JP2004506086A - インフルエンザ菌感染症の予防用ワクチンとしてのインフルエンザ菌リポ多糖内部コアオリゴ糖エピトープ - Google Patents

インフルエンザ菌感染症の予防用ワクチンとしてのインフルエンザ菌リポ多糖内部コアオリゴ糖エピトープ Download PDF

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Abstract

本発明は、可変外部コアオリゴ糖鎖伸長部を実質的に含まない、リポ多糖の保存されたトリヘプトシル内部コア部分を含んでなるリポ多糖部分、およびそれから得られる、インフルエンザ菌株に対して交差反応性を有するワクチンに関する。本発明はまた、上記の部分を得るのに有用な、インフルエンザ菌におけるリポ多糖(LPS)発現のための生合成機構における所定の突然変異に関する。本発明はまた、広範な病原性インフルエンザ菌株に対して異種免疫応答を誘導するため、このようにして得られた変異株由来のLPSの結合体を使用することに関する。より具体的には、本発明は、インフルエンザ菌のコアリポ多糖を含んでなる、細菌感染の予防用ワクチンに関する。リポ多糖部分は、可変外部コアオリゴ糖鎖伸長部を実質的に含まない、リポ多糖の保存されたトリヘプトシル内部コア部分を含んでなる。

Description

【0001】
【発明の分野】
本発明は、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)におけるリポ多糖(LPS)の発現の生合成機構における所定の突然変異に関する。本発明はまた、広範な病原性インフルエンザ菌株に対して異種免疫応答を誘導するため、このようにして得られた変異株由来のLPS結合体を使用することに関する。より具体的には、本発明は、インフルエンザ菌のコアリポ多糖を含んでなる、細菌感染の予防用ワクチンに関する。
【0002】
【発明の背景】
インフルエンザ菌は世界的に主要な病原体である。6種類の莢膜血清型(「a」〜「f」)と不確定数の無莢膜(非定型 (non−typeable))株のインフルエンザ菌が認められている。b型莢膜株は髄膜炎や肺炎などの侵襲性疾患に関与し、一方で、非定型インフルエンザ菌(NTHi)は小児の中耳炎や成人の気道感染症の主たる原因となる。中耳炎は、米国の小児科外来において最も頻度の高い一般的な小児疾患である(Stool et al., Pediatr. Infect. Dis. Suppl. 8: S11−S14, 1989)。
【0003】
NTHi疾患のワクチンの開発は、防御免疫を付与する抗原が分かっていないため、困難であるとされている。NTHiワクチンの開発の努力においては、外膜タンパク質や線毛(pili or fimbria)などの細胞表面抗原に焦点が当てられてきた(Kyd et al., Infect. Immun., 63:2931−2940, 1995; Deich et al., Vaccine Res., 231−39, 1995)。
【0004】
分子遺伝学、分子構造解析および免疫化学の近年の進歩により有力な手段がもたらされ、これにより候補ワクチン抗原としての炭水化物構造の同定が可能となった。
【0005】
グラム陰性菌は、タンパク質、リポタンパク質、リン脂質および糖脂質などの成分からなる外膜を有する。糖脂質は主として内毒素であるリポ多糖(LPS)からなっている。LPSは、a)リン酸基および長鎖脂肪酸でエステル結合およびアミド結合により置換されたグルコサミン二糖からなるリピドA部分;b)八炭糖、Kdo(ケトデオキシオクトン酸)によってリピドAに結合し、さらにはヘプトース、グルコース、ガラクトースおよびN−アセチルグルコサミンからなるコア多糖;および、場合により、c)細菌の属および種によってマンノース、ガラクトース、D−グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、L−ラムノース、およびジデオキシヘキソース(アベクオース、コリトース、チベロース、パラトース、トレハロース)を含んでいてもよいオリゴ糖繰り返し単位からなるO−特有側鎖、からなる分子である。O−側鎖の繰り返しを有しないLPSは、短鎖リポ多糖またはリポオリゴ糖(LOS)と呼ばれることがある。本明細書では、リポ多糖(またはLPS)との用語には、短鎖リポ多糖およびリポオリゴ糖(LOS)が含まれる。
【0006】
グラム陰性菌の主要抗原決定基は、LPSの複雑な炭水化物構造に帰するものと考えられている。主として1以上の糖組成、オリゴ糖の配列、オリゴ糖の単量体単位間の結合およびオリゴ糖自体の間の結合、ならびにオリゴ糖(特に末端オリゴ糖)の置換/修飾、における多様性のために、これらの炭水化物構造は、グラム陰性菌の同属異種間であっても著しく異なる。このため、インフルエンザ菌に対する(特にNTHiに対する)広範な効果を有するワクチンの開発は成功に至っていない。
【0007】
LPSは、抗原決定基(「エピトープ」)がその炭水化物構造に帰するために、ワクチン免疫原としての可能性を有する細菌成分である。しかし、LPSの化学的性質により、LPSはワクチン製剤において使用しがたいものと考えられる。すなわち、LPSでの能動免疫は、数種の動物において、リピドA部分に内在する毒性のために許容されないものである。血流中のLPSのリピドAによって(直接的または間接的に)誘発される病態生理作用としては、発熱、白血球減少、白血球増加、シュワルツマン反応、汎発性血管内凝固症候群、流産、および多用量ではショックや死が挙げられる。
【0008】
莢膜多糖類を含んでなるワクチンは、同種被包細菌によって引き起こされるヒト疾病の防止に効果的であることが確認されている。これらの炭水化物抗原は、T細胞依存性の応答がないために、ヒトの免疫原としては不十分である場合が多い。しかし、この特異的な多糖抗原を好適なタンパク質担体に結合させると、この多糖単独には応答しない患者においても炭水化物抗原の免疫原性を著しく向上させることができる。b型インフルエンザ菌(Hib)の特異的莢膜多糖に基づく糖結合ワクチン、例えばProHiBit(商標)およびActHib(商標)は、幼児の侵襲性Hib疾患を良好に抑制できることがすでに分かっている。莢膜多糖−タンパク質結合Hibワクチンは、b型莢膜を有するインフルエンザ菌株によって引き起こされる感染に対して防御するだけなので、インフルエンザ菌の無莢膜(非定型)株によって引き起こされる疾病(すなわちNTHiによって引き起こされる疾病)には防御を示さない。
【0009】
リポ多糖(LPS)は主要なNTHi細胞表面抗原である。インフルエンザ菌のLPSは、リピドAとオリゴ糖(OS)成分を含むことが分かっているに過ぎない。上述のように、LPSのリピドA成分は有毒であることから、免疫担体と結合させる前に解毒しなければならない。
【0010】
Barenkampら(Pediatr. Infect. Dis. J., 9:333−339, 1990)によれば、LOSがNTHiに対する殺菌抗体の産生を刺激することが実証されている。McGeheeら(Am. Journal Respir. Cell Biol., 1:201−210, 1989)によれば、NTHi由来のLOSに対するモノクローナル抗体でマウスを受動免疫したところ、NTHiの肺クリアランスが増強されることが示されている。
【0011】
Greenら(Vaccines, 94:125−129, 1994)によれば、NTHiオリゴ糖と無毒の変異型ジフテリアタンパク質CRM.sub.197との結合体を含んでなるNTHiワクチンが開示されている。LOSからは、酸で処理した後、生じたOSをアジピン酸ヒドラジド(ADH)で誘導体化してCRM.sub.197と結合することでリピドA部分が除去されている。LOSがNTHiに対する殺菌抗体の産生を刺激するというBarenkampらによる知見とは異なり、Greenらによる前記結合体は、マウスに注射しても免疫原性が低いものと判定された。さらにまた、これらの結合体はNTHiに対する殺菌抗体を誘導することはなかった。
【0012】
Guらの文献(米国特許第6,207,157号明細書)は、エステル結合した脂肪酸を除去することによる、単離されたNTHiLOSの解毒に関するものであって、これにより、前記NTHiLOSはワクチン製剤に好適なものとなりうるというものである。しかし、Guらの文献には、NTHiLOSに対するその他の修飾、またはその望ましい化学属性については記載されていない。
【0013】
インフルエンザ菌によって引き起こされる感染に対して広範な防御をもたらすのに使用可能なワクチンは、現在のところ存在しない。従って、インフルエンザ菌、特にNTHiに対して広範な効果を有するワクチンが必要とされている。
【0014】
ワクチン開発を目的として抗原を用いるためには、4つの必須基準を満たさなければならない。つまり、免疫原性エピトープは、
1.遺伝学的に安定であり、
2.複数の種にわたり、総ての臨床上関連のある株において保存されており、
3.(in vitroおよびin vivoにおいて)宿主の免疫機構に作用することができ、そして、
4.in vivoで防御抗体を誘導可能である
必要がある。
【0015】
これらの基準を満たすインフルエンザ菌、特にNTHiのLPS炭水化物エピトープを同定する必要がある。
【0016】
【発明の概要】
本発明は、インフルエンザ菌リポ多糖(LPS)由来のB細胞活性化分子をもたらす免疫に関し、これらの分子はリポ多糖の保存された内部コアオリゴ糖部分の1以上のエピトープを含んでなる。本発明は、病原体として単離されているインフルエンザ菌株によって発現されるLPSの代表である、これらエピトープを同定および特性決定する方法に関する。本発明はまた、これらエピトープを、合成および遺伝子操作技術の双方によって得る方法に関する。さらに、本発明は、これらエピトープを好適な担体とともに含んでなり、所望によりリポソーム製剤中に含んでなる、分子結合体を製造する方法に関する。
【0017】
一つの態様によれば、本発明により、可変外部コアオリゴ糖鎖伸長部を実質的に含まない、リポ多糖の保存されたトリヘプトシル内部コア部分を含んでなるリポ多糖部分が提供される。
【0018】
他の態様によれば、本発明により、図Aの構造を有するリポ多糖のトリヘプトシル内部コア部分を含んでなるリポ多糖部分が提供される。
【0019】
他の態様によれば、本発明により、上記のリポ多糖部分を含んでなる、動物宿主においてインフルエンザ菌により引き起こされる疾病に対する防御を与えるための免疫原組成物が提供される。
【0020】
他の態様によれば、本発明により、上記のリポ多糖を含んでなるインフルエンザ菌株を得るための、インフルエンザ菌においてリポ多糖を産生する生合成経路中の少なくとも一つの遺伝子の使用が提供される。
【0021】
他の態様によれば、本発明により、インフルエンザ菌に対する機能性交差反応性抗体を誘導するための、上記のリポ多糖部分を含んでなる少なくとも一つの免疫原性エピトープの使用が提供される。
【0022】
他の態様によれば、本発明により、インフルエンザ菌との交差反応性を有し、かつ上記のリポ多糖部分によって誘導される機能性抗体が提供される。
【0023】
他の態様によれば、本発明により、インフルエンザ菌に対する機能性交差反応性抗体を製造する方法であって、(a)上記のリポ多糖部分に対する抗体を作製し、(b)複数のインフルエンザ菌株に対して前記抗体を試験し、そして(c)交差反応性を有する抗体を選択することを含んでなる方法が提供される。
【0024】
他の態様によれば、本発明により、インフルエンザ菌の感染に起因する疾病に対して宿主を免疫化する方法であって、免疫上有効量の上記免疫原組成物を宿主に投与することを含んでなる方法が提供される。
【0025】
【発明の具体的説明】
リポ多糖(LPS)は、インフルエンザ菌の必須かつ特徴的な表面露出抗原である(上述のように、本明細書においてリポ多糖およびLPSは短鎖リポ多糖およびリポオリゴ糖(LOS)を含む)。インフルエンザ菌株は低分子量LPSの不均一な集団を発現し、これにより様々なオリゴ糖エピトープ間で広範な抗原多様性を示しうる。本明細書中に記載されるインフルエンザ菌のLPS炭水化物構造により、ヒト免疫系に適切な形態で、例えばタンパク質結合体またはリポソーム製剤として供された場合における防御抗原の供給源が提供される。ある種のNTHiLPSに対する抗体は、in vitroにおいて殺菌活性を示している(Sun et al. Vaccine 18:1264−1272)。最近の研究(Gu et al., 米国特許第6,207,157号明細書)では、動物モデルにおいて、LPSに基づく結合体での免疫化により、同種株に起因するNTHi誘導性中耳炎の発病率を引き下げることができることが示されている。本発明者らの研究では、驚くべきことに、遺伝学的かつ生理学的に安定であり、臨床上関連のある一定範囲の株にわたって保存されており、しかも宿主のクリアランス機構に作用しうるオリゴ糖エピトープを有する表面発現性の炭水化物抗原が確認されたことから、LPSはワクチン候補として有用であることが分かった。
【0026】
インフルエンザLPS分子の炭水化物領域は、宿主免疫応答により認識される標的となる。特定のオリゴ糖エピトープの発現は、インフルエンザ菌感染の病因に関与することが分かっている。インフルエンザ菌LPSの生物学的性質および細菌毒性におけるその役割を理解するには、構造の決定が重要である。インフルエンザ菌LPSは、可変オリゴ糖部分と膜固定リピドA成分からなる異種分子混合物を含んでなる(Zamze, S.E., and Moxon, E.R. (1987) J. Gen. Microbiol. 133, 1433−1451)。本明細書に記載の実験をもとに、リン酸化されたケトデオキシオクトン酸残基を介してリピドA成分と結合している保存されたトリヘプトシル内部コア部分からなるインフルエンザ菌LPSの構造モデルを作成した。本発明者らがこれまでに検討した総ての株において、このトリヘプトシル部分は以下の構造要素:
L−(−D−Hep−(1(2)−L−(−D−Hep−[(−D−Glc−(1(4)]−(1(3)−L−(−D−Hep−(1(5)−Kdo
から構成されていた。さらに、本発明者らがこれまでに検討した総ての株では、この1,2−結合したヘプトース残基(HepII)は、6位においてホスホエタノールアミン部分で置換されている。
【0027】
内部コア領域内のヘプトース残基の各々は、ヘキソース含有オリゴ糖鎖の伸長または非炭水化物置換基の結合のための部位となりうる。公表されているデータ(H. Masoud et al., Biochem. 36: 2091−2103, 1997; Risberg et al−, Eur. J. Biochem. 261: 171−180, 1999)によれば、この保存された内部コア部分の末端のヘプトース残基(HepIII)がO−2位で(−D−Glc残基または(−D−Gal残基により置換されうることが示されている。また、HepIIも置換されることがあり、特に、その3位において(−D−グルコース残基または置換された(−D−グルコース残基によって置換されることがある。隣接ヘプトース残基(HepI)と1,4−結合している(−D−グルコース残基は、それ自体、(−D−グルコース、(−D−ガラクトース、ヘプトース(例えば、L−グリセロ−D−マンノ−ヘプトースおよびD−グリセロ−D−マンノ−ヘプトースなど)またはこれらのオリゴ糖により、さらに置換されることがある。これらの糖残基の他、オリゴ糖鎖伸長部は(−D−ガラクトース、(−D−グルコサミン、(−D−ガラクトサミン、およびs−N−アセチルノイライミン酸(acetlyneuraminic acid)(シアル酸)を含むこともある。
【0028】
置換度およびトリヘプトシル部分からの鎖の伸長は、株内また株間で異なる(Masoud, H., Moxon, E.R., Martin, A., Krajcarski,D., and Richards, J.C. (1996) Biochem. 36, 2091−2103; Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171− 180)。遊離リン酸基(P)、ホスホエタノールアミン(PEtn)、ピロホスホエタノールアミン(PPEtn)、およびホスホコリン(PCho)などのリン酸基含有置換基は、これらの分子の構造多様性に関与している。さらにまた、エステル置換基(例えば、O−アセチルおよびO−グリシル)もLPSの構造多様性に関与している。その他、シアル酸残基の付加など、LPSの他の修飾も可能である。シアリル化オリゴ糖は哺乳類組織で一般に見られ、この修飾はヒト組織構造の模倣性を高めるものと考えられている。
【0029】
b型RM7004株の所定の変異体(Schweda, E.K.M., Hegedus, O.E., Borrelli, S., Lindberg, A.A., Weiser, J.W., Maskell, D.J., and Moxon, E.R. (1993) Carbohydr. Res. 246, 319−330; Schweda, E.K.H., Jansson, P.−E., Moxon, E.R., and Lindberg, A.A. (1995) Carbohydr. Res. 272, 213−224)では、b型RM118株由来の形質転換変異体(Risberg, A−., Schweda, E.K.H., and Jansson, P.−E. (1997) Eur. J. Biochem. 243, 701−707; Risberg, A., Alvelius, G., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 265, 1067−1074), およびb型A2株のトランスポゾン変異体(Phillips, N.J., McLaughlin, R., Miller, T.J., Apicella, M.A., and Gibson, B.W. (1996) Biochem. 35, 5937−5947) 、に由来するLPSの詳細な構造研究により、インフルエンザ菌LPSに共通するヘプトース含有三糖内部コア部分が存在するというさらなる証拠が提示されている。本発明者ら(Risberg et al., Eur. J. Biochem. 261:171−180, 1999)は、インフルエンザ菌株RM118(Risberg, A.,Masoud,.H.,.Martin,..’A.’;..Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261,171−180)、完全なゲノム配列が決定されている株(Rd)(Fleischmann, R.D., Adams,. M.D., White, O., Clayton, R.A., Kirkness, E.F., Kerlavage, A.R., Butt, C.J, −Tomb, J−F., Dougherty, B.A., Merrick, J.M., McKenney, K., Sutton, G., FitzHugh, W., Fields, C., Gocayne, J.D., Scott, J.,Shirley, R., Liu, L− I., Glodek, A., Kelley, J.M., Weidman, J.F., Phillips, C.A., Sprigs, T., Hedblom, E., Cotton, M.D., Utterback, T.R., Hanna, M.C., Nguyen, D.T., Saudek, D.M., Brandon, R.C., Fine, L.D., Fritchman, J.L., Fuhrmann, J.L., Geoghagen, N.S.M., Gnehm, C.L., McDonald, L.A., Small, K.V., Fraser, C.M., Smith, H.O., and Venter, J.G. (1995) Science 269, 496−512)に由来する、グロボテトラオース((−D−GalNAc−(1(3)−(−D−Gal−(1(4)−(−D−Gal−(1(4)−(−D−Glc)含有LPSの構造を報告している。この研究では、3つの主要なLPSグリコフォーム集団が同定され、これらは総てKdo部分と結合しているHep(HepI)のPCho(6)−(−D−Glc基を含んでいたが、内部コア成分の末端Hep(HepIII)のオリゴ糖鎖の長さは異なっていた。組立の完全なグロボテトラオース側鎖を発現するLPSのグリコフォームの他、グロボシド((−D−Gal−(1(4)−(−D−Gal−(1(4)−(−D−Glc)およびラクトース((−D−Gal−(1(4)−(−D−Glc)を含む、順次末端切断されたグリコフォームも同定された(Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180)。
【0030】
インフルエンザ菌株Rdの完全ゲノム配列が得られたことにより、代表的なHi株において複数のLPS生合成遺伝子座に関する包括的な研究が促された。
【0031】
非定型株はFinnish Otitis Media Cohort Studyの一環としてEskola教授から入手したものであり、主として小児の内耳から得た単離物である。これらの株については、D.W. Hood et al., Mol. Microbiol. 33: 679−792, 1999に詳しく記載されている。ボストンのRichard Gokdsteinからも102のNTHi中耳炎株を送ってもらい、35年にわたって世界中から入手した600のインフルエンザ菌莢膜株およびNTHi株のリボタイピング分析による多様性研究に含めた。リボタイピングの結果から樹状系統図を作成したところ、NTHi中耳炎単離物は描かれた分枝部のほとんど総てに存在することが分かった。樹状系統図の分枝部から25の代表的な系統を選んだところ、インフルエンザ菌の種に関して知られている多様性を表していた。この25系統には、関連の深い単離物の多様性を評価するために同じクラスターから選択したいくつかのものも含まれる。
【0032】
推定されている多くの遺伝子機能は、適当な変異株からのLPS構造解析により、LPSの合成における特定の工程に関連づけられている(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin,A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)。グロボテトラオース構造の発現の遺伝学的基礎はこれまでには報告されていない。
【0033】
実施例1に記載のように、本発明者らは、構造フィンガープリント法を用い、インフルエンザ菌株RM118のLPS生合成遺伝子の一連の規定された変異体から得られたLPSの構造を決定し、比較した(RM118株についての説明はRisberg et al., 1999, 上記を参照)。特定の遺伝子を不活性化した株に由来するLPSを調べることにより、本発明者らは、LPS分子の内部コア領域の生合成に関与するグリコシルトランスフェラーゼの同定につながる決定的な証拠を提示する。本発明者らはまた、さらに後述するように、シアリル化ラクトース側鎖の構築に関与する遺伝子も同定した。さらにまた、それぞれグロボトリオース構造およびグロボテトラオース構造を与えるための(−2,3−結合Neu5Ac(lic3A)、(−1,4−結合Gal(lgtC)および(−1,3−結合GalNAc(lgtD)の付加に関与する遺伝子のトランスフェラーゼ機能を、合成アクセプターを用いた酵素アッセイにより明確に決定した。これはインフルエンザ菌株のLPSオリゴ糖部分の生合成に関する遺伝的青写真を特定するはじめての研究である。
【0034】
本発明者らによるインフルエンザ菌LPS内部コアの研究では、リピドAに付加されている最初の糖であるKdoを除去する試みは、おそらくはKdoが完全なリピドA合成に必要であって、細胞の生存に不可欠なものと思われることから、ことごとく失敗した。kdtAのKdoトランスフェラーゼ機能は、大腸菌(E. coli)での相補実験により実証されている(White, K.A., and Raetz, C.R.H. (1998) FASEB J. 12, L44)。本発明者らの研究では、opsX、tfaFおよびorfHがKdoにそれぞれ第一、第二および第三のヘプトース(HepI、HepIIおよびHepIII)を付加して内部コアを形成する酵素をコードする遺伝子であることが示される。opsXは腸内細菌のヘプトシルトランスフェラーゼとある程度の相同性を持っており(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter. J.C., Richards, J.C., and Moxon. E.R. (1996) Mol.Microbiol. 22, 951−965)、Kdoに対するHepIの付加を担う遺伝子に当たる。rfaF変異体は機能的opsX遺伝子を有し、そのLPSはKdo−リピドAに結合したHepを一つだけ有する。RM118(Rd)のrfaF遺伝子は、他のヘプトシルトランスフェラーゼと相同性を有する(Allen, A.G., Isobe, T., and Maskell, D.J.(1998) J. Bacteriol. 180, 35−40)。機能的opsXおよびrfaF遺伝子を有するRM118orfH由来のLPSは2つのヘプトース残基を含んだ構造(構造1および2)を含んでいる。RM118opsX、rfaFおよびorfH変異体由来のLPSの構造解析に関するデータは、b型株RM153(Eagan株としても知られる)およびRM7004(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter,J.C.,Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)における同じ突然変異で得られたものと一致する。b型株では、opsX、rfaFおよびorfHはそれぞれHepI、HepIIおよびHepIIIトランスフェラーゼをコードする遺伝子であることが提案される。
【0035】
本発明者らは、インフルエンザ菌のLPSは上記のトリヘプトシル内部コア部分を有し、その各ヘプトース残基がオリゴ糖鎖の伸長のためのポイントとなることを示した(Masoud, H., Moxon, E.R., Martin, A., Krajcarski, D., and Richards, J.C. (1996) Biochem. 36, 2091−2103; Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180)。lpsA、lic2A、lic3A、lgtC、lgtDおよびlgtFの各遺伝子は、オリゴ糖の伸長に関与するグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする。
【0036】
これらの結果は、lpsA遺伝子の産物がHepIIIからのオリゴ糖鎖伸長の制御において一定の役割を果たしていることを示す。lpsA遺伝子の突然変異により、HepIIIのオリゴ糖鎖伸長部を欠いている末端切断型LPSがもたらされる。RM118lpsAに由来するO−脱アシル化LPSのESI−MS分析では、主なLPS種(構造2)としての単一のヘキソース残基を含むPcho含有グリコフォームを示し、これにより、HepIは、HepIIIからのヘキソース伸長がなくとも置換可能であることが確認された。機能的lpsA遺伝子を含むlic2A、lgcCおよびlgcD変異体は、(−D−Glcp残基を1,2−結合で付加してHepIIIからの鎖の伸長を開始させることができる(表4)。lpsAは、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)のグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の相同体であり(Potter, M.D. and Lo, R.Y. (1995) FEMS Microbiol. Lett. 129, 75−81)、このタンパク質はそれぞれヘモフィルス属およびナイセリア属のLic2AおよびLgtBに分類されるガラクトシルトランスフェラーゼ群と相同性を有する。RM153株では、lpsA変異体由来のLPSが第三のヘプトースからの鎖の伸長を欠いていることも分かった(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)。さらに、本発明者らは、数種のNTHi株におけるLpsA変異体がHepIIIからの鎖の伸長を欠いていることを確認した。このように、LpsAはインフルエンザ菌LPSの生合成においてHepIIIに最初の糖を付加するためのトランスフェラーゼである。
【0037】
RM118lic2A変異体は主要なLPS種としてのPcho含有Hex2グリコフォーム(構造4)を示し、機能的lic2A遺伝子を含むRM118lgtCはHepIIIにラクトース側鎖を含むLPS(構造5)を合成する。このことは、HepIIIに結合している末端(−D−Glcp残基へ(−D−Galp単位を1,4結合で付加することに対するlic2A遺伝子の関与と一致する。b型株、RM153およびRM7004のlic2A相同体は、ジガラクトシド含有Pエピトープ(構造(−D−Gal−(1(4)−(−D−Gal−(1(4)−(−D−Glcを有するグロボシド三糖)の発現に関与することが示されている。このエピトープの相変異発現におけるlic2Aの役割が既に実証されている(High, N.J., Deadman, M.E., and−Moxon, E.R. (1993) Mol. Microbiol. 9,1275−1282)。他のデータバンクの配列との相同性比較によれば、Lic2Aの(−ガラクトシルトランスフェラーゼとしての機能が支持される。重要なことは、それがナイセリアのLgtBおよびLgtEタンパク質(いずれもガラクトシルトランスフェラーゼ)と有意な相同性を有するということである(Wakarshuk, W., Martin, A., Jennings, M.P., Moxon, E.R., and Richards, J.C. (1996) J.Biol. Chem.271, 19166−1917)。
【0038】
lgtCに変異を有するRM118株由来のLPSの構造解析により、この遺伝子の(−ガラクトシルトランスフェラーゼ機能を裏付ける(−D−Galの欠損が確認された。髄膜炎菌(meningitidis)におけるこの遺伝子の相同体が(−ガラクトシルトランスフェラーゼであることが実証されている(Gotschlich, E.C. (1994) J. Exp. Hed. 180, 2181−2190; White, K.A., and Raetz, C.R.H. (1998) FASEB J. 12, L44; Wakarchuk, W.W., Cunningham, A.M., Watson, D.C., and. Young, N.M. 1998, Role of paired basic residues in the expression of active recombinant galactosyltransferases from the bacterial pathogen Neisseria meningitidis, Protein Eng. 11: 295−302; Wakarchuk et al.1998, Protein Engineering)。インフルエンザ菌のlgtCは、ちょうどリーディングフレーム(44)の5’末端内に会合したテトラヌクレオチドリピート(5’−GACA−3’)を有することから、RM118LPSにおけるオリゴ糖の変異表現型に関与している。これに対応して、機能的lgtC遺伝子を含むlgtD変異体およびその親株は、ラクトースエピトープの末端(−D−Galに1,4結合で(−D−Galを付加することができる(構造6)。LgtCの機能は、組換え型LgtCタンパク質と合成FCHASE−Lacアクセプターを用いて(−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を実証することにより確認されている。その結果、lgtC遺伝子は、RM118 Hex4 LPSグリコフォーム(図6)の(−D−Gal−(1(4)−(−D−Gal合成の特異的(−ガラクトシルトランスフェラーゼをコードすることになる。
【0039】
インフルエンザ菌lgtD遺伝子は、2つのナイセリア遺伝子、lgtAおよびlgtDの相同体であり、これらのナイセリア遺伝子は淋菌(gonorrhoeae)LPSにそれぞれGlcNAcおよびGalNAcを付加する(Gotschlich, E.C. (1994) J. Exp. Med. 180, 2181−2190)。lgtA遺伝子産物は髄膜炎菌のグリコシルトランスフェラーゼであることが実証されている(Wakarchuk, W., Martin, A., Jennings, M.P., Moxon, E.R., and Richards, J.C. (1996) J. Biol. Chem. 271, 19166−1917)。ナイセリアのlgtAとlgtD遺伝子間には有意な相同性があり、RM118 HI1578はデータベースにおいて淋菌のlgtD遺伝子と最良の一致を示す。RM118およびRM118lgtD変異体の抽出物を用いた酵素アッセイでは、(−D−GalNAcトランスフェラーゼ活性の存在が確認された。機能的lgtDを含む親株RM118は完全なグロボテトラオース単位を合成することができ、このことは末端(−D−GalNAcの付加におけるその役割を示している。このlgtD遺伝子はこれまでにも研究されているが(6ではlgtAと呼ばれる)、b型株RM153およびRM7004に存在するということは見出されていない。これに対応して、RM153株によって合成されるLPSはGalNAc部分を含まない(Masoud, H., Moxon, E.R., Martin, A., Krajcarski, D., and Richars, J.C. (1996) Biochem. 36, 2091−2103)。多くのNTHi株はLgtD遺伝子を含むことが分かっており、これらの株のLPSオリゴ糖側鎖はGalNAc部分を含むことが分かっている。
【0040】
グロボテトラオース(lgtD)およびグロボシド(lgtC)オリゴ糖側鎖の末端残基の付加に関与する遺伝子によってコードされるグリコシルトランスフェラーゼ活性は適当な合成アクセプターを用いた酵素アッセイで確認することができたが、ラクトース部分の合成に関与する遺伝子(lic2AおよびlpsA)のトランスフェラーゼ活性をアッセイする実験は上手くいかなかったことは注目すべきことである。後者の二つの酵素は、アクセプター糖が内部コアヘ結合して、それにより単純な合成FCHASE−グリコシドアクセプターの認識を排除する必要がある、よりストリンジェントな特異性を有する可能性がある。
【0041】
RM118LPS生合成の研究に利用できる最初の遺伝子セットおよび変異株を特定しても、HepIへの(−D−Glc単位の付加を担う明らかな候補は得られなかった。他の生物のLPSにおいてヘプトース残基にヘキソース糖を付加する遺伝子との相同性の低い一致についても、Rd株ゲノム配列を検索することによりさらなる候補LPS遺伝子を調べた。検索配列は、ヘプトースへのヘキソース残基の付加に関与する遺伝子であるナイセリア属のrfaKおよびlgtF遺伝子(Kahler, C.M., Carlson, R.W., Rahman, M.M., Martin, L.E., and Stephens, D.S. (1996) J. Bacteriol. 178, 6677−6684)を含むものとした。RM118株でlgtF相同体が確認され、この遺伝子に変異を有する株由来のLPSの分析により、HepIからの鎖の伸長におけるLgtFの役割が示された。ESI−MSでは、HepIにおいてPcho(6)−(−D−Glcを欠き、トリヘプトシル内部コア部分のHepIIIからの鎖伸長を有するグリコフォームの混合物に相当する分子イオンが示された(図3)。
【0042】
lgtFおよびlpsA遺伝子はRM118LPSのヘプトース含有内部コア単位からのヘキソース伸長にとって重要なものであり、それぞれHepIおよびHepIIIへの最初のグリコースの付加を担うグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする。HepIおよびHepIIIからの鎖伸長のプロセスは、RM118株のLPSにおいて大きく独立したものであるようである。変異株RM118lpsAは、HepI由来の(−D−Glc部分を含むLPSを産生する。RM118lgtF株は、ラクトースおよびグロボテトラオース鎖を含むHepIIIからのオリゴ糖伸長を含む不均質なLPSを産生する。RM153株では、lpsAは明らかに第三のヘプトースから単一の伸長部としてガラクトースの付加を担う若干異なる役割を果たす(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A.,Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)。驚くべきことに、ある種の非定型株ではlpsAはO−2位の代わりにO−3位でグルコースまたはガラクトースのいずれかを付加しうることが判明した。
【0043】
インフルエンザ菌のLPS構造の不均質性は、部分的には、総ての分子が完全に合成されるわけではないという複雑な構造の生合成における固有の多様性によるものに違いない。しかし、認められた多様性の多くは、発現が変動しうる(相変異)特定のLPS生合成遺伝子によるものであると思われる。野生型および変異型RM118株由来のLPSの構造解析により、本発明者らは、はじめてインフルエンザ菌LPSジガラクトシドの重要な相変異型エピトープの合成に関与する遺伝子を確認することができた。RM118株では、Lic2AがHepIIIからのオリゴ糖伸長部分としてのジガラクトシド((−D−Gal−(1(4)−(−D−Gal)へ隣接β−D−Galを、LgtCは末端(−D−Galを付加するが、b型RM153株ではこの同じエピトープが第二のヘプトースからの末端伸長として発現する(Masoud, H., Moxon, E.R., Martin, A., Krajcarski, D., and Richards, J.C. (1996) Biochem. 36, 2091−2103)。lic2AおよびlgtCはいずれも相変異性遺伝子であり、生物内および生物間で極めて変化に富んだエピトープを発現させる。ジガラクトシドエピトープは、本明細書に開示されるNTHi株の多くのLPSにおいて、また、ナイセリア属をはじめとする関連の細菌において発現する(Virji, M., Weiser, J.N., Lindberg, A.A., and Moxon, E.R. (1990) Microb. Pathogen. 9, 441−450)。このエピトープは、免疫優性である可能性があり、その存在は宿主構造の分子模倣の可能性を与え、実験系においてインフルエンザ菌の生存に影響を及ぼしうることから、病因論上興味深いことである(Weiser, J.N., and Pan, N. (1998) Mol. Microbiol. 30, 767−775; Hood, D.W., Deadman, M.E., Jennings, M.P., Bisceric, M., Fleischmann, R.D., Venter, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93, 11121−11125)。
【0044】
シアリル化されたオリゴ糖は哺乳類組織でよく見られることから、オリゴ糖のシアリル化はヒト組織構造の模倣性を高めるものと考えられている修飾の一つである。実施例1に記載のように、本発明者らは、NTHi375株、486株およびRD株においてシアリル化されたLPSを確認し、LPS合成におけるlic3Aの役割を解明した(D.W. Hood et al., Mol. Microbiol. 39:341−350, 2001)。種の多様性の代表的なものとして25株のNTHiを調べたところ、一つを除いて総てがシアリル化されたLPSオリゴ糖鎖伸長と確認された。NTHi486などのいくつかのNTHi株におけるlic3Aの突然変異は、正常なヒト血清の殺菌作用への耐性に大きな影響を持つことが実証されている。NTHi486とそのlic3A変異体に由来するLPS構造の比較からはシアリル化グリコフォーム(シアリル−ラクトース)が親株にしか存在しないことが明らかとなり、このことは、この株における血清耐性にとってのLic3Aの重要性を示している。インフルエンザ菌におけるLPSへの荷電シアル酸残基の付加は、LPSエピトープの抗原模倣を調節するものと思われる。
【0045】
LPS分子のオリゴ糖部分を構成する糖残基の順序および立体化学の他、P、PEtnおよびPChoなどの置換基の位置、種類および頻度は、LPS構造および生物学的機能に対して著しい影響を及ぼしうる。licl遺伝子座は、インフルエンザ菌LPS分子へのPChoの相変異付加に不可欠であることが示されている(Weiser, J.N., Shchepetov, M., and Chong, S.T.H, (1997) Infect. Immun. 65,943−950; Lysenko, E., Richards, J.C., Cox, A.D., Stewart, A., Martin, A., Kapoor, M., and Weiser, J,N. (2000)Mol. Microbiol. 35, 234−245)。PChoは先天的な体液性免疫に対するインフルエンザ菌の耐性に関与することが実証されている(Weiser, J.N., and Pan, N. (1998) Mol. Microbiol. 30, 767−775; Lysenko, E., Richards, J.C., Cox, A.D., Stewart, A., Martin, A.,Kapoor, M., and Weiser, J.N. (2000) Mol. Microbiol. 35, 234−245)。Kdoのリン酸化を担うKdoキナーゼをコードする遺伝子、kdkAが同定されている(White, K.A., Lin, S., Cotter, R.J., and Raetz, C.R.H. (1999) J. Biol. Chem. 274, 31391−31400)。この遺伝子は本発明者らがこれまでにorfZとして研究してきたものであり、変異させた場合には幼ラットの感染モデルにおいて細菌の生存率を変化させることが示されている(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A,. Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)。従って、唯一、その遺伝的制
御がまだ分かっていないコアオリゴ糖の残りの置換基が、HepII残基の6位と化学量論的に結合している、また、ときにはKdoのリン酸基と結合しているPEtn残基である。
【0046】
まとめると、インフルエンザ菌の主要なオリゴ糖鎖伸長部の完全な合成の遺伝的青写真が解明されたことになる。
【0047】
本発明者らは、インフルエンザ菌で知られている多様性を代表する25を超える株で検討を行った。本発明者らは、LPSのトリヘプトシル内部コア部分(標識HepI−HepIII)が試験した総ての株で保存されていることを確認した。このように確定されたことにより、NTHiなどのインフルエンザ菌に対する広範な防御をもたらすワクチンの製造に用いる、LPSの内部コア部分由来の好適なオリゴ糖の合成が可能となる。また、これによりワクチンの製造に用いるLPSの内部コア部分由来の好適なオリゴ糖を合成するインフルエンザ菌株の選択および改変が可能となる。
【0048】
表1は、同定されたインフルエンザ菌RdにおけるLPSの主要なグロボテトラオース含有オリゴ糖の生合成に関与する遺伝子をまとめたものである。本発明者らは、HepI(lgtF)およびHepIII(lpsA)からの鎖伸長を担う遺伝子を同定した。さらに、インフルエンザ菌のいくつかの株(例えば、EaganおよびRM7004)は、HepIIからの鎖伸長を示しうるLPSを合成する。本発明者らは、lic2遺伝子座にある遺伝子(orf3)がHepIIからの鎖伸長を開始させることを示した。これらの遺伝子の示差的な発現は、保存されたトリヘプトシル内部コア部分から発する多様な可変オリゴ糖エピトープをもたらしうる。これらの遺伝子の所定の突然変異によって、本発明者らは、特定のインフルエンザ菌株が表す複雑性の程度のみならず、結果として生じるLPSのコア領域で利用できるエピトープも制御することができる。このように、その生合成機構に所定の突然変異を有するインフルエンザ菌株のLPSにより、LPSを基にした広域ワクチンを開発するための好適な候補が提供された。本発明者らは、これまでにLPSの変異性を示してワクチン開発を阻んでいた非定型株を含む種々の病原インフルエンザ菌株に対して交差反応性をもたらすことから、この手法がワクチンの設計に有用であるものと判断した。
【0049】
LPSトリヘプトシル内部コアにおけるHepIIとHepIIIの置換パターンの多様性により、内部コアオリゴ糖エピトープの変化がもたらされる。以下は、本発明を説明するインフルエンザ菌のLPSの内部コア領域における有用な置換および修飾の例である。これらは限定しようとするものではなく、当業者ならば本発明の教示に従って他の置換や修飾も可能であることが分かるであろう。
【0050】
NTHi株コレクションからのLPSの遺伝解析および表現型解析に基づき、本発明者らははじめて、O−2の代わりにHepIIIのO−3から鎖が伸長しているもう一つの内部コア構造を有するLPSを発現するインフルエンザ菌株を確認した。相同なlpsA遺伝子は、株によって異なるが、HepIIIのO−2またはO−3位への(−D−Galまたは(−D−Glcの特異的付加を媒介する。さらに、HepIIIがオリゴ糖鎖によって置換されていないLPSを発現するインフルエンザ菌株もいくつかある。これらの発見は実施例2で詳細に示す。
【0051】
実施例2の結果により、NTHiに保存された内部コア成分(構造1)が存在することが確認される。これらの結果はまた、新たな構造モチーフ、すなわちHepIII上の別の置換部位の証拠をはじめて提供するものである。HepIIIはO−2位のヘキソース残基により置換されていることは早くに分かっており、NTHi、例えば285株および1158株の場合にそうであることが分かっている。他のNTHi株、例えば176株および486株では、この置換パターンは見られていない。これに対し、HepIIIのO−3位において置換が見られる。驚くべきことに、lpsA遺伝子は、いくつかの株では(−D−Glcを(RD株、図1)、あるいは他の株では(−D−Galを(b型、例えばEagan株)、1,2−結合で付加してHepIIIから鎖伸長を開始させうることが示された。本発明者らは、lpsAの相同体が、HepIIIへの(−D−Glc残基または(−D−Gal残基の1,3−結合での付加を担うことを見出した。
【0052】
内部コア領域の他の有用な修飾は、PChoエピトープに関するものである。これはインフルエンザ菌をはじめとするヒト気道に存在する病原体の表面構造の一般的な特徴である。インフルエンザ菌Rd株では、PChoはHepIの末端(−D−Glc残基のO−6と結合している(構造1;R=PCho(6)−(−D−Glc;図1)。他のインフルエンザ菌株、例えばb型株Eaganでは、PChoはHepIIIの末端(−D−Gal残基のO−6と結合している(構造1;R=PCho(6)−(−D−Gal)(E.K.H. Schweda et al. Eur. J. Biochem., 267 (2000) 3902−3913)。これらの置換パターンはいずれもNTHi株で見出されている。さらに、PChoは末端(−D−Glc残基でも見出された(構造1;R=PCho(6)−(−D−Glc)。インフルエンザ菌LPSにおけるPChoエピトープの発現および相変異には、lic1遺伝子座の4つの遺伝子が必要である(J.N. Weiser et al. Infec. Immun., 65 (1997) 943−950)。これらの遺伝子は、検討した総てのNTHi株で認められた。本発明者らは、licD遺伝子の多形性がPChoが付加される部位に影響することを突きとめた。
【0053】
トリヘプトシル内部コア部分に対する置換パターンの性質は、内部コアエピトープが免疫系に提示され、モノクローナル抗体によって認識される方法と関連がある。例えば、本発明者らは、ネズミIgG2aモノクローナル抗体(L6A9)がHepIIIのO−2に(−D−Gal残基を含む株のLPS内部コアオリゴ糖エピトープを認識するが、(−D−Gal残基が存在しないか、あるいはO−3位に結合している場合には認識しないことを見出している。高分子量型の構造確認図は図Bに示されている。
【0054】
上述のように、インフルエンザ菌LPS発現に関与する重要な生合成遺伝子が同定された。これにより、本発明者らは、保存された内部コア部分を含むが、ヒト組織構造を模倣するオリゴ糖伸長部を含まないインフルエンザ菌変異株を構築することができるようになった。実施例2はこの方法の結果を示している。
【0055】
本発明者らは、当業者に公知の方法(Guの特許、上記)を用いて、例えばタンパク質結合体として製剤化することにより、インフルエンザ菌LPSの保存されたトリヘプトシル内部コア部分を含むオリゴ糖は免疫原性を示すことを見出した。例えば、本発明者らは、ウシ血清アルブミン(BSA)と結合させたHi株Rdlic1lpsAのO−脱アシル化LPSからなるオリゴ糖−タンパク質結合体をマウスに感作させると、遺伝的に多様なNTHi株のセットに由来するLPSサンプルの多数と交差反応性のある免疫血清が生じることを示した(表1)。LPSのO−脱アシル化は無水ヒドラジンを用いて達成される。これには、次のタンパク質とのコンジュゲーション反応のためにLPSオリゴ糖を可溶化する作用があり、リピドA成分の著しい解毒をもたらす(Guの特許、上記)。このO−脱アシル化LPSは、当業者に公知の方法(Guの特許、上記)に従い、Kdo部分のカルボキシル基を介して結合する。最後に、マウスにHi株1003lic1lpsAのO−脱アシル化LPSを腹腔内追加投与した(実施例5参照)。この実験で得られたマウス免疫血清は、内部コアからの複数の鎖伸長を有するNTHi株由来のLPSと反応した。
【0056】
Rdlic1lpsA LPSは、保存されたトリヘプトシル内部コア部分の典型となるLPSを生産し、ラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)含有オリゴ糖鎖伸長を有する少量のグリコフォームを含む。このことは、LLA5との反応性から明らかである(図8)。Rdlic1lpsA O−脱アシル化LPS−BSA結合体はまた、Mab LLA5ならびに内部コアMab、LLA4との反応性も示した。NTHi株1003はLNnTを含むオリゴ糖鎖を有するLPSを合成しない。本発明者らは、構造解析、遺伝解析および免疫化学分析によってこのことを突きとめた。この株のLPSはLLA5とは反応せず、rfb遺伝子座を含まない(Derek Hood, 上記)。二重突然変異1003lic1lpsAは、鎖伸長のない保存された内部コア部分を有するLPSを発現する。これはMab LLA4によって認識される。
【0057】
上記の知見により、インフルエンザ菌LPSの保存された内部コア部分(例えば、Rdlic1lpsAに存在するもの)は、細菌の多様性について典型となる株由来のLPSと交差反応性のある免疫応答を誘導することができることが示される。ラクトース、LNnTおよびそれらのシアリル化類似体は、ヒト組織に見られるオリゴ糖構造である。従って、LPSに基づくワクチンを開発するためには、これらのオリゴ糖伸長部がワクチン製剤中に存在しないようにすることが好ましい。上記の実験によって、これらのオリゴ糖伸長部がインフルエンザ菌株に共通のものである証拠が得られ、本発明者らはそれらを同定し、それらを含まない株を構築する方法論を考案した。
【0058】
同じ手段により、NTHiなどのHiに対する広範な免疫応答を誘導し、かつ/または動物組織の模倣または模倣の回避のために改善された免疫応答を誘導するエピトープをもたらす、LPSの保存されたトリヘプトシル内部コア部分の置換または修飾を有する他のHi変異株を構築することができる。
【0059】
哺乳類における感染症を治療または予防するためのワクチン接種法は、常法のいずれか、特に粘膜(例えば、眼用、鼻内、口腔、胃、肺、腸、直腸、膣または尿道)表面への投与、非経口経路(例えば皮下、皮内、筋肉内、静脈内または腹腔内)により投与する、本発明によるワクチン製剤の使用を含んでなる。好ましい経路は、選択するワクチン製剤によって異なる。治療は1回の投与または一定間隔での繰り返し投与によって行うことができる。適当な用量は、ワクチン製剤自体、投与経路またはワクチン接種する哺乳類の条件(体重、年齢など)など、当業者が理解している種々のパラメーターによって異なる。
【0060】
本発明によるリポ多糖治療薬の製造には、リポ多糖を製造および精製する標準的な実験技術が用いられる。ワクチンとして用いる場合には、本発明によるリポ多糖を以下に概説する種々の方法に従って製剤化する。
【0061】
LPSのリピドA成分により有毒となることから、LPS免疫原を解毒するのが好ましい。本明細書では、NTHi由来のLPSの解毒法としてヒドラジンの使用が記載されているが、リピドAからエステル結合脂肪酸を除去しうるいずれかの試薬または酵素の使用も本発明の範囲内にある。NTHiの選択株からのLPSを乾燥させたものを1℃〜100℃、好ましくは25℃〜75℃、より好ましくは約37℃の温度で、1〜24時間、最も好ましくは約2〜3時間、液体無水ヒドラジンに懸濁させる。エステル結合した脂肪酸を除去した後、dLPSをリンカーであるアジピン酸二水和物(ADH)と結合させ、その後、免疫担体タンパク質TTまたはNTHi HMPと結合させる。ADHは好ましいリンカーであるが、dLPSを免疫担体タンパク質に安定かつ効率的に結合できるいずれのリンカーの使用も考えられる。このようなリンカーの使用は、結合ワクチンの分野で周知である(Dick et al., Conjugate Vaccines, J.M. Cruse and R.E. Lewis, Jr., eds. Karger,New York, pp. 48−114参照)。
【0062】
dLPSは担体に直接共有結合させることができる。これは、例えば、架橋剤であるグルタルアルデヒドを用いて達成することができる。好ましい実施態様によれば、dLPSと担体はリンカーによって隔てられている。リンカーの存在は結合体の免疫原性を最適化し、dLPSと担体との結合をより好適なものとする。リンカーは2つの抗原成分を鎖で隔てるが、この鎖の長さや柔軟性は所望により調節することができる。これらの二機能性部位の間において、これらの鎖は、ヘテロ原子および切断部位をはじめとする様々な構造的特徴を含みうる。また、リンカーは抗原の翻訳および回転特性を相応に高め、可溶性抗体に対する結合部位の接近が容易となる。ADHの他、好適なリンカーとしては、例えば、ε−アミノヘキサン酸、クロロヘキサノールジメチルアセタール、D−グルクロノラクトンおよびp−ニトロフェニルアミンなどのヘテロ二機能性リンカーが挙げられる。本発明での使用が考えられるカップリング試薬としては、ヒドロキシスクシンイミドおよびカルボジイミドが挙げられる。また、当業者に公知のその他の多くのリンカーおよびカップリング試薬も本発明での使用に好適である。かかる化合物はDick et al., 上記によって詳細に論じられている。
【0063】
担体が存在すると多糖の免疫原性が高まる。また、担体に対して生成された抗体は医学上有用である。高分子免疫担体は、第一および/または第二アミノ基(primary and/or secondary amino group)、アジド基またはカルボキシル基を含む天然または合成の材料であってよい。担体は水溶性であっても水に不溶であってもよい。
【0064】
種々の免疫担体タンパク質のいずれか一つを、本発明による結合ワクチンに用いればよい。かかるタンパク質種としては、線毛、外膜タンパク質、および病原菌の分泌毒素、かかる分泌毒素の無毒または「トキソイド」形態、細菌毒に抗原的に類似する無毒なタンパク質(交差反応材料またはCRM)、およびその他のタンパク質が挙げられる。限定されるものではないが、本発明での使用が考えられる細菌トキソイドの例としては、破傷風毒/トキソイド、ジフテリア毒/トキソイド、解毒した緑膿菌(aeruginosa)毒素A、コレラ毒/トキソイド、百日咳毒/トキソイドおよびウェルシュ菌(Clostridium perfringens)外毒素/トキソイドが挙げられる。これらの細菌毒のトキソイド形態が好ましい。また、ウイルスタンパク質(すなわちB型肝炎表面/コア抗原、レトロウイルスVP7タンパク質および呼吸シンシシャルウイルスFおよびGタンパク質)の使用も考えられる。
【0065】
CRMとしては、ジフテリア毒と抗原的に同等なCRM.sub.197(Pappenheimer et al., Immunochem., 9:891−906, 1972)および百日咳毒の遺伝子操作変異体CRM3201(Blacl et al., Science, 240:656−659, 1988)が挙げられる。キーホールリンペット・ヘモシアニン、カブトガニ・ヘモシアニンおよび植物エデスチンをはじめとする非哺乳類源の免疫担体タンパク質の使用も本発明の範囲内にある。
【0066】
dLPS−タンパク質結合体のために考えられるカップリング方法には多くのものがある。dLPSは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を媒介とするdLPSの末端3−デオキシ−D−マンノ−2−オクツロソン酸(Kdo)基のADH誘導体化の後、EDCを媒介とするTTとのカップリングによって選択的に活性化することができる。あるいは、本結合体を作製する別法は、例えばEDCを媒介とする誘導体化の後にN−スクシミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート誘導体化タンパク質とのジスルフィド結合形成を行うことによる、dLPSのシスタミン誘導体化を含む。また、オリゴ糖と免疫担体タンパク質の結合形成を行う当技術分野で周知のその他の方法も本発明の範囲内にある。かかる方法は米国特許第5,153,312号明細書および同第5,204,098号明細書、EP0497525およびEP0245045に記載されている。
【0067】
反応混合物中のADHとdLPSのモル比は、典型的には約10:1〜約250:1の間である。より効果的なカップリングを確保し、dLPS−dLPSのカップリングを制限するには過剰モルのADHを用いる。好ましい実施態様によれば、モル比は約50:1〜約150:1の間であり、最も好ましい実施態様によれば、モル比は約100:1である。反応混合物中、TTおよびHMPの双方に対して同等の比率のAH−dLPSも考えられる。好ましい実施態様によれば、AH−dLPS結合体にはdLPS当たり一つのADHが存在する。他の好ましい実施態様によれば、最終的なdLPS−担体タンパク質結合体のdLPSと担体のモル比は、約15〜約75、好ましくは約25〜約50である。
【0068】
マウスおよびウサギの双方における結合体の免疫原性は、アジュバントとしてのモノホスホリルリピドA+トレハロースジミコレートRibi−700(Ribi Immunochemical Research, Hamilton, Mont.)の使用により増強される。このアジュバントは、ヒトでの使用は認可されていないが、当業者ならばアルミニウム化合物(すなわちアルミ)、化学修飾リポ多糖、百日咳菌(Bordetella pertussis)死菌懸濁液、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミンその他当業者に公知のアジュバントをはじめ、他の周知の標準的なアジュバントを本発明に用いてよいことが分かるであろう。アルミニウム化合物の使用が特に好ましい。かかるアジュバントはWarren et al. (Ann. Rev. Biochem., 4:369−388, 1986)に記載されている。
【0069】
非経口投与用のdLPS−担体タンパク質結合体は、滅菌注射用水性または油性懸濁液などの滅菌注射製剤の形態であってもよい。この懸濁液は、好適な分散または湿潤剤および沈殿防止剤を用い、当技術分野で周知の方法に従って製剤化することができる。滅菌注射製剤はまた、1,3−ブタンジオール中の溶液など、非経口的に許容される希釈剤または溶剤中の滅菌注射溶液または懸濁液としてもよい。好適な希釈剤としては、例えば、水、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、常法のように滅菌硬化油を溶媒または懸濁媒として用いてもよい。この目的においては、合成モノまたはジグリセリドをはじめ、いずれの銘柄の硬化油を用いてもよい。さらにまた、同様にオレイン酸などの脂肪酸を注射製剤の製造に用いてもよい。
【0070】
本発明による結合ワクチンは、可溶形態であっても微粒子形態であってもよく、あるいはリポソームなどのマイクロスフェアまたはマイクロ小胞中に配合してもよい。例えば、筋肉内、皮下、腹腔内および動脈内をはじめ、種々のワクチン投与経路が考えられるが、好ましい経路は筋肉内投与である。好ましい実施態様によれば、投与する結合体の用量は約10g〜約50gの範囲である。より好ましい実施態様によれば、投与する量は約20g〜約40gの間である。最も好ましい実施態様によれば、投与する量は約25gである。体重をもとにそれ以上の用量を投与してもよい。厳密な用量は、当業者に公知の通常の用量/応答プロトコールによって決定することができる。
【0071】
本発明によるワクチンは、いずれの齢の温血哺乳類に投与してもよく、幼哺乳類、特にヒトにおいてNTHiにより引き起こされる中耳炎および呼吸器感染症に対して能動免疫を誘導するように適合させてある。小児用ワクチンとしては、本結合体を約2〜4ヶ月齢で投与する。典型的には、最初の注射から約2ヶ月、さらに約13ヶ月後に約10g〜約25gの2回の追加注射を行う。あるいは、最初の注射から2ヶ月、4ヶ月および16ヶ月後に3回の追加注射を行う。
【0072】
本結合ワクチンの全身投与によって誘導されるIgG抗体は局部粘膜に移行し、粘膜表面(すなわち鼻道)のNTHi接種物を不活性化する。本結合ワクチンを粘膜投与(すなわち鼻内)した場合には、分泌型IgAも粘膜免疫に役割を果たす。従って、本結合ワクチンは局部ならびに全身のNTHi感染を予防する。
【0073】
実施例4はNTHi Rdlic1lpsAを用いた結合ワクチンについて記載している。他のNTHi株からのワクチンも本発明の範囲内にあり、同じ技術を用いて製造される。NTHi株Rdlic1lpsA。dLPS−担体結合ワクチンの製造のためのdLPSの供給源として考えられる他の臨床関連のNTHi株としては、9274、2019、1479、5675および7502株(それぞれIII型、II型、I型、IV型およびV型)、ならびに本明細書に記載のFinnish Collecitonからの株が挙げられる。これらの株ならびに2019株は、Campagnari et al. (Infect.,Immun., 55:882−887, 1987)およびPatrick et al. (Infect Immun., 55:2902−2911, 1987), and Hood< Mol. Microbiol 33:679−692, 1999により報告されており、通常は研究機関から入手することができる。
【0074】
結合体混合物を含んでなる多価ワクチン(それぞれ異なるNTHi株からのdLPSを有する)もまた本発明の範囲内にある。当業者ならば、これらの他の臨床関連株由来のLPSは、例えばGu et al.(米国特許第6,207,157号明細書)に記載のように、そこから脂肪酸を除去することにより解毒されうることが分かるであろう。好ましい実施態様によれば、このようにして得られたdLPS部分はLPS自体よりも少なくとも約5,000倍毒性が低くなる。特に好ましい実施態様によれば、dLPSはLPSよりも少なくとも約10,000倍低くなる。毒性の測定は、例えば、Gu et al.(米国特許第6,207,157号明細書)に記載のようにして行えばよい。
【0075】
当技術分野で利用可能な生ワクチンとしては、アデノウイルス、アルファーウイルスおよびポックスウイルスなどのウイルスベクター、ならびに細菌ベクター、例えば、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ菌(Salmonella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、乳酸菌(Lactobacillus)、カルメット−ゲラン桿菌(Bacille bilie de Calmette−Guerin)(BCG)および連鎖球菌(Streptcoccus)が挙げられる。
【0076】
弱毒化ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)株(異種抗原の組換え発現のために遺伝子操作されたもの、またはされていないもの)およびそれらの経口ワクチンとしての使用がWO92/11361に記載されている。好ましい投与経路としては総ての粘膜経路が含まれ、最も好ましくは、これらのベクターは経鼻または経口投与される。
【0077】
ワクチンとして用いられる他の細菌株は、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)に関してはHigh et al., EMBO (1992) 11:1991およびSizemore et al., Science (1995) 270:299に、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)に関してはMedaglini et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1995) 92:6868に、カルメット−ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin)に関してはFlynn J.L., Cell.Mol. Biol. (1994) 40 (suppl. I):31, WO88/06626、WO90/00594、WO91/13157、WO92/01796およびWO92/21376に記載されている。
【0078】
他の製剤は、細胞取り込みを助ける薬剤と会合させたワクチンを利用するものである。かかる薬剤の例としては、(i)ブピバカイン(例えばWO94/16737参照)などの細胞浸透性を向上させる化学物質、(ii)リポ多糖、ワクチン、または部分的に脱アシル化したLPSのカプセル化のためのリポソーム、または(iii)それら自体がリポ多糖と会合する陽イオン脂質、またはシリカ、金もしくはタングステン微粒子がある。
【0079】
陰イオンおよび中性リポソームは当技術分野で周知であり(リポソーム作製法についての詳しい説明としては、例えば、Liposomes: A Practical Approach, RPC New ED, IRL press (1990)を参照のこと)、リポ多糖に基づくワクチンをはじめ、幅広い生成物を送達するのに有用である。本発明による組成物に用いる場合、一つの実施態様によれば、リポ多糖に基づくワクチンまたはその誘導体をリポソーム、好ましくは中性または陰イオンリポソーム、マイクロスフェア、ISCOMS、またはウイルス様粒子(VLP)中に、あるいはそれらとともに製剤化し、送達を助け、かつ/または免疫応答を増強する。
【0080】
陽イオン脂質もまた当技術分野で知られている。かかる脂質としては、DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)としても知られてるリポフェクチン(商標)、DOTAP(1,2−ビス(オレイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン)、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)、DOGS(ジオクタデシルアミドログリシルスペルミン)、およびDC−Chol(3−(−(N−(N’,N’−ジメチルアミノメタン)−カルバモイル)コレステロール)などのコレステロール誘導体が挙げられる。これらの陽イオン脂質についての説明は、EP187,702、WO90/11092、米国特許第5,283,185号明細書、WO91/15501、WO95/26356および米国特許第5,527,928号明細書に見出される。
【0081】
投与経路は、ワクチンの分野で用いられる通常のいずれの経路であってもよい。一般的な指針として、本発明によるリポ多糖に基づくワクチンは、粘膜表面、例えば、眼、鼻内、肺、口腔、腸、直腸、膣、および尿道表面から、あるいは非経口経路、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、上皮内、または筋肉内経路により投与する。投与経路の選択は、選択される製剤、およびリポ多糖と会合させるアジュバントなどのいくつかのパラメーターによって異なる。ブピバカインと会合して製剤化するリポ多糖に基づくワクチンは有利に筋肉投与することができる。中性または陰イオンリポソーム、またはDOTMAもしくはDC−Cholなどの陽イオン脂質を用いる場合、その製剤は静脈内、鼻内(エアゾル化)、筋肉内、皮内および皮下経路によって有利に注射することができる。裸の形態のリポ多糖は、筋肉内、皮内、または皮下経路によって有利に投与することができる。粘膜アジュバントを用いる場合には、鼻内または経口経路が好ましい。脂質製剤またはアルミニウム化合物を用いる場合には、非経口経路が好ましく、皮下または筋肉内経路が最も好ましい。この選択はまた、ワクチン剤の性質によっても異なる。
【0082】
本発明によるワクチン製剤の治療または予防効力は、以下のようにして評価することができる。本発明の他の態様によれば、(i)本発明によるリポ多糖に基づくワクチンを希釈剤または担体とともに含んでなる組成物、特に(ii)治療上または予防上有効量の本発明によるリポ多糖に基づくワクチンを含有する医薬組成物、(iii)哺乳類においてインフルエンザ菌に対する免疫応答を誘導する方法であって、哺乳類に免疫上有効量の本発明によるリポ多糖を投与してインフルエンザ菌に対する防御免疫応答を誘導することによる方法、(iv)インフルエンザ菌感染を予防および/または治療する方法であって、予防または治療量の本発明によるリポ多糖を感染個体に投与することによる方法、が提供される。さらに、本発明は、インフルエンザ菌感染症を予防および/または治療するための薬剤の製造における、本発明によるリポ多糖に基づくワクチンの使用を包含する。
【0083】
本明細書において、本発明による組成物とは、一種または数種の本発明によるリポ多糖または誘導体を含有する。本組成物は、所望により、少なくとも一種の付加的なインフルエンザ菌抗原、またはサブユニット、断片、相同体、変異体もしくはその誘導体を含んでもよい。
【0084】
一つの実施態様によれば、リポ多糖に基づくワクチン、組成物または治療薬は、アジュバント、特に一般に、または特に齧歯類で用いられるアジュバントを含まない。本リポ多糖に基づくワクチン、組成物または治療薬は、その症状が少なくともインフルエンザ菌感染の一環として引き起こされる、または悪化する疾患を治療するために使用でき、このような疾患としては、中耳炎、呼吸器感染症、髄膜炎および肺炎などの疾患が挙げられる。好ましいリポ多糖組成物としては、インフルエンザ菌により引き起こされる疾病に対して防御を与える、または治療するため、動物、好ましくはヒトへin vivo投与するために製剤化されたものが挙げられる。また、微粒子、カプセルまたはリポソームとして製剤化された組成物も好ましい。
【0085】
あるいは、本ワクチン製剤は、アジュバント、好ましくはヒトまたは獣医用に適したアジュバント(好ましくは、齧歯類特異的アジュバントを除く)をさらに含んでもよい。その場合には、例えば、米国特許第5,057,546号明細書に記載のQS21など、アジュバント作用を示すのに付随する投与を必要としない全身用アジュバントが好ましい。多くのアジュバントが当業者に知られている。好ましいアジュバントは、以下に示すようにして選択される。
【0086】
一つの実施態様によれば、リポソームなど以外のアジュバントも使用するが、これは当技術分野で公知である。アジュバントは、抗原を局部定着に留まらせることにより迅速に拡散しないようにするか、あるいはマクロファージや免疫系の他の成分に走化性のある因子を分泌させるように宿主を刺激する物質を含んでいる場合もある。当業者ならば、例えば、以下に記載のものから適切な選択を適宜行うことができる。
【0087】
治療は、一回投与、または必要に応じて一定間隔で繰り返し投与して達成され、当業者ならば容易に判断することができる。例えば、初回投与の後、一週間または一ヶ月に3回追加投与を行う。適当な用量は、受容者(例えば、成人か小児か)、特定のワクチン抗原、投与経路および頻度、アジュバントの有無や種類、ならびに望まれる効果(例えば、予防および/または治療)をはじめとする種々のパラメーターによって異なり、当業者ならば判断することができる。一般に、本発明によるワクチン抗原は、約10μg〜約500mg、好ましくは約1mg〜約200mgの量で粘膜経路により投与する。非経口経路の投与については、用量は通常約1mg、好ましくは約100μgを超えない。
【0088】
上記のワクチン組成物のいずれにも有用なアジュバントは、以下に示すとおりである。非経口投与用アジュバントとしては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびヒドロキシリン酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物が挙げられる。抗原は、標準的なプロトコールによりアルミニウム化合物とともに沈殿させるか、またはそれに吸着させる。非経口投与には、RIBI(ImmunoChem, Hamilton,MT)などの他のアジュバントを用いる。
【0089】
粘膜投与用アジュバントとしては、細菌毒、例えばコレラ毒(CT)、大腸菌易熱性毒(LT)、クロストリジウム・デフィシル(Clostridium difficil)毒A、および百日咳毒(PT)、またはその組合せ、サブユニット、トキソイドもしくは変異体(天然コレラ毒サブユニットB(CTB)の精製製剤など)が挙げられる。これらの毒素のいずれの断片、相同体、誘導体および融合体もアジュバント活性を保持している限り好適である。好ましくは、弱毒変異体を用いる。好適な変異体としては、例えば、WO95/17211(Arg−7−Lys CT変異体)、WO96/06627(Arg−192−Gly LT変異体)およびWO95/34323(Arg−9−LysおよびGlu−129−Gly RT変異体)に記載されている。本発明による方法および組成物に用いられるその他のLT変異体としては、例えば、Ser−63−Lys、Ala−69−Gly、Glu−110−AspおよびGlu−112−Asp変異体が挙げられる。粘膜投与には、例えば、大腸菌、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、ネズミチフス菌、またはフレクスナー赤痢菌の細菌モノホスホリルリピドA(MPLA);サポニンまたはポリラクチドグリコリド(PLGA)マイクロスフェアなどのアジュバントを用いてもよい。
【0090】
粘膜および非経口投与の双方に有用なアジュバントとしては、ポリホスファゼン(WO95/02415)、DC−Chol(3b−(N−(N’−N’−ジメチルアミノメタン)−カルバモイル)コレステロール(米国特許第5,283,185号明細書およびWO96/14831)およびQS−21(WO88/09336)が挙げられる。
【0091】
リポ多糖を含有する本発明による医薬組成物または本発明による抗体はいずれも、常法にて製造される。特に、医薬上許容される希釈剤または担体、例えば、水またはリン酸緩衝生理食塩水などの生理食塩水を用いて製剤化する。一般に、希釈剤または担体は、投与様式および投与経路、ならびに標準的な製薬上の運用に基づいて選択される。好適な医薬担体または希釈剤、ならびに医薬製剤におけるそれらの使用に関する医薬上の必要条件は、この分野およびUSP/NFにおける標準的な教本であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0092】
本発明はまた、インフルエンザ菌感染を、本発明によるインフルエンザ菌リポ多糖および粘膜アジュバントを、抗生物質、制酸剤、スクラルファートまたはそれらの組合せとともに経口投与することにより治療する方法を含む。ワクチン抗原およびアジュバントとともに投与することができる化合物の例としては、例えば、マクロライド、テトラシクリンおよびその誘導体をはじめとする抗生物質がある(使用可能な抗生物質の具体例としては、アジトロマイシンもしくはドキシシクリン、またはサイトカインもしくはステロイドなどの免疫調節物質がある)。さらに、1以上の上記化合物を組み合わせて含有する化合物も用いられる。本発明はまた、これらの方法を実施するための組成物、すなわち本発明によるインフルエンザ菌抗原、アジュバントおよび1以上の上記化合物を医薬上許容される担体または希釈剤中に含有する組成物を含む。
【0093】
本発明による方法および組成物に用いる上記化合物の量は、当業者により容易に決定される。治療/免疫計画も公知であり、当業者により容易に設計される。例えば、非ワクチン成分を1〜14日目に投与し、ワクチン抗原+アジュバントを7、14、21および28日目に投与することができる。
【0094】
本明細書を通じ、本発明が属する技術分野の状況をより詳しく説明するために括弧内に種々の参照文献が挙げられているが、これらの参照文献の開示は引用することにより本開示の一部とする。
【0095】
生物の寄託
本明細書に記載、参照される特定のインフルエンザ菌株は、International Depositary Authority of Canada (IDAC)(Bureau of Microbiology, Health Canada, 1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に寄託されている。この寄託はブタペスト条約に従ってなされたものである。寄託情報:
【0096】
インフルエンザ菌Rd lic1 lpsA株は2001年8月25日付けで受託番号:IDAC250801−1として寄託されている。
【0097】
インフルエンザ菌1003 lic1 lpsA株は2001年8月25日付けで受託番号IDAC250801−2として寄託されている。
【0098】
本明細書に記載され、および特許請求の範囲とされる発明は、寄託された生物材料に限定されるものではなく、これら寄託された生物材料は単に本発明の具体例を例示するものである。
【0099】
以下、実施例によって本発明の態様の好ましい具体例を説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0100】
実施例1
Hi LPS変異株
細菌株および培養条件
インフルエンザ菌Rd株は、もともと、HerriotによりAlexander and Leidy (Alexander, H.E., andLeidy, G. (1951) J. Exp. Med. 93, 345−359) から入手したものである。H.O. Smithがこれを譲り受け、KW−20と名付け、ゲノムシーケンシングプロジェクトに用いた(Fleischmann, R.D., Adams, M.D., White, O., Clayton, R.A., Kirkness, E,F., Kerlavage, A.R., Butt, C.J., Tomb, J−E., Dougherty, B.A., Merrick, J.M., McKenney, K., Sutton, G., FitzHugh, W., Fields, C., Gocayne, J.D., Scott, J., Shirley, R., Liu, L−I., Glodek, A., Kelley, J.M., Weidman, J.F., Phillips, C.A., Spriggs T., Hedblom, E., Cotton, M.D., Utterback, T.R., Hanna, M.C., Nguyen, D.T., Saudek, D.M., Brandon, R.C., Fine, L.D., Fritchman, J.L., Fuhrmann, J.L., Geoghagen, N.S.M., Gnehm, C.L., McDonald, L.A., Small, K.V., Fraser, C.M., Smith, H.O., and Venter, J.C., (1995) Science 269, 496−512)。Smith研究室から入手した同株を本発明者らが用いた(RM118)。この株から得られた変異体の遺伝子型は表1に示されている。インフルエンザ菌株は37℃にてヘミン10g/mlおよびNAD2g/mlを添加した。ブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)ブロス中で増殖させた。形質転換後の選択に関してはカナマイシン10g/mlをこの増殖培地に添加した。
【0101】
大腸菌DH5株を用いてクローンニングしたPCR産物および遺伝子構築物を増やし、37℃にて、必要に応じてアンピシリン100g/mlまたはカナマイシン50g/mlを添加したLuria−Bertani(LB)ブロス中で増殖させた(Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T. (1989) Molecular coloning; A laboratory manual. 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)。
【0102】
インフルエンザ菌ゲノム配列からのLPS関連遺伝子の同定
推定LPS生合成遺伝子は、公的に利用できるデータベースから得られた広範な生物に由来するLPS生合成遺伝子の異種配列を用いてインフルエンザ菌ゲノム配列をコンピューター検索することでこれまでに同定されている(Hood, D.W.,Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)。RM118lgtF遺伝子座(HI0653)は、髄膜炎菌(meningitidis)(GenBank受託番号U58765)のLgtFタンパク質配列とのマッチに関してInstitute for Genomic Research (TIGR) H. influenzae strain Rd配列データベース(HYPERLINK http://www.tigr.org/tdb/CMR/ghi/htmls/SplashPage.html)を検索することで同定した。
【0103】
組換えDNA法、クローニングおよび突然変異
制限エンドヌクレアーゼおよびDNA変性酵素はBoehringer Mannheimから入手し、製造業者の説明書に従って用いた。
【0104】
プラスミドDNAの調製、サザンブロッティングおよびハイブリダイゼーション解析はSambrook et,al (Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T. (1989) Molecular coloning; A laboratory manual.2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)により記載されているようにして行った。染色体DNAは他所に記載の方法でモフィラス属から調製した(High, N,J., Deadman, M.E., and Moxon, E.R. (1993) Mol. Microbiol. 9, 1275−1282)。
【0105】
lgtFの他、推定されるインフルエンザ菌LPS生合成遺伝子をこれまでに報告されているようにクローニングして変異誘発した(Hood, D.W.,’Deadman, M. E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and. Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22,951−965)。lgtF遺伝子については、Rd株のゲノム配列からオリゴヌクレオチドプライマーlgtFa(5’−TGGTGGTGGGCAAGACGC−3’)およびlgtFb(5’−AGCCTGAATTCGACAGCC−3’)を設計し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりHI0653を含む1461bpの断片を増幅した。PCR条件は、変性94℃1分、アニーリング50℃および重合72℃30分とした。PCR産物の一つを50ngのプラスミドpT7Blue(Novagen)と連結し、大腸菌DH5株へ形質転換した。次に形質転換体から組換えプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化およびプラスミド特異的プライマーの配列決定により確認した(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen,T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)。lgtF遺伝子はカナマイシン耐性カセット(pUC4Kan, Pharmacia由来のEcoRIでの消化により遊離させる)をHI0653の5’末端から257bp内側のMunI制限部位へ挿入することで不活性し、プラスミドpDQ1を得た。
【0106】
変異株の構築
変異型LPS生合成遺伝子を含む線状プラスミド2〜3gを用い、MIV法(Herriot, R.M., Meyer,E.M., and Vogt, M.J. (1970) J. Bacteriol. 101, 517−524)によりインフルエンザ菌RM118株を形質転換し、形質転換体をカナマイシンで選択した。RM118lic1株を構築するため、対応するRM153変異体から単離した剪断染色体DNA5gでRM118を形質転換した。RM118lic2A株は、RM153lic2Aから増幅した、lic2Aおよび隣接する遺伝子ksgAを含むPCR産物1gでRM118を形質転換することで構築した。PCRでは上記のような条件下でプライマーL2A:5’−CTCCATATTACATAAT−3’およびL2D:5’−AAACACTTAGGCCATACG−3’を用いた。総ての形質転換体を適当なBHI/抗生物質プレートで再培養することで確認し、その後エンドヌクレアーゼ消化した染色体DNAのPCR増幅および/またはサザンブロッティング/ハイブリダイゼーション解析により変異体としての確認を行った。
【0107】
lpsAlic1変異体 lic1遺伝子座は、モノクローナル抗体(mAb)4C4、6A2および12D9により認識されるLPSエピトープを発現するRM7004株からクローニングしたDNA断片バンクを、そのLPSのエピトープにおいて天然にはこれらのいずれも発現しないRM118株へ導入することにより確認した。mAbsおよび12D9に対する反応性を付与する4.4kb断片のクローン化DNAを配列決定し、4つのオープンリーディングフレーム(ORF)を確認した。これら4つのORFはこのクローン化DNA由来の2.7kb ClaI/EcoRV断片を欠失させてプラスミドpHVT1由来のテトラシクリン耐性カセットで置換することで一緒にノックアウトした。この構築物を用い、形質転換した後に相同組換えを行うことでRM7004株、次いでRM118株においてlic1変異を作出した。
【0108】
lpsA遺伝子は、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)でグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の相同体としてのRd株のゲノム配列から同定した。この遺伝子を、Rdゲノム配列から設計したプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。PCR産物をプラスミドpT7Blueにクローニングした後、NsiIで消化し、PstI消化によりpUC4kanに由来するカナマイシン耐性カセットを挿入することにより分断した。得られたプラスミドを線状化した後、RM118およびNTHi1003株の形質転換に用いた。形質転換体はPCRにより確認し、変異体を確定した。
【0109】
二重変異株RM118lpsAlic1(互換的にRdlpsAlic1またはRdlic1lpsAと呼ぶ)および1003lpsAlic1(互換的に1003lic1lpsAと呼ぶ)は、RM118lic1変異株に由来する染色体DNAでRM118および1003lpsA変異体の各々を形質転換することで構築した。二重変異株は関連の遺伝子座のPCR解析により確認し、それらの株のバックグラウンドは制限酵素消化を行い、ゲル上のDNA断片のパターンを関連の野生型株と比較することで確認した。
【0110】
次に、株を各々特定のLPSエピトープに特異的ないくつかのmAbsを用いて確認した。各場合において、野生型と比較した場合、RM118および1003lpsAlic1二重変異株はホスホコリンに特異的である抗体mAb TEPC−15に対する反応性を失っていた。インフルエンザ菌のLPSへのホスホコリンの組み込みはlic1遺伝子座に依存する。また変異株由来のLPSをポリアクリルアミドゲルで分画し、関連の野生型のLPSと比較した。各場合において、野生株からのものと比較した場合、二重変異株は末端切断されたLPSを含んでいた。
【0111】
免疫ブロッティングによるリポ多糖の分析
LPS特異的モノクローナル抗体に対するインフルエンザ菌RM118株の野生型および変異株の反応性は(Roche, R.J., High, N.J., and Moxon, E.R. (1994) FEMS Microbiol. Lett. 120, 279−284)により記載されているように分析した。
【0112】
電気泳動によるリポ多糖の分析
これまでに記載されているようにして(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)、トリシン−SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(T−SDS−PAGE)(Lesse, A.J., Campagnari, A.A., Bittner, W.E., and Apicella, M.A. (1990) J. Immunolog. Methods 126, 109−117)で分画した後に野生型および変異株から単離されたLPSのパターンを調べた。
【0113】
リポ多糖の構造フィンガープリンティング
10Lのバッチ培養(1L10ロット)からの細胞を一晩増殖させた後に収穫し、ホットフェノール−水法(Westphal, O. and Jann, K. (1965) Meth. Carbohydr. Chem. 5, 83−91)の後に、Thibault, and Richards (Thibault, P. and Richards, J.C. (2000) ????)により記載されているようにエタノール沈殿させることによりLPSを抽出した。LPSを超遠心分離(105000g、4℃、2×5時間)を繰り返すことで精製し、サンプルをそれらのO−脱アシル化誘導体(LPS−OH)として分析した。O−脱アシル化はこれまでに記載のように(Holst, O., Broer, W., Thomas−Oates, J.E., Mamat, U., and Brade, H. (1993) Eur. J. Biochem. 214, 703−710)、37℃で1時間、LPS(1〜10mg)と無水ヒドラジン(0.2〜1.0ml)とを混合することにより行った。糖類はこれまでに記載のように(Jarosik, G.P., and Hansen, E.J. (1994) Infect. Immun. 62, 4861−4867)、ガス液体クロマトグラフィー−質量分析(GLC−MS)によりそれらの酢酸アルジトールとして同定した。結合分析は室温で24時間、無水酢酸(0.5ml)および4−ジメチルアミノピリジン(0.5mg)でオリゴ糖をアセチル化した後に行った。次にペルアセチル化材料をリチウムメチルスルフィニルメタニドの存在下でジメチルスルホキシド中ヨウ化メチルで処理してメチル化オリゴ糖を得、これをSepPak C18カートリッジを用いて回収し、糖分席を行った (Blakeney, A.B. and Stone, B.A. (1985) Coabohydr. Res. 140, 319−324)。糖およびメチル化分析で得られた種々の酢酸アルジトールと部分的メチル化酢酸アルジトールの相対的割合をGLC−MSの検出器の応答から測定し、補正は行わなかった。GLC−MSはNERMAG R10−10H四極質量分析計またはVarian Inontrapシステムを備えたDelsi Di200クロマトグラフにて、DB−5融合シリカキャピラリーカラム(25m×0.25mm×0.25m)および160℃1分、3℃/分にて250℃の温度勾配を用いて行った。エレクトロスプレーイオン化−質量分析(ESI−MS)はVG Quattro質量分析計(Micromass, Manchester, UK)の陰イオンモードで行った。サンプルを水に溶解した後、1%酢酸を含有する50%アセトニトリル水溶液と1:1の比率で混合した。サンプル溶液をシリンジポンプから流速5L/分のHO:CHCN(1:1)の移動相にインジェクトした。1D H NMRスペクトルは、DOで数回凍結乾燥させた後、Bruker AMX500分光光度計にて、酸化ジューテリウム溶液について22℃、500MHzで記録した。スペクトル分解能を高めるため、DO溶液にペルジューテロ−EDTA(2mM)およびペルジューテロ−SDS(10mg/ml)を加えた(Risberg, A., Schweda, E.K.H., and Jansson, P.−E. (1997) Eur. J. Biochem. 243, 701−707)。内部アセトンのメチルプロトン共鳴(2.225ppm)に対する化学シフトを調べた。
【0114】
LgtCおよびLgtDからの酵素活性の分析
lgtDにコードされている酵素を、生成物の検出にキャピラリー電気泳動を用い、合成アクセプターFCHASE−Pでアッセイした。キャピラリー電気泳動は実質的にこれまでに記載のようにして行った(Wakarchuk, W., Martin, A., Jennings, M.P., Moxon, E.R., and Richards, J.C. (1996) J. Biol. Chem. 271,19166−1917)。FCHASE−Pはこれまでに記載のように(Wakarchuk, W.W., et al., Protein Eng. 11: 295−302, 1998)、髄膜炎菌LgtC酵素を用いてFCHASE−Lacから合成した。反応条件は0.5mMアクセプター、1mMUDP−GalNAc、50mM HEPES−NaOH pH7.0、10mM MgCl、10mM MnClとした。抽出は、細胞を音波処理した後、100,000×g30分間の遠心分離により膜画分を回収することで行った。RM118および変異体RM118:lgtDの双方を分析した。少量の生成物をこれまでに記載のように(Wakarchuk, W., Martin,. A., Jennings, M.P., Moxon, E.R., and Richards, J.C. (1996) J. Biol. Chem. 271, 19166−1917)、TLCにより単離した。生成物への変換が少ないことから、いくらかの出発材料もそれとともに単離された。回収した混合物を二等分した後、酵素供給者(NEB)が奨励するようにヘキソサミニダーゼで処理した。LgtDの産物はヘキソサミニダーゼ消化によりアノマー特異性を有することが示された。
【0115】
RM118におけるLgtCに関する活性は検出限界より低かったので、この遺伝子を発現ベクターへクローニングし、大腸菌で活性を評価した。この遺伝子をプライマーlgtCa:5’ GGG GGG CAT ATG GGA CGG ACT GTC AGT CAG ACA ATGおよびlgtCb:5’ GGG GGG GTC TCA TTA ATT ATC TTT TAT TCT CTT TCT TAAT Cを用い、PCRによって増幅した(上記の通り)。
【0116】
次に、この遺伝子を髄膜炎由来のlgtCに関して記載されているもの(Wakarchuk, W.W. et al., Protein Eng. 11: 295−302, 1998)と同様のpCWoriのNdeIおよびSalI部位の間に挿入した。この組換えクローンの音波処理した粗抽出物を1mM FCHASE−Lac、1mM UDP−Gal、10mM MnCl、5mM DTT、50mM HEPES pH7.5でアッセイした。この酵素は大腸菌では不安定であり、抽出物を作製してから数分以内にアッセイする必要があることが分かった(データは示されていない)。この酵素反応の産物は特定のグリコシダーゼ消化、質量分析、および確実なFCHASE−Pとの同時クロマトグラフィーによって分析した(データは示されていない)。
【0117】
変異株の構築およびスクリーニング
上記のように作製した変異体セットを用い、完全なゲノム配列が得られている指標株であるインフルエンザ菌RM118株のLPDSのオリゴ糖部分の生合成の遺伝的基礎を詳細に調べた。表1は発明者らが調べた遺伝子の一覧である。これら遺伝子の大部分を変異させるために用いたDNA構築物はこれまでに報告されている(Hood,. D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson,J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)。各構築物は推定LPS遺伝子が推定されるリーディングフレームの5’末端(1/3)内に挿入されたカナマイシン耐性遺伝子とともにクローニングされているプラスミドベクターからなった。最初のヘプトース(HepI)にグルコースを付加することを担う明らかな候補遺伝子は見られなかった。Rdゲノム配列データベースをナイセリア属由来のlgtF配列を用いて検索したことろリーディングフレームHI0653に対して一致が認められた(247個のアミノ酸にわたって31%の同一性)。lgtFはRM118およびRM153株の染色体DNAからPCRによって増幅した。RM118株由来のクローニング産物はカナマイシンカセットを挿入することで不活性化してプラスミドpDQ1を得、インフルエンザ菌株の形質転換に用いた。lic1およびlic2Aは相変異LPS生合成遺伝子座である(High, N.J., Deadman, M.E., and Moxon, E.R. (1993) Mol. Microbiol. 9,1275−1282; Weiser, J.N., Love, J.M., and Moxon, E.R. (1989) Cell 59, 657−665)。lic1はインフルエンザ菌LPSへのPCho基の付加に関与することが示されている(Weiser, J.N., Shchepetov, M., and Chong, S.T.H. (1997) Infect. Immun. 65,943−950)。各遺伝子座に関して、RM118株を変異させた遺伝子構築物(10〜10形質転換体/投入DNAg)を用いて形質転換した。大部分の遺伝子座ではRM118はクローニングされたDNAの供給源であったが、いくつかの例ではRM153株由来のDNAをドナーとして用い、形質転換効率に違いはなかった。リピドAに付加された最初の糖Kdoの合成を担う遺伝子(kdsA、kdsB)およびKdoトランスフェラーゼ(kdtA)は遺伝子配列から同定した(Fleischmann, R.D., Adams, M.D., White, O., Clayton, R.A., Kirkness, E.F., Kerlavage, A.R., Butt, C.J., Tomb, J−F., Dougherty, B.A., Merrick, J.M., McKenney, K., Sutton, G., FitzHugh, W., Fields, C., Gocayne, J.D., Scott, J., Shirley, R., Liu, L−I., Glodek, A., Kelley, J.M., Weidman, J.F.,Phillips, C.A., Spriggs, T., Hedblom, E., Cotton, M.D., Utterback, T.R., Hanna, M.C., Nguyen, D.T., Saudek, D.M., Brandon, R.C., Fine, L.D., Fritchman, J.L., Fuhrmann, J.L., Geoghagen,N.S.M., Gnehm, C.L., McDonald, L.A., Small, K.V., Fraser, C.M., Smith, H.O., and Venter, J.C. (1995) Science 269, 496−512)。種々のプラスミド構築物を用いてkdtA遺伝子に変異を有する株を構築する試みからは形質転換体を作出することができなかった。これはb型株での知見と同様であり(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann, R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R. (1996) Mol. Microbiol. 22, 951−965)、この変異体が不活性であるためと思われる。RM118および同型の変異株から単離したLPSをT−SDS−PAGEにより分析した(データは示されていない)。RM118オリゴ糖合成に関するグリコシルトランスフェラーゼをコードする可能性が最も高い遺伝子に変異を有し、T−SDS−PAGEにより野生型と比較した場合(図1)にLPSバンドに異なるパターンを示す株を、以下に記載のようにそれらのPLSの詳細な構造解析のために選択した。また、lic1遺伝子座が不活性化されている変異体についても検討した。
【0118】
LPSの構造決定
T−SDS−PAGEによるRM118株のLPSの解析から、リピドAおよび結合している糖残基の数が異なるオリゴ糖成分からなる低分子量LPS集団の電気泳動移動度に相当するヘテロなバンドパターンを示した(図1)。本発明者らはこれまでに、同じ条件下で増殖させたRM118株が共通の内部コア要素に結合した3〜5個のグリコース残基を含むLPSの集団を発現することを示している(Risberg, A., Mascud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and, Schweda, E.K.H. (1999) Eur J. Biochem. 261, 171−180)。lic1、lgtF、およびlgtDに突然変異を有する株のLPは同じような複雑なバンドパターンを示したが、lgtC、lic2A、lpsA、orfH、rfaFおよびopsXに突然変異を有する株のLPSは一連の糖欠損と一致する一貫して移動度の速いバンドを含む複雑でないパターンを示した。変異株由来のLPSサンプルにおける糖欠損の性質および位置の同定は比較構造解析によって行った。RM118株の同系変異体から液体培養で増殖させた後にLPSを抽出した。構造フィンガープリンティングは、無水ヒドラジン処理後に得られたO−脱アシル化LPS(LPS−OH)サンプルのESI−MSおよび1D H−NMR分析を用いて行った。さらにまた、グリコースおよび結合分析は無処理のLPSサンプルについて行った。特異的に不活性化された推定グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む変異株から得られたデータをグロボテトラオースを含有するRM118 LPSの構造モデル(Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180) のものと比較したところ、変化したLPSグリコフォームの重要な構造的特徴が確定された。ESI−MSは低分子量LPSの構造組成を探査する有効な手段を提供する(Gibson, B.W., Melaugh, W., Phillips, N.J., Apicella, M.A., Campagnari, A.A., and Griffiss, J.M. (1993) J. Bacteriol. 175, 2702−2712; Masoud, H., Moxon, E.R., Martin, A., Krajcarski, D., and Richards, J.C. (1996) Biochem. 36, 2091−2103; Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180; Risberg, A., Schweda, E.K.H., and Jansson P.−E. (1997) Eur. J. Biochem. 243, 701−707; Phillips, N.J., McLaughlin, R., Miller, T.J., Apicella, M.A., and Gibson, B.W. (1996) Biochem. 35, 5937−5947)。O−脱アシル化LPSサンプルについて陰イオンモードで得られたESO−MSデータは表2に示されている。変異株由来のLPS−OHサンプルでは、ヘプトース、ヘキソースおよびホスフェート含有置換基の数が異なる共通のO−脱アシル化リピドA部分にKdo−4−ホスフェートを介して結合しているオリゴ糖の存在と一致するデータが得られた(Phillips, N.J., Apicella, M.A., Griffiss, J.M., and Gibson, B.W. (1992) Biochem. 31, 4515−4526 Masoud, H., Moxon, E.R., Martin, A., Krajcarski, D., and Richards, J.C. (1996) Biochem. 36, 2091−2103; Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H.(1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180; Schweda, E.K.M., Hegedus, O.E., Borrelli, S., Lindberg, A.A., Weiser, J.W., Maskell, D.J., and Moxon, E.R. (1993). Carbohydr. Res. 246, 319−330; Schweda, E.K.H., Jansson, P.−E., Moxon, E.R., and Lindberg, A.A. (1995) Carbohydr. Res. 272, 213−224; Risberg, A., Schweda, E.K.H., and Jansson, P.−E. (1997) Eur. J. Biochem. 243, 701−707; Phillips, N.J., McLaughlin, R., Miller, T.J., Apicella, M.A., and Gibson, B.W. (1996) Biochm.35, 5937−5947)。
【0119】
opsX変異体 opsを不活性化すると、ヘプトースまたはヘキソース残基を欠き、リピドA部分と結合したリン酸化Kdoしか含有しない凹凸の深いLPSが生じた(表2)。発明者らはこれまでに、インフルエンザ菌b型RM153株のopsX遺伝子が突然変異した結果、HepIとKdoの間でLPSが切断されることを示している(Hood, D.W., Deadman, M.E., Allen, T., Masoud, H., Martin, A., Brisson, J.R., Fleischmann,. R., Venter, J.C., Richards, J.C., and Moxon, E.R., (1996) Mol. microbiol. 22, 951−965)。二価分子イオンの低エネルギー衝突活性によるLPS−OHサンプルのMS−MS分析(m/z625)では、Kdo−(−D−グルコサミンバンドの切断によって生じるm/z951における主要なフラグメントイオン(リピドA−OH)が得られた(データは示されていない)。このフラグメントイオンの質量はインフルエンザ菌リピドA−OHの期待値と一致する(Helander, I.M., Lindner, B., Brade, H., Altmann, K., Lindberg, K.K., Rietschel, E.T., and Zahringer, U. (1988) Eur. J. Biochem. 177, 483−492)。RM118およびRM153opsX変異体は、これまでに同定されているRdisn(I69)変異株由来のものと同じLPSを発現することが明らかである(Helander, I.M, Lindner, B., Brade, H.,Altmann;K., Lindberg, K.K., Rietschel, E.T., and Zahringer, U. (1988) Eur. J. Biochem. 177, 483−492; Preston, A., Maskell, D., Johnson, A., and Moxon, E.R. (1996) J. Bacteriol. 178, 396−402)。I69 LPS表現型はヘプトース生合成遺伝子gmhAの突然変異により生じたものであり(Brook, J.S., and Valvan M.A. (1996) J. Bacteriol. 178, 3339−3341)、これによりこの変異株はそのLPSにヘプトースを付加できなくなる。
【0120】
rfaF変異体 リピドAの結合型グルコサミン残基からのH共鳴期待値の他、RM118rfaF由来のLPS−OHのH NMR分析も一つのヘプトース単位由来の低電場領域でのアノマープロトン共鳴(〜5.19ppm)を示した。糖分析によれば、このHep残基がL−グリセロ−D−マンノヘプトース であることが確認された。これに応じて、ESI−MSスペクトルは構造Hep1−Kdo−リピドA−OHに一致するm/z721.6における単一の豊富な二価イオンによって占められていた(表2)。
【0121】
orfH変異体 orfH遺伝子が不活性化されている生物は、ESI−MSデータから明らかなように、各々2つのHep残基を含有するLPSグリコフォームの混合物を生じた(表2)。RM118rfaF LPSに比べ、付加的なHep残基、すなわちHep(PEtn0−2Kdo−リピドA−OHを含有する主なグリコフォーム集団に加え、Hex−PCho単位を含有する種であった。糖分析によれば、D−グルコースおよびPChoメチルプロトンの存在がH NMR 3.24ppmに強いシグナルを与えることが示された。期待されたように、この株由来のLPSは免疫ブロット実験においてPCho特異的モノクローナル抗体(Mab)であるTEPC−15(Weiser, J.N., Shchepetov,M., and Chong, S.T.H. (1997) Infect. Immun. 65, 943−950)と反応した。結合分析では、末端Hep、3−置換Hepおよび3,4−二置換Hep残基の存在が明らかになった(表3)。親株の構造を基にすれば、このデータは2つの主要なグリコフォーム構造1および2を発現するLPSを合成する能力を有するRM118orfHと一致する(なお、PEtnは部分置換を示す)。
【0122】
【化1】
Figure 2004506086
構造1:R=H
構造2:R=PCho(6)−(−D−Glc
【0123】
T−SDS−PAGEにより分析した際のRM118orfHのLPSでの2つのバンドの存在(図1)はこの結果に一致する。
【0124】
lpsA変異体 RM118lpsA由来のLPS−OHのESI−MS分析によれば、RM118orfHと比較した場合、付加的なHep残基を有するグリコフォームを含むことが示され(表2)、Hex1グリコフォームを含有するホスホコリンが主要なLPS種である(図2)。結合分析は構造2の末端Hepへのヘプトースの一連の付加と一致していた(表3)。これに応じ、このO−脱アシル化LPSサンプルのH NMRスペクトルはインフルエンザ菌のLPSトリヘプトース内部コア要素の低電場領域(5.0〜6.0ppm)において特徴的なパターン(HepII,5.76ppm;HepI/HepIII,5.16/5.15ppm)を示した(図3)(Risberg, A., Masoud, H., Martin, A.,Richards,’J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180)。このデータは構造3を有するRM118lpsA由来LPSに一致している(図2、表4)。
【0125】
lic2A変異体 RM118lic2A株由来のO−脱アシル化LPSのESI−MS分析から、主要なLPS種としてのHex2グリコフォームの存在が明らかになった(表2)。RM118lic2A LPSの組成分析では、唯一の中性ヘキソースとしてD−グルコースが存在することが示され、結合分析ではそれが末端残基であることが示された(表3)。結合分析ではまた、相当な割合の2−結合ヘプトース残基が明らかになった。lpsA変異体由来のLPSサンプルでは2−置換ヘプトース残基は、その残基がその結合分析法で用いられる加水分解条件下では容易に切断されないPEtn基(構造3参照)で置換されているために検出されなかったということは注目に値する。これらの発見によれば、lic2A変異体由来のLPSはlpsA変異体のものとは、構造4に示されているように(表4)HepIIIの2位にグルコース残基を有する点で異なっているものと結論付けることができる。4.65ppmに付加的なH NMRシグナルが存在することは、この末端D−Glcpが、非置換類似体の場合と比べてHepII共鳴値がアップフィールド側にシフトした(5.58ppm)構造を有することを示し、5.76ppmはHepIIIへの1,2−結合(構造4)を示す(Masoud, H., Moxon, E.R.,Martin, A., Krajcarski, D., and Richards, J.C. (1996) Biochem. 36, 2091−2103; Schweda, E.K.M., Hegedus,,O.E., Borrelli, S., Lindberg, A.A., Weiser, J.W., Maskell, D.J., and Moxon, E.R.(1993) Carbohydr. Res. 246, 319−330; Schweda, E.K.H., Jansson, P.−E., Moxon, E.R., and Lindberg, A.A. (1995) Carbohydr. Res. 272, 213−224)。
【0126】
Lic3A変異体 同様に、シアリル化グリコフォームを不活性化させた変異体を作出した。これらの研究から関連のlic3A変異体でのシアル酸の欠損が確認された。この変異体の作製についてはHoodet al., Mol. Microbio. 39:341−350, 2001に記載されている。このシアリル化グリコフォームはlic3A遺伝子の破壊を含む株には存在しないことが分かった。lic3Aは、同じラクトシルアクセプター部分をめぐって競合する、別の相変異グリコシルトランスフェラーゼ、LgtCの作用によって改変されたシアリルトランスフェラーゼ活性を有することが証明されている。
【0127】
lgtC変異体 RM118lgtC変異体では、O−脱アシル化LPSサンプルのESI−MS分析からHex3グリコフォームの存在が明らかになった。糖分析ではlgtC変異体由来のLPSがD−ガラクトースを含むことが示され、結合分析によればこれは末端残基として存在することが分かった(表3)。結合分析ではまた、4−結合D−Glcp残基はHepIIIのラクトース部分により置換されている(構造5)主要なHex3グリコフォーム(表3)と一致する。LPS−OHのH NMRスペクトルは発明者らがこれまでに親株に存在しているラクトース含有Hex3 LPSグリコフォームに関して報告しているものと同じである(Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180)。髄膜炎菌において、lgtC遺伝子は1,4−(−ガラクトシルトランスフェラーゼをコードしていることが示されている(Wakarchuk, W.W., Cunningham, A.M., Watson, D.C., and Young, N.M. 1998)。RM118由来のlgtCに関して同様の機能が、組換え酵素のトランスフェラーゼ活性を調べることで、またRM118lgtC変異体由来のLPSの分析によって示されている。
【0128】
lgtD変異体 lgtD遺伝子が不活性かされているインフルエンザ菌RM118株ではHex3とHex4 LPSグリコフォームの混合物が合成された(表2)。それに応じてLPSのT−SDS−PAGE分析では2つのバンドが確認され、lgtC変異体由来のものの電気泳動移動度に相当するものとそれより遅く移動するバンドであった(図1)。この変異株由来のLPSは末端および4−結合D−Galp残基を含んでいた(表3)。親株とそのlgtc変異体の1D H NMRスペクトルを比較したところ、Hex4グリコフォームに(−D−Galp−(1−(4)−β−D−Galp単位が存在することが示され、5.01ppmにおけるシグナルは末端(−D−Galp残基(構造6)を示す(表4)。このlgtD遺伝子産物を合成アクセプターFCHASE−Pによるグリコシルトランスフェラーゼ活性に関して調べた。CEアッセイにおいて親株RM118とlgtD変異株を比較したところ、変異株で(−GalpNAcトランスフェラーゼ活性が欠損していることが示されされた(図4)。
【0129】
lgtF変異体 インフルエンザ菌におけるlgtF遺伝子の突然変異によりLPSがMab TEPC−15とも反応しないし(データは示されていない)、それらのH NMRにおいて特徴的なPChoメチルプロトンシグナル(3.24ppm)も示さない株が生じた。結合分析では、このLPSが末端β−D−Glcp残基を欠き、モノ−3−置換HepI残基だけを含むことが示された(表3)。lgtF変異体由来のLPS−OHではそのESI−MSにおいて、親株のLPSで見られるものと同じ、HepIIIからのオリゴ糖の長さが異なるグリコフォームの分布が見られた(表2)。HepIIIからのグロボテトラオース単位の完全な伸長はHepIにβ−D−Glcp残基が存在しても存在しなくとも起こるということは注目に値する(図5)。本発明者らは親株がLPSグリコフォームの混合集団を合成することができ、そこではグロボテトラオース単位β−D−GalpNAc−(1(3)−α−D−Galp−(1−(4)−β−D−Galp−(1)(4)−β−D−Glcpを与える末端β−D−GalpNAc残基を付加することでガラビオース単位が伸長することを示した(Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C, Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180)。
【0130】
lic1変異体 lic1変異体由来のO−脱アシル化LPSのESI−MS分析では、PCho置換が存在しないこと以外は親株に見られるもの(Risberg, A.,Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C.,Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999). Eur. J. Biochem. 261, 171−180)と同じヘテロなグリコフォーム混合物(表2)が示された。RM118においてlic1遺伝子座は、3,4−二置換ヘプトース(HepI)に結合したβ−D−Glcp6位におけるPCho置換基の発現を担う遺伝子を含むことが示されている(Risberg, A., Masoud, H., Martin, A., Richards, J.C., Moxon, E.R., and Schweda, E.K.H. (1999) Eur. J. Biochem. 261, 171−180; Weiser, J.N., Shchepetov, M., and Chong, S.T.H. (1997) Infect. Immun. 65, 943−950)。RM118lic1 O−脱アシル化LPSのH NMRスペクトルを調べたところ、3.24ppmにおいて特徴的なPChoメチルプロトンシグナルが存在しないことが明らかになった。さらにこのlic1変異体由来のLPSは予測されたように(34)Mab TEPC−15とは反応しなかった(データは示されていない)。
【0131】
実施例2
内部コア部分の置換および修飾
NTHi2019株では、HepIがラクトースで置換されている(R=(−D−Galp−(1−(4)−(−D−Glcp;R/R=H)(N.J. Phillips et al. Biochemistry, 31 (1992) 4515−4526)。NTHi375株では、HepIIIが小数のグリコフォーム集団でシアリル化ラクトースで置換されている(R=(−D−Galp、R=H、R=Neu5Ac−(−D−Galp−(1−(4)−(−D−Glcp−(1(2))(D.W. Hood et al. Mol. Micro., 33 (1999) 679−692)。本実施例では、メチル化分析、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)およびNMPを用いることで4つのNTHi株由来のLPSの構造研究の結果をまとめる。
【0132】
インフルエンザ菌非定型株486、176、285および1159はEskola教授の株コレクションからFinnish otitis media cohort studyの一環として入手し(Hood, 上記参照)、内耳からの単離物も得た。細菌は37℃にてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)2g/mL、ヘミン10g/mL、およびノイラミン酸(NeuAc)50g/mLを含有するブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)ブロス(Difco)3.7%W/V中で増殖させた。LPSは凍結乾燥菌から、フェノール−クロロホルム−石油エーテル法の後、超遠心分離を行うことで得た(A. Risberg et al. Eur. J. Biochem., 261 (1999) 171−180)。無水ヒドラジンでのO−脱アシル化(37℃、1時間)または薄い酢酸水溶液でのKdoケトシド結合の切断(100℃、2時間)のいずれかによってLPSサンプルから得たオリゴ糖サンプルに対してMSに基づく方法および高電場NMR法を用いて詳細な構造研究を行った。
【0133】
NTHi株株486、176、285および1158由来のLPSの構成糖分析では総て、それらの対応する酢酸アルジトールおよび2−ブチルグルコシド誘導体のGLC−MSによって確認される主成分としてのD−グルコース(Glc)、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース(GlcN)およびL−グリセロ−D−マンノ−ヘプトース(Hep)を示した。さらに、486、176および1158株ではD−ガラクトース(Gal)が確認された。またさらに、D−グリセロ−D−マンノ−ヘプトースは1158株の主成分であることが分かった。この糖は最近はじめてNTHi9274株においてインフルエンザ菌LPSの成分として確認されたものである(M.M. Rahman et al. Glycobiology, 9 (1999) 1371−1380)。O−脱アシル化LPS(LPS−OH)をノイラミニダーゼで処理した後、高速陰イオン交換クロマトグラフィーおよびESI−MSを行ったところ、シアリル酸(NeuAc)がNTHi486株の主成分であることが示された。NTHi176、285および1158株でも微量が検出された。
【0134】
LPS−OHサンプルのESI−MSでは、総ての株でヘテロなグリコフォーム混合物が示された。NTHi486由来のLPS−OHのESI−MSスペクトルの部分が図2に示されている。これらのNTHi株の主要LPSグリコフォームの提案される組成は表2に示されている。総てのグリコフォームは、推定されるO−脱アシル化リピドA(リピドA−OH)とリン酸化Kdoリンカーを介して結合した保存されたPEtn置換トリヘプトシル内部コア部分を含む。
【0135】
PChoは総ての株に主成分として存在する。1158株ではHex2−グリコフォーム中に2つのPChoが存在することが示されている。285株では最も短いグリコフォーム(Hex1)が見られた。
【0136】
LPSサンプルのメチル化分析が表3に示されている。176および486株ではこれまでに発表されているインフルエンザ菌構造の必須成分である2−置換Hepの痕跡だけが検出できたことは注目に値する。その代わりに相当量の3−置換Hepが検出されたが、これはインフルエンザ菌LPSの共通のL−(−D−Hepp−(1(2)−L−(−D−Hepp−(1−(3)−[(−D−Glcp−(1−(4)−]−L−(−D−Hepp−(1−(5)−(−Kdop内部コア要素の新しい置換パターンを示すものである。176および486株における主要グリコフォームの完全構造をNMRにより決定したが、その結果を以下にまとめる。285株のメチル化分析ではとりわけ3,4−二置換Hepの他、多量の末端L、D−Hepが明らかになったが、これはトリヘプトシル内部コア部分のHepIIおよびHepIIIに置換が存在しない(すなわち、RおよびR=H)ことを示すものであった。この株のHex1グリコフォームの完全な構造(図3)をLPS−OHに対するNMRにより求めた(データは示されていない)。1158株のメチル化分析ではとりわけ、NMRによって明らかな(データは示されていない)構造要素D−(−D−Hepp−(1)(6)−(−D−Glcp−(1(4)−L−(−D−Heppと結合可能な6−置換D−Glcおよび末端D,D−Hepが示された。主要なLPSグリコフォームはHepII(R=(−D−Glcp)およびHepIII(R=PCho(6)−(−D−Glcp)において置換されていることが分かった。NTHi1158の主要なグリコフォームの仮の構造が図4に示されている。
【0137】
NTHi176の詳細構造 薄い酢酸でLPSを部分酸加水分解したところ、可溶性リピドAとコアオリゴ糖画分が得られ、コアオリゴ糖画分をGPCで分離すると(図5)、フラクション1、フラクション2およびフラクション3が得られた。これらのフラクションのメチル化分析データは表3に示されている。フラクション1における3−および6−置換Galおよび4−置換GlcNの存在はこのオリゴ糖について新規な構造特徴が存在することを示している。フラクション1についてのCE−ESI−MSではとりわけm/z1214.0における主要な二価イオンが明らかになり、これはフラクション2およびフラクション3で見られるものよりもこのフラクションでかなり高い分子量のグリコフォーム(HMG)を示す。NTHi285についても同様の結果が得られた(下記参照)。フラクション2に関するESI−MSスペクトル(データは示されていない)からは、主要なグリコフォームが組成PCho・Hex・Hep・PEtn・AnKdo−olおよびPCho・Hex・Hep・PEtn・AnKdo−olを有することが示された。フラクション3に関するESI−MS(データは示されていない)からは、それぞれ組成Hex・Hep・PEtn・AnKdo−olおよびHex・Hep・PEtn・AnKdo−olを有するグリコフォームが示された。
【0138】
フラクション2のHex3グリコフォームの構造は詳細なH NMR分析により決定することができた。フラクション2のH NMRスペクトルは図6aに示されている。PChoのメチル基に特徴的なシグナルはδ3.24に見られた。HepI−HepIIIのアノマー共鳴はそれぞれ5.03−5.13、5.83および5.26で確認された。GlcI、GlcIIおよびGalに相当するスペクトルはそれぞれδ4.56、4.62および4.64における2D COSYおよびTOCSYスペクトルで確認された。化学シフトデータもメチル化分析と一致してGlcIIとGalが末端残基であることを示す。δ4.3においてGlcIのH−6,6’の値がダウンフィールド側にシフトしていることは、この残基がこの位置でPChoで置換されていることを示す。プロトン対GlcII H−1/Glc I H−4、Glc I H−1/Hep I H−4,6間の内部残基NOEの連結性(図7)により、二糖単位の配列およびそのHepIとの結合点をβ−D−Glcp−(1→4)−[PCho(6]−β−D−Glcp−(1→4)−L−α−D−Hepp−(1→として確定された。GalのH−1とHepIIIのH−3/H−2の間の内部残基NEOは、β−D−Galp−(1→3)−L−α−D−Hepp−(1→単位の証拠となった。これらのデータを考え合わせると、PCho置換Hex3グリコフォームは構造2(図8)を有するものと結論付けることができた。フラクション2のメチル化分析では相当量の末端Hepが示され、ESI−MSスペクトルで見られたPCho置換Hex2グリコフォームは構造3(図8)を有するものと結論付けることができた。
【0139】
フラクション3のH NMRスペクトルは図6bに示されている。ESI−MSデータと一致して、PChoのメチルプロトンのシグナル強度は低いことから、フラクション2についてはPChoは高い程度では発現しないのは明らかである。HepIIIのアノマープロトンのシグナルはほぼフラクション2の対応するものと同じ化学シフトで共鳴する。δ5.26においてα結合の末端Glc残基(GlcIII)のアノマー共鳴が見られた。β結合ヘキソースのアノマー領域はフラクション2よりもよりヘテロなものであった。2Dスペクトルでは末端Glc残基のスピン系がδ4.50および4.45で見られた。4−置換Glcおよび2つの末端Gal残基はδ4.56、4.61および4.54で確認された。NOEデータからは、構造要素Glcp−(1→4)−β−D−Glcp−(1→4)−L−α−D−Hepp−(1→ならびにHepIIIに結合したGalが確認された。さらにNOE結合性から、α結合GlcがHepIIの3位に結合していることが確認された。これらの証拠を考え合わせると4に示されているようなHex4グリコフォームの構造が得られる(図8)。2−置換Hepおよび末端Hepを示すメチル化分析に一致して、Hex3グリコフォームは構造5および6を有するものと結論付けられる(図8)。
【0140】
NTHi486の詳細構造 弱い酸加水分解の後に得られたLPS−OHおよびオリゴ糖材料(OS−1)に対してESI−MS、NMRおよびメチル化分析を集中的に使用した後、グリコフォームNTHi486の主要なLPSの構造が確立された(図9)。176株については、HepIIIはO−3位で置換されているが、この場合にはグルコース残基による置換である。NTHi486LPSはラクトース部分の末端β−ガラクトースと結合したNeu5Acで著しくシアリル化されている。
【0141】
LPS−OHのH NMRスペクトルでは、δ5.8と5.0の間のほぼ同じ領域に5つの別個のシグナルが見られた。これらのシグナルのうち3つが内部コア領域の3つのヘプトース残基(HepI−HepIII)のH−1シグナルに相当していた。α結合グルコース残基(GlcI)のアノマーシグナルは5.28(J3.8Hz)に確認され、β結合ヘキソースに相当するアノマーシグナルはδ4.52と4.42の間に確認された。OS−1のH NMRスペクトルでは、ヘプトースのアノマー共鳴ならびに一つのアセチル化部位がδ5.83−5.75(1H、分離していない)およびδ5.14−5.04(3H、分離していない)で見られた。一つのO−アセチル基のメチルプロトンに相当する強いシグナルがδ2.17で見られ、これはHSQCスペクトルのδ21.0における13Cシグナルに相当するものであった。内部コア領域内のグリコースの配列は、隣接する残基上のアノマープロトンおよびアグリコンプロトンを結びつけるトランスグリコシドのNOE結合性から確定した。PChoのメチルプロトンのシグナルはδ3.21(LPS−OH)およびδ3.23(OS−1)で見られ、この結果から、またPEtnからのエチレンプロトンのスピン系は以前に得られたものと同じであった(A. Risberg et al. Eur. J. Biochem., 261 (1999) 171−180)。LPS−OHおよびOS−1のH−31p NMR相関研究では、PChoおよびPEtnがそれぞれGlcIおよびHepII残基と結合していることが示された。シアル酸のH−3メチレンプロトン由来の特徴的なシグナルはLPS−OHのH NMRスペクトルにおける(1.79)(H−3ax,J3ax 3eq=12.3Hz)および(2.73)(H−3eq,J3eq,4=4.3Hz)に見られた。Neu5AcのH−3axとGal残基のH−3の間の内部残基NOEにより、メチル化分析によって示されているように、シアル酸がガラクトースと2,3−結合していることが確認されたα−D−Neu5Ac−(2→3)−β−D−Galp−(1→。OS−1のHepIIIにおける核の数に関するいくつかの化学シフト値はLPS−OHにおける対応する化学シフトとはかなり異なっていた。ダウンフィールドシフトはOS−1における
HepIIIのH−2(+0.99ppm)、H−1(+0.03ppm)、H−3(+0.22ppm)、およびC−2(+1.2ppm)で見られ、一方、C−1(−3.3ppm)およびC−3(−2.5ppm)はアップフィールド側へシフトした。よって、HepIIIはO−2位でアセチル化していることが示された。このアセチル化部位はHMBC実験でもさらに支持され、カルボニル炭素(δ174.0)とHepIIのH−2の間で相関性が見られた。さらにまた、カルボニル炭素とO−アセチル基のメチルプロトンの間でもクロスピークが見られ、これにより置換基の存在が確認された。
【0142】
NTHi486のlpsA変異体由来のLPSのESI−MSおよびメチル化分析ではHepIIIから鎖が伸長していないことが示された。O−脱アシル化材料のメチル化分析では、末端Glc、末端Hep、3,4−二置換Hep、2,3−二置換Hepおよび6−置換GlcNが相対比34:39:20:3:4で示された。LPS−OHのESI−MSスペクトルでは、m/z812.9/853.9で2つの主要な三価イオンが見られ、PCho(Hex(Hep(PEtn1−2(P(Kdo(リピドA−OHに相当した。
【0143】
NTHi176および285における高分子量グリコフォーム NTHi285由来のLPSに対して弱い酸加水分解を行った後にゲル濾過を行ったところ、図3に示されているグリコフォームを含んだ主要画分とともにそれより大きな分子量をのグリコフォームを含有する少量の画分が示された。この高分子量(HMW)画分の糖分析ではD−Glc、D−Gal、D−GlcNAcおよびL,D−Hepが示され、メチル化分析では末端Gal、3−置換Gal、6−置換Gal、4−置換GlcNAc、末端Hep、および3,4−二置換Hepを示した。CE−ESI−MSではとりわけm/z1052に主要な二価イオンが示された。このイオンに対するMS/MSによれば、NTHi176のHMW(上記参照)で見られたm/z1214と同様のフラグメンテーションパターンを示した。特に娘イオンがm/z692に見られ、組成物PchoHex−Hex−HexNAcに相当した。
【0144】
実施例3
インフルエンザ菌Rd lic1lpsA二重変異体に対するモノクローナル抗体(Mab)の作製
6〜8週齢の雌BALB/cマウスにホルマリンで殺したRd lic1lpsA全菌体を腹腔内感作させた。各マウスには一回の注射当たり0.5ml PBS中10細胞を投与した。14日目、35日目にマウスに追加抗原投与し、45日目に試験採血した。56日目、同種LPSに対して最高の抗体力価を示す2匹のマウスに上記に示されるように最終2回の腹腔内注射を行い、0.1mlのPBSを静注した。最後の注射から3日後に融合を行った。2匹の免疫マウス由来の脾臓細胞を刺激したものを33%PEG1450中10:1の比率のSP2/O−Ag14ミエローマ細胞と融合させた。ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)選択で生き残った推定ハイブリッドを同種Rd lic1lpsA LPSおよび異種Rd LPSに対するELISAによりスクリーニングした。対象となる抗体を産生するハイブリドーマを安定性とクローン性を確保するために制限希釈を用いて2回クローニングした。EIAマウスMabイソタイピングキット(Amersham Canada, Oakville, ON)を用いて使用済み上清についてIgサブクラスを調べた。クローンは、2,6,10,14−テトラメチル−ペンタデカン(プリスタン)0.5mlを腹腔内処置した後、10〜14日のBALB/cマウスに10のハイブリドーマ細胞を腹腔内注射することで腹水として拡張した。注射後7〜14日後に腹水を穿刺した。
【0145】
間接的ELISA 培養上清および腹水を96ウェルNunc Maxisorp EIAプレートで精製LPSに対してアッセイした。37℃で3時間、0.02M MgClを含有する0.05M炭酸バッファー(pH9.8)100L中1.0gのLPSでウェルを被覆した後、室温にて1時間、1%BSA−PBS 200Lでブロッキングした。PBS−T(0.05%Tween20)で洗浄した後、培養上清および腹水のサンプルを1%BSA−PBSで連続希釈したものを加え、室温で1〜3時間インキュベートした。次にこれらのプレートを洗浄し、アルカリ性ホスファターゼ標識ヤギ抗マウスIgG(Cedarlane Laboratories, Hornby, ON)を1%BSA−PBS中に1:3000希釈したものを室温にて1時間加えた。これらのプレートをp−NPPリン酸基質系(Kirkegaard & Perry Laboratories, Gaitherberg, MD)で顕色させた。30〜60分後、Dynatech EIAプレートリーダー410nmにてプレートを走査した。
【0146】
結果 ホルマリンで殺したRd lic1lpsAの全菌体をBALB/cマウスに感作させ、融合させ、同種LPSおよび異種Rd LPSに対して最初のELISAスクリーニングを行ったところ、12個のハイブリドーマが確立された。この12種のMabをRd変異体LPSのパネルに対して試験した後、2種のMab、LLA5、IgG2aおよびLLA4、IgG2bをさらなる試験のために選択した。LLA5は25のうち14の非定型株LPSと交差反応することが分かり、LLA4は同種のLPSを認識した。構造解析によれば、LLA5は高分子量グリコフォームを検出し、LLA4は同種の株に存在する内部コアエピトープと結合することが明らかになった。
【0147】
実施例4
Hi Rdlic1lpsALPS−OH−BSA結合体の作製
これまでに記載されている手順に従い、インフルエンザ菌二重変異株Rdlic1lpsA由来のLPSを単離し、フェノール−水抽出プロトコールにより精製し、無水ヒドラジン処理によりO−脱アシル化した。糖分析では、LPS−OHのオリゴ糖部分がL−グリセロ−D−マンノ−ヘプトースおよび唯一検出可能なアルドースとしてのグルコースを含んでいることが示された。LPS−OHのESI−MSによれば、分子量2114.9Daに相当するm/z1056.5に二価イオンが見られ、これはGlc(HepIII(PEtn(Kdo(P−リピドA−OH(1)の予測組成と一致するものである。H NMRは明らかにRdlpsA単一変異体で見られたLPS−OHのもの(実施例1)と同じ保存されたトリヘプトシル部分に関する、5.16(HepI)、5.15(HepIII)および5.76(HepII)おけるヘプトース残基の十分定義されるアノマーシグナルを示した。Pchoメチル共鳴によるシグナル(Risberg et al., Eur. J. Biochem. 261:171−180, 1999)はこのH NMRでは検出されなかった。
【0148】
実施例5
炭水化物(CHO)−BSA結合体、その後の非結合CHOでの感作
これまでの例からのLPS−OHはGu et al., Infect. Immun. 64:4047−4053, 1996に記載の方法に従ってBSAを結合させることができる。あるいは図Cに記載のようにカナダのNAtional Research CouncilのWei Zouが開発した手法に従い、Kdoカルボキシル基を介してBSAをMH(4(4−N−マレイミドメチル)シクロヘキサン1−カルボキシルヒドラジド.1/2ジオキサンと結合させることもできる。要するに、上記スキームに示されているリンカー戦略を用い、LPS−OHはEDCによるKdoカルボキシル基の選択的活性化を介してBSAと結合させたのである。
【0149】
6〜8週齢の雌BALB/cマウスにRd lic1lpsA odA LPS−BSA結合体を腹腔内感作させた。各マウスには一回の注射当たり0.2ml Ribis完全アジュバント(Cadarlane Laboratories Ltd, Hornby, ON)中2gの炭水化物を与えた。21日目と42日目に同量の結合ワクチンでマウスに追加抗原投与を行った。137日目にマウスに、Ribi中に10gの1003 lic1lpsA odA LPSを含有する最後の腹腔内注射を行い、147日目に血清を採取した。
【0150】
実施例6
インフルエンザ菌株に対するモノクローナル抗体LLA4およびLLA5の作製
LPS生合成機構に所定の突然変異を有する株を用い、所定のLPSオリゴ糖構造に対するモノクローナル抗体(Mab)を生産することができる。保存された内部コア部分を含むインフルエンザ変異株に対してネズミMabを作製した。例えばBALB/cマウスにホルマリンで殺したRd lic1lpsAの全菌体を感作させた。同種LPSおよび異種Rd LPSに対して最初のELISAスクリーニングを行ったところ、12個のハイブリドーマが確立された。この12種のMabをRd変異体LPSのパネルに対して試験した後、2種のMab、LLA5、IgG2aおよびLLA4、IgG2bをさらなる試験のために選択した。
【0151】
LLA4は同種株に存在する内部コアエピトープを認識することが分かった。ELISA試験では、LLA5は遺伝的に多様な培養コレクションの多数の株から精製したLPS(25種のうち14の非定型株LPS)と交差反応を示した(表1)。Mab LLA5によって認識されるエピトープはRdlpsA単一変異体に、また、HepIII残基を欠いたさらに末端切断されたRdlic1lpsA二重変異体に存在した(表2)。LLA5エピトープは単一変異体RdlgtFのLPSには存在しない。上で述べたように、lgtF遺伝子はHepIの4位に(−D−Glc残基を付加するのに必要とされる。
【0152】
この25株由来のLPSを当技術分野で公知の構造解析技術によって比較したところ、驚くべきことに、Mab LLA5が内部コア部分のHepI単位から鎖伸長を生じるラクト−N−ネオテトラオース(LNnT)含有オリゴ糖エピトープを検出していた。Mab LLA5によっては認識されない株はLNnTを含む鎖の伸長がないことを特徴とした。LNnTを含む鎖伸長を発現するインフルエンザ菌株は標準的な実験室増殖条件下では低い程度でしかそれを発現しない(例えば??参照)。それはこれまでには発現レベルが低いためにRd株では同定されていない(Risberg et al., Eur. J. Biochem.,261:717−180, 1999)。これが今般、当業者に公知の手法である弱い酸加水分解およびバイオゲルP−4でのゲル浸透クロマトグラフィーによる分離によってRd株(RM118)のLPSから各オリゴ糖を遊離させることにより単離および同定された(図1)。このLNnT含有コアオリゴ糖画分は少量の高分子量成分で標識された「HMW画分」として溶出する。これはRd株で同定されている主要なグリコフォーム(Risberg et al., 1999, 上記)からなる大きなピーク(400を中心とする)と比べると少量成分である。Rd株由来のHMWコアオリゴ糖はタンデム質量分析(MS/MS)技術(Thibault and Richards, In methods in Molecular Biology, Vol 145,: Bacterial toxins: Methods and Protocols(Holst, O., ed.) pp 327−344, Human a Press, 1999 およびその中の参照文献)によりHepIからLNnT含有鎖の伸長を有するものとして特徴付けられた。ESI−MS/MSにおけるフラグメンテーションパターンは配列Gal−GlcNAc−Gal−Glcを有し、末端糖単位Petn−GalNAcでキャップされたLNnTオリゴ糖鎖伸長が存在することを示した(図2)。
【0153】
Rd株をシアル酸を含有する培地で増殖させると、シアリル化オリゴ糖を含有するLPSグリコフォームが発現する。本発明者らはHepIIIからのオリゴ糖伸長として結合している構造(−Neu5Ac(2−3)−(−D−Galp−(1−4)−(−D−Glcを有するシアラリルラクトースを見出した。さらにまた、このオリゴ糖伸長はいくつかのNTHi株でも確認された。相変異遺伝子lic3AはラクトースアクセプターにCMP−Neu5Acを付加するシアリルトランスフェラーゼをコードしている。Rd株を記載の条件下で増殖させた場合、この生物のLPSでLNnT鎖伸長部のシアリル化類似体が検出される。構造(−Neu5Ac(2−3)−(−D−Glcp−(1−4)−(−D−GlcpNAc−(1−3)−(−D−Galp−(1−4)−(−D−Galpを有する内部コアLPSからのシアリル化LNnTオリゴ糖鎖伸長はO−脱アシル化LPSのES−MSによりRdlgtClic3A二重変異体で容易に検出される(図3)。発明者らはMS/MS技術、高電界核磁気共鳴技術、およびメチル化分析(いずれも当業者に公知の構造解析法)を用い、保存された内部コアにおけるLPSの構造がシアリル化LNnT含有鎖の伸長を有することを確認した。発明者らはインフルエンザ菌がrfb遺伝子座の遺伝子を含む、LNnT含有オリゴ糖鎖伸長部を付加するための一連の機構を用いていることを見出した。検討した総てのHi株で、rfb遺伝子の存在とLNnTの形成の間には絶対的な相関がある。
【0154】
また、Mab LLA5と反応性があるNTHi株由来のLPSは弱い酸加水分解の後のゲル浸透クロマトグラフィーで高分子量(HMW)画分を示す。例えばNTHi285株のLPSは、LNnTを含有し、また、Petn−GalNAc単位によってキャップされている鎖伸長の存在がMS/MSフラグメンテーションパターンから同定される(図5)少量のHMW画分(図4)を示す。このLNnT含有オリゴ糖鎖伸長はMS/MS/MS実験からさらに確認された(図6)。LIA5反応性のない株、例えばNTHi1247株の弱い酸加水分解では検出可能なHMW画分は見られない(図7)。
【0155】
【表1】
Figure 2004506086
Figure 2004506086
【0156】
【表2】
Figure 2004506086
Figure 2004506086
【0157】
【表3】
Figure 2004506086
【0158】
【表4】
Figure 2004506086
【0159】
【表5】
Figure 2004506086
【0160】
【表6】
Figure 2004506086
Figure 2004506086
【0161】
【表7】
Figure 2004506086
Figure 2004506086
【0162】
【表8】
Figure 2004506086
【0163】
【表9】
Figure 2004506086
【0164】
【表10】
Figure 2004506086

【図面の簡単な説明】
【図1】図Aは、インフルエンザ菌リポ多糖の保存された内部コアトリヘプトシル部分の模式図である。
【図2】図Bは、高分子量型RM118の構造確認図である。
【図3】図Cは、ワクチンと担体タンパク質とのコンジュゲーションを示す模式図である。
【図4】図Dは、マススペクトルを示す図である。
【図5】図1は、RM118野生型および推定されるグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子に変異を有する株から精製したLPSのT−SDS−PAGE後の電気泳動移動パターンである。RM118は野生型のLPSに相当し、同系変異体は関連のLPS遺伝子で示されている。
【図6】図2は、主要なHex1グリコフォーム(構造3)由来の二価および三価イオンを示す、インフルエンザ菌RM118株のlpsA変異体由来のO−脱アシル化LPSの陰イオンESI−MSである。
【図7】図3は、5.0と6.0ppmの間にα−アノマープロトン領域を示す、インフルエンザ菌RM118株のlpsA変異体由来のO−脱アシル化LPSのH NMRスペクトルである。3,4−二置換Hep(HepI)、6−PEtn置換Hep(HepII)、末端Hep(HepIII)およびリピドA領域のリン酸化α−GlcNに相当するアノマー共鳴が示されている。
【図8】図4は、インフルエンザ菌RM118株のLgtD活性のキャピラリー電気泳動分析である。パネルA/トレース1は音波処理物の100,000xgペレットを酵素源として用いた完全反応混合物であり;トレース2はUDP−GalNAcを除いたこと以外は1の反応混合物と同じであり;トレース3は変異体RM118:lgtDからの完全反応混合物であり;トレース4はUDP−GalNAcを除いたこと以外はトレース3と同じである。ピークAはFCHASE−P製剤中の不純物であり、ピークbはFCHASE−グロボテトラオースであり、ピークcはFCHASE−Pである。パネルB/トレース1はパネルAトレース1で記載した反応から得られたTCL精製産物である。トレース2はβ−ヘキソサミニダーゼで処理したこと以外はトレース1と同じ材料である。
【図9】図5は、インフルエンザ菌RM118株のlgtF変異体由来のO−脱アシル化LPSの三価分子イオン領域の陰イオンESI−MSである。Hex2(β−D−Galp−(1→4)−β−D−Glcp)、Hex3(α−D−Galp−(1→4)−β−D−Galp−(1→4)−β−D−Glcp)およびHex3・HexNAc(β−D−GalpNAc−(1→3)−α−D−Galp−(1→4)−β−D−Galp−(1→4)−β−D−Galp)から生じたピークが示されている。
【図10】図6は、Risberg et al., (16)の分析の結果に基づいたインフルエンザ菌RM118株由来のLPSの構造の模式図である。この実験で同定された遺伝子座のLPS生合成において提案される作用部位を示し、関連の糖結合に矢印で結ばれている。相変異遺伝子座は下線で示されている。LPS構造においては、KDOは2−ケト−3−デオキシオクツロソン酸を、HepはL−グリセロ−D−マンノ−ヘプトースを、GlcはD−グルコースを、GalはD−ガラクトースを、GalNAcはN−アセチルガラクトサミンを、PEtnはホスホエタノールアミンを、Pはリン酸を、Pchoはホスホコリンを表す。ヘプトース残基については上から下に、ヘプトースI、ヘプトースII、次にヘプトースIIIである。
【図11】図1は、インフルエンザ菌Rd株のLPS内部コアからの鎖伸張に関与する遺伝子を示す図である。
【図12】図2は、NTHi486株由来のO−脱アシル化LPSの陰イオンESI−MSスペクトルの一部を示す図である。
【図13】図3は、NTHi285で見られた主要なHex1 LPSグリコフォームの構造を示す図である。
【図14】図4は、NTHi1158の主要なLPSグリコフォームの仮構造を示す図である。
【図15】図5は、弱い酸加水分解後のNTHi176のLPS(100mg)のバイオゲルP−4クロマトグラムを示す図である。
【図16】図6は、NTHi176由来のフラクション2(a)およびフラクション3(b)の270MHz H NMRスペクトルを示す図である。
【図17】図7は、NTHi176のフラクション2の500MHz2D NOESYスペクトルの一部を示す図である。
【図18】図8は、NTHi176LPS由来のオリゴ糖の構造を示す図である。
【図19】図9は、NTHi486のLPSグリコフォームを含有する主要なNeuAcの構造を示す図である。

Claims (17)

  1. 可変外部コアオリゴ糖鎖伸長部を実質的に含まない、リポ多糖の保存されたトリヘプトシル内部コア部分を含んでなる、リポ多糖部分。
  2. 以下の構造を有するリポ多糖のトリヘプトシル内部コア部分を含んでなる、リポ多糖部分。
  3. HepIIが、その6位において、Petnまたはこれと機能的に同等なものにより置換されているものである、請求項1または2に記載のリポ多糖部分。
  4. 哺乳類組織との交差反応性を有するオリゴ糖鎖伸長部を実質的に含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリポ多糖部分。
  5. ヒト組織抗原を模倣するオリゴ糖鎖伸長部を実質的に含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリポ多糖部分。
  6. O−アシルが、請求項1〜5のいずれか一項に記載のトリヘプトシル内部コア部分内のいずれかの位置で置換されているものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリ多糖部分。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリポ多糖部分を含んでなる、動物宿主においてインフルエンザ菌により引き起こされる疾病に対する防御を与えるための免疫原組成物。
  8. 結合ワクチンである、請求項7に記載の免疫原組成物。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリポ多糖部分を含んでなるインフルエンザ菌株を得るための、インフルエンザ菌においてリポ多糖を産生する生合成経路中の少なくとも一つの遺伝子の使用。
  10. インフルエンザ菌に対する機能性交差反応性抗体を誘導するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリポ多糖部分を含んでなる少なくとも一つの免疫原性エピトープの使用。
  11. インフルエンザ菌が非定型インフルエンザ菌である、請求項10に記載の使用。
  12. インフルエンザ菌との交差反応性を有し、かつ請求項1〜6のいずれか一項に記載のリポ多糖部分によって誘導される、機能性抗体。
  13. インフルエンザ菌に対する機能性交差反応性抗体を製造する方法であって、
    (a)請求項1〜6のいずれか一項に記載のリポ多糖部分に対する抗体を作製し、
    (b)複数のインフルエンザ菌株に対して前記抗体を試験し、そして
    (c)交差反応性を有する抗体を選択する
    ことを含んでなる、方法。
  14. インフルエンザ菌が非定型インフルエンザ菌である、請求項13に記載の方法。
  15. インフルエンザ菌の感染に起因する疾病に対して宿主を免疫化する方法であって、免疫上有効量の請求項6または7に記載の免疫原組成物を宿主に投与することを含んでなる、方法。
  16. インフルエンザ菌が非定型インフルエンザ菌である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記疾病が、中耳炎、髄膜炎、肺炎および気道感染症から選択されるものである、請求項15または16に記載の方法。
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