JP2004503127A - 無線信号の評価方法および無線信号の評価装置 - Google Patents

無線信号の評価方法および無線信号の評価装置 Download PDF

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Abstract

それぞれ受信信号(U〜U)を送出する複数のアンテナ素子(A〜A)を備えたアンテナ装置を有する無線受信機において無線信号を評価するために、加入者局(MSk)に対しN個の複数の第1のウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))が求められる。SWUのかたちで積を形成することにより得られる加入者信号Iに含まれるシンボルが推定される。ここでWは第1のウェイトベクトルのM×Nの行列であり、SはN個の成分をもつ選択ベクトルであり、Uは受信信号(U〜U)のベクトルである。選択ベクトルは動作フェーズ中、周期的に新たに決定しなおされる。無線信号評価装置にはたとえば、それぞれ1つの同じ送信機(MSk)に割り当てられたN個のウェイトベクトルの記憶素子(10)と、選択ベクトル(S)のための制御入力側を備えたビームシェーピング回路(I)が設けられている。

Description

【0001】
本発明は、複数のアンテナ素子を備えたアンテナ装置を有する無線通信システム用の受信機において無線信号を評価する方法および装置に関する。
【0002】
無線通信システムではメッセージ(音声、画像情報またはその他のデータ)が伝送チャネル(無線インタフェース)を介し電磁波によって伝送される。この場合、伝送は基地局から加入者局へのダウンリンク(下り方向)でも加入者局から基地局へのアップリンク(上り方向)でも行われる。
【0003】
電磁波によって伝送される信号は、伝播媒体中を伝播するときにたとえば干渉による妨害を受ける。また、たとえば受信機入力段のノイズなどによってノイズ妨害の発生する可能性がある。さらに回折や反射により信号成分は様々な伝播経路を辿る。その結果、受信機における信号はしばしば複数の寄与量のミックスされたものとなり、これは同じ送信信号に基づくものであるが、受信機には幾重にもなってそれぞれ異なる方向から様々な遅延や減衰や位相を伴って到来する可能性がある。他方、受信信号のそれらの寄与量は受信機においてコヒーレントに位相関係を変化させながら互いに干渉し合い、そこにおいて短期間のタイムスケールで消滅作用を引き起こす可能性がある(高速フェージング)。
【0004】
DE19712549A1によれば、アップリンクにおける伝送容量を高める目的でインテリジェントアンテナ(スマートアンテナ:smart antenna)すなわち複数のアンテナ素子を備えたアンテナ装置を利用することが知られている。これによりアンテナ利得をアップリンク信号が到来する方向へ所期のように配向することができる。
【0005】
この種のアンテナ装置はセルラ移動無線通信システムでの使用を意図している。それというのもセルラ移動無線通信システムによれば、伝送チャネルすなわち対象とする移動無線通信システムに応じて搬送波周波数やタイムスロットや拡散符号などを、妨害を及ぼす干渉を加入者局間で引き起こすことなく、1つのセル内で同時にアクティブな複数の加入者局に割り当てることができるからである。
【0006】
A.J.Paulraj, C.B.Papadias による”Space−time processing for wireless communications”, IEEE Signal Processing Magazine, 11. 1997 p.49−83によれば、アップリンクとダウンリンクのための種々の空間的信号分離方法が知られている。
【0007】
DE19803188Aにより公知の方法によれば、基地局から加入者局への無線コネクションのための空間的共分散行列が求められる。この場合、基地局において共分散行列の固有ベクトルが計算され、これはコネクションのためにビームシェーピングベクトルとして用いられる。コネクションのための送信信号はビームシェーピングベクトルにより重み付けられ、送信のためアンテナへ供給される。セル内干渉はたとえば端末機器においてジョイントデテクションを利用しているためビームシェーピングには算入されず、セル間干渉による受信信号の誤りは無視される。
【0008】
具体的に説明すると、この方法はマルチパス伝播の伴う環境において良好な伝送特性をもつ伝播経路を求め、基地局の送信電力を空間的にその伝播経路に集中させる。しかしこのようにしても、この伝送路における干渉によって短期間、信号が消滅して伝送中断が引き起こされるおそれを回避することはできない。
【0009】
上述のアプローチによって利点がもたらされるのは、無線信号の到来方向を受信機においてはっきりと確認することができ、かつ種々の伝播経路で受信機に到来する無線信号間の遅延が十分に大きいような環境だけである。このような前提条件の欠けている環境では、たとえば伝播時間差が短く無線信号の明確な到来方向を確認できない建物内部などでは、この公知の方法によっても単一のアンテナにより受信した場合よりも良好な結果はもたらされない。したがって位相の揺らぎによって受信信号の短期間の減衰または消滅(高速フェージング)の引き起こされるおそれがある。
【0010】
X. Bernstein, A.M.Haimovich による ”Space−Time Optimum Combining for CDMA Communications”, Wireless Personal Communications 第3巻 1969, p.73−89 Kluwer Academic Pulishers から、無線通信システムにおいて複数のアンテナ素子を備えたアンテナ装置を適用する別の方式が知られている。この方法が前提とするのは、位相の揺らぎに起因する受信信号の消滅はたいてい小さい空間領域に限られており、したがってアンテナ装置のアンテナ素子すべてには同時に該当しないことが多い、ということである。そしてこのことは次のようにして利用される。すなわち、伝送チャネルが各アンテナ素子ごとに個別に短いタイムインターバルで推定され、同一の送信機から到来して個々のアンテナ素子により受信された受信信号が最大比合成器(maxmum ration combiner)において重畳され、そのようにして得られた信号が評価される。しかしこの方法はアンテナ素子の送受信特性の空間的配向とは適合性がなく、つまり無線システムの1つのセル内において互いに空間的に分離されている種々の加入者局のためにチャネルを多重利用する余地はない。しかもこの方法の効果は、受信機に到来する複数の無線信号に1つの方向が割り当てられる可能性のある環境において使用すると、著しく制約される。つまり複数の無線信号に1つの到来方向を割り当てることができるということは、種々のアンテナ素子が受信する受信信号間に位相の相関が存在するのと同じことを意味する。そしてこのことは、アンテナ装置の1つの素子が受信信号の消滅を被るときには、隣接するアンテナ素子においても同じ状況であるという無視できぬ確率の存在を意味するのである。
【0011】
したがって本発明の課題は、複数のアンテナ素子を備えた無線受信機において無線信号を評価する方法および装置において、受信機の受信特性を1つの送信機に配向させることができるようにし、それにもかかわらず高速フェージングによる信号の欠落から保護されるようにすることである。
【0012】
本発明によればこの課題は、本発明による請求項1の特徴部分に記載の方法および請求項14の特徴部分に記載の装置によって解決される。従属請求項には本発明の実施形態が示されている。
【0013】
本発明による方法はたとえば基地局と加入者局とを備えた無線通信システムにおいて用いられる。加入者局はたとえば移動無線ネットワークにおける移動局であり、あるいはコードレス加入者コネクションのためのいわゆる加入者アクセスネットワークにおける固定局である。基地局は複数のアンテナ素子を備えたアンテナ装置(スマートアンテナ)を有する。これらのアンテナ素子によって、無線インタフェースを介したデータの指向性受信もしくは指向性送信が実現される。
【0014】
本発明による方法において前提とするのは、マルチパス伝播の伴う環境において同じ送信機から到来する無線信号に対し、受信機への無線信号の到来に関して複数の方向が割り当てられる可能性が多いことである。これらの方向は送信機と受信機が静止しているときには変化せず、双方のいずれかが移動している場合、この移動により受信信号に及ぼされる変化は、高速フェージングにより引き起こされる変化に比べれば僅かである。個々のアンテナ素子から供給される受信信号を適切なウェイトベクトルの成分で重み付けることにより、受信機の受信特性を相応の方向に偏向させることができる。ウェイトベクトルに比べて迅速に変えられる選択ベクトルを考慮することで、個々の伝播経路における高速フェージングに対しダイナミックに整合することができ、また、種々の伝播経路間で受信特性を切り替えることができ、あるいはアンテナ素子の受信信号に対する種々の伝播経路の寄与量を同時に考慮することができる。
【0015】
ウェイトベクトルを求める目的で有利であるのは初期フェーズ中、M個の受信信号の第1の空間的共分散行列を生成し、第1の共分散行列の固有ベクトルを求め、それらを第1のウェイトベクトルとして用いることである。
【0016】
固有ベクトルを求める際に高速フェージングによる偶発的な影響を制限する目的で好適であるのは、第1の共分散行列を動作フェーズの多数の周期に対応する期間にわたり平均化することである。このようにすることで固有ベクトルを求める際の位相の揺らぎの影響による誤りが平均化される。
【0017】
第1の共分散行列を、アンテナ素子により受信された受信信号の全体に対し画一的に生成することができる。しかし受信信号に対する個々の伝送路の寄与量は辿ってきた経路のみならずその経路にかかった伝播時間によっても異なるので、伝送された無線信号が符号分割多重無線信号であるならば、第1の共分散行列を無線信号のタップごとに個別に生成すると有利である。
【0018】
処理の手間を削減する目的で好適であるのは、第1の共分散行列のすべての固有ベクトルを求めるのではなく、最大の固有値を固有ベクトルだけを求めることである。それというのも最大の固有値は減衰の最も僅かな伝播経路に対応するからである。
【0019】
本発明による方法の第1の有利な実施形態によれば動作フェーズ中、アンテナ素子の受信信号から、受信信号のベクトルと行列Wとの乗算によりいわゆる固有信号のベクトルが形成され、ここで行列Wの列(または行)はそれぞれ求められた固有ベクトルである。換言すれば、受信信号は求められたすべての固有ベクトルにより重み付けられる。このようにして得られた固有信号の各々は、アンテナ素子の受信信号に対する伝送路の寄与量に対応する。つまり、個々のアンテナ素子から供給される寄与量は個々の伝送路の寄与量に変換されるのである。ついで、このようにして形成された固有信号のベクトルを選択信号で重み付けることにより、評価すべき中間信号が得られる。ここで中間ステップで形成された固有信号の電力を測定することができ、選択ベクトルの成分が有利には各周期ごとそれらの固有信号の電力に依存して決定される。この実施形態は簡単であり安価に実現可能である。それというのもシンボル推定まで固有信号を後続処理するために、スマートアンテナ:smart antennas用の既存の受信機を使用することができるからである。
【0020】
本発明による方法の択一的な第2の実施形態によれば動作フェーズ中、各周期ごとに第2の空間的共分散行列が生成され、求められた固有ベクトルの固有値が第2の空間的共分散行列に対して計算され、選択ベクトルの各成分がそれらの成分に対応する固有ベクトルの固有値に基づき決定される。この方法はかなり僅かな回路技術的煩雑さで実現可能である。なぜならば複数の固有信号を生成する必要がないからであり、固有ベクトルを求めるために受信信号の共分散行列の生成はいずれにせよ必要とされるからである。
【0021】
これら両方の方法の実施形態において、選択ベクトルの成分を最大比合成法に従い決定することができる。択一的に、所定数のそのつど最良の伝送路を除いて、つまり第1の実施形態であれば所定数の最も強い固有信号を除いて、あるいは第2の実施形態であれば最大の固有値を除いて、選択ベクトルのすべての成分を0にセットすることができる。この場合、所定数をたとえば1とすることができる。
【0022】
好適には送信機は受信機にとって既知であるトレーニングシーケンスを周期的に送出するので、受信機は受け取ったトレーニングシーケンスに基づき第1のウェイトベクトルを求めることができる。これによりたとえば本発明による方法の第2の実施形態によれば、送信されたトレーニングシーケンスごとに第2の共分散行列を生成し、そのようにして選択ベクトルを各トレーニングシーケンスごとに更新することができる。複数の送信機がこの受信機と同時に通信できるならば、それらの送信機は好適には直交するトレーニングシーケンスを使用する。
【0023】
M個のアンテナ素子をもつアンテナ装置を備えた無線受信機のための無線信号評価装置には、ビームシェーピング回路と信号処理ユニットが設けられている。この場合、ビームシェーピング回路は、アンテナ素子から供給される受信信号のためのM個の入力側と、それらの受信信号を送信機に割り当てられたウェイトベクトルと重み付けることにより得られる中間信号のための出力側を有している。また、信号処理ユニットは得られた中間信号に含まれるシンボルを推定する。この無線信号評価装置には、そのつど同じ送信機に割り当てられたN個のウェイトベクトルを記憶するための記憶素子が設けられており、上述のビームシェーピング回路は選択ベクトルのための制御入力側を有しており、この選択ベクトルの成分により中間信号に対する個々のウェイトベクトル各々の寄与量が決定される。
【0024】
ウェイトベクトルは有利には、M個の受信信号に基づき生成された第1の共分散行列の固有ベクトルである。本発明による装置の第1の有利な実施形態によればビームシェーピング回路は2つの回路段を有している。この場合、1番目の回路段はN個のウェイトベクトルのそれぞれ1つにより受信信号を重み付けるためのN個の分岐を有しており、2番目の回路段はN個の分岐から供給された固有信号を選択ベクトルにより重み付ける。この種の装置は格別簡単に実現可能である。それというのもビームシェーピング回路の2番目の回路段は、BernsteinおよびHaimovich, op. cit.に記載された形式の慣用の無線信号評価装置にすでに設けられているからである。とはいえそこではそれは個々のアンテナ素子信号を評価するために設けられているのであって、固有信号を評価するためには設けられていない。本発明の第1の実施形態とこの種の慣用の装置との基本的な相違点はビームシェーピング回路に1番目の回路段を追加したことと選択ベクトルの生成の仕方にある。
【0025】
第2の実施形態によればビームシェーピング回路は、ビームシェーピングベクトルと固有ベクトルの上述の行列Wとの積を形成するための計算ユニットを有しており、この場合、得られた積がウェイトベクトルとしてビームシェーピング回路において用いられる。この実施形態の場合にはただ1つの回路段しか必要とされないので、ビームシェーピング回路を格別簡単に構成することができる。
【0026】
次に、図面を参照しながら実施例について詳しく説明する。
【0027】
図1は移動無線ネットワークのブロック図である。
【0028】
図2は符号多重(CDMA)無線伝送におけるフレーム構造の概略図である。
【0029】
図3は本発明の第1の実施形態による無線信号評価装置を備えた無線通信システムの基地局に関するブロック図である。
【0030】
図4は上述の装置により実行される方法のフローチャートである。
【0031】
図5は本発明の第2の実施形態による無線信号評価装置を備えた無線通信システムの基地局に関するブロック図である。
【0032】
図6は上述の装置により実行される方法のフローチャートである。
【0033】
図7は本発明の第3の実施形態による無線信号評価装置を備えた無線通信システムの基地局に関するブロック図である。
【0034】
図8は上述の装置により実行される方法のフローチャートである。
【0035】
図1には無線通信システムの構造が描かれており、この構造において本発明による方法もしくは本発明による装置を適用することができる。ここには複数の移動体交換局MSCが設けられており、これらは互いにネットワークでつながれており、もしくは固定回線網PSTNに対するアクセスを確立する。さらにこれらの移動体交換局MSCはそれぞれ少なくとも1つの基地局制御装置BSCと接続されている。他方、各基地局制御装置BSCにより少なくとも1つの基地局BSへのコネクションが可能となる。この種の基地局BSは無線インタフェースを介して、加入者局MSとのメッセージコネクションを確立することができる。このため基地局BSの少なくともいくつかは、複数のアンテナ素子A〜Aをもつアンテナ装置を装備している。
【0036】
図1には一例として、加入者局MS1,MS2,MSk,MSnと基地局BSとの間でユーザ情報とシグナリング情報を伝送するためのコネクションV1,V2,Vkが描かれている。基地局BSと以下ではすべての加入者局の代表として考察する加入者局MSkとの間のコネクションには複数の伝播経路が含まれており、これらはそれぞれ矢印によって表されている。
【0037】
オペレーション・メンテナンスセンタOMCによって、移動無線ネットワークもしくはそれらの一部分のためのコントロールおよび保守の機能が実現される。この構造の機能を本発明を組み込むことのできる他の無線通信システムに転用可能であり、たとえばコードレス加入者コネクションの行われる加入者アクセスネットワークのためなどに転用可能である。
【0038】
図2には無線伝送のフレーム構造が示されている。TDMAコンポーネントによれば、たとえばB=1.2MHzなどのような広帯域の周波数領域が複数のタイムスロットtsたとえば8個のタイムスロットts1〜ts8へ分割される。周波数領域B内の各タイムスロットtsは周波数チャネルFKを成している。ユーザデータ伝送のためだけに設けられている周波数チャネルTCH内において、複数のコネクションの情報が無線ブロックで伝送される。
【0039】
ユーザデータ伝送のためのこれらの無線ブロックはデータdをもつ複数のセクションから成り、そこには受信側で既知のトレーニングシーケンスtseq1〜tseqnをもつセクションが埋め込まれている。データdはコネクションごとに微細構造すなわち加入者符号cにより拡散されるので、受信側ではたとえばn個のコネクションをこれらのCDMAコンポーネントにより分離可能となる。
【0040】
データdの個々のシンボルの拡散によって、シンボル期間Tsym内で期間TchipをもつQ個のチップが伝送されるようになる。この場合、Q個のチップはコネクション固有の加入者符号cを成している。さらにタイムスロットts内には、各コネクションのそれぞれ異なる信号伝播遅延時間を補償するためのガード期間gp(quard period)も設けられている。
【0041】
広帯域の周波数領域B内で相前後するタイムスロットtsがフレーム構造に従い構成されている。したがってこの場合、8個のタイムスロットtsがまとめられて1つのフレームが形成され、その際、たとえばこのフレームのタイムスロットts4がシグナリング用周波数チャネルFKまたはユーザデータ伝送用周波週チャネルTCHを成しており、後者のチャネルはコネクションのグループにより繰り返し利用される。
【0042】
図3にはW−CDMA無線通信システムの基地局のブロック図がごく概略的に描かれており、この基地局は、加入者局MSKから受け取ったアップリンク無線信号および場合によっては他の加入者局のアップリンク無線信号を評価するための本発明による装置を装備している。さらにこの基地局はアンテナ素子A〜Aを備えたアンテナ装置を有しており、これらのアンテナ素子はそれぞれ受信信号U〜Uを供給する。ビームシェーピング回路1は複数のベクトル乗算器2を有しており、これらの各々は受信信号U〜Uを受け取って、これらの受信信号のベクトルとウェイトベクトルw(k、1),w(k、2),...,w(k,N)とのスカラ積を形成する。このウェイトベクトルを以下では固有ベクトルと称する。固有ベクトルの個数Nつまり乗算器2の個数Nは、アンテナ素子の個数Mとまったく同じであるかまたはそれよりも少ない。
【0043】
なお、ベクトル乗算器2から供給される出力信号E〜Eを加入者局MSkの固有信号と称する。
【0044】
ベクトル乗算器2はビームシェーピング回路1の1番目の回路段を成している。2番目の回路段はベクトル乗算器3によって構成されており、図面にはその内部構造が描かれており、これはベクトル乗算器2の構造をも代表するかたちで表されている。これはN個の固有信号E〜EのためのN個の入力側と、選択ベクトルSのN個の成分のための対応する入力側を有している。スカラ乗算器4は各固有信号を選択ベクトルSの対応する成分Sと乗算する。得られた積は加算器5によって加算されてただ1つのいわゆる中間信号Iが形成され、この信号は推定回路6へ供給され、受信信号中に含まれているシンボルが推定される。推定回路6の構造はそれ自体公知であり本発明の一部を成すものではないので、推定回路についてはここではこれ以上説明しない。
【0045】
信号プロセッサ8にも受信信号U〜Uが供給され、このプロセッサはそれらの受信信号の共分散行列Rxxを生成する。これはたとえば加入者局MSkから周期的につまりその加入者局に割り当てられたタイムスロットで伝送されるトレーニングシーケンスの評価により生成され、このトレーニングシーケンスは信号プロセッサにとって既知のものである。このようにして得られた共分散行列は信号プロセッサ8により多数の周期にわたり平均化される。この平均化を数秒〜数分の期間に及ぶようにすることができる。
【0046】
【外6】
Figure 2004503127
【0047】
基地局のアンテナ装置に到来するアップリンク信号に対し基地局BSへの種々の到来方向を伝播経路を対応づけることができれば、これらの伝播経路の各々に1つの固有ベクトルが対応する。平均共分散行列はM個の行と列をもつ行列であり、したがってこれは最大でM個の固有ベクトルをもつことができるが、とはいえそれらの固有ベクトルのうちいくつかはトリビアルである可能性があるし、あるいは受信信号にさして寄与していない伝送路に対応する可能性がある。たとえばアンテナ素子Mの個数が3よりも大きいとき、本発明を実施するために共分散のすべての固有ベクトルを求める必要はない。この場合、第1の計算ユニット9により求められた固有ベクトルの個数NをMよりも小さくすることができる。
【0048】
【外7】
Figure 2004503127
【0049】
記憶素子10はこの図では一体化されたコンポーネントとして描かれているが、複数のレジスタから構成し、それらの各々が1つの固有ベクトルを収容し、対応するベクトル乗算器2と接続して1つの回路ユニットを成すようにすることもできる。
【0050】
ベクトル乗算器2により形成された固有信号E〜Eはそれぞれ、単一の伝送路がアンテナ装置AEにより受信されたアップリンク無線信号全体に及ぼす寄与量に相応する。これら個々の寄与量の電力は、加入者局MSkの順次連続するタイムスロット間のタイムインターバルのオーダで短期間、個々の伝送路において位相が揺らぐことに起因して大きく変化する可能性があり、それによって個々の伝送路において信号の消滅が引き起こされる可能性がある。しかし種々の伝送路は互いに依存していないので、それら種々の伝送路における信号消滅の確率は相関性がない。したがってN個の信号すべてが同時に消滅して受信が途切れてしまう確率は、N個のアンテナ素子の受信信号における場合よりも低い。その理由は、N個のアンテナ素子の受信信号の場合、たいていはアンテナ素子が空間的に狭く近接していることから欠落の確率に相関性があることによる。
【0051】
ビームシェーピング回路の2番目の回路段によって、N個の固有信号が組み合わせられて1つの中間信号Iが形成される。この2番目の回路段は第2の信号プロセッサ11を有しており、これはベクトル乗算器2の出力側と接続されていて、これにより固有信号の電力が測定され、ベクトル乗算器3を制御するための選択ベクトルSが形成される。1つの簡単な実施形態によれば、第2の信号プロセッサ11は消滅していない成分だけをもつ選択ベクトルSを生成し、これは最も強い固有信号を受け取るスカラ乗算器4へ供給される。1つの有利な実施形態によれば、第2の信号プロセッサ11は最大比合成法を適用し、つまり第2の信号プロセッサ11は固有信号E〜Eの電力に依存して選択ベクトルSの係数s 〜s を選定し、その際、選択ベクトルSの成分により重み付けられた固有信号E〜Eの加算により最適なSN比をもつ中間信号Iが得られるようにする。
【0052】
【外8】
Figure 2004503127
【0053】
すなわち、定められた期間にわたりあるいは加入者局における定められた個数の周期もしくはタイムスロットにわたり目下の共分散行列Rxx全体が加算され、得られた合計が加算された共分散行列の個数により除算される。とはいえ有利であるのは移動平均値形成であり、それというのもこの場合、平均共分散行列を最初に得る前に多数の目下の共分散行列Rxxを強制的に捕捉する必要がないからであり、また、この場合にはそのつど最も新しい共分散行列が最も強く考慮されるからであり、つまり加入者局が移動しているときに個々の伝播経路の方向をおそらく最も重く再現する共分散行列Rxxが最も強く考慮されるからである。
【0054】
移動平均による平均値形成は
【0055】
【数1】
Figure 2004503127
【0056】
【外9】
Figure 2004503127
【0057】
【外10】
Figure 2004503127
【0058】
【外11】
Figure 2004503127
【0059】
伝送コネクションの早い時期に求められた固有ベクトルに代えて予め定められた第1のウェイトベクトルをアップリンク信号の重みづけに用いる。予め定められたこの第1のウェイトベクトルの個数は基地局のアンテナエレメントの個数よりも小さい。またこれを後に求められる固有ベクトルの個数とは等しく選定してもよい。
【0060】
予め定められた第1のウェイトベクトルは直交系、有利には正規直交系となっている。これは特に(1,0,0,...),(0,1,0,...),(0,0,1,0,...)のかたちのベクトルのセットである。予め定められたウェイトベクトルをこのように選択することは、各ウェイトベクトルについてアップリンク信号を受信する唯一のアンテナエレメントが使用されることを意味する。このようにして基地局は平均共分散行列またはそこから求められる固有ベクトルが最初に得られるまえに種々のアンテナエレメント間で受信を切り替えることによりアップリンク信号の受信の最適化を試みることができる。
【0061】
これに代えて伝送の開始時に、平均共分散行列の計算で考慮されるその時点での共分散行列の個数を後の継続作業の場合よりも小さく選定し、たとえ固有ベクトルに関して充分な統計に基づく平均共分散行列と同程度に信頼性の高い記述は得られなくとも、できる限り迅速に平均共分散行列を使用できるようにすることもできる。極端なケースでは調査された第1の時間スロットに則して得られた最新の共分散行列を平均共分散行列として使用し、その記述能を上述の移動平均による平均値形成によって徐々に改善していくこともできる。
【0062】
この方法の動作フェーズにおいて、このようにして得られた固有ベクトルw k、1)〜w(k,N)に基づきステップS5において固有信号E〜Eが生成される。この固有信号の生成は行列乗算に対応する。
【0063】
E=WU、ここで
【0064】
【数2】
Figure 2004503127
【0065】
はそれぞれ固有信号のベクトル、固有ベクトルの行列、受信信号のベクトルを表す。
【0066】
ステップS6において固有信号E〜Eの電力が測定され、これらに基づきステップS7において選択ベクトル
S=(s,s,・・・,s
が決定される。したがってステップS8における中間信号Iの生成は最終的に積
=SWU
に相応し、ここで固有信号E〜Eの強さに依存して選択ベクトルSを迅速に更新することによって、個々の伝送路の高速なフェージングに対し迅速に整合させることができるようになる。
【0067】
【外12】
Figure 2004503127
【0068】
この固有値は固有信号Eの電力のように、固有ベクトルもしくは固有信号に対応づけられた伝播経路の品質に対する尺度であり、これは図3および図4を参照しながら前述した特性をもつ選択ベクトルSを生成する目的で第2の計算ユニット12により利用される。ベクトル乗算器3はこの選択ベクトルSに基づき固有信号E〜Eを合成して中間信号Iを形成し、そのシンボルが推定回路6において推定される。
【0069】
この装置により実行される方法が図6にフローチャートとして描かれている。図4による方法との相違点はステップS6とステップS7にあり、ステップS6において目下の共分散行列Rxxに対する固有ベクトルの固有値が求められ、この固有値に基づきステップS7において選択ベクトルSが決定される。
【0070】
図7には本発明による装置の第3の実施形態が示されている。ベクトル乗算器2はここでは省略されており、その代わりに受信信号U〜Uがベクトル乗算器3のM個のスカラ乗算器4へじかに供給される。この場合、第1の信号プロセッサ8、平均値回路7、記憶素子10および計算ユニット9,12は図5の実施形態のものと代わらない。第2の計算ユニット12により求められた一群の固有値は選択ベクトルSとして選択ユニット13へ供給され、このユニットは同時に記憶素子10から固有値の行列Wを受け取り、行列乗算
【0071】
【数3】
Figure 2004503127
【0072】
を実行する。
【0073】
ベクトル乗算器3の出力側で得られる中間信号Iは図7の実施形態の場合と同じであるが、ベクトル乗算器2が省略されたことで回路の煩雑さが格段に抑えられる。たしかにその代わりに第2の計算ユニット12において行列の乗算が行われるけれども、それに付随する処理の煩雑さはずっと僅かである。その理由は、この行列演算は動作フェーズの各周期ごとに1回実行するだけでいいのに対し、ベクトル乗算器2,3は各周期ごとに多数のサンプリング値を処理しなければならず、それゆえずっと高い処理速度をもたなければならないからである。
【0074】
図8のフローチャートには図7の実施形態の動作が描かれている。ステップS1〜S6′までは図6に示した方法と同じである。変形されたステップS7″において、選択ベクトルSと固有ベクトルの行列Wとの積が計算され、ステップS8″において受信信号がそのようにして得られたベクトルにより重み付けられる。ステップS9におけるシンボルの推定はやはり他の実施形態と同じようにして行われる。
【0075】
当然ながらこの実施例の場合にも、選択ベクトルの成分と目下の共分散行列Rxxに対する一群の固有値と同一でなくてよい。つまり選択ベクトルSの成分を任意に適切なかたちで固有値に基づき計算することができ、たとえば所定数のそのつど最大の固有値に対応する成分を除きすべての成分を0にセットすることができる。
【0076】
上述の方法および装置の1つの実施形態の基礎とする着想は、基地局のアンテナ装置により受信されたアップリンク信号は、個々のアンテナ素子におけるそれらの到来方向もしくはそれらの相対的な位相およびそれらの減衰に関して異なるだけでなく、加入者局MSkから基地局BSへのそれらの伝播時間に関しても異なる多数の寄与量から合成されている、ということである。個々の寄与量の伝播時間もしくはそれらの相対的遅延は、それ自体公知のようにレイク探索器(Rake Searcher)によって求めることができ、個々のアンテナ素子各々に対するアップリンク無線信号から複数の受信信号を発生させることができる。これらの受信信号はCDMA無線通信システムではタップ tap と呼ばれ、各タップごとにアップリンク無線信号の逆拡散とデスクランブルに対し、測定された遅延に従いそれぞれアップリンク無線信号と拡散およびスクランブル符号との間で異なる時間のずれがベースとされるようにすることで、それらのタップが互いに区別される。
【0077】
【外13】
Figure 2004503127
【0078】
このことでM個のアンテナ素子を有するアンテナ装置を用いて、個々の信号遅延に関して異なるM個の伝播経路よりも多くの伝播経路を区別することができ、評価に際して考慮することができる。このため、ただ1つの共分散行列だけしか形成されない場合よりも著しく詳細かつ精確にアップリンク無線信号を評価できるようになる。
【0079】
【外14】
Figure 2004503127
【0080】
この目的でまずはじめに、加入者局の平均共分散行列すべてについて固有ベクトルと固有値の全体が計算され、それぞれ異なるタップに属する可能性のある固有ベクトルの全体から、最大の固有値をもつものが求められて記憶素子10の中に格納される。これにより生じる可能性は、アップリンク信号に対しごく僅かにしか寄与していないタップの固有ベクトルはまったく考慮されないままになることである。また、1つの加入者局に割り当てられる固有ベクトル全体の個数を、個々の伝送状況に依存してダイナミックに変化させることも可能である。したがってダイレクトな伝送路の場合、たとえば加入者局がまったく移動していないかゆっくりとしか移動していないならば、固有ベクトルの個数をN=1となるまで低減してもよく、その際、これによって開放された処理能力(もしくは図3と図5の装置の事例ではベクトル乗算器2)を、伝送条件がもっと劣っている他の加入者局へ振り分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
移動無線ネットワークのブロック図である。
【図2】
符号多重(CDMA)無線伝送におけるフレーム構造の概略図である。
【図3】
本発明の第1の実施形態による無線信号評価装置を備えた無線通信システムの基地局に関するブロック図である。
【図4】
図3の装置により実行される方法のフローチャートである。
【図5】
本発明の第2の実施形態による無線信号評価装置を備えた無線通信システムの基地局に関するブロック図である。
【図6】
図5の装置により実行される方法のフローチャートである。
【図7】
本発明の第3の実施形態による無線信号評価装置を備えた無線通信システムの基地局に関するブロック図である。
【図8】
図7の装置により実行される方法のフローチャートである。

Claims (19)

  1. それぞれ受信信号(U〜U)を送出する複数のアンテナ素子(A〜A)をもつアンテナ装置(AE)を備えた無線受信機の無線信号評価方法において、
    a)初期化フェース中、加入者局(MSk)に対しM個の成分をもつN個の複数の第1のウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))を求め、
    b)動作フェーズ中、式
    =SWU
    の積の形成により得られる中間信号(I)に含まれるシンボルを推定し、ここでWは前記第1のウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))のM×Nの行列であり、SはN個の成分をもつ選択ベクトルであり、Uは受信信号(U〜U)のベクトルであり、前記選択ベクトルSを動作フェーズ中、周期的に新たに決定しなおす
    ことを特徴とする無線受信機の無線信号評価方法。
  2. 【外1】
    Figure 2004503127
    請求項1記載の方法。
  3. 【外2】
    Figure 2004503127
    請求項2記載の方法。
  4. 【外3】
    Figure 2004503127
    請求項2または3記載の方法。
  5. 【外4】
    Figure 2004503127
    請求項2、3または4記載の方法。
  6. 動作フェーズ中、固有信号(E〜E)のベクトルEを式E=WU
    に従い形成し、前記選択ベクトル(S)の成分を各周期内で前記固有信号(E〜E)の電力に依存して決定する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
  7. 動作フェーズ中、各周期内で第2の空間的共分散行列(Rxx)を生成し、該第2の空間的共分散行列(Rxx)のために前記第1の固有ベクトルの固有値を計算し、前記選択ベクトル(S)の各成分を該成分に対応する固有ベクトルの固有値に基づき決定する、請求項2から5のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記選択ベクトル(S)の成分を最大比合成法に従い決定する、請求項6または7記載の方法。
  9. まえもって与えられた個数を除いて選択ベクトル(S)のすべての成分を0になるよう定める、請求項6または7記載の方法。
  10. 送信機(MSk)は受信機(BS)にとって既知であるトレーニングシーケンスを周期的に送出し、受信したトレーニングシーケンスに基づき第1のウェイトベクトルを求める、請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
  11. 前記第2の共分散行列(Rxx)を送信されたトレーニングシーケンスごとに生成する、請求項7または10記載の方法。
  12. 第1のウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))の算出を終了するまえに中間信号(I)として得られたシンボルを推定することにより無線信号の評価を行い、該中間信号を
    =SW’U
    のかたちの積を形成することにより取得し、ここでW’は予め定められたウェイトベクトル(w’(k、1)〜w’(k,N))のM×Nのマトリクスである、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
  13. 予め定められたウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))はそれぞれちょうど1つずつ消失しない成分を有する、請求項12記載の方法。
  14. M個のアンテナ素子(A〜A)をもつアンテナ装置(AE)を備えた無線受信機のための無線信号評価装置において、
    前記アンテナ素子(A〜A)から供給される受信信号(U〜U)のためのM個の入力側と、該受信信号を送信機(MSk)に割り当てられたウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))で重み付けることにより得られた中間信号(I)のための出力側とを備えたビームシェーピング回路と、
    該中間信号(I)に含まれるシンボルを推定するための信号処理ユニット(6)が設けられており、
    それぞれ同じ送信機(MSk)に割り当てられたN個のウェイトベクトルを格納する記憶素子(10)が設けられており、
    前記ビームシェーピング回路(1)は選択ベクトル(S)のための制御入力側を有しており、
    該選択ベクトル(S)の成分により、前記中間信号(I)に対する個々のウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))各々の寄与量が決定される
    ことを特徴とする無線受信機のための無線信号評価装置。
  15. 【外5】
    Figure 2004503127
    請求項12記載の装置。
  16. 前記ビームシェーピング回路は2つの回路段を有しており、1番目の回路段Nは受信信号をN個のウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))のそれぞれ1つで重み付けるためのN個の分岐を有しており、2番目の回路段は該N個の分岐から供給された出力信号(E〜E)を選択ベクトル(S)により重み付ける、請求項14記載の装置。
  17. 前記2番目の回路段は最大比合成器である、請求項14記載の装置。
  18. 前記ビームシェーピング回路は積SWを形成する計算ユニットを有しており、ここでWは第1のウェイトベクトル(w(k、1)〜w(k,N))のM×N個の行列であり、SはN個の成分をもつ選択ベクトル(S)である、請求項14記載の装置。
  19. 移動無線通信システムにおける基地局(BS)の一部分である、請求項14から18のいずれか1項記載の装置。
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