JP2004501314A - エンジン温度過昇保護 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】温度過昇状態(208)のときにエンジン(90)を保護するためにエンジン(90)を運転する方法と、この保護方法を実行するコンピュータプログラムに組み入れられる情報記録媒体と、この保護方法を実施する電子制御モジュール(100)が開示される。保護温度閾値(304)を超えたエンジン温度に応じて、エンジンが生成したトルクを表すトルク値が記録される。そしてエンジン冷却を促進するために、エンジントルクは、温度信号及び記録されたトルク値の非線型関数として低下される。
【選択図】図1

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、内燃機関(エンジン)の温度過昇保護の分野に係る。
【0002】
【背景技術】
今日製造されている殆どすべての車両は、その車両のエンジン、トランスミッション、ブレーキ、及び他の種々の主要系統を制御するために一つ又は複数のマイクロプロセッサその他のデジタル電子機器を利用している。マイクロプロセッサその他の電子機器は、一般に電子制御モジュール(ECM)と呼ばれる一つ又は複数のハウジング内に配置されているのが普通である。ECMは多用途のコンポーネントであって、ECMによって実行されるソフトウェアプログラムを変更することにより、その動作が変わり、又その制御対象となるアイテムの動作が変わりうる。プログラム可能なことにより、一つのECM設計を採用することで、多種類のエンジン又はトランスミッション又はブレーキ系統等に適用できる。プログラムの違いにより、他の面では同一構造のシステムが、異なった挙動を示すことがありうる。例えば、二つの同一構造のエンジンが、ECM内にプログラムされた校正テーブルの相違によって、一つのエンジン回転数で異なる定格トルクを持つこともありうる。
【0003】
エンジン保護は、多くの場合にECMにプログラムされている一つの重要な機能である。特に、エンジンの温度が、エンジンに損傷を与えたり壊れたりする可能性のあるレベルに達する温度過昇条件が、関心事である。ここで、エンジンの冷却率を増大させ、且つ/又はエンジンの発生する熱の発生率を低下させるために、ECMは、何らかの動作を起こさなければならない。冷却率が実際に増大するまでに相当の時間がかかる場合には、問題が発生しうる。付加的冷却によって温度降下がもたらされる前に、エンジン温度が限界レベルを超えることがありうる。他方、エンジンの熱発生率を減らすのは早急に可能かもしれないが、それは車両の運転者の意思には反するかもしれない。
【0004】
エンジンの温度過昇保護(温度過昇防止)の一つの方法が、1991年12月10日にハプカ(Hapka)等に発行された米国特許第5,070,832号に開示されている。ハプカ等の特許は、エンジンに関連する数種類の流体パラメータを監視して、故障条件を探す方法を開示している。典型的な故障としては、高い流体温度、低い流体液位、低い流体圧力が含まれる。流体パラメータ故障が検出されたとき、ECMは、検出された故障の程度と種類に基づいてトルク及び/又は速度を低下させる。流体パラメータが正常運転定格値から外れるにつれて、特性の低下が直線的に更に拡大する。フィルタリングによって、エンジン保護を必要とするほど厳しくはない流体パラメータの短時間の故障過渡から分離される。ハプカ等のアプローチは、エンジンが定格特性値又はその近くで動作しているときに最も有効である。ここでは、僅かな低下により、ECMがエンジンの実際の特性を低下させることを要求することが最もありそうなことである。特性低下によって、エンジンがその定格よりもはるかに低い状態で運転するシナリオに、効率低下を生ずる。これらの場合には、低下した特性が、エンジンの実際の特性よりもまだ高く、従って、ECMがエンジンの運転の変更のために要求されない。
【0005】
もう一つのエンジン温度過昇保護アプローチは、エンジンを制御するために使用されている一つ又は複数のトルク制御信号を減らすことである。このアプローチでは、ECMは、温度過昇状態の開始のトルク制御信号の値を記録する。そして、これらの信号は、温度の線型関数として低下し、それによって、エンジンによって発生するトルク及び熱が低下する。このアプローチで、ECMは、エンジンの温度低下を促進するために常に何らかの動作を行なう。
【0006】
両方のエンジン保護のアプロ−チの結果として、車両の運転者は、車両の速度及び/又は報知ランプの点灯の低下により、保護動作に気付くかもしれない。これが起きると、運転者は、スロットル入力を手動で増やすことによって、補償を試みるかもしれない。これは通常、好ましい効果をもたらなさない。ECMがエンジン保護過程を実行中だからである。その結果、典型的には、運転者は、エンジンがどこか故障していると結論付けることになる。エンジン故障が温度過昇状態の一つの可能性のある説明である一方で、エンジンが、設計運転環境外で運転されているということがもう一つの説明である。例えば、エンジン温度過昇状態は、車両が、非常に暑い日に重い荷物を積んで高い山で急坂を登っていくことによっても起こりうる。この例の場合には、エンジンを充分に冷却するためには、ラジエータに充分な空気が通っていないかもしれない。
【0007】
【発明の開示】
本発明は、温度過昇状態のエンジンを保護する運転方法、その方法を実行するコンピュータプログラムを含む情報記録媒体、及び、その方法を実行する電子制御モジュールである。全体のエンジン特性に及ぼす保護の衝撃を小さくするために、保護の初めは徐々に行なうものとする。その後、エンジン温度が上がり続けた場合は、保護の程度が高まる。
【0008】
保護温度閾値を越えたエンジンの温度を表す温度信号に応じて、エンジンによって生成されているトルクを表す動作トルク信号が記録されて、記録トルク値が作成される。次に、エンジン温度の低下を促進するために、エンジンによって生成されているトルクが、温度信号と記録されたトルク値との非線型関数として低下される。エンジン温度が報知温度閾値及び警報温度閾値を超えている場合は、それぞれ、報知インジケータ及び警報インジケータが作動される。トルク低下は、記録されたトルク値の或る固定パーセンテージを下回らないように、又、最小絶対トルク値を下回らないように、より大きい方に制限をしてもよい。
【0009】
保護、報知及び警報の各温度閾値を超えたエンジン温度を記録するために、診断故障記録を提供してもよい。エンジン温度が報知温度閾値を超え、次に警報温度閾値を超えたということを、他の制御モジュールやシステムに知らせるために故障同報を行なってもよい。
【0010】
従って、本発明の目的は、エンジン温度に対して非線型な応答を実行している温度過昇状態にあるエンジンを保護する方法及び装置を提供することにある。
これら及びその他の目的、特徴、効果は、添付図面を参照して以下に示す詳細な説明から明らかである。
【0011】
【最も好ましい発明の実施形態】
図1は、符号90で全体を示す典型的なエンジンコンポーネント及びユーザインタフェース92と通信を行なう電子制御モジュール(ECM)100を示している。図示のように、ECM100は、揮発性のランダムアクセスメモリ(RAM)104及び不揮発性の読取専用メモリ(ROM)106を有するマイクロプロセッサ102を含んでいる。もちろん、よく知られているように、ECMは、RAM104及びROM106の代わりに、又はそれらに加えて、フラッシュEPROMやEEPROMメモリ等の他の種類のメモリを含んでもよい。
【0012】
ROM106又は他の不揮発性メモリは、種々の制御及び情報機能を実現するために実行される命令群と、正常なエンジン動作を特徴付ける校正値及びパラメータを含むデータテーブル群とを含むことができる。マイクロプロセッサ102は、入出力(I/O)ドライバ108に制御信号を与え、又そこから信号を受け取る。I/Oドライバ108は、エンジンコンポーネント90と連絡し、ECM100を有害な電気衝撃から保護し、本発明によってエンジンを制御するために必要な信号とパワーを提供するように機能する。同じ機能を実現できるマイクロプロセッサと電子的及び電気的回路の種々の組合せを含む種々の他の制御構成が可能であることを認識すべきである。
【0013】
エンジンコンポーネント90は、それぞれのエンジンシリンダ(図示せず)に接続された複数の電子ユニットインジェクタ(EUI)94と、種々のエンジン運転状態を示すための複数のセンサ96とを含む。これらの状態の例としては、冷却材温度、環境空気温度、吸気マニフォルド空気温度、インレット空気温度、エンジンオイル温度、燃料温度、インタクーラ温度、スロットル位置、吸気マニフォルド圧力、燃料圧力、オイル圧力、冷却材圧力、シリンダ位置及びシリンダ順序等がある。エンジンコンポーネント90には更にアクチュエータ98が含まれ、アクチュエータ98には、例えば、ソレノイド、可変弁、インジケータライト、モニタ及び発電機が含まれる。ECM100は又、冷却ファン99等の他の車両コンポーネント90と連絡していてもよく、更に、ブレーキ、トランスミッション、車両管理システムや編隊管理ラジオ中継器等の関連する車両システムを制御する他のマクロプロセッサ(図示せず)と連絡してもよい。
【0014】
データハブとしても知られているユーザインタフェース92は、サービス間隔を決定したりトレンド解析を行なったりする目的で、ユーザが選択した監視パラメータ及びそれらのパラメータに関連する値を記憶するために使用される。ユーザが選択するパラメータには、例えば、所望のエンジンオイル寿命等の調整可能な制限値を含んでもよい。エンジン履歴情報は、例えば、係員が日常の保守業務を行なう助けとしたり、異常を探したりするのに使用される診断情報を含んでもよい。更に、車両特性に加えて車両運転者業績評価のために分析することもできるエンジン及び車両の動作データを含んでもよい。図1では、ユーザインタフェースがECM100の外部のものとして示されているが、ユーザインタフェース92によって実行される操作の一部はECM100によって実行することもできることを認識すべきである。
【0015】
図2は、温度過昇保護を実行する電子制御モジュールを示すブロック図である。ブロック200に示すように、運転者のスロットル位置信号は、運転者によりスロットル位置センサを通じて入力される。次いでブロック202に示すように、スロットル入力信号はフィルタがかけられて要求トルク信号が生成される。ブロック204に示すように、その要求トルク信号に初期制御関数が適用され、中間トルク信号が生成される。初期制御関数の一つの例は、要求トルク信号を最小及び最大のトルク限界値の間に制限する。支配(governing)関数は、エンジンが低速時に止まってしまうことを防止し、高トルク荷重で、エンジン自身又は他のシステムに損傷を与えることを防止する。初期制御関数の他の例としては、排ガス制御関数もある。ここで、エンジンが温まるときにエンジンによって生成される排ガスを制限するために、要求されるトルク信号が制御される。当業者にはわかるであろうが、他の種類の初期制御関数も本発明の範囲内で実施することができる。
【0016】
ブロック206では、中間トルク信号を保護トルク信号と比較し、二つの信号の内の小さい方を最終トルク信号として出力する。保護トルク信号は、本発明の温度過昇保護機能208の一部としてECMによって生成されるもので、後に詳述する。ブロック210に示すように、最終トルク信号は、最終制御関数に入力され、エンジンに適用される種々の信号が生成される。最終制御関数の例としては、燃料温度補償、空燃比制御、電子ユニットインジェクタ制御等が含まれる。これらの制御関数は、エンジンに入る空気及び燃料の量、スパークの発生(適用がある場合)、アクチュエータの起動、及び、エンジンの実際の動作、特に、エンジンによって生成されるトルクを制御するためのタイミングを決定する。
【0017】
ブロック212に示すように、エンジンは、空気と燃料を回転の速度及びトルクを有する回転動作に変換する機能を有する。すべての種類の内燃機関が、本発明の範囲内で採用可能である。例えば、エンジンは、4行程サイクルでも2行程サイクルでもよく、空気燃料混合物をスパーク間隙点火してもディーゼル点火してもよく、可変速度運転でも固定速度運転でもよく、可変荷重運転でも固定荷重運転でもよい。ブロック214に示すように、トランスミッションは、エンジンから受け取った回転動作を、特定の用途が要求する回転速度とトルクの有用な範囲に変換する。ブロック216に示すように、車両の場合は、トランスミッションの出力は、車両に与えられて、回転動作が車両の直線動作に変換される。他の用途の場合には、車輪は、発電機、ポンプ等の他の種類の負荷であってもよい。
【0018】
ブロック218に示すように、自動速度制御のためのフィードバックを提供するべく、クルーズ制御関数を有していてもよい。クルーズ制御関数への入力は、例えば、エンジンのアウトプット駆動シャフトから決定されるエンジン速度又は、車輪速度から決定される車両速度である。クルーズ制御関数は、測定された速度を第2の要求トルク信号に変換するように動作する。次に、ブロック220に示すように、第2の要求トルク信号は、フィルタ関数からの要求されたトルク信号出力と比較され、二つの信号の内の大きい方が、初期制御関数に提供される。
【0019】
エンジン温度過昇状態は、センサ96から受け取った情報に基づいて、ECM100で検出される。ブロック222に示すように、センサ96は、エンジンに関連する種々のパラメータを測定する。好ましい実施形態では、センサ96は、冷却材液位、冷却材温度、オイル圧力及びオイル温度を測定する。監視されうる更なるパラメータの例としては、冷却材圧力、クランクケース圧力、インタクーラ温度、インタクーラ圧力及び種々の補助的入力等がある。センサ96からの信号はECM100に提供され、そこで、エンジンの温度が決定される。ブロック224の診断機能は、この情報を利用して、エンジンの温度過昇保護が必要かどうか、そしていつ必要か、を決定する。診断機能からの出力は、エンジンの温度を代表する温度信号を含む。
【0020】
ブロック208に示すように、診断機能が、エンジンにとって温度過昇保護が必要であると判断したとき、エンジン温度過昇機能によって、保護トルク信号が生成される。好ましい実施形態では、保護トルク信号は、温度過昇状態が始まる瞬間までにサンプリングされた中間トルク信号に一定の比率を掛けたものである。上述のように、ブロック206で、保護トルク信号は中間トルク信号と比較され、二つの信号の内の小さい方が、最終トルク信号として使用される。このようにして、運転者は、エンジンがより高いトルクを生成して、その結果としてより高いエンジン温度になる可能性があるような命令を出すことができない。一方、運転者は、保護トルクよりも低い要求トルクを入力することができる。ここで、運転者の低めの要求トルクは許容されて、最終トルク信号に使用され、その結果、低めのエンジン温度になる。
【0021】
エンジン温度過昇機能は、エンジンが保護温度閾値を越えたときに、記録されたトルク値として中間トルク信号を記録する。ここで、中間トルク信号は、エンジンによって生成されているトルクを代表する動作トルク信号として取り扱われる。ECM100が利用できるその他の信号を動作トルク信号として使用してもよいことに留意すべきである。例えば、動作トルク信号は、初期制御関数204の前にサンプリングしてもよい。この例の場合は、ブロック206の最小値選択機能は、初期制御関数204に先立って動作し、要求されたトルク信号と保護トルク信号の内の小さい方が選択される。同様に、動作トルク信号のサンプリングは、最終制御関数210内のどこか中間点で行なわれる。更に他の例では、クルーズ制御関数218が常時利用されている場合、動作トルク信号は、クルーズ制御関数218内から、又は、クルーズ制御関数218の出力での第2の供給されたトルク信号からサンプリングしてもよい。動作トルク信号が記録されている一つ又は複数の厳密な位置については、本発明の範囲内で、制御構造の相違によって変わりうるものであることを、当業者ならば理解できるであろう。
【0022】
温度信号が保護温度閾値を超えて更に上昇するにつれて、保護トルク信号は、温度信号及び記録されたトルク値の非線型関数として低下する。図3、4及び5に、保護トルク信号300の種々の異なる非線型関数のグラフが、温度信号302の関数として示されている。図3において、温度信号302が保護温度閾値304を越えたときに、温度過昇保護が始まる。保護温度閾値304より上では、保護トルク信号300は、記録されたトルク値(点305として示されている)の100%よりも僅かに小さい。温度信号302が上昇するに従って、保護トルク信号300は非線型的に低下する。初期の保護トルク信号低下率は、低下の初めにゆっくりであるように設計されている。これは、エンジン温度の低下をまだ進めているときに、エンジントルク低下による車両への影響を最小限にするために行なわれる。初期低下率をゆっくりとすることのもう一つの利点は、温度信号における過渡にフィルタをかける必要が無いことである。エンジン温度の瞬間的な上昇やセンサ信号の一つにおけるノイズは、重大な全体のエンジン動作の影響無しに、温度過昇保護開始のトリガとなりうる。温度過昇保護の開始に対しては、フィルタリングによる遅れはない。
【0023】
初期温度過昇保護によってエンジン温度が下がらない場合は、エンジンの冷却を更に促進するために、温度信号302が上昇するにつれて、保護トルク信号の低下率が増大される。温度信号302が報知温度閾値306を超えたとき、ECM100は運転者に、温度過昇保護がすでに進行中であることを報知する。図2に戻って、ブロック226に示すように、報知は、運転者に見える報知インジケータを動作させることによって実行される。この報知インジケータは、一般に「チェック・エンジン・ランプ」として知られている。報知は、音又は声によるメッセージ等の音声信号の形態のものでもよい。
【0024】
再び図3において、温度信号302が報知温度閾値を超えて上昇し続ける場合は、保護トルク信号の低下が続く。温度信号302が警報温度閾値308を越えた場合は、ECM100が、運転者への警報を動作する。報知の場合と同様に、警報は、一般に「ストップ・エンジン・ランプ」と呼ばれるランプの形態であるのが典型的である。このランプの点灯は、運転者に、エンジンの破壊的損傷を避けるために、何らかの行動をとらなければならないことを知らせる。手動動作、自動動作、又はそれらの組合せのいずれの選択も本発明に含まれうる。警報温度閾値308を超えても温度過昇保護機能は何ら追加の動作も取らなくてもよいということは、意味のある事象である。好ましい実施形態で、保護トルク信号の低下は、記録されたトルク値の固定パーセンテージ310で制限されている。このアプローチによって、エンジンは、回転を続けることが許される。一方で、他の部分では、エンジンを停止するか、エンジンが故障するか破損する可能性をコストとして運転を続けるかという決定がなされる。
【0025】
図4は、温度信号302の関数としての保護トルクのもう一つの非線型曲線を示す。この曲線で、保護トルク信号低下率は、報知温度閾値と警報温度閾値の間では一定値である。この曲線は又、温度過昇状態が始まったときに動作トルクが比較的低い場所の条件をも示している。この例では、保護トルク信号300がその校正曲線に沿うように許容された場合は、曲線の想像線部400で示されるように、エンジンによって生成されたトルクが、最小トルクレベルより下に低下する。そうではなくて、ECM100は、保護トルク信号300が最小値402を下回らないように制限されるようにプログラムすることもできる。この最小値402は、エンジンが回転を維持するために生成すべき最小絶対トルクに相当する。この制限は、温度信号302が警報温度閾値308未満の時(図示の通り)又は報知温度閾値306未満の時に効く。
【0026】
図5は、更に他の非線型曲線を示し、ここでは、保護トルク信号低下率は、温度信号302の関数として増大し続ける。この曲線は、エンジン温度過昇保護が極めて重要なので、エンジン温度が上昇するにつれて、冷却をますます増大させるような応用を表している。極端な場合、損傷を避けるためのエンジン停止のためにこのアプローチが許容される。
【0027】
実際には、保護トルク信号曲線は、ユーザインタフェース92を通じて、飛び飛びの校正点の連続として、ECM100にプログラム入力される。ECM100はこれらの飛び飛びの点の間を内挿して、中間エンジン温度における保護トルク信号を決定する。表1は、本発明の好ましい実施形態で使用される飛び飛びの点の例である。
【表1】
Figure 2004501314
好ましい実施形態では、報知温度閾値は約221°Fであり、警報温度閾値は約227°Fである。
【0028】
前述のように、ECM100は診断情報を記録して報告することができる。温度過昇状態は、記録され報告されるかもしれないいくつかの重要な事象を含んでいる。記録されるかもしれない第1の事象は、保護温度閾値304を超えた温度過昇機能のトリガである。温度過昇保護の開始は徐々に行なわれ、運転者は僅かな温度過昇状態を知らされていないかもしれないが、その事象は、エンジン特性のトレンドを探す保守要員に履歴データを提供するために記録される。
【0029】
報知温度閾値306を超える温度信号302も又、記録されるべき一つの事象である。この場合、報知インジケータが動作しているので、運転者は、温度過昇保護機能が既に発動していることに気付く。報知インジケータの動作を運転者が目撃することの支持として、事象の電子的記録を行なうべきである。ECM100がその車両内の他の制御モジュールと連絡している場合は、この報知温度閾値306の事象は、それらの他の制御モジュールで利用されるように、それらに同報されるようにしてもよい。例えば、商用トラック用に、自動状態報告作成器が、車両の健康状態報告を、トラックに搭載されたラジオを通じて自動的に更新して送信するために、報知温度閾値306事象の知識を使うこともできる。この報告は、トラック輸送会社の管理部門に対して、この特定の車両が複数の問題を経験しており、近い将来に保守するスケジュールとすべきであることを知らせる。
【0030】
記録すべき第3の事象は、警報温度閾値308を超えるエンジン温度である。このシナリオでは、エンジンが既に損傷を受けていてできるだけ早く検査すべきである可能性もある。ECM100は又、この事象を、この情報に基づいて行動を取る可能性のある他の制御モジュールやシステムに同報するべきである。例えば、エンジンが自ら壊れてしまう点までの温度過昇が許容される軍用車両の用途で、知的電気パワー制御システムは、エンジンにかかるオルタネータ負荷を減らすために重要でない機器のスイッチを切るために、この情報を使用してもよい。
【0031】
以上、本発明の実施形態を図示して説明したが、これらの実施形態は、本発明のすべての可能な形態を図示して説明することを意図してはいない。むしろ、発明の詳細な説明で使用される言葉は、限定するためではなく、説明するための言葉であり、本発明の概念及び範囲から逸脱することなしに種々の変更が可能なことが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
電子制御モジュールのコンポーネントブロック図である。
【図2】
温度過昇保護を実行する電子制御モジュールを示す機能フロー図である。
【図3】
温度過昇状態における温度の関数として低下する動作トルク信号のグラフである。
【図4】
温度の第2の関数として低下して最小トルク値で制限される動作トルク信号のグラフである。
【図5】
温度の第3の関数として低下する動作トルク信号のグラフである。

Claims (15)

  1. 温度過昇状態のエンジンを保護する方法において、
    エンジンによって生成されているトルクを表す動作トルク信号を記録して、保護温度閾値を超えた前記エンジンの温度を表す温度信号に応じた記録トルク値を生成する工程と、
    前記エンジンの前記温度の低下を促進するために、前記温度信号及び前記記録されたトルク値の非線型関数として、前記エンジンによって生成されている前記トルクを低下させる工程と、
    を有する方法。
  2. 前記温度信号が前記保護温度閾値を超えて上昇したときに、徐々に前記トルクを低下させ始めるように、前記トルクの低下率を増していく工程を更に有する、請求項1記載の方法。
  3. 前記温度信号が前記保護温度閾値よりも高い或る警報温度閾値を超えたのに応じて、前記非線型関数に代えて、前記記録されたトルク値の固定パーセンテージで前記トルクを低下させる工程を更に有する、請求項1記載の方法。
  4. 前記トルクの低下が或る最小トルクを下回らないように制限する工程を更に有する請求項1記載の方法。
  5. 前記温度信号が前記保護温度閾値よりも高い或る報知温度閾値を超えたのに応じて、報知インジケータを作動させる工程を更に有する、請求項1記載の方法。
  6. エンジンを制御する制御モジュールで使用される情報記録媒体であって、その情報記録媒体は、前記制御モジュールによって読み取り可能で且つ実行可能なコンピュータプログラムを記録するものであり、前記コンピュータプログラムは、
    エンジンによって生成されているトルクを表す動作トルク信号を記録して、保護温度閾値を超えた前記エンジンの温度を表す温度信号に応じた記録トルク値を生成する工程と、
    前記エンジンの前記温度の低下を促進するために、前記温度信号及び前記記録されたトルク値の非線型関数として、前記エンジンによって生成されている前記トルクを低下させる工程と、
    を有する、情報記録媒体。
  7. 前記コンピュータプログラムが、前記温度信号が前記保護温度閾値を超えて上昇したときに、徐々に前記トルクを低下させ始めるように、前記トルクの低下率を増していく工程を更に有する、請求項6記載の情報記録媒体。
  8. 前記コンピュータプログラムが、前記温度信号が前記保護温度閾値よりも高い或る警報温度閾値を超えたのに応じて、前記非線型関数に代えて、前記記録されたトルク値の固定パーセンテージで前記トルクを低下させる工程を更に有する、請求項6記載の情報記録媒体。
  9. 前記コンピュータプログラムが、前記トルクの低下が或る最小トルクを下回らないように制限する工程を更に有する、請求項6記載の情報記録媒体。
  10. 前記コンピュータプログラムが、前記温度信号が前記保護温度閾値よりも高い或る報知温度閾値を超えたのに応じて、報知インジケータを作動させる工程を更に有する、請求項6記載の情報記録媒体。
  11. エンジンを制御するための制御モジュールであって、
    前記エンジンの温度を表す温度信号を受け取る温度入力と、
    前記エンジンによって生成されているトルクを表す動作トルク信号を受け取るトルク入力と、
    前記温度入力、トルク入力及びエンジンに接続されたプロセッサであって、前記動作トルク信号に基づいて前記エンジンによって生成されているトルクを制御し、前記温度信号が或る保護温度閾値を超えたときに、前記動作トルク信号を記録トルク値として記録し、前記エンジンの温度の低下を促進するために、前記エンジンによって生成されている前記トルクを、前記温度信号及び前記記録されたトルク値の非線型関数として、低下させるように動作可能である、そのプロセッサと、
    を有する、制御モジュール。
  12. 前記プロセッサは、前記温度信号が前記保護温度閾値を超えて上昇したときに、徐々に前記トルクを低下させ始めるように、前記トルクの低下率を増していくように動作可能である、請求項11記載の制御モジュール。
  13. 前記プロセッサは、前記温度信号が前記保護温度閾値よりも高い或る警報温度閾値を超えたのに応じて、前記非線型関数に代えて、前記記録されたトルク値の固定パーセンテージで前記トルクを低下させるように動作可能である、請求項11記載の制御モジュール。
  14. 前記プロセッサは、前記トルクの低下が或る最小トルクを下回らないように制限するように動作可能である、請求項11記載の制御モジュール。
  15. 前記プロセッサは、前記温度信号が前記保護温度閾値よりも高い或る報知温度閾値を超えたのに応じて、報知インジケータを作動させるように動作可能である、請求項11記載の制御モジュール。
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