JP2004357952A - 薬物のレーザーによる吸収促進における、照射条件の設定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針を提供する。
【解決手段】本発明のレーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定方法は、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることを特徴とする。レーザー光線がAr・Fレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を0.07J/cm2/Puls以上に設定する。Er・YAGレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を1.0J/cm2/Puls以上に設定する。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明のレーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定方法は、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることを特徴とする。レーザー光線がAr・Fレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を0.07J/cm2/Puls以上に設定する。Er・YAGレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を1.0J/cm2/Puls以上に設定する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術範囲】
本発明は、有効成分の経皮吸収促進に有用な、レーザー光線の照射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚は、生体と外界とを分かつ、重要な防御機構であり、化学物質が、生体内に移行するのを防ぐ役目を担っている。この様な防御作用は、角層細胞によるところが大きい。その一方で、経皮的に薬剤を移行させることが出来れば、消化液の影響を受けず、しかも、苦痛が少ない、持続的な投与が可能である等の長所が存し、薬剤の経皮投与は、製剤設計においては、ハードルは高いものの、魅力的なテーマの一つとなっている。この為種々の経皮吸収を促進させる手段が考案されている。例えば、メントールやリン脂質等の経皮吸収促進剤を利用する方法(特許文献1、2、3参照)やエレクトロポーレーションやイオントフォレーシスを利用する方法(特許文献4、5、6参照)等の電気駆動力を利用する方法などが存する。しかしながら、経皮吸収促進剤を利用する方法では、薬剤の種類との相性の問題が存し、時として、経皮吸収が促進されない薬剤が存在するし、ペプチド系薬剤の経皮吸収促進については絶望的と言わざるを得ない。電気駆動力を利用する方法では、電気による傷害発生は否めず、安全性面からは問題が存すると言わざるを得なかった。
【0003】
この様な背景のもとに、近年に於いて、レーザー光線を用いた経皮吸収促進技術が提案されるようになってきている。具体的には、レーザー光線により、角層の一部を除去し、その部分より薬剤を吸収させるような技術(特許文献7、8、9、10参照)や光エネルギーを駆動力として、薬剤を経皮吸収させる方法(特許文献11参照)等が例示できる。しかしながら、この様なレーザー光線の使用については、その使用方法についての詳細な検討はされておらず、照射設計の指針は存していないと言わざるを得なかった。即ち、レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平05−310598号公報
【特許文献2】
特開平08−31094号公報
【特許文献3】
特開平10−158194号公報
【特許文献4】
特開2003−40802号公報
【特許文献5】
特開2003−93521号公報
【特許文献6】
特開平08−164212号公報
【特許文献7】
特表平11−511360号公報
【特許文献8】
特表平09−501087号公報
【特許文献9】
特開平11−9701号公報
【特許文献10】
特表2001−511668号公報
【特許文献11】
特開2002−142763号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針を提供することを課題とする。
【0006】
【課題の解決手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、レーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定において、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることで、かかる設計が手キッカウニ行えることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示す技術に関するものである。
(1)レーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定において、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることを特徴とする、照射条件の設定方法。
(2)レーザー光線がAr・Fレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を0.07J/cm2/Puls以上に設定することを特徴とする、(1)に記載の照射条件の設定方法。
(3)レーザー光線が、Er・YAGレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を1.0J/cm2/Puls以上に設定することを特徴とする、(1)に記載の照射条件の設定方法。
(4)更に、総エネルギー量を指標とすることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の照射条件の設定方法。
(5)総エネルギー量が3J/cm2以上であることを特徴とする、(4)に記載の照射条件の設定方法。
(6)Ar・Fレーザーであって、そのエネルギー密度が、0.07J/cm2/Puls以上であることを特徴とする、薬剤の経皮吸収促進用のレーザー光線。
(7)Er・YAGレーザーであって、そのエネルギー密度が、1.0J/cm2/Puls以上であることを特徴とする、薬剤の経皮吸収促進用のレーザー光線。
(8)総エネルギー量が3J/cm2以上である、エネルギー密度が0.07J/cm2/Puls以上のAr・Fレーザー光線又はエネルギー密度が1.0J/cm2/Puls以上のEr・YAGレーザー光線の、経皮投与される薬剤の経皮吸収促進の為の使用。
(9)総エネルギー量が3J/cm2以上である、エネルギー密度が0.07J/cm2/Puls以上のAr・Fレーザー光線又はエネルギー密度が1.0J/cm2/Puls以上のEr・YAGレーザー光線の照射からなる、薬剤の皮膚内導入の為の後処置方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のレーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定方法は、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることを特徴とする。通常、薬物の経皮吸収促進の為のレーザー照射のコントロールは、照射総エネルギー量を指標に行われてきた。確かに、同じエネルギー密度であれば、照射総エネルギー量が多い程、経皮吸収促進作用は、該総エネルギー量に依存して高まる。しかしながら、エネルギー密度を大きくすると、総エネルギー量が同じでも更に経皮吸収が促進されることを本発明者らは見出した。即ち、炎症などの不都合な生体反応を起こさない範囲での最大エネルギー密度を求め、該最大エネルギー密度でのレーザー照射を行うことが、皮膚反応を起こさない範囲で、最も経皮吸収促進効果が高い照射と言える。この様な最大許容エネルギー密度の値は、固体毎、或いは、照射線源毎によって異なる。的確で、且つ、効果的な経皮吸収促進の為のレーザー照射を行う為には、予め予備試験により、固体毎の最大許容エネルギー密度を求めておくことが好ましい。この様な、経皮吸収促進効果を発現する為のエネルギー密度の、効果発現の閾値は、Ar・Fレーザーである場合に於いて、0.07J/cm2/Pulsが、Er・YAGレーザーである場合に於いては、1.0J/cm2/Pulsが例示できる。即ち、言い換えれば、Ar・Fレーザーである場合に於いては、レーザー光線のエネルギー密度を0.07J/cm2/Puls以上に設定することにより、Er・YAGレーザーである場合に於いては、1.0J/cm2/Puls以上に設定することより、著しい効果を発揮するようになると言える。これらのエネルギー密度を境に、経皮吸収促進作用が立ち上がる。これらの実際の状況は後記実施例に示す如くである。又、照射エネルギーの累積値(総エネルギー量)は、その線源の種類に係わらず、3J/cm2以上が好ましい。この値が、経皮吸収を促進できる下限値である為である。
【0008】
本発明の関与する、経皮吸収促進技術において、経皮吸収を促進される薬剤としては、対象疾患の部位が、深部或いは全身であって、継続的な投与、血中濃度の維持或いは臓器内濃度の維持が必要な薬剤が好適に例示できる。かかる薬剤としては、例えば、デキサメタゾン、ベクロメタゾン等の抗炎症ステロイド類、インドメタシン、ケトプロフェン等の非ステロイド抗炎症剤類、バルビツール等の麻酔剤、セファロスポリン、ホスフォマイシン等の抗生物質、アシクロビル、ガンシクロビル等の抗ウイルス剤、ニフェジピン、ニカルジピン、ニトログリセリン等の循環器用薬、カルシトニン、インスリン、甲状腺ホルモン等のタンパク製剤等が好適に例示できる。これらは、通常行われている経皮投与方法に従って投与することが出来る。この様な方法としては、例えば、経皮的オープン投与、クローズドパッチ投与などが例示できる。勿論、リン脂質やモノテルペンなどの既知の経皮吸収促進剤を併用することも出来る。
【0009】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【0010】
<実施例1>
フランツ型拡散セル(1.77cm2)を用いて、レーザー照射による、薬物の経皮吸収促進作用を調べた。レーザーはエキシマレーザーC3470(Ar・Fレーザー:浜松フォトニクス株式会社製)を用いて行った。フランツ型拡散セルの隔壁には、ユカタン・マイクロピッグの凍結皮膚を常温に戻して用い、ドナー液はレーザー照射後に、0.2%FITC−デキストラン水溶液(分子量20kDa)を0.5mL添加した。レセプター液には、リン酸緩衝生理食塩水5mlを用い、温度は32℃で恒温にした。ドナー液を注入後、一定時間毎にレセプター液をサンプリングし、蛍光強度によって、透過薬物量を測定した。レーザーの照射条件は、エネルギー密度を変えて、分割照射を行い、総エネルギー量がそれぞれで同じになるように設定した。結果を表1に示す。これより、同じ総エネルギー量であっても、エネルギー密度の高い方が経皮吸収が高まっていることがわかる。又、エネルギー密度にして、0.07J/cm2/Pulsに閾値が存在していることもわかる。即ち、エネルギー密度が、0.07J/cm2/Puls未満のAr・Fレーザーでは、分割回数を増やして総エネルギー量を高めても、経皮吸収促進効果はあまり得られないことがわかる。
【0011】
【表1】
【0012】
<実施例2>
レーザーの光源をEr:YAGレーザー(LASER1−2−3;SEO社製)に変えて、実施例1と同様に検討を行った。結果を表2に示す。これより、同じ総エネルギー量であっても、エネルギー密度の高い方が経皮吸収が高まっていることがわかる。又、エネルギー密度にして、1.0J/cm2/Pulsに閾値が存在していることもわかる。即ち、エネルギー密度が、1.0J/cm2/Puls未満のEr・YAGレーザーでは、分割回数を増やして総エネルギー量を高めても、経皮吸収促進効果はあまり得られないことがわかる。
【0013】
【表2】
【0014】
<実施例3>
HWY系ラット(雄性、100〜200g)を用いて、インスリンの経皮投与の検討を行った。ラットは背部を剃毛し、レーザー照射(Er:YAGレーザー(LASER1−2−3;SEO社製)1.0J/cm2/Puls及び2.0J/cm2/Puls、総エネルギー量4J/cm2)を行った後、1匹あたり500IUのインスリンを解放系で経皮投与した。投与後、一定時間毎に採血し、血糖値測定キットを用いて、血糖値を測定した。結果を図1に示す。これより、この照射条件であれば、タンパク製剤であるインスリンの経皮投与も可能であることがわかる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3の結果を示す図である。
【発明の属する技術範囲】
本発明は、有効成分の経皮吸収促進に有用な、レーザー光線の照射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚は、生体と外界とを分かつ、重要な防御機構であり、化学物質が、生体内に移行するのを防ぐ役目を担っている。この様な防御作用は、角層細胞によるところが大きい。その一方で、経皮的に薬剤を移行させることが出来れば、消化液の影響を受けず、しかも、苦痛が少ない、持続的な投与が可能である等の長所が存し、薬剤の経皮投与は、製剤設計においては、ハードルは高いものの、魅力的なテーマの一つとなっている。この為種々の経皮吸収を促進させる手段が考案されている。例えば、メントールやリン脂質等の経皮吸収促進剤を利用する方法(特許文献1、2、3参照)やエレクトロポーレーションやイオントフォレーシスを利用する方法(特許文献4、5、6参照)等の電気駆動力を利用する方法などが存する。しかしながら、経皮吸収促進剤を利用する方法では、薬剤の種類との相性の問題が存し、時として、経皮吸収が促進されない薬剤が存在するし、ペプチド系薬剤の経皮吸収促進については絶望的と言わざるを得ない。電気駆動力を利用する方法では、電気による傷害発生は否めず、安全性面からは問題が存すると言わざるを得なかった。
【0003】
この様な背景のもとに、近年に於いて、レーザー光線を用いた経皮吸収促進技術が提案されるようになってきている。具体的には、レーザー光線により、角層の一部を除去し、その部分より薬剤を吸収させるような技術(特許文献7、8、9、10参照)や光エネルギーを駆動力として、薬剤を経皮吸収させる方法(特許文献11参照)等が例示できる。しかしながら、この様なレーザー光線の使用については、その使用方法についての詳細な検討はされておらず、照射設計の指針は存していないと言わざるを得なかった。即ち、レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平05−310598号公報
【特許文献2】
特開平08−31094号公報
【特許文献3】
特開平10−158194号公報
【特許文献4】
特開2003−40802号公報
【特許文献5】
特開2003−93521号公報
【特許文献6】
特開平08−164212号公報
【特許文献7】
特表平11−511360号公報
【特許文献8】
特表平09−501087号公報
【特許文献9】
特開平11−9701号公報
【特許文献10】
特表2001−511668号公報
【特許文献11】
特開2002−142763号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針を提供することを課題とする。
【0006】
【課題の解決手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、レーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定において、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることで、かかる設計が手キッカウニ行えることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示す技術に関するものである。
(1)レーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定において、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることを特徴とする、照射条件の設定方法。
(2)レーザー光線がAr・Fレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を0.07J/cm2/Puls以上に設定することを特徴とする、(1)に記載の照射条件の設定方法。
(3)レーザー光線が、Er・YAGレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を1.0J/cm2/Puls以上に設定することを特徴とする、(1)に記載の照射条件の設定方法。
(4)更に、総エネルギー量を指標とすることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の照射条件の設定方法。
(5)総エネルギー量が3J/cm2以上であることを特徴とする、(4)に記載の照射条件の設定方法。
(6)Ar・Fレーザーであって、そのエネルギー密度が、0.07J/cm2/Puls以上であることを特徴とする、薬剤の経皮吸収促進用のレーザー光線。
(7)Er・YAGレーザーであって、そのエネルギー密度が、1.0J/cm2/Puls以上であることを特徴とする、薬剤の経皮吸収促進用のレーザー光線。
(8)総エネルギー量が3J/cm2以上である、エネルギー密度が0.07J/cm2/Puls以上のAr・Fレーザー光線又はエネルギー密度が1.0J/cm2/Puls以上のEr・YAGレーザー光線の、経皮投与される薬剤の経皮吸収促進の為の使用。
(9)総エネルギー量が3J/cm2以上である、エネルギー密度が0.07J/cm2/Puls以上のAr・Fレーザー光線又はエネルギー密度が1.0J/cm2/Puls以上のEr・YAGレーザー光線の照射からなる、薬剤の皮膚内導入の為の後処置方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のレーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定方法は、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることを特徴とする。通常、薬物の経皮吸収促進の為のレーザー照射のコントロールは、照射総エネルギー量を指標に行われてきた。確かに、同じエネルギー密度であれば、照射総エネルギー量が多い程、経皮吸収促進作用は、該総エネルギー量に依存して高まる。しかしながら、エネルギー密度を大きくすると、総エネルギー量が同じでも更に経皮吸収が促進されることを本発明者らは見出した。即ち、炎症などの不都合な生体反応を起こさない範囲での最大エネルギー密度を求め、該最大エネルギー密度でのレーザー照射を行うことが、皮膚反応を起こさない範囲で、最も経皮吸収促進効果が高い照射と言える。この様な最大許容エネルギー密度の値は、固体毎、或いは、照射線源毎によって異なる。的確で、且つ、効果的な経皮吸収促進の為のレーザー照射を行う為には、予め予備試験により、固体毎の最大許容エネルギー密度を求めておくことが好ましい。この様な、経皮吸収促進効果を発現する為のエネルギー密度の、効果発現の閾値は、Ar・Fレーザーである場合に於いて、0.07J/cm2/Pulsが、Er・YAGレーザーである場合に於いては、1.0J/cm2/Pulsが例示できる。即ち、言い換えれば、Ar・Fレーザーである場合に於いては、レーザー光線のエネルギー密度を0.07J/cm2/Puls以上に設定することにより、Er・YAGレーザーである場合に於いては、1.0J/cm2/Puls以上に設定することより、著しい効果を発揮するようになると言える。これらのエネルギー密度を境に、経皮吸収促進作用が立ち上がる。これらの実際の状況は後記実施例に示す如くである。又、照射エネルギーの累積値(総エネルギー量)は、その線源の種類に係わらず、3J/cm2以上が好ましい。この値が、経皮吸収を促進できる下限値である為である。
【0008】
本発明の関与する、経皮吸収促進技術において、経皮吸収を促進される薬剤としては、対象疾患の部位が、深部或いは全身であって、継続的な投与、血中濃度の維持或いは臓器内濃度の維持が必要な薬剤が好適に例示できる。かかる薬剤としては、例えば、デキサメタゾン、ベクロメタゾン等の抗炎症ステロイド類、インドメタシン、ケトプロフェン等の非ステロイド抗炎症剤類、バルビツール等の麻酔剤、セファロスポリン、ホスフォマイシン等の抗生物質、アシクロビル、ガンシクロビル等の抗ウイルス剤、ニフェジピン、ニカルジピン、ニトログリセリン等の循環器用薬、カルシトニン、インスリン、甲状腺ホルモン等のタンパク製剤等が好適に例示できる。これらは、通常行われている経皮投与方法に従って投与することが出来る。この様な方法としては、例えば、経皮的オープン投与、クローズドパッチ投与などが例示できる。勿論、リン脂質やモノテルペンなどの既知の経皮吸収促進剤を併用することも出来る。
【0009】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【0010】
<実施例1>
フランツ型拡散セル(1.77cm2)を用いて、レーザー照射による、薬物の経皮吸収促進作用を調べた。レーザーはエキシマレーザーC3470(Ar・Fレーザー:浜松フォトニクス株式会社製)を用いて行った。フランツ型拡散セルの隔壁には、ユカタン・マイクロピッグの凍結皮膚を常温に戻して用い、ドナー液はレーザー照射後に、0.2%FITC−デキストラン水溶液(分子量20kDa)を0.5mL添加した。レセプター液には、リン酸緩衝生理食塩水5mlを用い、温度は32℃で恒温にした。ドナー液を注入後、一定時間毎にレセプター液をサンプリングし、蛍光強度によって、透過薬物量を測定した。レーザーの照射条件は、エネルギー密度を変えて、分割照射を行い、総エネルギー量がそれぞれで同じになるように設定した。結果を表1に示す。これより、同じ総エネルギー量であっても、エネルギー密度の高い方が経皮吸収が高まっていることがわかる。又、エネルギー密度にして、0.07J/cm2/Pulsに閾値が存在していることもわかる。即ち、エネルギー密度が、0.07J/cm2/Puls未満のAr・Fレーザーでは、分割回数を増やして総エネルギー量を高めても、経皮吸収促進効果はあまり得られないことがわかる。
【0011】
【表1】
【0012】
<実施例2>
レーザーの光源をEr:YAGレーザー(LASER1−2−3;SEO社製)に変えて、実施例1と同様に検討を行った。結果を表2に示す。これより、同じ総エネルギー量であっても、エネルギー密度の高い方が経皮吸収が高まっていることがわかる。又、エネルギー密度にして、1.0J/cm2/Pulsに閾値が存在していることもわかる。即ち、エネルギー密度が、1.0J/cm2/Puls未満のEr・YAGレーザーでは、分割回数を増やして総エネルギー量を高めても、経皮吸収促進効果はあまり得られないことがわかる。
【0013】
【表2】
【0014】
<実施例3>
HWY系ラット(雄性、100〜200g)を用いて、インスリンの経皮投与の検討を行った。ラットは背部を剃毛し、レーザー照射(Er:YAGレーザー(LASER1−2−3;SEO社製)1.0J/cm2/Puls及び2.0J/cm2/Puls、総エネルギー量4J/cm2)を行った後、1匹あたり500IUのインスリンを解放系で経皮投与した。投与後、一定時間毎に採血し、血糖値測定キットを用いて、血糖値を測定した。結果を図1に示す。これより、この照射条件であれば、タンパク製剤であるインスリンの経皮投与も可能であることがわかる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、レーザー光線を用いた薬剤の経皮吸収促進技術において、照射設計の指針を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3の結果を示す図である。
Claims (9)
- レーザー光線の照射による、薬物の経皮吸収の促進を行う為のレーザー光線の照射条件の設定において、前記レーザー光線のエネルギー密度を指標とすることを特徴とする、照射条件の設定方法。
- レーザー光線がAr・Fレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を0.07J/cm2/Puls以上に設定することを特徴とする、請求項1に記載の照射条件の設定方法。
- レーザー光線が、Er・YAGレーザーである場合に於いて、前記レーザー光線のエネルギー密度を1.0J/cm2/Puls以上に設定することを特徴とする、請求項1に記載の照射条件の設定方法。
- 更に、総エネルギー量を指標とすることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の照射条件の設定方法。
- 総エネルギー量が3J/cm2以上であることを特徴とする、請求項4に記載の照射条件の設定方法。
- Ar・Fレーザーであって、そのエネルギー密度が、0.07J/cm2/Puls以上であることを特徴とする、薬剤の経皮吸収促進用のレーザー光線。
- Er・YAGレーザーであって、そのエネルギー密度が、1.0J/cm2/Puls以上であることを特徴とする、薬剤の経皮吸収促進用のレーザー光線。
- 総エネルギー量が3J/cm2以上である、エネルギー密度が0.07J/cm2/Puls以上のAr・Fレーザー光線又はエネルギー密度が1.0J/cm2/Puls以上のEr・YAGレーザー光線の、経皮投与される薬剤の経皮吸収促進の為の使用。
- 総エネルギー量が3J/cm2以上である、エネルギー密度が0.07J/cm2/Puls以上のAr・Fレーザー光線又はエネルギー密度が1.0J/cm2/Puls以上のEr・YAGレーザー光線の照射からなる、薬剤の皮膚内導入の為の後処置方法。
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---|---|---|---|
JP2003160134A JP2004357952A (ja) | 2003-06-05 | 2003-06-05 | 薬物のレーザーによる吸収促進における、照射条件の設定方法 |
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Publications (1)
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JP2004357952A true JP2004357952A (ja) | 2004-12-24 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009539763A (ja) * | 2006-03-13 | 2009-11-19 | ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー | 哺乳類の皮膚の状態を調整する目的による、エネルギーと局所適用組成物の混用 |
JP2011502571A (ja) * | 2007-11-05 | 2011-01-27 | ピュアテック ベンチャーズ | 医薬化合物を投与するための方法、キット、および組成物 |
-
2003
- 2003-06-05 JP JP2003160134A patent/JP2004357952A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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