JP2004357713A - フェロモン系タンパク質代用物を産生するように操作された酵母細胞、ならびにその利用法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 酵母細胞がフェロモン系たんぱく質(例、α因子の成熟に関与する酵素、α因子の輸送体、フェロモン受容体、等)の代用物の阻害または活性化がそれら酵母細胞をスクリーニングできたり選択できたりする特性に影響するような仕方で発現するように操作する。
【解決手段】 さまざまな手段により、上記のスクリーニング及び選択の系のシグナル・ノイズ率を改良する。
【選択図】 図1

Description

本願は1993年3月31日出願の米国特許出願第08/041,431号の一部継続出願である。
本発明は酵母フェロモンあるいはその代用物の翻訳後修飾、転送や応答を含む、タンパク質に作用する能力についての酵母細胞中での薬剤、特にランダムペプチドのスクリーニングに関する。
薬物のスクリーニング
新らしい分子中に生物学的活性を同定することは、歴史的にインビトロ分析あるいは動物の個体を使って行われてきた。未だ何も操作されていない[intact]生物学的存在は、それが細胞であるか全体的な組織であるかを問わず、インビトロでの抗菌剤、抗カビ剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤を選択するものとして使われてきた。培養された哺乳動物細胞も潜在的な治療用化合物を検出するよう設計したスクリーニングに使われている。細胞の成長刺激や識別、細胞運動における変化、特定の代謝産物の生成、細胞内での特定タンパク質の発現、改変させたタンパク質機能、改変させた伝導特性など、さまざまな生物学的定量法上の終点が哺乳動物細胞スクリーニングにおいて開発されている。ガンの化学療法に使われる細胞障害化合物が、これらの能力を介して、インビトロおよびインビボで腫瘍細胞の成長を阻害することが同定されている。分散細胞の培養のほかに全体組織も、筋肉の収縮に起因するもののように、生物学的定量法に役立っている。
Cell,1991, Vol.65, p.691-699 Cell, 1991,Vol.66, p2327-2338
インビトロでのテストは、高い効率のスクリーニングを設計することができる好ましい方法である。つまり少量の多数化合物を短時間の間に、安価にテストすることができるのである。それともなければ化合物評価の後日の段階のため動物を保存するのであって、発見相では使わないのであるから、動物個体の使用は労働集約的で極端に高価になる。
微生物は、哺乳動物の細胞や組織に比しずっと簡単に、迅速な薬物スクリーンに使うための開発ができる。酵母は特に魅力的なテスト系を提供する。この微生物の広範囲に亙る分析は、酵母およびそれより高次の真核生物の双方における基本的な細胞プロセスで活性な種々のタンパク質の構造ならびに機能を保存することを露呈した。
細胞受容体のアゴニストとアンタゴニストの探索は、これら分子ターゲットの鮮やかな特異性のため薬物発見に狙いを定めた奥の深い研究となっている。薬物のスクリーニングは、機能的受容体を発現する全体細胞を使って行われてきたが、最近では膜フラクションあるいは精製した受容体を使ったバインディングアッセイが競合リガンドの化合物ライブラリーをスクリーニングするように設計されている。WO92/05244 (1992年4月2日)で、デューク大学は酵母中に哺乳動物のG-タンパク質結合受容体が発現していることにつき、また、その生物を使ってこれら受容体のアゴニストおよびアンタゴニストを同定する手段につき記載している。
また、酵母は勿論、抗カビ化合物の発見にも使われている。Etienneら(1990年)は、抗カビを迅速に検出する、広い範囲の抗生物質に極めて敏感にされたサッカロマイセス・セレビシエ[Saccharomyces
cerevisiae]突然変異株の利用法につき記載している。
酵母のフェロモン系タンパク質と、それらタンパク質の代謝機能:
半数体酵母細胞は栄養細胞的な成長能力があるばかりでなく、二倍体細胞を形成するように交配することができる。半数体細胞のこれら対にされた2タイプ(両性)をaとαとする。a細胞はドデカペプチドa因子を産生し、α細胞はトリデカペプチドα因子を産生する。a因子とα因子は相手の性の酵母細胞中に交配応答を引き出すから、これらは「フェロモン」と呼ばれる。これらフェロモンは、フェロモンの産生または輸送、あるいはフェロモンに対する応答に特異的に関与するその他のタンパク質と同様、「フェロモン系タンパク質」と考えられている。遺伝子をコードするa因子フェロモンは、α因子受容体遺伝子のように、a細胞特異的遺伝子で、a細胞特異的遺伝子はa細胞にしか発現されない。遺伝子をコードするα因子フェロモンは、a因子受容体遺伝子のように、α細胞特異的遺伝子で、α細胞特異的遺伝子はα細胞にしか発現されない。その他の酵母遺伝子は半数体特異的遺伝子のセットに属し、半数体細胞(a細胞またはα細胞)中に発現するが二倍体(a/α)細胞中には発現しない。さらに、胞子形成に関係する遺伝子も含めて二倍体細胞特異的遺伝子セットも存在する。
真核細胞中、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、転写因子TFIID(TATA結合タンパク質、すなわちTBP)が結合する特別な配列(TATAボックス)を含有している。活性転写開始複合体はTFIID、補助開始タンパク質、およびRNA
PolIIを有する。より高次の真核細胞においてと同様、TATAボックスは酵母プロモーター中で必須の制御配列である。酵母TATAボックス結合タンパク質(TBP)は、その哺乳動物TFIIDの機能的代用物としての能力により同定されている[Buratowskiら、
Nature 334, 37 (1988); Cavalliniら、 Nature 334, 77 (1988)]。僅かな数の明らかな例外を除いて[ある種の解糖酵素遺伝子の転写、Struhl、
Mol. Cell. Biol. 6, 3847 (1986)およびOgdenら、 Mol. Cell Biol. 6, 4335 (1986)参照]、酵母遺伝子の転写は転写開始のために最も近いTATAボックスのエレメントおよびTFIID結合を必要とする。また効率的な転写にとって必要とされるものは、遺伝子特異的な活性化物質(アクティベーター)タンパク質である。こうした遺伝子特異的な調節タンパク質が転写に影響するメカニズムについては未だ完全に解明されていない。
MCM1p(MCM1遺伝子中にコードされる)は酵母中の非細胞型特異的転写因子である。MCM1pは単独でまたは別の調節タンパク質と共同してa細胞特異的遺伝子およびα細胞特異的遺伝子の発現を制御するように挙動する。酵母の交配型(メイティングタイプ)の遺伝子座は細胞型特異的発現の制御に貢献する調節タンパク質をコードする。これらのタンパク質はMata1p(MATa遺伝子にコードされる)とMatα1pおよびMatα2p(MATα座でコードされる)である。MCM1pはa特異的遺伝子の制御領域中にある上流活性化配列[upstream
activation sequence (UAS)]に結合することによってa特異的遺伝子の転写を活性化する。Matα1pとMCM1pとは相互反応して特異的UAS結合部位に相互が結合することを促進し、α細胞中におけるα細胞特異的遺伝子の転写を活性化する。Matα2pはMCM1pと連合してα細胞中におけるa特異的遺伝子の転写を抑制する。Matα1p/Matα2p調節体は二倍体細胞にだけ発見されている。
酵母はα因子フェロモン、MFα1およびMFα2をコードする2つの遺伝子を有する。これらの配列中に突然変異がある酵母を分析すると、MFα1は細胞に産生されたα因子の大半の発生に関与していることを示す。より高次のレベルで発現がMFα2からよりMFα1から起こっている(Kurjan、 Mol. Cell. Biol. 5, 787 (1985)。酵母のMFα1遺伝子はN末端に85 aa リーダー配列を有する
165 aa 前駆体タンパク質をコードする。リーダーは19 aa シグナル配列と、3つのオリゴ糖側鎖を付加するための部位を有する66 aa とを有する(KurjanとHerskowitz、
Cell 39, 933 (1982); Singhら、 Nuc. Acids Res. 11, 4049 (1983); Juliusら、 Cell 36,
309 (1984)。13 aa α因子の4つのタンデムなコピーが前駆体のC末端部分に存在する。6-8 aa スペーサーペプチドがα因子配列に先行する(第2図)。
発生期のα因子ポリペプチドがER(小胞体)へトランスロケーションすると、シグナル配列が前駆体タンパク質から開裂してプロα因子を産生する(Emterら、
Biochem. Biophys. Res. Commun. 116, 822 (1983); Juliusら、 Cell 36, 309 (1984);
Juliusら、 Cell 37、 1075 (1984)。KEX2エンドペプチターゼによるプロα因子の開裂の前にゴルジで付加的なグリコシル化が行われる。この酵素はスペーサーリピート各々の中で切断し、α因子ペプチドのC末端に付くLys−Arg配列を残す(Juliusら、
Cell 37、 1075 (1984)。Lys−Arg配列はKEX−1プロテアーゼの作用によって切除される(Dmochowskaら、 Cell 50,
573 (1987)。α因子ペプチドのN末端に付加されたスペーサー残基はSTE13でコードされたジペプチジルアミノペプチダーゼによって切除される(Juliusら、
Cell 32, 839 (1983)。上述のタンパク分解過程を経由して各前駆体タンパク質から4つのα因子ペプチドが放出され、成熟α因子が細胞から分泌される。
12 aa成熟a因子ペプチドの前駆体はMFa1およびMFa2遺伝子中でコードされ、各々36
aaと38 aa残基である(MFa1遺伝子の概略については第5図参照)。前駆体はa因子の1コピーを有しており2つの遺伝子の産物はアミノ酸1個につき配列が異なっている。a因子の2つの形はa細胞によって等量産生される(Manneyら、
in Sexual interactions in eukaryotic microbes, p21, Academic Pess. New york
(1981)。a因子のプロセッシングはα因子プロセッシングとは細かいあらゆる点で異なる工程を踏む。a因子のプロセッシングは細胞質ゾル中で開始され、ファルネシルトランスフェラーゼによりカルボキシ末端(−CVIA)近くのC末端システイン残基のファルネシル化[farnesylation]を経由する(Schaferら、
Science 245, 379 (1989); Schaferら、 Science 249, 1133 (1990)。ファルネシルトランスフェラーゼのα、βサブユニットは各々、RAM2遺伝子とRAM1遺伝子によってコードされる(Heら、
Proc. Natl. Acad. Sci. 88, 11373 (1991)。ファルネシル化をした後、膜結合エンドプロテアーゼによって修飾システインに対しC末端をなす3つのアミノ酸をタンパク分解で切除する。次にカルボキシ末端ファルネシル化システイン残基をさらに修飾する。カルボキシ基をSTE14遺伝子の産物でメチル化する。STE14pは膜結合S−ファルネシル−システインカルボキシルメチルトランスフェラーゼである(Hrycynaら、
EMBO. J. 10, 1699 (1991)。a因子のN末端加工のメカニズムはまだ解明されていない。前駆体のプロセッシングが完了したら、成熟a因子がSTE6遺伝子の産物、ATP結合カセット(ABC)輸送体によって細胞外の空間に移動させられる(Kuchlerら、
EMBO. J. 8, 3973 (1989)。
正常のS. cerevisiae(出芽酵母)のa細胞では、α因子はG-タンパク質結合膜受容体STE2に結び付く。G-タンパク質はGαサブユニットとGβγサブユニットに解離し、Gβγは未明のエフェクターと結合し、それは次に多数の遺伝子を活性化する。キナーゼであるSTE20は機能が不明のタンパク質のSTE5を活性化する。STE5はSTE11キナーゼを活性化し、後者はSTE7キナーゼを刺激してKSS1及び/又はFUS3キナーゼを誘導する。これらは転写因子STE12の発現を起動する。STE12は、FUS1(細胞融合),FAR1(細胞周期停止),STE2(受容体),MFA1(フェロモン),SST2(リカバリー),KAR3(核融合)およびSTE6(フェロモン分泌)などの交配に関与するさまざまな遺伝子の発現を刺激する。プロセッシング過程で活性化されるその他の遺伝子にはCHS1,AGα1およびKAR3がある。多数のタンデム配列TGAAACAが、このプロセッシング過程の多数の遺伝子の5'-近接領域に見られる「フェロモン応答エレメント」であると認められた。
交配フェロモンへの応答の1つは、細胞周期のG1相にある酵母細胞の遷移停止[transient arrest]である。これは3つのG1サイクリン[cyclin](CLN1,CLN2,CLN3)全てが不活性化されることを要求する。FUS3はCLN3を不活性化し、FAR1はCLN2を阻害すると考えられている。(CLN1を不活性化する産物については知られていない)
成長停止は多くのさまざまなメカニズムによって終了される。第1にα因子受容体がフェロモン結合後に内面化され、多数のフェロモン結合部位における遷移減少をもたらす。第2に受容体のC末端端部がリガンド結合に伴ってリン酸化され、トランスデューサG-タンパク質から受容体を分離させる。第3に、フェロモンで誘発されたGPA1p(ヘテロトリメリックG-タンパク質のGαサブユニット)発現の増加は、GβとGγサブユニットに対するαサブユニットのレベルを増加させ、フリーのGβγのレベルを減少させ、それに伴いフェロモン応答経路の不活性化をもたらす。その他のメカニズムとしては、SST2やBAR1の発現を減少させ、αサブユニットのリン酸化(おそらくはSVG1による)をもたらす。
シグナル発信はCDC36,CDC39,CDC72,CDC73、SRM1のような多数の遺伝子の発現により阻害される。これらの遺伝子を不活性化すればシグナル発信経路の活性化となる。
同様なフェロモンのシグナル発信経路をα細胞中に見つけ出すことができるが、その命名は場合により異なる(例えば、STE2ではなくSTE3のように)。
その他の酵母もG-タンパク質で仲介された交配因子応答経路を有している。例えば分裂酵母S.ポンベ[S.
pombe]においては、M因子がMAP3受容体に結合するか、P因子がMAM2受容体に結合する。G-タンパク質の解離はキナーゼカスケード(BYR2,BYR1,SPK1)を活性化し、キナーゼカスケードの活性化は転写因子(STE11)を刺激する。しかしS.
pombeでは、Gαサブユニットがシグナルを伝送するのであって、言うまでもなく詳細にはこれ以外にさまざまな相違点がある。
フェロモン経路突然変異体
フェロモン経路遺伝子の自発的及び誘導的な突然変異の効果について研究されてきている。例えばα因子(MFα1及びMFα2)遺伝子、 Kurjan、 Mol. Cell. Biol., 5:787 (1985) 参照、a因子(MFa1及びMFa2)遺伝子、MichaelisとHerskowitz,
Mol. Cell. Biol. 8:1309 (1988) 参照、 フェロモン受容体(STE2及びSTE3)遺伝子、MackayとManny、
Genetics, 76:273 (1974)、 Hartwell、 J. Cell. Biol., 85:811 (1980)、 Hagenら、
P.N.A.S. (USA), 83:1418 (1986)参照; FAR1遺伝子、ChangとHerskowitz、 Cell, 63:999 (1990)参照;
およびSST2遺伝子、 ChanとOtte、 Mol. Cell. Biol., 2:11 (1982)参照、 がある。
酵母細胞における外来タンパク質の発現
さまざまな外来タンパク質が、酵母細胞質中に単独で、あるいは酵母分泌経路の開発を介して、S. cerevisiae中に産生されてきた(Kingsmanら、 TIBTECH 5, 53 (1987)。こうしたタンパク質としては、例えば、インシュリン様の成長因子受容体(Steubeら、
Eur. J. Biochem. 198, 651 (1991)、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(Jabbarら、 Proc. Natl. Acad.
Sci. 82, 2019 (1985)、ラット肝臓シトクロムP−450(Oedaら、 DNA 4、 202 (1985)および機能的な哺乳動物抗体(Woodら、
Nature 314, 446 (1985)がある。酵母分泌経路の利用は、外来タンパク質の忠実な折り畳み[folding],グリコシル化および安定化をもたらす可能性を向上させるので、好ましいことである。このように酵母中に異種タンパク質を発現させることは、酵母分泌タンパク質の遺伝子(例えばα因子フェロモン、またはSUC2[インベルターゼ]遺伝子)中にコードされたシグナル配列と外来タンパク質遺伝子との融合を伴うことが多い。
多数の酵母発現ベクターが外来タンパク質の構成的な発現または調節された発現を可能にするように設計されてきた。構成的プロモーターはホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK1)またはアルコールデヒドロゲナーゼI(ADH1)のような代謝酵素をコードする高度に発現された遺伝子に由来し、調節可能なプロモーターはガラクトキナーゼ(GAL1)遺伝子などの多数の遺伝子に由来する。また、超分泌酵母突然変異体も作ることができる。それらの株は哺乳動物タンパク質をより効率的に分泌し、多量の生物学的に活性な哺乳動物タンパク質を酵母中に生成する「製造」株として利用される(MoirとDavidow、
Meth. in Enzymol. 194, 491 (1991)。
さまざまな異種のタンパク質が、商業的利用あるいは生化学研究のために必要な多量のタンパク質を生産する手段として、酵母細胞に発現されている(Kingsmanら、 TIBTECH 5, 53 (1987)。また、タンパク質が(1)その組織体内に正常時に発現される同種のタンパク質の機能的な代用物となるか、または(2)特定の機能を達成するため補助酵母タンパク質と相互反応するか、を判断するため多数の哺乳動物タンパク質が酵母中に発現されている。こうして変更された結合特異性をもつヒトTBPが酵母中において転写を開始するよう機能することが判定されている[Strubinとstruhl、
Cell 68, 721 (1992)]。また哺乳動物ステロイドホルモン受容体[Metzgerら、 (1988); SchenaとYamamoto (1988)]およびヒトp53[SchrerとIggo、
Acids Res. 20, 1539 (1992)]が酵母中で転写を活性化することが確かめられた。
HIV−1のgag-pol遺伝子の酵母中における発現は、ウイルス粒子中に正常時に発生する産物を生み出すようなgagタンパク質前駆体のプロセッシングをもたらす。酵母におけるプロセッシングはウイルスにおける場合と同様、gag-pol遺伝子内にコードされたプロテアーゼの作用に起因している(Kramerら、
Science 231,1580 (1986)。
多数の哺乳動物のABC輸送体が酵母中に発現されており、それらがフェロモン輸送における酵母Ste6pの代用物となる能力があるかどうかが判定されている。このように深く研究されている哺乳動物タンパク質としては、多種薬物抵抗力に関与するタンパク質であるヒトMdr1(KuchlerとThorner、 Proc. Natl. Acad. Sci. 89, 2302 (1992)およびネズミMdr3(Raymondら、
Science 256, 232 (1992)があり、また、ヒトCFTR[cystic fibrosis transmembrane conductance
regulator](ヒトのう胞性繊維症トランスメンブランコンダクタンスレギュレータ)および酵母STE2配列があるキメラタンパク質がa因子フェロモンを酵母中に輸送することが確認されている(Teemら、
Cell 73, 335 (1993)。
a細胞はa因子受容体を、またα細胞はα因子受容体を産生するように操作することができる。Nakayamaら、
EMBO J., 6:249-54 (1987); BenderとSprague, Jr.、 Genetics 121: 463-76 (1989)
非効応のG-タンパク質結合受容体がS.
cerevisiae中に機能的に発現されている。MarshとHershkowitz、 Cold Spring Harbor Symp., Quant.
Biol., 53: 557-65 (1988)はS. cerevisiae STE2をS. Kluyvenから得たその相同体と交換している。ドラマチックなことに、哺乳動物のアドレナリン性β受容体とGαサブユニットとが酵母中に発現され、その酵母の交配シグナル経路を制御していることが見い出されている。Kingら、
Science, 250: 121-123 (1990)
デューク大学のWO92/05244(1992年4月2日)は酵母G-タンパク質αサブユニットを産生することができないが、共に上述の哺乳動物G-タンパク質αサブユニットに「結合する」(つまり相互反応する)哺乳動物G-タンパク質αサブユニットと哺乳動物受容体の両者を産生するように操作された、形質変換酵母細胞について記載している。デューク大学は特に、GAL1プロモーターの制御下に、配列をコードする最初の63塩基対をSTE2遺伝子から得た11塩基対の非コード配列および42塩基対のコード配列と交換するという修飾を施したヒトアドレナリン性β−2受容体(hβAR)遺伝子で、セブントランスメンブラン受容体(STR)であるhβARを酵母中で発現させることにつき報告している。(STE2は酵母のα因子受容体をコードする)。単離した膜が種々の公知のhβARのアゴニストやアンタゴニストと正しく反応する能力があることが研究によって示されたように、デューク大学は修飾したhβARが機能的に膜内に一体化されたことを発見している。酵母発現hβARに対するリガンド結合親和性は、自然発生hβARに観察されるものと殆ど同一であると言われている。
デューク大学は、ラットG-タンパク質αサブユニットを同一細胞、相同の酵母タンパク質を欠如する酵母株8C中に同時発現させた。リガンド結合はG-タンパク質で仲介されたシグナル伝達をもたらした。
デューク大学はこれらの細胞が細胞中のGβγからGαの解離率を左右する能力を求めて化合物をスクリーニングするのに利用することができることを教えている。この目的のためには、細胞は、さらにインジケータ遺伝子(例えばHIS3またはLacZ)に連結したフェロモン応答プロモーター(例えばBAR1またはFUS1)を含有する。そうした細胞をマルチタイタープレート上に置き、別の化合物を各ウエル中に置く。次にインジケータ遺伝子の発現状態につきコロニーをスコアする。
しかしデューク大学の酵母細胞はスクリーニングされる化合物を実際に産生していない。その結果、研究者たちは細胞の一定のグループが単一の既知の化合物だけと接触していることを確認しなければならないので、比較的少しの化合物しかスクリーニングできない。
酵母は、哺乳動物受容体の潜在的なアンタゴニストとしてテストされる外来のポリペプチド異型体[variants]を発現するように操作されている。変異グルカゴン分子をコードするライブラリーが、哺乳動物グルカゴンのコード配列を有するオリゴヌクレオチド合成中にヌクレオチドをランダムに誤って組み込んだときに作られた。これらのライブラリーは酵母中に発現され、形質転換された細胞から得た培養ブイヨンがラット肝細胞膜にあるグルカゴン受容体に対するアンタゴニスト活性につきテストするのに使った(Smithら、
1993年)。
ガン細胞の多種薬物抵抗性(MDR)を克服する薬物は、P糖タンパク質を発現する形質転換酵母細胞を使って同定することができる(株式会社サントリー、日本特許出願第2257873号、発明の名称「形質転換酵母の膜部分に蓄積されたP糖タンパク質を含む多種薬物抵抗性関連遺伝子」 [Multiple
drug resistance-relating gene-comprises P-glycoprotein accumulated in cell
membrane part of transformed yeast])。その薬物は問題の酵母細胞によって産生されなかった。
酵母株は、哺乳動物Rasに対する活性を示し、したがって抗腫瘍薬として機能する可能性があるタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼインヒビターを同定することを可能にすることが考え出されている(Haraら、 1993年)。
酵母株におけるマーカー遺伝子
ヒスチジン(HIS3)を栄養要求する酵母株については公知である。StruhlとHill、 Mol. Cell. Biol., 7:104 (1987); FasulloとDavis、 Mol. Cell.
Biol., 8;4370 (1988)参照。HIS3(イミダゾルグリセロールリン酸デヒドラターゼ)遺伝子が、酵母中における選択的マーカーとして使われている。SikorskiとHeiter、
Genetics, 122:19 (1989); Struhlら、 P.N.A.S. 76:1025 (1979)参照。またFUS1−HIS3融合につき
Stevensonら、 Genes Dev., 6:1293 (1992)参照。
ペプチドライブラリー
ペプチドライブラリーは、ターゲットとの相互反応を可能にする形式でペプチドの極めて多様な多数のコレクションを同時に表示するシステムである。これらペプチドは溶液(Houghten)、ビーズ(Lam)、チップ(Fodor)、バクテリア(Ladner USP 5,223,409)、胞子(Ladner
USP `409)、プラスミド(Cull)あるいはファージ(Scott, Devlin, Cwirla, Felici, Ladner `409)の形で提供される。これらシステムの多くはペプチドの最大長さとかペプチドの構成(例、Cysの排除)などによって限定されている。担体が近接しているなどの立体因子は結合にとって障害となるおそれがある。通常、スクリーニングは人為的に提供されたターゲットにインビトロで結合させるためのものであって、生きている細胞中に細胞のシグナル伝達経路を活性化したり阻害することではない。細胞表面受容体はターゲットとして使われるが、スクリーニングはペプチド結合が受容体のコンフォメーションにおけるアロステリック変化を引き起こしたかを明らかにしない。
Ladnerの米国特許第5,096,815号は、所望のDNA結合活性を有する新規のタンパク質またはポリペプチドを同定する方法について記載している。多数のさまざまな潜在的結合タンパク質をコードする半ランダム(種々様々の)DNAを発現可能な形態で適当な宿主細胞中に導入する。そのタンパク質またはポリペプチドの結合が選択可能な条件下で遺伝子にとって有害である遺伝子産物の発現を阻害するようにターゲットDNA配列が遺伝子操作されたオペロンに組み込まれる。したがって選択条件下に生き残る細胞はターゲットDNAに結合するタンパク質を発現する細胞である。酵母細胞をテストに使うことができるが、バクテリア細胞が好ましい。タンパク質とターゲットDNAとの相互反応は細胞内でのみ起こり、ペリプラズム中では起こらないのであって、ターゲットは核酸であってフェロモン系タンパク質代用物ではない。
細胞タンパク質中の機能ドメインをランダムペプチド配列で置換することは、機能の達成にとって必要な特定の配列要件を何らか決定することを可能にする。細胞内でタンパク質がどこに偏在するかに作用する認識現象の詳細については殆ど知られていないが、ミトコンドリアターゲット配列の配列変化およびタンパク質分泌シグナル配列に対する抑制は、ランダムペプチドを使って解明されている(Lemireら、 J. Biol. Chem. 264, 20206 (1989)およびKaiserら、 Science 235,
312 (1987), respectively)。
本明細書において引用された参考文献は全て引用によって明細書中に組み込んだものとする。しかし参考文献はいずれも先行技術とされるものではない。
発明の概要
本発明では、酵母細胞が酵母フェロモンの翻訳後の修飾、輸送、認識またはシグナル変換(トランスダクション)に関与する酵母タンパク質の代用たり得る外因性タンパク質を、少なくとも一定の条件下でなら酵母タンパク質の上記役割を十分に遂行することができるように発現するように操作される。便宜上、このような酵母タンパク質を「フェロモン系タンパク質」[pheromone system proteins](PSP)と呼び、それと同族の非酵母タンパク質をPSP代用物と呼ぶことにする。
酵母細胞のフェロモン系は、酵母フェロモンに対する細胞の応答が少なくとも部分的に代用PSPの活性によって決定されるように導かれる。好ましい実施例では、応答が代用PSPの活性に本質的に完全に依存性であるような同族酵母PSPは機能的形態で産生されない。
このような酵母細胞は、代用物が同族酵母PSPの代用となる能力を阻害または活性化する薬物を検出可能な程度に同定するのに使うことができる。インヒビターをスクリーニングするために通常は機能的な代用物が発現され、インヒビターの存在は細胞応答の低下によって示される。アクティベーターをスクリーニングするには、酵母中で機能的な代用物または通常は酵母中で機能的ではないが活性化され得るような代用物(バックグラウンドを最小にするために後者の方が好ましい)が使われ、アクティベーターは細胞応答の上昇によって検出される。
好ましい実施例においては、候補の薬物はペプチドで、酵母細胞は代用PSPと共に候補の薬物を発現するように操作される。
もう一つの考えは野生型酵母細胞については、フェロモン分泌および応答を達成するには、α細胞およびa細胞の両方が提供されなければならない。好ましい実施例(複数)においては、α細胞がα因子受容体を発現するように操作されるか、a細胞がa因子受容体を発現するように操作される。これら修飾された細胞は「自己刺激的」なので、「オートクリン」[autocrine]であると考えられている。フェロモン受容体の代用物およびその代用受容体の異種の[heterologous]ペプチドアゴニストの両方を発現する細胞も、同時に産生されたアゴニストに応答するので、「オートクリン」と考えられている。
PSPに属するものは無数あるが、いくつか例を示すことは有用であろう。
ファルネシルトランスフェラーゼとカルボキシメチルトランスフェラーゼ:
発現後、a因子はRAM1pおよびRAM2pによってファルネシル化され、そしてSte14pによってカルボキシメチル化される。こうした修飾は活性にとって必要である。
RAM1pおよびRAM2pはヘテロダイマーの哺乳動物のファルネシルトランスフェラーゼのサブユニットに相同で、哺乳動物Rasタンパク質の膜会合に必要なものである。もし酵母細胞が哺乳動物ファルネシルトランスフェラーゼを発現するように操作されたとすれば、機能的a因子が生成されたか否かを判定することによってその酵素と相互反応する薬物を同定するのに使うことができるであろう。同様に、Ste14pは哺乳動物カルボキシメチルトランスフェラーゼに相同で、低分子量G-タンパク質(Ras Rho,Rab)の機能を制御する調節的役割を果たす。
プロテアーゼ:
PSPは、KEX2、STE13あるいはKEX1のような酵母プロテアーゼでもよい。酵母α因子フェロモンは、これらプロテアーゼにより前駆体タンパク質を制御下で限定的にタンパク質加水分解することによって生成される。酵母細胞は、ペプチドリンカーが代用の非酵母プロテアーゼの開裂部位に対応して開裂が成熟α因子(またはその機能的相同体)を遊離するように組み込まれる酵母α因子の不活性前駆体を発現するように操作されてもよい。例えばPSP代用物は、α因子前駆体中の酵母プロテアーゼ開裂部位に代わるHIVプロテアーゼの開裂部位があるHIVプロテアーゼでもよい。前駆体とHIVプロテアーゼとが酵母細胞中に同時に発現される。HIVプロテアーゼによるタンパク質の加水分解は成熟α因子の生成およびシグナル変換の開始を起動するであろう。この系はHIVプロテアーゼのインヒビターを同定するのに使うことができる可能性がある。
好ましくは天然に発生する酵母細胞と異なり本発明の酵母細胞は、酵母の半数体の1タイプだけが分析を必要とする全てであるように、α因子前駆体を発現するだけでなく、α因子受容体を発現するように操作されるのがよい。
ABC輸送体:
Ste6はa因子の排出に必要な酵母ABC輸送体である。この酵母細胞はa因子および外来のABC輸送体の両者を発現するように操作される。この輸送体は、それ自身ではa因子を輸送することができないが、問題の薬物の存在下なら輸送できるものか、あるいは既に機能的となっているものである。
好ましくはこの酵母細胞は、a因子だけでなく、a因子受容体も発現するように操作される。
G-タンパク質の結合した受容体:
PSPは酵母フェロモン受容体でもよい。その代用物は非酵母の、G-タンパク質の結合した受容体である。フェロモンシグナル変換経路との結合を達成させるためには外来の、またはキメラのGαまたはGβγサブユニットを供給することが必要であろう。
操作された酵母細胞は、アンタゴニストもアゴニストもスクリーニングするのに使用することができる。アゴニストをスクリーニングするのに使うときは、酵母フェロモンが機能的な形で産生されないことが好ましい。
タンパク質キナーゼ:
PSPは、フェロモンに対する細胞応答に関与するFUS1,KSS1,STE11またはSTE7タンパク質のようなタンパク質キナーゼでもよい。PSP代用物は、例えば、哺乳動物のマイトジェン(分裂促進因子)で活性化されるタンパク質キナーゼである。代用タンパク質キナーゼを発現するように操作された酵母細胞は、そのアクティベーターまたはインヒビターをスクリーニングするのに使うことができる。
サイクリン:
PSPはCLN1,CLN2,あるいはCLN3のようなサイクリンでもよい。サイクリンは細胞周期を介して細胞の進行を調節する。ヒトC、D1およびEサイクリンは、機能的に酵母のCLNタンパク質の代わりになることができる。哺乳動物サイクリンのインヒビターは癌の化学療法に有用である。代用サイクリンを発現するように操作された酵母細胞は、その活性を阻害(あるいは促進)する分子を同定するのに利用することができる。
ペプチドライブラリー
他の研究者たちは酵母細胞を受容体アゴニストおよびアンタゴニストとして外来薬物のスクリーニングをしてきたが、酵母細胞は薬物と受容体の両方を産生しなかった。受容体を産生するが薬物は産生しないように操作された酵母細胞は有効でない。それらを利用するには、薬物が作用を有するか否か検知するために、各薬物を十分な濃度で多数の細胞に接触させなければならない。したがってミクロタイタープレートウエルまたは試験管が各薬物ごとに使われなければならない。薬物は前以て合成され、酵母細胞に対する作用を判定するのに十分な程に純粋でなければならない。酵母細胞が薬物を産生するときは、その有効濃度はより高いものである。
好ましい実施例では酵母細胞は、多様なペプチドがPSP代用物と相互反応する能力につき同時に分析できるように、好ましくは少なくとも107の異種のペプチドを有する「ペプチドライブラリー」を集合的に産生するものがよい。
特に好ましい実施例では、ペプチドライブラリーの少なくともいくつかのペプチドがペリプラズム中に分泌され、そこでペプチドは外因性受容体の「細胞外」結合部位と相互反応する。こうしてそれらは細胞受容体との薬物の臨床的相互反応をよりよく模倣するものとなる。この実施例は、(フェロモン分泌を必要としない分析においてなら)フェロモン分泌を阻害し、それによってペプチドとシグナルペプチダーゼのフェロモンおよびその他の分泌系構成要素との間の競合を回避させることによって、さらに改良することもできる。
シグナル変換の検出
酵母細胞はまた、酵母細胞のフェロモンシグナル変換経路が、より容易に疑われている薬物の活性に関し検出できる証拠を提供するように操作することができる。この種の実施例においては、薬物は同じ酵母細胞から産生されるペプチドである必要はなく、全然ペプチドでなくともよい。
既述のように、野生型酵母におけるフェロモンシグナル経路の活性化順序の1段階は生育停止である。G-タンパク質結合受容体あるいはその他のフェロモン系タンパク質のアンタゴニストにつき試験するときは、この生育停止という正常応答を、フェロモン応答経路の阻害されている細胞を選ぶのに利用することができる。つまり既知のアゴニストと活性が未知のペプチドとの双方にさらされた細胞は、ペプチドが中性であるかアゴニストであるときは生育停止されるが、ペプチドがアンタゴニストのときは成長は正常に続けられるからである。こうして生育停止応答はアンタゴニストとして機能するペプチドを発見するのに利用することができる。
しかしG-タンパク質結合受容体またはその他のフェロモン系タンパク質のアゴニストとして機能することができるペプチドを探すときは、フェロモン応答経路の活性化後の生育停止は次の理由から好ましくない効果である。すなわちペプチドアゴニストに結合する細胞は成長を停止するが、ペプチドに結合しなかった周囲の細胞は成長し続ける。すると問題の細胞は成長し過ぎてしまうか、それらの検出が周囲の細胞によって曖昧にされてしまい、問題の細胞の同定を不明確にしてしまう。そこでこうした問題を解消するため本発明は細胞を次のように操作することにつき開示している。すなわち、1)生育停止はフェロモンシグナル経路の活性化の結果として生じない(例、FAR1遺伝子を不活性化することにより)、2)選択的な成長上の利点が経路を活性化することによって付与される(例、フェロモン応答プロモーターで制御しながら選択的条件を整えつつ栄養要求変異株をHIS3遺伝子で形質転換することによって)。
勿論、外因性受容体(またはその他のPSP代用物)が本質的に継続的にペプチドにさらされることが望ましい。残念なことにこれはフェロモン経路の刺激に対する脱感作[desensitization]をもたらすおそれがある。脱感作は、機能タンパク質をもはや産生しないようにSST2遺伝子を突然変異(欠失も含む)させることによって、あるいは脱感作に関与するその他の遺伝子、例えばa細胞の場合はBAR1、a細胞またはα細胞のいずれかの場合もSVG1のような遺伝子を突然変異させることによって、回避することができる。
内因性のフェロモン受容体(またはその他の同族PSP)が酵母細胞によって産生されるとしたら、分析は、フェロモン受容体と相互反応するペプチド(またはその他の同族PSP)と外因性受容体(またはその他のPSP代用物)と相互反応するペプチドとを識別することできなくなる。したがって内因性遺伝子は欠失されるか、その他何らかの方法で無機能的にされていることが望ましい。
特許請求の範囲の記載は、好ましい実施例の記載としてここに言及することで明細書に組み込む。
第1図は、酵母のオートクリンシステムの発展における連続的な段階を示す概略図である。
交配フェロモンの正常の合成および放出の概略は第1図に示される。2個の遺伝子MFα1およびMFα2が、成熟α因子を代表するトリデカペプチドの各々4個および2個のリピートを有する前駆体タンパク質(MFα1pおよびMFα2p)をコードしている。これら前駆体は小胞体(ER)中のシグナル配列を開裂することで開始され、リーダーペプチドのグリコシル化ならびにプロテアーゼKEX2p,STE13p,KEX1pによる開裂の両者を伴う一連の酵素反応によってタンパク質分解処理される。その結果、成熟α因子の分泌があり、これらα因子はa細胞の表面に正常に発現するSTE2pに結合すると同時に、a細胞中に生育停止などの多数の変化を誘起する。するとa細胞はa因子の前駆体(MFa1pおよびMFa2p)をコードする2個の遺伝子MFα1およびMFα2を発現する。これらの前駆体は、RAM1およびRAM2によるファルネシル化、(一応RAM3pと同定されたタンパク質による)3個のC末端アミノ酸のタンパク質分解トリミング、STE14pによる新たに露出したC末端システインのカルボキシメチル化、および一応STE19pと同定された活性によるN末端リーダー配列のタンパク質内部分解除去[endoproteolytic
removal]を経由する。成熟a因子がSTE6p経由で細胞から排出されると、α細胞の表面に発現したSTE3pに結合し、それらの成長を阻止する。
第1段階(第1図の1)はSST2,FAR1およびHIS3が不活性化されている酵母株の発育に係り、fus1::HIS3のような適当なリポーター構造物がα細胞およびa細胞双方のゲノムに組み込まれる。α細胞は正常に発現したSTE3pをSTE2pで置換することによって改変され、a細胞は正常に発現されたSTE2pをSTE3pで置換することによって修飾される。その結果できた株は外因性フェロモン非存在下でヒスチジンが不足している培地に成長する。
第2段階(第1図の2)は、まず細胞中でMFα1およびMFα2の不活性化、そして第1段階で生長したa細胞中のMFa1およびMFa2の不活性化に係る。こうした修飾はヒスチジンに対して栄養要求性の株をもたらす。次に、適当な発現プラスミドが導入される。α因子をコードするオリゴヌクレオチドを含む発現プラスミドpADC−MF(第4図参照)は、α細胞に、ヒスチジンが不足している培地で成長する能力を付与する。a因子をコードするオリゴヌクレオチドを含むこの発現プラスミドpADC-MFa(第6図参照)はa細胞に、ヒスチジンが不足している培地で成長する能力を付与する。
第3段階(第1図の3)は、発現プラスミドを挿入するのに第2段階で生長した細胞を使う。しかし真のフェロモンをコードするオリゴヌクレオチドを有するプラスミドを使わないで、ランダムまたはセミランダムのオリゴヌクレオチドを含有する発現プラスミドで酵母が形質転換される。ヒスチジンが不足する培地に成長することができる形質転換細胞は広がっていき、それらのプラスミドは挿入されたオリゴヌクレオチドの配列を決定するために単離される。
第2図はMFα1の突然変異誘発に使われるプラスミドの概念図である。MFα1を有する1.8 kb EcoRIフラグメントが、MFα1のマイナス鎖を有する1本鎖DNAを合成するようにpALTERのEcoRI部位にクローニングされる。図はプロモーター、転写ターミネーター、および前駆体タンパク質のさまざまなドメイン、即ちシグナルペプチド、プロペプチド、成熟α因子の4つのリピート、およびこれらリピートを分離する3つのスペーサー、を有するMFα1のさまざまな領域を表している。MFα1領域のブロック図の上側にはシグナルペプチドとプロペプチドのアミノ酸配列、図の下側にはフェロモンリピートとスペーサーのアミノ酸配列を示している。前駆体タンパク質のタンパク質分解プロセッシング部位は矢印で示され、各タンパク質分解活性は異種の矢印で表されている。
第3図はMFα発現カセットの構築に使われるプラスミドの概念図である。pAAH5はMFα発現カセット中に挿入される合成オリゴヌクレオチドの発現を引き出すのに使われるADC1プロモーターを有する。ADC1プロモーターを有するBamHIからHindIIIへの1.5 kb フラグメントが、酵母中のハイコピーなエピソームとして機能するプラスミドであるpRS426にクローニングされ、pRS−ADCを産生する。pRS−ADCは次のようにして突然変異させられたMFα1配列の受容体となる。即ち、成熟α因子をコードするMFα1の領域が、AflIIおよびBglII末端を有するオリゴヌクレオチドを受容することができる制限部位と交換される。AflIIおよびBglII末端を有するオリゴヌクレオチドの挿入は、オリゴヌクレオチドによってコードされた配列の上流のMFα1シグナル配列とリーダー配列とを有するタンパク質をコードするプラスミドを生成する。MFα1シグナル配列とリーダー配列は、成熟α因子の分泌に正常時に使われる経路を介してこの前駆体タンパク質のプロセッシングを指示する。
第4図はMFα1中にランダムオリゴヌクレオチドを発現させるのに使われる構造体の概念図である。39個のランダム塩基対(図の最上段に示される)領域があるオリゴヌクレオチドがMFα1発現カセットのAflIIおよびBglII部位にクローニングされる。これらのオリゴヌクレオチドはランダム配列のトリデカペプチドと終結コドンが後に連続する、MFα1中のα因子の最初のリピートのすぐ次のN末端の6個のアミノ酸をコードする。これらの構造体で形質転換されウラシルが欠損する培地に成長する能力をもつものとして選択された酵母が、13個のランダムアミノ酸が続くMFα1リーダー(プリとプロの両方のペプチド)からなるタンパク質を発現するためADC1プロモーターを使う。リーダー配列のプロセッシングによりトリデカペプチドの分泌をもたらす。
第5図はMFα1の突然変異誘発に使われるプラスミドの概念図である。MFα1を有するBamHIの1.6 kbフラグメントが、MFα1のマイナス鎖を有する1本鎖DNAを合成することができるように、pALTERのBamHI部位にクローニングされる。図はプロモーター、転写ターミネーター、および前駆体タンパク質のさまざまなドメイン、即ち、リーダーペプチドと、成熟a因子のペプチド成分を表し、そのC末端のシステインがプロセッシング中にファルネシル化されカルボキシメチル化されるドデカペプチドと、そして前駆体のプロセッシング過程で除去される3個のC末端アミノ酸、を有するMFa1のさまざまな領域を示す。MFα1の領域のブロック図の上段は第1次翻訳産物のアミノ酸配列である。
第6図はMFa1中にランダムオリゴヌクレオチドを発現させるために使われる構造体の概念図である。33個のランダム塩基対(図の最上段に示される)領域があるオリゴヌクレオチドが、MFa1発現カセットのXhoIおよびAflII部位にクローニングされる。これらのオリゴヌクレオチドはランダム配列のモノデカペプチドと、前駆体のプロセッシング中にファルネシル化されカルボキシメチル化されるシステインと、プロセッシング中にタンパク質分解で除去される3個のアミノ酸(VIA)と、終結コドンとが後に連続する、成熟a因子の最初のアミノ酸のすぐ次のN末端の7個のアミノ酸をコードする。これらの構造体で形質転換され、ウラシルの欠損する培地に成長する能力によって選択された酵母は、11個のランダムアミノ酸とC末端テトラペプチドCVIAが続くMFa1リーダーからなる前駆体タンパク質を発現するADC1プロモーターを使う。この前駆体をプロセッシングするとC末端がファルネシル化されカルボキシメチル化された、11個のランダムアミノ酸と1個のC末端システインからなるドデカペプチドの分泌をもたらす。
第7図。オートクリンMata株は分泌し、α因子によるシグナル発信に応答する。
酵母のα因子フェロモンをコードする合成オリゴヌクレオチドが、Mata細胞中に発現された。これらの細胞は正常時はa因子フェロモンを発現するのであるが、内因性a因子コード遺伝子が切除されてこの発現が阻止された。これらの細胞によるα因子の発現と放出はフェロモンシグナルの発信に関して、それらに「オートクリン」を付与する。成熟α因子を有するペプチドが酵母の分泌経路経由で細胞外環境に輸送するため、これらの細胞中でプロセッシングを受けた。フェロモンシグナル発信はα因子がMata細胞中に発現されたSte2受容体に結合することによって開始された。これらの実験に使用された株を背景にフェロモンによるシグナル発信をすることは、ヒスチジンを欠く培地で応答細胞を成長させることになる。α因子を発現しない対照細胞のバックグラウンドの成長はHIS3インヒビター、アミノトリアゾールの濃度を高めることによって防止される。
第8図。オートクリンMATa株が分泌し、a因子でシグナル発信に応答する。
Mata細胞中の合成フェロモンをコードするオリゴヌクレオチドを含有するプラスミドから酵母a因子が発現された。これらの実験に使われたこの酵母は正常時に発現されるSte2タンパク質をa因子Ste3の受容体と交換することによって「オートクリン」された。これらの細胞中でa因子ペプチドをプロセッシングを受け、内因性Ste6タンパク質のATP依存性トランスメンブラン輸送体によって細胞外環境に輸送された。Ste3に結合したときにこれらの細胞によって放出されたa因子により開始されるフェロモンのシグナル発信は、ヒスチジンを欠く培地における細胞の成長によって示される。a因子を発現することができない対照細胞のバックグラウンドの成長(これらのα細胞はフェロモンをコードするプラスミドを欠いている)は、HIS3インヒビターのアミノトリアゾール濃度を高めることによって防止される。
第9図は、突然変異体ヒトMDR1(G185V突然変異)を有するプラスミドpYMA177を示す。
プラスミドpYMA177はKarl
Kuchlerにより構築されたもので、突然変異体ヒトMdr1タンパク質と酵母a因子フェロモン前駆体の両方を同時に過発現することができる(KuchlerとThorner、
Proc. Natil. Acad. Sci. 89, 2302 (1992)。
本発明は遺伝子操作された酵母細胞中に発現されたペプチド、特にペプチドライブラリー中にあるものを、フェロモン系タンパク質およびこれら酵母細胞によって産生されたPSP代用物と相互反応するペプチドの能力如何にかかる分析に関する。
本発明の目的のためには、「外因性」タンパク質を、アミノ酸配列が問題の酵母細胞によって天然に産生されたタンパク質とは十分に相違するものとしてその最も近い同族体を酵母細胞以外の細胞で産生されたタンパク質とする。このような同族体タンパク質を産生する細胞としては、微生物細胞(酵母細胞以外の)、植物細胞、または動物細胞がある。動物細胞の場合は、無脊椎動物(例、コンチュウまたはセンチュウ)または脊椎動物(例、トリ、サカナ、哺乳動物、特にヒト)由来のものとなる。タンパク質は例えば、正常ヒトのクロモソームによってコードされているか、ヒト細胞中に感染し複製するウイルスのゲノムによってコードされているかにかかわらず、ヒト由来のものと考えられる。
フェロモン系タンパク質代用物の「アクティベーター」は、適切な酵母細胞中においてフェロモン系タンパク質代用物をより活性化させ、それによって該細胞の生または修飾されたフェロモンシグナル経路を介して形質導入されたシグナルを検出可能な程度にまで上昇させる物質である。この代用物は最初は非機能的だが、アクティベーターの作用の結果機能的になるものか、または最初から機能的だが、アクティベーター効果でその活性が高められるものである。アクティベーターの作用のモードは、例えば代用物に結合するなど、直接的であっても、あるいは例えば代用物と相互反応する別の分子に結合するなど、間接的なものでもよい。PSP代用物がフェロモン受容体の代替をし、アクティベーターがフェロモンの役割を担当するときは、アクティベーターをその受容体のアゴニストと呼ぶのが慣例である。
逆に、フェロモン系タンパク質代用物の「インヒビター」は、適切な酵母細胞中において、PSP代用物をより不活性化させ、それによって形質導入シグナルを検出可能な程度にまで減少させる物質である。この減少作用は全体的であっても部分的であってもよい。PSP代用物がフェロモン受容体の代替であって、インヒビターが受容体との結合をフェロモンと競い合うときは、このインヒビターを「アンタゴニスト」と呼ぶのが慣例である。
「モジュレーター」とは「アクティベーター」と「インヒビター」の双方を含む概念である。
代用PSPタンパク質は、それ単独でも薬物で修飾された後でも、酵母PSPの機能または操作された酵母細胞内で類似の機能を果たすことができるならば、酵母細胞に「機能的に相同」である。代用PSPタンパク質は酵母細胞と同様な有効性があることは必要でないが、酵母タンパク質のフェロモン系関連活性中の少なくとも一つが、その少なくとも10%の有効性をもっているのが望ましい。
また、代用PSPタンパク質は酵母タンパク質と同じ作用スペクトルをもっていることは必要でない。例えばそれが受容体である場合、内因性受容体がするのと完全に異なるリガンドに応答するか、何らか共通のリガンドおよび新しいリガンドに応答するだろう。
表2の受容体は、G-タンパク質結合受容体ではあるがたとえ酵母フェロモンに応答せず、未修飾の内因性G-タンパク質に結合しないかもしれないとしても、酵母フェロモン受容体と機能的に相同であると考えられる。これは「類似機能」と考えられる。




PSP代用物は機能的になるように薬物で何らかの方法で修飾されなければならないタンパク質であってもよい。例えばその薬物はPSP代用物のコンフォメーションにアロステリック変化を引き起こすことができるか、代用物の一部分を切除することができ、そのタンパク質の残り[balance]は機能的分子になる。
PSP代用物は酵母細胞中に別の修飾、例えば外因性G-タンパク質結合受容体と相互反応するキメラGαサブユニットの発現、がなされて初めて機能的になるものでもよい。
アミノ酸配列に関して「実質的に相同」と言われるときは、配列上実質的に同一または類似でありコンフォメーションに相同性を起こし、類似の生物学的挙動を起こす配列を指す。この用語は配列の共通な進化を示唆するものではない。
「実質的に相同」な配列とは、所望の活性に関与するものとして知られている領域において、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、配列が同一であることを典型的には指す。最も好ましくは、末端のもの以外の残基5個より多くが異ならないものを言う。好ましくは配列上の多様性は、少なくとも上記領域においては「保存的修飾」というべきものであるのがよい。ここで「保存的修飾」とは次のように定義される。即ち(a) 以下に定義されるようなアミノ酸の保存的な置換、(b) 末端、ドメイン境界間、比較的高い移動度のループその他のセグメントにおけるアミノ酸の1箇所または複数箇所の挿入または切除。末端を除いて、好ましくは約5個を越えないアミノ酸が特定の座に挿入または切除されるのがよく、この修飾は活性にとって重要な結合部位を含んでいると知られている領域以外についてのものがよい。
保存的置換とは次の5群中の1群中で交換することを言う。即ち、
1.小さな脂肪族の、無極性または微極性の残基:
Ala,Ser,Thr (Pro,Gly)
2.極性、負電荷の残基:およびそれらのアミド
Asp,Asn,Glu,Gln
3.極性、正電荷の残基:
His,Arg,Lys
4.大きい脂肪族の、無極性残基:
Met,Leu,Ile,Val (Cys)
5.大きい芳香族の残基:
Phe,Tyr,Trp
残基Pro,Gly,Cysは括弧で括られているが、これはそれらが特別なコンフォメーション上の役割を担っているからである。Cysはジスルフィド結合の形成に関与する。Glyは鎖に柔軟性を与える。Proは鎖に剛性を与え、αヘリックスを阻害する。これらの残基はポリペプチドの一定の領域においては必須であるかもしれないが、それ以外の領域なら交換可能である。
2個の調節DNA配列(例、プロモーター)は、ヌクレオチド配列において相当部分が同一である結果、同様な調節的効果をもっているなら、「実質的に相同」である。典型的には「実質的に相同」な配列とは、少なくとも所望の調節作用に関与するとして知られている領域において、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%が同一なものを言う。
本書において「オートクリン細胞」とは、その細胞のフェロモン系経路を刺激することができる物質を産生する細胞を言う。野生型αならびにa細胞はオートクリンではない。しかしα因子およびα因子受容体の両方、またはa因子およびa因子受容体の両方を機能的な形で産生する酵母細胞はオートクリンである。さらに、フェロモン系経路を活性化する(例えばG-タンパク質結合受容体を活性化することによって)能力につきスクリーニングされるペプチドを産生する酵母細胞は、「オートクリン細胞」と呼ばれる。尤もそれらは「想定上のオートクリン細胞」と呼んだ方がより正確であるが。勿論、多数の異なるペプチドが産生される細胞ライブラリーにおいては、細胞の1個または2個以上が厳格な意味での「オートクリン」である可能性もある。
ファルネシルトランスフェラーゼ
酵母a因子の活性はそのファルネシル化(Ram1pとRam2pからなるタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼによって仲介される)、第1次翻訳産物のC末端の3個のアミノ酸のタンパク質分解開裂(現在未明の酵素によって仲介されて)およびC末端システインのカルボキシメチル化(Ste14pにより仲介)を必要とする。酵母と哺乳動物ファルネシルトランスフェラーゼは構造的また機能的に類似している(Gomez
Rら、 Biochem. J. 289:25-31, 1993; Kohl NEら、 J. Biol. Chem. 266:18884-8, 1991)。配列相同性が酵母ファルネシルトランスフェラーゼ(各々、RAM2,RAM1)のαサブユニット、βサブユニットをコードする遺伝子と、哺乳動物のファルネシルトランスフェラーゼのαサブユニット、βサブユニットをコードする遺伝子との間に存在する(Kohl
NEら、 J. Biol. Chem. 266:18884-8, 19991; Chen WJら、 Cell 66:327-34, 1991)。哺乳動物ファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニットとRam1pはアミノ酸配列が37%同一であることが観察されている(Chen
WJら、 Cell 66:327-34, 1991)。
ファルネシルトランスフェラーゼのインヒビターをスクリーニングすることの重要性は、さまざまな癌に関与している哺乳動物細胞の成長と分化[differentiation]に係る卓越したレギュレーターである哺乳動物p21rasが、ファルネシルトランスフェラーゼの代替物であって、p21rasのファルネシル化がその活性にとって必要であるという事実により示唆される。事実、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの合成オーガニックインヒビターはras依存性細胞の形質転換を選択的に阻害することが確かめられている(Kohlら、
Science 260, 1934 (1993)。ファルネシルトランスフェラーゼの2つのサブユニットのうちβサブユニットは、ファルネシル化を促進することが明確に分かっているので、インヒビターにとって一層魅力的なターゲットである。これと対蹠的にαサブユニットは、Rho/RacファミリーのヘテロトリメリックG-タンパク質と小分子量G-タンパク質とのGγサブユニットの修飾に関与する酵素であるゲラニルゲラニルトランスフェラーゼIと共有されている。βサブユニットはファルネシル化に貢献するが、哺乳動物ファルネシルトランスフェラーゼはp21rasのほかにもさまざまな代替物を有している。これら他の代替物、例えばラミンタンパク質、トランスデューシンγ[transducin-γ]、ロドプシンキナーゼのファルネシル化に対するβサブユニットのインヒビター効果は、潜在的なファルネシルトランスフェラーゼインヒビターの設計法および使用法に関して考察される。
相同な哺乳動物遺伝子が酵母Ram1pを機能的に代替するということは未だ確認されていないが、これはram1突然変異体およびファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニットをコードする哺乳動物遺伝子を発現するベクターとを使って公式にテストすることができる。もし哺乳動物βサブユニットがRam1pの代わりに機能することができるなら、試験細胞は(Rasのファルネシル化の結果)生育可能で、かつ、(a因子のファルネシル化の結果)交配に適格なものであろう。
ファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニットをコードする哺乳動物遺伝子がram1を相補する[complement]のであれば、酵母は哺乳動物ファルネシルトランスフェラーゼの潜在的インヒビターを発見するテスト系を提供するものになろう。特にMATa酵母のテスター細胞は次のことを行うことができる。即ち、(1)
RAM1の代わりに哺乳動物ファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニットのために遺伝子を運ぶ、(2) cAMPの存在下で、菌株にRas機能の喪失に対する抵抗性を与えるcam突然変異を行う、(3)
Ste3pの異種発現によってそれらが排出するa因子に応答する、(4) それらがガラクトース含有培地で成長できないようにオートクリンa因子に応答する。後者の特徴は、フェロモン応答プロモーターの制御下でのGAL1の発現、および突然変異されたGAL7またはGAL10遺伝子を含むように操作された細胞を要求する。GAL1の発現は、GAL7またはGAL10遺伝子のいずれかにおける突然変異を含む株にガラクトースが存在するとき有毒である。フェロモン応答経路経由でのシグナル発信は、細胞をそのように操作されたガラクトース感受性にする。ファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニットを阻害する化合物に上記株をさらすことは、これらの細胞にガラクトースおよびcAMP含有の培地に成長する能力をそれら細胞に付与するであろう。
ファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニットをコードする哺乳動物遺伝子(およびその遺伝子の修飾体すべて)がram1を相補することができないときは、野生型Ram1pを哺乳動物ファルネシルトランスフェラーゼの潜在的エフェクターの代用ターゲットとして使うことができる。具体的には(1) cAMPの存在下にRAS機能の喪失に抵抗性の株を作るcam突然変異を行う、(2) Ste3pの異種発現のためにそれらが排出するa因子に応答する、(3)
それらがガラクトース含有培地に成長することができないようにオートクリンa因子に応答する。ファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニットを阻害する化合物にこのような株をさらすと、ガラクトースおよびcAMP含有培地に成長する能力をそれらの細胞に付与する。
上記のような戦略では、ファルネシルトランスフェラーゼのインヒビターを、例えばSte4−Ste18複合体のエフェクターによる相互反応を阻害することによってa因子に対するネガティブ応答を直接にブロックするか、あるいはファルネシルトランスフェラーゼに関与しないメカニズムによってa因子の産生をブロックする化合物から識別することが好ましい。対照はそのような虚偽の陽性[positive]を同定する。候補となる試薬を、α因子を分泌し分泌されたa因子に応答するように操作されたMATa株でテストするが、それは上述したようなネガティブセレクション(陰性選択)スキーム中でガラクトース含有培地に成長することができないことによって知ることができる。こうした株は野生型Ram1pを発現する。これらの細胞をガラクトースおよびcAMP含有培地に成長させることができる試薬はどんなものでもファルネシルトランスフェラーゼのインヒビターとして作用することはないだろう。
上記のテストを経た候補化合物は、ファルネシルトランスフェラーゼではなく、Ste14p,Ste6pその他のa因子の成熟および排出に関与するタンパク質をターゲットすることによって作用することができる。(しかし細胞の生存に影響するプロセスを阻害する化合物は虚偽のポジティブを起こさないであろうということに注意されたい。例えば、a因子前駆体のC末端トリペプチドの内部タンパク質分解的[endoproteolytic]切除に関与するプロテアーゼはタンパク質のGgおよびRho/Racファミリーのメンバーのプロセスに関与する可能性が高いので、この酵素のインヒビターはテスター細胞の成長を許さないことがある)。a因子の産生に関与するタンパク質の中でファルネシルトランスフェラーゼだけがRAS機能の主要な決定因子でもある。この効果があるため、ram1突然変異体は30℃で成長するのに不完全で37℃では全く成長不能である(He
Bら、 Proc Natl Acad Sci 88:11373-7, 1991)。テスター細胞(上記の)はガラクトース含有培地±cAMP上に候補インヒビターの存在下で成長することができる。テスト化合物がファルネシルトランスフェラーゼを阻害するのであれば、ガラクトース±cAMP上に成長可能であるがcAMP非存在下でのガラクトース上には成長不能である。この差は37℃のときに最も顕著であろう。逆にテスト化合物がa因子産生に関与するその他のタンパク質を阻害するのであれば、細胞はcAMPの存否に拘わらずにガラクトース含有培地に成長するであろう。
上記テストを経た化合物はファルネシルトランスフェラーゼのインヒビターである可能性がある。これは確認することができ、インヒビターの有効性は直接インビボ酵素アッセイで判定することができる。上述の戦略はRam1pに影響するファルネシルトランスフェラーゼインヒビターを同定するものであることに注意されたい。Ram2pをブロックする試薬はあらゆる条件下で成長することができない可能性がある。実際ram2空白null突然変異は、おそらくはRam2pがゲラニルゲラナルトランスフェラーゼIの成分としても機能するものであるという理由から、致死的である(He
Bら、 Proc Natl Acad Sci 88:11373-7, 1991)。
カルボキシメチルトランスフェラーゼ
酵母において、a因子、Rasタンパク質、およびたぶんRho/Racタンパク質のC末端アミノ酸のメチル化はSte14pによって触媒される。MATa ste14突然変異体はa因子の活性のためのカルボキシメチル化の必要性を反映して交配することできないが、ste14の分裂は致死的でなく、細胞の増殖率に影響しない。カルボキシメチル化はRasタンパク質とSte18p(Gγサブユニットの酵母の相同体)の機能がなくても済ませられるようである。酵母中のRas機能はカルボキシメチル修飾がなくても耐えることができるように見えるが、それでも哺乳動物メチルトランスフェラーゼのインヒビターが哺乳動物p21rasの活性を変えることができる可能性はある。
酵母ste14突然変異が相同の哺乳動物遺伝子またはその修飾された変種によって相補されることができるか否か決定することができるであろう。遺伝子型としてはSte14である酵母中にメチルトランスフェラーゼをコードする哺乳動物遺伝子を発現するエピソームのベクターを使うことができる。この株は正常のa因子受容体の代わりにa因子受容体を発現する修飾されたMATa株で、その細胞によって分泌されるa因子はヒスチジンを欠く培地にオートクリン成長をするように組み込まれたfus1−HIS3構造体を有している。哺乳動物メチルトランスフェラーゼがSte14pに代って機能することができるなら、そのテスター細胞を交配することができるであろう。すなわち、哺乳動物メチルトランスフェラーゼはste14突然変異体中に活性a因子を合成することを可能にするであろう。
もしメチルトランスフェラーゼをコードする哺乳動物遺伝子がste14を相補するなら、テスター株は哺乳動物メチルトランスフェラーゼの潜在的インヒビターをテストするために行うことができる。1実施例ではテスターMATa酵母株は、(1) STE14の代わりに哺乳動物カルボキシメチルトランスフェラーゼ遺伝子を有している、(2) Ste3pの異種的発現のためにそれらが排出するa因子に応答する、(3)
上記のネガティブGAL1選択スキームにおけるようにガラクトースを含む培地にそれらが成長できないようにオートクリンa因子に応答する。このような株がメチルトランスフェラーゼ阻害化合物にさらされていることは、それらの細胞にガラクトースを含む培地に成長する能力を付与することになる。
カルボキシメチルトランスフェラーゼ活性のインヒビターを、例えばSte4−Ste18複合体とそのエフェクターとの相互反応を阻害することによってa因子に対するネガティブ応答を直接にブロックするか、あるいはメチルトランスフェラーゼに関与しないメカニズムによってa因子の産生をブロックする化合物から識別することが好ましい。つぎの対照による実験はそのような虚偽のポジティブを同定する。候補となるインヒビターを、ガラクトースを含む培地に成長することができないことを見ることで、a因子を分泌しその分泌されたa因子に応答するように操作されたMATa株でテストする。ガラクトース含有培地でこれらの細胞を成長させることができる試薬はカルボキシメチルトランスフェラーゼのインヒビターとして挙動することはないであろう。上記のテストを経た候補の化合物はa因子の成熟化および輸送に関与するカルボキシメチルトランスフェラーゼ、ファルネシルトランスフェラーゼ、Ste6p、その他のタンパク質をターゲットするであろう。この化合物のターゲットを識別するためには、インビトロ生化学とインビボ遺伝子分析の組合せを適用することができよう。というのはカルボキシメチルトランスフェラーゼとファルネシルトランスフェラーゼは共に候補試薬の効果をテストするのにインビトロで分析できるからである。さらに、もしターゲットがSte14pであるなら、ハイコピープラスミドにおけるそれの過度発現は、インビボでその化合物の効果に抵抗性を付与するであろう。
プロテアーゼ
成熟酵母α因子は、成熟哺乳動物メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)またはカルシトニンが前駆体ポリタンパク質から由来するのと殆ど同じ様にポリタンパク質前駆体から由来する13アミノ酸ペプチドである。酵母ゲノム中の2個の遺伝子がプレプロ-α-因子、MFα1およびMFα2をコードする。MFα1は次の構造のポリペプチド中に埋め込まれた成熟α因子の4つのコピーを含む前駆体ポリペプチドをコードする。すなわち疎水性プレ配列/親水性プロ配列/α因子/α因子/α因子/α因子である。MFα2は成熟α因子のコピーを2個しか含まない同様な構造のポリタンパク質前駆体をコードする。
プレ-プロ-α-因子は細胞質中で合成されてから、その細胞質から小胞体に輸送され、そしてS.
cerevisiaeの古典的分泌経路を経てゴルジに輸送される。プレプロ-α-因子のシグナル配列はシグナルペプチダーゼによるERへの移動中に切断され、アスパラギンと結合したオリゴ糖が加えられ(ER中で)、分泌経路を移動するときに前駆体のプロセグメント上に(ゴルジ中で)修飾される。ゴルジに到着すると、タンパク質分解の3つの歴然としたプロセスが起こる。第1に、Kex2プロテアーゼが各α因子リピートのアミノ末端近くの二塩基残基(−KR−)で切断する。Kex2は哺乳動物細胞におけるフェロモンプロセシングに関与するズブチリシン様のエンドプロテアーゼPC2及びPC1/PC3に相同である(SmeekensとSteiner、
1990年; Nakayamaら、 1991年)。その他の哺乳動物Kex2様プロセシングをするエンドプロテアーゼとしては、ヒト肝細胞ガン[hepatoma]から単離されるPACE、睾丸性生殖細胞中に発現されるPC4、消化管ペプチドのプロセシングのための候補プロテアーゼのPC6がある(Barrら、
1991年; Nakaykamaら、 1992年; Nakagawaら、 1993年)。Kex2様タンパク質は哺乳動物細胞内の組織特異性エンドプロテアーゼの大きなファミリーをなすものと考えられる。
Kex2が未成熟α因子ペプチドを放出し終わると、2種の別のプロテアーゼが作用してプロセシングを完結する。Kex1は、Kex2による切断後に残ったカルボキシ−末端−KRを切除する特異性カルボキシペプチダーゼである。その哺乳動物の対応するカルボキシペプチダーゼBとEのように、Kex1はカルボキシ−末端の塩基性残基を有するペプチド基質にきわめて特異的である。生ずる最終的なタンパク質分解プロセシングは、各α因子ペプチドのアミノ末端におけるシングペーサージペプチドの切除である。これはSTE13遺伝子の生成物、ジペプチジルアミノペプチダーゼAによって完成される。この酵素はIV型ジペプチジルアミノペプチダーゼで、インビトロで−x−A−または−x−p−部位のいずれか一方のカルボキシル側を開裂することができる。
その他のIV型ジペプチジルアミノペプチダーゼは動物細胞中のさまざまなプレペプチドのプロセシングにおいて活性であると考えられている(Kreil
1990)。また、酵母Kex1とKex2ならびにそれらの哺乳動物対応物間には、天然[native]酵素を欠く哺乳動物細胞中に発現するときは、両方の酵母酵素はタンパク質分解により内因性前駆体を開裂するという点で機能的に類似していると考えられることが証明されている(Thomasら、
1988年、 1990年)。それなら酵母プロテアーゼKex1、Kex2およびSte13pの哺乳動物同族体が酵母中に発現するとき、それらは適当な開裂部位のある合成α因子フェロモン前駆体をプロセシングするように機能する可能性があるように考えられる。酵母中でそのように機能すると考えられるヒトプロテアーゼにはPC2およびPC1/PC3(その他のKex2同族体),カルボキシペプチダーゼBおよびE(Kex1同族体)、そしてIV型ジペプチジルアミノペプチダーゼ(Ste13p同族体)がある。
酵母は合成α因子をプロセシングすることができるプロテアーゼのインヒビターを発見するための安易な分析系を提供する。酵母は潜在的インヒビターおよび外因性プロテアーゼの双方を発現するように操作することができるし、好ましくは後者の酵母同族体を発現しないように操作することもできる。
さらにプロテアーゼインヒビターを同定する酵母フェロモンプロセシングを利用するこの手段は、適当な開裂認識部位が合成α因子前駆体中にあるならば、酵母中で機能するように発現することができるプロテアーゼを包含するように拡張することもできる。この後者のアプローチにおいては、新規のタンパク質分解作用が酵母に加わり、これらの酵素はα因子成熟経路中でプロテアーゼの代わりになるのであって、Kex1、Kex2またはSte13pの「触媒同族体」になるのではない。成熟α因子の生成は選択された酵母酵素を認識する部位を合成MFα遺伝子から切除し、その新規なプロテアーゼを認識する配列を挿入することによって新規なプロテアーゼの活性に依存することができるようになる。
こうした戦略を介してインヒビターを同定することができる酵素には、例えば、HIV−1プロテアーゼその他の伝染性パーティクルの成熟に関与するウイルシングでコードされるプロテアーゼ、肺疾患[pulmonary disease]および炎症性腸疾患に関与すると信じられている好中球エラシングターゼ、トロンビン作用障害および血液凝固障害に関係するXa因子、およびジペプチジルペプチダーゼIVでCD4+細胞のHIV−1の推定上の第2受容体であるCD26がある。また、腫瘍細胞による組織侵潤や転移に関与する金属プロテアーゼ(例、コラゲナーゼ)およびセリンプロテアーゼは適切な治療ターゲットである。これを支持するものとして、金属プロテアーゼの組織由来インヒビターの投与は動物モデルにおいて転移を減少させる結果をもたらした(Schultzら、
1988年)。コラゲナーゼもまた慢性関節リウマチのような炎症性プロセシングを伴う結合組織の破壊に関係している。
本発明をプロホルモンコンバーターゼ[prohormone
convertase]PC1の調節因子を求めてスクリーニングする利用法については第8図に記載してある。
外因性ABC輸送体
細胞外環境に輸送されるべく運命づけられている大半のタンパク質は、細胞質における翻訳開始、小胞体の管腔への輸送、ゴルジを介しての分泌小胞への通過、その後の細胞からの排出という分泌経路を経る。その他のタンパク質は、「ABC輸送体」による媒介を含む別のメカニズムによって細胞を離れる。ABC輸送体は進化論的に保存されたタンパク質のファミリーを形成し、同じような全体的構造をなし、細胞膜を通して大や小の分子の輸送に関与する(Higgins 1992年)。このタンパク質ファミリーのメンバーの特徴的成分はATPに結合するよく保存された配列である(Higginsら、
1986年、 Hydeら、 1990年)。これらの内在膜タンパク質は、そのヌクレオチドの加水分解からエネルギーを得て分子を輸送するATPアーゼである。このファミリーは、アミノ酸、糖、オリゴ糖、イオン、重金属、ペプチドの輸送体である50以上の原核および真核のタンパク質、またはこのスーパーファミリー[superfamily]に属する他のタンパク質を含む。代表的なトランシングメンブラン輸送体は表1(1−1,1−2,1−3)に示してある。典型的にはABC輸送体がATP加水分解のエネルギーを使って濃度勾配により細胞膜を通して基質をポンプする。いくつかは基質を取り込み、他はそれを排出する。Higgins、
Ann. Rev. Cell, Biol., 8:67-113 (1992)参照。


ABC輸送体の原型構造は、各々が膜を6回横切るものと予測されている推定上の2つの疎水性の膜スパニング配列と、輸送のためにATP加水分解に結合する2つのヌクレオチド結合ドメインとからなる、膜関連の4つのドメインを含んでいる。原核生物においては、ABC輸送体のドメインは別々のポリペプチドに存在することが多い。ドメイン融解のさまざまな並べ換えが記載されている。すなわちE. coliのヒドロキサム酸鉄輸送体は1個のペプチド中に2つの膜スパニングドメインを有しており、同じ生物体のリボーシング輸送体は1個の分子に2つのヌクレオチド結合ドメインを有している。主要組織適合遺伝子複合体[major
histocompatibility complex](MHC)ペプチド輸送体は、Tap1、Tap2という2つのポリペプチドからなる。各タンパク質のN末端は疎水性の膜スパニングドメインを有するが、C末端はATP結合配列を有している。Tap1とTap2は一緒になって機能的複合体を形成する。分裂酵母シゾサッカロマイセス・ポンベ[Schizosaccharomyces
pombe]中に発現された耐重金属タンパク質のHMT1は、1個の疎水性ドメインとC末端ATP結合配列を有するポリペプチドからなる(Ortizら、 1992年)。HMT1輸送体はホモダイマーとして機能するものと考えられる。サッカロマイセス・セレビシエ[Saccharomyces
cerevisiae] Ste6のa因子輸送体が、2つの膜スパニングドメインと2つのヌクレオチド結合ドメインを有する1個のポリペプチドとして発現される。Ste6が2つの半分子[half-molecule]として発現するとき、明らかに形成されるタンパク質複合体は、野生型のポリペプチド1個の機能より50%大きいレベルを保持する(BerkowerとMichaels、
1991年)。Mdr1,CFTR、MRPなどその他の真核ABC輸送体でも、4つのドメインがポリペプチド1個の中に含まれている。こうしてABC輸送体はたった1個のマルチドメインポリペプチドであるのか、あるいは各々が1つまたは2つのドメインを有する2つまたはそれ以上のポリペプチドからなるのかもしれない。
一般に輸送体は疎水性ドメイン各々につき6つのトランスメンブランセグメントを有し、全体で12のセグメントとなっている。トランスロケーション複合体の形成にとって必要なトランスメンブランセグメントの最小数は10であると考えられる。したがってS.チフィムリウム[S. typhimurium]のヒスチジン輸送体は、その疎水性ドメインの各々からのN末端トランスメンブランセグメントを欠いているので、ドメイン1つにつき5つのトランスメンブランセグメントを有している(Higginsら、
Nature 298, 723-727 (1982)。E. coliマルトース輸送体のMalFタンパク質は、2つの追加のトランスメンブランセグメントでこの疎水性ドメインにつき全体で8つのトランスメンブランセグメントを有する疎水性配列のN末端延長体を有している(Overduinら、
1988年)。しかし、このN末端延長体はこの輸送体の機能を失うことなく切除することもできる(Ehrmannら、 1990年)。機能トランスロケーターの形成に必要なセグメント数はこうした研究によって示唆されてはいるが、トランスメンブランセグメント自体の正確な構造に関するデータは存在しない。これらの配列はαらせん形をもっていると推定されているが、まだ証明されたわけではなく、形質膜内のトランスロケーション複合体の全体構造はまだ解明されていない。
脂質二重層をスパンするには最低20個のアミノ酸が必要で、トランスメンブランセグメントを形成すると考えられている配列は疎水性スケール[hydrophobicity scale]を使って同定されている。疎水性スケールは個々のアミノ酸残基につき各分子の疎水度を示す値を出している(KyteとDoolittle、
1982年; Englemanら、 1986年)。こうした値は実験データ(種々の溶剤中でのアミノ酸の溶解度測定、可溶性タンパク質中での側鎖の分析)および理論上の考察に基づくもので、合理的な精度で新規の配列中の2次構造を予想することを可能にしている。疎水性測定を使った分析は、トランスメンブランらせんと一致している疎水的特性を有するタンパク質配列のストレッチがあることを示す。
僅かの例外を除いて、2種の異なる輸送体のトランスメンブランドメイン間にはアミノ酸配列上の有意な類似性は殆ど、あるいは全く見られない。こうした配列類似性の欠如は、それら疎水性ドメインの見かけ上の機能に矛盾するものではない。これらの残基は、形質膜を通過すると考えられている疎水性αらせん構造を形成することができるにちがいないが、多くのアミノ酸残基は疎水性でαらせん形成に貢献することができる。
まだ説明できないことであるのだが、相当程度の配列類似性が酵母STE6、ヒトMDRおよびE. coli HlyBヘモリシン輸送体のトランスメンブランドメインを比較して認められている([Grosら、 Cell 47, 371
(1986); McGrathとVarchavsky, Nature 340, 400 (1989); Kuchlerら、 EMBO J. 8, 3973
(1989)]。その他の配列類似性は、げっし類動物P−糖タンパク質のトランスメンブランドメインの場合のように、遺伝子重複で説明することができる(Endicottら、
1991年)。S. typhimuriumのヒスチジン輸送体のトランスメンブランドメインはアグロバクテリウム・ツメファシエンス[Agrobacterium
tumefaciens]のオクトピン取込系のそれと相同性を有している。後者の2つの輸送体は化学的に類似の基質を移送(トランスロケート)する(Valdivaら、
1991年)。
突然変異輸送タンパク質の研究は、基質の認識におけるトランスメンブラン配列の役割に向けられている。こうしてp-ニトロフェニル-α-マルトシドをトランスロケートする能力を得るE. coli中のマルトース輸送体は、トランスメンブランドメインに変異を有する(Reyesら、
1986年)。MDRのトランスメンブランセグメント11における突然変異はその輸送体の基質特異性を変化させること、またCFTRのトランスメンブランドメインにおける荷電残基の突然変異は、そのイオン選択性を変化させることが確認されている(Andersonら、
1991年)。
輸送機能に関係する膜外のループ配列についていくつかの側面が解明されつつある。多数の細菌輸送体中には、トランスメンブランセグメント4、5に結合する細胞質ループ上の短い保存されたモチーフ[motif]が存在する。この配列はこれら輸送体タンパク質のATP結合ドメインと相互反応すると仮説的に考えられている。この保存された配列の突然変異は輸送機能を無くする(Dassa 1990年)。細胞質ループもまた基質認識に関係するものかもしれない。このように酵母a因子輸送体のトランスメンブランセグメント7および12に続く配列は、a因子受容体Ste3pの配列に類似し、フェロモン基質と相互反応することができる(Kuchlerら、
1989年)。実際、細胞質ループにおける突然変異は所与の輸送体の基質特異性を変えることが知られている。トランスメンブランセグメント2と3の間のループにあるヒトMDRのG185V突然変異は、その輸送体のビンブラスチンおよびコルヒチンとの相互反応を変える(Choiら、
1988年)。
ATP結合ドメインは約200のアミノ酸長で、異なる輸送体からのドメインは通常、30〜50%の配列同一性となっている。保存された配列は多数のヌクレオチド結合タンパク質と連係する「ウォーカー
モチーフ」[Walker motifs]を有している。Walkerら、 EMBO J. 1:945-951 (1982)。 配列保存はATP結合ドメインの長さを超えて伸び、ウォーカーモチーフに限定されない。また1輸送体のATP結合ドメインどうしは、2つの別の輸送体からのドメインよりも大きい配列同一性を示す。しかし保存されたATP結合ドメインを有するタンパク質の全部が輸送に関与するものではない。細胞質酵素UvrAはDNA修復において機能し、酵母のEF−3タンパク質は延長因子である。それでもこれらタンパク質双方は配列比較によって同定可能なATP結合カセットを有している。
ATP結合ドメインはきわめて親和性で、輸送体の場合、これらタンパク質の膜スパンニングドメインと会合することによって膜の細胞質面に在留してしまうように見える。トランスメンブランドメインとATP結合ドメインとの間で相互反応する点については未だ実験的に決定されていない。ヌクレオチド結合ドメイン構造モデルは、ループ配列が構造体の核から伸びて膜を通過する親水性配列とインターフェイスすることを示している(Hydeら、 1990年; Mimuraら、 1991年)。1つはアデニル酸シクラーゼに、もう1つはras p21構造に基礎をおく2つの構造モデルが、加水分解中にATPと相互反応するように位置するウォーカーAモチーフ(グリシンに富むループ)をもつ5つのβシートからなる1つのコアヌクレオチド結合折り畳みを予言している。また、ループ構造(1モデルでは2つのループ、もう1つのモデルでは1つの大きいループ)は、核から伸びてATP結合ドメインを輸送体の別のドメインに結合するものと予言されている。結合配列は、最も普通にはコンフォメーション変化を介して、ATP加水分解のエネルギーを輸送に関係する分子のタンパク質に伝達する。
Ste6機能が交配に必要であるが、このタンパク質は酵母が生き残るには必要でない(WilsonとHerskowiz、 1984年; Kuchlerら、 1989年; McGrathとVarshavsky、 1989年)。Ste6は構造的に哺乳動物MDRに相同である。しかも2種の哺乳動物MDRタンパク質、すなわちネズミMdr3とヒトMdr1は、STE6のために切除される細胞中の酵母輸送体を機能的に代替することが証明されている(Raymondら、
1992年; KuchlerとThorner、 1992年)。STE6のために切除された酵母株は、外因性ABC輸送体の機能をモジュレートする化合物を捜し出すスクリーニング設計の開始点となる。
ABC輸送体機能のモジュレーターを同定するには2つの異なる酵母スクリーニングを使うことができる。1例ではa因子を輸送する哺乳動物タンパク質が輸送体機能の潜在的インヒビターをターゲットとして働く。このように酵母株はa因子の輸送体中に酵母Ste6タンパク質を代替する例えば哺乳動物MDR1のような機能的輸送体を発現するべく操作される。しかもこの株はオートクリン的に、すなわち例えば細胞がガラクトース含有の媒体上に生育することができないように、a因子に応答するように操作される。こうしたネガティブセレクションは、GAL7またはGAL10遺伝子の突然変異体を含む株のバックグラウンドにおいてフェロモン応答プロモーターの制御下でGAL1遺伝子を発現することに依存性である。上記のような株バックグラウンドでのガラクトース存在下におけるGAL1の発現は細胞に有毒である。a因子輸送体が存在しないときはフェロモン応答経路をシグナルが伝わることは、有毒遺伝子の結果的発現が止まるのと同様に止まってしまうだろう。テスト化合物の存在下、または特異的ランダムペプチドの発現後即時の細胞成長は、輸送機能の阻害および潜在的治療の同定をシグナル発信するだろう。
MDRインヒビターに加えて、a因子のa因子受容体との相互反応の障害となる化合物を同定することができる。このような化合物は、野生型Matα株におけるa因子由来の生育停止の阻害によって識別することができる。化合物はまたフェロモン応答経路上の別の箇所で衝突してシグナル送信を阻害するかもしれず、このような化合物は野生型Matα株でのシグナル伝達を阻止するであろう。
2番目のスクリーニングでは、a因子またはa因子様ペプチドを輸送することが最初からできない突然変異体の異種輸送体(例、突然変異体CFTR)が内因性Ste6のために切除されたオートクリン酵母中に発現させることができる。これらの細胞は、細胞が産生するa因子に対するオートクリン応答ができるであろう。こうしてフェロモン応答プロモーターは選択培地で生育する能力を付与する遺伝子の発現をコントロールする。このような細胞は輸送体の欠点を訂正する化合物を同定することを可能にし、細胞外空間にフェロモン類似体を排出する機能をそれに付与する。こうして突然変異体タンパク質を安定させ、正常のプロセス、輸送、形質膜への局在化および機能を可能にする、治療的ペプチドその他の種類の化学的化合物を同定することができる。この方法は成功すれば、遺伝子治療において予想されるように、欠陥の処理訂正及び/又は所在探知によって突然変異体タンパク質の機能を回復することによって、ある種の突然変異体遺伝子を正常配列と「交換」する必要性をなくすることもできる。
突然変異輸送体の「アクチベーター」に加えて、内因的に発現されたフェロモンによる輸送がないときにa因子受容体からシグナル送信を開始することができる化合物も同定することができる。このような化合物は野生型Matα株における生育停止の原因となる能力によって識別される。化合物はまた、フェロモン経路上の別の箇所に衝突し、a因子の存在しないときに野生型Matα株中にシグナル発信開始する能力を介して識別することができる。
好ましい実施例では、酵母細胞によって産生される外因性タンパク質は上記表1(1−1、1−2、1−3)に挙げた外因性ABC輸送体のうちの1つとなっている。
外因性G-タンパク質結合受容体
疾患を癒したり症状を解消したりする薬物にとっては、場合により薬物は適切な細胞に輸送され、的確な「スイッチ」を作動しなければならない。細胞のスイッチは「受容体」と呼ばれる。ホルモン、成長因子、神経伝達物質その他のたくさんの生体分子は正常時には、特異的細胞受容体と相互反応することにより挙動している。薬物は所望の薬効をもたらすため特定の受容体を活性化したりブロックしたりする。細胞表面受容体は「外部」シグナル(リガンドの受容体への結合)の伝達を「内部」シグナル(細胞質代謝経路のモジュレーション)に媒介する。
多くの場合、伝達は次のシグナル送信カスケード手順で行われている。
・ アゴニスト(リガンド)が特定のタンパク質(受容体)の細胞表面に結合する。
・ リガンド結合の結果、受容体はその細胞膜中における伝達タンパク質を活性化させるアロステリック変化を呈する。
・ 細胞内で形質導入タンパク質が所謂「二次メッセンジャー分子」の生成を活性化する。
・ この二次メッセンジャー分子が、特定の遺伝子を「スイッチオン」または「オフ」する力がある細胞内で一定の調節タンパク質を活性化するか、ある代謝過程を変更する。
こうした一連の過程は各々の細胞応答をするため特定の方法で結合されている。特定のリガンドに対する応答は、細胞が発現する受容体如何に依存している。例えば、αアドレナリン性受容体を発現する細胞中のアドレナリンに対する応答は、βアドレナリン性受容体を発現する細胞中での応答とは反対のものとなる。
上記の「カスケード」は単純化された手順なのであって、その変形が実際には行われる。例えば、受容体はそれ自身の伝達タンパク質として挙動するとか、伝達タンパク質が「二次メッセンジャー」の仲介なしに細胞内のターゲットに直接作用するなどである。
真核細胞に見られるシグナル伝達カスケードの1ファミリーは、ヘテロトリマーの「G-タンパク質」を利用する。たくさんの異なるG-タンパク質が受容体と相互反応することが知られている。G-タンパク質のシグナル送信系には3要素がある。受容体自体、GTP結合タンパク質(G-タンパク質)、そして細胞内ターゲットのタンパク質である。
細胞膜はスイッチボードとしての機能をする。異なる受容体から到着するメッセージは、その受容体が同一型のG-タンパク質に作用するのであれば、単一の効果を生ずることができる。一方、1個の受容体を活性化するシグナルは、その受容体が異なる種類のG-タンパク質に作用するのであれば、あるいはそのG-タンパク質が異なるエフェクターに作用することができるのであれば、2以上の効果を生起することができる。
それらが静止している状態では、α、β、γのサブユニットからなるG-タンパク質は、ヌクレオチドのグアノシン二リン酸(GDP)と複合されたもので、受容体と接触している。ホルモンまたはその他の一次メッセンジャーが受容体に結合すると、その受容体はコンフォメーションを変化させ、これはそのG-タンパク質との相互反応を変える。これはαサブユニットをしてGDP、さらに一層豊富なヌクレオチドのグアノシン三リン酸(GTP)を放出するように刺激し、G-タンパク質を活性化してそれと交替する。するとG-タンパク質は解離しαサブユニットをなお複合しているβおよびγサブユニットから分離させる。経路次第でGαサブユニットまたはGβγ複合体のいずれかが、エフェクターと相互反応する。このエフェクター(しばしば酵素である)は次に、不活性前駆体分子を細胞質を介して拡散する活性の「二次メッセンジャー」に変換し、代謝カスケードをトリガーする。数秒後、GαはGTPをGDPに変換し、これによってそれ自体を不活性化する。不活性化されたGαはGβγ複合体と再び会合する。
何千とまでは言わないまでも何百という受容体が、ヘテロトリマーのG-タンパク質経由でメッセージを伝達するのであるが、そのうち少なくとも17個の明確な形が単離されている。最大の可変性はαサブユニットにおいて見られるものであるが、いくつかの異なるβとγの構造についても報告されている。またいくつかの異なるG-タンパク質依存性エフェクターもある。
大半のG-タンパク質結合受容体は形質膜を7回貫通する1本のタンパク質鎖でできている。このような受容体は7トランスメンブラン受容体[seven-transmembrane
receptor](STR)と呼ばれることが多い。同一リガンドに結合する多数の全く異なった受容体など百種以上のさまざまなSTRが発見されており、さらに多数の別種のSTRが発見されようとしている。
またその天然のリガンドが知られていないSTRも同定されている。こうした受容体は「孤児」G-タンパク質結合受容体と呼ばれる。例えばNeoteら、 Cell 72, 415 (1993); Koubaら、 FEBS Lett.
321, 173 (1993); Birkenbachら、 J. Virol. 67, 2209 (1993) によりクローニングされた受容体などがある。
本発明の「外因性G-タンパク質結合受容体」は、本発明の目的のために遺伝子操作される野生型の酵母細胞にとって外因性のG-タンパク質結合受容体の全てを指す。このような受容体は植物または動物の細胞受容体であろう。植物細胞受容体への結合のためのスクリーニングは、例えば除草剤の開発にとって有益であろう。動物の受容体の場合は、無脊椎または脊椎の動物由来となろう。無脊椎受容体なら、昆虫受容体が好ましく、これは殺虫剤の開発に役立つであろう。受容体はまた、脊椎動物のそれであってもよく、好ましくは哺乳動物の受容体で、最も好ましくはヒト受容体である。外因性受容体はまた、7トランスメンブランセグメント受容体も好ましい。
適切な受容体としては、これらに限定する意味ではないが、ドーパミン性、ムスカリン的コリン作用性、αアドレナリン性、βアドレナリン性、オピオイド(δ及びμを含む)、カナビノイド、セロトニン性、およびGABA性の受容体がある。これら以外の適切な受容体は表2(表2−1,表2−2,表2−3,表2−4)に挙げてある。ここに「受容体」と言うときは、自然発生のもの突然変異発生のもの双方を含む意である。
これらG-タンパク質結合受容体の多数は、酵母のa因子およびα因子受容体のように、形質膜内に存在すると推定される7つの疎水性アミノ酸に富む領域を有している。遺伝子が単離されたもので、発現ベクターが構築される具体的なヒトG-タンパク質結合STRも[表2]に挙げられたものの中にある。このようにそれらの遺伝子は酵母中で機能するプロモーターに、また酵母中で機能するシグナル配列に制御可能に連結される。適切なプロモーターとしてはSte2,Ste3、およびgal10がある。適切なシグナル配列としてはSte2,Ste3、その他酵母細胞により分泌されたタンパク質をコードする遺伝子の配列がある。好ましくは遺伝子のコドンは酵母中での発現に最適化されているのがよい。Hoekemaら、
Mol. Cell. Biol., 7:2914-24 (1987); Sharpら、 14:5125-43 (1986) 参照。
表2に関する参考文献は図10−1ないし図10−9を参照されたい。図11−1ないし図11−11は本発明に関連する一般文献の一覧である。
STRの相同についてはDohlmanら、
Ann. Rev. Biochem., 60:653-88 (1991) に論述がある。STRを比較すると、相同性のはっきりした空間的パターンが判別できる。トランスメンブランドメインは、しばしば最も類似しているが、N末端領域とC末端領域ならびにトランスメンブランセグメントVとVIを接続している細胞質ループは、より多様である。
異なるSTR領域の機能的意味については点変異(置換と欠失の両方)を導入することによって、また異なるが関連のあるSTRのキメラを構築することによって研究されてきた。個々のセグメントに対応する合成ペプチドについてもその活性につきテストされている。アフィニティラベルがリガンド結合部位を同定するのに利用されている。
酵母中に発現される外来の受容体は酵母膜中に機能的に融合し、そこで外因性酵母G-タンパク質と相互反応する、と考えられる。より可能性があるのは、受容体が修飾される必要があるか(例、そのV−VIループを、酵母STE2またはSTE3受容体のループと置き換えることによって)、あるいは共存可能なG-タンパク質が供給されるか、である。
野生型の外因性G-タンパク質結合受容体が酵母中で機能的にすることができないときは、それをこの目的のために突然変異させる。外因性受容体のアミノ酸配列および酵母受容体のアミノ酸配列について比較し、同定された相同性が高低の領域を比較する。その後、試験的突然変異を行ってリガンドまたはG-タンパク質の結合に関与する領域を膜中における機能的融合に必要な領域から識別する。それから外因性受容体を後者の領域中で、機能的融合が行われるまで、その酵母受容体に一層近似するものに突然変異させる。機能達成にとってこれが十分でないときは、突然変異はG-タンパク質結合に関与する領域で行われる。リガンド結合に関与する領域で行われる突然変異は最後の手段としてのみ行われ、保守的代替物を可能な限り生成することによってリガンド結合を保存するようにする。
好ましくは酵母ゲノムは、内因性a因子およびα因子の受容体を機能的形で生成することができないように修飾される。そうしないとポジティブ分析スコアは、問題の受容体ではなく、内因性G-タンパク質結合受容体を活性化するペプチドの能力を反映するものになるかもしれない。
G-タンパク質
PSP代用物が外因性G-タンパク質結合受容体であるときは、酵母細胞は、その外因性受容体に活性化され、次に酵母エフェクターを活性化することができるG-タンパク質を産生することができるものでなければならない。内因性酵母G-タンパク質が、外因性受容体とネイティブに会合してカップリングを起こす「同族」のG-タンパク質に十分に相同となることは有り得ることである。しかしより有り得ることは、外因性受容体と的確に相互反応することができる外来Gαサブユニットを産生する酵母細胞を遺伝子操作することが必要であるということであろう。例えば酵母G-タンパク質のGαサブユニットが、外因性受容体とネイティブに会合していたGαサブユニットによって(あるいはそれと同族のGαサブユニットと実質的に相同のタンパク質によって)置き換えられるのである。
DietzelとKurjan、
Cell, 50:1001 (1987) はラットGαが酵母Gβγ複合体に機能的に結合されることを証明した。しかしラットGαi2は、かなり過剰発現しているときしか相補せず、Gα0は全く相補しなかった。Kangら、
Mol. Cell. Biol., 102582 (1990)。したがってある種の外来Gαサブユニットでは、酵母Gαを簡単に置き換えることはできそうもない。
好ましくは酵母Gαサブユニットは、例えば少なくとも20アミノ酸、より好ましくは少なくとも40アミノ酸の、その酵母Gαのアミノ末端の対応する残基と実質的に相同なタンパク質が、哺乳動物(またはその他の外因性)Gαの本体[main body]と実質的に相同な配列に融合されているキメラGαサブユニットによって置き換えられるのがよい。40アミノ酸は示唆される1開始点ではあるが、酵母Gβγに結合するのに必要な最短長および外因性受容体への結合を保持共存する最大長を決定するのに、これより短いか長い部分もテストされてよい。現時点では、Gαサブユニットのカルボキシ末端にある最終の[final]10ないし20のアミノ酸だけが受容体との相互反応にとって必要とされていると考えられている。
このキメラGαサブユニットは外因性受容体および酵母Gβγ複合体と相互反応し、それによってシグナル伝達を可能にしている。内因性酵母Gβγの使用が好ましいのであるが、外来のまたはキメラのGβγがシグナルを酵母エフェクターに伝達することができるものなら、それを代わりに使うことも可能である。
タンパク質キナーゼ
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ)およびそのアクティベータのMAPキナーゼキナーゼ即ちMEKは、哺乳動物細胞における細胞内シグナル伝達に関する主要分子であると考えられている。MAPK、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼ,の活性は、チロシンとスレオニンの残基における二重に特異的なMEKによるそのリン酸化に依存することが証明されている。次にMEK活性は、ある系におけるその機能がプロト腫瘍遺伝子産物Raf1pによって行われる第三のキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼキナーゼ、即ちMEKK、によるセリンとスレオニンに対するそのリン酸化に依存する。
S. cerevisiaeフェロモンシグナル送信経路の必須部分は、STE11,STE7,およびFUS3/KSS1遺伝子(後の対は全く異なり、機能的に余分である)の産物からなるタンパク質キナーゼカスケードからできている。機能に関する研究は、活性がSTE11pによるそれのリン酸化によって調節されるSTE7pによるチロシンおよびスレオニンのリン酸化に対するFUS3p活性の依存性を確認している。タンパク質キナーゼCに応答する第2のタンパク質キナーゼカスケードは、S.
cerevisiae中に同定されている。この経路が妨害されると、酵母細胞は低い浸透圧によって成長能を失う。その成分は交配経路カスケードの成分と同程度にまで性格付けされていないが、配列分析はBCK1pがMEKKであること、MKK1p/MKK2pはMEKであること、そしてMPK1pはMAPKであることを同定している。
キナーゼのシグナル経路は真核生物中に保存されていると思われる。したがって有意の配列相同性がゼノパス[Xenopus]MAPキナーゼと次の酵母キナーゼ遺伝子、即ちFUS3,KSS1,MPK1(S. cerevisiae),およびSpk1(Schizosaccharomyces
pombe)の産物との間に見られる。また哺乳動物MEKはSTE7(S. cerevisiae)とByr1(S. pombe)の産物に相同であることが発見されている([Crewsら、
Science 258, 478 (1992)])。ある種のキナーゼ間の機能的な相同性は、酵母キナーゼ欠失突然変異体で異種キナーゼ遺伝子を置き換えることによって確認されている。このようにXenopus
MAPキナーゼはS. cerevisiae中でのmpk1△突然変異体を相補する(しかしこのキナーゼは同じ生物中におけるFus3pまたはKss1p機能を代替しない)([Leeら、
Mol. Cell. Biol. 13, 3067 (1993)]。哺乳動物およびXenopus MAPキナーゼはS. pombe中におけるSpk1機能を代替する([Neimanら、
Molec. Biol. Cell. 4, 107 (1993); Gotohら、 Molec. Cell. Biol. 13, 6427 (1993)]。ウサギMAPキナーゼキナーゼはS.
pombe中のbry1欠陥を相補するが、それはRaf1キナーゼと共に発現したときだけである。したがって後者はMEKの直接のアクティベータと思われる(Hughesら、
Nature 364, 349 (1993)。
ヒトMEKのモジュレーターをスクリーニングするために本発明を実施することについては実施例9に記載している。
サイクリン
哺乳動物タンパク質キナーゼファミリーの別のメンバーで、細胞周期による進化に活性なものが酵母での細胞周期キナーゼ突然変異体の相補性[complementation]によって同定されている。酵母中のDNA合成ならびに有糸分裂に向かう進行を制御するタンパク質であるp34cdc2(S.
pombe)およびp34cdc28(S. cerevisiae)のヒト相同体が、S. pombeにおけるcdc2突然変異の相補によって同定されている([LeeとNurse、
Nature 327, 31-35 (1987)]。第2のヒトp34相同体のCDK2が、S. cerevisiaeにおけるp34cdc28突然変異の機能相補によって同定されている([ElledgeとSpottswood、
EMBO J. 102653 (1991)]。p34の活性化は、サイクリンと呼ばれる調節サブユニットとそれとの会合によって決まる。サイクリン発現の厳格な制御、および一旦発現されたこれらタンパク質に固有の不安定性は、p34キナーゼの活性化と細胞周期の進行を調節することに貢献している。
多数の推定上のG1ヒトサイクリンが、フェロモンのシグナル経路における酵母G1サイクリン、CLN1,CLN2,CLN3を代替する能力の有無で同定されている。こうしてヒトサイクリンC,D,Eがcln酵母を生育停止から救済する能力によって同定された([Lewら、 Cell 66, 1197 (1991)]。その他の種類のヒトサイクリンが酵母中のCLNタンパク質を機能的に代替することができることも証明されている。ヒトサイクリンA,B1,B2(有糸分裂の制御に正常時に関係するサイクリン)も、S.
cerevisiae中でG1サイクリンとして機能する([Lewら、 Cell 66, 1197 (1991)]。
ある種のサイクリンはp34キナーゼのレギュレーターを定期的に蓄積している(ヒト中にp34cdc2およびS. cerevisiae中にp34cdc28)。p34キナーゼは酵母からヒトへ機能保存され、細胞がその細胞周期中の数箇所のチェックポイントを経て進行するようになっているならSTARTと呼ばれるものも含めて、このスレオニン/セリン特異的タンパク質キナーゼの活性が必要とされる。STARTはG1相の後期に現れる、静止状態と増殖状態との間の細胞スイッチングポイントである。キナーゼは真核生物に機能保存されている調節サブユニットである特定のサイクリンと会合することによって細胞周期中の不連続な時点で活性化される。3つのサイクリン、CLN1、CLN2,CLN3がS.
cerevisiae中のSTARTを介する進行に操作すると考えられる(Hadwigerら、 1989年; Cross、 1988年; Nash、 1988年)。CLNタンパク質の配列は、哺乳動物A-およびB-型サイクリンの配列にある程度相同である。これらのタンパク質は哺乳動物細胞周期のS相(DNA合成)およびM相(有糸分裂)を調節すると考えられている。
異なる種で同定されたサイクリンタンパク質の配列比較は、一般に中央のサイクリン配列を含むが、酵母G1サイクリンのアミノ末端付近に位置する約87残基のドメイン内に高度の配列が保存された領域を示している。この保存されたドメインは「サイクリンボックス」と呼ばれる。殆どのサイクリンが分有する相同の第2領域は、プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、およびアスパラギン酸の残基に富む、PESTモチーフと呼ばれる塩基性アミノ酸に囲まれたC末端配列である(Rogersら、 1986年)。PESTモチーフは不安定なタンパク質中に見られるもので、構成的なユビキチンに仲介された分解をシグナルするものと考えられている。サイクリンAとBの分解は、他の哺乳動物サイクリンには分有されていない異なった配列「分裂破壊[mitotic
destruction]モチーフ」(Glotzerら、 1991年)経由でシグナルされる。
酵母CLNタンパク質とヒトA,B,C,D,Eサイクリンとの間で行われた配列比較は、評価できる相同性が存在することを示している(Lewら、 1991年)。サイクリンボックスなどの最も保存された領域では、ヒトサイクリンCはヒトサイクリンD,Eおよび酵母CLNタンパク質の双方に対する18%の配列同一性を示す。ヒトサイクリンD,Eは酵母CLNに対するよりもヒトA-およびB-型サイクリンにより深く(33%の同一性)関係していると思われる。
今日までに同定されたヒトサイクリンは全て酵母サイクリンを機能的に代替するであろう。実際、哺乳動物サイクリンC、D1およびEは酵母中の欠陥CLN機能を相補する能力で同定されている(Lewら、1991年)。哺乳動物A-およびB-型サイクリンも酵母中のCLNタンパク質を機能的に代替するので、この能力は哺乳動物サイクリンをG1中で挙動するものと決定的に特徴づけることができない。しかしサイクリンC,D1,Eは哺乳動物細胞中でG1に発現されることが証明されており、細胞周期中のサイクリンEの発現パターンは酵母G1サイクリンに見られる発現パターンと最も近い並列関係にあることが証明されている(Lewら、1991年、Koffら、
1991年)。
哺乳動物細胞では、サイクリンC mRNAはG1中に初期に蓄積するが、サイクリンEはその相の後期に蓄積する。DサイクリンmRNAレベルはヒト細胞中に発現パターンを追跡するには不十分なので、このサイクリンの役割は明確でない(Lewら、1991年)。マウス細胞では、D1遺伝子のCYL1が、G1相に発現され、D1遺伝子はコロニー刺激因子1によって調節されるものと思われる(Matsushimeら、
1991年)。D1サイクリンの発現はきわめて成長因子依存性であるから、内部的細胞周期制御メカニズムの一部をなすものではなく、外部的シグナルに対する応答によってだけ発生するものであろう(Scherr
1993年)。ある種の副甲状腺アデノーマに過剰発現するPRAD1遺伝子は、D1遺伝子と同一のものである(Motokuraら、 1991年)。D1は多形性神経膠細胞系統中に過剰発現され(Xiongら、
1991年)、遺伝子増幅による脱制御[deregulation]に委ねられることが知られている(Lammieら、 1991年; KeyomarsiとPardee、
1993年)。D1の脱制御は、ある種のリンパ腫、扁平上皮癌および乳癌に見られる未解明のメカニズムにより生起される(Bianchiら、 1993年)。このタンパク質は細胞成長の活性化に関与するものであるから、この遺伝子の脱制御された発現は癌的な事態と思われる。E-型サイクリンがヒト細胞におけるG1からSへの遷移に機能することに関していくつかの証明がある。このサイクリンはG1中のヒトリンパ球の抽出物中にあるp34cdc2タンパク質に結合し活性化するもので、このタンパク質はHeLa細胞中のヒストンH1キナーゼ活性と会合し、サイクリンE mRNAがHeLa細胞中の後期のG1に特異的に発現される(Lewら、
1991年)。
p34 cdc2は種々の基質をリン酸化することにより細胞周期中の個別的な遷移点で作用するものと仮説されている。こうしたリン酸化活性は、その細胞の周期を通して差別的に発現されたサイクリンとのキナーゼの会合に明確に現れている。こうしたさまざまなサイクリンはキナーゼの基質特異性を変更するか、あるいはその触媒効率を変更する(Pines と Hunter, 1990年)。cdc2キナーゼの明らかに可能性が認められる基質は、細胞周期段階特異性の遺伝子転写を制御する転写因子である。
酵母中の3種のCLN遺伝子のいずれか1つを破壊しても細胞成長にあまり作用しないが、CLN遺伝子全部が破壊すると細胞はG1中で停止する。また、交配フェロモンに応答してCLNタンパク質が阻害され、酵母細胞成長が停止する。その産物はサイクリン活性を阻害する2種の遺伝子がS. cerevisiae中に同定されている。FAR1およびFUS3遺伝子の産物は各々、CLN2およびCLN3の機能を阻害する。フェロモンのシグナルがあると、Far1pとFus3pのレベルが高まり、G1サイクリンは蓄積せずCDC28pキナーゼが不活性のまま止まり、細胞成長はG1中に停止する。観察すると、サイクリンタンパク質のインヒビター、サイクリンとキナーゼとの産物会合のインヒビター、またはキナーゼのインヒビターは、細胞成長停止を助長できることが分かる。
比較してみると、阻害できないサイクリンは無制御の陽性成長レギュレータとして機能するように思われる。CLNタンパク質のハイレベルな発現は、酵母細胞内にあって生死に係わる状態である。サイクリンD1の制御された発現が染色体破壊、染色体の転座あるいは遺伝子増幅によって喪失してしまうことは、哺乳動物細胞中の腫瘍原性を促進する(Xiongら、 1991年; Lammieら、 1991年; Bianchiら、 1993年)。またサイクリン発現の制御およびサイクリン機能の制御を阻止する出来事は、G1チェックポイントのバイパス接続および細胞成長の調節不全[dysregulate]につながるように思われる。細胞増殖を促進するようにG1中で作動するサイクリンタンパク質は、細胞成長の制御を目的とする治療にとって理想的なターゲットとなる。そのような治療の鑑識のための酵母経路中における代替の候補となる代用タンパク質には、ヒトサイクリンC,D,およびEがある。これらのタンパク質は全て、哺乳動物細胞周期のG1相中に正常時に発現するもので、増殖させる細胞にとっての仲介物として候補となるものである。
G1中に作用しS相への進入を阻止するものとして知られる化合物の例は、形質転換成長因子β[transforming growth factor β](TGF-β)とラパマイシン[rapamycin]である。免疫抑制剤ラパマイシンは、サイクリンE結合キナーゼの活性を阻害する。このマクロライドはIL-2-刺激されたTリンパ球の増殖を阻止するようにG1中で作用する(Scherr
1993年)。TGF-βはミンク肺の上皮細胞中でG1からS相への進行を阻止することが証明されている(Howeら、 1991年)。TGF-βは、たぶんキナーゼがサイクリンEと共に形成する複合体の安定性を減殺することによって、キナーゼの活性化に干渉するものと思われる(Koff
1993年)。
不活性CLN1,CLN2,CLN3遺伝子およびGal1プロモーター起動のヒトCLN配列(DL1 cells、Lewら、 Cell 66, 1197 (1991)参照)をコードする一体化されたキメラ遺伝子を有する酵母細胞株がテスター株として役立つ。Gal1プロモーターは、細胞がガラクトースの存在下で成長するときハイレベルな発現を可能にするが、このプロモーターは細胞がグルコース上で成長するときは抑制される。このように操作された酵母細胞は機能サイクリンの発現がないためグルコース上で生育できない。しかしこれらの酵母細胞はヒトサイクリン配列の発現があるので、ガラクトースを含有する培地では増殖する。この株をサイクリン機能のインヒビターにさらすと、ガラクトース培地上でも成長不能な細胞をもたらす。つまり細胞はガラクトースの有無に拘わらず生育停止する。この表現型は外因的に適用されたサイクリンインヒビターの存在を示すインジケーターの役割を果たすことができるが、ランダムペプチドライブラリーのメンバーから候補インヒビターを同定するスクリーンとしては役立たないであろう。別の方法で生育する集合体における細胞サブセットの生育阻止は、インジケーター系としては無益である。したがって哺乳動物サイクリンのランダムペプチドインヒビターを同定するには、2段階のスクリーニングが必要と思われる。
(1) FieldおよびSong (Nature
340245 (1989))による記載の2つのハイブリッド系は、酵母中のタンパク質−タンパク質の相互反応を検出することができる。GAL4タンパク質はガラクトースで生育する酵母中での転写に係る有力なアクティベータである。GAL4の転写活性化能力は、特異的DNA配列(UASG)に結合することができるN末端配列、および転写アクティベータを有するC末端ドメインの存在に左右される。タンパク質「A」をコードする配列は、GAL4タンパク質のDNA結合ドメインをコードする配列に融合される。第2のハイブリッドタンパク質は、GAL4トランスアクチベーションドメインをコードする配列をタンパク質「B」をコードする配列に融合することによって生成することができる。タンパク質「A」とタンパク質「B」が相互反応すると、この相互反応はUASG含有遺伝子の転写を活性化するのに必要なGAL4の2つのドメインの一体化に役立つ。両方のハイブリッドタンパク質をコードするプラスミドを同時発現するほかに、この2ハイブリッド系を使ったタンパク質−タンパク質相互反応の検出にとって適切な酵母株は、UASG配列からの転写を検出可能なGAL1−lacZ融合を有する。これらの株も内因性GAL4およびGAL4の陰性レギュレータであるGAL80を欠失させるべきである。
上述の2ハイブリッド系の1変形例の中には、GAL4 DNA結合ドメインがヒトサイクリン配列に融合するものも考えられる。また、ランダムペプチドをコードするオリゴヌクレオチドをGAL4トランスアクチベーションドメインをコードする配列に連結反応させることも考えられる。これら2つのハイブリッドタンパク質をコードするプラスミドで適当な酵母株を同時形質転換し、β−ガラクトシダーゼを発現する酵母のためのスクリーニングをすることは、ヒトサイクリンとの相互反応が可能なランダムペプチド配列を発現する酵母を同定可能にする可能性がある。この可能性があるペプチド同定こそ、このスクリーニングの第1段階における目標である。
(2) 問題のヒトサイクリンとの相互反応が可能なランダムペプチドが同定されたら、スクリーニングの第2段階に入る。第2段階はヒトサイクリンに結合するだけでなく、その相互反応を介して細胞周期依存性キナーゼのサイクリンによる活性化を阻害し、それによって細胞増殖を阻害するペプチドを同定することを可能にする。このようにして候補ペプチドが、上述したようにしてCLN1,CLN2,CLN3を欠くがヒトCLN配列を発現する酵母中に、個々に発現される。これらのペプチドは、その発現がガラクトースにおけるテスター株の生育を許すものではないのであって、サイクリンインヒビターと考えることができる。
潜在的なサイクリンインヒビター同定のための、この2段階方式の利点は、第1段階で選択されたランダムペプチド配列がヒトサイクリンタンパク質と相互反応する高い可能性があることである。ガラクトースにおけるテスター酵母の生育停止を誘発するという事後的に判定されるこの配列の能力は、生育停止がサイクリンに対するペプチドの直接的効果によるもので、例えば細胞周期依存性のキナーゼのような別のタンパク質の効果によるものではないことの強力な示唆である。強力ではあるが、このような結果は決定的なものではなく、サイクリン機能に対する阻害効果の証明がインビトロの生化学分析で得ることができるのであろう。
スクリーニングと選択
マーカー遺伝子は、その発現がスクリーニング可能すなわち選択可能な表現型変化を起こす遺伝子である。この変化が選択可能であるなら、表現型変化はマーカー遺伝子を発現する細胞とこれを発現しない細胞との間の成長率または残存率における差をなす。またこの変化がスクリーニング可能であるなら、表現型変化は細胞の検出可能な特徴に差をなし、これによってマーカーを発現する細胞はそうでない細胞から識別できるであろう。選択(セレクション)の方がスクリーニングより好ましい。
マーカー遺伝子はマーカー遺伝子の発現がGタンパク質の活性に依存するように酵母フェロモン経路に結合され得る。この結合はマーカー遺伝子をフェロモン応答プロモーターに制御可能に連結することによって行われる。「フェロモン応答プロモーター」とは、必ずしもフェロモン自体ではなく、酵母フェロモンシグナル伝達経路の産物によって調節されるプロモーターをいう。1実施例では、このプロモーターはフェロモン経路によって活性化されるが、この場合は選択にとって、マーカー遺伝子の発現はその細胞にとって有益な結果となる。好ましいマーカー遺伝子はイミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼ(HIS3)である。フェロモン応答プロモーターが有益な遺伝子に制御可能に連結されたら、その細胞はアゴニストをスクリーニングするか選択するのに有益であろう。逆に有害な遺伝子に連結された場合には、その細胞はアンタゴニストをスクリーニングまたは選択するのに有益となる。
あるいは、フェロモン経路によって抑制されるものでもよい。この場合はその細胞にとって有害な産物の発現を阻止する。フェロモン抑制プロモーターのときは、このプロモーターを有害遺伝子に連結することによってアゴニストをスクリーニングし、あるいは有益遺伝子に連結することによってアンタゴニストをスクリーニングする。
抑制は、フェロモン誘発プロモーターを、mRNAの翻訳を阻害するように(コードする領域であるか近接領域であるかに無関係に)マーカー遺伝子にコードされたmRNAの少なくとも一部分にアンチセンスなmRNAをコードする遺伝子に制御可能に連結することによって行われる。抑制はまたフェロモンにより誘導されるプロモーターをDNA結合リプレッサータンパク質をコードする遺伝子に連結し、適当なオペレーター部位をそのプロモーター中またはマーカー遺伝子の別の適当な領域に組み込むことによって行うことができる。
陽性として選択(ポジティブセレクション)可能な適当な遺伝子には次のものがある。URA3、LYS2、HIS3、LEU2、TRP1;ADE1、2、3、4、5、7、8;ARG1、3、4、5、6、8;HIS1、4、5;ILV1,2,5;THR1,4;TRP2,3,4,5;LEU1,4;MET2、3、4、8、9、14、16、19;URA1、2、4、5、10;HOM3、6;ASP3;CHO1;ARO2、7;CYS3;OLE1;INO1、2、4;PRO1、3。その他の数え挙げることができない遺伝子が潜在的な選択可能マーカーである。上記のものはよく調べられた生合成経路に含まれている。
非常に高感度で広範囲の発現レベルを通じて選択することができるので、イミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼ(IGPデヒドラターゼ)遺伝子(HIS3)が好ましい。最も単純な場合、この細胞は活性がないときにヒスチジンを栄養要求する(生育のためにヒスチジンを要求する)。活性化はこの酵素の合成をすることになり、細胞はヒスチジンに対して原栄養株的になる(ヒスチジンを要求しなくなる)。こうして選択はヒスチジン非存在下における生育についてのものとなる。ヒスチジン原栄養株性にはIGPデヒドラターゼは1細胞につき僅かな分子しか必要でないので、分析は非常に高感度である。
より複雑な分析法では、細胞はIGPデヒドラターゼ活性を阻害する薬物のアミノトリアゾール(AT)に対する抵抗性について選択することができる。HIS3を発現する低いが固定的なレベルの細胞は、この薬物に感受性だが、高いレベルの細胞は耐性である。AT量はHIS3発現の基礎レベル(そのレベルがいかほどであるかを問わず)で細胞阻害するように選択できるし、またより少ない発現レベルの細胞の生育を可能にするように選択できる。この場合、選択はヒスチジン非存在、そして適切なATレベルでの生育となる。
適当な分析では、所謂、逆選択的ないし陰性選択(ネガティブセレクション)の遺伝子が使われる。適当な遺伝子としては、URA3(オロチジン-5'-リン酸脱炭酸酵素;5−フルオロオロチック酸),LYS2(2−アミノアジピン酸還元酵素;唯一の窒素源としてのαアミノアジピン酸での生育を阻害する),CYH2(リボソームタンパク質L29をコードする;シクロヘキシミド−感受性対立遺伝子が抵抗性対立遺伝子より優勢),CAN1(アルギニンパーミアーゼをコードする;null対立遺伝子はアルギニンアナログであるカナバニンに対する耐性を付与する),その他の劣性薬物耐性マーカーがある。
酵母フェロモン応答経路の誘導に対する自然応答は、細胞に生育停止させることである。これが経路を誘導するリガンド/受容体対のアンタゴニストを選択する好ましい方法である。オートクリンペプチドアンタゴニストは経路の活性化を阻害するから、細胞は生育することができるようになる。したがってFAR1遺伝子は内因性の逆選択マーカーと考えることができる。FAR1遺伝子はアゴニスト活性につきスクリーニングするときは好ましくは不活性化される。
マーカー遺伝子はまたスクリーニング可能な遺伝子たり得る。スクリーニングされる特性は、細胞形態学上、代謝その他スクリーニング可能な特徴上の変化である。適切なマーカーとしては、βガラクトシダーゼ(Xgal,C12FDG,サケ−gal,マジェンタ−Gal(後者の2つはBiosynth Agから得られる))、アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビパーオキシダーゼ、エクソ-グルカナーゼ(酵母exb1遺伝子の産物;非必須、分泌物);ルシフェラーゼ;クロラムフェニコールトランスフェラーゼがある。上記のうちのあるものは分泌されるように操作することができる(βガラクトシダーゼを除いて)。スクリーニングできる好ましいマーカー遺伝子は、βガラクトシダーゼである。この酵素を発現する酵母細胞は無色の基質Xgalを青の色素に変換する。繰り返すが、プロモーターはフェロモン誘導性またはフェロモン阻害性であってよい。
酵母細胞
酵母は、Gタンパク質媒介のシグナル伝達経路を有する培養可能な種であればどんなものでもよい。適切な種としては、クルイベライ・ラクティス[kluyverei lactis], シゾサッカトマイセス・ポンベ[Schizosaccharomyces pombe], およびユスティラゴ・マイディス[Ustilago
maydis]; サッカロマイセス・セレビシエ[Saccharomyces
cerevisiae]が好ましい。GαまたはGβγのいずれも「エフェクター」のアクティベータとなる。種によってはGαで活性化されたエフェクターもGβγで活性化されたエフェクターも共に存在すると考えられる)。ここで「酵母」とは、厳格な分類学上の意味における酵母(即ち、単細胞生物)だけでなく、交配経路に媒介されるフェロモン応答のある酵母様の多細胞真菌も含む意である。
本発明の酵母細胞は、外因性Gタンパク質結合受容体その他のPSP代用物と相互反応する能力の有無につきペプチドをテストするのに使われる。酵母細胞は外因性Gタンパク質結合受容体(またはその他のPSP代用物)及び相補的Gタンパク質(薬剤による活性化が必要ならPSP代用物がフェロモン系で機能するのに必要な他のPSP)の双方に発現するものでなければならず、これらの分子は「読み出された情報」がフェロモン応答経路(これが読み出された情報を改善するように修飾されることがある)によって可能な方式で提供されるものでなければならない。
可能な読み出し情報にとっては、遺伝子発現レベルが、結合された外因性受容体に結合するシグナルの有無に感受性であるように、選択またはスクリーニングが可能な特性をコードする遺伝子をGタンパク質媒介のシグナル伝達経路に結合させるものでなければならない。こうした遺伝子は、生育停止に関与する遺伝子など、既にその経路中にある無修飾の遺伝子であってもよい。また正常時には経路の一部になっていない「フェロモン応答」プロモーターに制御可能に連結された酵母細胞でもよい。あるいはそのように連結された異種の遺伝子でもよい。適切な遺伝子およびプロモーターについては既に上述した。
選択やスクリーニングを行うには酵母細胞は適切な表現型をもっていなければならないということが理解される。例えば野生型HIS3遺伝子を有する酵母中にフェロモン応答キメラHIS3遺伝子を導入することは遺伝子選択を無効にするものとなろう。このように栄養選択を行うには栄養要求株が必要である。
本発明の酵母細胞は以下に掲げる特徴の1または2以上をもっている。
(a) 内因性FAR1遺伝子が不活性化されている。
(b) 内因性SST2遺伝子及び/又はその他の脱感作に関与する遺伝子が不活性化されている。
(c) 内因性フェロモン(a因子またはα因子)受容体遺伝子が不活性化されている。
(d) 内因性フェロモン遺伝子が不活性化されている。
「不活性化」とは機能を有する遺伝子産物の生成が阻止または阻害されることを言う。不活性化は、遺伝子の欠失、発現が起こらないようなプロモーターの突然変異、あるいは遺伝子産物が不活性になるようなコード配列の突然変異などによって行われる。不活性化は部分的でも全体的でもよい。
不活性化されたスーパーセンシティビティ関連[supersensitivity-related]遺伝子突然変異体は、従来の遺伝子スクリーニングによって同定することができる。far1遺伝子は、α因子/Xgalで青色を保持する(fus1−lacZで)α因子耐性突然変異体として同定された。far2はfus3と同じであることが分かった。スーパーセンシティブな突然変異株は、Xgal上でfus1−lacZを発現する構成的な弱い青色のコロニー、ないし弱いフェロモン分泌体とよりよく交配することができる株、と同定することができる。
(a)α因子およびa因子の遺伝子、(b)
α因子およびa因子の受容体、(c) FAR1遺伝子、(d) SST2遺伝子、そして(e) FUS1プロモーター、のDNA配列については、以下に掲げる参考文献中に報告されている。
MFa1andMFa2: AJ Brake、 C Brenner、 R Najarian、 P
Laybourn、 とJ Merryweather。 タンパク質輸送および分泌におけるフェロモンa因子を交配する酵母ペプチドの前駆体をコードする遺伝子の構造。
Gething M-J, ed. Cold Spring Harbor Lab, New York, 1985.
MFα1andMFα2: Singh, A. EY Chen、 JM Lugovoy、 CN Chang、
RA Hitzemanら、 1983年。 サッカロマイセス・セレビシエはαフェロモンをコードする全く異なる2遺伝子を有している。Nucleic Acids
Res. 11:4049; J KurfanとI Herskowitz、 1982年。酵母フェロモン遺伝子(MF)の構造:推定上のα因子前駆体は成熟α因子の4つのタンデムコピーを有している。Cell
30:933。
STE2andSTE3: AC BurkholderとLH Hartwell、 1985年。 酵母α因子受容体:STE2遺伝子配列から推論される構造特性。Nucleic
Acids Res. 13:8463; N
Nakayama、 A
MiyajimaとK Arai、 1985年。 サッカロマイセス・セレビシエからの細胞型特異的な無菌遺伝子、STE2およびSTE3のヌクレオチド配列。EMBO
J. 4:2643; DC Hagen、 G McCaffreyとGF Sprague, Jr.、 1986年。 酵母STE3遺伝子がペプチドフェロモンa因子の受容体をコードすることを証明する。遺伝子配列と予想される受容体の構造を示唆する。Proc
Natl Acad Sci 83:1418。
FAR1: F ChangとI Herskowitz、 1990年。 酵母の負の生育因子による細胞周期停止に必要な遺伝子の同定。FAR1はG1サイクリン,CLN2のインヒビター。Cell
63:999。
SST2: C DietzelとJ
Kurjan、 1987年。 サッカロマイセス・セレビシエSST2遺伝子:フェロモン減感作のモデル、の配列とフェロモン調節。Mol Cell Biol 7:
4169。
FUS1: J Trueheart、 JD BoekeとGR Fink、 1987年。 酵母接合中の細胞融合に必要な2つの遺伝子:フェロモン誘導表面タンパク質の証明。Mol
Cell Biol 7:2316。
さまざまな必須的および任意的な特徴が、例えば次の手段の1または2以上によって、酵母細胞に分有されている。即ち、所望の特徴の1又は2以上を有する自然発生突然変異体の分離;化学的または放射線処理による酵母の突然変異後に行う選択;遺伝子を導入し、修飾し、欠失する酵母細胞の遺伝子操作などである。
以上のほかにPSP代用物インヒビター/アクティベータのスクリーニングデバイスとして使われるように設計されるべき酵母株中に望ましい顕示的な特徴については、各分子ターゲットを具体的に考察する節で論述する。
ペプチド
ここに「ペプチド」とは、2以上のアミノ酸の鎖であって、隣接するアミノ酸がペプチド結合(−NHCO−)で結合されているものを言う。したがって本発明のペプチドとしては、オリゴペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質がある。好ましくは本発明のペプチドは、2〜202、より好ましくは5〜50のアミノ酸長である。最小ペプチド長はアクティベータ又はインヒビターとして十分な有効性を得る必要性如何によって主に決定される。最大ペプチド長は、活性ペプチドが同定された後の合成便宜上の問題にすぎない。
同族PSPが酵母フェロモン受容体であった初期の研究においては、13−アミノ酸ペプチドが成熟酵母α因子の長さとして特に好まれた。
ペプチドライブラリー
「ペプチドライブラリー」とは、たくさんのさまざまな配列のペプチドのコレクションであって(典型的には1020以上の異なる配列)、いくつかの活性につき同時にテストされるとしたら、「陽性の」ペプチドの特性を示すことが可能な方法で、本質的に同時的に調製されるものを言う。
本発明のペプチドライブラリーは、本質的に各々の細胞が1つの、通常ただ1つだけの、ライブラリーの中のペプチドを発現する、そのような酵母細胞培養の形式をとる。もし各々の細胞が異なる配列のペプチドを産生することができるとしたら、このライブラリーの多様性は最大にされるのであるが、ある程度の繰り返しをもつようにライブラリーを構築することが一般に賢明である。
本発明では、このライブラリーのペプチド(複数)は異なる配列のDNA分子の混合物でコードされている。各々のペプチドをコードするDNA分子はベクターDNA分子と連結反応され、その結果得られた組換えDNA分子を酵母細胞に導入する。どのペプチドをコードするDNA分子が特定の細胞に導入されるかは偶然の問題なので、どのペプチドがその細胞を生成するかは予測不能である。しかし混合物調製の方法に関する知識に基づき、ペプチドライブラリー中のペプチド混合物に関するある程度の統計的予測は可能である。
ライブラリーのペプチドにつき不変および可変の残基から構成されていると説明することが便利である。n番目の残基がライブラリーの全ペプチドにつき同じであるなら、それを不変と呼ぶ。ペプチドごとにn番目の残基が変わっているなら、その残基は可変と呼ばれる。ライブラリーのペプチドは少なくとも1つ、通常2以上の、可変残基をもつ。可変残基は遺伝子コードされた2から20全部のアミノ酸のいずれかの部分で変えられており、このペプチドの可変残基は同じ又は異なる方式で変化している。しかも特定の残基位置に可能なアミノ酸の発生頻度も同じか異なっている。ペプチドはまた、1または2以上の不変残基を有している。必要なDNA混合体を調製するには2つの原則的方法がある。第1の方法によれば、DNAは1時に1塩基ごとに合成される。変化を欲するときは、遺伝子暗号によって指令された塩基位置で、ヌクレオチドの適切な混合物が発生期のDNAと反応するのであって、通常のポリヌクレオチド合成の純粋なヌクレオチド試薬と反応するのではない。
第2の方法ではアミノ酸の変化をより正確にコントロールする。第1に、トリヌクレオチド試薬を調製する。これらトリヌクレオチド各々はペプチドライブラリー中に入れられるアミノ酸の中の1(ただ1つ)コドンである。特定の可変残基を合成するときは、混合物を適切なトリヌクレオチドから作り発生期のDNAと反応させる。
必要とされる「縮重した」DNAができたら、後述するように、それをペプチド発現を確実にするのに必要なDNA配列に結合し、完成したDNA構造体を酵母細胞中に導入しなければならない。
発現
酵母細胞中でペプチドをコードする遺伝子を発現するには、酵母中で機能的なプロモーターを必要とする。適切なプロモーターとしては、メタロチオネイン、3−ホスホグリセン酸キナーゼ(Hitzemanら、 J. Biol. Chem. 255,2073 (1980)、または下記のようなその他の解糖酵素(Hessら、
J. Adv. Enzyme Reg. 7, 149 (1968);とHollandら、 Biochemistry 17, 4902 (1978)のためのプロモーターがある。即ち、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、そしてグルコキナーゼである。酵母での発現に使うのに適切なベクターおよびプロモーターについてはR.
Hitzemanら、 EPO Publn. No. 73,657に詳しい。生育条件によってコントロールされる転写という別の長所をもっているその他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関係する分解酵素、および上記のメタロチオネインとグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、それにマルトースとガラクトースの利用に関与する酵素のプロモーター領域である。最後に、2つの半数体交配型の1つにだけ活性なプロモーターは、ある条件下では適切なものである。これら半数体特異的プロモーターの中でフェロモンプロモーターMFa1とMFα1が特に興味深い。
PSP代用物のサブセットのために考案されたスクリーン(例、キナーゼ、サイクリン)では、ランダムペプチド配列は酵母フェロモンと一緒に(同じコンテキストで)発現される必要はなく、また細胞外の空間に分泌または排出されるように操作される必要もない。ランダムペプチドのライブラリーは、さまざまな態様で発現される。例えばタンパク質/タンパク質相互反応をシグナルするように設計された2つのハイブリッドタンパク質系におけるようなキメラタンパク質の部分として、などである。ランダムペプチドは必ずしも酵母フェロモンを代用する必要はないが、フェロモンとフェロモン受容体間の相互反応のフェロモン経路を下流に向けることができるものでなければならない(キナーゼまたはサイクリンのランダムペプチドインヒビターにおけるように)。
適切な発現プラスミドを構築するに当たっては、これらの遺伝子あるいは酵母中に効果的に発現するこれら以外の遺伝子と関係する終結配列も、異種起源コード配列の発現ベクター3’に連結反応してポリアデニル酸化およびmRNAの終結をする。
ベクター
ベクターは酵母細胞中で複製可能なものでなければならない。それは宿主ゲノムに組み込まれるDNAでもよく、したがってクロモソームDNAの一部分として複製されるか、プラスミドの場合のように自律的に複製するDNAであってもよい。後者の場合は、ベクターは宿主中で機能的な複製起源を有していなければならない。組み込みベクターの場合は、そのベクターは例えば宿主配列に相同の配列、あるいはインテグラーゼをコードする配列のような組み込みに役立つ配列を有するのがよい。
酵母細胞中で複製することが可能であることのほかに、多くの遺伝子操作が便利に行われているように、もしベクターが細菌細胞中で複製できるなら便利である。酵母細胞および細菌細胞の両方で複製可能なシャトルベクターには、YEp,YIp,およびpRSシリーズがある。
ペリプラズム分泌
酵母細胞の細胞質は形質膜と呼ばれる脂質二重層で結合されている。この形質膜と細胞壁との間にペリプラズム空間がある。酵母細胞によって分泌されたペプチドはさまざまなメカニズムにより形質膜を通過して、ペリプラズム空間に入り込む。するとこの分泌されたペプチドは遊離して、ペリプラズム中にあるその他の分子または形質膜の外表面に現れるその他の分子と相互反応する。ペプチドは次に細胞へ再取込みされて細胞壁から培地中に拡散するか、ペリプラズム空間内で分解してしまう。
ペプチドライブラリーは、それが連結される発現系の性質によって決まるが、2つの全く異なるメカニズムのいずれか1つによってペリプラズム中に分泌される。1系においてペプチドは、α因子前駆体中に存在するそれのように、小胞体およびゴルジ体を介して分泌を指示する酵母シグナル配列に構造的に連結する。これは受容体タンパク質が形質膜へ至るのと同一ルートなので、受容体およびペプチドライブラリーの双方を発現する細胞の中に、分泌経路を通過する間に特定のペプチドがその受容体と相互反応する機会がある。このことはオートクリン活性を呈する哺乳動物細胞中において起こることが仮定されていた。こうした相互反応は通過(トランジット)中に連結されたフェロモン応答経路の活性化をもたらす傾向があり、これはペプチドアゴニストを発現するこれら細胞を同定することをなお可能にする。外部から加えられた受容体アゴニストに対するペプチドアンタゴニストを探す場合に、ペプチドアンタゴニストと受容体は双方とも細胞の外部に揃って運び出されるのであるから、この系はなお有効である。このようにペプチドアンタゴニストは、受容体が外部から加えられたアゴニストによって刺激されることを防止するように正しく、かつ、タイミングよく位置しているため、アンタゴニストを産生するこうした細胞は選択可能である。
ペプチドをペリプラズム空間に運ぶもう一つのメカニズムは、STE6/MDR1類のATP依存性輸送体を使うものである。この輸送経路およびタンパク質またはペプチドをこの経路に向けるシグナルは、小胞体に基づく分泌経路ほど十分に性質について解明されていない。それにも拘わらず、ペプチドをER/ゴルジ体経路を移動させる必要なく、これらの輸送体は一定のペプチドを形質膜を直接横切って効果的に排出することができる。a因子プロ配列および末端テトラペプチドのコンテキストのなかでライブラリーを発現することによってこの経路から少なくともペプチドのサブセットが分泌できると、我々は予測している。この系の期待できる長所は、受容体およびペプチドが、両方とも細胞の外部表面に運ばれない限り、接触することはないということである。このようにこの系は細胞の外側から正常時に運ばれているアゴニストおよびアンタゴニストの状態を厳格に模倣している。上述の経路のいずれかを使うことは、本発明の範囲内の行為である。
本発明はペリプラズマ分泌を要件としないか、またはもしその分泌がある場合は、何らかの具体的な分泌シグナルまたは輸送経路を要件としないものである。
実施例1: オートクリン酵母株の作製
この実施例においては、半数体細胞がそれら自身のフェロモンに応答するように操作されているパイロット実験について記載する(第1図)。(一般にここに述べる実施例において機能遺伝子は大文字で表し、不活性化遺伝子は小文字で表している)この目的のため、我々は以下のように設計した組み換えDNA分子を構築した。即ち、
(1) STE3の転写を正常に指示する転写制御因子の下流にSTE2のコード領域を置く。これはS.
cerevisiaeのゲノムSTE3を、STE3転写制御エレメントによってSTE2のコード配列が駆動される配列と置き換えることを可能にするプラスミド中で行われる。
(2) STE2の転写を正常に指示する転写制御因子の下流にSTE3のコード領域を置く。これはS.
cerevisiaeのゲノムSTE3を、STE2転写制御因子によってSTE3のコード配列が駆動される配列と置き換えることを可能にするプラスミド中で行われる。
STE2遺伝子の配列については既知である。Burkholder A.C. とHartwell
L.H.、 1985年、 STE2、 Nuc. Acids Res. 13, 8463; Nakayama N.、 Miyajima A.、 Arai K.、
1985年、STE2 STE3 EMBO J. 4, 2643 参照
STE2遺伝子全体を含む4.3 kb BamHIフラグメントをプラスミドYEp24−STE2(カリフォルニア大学のJ. Thornerから入手)から切り出し、pALTER(Protocols
and Applications Guide, 1991, Promega Corporation, Madison, WI)中にクローニングする。STE2の−鎖(マイナス鎖)を鋳型として使って、SpeI部位をSTE2のATGの7ヌクレオチド(nts)上流に配列番号1の突然変異誘発性オリゴヌクレオチドで導入した(突然変異の塩基は塩基番号15番目のA、17番目および20番目のTであり、開始コドンは塩基番号28〜30番目のATGである)。
2番目のSpeI部位をSTE2終結コドンのすぐ下流に配列番号2の突然変異誘発性オリゴヌクレオチドで同時に導入した(突然変異の塩基は塩基番号15−17番目のTAGであり、終結コドンは塩基番号1〜3番目である)。
コード領域に直接隣接しているSpeI部位を有するSTE2を含む、得られたプラスミドのBamHIフラグメント(Cadus
1096)を次に、酵母組み込みベクターYIp19にサブクローニングしてCadus 1143を得た。STE3配列も公知である。Nakayama N.、
Miyajima A.、 Arai K.、 1985年、 STE2 STE3 EMBO J. 4, 2643; Hagen D.C.、 McCaffrey
G.、 Sprague G.F.、 1986年 STE3 Proc. Natl. Acad. Sci. 83, 1418。STE3はpBLUESCRIPT−KS II中に3.1
kb フラグメントとしてクローニングされたものがDr. J. Broachから入手可能である(Stratagene, 11011 North Torrey Pines Road, La Jolla, CA 92027)。STE3をM13mp18 RF(Cadus 1105を生成)およびpUC19(Cadus
1107を生成)両方の中にKpnI−XbaIフラグメントとしてサブクローニングした。Cadus 1107中の2つのSpeI部位をDNAポリメラーゼIクレノウフラグメントでうめたSpeIで消化して取り除き、ブラントエンド連結反応で再び環状化した。STE3のマイナス鎖を含む1本鎖DNAをCadus 1105を使って得、SpeI部位をSTE3の開始コドンの9nts上流、および終結コドンの3nts下流に、配列番号3,4の突然変異誘発性オリゴヌクレオチドと共に、各々、導入した。
米国BiochemicalのT7-GENプロトコルを使って突然変異誘発を行った(T7-GEN In
Vitro Mutagenesis Kit, Descriptions and Protocols, 1991, United States
Biochemical, P.O. Box 22402, Cleveland, Ohio 44122)。その結果得たCadus 1141の複製型をAflIIおよびKpnIで消化し、2つの新しく導入されたSpeI部位にはさまれたSTE3の全コード領域を含む約2
kbのフラグメントを単離し、AflII−およびKpnI−で消化されたCadus 1107の約3.7 kbのベクターフラグメントと連結反応させてCadus
1138を産生した。Cadus 1138をXbaIおよびKpnIで消化し、STE3含有の2.8 kbフラグメントを酵母組込型XbaI-およびKpnI消化のプラスミドpRS406に連結反応させた(Sikorski,
R.S.とHieter, P. 1989年 「サッカロマイセス・セレビシエ中のDNAの効率的操作のために設計されたシャトルベクターと酵母宿主株との系」 Genetics
122:19-27 to yield Cadus 1145)。
Cadus
1143のSpeIフラグメントをCadus 1145のSpeIフラグメントと置き換えて、STE3をコードする配列がSTE2発現エレメントの制御下に置かれているCadus
1147を産生した。同様にしてCadus 1145のSpeIフラグメントをCadus 1143のSpeIフラグメントと置き換えて、STE2をコードする配列がSTE3発現エレメントの制御下に置かれているCadus
1148を産生した。ポップイン/ポップアウト置換法(Rothstein, R.、 1991年[19]DNA、Methods in Enzymology,
194:281-301)を使ってMATa細胞中でゲノムSTE2をste2−STE3ハイブリッドと置き換えるためCadus 1147を使い、MATα細胞中でゲノムSTE3をste3−STE2ハイブリッドと置き換えるためCadus
1148を使った。Cadus 1147、 1148は選択可能なマーカーURA3を有している。 フェロモン誘発性のFUS1プロモーターの制御下にHIS3を発現するように操作されている交配型aの半数体酵母をCADUS
1147で形質転換し、URA3を発現する形質転換体を選択した。これら形質転換体はSte2pおよびSte3pの両方を発現するが、それらを5−フルオロオロチン酸上にプレートし、そこに異種起源の組み込まれたSTE3を残して内因性STE2を失ったクローンを選択できるようにした。こうした細胞はヒスチジンを欠く培地に生育する能力を示し、フェロモン応答経路のオートクリン刺激のあることを示している。
同様に、フェロモン誘発性のFUS1プロモーターの制御下にHIS3を発現することができる交配型αの半数体をCADUS 1148で形質転換し、組み込まれたSTE2で内因性STE3を置き換えるように選択した。これらの細胞はヒスチジンを欠く培地に生育する能力によって、フェロモン応答経路のオートクリン刺激があることを示した。
実施例2: 株の育種
本例では、フェロモン応答経路のオートクリン活性化を示すクローンの選択を促進する酵母株が構築される。適切な酵母株を構築するために我々は、上述のYIp−STE3およびpRS−STE2のノックアウトプラスミドと、FAR1,SST2,およびHSI3のノックアウトに利用できるプラスミド、および研究機関で一般に入手可能な突然変異株を使うことにする。下記の半数体株は、Meth. Enzymol 194:281-301, 1991に記載の1段階または2段階のノックアウトプロトコルを使って構築できる。即ち、
株1と2は、それらのフェロモン応答経路をそれらが分泌するフェロモンでオートクリン刺激する結果、ヒスチジンを欠く培地に生育できる能力如何につきテストされる。このテストが成功したら、株1は内因性MFα1およびMFα2を不活性化するように改変される。その結果得られた株3のMATα far1 sst2 ste3::STE2::ste3 FUS1::HIS3 mfa1 mfa2は、選択可能な表現型をもはや示さない(つまり株はヒスチジンを栄養要求する)。同様に株2は内因性MFa1およびMFa2を不活性化するように修飾される。その結果得られた株4のMATa far1 sst2 ste2::STE3::ste2 FUS1::HIS3 mfa1 mfa2は、ヒスチジンを栄養要求する。株5および6の使用法については例3および4に述べる。
実施例3: ペプチドライブラリー
本例では、ペプチドがペリプラズム中に分泌または輸送されるようにペプチドをコードする合成オリゴヌクレオチドが発現される。
(1) 成熟α因子をコードするMFα1領域を、AflIIおよびBglII端を有するオリゴヌクレオチドを受けることができる制限部位で、1本鎖の突然変異生成を介して置き換える。AflIIおよびBglII端を有するオリゴヌクレオチドを挿入すると、MFα1シグナルおよびオリゴヌクレオチドによってコードされた配列の上流にリーダー配列を有するタンパク質をコードするプラスミドを産生する。このMFα1シグナルとリーダー配列は、成熟α因子の輸送に正常時に使われる経路を介して、これらの前駆体タンパク質のプロセッシングを指示する。
pDA6302(J.
Thorner, カリフォルニア大学)から1.8 kb EcoRIフラグメントとして得たMFα1遺伝子を、AflIIおよびBglII端のあるオリゴヌクレオチドを受け止める部位を構築して、成熟α因子をコードする領域を除去するオリゴヌクレオチド誘発突然変異生成を行う準備として、pALTER(第2図参照)中にクローニングする。この突然変異生成は、鋳型としてマイナス株および配列番号5の突然変異誘発性のオリゴヌクレオチドを使って行われた。
同時にHindIII部位が配列番号6のオリゴヌクレオチドによりMFα1開始コドンの7nts上流に導入された。
その結果得たプラスミドCadus 1214は、MFα1開始コドンの上流7ntsにHindIII部位、MFα1リーダーペプチド中のKEX2プロセッシング部位をコードする箇所にAflII部位、そしてリーダーコーディング配列から正常時の終結コドンまで(この終結コドンを含む)の全配列の代わりにXhoIおよびBglII部位を有する。したがってCadus
1214の1.5 kb HindIIIフラグメントは、酵母中に発現され、内因性α因子によって正常時に移動される経路から分泌されるオリゴヌクレオチドのクローニング部位を提供する。
ADH1プロモーターおよび5'フランキンク配列をなす配列をpAAH5から1.5 kb BamHI−HindIIIフラグメントとして得(Ammerer, G.、
1983年 [11] ADCI Academic Press, Inc., Meth. Enzymol. 101, 192-201)、高コピーの酵母プラスミドpRS426中に連結反応させた(Christianson,
T.Wら、 1992年、 Gene 110:119-122)。(第3図) 得たプラスミド中の単一のXhoI部位を除去してCadus 1186を得た。Cadus
1214の1.5 kb HindIIIフラグメントをHindIII消化したCadus 1186中に挿入した。このカセット中にクローニングされる配列の発現はADH1プロモーターから開始する。得られたCadus
1215と命名されたプラスミドは、AflIIとBclIで消化することにより、これらの制限エンドヌクレアーゼ末端を有するオリゴヌクレオチドを受容するように調製することができる。オリゴヌクレオチドがMFα1シグナルおよびリーダーペプチドのコンテキスト中に発現される(第4図)。
2つの1本鎖オリゴヌクレオチド配列(下記参照)を合成し、アニーリングし、繰り返して埋めて、変性し、再度アニーリングして、AflIIとBclIで消化すると発現ベクターCadus 1215のポリリンカーに連結反応することができる2本鎖オリゴヌクレオチドを形成する。これら2つの1本鎖オリゴヌクレオチドは配列番号7、8の配列を有している。
ここでNは任意に選択されるヌクレオチドである。なお、配列表ではNの数は3個であるが、その個数は何個であってもよい。得られたプラスミドで形質転換された酵母は、α因子分泌経路から、アミノ酸配列がNおよびn(Nの数)を具体的に選択することによって決定されるペプチドを分泌する(第4図)。
(2) 成熟a因子をコードするMFa1領域は、1本鎖突然変異生成を経てXhoIおよびAflII末端を有するオリゴヌクレオチドを受け止めることができる制限部位で置き換えられる。XhoIおよびAflII端のあるオリゴヌクレオチドの挿入は、そのオリゴヌクレオチドによってコードされる配列の上流にMFa1リーダー配列を有するタンパク質をコードするプラスミドを生成する。このMFa1リーダー配列は、これらの前駆体タンパク質をプロセッシングすることを成熟a因子の輸送のために正常時に使われる経路を介して指示する。
pKK1からBamHIフラグメントとして得たMFA1(J. ThornerとK. Kuchler)をpALTER(Promega)のBamHI部位中に連結反応させた(第5図)。配列番号9のオリゴヌクレオチドを使い、MFA1のマイナス鎖を鋳型として使って、オリゴヌクレオチド誘発変異によりHindIII部位をMFA1開始コドンの5’に挿入した。
MFA1配列の代わりに合成オリゴヌクレオチドを後にクローニングするために短いポリリンカーを導入するのに2番目のオリゴヌクレオチド(配列番号10)を同時に使った。
これらのMFA1配列は21アミノ酸リーダーペプチドのC末端の5つのアミノ酸を終結コドンまでコードする。
得られたプラスミドCadus 1172の1.6 kb HindIIIフラグメントは、MFA1開始コドンおよびリーダーペプチドのN末端の16個のアミノ酸をコードする配列を含み、オリゴヌクレオチドの挿入のためのXhoI、SacIおよびAflII部位がある短いポリリンカーがそれに続く。Cadus
1172の1.6 kb HindIIIフラグメントをHindIII消化Cadus 1186(上記)に連結反応させ、このカセット中にクローニングされた配列の発現をADH1プロモーターの制御下に整える。ポリリンカー中のSacI部位をベクター中にある第2のSacI部位を除去することによって特殊なものにした。得られたCadus
1239と命名されたプラスミドは、MFa1リーダーペプチドのコンテキスト中に発現されるので、XhoIとAflIIとで消化することにより、これらの制限エンドヌクレアーゼ末端を有するオリゴヌクレオチドを受容するように調製することができる(第6図)。
2つの1本鎖オリゴヌクレオチド配列(下記)を合成し、アニーリングし、繰り返して埋めて、変性し、再度アニーリングして、AflIIとBclIIで消化すると、発現ベクターCadus 1239のポリリンカーにクローニングすることができる2本鎖オリゴヌクレオチドを形成する。これらクローニングに使われる2つの1本鎖オリゴヌクレオチドは配列番号11,12の配列を有している。
ここでNは任意に選択されるヌクレオチドである。なお、配列表ではNの数は3個であるが、その個数は何個であってもよい。得られたプラスミドで形質転換された酵母は、a因子輸出のために正常時に使われる経路経由で、アミノ酸配列がNおよびn(Nの数)を具体的に選択することによって決定されるファルネシル化されカルボキシメチル化されたペプチドを輸送する(第6図)。
実施例4: ペプチドの分泌/輸送
この例は酵母が、内因性フェロモンの分泌および輸送のために正常時に使われる経路を介してオリゴヌクレオチドでコードされるペプチド(この場合それらのフェロモン)を分泌または輸送するように、酵母を操作する能力を証明する。
オートクリンMATa株CY588:
MFα1のコンテキスト中でペプチドを発現するように設計されたMATa株(MFα1発現ベクター、Cadus 1215を使って)が構築された。この株の遺伝子型、すなわち我々がCY588と呼ぶものは、MATa
bar1 far1−1 fus1−HIS3 ste14::TRP1 ura3 trp1 leu2 his3である。bar1突然変異は、α因子を消化し、クローニングされたオリゴヌクレオチドによってコードされるペプチドを消化できるプロテアーゼを産生するこの株の能力を除去する。far1突然変異は、正常時にフェロモン応答経路の刺激に続く生育阻止を無効にする。組み込まれたFUS1−HIS3ハイブリッド遺伝子はフェロモン応答経路の活性化の選択可能なシグナルを供給する。そして最後にste14突然変異はFUS1−HIS3読み出しのバックグラウンドを低下させる。MFα細胞中のMFα1前駆体のプロセッシングに関与する酵素もまたMATa細胞中に発現されるのであるから(SpragueとThorner、
in The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces: Gene
_Expression、 1992年、 Cold Spring Harbor Press)、CY588細胞はプラスミドCadus 1215から発現されたオリゴヌクレオチドによってコードされるペプチドを分泌することができるにちがいない。
酵母α因子のコンテキストにおけるペプチドの分泌:
以下をテストするための実験を行った:1.合成オリゴヌクレオチドにコードされるペプチドの発現のためのベクターとして機能するCadus 1215の能力;2.α因子分泌経路を介してのペプチド分泌を指示するように設計されるオリゴヌクレオチドの適格性;3.これらのペプチドを分泌するCY588の能力;4.選択培地に生育することによってフェロモン応答経路を刺激するペプチドに対するCY588の応答能力、以上。これらの実験は13アミノ酸α因子をコードするオリゴヌクレオチドを使って行った。つまり、Cadus
1215(上記)中にクローニングされるオリゴヌクレオチドの縮重配列(NNN)nをこのフェロモンをコードするように特定した(n=13)。CY588を得られたプラスミド(Cadus
1219)で形質転換し、ウラシルを欠く培地で選択された形質転換体を、一定の濃度幅のアミノトリアゾールで補足したヒスチジン欠損培地に移した(バックグラウンド生育を減少させるのに助けとなるHIS3遺伝子産物のインヒビター)。第7図に示される結果は、Cadus
1215によるMFα1のコンテキストに発現された合成オリゴヌクレオチドは、CY588にアミノトリアゾールで補足されたヒスチジン欠損培地に生育する能力を付与したことを示している。総合すると、これらのデータは次のことを示している。即ち、1.CY588はCadus
1215にクローニングされCadus 1215から発現された合成オリゴヌクレオチドの(NNN)n配列によってコードされるペプチドの分泌にとって適格である;また、2.CY588はオートクリンにおいて、そのフェロモン応答経路を刺激する分泌ペプチドに、この場合STE2に結合するα因子によって、応答することができる。
オートクリンMata株CY599:
MFA1のコンテキスト中にペプチドを発現するように設計されたするMATa株(MFA1発現ベクターのCadus 1239を使って)を構築した。CY599と命名されたこの株の遺伝子型は、MATa mfa1 mfa2 far1−1 his3::fus1−HIS3 ste2−STE3 ura3 met1 ade1 leu2 である。この株では、ハイブリッド遺伝子でSTE2を置き換えるのにCadus
1147(上記)を使った。このハイブリッド遺伝子は、STE3をコードする領域が正常時にSTE2の発現を生起する発現エレメントの制御下にある。その結果、a因子受容体はα因子受容体に置き換わる。a因子をコードする遺伝子はこの株から除去される。far1突然変異は生育停止を無効にし、この無効は正常時にフェロモン応答経路の刺激に続く。そしてFUS1−HIS3ハイブリッド遺伝子(HIS3座で組み込まれた)は、フェロモン応答経路の活性化に関する選択可能シグナルを供給する。CY599細胞は、内因性酵母輸送体Ste6の発現によってCadus
1239から発現されたオリゴヌクレオチドでコードされたa因子ペプチドまたはa因子様ペプチドを輸送することができるものと期待された。
酵母a因子経路によるペプチドの輸送:
次のことをテストする実験を行った。即ち、1.合成オリゴヌクレオチドにコードされるペプチドの発現のためのベクターとして機能するCadus 1239の能力;2.正常時にはa因子により使われる経路を介してファルネシル化され、カルボキシメチル化されたペプチドの輸出を指示する、設計されるオリゴヌクレオチドの適格性;3.これらのペプチドを排出するCY599の能力;4.選択培地で生育することによってフェロモン応答経路を刺激するペプチドに対するCY599の応答能力、以上。これらの実験は12アミノ酸a因子をコードするオリゴヌクレオチドを使って行った。具体的には、Cadus
1239(上記)中にクローニングされるオリゴヌクレオチドの縮重配列(NNN)nがa因子フェロモンのペプチド成分をコードする(n=12)。CY599を得られたプラスミド(Cadus
1220)で形質転換し、ウラシルを欠く培地で選択された形質転換体を、一定の濃度幅のアミノトリアゾールで補足したヒスチジン欠損培地に移した。第8図に示される結果は、Cadus
1220によるMFA1のコンテキストに発現された合成オリゴヌクレオチドは、CY599にヒスチジン欠損培地における向上されたアミノトリアゾール耐性成長を付与したことを証明している。総合すると、これらのデータは次のことを示している。即ち、1.Cadus
1220および設計されたオリゴヌクレオチドは、その合成オリゴヌクレオチドの(NNN)n配列によってコードされるファルネシル化、カルボキシメチル化ペプチドの発現および排出を指示することにおいて適格である;また、2.CY599はオートクリンにおいて、そのフェロモン応答経路を刺激するファルネシル化、カルボキシメチル化ペプチドに応答することができる。この場合STE3にa因子が結合しシグナルが発生する。
実施例5: 概念の証明
この実施例は、機能的なフェロモン類似体として挙動するペプチドを発見するためのオートクリン系の利用法について証明するものである。同様に、この系は何らかのフェロモン受容体代用物と生産的に相互反応するペプチドを発見するのに利用することができる。
CY588(上記の例5の株5参照)は、機能的なα因子類似体(第4図)の単離のためのランダムトリデカペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを含有するCADUS1215で形質転換される。CY599(上記例2の株6参照)は、機能的なa因子類似体(第6図)の単離のためのランダム配列のオリゴを含有するCADUS1239で形質転換される。形質転換後に、ヒスチジン欠損培地で生育することができるいずれかの株のコロニーはプラスミドDNAの調製のため増殖させ、発現プラスミド中にクローニングされたオリゴヌクレオチドの塩基配列を決定し、フェロモン受容体を活性化すると推定されるペプチドのアミノ酸配列を決定する。このプラスミドは次に、フェロモン受容体を活性化するペプチドをコードする能力を確認するために、同種同系株[isogenic
strain]中にトランスフェクションされる。こうした実験が成功裡に完了したら、フェロモン応答経路に結合する膜受容体を活性化することができるペプチドを発見するための系の可能性について証明することになろう。
発現プラスミドCADUS1215によって発現されるべきランダムオリゴヌクレオチドは、配列番号13として構築され、トリデカペプチドをコードする。ここでNは何らかのヌクレオチド、Kは40:60の比率のTまたはGのいずれか(Proc Natl Acad Sci 87:6378、 1990年; ibid 89:5393、 1992年)を示す。なお、塩基番号第8〜13番目の配列はAflII部位、塩基番号第68〜73番目の配列はBclI部位である。このオリゴヌクレオチドは次のように設計されている。即ち、AflIIとBclI部位はオリゴをCADUS1215のAflIIとBclI部位に挿入することができ;オリゴの5’端にあるAflII部位の5’のHindIII部位は、オリゴのクローニングに将来の柔軟性があるようにされていて;野生型配列に存在し、三重らせんを形成することができるGAGGCTとGAGAのリピートの実質的な反復[the
virtual repeat]は、コードされたアミノ酸を変更することなく変えられる。上記のランダムオリゴヌクレオチドは実際には配列番号14,15の2つのオリゴから構築されるであろう。
ここでMは40:60の比率をなすAまたはCのいずれかである。オリゴはお互いにアニーリングされ、繰り返し埋められ、変性され、再度アニーリングされる(Keyら, Gene 1993年)。二重鎖産物がAflIIとBclIで切断され、AflIIとBclI消化されたCADUS1215中に連結反応させられる。AflII/BclI連結はランダム重合体[randomers]の翻訳を終結させるTGA終結コドンを作り出す(第4図)。AflオーバーハングのTA成分のため、オリゴは4℃でAflII−およびBclI−消化のpADC−MFαに連結反応する。
発現プラスミドCADUS1239で発現されるランダムオリゴヌクレオチドは、配列番号16として構築され、モノデカペプチドをコードする。ここでKは40:60比のTまたはGのいずれか(Proc Natl Acad set 87:6378, 1990; ibid 89:5393, 1992参照)を示す。なお、塩基番号第5〜10番目の配列はXhoI部位、塩基番号第70〜75番目の配列はAflII部位である。CADUS1239のXhoIとAflII部位にクローニングするときは、ADH1プロモーターの制御下に発現されるプロペプチドは、ランダムアミノ酸が続き、CVIA(野生型a因子のC末端テトラペプチド)が続くMFa1の全リーダーペプチドを有している。プロペプチドのプロセッシングにより、ファルネシル化されカルボキシメチル化されたC末端のシステインが続く11個のランダムアミノ酸を有しているドデカペプチドが分泌される。
上述の工程を経てCADUS1239中における発現のためのオリゴヌクレオチドは実際上配列番号17,18の2つのオリゴから構築される。ここでMは40:60比のAまたはCのいずれかを示す。なお、配列番号17の塩基番号第5〜10番目の配列はXhoI部位、配列番号18の塩基番号第5〜10番目の配列はAflII部位である。
実施例6: ATP−依存性トランスメンブラン輸送体の機能を調節する分子を発見することができるように設計された薬物スクリーニング:
関連タンパク質ヒトMdr1,ヒトCFTRおよびヒトMRPをコードするクローニングされたDNAを使用できることは、これらの分子を発現する酵母株の構築を可能にする。得られた株はこれらのタンパク質の機能を探査するのに、また、化学療法に対する細胞耐性またはイオン輸送に係る機能を阻害したり促進したりすることができる分子を発見するのに使うことができる。本分析は、酵母Ste6を代用することができるヒトタンパク質を発現するオートクリン酵母から酵母交配フェロモンa因子の輸送を利用する。
A.これらの実験に使うため、Karl Kuchler(ウィーン大学)から下記のMFa1およびMdr1含有プラスミドを入手した。即ち、
(1) pYMA177(Cadus
1067である)。第9図参照。
(2) YEp351中にMFa1をコードする配列を含むpKK1;a因子は増加されたプラスミドコピー数のためこのプラスミドから過剰発現される。
(3) pHaMDR1(wt)はレトロウイルスベクター中の野生型Mdr1 cDNAを供給する(当初はMichael
Gottesman, NIHから入手した)。
B.これらの実験で使用するためCadusで構築したプラスミド:
MFa1配列を有する1.5
kb BamHI−BglIIフラグメントをpYMA177から取り出し、BamHI消化したpYMA177に連結反応させてCadus 1079を産生した。野生型ヒトMdr1(G185)配列を含有する965
bpフラグメントを単離するため、Cadus 1079をBglIIで消化した。965 bp BglIIフラグメントをBglII消化したCadus 1093に挿入してCadus
1097を産生した。Cadus 1097構築物の存在をジデオキシヌクレオチドを使って配列決定することにより立証した。Cadus 1164を産生するため、pYMA177をBamHIで消化しMFa1コード配列を除去するため再環化させた。pYMA177から得た702
bp BglII−BamHIフラグメントをpYMA177の大きいBamHI−BglIIフラグメントに連結反応させることによってCadus 1165を構築した。これは1.6
kb MFaBamHIフラグメントとヒトMdr1(G185V)をコードする965 bp Bglフラグメントの両方を除去する結果をもたらす。得られるプラスミドはCadus
1165である。
pHaMDR1からの野生型ヒトMdr1をコードする配列を有する965 bp BglIIフラグメントをBglII消化したCadus
1165に連結反応させてCadus 1176を得た。
pRS426(Cadus
1019)はURA3コントロールプラスミドとして機能する。 これらの実験に使われる最終プラスミド列は次の通りである。
酵母におけるヒトMdr1構築物発現の証拠:
URA3コントロールプラスミド(pRS426=1019)のほかにCADUSプラスミド1065、
1079、 及び1097が酵母のura3-,ste6-株に形質転換された(WKK6=CY20=MATa ura3−1 leu2−3,112 his3−11,15 trp1−1 ade2−1 can1−102 ste6::HIS3、Karl
Kuchlerから入手)。個々の形質転換体はSD−URA培地で一晩のうちに成長し、約5×106の細胞を含む菌層を3mlのYPD重層寒天中にあるYPDプレート上に注いだ。寒天の上面が固化後に殺菌フィルターディスクをプレート上に被せ5mlのDMSOまたは5mMのDMSOに溶かしたバリノマイシンをフィルターディスク上に垂らした。この分析によってWKK6細胞中のプラスミド1079から得た突然変異Mdr1の発現はバリノマイシンに対する弱い耐性を付与したが、プラスミド1097から得た野生型Mdr1の発現は完全な耐性を付与した。
2つの細胞系におけるa因子輸送体によるMdr1活性を分析する試み:
さまざまなヒトMdr1構築物で形質転換されたWKK6を交配しようとするいくつかの試みは全て失敗した。これは交配欠陥の部分的な相補性が見られるマウスmdr3遺伝子を使った公の実験と対照的である(Raymondら、 1992年)。
さまざまなMdr1構築物(1019、 1065、 1079、 1097)を有するWKK6細胞をa因子に超感受性なMatα細胞(CY32=MAT leu2−3,112 trp−289 ura3−52 his3*1 sst2*2 GAL+)の菌層にパッチ形成することによって「ハロー」分析を行った。ハローは全てSTE6+細胞で産生されたものよりずっと小さかったが、ハローのサイズにおける僅差が次の相対的順序で観察された。即ち、1097>1079〜1065>1019。これはa因子がSTE6のために欠失された酵母中に発現した野生型ヒトMdr1タンパク質によって輸送できるが、ハロー分析は迅速な薬物のスクリーニングに受け入れられやすいとは考えられないことを示している。
ハロー分析はインジケータの菌層中にある細胞の生育停止によるste6-Mdr1株から分泌のa因子を検出する。別の、そしてより高感度な方法はフェロモンシグナルの転写応答を利用するものである。HIS3遺伝子(CY104=MATα ura3 leu2 trp1 his3 fus1−HIS3 can1 ste14::TRP1)に関与するa因子のある株は、さまざまなプラスミドを有しているSTE6+(CY19=W302−1a=MATa ura3−1 leu2−3,112 his3−11,15 trp1−1 ade 2−1 can1−102)またはste6-(WKK6=CY20=MATa ura3−1 leu2−3,112 his3−11,15 trp1−1 ade2−1 can1−102 ste6::HIS3)株でクロスストリークされる。このクロスストリークは、a因子で刺激されたらCY104インジケータ株だけが生育するようにヒスチジンおよびトリプトファンを欠くプレート上で行う。この方法によって見られるa因子分泌の順番はCY58>CY61〜CY62〜CY63>CY60である。ここでCY58=CY19(STE6+,1019),CY60=CY20(ste6-,1019),CY61=CY20(ste6-、1065),CY62=CY20(ste6-,1079)そしてCY63=CY20(ste6-,1097)である。このようにSTE6+とste6-とのa因子生産における差との因子の過剰生産の有無はこの系で検出できるが、a因子のスクリーニングにおけるMdr1活性は検出できない。これらの実験では、ste6-のa因子過剰生産株からつくられたシグナルがa因子分泌または溶菌細胞から得たa因子の放出のための別の経路に起因するものなのか否か不明である。
オートクリン系におけるa因子輸送体によるMdr1活性の分析:
Mdr1媒介のa因子輸送体を検出する単一株の系を、感受性と再生産性を改善し、溶菌細胞から放出されるa因子の潜在的な虚偽シグナル(細胞の濃度依存現象)を除くために、構築した。ヒスチジンを欠く培地での生育によってa因子に応答することができ、a因子分泌に対する唯一の障害は機能的なSTE6遺伝子を有しない株(CY293=MATa ura3 leu2 trp1 his3 fus1−HIS3 can1 ade2−1 ste2−STE3 ste6::TRP1)を構築した。事実、この株の機能的なSTE6遺伝子を含有していない直接の前駆体は、3mMアミノトリアゾールを含有するHIS培地に積極的に生育できるが、CY293は全然生育しなかった。HIS3酵素の競合的なインヒビターであるアミノトリアゾールの添加は、これらの株のバックグラウンド成長を減少させるのに必要である。
Mdr1含有プラスミドをCY293中に導入し、その形質転換体を0.1または023mMのアミノトリアゾールを含有する−HISプレート上にストリークした。このようにしてできた成長パターンは1097>1067>1065〜1176>1164〜1019であった。CY293のSTE6+親株は、それらの形質転換体のどんなものより著しく激しい成長を示した。しかしヒトMdr1媒介のa因子分子はこのオートクリン系中に明確に検出できる。1097で形質転換されたCY293は、Mdr1活性を阻害する薬物(−HIS+アミノトリアゾールで生育減殺する)は勿論、Mdr1タンパク質の活性を促進する薬物(−HIS+アミノトリアゾールで生育増進する)をスクリーニングするのに使うことができる。後者の場合、対照はMdr1依存の仕方で酵母生育を阻害する化合物を同定するように設計されていなければならない。
オートクリン酵母発現Mdr1の改良
上記の結果はヒトMdr1タンパク質がa因子を、酵母STE6タンパク質がするよりも非効率的に輸送していることを示している。ヒトMdr1によってより効率的に輸送されるが、a因子受容体(STE3タンパク質)に対するアゴニスト活性を保持する突然変異a因子分子を単離する試みがなされるであろう。これをするのに、a因子をコードする配列が、「汚れた」ヌクレオチドを使って化学合成されa因子発現カセットに挿入されるであろう。「汚れた」合成の例は、Gが正常時に現れているa因子配列中の位置に70%のG、およびA,T,C各々の10%からなる混合物からヌクレオチドを取り込むことである。このようにして作ったオリゴヌクレオチドを使って、ペプチドの多様なライブラリーを酵母中に発現させ、STE3タンパク質にシグナルする能力を保持するがヒトMdr1による輸送の好ましい基質ともなるペプチドを同定するためのスクリーニングを行うことができる。
この系の第2の改良点は、フェロモン誘発性の「陰性選択(ネガティブセレクション)」マーカーを追加することであろう。例えばFUS1プロモーターをGAL1をコードする配列に接続することができる。GAL1の発現は、GAL7またはGAL10遺伝子のいずれかにおける突然変異がある株中にガラクトースが存在するとき、有毒である。オートクリンMdr1株のコンテキストでは、この選択系は細胞をガラクトース感受性にしてしまう。Mdr1タンパク質がa因子を分泌する能力を阻害する化合物の追加は、この株をガラクトース含有培地に生育することを可能にする。この選択系は致死率による虚偽の陽性を排除する。対照はまたフェロモン応答経路におけるそれ以外の地点で妨げる化合物を同定するようにも設計されていなければならない。
この系の第3の改良点は、哺乳動物MDR遺伝子と均等に機能する酵母遺伝子の不活性化に関係することである。多面発現的薬物耐性[pleiotropic drug resistance](PDR)に関係する遺伝子のネットワークが酵母中に同定されている。この修飾は、細胞内のターゲットとの化合物の相互反応を分析するために設計される酵母のスクリーニングに有益であろう。
ヒトMdr1を発現する改良されたオートクリン酵母株は、このタンパク質の輸送機能を阻害する分子の化合物ライブラリーをスクリーニングするのに利用されるであろう。また、ランダムペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを有するMfα発現カセットが、オートクリンMdr1株中に発現されて、a因子またはa因子類似体のMdr1による輸送を阻害することができるペプチドを同定するであろう。
実施例7: 野生型ヒトCFTRに輸送される酵母a因子の類似体の同定
この実施例は、例えば突然変異ヒトCFTRタンパク質のような、機能不全ATP依存性トランスメンブラン輸送体による輸送を促進することができる分子を同定するオートクリン酵母株の利用法につき記載するものである。野生型ヒトCFTRタンパク質は、生a因子フェロモンを輸送することにより、酵母中でのSte6機能の代用とはならない(John Teem、 未発表の観察)。突然変異CFTR機能を促進する分子を発見するためにオートクリン酵母株を最大限に開発するため、CFTRによる輸送の基質として働くことができるa因子様ペプチドが同定される。フェロモンシグナル発信を開始するためには、a因子類似体は、フェロモン受容体のSte3に機能的に結合もしなければならない。CFTR輸送基質は、Ste6発現を欠失されているが野生型ヒトCFTRタンパク質は発現するオートクリン酵母中にランダムに突然変異されたMFa発現カセットを発現させることによって同定される。
オートクリン酵母における突然変異ヒトCFTRタンパク質の発現:
a因子様ペプチドフェロモンのCFTRによる輸送は、曩胞性繊維症[cystic
fibrosis](CF)突然変異を含有するCFTRタンパク質の輸送機能を増大する化合物を同定するのに使われるスクリーニングの設計の基礎として役立てられる。Ste6/CFTRキメラを使ったTeemら(1993)による研究に基づき、突然変異CFTRはa因子類似体を効率的に輸送するものとは期待できない。Teemら(1993)は、ヒトCFTRの第一のヌクレオチド結合ドメインをコードする配列のさまざまな部分を酵母STE6の類似配列で置換してキメラタンパクを作製している。キメラタンパク質は酵母中に発現されると生酵母a因子を輸送する。しかしCF突然変異(△F508)の導入はこれらのタンパク質が酵母フェロモンを輸送する能力を減殺する。Teemらはまた、酵母中に復帰変異株、つまりa因子を輸送するCF突然変異を有するキメラの能力を保持する第2位の突然変異を有するタンパク質を同定した。復帰変異株突然変異を哺乳動物細胞中に発現された欠陥あるCFTRタンパク質中に導入することは、△F508タンパク質のプロセッシングとチャネルの欠陥を一部分減少させた。
CFTRによる輸送の基質として機能する酵母a因子の類似体の同定で、Ste6配列を含有するキメラタンパク質を生成する必要もなく、突然変異体を酵母に発現されたヒトCFTRタンパク質中に直接導入することができる。これは潜在的なCF治療術をヒトCFTR分子全体にターゲッティングすることを可能にする。興味のある突然変異としては、△551DのほかにG551D,N1302K,△1507がある。これらの突然変異は自然発生的なもので、感染した患者に曩胞性繊維症を起こし、CFTRの輸送およびプロセッシングまたはそのタンパク質の機能調節のいずれかに影響するようである(Welsh
と Smith 1993)。これらの突然変異はまたCFTRの最も一般的な変形例の一つに位置付けられる。CFTRによる輸送のための基質として機能するペプチドを同定することができない場合には、キメラSte6/CFTRタンパク質と変形されなかったa因子が酵母のオートクリン株に基づくスクリーニングに利用することができる。これらの株はスクリーニングの実際においてはっきりと利点を提供する、即ち、大規模オートメーションのための容易な適用性、フェロモンのシグナル発信に関する従来の酵母交配細胞の分析に比較して簡単で向上された感度、活性ペプチド構造を同定する今日の技術を採用できる可能性などである。
突然変異CFTRによるa因子様ペプチドの輸送を促進する化合物の同定:
突然変異ヒトCFTRタンパク質を発現するオートクリン株は肥沃な培地で生育することができるが、a因子類似体の不適格な輸送やシグナル発信のために、選択(ヒスチジン欠損)培地で効率的に生育しない。これらの株におけるフェロモンシグナル発信は、His3酵素の転写を制御するFUS1プロモーター配列からの発現を開始する。His3の発現はヒスチジン欠損培地における生育にとって必要である。これらの株は、突然変異CFTRのa因子類似体を輸送しヒスチジン欠損培地で酵母を生育させる能力を持っていない状態を逆転させる分子を同定する化合物のライブラリーをスクリーニングするのに使われる。あるいは活性化合物はa因子受容体Ste3に直接シグナル発信することができるか、別の場所でフェロモン応答経路と相互反応することができる。適切な制御はこれらの可能性から適当なものを区別する。
突然変異CFTRによる輸送を促進するランダムペプチドの同定:
ランダムペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを含有するプラスミドは、突然変異ヒトCFTRを有するオートクリン酵母中に発現される。α因子に基づいた発現カセットを使って発現されるこれらのペプチドは、酵母分泌経路経由で細胞外環境に輸送される。関心のあるペプチドは、ヒスチジン欠損培地における突然変異CFTR含有株の生育を可能にする能力の有無によって同定される活性ペプチドは、突然変異ヒトCFTRによるa因子類似体の輸送を可能にする。あるいはペプチドはフェロモン応答経路の別の箇所で相互反応することができる。適切な制御はこれら可能な結果各々を区別する。
実施例8: 酵母KEX2のためのプロホルモンコンバーターゼ
[prohormone convertase] PC1の代用物の予言的例
哺乳動物プロホルモンコンバーターゼPC1/PC3およびPC2は、プロオピオメラノコルチン(POMC)のタンパク質分解プロセッシングに関係している。PC1は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)とβリポトロピンを選択的に放出し、PC2はβエンドルフィン、接合ペプチド[joining peptide](JP)を含有するN末端の伸びたACTH、およびαメラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)またはデス(des-)アセチルα−MSHのいずれかを選択的に放出する(Benjannet,
S.ら、 1991年、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3564-3568; Seideh N.G.ら、 1992年、 FEBS
Lett. 310235-239)。例えば、哺乳動物PC1がキメラプレ-プロ-POMC/α因子ペプチドをプロセスし、成熟α因子の分泌およびオートクリン方式でのヒスチジンのプロトトロフィー(原栄養性)にスクリーニングする株を刺激することを可能にする酵母株について記載する。オートクリン株は次のようにして構築される。即ち、1.酵母KEX2が破壊される。2.酵母KEX2活性が哺乳動物PC1の活性と置き換えられる。3.PC1によって認識される二塩基分割部位を有する新規のMFα構築物が発現する。4.成熟α因子の産生にPC1活性が要求される。5.株の生育が成熟α因子の産生によって刺激される。以上である。
この例のための親株の遺伝子型は、MATa bar1::hisG far1−1 fus1−HIS3 ste14::TRP1 ura3 trp1 leu2 his3である。最初にこの株のKEX2対立遺伝子が、切除される開始コドンから終結コドンまでの全コーディング領域でKEX2座の両側領域をコードする組み込みプラスミド(pkex2△)を使って破壊される。親株へのトランスフェクションがその後に行われるBsu36Iによるpkex2△の開裂は、このプラスミドのKEX2座への組み込みをもたらす。形質転換はウラシル原栄養性への変換としてスコアされる。URA+形質転換体をその後5−フルオロオロチン酸含有のプレートへ移動するとkex1△対立遺伝子を有するコロニー成長をもたらす。組み込みはサザーンブロット分析およびKEX2座を囲むオリゴヌクレオチドプライマーを使ったコロニーPCRで確認することができる。このkex1△株は外因的に添加されたα因子の存在下でヒスチジン欠損培地に生育することができるが、Cadus
1219(URA3 2mu−ori REP3 AmpR f1−ori α因子)から発現したプレ-プロ-POMC/α因子キメラのプロセッシングはKEX2活性を要求するので、Cadus
1219でひとたびトランスフェクションされるとヒスチジン欠損培地でオートクリン式で生育することができない。
株をスクリーニングするときは、PC1活性がα因子ペプチドの成熟に切除されたKEX2活性に代わって代用される。マウスから得たPC1 cDNA(入手番号 M69196)(Kornerら、 1991年、 Proc. Natl. Acad. Sci USA 88:6834-6838)が753アミノ酸のタンパク質をコードするものとして発見された。PC1をコードする配列はハイコピー複製プラスミド(Cadus
1289)中にクローニングされる。このプラスミドで形質転換された酵母細胞はロイシン欠損培地に生育する能力を得て、PGKプロモーターが存在するためハイレベルなPC1タンパク質を発現する。
ヒトPOMC(入手番号 K02406; Takahashi, H.ら、 1983年 Nucleic Acids Research 11:6847-6858)のプレプロ領域をコードするハイブリッド遺伝子と成熟α因子の1つのリピートのコーディング領域は次のようにして構築される。即ち、ヒトPOMCのプレプロ領域をHindIII部位の5’端およびBbsI部位の3’端でVENTポリメラーゼと配列番号19,20のプライマーを使って増幅する。配列番号19の塩基番号第4〜9番目の配列はHindIII部位であり、塩基番号第10〜12番目の配列は開始コドンである。配列番号20の塩基番号第4〜9番目の配列はBbsI部位である。このとき配列番号21のアミノ酸配列を3’端にBbsIと残し、−KR−二塩基開裂配列にオーバーハングを残す。α因子のコーディング領域はCadus
1219からBbsI部位の5’端とBglII部位の3’端で配列番号22,23のプライマーを使って増幅される。配列番号22の第4〜9番目の配列はBbsI部位である。配列番号23の第4〜9番目の配列はBglII部位であり、塩基番号第10〜12番目の配列は終止コドンである。
POMCのプレプロセグメントをコードするPCRフラグメントをHindIIIおよびBbsIで切断されゲル精製され、α因子をコードするPCRフラグメントはBbsIとBglIIで切断されてゲル精製され、Cadus
1215がBglIIと部分的にHindIIIで切断され、pAlterポリリンカー配列を有するHindIII−BglII制限ベクターがゲル精製される。2つのPCR産物とHindIII−BglIIで消化されたCadus
1215との3部連結反応は、最初の104アミノ酸残基がPOMCからで残りの17はα因子からのハイブリッドPOMC/α因子遺伝子を産生する。PC1開裂部位周辺のこのハイブリッド遺伝子は、配列番号24である。ここでPOMCから与えられた残基には下線が引いてある、また二塩基開裂部位は下線付の太字、成熟α因子の配列はイタリックで表してある。二塩基開裂部位と成熟α因子のアミノ末端トリプトファンとの間に並列しているテトラペプチド−EAEA−は、ste13pのジペプチジルアミノペプチダーゼ活性によって除去される。
PC1をコードするプラスミドとPOMC/α因子プラスミドとを遺伝子型MATa bar1::hisG far1−1 fus1−HIS3 ste14::TRP1 ura3 trp1 leu2 his3を有するkex2△株中に導入することは、POMC/α因子プラスミドでコードされたα因子のコピー1個のアミノ末端側にPC1に媒介された二塩基モチーフの開裂に依存性のオートクリン成長をもたらす。つまりこの株のオートクリン挙動はPC1の発現によるものである。哺乳動物PC1の代わりにPC2を発現させることによって適切な負の制御を行う。α因子遺伝子の上流に挿入されるPOMCの開裂部位はPC2によって認識されない。したがってα因子遺伝子の5’端に付加するPOMCからの開裂部位を上手に選択することによってPC1に対するPC2依存性プロセッシングに特異性の株を構築することが可能である。この株のオートクリン成長を破壊するが、この株がヒスチジン含有培地で生育するときは生育阻害効果をもたない化合物またはランダムペプチドは、PC1活性の潜在的インヒビターである。
実施例9: 酵母STE7のヒトMEK(MAPキナーゼキナーゼ)による置換の予言的例
哺乳動物キナーゼのインヒビターとして作用する化合物のスクリーニングを開発するためSTE7活性がなくて酵母発現ベクター中にヒトMEKを有する酵母株を構築することができる。また、後述するように、この株はリポーター能も備えている。
酵母STE7遺伝子を破壊するためには次のアプローチをとることができる。即ち、マルチコピーE.coliベクターのpBluescriptKS+を、5’ノンコーディングのため、またコーディング領域の把握可能な部分のため、削除されたSTE7配列とプロモーター配列とを含むように操作する。・ste7配列を酵母URA3遺伝子を含有するBluescriptベースのプラスミドであるpRS406・ClaI中にサブクローニングして、得たプラスミドであるpRS406・ClaI・ste7を次のようにして野生型STE7遺伝子を破壊するのに使った。即ち、pRS406・ste7をClaIで消化し、酵母株CY252(遺伝子型 MATa ste14::TRP1 fus1−HIS3 far1−1 ura3 leu2 trp1 his3 ade2−1 met1)をウラシル原栄養性に形質転換するのに使う。5−フルオロオロチン酸含有の培地にUra+形質転換体をその後に移すと、ste7・対立遺伝子含有のコロニーをもたらす。このことはサザン分析およびαフェロモンで刺激されるとヒスチジンが不存在のときはその株は生育できない事実によって確認されている。
酵母細胞中にヒトMEKを発現することができるプラスミドを構築するために、配列番号25,26のオリゴヌクレオチドを構築する。
鋳型としてのヒトcDNAとのポリメラーゼ連鎖反応[polymerase chain reaction](PCR)に使うと、これらのプライマーはヒトMEKをコードするDNAの増幅を指示する。ヒトMEK遺伝子を酵母発現ベクターに挿入ため、PCR産物をEsp3I(配列番号25の塩基番号第4〜9番目の配列)およびXbaI(配列番号26の塩基番号第4〜9番目の配列)で消化し、従前にNcoIおよびXbaIで消化しておいた酵母−E.coliシャトルプラスミドCadus 1289に連結反応させる。得られたプラスミドは酵母細胞中で自律的に複製し、酵母leu2突然変異体にロイシン原栄養性を付与して、構成的なPGK1プロモーターからのMEKの発現を指示する。
上記PGK1−MEKプラスミドがCY252−ste7・細胞中に導入されると、フェロモン応答経路中でSTE7を機能的に置き換えるMEKの能力があるため、αフェロモンでインキュベーションされたときヒスチジンの非存在下で生育する能力を回復し、これによって染色体中に存在するfus1−HIS3融合を刺激する。そうしたらヒスチジン非存在の条件下にαフェロモン依存性の生育を逆転することができるが、ヒスチジンの存在下では非特異的毒性効果をもたない化合物を求めてスクリーニングすることができる。
オートクリンの実施例では、作られる酵母細胞ste7・は、次の遺伝子型である。即ち、MAT bar1::hisG far1−1 fus1−HIS3 ste14::trp1::LYS2 ura3 trp1 leu2 his3 lys2(CY588trp)。次の手順はCY252に関する上記のものと全く同一である。即ち、CY588trpste7・を構築後、生成された細胞を、分泌αフェロモンを発現することができるプラスミドは勿論、MEKを発現するプラスミドで形質転換する。この形質転換した株(CY588trpste7・[MEK/MFα])はヒスチジンを欠くが多量(2022222222222222mM)の3−アミノトリアゾールを含有する培地で生育することができる。この株のこの培地での生育は両方のプラスミドの存在(各々が必要だが、どちらも十分でない)に厳密に依存している。この生育を阻止する化合物は、外因的に付加されたαフェロモンは不要であるという例外はあるが、上述のようにテストし得る。
またCY588trpste7・[MEK/MFα]は細胞質的にターゲットされたランダムペプチドを発現するプラスミドライブラリーで形質転換できる。MEKの機能に干渉するものは、ヒスチジンのない(そして潜在的に3−アミノトリアゾールを含有する)培地にレプリカ培養することで同定される。このような阻害ペプチドを発現する細胞はHis-である。こうしたスクリ[ニングは、fus1−URA3のような陰性選択の可能性があるリポーター構築物を付加することでストリームライン化することができる。この場合阻害ペプチドはターゲット株に、5−FOA−(減少させられたfus1−URA3のある細胞用)またはガラクトース(gal10-バックグラウンドで減少させられたfus1−GAL1のある細胞用)を有する培地での生育能力を付与する。
確認試験には、ランダムペプチドの存在下におけるMEK、または潜在的MEKインヒビターとして同定されるその他の分子、の活性に関する生化学的分析がある。
交配フェロモンの正常の合成および放出の概略を示す。 第1図の1は交配フェロモンの正常の合成および放出の第1段階を描く。 第1図の2は交配フェロモンの正常の合成および放出の第2段階を描く。 第1図の3は交配フェロモンの正常の合成および放出の第3段階を描く。 第2図はMFα1の突然変異誘発に使われるプラスミドの概念図である。 第3図はMFα発現カセットの構築に使われるプラスミドの概念図である。 第4図はMFα1中にランダムオリゴヌクレオチドを発現させるのに使われる構造体の概念図である。 第5図はMFα1の突然変異誘発に使われるプラスミドの概念図である。 第6図はMFa1中にランダムオリゴヌクレオチドを発現させるために使われる構造体の概念図である。 第7図の7A〜7Dは、オートクリンMata株が分泌し、α因子によるシグナル発信に応答することを示す。7Aは−HISである。 7Bは、−HIS+1mMアミノトリアゾールである。 7Cは、−HIS+20mMアミノトリアゾールである。 7Dは、−HIS+40mMアミノトリアゾールである。 第8図の8A〜8Dは、オートクリンMata株が分泌し、a因子でシグナル発信に応答することを示す。8Aは−HISである。 8Bは、−HIS+5mMアミノトリアゾールである。 8Cは、−HIS+10mMアミノトリアゾールである。 8Dは、−HIS+20mMアミノトリアゾールである。 第9図は、突然変異体ヒトMDR1(G185V突然変異)を有するプラスミドpYMA177を示す。 表2の参考文献(1/9)である。 表2の参考文献(2/9)である。 表2の参考文献(3/9)である。 表2の参考文献(4/9)である。 表2の参考文献(5/9)である。 表2の参考文献(6/9)である。 表2の参考文献(7/9)である。 表2の参考文献(8/9)である。 表2の参考文献(9/9)である。 本発明に関連する一般参考文献(1/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(2/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(3/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(4/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(5/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(6/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(7/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(8/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(9/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(10/11)である。 本発明に関連する一般参考文献(11/11)である。

Claims (75)

  1. (a)酵母細胞のフェロモン系において、相当する酵母フェロモン系タンパク質が自然に行う機能を行う酵母フェロモン系タンパク質の異種起源代用物をコードする第1の異種遺伝子と、(b)異種起源のペプチドをコードする第2の異種遺伝子と、を含む、フェロモン系を有する酵母細胞であって、上記ペプチドが酵母細胞において上記代用物の上記フェロモン系との相互反応を調節し、その調節が選択可能またはスクリーニング可能であり、上記異種起源のペプチドの長さが2〜200アミノ酸であることを特徴とする酵母細胞。
  2. 内因性フェロモン系タンパク質が機能を有する形態で生成されるものでないことを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  3. ペプチドが細胞によってペリプラズム空間中に分泌され、そこからそれが上記代用物と相互反応することを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  4. 前記異種起源ペプチドが、開裂可能な酵母リーダーペプチドと成熟ペプチドからなる前駆体ペプチドの形で発現し、該リーダーペプチドが該異種起源ペプチドの分泌を制御することを特徴とする請求項3に記載の酵母細胞。
  5. 前記リーダーペプチドがサッカロマイセス・セレビシエα因子またはa因子のリーダーペプチドに相当するリーダーペプチドである請求項4に記載の酵母細胞。
  6. 酵母フェロモン系の野生型フェロモンが分泌されないことを特徴とする請求項4に記載の酵母細胞。
  7. 前記異種起源ペプチドが非分泌型でも発現されることを特徴とする請求項3に記載の酵母細胞。
  8. 細胞が野生型株に比較してそのフェロモンシグナル経路を反復または引伸ばされた刺激を通して非感受性にする傾向が減少した突然変異株であることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  9. SST2遺伝子が機能的に発現されないことを特徴とする請求項8に記載の酵母細胞。
  10. 内在性FAR1遺伝子が機能的に発現されないことを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  11. フェロモンシグナル経路によって活性化される選択可能なマーカーをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  12. 上記選択可能なマーカーが、外来の選択可能な遣伝子に制御可能に連結されたフェロモン応答プロモーターを含むレポーター遺伝子を含むマーカーである、請求項11に記載の酵母細胞。
  13. 選択可能な遺伝子がIGPデヒドラターゼ遺伝子であることを特徴とする請求項12に記載の酵母細胞。
  14. 前記フェロモン応答プロモーターがFUS1プロモーターであることを特徴とする請求項12に記載の酵母細胞。
  15. 細胞がサッカロマイセス・セレビシエ種に属するものであることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  16. フェロモン系タンパク質がファルネシルトランスフェラーゼであることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  17. フェロモン系タンパク質がカルボキシメチルトランスフェラーゼであることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  18. フェロモン系タンパク質がキナーゼであることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  19. 酵母フェロモン系タンパク質が、前駆体タンパク質の開裂によって酵母フェロモンの成熟型の生成に関与するプロテアーゼで、その代用物もまたプロテアーゼであることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  20. 細胞中に生成された前駆体タンパク質がそれ自身酵母フェロモン前駆体タンパク質の代用物であり、該代用物前駆体タンパク質が前記代用物プロテアーゼによって認識されるが、酵母フェロモン系プロテアーゼによって認識されない部位を有するアミノ酸配列を有し、上記代用物前駆体タンパク質は前記代用物プロテアーゼによって開裂され、酵母フェロモンの成熟型を生成するものであることを特徴とする請求項19に記載の酵母細胞。
  21. 野生型酵母フェロモン前駆体タンパク質が生成されないことを特徴とする請求項20に記載の酵母細胞。
  22. 酵母フェロモン系タンパク質が酵母フェロモンの膜輸送に関与するABC輸送体で、その代用物もABC輸送体であることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  23. 前記代用物が、前記ペプチドが輸送を阻害しない限り、酵母フェロモンを輸送するものであることを特徴とする請求項22に記載の酵母細胞。
  24. 前記代用物が、上記ペプチドの助けがあったときだけ酵母フェロモンを輸送するものであることを特徴とする請求項22に記載の酵母細胞。
  25. 酵母フェロモン系タンパク質が酵母フェロモン受容体であることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  26. 前記酵母細胞の少なくとも1個において、前記ペプチドが前記代用物受容体のアゴニストであることを特徴とする請求項25に記載の酵母細胞。
  27. 前記酵母細胞の少なくとも1個において、ペプチドが代用物受容体のアンタゴニストであることを特徴とする請求項25に記載の酵母細胞。
  28. 前記酵母フェロモン受容体がGタンパク質であり、該Gタンパク質のGαサブユニットがキメラであることを特徴とする請求項25に記載の酵母細胞。
  29. Gαサブユニットのアミノ末端部分が酵母Gタンパク質のGαサブユニットであり、その残部が異種起源のGタンパク質のGαサブユニットの一部である請求項28に記載の酵母細胞。
  30. フェロモン系タンパク質がサイクリンであることを特徴とする請求項1に記載の酵母細胞。
  31. 前記酵母細胞が前記ペプチドとは異なる非フェロモン応答性のスクリーニング可能なマーカーを有していることを特徴とする請求項30に記載の酵母細胞。
  32. 前記ペプチドが前記代用物のアゴニスト又はアンタゴニストである、請求項1〜31のいずれか一項に記載の酵母細胞。
  33. 前記異種起源ペプチドの長さが5〜50アミノ酸である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の酵母細胞。
  34. フェロモン系タンパク質の非酵母代用物の活性の調節についてペプチドを分析する方法であって、上記代用物および上記異種起源ペプチドを機能的に発現する請求項1〜33のいずれか一項に記載の酵母細胞を供給し、前記スクリーニングにおける変化を検出することによって、該代用物と該ペプチドとの相互作用によってフェロモンシグナル経路が活性化されたのか阻害されたのかを決定するステップを含むことを特徴とする方法。
  35. 前記細胞がフェロモン応答性選択可能マーカーを有し、該細胞は所望の活性効果または阻害効果を有するペプチドの発現について選択されるものであることを特徴とする請求項34に記載のペプチド分析方法。
  36. 前記細胞がフェロモン応答性スクリーニング可能マーカーを有し、該細胞は所望の活性効果または阻害効果を有するペプチドの発現についてスクリーニングされるものであることを特徴とする請求項34に記載のペプチド分析方法。
  37. 代用物がヒトMdr1であって、前記細胞は、該代用物がα因子を輸送するときだけヒスチジンのない培地で生育し、かつ、代用物がα因子を輸送するときだけガラクトース感受性で、さらに、内因性の多面発現性薬物耐性(Pleiotropic drug resistance)の遺伝子が不活性化されていることを特徴とする請求項35に記載の方法。
  38. 複数の酵母細胞を含む酵母培養物であって、前記酵母細胞が、
    (a)酵母細胞のフェロモン系において、相当する酵母フェロモン系タンパク質が自然に行う機能を行うことのできる酵母フェロモン系タンパク質の異種起源代用物をコードする第1の異種遺伝子と、(b)異種起源のペプチドをコードする第2の異種遺伝子とを含み、かつ、異種起源のペプチドのライブラリーを集合的に発現する酵母細胞であり、前記ライブラリー中の異種起源のペプチドと前記代用物との相互作用が該代用物と前記フェロモン系との相互作用を調節し、該調節が選択又はスクリーニング可能であることを特徴とする酵母培養物。
  39. 内因性フェロモン系タンパク質が機能を有する形態で生成されるものでないことを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  40. ペプチドが細胞によってペリプラズム空間中に分泌され、そこからそれが上記代用物と相互反応することを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  41. 前記異種起源ペプチドが、開裂可能な酵母リーダーペプチドと成熟ペプチドからなる前駆体ペプチドの形で発現し、該リーダーペプチドが該異種起源ペプチドの分泌を制御することを特徴とする請求項40に記載の培養物。
  42. 前記リーダーペプチドがサッカロマイセス・セレビシエα因子またはa因子のリーダーペプチドに相当するリーダーペプチドである請求項41に記載の培養物。
  43. 酵母フェロモン系の野生型フェロモンが分泌されないことを特徴とする請求項41に記載の培養物。
  44. 前記異種起源ペプチドが非分泌型でも発現されることを特徴とする請求項40に記載の培養物。
  45. 細胞が野生型株に比較してそのフェロモンシグナル経路を反復または引伸ばされた刺激を通して非感受性にする傾向が減少した突然変異株であることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  46. SST2遺伝子が機能的に発現されないことを特徴とする請求項45に記載の酵母細胞。
  47. 内在性FAR1遺伝子が機能的に発現されないことを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  48. フェロモンシグナル経路によって活性化される選択可能なマーカーをさらに有することを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  49. 上記選択可能なマーカーが外来の選択可能な遣伝子に制御可能に連結されたフェロモン応答プロモーターを含むレポーター遺伝子を含むマーカーである、請求項48に記載の培養物。
  50. 選択可能な遺伝子がIGPデヒドラターゼ遺伝子であることを特徴とする請求項49に記載の培養物。
  51. 前記フェロモン応答プロモーターがFUS1プロモーターであることを特徴とする請求項49に記載の培養物。
  52. 細胞がサッカロマイセス・セレビシエ種に属するものであることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  53. フェロモン系タンパク質がファルネシルトランスフェラーゼであることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  54. フェロモン系タンパク質がカルボキシメチルトランスフェラーゼであることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  55. フェロモン系タンパク質がキナーゼであることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  56. 酵母フェロモン系タンパク質が、前駆体タンパク質の開裂によって酵母フェロモンの成熟型の生成に関与するプロテアーゼで、その代用物もまたプロテアーゼであることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  57. 細胞中に生成された前駆体タンパク質がそれ自身酵母フェロモン前駆体タンパク質の代用物であり、該代用物前駆体タンパク質が前記代用物プロテアーゼによって認識されるが、酵母フェロモン系プロテアーゼによって認識されない部位を有するアミノ酸配列を有し、上記代用物前駆体タンパク質は前記代用物プロテアーゼによって開裂され、酵母フェロモンの成熟型を生成するものであることを特徴とする請求項56に記載の酵母細胞。
  58. 野生型酵母フェロモン前駆体タンパク質が生成されないことを特徴とする請求項57に記載の培養物。
  59. 酵母フェロモン系タンパク質が酵母フェロモンの膜輸送に関与するABC輸送体で、その代用物もABC輸送体であることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  60. 前記代用物が、前記ペプチドが輸送を阻害しない限り、酵母フェロモンを輸送するものであることを特徴とする請求項59に記載の培養物。
  61. 前記代用物が、上記ペプチドの助けがあったときだけ酵母フェロモンを輸送するものであることを特徴とする請求項59に記載の培養物。
  62. 酵母フェロモン系タンパク質が酵母フェロモン受容体であることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  63. 前記酵母細胞の少なくとも1個において、前記ペプチドが前記代用物受容体のアゴニストであることを特徴とする請求項62に記載の培養物
  64. 前記酵母細胞の少なくとも1個において、前記ペプチドが前記代用物受容体のアンタゴニストであることを特徴とする請求項62に記載の培養物。
  65. 前記酵母フェロモン受容体がGタンパク質であり、Gタンパク質のGαサブユニットがキメラであることを特徴とする請求項62に記載の培養物。
  66. 前記Gαサブユニットのアミノ末端部分が酵母Gタンパク質のGαサブユニットであり、その残部が異種起源のGタンパク質のGαサブユニットの一部である請求項65に記載の培養物。
  67. フェロモン系タンパク質がサイクリンであることを特徴とする請求項38に記載の培養物。
  68. 前記酵母細胞が、前記ペプチドとは異なる非フェロモン応答性のスクリーニング可能なマーカーを有していることを特徴とする請求項67に記載の培養物。
  69. 前記ペプチドが前記代用物のアゴニスト又はアンタゴニストである、請求項38〜68のいずれか一項に記載の培養物。
  70. 前記異種起源ペプチドの長さが5〜50アミノ酸である、請求項38〜69のいずれか一項に記載の培養物。
  71. 非酵母フェロモン系タンパク質代用物の活性についてペプチドライブラリーを分析する方法であって、上記ライブラリーのペプチドおよび上記代用物を機能的に発現し、ペプチドライブラリーを集合的に発現する請求項38に記載の酵母培養物を供給し、該培養体の各細胞中で上記ペプチドによってフェロモンシグナル経路が活性化されたのか阻害されたのかをスクリーニングにおける前記代用物と前記ペプチドとの相互作用により決定するステップを含むことを特徴とする方法。
  72. フェロモン系タンパク質の非酵母代用物の活性の調節についてペプチドを分析する方法であって、上記代用物および上記異種起源ペプチドを機能的に発現する請求項38〜70のいずれか一項に記載の酵母培養物を供給し、前記スクリーニングにおける変化を検出することによって、該代用物と該ペプチドとの相互作用によってフェロモンシグナル経路が活性化されたのか阻害されたのかを決定するステップを含むことを特徴とする方法。
  73. 前記細胞がフェロモン応答性選択可能マーカーを有し、該細胞は所望の活性効果または阻害効果を有するペプチドの発現について選択されるものであることを特徴とする請求項72に記載のペプチド分析方法。
  74. 前記細胞がフェロモン応答性スクリーニング可能マーカーを有し、該細胞は所望の活性効果または阻害効果を有するペプチドの発現についてスクリーニングされるものであることを特徴とする請求項72に記載のペプチド分析方法。
  75. 代用物がヒトMdr1であって、前記細胞は、該代用物がα因子を輸送するときだけヒスチジンのない培地で生育し、かつ、代用物がα因子を輸送するときだけガラクトース感受性で、さらに、内因性の多面発現性薬物耐性(Pleiotropic drug resistance)の遺伝子が不活性化されていることを特徴とする請求項73に記載の方法。
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