JP2004358544A - 溶湯保持炉および給湯用ラドル - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便なラドルによる給湯方式を変更することなく汲出部内での酸化物の生成を抑制できるようにする。
【解決手段】溶湯Mを加熱し保温する加熱部5に隣接する汲出部8に、基板12とセラミック多孔体13とからなり、中央に溶湯汲出口14を、その周りに複数のガス供給管19を設けた蓋体11を昇降ユニット16により昇降可能に配置し、ガス供給管19を通してセラミック多孔体13内に不活性ガスを供給して、この不活性ガスにより湯面をシールドする。一方、側面に溶湯Mの流入口22と流出口23とを設けた箱形のラドル本体21を備え、かつこのラドル本体21内にスラグの流動を規制するトラップ壁24を設けたラドル20を用意し、このラドル20をロボット30の動作で直線移動させて、溶湯汲出口14に挿入し、溶湯Mを所定量汲出して、溶湯Mの酸化を抑制しながら鋳造機側へ搬送する。
【選択図】 図1
【解決手段】溶湯Mを加熱し保温する加熱部5に隣接する汲出部8に、基板12とセラミック多孔体13とからなり、中央に溶湯汲出口14を、その周りに複数のガス供給管19を設けた蓋体11を昇降ユニット16により昇降可能に配置し、ガス供給管19を通してセラミック多孔体13内に不活性ガスを供給して、この不活性ガスにより湯面をシールドする。一方、側面に溶湯Mの流入口22と流出口23とを設けた箱形のラドル本体21を備え、かつこのラドル本体21内にスラグの流動を規制するトラップ壁24を設けたラドル20を用意し、このラドル20をロボット30の動作で直線移動させて、溶湯汲出口14に挿入し、溶湯Mを所定量汲出して、溶湯Mの酸化を抑制しながら鋳造機側へ搬送する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイカスト鋳造に用いられる溶湯保持炉と、この溶湯保持炉から溶湯を汲出して鋳造機側へ搬送する給湯用ラドルとに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的なダイカスト鋳造用溶湯保持炉は、図3に示すように、取鍋から溶湯Mを受入れる受入部1と、受入部1内の溶湯Mを仕切壁2に設けた通路3を通して受入れ、内蔵するヒータ4により加熱し保温する加熱部5と、加熱部5内の溶湯Mを仕切壁6に設けた通路7を通して受入れ、給湯用ラドルによる溶湯Mの汲出しに供される汲出部8とを連続に備えた構造となっている(例えば、特許文献1にも、同様の保持炉が記載されている)。
【0003】
ところで、ダイカスト鋳造プロセスにおいては、溶解炉内での溶解中はもとより、溶解炉から取鍋への出湯中、取鍋から溶湯保持炉の受入部1への排湯中、加熱部5および汲出部8内での保持中、ラドルによる汲出し中などの多くの過程で溶湯Mが酸化作用を受け、酸化物が発生する。そして、この酸化物は、溶湯M中に混入するほか、湯面にスラグとして浮遊し、そのまま放置したのでは、介在物として鋳造品に入り込んで鋳造品質を著しく悪化させる原因になる。
そこで従来は、同じく図3に示すように、受入部1と加熱部5とを連絡する通路2および加熱部5と汲出部8とを連絡する通路7にフィルタ9,9を配置し、酸化物が後工程へ流出しないように配慮していた。
なお、一部では、保持炉を蓋体で覆って保持炉内に不活性ガスを供給しながら、フロートの押込みにより鋳造機側の射出スリーブへ、直接溶湯を給送する方式を採用している(例えば、特許文献2参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平9−1322号公報
【特許文献2】
特開平8−197226号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したラドルによる給湯方式に適用される一般的な溶湯保持炉10(図3)によれば、フィルタ9により加熱部5から汲出部8への酸化物の流動は防止されるものの、汲出部8がオープンになっているため、汲出部8内での保持中に溶湯Mの酸化が進んで新たな酸化物が生成し、鋳造機側への酸化物の持込みを抑えることが困難になる、という問題があった。
なお、上記特許文献2に記載されるごとき、フロートによる押込みにより射出スリーブへ、直接溶湯を給送する方式を採用すれば、不活性ガスによるシールで新たに酸化物の生成を抑制できるが、この場合は、溶湯保持炉を完全密閉することに加え、フロートの設置やその制御手段が必要になり、構造の複雑化や設備コストの上昇が避けられない。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、簡便なラドルによる給湯方式を変更することなく汲出部内での酸化物の生成を抑制できるようにし、もって鋳造品質の向上に寄与する、コスト負担の小さい溶湯保持炉を提供し、併せてこの溶湯保持炉に適用して好適な給湯用ラドルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る溶湯保持炉は、金属溶湯を加熱して保温する加熱部に隣接して、給湯用ラドルによる溶湯汲出しのための汲出部を配置してなる溶湯保持炉において、前記汲出部内に、給湯用ラドルを出入りさせる溶湯汲出口を有する蓋体を昇降可能に配設し、前記蓋体には、該蓋体と湯面との間に不活性ガスを供給するガス供給管を設けたことを特徴とする。
このように構成した溶湯保持炉においては、汲出部内に配置した蓋体にはラドルを出入りさせる溶湯汲出口が設けられているだけなので、ガス供給管を通じて蓋体と湯面との間に不活性ガスを供給すると、湯面のほぼ全面が不活性ガスによりシールドされ、溶湯の酸化が抑制される。また、蓋体は、昇降可能となっているので、湯面の変動に応じて蓋体を昇降させることで、蓋体と湯面との隙間を可及的に狭く維持することができ、その分、不活性ガスの大気中への拡散が防止されて効率よく湯面をシールドすることができる。
本溶湯保持炉において、上記蓋体は、基板と該基板の、湯面に対向する側に接合されたセラミック多孔体とからなり、ガス供給管の先端部が、前記基板を通して前記セラミック多孔体内に導入されている構成とすることができる。このように蓋体を構成した場合は、蓋体を湯面にわずか接触するまで近づけても、セラミック多孔体を通して、湯面に対してはもちろん、溶湯汲出口および蓋体の周辺へ十分に不活性ガスを送ることができ、ガスシールドの効率はより一層高まる。
【0008】
本発明に係る給湯用ラドルは、箱形をなすラドル本体を備え、該ラドル本体の上下方向への直線移動だけで溶湯の汲出しが可能であること特徴とする。
このように構成した給湯用ラドルにおいては、ラドル本体をスリムな箱形とすることで、上記蓋板に設ける溶湯汲出口の開口面積をできるだけ小さくすることができ、その分、溶湯のガスシールドは確実となる。
本給湯用ラドルは、ラドル本体の側壁に、溶湯の流入口と溶湯の流出口とを相反する方向へ向けて設け、ラドル本体の内部には、前記流入口から前記流出口へのスラグ流動を規制するトラップ壁を配設した構造とすることができる。このようにラドルを構成した場合は、たとえ、湯面にスラグが浮遊していても、流出口側にスラグが流動することはなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
図1は、本発明に係るダイカスト鋳造用溶湯保持炉の要部構造を示したものである。なお、本溶湯保持炉の全体的構造は、前記図3に示したものと実質的に同じであるので、ここでは、図3に示した部分と同一部分には同一符号を付すことする。
【0010】
本実施の形態において、溶湯Mを加熱し保温する加熱部5に隣接して配置される汲出部8内には、蓋体11が配置されている。蓋体11は、ここでは基板12と基板12の、湯面に対向する側に接合されたセラミック多孔体13とからなっており、その中央には、後に詳述する給湯用ラドル20を出入りさせるための溶湯汲出口14が設けられている。一方、溶湯保持炉10に隣接してコラム15が立設されており、このコラム15には昇降ユニット16が装着されている。前記蓋体11は、その基板12の上面に一体化したリング状の取付板17に前記昇降ユニット16から延ばしたブラケット18を連結させることにより、該昇降ユニット16と一体に汲出部8内を昇降可能となっている。
【0011】
上記蓋体11にはまた、該蓋体11と湯面(溶湯M)との間に不活性ガスを供給するための複数のガス供給管19が設けられている。各ガス供給管19は、その先端部が基板12を通してセラミック多孔体13内に導入されている。各ガス供給管19の他端は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスの発生源に配管接続されており、前記発生源からガス供給管19に給送された不活性ガスは、図1に矢印で示すようにセラミック多孔体13内部を分流して、湯面側、蓋体11の中央の溶湯汲出口14側および蓋体11の外周面と溶湯保持炉10の内周面との隙間へ向かう。
【0012】
本実施の形態において、上記蓋体11を構成するセラミック多孔体12としては、溶湯保持炉10内に保持されている溶湯Mと反応しないセラミックスを選択する。溶湯Mがアルミニウムまたはアルミニウム合金である場合、これと反応しないセラミックスとしては、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の酸化物系セラミックスを始め、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素等の非酸化物系セラミックスがある。
なお、本溶湯保持炉10は、アルミニウム系溶湯以外にも、マグネシウム系溶湯、亜鉛系溶湯など多種類の溶湯の保持に利用できることはもちろんで、これら溶湯の種類に応じてセラミック多孔体12の材種を選定する。
【0013】
本実施の形態で用いる給湯用ラドル20は、図2にもよく示されるように、箱形(ここでは、円筒形)をなすラドル本体21を備えている。ラドル20は、ロボット30のアーム先端に取付けられ、溶湯Mの汲出し時には、図1に示すようにラドル本体21を起立させた態勢に位置決めされ、この態勢を維持しながら直線移動して前記蓋体11の溶湯汲出口14に挿脱される。したがって、前記溶湯汲出口14の口径を、ラドル本体21の直径よりもわずか大径となるように設定しても、ラドル21が蓋体11に干渉することはない。
【0014】
上記ラドル本体21の側壁には、溶湯Mの流入口22と溶湯Mの流出口23とが相反する方向へ向けて設けられている。ここで、前記流入口22は、ラドル20を溶湯M中から引上げた際、所定量の溶湯Mが切出される位置に設定され、一方、前記流出口23は、この流入口22よりも十分高位となる位置に設定されている。また、ラドル本体21内には、流入口22と流出口23とを隔離するトラップ壁24が配設されている。このトラップ壁24は、汲出態勢としたラドル本体21において、該ラドル本体21の下底との間に所定の間隙の通路25を形成するようにその垂下高さが設定されている。なお、流出口22には、溶湯の流出を円滑にするための口金26が装着されている。また、ラドル本体21内には湯面レベルを検知する湯面検知センサ27が配設されている。
【0015】
上記のように構成した溶湯保持炉においては、汲出部8内に保持されている溶湯Mの湯面にわずか接触する程度に蓋体11が位置決めされ、この状態でガス供給管19を通じて蓋体11を構成するセラミック多孔体13内に不活性ガスが供給される。この不活性ガスは、前記したようにセラミック多孔体13内を分流して、湯面側、中央の溶湯汲出口14側および蓋体11の外周面と溶湯保持炉10の内周面との隙間へ向かい、これにより湯面は不活性ガスによりシールドされ、この結果、溶湯Mの酸化が抑制される。
【0016】
その後、ロボット30のアームが所定の軌跡に沿って動作して、給湯用ラドル20が、そのラドル本体21を汲出態勢(起立姿勢)として蓋体11の溶湯汲出口14に挿入され、ラドル本体21の下部側が溶湯Mに浸漬される。この時、ラドル本体21は、その流入口22の一部が湯面からわずか露出しかつその流出口23が溶湯M内に没しない位置まで浸漬される。これにより、汲出部8内の溶湯Mは、流入口22からラドル本体21内の、トラップ壁24により仕切られた一方の室28a(図2)に流入し、さらにトラップ壁24の下側の通路25を通じて他方の室28b(図2)へ回る。したがって、たとえ、湯面に酸化物のスラグが浮遊していたとしても、該スラグは、流出口23が開口している他方の室27bへ流動することはない。また、流入口22の一部が湯面からわずか露出しかつ流出口23が溶湯Mの上方に位置決めされていることから、ラドル本体21内の両室28a、28bの空所内にも不活性ガスが流入する。
【0017】
次に、ロボット30のアームの動作で、ラドル20が溶湯M内から引上げられる。すると、ラドル本体21内の余分な溶湯Mが流入口22から落下し、ラドル本体21内には、流入口22の下側開口縁と湯面レベルを一致させる一定量の溶湯Mが収納される。すなわち、ダイカスト鋳造に必要な量の溶湯Mがラドル20に切出され、この溶湯Mは、ロボット30のアームの動きで、溶湯保持炉10の汲出部8から鋳造機側の射出スリーブ上へ搬送される。そして、該ロボット30のアームのハンドリングによりラドル本体21の姿勢が変換されることで、その流出口23から射出スリーブ内に溶湯が供給(給湯)され、その後、射出スリーブ内のプランジャが前進して鋳造の1サイクルが終了する。
【0018】
ラドル20は、上記した給湯の終了と同時に、ロボット30のアームの動きで再び汲出部8側へ戻され、蓋体11の溶湯汲出口14に挿入される。しかして、上記汲出部8から射出スリーブ上へ搬送される間、ラドル本体21内の2つの室28a、28b内には不活性ガスが滞留しているので、ラドル20内での溶湯Mの酸化が抑制される。また、ラドル20が蓋体11の溶湯汲出口14から切離されて、再び戻る間の時間、すなわち鋳造の1サイクルは、極めて短時間( 秒程度)であり、しかも、この間、溶湯汲出口14内にはセラミック多孔体13を通して不活性ガスが供給されているので、溶湯汲出口14内に露出する湯面が空気と接触する程度はわずかとなり、汲出部8内の溶湯Mの酸化は著しく抑制される。
【0019】
一方、上記した汲出部8内からの溶湯Mの汲出しにより、湯面レベルは下がるが、ラドル本体21内に配設した湯面検知センサ27からの信号により昇降ユニット16が作動することで、蓋体11が所定量だけ下降し、そのセラミック多孔体13が湯面にわずか接触する状態に位置決めされる。したがって、不活性ガスの大気中への拡散が防止され、効率よく湯面がシールドされる。
【0020】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る溶湯保持炉によれば、簡便なラドルによる給湯方式を変更することなく、簡単な装置の付加だけで汲出部内での酸化物の生成を抑制できるので、大きなコスト負担を伴うことなく鋳造品質の向上を達成でき、その利用価値は大なるものがある。
また、本発明に係る給湯用ラドルは、ラドル本体をスリムな箱形として、その直線移動だけで溶湯を汲出すことができるので、本溶湯保持炉における蓋板に設ける溶湯汲出口の開口面積をできるだけ小さくすることができ、不活性ガスによるシールド効果を十分に高めることができ、本溶湯保持炉に適用して好適となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶湯保持炉の要部構造を示す断面図である。
【図2】本発明に係る給湯用ラドルの構造を示す断面図である。
【図3】従来の溶湯保持炉の一般的な構造を示す断面図である。
【符号の説明】
5 加熱部
8 汲出部
11 蓋体
12 基板
13 セラミック多孔体
14 溶湯汲出口
20 給湯用ラドル
21 ラドル本体
22 流入口
23 流出口
24 トラップ壁
M 溶湯
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイカスト鋳造に用いられる溶湯保持炉と、この溶湯保持炉から溶湯を汲出して鋳造機側へ搬送する給湯用ラドルとに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的なダイカスト鋳造用溶湯保持炉は、図3に示すように、取鍋から溶湯Mを受入れる受入部1と、受入部1内の溶湯Mを仕切壁2に設けた通路3を通して受入れ、内蔵するヒータ4により加熱し保温する加熱部5と、加熱部5内の溶湯Mを仕切壁6に設けた通路7を通して受入れ、給湯用ラドルによる溶湯Mの汲出しに供される汲出部8とを連続に備えた構造となっている(例えば、特許文献1にも、同様の保持炉が記載されている)。
【0003】
ところで、ダイカスト鋳造プロセスにおいては、溶解炉内での溶解中はもとより、溶解炉から取鍋への出湯中、取鍋から溶湯保持炉の受入部1への排湯中、加熱部5および汲出部8内での保持中、ラドルによる汲出し中などの多くの過程で溶湯Mが酸化作用を受け、酸化物が発生する。そして、この酸化物は、溶湯M中に混入するほか、湯面にスラグとして浮遊し、そのまま放置したのでは、介在物として鋳造品に入り込んで鋳造品質を著しく悪化させる原因になる。
そこで従来は、同じく図3に示すように、受入部1と加熱部5とを連絡する通路2および加熱部5と汲出部8とを連絡する通路7にフィルタ9,9を配置し、酸化物が後工程へ流出しないように配慮していた。
なお、一部では、保持炉を蓋体で覆って保持炉内に不活性ガスを供給しながら、フロートの押込みにより鋳造機側の射出スリーブへ、直接溶湯を給送する方式を採用している(例えば、特許文献2参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平9−1322号公報
【特許文献2】
特開平8−197226号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したラドルによる給湯方式に適用される一般的な溶湯保持炉10(図3)によれば、フィルタ9により加熱部5から汲出部8への酸化物の流動は防止されるものの、汲出部8がオープンになっているため、汲出部8内での保持中に溶湯Mの酸化が進んで新たな酸化物が生成し、鋳造機側への酸化物の持込みを抑えることが困難になる、という問題があった。
なお、上記特許文献2に記載されるごとき、フロートによる押込みにより射出スリーブへ、直接溶湯を給送する方式を採用すれば、不活性ガスによるシールで新たに酸化物の生成を抑制できるが、この場合は、溶湯保持炉を完全密閉することに加え、フロートの設置やその制御手段が必要になり、構造の複雑化や設備コストの上昇が避けられない。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、簡便なラドルによる給湯方式を変更することなく汲出部内での酸化物の生成を抑制できるようにし、もって鋳造品質の向上に寄与する、コスト負担の小さい溶湯保持炉を提供し、併せてこの溶湯保持炉に適用して好適な給湯用ラドルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る溶湯保持炉は、金属溶湯を加熱して保温する加熱部に隣接して、給湯用ラドルによる溶湯汲出しのための汲出部を配置してなる溶湯保持炉において、前記汲出部内に、給湯用ラドルを出入りさせる溶湯汲出口を有する蓋体を昇降可能に配設し、前記蓋体には、該蓋体と湯面との間に不活性ガスを供給するガス供給管を設けたことを特徴とする。
このように構成した溶湯保持炉においては、汲出部内に配置した蓋体にはラドルを出入りさせる溶湯汲出口が設けられているだけなので、ガス供給管を通じて蓋体と湯面との間に不活性ガスを供給すると、湯面のほぼ全面が不活性ガスによりシールドされ、溶湯の酸化が抑制される。また、蓋体は、昇降可能となっているので、湯面の変動に応じて蓋体を昇降させることで、蓋体と湯面との隙間を可及的に狭く維持することができ、その分、不活性ガスの大気中への拡散が防止されて効率よく湯面をシールドすることができる。
本溶湯保持炉において、上記蓋体は、基板と該基板の、湯面に対向する側に接合されたセラミック多孔体とからなり、ガス供給管の先端部が、前記基板を通して前記セラミック多孔体内に導入されている構成とすることができる。このように蓋体を構成した場合は、蓋体を湯面にわずか接触するまで近づけても、セラミック多孔体を通して、湯面に対してはもちろん、溶湯汲出口および蓋体の周辺へ十分に不活性ガスを送ることができ、ガスシールドの効率はより一層高まる。
【0008】
本発明に係る給湯用ラドルは、箱形をなすラドル本体を備え、該ラドル本体の上下方向への直線移動だけで溶湯の汲出しが可能であること特徴とする。
このように構成した給湯用ラドルにおいては、ラドル本体をスリムな箱形とすることで、上記蓋板に設ける溶湯汲出口の開口面積をできるだけ小さくすることができ、その分、溶湯のガスシールドは確実となる。
本給湯用ラドルは、ラドル本体の側壁に、溶湯の流入口と溶湯の流出口とを相反する方向へ向けて設け、ラドル本体の内部には、前記流入口から前記流出口へのスラグ流動を規制するトラップ壁を配設した構造とすることができる。このようにラドルを構成した場合は、たとえ、湯面にスラグが浮遊していても、流出口側にスラグが流動することはなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
図1は、本発明に係るダイカスト鋳造用溶湯保持炉の要部構造を示したものである。なお、本溶湯保持炉の全体的構造は、前記図3に示したものと実質的に同じであるので、ここでは、図3に示した部分と同一部分には同一符号を付すことする。
【0010】
本実施の形態において、溶湯Mを加熱し保温する加熱部5に隣接して配置される汲出部8内には、蓋体11が配置されている。蓋体11は、ここでは基板12と基板12の、湯面に対向する側に接合されたセラミック多孔体13とからなっており、その中央には、後に詳述する給湯用ラドル20を出入りさせるための溶湯汲出口14が設けられている。一方、溶湯保持炉10に隣接してコラム15が立設されており、このコラム15には昇降ユニット16が装着されている。前記蓋体11は、その基板12の上面に一体化したリング状の取付板17に前記昇降ユニット16から延ばしたブラケット18を連結させることにより、該昇降ユニット16と一体に汲出部8内を昇降可能となっている。
【0011】
上記蓋体11にはまた、該蓋体11と湯面(溶湯M)との間に不活性ガスを供給するための複数のガス供給管19が設けられている。各ガス供給管19は、その先端部が基板12を通してセラミック多孔体13内に導入されている。各ガス供給管19の他端は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスの発生源に配管接続されており、前記発生源からガス供給管19に給送された不活性ガスは、図1に矢印で示すようにセラミック多孔体13内部を分流して、湯面側、蓋体11の中央の溶湯汲出口14側および蓋体11の外周面と溶湯保持炉10の内周面との隙間へ向かう。
【0012】
本実施の形態において、上記蓋体11を構成するセラミック多孔体12としては、溶湯保持炉10内に保持されている溶湯Mと反応しないセラミックスを選択する。溶湯Mがアルミニウムまたはアルミニウム合金である場合、これと反応しないセラミックスとしては、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の酸化物系セラミックスを始め、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素等の非酸化物系セラミックスがある。
なお、本溶湯保持炉10は、アルミニウム系溶湯以外にも、マグネシウム系溶湯、亜鉛系溶湯など多種類の溶湯の保持に利用できることはもちろんで、これら溶湯の種類に応じてセラミック多孔体12の材種を選定する。
【0013】
本実施の形態で用いる給湯用ラドル20は、図2にもよく示されるように、箱形(ここでは、円筒形)をなすラドル本体21を備えている。ラドル20は、ロボット30のアーム先端に取付けられ、溶湯Mの汲出し時には、図1に示すようにラドル本体21を起立させた態勢に位置決めされ、この態勢を維持しながら直線移動して前記蓋体11の溶湯汲出口14に挿脱される。したがって、前記溶湯汲出口14の口径を、ラドル本体21の直径よりもわずか大径となるように設定しても、ラドル21が蓋体11に干渉することはない。
【0014】
上記ラドル本体21の側壁には、溶湯Mの流入口22と溶湯Mの流出口23とが相反する方向へ向けて設けられている。ここで、前記流入口22は、ラドル20を溶湯M中から引上げた際、所定量の溶湯Mが切出される位置に設定され、一方、前記流出口23は、この流入口22よりも十分高位となる位置に設定されている。また、ラドル本体21内には、流入口22と流出口23とを隔離するトラップ壁24が配設されている。このトラップ壁24は、汲出態勢としたラドル本体21において、該ラドル本体21の下底との間に所定の間隙の通路25を形成するようにその垂下高さが設定されている。なお、流出口22には、溶湯の流出を円滑にするための口金26が装着されている。また、ラドル本体21内には湯面レベルを検知する湯面検知センサ27が配設されている。
【0015】
上記のように構成した溶湯保持炉においては、汲出部8内に保持されている溶湯Mの湯面にわずか接触する程度に蓋体11が位置決めされ、この状態でガス供給管19を通じて蓋体11を構成するセラミック多孔体13内に不活性ガスが供給される。この不活性ガスは、前記したようにセラミック多孔体13内を分流して、湯面側、中央の溶湯汲出口14側および蓋体11の外周面と溶湯保持炉10の内周面との隙間へ向かい、これにより湯面は不活性ガスによりシールドされ、この結果、溶湯Mの酸化が抑制される。
【0016】
その後、ロボット30のアームが所定の軌跡に沿って動作して、給湯用ラドル20が、そのラドル本体21を汲出態勢(起立姿勢)として蓋体11の溶湯汲出口14に挿入され、ラドル本体21の下部側が溶湯Mに浸漬される。この時、ラドル本体21は、その流入口22の一部が湯面からわずか露出しかつその流出口23が溶湯M内に没しない位置まで浸漬される。これにより、汲出部8内の溶湯Mは、流入口22からラドル本体21内の、トラップ壁24により仕切られた一方の室28a(図2)に流入し、さらにトラップ壁24の下側の通路25を通じて他方の室28b(図2)へ回る。したがって、たとえ、湯面に酸化物のスラグが浮遊していたとしても、該スラグは、流出口23が開口している他方の室27bへ流動することはない。また、流入口22の一部が湯面からわずか露出しかつ流出口23が溶湯Mの上方に位置決めされていることから、ラドル本体21内の両室28a、28bの空所内にも不活性ガスが流入する。
【0017】
次に、ロボット30のアームの動作で、ラドル20が溶湯M内から引上げられる。すると、ラドル本体21内の余分な溶湯Mが流入口22から落下し、ラドル本体21内には、流入口22の下側開口縁と湯面レベルを一致させる一定量の溶湯Mが収納される。すなわち、ダイカスト鋳造に必要な量の溶湯Mがラドル20に切出され、この溶湯Mは、ロボット30のアームの動きで、溶湯保持炉10の汲出部8から鋳造機側の射出スリーブ上へ搬送される。そして、該ロボット30のアームのハンドリングによりラドル本体21の姿勢が変換されることで、その流出口23から射出スリーブ内に溶湯が供給(給湯)され、その後、射出スリーブ内のプランジャが前進して鋳造の1サイクルが終了する。
【0018】
ラドル20は、上記した給湯の終了と同時に、ロボット30のアームの動きで再び汲出部8側へ戻され、蓋体11の溶湯汲出口14に挿入される。しかして、上記汲出部8から射出スリーブ上へ搬送される間、ラドル本体21内の2つの室28a、28b内には不活性ガスが滞留しているので、ラドル20内での溶湯Mの酸化が抑制される。また、ラドル20が蓋体11の溶湯汲出口14から切離されて、再び戻る間の時間、すなわち鋳造の1サイクルは、極めて短時間( 秒程度)であり、しかも、この間、溶湯汲出口14内にはセラミック多孔体13を通して不活性ガスが供給されているので、溶湯汲出口14内に露出する湯面が空気と接触する程度はわずかとなり、汲出部8内の溶湯Mの酸化は著しく抑制される。
【0019】
一方、上記した汲出部8内からの溶湯Mの汲出しにより、湯面レベルは下がるが、ラドル本体21内に配設した湯面検知センサ27からの信号により昇降ユニット16が作動することで、蓋体11が所定量だけ下降し、そのセラミック多孔体13が湯面にわずか接触する状態に位置決めされる。したがって、不活性ガスの大気中への拡散が防止され、効率よく湯面がシールドされる。
【0020】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る溶湯保持炉によれば、簡便なラドルによる給湯方式を変更することなく、簡単な装置の付加だけで汲出部内での酸化物の生成を抑制できるので、大きなコスト負担を伴うことなく鋳造品質の向上を達成でき、その利用価値は大なるものがある。
また、本発明に係る給湯用ラドルは、ラドル本体をスリムな箱形として、その直線移動だけで溶湯を汲出すことができるので、本溶湯保持炉における蓋板に設ける溶湯汲出口の開口面積をできるだけ小さくすることができ、不活性ガスによるシールド効果を十分に高めることができ、本溶湯保持炉に適用して好適となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶湯保持炉の要部構造を示す断面図である。
【図2】本発明に係る給湯用ラドルの構造を示す断面図である。
【図3】従来の溶湯保持炉の一般的な構造を示す断面図である。
【符号の説明】
5 加熱部
8 汲出部
11 蓋体
12 基板
13 セラミック多孔体
14 溶湯汲出口
20 給湯用ラドル
21 ラドル本体
22 流入口
23 流出口
24 トラップ壁
M 溶湯
Claims (4)
- 金属溶湯を加熱して保温する加熱部に隣接して、給湯用ラドルによる溶湯汲出しのための汲出部を配置してなる溶湯保持炉において、前記汲出部内に、給湯用ラドルを出入りさせる溶湯汲出口を有する蓋体を昇降可能に配設し、前記蓋体には、該蓋体と湯面との間に不活性ガスを供給するガス供給管を設けたことを特徴とする溶湯保持炉。
- 蓋体が、基板と該基板の、湯面に対向する側に接合されたセラミック多孔体とからなり、ガス供給管の先端部が、前記基板を通して前記セラミック多孔体内に導入されていることを特徴とする請求項1に記載の溶湯保持炉。
- 箱形をなすラドル本体を備え、該ラドル本体の上下方向への直線移動だけで溶湯の汲出しが可能であることを特徴とする給湯用ラドル。
- ラドル本体の側壁に、溶湯の流入口と溶湯の流出口とを相反する方向へ向けて設け、ラドル本体の内部には、前記流入口から前記流出口へのスラグ流動を規制するトラップ壁を配設したことを特徴とする給湯用ラドル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003162816A JP2004358544A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | 溶湯保持炉および給湯用ラドル |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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JP2004358544A true JP2004358544A (ja) | 2004-12-24 |
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ID=34054855
Family Applications (1)
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004358544A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
RU2477197C1 (ru) * | 2011-11-23 | 2013-03-10 | Российская Федерация, от имени которой выступает Министерство промышленности и торговли Российской Федерации (Минпромторг России) | Промежуточный ковш для разливки стали с камерами для плазменного подогрева жидкого металла |
CN103949628A (zh) * | 2014-04-30 | 2014-07-30 | 北京科技大学 | 一种连铸过程杜绝中间包二次氧化的装置及其方法 |
CN111001780A (zh) * | 2019-12-31 | 2020-04-14 | 苏州市红雨虹五金有限公司 | 一种压铸自动化生产系统 |
-
2003
- 2003-06-06 JP JP2003162816A patent/JP2004358544A/ja active Pending
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