JP2004362911A - 固体電解質燃料電池および酸素センサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固体電解質としてスカンジア安定化ジルコニアを用い、電極(空気極または測定電極)としてペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を用いることによって、上記課題は解決される。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質燃料電池および酸素センサに関する。より詳しくは、本発明は、固体電解質燃料電池の空気極および酸素センサの測定電極の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
1899年にNernstによって固体電解質(SE)が見出され、1937年にはBaurとPreisによって固体電解質燃料電池(SOFC)の運転が行われて以来、SOFCは進歩を続けている。SOFCは、通常1000℃以上の高温で運転されるため、炭化水素系燃料が電池内で改質されうる。このため、60%以上もの高い燃焼効率の実現も可能であると考えられている。
【0003】
一般的には、SOFCは、固体電解質、空気極、燃料極、中間層(インタコネクタ)から構成される。これまで、SOFCの特性を向上させるべく、構成材料についての様々な技術が提案されている。近年においては、低温でのイオン伝導率が優れる材料の開発が所望されている。
【0004】
固体電解質としては、スカンジア(Sc2O3)で安定化された、スカンジア安定化ジルコニアが、低温での酸素イオン伝導度に優れる材料として提案されている(例えば、特許文献1参照)。酸素イオン伝導度は、SOFCの出力に影響を及ぼす要素であり、酸素イオン伝導度が大きいことが好ましい。
【0005】
空気極は、固体電解質の表面に配置され、固体電解質との電子の授受をつかさどる部位である。空気極の材料としては、LaSrMnO3、LaSrCoO3、LaCaCoO3などのランタン系材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。白金も、空気極の材料として用いられうる。しかし、高価な貴金属である白金は、SOFCの製造コストを上昇させるため、安価な材料が空気極の材料として用いられることが好ましい。
【0006】
固体電解質単独で比較すると、スカンジア安定化ジルコニアの酸素イオン伝導度は高い。しかしながら、既存の空気極材料の酸素イオン伝導度は、スカンジア安定化ジルコニアの酸素イオン伝導度に比べて低い。このため、スカンジア安定化ジルコニアを既存の空気極材料と組み合わせると、SOFC全体としての酸素イオン伝導度は、空気極材料の酸素イオン伝導度によって律せられてしまう。これでは、優れた酸素イオン伝導度を有するスカンジア安定化ジルコニアを用いても、SOFCの出力を大きく向上させることはできない。また、固体電解質と空気極との界面抵抗が高くなる問題もある。
【0007】
同様の問題は、固体電解質を用いた酸素センサにおいても生じる。一般的には、酸素センサは、固体電解質、測定電極、および基準電極からなる(例えば、特許文献2参照)。酸素センサに用いられる測定電極の酸素イオン伝導度が低い場合に生じる問題の一つは、不十分な応答性である。すなわち、酸素イオン伝導度が低いと、酸素濃度の変動を検出するまでのタイムラグが長くなる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−134121号公報
【特許文献2】
特開2000−81411号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、酸素イオン伝導度の高い固体電解質燃料電池を提供することである。また本発明の目的は、感度の高い酸素センサを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、スカンジア安定化ジルコニアからなる固体電解質と、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる空気極と、燃料極とを有する、固体電解質燃料電池である。
【0011】
また本発明は、スカンジア安定化ジルコニアからなる固体電解質と、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる測定電極と、基準電極とを有する、酸素センサである。
【0012】
【発明の効果】
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物は、優れた酸素イオン伝導度を有する。このため、固体電解質としてスカンジア安定化ジルコニアを備えるSOFCの空気極材料として、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を適用することによって、SOFCの酸素イオン伝導度が向上する。その結果、SOFCの出力が向上する。
【0013】
また、固体電解質としてスカンジア安定化ジルコニアを備える酸素センサの測定電極材料として、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を適用することによって、酸素センサの酸素イオン伝導度が向上する。その結果、酸素センサの感度が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の第1は、スカンジア安定化ジルコニアからなる固体電解質と、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる空気極と、燃料極とを有する、固体電解質燃料電池である。
【0015】
本発明のSOFCにおいては、固体電解質を構成する基本材料としてスカンジア安定化ジルコニア(以下、「SSZ」とも記載)が用いられる。場合によっては、SSZに加えて、他の材料が固体電解質として用いられてもよい。例えば、固体電解質が2層構造になっていてもよい。ただし、本発明の効果を十分得るためには、少なくともSSZからなる固体電解質と空気極とが隣接している。
【0016】
SSZは、スカンジアを加えることによって安定化されたジルコニアを意味する。スカンジアを加えることによって、結晶構造が安定化し、優れた耐熱材料となる。SSZ中に含まれるスカンジアの量やSSZの製造方法については、特に限定されない。得られている知見に基づいてSSZを製造してもよいし、適宜製造方法を改良してもよい。市販のSSZを購入して、固体電解質として用いてもよい。
【0017】
本願において、SSZは、下記式(1):
【0018】
【化5】
【0019】
で表されうる。ここで、xは、SSZ中に含まれるジルコニアおよびスカンジアの総モル数に対する、スカンジアのモル分率を示す値である。例えば、「0.95ZrO2+0.05Sc2O3」とは、ジルコニアとスカンジアとが、95:5のモル比で含まれるSSZを意味する。
【0020】
結晶としては、正方晶ジルコニアや単斜晶ジルコニアが存在するが、SOFCの低温での酸素イオン伝導度を高めるためには、400〜900℃程度の低温度領域において、SSZが転移点を有さないことが好ましい。SSZの結晶構造が不安定であると、固体電解質と電極との界面における損失が大きくなり、SOFCの酸素イオン伝導度が低下する。
【0021】
高温層を安定化させて、低温度領域における転移点を存在させなくするためには、スカンジアの添加量が少ないことが好ましい。具体的には、前記式(1)において、xは、好ましくは0.06〜0.12である。xがこの範囲であると、SSZは、低温において相転移を起こさず、固体電解質と電極との界面での密着性が向上し、界面での抵抗値を著しく低下させうる。
【0022】
SSZからなる固体電解質の形状や態様は、固体電解質としての機能を果たすのであれば、特に限定されない。固体電解質の形状は、適用されるSOFCに応じて決定される。例えば、SSZからなる固体電解質は、板状、コイン状、中空円柱状などでありうる。SSZからなる固体電解質の態様についても、特に限定されないが、通常は多孔質の焼結体である。
【0023】
固体電解質の表面には、空気極および燃料極が形成される。空気極には、酸素が供給され、酸素(O2)は電子を受け取り、O2−になる。O2−は、固体電解質を移動して、燃料極に到達する。燃料極においては、燃料極に供給される燃料ガスに応じて反応が進行し、電子が発生する。燃料極に水素が供給される場合には、水素(H2)と酸素イオン(O2−)との反応によって、水(H2O)が生成する。燃料極に一酸化炭素が供給される場合には、一酸化炭素(CO)と酸素イオン(O2−)との反応によって、二酸化炭素(CO2)が生成する。
【0024】
本発明のSOFCは、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる空気極を有する。ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物は、SSZと密着性が良く、空気透過性がある。SSZからなる固体電解質を有するSOFCの空気極材料として、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を適用することによって、SOFCにおける酸素イオン伝導度を向上させ、SOFCの出力を向上させうる。
【0025】
本発明の効果を十分得るためには、少なくともペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる空気極が、SSZからなる固体電解質と隣接している。
【0026】
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物とは、ストロンチウム、サマリウムおよびコバルトからなる酸化物を意味する。特性を向上させるために、サマリウムやコバルトの一部が他の元素で置換されていてもよい。好ましくは、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物は、下記式(2):
【0027】
【化6】
【0028】
で表される組成を有する。式(2)において、yは、好ましくは0.3〜0.7である。yがこの範囲であると、空気極は、酸素透過性および電子導電性に優れ、かつ、SSZからなる固体電解質との界面における抵抗が小さい。
【0029】
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる空気極の形状や態様は、空気極としての機能を果たすのであれば、特に限定されない。一般には、空気極には、高温の酸化雰囲気下で化学的に安定で、かつ、高い電子導電性を有することが求められる。空気極の形状は、適用されるSOFCに応じて決定される。例えば、空気極は、板状、コイン状、扇形などでありうる。ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる空気極の態様についても、特に限定されないが、通常は多孔質の焼結体である。
【0030】
本発明のSOFCにおいて用いられる燃料極は、特に限定されない。ニッケル、コバルト、ニッケル−イットリア安定化ジルコニアサーメット、ニッケル−イットリア安定化ジルコニアサーメットなど、公知の材料が用いられうる。新たに開発された材料が用いられてもよい。場合によっては、2種以上の材料が併用されてもよい。
【0031】
燃料極の形状や態様は、燃料極としての機能を果たすのであれば、特に限定されない。例えば、燃料極は、板状、コイン状、扇形などである。
【0032】
なお、本発明のSOFCは、大きさや構成などについては、特に限定されない。固体電解質としてSSZを使用し、空気極としてペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を使用すれば、どのようなSOFCにおいても、優れた出力を発現させることが可能である。また、本発明のSOFCは、比較的低温でも優れた酸素イオン伝導度が発現するため、低温で作動させうる。このため、燃焼機本体などの容器などにフェライト系ステンレスなどの金属部品を適用することが可能である。つまり、本発明は、SOFCの出力向上のみならず、SOFCを構成する部材の選択の幅を広げ、SOFCの製造コストの低下にも寄与しうる。
【0033】
本発明の第2は、スカンジア安定化ジルコニアからなる固体電解質と、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる測定電極と、基準電極とを有する、酸素センサである。
【0034】
酸素センサは、ガス中の酸素濃度を測定するために用いられる。例えば、内燃機関からの排気ガス中に含まれる酸素ガスの濃度を測定し、内燃機関の空燃比を制御するために、酸素センサが用いられる。酸素センサは、固体電解質、測定電極、および基準電極からなる。酸素センサは、測定電極、固体電解質、基準電極の順に配置される。測定電極は、被測定ガス側に配置される。被測定ガス中に含まれる酸素濃度によって、酸素イオンをキャリアとするイオン電流が流れる。そして、測定される電流値を基準として、被測定ガス中の酸素濃度が検出される。
【0035】
本発明の酸素センサにおいては、固体電解質を構成する基本材料としてSSZが用いられる。場合によっては、SSZに加えて、他の材料が固体電解質として用いられてもよい。例えば、固体電解質が2層構造になっていてもよい。ただし、本発明の効果を十分得るためには、少なくともSSZからなる固体電解質と測定電極とが隣接している。
【0036】
SSZは、スカンジアを加えることによって安定化されたジルコニアを意味する。SSZについての説明は、本発明の第1において説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。例えば、前記式(1)で表されるSSZが好ましい。xの好適な範囲も、同様である。SSZは、低温において相転移を起こさず、固体電解質と電極との界面での密着性が向上し、界面での抵抗値を著しく低下させうる。
【0037】
SSZからなる固体電解質の形状や態様は、固体電解質としての機能を果たすのであれば、特に限定されない。固体電解質の形状は、適用される酸素センサに応じて決定される。例えば、SSZからなる固体電解質は、板状、コイン状、中空円柱状などでありうる。SSZからなる固体電解質の態様についても、特に限定されないが、通常は多孔質の焼結体である。
【0038】
本発明の酸素センサは、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる測定電極を有する。ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物は、SSZと密着性が良く、空気透過性がある。SSZからなる固体電解質を有する酸素センサの測定電極材料として、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を適用することによって、酸素センサにおける酸素イオン伝導度を向上させ、酸素センサの応答性を向上させうる。
【0039】
場合によっては、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物に加えて、他の材料が測定電極として用いられてもよい。ただし、本発明の効果を十分得るためには、少なくともペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる測定電極が、SSZからなる固体電解質と隣接している。
【0040】
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物とは、ストロンチウム、サマリウムおよびコバルトからなる酸化物を意味する。ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物についての説明も、本発明の第1において説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。例えば、前記式(2)で表されるストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物が好ましい。yの好適な範囲も、同様である。
【0041】
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる測定電極の形状や態様は、測定電極としての機能を果たすのであれば、特に限定されない。測定電極の形状は、適用される酸素センサに応じて決定される。例えば、測定電極は、板状、コイン状、扇形などでありうる。ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる測定電極の態様についても、特に限定されないが、通常は多孔質の焼結体である。
【0042】
本発明の酸素センサにおいて用いられる基準電極は、特に限定されない。公知の材料が用いられてもよいし、新たに開発された材料が用いられてもよい。新たに開発された材料が用いられてもよい。場合によっては、2種以上の材料が併用されてもよい。基準電極は、メッキ、ペースト印刷等によって形成されうる。基準電極を作製するために、他の手段が用いられてもよい。
【0043】
基準電極の形状や態様は、基準電極としての機能を果たすのであれば、特に限定されない。ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の形状は、適用される酸素センサに応じて決定される。例えば、基準電極は、板状、コイン状、扇形などである。
【0044】
本発明の酸素センサは、SSZからなる固体電解質、およびペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる測定電極を有する。このため、酸素センサの応答性が向上し、酸素濃度の変動に迅速に対処できる。例えば、酸素センサが内燃機関に用いられる場合には、内燃機関の空燃比の最適化による燃費向上が図れる。また、本発明の酸素センサは、感度範囲も広い。
【0045】
なお、本発明の酸素センサは、大きさや構成などについては、特に限定されない。固体電解質としてSSZを使用し、測定電極としてペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を使用すれば、どのような酸素センサにおいても、優れた応答性を発現させることが可能である。
【0046】
本発明の第3は、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末と有機ビークルとを混合して、ペーストを得る段階(a)と、スカンジア安定化ジルコニウムからなる固体電解質に、前記ペーストを塗布する段階(b)と、前記ペーストが塗布された固体電解質を焼付けて、空気極を作成する段階(c)とを含む、SOFCの製造方法である。
【0047】
本発明の第3によって、本発明の第1のSOFCが製造されうる。ただし、本発明の第1のSOFCは、他の方法を用いて形成されてもよい。必要に応じて、製造方法を改良してもよい。以下、SOFCの製造方法を説明する。なお、用いられるSSZやストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物については、本発明の第1で説明した通りであるので、以下の説明においては省略する。
【0048】
固体電解質として用いられるSSZは、クエン酸塩を用いた仮焼結によって形成される。クエン酸塩法によって作製された所定の金属の粉砕工程、成型工程、および焼結工程といった一連の工程によって、SSZからなる固体電解質が作製される。クエン酸法によって作製された粉末は、原子段階で均一に混合されており、均質な粒子径を持つ粉体となる。このため、作製される固体電解質は、適度な気孔を持った多孔質体となる。粉砕方法、成型方法、焼結方法については、特に限定されない。例えば、粉砕には、ボールミルが用いられ、成型には静水圧プレスが用いられうる。
【0049】
SSZ粉末は、1400〜1600℃程度の温度で2〜6時間焼結される。好ましくは、焼結密度を真密度の98%以上とする。焼結時間が短いか1400℃より低い温度であると、焼結体中に開気孔が残りイオン伝導性が低下する虞がある。また、焼結時間が長いか1600℃を超えると、粒界に亀裂が入りイオン伝導度が低下する虞がある。
【0050】
別途、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末を準備する。ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末は、SSZの粉末と同様にして、クエン酸塩法によって作製されうる。クエン酸法によって作製された粉末は、原子段階で均一に混合されており、均質な粒子径を持つ粉体となる。このため、作製される空気極は、適度な気孔を持った多孔質体となる。
【0051】
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末の粒子径は、好ましくは0.1〜1.5μmである。また、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末の平均粒子径は、好ましくは0.3〜0.5μmである。この範囲の粉末を用いると、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物とビークルとが好適に混合し、また、作製される焼結体の気孔率も適切なものとなる。なお、本願において粒子径とは、「球相当径」により定義される粒子径を意味し、平均粒子径とは、粒子径の平均値を意味する。粒子径は、レーザー回折散乱法等を用いて測定されうる。
【0052】
次に、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末と有機ビークルとを混合して、ペーストを作製する。有機ビークルとしては、エチルセルロースをテレピネオールとジブチルフタレートに溶解したものなどが用いられうる。ペースト中のストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の密度やペーストの粘度については、特に限定されない。得られている知見に基づいて、使用装置や作業効率などを考慮して決定されればよい。
【0053】
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を含むペーストは、好ましくは、スクリーン印刷法によって、固体電解質としてのSSZ上に塗布される。ペーストの塗布厚さについては、特に限定されない。SOFCの用途や形状に応じて、ペーストの厚さが決定される。
【0054】
ペーストを固体電解質上に塗布した後、焼付けて、空気極を乾燥させる。酸素イオン伝導度に優れる空気極を作製するために、好ましくは焼き付けの条件が制御される。焼き付け温度は、好ましくは1050〜1200℃である。焼付け時間は、好ましくは60〜360分である。この範囲から外れると、酸素イオン伝導度が低下する虞がある。例えば、高温条件下で焼付けると、原子の拡散が増加し、界面に生成物が析出して、酸素イオン伝導度の低下を招く。
【0055】
ペーストの焼き付けは、好ましくは大気雰囲気下で行なわれる。不活性ガス雰囲気下や真空中など、酸素濃度が不十分な雰囲気下において焼付けが行なわれると、空気極中の酸素が欠乏し、酸素イオン伝導度が低下する虞がある。
【0056】
SOFCを完成させるためには、空気極が作製され、その他配線や燃料および酸化剤供給装置などが配置される必要がある。これらの材料や装置の製造方法や、選択される材料については、本発明のSOFCにおいては特に限定されない。従来用いられている手法に順じて、または、新たに開発された手法を適用して、SOFCを製造すればよい。
【0057】
本発明の第4は、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末と有機ビークルとを混合して、ペーストを得る段階(a’)と、スカンジア安定化ジルコニウムからなる固体電解質に、前記ペーストを塗布する段階(b’)と、前記ペーストが塗布された固体電解質を焼付けて、測定電極を作成する段階(c’)とを含む、酸素センサの製造方法である。
【0058】
本発明の第4によって、本発明の第2の酸素センサが製造される。ただし、本発明の第2の酸素センサは、他の方法を用いて形成されてもよい。必要に応じて、製造方法を改良してもよい。以下、酸素センサの製造方法を説明する。なお、用いられるSSZやストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物については、本発明の第2で説明した通りであるので、以下の説明においては省略する。
【0059】
SSZおよびストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を用いて、酸素センサを製造する方法は、本発明の第3に準じて実施される。好ましい製造条件も同様である。例えば、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末の粒子径は好ましくは0.1〜1.5μmであり、平均粒子径は好ましくは0.3〜0.5μmである。ペーストは、好ましくはスクリーン印刷法によって塗布される。ペーストの焼付け温度は、好ましくは1050〜1200℃であり、焼付け時間は、好ましくは60〜360分である。また、ペーストの焼付けは、好ましくは大気雰囲気下で行なわれる。製造条件についての説明は、本発明の第3で説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。ペーストの塗布厚さなども、酸素センサとしての機能が好適に発現するように、選択されればよい。
【0060】
酸素センサを完成させるためには、測定電極が作製され、その他配線等が配置される。酸素センサを完成させるための手段や材料については、本発明の酸素センサにおいては特に限定されない。従来用いられている手法に順じて、または、新たに開発された手法を適用して、酸素センサを製造すればよい。
【0061】
【実施例】
本発明の効果について、以下の実施例を用いてより詳細に説明する。しかしながら、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0062】
<実施例1>
スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)からなる固体電解質を、以下の手順に従って作製した。スカンジア安定化ジルコニアの組成は、前記式(1)においてxが0.06とした(0.94ZrO2+0.06Sc2O3)。
【0063】
まず、クエン酸塩からの仮焼結によって、所定の組成を有するスカンジア安定化ジルコニアの仮焼結体を得た。仮焼結体を、アルコール中で、ボールミルを用いて約24時間粉砕した。粉砕された仮焼結体を、ロータリーエバポレータを用いて乾燥して、スカンジア安定化ジルコニアの乾燥粉末を得た。この粉末を、2ton/cm2の静水圧プレスによって加圧成型し、1500℃で焼結して、ペレット状の焼結体を得た。得られたペッレト状の焼結体は、直径6mm、高さ1mmの平板状に加工され、固体電解質として用いられた。
【0064】
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物(Sm0.5Sr0.5CoO3)の粉末と有機ビークルとを混合しペーストを得た。次に、このペーストを、スクリーン印刷法を用いて、スカンジア安定化ジルコニアからなる固体電解質上に塗布した。ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を含むペーストが塗布された固体電解質を、大気雰囲気下、1050℃で120分間焼付けて、電極(空気極)を作成した。
【0065】
固体電解質の表面に空気極が形成された複合体を評価する目的で、複合体の酸素イオン伝導度を測定した。複合体の酸素イオン伝導度は、500℃および600℃で測定した。また、比較のため、白金からなる空気極を有する参考例1の複合体に対する、酸素イオン伝導度の比を算出した。製造条件および評価結果を、表1に示す。なお、表1において、○は酸素イオン伝導度の比が1より大きい複合体を意味し、△は酸素イオン伝導度の比が0.95より大きい複合体を意味し、×は酸素イオン伝導度の比が0.95より小さい複合体を意味する。
【0066】
<実施例2>
スカンジア安定化ジルコニアの組成、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の組成、焼結条件、および焼付け条件が表1に示す条件である以外は、実施例1と同様の手順で、空気極と固体電解質との複合体を得た。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0067】
<実施例3>
スカンジア安定化ジルコニアの組成、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の組成、焼結条件、および焼付け条件が表1に示す条件である以外は、実施例1と同様の手順で、空気極と固体電解質との複合体を得た。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0068】
<実施例4>
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の組成、焼結条件、および焼付け条件が表1に示す条件である以外は、実施例1と同様の手順で、空気極と固体電解質との複合体を得た。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0069】
<実施例5>
スカンジア安定化ジルコニアの組成、ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の組成、焼結条件、および焼付け条件が表1に示す条件である以外は、実施例1と同様の手順で、空気極と固体電解質との複合体を得た。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0070】
<比較例1>
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の代わりに、ランタン系酸化物(La0.9Sr0.1MnO3)を用いた以外は、実施例4と同様の手順で、空気極と固体電解質との複合体を得た。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0071】
<比較例2>
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の代わりに、ランタン系酸化物(La0.85Sr0.15MnO3)を用いた以外は、実施例5と同様の手順で、空気極と固体電解質との複合体を得た。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0072】
<比較例3>
スカンジア安定化ジルコニアの組成、および焼付け条件が表1に示す条件である以外は、比較例2と同様の手順で、空気極と固体電解質との複合体を得た。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0073】
<参考例>
ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の代わりに、白金を用いた以外は、実施例1と同様の手順で、空気極と固体電解質との複合体を得た。詳細な製造条件および評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、電極材料としてストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を用いることによって、固体電解質としてのスカンジア安定化ジルコニアおよび電極からなる複合体の酸素イオン伝導度が高まる。また、実施例1〜3に示すように、電極材料の組成を調整することによって、酸素イオン伝導度がより高まる。実施例4および5は、白金を用いた複合体よりも酸素イオン伝導度が劣る。しかしながら、比較的安価なストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物を用いて、白金と同等の酸素イオン伝導度を有する複合体が得られるという事実は、材料選択の幅を広げる上で大きな効果である。
Claims (16)
- スカンジア安定化ジルコニアからなる固体電解質と、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる空気極と、燃料極とを有する、固体電解質燃料電池。
- スカンジア安定化ジルコニアからなる固体電解質と、ペロブスカイト構造を有するストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物からなる測定電極と、基準電極とを有する、酸素センサ。
- ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末と有機ビークルとを混合して、ペーストを得る段階(a)と、
スカンジア安定化ジルコニウムからなる固体電解質に、前記ペーストを塗布する段階(b)と、
前記ペーストが塗布された固体電解質を焼付けて、空気極を作成する段階(c)と、
を含む、固体電解質燃料電池の製造方法。 - 前記ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末の粒子径が0.1〜1.5μmであり、平均粒子径が0.3〜0.5μmである、請求項7に記載の製造方法。
- 前記段階(b)において、前記ペーストは、スクリーン印刷法によって塗布される、請求項7または8に記載の製造方法。
- 前記段階(c)において、焼付け温度が1050〜1200℃であり、焼付け時間が60〜360分である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記段階(c)において、焼付けは、大気雰囲気下で行なわれる、請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末と有機ビークルとを混合して、ペーストを得る段階(a’)と、
スカンジア安定化ジルコニウムからなる固体電解質に、前記ペーストを塗布する段階(b’)と、
前記ペーストが塗布された固体電解質を焼付けて、測定電極を作成する段階(c’)と、
を含む、酸素センサの製造方法。 - 前記ストロンチウム添加サマリウムコバルト酸化物の粉末の粒子径が0.1〜1.5μmであり、平均粒子径が0.3〜0.5μmである、請求項12に記載の製造方法。
- 前記段階(b’)において、前記ペーストは、スクリーン印刷法によって塗布される、請求項12または13に記載の製造方法。
- 前記段階(c’)において、焼付け温度が1050〜1200℃であり、焼付け時間が60〜360分である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記段階(c’)において、焼付けは、大気雰囲気下で行なわれる、請求項12〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
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JP2003159021A JP2004362911A (ja) | 2003-06-04 | 2003-06-04 | 固体電解質燃料電池および酸素センサ |
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JP2008541359A (ja) * | 2005-05-13 | 2008-11-20 | フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング | 大きい表面積を有する燃料電池用カソード |
JP2018524765A (ja) * | 2015-06-11 | 2018-08-30 | エルジー・ケム・リミテッド | 空気極組成物、空気極およびこれを含む燃料電池 |
JP2020017408A (ja) * | 2018-07-25 | 2020-01-30 | アイシン精機株式会社 | 固体酸化物形燃料電池セルおよびその製造方法 |
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2003
- 2003-06-04 JP JP2003159021A patent/JP2004362911A/ja active Pending
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