JP2004358384A - 塗布方法および平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】帯状体の巾および厚みが変化した場合においても塗布液の乾燥時間を一定に保持することができる塗布方法、および前記塗布方法により製造される平版印刷版の提供。
【解決手段】帯状体の少なくとも一方の面に塗布液を塗布し、乾燥して塗布層を形成する塗布方法であって、帯状体の巾が広いとき、および厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いとき、および厚さが薄いときに比較して帯状体を高い温度に保持して前記塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法。
【選択図】 図1
【解決手段】帯状体の少なくとも一方の面に塗布液を塗布し、乾燥して塗布層を形成する塗布方法であって、帯状体の巾が広いとき、および厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いとき、および厚さが薄いときに比較して帯状体を高い温度に保持して前記塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布方法および平版印刷版に関し、特に、帯状体の巾が広い場合および狭い場合、並びに厚みが厚い場合および薄い場合の何れにおいても、塗布した塗布液の乾燥時間が一定にすることができる塗布方法、および前記塗布方法によって製版層等が形成された平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷版は、通常、アルミニウムウェブの少なくとも一方の面を砂目立てした支持体ウェブの砂目立て面に感光層形成液を塗布し、加熱乾燥して製版層を形成することにより製造される。
【0003】
従来、支持体ウェブに塗布した感光層形成液を乾燥する方法が各種提案されてきた。そのような方法には、たとえば感光層形成液を塗布した支持体ウェブを、所定温度に保持された熱ロールに接触させる方法(特許文献1)、スリット状のノズルから熱風を吹きつけて感光層形成液を乾燥させる方法(特許文献2)、赤外線を照射して感光層形成液を乾燥させる方法(特許文献3)、感光層形成液の乾燥の後半において1段または多段の加熱ロールを支持体ウェブに接触させて乾燥する方法(特許文献4、5、6)などがある。また、特定の乾燥条件で感光層を乾燥することも提案された(特許文献7,8)。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−70837号公報
【特許文献2】
特開平7−89255号公報
【特許文献3】
特開平6−317896号公報
【特許文献4】
特公平6−63487号公報
【特許文献5】
特開平8−318198号公報
【特許文献6】
特開平9−66259号公報
【特許文献7】
特開2001−125255号公報
【特許文献8】
特開2001−117219号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
感光層形成液の乾燥は、通常、熱風乾燥で行われる。したがって、乾燥初期においては、熱風から供給された熱量の少なくとも一部が支持体ウェブおよび感光層形成液の温度を上昇させるのに使用される。また、熱風乾燥においては、支持体ウェブへの熱の伝達は対流伝熱で行われるから、支持体ウェブおよび感光層形成液膜の温度が上昇するまでに時間がかかる。
【0006】
支持体ウェブの厚みおよび巾が変化したときは、前記温度上昇時間が変化する。即ち、支持体ウェブの厚みが厚いときおよび巾が広いときは、前記厚みが薄いときおよび巾が狭いときよりも、前記温度上昇時間は長くなる。
【0007】
しかし、通常の製造ラインにおいては乾燥装置における乾燥時間は一定に設定されているから、乾燥ラインから導出された支持体ウェブの感光層の乾燥度合いが一定にならないことが考えられる。したがって、前記温度上昇時間のバラツキは、得られる平版印刷版の性能にバラツキが生じる原因になると考えられる。
【0008】
本発明は、支持体ウェブなどの帯状体の巾および厚みが変化した場合においても感光層形成液などの塗布液の乾燥時間を一定に保持することができる塗布方法、および前記塗布方法により製造される平版印刷版に関する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、帯状体の少なくとも一方の面に塗布液を塗布し、乾燥して塗布層を形成する塗布方法であって、帯状体の巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いときおよび厚みが薄いときに比較して帯状体を高い温度に保持して前記塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法に関する。
【0010】
帯状体の厚みや巾が大きな場合において、常温の帯状体に塗布液を塗布し、加熱乾燥すると、乾燥初期においては、帯状体および塗布液膜の温度上昇に多くの熱量が費やされる。
【0011】
しかしながら、前記塗布方法においては、帯状体の厚みが厚い場合や巾が広い場合は、帯状体を高い温度に保持して塗布液を塗布しているから、帯状体および塗布液膜の温度上昇に費やされる熱量を大幅に減少させ、または皆無にできる。したがって、乾燥時間を大幅に短縮できる。
【0012】
したがって、帯状体の厚みが厚い場合や巾が広い場合においても、帯状体の厚みが薄い場合や巾が狭い場合と同様に、短い時間で塗布液膜の乾燥を行うことができ、また塗布液の乾燥度合いにバラツキが生じることもない。
【0013】
前記塗布方法によれば、帯状体に塗布された塗布液の乾燥を短時間で行うことができるから、帯状体の表面に多数の塗布層を形成する場合に好適に適用できる。したがって平版印刷版ののほか、オーディオテープやビデオテープのような磁気テープ、写真フィルム、および各種カラー鉄板の製造等に好適に適用できる。
【0014】
故に、帯状体としては、[従来の技術]の欄で述べた支持体ウェブのほか、前記磁気テープのベースフィルム、写真フィルムのべースフィルム、およびカラー鉄板の製造に使用される亜鉛鍍金鋼板などが挙げられる。
【0015】
また、塗布液は、水系塗布液および有機溶媒系塗布液の何れであってもよい。塗布液としては、具体的には、平版印刷版において製版層を形成する製版層形成液が挙げられる。他には、前記製版層を保護する中間層および酸素遮断層を形成する中間層形成液および酸素遮断層形成液などが挙げられる。
【0016】
前記塗布液としては、更に、磁気テープの製造に使用される磁性層形成液、保護層形成液、研磨層形成液、写真フィルムにおいて赤色感光層、緑色感光層、青色感光層、中間層、イエローフィルター等の層を形成する各層塗布液、およびカラー鉄板の製造に使用される下塗り塗料、中塗り塗料、および上塗り塗料などが挙げられる。
【0017】
帯状体に塗布された塗布液を乾燥する方法としては、熱風加熱、ローラ加熱、赤外線照射、誘導加熱などが挙げられるが、加熱された塗布液膜の表面から溶媒蒸気を吹き払いつつ乾燥する故に、前記塗布液膜を短時間で乾燥できる点から、熱風加熱が好ましい。
【0018】
帯状体に塗布された塗布液を乾燥するときは、帯状体における塗布液を塗布した面は、上向きおよび下向きの何れであってもよいが、熱風加熱および赤外線照射によって乾燥する場合には、塗布面に熱風を吹き付け、または赤外線を照射する必要がある。また、加熱ローラで乾燥する場合、および誘導加熱で加熱する場合であって誘導加熱ローラを用いるときは、加熱ローラおよび誘導加熱ローラは、前記塗布面とは反対側の面に当接させる必要がある。
【0019】
請求項2の発明は、前記帯状体の温度を0.8Tblow(℃)(Tblowは、前記塗布液に含まれる溶媒のうち、もっとも沸点の低いもののセ氏で表した沸点である。)以下に保持して前記塗布液の塗布を行う塗布方法に関する。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記帯状体の温度を35〜0.8Tblow(℃)に保持して前記塗布液の塗布を行う塗布方法に関する。
【0021】
前記塗布方法においては、帯状体を常温よりも高い温度に加熱しているから、塗布液を塗布したときに帯状体および塗布液膜の温度上昇に費やされる熱量および時間を大幅に減少させることができる。したがって、塗布液の乾燥時間を大幅に短縮できる。
【0022】
また、帯状体を0.8Tblow(℃)以下の温度に保持しているから、帯状体に塗布液を塗布したとたんに、塗布液膜中の溶媒が沸騰し、塗布膜中に溶媒の蒸発した痕が生じることを防止できるから、特に均一性が高く、欠陥の少ない塗布膜が得られる故に好ましい。
【0023】
温度0.8Tblow(℃)は35℃よりも高いことが、塗布液膜中の溶媒の沸騰を防止する上で好ましいから、塗布液中の溶媒は、35(℃)÷0.8=43.75(℃)よりも高い沸点を有するものから選択することが好ましい。
【0024】
なお、塗布液を塗布するときの帯状体の温度は、35℃以上0.75Tblow(℃)の範囲がより好ましい。温度0.75Tblow(℃)は35℃よりも高いことが好ましいから、塗布液中の溶媒は、35(℃)÷0.75=46.67℃よりも高い沸点を有するものから選択することが好ましい。
【0025】
前記帯状体を前記温度範囲に保持する方法としては、前記帯状体を適宜の方法で加熱する方法がある。また、前記帯状体に2層以上の塗布層を形成する場合には、後述するように、最初の塗布層を形成して加熱乾燥し、加熱乾燥後の支持体ウェブを前記範囲の温度まで適宜の方向で冷却することもできる。
【0026】
帯状体を前記温度範囲まで加熱する方法としては、熱風を吹きつける熱風加熱、加熱ローラに接触させるローラ加熱、赤外線を照射して加熱する赤外線照射、交番磁界を帯状体に印加して生じる誘導電流により加熱する誘導加熱などが挙げられる。これらの加熱方法の内では、接触熱伝達である故に帯状体への熱伝導効率が高い点からローラ加熱が最も好ましい。
【0027】
請求項4に記載の発明は、前記帯状体を加熱ローラに接触させることにより前記帯状体の温度を前記範囲に保持して前記塗布液を塗布する塗布方法に関する。
【0028】
前記塗布方法においては、加熱ローラは接触熱伝達によって帯状体に熱を伝えるから、熱伝導効率が高い。したがって、帯状体の予熱が迅速に行われるから、支持体ウェブの厚みや乾燥初期において帯状体および塗布液膜の温度上昇に費やされる熱量を特に効果的に削減できるから、塗布液膜の乾燥を特に迅速に行うことができる。
【0029】
請求項5に記載の発明は、第1の塗布液を塗布し、乾燥して第1の塗布層を形成する第1塗布工程と、前記第1塗布工程で形成された第1の塗布層に重ねて第2の塗布液を塗布、乾燥し、前記第1の塗布層に重ねて第2の塗布層を形成する第2塗布工程とを有してなり、前記第1塗布工程および前記第2塗布工程の何れにおいても、帯状体の巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いときおよび厚みが薄いときよりも、帯状体を高い温度に保持して前記第1の塗布液および第2の塗布液を塗布する塗布方法に関する。
【0030】
前記塗布方法は、本発明の塗布方法を、帯状体に2層以上の塗布膜を形成する塗布方法に適用したものであり、前記第1の塗布層を形成する場合も、前記第2の塗布層を形成する場合も、帯状体の巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いときおよび厚みが薄いときよりも帯状体を高い温度に保持しているから、前記帯状体の巾が広い場合や厚みが厚い場合においても、前記帯状体の巾および厚みが小さな場合と同様に短い時間で各塗布層を乾燥することができる。したがって、前記塗布方法は、2層以上の塗布層を形成するときに特に好適に使用される。
【0031】
請求項6に記載の発明は、前記第1塗布工程においては、前記第1の塗布液を塗布した帯状体を加熱、乾燥して第1の塗布層を形成し、前記第2塗布工程においては、前記第1の塗布工程において加熱、乾燥された帯状体を冷却して帯状体を所定温度に保持して塗布液を塗布する塗布方法に関する。
【0032】
前記塗布方法においては、前記第1の塗布工程で前記帯状体に塗布された第1の塗布液を加熱、乾燥した熱を利用して第2の塗布工程で帯状体の表面温度を調整しているから、第2の塗布工程で帯状体を再加熱する必要がない。したがって、前記塗布方法によれば、エネルギーコストをより効果的に節減できる。
【0033】
前記第1の塗布層を形成した帯状体を冷却する方法としては、冷風を吹きつける方法の他、冷却ローラに接触させる方法等がある。
【0034】
請求項7に記載の発明は、前記第2塗布工程において、前記第1の塗布工程で第1の塗布層を形成した帯状体の表面に冷風を吹きつけて冷却する塗布方法に関する。
【0035】
前記塗布方法においては、第1の塗布層を形成した帯状体の表面に冷却ローラ等を当接させることなく所定の温度まで冷却しているから、冷却時において第1の塗布層が傷ついたり損傷したりすることがない。
【0036】
請求項8に記載の発明は、アルミニウムウェブの少なくとも一方の面を砂目立てした支持体ウェブと、前記支持体ウェブにおける砂目立て面に形成された製版層とを有する平版印刷版であって、前記製版層は、支持体ウェブの巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記支持体ウェブの巾が狭いときおよび厚みが薄いときに比較して前記支持体ウェブを高い温度に保持して製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなることを特徴とする平版印刷版に関する。
【0037】
前記平版印刷版においては、[発明が解決しようとする課題]の欄で述べたように、製版層形成液を塗布、乾燥して製版層が形成される。
【0038】
したがって、支持体ウェブの厚みが厚いときおよび巾が広いときは、製版層形成液および保護層形成液を塗布してから支持体ウェブの温度が乾燥温度まで上昇する温度上昇時間を大幅に短縮できるから、支持体ウェブの厚みが薄いときおよび巾が狭いときと同様の乾燥時間で製版層を形成できる。したがって、支持体ウェブの厚みおよび巾が変化しても、一定の性能の平版印刷版が得られる。
【0039】
請求項9に記載の発明は、前記製版層形成液が0.8Tblow(℃)以下の温度に保持された支持体ウェブに製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなる平版印刷版であり、請求項10に記載の発明は、前記製版層形成液が、35℃以上0.8Tblow(℃)以下の温度に保持された支持体ウェブに製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなる平版印刷版に関する。
【0040】
前記平版印刷版においては、支持体ウェブの表面を0.8Tblow(℃)よりも低い範囲の温度に保持して製版層形成液、中間層形成液、および保護層形成液を塗布しているから、これらの塗布液を塗布したとたんに、塗布液膜中の溶媒が沸騰し、塗布膜中に溶媒の蒸発した痕が生じる事故を防止できる。したがって、前記平版印刷版における製版層、中間層、および保護層は、何れも特に均一性が高く、欠陥が少ない。なお、前記平版印刷版においては、製版層形成液、中間層形成液、および保護層形成液を塗布する際に、平版印刷版の表面温度を0.75Tblow(℃)よりも低い範囲の温度に保持すれば特に好ましい。
【0041】
請求項11に記載の発明は、前記製版層が可視光または紫外光により重合する光重合型レーザ感光層であり、前記光重合型レーザ感光層を空気中からの酸素から保護する酸素遮断層が前記光重合型レーザ感光層に重ねて形成されてなる平版印刷版に関する。
【0042】
前記平版印刷版は、請求項1〜6に記載の塗布方法に従って光重合型レーザ感光層および酸素遮断層が形成された平版印刷版の例である。
【0043】
請求項12に記載の発明は、前記光重合型レーザ感光層と前記酸素遮断層との間に酸素遮断性樹脂の層である中間層が形成されてなる平版印刷版に関する。
【0044】
前記平版印刷版は、請求項11に記載の平版印刷版において、酸素遮断性樹脂からなる中間層が設けられた例である。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る塗布方法に従って製版層を形成した平版印刷版の各構成要素について詳説する。
【0046】
1.支持体ウェブ
支持体ウェブとしては、純アルミニウムまたはアルミニウム合金の帯状薄板であるアルミニウムウェブの少なくとも一方の面を粗面化したものが使用される。
【0047】
アルミニウムウェブの粗面化は、たとえば、機械的粗面化工程→アルカリエッチング工程(1)→デスマット工程(1)→電解粗面化工程→アルカリエッチング工程(2)→デスマット工程(2)という順序で行うことができる。前記各処理工程の間には水洗工程を挿入することが好ましい。
【0048】
前記機械的粗面化工程においては、アルミニウムウェブを一定方向に搬送しつつ、アルミニウムウェブの表面に研磨剤を吹きつけてローラ状のナイロンブラシで擦るブラシグレイン処理などを行うことができる。
【0049】
前記アルカリエッチング工程においては、アルミニウムウェブの両面または粗面化した側の面に苛性ソーダなどのアルカリ溶液を噴霧することにより、アルカリエッチング処理を行うことができる。アルカリエッチング工程(1)とアルカリエッチング工程(2)とにおいては、使用するアルカリ溶液の濃度や組成、温度が異なっていてもよい。
【0050】
デスマット工程においては、アルミニウムウェブの両面または粗面化した側の面に塩酸や硝酸などの酸性溶液を噴霧することにより、デスマット処理を行う。後述する電解粗面化処理においてアルミニウムウェブの表面にスマットと称する微量成分の黒色酸化物が析出するが、前記デスマット処理により除去される。デスマット工程(1)とデスマット工程(2)とにおいては、使用する酸性溶液の濃度や種類、組成、温度が異なっていてもよい。
【0051】
電解粗面化工程においては、通常は、前記アルミニウムウェブを酸性電解液中で交流電解する。酸性電解液としては、希塩酸や希硝酸が主に使用される。電解粗面化工程は1回だけでもよく、2回以上行ってもよい。
【0052】
前記粗面化処理が終了したら、前記アルミニウムウェブに陽極酸化処理を施し、次に、水ガラス溶液等により、親水化処理を施してもよい。
【0053】
前記純アルミニウムおよびアルミニウム合金としては、アルミニウムハンドブック第4版(1990、軽金属協会)に記載の、例えばJIS A 1050材、JIS A 3103材、JIS A 3005材、JIS A 1100材、JIS A 3004材、および引っ張り強度を増す目的でこれらに5重量%以下のマグネシウムを添加した合金などが挙げられる。また、再生アルミニウムも使用できる。
【0054】
2.製版層
製版層には、可視光で露光する可視光露光型感光層とレーザ光を照射して露光するレーザ光露光型感光層とがある。
【0055】
(1)可視光露光型感光層
可視光露光型感光層は、感光性樹脂および必要に応じて着色剤などを含有する組成物により形成できる。
【0056】
前記感光性樹脂としては、光が当たると現像液に溶けるようになるポジ型感光性樹脂、および光が当たると現像液に溶解しなくなるネガ型感光性樹脂が挙げられる。
【0057】
ポジ型感光性樹脂としては、キノンジアジド化合物およびナフトキノンジアジド化合物等のジアジド化合物と、フェノールノボラック樹脂およびクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂との組み合わせ等が挙げられる。
【0058】
一方、ネガ型感光性樹脂としては、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等のアルデヒド類との縮合物等のジアゾ樹脂、前記ジアゾ樹脂の無機酸塩、および前記ジアゾ樹脂の有機酸塩等のジアゾ化合物と、(メタ)アクリレート樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリウレタン等の結合剤との組み合わせ、並びに(メタ)アクリレート樹脂およびポリスチレン樹脂等のビニルポリマーと、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレン等のビニル重合性化合物と、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、およびチオキサントン誘導体等の光重合開始剤との組み合わせ等が挙げられる。
【0059】
前記着色剤としては、通常の色素のほか、露光により発色する露光発色色素、および露光により殆どまたは完全に無色になる露光消色色素等が使用できる。前記露光発色色素としては、たとえばロイコ色素等が挙げられる。一方、前記露光消色色素としては、トリフェニルメタン系色素、ジフェニルメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、およびアントラキノン系色素等が挙げられる。
【0060】
前記可視光露光型感光層は、前記感光性樹脂と前記着色剤とを溶剤に配合した感光性樹脂溶液を塗布して乾燥することにより形成できる。
【0061】
前記感光性樹脂溶液に使用される溶剤としては、前記感光性樹脂を溶解し、しかも、室温である程度の揮発性を有する溶剤が挙げられ、具体的には、たとえばアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、および炭酸エステル系溶剤等が挙げられる。
【0062】
アルコール系溶剤としては、エタノール、プロパノール、およびブタノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、およびジエチルケトン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、蟻酸メチル、蟻酸エチル等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフランおよびジオキサン等が挙げられ、グリコールエーテル系溶剤としては、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、およびブチルセロソルブ等が挙げられる。アミド系溶剤としては、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド等が挙げられる。炭酸エステル系溶剤としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、および炭酸ジブチル等が挙げられる。
(2)レーザ露光型感光層
レーザ露光型感光層としては、露光・現像後に、レーザ光を照射した部分が残存するネガ型レーザ感光層、レーザ光を照射した部分が除去されるポジ型レーザ感光層、およびレーザ光を照射すると光重合する光重合型レーザ感光層などが主なものとして挙げられる。
【0063】
A.ネガ型レーザ感光層
前記ネガ型レーザ感光層は、(A)熱または光により分解して酸を発生する酸前躯体、(B)前記酸前躯体(A)が分解して発生した酸により架橋する酸架橋性化合物、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)赤外線吸収剤、および(E)フェノール性水酸基含有化合物を適宜の溶剤に溶解または懸濁させたネガ型レーザ感光層形成液から形成できる。
【0064】
酸前躯体(A)としては、例えばイミノフォスフェート化合物等のように、紫外光、可視光、または熱により分解してスルホン酸を発生する化合物が挙げられる。他には、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、または光変色剤などとして一般に使用されている化合物も、酸前躯体(A)として使用できる。
【0065】
酸架橋性化合物(B)としては、アルコキシメチル基およびヒドロキシル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物、N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、およびエポキシ化合物などが挙げられる。
【0066】
アルカリ可溶性樹脂(C)としては、ノボラック樹脂、およびポリ(ヒドロキシスチレン)などの側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーなどが挙げられる。
【0067】
赤外線吸収剤(D)としては、760nm〜1200nmの赤外線を吸収する染料および顔料が挙げられ、具体的には、黒色顔料、赤色顔料、金属枌顔料、フタロシアニン系顔料、および前記波長の赤外線を吸収するアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、シアニン色素などが挙げられる。
【0068】
フェノール性水酸基含有化合物(E)としては、一般式(R1−X)n−Ar−(OH)m(R1は、炭素数6〜32のアルキル基またはアルケニル基であり、Xは、端結合、O、S、COO、またはCONHであり、Arは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、または複素環基であり、nおよびmは、何れも1〜3の自然数である。)で示される化合物が挙げられる。前記化合物としては、具体的にはノニルフェノールなどのアルキルフェノール類などが挙げられる。
【0069】
前記ネガ型レーザ感光層形成液には、さらに可塑剤なども配合できる。
【0070】
B.ポジ型レーザ感光層
前記ポジ型レーザ感光層は、(F)アルカリ可溶性高分子、(G)アルカリ溶解阻害剤、および(H)赤外線吸収剤を適宜の溶剤に溶解または懸濁させたポジ型レーザ感光層形成液により形成できる。
【0071】
アルカリ可溶性高分子(F)としては、たとえばフェノール樹脂、クレゾール樹脂、ノボラック樹脂、ピロガロール樹脂、およびポリ(ヒドロキシスチレン)などのフェノール性水酸基を有するフェノール系ポリマー、少なくとも一部のモノマー単位がスルホンアミド基を有するポリマーであるスルホンアミド基含有ポリマー、N−(p−トルエンスルホニル)(メタ)アクリルアミド基などの活性イミド基を有するモノマーの単独重合または共重合により得られる活性イミド基含有ポリマーなどが使用できる。
【0072】
アルカリ溶解阻害剤(G)としては、加熱などによりアルカリ可溶性高分子(F)と反応してアルカリ可溶性高分子(F)のアルカリ可溶性を低下させる化合物が挙げられ、具体的には、スルホン化合物、アンモニウム塩、スルホニウム塩、およびアミド化合物などが挙げられる。たとえば、アルカリ可溶性高分子(F)として前記ノボラック樹脂を用いる場合には、アルカリ溶解阻害剤(G)としてスルホン化合物の一種であるシアニン色素が好ましい。
【0073】
赤外線吸収剤(H)としては、スクワリリウム色素、ピリリウム色素、カーボンブラック、不溶性アゾ染料、アントラキノン系染料など、750〜1200nmの赤外域に吸収領域があり、光/熱変換能を有する色素、染料、および顔料が挙げられる。
【0074】
C.光重合型レーザ感光層
光重合型レーザ感光層は、(I)分子末端にエチレン性不飽和結合を有するビニル重合性化合物を含有する光重合型レーザ感光層形成液により形成できる。前記光重合型レーザ感光層形成液には、ほかに、(J)光重合開始剤、(K)増感剤、(L)バインダ樹脂などが配合される。
【0075】
ビニル重合性化合物(I)としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルであるエチレン性不飽和カルボン酸多価エステル、前記エチレン性不飽和カルボン酸と多価アミンとからなるメチレンビス(メタ)アクリルアミド、キシリレン(メタ)アクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸多価アミドなどが挙げられる。
【0076】
ビニル重合性化合物(I)としては、他に、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸モノエステルなども使用できる。
【0077】
更に、エチレン性不飽和カルボン酸多価エステル、エチレン性不飽和カルボン酸多価アミド、芳香族ビニル化合物、エチレン性不飽和カルボン酸モノエステルなどのビニル系モノマーの2量体や3量体、およびオリゴマーなどの高分子ビニルモノマーも使用できる。
【0078】
光重合開始剤(J)としては、ビニル系モノマーの光重合に通常に使用される光重合開始剤が使用できる。
【0079】
増感剤(K)としては、チタノセン化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、シアニン色素、メロシアニン色素、キサンテン色素、クマリン色素などが挙げられる。
【0080】
バインダ樹脂(L)としては、ビニル重合性化合物(I)のところで述べたビニル系モノマーを単独重合または共重合して得られるビニルポリマー、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体、ウレタン系バインダーポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、アルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等が挙げられる。
【0081】
前記ネガ型レーザ感光層形成液、ポジ型レーザ感光層形成液、または光重合型レーザ感光層形成液に使用される溶剤、および前記ネガ型レーザ感光層形成液、ポジ型レーザ感光層形成液、または光重合型レーザ感光層形成液の塗布方法については、「(1)可視光露光型感光層」のところで述べた溶剤および塗布方法と同様である。
【0082】
なお、前記光重合型レーザ感光層を形成するときは、シラン化合物を水、アルコール、またはカルボン酸で部分分解して得られる部分分解型シラン化合物などの反応性官能基を有するシリコーン化合物で平版印刷版用支持体の粗面化面を予め処理すると、平版印刷版用支持体と前記光重合型レーザ感光層との接着性が向上するから好ましい。
【0083】
4.中間層および酸素遮断層
感光層として光重合型レーザ感光層を形成する場合には、光重合型レーザ感光層の上に酸素遮断層を形成するか、または、光重合型レーザ感光層の上に中間層を形成し、更にその上に酸素遮断層を重ねて形成することが好ましい。
【0084】
中間層は、光重合型レーザ感光層に重ねて形成される非接着性層であり、換言すれば光重合型レーザ感光層のべとつきを防止し、光重合型レーザ感光層が搬送ローラの表面に接着するのを防止する機能を有する層である。一方、酸素遮断層は、前記中間層に重ねて空気中の酸素から前記光重合型レーザ感光層を保護する機能を有している。
【0085】
中間層は、光重合型レーザ感光層が搬送ローラの表面に接着するのを防止でき、また、酸素遮断層との密着性が良好なものであれば、どのような樹脂でも使用できるが、酸素遮断層と同様に、高い酸素遮断性を有する酸素遮断性樹脂を用いることが、酸素遮断層にピンホールが残存しないようにして光重合型レーザ感光層を空気中の酸素から確実に保護できる点、および酸素遮断層との密着性が良好な点から好ましい。
【0086】
中間層および酸素遮断層に使用できる酸素遮断性樹脂としては、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。前記水溶性ポリマーのうちでは、酸素遮断性および現像除去性の点からポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0087】
前記酸素遮断性樹脂としては、ほかに、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体樹脂のような塩化ビニリデン樹脂、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂など、酸素遮断性が高い樹脂として一般に知られているものが挙げられる。
【0088】
前記ポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を付与するのに充分な数の未置換ビニルアルコール単位を有している限り、ビニルアルコール単位の水酸基の一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良く、また、ビニルアルコールと他のモノマーとの共重合体の形態を有していても良い。
【0089】
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0090】
前記酸素遮断性樹脂の種類は、所望の酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性、光重合型レーザ感光層および酸素遮断層との密着性を考慮して決定することができる。また、中間層においては、酸素遮断層と同一の種類の酸素遮断性樹脂を使用してもよく、また,異なる種類の酸素遮断性樹脂を使用してもよいが、同一の種類の酸素遮断性樹脂を使用すれば、酸素遮断層との密着性が良くなるから好ましい。ただし、前記中間層と前記酸素遮断層とでは、酸素遮断性樹脂の分子量が異なっていてもよい。
【0091】
中間層および酸素遮断層に使用される酸素遮断性樹脂のの酸素透過係数は1×10−16〜1×10−10cm3・cm/cm2・sec・cmHgの範囲が適当であり、特に好ましくは1×10−15〜1×10−11cm3・cm/cm2・sec・cmHgである。酸素遮断性樹脂の分子量は、2000〜1000万の範囲が好ましく、特に2万〜300万範囲のものが好ましい。
【0092】
中間層および酸素遮断層は、前記酸素遮断性樹脂の溶液またはエマルションを主成分とする中間層形成液または酸素遮断層形成液を塗布し、乾燥させることにより、形成できるが、前記中間層形成液としては、既に形成された光重合型レーザ感光層に対して影響を及ぼさないようなものを用いることが好ましい。
【0093】
たとえば、高分子バインダとして水可溶性ポリマーを用いたときは、中間層形成液としては塩化ビニリデン樹脂の有機溶媒溶液が好ましい。一方、高分子バインダとして有機溶媒可溶性ポリマーを用いたときは、中間層形成液としては、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンの水溶液、または塩化ビニリデン樹脂のエマルションが好ましい。
【0094】
中間層形成液および酸素遮断層形成液には、更にグリセリン、ジプロピレングリコール等を前記酸素遮断性樹脂に対して数重量%配合して、得られる中間層に可撓性を付与することができる。また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤や、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を、前記酸素遮断性樹脂に対して数重量%配合して塗布性を改善することができる。また、酸素遮断性樹脂としてポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーを使用する場合には、光重合型レーザ感光層との密着性を高めるため、アクリル系エマルジョンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを前記酸素遮断性樹脂に対して20〜60重量%配合してもよい。
【0095】
5.製造ライン
本発明の平版印刷版の製造に使用される製造ラインの一例を図1に示す。
【0096】
製造ライン100は、図1に示すように、支持体ウェブWの搬送方向aに沿って光重合型レーザ感光層形成液を塗布する第1塗布部2と、第1塗布部2で塗布された光重合型レーザ感光層形成液の層を乾燥して光重合型レーザ感光層を形成する第1乾燥部4と、第1乾燥部4を通過した支持体ウェブWを冷却する第1冷却部6と、第1冷却部6を通過した支持体ウェブWの光重合型レーザ感光層の表面に酸素遮断性樹脂の水溶液を主成分とする水系塗布液を塗布する第2塗布部8と、第2塗布部8で塗布された水系塗布液を乾燥して酸素遮断性樹脂層を形成する第2乾燥部10と、第2乾燥部10を通過した支持体ウェブWを冷却する第2冷却部12と、第2冷却部12を通過した平版印刷版Pを巻き取る巻取り部30とが設けられている。第1塗布部2の上流側には、支持体ウェブWを予熱する予熱ローラ1が設けられている。また、第1乾燥部4は、上流側の第1乾燥トンネル4Aと下流側の第2乾燥トンネル4Bとに分かれている。
【0097】
第1乾燥トンネル4Aと下流側の第2乾燥トンネル4Bとの間には、搬送ローラ22が設けられ、第2乾燥トンネル4Bと第1冷却部6との間には搬送ローラ24が設けられている。また、第2乾燥部10と第2冷却部12との間には搬送ローラ26が設けられ、第2冷却部12と巻取り部30との間には、搬送ローラ28が設けられている。
【0098】
支持体ウェブWは、予熱ローラ1において、厚みが厚いときおよび巾が広いときは、厚みが薄いときおよび巾が小さなときに比較してより高い温度に予熱される。予熱ローラ1における予熱温度は、通常は35℃以上であり、好ましくは35〜80℃程度である。そして、第1塗布部2において支持体ウェブWの粗面化面に光重合型レーザ感光層形成液が塗布され、塗布された光重合型レーザ感光層形成液は第1乾燥トンネル4Aおよび第2乾燥トンネル4Bで乾燥される。第2乾燥トンネル4Bから導出された支持体ウェブWは、温度が約100℃と高く、表面に形成された光重合型レーザ感光層は軟膜状態で傷つきやすいが、第1冷却部6を通過するうちに、60〜80℃程度に冷却される。第2塗布部8においては、第1冷却部6を通過した支持体ウェブWの光重合型レーザ感光層に重ねて水系塗布液が塗布され、第2乾燥部10において乾燥されて酸素遮断性樹脂の層が形成される。ここで、水系塗布液としては前記中間層形成液や酸素遮断層形成液のうち、水系のものが挙げられる。
【0099】
製造ライン100においては、第1塗布部2および第2塗布部8にはバーコータが使用されているが、バーコータの代わりにスライドビードコータ、エクストルージョンコータ、ロールコータ等の各種塗布装置を用いてもよい。また、バーコータとしては、支持体ウェブWの搬送方向と同方向に回転する順転バーを有するもの、および前記搬送方向とは反対方向に回転する逆転バーを有するものの何れも使用できる。
【0100】
また、予熱ローラ1の加熱方法には特に制限はなく、加圧水蒸気による加熱、電熱による加熱、熱媒体による加熱、誘導コイルによる加熱の何れも可能である。また、加熱ローラ1の中心部に加熱装置を設け、加熱ローラ1はその回りを加熱するように構成すれば、加熱ローラ1の慣性質量が小さくなるから好ましい。
【0101】
第1乾燥部4および第2乾燥部10においては、熱風乾燥を行うことができる。熱風の流れは、支持体ウェブWの搬送方向aに対して平行な平行流であってもよく、また搬送方向aに対して垂直な垂直流であってもよい。
【0102】
水系塗布液は、乾燥後の膜重量が0.5〜5g/m2になるように塗布するのが好適であり、特に1〜3g/m2になるように塗布するのが好適である。
【0103】
図2に、本発明の平版印刷版の製造に使用される製造ラインの別の例を示す。図2において図1と同一の符号は、前記符号が図1において示す構成要素と同一の要素を示す。
【0104】
製造ライン102においては、図2に示すように、第1冷却部6と第2塗布部8との間に、中間層形成液を塗布する第3塗布部14と、第3塗布部14で塗布された中間層形成液を乾燥させる第3乾燥部16と、第3乾燥部16を通過した支持体ウェブWを冷却する第3冷却部18とが設けられている。第3乾燥部16と第3冷却部18との間には、搬送ローラ25が設けられ、第3冷却部18と第2塗布部8との間には搬送ローラ27、搬送ローラ29、および搬送ローラ31が設けられている。また、第2塗布部8と第2乾燥部10との間には、搬送ローラ32および搬送ローラ33が設けられている。なお、図2において40は、製造ライン102で製造された平版印刷版Pを巻き取る巻取り部である。
【0105】
第3塗布部14にはバーコータが使用されているが、バーコータの代わりにスライドビードコータ、エクストルージョンコータ、ロールコータ等の各種塗布装置を用いてもよい。
【0106】
上記の点を除いては、製造ライン102は、製造ライン100と同様の構成および機能を有している。
【0107】
支持体ウェブWは、厚みが厚いときおよび巾が広いときは、厚みが薄いときおよび巾が小さなときに比較してより高い温度に予熱される。予熱ローラ1における予熱温度は、通常は35℃以上であり、好ましくは35〜80℃の範囲である。そして、第1塗布部2において支持体ウェブWの粗面化面に光重合型レーザ感光層形成液が塗布され、塗布された光重合型レーザ感光層形成液は第1乾燥トンネル4Aおよび第2乾燥トンネル4Bで乾燥される。第2乾燥トンネル4Bから導出された支持体ウェブWは、温度が約100℃と高く、表面に形成された光重合型レーザ感光層は軟膜状態で傷つきやすいが、第1冷却部6を通過するうちに、35〜80℃程度に冷却される。
【0108】
第3塗布部14においては、第1冷却部6を通過して60〜80℃程度に冷却された支持体ウェブWの光重合型レーザ感光層に重ねて中間層形成液が塗布され、前記中間層形成液は第3乾燥部16で乾燥されて中間層が形成される。第3乾燥部16から導出された支持体ウェブWは第3冷却部18で冷却される。第3乾燥部16から導出されたばかリの支持体ウェブWの温度は100℃程度であるが、第3冷却部18において35〜80℃程度の温度まで冷却される。
【0109】
第2塗布部8においては、第3冷却部18で冷却された支持体ウェブWの中間層に重ねて酸素遮断層形成液が塗布され、第2乾燥部10において乾燥されて酸素遮断性樹脂の層が形成される。
【0110】
このようにして形成された平版印刷版Pは、巻取り部40でロール状に巻き取られる。
【0111】
【実施例】
(実施例1)
厚み0.15mm、0.20mm、0.24mm、0.30mm、および0.40mmの5種類のアルミニウムウェブの表面に、ブラシグレイン法によって機械的砂目立てを施した後、交流電解槽において電気的砂目立て処理を行った。次いで、陽極酸化皮膜の量が2g/m2になるように陽極酸化処理を施し、親水化処理を行って支持体ウェブWを製造した。
【0112】
次に、図1に示す製造ラインを用いて支持体ウェブWの粗面化面に光重合型レーザ感光層形成液を塗布して乾燥し、光重合性レーザ感光層を形成し、その上に、中間層形成液を塗布して中間層を形成した。光重合型レーザ感光層形成液は、塗布液量が18.8cc/m2になるように塗布し、第1乾燥部における熱風の温度を120℃に設定した。また、第2乾燥部10においては、熱風を100℃または120℃に設定し、そして、加熱ローラ1での支持体ウェブの予熱温度を変化させて乾燥時間を測定した。光重合型レーザ感光層形成液が乾燥したことの判定は、先端に布を巻きつけた棒で、第1塗布部およびそれよりも下流側の支持体ウェブの表面を擦り、布に光重合型レーザ感光層形成液が付着せず、また、塗布膜の光沢が変化しなくなった点を乾燥点とした。乾燥時間については、第1乾燥部4の入り口から前記乾燥点までの距離を計り、前期距離を支持体ウェブWの搬送速度で除して求めた。光重合型レーザ感光層形成液および中間層形成液の処方を以下に示す。
【0113】
(光重合型レーザ感光層形成液処方)
エチレン性不飽和化合物(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)…1.5重量部
高分子バインダ(メタクリル20mol%とメチルメタクリレート80mol%とを共重合した線状共重合体(MW=4万)) …2.0重量部
増感剤([化1]に示すもの …0.15重量部
光重合開始剤([化2]に示すもの) …0.2重量部
ε−フタロシアニン分散物 …0.02重量部
メガファックF117(R)(弗素系ノニオン界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製) …0.03重量部
メチルエチルケトン …9.0重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート …7.5重量部
トルエン …11.0重量部。
【0114】
増感剤
【0115】
【化1】
光重合開始剤
【0116】
【化2】
(中間層形成液の処方)
ポリビニルアルコール(鹸化度98モル%、重合度500)…20.0重量部
ポリビニルピロリドンK30(和光純薬(株)製) …2.0重量部
ノニオン界面活性剤(EMALEX NP−10(R)、(株)日本エマルジョン製)…0.5重量部
蒸留水 …540重量部。
【0117】
なお、光重合型レーザ感光層形成液の温度は24〜25℃であった。
【0118】
結果を図3に示す。支持体ウェブWの予熱温度が80℃付近のときは、得られた平版印刷版には、有機溶媒が蒸発した痕が認められたが、支持体ウェブWの予熱温度が70℃以下のときは、得られた平版印刷版には、このような痕は殆ど認められなかった。したがって、支持体ウェブWの予熱温度は70℃以下が好ましいことがわかる。ここで、光重合型レーザ感光層形成液に含まれる有機溶媒のうち、最も沸点の低いものはメチルエチルケトンであり、その沸点Tblowは80℃である。したがって、0.8Tblowは65℃になるが、これは前記結果にも適合する。
【0119】
また、図3から、以下のことが判る。
【0120】
まず、支持体ウェブWの厚みが変化した場合において、予熱ローラ1における支持体ウェブの予熱温度を制御することにより、熱風の温度を変化させなくても乾燥時間を一定にできる。たとえば、支持体ウェブの厚みが0.15mmから0.40mmに変化した場合において、乾燥時間を8秒に設定するには、予熱ローラ1の温度を表1のように設定すればよい。
【0121】
【表1】
予熱ローラ1から支持体ウェブWには伝導伝熱によって熱が伝達されるので、予熱ローラ1による支持体ウェブWの温度変更は、熱風条件を変更してウェブWの温度を変更する場合に比較して短時間で可能である。
【0122】
なお、支持体ウェブWの厚みが厚い場合において、製造ラインの設備に制約があって支持体ウェブWの予熱温度をあまり高く設定したり低く設定したりすることが不可能であったり、光重合型レーザ感光層形成液に含まれる有機溶媒の沸点との関係で、支持体ウェブWの予熱温度をあまり高くすることが好ましくなかったりするときは、予熱ローラ1による支持体ウェブWの温度変更と熱風条件の変更とを併用してもよい。
【0123】
たとえば、図3において乾燥時間を5秒に設定するときは、ウェブ厚みが0.15mm、0.20mm、0.24mm、および0.30mmの支持体ウェブWについては、熱風温度を120℃に設定するとともに、支持体ウェブWの予熱温度がそれぞれ38℃、48℃、58℃、および74℃になるように予熱ローラ1の表面温度を設定すればよい。一方、厚みが0.40mmの支持体ウェブWについては、支持体ウェブWの予熱だけで乾燥時間を5秒に設定しようとすると、予熱温度を80℃以上に設定する必要があるが、前述のように、支持体ウェブWの予熱温度が80℃付近のときは有機溶媒が蒸発した痕が生じるから、予熱温度を74℃に設定し、熱風の温度を120℃よりも高くすればよい。
【0124】
一方、熱風温度が120℃の場合において、乾燥時間を12秒に設定するときは、ウェブ厚みが0.24mm、0.30mm、および0.40mmの支持体ウェブWについては、予熱温度が22℃、28℃、35℃になるように予熱ローラ1の表面温度を設定すればよい。一方、ウェブ厚みが0.15mmおよび0.20mmの支持体ウェブWについては、製造ライン100において予熱ローラ1の表面温度を常温以下に設定できない故に、熱風温度を120℃よりも低くすればよい。
【0125】
(実施例2)
実施例1と同様の手順で作製した支持体ウェブの砂目立て面に、図1に示す製造ラインを用い、感光性樹脂としてポジ型感光性樹脂が配合された感光層形成液を塗布し、乾燥した。感光層形成液の処方を以下に示す。
【0126】
(感光層形成液の処方)
・1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリドとm−クレゾールホルムアルデヒド樹脂とのエステル化物(ポジ型感光性樹脂)…0.9重量部
・クレゾールホルムアルデヒド樹脂(ポジ型感光性樹脂)…1.9重量部
・無水フタル酸 …0.2重量部
・4−[p−N−(p−ヒドロキシベンゾイル)アミノフェニル]−2,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン …0.02重量部
・ビクトリアピュアブルーBOH(保土ヶ谷化学工業(株)製)…0.03重量部
・メガファックF−117
[弗素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製] …0.006重量部
・メチルエチルケトン …18重量部
・1−メトキシ−2−プロパノール …15重量部。
【0127】
結果を図4に示す。実施例1と同様、実施例2においても、支持体ウェブWの予熱温度が80℃付近のときは、得られた平版印刷版には、有機溶媒が蒸発した痕が認められたが、支持体ウェブWの予熱温度が70℃以下のときは、得られた平版印刷版には、このような痕は殆ど認められなかった。したがって、支持体ウェブWの予熱温度は70℃以下が好ましいことがわかる。ここで、光重合型レーザ感光層形成液に含まれる有機溶媒のうち、最も沸点の低いものはメチルエチルケトンであり、その沸点Tblowは80℃である。したがって、0.8Tblowは65℃になるが、これは前記結果にも符合する。
【0128】
また、図4から、実施例2においても、実施例1と同様に、予熱ローラ1の表面温度を変化させることにより、熱風の温度を変化させることなく、感光層形成液の乾燥時間を増減でき、したがって、乾燥時間の制御を迅速に行うことができることが判る。
【0129】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、支持体ウェブなどの帯状体の巾および厚みが変化した場合においても感光層形成液などの塗布液の乾燥時間を一定に保持することができる塗布方法、および前記塗布方法により製造される平版印刷版が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の塗布方法を適用して平版印刷版を製造するのに使用される製造ラインの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の塗布方法を適用して平版印刷版を製造するのに使用される製造ラインの別の例を示す概略図である。
【図3】図3は、実施例1における支持体ウェブの予熱温度と光重合型レーザ感光層形成液の乾燥時間との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2における支持体ウェブの予熱温度と感光層形成液の乾燥時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2 第1塗布部
4 第1乾燥部
6 第1冷却部
8 第2塗布部
10 第2乾燥部
12 第2冷却部
14 第3塗布部
16 第3乾燥部
18 第3冷却部
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布方法および平版印刷版に関し、特に、帯状体の巾が広い場合および狭い場合、並びに厚みが厚い場合および薄い場合の何れにおいても、塗布した塗布液の乾燥時間が一定にすることができる塗布方法、および前記塗布方法によって製版層等が形成された平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷版は、通常、アルミニウムウェブの少なくとも一方の面を砂目立てした支持体ウェブの砂目立て面に感光層形成液を塗布し、加熱乾燥して製版層を形成することにより製造される。
【0003】
従来、支持体ウェブに塗布した感光層形成液を乾燥する方法が各種提案されてきた。そのような方法には、たとえば感光層形成液を塗布した支持体ウェブを、所定温度に保持された熱ロールに接触させる方法(特許文献1)、スリット状のノズルから熱風を吹きつけて感光層形成液を乾燥させる方法(特許文献2)、赤外線を照射して感光層形成液を乾燥させる方法(特許文献3)、感光層形成液の乾燥の後半において1段または多段の加熱ロールを支持体ウェブに接触させて乾燥する方法(特許文献4、5、6)などがある。また、特定の乾燥条件で感光層を乾燥することも提案された(特許文献7,8)。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−70837号公報
【特許文献2】
特開平7−89255号公報
【特許文献3】
特開平6−317896号公報
【特許文献4】
特公平6−63487号公報
【特許文献5】
特開平8−318198号公報
【特許文献6】
特開平9−66259号公報
【特許文献7】
特開2001−125255号公報
【特許文献8】
特開2001−117219号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
感光層形成液の乾燥は、通常、熱風乾燥で行われる。したがって、乾燥初期においては、熱風から供給された熱量の少なくとも一部が支持体ウェブおよび感光層形成液の温度を上昇させるのに使用される。また、熱風乾燥においては、支持体ウェブへの熱の伝達は対流伝熱で行われるから、支持体ウェブおよび感光層形成液膜の温度が上昇するまでに時間がかかる。
【0006】
支持体ウェブの厚みおよび巾が変化したときは、前記温度上昇時間が変化する。即ち、支持体ウェブの厚みが厚いときおよび巾が広いときは、前記厚みが薄いときおよび巾が狭いときよりも、前記温度上昇時間は長くなる。
【0007】
しかし、通常の製造ラインにおいては乾燥装置における乾燥時間は一定に設定されているから、乾燥ラインから導出された支持体ウェブの感光層の乾燥度合いが一定にならないことが考えられる。したがって、前記温度上昇時間のバラツキは、得られる平版印刷版の性能にバラツキが生じる原因になると考えられる。
【0008】
本発明は、支持体ウェブなどの帯状体の巾および厚みが変化した場合においても感光層形成液などの塗布液の乾燥時間を一定に保持することができる塗布方法、および前記塗布方法により製造される平版印刷版に関する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、帯状体の少なくとも一方の面に塗布液を塗布し、乾燥して塗布層を形成する塗布方法であって、帯状体の巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いときおよび厚みが薄いときに比較して帯状体を高い温度に保持して前記塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法に関する。
【0010】
帯状体の厚みや巾が大きな場合において、常温の帯状体に塗布液を塗布し、加熱乾燥すると、乾燥初期においては、帯状体および塗布液膜の温度上昇に多くの熱量が費やされる。
【0011】
しかしながら、前記塗布方法においては、帯状体の厚みが厚い場合や巾が広い場合は、帯状体を高い温度に保持して塗布液を塗布しているから、帯状体および塗布液膜の温度上昇に費やされる熱量を大幅に減少させ、または皆無にできる。したがって、乾燥時間を大幅に短縮できる。
【0012】
したがって、帯状体の厚みが厚い場合や巾が広い場合においても、帯状体の厚みが薄い場合や巾が狭い場合と同様に、短い時間で塗布液膜の乾燥を行うことができ、また塗布液の乾燥度合いにバラツキが生じることもない。
【0013】
前記塗布方法によれば、帯状体に塗布された塗布液の乾燥を短時間で行うことができるから、帯状体の表面に多数の塗布層を形成する場合に好適に適用できる。したがって平版印刷版ののほか、オーディオテープやビデオテープのような磁気テープ、写真フィルム、および各種カラー鉄板の製造等に好適に適用できる。
【0014】
故に、帯状体としては、[従来の技術]の欄で述べた支持体ウェブのほか、前記磁気テープのベースフィルム、写真フィルムのべースフィルム、およびカラー鉄板の製造に使用される亜鉛鍍金鋼板などが挙げられる。
【0015】
また、塗布液は、水系塗布液および有機溶媒系塗布液の何れであってもよい。塗布液としては、具体的には、平版印刷版において製版層を形成する製版層形成液が挙げられる。他には、前記製版層を保護する中間層および酸素遮断層を形成する中間層形成液および酸素遮断層形成液などが挙げられる。
【0016】
前記塗布液としては、更に、磁気テープの製造に使用される磁性層形成液、保護層形成液、研磨層形成液、写真フィルムにおいて赤色感光層、緑色感光層、青色感光層、中間層、イエローフィルター等の層を形成する各層塗布液、およびカラー鉄板の製造に使用される下塗り塗料、中塗り塗料、および上塗り塗料などが挙げられる。
【0017】
帯状体に塗布された塗布液を乾燥する方法としては、熱風加熱、ローラ加熱、赤外線照射、誘導加熱などが挙げられるが、加熱された塗布液膜の表面から溶媒蒸気を吹き払いつつ乾燥する故に、前記塗布液膜を短時間で乾燥できる点から、熱風加熱が好ましい。
【0018】
帯状体に塗布された塗布液を乾燥するときは、帯状体における塗布液を塗布した面は、上向きおよび下向きの何れであってもよいが、熱風加熱および赤外線照射によって乾燥する場合には、塗布面に熱風を吹き付け、または赤外線を照射する必要がある。また、加熱ローラで乾燥する場合、および誘導加熱で加熱する場合であって誘導加熱ローラを用いるときは、加熱ローラおよび誘導加熱ローラは、前記塗布面とは反対側の面に当接させる必要がある。
【0019】
請求項2の発明は、前記帯状体の温度を0.8Tblow(℃)(Tblowは、前記塗布液に含まれる溶媒のうち、もっとも沸点の低いもののセ氏で表した沸点である。)以下に保持して前記塗布液の塗布を行う塗布方法に関する。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記帯状体の温度を35〜0.8Tblow(℃)に保持して前記塗布液の塗布を行う塗布方法に関する。
【0021】
前記塗布方法においては、帯状体を常温よりも高い温度に加熱しているから、塗布液を塗布したときに帯状体および塗布液膜の温度上昇に費やされる熱量および時間を大幅に減少させることができる。したがって、塗布液の乾燥時間を大幅に短縮できる。
【0022】
また、帯状体を0.8Tblow(℃)以下の温度に保持しているから、帯状体に塗布液を塗布したとたんに、塗布液膜中の溶媒が沸騰し、塗布膜中に溶媒の蒸発した痕が生じることを防止できるから、特に均一性が高く、欠陥の少ない塗布膜が得られる故に好ましい。
【0023】
温度0.8Tblow(℃)は35℃よりも高いことが、塗布液膜中の溶媒の沸騰を防止する上で好ましいから、塗布液中の溶媒は、35(℃)÷0.8=43.75(℃)よりも高い沸点を有するものから選択することが好ましい。
【0024】
なお、塗布液を塗布するときの帯状体の温度は、35℃以上0.75Tblow(℃)の範囲がより好ましい。温度0.75Tblow(℃)は35℃よりも高いことが好ましいから、塗布液中の溶媒は、35(℃)÷0.75=46.67℃よりも高い沸点を有するものから選択することが好ましい。
【0025】
前記帯状体を前記温度範囲に保持する方法としては、前記帯状体を適宜の方法で加熱する方法がある。また、前記帯状体に2層以上の塗布層を形成する場合には、後述するように、最初の塗布層を形成して加熱乾燥し、加熱乾燥後の支持体ウェブを前記範囲の温度まで適宜の方向で冷却することもできる。
【0026】
帯状体を前記温度範囲まで加熱する方法としては、熱風を吹きつける熱風加熱、加熱ローラに接触させるローラ加熱、赤外線を照射して加熱する赤外線照射、交番磁界を帯状体に印加して生じる誘導電流により加熱する誘導加熱などが挙げられる。これらの加熱方法の内では、接触熱伝達である故に帯状体への熱伝導効率が高い点からローラ加熱が最も好ましい。
【0027】
請求項4に記載の発明は、前記帯状体を加熱ローラに接触させることにより前記帯状体の温度を前記範囲に保持して前記塗布液を塗布する塗布方法に関する。
【0028】
前記塗布方法においては、加熱ローラは接触熱伝達によって帯状体に熱を伝えるから、熱伝導効率が高い。したがって、帯状体の予熱が迅速に行われるから、支持体ウェブの厚みや乾燥初期において帯状体および塗布液膜の温度上昇に費やされる熱量を特に効果的に削減できるから、塗布液膜の乾燥を特に迅速に行うことができる。
【0029】
請求項5に記載の発明は、第1の塗布液を塗布し、乾燥して第1の塗布層を形成する第1塗布工程と、前記第1塗布工程で形成された第1の塗布層に重ねて第2の塗布液を塗布、乾燥し、前記第1の塗布層に重ねて第2の塗布層を形成する第2塗布工程とを有してなり、前記第1塗布工程および前記第2塗布工程の何れにおいても、帯状体の巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いときおよび厚みが薄いときよりも、帯状体を高い温度に保持して前記第1の塗布液および第2の塗布液を塗布する塗布方法に関する。
【0030】
前記塗布方法は、本発明の塗布方法を、帯状体に2層以上の塗布膜を形成する塗布方法に適用したものであり、前記第1の塗布層を形成する場合も、前記第2の塗布層を形成する場合も、帯状体の巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いときおよび厚みが薄いときよりも帯状体を高い温度に保持しているから、前記帯状体の巾が広い場合や厚みが厚い場合においても、前記帯状体の巾および厚みが小さな場合と同様に短い時間で各塗布層を乾燥することができる。したがって、前記塗布方法は、2層以上の塗布層を形成するときに特に好適に使用される。
【0031】
請求項6に記載の発明は、前記第1塗布工程においては、前記第1の塗布液を塗布した帯状体を加熱、乾燥して第1の塗布層を形成し、前記第2塗布工程においては、前記第1の塗布工程において加熱、乾燥された帯状体を冷却して帯状体を所定温度に保持して塗布液を塗布する塗布方法に関する。
【0032】
前記塗布方法においては、前記第1の塗布工程で前記帯状体に塗布された第1の塗布液を加熱、乾燥した熱を利用して第2の塗布工程で帯状体の表面温度を調整しているから、第2の塗布工程で帯状体を再加熱する必要がない。したがって、前記塗布方法によれば、エネルギーコストをより効果的に節減できる。
【0033】
前記第1の塗布層を形成した帯状体を冷却する方法としては、冷風を吹きつける方法の他、冷却ローラに接触させる方法等がある。
【0034】
請求項7に記載の発明は、前記第2塗布工程において、前記第1の塗布工程で第1の塗布層を形成した帯状体の表面に冷風を吹きつけて冷却する塗布方法に関する。
【0035】
前記塗布方法においては、第1の塗布層を形成した帯状体の表面に冷却ローラ等を当接させることなく所定の温度まで冷却しているから、冷却時において第1の塗布層が傷ついたり損傷したりすることがない。
【0036】
請求項8に記載の発明は、アルミニウムウェブの少なくとも一方の面を砂目立てした支持体ウェブと、前記支持体ウェブにおける砂目立て面に形成された製版層とを有する平版印刷版であって、前記製版層は、支持体ウェブの巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記支持体ウェブの巾が狭いときおよび厚みが薄いときに比較して前記支持体ウェブを高い温度に保持して製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなることを特徴とする平版印刷版に関する。
【0037】
前記平版印刷版においては、[発明が解決しようとする課題]の欄で述べたように、製版層形成液を塗布、乾燥して製版層が形成される。
【0038】
したがって、支持体ウェブの厚みが厚いときおよび巾が広いときは、製版層形成液および保護層形成液を塗布してから支持体ウェブの温度が乾燥温度まで上昇する温度上昇時間を大幅に短縮できるから、支持体ウェブの厚みが薄いときおよび巾が狭いときと同様の乾燥時間で製版層を形成できる。したがって、支持体ウェブの厚みおよび巾が変化しても、一定の性能の平版印刷版が得られる。
【0039】
請求項9に記載の発明は、前記製版層形成液が0.8Tblow(℃)以下の温度に保持された支持体ウェブに製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなる平版印刷版であり、請求項10に記載の発明は、前記製版層形成液が、35℃以上0.8Tblow(℃)以下の温度に保持された支持体ウェブに製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなる平版印刷版に関する。
【0040】
前記平版印刷版においては、支持体ウェブの表面を0.8Tblow(℃)よりも低い範囲の温度に保持して製版層形成液、中間層形成液、および保護層形成液を塗布しているから、これらの塗布液を塗布したとたんに、塗布液膜中の溶媒が沸騰し、塗布膜中に溶媒の蒸発した痕が生じる事故を防止できる。したがって、前記平版印刷版における製版層、中間層、および保護層は、何れも特に均一性が高く、欠陥が少ない。なお、前記平版印刷版においては、製版層形成液、中間層形成液、および保護層形成液を塗布する際に、平版印刷版の表面温度を0.75Tblow(℃)よりも低い範囲の温度に保持すれば特に好ましい。
【0041】
請求項11に記載の発明は、前記製版層が可視光または紫外光により重合する光重合型レーザ感光層であり、前記光重合型レーザ感光層を空気中からの酸素から保護する酸素遮断層が前記光重合型レーザ感光層に重ねて形成されてなる平版印刷版に関する。
【0042】
前記平版印刷版は、請求項1〜6に記載の塗布方法に従って光重合型レーザ感光層および酸素遮断層が形成された平版印刷版の例である。
【0043】
請求項12に記載の発明は、前記光重合型レーザ感光層と前記酸素遮断層との間に酸素遮断性樹脂の層である中間層が形成されてなる平版印刷版に関する。
【0044】
前記平版印刷版は、請求項11に記載の平版印刷版において、酸素遮断性樹脂からなる中間層が設けられた例である。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る塗布方法に従って製版層を形成した平版印刷版の各構成要素について詳説する。
【0046】
1.支持体ウェブ
支持体ウェブとしては、純アルミニウムまたはアルミニウム合金の帯状薄板であるアルミニウムウェブの少なくとも一方の面を粗面化したものが使用される。
【0047】
アルミニウムウェブの粗面化は、たとえば、機械的粗面化工程→アルカリエッチング工程(1)→デスマット工程(1)→電解粗面化工程→アルカリエッチング工程(2)→デスマット工程(2)という順序で行うことができる。前記各処理工程の間には水洗工程を挿入することが好ましい。
【0048】
前記機械的粗面化工程においては、アルミニウムウェブを一定方向に搬送しつつ、アルミニウムウェブの表面に研磨剤を吹きつけてローラ状のナイロンブラシで擦るブラシグレイン処理などを行うことができる。
【0049】
前記アルカリエッチング工程においては、アルミニウムウェブの両面または粗面化した側の面に苛性ソーダなどのアルカリ溶液を噴霧することにより、アルカリエッチング処理を行うことができる。アルカリエッチング工程(1)とアルカリエッチング工程(2)とにおいては、使用するアルカリ溶液の濃度や組成、温度が異なっていてもよい。
【0050】
デスマット工程においては、アルミニウムウェブの両面または粗面化した側の面に塩酸や硝酸などの酸性溶液を噴霧することにより、デスマット処理を行う。後述する電解粗面化処理においてアルミニウムウェブの表面にスマットと称する微量成分の黒色酸化物が析出するが、前記デスマット処理により除去される。デスマット工程(1)とデスマット工程(2)とにおいては、使用する酸性溶液の濃度や種類、組成、温度が異なっていてもよい。
【0051】
電解粗面化工程においては、通常は、前記アルミニウムウェブを酸性電解液中で交流電解する。酸性電解液としては、希塩酸や希硝酸が主に使用される。電解粗面化工程は1回だけでもよく、2回以上行ってもよい。
【0052】
前記粗面化処理が終了したら、前記アルミニウムウェブに陽極酸化処理を施し、次に、水ガラス溶液等により、親水化処理を施してもよい。
【0053】
前記純アルミニウムおよびアルミニウム合金としては、アルミニウムハンドブック第4版(1990、軽金属協会)に記載の、例えばJIS A 1050材、JIS A 3103材、JIS A 3005材、JIS A 1100材、JIS A 3004材、および引っ張り強度を増す目的でこれらに5重量%以下のマグネシウムを添加した合金などが挙げられる。また、再生アルミニウムも使用できる。
【0054】
2.製版層
製版層には、可視光で露光する可視光露光型感光層とレーザ光を照射して露光するレーザ光露光型感光層とがある。
【0055】
(1)可視光露光型感光層
可視光露光型感光層は、感光性樹脂および必要に応じて着色剤などを含有する組成物により形成できる。
【0056】
前記感光性樹脂としては、光が当たると現像液に溶けるようになるポジ型感光性樹脂、および光が当たると現像液に溶解しなくなるネガ型感光性樹脂が挙げられる。
【0057】
ポジ型感光性樹脂としては、キノンジアジド化合物およびナフトキノンジアジド化合物等のジアジド化合物と、フェノールノボラック樹脂およびクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂との組み合わせ等が挙げられる。
【0058】
一方、ネガ型感光性樹脂としては、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等のアルデヒド類との縮合物等のジアゾ樹脂、前記ジアゾ樹脂の無機酸塩、および前記ジアゾ樹脂の有機酸塩等のジアゾ化合物と、(メタ)アクリレート樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリウレタン等の結合剤との組み合わせ、並びに(メタ)アクリレート樹脂およびポリスチレン樹脂等のビニルポリマーと、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレン等のビニル重合性化合物と、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、およびチオキサントン誘導体等の光重合開始剤との組み合わせ等が挙げられる。
【0059】
前記着色剤としては、通常の色素のほか、露光により発色する露光発色色素、および露光により殆どまたは完全に無色になる露光消色色素等が使用できる。前記露光発色色素としては、たとえばロイコ色素等が挙げられる。一方、前記露光消色色素としては、トリフェニルメタン系色素、ジフェニルメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、およびアントラキノン系色素等が挙げられる。
【0060】
前記可視光露光型感光層は、前記感光性樹脂と前記着色剤とを溶剤に配合した感光性樹脂溶液を塗布して乾燥することにより形成できる。
【0061】
前記感光性樹脂溶液に使用される溶剤としては、前記感光性樹脂を溶解し、しかも、室温である程度の揮発性を有する溶剤が挙げられ、具体的には、たとえばアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、および炭酸エステル系溶剤等が挙げられる。
【0062】
アルコール系溶剤としては、エタノール、プロパノール、およびブタノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、およびジエチルケトン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、蟻酸メチル、蟻酸エチル等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフランおよびジオキサン等が挙げられ、グリコールエーテル系溶剤としては、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、およびブチルセロソルブ等が挙げられる。アミド系溶剤としては、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド等が挙げられる。炭酸エステル系溶剤としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、および炭酸ジブチル等が挙げられる。
(2)レーザ露光型感光層
レーザ露光型感光層としては、露光・現像後に、レーザ光を照射した部分が残存するネガ型レーザ感光層、レーザ光を照射した部分が除去されるポジ型レーザ感光層、およびレーザ光を照射すると光重合する光重合型レーザ感光層などが主なものとして挙げられる。
【0063】
A.ネガ型レーザ感光層
前記ネガ型レーザ感光層は、(A)熱または光により分解して酸を発生する酸前躯体、(B)前記酸前躯体(A)が分解して発生した酸により架橋する酸架橋性化合物、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)赤外線吸収剤、および(E)フェノール性水酸基含有化合物を適宜の溶剤に溶解または懸濁させたネガ型レーザ感光層形成液から形成できる。
【0064】
酸前躯体(A)としては、例えばイミノフォスフェート化合物等のように、紫外光、可視光、または熱により分解してスルホン酸を発生する化合物が挙げられる。他には、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、または光変色剤などとして一般に使用されている化合物も、酸前躯体(A)として使用できる。
【0065】
酸架橋性化合物(B)としては、アルコキシメチル基およびヒドロキシル基の少なくとも一方を有する芳香族化合物、N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、およびエポキシ化合物などが挙げられる。
【0066】
アルカリ可溶性樹脂(C)としては、ノボラック樹脂、およびポリ(ヒドロキシスチレン)などの側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーなどが挙げられる。
【0067】
赤外線吸収剤(D)としては、760nm〜1200nmの赤外線を吸収する染料および顔料が挙げられ、具体的には、黒色顔料、赤色顔料、金属枌顔料、フタロシアニン系顔料、および前記波長の赤外線を吸収するアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、シアニン色素などが挙げられる。
【0068】
フェノール性水酸基含有化合物(E)としては、一般式(R1−X)n−Ar−(OH)m(R1は、炭素数6〜32のアルキル基またはアルケニル基であり、Xは、端結合、O、S、COO、またはCONHであり、Arは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、または複素環基であり、nおよびmは、何れも1〜3の自然数である。)で示される化合物が挙げられる。前記化合物としては、具体的にはノニルフェノールなどのアルキルフェノール類などが挙げられる。
【0069】
前記ネガ型レーザ感光層形成液には、さらに可塑剤なども配合できる。
【0070】
B.ポジ型レーザ感光層
前記ポジ型レーザ感光層は、(F)アルカリ可溶性高分子、(G)アルカリ溶解阻害剤、および(H)赤外線吸収剤を適宜の溶剤に溶解または懸濁させたポジ型レーザ感光層形成液により形成できる。
【0071】
アルカリ可溶性高分子(F)としては、たとえばフェノール樹脂、クレゾール樹脂、ノボラック樹脂、ピロガロール樹脂、およびポリ(ヒドロキシスチレン)などのフェノール性水酸基を有するフェノール系ポリマー、少なくとも一部のモノマー単位がスルホンアミド基を有するポリマーであるスルホンアミド基含有ポリマー、N−(p−トルエンスルホニル)(メタ)アクリルアミド基などの活性イミド基を有するモノマーの単独重合または共重合により得られる活性イミド基含有ポリマーなどが使用できる。
【0072】
アルカリ溶解阻害剤(G)としては、加熱などによりアルカリ可溶性高分子(F)と反応してアルカリ可溶性高分子(F)のアルカリ可溶性を低下させる化合物が挙げられ、具体的には、スルホン化合物、アンモニウム塩、スルホニウム塩、およびアミド化合物などが挙げられる。たとえば、アルカリ可溶性高分子(F)として前記ノボラック樹脂を用いる場合には、アルカリ溶解阻害剤(G)としてスルホン化合物の一種であるシアニン色素が好ましい。
【0073】
赤外線吸収剤(H)としては、スクワリリウム色素、ピリリウム色素、カーボンブラック、不溶性アゾ染料、アントラキノン系染料など、750〜1200nmの赤外域に吸収領域があり、光/熱変換能を有する色素、染料、および顔料が挙げられる。
【0074】
C.光重合型レーザ感光層
光重合型レーザ感光層は、(I)分子末端にエチレン性不飽和結合を有するビニル重合性化合物を含有する光重合型レーザ感光層形成液により形成できる。前記光重合型レーザ感光層形成液には、ほかに、(J)光重合開始剤、(K)増感剤、(L)バインダ樹脂などが配合される。
【0075】
ビニル重合性化合物(I)としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルであるエチレン性不飽和カルボン酸多価エステル、前記エチレン性不飽和カルボン酸と多価アミンとからなるメチレンビス(メタ)アクリルアミド、キシリレン(メタ)アクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸多価アミドなどが挙げられる。
【0076】
ビニル重合性化合物(I)としては、他に、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸モノエステルなども使用できる。
【0077】
更に、エチレン性不飽和カルボン酸多価エステル、エチレン性不飽和カルボン酸多価アミド、芳香族ビニル化合物、エチレン性不飽和カルボン酸モノエステルなどのビニル系モノマーの2量体や3量体、およびオリゴマーなどの高分子ビニルモノマーも使用できる。
【0078】
光重合開始剤(J)としては、ビニル系モノマーの光重合に通常に使用される光重合開始剤が使用できる。
【0079】
増感剤(K)としては、チタノセン化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、シアニン色素、メロシアニン色素、キサンテン色素、クマリン色素などが挙げられる。
【0080】
バインダ樹脂(L)としては、ビニル重合性化合物(I)のところで述べたビニル系モノマーを単独重合または共重合して得られるビニルポリマー、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体、ウレタン系バインダーポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、アルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等が挙げられる。
【0081】
前記ネガ型レーザ感光層形成液、ポジ型レーザ感光層形成液、または光重合型レーザ感光層形成液に使用される溶剤、および前記ネガ型レーザ感光層形成液、ポジ型レーザ感光層形成液、または光重合型レーザ感光層形成液の塗布方法については、「(1)可視光露光型感光層」のところで述べた溶剤および塗布方法と同様である。
【0082】
なお、前記光重合型レーザ感光層を形成するときは、シラン化合物を水、アルコール、またはカルボン酸で部分分解して得られる部分分解型シラン化合物などの反応性官能基を有するシリコーン化合物で平版印刷版用支持体の粗面化面を予め処理すると、平版印刷版用支持体と前記光重合型レーザ感光層との接着性が向上するから好ましい。
【0083】
4.中間層および酸素遮断層
感光層として光重合型レーザ感光層を形成する場合には、光重合型レーザ感光層の上に酸素遮断層を形成するか、または、光重合型レーザ感光層の上に中間層を形成し、更にその上に酸素遮断層を重ねて形成することが好ましい。
【0084】
中間層は、光重合型レーザ感光層に重ねて形成される非接着性層であり、換言すれば光重合型レーザ感光層のべとつきを防止し、光重合型レーザ感光層が搬送ローラの表面に接着するのを防止する機能を有する層である。一方、酸素遮断層は、前記中間層に重ねて空気中の酸素から前記光重合型レーザ感光層を保護する機能を有している。
【0085】
中間層は、光重合型レーザ感光層が搬送ローラの表面に接着するのを防止でき、また、酸素遮断層との密着性が良好なものであれば、どのような樹脂でも使用できるが、酸素遮断層と同様に、高い酸素遮断性を有する酸素遮断性樹脂を用いることが、酸素遮断層にピンホールが残存しないようにして光重合型レーザ感光層を空気中の酸素から確実に保護できる点、および酸素遮断層との密着性が良好な点から好ましい。
【0086】
中間層および酸素遮断層に使用できる酸素遮断性樹脂としては、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。前記水溶性ポリマーのうちでは、酸素遮断性および現像除去性の点からポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0087】
前記酸素遮断性樹脂としては、ほかに、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体樹脂のような塩化ビニリデン樹脂、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂など、酸素遮断性が高い樹脂として一般に知られているものが挙げられる。
【0088】
前記ポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を付与するのに充分な数の未置換ビニルアルコール単位を有している限り、ビニルアルコール単位の水酸基の一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良く、また、ビニルアルコールと他のモノマーとの共重合体の形態を有していても良い。
【0089】
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0090】
前記酸素遮断性樹脂の種類は、所望の酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性、光重合型レーザ感光層および酸素遮断層との密着性を考慮して決定することができる。また、中間層においては、酸素遮断層と同一の種類の酸素遮断性樹脂を使用してもよく、また,異なる種類の酸素遮断性樹脂を使用してもよいが、同一の種類の酸素遮断性樹脂を使用すれば、酸素遮断層との密着性が良くなるから好ましい。ただし、前記中間層と前記酸素遮断層とでは、酸素遮断性樹脂の分子量が異なっていてもよい。
【0091】
中間層および酸素遮断層に使用される酸素遮断性樹脂のの酸素透過係数は1×10−16〜1×10−10cm3・cm/cm2・sec・cmHgの範囲が適当であり、特に好ましくは1×10−15〜1×10−11cm3・cm/cm2・sec・cmHgである。酸素遮断性樹脂の分子量は、2000〜1000万の範囲が好ましく、特に2万〜300万範囲のものが好ましい。
【0092】
中間層および酸素遮断層は、前記酸素遮断性樹脂の溶液またはエマルションを主成分とする中間層形成液または酸素遮断層形成液を塗布し、乾燥させることにより、形成できるが、前記中間層形成液としては、既に形成された光重合型レーザ感光層に対して影響を及ぼさないようなものを用いることが好ましい。
【0093】
たとえば、高分子バインダとして水可溶性ポリマーを用いたときは、中間層形成液としては塩化ビニリデン樹脂の有機溶媒溶液が好ましい。一方、高分子バインダとして有機溶媒可溶性ポリマーを用いたときは、中間層形成液としては、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンの水溶液、または塩化ビニリデン樹脂のエマルションが好ましい。
【0094】
中間層形成液および酸素遮断層形成液には、更にグリセリン、ジプロピレングリコール等を前記酸素遮断性樹脂に対して数重量%配合して、得られる中間層に可撓性を付与することができる。また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤や、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を、前記酸素遮断性樹脂に対して数重量%配合して塗布性を改善することができる。また、酸素遮断性樹脂としてポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーを使用する場合には、光重合型レーザ感光層との密着性を高めるため、アクリル系エマルジョンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを前記酸素遮断性樹脂に対して20〜60重量%配合してもよい。
【0095】
5.製造ライン
本発明の平版印刷版の製造に使用される製造ラインの一例を図1に示す。
【0096】
製造ライン100は、図1に示すように、支持体ウェブWの搬送方向aに沿って光重合型レーザ感光層形成液を塗布する第1塗布部2と、第1塗布部2で塗布された光重合型レーザ感光層形成液の層を乾燥して光重合型レーザ感光層を形成する第1乾燥部4と、第1乾燥部4を通過した支持体ウェブWを冷却する第1冷却部6と、第1冷却部6を通過した支持体ウェブWの光重合型レーザ感光層の表面に酸素遮断性樹脂の水溶液を主成分とする水系塗布液を塗布する第2塗布部8と、第2塗布部8で塗布された水系塗布液を乾燥して酸素遮断性樹脂層を形成する第2乾燥部10と、第2乾燥部10を通過した支持体ウェブWを冷却する第2冷却部12と、第2冷却部12を通過した平版印刷版Pを巻き取る巻取り部30とが設けられている。第1塗布部2の上流側には、支持体ウェブWを予熱する予熱ローラ1が設けられている。また、第1乾燥部4は、上流側の第1乾燥トンネル4Aと下流側の第2乾燥トンネル4Bとに分かれている。
【0097】
第1乾燥トンネル4Aと下流側の第2乾燥トンネル4Bとの間には、搬送ローラ22が設けられ、第2乾燥トンネル4Bと第1冷却部6との間には搬送ローラ24が設けられている。また、第2乾燥部10と第2冷却部12との間には搬送ローラ26が設けられ、第2冷却部12と巻取り部30との間には、搬送ローラ28が設けられている。
【0098】
支持体ウェブWは、予熱ローラ1において、厚みが厚いときおよび巾が広いときは、厚みが薄いときおよび巾が小さなときに比較してより高い温度に予熱される。予熱ローラ1における予熱温度は、通常は35℃以上であり、好ましくは35〜80℃程度である。そして、第1塗布部2において支持体ウェブWの粗面化面に光重合型レーザ感光層形成液が塗布され、塗布された光重合型レーザ感光層形成液は第1乾燥トンネル4Aおよび第2乾燥トンネル4Bで乾燥される。第2乾燥トンネル4Bから導出された支持体ウェブWは、温度が約100℃と高く、表面に形成された光重合型レーザ感光層は軟膜状態で傷つきやすいが、第1冷却部6を通過するうちに、60〜80℃程度に冷却される。第2塗布部8においては、第1冷却部6を通過した支持体ウェブWの光重合型レーザ感光層に重ねて水系塗布液が塗布され、第2乾燥部10において乾燥されて酸素遮断性樹脂の層が形成される。ここで、水系塗布液としては前記中間層形成液や酸素遮断層形成液のうち、水系のものが挙げられる。
【0099】
製造ライン100においては、第1塗布部2および第2塗布部8にはバーコータが使用されているが、バーコータの代わりにスライドビードコータ、エクストルージョンコータ、ロールコータ等の各種塗布装置を用いてもよい。また、バーコータとしては、支持体ウェブWの搬送方向と同方向に回転する順転バーを有するもの、および前記搬送方向とは反対方向に回転する逆転バーを有するものの何れも使用できる。
【0100】
また、予熱ローラ1の加熱方法には特に制限はなく、加圧水蒸気による加熱、電熱による加熱、熱媒体による加熱、誘導コイルによる加熱の何れも可能である。また、加熱ローラ1の中心部に加熱装置を設け、加熱ローラ1はその回りを加熱するように構成すれば、加熱ローラ1の慣性質量が小さくなるから好ましい。
【0101】
第1乾燥部4および第2乾燥部10においては、熱風乾燥を行うことができる。熱風の流れは、支持体ウェブWの搬送方向aに対して平行な平行流であってもよく、また搬送方向aに対して垂直な垂直流であってもよい。
【0102】
水系塗布液は、乾燥後の膜重量が0.5〜5g/m2になるように塗布するのが好適であり、特に1〜3g/m2になるように塗布するのが好適である。
【0103】
図2に、本発明の平版印刷版の製造に使用される製造ラインの別の例を示す。図2において図1と同一の符号は、前記符号が図1において示す構成要素と同一の要素を示す。
【0104】
製造ライン102においては、図2に示すように、第1冷却部6と第2塗布部8との間に、中間層形成液を塗布する第3塗布部14と、第3塗布部14で塗布された中間層形成液を乾燥させる第3乾燥部16と、第3乾燥部16を通過した支持体ウェブWを冷却する第3冷却部18とが設けられている。第3乾燥部16と第3冷却部18との間には、搬送ローラ25が設けられ、第3冷却部18と第2塗布部8との間には搬送ローラ27、搬送ローラ29、および搬送ローラ31が設けられている。また、第2塗布部8と第2乾燥部10との間には、搬送ローラ32および搬送ローラ33が設けられている。なお、図2において40は、製造ライン102で製造された平版印刷版Pを巻き取る巻取り部である。
【0105】
第3塗布部14にはバーコータが使用されているが、バーコータの代わりにスライドビードコータ、エクストルージョンコータ、ロールコータ等の各種塗布装置を用いてもよい。
【0106】
上記の点を除いては、製造ライン102は、製造ライン100と同様の構成および機能を有している。
【0107】
支持体ウェブWは、厚みが厚いときおよび巾が広いときは、厚みが薄いときおよび巾が小さなときに比較してより高い温度に予熱される。予熱ローラ1における予熱温度は、通常は35℃以上であり、好ましくは35〜80℃の範囲である。そして、第1塗布部2において支持体ウェブWの粗面化面に光重合型レーザ感光層形成液が塗布され、塗布された光重合型レーザ感光層形成液は第1乾燥トンネル4Aおよび第2乾燥トンネル4Bで乾燥される。第2乾燥トンネル4Bから導出された支持体ウェブWは、温度が約100℃と高く、表面に形成された光重合型レーザ感光層は軟膜状態で傷つきやすいが、第1冷却部6を通過するうちに、35〜80℃程度に冷却される。
【0108】
第3塗布部14においては、第1冷却部6を通過して60〜80℃程度に冷却された支持体ウェブWの光重合型レーザ感光層に重ねて中間層形成液が塗布され、前記中間層形成液は第3乾燥部16で乾燥されて中間層が形成される。第3乾燥部16から導出された支持体ウェブWは第3冷却部18で冷却される。第3乾燥部16から導出されたばかリの支持体ウェブWの温度は100℃程度であるが、第3冷却部18において35〜80℃程度の温度まで冷却される。
【0109】
第2塗布部8においては、第3冷却部18で冷却された支持体ウェブWの中間層に重ねて酸素遮断層形成液が塗布され、第2乾燥部10において乾燥されて酸素遮断性樹脂の層が形成される。
【0110】
このようにして形成された平版印刷版Pは、巻取り部40でロール状に巻き取られる。
【0111】
【実施例】
(実施例1)
厚み0.15mm、0.20mm、0.24mm、0.30mm、および0.40mmの5種類のアルミニウムウェブの表面に、ブラシグレイン法によって機械的砂目立てを施した後、交流電解槽において電気的砂目立て処理を行った。次いで、陽極酸化皮膜の量が2g/m2になるように陽極酸化処理を施し、親水化処理を行って支持体ウェブWを製造した。
【0112】
次に、図1に示す製造ラインを用いて支持体ウェブWの粗面化面に光重合型レーザ感光層形成液を塗布して乾燥し、光重合性レーザ感光層を形成し、その上に、中間層形成液を塗布して中間層を形成した。光重合型レーザ感光層形成液は、塗布液量が18.8cc/m2になるように塗布し、第1乾燥部における熱風の温度を120℃に設定した。また、第2乾燥部10においては、熱風を100℃または120℃に設定し、そして、加熱ローラ1での支持体ウェブの予熱温度を変化させて乾燥時間を測定した。光重合型レーザ感光層形成液が乾燥したことの判定は、先端に布を巻きつけた棒で、第1塗布部およびそれよりも下流側の支持体ウェブの表面を擦り、布に光重合型レーザ感光層形成液が付着せず、また、塗布膜の光沢が変化しなくなった点を乾燥点とした。乾燥時間については、第1乾燥部4の入り口から前記乾燥点までの距離を計り、前期距離を支持体ウェブWの搬送速度で除して求めた。光重合型レーザ感光層形成液および中間層形成液の処方を以下に示す。
【0113】
(光重合型レーザ感光層形成液処方)
エチレン性不飽和化合物(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)…1.5重量部
高分子バインダ(メタクリル20mol%とメチルメタクリレート80mol%とを共重合した線状共重合体(MW=4万)) …2.0重量部
増感剤([化1]に示すもの …0.15重量部
光重合開始剤([化2]に示すもの) …0.2重量部
ε−フタロシアニン分散物 …0.02重量部
メガファックF117(R)(弗素系ノニオン界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製) …0.03重量部
メチルエチルケトン …9.0重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート …7.5重量部
トルエン …11.0重量部。
【0114】
増感剤
【0115】
【化1】
光重合開始剤
【0116】
【化2】
(中間層形成液の処方)
ポリビニルアルコール(鹸化度98モル%、重合度500)…20.0重量部
ポリビニルピロリドンK30(和光純薬(株)製) …2.0重量部
ノニオン界面活性剤(EMALEX NP−10(R)、(株)日本エマルジョン製)…0.5重量部
蒸留水 …540重量部。
【0117】
なお、光重合型レーザ感光層形成液の温度は24〜25℃であった。
【0118】
結果を図3に示す。支持体ウェブWの予熱温度が80℃付近のときは、得られた平版印刷版には、有機溶媒が蒸発した痕が認められたが、支持体ウェブWの予熱温度が70℃以下のときは、得られた平版印刷版には、このような痕は殆ど認められなかった。したがって、支持体ウェブWの予熱温度は70℃以下が好ましいことがわかる。ここで、光重合型レーザ感光層形成液に含まれる有機溶媒のうち、最も沸点の低いものはメチルエチルケトンであり、その沸点Tblowは80℃である。したがって、0.8Tblowは65℃になるが、これは前記結果にも適合する。
【0119】
また、図3から、以下のことが判る。
【0120】
まず、支持体ウェブWの厚みが変化した場合において、予熱ローラ1における支持体ウェブの予熱温度を制御することにより、熱風の温度を変化させなくても乾燥時間を一定にできる。たとえば、支持体ウェブの厚みが0.15mmから0.40mmに変化した場合において、乾燥時間を8秒に設定するには、予熱ローラ1の温度を表1のように設定すればよい。
【0121】
【表1】
予熱ローラ1から支持体ウェブWには伝導伝熱によって熱が伝達されるので、予熱ローラ1による支持体ウェブWの温度変更は、熱風条件を変更してウェブWの温度を変更する場合に比較して短時間で可能である。
【0122】
なお、支持体ウェブWの厚みが厚い場合において、製造ラインの設備に制約があって支持体ウェブWの予熱温度をあまり高く設定したり低く設定したりすることが不可能であったり、光重合型レーザ感光層形成液に含まれる有機溶媒の沸点との関係で、支持体ウェブWの予熱温度をあまり高くすることが好ましくなかったりするときは、予熱ローラ1による支持体ウェブWの温度変更と熱風条件の変更とを併用してもよい。
【0123】
たとえば、図3において乾燥時間を5秒に設定するときは、ウェブ厚みが0.15mm、0.20mm、0.24mm、および0.30mmの支持体ウェブWについては、熱風温度を120℃に設定するとともに、支持体ウェブWの予熱温度がそれぞれ38℃、48℃、58℃、および74℃になるように予熱ローラ1の表面温度を設定すればよい。一方、厚みが0.40mmの支持体ウェブWについては、支持体ウェブWの予熱だけで乾燥時間を5秒に設定しようとすると、予熱温度を80℃以上に設定する必要があるが、前述のように、支持体ウェブWの予熱温度が80℃付近のときは有機溶媒が蒸発した痕が生じるから、予熱温度を74℃に設定し、熱風の温度を120℃よりも高くすればよい。
【0124】
一方、熱風温度が120℃の場合において、乾燥時間を12秒に設定するときは、ウェブ厚みが0.24mm、0.30mm、および0.40mmの支持体ウェブWについては、予熱温度が22℃、28℃、35℃になるように予熱ローラ1の表面温度を設定すればよい。一方、ウェブ厚みが0.15mmおよび0.20mmの支持体ウェブWについては、製造ライン100において予熱ローラ1の表面温度を常温以下に設定できない故に、熱風温度を120℃よりも低くすればよい。
【0125】
(実施例2)
実施例1と同様の手順で作製した支持体ウェブの砂目立て面に、図1に示す製造ラインを用い、感光性樹脂としてポジ型感光性樹脂が配合された感光層形成液を塗布し、乾燥した。感光層形成液の処方を以下に示す。
【0126】
(感光層形成液の処方)
・1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリドとm−クレゾールホルムアルデヒド樹脂とのエステル化物(ポジ型感光性樹脂)…0.9重量部
・クレゾールホルムアルデヒド樹脂(ポジ型感光性樹脂)…1.9重量部
・無水フタル酸 …0.2重量部
・4−[p−N−(p−ヒドロキシベンゾイル)アミノフェニル]−2,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン …0.02重量部
・ビクトリアピュアブルーBOH(保土ヶ谷化学工業(株)製)…0.03重量部
・メガファックF−117
[弗素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製] …0.006重量部
・メチルエチルケトン …18重量部
・1−メトキシ−2−プロパノール …15重量部。
【0127】
結果を図4に示す。実施例1と同様、実施例2においても、支持体ウェブWの予熱温度が80℃付近のときは、得られた平版印刷版には、有機溶媒が蒸発した痕が認められたが、支持体ウェブWの予熱温度が70℃以下のときは、得られた平版印刷版には、このような痕は殆ど認められなかった。したがって、支持体ウェブWの予熱温度は70℃以下が好ましいことがわかる。ここで、光重合型レーザ感光層形成液に含まれる有機溶媒のうち、最も沸点の低いものはメチルエチルケトンであり、その沸点Tblowは80℃である。したがって、0.8Tblowは65℃になるが、これは前記結果にも符合する。
【0128】
また、図4から、実施例2においても、実施例1と同様に、予熱ローラ1の表面温度を変化させることにより、熱風の温度を変化させることなく、感光層形成液の乾燥時間を増減でき、したがって、乾燥時間の制御を迅速に行うことができることが判る。
【0129】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、支持体ウェブなどの帯状体の巾および厚みが変化した場合においても感光層形成液などの塗布液の乾燥時間を一定に保持することができる塗布方法、および前記塗布方法により製造される平版印刷版が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の塗布方法を適用して平版印刷版を製造するのに使用される製造ラインの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の塗布方法を適用して平版印刷版を製造するのに使用される製造ラインの別の例を示す概略図である。
【図3】図3は、実施例1における支持体ウェブの予熱温度と光重合型レーザ感光層形成液の乾燥時間との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2における支持体ウェブの予熱温度と感光層形成液の乾燥時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2 第1塗布部
4 第1乾燥部
6 第1冷却部
8 第2塗布部
10 第2乾燥部
12 第2冷却部
14 第3塗布部
16 第3乾燥部
18 第3冷却部
Claims (12)
- 帯状体の少なくとも一方の面に塗布液を塗布し、乾燥して塗布層を形成する塗布方法であって、
帯状体の巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いときおよび厚みが薄いときよりも、前記帯状体を高い温度に保持して前記塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法。 - 前記帯状体の温度を0.8Tblow(℃)(Tblowは、前記塗布液に含まれる溶媒のうち、もっとも沸点の低いもののセ氏で表した沸点である。)以下に保持して前記塗布液の塗布を行う請求項1に記載の塗布方法。
- 前記帯状体の温度を35〜0.8Tblow(℃)に保持して前記塗布液の塗布を行う請求項1または2に記載の塗布方法。
- 加熱ローラに接触させることにより前記帯状体の温度を前記範囲に保持して前記塗布液を塗布する請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布方法。
- 第1の塗布液を塗布し、乾燥して第1の塗布層を形成する第1塗布工程と、
前記第1塗布工程で形成された第1の塗布層に重ねて第2の塗布液を塗布、乾燥し、前記第1の塗布層に重ねて第2の塗布層を形成する第2塗布工程とを
有してなり、
前記第1塗布工程および前記第2塗布工程の何れにおいても、帯状体の巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記帯状体の巾が狭いときおよび厚みが薄いときよりも、前記帯状体を高い温度に保持して塗布液を塗布する請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布方法。 - 前記第1塗布工程においては、前記第1の塗布液を塗布した帯状体を加熱、乾燥して第1の塗布層を形成し、
前記第2塗布工程においては、前記第1の塗布工程において加熱、乾燥された帯状体を冷却して帯状体を所定温度に保持して塗布液を塗布する請求項4に記載の塗布方法。 - 前記第2塗布工程においては、前記第1の塗布工程で第1の塗布層を形成された帯状体の表面に冷風を吹きつけて冷却して前記帯状体を前記所定温度に保持する請求項6に記載の塗布方法。
- アルミニウムウェブの少なくとも一方の面を砂目立てした支持体ウェブと、前記支持体ウェブにおける砂目立て面に形成された製版層とを有する平版印刷版であって、
前記製版層は、支持体ウェブの巾が広いときおよび厚みが厚いときは、前記支持体ウェブの巾が狭いときおよび厚みが薄いときに比較して前記支持体ウェブを高い温度に保持して製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなることを特徴とする平版印刷版。 - 前記製版層形成液は、0.8Tblow(℃)以下の温度に保持された支持体ウェブに製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなる請求項8に記載の平版印刷版。
- 前記製版層形成液は、35℃以上0.8Tblow(℃)以下の温度に保持された支持体ウェブに製版層形成液を塗布し、乾燥して形成されてなる請求項9に記載の平版印刷版。
- 前記製版層は可視光または紫外光により重合する光重合型レーザ感光層であり、前記光重合型レーザ感光層を空気中からの酸素から保護する酸素遮断層が前記光重合型レーザ感光層に重ねて形成されてなる請求項8〜10の何れか1項に記載の平版印刷版。
- 前記光重合型レーザ感光層と前記酸素遮断層との間に酸素遮断性樹脂の層である中間層が形成されてなる請求項11に記載の平版印刷版。
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