種である平滑筋のみを含む中膜を被覆している。動脈の最外層は外膜である。エージングに伴い、一部中膜からの平滑筋細胞の移動および増殖によるものと思われる、内膜の厚さの継続的な増加が生じる。また、同様の内膜の厚さの増加が、様々な創傷イベントおよび介入、例えばバルーンによる拡張手順により血管壁に生じた損傷などの結果により起こる。本発明は、動脈硬化状態により生じた虚血性損傷の処置に関して用いられる。ここで動脈硬化状態とは、古典的アテローム硬化症、加速された(accelerated)アテローム硬化症、アテローム硬化症による病変、および、糖尿病の血管合併症を含む望ましくない内皮細胞および/または血管平滑筋細胞の増殖を特徴とするその他の何らかの動脈硬化状態を意味する。
【0138】
本発明のその他の重要な態様は、心不全の処置である。心不全は、障害された心臓のポンプ機能という共通の特徴で結び付けられる様々な病因の臨床症症候群であり、心臓が、代謝組織の要求に見合う血液を拍出することができなくなるか、または、上昇した充填圧でしかそれを行なえなくなることを特徴とする。
【0139】
本発明のその他の重要な態様は、心肥大の処置である。この状態は、通常、明らかな先行原因のない、心室が拡張しない左心室肥大を特徴とする。現行の診断方法は、心電図と心エコーを含む。しかしながら、多くの患者が無症候性で、既知の疾患を有する患者に関することもある。不幸な事に、この疾患の最初の発現は突然死であることもあり、子供および若年成人に頻繁に生じ、しばしば身体運動の最中またはその後に起こる。
【0140】
心血管障害の危険性を低減するかまたはそれを処置する剤は、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、線維素溶解剤、脂質減少剤、直接トロンビン阻害剤、グリコプロテインIIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子に結合しこのような分子に白血球が付着する能力を阻害する剤(例えば抗細胞接着分子抗体)、カルシウムチャネルブロッカー、ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、アンギオテンシン系阻害剤、および/またはそれらの組合せからなる群から選択されるものを含む。
【0141】
1つの好ましい剤はアスピリンである。
本発明の治療剤の投与様式および用量は、処置する状態の特定の段階、処置する対象の年齢および身体的条件、処置の期間、併用療法の性質(もしあれば)、特定の投与経路、および医療開業医の知識および技能の範囲内における類似の要因により変化することができる。
【0142】
本明細書に記載されているように、本発明の剤は、上述のいずれかの心血管障害の処置に有効な量を投与する。一般的に、有効な量とは、対象の所望する組織に有益な変化を起こすことができるいずれかの量である。好ましくは、有効な量は、症状または状態の全体の軽減、緩和または除去など、特定の状態に有利な表現型の変化を起こさせるのに十分な量である。
【0143】
一般的に、有効な量とは、単独またはさらなる用量と共に所望する反応を引き起こす医薬製剤の量である。これは、状態の進行を一時的に遅延させるだけのものも含むが、より好ましくは、該状態の進行を恒常的に停止し、または、状態の開始を遅延させ、または、該状態の発生を予防することを伴う。これは、定法によりモニターできる。一般的に、活性化合物の用量は、1日当たり約0.01mg/kgから1日当たり1000mg/kgであることができる。好ましくは経口で、1日当たり1回または数回の投与での50〜500mg/kgの範囲の用量が好適であると予想される。
【0144】
このような量は、勿論、処置する特定の状態、該状態の重篤度、年齢、身体的条件、体格および体重を含む患者個人のパラメータ、処置の期間、併用療法の性質(もしあれば)、特定の投与経路、および、医療開業医の知識および技量の範囲内での同様の因子に依存することができる。低用量は、静脈内投与などの、ある形態の投与の結果であることができる。初期投与の適用による対象の反応が不充分なイベントにおいて、より高い用量(または異なった、より局所的な送達経路による比較的高い用量)を、患者の耐性が許容する範囲で用いてもよい。1日に複数の投与回数が、化合物の適切な全身レベルを達成するために考慮される。一般的に最高用量の使用が好まれ、これは、正常な医学的判断による最大安全用量である。しかしながら、当業者は、患者が医学的理由、精神的理由またはその他のほとんどの理由で、低用量または許容量に固執してもよいことを理解しなければならない。
【0145】
本発明の剤は、薬学的に許容し得る担体と任意に組合せ、医薬製剤を形成してもよい。ここで、「薬学的に許容し得る担体」なる語は、ヒトへの投与に好適な1つまたは2つ以上の適合する固体または液体の増量剤、溶剤またはカプセル物質を意味する。「担体」なる語は、天然または合成の有機または無機成分であって、そこに活性成分が組合わされ、適用を容易にするものを意味する。医薬組成物の成分はまた、本発明の分子と、そして、互いに、所望する薬学的効率を実質的に障害しないような方法で、混合することが可能である。いくつかの面では、該医薬製剤は、本発明の剤を障害を処置するのに有効な量を含む。
【0146】
該医薬製剤は、酢酸の塩、クエン酸の塩、ホウ酸の塩またはリン酸の塩を含む好適な緩衝剤を含んでもよい。該医薬製剤はまた、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンまたはチメロサールなどの好適な保存剤を任意に含んでもよい。
【0147】
様々な投与経路を用いることができる。選択した特定の様式は、勿論、選択した特定の薬剤、処置する状態の重篤度および治療効率のために要求される用量に依存する。本発明の方法は、一般的に言って、医学的に許容し得るいずれかの投与様式、つまり、臨床的に許容できない副作用を起こすことなく活性物質の有効なレベルを実現するいずれかの様式を用いて実行してもよい。このような投与様式は、経口、経直腸、局所、経鼻、皮内、経皮または非経口経路を含む。「非経口」なる語は、皮下、静脈内、筋肉内または点滴を含む。静脈内または筋肉内経路は長期治療および予防のために特に好適ではない。例として、偏頭痛を有する対象の急性処置のための医薬組成物は、様々な異なったやり方で、そして、錠剤、カプセル、粉末、坐剤、注射およびスプレー式点鼻薬を含む様々な投与様式のために形成してもよい。
【0148】
医薬製剤は、都合よく単位用量形態として提示されてもよく、そして、医薬分野でよく知られたいずれの方法で調整してもよい。すべての方法は、活性剤を、1種または2種以上の副成分の構成要素である担体と結びつける工程を含む。一般に組成物は、活性化合物を液体担体、細粒状の個体担体、またはその両方と均質かつ密接に結び付けたあと、必要に応じてその産物を成形することにより調整する。
経口投与に好適な組成物は、それぞれ既定量の活性化合物を含む、カプセル、錠剤、トローチなどの個別の単位で提示されてもよい。その他の組成物は、シロップ、エリキシルまたはエマルジョンなどの、水性液または非水性液の懸濁液を含む。
【0149】
非経口投与に好適な組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張な本発明の剤の滅菌水生製剤を都合よく含む。この水性製剤は、好適な分散剤または界面活性剤および懸濁化剤を用いて既知の方法に従って製造してもよい。滅菌注射製剤はまた、毒性のない非経口的に許容し得る溶媒または溶剤の滅菌注射溶液または懸濁液、たとえば1,3−ブタンジオールの溶液であってもよい。許容し得る媒体および溶剤の中で用いてもよいものは、水、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌された不揮発性油を溶剤または懸濁媒体として従来どおり用いる。これに関しては、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、いずれの無刺激性の不揮発性油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調整に用いてもよい。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与に好適な製剤は、Remington Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PAに見出すことができる。
【0150】
本発明の1つの面によると、細胞のアポトーシス性細胞死を阻害する方法が提供される。該方法は、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2、およびTIS−11dからなる群から選択されるか単離核酸分子、またはその発現産物、その断片を、該核酸分子(またはその発現産物)の細胞内への侵入を可能にする条件下で、該細胞のアポトーシス性細胞死を阻害するのに有効な量を細胞と接触させることに関する。
【0151】
分子の細胞内への「侵入を可能にする」という語は、本発明に関しては、該分子の性質に依存して以下を意味する。単離核酸については、それは、核酸の細胞膜を通した侵入および、細胞核内への侵入を示すこととし、「導入遺伝子核酸」は、細胞核において該核酸によりコードされた機能的ポリペプチドを産生する細胞機構を利用することができる。「導入遺伝子核酸」は、関連するベクターを伴うかまたは伴わない本発明の全ての核酸を示すこととする。ポリペプチドについては、ポリペプチドの細胞膜を通した侵入および細胞質への侵入、そして必要に応じて、ポリペプチドを機能的に(例えば活性型へ)修飾する細胞質の機構の利用を示すこととする。
【0152】
核酸が宿主にin vitroでまたはin vivoで導入されるかに依存して、本発明の核酸を細胞内へ導入するために様々な技術を用いてもよい。このような技術は、核酸‐CaPO沈殿のトランスフェクション、DEAEと結びついた核酸のトランスフェクション、当該核酸を含むレトロウイルスによるトランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクションなどを含む。ある用途のためには、核酸を特定の細胞に向けることが好ましい。このような場合、本発明の核酸を細胞内へ送達するのに用いる媒体(例えばレトロウイルスまたはその他のウイルス;リポソーム)は、それに付着したターゲティング分子を有することができる。例えば、標的細胞の表面膜タンパク質に特異的な抗体、または、標的細胞上のレセプターのリガンドなどの分子を、核酸送達媒体に結合させ、または、組込むことができる。例えば、リポソームが本発明の核酸の送達に用いられる場合、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質を、ターゲティングのため、および/または、取込みを容易にするために、リポソーム製剤中に組込んでもよい。このようなタンパク質は、特定の細胞種を指向するカプシドタンパク質またはその断片、循環中に(in cycling)インターナリゼ−ションされるタンパク質の抗体、細胞内の局在化を目標とし、細胞内半減期を向上させるタンパク質などを含む。高分子送達システムもまた、当業者が知るように、核酸の細胞内送達に首尾よく用いられる。このようなシステムは、核酸の経口送達さえ可能にする。
【0153】
その他の送達システムは、徐放性、遅延放出性または持続放出性送達システムを含むことができる。このようなシステムは、本発明の剤を繰返し投与することを避けることができ、対象および医師の利便性を向上させる。多くの種類の放出性送達システムが入手可能で当業者に知られている。それらは、ポリ(ラクチド‐グリコリド)(poly(lactide−glycolide))、コポリオキサレート(copolyoxalates)、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチル酸、およびポリアンヒドリド(polyanhydrides)などのポリマーをベースとするシステムを含む。上述の薬剤含有ポリマーのマイクロカプセルは、例えば米国特許第5,075,109号に記載されている。送達システムはまた、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸などのステロールまたはモノ‐、ジ‐、およびトリ‐グリセリドなどの中性脂肪を含む脂質、ヒドロゲル放出システム、シラスチック(sylastic)システム、ペプチドをベースとするシステム、ワックス被覆、従来の結合剤および補形剤を用いた圧縮錠剤、部分的に融合したインプラントなどの非ポリマーシステムを含む。特定の例は、(a)本発明の剤がマトリクスの内部に含まれている形の、米国特許第4,452,775号、第4,675,189号および第5,736,152号に記載されたような、崩壊システム、および(b)活性成分が、ポリマーから制御された速度で浸透する、米国特許第3,854,480号、第5,133,974号および第5,407,686号に記載されているような拡散システムを含むが、これらに限定されない。さらに、ポンプをベースとしたハードウェア送達システムも用いることができ、そのいくつかは、移殖に適合している。
【0154】
長期持続放出性のインプラントの使用が望ましいかもしれない。ここで長期放出とは、治療レベルの活性成分を少なくとも30日間、そして好ましくは60日間送達するように、インプラントが構築および準備されていることを意味する。長期持続放出性のインプラントは、当業者によく知られており、上記の放出システムのいくつかを含む。特定の例は、米国特許第4,748,024号、およびカナダ国特許第1330939号に記載された長期持続放出性インプラントを含むが、それに限定されない。
【0155】
本発明は、本発明の分子(MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11d、核酸およびポリペプチド、および/またはその断片)以外の剤であって、有効な量を投与されたときに、本発明の分子と協調的、追加的または相乗的に作用し、(i)心臓細胞の抗アポトーシス活性を調整し、および(ii)本発明の分子の心臓細胞に対する抗アポトーシス活性が関与しているいずれかの状態を処置する剤の投与、およびいくつかの態様においては共投与にも関する。本発明の分子以外の剤は、抗炎症剤、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、線維素溶解剤、脂質減少剤、直接トロンビン阻害剤、グリコプロテインIIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子に結合し、白血球がそのような分子に付着することを阻害する剤、カルシウムチャネルブロッカー、ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、アンジオテンシンシステム阻害剤、抗高血圧剤、および/またはそれらの組合せを含む。
【0156】
「抗炎症」剤は、アルクロフェナク、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルゲストンアセトニド(Algestone Acetonide)、アルファアミラーゼ、アンシナファル(Amcinafal)、アンシナフィド(Amcinafide)、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリローズ(Amiprilose Hydrochloride)、アナキンラ、アニロラック(Anirolac)、アニトラザフェン(Anitrazafen)、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン(Benoxaprofen)、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール(Broperamole)、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン(Cicloprofen)、シンタゾン(Cintazone)、クリプロフェン(Cliprofen)、プロピオン酸クロベタゾン、クロピラック(Clopirac)、プロピオン酸クロチカゾン(Cloticasone Propionate)、酢酸コルメタゾン(Cormethasone Acetate)、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン(Desoximetasone)、ジプロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム(Diflumidone Sodium)、ジフルニザル、ジフルプレドナート、ジフタロン(Diftalone)、ジメチルスルフォキシド、ドロシノニド(Drocinonide)、エンドリゾン(Endrysone)、エンリモマブ(Enlimomab)、エノリカムナトリウム(Enolicam Sodium)、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート(Etofenamate)、フェルビナク、フェナモル(Fenamole)、フェンブフェン、フェンクロフェナク(Fenclofenac)、フェンクロラック(Fenclorac)、フェンドサル(Fendosal)、フェンピパロン(Fenpipalone)、フェンチアザク、フラザロン(Flazalone)、フルアザコート(Fluazacort)、フルフェナム酸、フルミゾール(Flumizole)、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル(Fluocortin Butyl)、酢酸フルオロメトロン、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン(Fluretofen)、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン(Furaprofen)、フロブフェン(Furobufen)、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール(Lofemizole Hydrochloride)、ロルノキシカム(Lornoxicam)、ロテプレドノールエタボネート(Loteprednol Etabonate)、メクロフェナマートナトリウム(Meclofenamate Sodium)、メクロフェナム酸(Meclofenamic Acid)、ブチル酸メクロリゾン(Meclorisone Dibutyrate)、メフェナム酸(Mefenamic Acid)、メサラミン(Mesalamine)、メセクラゾン(Meseclazone)、メチルプレドニゾロンスレプタナート(Methylprednisolone Suleptanate)、モルニフルマート(Morniflumate)、ナブメトン(Nabumetone)、ナプロキセン(Naproxen)、ナプロキセンナトリウム(Naproxen Sodium)、ナプロクソール(Naproxol)、ニマゾン(Nimazone)、オルザラジンナトリウム(Olsalazine Sodium)、オルゴテイン(Orgotein)、オルパノキシン(Orpanoxin)、オキサプロジン(Oxaprozin)、オキシフェンブタゾン(Oxyphenbutazone)、塩酸パラニリン(Paranyline Hydrochloride)、ポリ硫酸ペントサン、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム(Phenbutazone Sodium Glycerate)、ピルフェニドン(Pirfenidone)、ピロキシカム、ケイ皮酸ピロキシカム(Piroxicam Cinnamate)、ピロキシカムオラミン(Piroxicam Olamine)、ピルプロフェン(Pirprofen)、プレドナザート(Prednazate)、プリフェロン(Prifelone)、プロドリン酸(Prodolic Acid)、プロクアゾン(Proquazone)、プロキサゾール(Proxazole)、クエン酸プロキサゾール(Proxazole Citrate)、リメクソロン(Rimexolone)、ロマザリット(Romazarit)、サルコレックス(Salcolex)、サルナセジン(Salnacedin)、サルサラート(Salsalate)、サリシラート(Salycilates)、塩化サンギナリウム(Sanguinarium Chloride)、セクラゾン(Seclazone)、セルメタシン(Sermetacin)、スドキシカム(Sudoxicam)、スリンダック(Sulindac)、スプロフェン(Suprofen)、タルメタシン(Talmetacin)、タルニフルマート(Talniflumate)、タロサラート(Talosalate)、ツベフェロン(Tebufelone)、テニダップ(Tenidap)、テニダップナトリウム(Tenidap Sodium)、トネキシカム(Tenoxicam)、テシカム(Tesicam)、テシミド(Tesimide)、テトリダミン(Tetrydamine)、チオピナック(Tiopinac)、ピバル酸チクソコルトール(Tixocortol Pivalate)、トルメチン(Tolmetin)、トルメチンナトリウム(Tolmetin Sodium)、トリクロニド(Triclonide)、トリフルミダート(Triflumidate)、ジドメタシン(Zidometacin)、糖質コルチコイド、ゾメピラックナトリウム(Zomepirac Sodium)を含む。1つの好ましい抗炎症剤はアスピリンである。
【0157】
「抗血栓剤」および/または「繊維素溶解」剤は、プラスミノーゲン(プレカリクレイン、キニノーゲン、第XII、第XIIIa因子、プラスミノーゲンプロアクチベーター、および組織プラスミノーゲン活性化因子「TPA」を介してプラスミンに至る)ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アニソイル化プラスミノーゲン‐ストレプトキナーゼ活性化因子複合体、プロ‐ウロキナーゼ、(Pro−UK)、rTPA(アルテプラーゼまたはアクチバーゼ(activase);rは組換え(recombinant)を表す)、rPro−UK、アボキナーゼ、エミナーゼ(Eminase)、塩酸スレプターゼアナグレリド(Sreptase Anagrelide Hydrochloride)、ビバリルジン(Bivalirudin)、ダルテパリンナトリウム(Dalteparin Sodium)、ダナパロイドナトリウム(Danaparoid Sodium)、塩酸ダゾキシベン(Dazoxiben Hydrochloride)、硫酸エフェガトラン(Efegatran Sulfate)、エノキサパリンナトリウム(Enoxaparin Sodium)、イフェトロバン(Ifetroban)、イフェトロバンナトリウム(Ifetroban Sodium)、チンザパリンナトリウム(Tinzaparin Sodium)、レタプラーゼ(retaplase)、トリフェナグレル(Trifenagrel)、ワルファリン、デキストランを含む。
【0158】
「抗血小板」剤は、クロプリドグレル(Clopridogrel)、スルフィンピラゾン(Sulfinpyrazone)、アスピリン、ジピリダモール、クロフィブラート(Clofibrate)、カルバミン酸ピリジノール(Pyridinol Carbamate)、PGE、グルカゴン、抗セロトニン薬、カフェイン、テオフィリン ペントキシフィリン、チクロピジン(Ticlopidine)、アナグレリド(Anagrelide)を含む。
「脂肪減少」剤は、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)、コリスチラミン(cholystyramine)、コレスチポール(colestipol)、ニコチン酸、プロブコール ロバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン、アルトバスタチン、プラバスタチン、シリバスタチン(cirivastatin)を含む。
【0159】
「直接トロンビン阻害剤」は、ヒルジン、ヒルゲン、ヒルログ、アガトロバン(agatroban)、PPACK、トロンビンアプタマーを含む。
「グリコプロテインIIb/IIIa受容体阻害剤」は、抗体および非抗体の両方であり、ReoPro(アブシクサマブ(abcixamab))、ラミフィバン(lamifiban)、チロフィバン(tirofiban)を含むが、それに限定されない。
【0160】
「カルシウムチャネルブロッカー」は、高血圧、アンギナおよび心不整脈などの重度の心血管障害を含む様々な疾患の制御に重要な治療的価値を有する化学的に多様な部類の化合物である(Fleckenstein、Cir. Res. v. 52、(suppl. 1)、p.13−16 (1983);Fleckenstein、Experimental Facts and Therapeutic Prospects、John Wiley、New York (1983);McCall、D.、Curr Pract Cardiol、v. 10、p. 1−11 (1985))。カルシウムチャネルブロッカーは、細胞のカルシウムチャネルを調節することにより、細胞内へのカルシウムの進入を防ぐかまたは遅くする異種の薬剤群である。(Remington、The Science and Practice of Pharmacy、Nineteenth Edition、Mack Publishing Company、Eaton、PA、p.963 (1995))。現在入手可能で、本発明に関して有用なカルシウムチャネルブロッカーの多くは、ニフェジピンなどのジヒドロピリジン、ベラパミルなどのフェニルアルキルアミン、ジルチアゼムなどのベンゾチアゼピンの3つの主要な薬剤の化学群の1つに属する。本発明に関して有用なその他のカルシウムチャネルブロッカーは、アムリノン(amrinone)、アムロジピン(amlodipine)、ベンシクラン(bencyclane)、フェロジピン(felodipine)、フェンジリン(fendiline)、フルナリジン(flunarizine)、イスラジピン(isradipine)、ニカルジピン(nicardipine)、ニモジピン(nimodipine)、ペルヘキシレン(perhexilene)、ガロパミル(gallopamil)、チアパミル(tiapamil)およびチアパミル類似物(1993RO−11−2933など)、フェニトイン、バルビツレート、およびペプチドであるジノルフィン(dynorphin)、オメガ−コノトキシン、およびオメガ−アガトキシンなど、および/またはそれらの薬学的に許容し得る塩を含むが、それらに限定されない。
【0161】
「ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー」は、狭心症、高血圧および心不整脈におけるカテコラミンの心血管効果を拮抗する薬剤の部類である。ベータ−アドレナリン受容体ブロッカーはアテノロール、アセブトロール、アルプレノール、ベフノロール、ベタキソロール、ブニトロロール、カルテオロール、セリプロロール、ヘドロキサロール(hedroxalol)、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール(mepindolol)、メチプラノール(methypranol)、メチンドール(metindol)、メトプロロール、メトリゾラノロール(metrizoranolol)、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、プラクトロール、プラクトロール、ソタロルナドロール(sotalolnadolol)、チプレノロール(tiprenolol)、トマロロール(tomalolol)、チモロール、ブプラノロール、ペンブトロール、トリメプラノール(trimepranol)、2−(3−(1,1−ジメチルエチル)−アミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−ピリデンカルボニトリル(pyridenecarbonitril)HCl、1−ブチルアミノ−3−(2,5−ジクロロフェノキシ)−2−プロパノール、1−イソプロピルアミノ−3−(4−(2−シクロプロピルメトキシエチル)フェノキシ)−2−プロパノール、3−イソプロピルアミノ−1−(7−メチルインダン−4−イルオキシ)−2−ブタノール、2−(3−t−ブチルアミノ−2−ヒドロキシプロピルチオ(hydroxy−propylthio))−4−(5−カルバモイル−2−チエニル)チアゾール、7−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチルアミンプロポキシ(butylaminpropoxy))フタリドを含むが、それらに限定されない。上記に示した化合物は、異性体の混合物として、または、それらのそれぞれのレボ回転形またはデキストロ回転形(levorotating or dextrorotating form)で用いることができる。
【0162】
シクロオキシゲナーゼ‐2(COX−2)は、最近同定された形態のシクロオキシゲナーゼである。「シクロオキシゲナーゼ」は、様々なプロスタグランジンおよびトロンボキサンをアラキドン酸から産生する多くの組織に存在する酵素複合体である。非ステロイド性の抗炎症剤は、シクロオキシゲナーゼ(プロスタグランジンG/Hシンターゼおよび/またはプロスタグランジン‐エンドペルオキシドシンターゼとしても知られる)の阻害を通じて、その抗炎症、鎮痛、および解熱活性の多くを発揮し、ホルモン誘導性子宮収縮およびある種の癌の発育を阻害する。最初は、ただ1つのシクロオキシゲナーゼの形態、「構成酵素」またはシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)しか知られていなかった。これは、本来ウシの精嚢で同定された。
【0163】
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)は、最初ニワトリ、マウスおよびヒトの試料からクローニングされ、シーケンスされ、キャラクタライズされた(例えば1996年8月6日にCromlish 、et alに発行され、Merck Frosst Canada、Inc.、Kirkland、CAに譲渡された「ヒトシクロオキシゲナーゼ−2cDNAおよびシクロオキシゲナーゼ−2活性評価のためのアッセイ(Human cyclooxygenase−2 cDNA and assays for evaluating cyclooxygenase−2 activity)」という名称の米国特許第5,543,297号を参照)。この酵素はCOX−1とははっきり区別される。COX−2は、マイトージェン、エンドトキシン、ホルモン、サイトカインおよび成長因子を含む多くの剤で迅速かつ容易に誘導できる。プロスタグランジンは、生理的役割および病理的役割の両方を有しているため、構成酵素であるCOX−1は、その大部分が、プロスタグランジンの内因性の基礎放出に寄与しており、したがって、胃腸の健全性および腎血流の維持などの生理学的機能において重要である。これに対し、誘導形態であるCOX−2は、炎症剤、ホルモン、成長因子、およびサイトカインなどの剤に応答して迅速な酵素誘導が生じた場合のプロスタグランジンの病理学的効果に、主に寄与していると思われる。したがって、COX−2の選択的阻害剤は、従来の非ステロイド抗炎症薬と同様の抗炎症、解熱および鎮痛特性を有し、そしてさらにホルモン誘導性の子宮収縮を阻害し、また、潜在的な抗癌効果を有するが、副作用は小さいと思われる。特に、このようなCOX−2阻害剤は、胃腸毒性の潜在力が軽度で、腎への副作用の潜在力が軽度で、出血時間への効果が軽度であり、アスピリン感受性喘息対象における喘息発作を誘導する潜在力が低い可能性があり、したがって、本発明に関して有用である。
【0164】
多くの選択的「COX−2阻害剤」が当該分野に知られている。これらは、それら全てがMerck Frosst Canada Inc. (Kirkland、CA)に共通に譲渡された、米国特許第5,474,995号「COX−2阻害剤としてのフェニル複素環(Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors)」、米国特許第5,521,213号「シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤としてのジアリル二環性複素環(Diaryl bicyclic heterocycles as inhibitors of cyclooxygenase−2)」、米国特許第5,536,752号「COX−2阻害剤としてのフェニル複素環(Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors)」、米国特許第5,550,142号「COX−2阻害剤としてのフェニル複素環(Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors)」、米国特許第5,552,422号「抗炎症剤としてのアリル置換5,5融合芳香族窒素化合物(Aryl substituted 5,5 fused aromatic nitrogen compounds as anti−inflammatory agents)」、米国特許第5,604,253号「シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのN−ベンジルインドル−3−イルプロパン酸誘導体(N−benzylindol−3−yl propanoic acid derivatives as cyclooxygenase inhibitors)」、米国特許第5,604,260号「シクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤としての5−メタンスルホンアミド−1−インダノン(5−methanesulfonamido−1−indanones as an inhibitor of cyclooxygenase−2)」、米国特許第5,639,780号 シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのN−ベンゾイルインドール−3−イルブタン酸誘導体(N−benzyl indol−3−yl butanoic acid derivatives as cyclooxygenase inhibitors)」、米国特許第5,677,318号 抗炎症剤としてのジフェニル−1,2−3−チアジアゾール(Diphenyl−1,2−3−thiadiazoles as anti−inflammatory agents)」、米国特許第5,691,374号「COX−2阻害剤としてのジアリル−5−酸化−2−(5H)−フラノン(Diaryl−5−oxygenated−2−(5H) −furanones as COX−2 inhibitors)」、米国特許第5,698,584号「COX−2阻害剤のプロドラッグとしての3,4−ジアリル−2−ヒドロキシ−2,5−ジヒドロフラン(3,4−diaryl−2−hydroxy−2,5−dihydrofurans as prodrugs to COX−2 inhibitors)」、米国特許第5,710,140号「COX−2阻害剤としてのフェニル複素環(Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors)」、米国特許第5,733,909号「COX−2阻害剤のプロドラッグとしてのジフェニルスチルベン(Diphenyl stilbenes as prodrugs to COX−2 inhibitors)」、米国特許第5,789,413号「COX−2阻害剤のプロドラッグとしてのアルキル化スチレン(Alkylated styrenes as prodrugs to COX−2 inhibitors)」、米国特許第5,817,700号「シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのビサリルシクロブテン誘導体(Bisaryl cyclobutenes derivatives as cyclooxygenase inhibitors)」、米国特許第5,849,943号「シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤として有用なスチルベン誘導体(Stilbene derivatives useful as cyclooxygenase−2 inhibitors」、米国特許第5,861,419号「選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤としての置換されたピリジン(Substituted pyridines as selective cyclooxygenase−2 inhibitors」、米国特許第5,922,742号「シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤としてのピリジニル−2−シクロペンテン−1−オン(Pyridinyl−2−cyclopenten−1−ones as selective cyclooxygenase−2 inhibitors」、米国特許第5,925,631号「COX−2阻害剤のプロドラッグとしてのアルキル化スチレン(Alkylated styrenes as prodrugs to COX−2 inhibitors)」に記載されたCOX‐2阻害剤を含むが、それらに限定されない。また、さらなるCOX−2阻害剤がG. D. Searle Co. (Skokie、IL)に譲渡された「シクロオキシゲナーゼ−2および5‐リポキシゲナーゼ阻害剤としての置換されたスルホニルフェニル複素環(Substituted sulfonylphenylheterocycles as cyclooxygenase−2 and 5−lipoxygenase inhibitors)」の名称の米国特許第5,643,933号に記載されている。
【0165】
上記に示したCOX‐2阻害剤の多くは、選択的COX‐2阻害剤のプロドラッグであり、in vivoで活性がありかつ選択的なCOX‐2阻害剤に変換されてその作用を発揮する。上記に示したCOX‐2阻害剤のプロドラッグから形成された活性がありかつ選択的なCOX‐2阻害剤は、1995年1月5日公開のWO 95/00501、1995年6月13日公開のWO 95/18799および1995年12月12日に公表された米国特許第5,474,995号に詳しく記載されている。「ヒトシクロオキシゲナーゼ−2 cDNAおよびシクロオキシゲナーゼ−2活性の評価のためのアッセイ」という名称の米国特許第 5,543,297号の教示により、当業者は、剤が選択的COX‐2阻害剤であるのか、COX‐2阻害剤の前駆体であるのか、したがって、本発明の部分であるのかを決定することが可能になる。
【0166】
「アンギオテンシン系阻害剤」は、アンギオテンシンIIの機能、合成または異化に干渉する剤である。これらの剤は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII拮抗剤、アンギオテンシンII受容体拮抗剤、アンギオテンシンIIの異化を活性化させる剤、およびアンギオテンシンIIがそれから最終的に誘導されるアンギオテンシンIの合成を防ぐ剤が含まれるが、それらに限定されない。レニン‐アンギオテンシン系は、血行動態および水および電解質バランスの調整に関与している。血液量、腎潅流圧または血漿中のNaの濃度を低下させる因子は、該系を活性化し、これらのパラメーターを増大させる因子はその機能を抑制する傾向がある。
【0167】
アンギオテンシンIおよびアンギオテンシンIIは、酵素的レニン‐アンギオテンシン経路により合成される。合成過程は、酵素レニンが、偽グロブリンであるアンギオテンシノーゲンに作用し、デカペプチドであるアンギオテンシンIを産生するときに開始される。アンギオテンシンIは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)によりアンギオテンシンII(アンギオテンシン‐[1‐8]オクタペプチドに変換される。後者は、活性昇圧物質であり、原因剤として、様々な哺乳類種、例えばヒトにおける多数の形態の高血圧に関与している。
【0168】
アンギオテンシン(レニン‐アンギオテンシン)系阻害剤は、アンギオテンシノーゲンまたはアンギオテンシンIからのアンギオテンシンIIの産生に干渉し、または、アンギオテンシンIIの活性に干渉するように作用する化合物である。このような阻害剤は、当業者によく知られており、最終的なアンギオテンシンIIの産生に関する、レニンおよびACEを含む酵素を阻害するように作用する化合物を含む。それらはまた、一度産生されたアンギオテンシンIIの活性に干渉する化合物も含む。このような化合物のクラスの例は、抗体(例えばレニンに対する)、アミノ酸およびその類似物(より大きな分子に複合したものを含む)、ペプチド(アンギオテンシンおよびアンギオテンシンIの類似ペプチドを含む)、プロ−レニン関連類似体(pro−renin related analogs)などを含む。最も強力で有用なレニン‐アンギオテンシン系阻害剤は、レニン阻害剤、ACE阻害剤およびアンギオテンシンII拮抗剤である。本発明の好ましい態様において、レニン‐アンギオテンシン系阻害剤は、レニン阻害剤、ACE阻害剤およびアンギオテンシンII拮抗剤である。
【0169】
「アンギオテンシンII拮抗剤」は、アンギオテンシンII受容体に結合し、その活性に干渉することによりアンギオテンシンIIの活性に干渉する化合物である。アンギオテンシンII拮抗剤はよく知られており、ペプチド化合物および非ペプチド化合物を含む。多くのアンギオテンシンII拮抗剤はわずかに修飾された同族体であり、作動活性が、第8位のフェニルアラニンを何らかの他のアミノ酸で置換することにより緩和されており、安定性は、in vivoでの分解を遅延する他の置換により向上することができる。アンギオテンシンII拮抗剤の例は、ペプチド化合物(例えば、サララシン、[(San1)(Val)(Ala)]アンギオテンシン−(1−8)オクタペプチドおよび関連する類似物)、N−置換イミダゾール−2−オン(米国特許第 5,087,634号)、2−N−ブチル−4−クロロ−1−(2−クロロベンジル)イミダゾール−5−酢酸(Long et al.、J. Pharmacol. Exp. Ther. 247(1)、1−7 (1988)を参照)を含むイミダゾール酢酸誘導体、4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4、5−c]ピリジン−6−カルボキシル酸およびその類似誘導体 (米国特許第 4,816,463号);N2−テトラゾールベータ−グルクロニド類似体(米国特許第 5,085,992号);置換されたピロール、ピラゾール、およびトリヤゾール(tryazole)(米国特許第 5,081,127号);1、3−イミダゾールなどのフェノールおよび複素環誘導体(米国特許第 5,073,566号);イミダゾ‐フューズド七員複素環(米国特許第 5,064,825号);ペプチド(例えば、米国特許第 4,772,684号);アンギオテンシンIIに対する抗体(例えば、米国特許第 4,302,386号);およびビフェニル‐メチル置換イミダゾールなどのアラルキルイミダゾール化合物(例えば、EP第253,310号、1988年1月20日);ES8891(N−モルホリノアセチル−(−1−ナフチル)−L−アラニル−(4,チアゾリル)−L−アラニル(35,45)−4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−シクロ−ヘキサペンタノイル−N−ヘキシルアミド、Sankyo Company、Ltd.、Tokyo、Japan);SKF108566 (E−アルファ−2−[2−ブチル−1−(カルボキシフェニル)メチル] 1H−イミダゾール−5−イル[メチラン]−2−チオフェンプロピオン酸、Smith Kline Beecham Pharmaceuticals、PA);ロザルタン(Losartan)(DUP753/MK954、DuPont Merck Pharmaceutical Company);レミキリン(Remikirin)(RO42−5892、F. Hoffman LaRoche AG);A作動剤(Marion Merrill Dow)およびある非ペプチド複素環 (G.D.Searle and Company)を含む。
【0170】
「アンギオテンシン変換酵素 (ACE)は、アンチオテンシンIのアンギオテンシンIIへの変換を触媒する酵素である。ACE阻害剤は、アミノ酸およびその誘導体、ジペプチドおよびトリペプチドを含むペプチド、およびACEに対する抗体を含み、ACEの活性を阻害することでレニン‐アンギオテンシン系に干渉し、それにより、昇圧物質であるアンギオテンシンIIの形成を減少または排除する。ACE阻害剤は、高血圧、先天性心不全、心筋梗塞および腎疾患の処置に対し医療的に用いられてきた。ACE阻害剤として有用と知られている化合物のクラスは、カプトプリル(米国特許第 4,105,776号)およびゾフェノプリル(米国特許第 4,316,906号)などのアシルメルカプトおよびメルカプトアルカノイルプロリン、エナラプリル(米国特許第 4,374,829号)、リシノプリル(米国特許第 4,374,829号)、キナプリル(米国特許第 4,344,949号)、ラミプリル(米国特許第 4,587,258号)、およびペリンドプリル(米国特許第 4,508,729号)などのカルボキシアルキルジペプチド、シラザプリル(米国特許第 4,512,924号)およびベナザプリル(米国特許第 4,410,520号)などのカルボキシアルキルジペプチド模倣体、フォシノプリル(米国特許第 4,337,201号)およびトランドロプリル(trandolopril)などのホスフィニルアルカノイルプロリンを含む。
【0171】
「レニン阻害剤」は、レニンの活性に干渉する化合物である。レニン阻害剤は、アミノ酸およびその誘導体、ペプチドおよびその誘導体、およびレニンに対する抗体を含む。米国特許の対象となるレニン阻害剤の例は次の通りである:ペプチドの尿素誘導体(米国特許第 5,116,835号);非ペプチド結合により連結したアミノ酸(米国特許第 5,114,937号);ジ‐およびトリ‐ペプチド誘導体(米国特許第 5,106,835号);アミノ酸およびその誘導体(米国特許第5,104,869号および第5,095,119号);ジオールスルホンアミドおよびスルフィニル(diol sulfonamides and sulfinyls)(米国特許第 5,098,924号);修飾ペプチド(米国特許第 5,095,006号);ペプチジルベータ‐アミノアシルアミノジオールカルバメート(peptidyl beta−aminoacyl aminodiol carbamates)(米国特許第 5,089,471号);ピロルイミダゾロン(pyrolimidazolones)(米国特許第 5,075,451号);フルオリンおよびクロリンスタチンまたはスタトン(fluorine and chlorine statine or statone)を含むペプチド (米国特許第 5,066,643号);ペプチジルアミノジオール(peptidyl amino diols)(米国特許第5,063,208号および第4,845,079号);N−モルホリノ誘導体(米国特許第 5,055,466);ペプスタチン(pepstatin)誘導体 (米国特許第 4,980,283号);N−複素環アルコール (米国特許第 4,885,292号);レニンに対するモノクローナル抗体 (米国特許第 4,780,401号);および様々なその他ノペプチドおよびその類似体 (米国特許第5,071,837号、第5,064,965号、第5,063,207号、第 5,036,054号、第5,036,053号、第5,034,512号および第4,894,437号)。
【0172】
細胞接着分子に結合し、白血球がそのような分子に付着する能力を阻害する剤は、ポリペプチド剤を含む。このようなポリペプチドは、従来の方法論にしたがって調整されたポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。このような抗体は、当該分野で既知であり、抗ICAM 1抗体ならびにその他のこのような抗体を含む(上述した抗体についての議論を参照)。
【0173】
抗凝固剤は、アンクロド(Ancrod);抗凝固クエン酸ブドウ糖溶液;抗凝固クエン酸リン酸ブドウ糖アデニン溶液(Anticoagulant Citrate Phosphate Dextrose Adenine Solution);抗凝固クエン酸リン酸ブドウ糖溶液;抗凝固へパリン溶液、抗凝固クエン酸ナトリウム溶液;アルデパリンナトリウム;ビバリルジン;ブロミンジオン(Bromindione);ダルテパリンナトリウム;デジルジン(Desirudin)、Dicumarol;Heparin Calcium;Heparin Sodium;リアポラートナトリウム(Lyapolate Sodium);メシル酸ナファモスタット;フェンプロクモン;チンザパリンナトリウム;ワルファリンナトリウムを含むが、これらに限定されない。
【0174】
ヘパリンは進行中の卒中の症状を安定化するだろうが、抗凝固剤は急性の完了した卒中においては役に立たず(そして危険な可能性がある)、高血圧症においては脳およびその他の器官での出血の可能性を増大させるために禁忌となっている。タイミングには議論の余地があるが、抗凝固剤を再発性心原性塞栓の予防に用いられ始めている。組織プラスミノーゲン活性因子およびストレプトキナーゼを含む血溶解剤は、急性卒中の極めて早期の処置に対して評価されている。最近、ニモジピン(Nimodipine)が虚血性卒中後の生存率および臨床的予後を改善することが示された。
【0175】
アスピリンのほかでは、チクロピジンが卒中の処置に関して有益であることが示されたもう1つの抗血小板剤である。動脈内膜切除術は、症候性の内頚動脈の70〜99%の狭窄を有する患者に適応され得る。しかしながら、多くの専門家が、椎骨脳底系に関与する一過性脳虚血発作(TIA)の患者、以前の卒中に由来する有意な障害を有する患者、または卒中が進行状態にある患者に頚動脈内膜切除術が適応されないことを認めている。
【0176】
HMG−CoA (3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル‐補酵素A)リダクターゼは、コレステロール生合成において、律速反応を触媒するミクロソーム酵素である (HMG‑CoA6メバロナート(Mevalonate))。HMG‑CoAリダクターゼ阻害剤はHMG‑CoAリダクターゼを阻害し、その結果としてコレステロール合成を阻害する。多数のHMG‑CoAリダクターゼ阻害剤が高コレステロール血症の固体を処置するのに用いられてきた。より最近になって、HMG‑CoA リダクターゼ阻害剤が卒中の処置に有益であることが示された (Endres M、et al.、Proc Natl Acad Sci U S A、1998、95:8880−5)。
【0177】
本発明の剤と共投与するのに有益なHMG‑CoAリダクターゼ阻害剤は、シムバスタチン(米国特許第4、444,784号)、ロバスタチン(米国特許第4,231,938号)、プラバスタチンナトリウム(米国特許第4,346,227号)、フルバスタチン(米国特許第4,739,073号)、アトルバスタチン(米国特許第5,273,995号)、セリバスタチン、および米国特許第5,622,985号、米国特許第5,135,935号、米国特許第5,356,896号、米国特許第4,920,109号、米国特許第5,286,895号、米国特許第5,262,435号、米国特許第5,260,332号、米国特許第5,317,031号、米国特許第5,283,256号、米国特許第5,256,689号、米国特許第5,182,298号、米国特許第5,369,125号、米国特許第5,302,604号、米国特許第5,166,171号、米国特許第5,202,327号、米国特許第5,276,021号、米国特許第5,196,440号、米国特許第5,091,386号、米国特許第5,091,378号、米国特許第4,904,646号、米国特許第5,385,932号、米国特許第5,250,435号、米国特許第5,132,312号、米国特許第5,130,306号、米国特許第5,116,870号、米国特許第5,112,857号、米国特許第5,102,911号、米国特許第5,098,931号、米国特許第5,081,136号、米国特許第5,025,000号、米国特許第5,021,453号、米国特許第5,017,716号、米国特許第5,001,144号、米国特許第5,001,128号、米国特許第4,997,837号、米国特許第4,996,234号、米国特許第4,994,494号、米国特許第4,992,429号、米国特許第4,970,231号、米国特許第4,968,693号、米国特許第4,963,538号、米国特許第4,957,940号、米国特許第4,950,675号、米国特許第4,946,864号、米国特許第4,946,860号、米国特許第4,940,800号、米国特許第4,940,727号、米国特許第4,939,143号、米国特許第4,929,620号、米国特許第4,923,861号、米国特許第4,906,657号、米国特許第4,906,624号および米国特許第4,897,402号、に記載されたその他多数のものを含み、これらの特許の開示は、本明細書に参考として組込まれる。
【0178】
一酸化窒素(NO)は、心血管系、神経系および免疫系において多くの生理学的役割を有する伝達分子として認識されている (Griffith、TM et al.、J Am Coll Cardiol、1988、12:797−806)。それは、血管の弛緩、神経伝達および病原体の抑制を誘導する。NOはL‐アルギニンのグアニジノ窒素からNO合成酵素により産生される(Moncada、S and Higgs、EA、Eur J Clin Invest、1991、21:361‑374)。内皮細胞の一酸化窒素合成酵素を上方調節する剤は、L‐アルギニン、rho GTPアーゼ機能阻害剤(WO 99/47153国際出願を参照。その開示は本明細書に参考として組込む)、およびアクチン細胞骨格の形成を障害する剤(WO 00/03746国際出願を参照。その開示は本明細書に参考として組込む)を含むが、それらに限定されない。
【0179】
ここで「共投与」とは、本発明の2つまたは3つ以上の化合物(例えば、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2および/またはTIS−11d、核酸および/またはポリペプチド、および、例えば心血管状態の処置に有益であることが知られている剤‐例えば抗凝固剤‐)を、1個の組成物中の混合物として同時に、または、該化合物が、すなわち心血管状態における心筋の細胞死の低減に関して、相加的またはさらに相乗的な効果を発揮し得る程度に、時間的に十分近接して順次投与することに関する。
【0180】
本発明はまた、固相核酸分子アレイを包含する。該アレイは、核酸分子、その発現産物またはその断片(核酸またはポリペプチド分子のいずれか一方)のセットからなり、それぞれの核酸分子は、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択され、固相基質に固定されている。いくつかの態様において、該固相アレイは、さらに少なくとも1つの対象核酸分子を含む。ある態様において、核酸分子のセットは、各々MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択された、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個またはさらに少なくとも5個の核酸分子を含む。好ましい態様において、核酸分子のセットは、最大数100個の異なる核酸分子を含む。重要な態様では、核酸分子のセットは、最大数10個の異なる核酸分子を含む。
【0181】
本発明によると、マイクロアレイ技術の標準的なハイブリダイゼーション技術が、核酸発現のパターンをアッセイし、核酸の発現を同定するために用いられる。DNAチップ技術、遺伝子チップ技術、および固相核酸アレイ技術を含む別名でも知られているマイクロアレイ技術は当業者によく知られており、固定基材上の核酸プローブ(例えば、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2および/または TIS−11dなどの本明細書に記載された分子)のアレイを得、標的分子をレポーター分子(例えば、放射性タグ、化学発光性タグ、またはフルオレセイン、Cye3−dUTPまたはCye5−dUTPなどの蛍光タグ)で標識し、標的核酸をプローブにハイブリダイズし、標的‐プローブのハイブリダイゼーションを評価することに基づくが、これらに限定されない。標的配列に完全に適合する核酸配列を有するプローブは、一般的に、完全適合が少ないプローブよりも強いレポーター分子信号の検出をもたらす。核酸マイクロアレイ技術で用いられている多くの構成要素および技術は、The Chipping Forecast, Nature Genetics, Vol.21, Jan 1999に提示されており、その内容の全体を本明細書に参考として組込む。
【0182】
本発明によると、マイクロアレイの基材は、ガラス、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミナおよび酸化ニッケルなどの金属酸化物、様々な粘土、ニトロセルロース、またはナイロンを含んでもよいが、これらに限定されない。全ての態様において、ガラス基材が好ましい。本発明によると、プローブは、DNA、ゲノムDNA、cDNA、およびオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない核酸の群から選択され、天然または合成であってもよい。オリゴヌクレオチドプローブは好ましくは20〜25‐merのオリゴヌクレオチドであり、DNA/cDNAプローブは好ましくは500〜5000ベースの長さであるが、その他の長さを用いてもよい。適切なプローブ長は、当業者により、以下の当該分野に知られた手順で決定し得る。1つの態様では、好ましいプローブは、配列番号1、3、4、6、8、10および/または12として示された2個または3個以上の核酸分子のセットである。プローブは、汚染物を除去するために、ゲル濾過または沈殿など当業者に知られた標準的な方法を用いて精製してもよい。
【0183】
1つの態様では、マイクロアレイの基材は、基材上のプローブの合成を促進する化合物で被覆されていてもよい。このような化合物は、オリゴエチレングリコールを含むが、これに限定されない。その他の態様では、基材上のカップリング剤または基が、最初のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを基材に共有結合するのに用いられてもよい。これらの剤または基は、アミノ基、ヒドロキシ基、ブロモ基、およびカルボキシ基を含むがこれらに限定されない。これらの反応基は、2価のアルキレンまたはフェニレン基などのヒロドカルビル基を通じて基材に付着しているのが好ましく、1つの原子価位置は、鎖の結合に使われ、残りが該反応基に付着している。これらのヒドロカルビル基は、約10個の炭素原子まで、好ましくは、約6個の炭素原子まで含んでもよい。アルキレン基が通常好まれ、主鎖に2〜4個の炭素原子を含んでいる。これらまたは該手順のさらなる詳細は、例えば、米国特許第4,458,066号に開示されており、その全体を参考として組込む。
【0184】
1つの態様では、プローブは、光照射化学合成(light−directed chemical synthesis)、光脱保護、またはヌクレオチド前駆体の基材への送達とそれに続くプローブの作製などの方法を用いて、規定のグリッドパターンで基材上に直接合成される。
【0185】
他の態様では、基材は、プローブの基材への結合を促進する化合物で被覆されていてもよい。このような化合物は、ポリリシン、アミノシラン、アミノ反応シラン(amino−reactive silanes )(Chipping Forecast、1999)またはクロミウム(Gwynne and Page、2000)を含むがこれらに限定されない。この態様においては、事前に合成されたプローブは、接触プリント法、またはインクジェットまたはピエゾ電気分配などの非接触法によりプローブを基材上に塗布するためのコンピューター制御ロボットを利用して、事前に設定された正確な容量およびグリッドパターンで基板に塗布される。プローブは、紫外線照射を含むがそれに限定されない方法により、基材に共有結合されてもよい。その他の態様では、プローブは熱により基材に連結されている。
【0186】
標的は、DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNAを含むがそれらに限定されない群から選択された核酸であり、天然または合成であってもよい。全ての態様において、心血管状態が発症しつつあるか、またはそれを有することが疑わしい対象からの核酸分子が好ましい。本発明のある態様では、1個または2個以上の対照核酸分子が基材に付着している。好ましくは、対照核酸分子は、核酸の品質および結合特徴、試薬の品質および効率、ハイブリダイゼーションが成功したかどうか、および分析閾値およびそれが成功したかどうか、を含むがそれらに限定されない因子の決定を可能にする。対照核酸は、ハウスキーピング遺伝子またはその断片などの遺伝子の発現産物を含んでもよいがそれらに限定されない。
【0187】
心血管疾患のマーカーの選択のために、例えば遺伝子発現のマイクロアレイ分析によって得られた発現データは、好ましくは、異なったカテゴリーの患者(各患者のカテゴリーは、異なる心血管障害である)において、どの遺伝子が有意に異なって発現しているかを決定するために分析される。遺伝子発現の有意性は、Permax computer softwareを用いて決定することができるが、発現における有意な差異を区別できる任意の標準的な統計パッケージを用いてもよい。Permaxは、多大なデータについて並べ替え(permutation)2標本t検定を行なう。高次元の観察ベクトルについては、Permax softwareは、各属性についてt統計を計算し、最大および最小の全体属性(overall attribute)の並べ替え分布を用いて有意性を調べる。主要な用途は、2つの群(例えば対照となる健康な対象と特定の心血管障害を有する対象)の間で最も異なる属性(遺伝子)を、t統計の数値およびそれらの有意レベルを用いて「最も異なるもの」を測定することで、決定することである。
【0188】
心血管疾患の核酸分子の発現は、配列番号2,5,7,9および/または11の発現を、例えば配列番号1,4,6,8および/または10でそれぞれコードされたポリペプチドの発現を定量することで定量するタンパク質測定法を用いても定量することができる。タンパク質を特異的かつ定量的に測定する好ましい方法は、表面強化レーザー脱着/イオン化(SELDI;例えば、Ciphergen ProteinChip System)などの質量分析に基づく方法、質量分析に基づかない方法、および、2次元ゲル電気泳動などの免疫組織化学に基づく方法を含むが、これらに限定されない。
【0189】
SELDI法は、当業者に知られる手順を通じて、腫瘍タンパクの微細な量を蒸発させ、個別のタンパク質の「フィンガープリント(fingerprint)」を作製するために用いてもよく、それにより単一の標本における多数のタンパク質の量を同時に測定することが可能になる。好ましくは、SELDIに基づくアッセイは、心血管状態ならびにそのような状態のステージを特徴付けるために用いてもよい。このようなアッセイは、好ましくは、以下の例を含むがそれらに限定されない。RNAマイクロアレイで発見された遺伝子産物は、SELDIタンパク質ディスク(例えば選択的SELDI)への特異的(抗体媒介性)補足により選択的に測定してもよい。タンパク質スクリーニング(例えば2次元ゲルにより)により発見された遺伝子産物は、配列番号1,3,4,6,8および/または10の中からの対象となるこれらの特定のマーカーを視覚化するために最適化された「総タンパク質SELDI」により分析してもよい。配列番号1,3,4,6,8および/または10の中からの複数のマーカーのSELDI測定からの心血管疾患の予測モデルを、SELDI方式に用いてもよい。
【0190】
心血管疾患の核酸の発現を定量するための上記の任意のマイクロアレイ法の使用は、当業者に知られた通常の方法で行うことができ、そして、タンパク質測定法により定量された発現は、心血管疾患患者の処置方針を選択する予後的な方法として用いられるマーカーの事前に設定されたレベルに相関させてもよい。
【0191】
本発明は、以下の例を参考にして、より完全に理解することができる。これらの例は、しかしながら、単に本発明の態様を説明することを意図しており、本発明の範囲を限定すると考えるべきではない。
【0192】

実験手順
材料および方法
DMEMおよびHam’s F−12は、Biowhittakerより得た。ダルベッコ(Dulbecco’s)PBS溶液、ハンクス液(Hanks’ balanced salt solution)、フィブロネクチンおよび組織培養に要求される他の材料は、Gibco−BRLより購入した。[α−32P]dCTP(3000 Ci/mmol)は、Dupont NENより購入した。
【0193】
VSMC の培養
細胞は、Brigham and Women’s Hospitalでの同所性心臓移植のための器官取得のときにドナーから余分な大動脈組織からの外植片から調製した。血管平滑筋細胞(VSMC)を、DMEM、10%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン硫酸塩において維持した。これらの条件は、内皮細胞を覆うVSMCの増殖に対して選択的である。VSMCは、実験のため6から7節(passage)まで、37℃、5%COで維持した。これらの条件下で、ヒトVSMCの50%から60%を通常どおり平滑筋アクチンに対してポジティブ染色する。プロトコールは、Brigham and Women’s Hospital Committee for Human Researchによって承認された。
【0194】
心筋細胞の培養
心筋細胞は、実質的にArstall MA, et al., J Mol Cell Cardiol, 1998, 30(5):1019−25に記載のように培養した。
機械的ひずみデバイス(Mechanical Strain Device)
培養中、細胞へ機械的に制御した変形を与える機械的ひずみデバイスを利用した。このようなデバイスは、この分野でよく知られ、既に93年6月8日に刊行されたShapiro et al.の米国特許第5,217,899号の主題として詳細に記載されている。このデバイスでの機械的変形は、細胞が培養された薄く透明な膜に適用され、制御された細胞のひずみを産生し、細胞の視覚化を可能にするアプローチである。加えて、ほとんど均質な二軸性ひずみの特徴(膜のすべての場所で、そしてすべての方向で等しいひずみ)が生み出される(Cheng, et al., Circ. Res., 1997, 80:28−36)。いくつかの普通に用いられるシステムに対するこのデバイスの利点は、一つの方向において、極めて高いひずみ(20%から30%)を有する基材の場所を排除することである。該膜は、平らにした凝集物が、それぞれモーターのスピードおよびカムの大きさによってもたらされる回数および振幅をともなって正弦的なサイクル的な変形を受ける。膜のひずみは、高解像度ビデオ装置で予め測定され(Cheng, et al., Circ. Res., 1997, 80:28−36)、この研究に用いたカムは1%、4%、および9%のひずみを与えた。
【0195】
細胞培養シリコーン膜自体は、VSMCの無視できる接着を支持している。機械的なひずみを受けるVSMCの製造のために、オートクレーブした膜ディッシュを、4℃で6〜12時間、ハンクス液中2μg/mlのフィブロネクチンで覆い、次いで10 ml PBSで2回洗浄した。VSMCは、10%仔ウシ血清(FBS)を含むDMEM 13ml中、700,000 cells/dishの密度に、被覆した膜ディッシュで平らにし、次いで16〜24時間インキュベートした。細胞は次いで10 mlのハンクス液で4回洗浄し、残った血清を除き、48時間、10 mlの無血清IT培地(同体積のDMEMおよび1μmol/Lインスリンおよび5μg/mlトランスフェリン添加のHam’s F−12)でインキュベートした。機械的ひずみの前に、10 mlの新鮮なIT培地に交換した。次いで、機械的ひずみを、特定の回数および振幅で適用し、機械的なひずみを受けないディッシュを制御した。
【0196】
転写の解明
DNAマイクロアレイ実験を、48時間無血清培地を用いてフィブロネクチン被覆膜で培養したヒト大動脈平滑筋細胞で行なった。単一の罹患ドナーからの細胞を、次いでサイクル的な変形(1Hz、4%振幅)に12時間または24時間暴露し、または変形なしにして、RNAを調製した。これらの時点の選択は、小さなひずみが遺伝子誘導をこれらの時点で調節することを示す先の観察に基づいた(Yang, et al., J. Biol. Chem., 1998, 273:6550−6555)。DNAマイクロアレイハイブリダイゼーション実験は、先に記載の方法(Iyer, et al., Science, 1999, 283:83−87; Lockhart, et al., Nat. Biotechnol., 1996, 14:1675−1680)を用いて、UniGem 1.0 アレイ(Incyte Genomics, Inc., Palo Alto, CA)を用いて行なった。このUniGem 1.0アレイは、推定される機能をもつ5000のよく特徴づけられた遺伝子を有する。データはGemToolsソフトウェアパッケージ(Incyte Genomics, Inc.)を用いて分析した。アッセイの感度は、75,000において1つの転写産物の検出であった。
【0197】
マイクロアレイの再現性は、2つの独立したアッセイを用いて決定した。最初に、200ngのヒトRNAをCy3またはCy5dCTPで標識し、混合し、そしてアレイにハイブリダイズした。蛍光割合は、すべてのコールされた要素について計算された。これらのデータは、同じRNAが、両方の蛍光チャンネルに用いられるとき、UniGem 1.0マイクロアレイの99%の要素が、2倍以内の異なる発現値を与えることを示した。第二シリーズの実験は、2つの関連しない細胞系から単離したRNAを用いた。これら2つのRNAの3つの分かれたハイブリダイゼーションに対する比較により、平均相関係数r=0.97を得た。本研究のために、本発明者らは、差異のある遺伝子誘導を決定するため、2.5倍の閾値を用い、偽陽性の要素を最小化した。さらに、本発明者らは、先に記載の異なる細胞ドナーおよび方法(Lockhart, et al., Nat. Biotechnol., 1996, 14:1675−1680)を用いて、GeneChip HU6800 (Affymetrix, Inc., Santa Clara, CA)とのハイブリダイゼーションに対する>1000遺伝子の結果を比較した。
【0198】
ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析
差異のある発現をする遺伝子に対するcDNAクローンを、IMAGEコンソーシアムに注文した。それぞれのクローンは、同一性を確認するために5’および3’末端から配列決定した。DNAマイクロアレイ中の陽性の要素を、ヒト大動脈平滑筋細胞の3つの異なる患者のソースを用いて、少なくとも3つの独立した実験において、ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析によって確認した。全RNAは、チオシアン酸グアニジンおよびフェノールクロロホルム法で単離した(Chomcyznski, et al., Anal. Biochem., 1987, 162:156−159)。ノーザンブロッティングのために、15μgのRNAを1.0%アガロース−ホルムアルデヒドゲル(2.0 mol/l)にロードし、ナイロン膜(Amersham Pharmacia Biotech AB, Piscataway, NJ)へ転写し、そしてUV Strata−linker(Stratagene, Inc., La Jolla, CA)でUV架橋した。プローブを68℃で1時間、ExpressHyb液(Clontech Labs., Inc., Palo Alto, CA)でハイブリダイズした。膜を、2 x SSC、0.05% SDS溶液で30〜40分間、室温で3回、続く50℃で40分間の振盪をしながら0.1xSSC、0.1% SDS溶液で洗浄した。膜を−80℃でフィルムに暴露し、放射線写真をOptimas 5.0ソフトウェア(Optimas Co./Media Cybernetics, Silver Springs, MD)でスキャンし分析した。デンシトメトリー単位(densitometric units)は、膜のエチジウム染色された28Sリボソームサブユニットに対して標準化した。
【0199】
蛋白質アッセイ
酵素免疫アッセイを、商業的に入手可能なELISAキット(例えば、Biopool, Ventura, CA)を用いて行なった。ウェスタン分析には、細胞溶解物(50 μg)を10% SDS−ポリアクリルアミドゲルにロードし、25 mmol/L Tris塩基(pH 8.5)、0.2 mol/L グリシンおよび20% メタノール中、ニトロセルロース膜へ転写した。ニトロセルロース膜を、20 mmol/L Tris塩基(pH 7.6)、137 mmol/L NaCl、および0.1% Tween 20を含むTBS洗浄緩衝液中の5%脱脂乾燥ミルクで2時間ブロックした。
【0200】
ひずみ−アポトーシスアッセイ
ひずみ依存細胞生存の調節に関し関心のある遺伝子の機能をアッセイするために、本発明者らは、本明細書に記載のTUNELアッセイをひずみに曝した心筋細胞でのアポトーシスを試験するために適用した。心筋細胞は、ひずみ(先に記載した)またはダウノルビシン(ポジティブな対照)に曝した。刺激の後、細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋し、5μmセクションに切断した。該パラホルムアルデヒドで固定したセクションは、パラフィンの脱固定をし、再水和した。TdT酵素およびフルオレセインカクテルと接合したdUTPを、製造者の仕様書(Roche Diagnostics in situ death−detection kit, Roche, Berkeley, CA)にしたがって、セクションを加えた。核がHoescht 33258 (Sigma)で対比染色され、蛍光用のマウンティングメディア(Kirkegaard & Perry Laboratories, Inc.)を用いて、試験を行なった。標本は、相コントラストおよびエピフルオレセンス光学レンズ(x100)を備えたダイアフォト顕微鏡(Nikon Inc.)で撮影した。写真は、Kodak Gold Plusフィルム(Eastman Kodak Co.)に記録した。アポトーシス性核のパーセンテージは、TUNEL染色に陽性であるHoechst染色された核の数を決定して計算した。およそ100の核がそれぞれのセクションで計数された。
【0201】
結果
心筋細胞および平滑筋細胞のMIVR−1
高い均一性の二軸のサイクル的なひずみを培養ヒト大動脈平滑筋細胞に適用することによって、本発明者らは、新規の機械的に誘導された遺伝子MIVR−1を見出した。平滑筋細胞内のヒトMIVR−1のメッセージは、〜5kbの長さで、ひずみに続く血管組織で濃密に発現する単一のmRNA種として現れる。単離および特徴づけされたMIVR−1 cDNA (配列番号1)は、〜30kDの大きさで、1つの膜貫通ドメインを有し、分泌配列をもたず、長い細胞尾部(cytoplasmic tail)を有する推定されるMIVR−1蛋白質配列(配列番号2)をコードする。マウス組織およびマウス胚性幹細胞のノーザンブハイブリダイゼーションブロットは、左心室(L)および大動脈(Ao)mRNAの〜8kbおよび〜5kbの2つのmRNA種に対するハイブリダイゼーションを示した。
【0202】
心筋細胞および平滑筋細胞におけるIEX−1
IEX−1(配列番号4および5)は、元来、ヒト扁平上皮細胞の癌細胞の放射線で誘導された遺伝子として同定された(Cancer Research;1996:56:1498)。ラットの相同体は、prg−1(増殖関連遺伝子−1)として同定された。この遺伝子の第三の名前は、p22であり、単球分化の間に下方調節されることが知られる遺伝子である。プロモーター欠失の研究は、IEX−1がNF−kBおよびp53により誘導されることを示した。IEX−1Lと呼ばれるIEX−1のドミナントネガティブの変異体は、アポトーシスを妨げるNF−kB応答遺伝子の探索していたグループによってJurkat細胞で、ディファレンシャルディスプレイ法を通じて突発的にクローニングされた(Science 1998;281:998)。他の機械的に調節されるアポトーシスを調節する遺伝子(VDUP−1: 配列番号6および7)と同様、この遺伝子およびその心血管系への関与に関しては先に何ら報告がされていない。
【0203】
本発明者らは、最初にHU−6800アレイとSMCひずみ実験においてIEX−1を同定した。本発明者らは、心臓細胞における機械的応答を調節するレドックス(redox)およびNF−kBを追跡していたので、IEX−1は心筋細胞 (CM)およびVSMCの両方に価値がある。本発明者らは、ヒトCMでの強い上方調節を確認したが、利用可能性によるラット新生児CMでの類似体prg−1を調査していない。ノーザンブロットハイブリダイゼーションによって、ラット新生児CMにおいて、prg−1が迅速にそして強く誘導されることが示された。ラット新生児CMでの振幅応答のノーザンブロットハイブリダイゼーションにより、prg−1/IEX−1が、照射量依存的方法で、ひずみにより誘導されることを確認した。
本発明者らは、IEX−1/prg−1誘導が、アンギオテンシンII(AngII)に関係しないことを仮定する。なぜなら、Ang IIが、NF−kBの機械的誘導を要求しないことを先に決定しているからである。しかしながら、行なわれた2つの実験においてAng II阻害剤による部分的な阻害が観察された。したがって、IEX−1/prg−1は、機械的に誘導される遺伝してあり、アポトーシス調節機能を有する。
【0204】
心筋細胞および平滑筋細胞におけるBTG−2およびTIS−11d
ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析を用いて、マイクロアレイスクリーンからの2つの追加のヒットをアッセイした。ラットのcDNAプローブは、心筋細胞cDNAテンプレートを用いて、PCRにより作製した。2つの新たなヒットは、(i)BTG−2(NGF−誘導可能な抗増殖性蛋白質PC3、配列番号8および9)、抗増殖性効果を有するp53の下流の遺伝子、および(ii)TIS−11d(ジンクフィンガー転写因子ERF−2:配列番号10および11)、細胞外ホルモンおよび連続的に生理学的レベルで発現した場合にアポトーシスを引き起こす増殖因子シグナルによって誘導される前初期遺伝子を含む。
【0205】
ひずみアポトーシスアッセイ
ひずみアポトーシス活性は、本明細書の他のところで記載されたように行なった。これらのアッセイは、血清リッチおよび血清フリーの両方の状態で、ひずみに対する心血管細胞の暴露が、アポトーシスの程度を減少することを示した。
本明細書に開示のすべての文献は、参照文献としてその全体が組み込まれる。請求の範囲が以下にあり、配列表が続く。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の特徴を具体化するキットを示す。

Claims (78)

  1. (a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなる分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、心臓細胞の抗アポトーシス活性を有するMIVR−1ポリペプチドをコードする核酸分子、
    (b)心臓細胞の抗アポトーシス活性を有するMIVR−1ポリペプチドをコードする(a)の欠失体、付加体および置換体、
    (c)遺伝暗号の縮重によるコドン配列において(a)または(b)の核酸分子と異なる核酸分子、および
    (d)(a)、(b)または(c)の相補体
    からなる群から選択される単離核酸分子。
  2. 単離核酸分子が、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離核酸分子。
  3. 単離核酸分子が、配列番号3に記載のヌクレオチド配列またはその断片からなる、請求項1に記載の単離核酸分子。
  4. (a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列のユニーク断片、および
    (b)(a)の相補体からなる群から選択される単離核酸分子であって、
    但し、(a)のユニーク断片は、
    (1)配列番号14〜16および17からなる群から選択される配列、
    (2)(1)の相補体、および
    (3)(1)および(2)の断片
    からなる配列群から選択されるいずれの配列とも同一ではない連続ヌクレオチドの配列を含む、前記単離核酸分子。
  5. 連続ヌクレオチドの配列が、
    (1)前記配列群と同一でない少なくとも2つの連続ヌクレオチド、
    (2)前記配列群と同一でない少なくとも3つの連続ヌクレオチド、
    (3)前記配列群と同一でない少なくとも4つの連続ヌクレオチド、
    (4)前記配列群と同一でない少なくとも5つの連続ヌクレオチド、
    (5)前記配列群と同一でない少なくとも6つの連続ヌクレオチド、および
    (6)前記配列群と同一でない少なくとも7つの連続ヌクレオチド、
    からなる群から選択される、請求項4に記載の単離核酸分子。
  6. ユニーク断片が、少なくとも、8ヌクレオチド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、14ヌクレオチド、16ヌクレオチド、18ヌクレオチド、20ヌクレオチド、22ヌクレオチド、24ヌクレオチド、26ヌクレオチド、28ヌクレオチド、30ヌクレオチド、50ヌクレオチド、75ヌクレオチド、100ヌクレオチド、および200ヌクレオチドからなる群から選択される大きさを有する、請求項4に記載の単離核酸分子。
  7. 分子が、免疫原性であるポリペプチドをコードする、請求項4に記載の単離核酸分子。
  8. プロモーターと作動可能に連結した請求項1〜7のいずれかに記載の単離核酸分子を含む、発現ベクター。
  9. プロモーターと作動可能に連結した請求項4に記載の単離核酸分子を含む、発現ベクター。
  10. 請求項8に記載の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
  11. 請求項9に記載の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
  12. ポリペプチドまたはポリペプチドの断片が、心臓細胞の抗アポトーシス活性を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子によりコードされる単離ポリペプチド。
  13. 請求項12に記載の単離ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、請求項2に記載の核酸分子によりコードされる、前記ポリペプチド。
  14. 請求項13に記載の単離ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸1〜287の配列を有するポリペプチドを含む、前記ポリペプチド。
  15. ポリペプチドまたはポリペプチドの断片が免疫原性である、請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子によりコードされる単離ポリペプチド。
  16. 請求項15に記載の単離ポリペプチドであって、該ポリペプチドの断片または断片の部分はヒト抗体に結合する、前記ポリペプチド。
  17. 請求項1〜4のいずれかに記載の単離核酸分子によりコードされるポリペプチドに選択的に結合する、単離結合ポリペプチド。
  18. 請求項17に記載の単離結合ポリペプチドであって、該単離結合ポリペプチドが、配列番号2に記載のアミノ酸の配列を有するポリペプチドと結合する、前記単離結合ポリペプチド。
  19. 請求項18に記載の単離結合ポリペプチドであって、単離結合ポリペプチドが、Fab断片、F(ab)断片またはCDR3領域を含む断片からなる群から選択される抗体または抗体断片である、前記単離結合ポリペプチド。
  20. 対象中のMIVR−1発現レベルを決定するために対象からのテスト試料中のMIVR−1の発現を測定することを含む、対象中のMIVR−1発現レベルを決定するための方法。
  21. テスト試料中の測定したMIVR−1発現が、既知の発現レベルを含む対照中のMIVR−1発現と比較される、請求項20に記載の方法。
  22. MIVR−1の発現が、MIVR−1mRNAの発現である、請求項20に記載の方法。
  23. MIVR−1の発現が、MIVR−1ポリペプチドの発現である、請求項20に記載の方法。
  24. テスト試料が組織である、請求項20に記載の方法。
  25. テスト試料が生物的液体である、請求項20に記載の方法。
  26. MIVR−1mRNAの発現が、PCRを用いて測定される、請求項22に記載の方法。
  27. MIVR−1mRNAの発現が、ノーザンブロッティングを用いて測定される、請求項22に記載の方法。
  28. MIVR−1ポリペプチドの発現が、MIVR−1に対するモノクローナル抗体を用いて測定される、請求項23に記載の方法。
  29. MIVR−1ポリペプチドの発現が、MIVR−1に対するポリクローナル抗血清を用いて測定される、請求項23に記載の方法。
  30. MIVR−1の発現が、MIVR−1の心臓細胞の抗アポトーシス活性を用いて測定される、請求項23に記載の方法。
  31. 分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性の調節において有用な剤を認知する方法であって、
    (a)候補剤と心臓細胞の抗アポトーシス活性を有する分子とを接触させること、
    (b)前記分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性を測定すること、および
    (c)前記分子の測定した心臓細胞の抗アポトーシス活性を対照と比較し、候補剤が前記分子の心臓細胞の抗アポトーシス活性を調節するかを決定すること
    を含み、前記分子はMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される核酸分子またはそれらの発現産物である、前記方法。
  32. 核酸分子またはその発現産物の正常でない発現により特徴づけられる状態を診断する方法であって、該方法が、
    a)対象からの生物的試料を、前記核酸分子、その発現産物、またはその発現産物の断片に特異的に結合する剤を接触させること、および
    b)前記核酸分子、その発現産物の発現が正常でなく、正常でない発現が状態の診断である場合、結合した剤の量を測定することおよびそれより測定すること
    を含み、前記核酸分子はMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される少なくとも1つの核酸分子である、前記方法。
  33. 核酸分子が、少なくとも2つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
  34. 核酸分子が、少なくとも3つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
  35. 核酸分子が、少なくとも4つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
  36. 核酸分子が、少なくとも5つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
  37. 状態が、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される心血管状態である、請求項32に記載の方法。
  38. 状態が、心臓肥大である、請求項32に記載の方法。
  39. 核酸分子またはその発現産物の正常でない発現によって特徴づけられる対象中の血管の状態の退行、進行または発症を決定する方法であって、対象中の血管の状態の退行、進行または発症の決定としてパラメーターのために、
    (i)MIVR−1、IEX−1、BTG−2、TIS−11dおよびVDUP−1からなる群から選択される核酸分子
    (ii)該核酸分子によりコードされるポリペプチド
    (iii)該ポリペプチド由来のペプチド、および
    (iv)該ポリペプチドまたは該ペプチドに選択的に結合する抗体
    からなる群から選択される患者からの試料をモニターすることを含む、前記方法。
  40. 試料が、生物的液体または組織である、請求項39に記載の方法。
  41. モニタリングの工程が、試料と
    (a)(i)の核酸分子とストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズする単離核酸分子、
    (b)(ii)のポリペプチドまたは(iii)のペプチドと選択的に結合する抗体、および
    (c)(iv)の抗体に結合するポリペプチドまたはペプチド
    からなる群から選択される検出剤とを接触させることを含む、請求項39に記載の方法。
  42. 抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは核酸が、放射能活性標識または酵素で標識される、請求項41に記載の方法。
  43. ペプチドに関して試料をアッセイすることを含む、請求項39に記載の方法。
  44. 請求項1に記載の単離核酸またはその発現産物と選択的に結合する剤、および
    請求項1に記載の単離核酸またはその発現産物と、剤の結合の測定値を比較するための対照
    を含むパッケージを含むキット。
  45. 対照が、測定値と比較するための予測値である、請求項44に記載のキット。
  46. 対照が、請求項1に記載の核酸の発現産物のエピトープを含む、請求項44に記載のキット。
  47. IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子またはその発現産物と選択的に結合する第二の剤、および
    該核酸分子またはその発現産物との第二の剤の結合の測定値と比較するための対照
    をさらに含む、請求項44に記載のキット。
  48. 心血管状態を処置するための方法であって、
    心血管状態を処置するのに有効な量で、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子の発現を調節する剤を、このような処置を必要とする対象に投与すること
    を含む、前記方法。
  49. 抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、繊維素溶解剤、脂質減少剤、直接トロンビン阻害剤、グリコプロテインIIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子と結合し、白血球の該分子に付着する能力を阻害する剤、カルシウムチャネルブロッカー、ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、またはアンギオテンシン系阻害剤からなる群から選択される剤を共投与することをさらに含む、請求項48に記載の方法。
  50. 対象中の心臓細胞のアポトーシス性細胞死を処置する方法であって、
    対象中の心臓細胞のアポトーシス性細胞死を阻害するのに有効な量で、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子の発現を調節する剤を、このような処置を必要とする対象に投与すること
    を含む、前記方法。
  51. 対象が、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される状態を有する、請求項50に記載の方法。
  52. 細胞のアポトーシス性細胞死を阻害する方法であって、
    細胞のアポトーシス性細胞死を阻害するのに有効な量で、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子と、該分子を細胞に入れることを可能にする状態下の細胞とを接触させること
    を含む、前記方法。
  53. 細胞が、心筋細胞および血管内皮細胞からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
  54. 対象中の血管内皮細胞の増大したアポトーシス性細胞死によってもたらされる状態を処置する方法であって、
    血管内皮細胞の増大したアポトーシス性細胞死を阻害するのに有効な量で、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子をこのような処置を必要とする対象に投与すること
    を含む、前記方法。
  55. 心臓肥大を処置するための方法であって、
    対象中の心臓肥大を処置するのに有効な量で、心臓細胞死を増大する剤をこのような処置を必要とする対象に投与することを含み、
    心臓細胞死を増大する剤が、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される核酸分子またはその発現産物の阻害剤である、前記方法。
  56. 対象中で発生する心血管状態の危険を低減するための、対象を処置する方法であって、
    MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子の減少したレベルを発現することが知られている対象に、将来の心血管障害を発生する対象の危険を下げるのに有効な量で、心血管障害の危険を低減するための剤を投与することを含み、
    剤が、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、繊維素溶解剤、脂質減少剤、直接トロンビン阻害剤、グリコプロテインIIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子と結合し、白血球の該分子に付着する能力を阻害する剤、カルシウムチャネルブロッカー、ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、またはアンギオテンシン系阻害剤、またはMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される分子の発現を調節する剤
    である、前記方法。
  57. 心血管状態の処置に有用な候補剤を認知する方法であって、候補剤が存在しないで、核酸分子のセットの第一の発現量を可能にする条件下での心臓細胞または組織において、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸分子の前記セットの発現を決定すること、
    心臓細胞または組織を前記候補剤と接触させること、および
    核酸分子の前記セットのテスト発現量を検出することであって、前記候補剤の存在下での核酸分子のセットのテスト発現量の前記の発現量に対する増加が、該候補剤が心血管状態の処置に有用であることを示す、前記検出すること、
    を含む、前記方法。
  58. 心血管状態が、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
  59. 核酸分子のセットが、少なくとも2つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
  60. 核酸分子のセットが、少なくとも3つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
  61. 核酸分子のセットが、少なくとも4つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
  62. 核酸分子のセットが、少なくとも5つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
  63. 心臓肥大の処置に有用な候補剤を認知する方法であって、
    候補剤が存在しないで、核酸分子のセットの最初の発現量を可能にする条件下での心臓細胞または組織において、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸分子のセットの発現を決定すること、
    心臓細胞または組織を候補剤と接触させること、および
    核酸分子のセットのテスト発現量を検出することであって、前記候補剤の存在下での核酸分子のセットのテスト発現量の前記の発現量に対する減少が、前記候補剤が心臓肥大の処置に有用であることを示すこと、前記検出する
    を含む、前記方法。
  64. 核酸分子のセットが、少なくとも2つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
  65. 核酸分子のセットが、少なくとも3つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
  66. 核酸分子のセットが、少なくとも4つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
  67. 核酸分子のセットが、少なくとも5つの核酸分子で、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
  68. 心血管状態を処置するのに薬学的に有効な量の、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子、またはその発現産物を含む剤、および
    薬学的に許容し得る担体
    を含む、医薬組成物。
  69. 剤が、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子の発現産物である、請求項68に記載の医薬組成物。
  70. 心血管状態が、心筋梗塞、卒中、動脈硬化および心不全からなる群から選択される、請求項68に記載の医薬組成物。
  71. 心臓肥大を処置するのに薬学的に有効な量の、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される単離核酸分子の阻害剤またはその発現産物である、心臓細胞死を増大する剤、および
    薬学的に許容し得る担体
    を含む、医薬組成物。
  72. 実質的に核酸分子のセット、その発現産物またはその断片からなり、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択されるそれぞれの核酸分子が固相基質に固定される、固相核酸分子アレイ。
  73. さらに少なくとも1つの対照核酸分子を含む、請求項72に記載の固相核酸分子アレイ。
  74. 核酸分子のセットが、MIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、少なくとも1つの核酸分子を含む、請求項72に記載の固相核酸分子アレイ。
  75. 核酸分子のセットが、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、少なくとも2つの核酸分子を含む、請求項72に記載の固相核酸分子アレイ。
  76. 核酸分子のセットが、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、少なくとも3つの核酸分子を含む、請求項72に記載の固相核酸分子アレイ。
  77. 核酸分子のセットが、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、少なくとも4つの核酸分子を含む、請求項72に記載の固相核酸分子アレイ。
  78. 核酸分子のセットが、それぞれMIVR−1、IEX−1、VDUP−1、BTG−2およびTIS−11dからなる群から選択される、少なくとも5つの核酸分子を含む、請求項72に記載の固相核酸分子アレイ。
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