JP2004357568A - アビジンをコードする人工合成遺伝子 - Google Patents

アビジンをコードする人工合成遺伝子 Download PDF

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Abstract

【課題】イネにおいて効率よく発現し、長期間にわたって優れた害虫抵抗性を付与することのできる人工合成遺伝子、及び該遺伝子を導入した形質転換イネを提供。
【解決手段】以下の(a)又は(b)に示すタンパク質をコードし、かつイネにおける使用頻度が高いコドンを選択することによってイネの中で高い発現効率を有するように改変された人工合成遺伝子。(a)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質(b)特定のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ害虫抵抗性を付与する活性を有するタンパク質
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、害虫抵抗性を付与するアビジンをコードする人工合成遺伝子、及び該遺伝子を導入した形質転換イネに関する。
【0002】
【従来の技術】
米は小麦、トウモロコシと並ぶ世界の三大穀物の一つであり、日本においては国民の主食として最も重要な位置を占めている。イネの栽培に関しては、様々な害虫による被害を防ぐために農薬の使用が欠かせない。また収穫した米を貯穀害虫の被害から免れるためにも薫蒸剤が使用されている。しかしながら、近年における消費者側の安全性志向の流れ、また環境調和型の農業が求められている中で農薬および薫蒸剤の使用は大きな問題である。農薬の使用は、害虫のみならず益虫も殺傷することにより生態系のバランスを崩し、流出した農薬は環境を汚染し、農薬の散布自体が農業作業者の健康に悪影響を及ぼす可能性が考えられる。また、近年残留農薬の問題が消費者の不安を呼び起こし、安全な農産物が求められている。
【0003】
これを解決する一つの手段として遺伝子組み換え手法により害虫に対する抵抗性を持たせることが考えられている。代表的な例としてBacillus thuringiensisが産生する毒素であるBt毒素遺伝子をイネに組み込むことによって害虫抵抗性を獲得することが報告されている(Biotechnology (NY),1993; 11(10): 1151−1155)。しかし、Bt毒素は効果を示す害虫に選択性があり、対象となる害虫が限られていることが問題となっている。例えば、あるBt毒素は鱗翅目の害虫に対して効果が認められるが、甲虫類に対しては効果がないなど、作用適性が限られていることが知られている(Microbiological Review 1989; 53(2): 242−255)。また、こうした組み換え体による害虫防除に関しても長期間に渡って同じ種類の遺伝子を導入した作物を栽培し続ければ、害虫の側に耐性が生じる危険性がある。
【0004】
一方、アビジンは、ビオチンと強固に結合する性質を持つ卵白中の塩基性タンパク質である。アビジンは双翅目であるイエバエの幼虫(非特許文献1)、鱗翅目および鞘翅目の昆虫(非特許文献2)など、広範囲の種類の昆虫に対して殺虫活性があることが報告されている。これらの知見をもとに、アビジン遺伝子が導入されたトウモロコシ(非特許文献3)やタバコ(非特許文献4)が作製され、これらの植物が害虫抵抗性を持つことが報告されている。しかしながら、イネに関してはアビジンを導入した形質転換植物が作製された例は報告されていない。
【0005】
【非特許文献1】
Journal of Insect Physiology 1959; 3: 293−305
【非特許文献2】
Entomologia Experimentalis Applicata 1993; 69: 97−108
【非特許文献3】
Nature Biotechnology 2000; 18: 670−674
【非特許文献4】
Transgenic Research 2002; 11(2): 185−198
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
イネに関する害虫防除手法として、従来技術である化学農薬の使用は、手間やコストがかかる、薬効が長続きしない、人体や環境への悪影響も懸念される等の問題がある。また、遺伝子組換え手法によっても、対象となる害虫の範囲が限定される、害虫側に耐性ができる、植物種によって発現効率が悪い、などといった問題がある。
従って、本発明の課題は、イネにおいて効率よく発現し、長期間にわたって優れた害虫抵抗性を付与することのできる人工合成遺伝子、及び該遺伝子を導入した形質転換イネを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、殺虫活性のあるアビジンタンパク質をコードする遺伝子をイネにおいて使用頻度の高いコドンを選択することによってイネの中で高い発現効率を有するように改変させた人工合成遺伝子をイネに導入すると、そのイネが優れた害虫抵抗性を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 以下の(a)又は(b)に示すタンパク質をコードし、かつイネにおける使用頻度が高いコドンを選択することによってイネの中で高い発現効率を有するように改変された人工合成遺伝子。
(a) 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ害虫抵抗性を付与する活性を有するタンパク質
(2) 以下の(c)又は(d)に示すDNAからなる(1)に記載の人工合成遺伝子。
(c) 配列表の配列番号2に示す塩基配列を有するDNA
(d) 配列表の配列番号2に示す塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ害虫抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(3) (1)又は(2)に記載の遺伝子に、シグナルペプチドをコードする遺伝子を付加した人工合成遺伝子。
(4) 配列表の配列番号3に示す塩基配列を有する(3)に記載の人工合成遺伝子。
(5) イネにおいて機能しうるプロモーターの下流に、(1)から(4)のいずれかに記載の人工合成遺伝子及びターミネーターを導入したことを特徴とする組換えベクター。
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の遺伝子、又は(5)に記載の組換えベクターを導入した形質転換イネ。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
1.人工合成遺伝子の設計と合成
本発明の人工合成遺伝子(以下、本発明の遺伝子という)は、天然のアビジンタンパク質をコードする遺伝子を、イネにおける使用頻度が高いコドンを選択することによってイネの中で高い発現効率を有するように改変した遺伝子である。
本発明の遺伝子をイネに導入し、形質転換することにより、害虫抵抗性に優れたイネを作出することができる。
【0010】
本明細書において、天然のアビジンタンパク質とは、ニワトリ由来アビジンタンパク質をいい、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をいう。また、このアミノ酸配列からなるタンパク質が害虫抵抗性を付与する活性を有する限り、そのアミノ酸配列において複数個、好ましくは1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号1で表わされるアミノ酸配列に1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号1で表されるアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。ここで、「害虫抵抗性を付与する活性」とは、イネ等の作物に対して食害などによりその生育に悪影響を及ぼす、またはその収穫物である穀類に対して被害を及ぼしその商品価値を低下させる害虫を防除・殺虫する活性をいう。上記の「害虫抵抗性を付与する活性を有する」とは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が有する上記活性と実質的に同等であることをいう。
【0011】
上記アミノ酸の欠失、付加、及び置換は、上記タンパク質をコードする遺伝子を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant−K(TAKARA社製)やMutant−G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。
【0012】
配列番号1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子としては、具体的には、配列番号2に示す塩基配列を有するDNAからなる遺伝子が挙げられる。また、配列番号2に示す塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ害虫抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子も本発明に含まれる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高い核酸、すなわち60%以上、好ましくは80%以上の相同性を有するDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜68℃、好ましくは65℃での条件をいう。
【0013】
本発明の遺伝子の設計と合成は、細胞工学別冊、植物細胞工学シリーズ7「植物のPCR実験プロトコール」、95〜100頁、島本巧・佐々木卓治監修秀潤社、1997年7月1日刊行に記載の方法を参考に行うことができる。
【0014】
具体的には、配列番号1のアミノ酸配列を作成し、そのアミノ酸に対応するコドンとしてイネにおける使用頻度の高いコドンを選択することによって本発明の遺伝子の塩基配列を設計する。イネにおけるコドン使用頻度の情報(下記表1参照)は、例えば、当業者に公知のDNAデータベース(GenBank、EMBL、DDBJなど)を利用して得ることができる。また、細胞外に運搬させるために上記のアミノ酸配列にシグナル配列を付加する場合には、これを含めたタンパク質全体のアミノ酸配列を作成する。シグナル配列を付与するのは、発現されたアビジンが植物に対しても毒性を示す可能性があるのでそれを回避するためである。シグナル配列としては、イネ又はイネに近縁の植物由来のものであることが好ましく、例えば、細胞外へ移行するシグナルであるオオムギ由来のα−アミラーゼのシグナル配列等が挙げられるが、これに限定はされない。また、細胞外へ移行させる以外に液胞移行シグナル配列を用いて液胞に移行させてもよい。
【0015】
【表1】
Figure 2004357568
【0016】
以下、本発明の遺伝子作製の具体的手順を示す。
▲1▼ まず作成したアミノ酸配列に含まれる各アミノ酸の個数を求める。
▲2▼ イネのコドンの平均出現頻度に最も近くなるように、上記で求めた個数のアミノ酸について使用するコドンを割り当てる。
▲3▼ なるべく同一コドンが連続しないように、それぞれのコドンの使用順番をつける。
▲4▼ N末端側のアミノ酸から順番に、各アミノ酸について▲3▼で決定したコドンの順番通りに選び、そのアミノ酸残基のコドンと仮決定する。
▲5▼ ▲1▼〜▲3▼の手順を繰り返しC末端までの全アミノ酸のコドンを仮決定し、最後に終止コドンを配置する。
▲6▼ 決定されたコドンからなる人工遺伝子について、植物において遺伝子の転写を阻害する配列であるATTTA配列が存在しないことを確認する。この配列が存在した場合には、この配列にかかるコドンを別の部分で使用したコドンと交換する。
▲7▼ 以降の操作で使用する制限酵素の認識配列が存在しないことを確認する。存在した場合には、この配列にかかるコドンを別の部分で使用したコドンと交換する。
▲8▼ 再び▲6▼、▲7▼を確認する。
尚、遺伝子設計の際に、後の操作のために適当な制限酵素認識配列を5’および3’に付加しておくことが好ましい。
【0017】
次に、上記で設計した塩基配列を有する遺伝子の合成は、PCRを用いた長鎖DNA合成法を用いて行うことができる(島本ら、「植物のPCR実験プロトコール」、同上参照)。この方法では、長い合成オリゴヌクレオチドプライマーのみを使用してDNAを合成する。プライマーの対は、プライマーの各々の3’末端に約10〜12bpの相補鎖またはオーバーラップをもつように合成され、お互いのプライマーを鋳型としてDNA合成を行う。プライマーの全長は、約60〜100mer、好ましくは約80〜100merである。
【0018】
まず、設計された塩基配列をもとに例えば約90塩基ごとにプライマーとするDNAオリゴマーを設計し、合成する(図1参照)。DNAオリゴマーの合成は、β−シアノエチルホスホアミダイド法によりDNA合成機を用いて行うことができる。
まず、設計した塩基配列の中央部付近から5’側約90残基上流までの配列を用いて第1のDNAオリゴマー設計し、合成する。次にこの第1のDNAオリゴマーの3’側12残基の配列を含み、この部分より遺伝子の3’下流側に90残基程度の長さの相補鎖オリゴマーを合成し、これを第2のDNAオリゴマーとする。また、第1のDNAオリゴマーの5’側12残基を含み、この部分より遺伝子の5’上流側に90残基程度の長さの相補鎖オリゴマーを合成し、これを第3のDNAオリゴマーとする。さらに、第2のDNAオリゴマーの5’側(遺伝子側からみると3’側)の12残基の配列を含み、この部分より遺伝子の3’下流側に第2のDNAオリゴマーの相補鎖を合成し、これを第4のDNAオリゴマーとする。以下同様に第5、第6のDNAオリゴマーを合成する。合成遺伝子は550残基程度なのでこれで全部の領域をカバーできるが、カバーできていない場合はカバーできるまでさらにオリゴマーを合成する。
【0019】
次に、これらオリゴマーを順番にPCR反応により結合する。まず第1と第2のDNAオリゴマーをプライマーとして用いてPCR反応を行う。次にこのPCR産物を鋳型として、第3、第4のDNAオリゴマーをプライマーとして用いてPCR反応を行う。PCR反応は、例えば、変性温度94℃1分、アニール温度51℃1分、伸長温度72℃2分を1セットとして5サイクル反応させた後、変性温度94℃1分、アニール温度60℃1分、伸長温度72℃2分を1セットして20サイクル反応を行う。反応に使用するDNAポリメラーゼは塩基の取り込みエラー率の低い酵素を使用することが好ましい。以下この操作を繰り返し、塩基配列を伸長し、目的の塩基配列を得る。目的の塩基配列の両端には、必要に応じて制限酵素部位を設け、常法に従いクローニングベクターに導入し、サブクローニングする。得られたクローンの塩基配列をDNAシークエンサーで確認し、目的の塩基配列が得られたことを確認する。
【0020】
2.組換えベクターの構築
1.で合成した人工合成遺伝子は適当なベクターに挿入し、イネなどの植物細胞へ導入して発現される。本発明の遺伝子を導入するためのベクターとしては、pBI系のベクター、pUC系のベクター、pTRA系のベクターが好適に用いられる。pBI系及びpTRA系のベクターは、アグロバクテリウムを介してイネに目的遺伝子を導入することができる。本発明においてはpBI系のバイナリーベクター又は中間ベクター系が好適に用いられ、例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3等が挙げられる。バイナリーベクターとは大腸菌(Escherichia coli)およびアグロバクテリウムにおいて複製可能なベクターで、バイナリーベクターを保持するアグロバクテリムを植物に感染させると、ベクター上にあるLB配列とRB配列より成るボーダー配列で囲まれた部分のDNAを植物核DNAに組み込むことが可能である(EMBO Journal 1991;10(3):697−704)。一方、pUC系のベクターは、パーティクルガン法などでイネに目的遺伝子を直接導入することができ、例えば、pUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。また、カルフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターも用いることができる。
【0021】
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法で行うことができる。
【0022】
本発明の遺伝子は、その機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこでベクターには、発現カセットとして、本発明の遺伝子の上流にプロモーター、下流にターミネーターを結合し、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボゾーム結合配列(SD配列)などを含めることができる。
【0023】
「プロモーター」としては、植物細胞において機能し、植物の特定の組織内あるいは特定の発育段階において発現を導くことのできるDNAであれば、植物由来のものでなくてもよい。使用するプロモーターの種類を変更することによって、アビジンを発現させる部位を変えることが可能である。あるいは特定の生育段階で発現させることや特定の反応刺激によって誘導することもできる。使用することのできるプロモーターとしては、例えば、グルテリンプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。グルテリン由来のプロモーターは種子特異的発現を誘導する性質を持ち(Plant Journal 1998;14(6):673−683)、貯穀害虫に対する効果の点からより好ましい。
【0024】
「ターミネーター」は、前記プロモーターにより転写された遺伝子の転写を集結できる配列であればよい。具体例としては、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)、カリフラワーモザイクウイルスポリAターミネーター等が挙げられる。
【0025】
「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、例えばCaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域が好適である。
【0026】
また、本発明の遺伝子の導入により形質転換した植物細胞を効率的に選択するために、上記組み換えベクターは、適当な選抜マーカー遺伝子を含めるか、もしくは選抜マーカー遺伝子 を含むプラスミドベクターと共に植物細胞へ導入するのが好ましい。この目的に使用する選抜マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質ハイグロマイシンに耐性であるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、カナマイシンまたはゲンタマイシンに耐性であるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、および除草剤ホスフィノスリシンに耐性であるアセチルトランスフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。
【0027】
3.形質転換イネの作製
形質転換イネは、本発明の遺伝子又は該遺伝子を含む組換えベクターを、該遺伝子が発現しうるようにイネ細胞に導入することにより得ることができる。
ここで、「イネ細胞」とは、例えば葉、根、茎、花および種子中の胚盤などの細胞、カルス、懸濁培養細胞等をいう。
【0028】
本発明の遺伝子又は組換えベクターをイネに導入する方法としては、アグロバクテリウム法、PEG−リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。例えばアグロバクテリウム法による遺伝子導入は、前記の組換えベクター(バイナリーベクター)をアグロバクテリウムに導入し、得られたアグロバクテリウムをイネ細胞に感染させることによる行う。以下に、具体的手順を示す。
【0029】
まず、イネの完熟種子を次亜塩素酸で消毒後、2, 4−ジクロロ酢酸を含む 寒天固形培地に置床して培養する。約3週間後胚盤組織より生じたカルスを寒天固形培地に移植して約3日又はそれ以上培養すると、アグロバクテリウム法に供試できるカルスが得られる。使用するイネの品種としては、例えば、コシヒカリ等の日本型品種および IR36 等のインド型品種があるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
次に、得られたカルスに組換えベクターを導入したアグロバクテリウムを感染させる。アグロバクテリウムは、例えばアグロバクテリウム・ツメファンシス(Agrobacterium tumefaciens)EHA101、LBA4404 などを用いることができる。このアグロバクテリウムを選抜用薬剤を含む培地で培養することによって、本発明の遺伝子および選抜マーカー遺伝子が導入されたアグロバクテリウムのみを増殖することができる。最後に、遺伝子導入カルスから残存するアグロバクテリウムを除去し、ハイグロマイシンなどの選抜用薬剤を含んだ再分化誘導用培地にて培養し、形質転換されたカルスを選抜した後、シュートを誘導し、イネ植物体を形成させ、形質転換イネを得る。
【0031】
なお、本発明において 形質転換イネとは、本発明の遺伝子を導入したカルスなどの植物培養細胞、植物体全体、植物器官(根、茎、葉、花、種子、実(種籾))を総称するものであり、種子の可食形態である玄米、精米、米粉および米飯を含む。植物培養細胞を対象とする場合において、得られた形質転換細胞から形質転換体を再生させるためには既知の組織培養法により器官又は個体を再生させればよい。
【0032】
本発明の遺伝子が植物に導入されたか否かの確認は、形質転換細胞および組織から常法に従って DNAを抽出し、公知の PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換植物からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRを行った後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法でもよい。
【0033】
本発明の形質転換イネは、自家受粉によって後代植物を作出することが可能であり、本発明の遺伝子を後代に遺伝させることできる。また、本発明の形質転換イネは他のイネとの交配により新たな品種を作出するためにも用いることができる。本発明の形質転換イネは、導入されたアビジン人工合成遺伝子により阻害されることなく正常に生育し、かつ該遺伝子の発現によって高い害虫抵抗性を示し、これを食害した貯穀害虫は死亡あるいは生育が抑制される。
【0034】
ここで、抵抗性を示すことができる害虫の種類としては、例えば、直翅目(イナゴ、クサキリ等)、半翅目(アブラムシ、イネカメムシ、イネクロカメムシ、ウンカ、カメムシ、クモヘリカメムシ、シラホシカメムシ、セジロウンカ、ツマグロヨコバイ、トビイロウンカ等)、鱗翅目(アワヨトウ、イチモンジセセリ、イネアオムシ、イネツトムシ、イネヨトウ、コブノメイガ、ニカメイガ、ニカメイチュウ、ノシメマダラメイガ、イッテンコクガ、ガイマイツヅリガ、バクガ等)、双翅目(イネカラバエ、イネキモグリバエ、イネハモグリバエ等)、甲虫目(ヒラタコクヌストモドキ、イネクビホソハムシ、イネゾウムシ、イネドロオイムシ、コクヌストモドキ、コクゾウムシ、ココクゾウムシ等)などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【0036】
(実施例1) アビジンタンパク質をコードする人工合成遺伝子の設計および合成
大麦のアルファアミラーゼ由来のシグナル配列(配列番号4)に続いてアビジンのアミノ酸配列を結合したアミノ酸配列を作成した。このアミノ酸配列に含まれる各アミノ酸に前記手順に従ってイネにおいて使用頻度の高いコドンを割り当てることによって人工合成遺伝子のDNA配列を設計した(配列番号3)。遺伝子には5’側の末端にBamHIサイトを、3’側末端にHindIIIおよびBamHIサイトを(5’側からHindIII 、BamHIの順番で)挿入した。
【0037】
設計したDNA配列をもとに約90塩基ごとに下記のDNAオリゴマー合成業者(タバイエスペックオリゴ)に依頼して合成した。
Avid3F(配列番号7):
agagttcact gggacataca ttaccgcagt cacggcgact tcaaacgaaa tcaaagagtc gccattgcac ggcacccaga atacaatcaa ca
Avid4R(配列番号8)
aaagcattgg cccgtgaaga cggttgtact ctcggagaac ttccaattca cagtaaaccc
gaaggtcggc tgcgtacgct tgttgattgt at
Avid2F(配列番号6)
gccaggaagt gctccctcac cggcaagtgg acgaatgacc tgggtagcaa catgaccatt
ggcgctgtga actctcgcgg agagttcact gg
Avid5R(配列番号9):
ttccagtcat cgcctatgtc gttcacggag ctgcgtagaa gccacatcgt cttgagaact
tctttaccat ttcgatcgat aaagcattgg cc
Avid1F(配列番号5):
ggatccatgg ctaacaagca cctcagcctg tccttgttcc tcgtgcttct cggcctgtca
gcctcgctag cgtctggaca ggccaggaag tgc
Avid6R(配列番号10):
ggatccaagc tttcactcct tctgggtcct cagtcttgtg aagatgttga ttcctacccg
agtggctttc cagtcatcg
【0038】
なお、上記Avid3F(配列番号7)、Avid4R(配列番号8)、Avid2F(配列番号6)、Avid5R(配列番号9)、Avid1F(配列番号5)、Avid6R(配列番号10)は、それぞれ前記のオリゴマーDNA1,2,3,4,5,6に相当する。
【0039】
最初に、上記DNAオリゴマーのうち、Avid3F(配列番号7)およびAvid4R(配列番号8)を用いてPCR反応を行った。PCR反応液の組成を表2に示す。反応に使用したDNAポリメラーゼはタカラバイオ社のExTaqであり、酵素に添付された反応緩衝液を使用した。PCRの条件は、変性温度94℃1分、アニール温度51℃1分、伸長温度72℃2分を1サイクルとして5サイクル、変性温度94℃1分、アニール温度60℃1分、伸長72℃2分を1サイクルとして20サイクルとした。
【0040】
【表2】
Figure 2004357568
【0041】
次に、上記PCR反応の増幅産物の一部を取りこれをテンプレートとしてAvid2F(配列番号6)、Avid5R(配列番号9)を用いてPCR反応を行った。PCR条件は上記1回目の反応と同じでPCR反応液の組成は表3に示す通りである。
【0042】
【表3】
Figure 2004357568
【0043】
次に、上記PCR反応の増幅産物の一部を取りこれをテンプレートとして増幅産物の一部を取り、最後にAvid1F(配列番号5)、Avid6R(配列番号10)を用いてPCR反応を行い、目的とする人工合成遺伝子を作製した。PCR条件は上記1回目の反応と同じでPCR反応液の組成は表4に示す通りである。
PCR反応終了後の反応液をキアゲン社のPCR Purification Kitを用いて合成DNAを精製し、次のサブクローニングに使用した。
【0044】
【表4】
Figure 2004357568
【0045】
(実施例2) 組換えベクターの構築及び形質転換イネの作製
(1) 組換えベクターの構築
実施例1で得られたDNA断片をTOPO−XLクローニングキット(インビトロジェン社製)用いて、キットに含まれるpCR−XL−TOPOベクターにサブクローニングした。サブクローニングしたDNA配列が正しいものであるかをDNAシークエンサー(パーキンエルマー社製ABIprism310)で確認した。このサブクローニングしたプラスミドよりBamHIで挿入断片を切り出した。農業生物資源研究所の高岩らが作成したGluB−1プロモーター(グルテリンプロモーター)がpUC18に挿入されたベクターをBamHIで切断し、上記の挿入断片を連結させた。GluB−1プロモーターの3’下流に正方向に挿入されたクローンを選び、このクローンをHindIIIで切断し、GluB−1プロモーターに連結されたアビジン人工合成遺伝子(アミラーゼシグナル配列を含む)を切り出した。
【0046】
バイナリーベクターは農業生物資源研究所の川崎らが作成したベクターを改変したpBIG−Hを用いた。このベクターは2つのボーダー配列の間にカナマイシン耐性遺伝子(NPT II)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(HPT)、β−グルクロニダーゼ遺伝子、SAR配列を有する。このベクターを、HindIIIで処理し、上記のGluB−1プロモーターに連結されたアビジン人工合成遺伝子を挿入した。図2に、アビジン人工合成遺伝子含有バイナリーベクター(Avi−pBIG−Hと称する)の構造を示す(図2中、GluB−1−pro:GluB−1プロモーター、amyl−avidin:アビジンの人工合成遺伝子にアミラーゼのシグナル配列部分を付加した遺伝子、HindIII:HindIII制限酵素部位、RB:ライトボーダー、Nos−pro:ノパリン合成酵素プロモーター、NPTII:カナマイシン耐性遺伝子、Nos−ter:ノパリン合成酵素ターミネーター、SAR:スキャフォールドアタッチメントリージョン、35S:カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、intron−GUS:イントロンを含むβ−グルクロニダーゼ遺伝子、HPT:ハイグロマイシン耐性遺伝子、LB:レフトボーダーを示す)。なおこのベクターにはHindIII挿入部位の3’下流にNosターミネーター配列が存在し、正方向に遺伝子を導入すると導入した遺伝子のターミネーターとして機能する。また、SAR配列とはMAR配列とも呼ばれ、核マトリックスと親和性のあるDNA配列でSAR配列の近傍にある遺伝子の転写効率を高めることが報告されている(Transgenic Research 1993;2(2):93−100)。
【0047】
(2) 発現用バイナリーベクターのイネへの導入
(1)で作製したAvi−pBIG−Hベクターをアグロバクテリウムに導入した。遺伝子導入は、エレクトロポレーション装置(Genetronics社製ECM395)を使用し、1.45keVで荷電することにより行った。形質転換したアグロバクテリウムは50%グリセロールを含むLB培地を用いて−80℃で保存した。また、これと同様にpBIG−H(対照)を同様にしてアグロバクテリウムに導入した。Avi−pBIG−H、pBIG−H導入アグロバクテリウムをそれぞれ用いてイネ(日本晴)を形質転換した。
【0048】
(3) アビジン遺伝子の発現の確認
形質転換イネにおけるアビジンタンパク質の発現をウェスタンブロッティング法により検出した。方法は、タンパク質実験ノート、24−32頁、岡田雅人・宮崎香編集、羊土社、1996年10月15日刊行に記載の方法に準じた。形質転換イネ及び対照イネ(対照用のpBIG−Hで形質転換)の種子より可溶性タンパク質を抽出し、30μgずつSDS−PAGEにかけた。電気泳動した後、ゲル内のタンパク質を平板型転写装置セミドライタイプ(日本エイドー社製)を用いて転写膜(Immobilon−Psq, Millipore社製)に転写した。検出のための1次抗体としてウサギ抗卵白アビジンポリクローナル抗体(Biogenesis社製)を用い、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識したヤギ抗IgG抗体(バイオ・ラッド社製)を用いた。検出にはAP発色キット(バイオ・ラッド社製)を用いた。図3に、形質転換イネ及び対照イネのそれぞれの種子から抽出した可溶性タンパク質をウェスタンブロッティング法によって解析した結果を示す(図3中、レーン1:対照イネ種子の抽出液(タンパク質量30μg)、レーン2:形質転換イネ種子の抽出液(タンパク質量30μg)、レーン3:標準アビジン(100ng)を示す)。形質転換イネ種子の可溶性タンパク質のレーンでは強いシグナルがみられ、アビジンタンパク質が発現していることが確認された。また、検出されたシグナルより推定される分子量は標準品のアビジンよりやや小さかった。一方、対照イネの可溶性タンパク質ではシグナルが検出されなかった。
【0049】
(実施例3) 形質転換イネ米に含有されるアビジン量の測定
ELISA法により形質転換イネ米に含有されるアビジン量を測定した。実験方法は「タンパク質実験の進め方」、94〜96頁、岡田雅人・宮崎香編集、羊土社、1998年10月1日刊行に記載の方法に準じた。実施例2で得られた形質転換イネの玄米1粒に0.1モルリン酸緩衝液(pH7.0)を加えてホモジナイズし、10000×g、10分間遠心分離して得られた上澄み可溶性液を試験に供した。ELISA試験用マイクロプレート(IWAKI3801−096)にこの可溶性液50μlずつ分注した。室温で2時間放置し、サンプルを取り除いた後、PBS(NaCl 8g, NaHPO・12HO 2.9g, KCl 0.2g, KHPO 0.2gを1Lの精製水に溶解して作製)を各ウェル当たり100μl分注して3回洗った。ブロッキング溶液(2.5%牛血清アルブミン、5%ショ糖を含む10mMリン酸緩衝液(pH8.0))を100μlずつ分注し室温で2時間放置した。ブロッキング溶液を取り除き、ブロッキング溶液で1000分の1に希釈した1次抗体(実施例2で使用)を60μlずつ分注し37℃で1時間放置した。未結合の一次抗体を取り除くため、100μlのPBSで5回洗った。続いて、ブロッキング溶液で1000分の1に希釈した2次抗体(実施例2で使用)を60μlずつ分注し37℃で1時間放置した。未結合の二次抗体を取り除くため、100μlのPBSで5回洗った。PBSを捨て、発色用反応液(バイオラド172−1063)を100μl加えて室温で1時間反応させた。マイクロプレートリーダー(東ソー MPR−A4)により410nmの吸光度を測定した。実施例2で作製した形質転換イネ19系統のうち、ウェスタンブロット法による解析で強いシグナルが認められた3系統について8粒ずつ分析したところ、それぞれ平均値で54、114、76ppmのアビジンを含んでいた。白米ではタンパク質含量が約90%に減少するので(5訂日本食品成分表、科学技術庁資源調査会編(2000年))、白米における推定アビジン含量はそれぞれ49、103、68ppmとなる。
【0050】
(実施例4) 形質転換イネ米を用いた害虫成育抑制試験
実施例2で得られた形質転換イネ(試験区)と対照イネ(対照区)の玄米を用意した。これら玄米を別々にミルサー(イワタニ社製)を用いて粉砕し、1.5mlマイクロチューブに50mgずつ分けて入れこれを試験区、対照区とも各20個用意した。マイクロチューブの蓋には呼吸用の穴を3カ所針先で開けた。このチューブにヒラタコクヌストモドキの孵化幼虫を1頭ずつ放ち、30℃下で飼育試験を行った。結果を表5に示す。形質転換イネ米を飼料とした場合、試験2週間後で生存個体は2頭となり、最終的に成虫になった個体は存在しなかった。一方、対照区では試験開始2週間後で18個体が生存し、最終的には16頭が成虫となった。従って、アビジンを含む形質転換イネの玄米は強力に害虫の成育を抑制することが判明した。
【0051】
【表5】
Figure 2004357568
【0052】
(実施例5) プロモーターの発現効率の比較
イネ種子におけるプロモーターとしての誘導効率に関し、GluB−1プロモーターと植物の遺伝子導入の際に汎用されている35Sプロモーターとの比較を行った。ハトムギ由来のシスタチン遺伝子(Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 2002;66(10):2287−2291)を35SプロモーターおよびGluB−1プロモーターの下流に結合したコンストラクトをそれぞれ作製し、バイナリーベクターに導入した。これらのベクターを用いて実施例2に記載の通りアグロバクテリウム法により形質転換イネを作製した。それぞれの形質転換体イネから得た稔実種子(4粒)の可溶性タンパク質30μgをSDS−PAGEで分離した後、ウェスタンブロッティング法により解析し、発現量を比較した。図4にその結果を示す(図4中、レーン1:35Sプロモーター形質転換体、レーン2:GluB−1プロモーター形質転換体、レーン3:プロモーターおよびシスタチン遺伝子を含まない形質転換体、矢印:導入したシスタチンのシグナルを示す)。その結果、GluB−1プロモーターを用いた場合の方が35Sプロモーターより強いシグナルが検出された。NIH imageソフトウェアによりシグナルを定量化したところ、GluB−1プロモーターを使用した場合の方が約4倍のシグナル強度があり、GluB−1プロモーターの使用は従来から汎用されている35Sプロモーターより種子における転写効率が高いと考えられる。従って、種子におけるアビジンの発現に関しては35SプロモーターよりGluB−1プロモーターが有効であると考えられる。
【0053】
(実施例6)ユビキチンプロモーターを使用した形質転換イネ
実施例2におけるGluB−1プロモーターの代わりにイネユビキチンプロモーター(PLANT SCIENCE 2000 Jul 28;156(2):201−211)を使用して形質転換イネを作製したところ、1系統の植物体が得られた。この植物体の葉にはアビジンが発現していることをウェスタンブロット法による解析で確認できたが、稔実しなかった。従って、ユビキチンプロモーターはアビジンを葉茎などに発現させる場合には有用であるが、種子における発現にはGluB−1プロモーターの方が適していると考えられる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、殺虫活性のあるアビジンタンパク質をコードする遺伝子をイネにおいて使用頻度の高いコドンを選択することによってイネの中で高い発現効率を有するように改変させた人工合成遺伝子が提供される。この人工合成遺伝子を導入した形質転換イネは優れた害虫抵抗性を有する。
【0055】
【配列表】
Figure 2004357568
Figure 2004357568
Figure 2004357568
Figure 2004357568
Figure 2004357568
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Figure 2004357568
Figure 2004357568

【図面の簡単な説明】
【図1】人工合成アビジン遺伝子の作製に用いたDNAオリゴマーの模式図を示す。
【図2】アビジン人工合成遺伝子含有バイナリーベクター(Avi−pBIG−H)の構造を示す。
【図3】形質転換イネ及び対照イネのそれぞれの種子から抽出した可溶性タンパク質をウェスタンブロッティング法によって解析した結果を示す。
【図4】GluB−1プロモーターおよび35Sプロモーターにより誘導されるタンパク質発現量をウェスタンブロッティング法によって解析した結果を示す。

Claims (6)

  1. 以下の(a)又は(b)に示すタンパク質をコードし、かつイネにおける使用頻度が高いコドンを選択することによってイネの中で高い発現効率を有するように改変された人工合成遺伝子。
    (a) 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b) 配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ害虫抵抗性を付与する活性を有するタンパク質
  2. 以下の(c)又は(d)に示すDNAからなる請求項1に記載の人工合成遺伝子。
    (c) 配列表の配列番号2に示す塩基配列からなるDNA
    (d) 配列表の配列番号2に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ害虫抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNA
  3. 請求項1又は2に記載の遺伝子に、シグナルペプチドをコードする遺伝子を付加した人工合成遺伝子。
  4. 配列表の配列番号3に示す塩基配列を有する請求項3に記載の人工合成遺伝子。
  5. イネにおいて機能しうるプロモーターの下流に、請求項1から4のいずれかに記載の人工合成遺伝子及びターミネーターを導入したことを特徴とする組換えベクター。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の遺伝子、又は請求項5に記載の組換えベクターを導入した形質転換イネ。
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JP2015514406A (ja) * 2012-04-17 2015-05-21 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーF. Hoffmann−La Roche Aktiengesellschaft 改変された核酸を用いてポリペプチドを発現させるための方法
WO2022080486A1 (ja) * 2020-10-16 2022-04-21 シスメックス株式会社 ポリペプチド、多量体、固相、被検物質の測定方法および試薬キット

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