JP2004357635A - 糖転移酵素及びそれをコードする核酸 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な糖転移酵素及びそれをコードする核酸を提供する。
【解決手段】以下の(A)又は(B)のポリペプチドを含む糖転移酵素、該酵素をコードする核酸。(A)特定のアミノ酸配列を有するポリペプチド;(B)前記特定のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列からなり、且つN-アセチル-D-ガラクトサミン受容体基質に、N-アセチル-D-ガラクトサミン供与体基質からN-アセチル-D-ガラクトサミン残基を転移する活性を有するポリペプチド。
【選択図】 なし
【解決手段】以下の(A)又は(B)のポリペプチドを含む糖転移酵素、該酵素をコードする核酸。(A)特定のアミノ酸配列を有するポリペプチド;(B)前記特定のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列からなり、且つN-アセチル-D-ガラクトサミン受容体基質に、N-アセチル-D-ガラクトサミン供与体基質からN-アセチル-D-ガラクトサミン残基を転移する活性を有するポリペプチド。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な「糖転移酵素」、より詳細にはN−アセチル−D−ガラクトサミン残基を転移する活性を有する酵素及びそれをコードする「核酸」に関する。
【0002】
【従来の技術】
本明細書中、糖及び糖残基は特に明記しない限り、光学異性体は全てD体を示す。またN−アセチル−D−ガラクトサミンを「GalNAc」と、デオキシリボ核酸を「DNA」と、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルを「FAM」と略記することもある。
【0003】
近年、生体内での糖鎖や複合糖質の働きが注目されている。例えば血液型を決定する因子は糖タンパク質であり、また神経系の働きに関与しているのは糖脂質である。従って、糖鎖を合成する働きのある酵素は、様々な糖鎖がもたらす生理活性を解析する上で極めて重要な手がかりとなる。
【0004】
糖の中でGalNAcはグリコサミノグリカンの構成成分であると共に、ムチン型糖鎖の様な糖鎖構造に存在する糖残基である。従って、GalNAcを転移する酵素は、生体内の様々な組織で働く糖鎖の働きを解析する上で極めて重要なツールとなる。
【0005】
GalNAc受容体基質にGalNAcを転移する働きを有する酵素としては、これまでに数種類の酵素が知られており、これらは非特許文献1〜14に記載されている。
【0006】
【非特許文献1】J. Biol. Chem., 270(41), 24156−24165(1995)
【非特許文献2】Glycobiology, 8(6), 547−555(1998)
【非特許文献3】J. Biol. Chem., 271(29), 16006−17012(1996)
【非特許文献4】J. Biol. Chem., 173(46), 30472−30481(1998)
【非特許文献5】J. Biol. Chem., 273(42), 27749−27754(1998)
【非特許文献6】J. Biol. Chem., 274(36), 25362−25370(1999)
【非特許文献7】FEBS Lett., 460(2), 225−230(1999)
【非特許文献8】Gene., 246(1−2), 347−356(2000)
【非特許文献9】Biochem. Biophys, Acta.,1493(1−2), 264−268(2000)
【非特許文献10】FEBS Lett., 531(2), 115−121(2002)
【非特許文献11】J. Biol. Chem., 277(25), 22623−22638(2002)
【非特許文献12】FEBS Lett., 524(1−3), 211−218(2002)
【非特許文献13】J. Biol. Chem., 278(1), 573−584(2003)
【非特許文献14】Biochem. Biophys. Res. Commun., 300, 738−744(2003)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
糖鎖の生体内での働きが注目されているが、生体内での糖鎖合成の解析は十分に進んでいるとは言えない。糖鎖合成のメカニズム、生体内での糖合成の局在が充分に解析されていないことも一因である。糖鎖合成のメカニズムを解析するに当たっては、糖鎖合成酵素、特に糖転移酵素を解析し、その酵素を使ってどの様な糖鎖が生成されるのかを分析する必要である。そのために従来から存在する酵素の機能を解析することはもちろんであるが、更に新たな糖転移酵素を見つけだし、その機能を解析することに対する要請が高まっている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、機能タンパク質をコードする新規な核酸を見い出し、当該核酸がコードするタンパク質が新規な糖転移酵素であることを見い出した。
【0009】
すなわち本発明は以下の通りである。
(1) 以下の(A)又は(B)のポリペプチドを含む糖転移酵素。
(A)配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(B)配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列からなり、且つN−アセチル−D−ガラクトサミン受容体基質に、N−アセチル−D−ガラクトサミン供与体基質からN−アセチル−D−ガラクトサミン残基を転移する活性を有するポリペプチド。
(2) 以下の(A’)又は(B’)のポリペプチドを含む糖転移酵素。
(A’)配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B’)配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列からなり、且つN−アセチル−D−ガラクトサミン受容体基質に、N−アセチル−D−ガラクトサミン供与体基質からN−アセチル−D−ガラクトサミン残基を転移する活性を有するポリペプチド。
(3) 配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列を含む核酸。
(4) (1)又は(2)記載のポリペプチドをコードする塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
(5) 配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
(6) 配列番号1記載の塩基番号1〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
(7) (3)〜(6)いずれか記載の核酸又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを特徴とする核酸。
(8) DNAであることを特徴とする(3)〜(7)いずれか記載の核酸。
(9) (3)〜(8)いずれか記載の核酸を含むベクター。
(10) (1)又は(2)記載の糖転移酵素のポリペプチドを発現する様に構築されている発現ベクターであることを特徴とする(9)記載のベクター。
(11) (9)又は(10)記載のベクターを含む組換体。
(12) (11)記載の組換体を生育させ、その生育物から糖転移酵素を単離することを特徴とする糖転移酵素の製造方法。
(13) (1)又は(2)記載の糖転移酵素を特異的に認識する抗体。
(14) (1)又は(2)記載の糖転移酵素の活性調節剤。
(15) (14)記載の活性調節剤を有効成分として含む、(1)又は(2)記載の糖転移酵素の活性の変化に起因する疾患の処置剤。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
(1)本発明酵素
本発明酵素はGalNAc受容体基質に、GalNAc供与体基質からGalNAc基を転移する活性を有する糖転移酵素である。
【0011】
ここで「GalNAc供与体基質」とは、GalNAcを有する糖ヌクレオチドであることが好ましい。そのような物質としては例えばアデノシン二リン酸−N−アセチルグルコサミン(ADP−GalNAc)、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン(UDP−GalNAc)、グアノシン二リン酸−N−アセチルグルコサミン(GDP−GalNAc)、シチジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン(CDP−GalNAc)等が例示され、UDP−GalNAcが最も好ましいが特に限定はされない。
【0012】
「GalNAc受容体基質」は本発明酵素がGalNAc供与体基質からGalNAcを転移することができる化合物である限り特に限定はされないが、配列番号7〜14いずれか記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることが好ましい。
【0013】
これらの「GalNAc受容体基質」の何れかの化合物へ「GalNAc残基」を転移する活性の確認は、例えば[14C]又は[3H]などの放射性同位元素でGalNAc残基を放射能標識した「GalNAc供与体基質」と、上記例示の「GalNAc受容体基質」とを混合し、そこに「本発明酵素」の存在下で酵素反応させ、「反応生成物」を「GalNAc供与体基質」と分離して「反応生成物の放射能」を測定する方法で行うことができる。このような方法としては具体的には後述の実施例3記載の方法が例示される。
【0014】
このような「本発明酵素」は、より具体的には例えば以下の(A)又は(A’)のポリペプチドを含む。
(A)配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(A’)配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド
また、それらに糖鎖が結合した糖ポリペプチドの形態の糖転移酵素も本発明酵素の一態様として挙げられる。
【0015】
なお、一般にアミノ酸配列に1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転位等の変異が存在していても、酵素の活性が維持されることは当業者にとっては理解されうるところであり、上記配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド又は配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチドの当該アミノ酸配列に於いても1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転位等の変異が存在していても「糖転移酵素活性」を有する限りにおいて上記「ポリペプチド」として使用することができる。
【0016】
すなわち、天然に存在するポリペプチドには、それをコードするDNAの多型や変異の他、生成後のポリペプチドの細胞内及び精製中の修飾反応などによってそのアミノ酸配列中にアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転位等の変異が起こりうるが、それにも拘わらず変異を有しないポリペプチドと実質的に同等の生理、生物学的活性を示す物があることが知られている。このように構造的に若干の相違があってもその機能については大きな違いが認められないものも、上記「ポリペプチド」に包含される。人為的にポリペプチドのアミノ酸配列に上記の様な変異を導入した場合も同様であり、この場合には更に多種多様の「変異を有するポリペプチド」を作成することが可能である。例えば、ヒトインターロイキン2(IL−2)のアミノ酸配列中の、あるシステイン残基をセリン残基に置換したポリペプチドがIL−2の活性を保持することが知られている(Science, 224(1984), p.1431)。またある種のポリペプチドは、活性には必須でないペプチド領域を有していることが知られている。例えば、細胞外に分泌されるポリペプチドに存在するシグナルペプチドや、プロテアーゼの前駆体等に見られるプロ配列などがこれに当たり、これらの領域のほとんどは翻訳後、又は活性型ポリペプチドへの転換に際して除去される。このような活性に必須でないペプチド領域の配列を有するポリペプチドは、二次構造上は異なった形で存在しているが、最終的には同等の機能を有するポリペプチドであり、「本発明酵素のポリペプチド」もそのような配列が連結していても良い。このような「変異を有するポリペプチド」は「部位特異的変異法」などの公知の方法により容易に作成することが可能である。
【0017】
なお、ここで「複数」とは、GalNAc供与体基質からGalNAc受容体基質にGalNAc残基を転移する糖転移活性を有する限りに於いて「複数」とは特に限定はされないが、全アミノ酸数の10%以下、好ましくは5%以下程度のアミノ酸数を示す。例えば559個のアミノ酸からなるポリペプチド(例えば上述の(A)記載のポリペプチド)に於いては55個以下、好ましくは27個以下を示し、また601個のアミノ酸からなるポリペプチド(例えば上述の(A’)記載のポリペプチド)に於いては60個以下、好ましくは30個以下を示す。
【0018】
また、本発明酵素の活性測定系を利用することで、本発明酵素の活性を促進したり阻害したりする働きを有する物質をスクリーニングして得ることが可能となる。かかる物質は、本発明酵素の活性調節剤の有効成分として利用することが可能である。更にこのような活性調節剤は本発明酵素の活性の変化に起因する疾患の処置剤として利用することが可能である。
【0019】
(2)本発明核酸
「本発明核酸」は配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列を含む核酸である。
【0020】
「本発明核酸」としては、例えば配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列からなる核酸又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸(本発明核酸1)、配列番号1記載の塩基番号1〜1806からなる塩基配列からなる核酸(本発明核酸2)又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸が例示される。
【0021】
上記「本発明核酸1」は、「本発明酵素のポリペプチド」のうち、「膜貫通領域(疎水性アミノ酸が10〜20個程度連続した領域)を欠失した態様のポリペプチド」をコードするので、当該核酸を発現させることによって生成されるポリペプチドを「可溶性ポリペプチド」とすることができる。また「本発明核酸2」は、「本発明酵素のポリペプチド」の全配列をコードするので、当該核酸を発現させることによって生成されるポリペプチドは生体内に存在する「本発明酵素のポリペプチド」と同一と考えられ、またこのようなポリペプチドを「本発明酵素の抗体」の調製等のために使用することも可能である。
【0022】
特に「本発明核酸1」や「本発明核酸2」等は、タンパク質合成における終始コドンに相当する塩基配列を含むため、「配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド」(上記(A)記載のポリペプチド)や「アミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド」(上記(A’)記載のポリペプチド)を遺伝子工学的に調製するためにも使用することができる。
【0023】
特に配列番号1記載の塩基配列のうち、「塩基番号127〜1806からなる核酸(特にDNA)又はそれに相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸(特にDNA)」は、例えば「本発明核酸」の生体内での発現状況などを検査するための核酸プローブとして使用することができ、医学研究用の試薬又は診断薬としての可能性を有する。
【0024】
なお、ここで「ストリンジェントな条件下」とは、一般に「核酸のハイブリダイズを使用する実験手法(例えばノザンブロットハイブリダイゼーション、サザンブロットハイブリダイゼーション)」等で用いられる条件が挙げられ、好ましくは37.5%ホルムアミド、5×SSPE(塩化ナトリウム/リン酸ナトリウム/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)緩衝液)、5×デンハルト溶液(Denhardt’s solution)、0.5% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)存在下での42℃の条件が例示される。
【0025】
「本発明核酸」は例えば以下の方法により調製することが可能である。
公知のUDP−GalNAc転移酵素遺伝子の塩基配列(GenBank accession No.AB078145)をクエリーとしてマウス遺伝子データベースで塩基配列を検索を行ない、GenBank accession No. NP_598950を相同配列として得ることができる。この配列をもとにヒト遺伝子データベースを検索し、第四染色体のNT006198、NT006257のゲノム配列中に予測される翻訳領域(以下「ORF」とも記載する)を見い出すことができる。次に、予測情報に基づいて作成したプライマー(例えば5’プライマーとして配列番号3、3’プライマーとして配列番号4のプライマーが例示される)を用いポリメラーゼ チェイン リアクション法(以下「PCR法」とも記載する)を行うことで翻訳領域を増幅し、かかる増幅産物から配列番号1に記載された全ORF領域であり、可溶化形態のポリペプチドをコードする「本発明核酸」を得ることができる。
【0026】
「可溶化形態のポリペプチドのアミノ酸配列」としては例えば「配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列」が挙げられ、このようなアミノ酸配列からなる可溶化形態のポリペプチドをコードする核酸としては、「配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列からなる核酸」が例示される。このような核酸の調製は、例えば配列番号3記載の配列を5’プライマー、配列番号4記載の配列を3’プライマーとして使用し、例えばヒトゲノムcDNAライブラリーを鋳型として常法に従ってPCR法を行うことで調製することができる。
【0027】
この場合、PCR産物として約1.8kbpのDNA断片が得られるので、これを例えばアガロースゲル電気泳動等の分子量によりDNA断片を篩い分ける方法で分離し、特定のバンドを切り出す方法等の常法に従って単離して「本発明核酸」を得ることができる。
【0028】
このようにして単離した「本発明核酸」は、それがコードする「本発明酵素」を発現する組換体を調製するために使用することができる。すなわち、「本発明核酸」の両端に制限末端を常法より連結し、発現ベクターに挿入することができる(このようにして得られた発現ベクターを「本発明発現ベクター」と記載する)。当業者であれば制限末端は発現ベクターに適合するように適宜選択することが可能である。発現ベクターは、「本発明酵素を発現させたい宿主細胞」に適したものを当業者であれば適宜選択することができる。このように本発明発現ベクターは上記「本発明核酸」が目的の宿主細胞中で発現しうるように遺伝子発現に関与する領域(プロモータ領域、エンハンサー領域、オペレーター領域等)が適切に配列されており、さらに「本発明核酸」が適切に発現するように構築されていることが好ましい。
【0029】
上記「本発明発現ベクター」を宿主細胞に組み込み、組換体を得ることができる(このような組換体を「本発明組換体」とも記載する)。上記「宿主細胞」として真核細胞(ほ乳類細胞、酵母、昆虫細胞、植物細胞等)であっても原核細胞(大腸菌、枯草菌等)であっても使用することができる。宿主細胞として真核細胞を使用する場合には基本ベクターとして「真核細胞用の発現ベクター」を選択し、宿主細胞として原核細胞を使用する場合には基本ベクターとして「原核細胞用の発現ベクター」を選択する。
【0030】
ところで「本発明核酸」はヒトゲノムライブラリーから発見された核酸であるため、本発明においては真核細胞を本発明組換体の宿主細胞として用いるとより天然物に近い性質を有した「本発明酵素」が得られる(例えば糖鎖が付加された態様など)と考えられる。従って、「宿主細胞」としては真核細胞、特にほ乳類細胞を選択することが好ましく、「本発明発現ベクター」の基本ベクターは真核細胞、特にほ乳類細胞用のベクターを選択することが好ましい。
【0031】
近年は遺伝子工学的手法として、形質転換体を培養、生育させてその培養物、生育物から目的物質を単離・精製する手法が確立されている。本発明発現ベクターはそのような「本発明酵素」の単離・精製が容易となるように構築されていることが好ましい。特に「本発明酵素」を「酵素活性を有するポリペプチド(例えば上述の(A)又は(A’)記載のポリペプチド)」と「標識ペプチド」との「融合タンパク質」の形態で発現するように構築した「本発明発現ベクター」を用いて遺伝子工学的に「本発明酵素」を調製すると単離・精製が容易となるため好ましい。
【0032】
上記「識別ペプチド」の例としては、「本発明酵素」を遺伝子組み換えによって調製する際に、該「識別ペプチド」と「酵素活性を有するポリペプチド」とが結合した「融合タンパク質」として発現させることにより、形質転換体の生育物から「本発明酵素」の分泌・分離・精製又は検出を容易にすることを可能とする機能を有したペプチドである。このような「識別ペプチド」としては、例えばシグナルペプチド(多くのタンパク質のN末端に存在し、細胞内の膜透過機構においてタンパク質の選別のために細胞内では機能している15〜30アミノ酸残基からなるペプチド:例えばOmpA、OmpT、Dsb等)、プロテインキナーゼA、プロテインA(黄色ブドウ球菌細胞壁の構成成分で分子量約42,000のタンパク質)、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ(ヒスチジン残基を6〜10個並べて配した配列)、mycタグ(cMycタンパク質由来の13アミノ酸配列)、FLAGペプチド(8アミノ酸残基からなる分析用マーカー)、T7タグ(gene10タンパク質の最初の11アミノ酸残基からなる)、Sタグ(膵臓RNaseA由来の15アミノ酸残基からなる)、HSVタグ、pelB(大腸菌外膜タンパク質pelBの22アミノ酸配列)、HAタグ(ヘマグルチニン由来の10アミノ酸残基からなる)、Trxタグ(チオレドキシン配列)、CBPタグ(カルモジュリン結合ペプチド)、CBDタグ(セルロース結合ドメイン)、CBRタグ(コラーゲン結合ドメイン)、β−lac/blu(βラクタマーゼ)、β−gal(βガラクトシダーゼ)、luc(ルシフェラーゼ)、HP−Thio(His−patchチオレドキシン)、HSP(熱ショックペプチド)、Lnγ(ラミニンγペプチド)、Fn(フィブロネクチン部分ペプチド)、GFP(緑色蛍光ペプチド)、YFP(黄色蛍光ペプチド)、CFP(シアン蛍光ペプチド)、BFP(青色蛍光ペプチド)、DsRed、DsRed2(赤色蛍光ペプチド)、MBP(マルトース結合ペプチド)、LacZ(ラクトースオペレーター)、IgG(免疫グロブリンG)、アビジン、プロテインG等のペプチドが挙げられ、何れの識別ペプチドであっても使用することが可能である。その中でも特にシグナルペプチド、プロテインキナーゼA、プロテインA、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ、mycタグ、FLAGペプチド、T7タグ、Sタグ、HSVタグ、pelB又はHAタグが、遺伝子工学的手法による本発明酵素の発現、精製がより容易となることから好ましく、特にFLAGペプチドとの融合タンパク質として「本発明酵素」を得るのが、取扱面が極めて優れるため好ましい。
【0033】
ほ乳類細胞で発現可能であって、かつ上述のFLAGペプチドとの融合タンパク質として「本発明酵素」を得ることができる基本ベクターとしては例えばpFLAG−CMV3(シグマ社)、pFBIF(pFastBac(インビトロジェン社)にFLAGペプチドをコードする領域を組み込んだベクター:後述の実施例参照)等が例示されるが、当業者であれば「本発明酵素」の発現に使用する宿主細胞、制限酵素、識別ペプチドなどから判断して適当な基本ベクターを選択することが可能である。
【0034】
なお、本発明によって「本発明核酸の塩基配列」が開示されたため、当業者であれば目的とする「本発明核酸」や調製したい「本発明核酸の一部の領域」の両端の塩基配列を基に適宜プライマーを作成し、それを用いてPCR法などによって目的の領域を増幅して調製することが容易である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)ほ乳類細胞を用いた本発明DNA及び本発明酵素の調製方法
公知のUDP−GalNAc転移酵素遺伝子(GALNT10)の塩基配列(GenBank accession No.AB078145)をクエリーとして、BLAST検索を行った。その結果、上記塩基配列のオーソログとその下流に既存のUDP−GalNAc転移酵素で共通に一部配列が保存されている遺伝子を発見し(GenBank accession No. NT_006198)、かかる遺伝子のエキソンを解析した結果、GenBank accession No. NT_006198とNT_006257に合計12のエキソンからなる遺伝子(配列番号1)が存在することが明かとなった。このエキソンからなる塩基配列がコードするアミノ酸配列(配列番号2)はN末端に膜貫通領域を有することが予測され、この膜貫通領域を有しないタンパク質をコードする塩基配列の領域を調製することとした。
【0036】
培養細胞Lu−160(小細胞肺癌株)から調製したヒトゲノムcDNAを鋳型とし、5’プライマーとして配列番号3記載の塩基配列からなるDNA、3’プライマーとして配列番号4記載の塩基配列からなるDNAを使用してPCR法を行なった。PCR法はDNAポリメラーゼとして宝酒造株式会社のPremix Extaqを使用し、94℃30秒、56℃30秒、72℃2分を40サイクル繰り返す条件で行なった。そしてPCR産物をアガロースゲル電気泳動を行い、約1.8kbのバンドをゲル切り出し法で切り出して常法により単離した。このようにして得られたPCR産物を、説明書の記載に従ってインビトロゲン社製のpENTR/D−TOPOベクターに挿入した(このベクターを「pENTR/D−TOPO/O21」と記載する)。常法に従って塩基配列の確認を行ったところ1806bpのORF配列であることが明かとなった。
【0037】
(1)発現ベクターの調製
pENTR/D−TOPOベクターに組み込んだ遺伝子がコードするタンパク質をN末端の42アミノ酸残基を欠失した形態で発現させる本発明核酸を調製するために、配列番号5の5’プライマー及び配列番号6の3’プライマーを使用してpENTR/D−TOPO/O21を鋳型としてPCR法を行った。上記5’プライマーを用いて調製した増幅産物は、5’末端にHindIII制限末端が存在し、3’末端にはpENTR/D−TOPOベクターの配列一部とXbaI制限末端が存在する構造を有する。
【0038】
PCR法は、98℃10秒、53.2℃30秒、72℃2分を10回繰り返した後、98℃10秒、58℃30秒、72℃2分を10回繰り返した。得られた増幅産物をHindIII及びXbaIで消化し、Qiagen PCR Purification kit(キアゲン社製)で精製した。このように処理した増幅産物を、Ligation High(東洋紡株式会社製)を用いて、説明書の記載に添って発現ベクターpFLAG−CMV3に導入した(pFLAG−CMV3/O21)。
【0039】
(2)組換体の調製及び本発明酵素の精製
常法に従ってlipofectamin2000(インビトロジェン社製)を用いて、pFLAG−CMV3/O21をHEK293T細胞(ATCC No.CRL−1573)に導入した。導入後、細胞を常法に従って培養し、48時間経過した後に300×gで10分間遠心して培養液を回収し、適当量の抗FLAG M1樹脂(シグマ社製)と混合した。4℃で3時間以上混和させた後、300×10分間遠心し、樹脂に吸着した本発明酵素を回収した。樹脂を回収し、1mmol/lの塩化カルシウム、150mmol/lの塩化ナトリウムを含むTris緩衝液(pH7.4:50mmol/l:樹脂の5〜10倍量)で2回洗浄し、これを酵素液1とした。
【0040】
(実施例2)昆虫細胞を用いた本発明DNA及び本発明酵素の調製方法
インビトロジェン社製のpENTR/D−TOPOベクターを鋳型とし、配列番号7及び配列番号8記載の塩基配列からなるプライマーを用いてPCR法を行った。PCR法は宝酒造株式会社のPyrobestを用いて98℃10秒、53℃30秒、72℃2分を10サイクル繰り返した後、98℃10秒、58℃30秒、72℃2分を10サイクル繰り返して行なった。添付された説明書に従ってBPクロナーゼ反応を行ってpDONOR201ベクターに増幅産物(エントリークローン)を組み込んだ。
【0041】
このエントリークローンは、挿入部位の両端にラムダファージが大腸菌から切り出される際に組換部位として働くattLを有するため、添付書に従ってLRクロナーゼ反応を行いエントリークローンの挿入配列をディスティネーションベクター(pFastBac由来の発現ベクターpFBIF−C)に移し、発現クローンを調製した。
続いてインビトロジェン社製のBac−to−Bacシステムを用いて、上記発現ベクターとpFastBacとの間で組換を行い、昆虫細胞中で増殖可能なプラスミド(バクミド)にクローンを挿入した。
【0042】
常法に従って、目的配列がバクミドに挿入されていることを確認した後、昆虫由来の培養細胞Sf21にバクミドを導入した。
すなわち35mmシャーレにSf21細胞9×105個/2ml(抗生物質を含むSf−900II培地)を加え、27℃で1時間培養して細胞を接着させた。精製したバクミドのDNA5μlに抗生物質を含まないSf−900II 100μlを加えてSolutionAを調製し、CellFECTIN溶液(インビトロジェン社製)6μlに抗生物質を含まないSf−900II 100μlを添加してSolutionBを調製した。SolutionA及びSolutionBを丁寧に混合し、15〜45分間程度室温でインキュベートとし、これに更に抗生物質を含まないSf−900II 800μlを添加して丁寧に混和した(この溶液をSolution混合液とも記載する)。
【0043】
細胞が接着したことを確認し、培養液を吸引し、希釈したSolution混合液1mlをシャーレに加え、27℃で5時間インキュベートした。その後、培地を除去し、抗生物質を含むSf−900IIを2ml添加して27℃で72時間インキュベートした。72時間後にピペッティングを行って細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを2000×gで10分間遠心し、上清を回収した(これを「一次ウイルス液」とした)。
【0044】
T75培養フラスコにSf21細胞1×107個/20mlSf−900II(抗生物質入り)を加え、27℃で1時間インキュベートした。細胞が接着した後、一次ウイルス液800μlを添加して、27℃で48時間インキュベートした。その後、ピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを2000×gで10分間遠心し、上清を別のチューブに保存した(これを「二次ウイルス液」とした)。
【0045】
更に、T75培養フラスコにSf21細胞1×107個/20mlSf−900II(抗生物質入り)を加え、27℃で1時間インキュベートした。細胞が接着した後、二次ウイルス液1mlを添加して、27℃で96時間インキュベートした。その後、ピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを2000×gで10分間遠心し、上清を別のチューブに保存した(これを「三次ウイルス液」とした)。
更に、100ml用スピナーフラスコにSf21細胞6×106個/mlSf−900II(抗生物質入り)を100ml加え、三次ウイルス液1mlを添加して、27℃で96時間インキュベートした。その後、ピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを2000×gで10分間遠心し、上清を本発明酵素の酵素源とした。
【0046】
常法により上記酵素源をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行って、ゲルを使用してウエスタンブロッティング法を行った。検出用の抗体としては抗FLAG M2−ペルオキシダーゼ(A−8592:シグマ社製)を使用した。その結果、分子量約70kDaのタンパク質の発現を確認し、目的タンパク質の発現がなされていることが示唆された。
【0047】
上記酵素源を適当量の抗FLAG M1樹脂(シグマ社製)と混合し、4℃で3時間以上混和させた後、300×10分間遠心し、樹脂に吸着した本発明酵素を回収した。樹脂を回収し、1mmol/lの塩化カルシウム、150mmol/lの塩化カルシウムを含むTris緩衝液(pH7.4:50mmol/l:樹脂の5〜10倍量)で2回洗浄し、これを酵素液2とした。
【0048】
(実施例3)本発明酵素の酵素活性
本発明酵素のUDP−GalNAc転移酵素としての活性を測るために、供与体基質としてUDP−GalNAcを用い、受容体基質としてC末端あるいはN末端をFAMで標識した配列番号9〜16の合成ペプチド(配列番号9及び11記載の合成ペプチドはN末端にFAMが結合しており、他はC末端にFAMが結合している:以下、配列番号9の受容体基質をFAM−Muc1a、配列番号10の受容体基質をMuc2−FAM、配列番号11の受容体基質をFAM−Muc5Ac、配列番号12の受容体基質をMuc7−FAM、配列番号13の受容体基質をMuc13−58−FAM、配列番号14の受容体基質をEA2−FAM、配列番号15の受容体基質をHPR−F−FAM、配列番号16の受容体基質をSDC106−FAMと記載する)、GalNAcを1つ付加した配列番号9、10、11、12、14の合成ペプチド(これらはそれぞれ以下FAM−Muc1a−1G、Muc2−1G−FAM、FAM−Muc5Ac−1G、Muc7−1G−FAM、EA2−1G−FAMと記載する)、及びGalNAcを2つ付加した配列番号11及び12の合成ペプチド(これらはそれぞれ以下FAM−Muc5Ac−2G、Muc7−2G−FAMと記載する)を使用した。GalNAcを付加した基質のうち、FAM−Muc1a−1GはGalNAc転移酵素T6(J Biol Chem., 274(36), 25362−25370(1999))により、Muc−1G−FAM及びFAM−Muc5Ac−1GはGalNAc転移酵素T2(J Biol Chem., 270(41),24156−24165(1995))により、Muc7−1G−FAM、EA2−1G−FAM、FAM−Muc5Ac−2G、及びMuc7−2G−FAMはGalNAc転移酵素T13(J Biol Chem., 278(1), 573−84(2003))によりそれぞれグリコシル化を行い、高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」とも記載する)を用いて精製して得た。
【0049】
反応液は受容体基質(最終濃度50pmol)、TrisHCl緩衝液(pH7.4)(最終濃度25mmol/l)、MnCl2(最終濃度5mmol/l)、供与体基質(最終濃度200nmol/l)から成り、これに酵素液1を10μl加えて、さらにH2Oを加えて全量を20μlとした。
【0050】
上記反応混合液を37℃で16時間反応させた。反応後、97℃で3分間加熱し、酵素を失活させて反応を終了させた。反応終了後、H2Oを40μl加え、軽く遠心後上清を取得した。得られた上清を簡易フィルター(Ultrafree−MC:日本ミリポア社製)を通して、20μl〜40μlをHPLC分析に提供した。HPLCのカラムはCOSMOSIL 5C18−AR(商標名:ナカライテスク社製)を用いた。展開バッファーAは0.05%のトリフルオロ酢酸(以下「TFA」とも記載する)を含むイオン交換水、展開バッファーBとしては0.05%TFAを含むアセトニトリルを用いた。分離にはバッファーBの濃度勾配を用い、30分で50%まで上がるように勾配をかけた。検出条件は励起波長を492nm、検出波長を520nmとした。
【0051】
その結果、FAM−Muc5Ac−1G、FAM−EA−2G、FAM−Muc5Ac−1G、EA2−1G−FAM、FAM−Muc5Ac−2Gを基質として用いた場合に、新たなピークが生じた(図1〜15:中段のチャート)。よって、本発明酵素はこれらのペプチド配列及びGalNAc付加ペプチドを受容体基質としGalNAcを転移することが示された。
【0052】
また、反応液の組成を同様とし、酵素液1を酵素液2に代えて同様の測定を行ったところ、酵素液1よりも若干強い酵素活性が確認された(図1〜15:最下段のチャート)。また、HRP、SD106にもGalNAcを転移する働きを有することが明かとなった。
【0053】
【配列表】
【0054】
【発明の効果】
本発明により新規な糖転移酵素及びそれをコードする核酸が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明酵素のFAM−Muc1aに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図2】本発明酵素のMuc2−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図3】本発明酵素のFAM−Muc5Acに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図4】本発明酵素のMuc7−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図5】本発明酵素のMuc13−58−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図6】本発明酵素のEA2−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図7】本発明酵素のHPR−F−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図8】本発明酵素のSDC106−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図9】本発明酵素のFAM−Muc1a−1Gに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図10】本発明酵素のMuc2−1G−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図11】本発明酵素のFAM−Muc5Ac−1Gに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図12】本発明酵素のMuc7−1G−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図13】本発明酵素のEA2−1G−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図14】本発明酵素のFAM−Muc5Ac−2Gに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図15】本発明酵素のMuc7−2G−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な「糖転移酵素」、より詳細にはN−アセチル−D−ガラクトサミン残基を転移する活性を有する酵素及びそれをコードする「核酸」に関する。
【0002】
【従来の技術】
本明細書中、糖及び糖残基は特に明記しない限り、光学異性体は全てD体を示す。またN−アセチル−D−ガラクトサミンを「GalNAc」と、デオキシリボ核酸を「DNA」と、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルを「FAM」と略記することもある。
【0003】
近年、生体内での糖鎖や複合糖質の働きが注目されている。例えば血液型を決定する因子は糖タンパク質であり、また神経系の働きに関与しているのは糖脂質である。従って、糖鎖を合成する働きのある酵素は、様々な糖鎖がもたらす生理活性を解析する上で極めて重要な手がかりとなる。
【0004】
糖の中でGalNAcはグリコサミノグリカンの構成成分であると共に、ムチン型糖鎖の様な糖鎖構造に存在する糖残基である。従って、GalNAcを転移する酵素は、生体内の様々な組織で働く糖鎖の働きを解析する上で極めて重要なツールとなる。
【0005】
GalNAc受容体基質にGalNAcを転移する働きを有する酵素としては、これまでに数種類の酵素が知られており、これらは非特許文献1〜14に記載されている。
【0006】
【非特許文献1】J. Biol. Chem., 270(41), 24156−24165(1995)
【非特許文献2】Glycobiology, 8(6), 547−555(1998)
【非特許文献3】J. Biol. Chem., 271(29), 16006−17012(1996)
【非特許文献4】J. Biol. Chem., 173(46), 30472−30481(1998)
【非特許文献5】J. Biol. Chem., 273(42), 27749−27754(1998)
【非特許文献6】J. Biol. Chem., 274(36), 25362−25370(1999)
【非特許文献7】FEBS Lett., 460(2), 225−230(1999)
【非特許文献8】Gene., 246(1−2), 347−356(2000)
【非特許文献9】Biochem. Biophys, Acta.,1493(1−2), 264−268(2000)
【非特許文献10】FEBS Lett., 531(2), 115−121(2002)
【非特許文献11】J. Biol. Chem., 277(25), 22623−22638(2002)
【非特許文献12】FEBS Lett., 524(1−3), 211−218(2002)
【非特許文献13】J. Biol. Chem., 278(1), 573−584(2003)
【非特許文献14】Biochem. Biophys. Res. Commun., 300, 738−744(2003)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
糖鎖の生体内での働きが注目されているが、生体内での糖鎖合成の解析は十分に進んでいるとは言えない。糖鎖合成のメカニズム、生体内での糖合成の局在が充分に解析されていないことも一因である。糖鎖合成のメカニズムを解析するに当たっては、糖鎖合成酵素、特に糖転移酵素を解析し、その酵素を使ってどの様な糖鎖が生成されるのかを分析する必要である。そのために従来から存在する酵素の機能を解析することはもちろんであるが、更に新たな糖転移酵素を見つけだし、その機能を解析することに対する要請が高まっている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、機能タンパク質をコードする新規な核酸を見い出し、当該核酸がコードするタンパク質が新規な糖転移酵素であることを見い出した。
【0009】
すなわち本発明は以下の通りである。
(1) 以下の(A)又は(B)のポリペプチドを含む糖転移酵素。
(A)配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(B)配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列からなり、且つN−アセチル−D−ガラクトサミン受容体基質に、N−アセチル−D−ガラクトサミン供与体基質からN−アセチル−D−ガラクトサミン残基を転移する活性を有するポリペプチド。
(2) 以下の(A’)又は(B’)のポリペプチドを含む糖転移酵素。
(A’)配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B’)配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列からなり、且つN−アセチル−D−ガラクトサミン受容体基質に、N−アセチル−D−ガラクトサミン供与体基質からN−アセチル−D−ガラクトサミン残基を転移する活性を有するポリペプチド。
(3) 配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列を含む核酸。
(4) (1)又は(2)記載のポリペプチドをコードする塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
(5) 配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
(6) 配列番号1記載の塩基番号1〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
(7) (3)〜(6)いずれか記載の核酸又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを特徴とする核酸。
(8) DNAであることを特徴とする(3)〜(7)いずれか記載の核酸。
(9) (3)〜(8)いずれか記載の核酸を含むベクター。
(10) (1)又は(2)記載の糖転移酵素のポリペプチドを発現する様に構築されている発現ベクターであることを特徴とする(9)記載のベクター。
(11) (9)又は(10)記載のベクターを含む組換体。
(12) (11)記載の組換体を生育させ、その生育物から糖転移酵素を単離することを特徴とする糖転移酵素の製造方法。
(13) (1)又は(2)記載の糖転移酵素を特異的に認識する抗体。
(14) (1)又は(2)記載の糖転移酵素の活性調節剤。
(15) (14)記載の活性調節剤を有効成分として含む、(1)又は(2)記載の糖転移酵素の活性の変化に起因する疾患の処置剤。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
(1)本発明酵素
本発明酵素はGalNAc受容体基質に、GalNAc供与体基質からGalNAc基を転移する活性を有する糖転移酵素である。
【0011】
ここで「GalNAc供与体基質」とは、GalNAcを有する糖ヌクレオチドであることが好ましい。そのような物質としては例えばアデノシン二リン酸−N−アセチルグルコサミン(ADP−GalNAc)、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン(UDP−GalNAc)、グアノシン二リン酸−N−アセチルグルコサミン(GDP−GalNAc)、シチジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン(CDP−GalNAc)等が例示され、UDP−GalNAcが最も好ましいが特に限定はされない。
【0012】
「GalNAc受容体基質」は本発明酵素がGalNAc供与体基質からGalNAcを転移することができる化合物である限り特に限定はされないが、配列番号7〜14いずれか記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることが好ましい。
【0013】
これらの「GalNAc受容体基質」の何れかの化合物へ「GalNAc残基」を転移する活性の確認は、例えば[14C]又は[3H]などの放射性同位元素でGalNAc残基を放射能標識した「GalNAc供与体基質」と、上記例示の「GalNAc受容体基質」とを混合し、そこに「本発明酵素」の存在下で酵素反応させ、「反応生成物」を「GalNAc供与体基質」と分離して「反応生成物の放射能」を測定する方法で行うことができる。このような方法としては具体的には後述の実施例3記載の方法が例示される。
【0014】
このような「本発明酵素」は、より具体的には例えば以下の(A)又は(A’)のポリペプチドを含む。
(A)配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(A’)配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド
また、それらに糖鎖が結合した糖ポリペプチドの形態の糖転移酵素も本発明酵素の一態様として挙げられる。
【0015】
なお、一般にアミノ酸配列に1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転位等の変異が存在していても、酵素の活性が維持されることは当業者にとっては理解されうるところであり、上記配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド又は配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチドの当該アミノ酸配列に於いても1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転位等の変異が存在していても「糖転移酵素活性」を有する限りにおいて上記「ポリペプチド」として使用することができる。
【0016】
すなわち、天然に存在するポリペプチドには、それをコードするDNAの多型や変異の他、生成後のポリペプチドの細胞内及び精製中の修飾反応などによってそのアミノ酸配列中にアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転位等の変異が起こりうるが、それにも拘わらず変異を有しないポリペプチドと実質的に同等の生理、生物学的活性を示す物があることが知られている。このように構造的に若干の相違があってもその機能については大きな違いが認められないものも、上記「ポリペプチド」に包含される。人為的にポリペプチドのアミノ酸配列に上記の様な変異を導入した場合も同様であり、この場合には更に多種多様の「変異を有するポリペプチド」を作成することが可能である。例えば、ヒトインターロイキン2(IL−2)のアミノ酸配列中の、あるシステイン残基をセリン残基に置換したポリペプチドがIL−2の活性を保持することが知られている(Science, 224(1984), p.1431)。またある種のポリペプチドは、活性には必須でないペプチド領域を有していることが知られている。例えば、細胞外に分泌されるポリペプチドに存在するシグナルペプチドや、プロテアーゼの前駆体等に見られるプロ配列などがこれに当たり、これらの領域のほとんどは翻訳後、又は活性型ポリペプチドへの転換に際して除去される。このような活性に必須でないペプチド領域の配列を有するポリペプチドは、二次構造上は異なった形で存在しているが、最終的には同等の機能を有するポリペプチドであり、「本発明酵素のポリペプチド」もそのような配列が連結していても良い。このような「変異を有するポリペプチド」は「部位特異的変異法」などの公知の方法により容易に作成することが可能である。
【0017】
なお、ここで「複数」とは、GalNAc供与体基質からGalNAc受容体基質にGalNAc残基を転移する糖転移活性を有する限りに於いて「複数」とは特に限定はされないが、全アミノ酸数の10%以下、好ましくは5%以下程度のアミノ酸数を示す。例えば559個のアミノ酸からなるポリペプチド(例えば上述の(A)記載のポリペプチド)に於いては55個以下、好ましくは27個以下を示し、また601個のアミノ酸からなるポリペプチド(例えば上述の(A’)記載のポリペプチド)に於いては60個以下、好ましくは30個以下を示す。
【0018】
また、本発明酵素の活性測定系を利用することで、本発明酵素の活性を促進したり阻害したりする働きを有する物質をスクリーニングして得ることが可能となる。かかる物質は、本発明酵素の活性調節剤の有効成分として利用することが可能である。更にこのような活性調節剤は本発明酵素の活性の変化に起因する疾患の処置剤として利用することが可能である。
【0019】
(2)本発明核酸
「本発明核酸」は配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列を含む核酸である。
【0020】
「本発明核酸」としては、例えば配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列からなる核酸又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸(本発明核酸1)、配列番号1記載の塩基番号1〜1806からなる塩基配列からなる核酸(本発明核酸2)又はそれらに相補的な塩基配列からなる核酸が例示される。
【0021】
上記「本発明核酸1」は、「本発明酵素のポリペプチド」のうち、「膜貫通領域(疎水性アミノ酸が10〜20個程度連続した領域)を欠失した態様のポリペプチド」をコードするので、当該核酸を発現させることによって生成されるポリペプチドを「可溶性ポリペプチド」とすることができる。また「本発明核酸2」は、「本発明酵素のポリペプチド」の全配列をコードするので、当該核酸を発現させることによって生成されるポリペプチドは生体内に存在する「本発明酵素のポリペプチド」と同一と考えられ、またこのようなポリペプチドを「本発明酵素の抗体」の調製等のために使用することも可能である。
【0022】
特に「本発明核酸1」や「本発明核酸2」等は、タンパク質合成における終始コドンに相当する塩基配列を含むため、「配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド」(上記(A)記載のポリペプチド)や「アミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド」(上記(A’)記載のポリペプチド)を遺伝子工学的に調製するためにも使用することができる。
【0023】
特に配列番号1記載の塩基配列のうち、「塩基番号127〜1806からなる核酸(特にDNA)又はそれに相補的な塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸(特にDNA)」は、例えば「本発明核酸」の生体内での発現状況などを検査するための核酸プローブとして使用することができ、医学研究用の試薬又は診断薬としての可能性を有する。
【0024】
なお、ここで「ストリンジェントな条件下」とは、一般に「核酸のハイブリダイズを使用する実験手法(例えばノザンブロットハイブリダイゼーション、サザンブロットハイブリダイゼーション)」等で用いられる条件が挙げられ、好ましくは37.5%ホルムアミド、5×SSPE(塩化ナトリウム/リン酸ナトリウム/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)緩衝液)、5×デンハルト溶液(Denhardt’s solution)、0.5% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)存在下での42℃の条件が例示される。
【0025】
「本発明核酸」は例えば以下の方法により調製することが可能である。
公知のUDP−GalNAc転移酵素遺伝子の塩基配列(GenBank accession No.AB078145)をクエリーとしてマウス遺伝子データベースで塩基配列を検索を行ない、GenBank accession No. NP_598950を相同配列として得ることができる。この配列をもとにヒト遺伝子データベースを検索し、第四染色体のNT006198、NT006257のゲノム配列中に予測される翻訳領域(以下「ORF」とも記載する)を見い出すことができる。次に、予測情報に基づいて作成したプライマー(例えば5’プライマーとして配列番号3、3’プライマーとして配列番号4のプライマーが例示される)を用いポリメラーゼ チェイン リアクション法(以下「PCR法」とも記載する)を行うことで翻訳領域を増幅し、かかる増幅産物から配列番号1に記載された全ORF領域であり、可溶化形態のポリペプチドをコードする「本発明核酸」を得ることができる。
【0026】
「可溶化形態のポリペプチドのアミノ酸配列」としては例えば「配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列」が挙げられ、このようなアミノ酸配列からなる可溶化形態のポリペプチドをコードする核酸としては、「配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列からなる核酸」が例示される。このような核酸の調製は、例えば配列番号3記載の配列を5’プライマー、配列番号4記載の配列を3’プライマーとして使用し、例えばヒトゲノムcDNAライブラリーを鋳型として常法に従ってPCR法を行うことで調製することができる。
【0027】
この場合、PCR産物として約1.8kbpのDNA断片が得られるので、これを例えばアガロースゲル電気泳動等の分子量によりDNA断片を篩い分ける方法で分離し、特定のバンドを切り出す方法等の常法に従って単離して「本発明核酸」を得ることができる。
【0028】
このようにして単離した「本発明核酸」は、それがコードする「本発明酵素」を発現する組換体を調製するために使用することができる。すなわち、「本発明核酸」の両端に制限末端を常法より連結し、発現ベクターに挿入することができる(このようにして得られた発現ベクターを「本発明発現ベクター」と記載する)。当業者であれば制限末端は発現ベクターに適合するように適宜選択することが可能である。発現ベクターは、「本発明酵素を発現させたい宿主細胞」に適したものを当業者であれば適宜選択することができる。このように本発明発現ベクターは上記「本発明核酸」が目的の宿主細胞中で発現しうるように遺伝子発現に関与する領域(プロモータ領域、エンハンサー領域、オペレーター領域等)が適切に配列されており、さらに「本発明核酸」が適切に発現するように構築されていることが好ましい。
【0029】
上記「本発明発現ベクター」を宿主細胞に組み込み、組換体を得ることができる(このような組換体を「本発明組換体」とも記載する)。上記「宿主細胞」として真核細胞(ほ乳類細胞、酵母、昆虫細胞、植物細胞等)であっても原核細胞(大腸菌、枯草菌等)であっても使用することができる。宿主細胞として真核細胞を使用する場合には基本ベクターとして「真核細胞用の発現ベクター」を選択し、宿主細胞として原核細胞を使用する場合には基本ベクターとして「原核細胞用の発現ベクター」を選択する。
【0030】
ところで「本発明核酸」はヒトゲノムライブラリーから発見された核酸であるため、本発明においては真核細胞を本発明組換体の宿主細胞として用いるとより天然物に近い性質を有した「本発明酵素」が得られる(例えば糖鎖が付加された態様など)と考えられる。従って、「宿主細胞」としては真核細胞、特にほ乳類細胞を選択することが好ましく、「本発明発現ベクター」の基本ベクターは真核細胞、特にほ乳類細胞用のベクターを選択することが好ましい。
【0031】
近年は遺伝子工学的手法として、形質転換体を培養、生育させてその培養物、生育物から目的物質を単離・精製する手法が確立されている。本発明発現ベクターはそのような「本発明酵素」の単離・精製が容易となるように構築されていることが好ましい。特に「本発明酵素」を「酵素活性を有するポリペプチド(例えば上述の(A)又は(A’)記載のポリペプチド)」と「標識ペプチド」との「融合タンパク質」の形態で発現するように構築した「本発明発現ベクター」を用いて遺伝子工学的に「本発明酵素」を調製すると単離・精製が容易となるため好ましい。
【0032】
上記「識別ペプチド」の例としては、「本発明酵素」を遺伝子組み換えによって調製する際に、該「識別ペプチド」と「酵素活性を有するポリペプチド」とが結合した「融合タンパク質」として発現させることにより、形質転換体の生育物から「本発明酵素」の分泌・分離・精製又は検出を容易にすることを可能とする機能を有したペプチドである。このような「識別ペプチド」としては、例えばシグナルペプチド(多くのタンパク質のN末端に存在し、細胞内の膜透過機構においてタンパク質の選別のために細胞内では機能している15〜30アミノ酸残基からなるペプチド:例えばOmpA、OmpT、Dsb等)、プロテインキナーゼA、プロテインA(黄色ブドウ球菌細胞壁の構成成分で分子量約42,000のタンパク質)、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ(ヒスチジン残基を6〜10個並べて配した配列)、mycタグ(cMycタンパク質由来の13アミノ酸配列)、FLAGペプチド(8アミノ酸残基からなる分析用マーカー)、T7タグ(gene10タンパク質の最初の11アミノ酸残基からなる)、Sタグ(膵臓RNaseA由来の15アミノ酸残基からなる)、HSVタグ、pelB(大腸菌外膜タンパク質pelBの22アミノ酸配列)、HAタグ(ヘマグルチニン由来の10アミノ酸残基からなる)、Trxタグ(チオレドキシン配列)、CBPタグ(カルモジュリン結合ペプチド)、CBDタグ(セルロース結合ドメイン)、CBRタグ(コラーゲン結合ドメイン)、β−lac/blu(βラクタマーゼ)、β−gal(βガラクトシダーゼ)、luc(ルシフェラーゼ)、HP−Thio(His−patchチオレドキシン)、HSP(熱ショックペプチド)、Lnγ(ラミニンγペプチド)、Fn(フィブロネクチン部分ペプチド)、GFP(緑色蛍光ペプチド)、YFP(黄色蛍光ペプチド)、CFP(シアン蛍光ペプチド)、BFP(青色蛍光ペプチド)、DsRed、DsRed2(赤色蛍光ペプチド)、MBP(マルトース結合ペプチド)、LacZ(ラクトースオペレーター)、IgG(免疫グロブリンG)、アビジン、プロテインG等のペプチドが挙げられ、何れの識別ペプチドであっても使用することが可能である。その中でも特にシグナルペプチド、プロテインキナーゼA、プロテインA、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ、mycタグ、FLAGペプチド、T7タグ、Sタグ、HSVタグ、pelB又はHAタグが、遺伝子工学的手法による本発明酵素の発現、精製がより容易となることから好ましく、特にFLAGペプチドとの融合タンパク質として「本発明酵素」を得るのが、取扱面が極めて優れるため好ましい。
【0033】
ほ乳類細胞で発現可能であって、かつ上述のFLAGペプチドとの融合タンパク質として「本発明酵素」を得ることができる基本ベクターとしては例えばpFLAG−CMV3(シグマ社)、pFBIF(pFastBac(インビトロジェン社)にFLAGペプチドをコードする領域を組み込んだベクター:後述の実施例参照)等が例示されるが、当業者であれば「本発明酵素」の発現に使用する宿主細胞、制限酵素、識別ペプチドなどから判断して適当な基本ベクターを選択することが可能である。
【0034】
なお、本発明によって「本発明核酸の塩基配列」が開示されたため、当業者であれば目的とする「本発明核酸」や調製したい「本発明核酸の一部の領域」の両端の塩基配列を基に適宜プライマーを作成し、それを用いてPCR法などによって目的の領域を増幅して調製することが容易である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)ほ乳類細胞を用いた本発明DNA及び本発明酵素の調製方法
公知のUDP−GalNAc転移酵素遺伝子(GALNT10)の塩基配列(GenBank accession No.AB078145)をクエリーとして、BLAST検索を行った。その結果、上記塩基配列のオーソログとその下流に既存のUDP−GalNAc転移酵素で共通に一部配列が保存されている遺伝子を発見し(GenBank accession No. NT_006198)、かかる遺伝子のエキソンを解析した結果、GenBank accession No. NT_006198とNT_006257に合計12のエキソンからなる遺伝子(配列番号1)が存在することが明かとなった。このエキソンからなる塩基配列がコードするアミノ酸配列(配列番号2)はN末端に膜貫通領域を有することが予測され、この膜貫通領域を有しないタンパク質をコードする塩基配列の領域を調製することとした。
【0036】
培養細胞Lu−160(小細胞肺癌株)から調製したヒトゲノムcDNAを鋳型とし、5’プライマーとして配列番号3記載の塩基配列からなるDNA、3’プライマーとして配列番号4記載の塩基配列からなるDNAを使用してPCR法を行なった。PCR法はDNAポリメラーゼとして宝酒造株式会社のPremix Extaqを使用し、94℃30秒、56℃30秒、72℃2分を40サイクル繰り返す条件で行なった。そしてPCR産物をアガロースゲル電気泳動を行い、約1.8kbのバンドをゲル切り出し法で切り出して常法により単離した。このようにして得られたPCR産物を、説明書の記載に従ってインビトロゲン社製のpENTR/D−TOPOベクターに挿入した(このベクターを「pENTR/D−TOPO/O21」と記載する)。常法に従って塩基配列の確認を行ったところ1806bpのORF配列であることが明かとなった。
【0037】
(1)発現ベクターの調製
pENTR/D−TOPOベクターに組み込んだ遺伝子がコードするタンパク質をN末端の42アミノ酸残基を欠失した形態で発現させる本発明核酸を調製するために、配列番号5の5’プライマー及び配列番号6の3’プライマーを使用してpENTR/D−TOPO/O21を鋳型としてPCR法を行った。上記5’プライマーを用いて調製した増幅産物は、5’末端にHindIII制限末端が存在し、3’末端にはpENTR/D−TOPOベクターの配列一部とXbaI制限末端が存在する構造を有する。
【0038】
PCR法は、98℃10秒、53.2℃30秒、72℃2分を10回繰り返した後、98℃10秒、58℃30秒、72℃2分を10回繰り返した。得られた増幅産物をHindIII及びXbaIで消化し、Qiagen PCR Purification kit(キアゲン社製)で精製した。このように処理した増幅産物を、Ligation High(東洋紡株式会社製)を用いて、説明書の記載に添って発現ベクターpFLAG−CMV3に導入した(pFLAG−CMV3/O21)。
【0039】
(2)組換体の調製及び本発明酵素の精製
常法に従ってlipofectamin2000(インビトロジェン社製)を用いて、pFLAG−CMV3/O21をHEK293T細胞(ATCC No.CRL−1573)に導入した。導入後、細胞を常法に従って培養し、48時間経過した後に300×gで10分間遠心して培養液を回収し、適当量の抗FLAG M1樹脂(シグマ社製)と混合した。4℃で3時間以上混和させた後、300×10分間遠心し、樹脂に吸着した本発明酵素を回収した。樹脂を回収し、1mmol/lの塩化カルシウム、150mmol/lの塩化ナトリウムを含むTris緩衝液(pH7.4:50mmol/l:樹脂の5〜10倍量)で2回洗浄し、これを酵素液1とした。
【0040】
(実施例2)昆虫細胞を用いた本発明DNA及び本発明酵素の調製方法
インビトロジェン社製のpENTR/D−TOPOベクターを鋳型とし、配列番号7及び配列番号8記載の塩基配列からなるプライマーを用いてPCR法を行った。PCR法は宝酒造株式会社のPyrobestを用いて98℃10秒、53℃30秒、72℃2分を10サイクル繰り返した後、98℃10秒、58℃30秒、72℃2分を10サイクル繰り返して行なった。添付された説明書に従ってBPクロナーゼ反応を行ってpDONOR201ベクターに増幅産物(エントリークローン)を組み込んだ。
【0041】
このエントリークローンは、挿入部位の両端にラムダファージが大腸菌から切り出される際に組換部位として働くattLを有するため、添付書に従ってLRクロナーゼ反応を行いエントリークローンの挿入配列をディスティネーションベクター(pFastBac由来の発現ベクターpFBIF−C)に移し、発現クローンを調製した。
続いてインビトロジェン社製のBac−to−Bacシステムを用いて、上記発現ベクターとpFastBacとの間で組換を行い、昆虫細胞中で増殖可能なプラスミド(バクミド)にクローンを挿入した。
【0042】
常法に従って、目的配列がバクミドに挿入されていることを確認した後、昆虫由来の培養細胞Sf21にバクミドを導入した。
すなわち35mmシャーレにSf21細胞9×105個/2ml(抗生物質を含むSf−900II培地)を加え、27℃で1時間培養して細胞を接着させた。精製したバクミドのDNA5μlに抗生物質を含まないSf−900II 100μlを加えてSolutionAを調製し、CellFECTIN溶液(インビトロジェン社製)6μlに抗生物質を含まないSf−900II 100μlを添加してSolutionBを調製した。SolutionA及びSolutionBを丁寧に混合し、15〜45分間程度室温でインキュベートとし、これに更に抗生物質を含まないSf−900II 800μlを添加して丁寧に混和した(この溶液をSolution混合液とも記載する)。
【0043】
細胞が接着したことを確認し、培養液を吸引し、希釈したSolution混合液1mlをシャーレに加え、27℃で5時間インキュベートした。その後、培地を除去し、抗生物質を含むSf−900IIを2ml添加して27℃で72時間インキュベートした。72時間後にピペッティングを行って細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを2000×gで10分間遠心し、上清を回収した(これを「一次ウイルス液」とした)。
【0044】
T75培養フラスコにSf21細胞1×107個/20mlSf−900II(抗生物質入り)を加え、27℃で1時間インキュベートした。細胞が接着した後、一次ウイルス液800μlを添加して、27℃で48時間インキュベートした。その後、ピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを2000×gで10分間遠心し、上清を別のチューブに保存した(これを「二次ウイルス液」とした)。
【0045】
更に、T75培養フラスコにSf21細胞1×107個/20mlSf−900II(抗生物質入り)を加え、27℃で1時間インキュベートした。細胞が接着した後、二次ウイルス液1mlを添加して、27℃で96時間インキュベートした。その後、ピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを2000×gで10分間遠心し、上清を別のチューブに保存した(これを「三次ウイルス液」とした)。
更に、100ml用スピナーフラスコにSf21細胞6×106個/mlSf−900II(抗生物質入り)を100ml加え、三次ウイルス液1mlを添加して、27℃で96時間インキュベートした。その後、ピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを2000×gで10分間遠心し、上清を本発明酵素の酵素源とした。
【0046】
常法により上記酵素源をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行って、ゲルを使用してウエスタンブロッティング法を行った。検出用の抗体としては抗FLAG M2−ペルオキシダーゼ(A−8592:シグマ社製)を使用した。その結果、分子量約70kDaのタンパク質の発現を確認し、目的タンパク質の発現がなされていることが示唆された。
【0047】
上記酵素源を適当量の抗FLAG M1樹脂(シグマ社製)と混合し、4℃で3時間以上混和させた後、300×10分間遠心し、樹脂に吸着した本発明酵素を回収した。樹脂を回収し、1mmol/lの塩化カルシウム、150mmol/lの塩化カルシウムを含むTris緩衝液(pH7.4:50mmol/l:樹脂の5〜10倍量)で2回洗浄し、これを酵素液2とした。
【0048】
(実施例3)本発明酵素の酵素活性
本発明酵素のUDP−GalNAc転移酵素としての活性を測るために、供与体基質としてUDP−GalNAcを用い、受容体基質としてC末端あるいはN末端をFAMで標識した配列番号9〜16の合成ペプチド(配列番号9及び11記載の合成ペプチドはN末端にFAMが結合しており、他はC末端にFAMが結合している:以下、配列番号9の受容体基質をFAM−Muc1a、配列番号10の受容体基質をMuc2−FAM、配列番号11の受容体基質をFAM−Muc5Ac、配列番号12の受容体基質をMuc7−FAM、配列番号13の受容体基質をMuc13−58−FAM、配列番号14の受容体基質をEA2−FAM、配列番号15の受容体基質をHPR−F−FAM、配列番号16の受容体基質をSDC106−FAMと記載する)、GalNAcを1つ付加した配列番号9、10、11、12、14の合成ペプチド(これらはそれぞれ以下FAM−Muc1a−1G、Muc2−1G−FAM、FAM−Muc5Ac−1G、Muc7−1G−FAM、EA2−1G−FAMと記載する)、及びGalNAcを2つ付加した配列番号11及び12の合成ペプチド(これらはそれぞれ以下FAM−Muc5Ac−2G、Muc7−2G−FAMと記載する)を使用した。GalNAcを付加した基質のうち、FAM−Muc1a−1GはGalNAc転移酵素T6(J Biol Chem., 274(36), 25362−25370(1999))により、Muc−1G−FAM及びFAM−Muc5Ac−1GはGalNAc転移酵素T2(J Biol Chem., 270(41),24156−24165(1995))により、Muc7−1G−FAM、EA2−1G−FAM、FAM−Muc5Ac−2G、及びMuc7−2G−FAMはGalNAc転移酵素T13(J Biol Chem., 278(1), 573−84(2003))によりそれぞれグリコシル化を行い、高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」とも記載する)を用いて精製して得た。
【0049】
反応液は受容体基質(最終濃度50pmol)、TrisHCl緩衝液(pH7.4)(最終濃度25mmol/l)、MnCl2(最終濃度5mmol/l)、供与体基質(最終濃度200nmol/l)から成り、これに酵素液1を10μl加えて、さらにH2Oを加えて全量を20μlとした。
【0050】
上記反応混合液を37℃で16時間反応させた。反応後、97℃で3分間加熱し、酵素を失活させて反応を終了させた。反応終了後、H2Oを40μl加え、軽く遠心後上清を取得した。得られた上清を簡易フィルター(Ultrafree−MC:日本ミリポア社製)を通して、20μl〜40μlをHPLC分析に提供した。HPLCのカラムはCOSMOSIL 5C18−AR(商標名:ナカライテスク社製)を用いた。展開バッファーAは0.05%のトリフルオロ酢酸(以下「TFA」とも記載する)を含むイオン交換水、展開バッファーBとしては0.05%TFAを含むアセトニトリルを用いた。分離にはバッファーBの濃度勾配を用い、30分で50%まで上がるように勾配をかけた。検出条件は励起波長を492nm、検出波長を520nmとした。
【0051】
その結果、FAM−Muc5Ac−1G、FAM−EA−2G、FAM−Muc5Ac−1G、EA2−1G−FAM、FAM−Muc5Ac−2Gを基質として用いた場合に、新たなピークが生じた(図1〜15:中段のチャート)。よって、本発明酵素はこれらのペプチド配列及びGalNAc付加ペプチドを受容体基質としGalNAcを転移することが示された。
【0052】
また、反応液の組成を同様とし、酵素液1を酵素液2に代えて同様の測定を行ったところ、酵素液1よりも若干強い酵素活性が確認された(図1〜15:最下段のチャート)。また、HRP、SD106にもGalNAcを転移する働きを有することが明かとなった。
【0053】
【配列表】
【0054】
【発明の効果】
本発明により新規な糖転移酵素及びそれをコードする核酸が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明酵素のFAM−Muc1aに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図2】本発明酵素のMuc2−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図3】本発明酵素のFAM−Muc5Acに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図4】本発明酵素のMuc7−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図5】本発明酵素のMuc13−58−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図6】本発明酵素のEA2−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図7】本発明酵素のHPR−F−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図8】本発明酵素のSDC106−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図9】本発明酵素のFAM−Muc1a−1Gに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図10】本発明酵素のMuc2−1G−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図11】本発明酵素のFAM−Muc5Ac−1Gに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図12】本発明酵素のMuc7−1G−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図13】本発明酵素のEA2−1G−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図14】本発明酵素のFAM−Muc5Ac−2Gに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
【図15】本発明酵素のMuc7−2G−FAMに対するGalNAc転移活性を示す図である。上段は本発明酵素を添加しない場合のチャートを示し、中段はほ乳類細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示し、下段は昆虫細胞由来の本発明酵素の活性を示すチャートを示す。
Claims (15)
- 以下の(A)又は(B)のポリペプチドを含む糖転移酵素。
(A)配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(B)配列番号2記載のアミノ酸番号43〜601からなるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列からなり、且つN−アセチル−D−ガラクトサミン受容体基質に、N−アセチル−D−ガラクトサミン供与体基質からN−アセチル−D−ガラクトサミン残基を転移する活性を有するポリペプチド。 - 以下の(A’)又は(B’)のポリペプチドを含む糖転移酵素。
(A’)配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B’)配列番号2記載のアミノ酸番号1〜601からなるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列からなり、且つN−アセチル−D−ガラクトサミン受容体基質に、N−アセチル−D−ガラクトサミン供与体基質からN−アセチル−D−ガラクトサミン残基を転移する活性を有するポリペプチド。 - 配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列を含む核酸。
- 請求項1又は2記載のポリペプチドをコードする塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
- 配列番号1記載の塩基番号127〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
- 配列番号1記載の塩基番号1〜1806からなる塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸。
- 請求項3〜6いずれか一項記載の核酸又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを特徴とする核酸。
- DNAであることを特徴とする請求項3〜7いずれか一項記載の核酸。
- 請求項3〜8いずれか一項記載の核酸を含むベクター。
- 請求項1又は2記載の糖転移酵素のポリペプチドを発現する様に構築されている発現ベクターであることを特徴とする請求項9記載のベクター。
- 請求項9又は10記載のベクターを含む組換体。
- 請求項11記載の組換体を生育させ、その生育物から糖転移酵素を単離することを特徴とする糖転移酵素の製造方法。
- 請求項1又は2記載の糖転移酵素を特異的に認識する抗体。
- 請求項1又は2記載の糖転移酵素の活性調節剤。
- 請求項14記載の活性調節剤を有効成分として含む、請求項1又は2記載の糖転移酵素の活性の変化に起因する疾患の処置剤。
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