JP2004357385A - ケーブルハンガー - Google Patents
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Abstract
【課題】ケーブルの架線工事における作業性を改善し得るケーブルハンガーを提供すること。
【解決手段】ケーブルを受けるよう湾曲したケーブル支持部1と、該ケーブル支持部1の長手方向の両端に設けられ吊架用線に係合し得る構造とされた第1および第2の取付部2、3とを有するケーブルハンガーであって、ケーブル支持部1には、表面に保護層5が設けられており、該保護層5は、ケーブル支持部1の両端部e1、e2において外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっている。これによって、ケーブルをケーブル支持部内に挿入する時に、該ケーブルが保護層に引掛ることもなくなり、また、当該ケーブルハンガーを吊架用線に取り付けて金車内を通過させる場合にも、スムーズに通過することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】ケーブルを受けるよう湾曲したケーブル支持部1と、該ケーブル支持部1の長手方向の両端に設けられ吊架用線に係合し得る構造とされた第1および第2の取付部2、3とを有するケーブルハンガーであって、ケーブル支持部1には、表面に保護層5が設けられており、該保護層5は、ケーブル支持部1の両端部e1、e2において外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっている。これによって、ケーブルをケーブル支持部内に挿入する時に、該ケーブルが保護層に引掛ることもなくなり、また、当該ケーブルハンガーを吊架用線に取り付けて金車内を通過させる場合にも、スムーズに通過することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電線・通信線などのケーブルを架空配線する場合に用いられる、ケーブルハンガーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電柱、金属ポール、建物等の支持構造体の間にケーブルを張り渡し架空ケーブルとするには、先ず、そのケーブルを空中に支持するための吊架(ちょうか)用線を、その支持構造体間に張り渡しておく必要がある。張り渡された吊架用線には、特許文献1の図1、図12に示すような一般的なケーブルハンガーが所定の間隔で吊り下げられる。ケーブルハンガーは、吊架用線に係合する部分(フックなど)と、ケーブルを受け止めるケーブル支持部とを有する。このケーブルハンガーによって、ケーブルは、吊架用線に沿って空中に支持される(例えば、特許文献1の図1)。
【0003】
吊架用線を張り渡すには、さらにそれに先立って、金車(きんしゃ)と呼ばれる滑車を複数個吊り下げるための金車用支持線を支持構造体間に張り渡し、それに金車を所定ピッチで吊り下げる(例えば、特許文献1の図5、6、9)。
次いで、金車内を順に通過させて吊架用線を送り出し、支持構造体間に該吊架用線を張り渡す。吊架用線が張り渡された後、該吊架用線には、所定間隔でケーブルハンガーが1つ1つ取り付けられるが、特許文献1の発明によるケーブルハンガーを用いる場合には、予め該ケーブルハンガーを付けた状態で吊架用線を送り出し、吊架用線を該ケーブルハンガーごと金車内を通過させることも可能となる(特許文献1の図6、7)。
【0004】
最初に述べたように、吊架用線に吊り下げられたケーブルハンガーのケーブル支持部(特許文献1の図1の符号1a)にケーブル(同図の符号13)を通すことによって、ケーブルは吊架用線に沿った状態で空中に吊り下げられる。
金車用支持線および金車は、吊架用線を支持構造体間に張り渡し固定した後、又はケーブルを布設した後に取り外される。
【0005】
従来の架空ケーブルに加えて、架空光ケーブルの布設が急ピッチで進められており、架空配線スペースの制約から、同一吊架ポイントに、複数のケーブルを一束化したり追加布設したりする架線工事を簡便かつ経済的に行なうことが要求されている。
【0006】
特許文献1のケーブルハンガーは、そのような要求にも応えるべく開発されたものであって、第1の取付部をピボット運動の回転中心として、第2の取付部側を持ち上げることで、ケーブルの挿入口を開くことができ、ケーブルハンガーを取り外すことなく、ケーブル支持部へケーブルを出し入れできるように工夫されている。その作用効果は、該文献1の段落(0041)に、「第2の取付部をちょう架用線に対して上方の離れた位置に移動させることで、ケーブル支持部に対して第1及び第2の取付部間ないし該ケーブル支持部の開口を通してケーブルを出し入れすることができ、ケーブル追加布設の作業の効率化を図ることができる。」と記載されたとおりである。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−112154号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が、特許文献1記載のケーブルハンガーによる実際の架空ケーブル布設工事の状況を詳細に検討したところ、該ケーブルハンガーには、解決すべきさらなる問題が存在していることがわかった。この問題を次に説明する。
【0009】
従来の一般的なケーブルハンガーは、図4に例示するように、1本の金属芯線104を湾曲させて形成したものであって、U形状または略環状のケーブル支持部101と、両端部のフック状を呈する取付部102、103とを有する構造となっている。ケーブル支持部101には、ケーブルが擦れてもケーブルに損傷を与えないよう、塩化ビニルなどの低摩擦係数の材料からなる保護層103が設けられる。該保護層は、ケーブルハンガーの本体とは別にチューブとして形成され、胴体の一箇所に全長に渡って切れ目106が設けられ、該切れ目での切開によって胴体を開いて金属芯線にはめ込むことができるようになっている。
【0010】
ここで解決すべき問題とは、保護層の両端部e10、e20が単純な切断面であるために、保護層と金属芯線との段差が生じて起きる問題である。この段差が存在するために、ケーブル支持部内へ新たにケーブルを入れようとする際に、該ケーブルが段差に引っ掛かることがあり、スムーズな挿入作業の障害になっていることがわかった。
しかも、特許文献1のケーブルハンガーでは、該保護層がチューブとして別途形成され、その胴体の一箇所に全長に渡って切れ目106が設けられ、該切れ目での切開によって胴体を開いて金属芯線にはめ込む構造となっている。そのために、吊架用線に取り付けた状態で金車を通過させる際には、保護層の段差が金車の滑車などに引掛かると、該保護層がめくれてケーブルハンガーから脱落するという現象も生じ得ることがわかった。
【0011】
本発明の課題は、上記問題を解決し、ケーブルの架線工事における作業性を改善し得るケーブルハンガーを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の特徴を有するものである。
(1)架空ケーブルの布設において、吊架用線に吊り下がってケーブルを支持するケーブルハンガーであって、
当該ケーブルハンガーは、ケーブルを受けるよう湾曲したケーブル支持部と、該ケーブル支持部の長手方向の両端に設けられ吊架用線に係合し得る構造とされた第1および第2の取付部とを有し、
ケーブル支持部は、線材を螺旋状に略1周分だけ湾曲させた形態であり、それによって、第1および第2の取付部は、吊架用線に対して該吊架用線の長手方向に互いに離れた状態で取り付くように位置しており、
第1の取付部は、吊架用線に対して、該吊架用線と略垂直な水平軸の回りに回動可能に係合し得る構造とされ、
第2の取付部は、吊架用線に着脱自在に引掛かり得るフック状の構造とされ、第1の取付部の回動に伴って、吊架用線に引掛かった位置と、吊架用線から離脱した位置との間を移動可能な構成とされており、
ケーブル支持部には表面に保護層が設けられており、該保護層は、ケーブル支持部の両端部において外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっていることを特徴とするケーブルハンガー。
【0013】
(2)上記保護層が、メルトマスフローレート0.1〔g/10min〕〜100〔g/10min〕、平均粒子径100μm〜400μmの耐摩耗性を有する樹脂を粉体塗装することによって形成された層である、上記(1)記載のケーブルハンガー。
【0014】
(3)上記樹脂が、高密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンである、上記(2)記載のケーブルハンガー。
【0015】
(4)上記第1の取付部が、吊架用線に沿って移動できない様に、回動可能に固定されている、上記(1)記載のケーブルハンガー。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のケーブルハンガーは、図1に構造の一例を示すように、ケーブルを受けるよう湾曲したケーブル支持部1と、第1の取付部2と、第2の取付部3とを有する。これら取付部2、3は、ケーブル支持部1の長手方向の両端からさらに延びて、吊架用線に掛って吊り下がり得る構造(フック状構造など)とされた部分である。ケーブル支持部1には、表面に保護層5が設けられており、これによってケーブルに損傷を与えないようになっている。該保護層5の長手方向の両端部e1、e2は、外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっている。
以下、説明のために、保護層両端部に設けた〔外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっている〕部分を、単に「テーパ状端部」と呼ぶ。
【0017】
保護層の両端部をテーパ状端部としたことによって、架空ケーブルの布設時や新たなケーブルの追加時において、ケーブル支持部内へ新たにケーブルを入れようとする際に、該ケーブルが保護層両端部の段差に引掛かることが緩和されスムーズな作業が可能となる。さらに、この保護層の構造を上記特許文献1のケーブルハンガーの保護層に適用すれば、保護層端部の段差が金車に引掛かることも緩和され、切れ目を入れた装着型の保護層であっても、ケーブルハンガーの芯線から脱落するようなトラブルも抑制される。
【0018】
当該ケーブルハンガーの構造は、ケーブル支持部と取付部とを別々に形成し、結合した構造であってもよいが、図1の例のように、1本の芯線4を、螺旋状に略1周期分だけ曲げて隙間の開いた環状部分を形成し、これをケーブル支持部とし、その両端部を取付部とする態様が簡単な構造であり好ましい。また、このようにケーブル支持部と取付部とが連続した構造であれば、保護層の段差を無くした作用効果がより顕著となる。
【0019】
当該ケーブルハンガーを、1本の芯線を曲げて形成する場合、該芯線には従来公知の材料を用いてよく、例えば、亜鉛メッキ鋼線などが好ましいものとして挙げられる。芯線の表面には、亜鉛メッキ以外にも、必要に応じた表面処理、被覆などが加工されていてもよい。
芯線の径は、用途に応じて適宜決定してよく限定はされないが、一般的には、外径2mm〜5mm程度が好ましい線径として挙げられる。
【0020】
取付部の構造は限定されず、従来公知のケーブルハンガーの取り付き状態の如く、吊架用線に係合し得るものであればよい。取付部の構造は、例えば、芯線を湾曲させた単純なフックの構造、外れ止めを有するフックの構造、特許文献1に記載されたような取付金具をさらに用いた回動可能な固定構造などが挙げられる。
取付部をフックとする場合の、該フックの内側の曲率(何程の外径の吊架用線に引掛かり得るか)などは、従来公知の値を参照してよい。また、ケーブル支持部も同様であって、内側の曲率(何程のケーブルをどれだけ束ねて内部に保持できるか)などは、従来公知の値を参照してよい。
【0021】
保護層のテーパ状端部における層厚の変化の度合いは、本発明の目的が達成し得る程度に、端面の段差を緩和し得るものであればよい。
テーパ状端部の形状を、例えば図2(a)に示すように、径が直線的に変化するテーパ形状のモデルで説明するならば、端面fでの段差xは、2mm以下、特に1.6mm以下とすることが好ましい。これによって保護層端部においてケーブルが引掛かるというトラブルを抑制することができる。段差xが2mmを上回ると、一般的に架空配線されるケーブルでは引掛かる感触があり、スムーズな挿入とは言い難くなる。
テーパの全長yは、テーパの開き角度に関係し、ケーブルのスムーズな挿入に大きく関係する。具体的なテーパの全長yの値は、ケーブルハンガーの大きさにもよるが、3mm以上、特に5mm以上が好ましい。
両端のテーパ部分を除いた保護層の肉厚は、均一であることが好ましく、クッション性や耐摩耗性などの点から0.5mm〜5mm、特には1mm〜3mmが好ましい。
【0022】
図2(b)の例は、保護層のテーパ状端部における層厚を連続的に滑らかに変化させた態様である。この場合も、図2(a)の例と同様、先端部f1での段差の値や、最先端f1からどの程度の距離y1まで層厚を変化させるかは、ケーブルのスムーズな挿入を考慮して、図2(a)の例と同程度の範囲とすることが好ましい。
【0023】
図2(b)に例示するように、保護層のテーパ状端部の先端部f1の段差を、実質的に0に近づけ、芯線4の表面から保護層の最大径部分まで連続的に滑らかに変化させることによって、ケーブルが引掛かる感触が無く、金車にも引掛からない、スムーズな作用効果が得られる。
【0024】
図2(b)のように、保護層の層厚を芯線表面から連続的に滑らかに変化させ得る該保護層の形成方法としては、ディッピング、塗布、粉体塗装など、種々の塗装法が挙げられる。
なかでも、粉体塗装は、槽に収容された粉体中に被塗装部分を浸漬した後、加熱炉を通して、被塗装部分に付着した粉体を溶融し、冷却固化して保護層とする加工方法であり、コンベア等による連続成型が可能であるという利点がある。
粉体塗装の場合、被塗装部分に付着した粉体を加熱溶融することによって、保護層の端部がテーパ状に仕上がる。
【0025】
保護層の材料は、ケーブルに損傷を与え難い公知の材料を用いてよく、特許文献1にカバー部材の材料として記載されたポリ塩化ビニルのほか、ポリオレフィン、エポキシ、ナイロン、ポリエステルなどの樹脂材料が好ましい材料として挙げられる。これらの材料のなかでも、耐摩耗性のある樹脂材料が好ましく、具体的には、ポリエチレン、エポキシ、ナイロンなどが挙げられる。
【0026】
ポリエチレンのなかでも、耐摩耗性が高いという点で、高密度ポリエチレン(HDPE)(比重:0.941〜0.965)が最も好ましい。また、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、高圧法によって製造された低密度ポリエチレン(HP−LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高性能ポリエチレン(HPPE)等も適用することができる。
【0027】
粉体塗装に用いる樹脂材料(特に、上記ポリエチレン材料)としては、メルトマスフローレート(MFR)が、0.1〔g/10min〕〜100〔g/10min〕、特に1.0〔g/10min〕〜60〔g/10min〕であるものを用いることが好ましい。
MFRの測定については、JIS K6760に規定された方法にて行なえばよい。
MFRが、0.1〔g/10min〕未満の場合は、ケーブルハンガーの芯線と保護層との接着性が悪く、保護層全体が回転したり部分的に捩じれたりする可能性がある。また、MFRが、100〔g/10min〕を越える場合は、塗装時に樹脂が芯線からたれるという現象が顕著になり、良好な保護層の形状が得られない。
【0028】
また、粉体塗装に用いるポリエチレン材料の平均粒子径は、100μm〜400μmとすることが好ましい。平均粒子径が400μmより大きいと、ポリエチレン材料が芯線に均一に付着せず、保護層表面の平滑性が損なわれる傾向にあり、100μmより小さいと、粉体塗装の条件が厳しくなり、外観が良好な保護層が得られ難くなる傾向にある。
【0029】
粉体塗装を行う際の、粒状物の平均粒子径の測定方法を説明する。
測定対象の粒状物(ポリエチレンなどの粉末)を水または有機液体(エタノールなど)に投入し、35kHz〜40kHz程度の超音波を付与した状態にて約2分間分散処理して得た分散液を用いる。
液体中への粒状物の投入量は、該分散液のレーザー透過率(入射量に対する出力光量の比)が70%〜90%となる量とする。
該分散液について、マイクロトラック粒度分析計を用いて、レーザー光の散乱により個々の粒状物の粒子径(D1、D2、D3、...、Dn)、および各粒子径毎の存在個数(N1、N2、N3、...、Nn)を計測する。マイクロトラック粒度分析計では、自動的に個々の粒子の個数(N)と各粒子径(D)とから、次式にて平均粒子径が算出される
平均粒子径=(ΣND3/ΣN)1/3
上記式中ΣND3、ΣNは、それぞれND3、Nを番号1〜nまで総和することを意味する。
【0030】
粉体塗装に用いるポリエチレン材料には、酸化防止剤、滑剤、カーボンブラック、耐候性付与剤、難燃剤など、一般に処方される添加剤を添加してもよい。
【0031】
保護層の上記特徴を除いた、ケーブルハンガー全体の形態や付帯部品に限定はなく、従来公知のものを参照してもよい。特に、特許文献1の発明によるケーブルハンガーは、自体が吊架用線に連結された状態のままで金車を通過し得る構造であるために、保護層のエッジが金車に引掛るという問題を有しているので、本発明における保護層の特徴をより有用に生かすことができる態様である。
【0032】
図1は、特許文献1の発明によるケーブルハンガーの全体的な形態を参照しながら、本発明のケーブルハンガーを構成した場合の一例を示している。図1(a)に示す例では、ケーブル支持部1は、芯線である線材4を螺旋状に略1周分だけ湾曲させた形態である。また、図1(b)に明確に現われているように、第1の取付部2、第2の取付部3は、それぞれ、ケーブル支持部の両端部からさらに延びて、吊架用線に引掛るよう、線材4を曲げたフックとなっている。ケーブル支持部が螺旋を描いて環状となっているので、図1(b)に明確に現われているように、第1の取付部2、第2の取付部3は、ケーブル支持部の螺旋の中心軸の方向に互いに離れた状態で同じ線上に位置している。即ち、当該ケーブルハンガーを吊架用線に引掛けた際には、該吊架用線の長手方向に離れて取り付くように位置している。
【0033】
図1の態様によるケーブルハンガーは、単にそのままで吊架用線に引掛けて用いてもよいが、より好ましい使用上の形態として、上記特許文献および本願の図3に示すように、第1の取付部2を、吊架用線に対して、該吊架用線と略垂直な水平軸回りに回動可能に係合し得る構造とする形態が挙げられる。これを次に説明する。
【0034】
第1の取付部2は、図3に示すように、取付金具(11、12)によって吊架用線に回動可能に連結されており、さらに移動規制金具(13、14)によって、該吊架用線上を移動できない様に固定されている。取付金具12は、金具11に固定されながら、自体の孔において、第1の取付部2のフックとリンク結合している。一方の第2の取付部3は、前記のとおり単純なフックのままで、吊架用線に着脱自在に引掛かる。第1の取付部2を回転中心とする当該ケーブルハンガーAの回動に伴って、第2の取付部3は、図3に示すように、吊架用線に引掛かった位置と、吊架用線から離脱した位置との間を往復することができる。
この動作によって、ケーブル支持部は外界に開き、新たなケーブルを容易に挿入することができる。また、金車用支持線21から吊り下げられた金車22に対しても、図3に示すように、回動しながら、通り抜けることができる。その際、保護層の両端部f1は、金車に引掛ることなく、スムーズな挿通作業が可能となる。
【0035】
【実施例】
以下、保護層の材料と加工形成方法を変えながら、本発明の実施例として、図1に示す態様のケーブルハンガーを製作し、比較例としては、図4に示す従来の態様のケーブルハンガーを製作し、それぞれの保護層についての、金車通過性、外観、テーパー摩耗量を評価した。
【0036】
金車通過性については、架空配線作業を実際に行ない、吊架用線を通した金車通過時の感触を作業者が評価する官能検査とし、外観は目視検査として、それぞれ(非常に良好、良好、不良)の三段階の評価を行なった。
金車通過性の評価において、非常に良好とは、保護層が引掛る感触が無くスムーズに金車を通過することを意味し、良好とは、吊架用線を通じて多少の抵抗を感じるが金車の通過に影響はないことを意味し、不良とは、保護層が引掛って通過が阻害されるか、通過しても保護層が部分的または全体的に剥離することを意味する。
テーパー摩耗量は、保護層の摩耗損(摩耗による寿命)の指標となる。テーパー摩耗量は、JIS K7204に基づいて試験を行なった。
【0037】
実施例、比較例のいずれの態様でも、芯材は亜鉛メッキ鋼線、線径3.2mmとし、ケーブル支持部の環状の内径を63mmとした。
保護層は、いずれの実施例、比較例でも、全長(=周方向長さ)190mmとなるように形成した。
【0038】
実施例1
本実施例では、保護層の材料としてHDPEを用い、粉体塗装によって該保護層の両端をテーパ状端部として形成し、ケーブルハンガーを製作した。テーパ状端部は、粉体塗装によって形成したものであり、形状を厳密に規定し得るものではないが、概略的には先端から5mmの間で層厚が単調に増加する形状とした。
【0039】
HDPEのMFRは16〔g/10min〕であり、平均粒子径は160〜180μmである。
【0040】
所定長さの芯線をケーブルハンガーの形状へと曲げ加工して被塗装体とし、該被塗装体を、上吊コンベアに固定し、約200℃に維持された第一の加熱炉を通過させて該被塗装体を加熱し、次に、粉体塗装槽を通過させる。粉体塗装槽では、下から上に向かって空気が流れるように設定されており、これによって粉体が下から上へと噴霧される構成となっている。次に、約180℃に維持された加熱炉を通過させて、塗装された粉体を芯材に固定させ、本発明のケーブルハンガーを得た。
【0041】
得られたケーブルハンガーの被覆層についての評価を下表1に示す。金車通過性・外観に関する評価は、非常に良好を◎、良好を○、不良を×で示す。
【0042】
実施例2〜8
保護層の材料として、L−LDPE、HP−LDPE、LDPE、HPPEを用い、MFR、平均粒子径を変化させたこと以外は、粉体塗装法、テーパ状端部の形状などを含めて、全て上記実施例1と同様にして当該ケーブルハンガーを製作した。
それぞれのケーブルハンガーについて、ポリエチレン材料の種類(L−LDPEなど)、MFR〔g/10min〕、平均粒子径〔μm〕、評価を下表1に示す。
【0043】
比較例1〜4
保護層の材料として実施例と同様のポリエチレン材料を用い、パイプ状物を成形加工し、図4に示すように単純に軸に垂直に切断し、かつその胴体の全長にわたって切開可能に切れ目を入れて、同形状の4種類の保護層(はめ込み着脱可能な従来の保護具)を形成したこと以外は、上記実施例1と同様にケーブルハンガーを製作し、同様に評価した。
比較例品の金車通過性については、保護層が外れたものについて×と評価し、テーパー摩耗量については、外れた保護層を再び取付けてから評価を行った。評価結果を下表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
上記表1、2から明らかなとおり、比較例品は全品について保護層が脱落したが、本発明によるケーブルハンガーは、保護層の両端部がテーパ状となっているので、金車に引掛ることがなかった。また、それぞれの試料に対して、ケーブルを挿入する作業も行なったが、いずれもスムーズに挿入し得ることがわかった。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明のケーブルハンガーは、保護層に付与した特徴によって、ケーブルの架線工事における作業性をよりスムーズに改善し得る。またさらに、保護層端部のエッジが無くなったので、ケーブル挿入時にケーブル胴体に損傷与え難いという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のケーブルハンガーの構造例を示す模式図である。図1(a)は、当該ケーブルハンガーの側面図であり、図1(b)は、図1(a)のケーブルハンガーを同図の左側から見た正面図である。
【図2】本発明のケーブルハンガーにおける保護層の、テーパ状端部の層厚変化の例を示す模式図である。
【図3】本発明によるケーブルハンガーの好ましい態様を示す図である。同図は、当該ケーブルハンガーが、吊架用線に取り付けられたまま、金車を通過しようとしている状態を示している。
【図4】従来のケーブルハンガーの構造例を示す模式図である。図4(a)は、ケーブルハンガーの側面図であり、図4(b)は、図4(a)のケーブルハンガーを左側から見た正面図である。
【符号の説明】
1 ケーブル支持部
2 第1の取付け部
3 第2の取付け部
4 芯線
5 保護層
【発明の属する技術分野】
本発明は、電線・通信線などのケーブルを架空配線する場合に用いられる、ケーブルハンガーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電柱、金属ポール、建物等の支持構造体の間にケーブルを張り渡し架空ケーブルとするには、先ず、そのケーブルを空中に支持するための吊架(ちょうか)用線を、その支持構造体間に張り渡しておく必要がある。張り渡された吊架用線には、特許文献1の図1、図12に示すような一般的なケーブルハンガーが所定の間隔で吊り下げられる。ケーブルハンガーは、吊架用線に係合する部分(フックなど)と、ケーブルを受け止めるケーブル支持部とを有する。このケーブルハンガーによって、ケーブルは、吊架用線に沿って空中に支持される(例えば、特許文献1の図1)。
【0003】
吊架用線を張り渡すには、さらにそれに先立って、金車(きんしゃ)と呼ばれる滑車を複数個吊り下げるための金車用支持線を支持構造体間に張り渡し、それに金車を所定ピッチで吊り下げる(例えば、特許文献1の図5、6、9)。
次いで、金車内を順に通過させて吊架用線を送り出し、支持構造体間に該吊架用線を張り渡す。吊架用線が張り渡された後、該吊架用線には、所定間隔でケーブルハンガーが1つ1つ取り付けられるが、特許文献1の発明によるケーブルハンガーを用いる場合には、予め該ケーブルハンガーを付けた状態で吊架用線を送り出し、吊架用線を該ケーブルハンガーごと金車内を通過させることも可能となる(特許文献1の図6、7)。
【0004】
最初に述べたように、吊架用線に吊り下げられたケーブルハンガーのケーブル支持部(特許文献1の図1の符号1a)にケーブル(同図の符号13)を通すことによって、ケーブルは吊架用線に沿った状態で空中に吊り下げられる。
金車用支持線および金車は、吊架用線を支持構造体間に張り渡し固定した後、又はケーブルを布設した後に取り外される。
【0005】
従来の架空ケーブルに加えて、架空光ケーブルの布設が急ピッチで進められており、架空配線スペースの制約から、同一吊架ポイントに、複数のケーブルを一束化したり追加布設したりする架線工事を簡便かつ経済的に行なうことが要求されている。
【0006】
特許文献1のケーブルハンガーは、そのような要求にも応えるべく開発されたものであって、第1の取付部をピボット運動の回転中心として、第2の取付部側を持ち上げることで、ケーブルの挿入口を開くことができ、ケーブルハンガーを取り外すことなく、ケーブル支持部へケーブルを出し入れできるように工夫されている。その作用効果は、該文献1の段落(0041)に、「第2の取付部をちょう架用線に対して上方の離れた位置に移動させることで、ケーブル支持部に対して第1及び第2の取付部間ないし該ケーブル支持部の開口を通してケーブルを出し入れすることができ、ケーブル追加布設の作業の効率化を図ることができる。」と記載されたとおりである。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−112154号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が、特許文献1記載のケーブルハンガーによる実際の架空ケーブル布設工事の状況を詳細に検討したところ、該ケーブルハンガーには、解決すべきさらなる問題が存在していることがわかった。この問題を次に説明する。
【0009】
従来の一般的なケーブルハンガーは、図4に例示するように、1本の金属芯線104を湾曲させて形成したものであって、U形状または略環状のケーブル支持部101と、両端部のフック状を呈する取付部102、103とを有する構造となっている。ケーブル支持部101には、ケーブルが擦れてもケーブルに損傷を与えないよう、塩化ビニルなどの低摩擦係数の材料からなる保護層103が設けられる。該保護層は、ケーブルハンガーの本体とは別にチューブとして形成され、胴体の一箇所に全長に渡って切れ目106が設けられ、該切れ目での切開によって胴体を開いて金属芯線にはめ込むことができるようになっている。
【0010】
ここで解決すべき問題とは、保護層の両端部e10、e20が単純な切断面であるために、保護層と金属芯線との段差が生じて起きる問題である。この段差が存在するために、ケーブル支持部内へ新たにケーブルを入れようとする際に、該ケーブルが段差に引っ掛かることがあり、スムーズな挿入作業の障害になっていることがわかった。
しかも、特許文献1のケーブルハンガーでは、該保護層がチューブとして別途形成され、その胴体の一箇所に全長に渡って切れ目106が設けられ、該切れ目での切開によって胴体を開いて金属芯線にはめ込む構造となっている。そのために、吊架用線に取り付けた状態で金車を通過させる際には、保護層の段差が金車の滑車などに引掛かると、該保護層がめくれてケーブルハンガーから脱落するという現象も生じ得ることがわかった。
【0011】
本発明の課題は、上記問題を解決し、ケーブルの架線工事における作業性を改善し得るケーブルハンガーを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の特徴を有するものである。
(1)架空ケーブルの布設において、吊架用線に吊り下がってケーブルを支持するケーブルハンガーであって、
当該ケーブルハンガーは、ケーブルを受けるよう湾曲したケーブル支持部と、該ケーブル支持部の長手方向の両端に設けられ吊架用線に係合し得る構造とされた第1および第2の取付部とを有し、
ケーブル支持部は、線材を螺旋状に略1周分だけ湾曲させた形態であり、それによって、第1および第2の取付部は、吊架用線に対して該吊架用線の長手方向に互いに離れた状態で取り付くように位置しており、
第1の取付部は、吊架用線に対して、該吊架用線と略垂直な水平軸の回りに回動可能に係合し得る構造とされ、
第2の取付部は、吊架用線に着脱自在に引掛かり得るフック状の構造とされ、第1の取付部の回動に伴って、吊架用線に引掛かった位置と、吊架用線から離脱した位置との間を移動可能な構成とされており、
ケーブル支持部には表面に保護層が設けられており、該保護層は、ケーブル支持部の両端部において外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっていることを特徴とするケーブルハンガー。
【0013】
(2)上記保護層が、メルトマスフローレート0.1〔g/10min〕〜100〔g/10min〕、平均粒子径100μm〜400μmの耐摩耗性を有する樹脂を粉体塗装することによって形成された層である、上記(1)記載のケーブルハンガー。
【0014】
(3)上記樹脂が、高密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンである、上記(2)記載のケーブルハンガー。
【0015】
(4)上記第1の取付部が、吊架用線に沿って移動できない様に、回動可能に固定されている、上記(1)記載のケーブルハンガー。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のケーブルハンガーは、図1に構造の一例を示すように、ケーブルを受けるよう湾曲したケーブル支持部1と、第1の取付部2と、第2の取付部3とを有する。これら取付部2、3は、ケーブル支持部1の長手方向の両端からさらに延びて、吊架用線に掛って吊り下がり得る構造(フック状構造など)とされた部分である。ケーブル支持部1には、表面に保護層5が設けられており、これによってケーブルに損傷を与えないようになっている。該保護層5の長手方向の両端部e1、e2は、外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっている。
以下、説明のために、保護層両端部に設けた〔外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっている〕部分を、単に「テーパ状端部」と呼ぶ。
【0017】
保護層の両端部をテーパ状端部としたことによって、架空ケーブルの布設時や新たなケーブルの追加時において、ケーブル支持部内へ新たにケーブルを入れようとする際に、該ケーブルが保護層両端部の段差に引掛かることが緩和されスムーズな作業が可能となる。さらに、この保護層の構造を上記特許文献1のケーブルハンガーの保護層に適用すれば、保護層端部の段差が金車に引掛かることも緩和され、切れ目を入れた装着型の保護層であっても、ケーブルハンガーの芯線から脱落するようなトラブルも抑制される。
【0018】
当該ケーブルハンガーの構造は、ケーブル支持部と取付部とを別々に形成し、結合した構造であってもよいが、図1の例のように、1本の芯線4を、螺旋状に略1周期分だけ曲げて隙間の開いた環状部分を形成し、これをケーブル支持部とし、その両端部を取付部とする態様が簡単な構造であり好ましい。また、このようにケーブル支持部と取付部とが連続した構造であれば、保護層の段差を無くした作用効果がより顕著となる。
【0019】
当該ケーブルハンガーを、1本の芯線を曲げて形成する場合、該芯線には従来公知の材料を用いてよく、例えば、亜鉛メッキ鋼線などが好ましいものとして挙げられる。芯線の表面には、亜鉛メッキ以外にも、必要に応じた表面処理、被覆などが加工されていてもよい。
芯線の径は、用途に応じて適宜決定してよく限定はされないが、一般的には、外径2mm〜5mm程度が好ましい線径として挙げられる。
【0020】
取付部の構造は限定されず、従来公知のケーブルハンガーの取り付き状態の如く、吊架用線に係合し得るものであればよい。取付部の構造は、例えば、芯線を湾曲させた単純なフックの構造、外れ止めを有するフックの構造、特許文献1に記載されたような取付金具をさらに用いた回動可能な固定構造などが挙げられる。
取付部をフックとする場合の、該フックの内側の曲率(何程の外径の吊架用線に引掛かり得るか)などは、従来公知の値を参照してよい。また、ケーブル支持部も同様であって、内側の曲率(何程のケーブルをどれだけ束ねて内部に保持できるか)などは、従来公知の値を参照してよい。
【0021】
保護層のテーパ状端部における層厚の変化の度合いは、本発明の目的が達成し得る程度に、端面の段差を緩和し得るものであればよい。
テーパ状端部の形状を、例えば図2(a)に示すように、径が直線的に変化するテーパ形状のモデルで説明するならば、端面fでの段差xは、2mm以下、特に1.6mm以下とすることが好ましい。これによって保護層端部においてケーブルが引掛かるというトラブルを抑制することができる。段差xが2mmを上回ると、一般的に架空配線されるケーブルでは引掛かる感触があり、スムーズな挿入とは言い難くなる。
テーパの全長yは、テーパの開き角度に関係し、ケーブルのスムーズな挿入に大きく関係する。具体的なテーパの全長yの値は、ケーブルハンガーの大きさにもよるが、3mm以上、特に5mm以上が好ましい。
両端のテーパ部分を除いた保護層の肉厚は、均一であることが好ましく、クッション性や耐摩耗性などの点から0.5mm〜5mm、特には1mm〜3mmが好ましい。
【0022】
図2(b)の例は、保護層のテーパ状端部における層厚を連続的に滑らかに変化させた態様である。この場合も、図2(a)の例と同様、先端部f1での段差の値や、最先端f1からどの程度の距離y1まで層厚を変化させるかは、ケーブルのスムーズな挿入を考慮して、図2(a)の例と同程度の範囲とすることが好ましい。
【0023】
図2(b)に例示するように、保護層のテーパ状端部の先端部f1の段差を、実質的に0に近づけ、芯線4の表面から保護層の最大径部分まで連続的に滑らかに変化させることによって、ケーブルが引掛かる感触が無く、金車にも引掛からない、スムーズな作用効果が得られる。
【0024】
図2(b)のように、保護層の層厚を芯線表面から連続的に滑らかに変化させ得る該保護層の形成方法としては、ディッピング、塗布、粉体塗装など、種々の塗装法が挙げられる。
なかでも、粉体塗装は、槽に収容された粉体中に被塗装部分を浸漬した後、加熱炉を通して、被塗装部分に付着した粉体を溶融し、冷却固化して保護層とする加工方法であり、コンベア等による連続成型が可能であるという利点がある。
粉体塗装の場合、被塗装部分に付着した粉体を加熱溶融することによって、保護層の端部がテーパ状に仕上がる。
【0025】
保護層の材料は、ケーブルに損傷を与え難い公知の材料を用いてよく、特許文献1にカバー部材の材料として記載されたポリ塩化ビニルのほか、ポリオレフィン、エポキシ、ナイロン、ポリエステルなどの樹脂材料が好ましい材料として挙げられる。これらの材料のなかでも、耐摩耗性のある樹脂材料が好ましく、具体的には、ポリエチレン、エポキシ、ナイロンなどが挙げられる。
【0026】
ポリエチレンのなかでも、耐摩耗性が高いという点で、高密度ポリエチレン(HDPE)(比重:0.941〜0.965)が最も好ましい。また、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、高圧法によって製造された低密度ポリエチレン(HP−LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高性能ポリエチレン(HPPE)等も適用することができる。
【0027】
粉体塗装に用いる樹脂材料(特に、上記ポリエチレン材料)としては、メルトマスフローレート(MFR)が、0.1〔g/10min〕〜100〔g/10min〕、特に1.0〔g/10min〕〜60〔g/10min〕であるものを用いることが好ましい。
MFRの測定については、JIS K6760に規定された方法にて行なえばよい。
MFRが、0.1〔g/10min〕未満の場合は、ケーブルハンガーの芯線と保護層との接着性が悪く、保護層全体が回転したり部分的に捩じれたりする可能性がある。また、MFRが、100〔g/10min〕を越える場合は、塗装時に樹脂が芯線からたれるという現象が顕著になり、良好な保護層の形状が得られない。
【0028】
また、粉体塗装に用いるポリエチレン材料の平均粒子径は、100μm〜400μmとすることが好ましい。平均粒子径が400μmより大きいと、ポリエチレン材料が芯線に均一に付着せず、保護層表面の平滑性が損なわれる傾向にあり、100μmより小さいと、粉体塗装の条件が厳しくなり、外観が良好な保護層が得られ難くなる傾向にある。
【0029】
粉体塗装を行う際の、粒状物の平均粒子径の測定方法を説明する。
測定対象の粒状物(ポリエチレンなどの粉末)を水または有機液体(エタノールなど)に投入し、35kHz〜40kHz程度の超音波を付与した状態にて約2分間分散処理して得た分散液を用いる。
液体中への粒状物の投入量は、該分散液のレーザー透過率(入射量に対する出力光量の比)が70%〜90%となる量とする。
該分散液について、マイクロトラック粒度分析計を用いて、レーザー光の散乱により個々の粒状物の粒子径(D1、D2、D3、...、Dn)、および各粒子径毎の存在個数(N1、N2、N3、...、Nn)を計測する。マイクロトラック粒度分析計では、自動的に個々の粒子の個数(N)と各粒子径(D)とから、次式にて平均粒子径が算出される
平均粒子径=(ΣND3/ΣN)1/3
上記式中ΣND3、ΣNは、それぞれND3、Nを番号1〜nまで総和することを意味する。
【0030】
粉体塗装に用いるポリエチレン材料には、酸化防止剤、滑剤、カーボンブラック、耐候性付与剤、難燃剤など、一般に処方される添加剤を添加してもよい。
【0031】
保護層の上記特徴を除いた、ケーブルハンガー全体の形態や付帯部品に限定はなく、従来公知のものを参照してもよい。特に、特許文献1の発明によるケーブルハンガーは、自体が吊架用線に連結された状態のままで金車を通過し得る構造であるために、保護層のエッジが金車に引掛るという問題を有しているので、本発明における保護層の特徴をより有用に生かすことができる態様である。
【0032】
図1は、特許文献1の発明によるケーブルハンガーの全体的な形態を参照しながら、本発明のケーブルハンガーを構成した場合の一例を示している。図1(a)に示す例では、ケーブル支持部1は、芯線である線材4を螺旋状に略1周分だけ湾曲させた形態である。また、図1(b)に明確に現われているように、第1の取付部2、第2の取付部3は、それぞれ、ケーブル支持部の両端部からさらに延びて、吊架用線に引掛るよう、線材4を曲げたフックとなっている。ケーブル支持部が螺旋を描いて環状となっているので、図1(b)に明確に現われているように、第1の取付部2、第2の取付部3は、ケーブル支持部の螺旋の中心軸の方向に互いに離れた状態で同じ線上に位置している。即ち、当該ケーブルハンガーを吊架用線に引掛けた際には、該吊架用線の長手方向に離れて取り付くように位置している。
【0033】
図1の態様によるケーブルハンガーは、単にそのままで吊架用線に引掛けて用いてもよいが、より好ましい使用上の形態として、上記特許文献および本願の図3に示すように、第1の取付部2を、吊架用線に対して、該吊架用線と略垂直な水平軸回りに回動可能に係合し得る構造とする形態が挙げられる。これを次に説明する。
【0034】
第1の取付部2は、図3に示すように、取付金具(11、12)によって吊架用線に回動可能に連結されており、さらに移動規制金具(13、14)によって、該吊架用線上を移動できない様に固定されている。取付金具12は、金具11に固定されながら、自体の孔において、第1の取付部2のフックとリンク結合している。一方の第2の取付部3は、前記のとおり単純なフックのままで、吊架用線に着脱自在に引掛かる。第1の取付部2を回転中心とする当該ケーブルハンガーAの回動に伴って、第2の取付部3は、図3に示すように、吊架用線に引掛かった位置と、吊架用線から離脱した位置との間を往復することができる。
この動作によって、ケーブル支持部は外界に開き、新たなケーブルを容易に挿入することができる。また、金車用支持線21から吊り下げられた金車22に対しても、図3に示すように、回動しながら、通り抜けることができる。その際、保護層の両端部f1は、金車に引掛ることなく、スムーズな挿通作業が可能となる。
【0035】
【実施例】
以下、保護層の材料と加工形成方法を変えながら、本発明の実施例として、図1に示す態様のケーブルハンガーを製作し、比較例としては、図4に示す従来の態様のケーブルハンガーを製作し、それぞれの保護層についての、金車通過性、外観、テーパー摩耗量を評価した。
【0036】
金車通過性については、架空配線作業を実際に行ない、吊架用線を通した金車通過時の感触を作業者が評価する官能検査とし、外観は目視検査として、それぞれ(非常に良好、良好、不良)の三段階の評価を行なった。
金車通過性の評価において、非常に良好とは、保護層が引掛る感触が無くスムーズに金車を通過することを意味し、良好とは、吊架用線を通じて多少の抵抗を感じるが金車の通過に影響はないことを意味し、不良とは、保護層が引掛って通過が阻害されるか、通過しても保護層が部分的または全体的に剥離することを意味する。
テーパー摩耗量は、保護層の摩耗損(摩耗による寿命)の指標となる。テーパー摩耗量は、JIS K7204に基づいて試験を行なった。
【0037】
実施例、比較例のいずれの態様でも、芯材は亜鉛メッキ鋼線、線径3.2mmとし、ケーブル支持部の環状の内径を63mmとした。
保護層は、いずれの実施例、比較例でも、全長(=周方向長さ)190mmとなるように形成した。
【0038】
実施例1
本実施例では、保護層の材料としてHDPEを用い、粉体塗装によって該保護層の両端をテーパ状端部として形成し、ケーブルハンガーを製作した。テーパ状端部は、粉体塗装によって形成したものであり、形状を厳密に規定し得るものではないが、概略的には先端から5mmの間で層厚が単調に増加する形状とした。
【0039】
HDPEのMFRは16〔g/10min〕であり、平均粒子径は160〜180μmである。
【0040】
所定長さの芯線をケーブルハンガーの形状へと曲げ加工して被塗装体とし、該被塗装体を、上吊コンベアに固定し、約200℃に維持された第一の加熱炉を通過させて該被塗装体を加熱し、次に、粉体塗装槽を通過させる。粉体塗装槽では、下から上に向かって空気が流れるように設定されており、これによって粉体が下から上へと噴霧される構成となっている。次に、約180℃に維持された加熱炉を通過させて、塗装された粉体を芯材に固定させ、本発明のケーブルハンガーを得た。
【0041】
得られたケーブルハンガーの被覆層についての評価を下表1に示す。金車通過性・外観に関する評価は、非常に良好を◎、良好を○、不良を×で示す。
【0042】
実施例2〜8
保護層の材料として、L−LDPE、HP−LDPE、LDPE、HPPEを用い、MFR、平均粒子径を変化させたこと以外は、粉体塗装法、テーパ状端部の形状などを含めて、全て上記実施例1と同様にして当該ケーブルハンガーを製作した。
それぞれのケーブルハンガーについて、ポリエチレン材料の種類(L−LDPEなど)、MFR〔g/10min〕、平均粒子径〔μm〕、評価を下表1に示す。
【0043】
比較例1〜4
保護層の材料として実施例と同様のポリエチレン材料を用い、パイプ状物を成形加工し、図4に示すように単純に軸に垂直に切断し、かつその胴体の全長にわたって切開可能に切れ目を入れて、同形状の4種類の保護層(はめ込み着脱可能な従来の保護具)を形成したこと以外は、上記実施例1と同様にケーブルハンガーを製作し、同様に評価した。
比較例品の金車通過性については、保護層が外れたものについて×と評価し、テーパー摩耗量については、外れた保護層を再び取付けてから評価を行った。評価結果を下表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
上記表1、2から明らかなとおり、比較例品は全品について保護層が脱落したが、本発明によるケーブルハンガーは、保護層の両端部がテーパ状となっているので、金車に引掛ることがなかった。また、それぞれの試料に対して、ケーブルを挿入する作業も行なったが、いずれもスムーズに挿入し得ることがわかった。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明のケーブルハンガーは、保護層に付与した特徴によって、ケーブルの架線工事における作業性をよりスムーズに改善し得る。またさらに、保護層端部のエッジが無くなったので、ケーブル挿入時にケーブル胴体に損傷与え難いという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のケーブルハンガーの構造例を示す模式図である。図1(a)は、当該ケーブルハンガーの側面図であり、図1(b)は、図1(a)のケーブルハンガーを同図の左側から見た正面図である。
【図2】本発明のケーブルハンガーにおける保護層の、テーパ状端部の層厚変化の例を示す模式図である。
【図3】本発明によるケーブルハンガーの好ましい態様を示す図である。同図は、当該ケーブルハンガーが、吊架用線に取り付けられたまま、金車を通過しようとしている状態を示している。
【図4】従来のケーブルハンガーの構造例を示す模式図である。図4(a)は、ケーブルハンガーの側面図であり、図4(b)は、図4(a)のケーブルハンガーを左側から見た正面図である。
【符号の説明】
1 ケーブル支持部
2 第1の取付け部
3 第2の取付け部
4 芯線
5 保護層
Claims (4)
- 架空ケーブルの布設において、吊架用線に吊り下がってケーブルを支持するケーブルハンガーであって、
当該ケーブルハンガーは、ケーブルを受けるよう湾曲したケーブル支持部と、該ケーブル支持部の長手方向の両端に設けられ吊架用線に係合し得る構造とされた第1および第2の取付部とを有し、
ケーブル支持部は、線材を螺旋状に略1周分だけ湾曲させた形態であり、それによって、第1および第2の取付部は、吊架用線に対して該吊架用線の長手方向に互いに離れた状態で取り付くように位置しており、
第1の取付部は、吊架用線に対して、該吊架用線と略垂直な水平軸の回りに回動可能に係合し得る構造とされ、
第2の取付部は、吊架用線に着脱自在に引掛かり得るフック状の構造とされ、第1の取付部の回動に伴って、吊架用線に引掛かった位置と、吊架用線から離脱した位置との間を移動可能な構成とされており、
ケーブル支持部には表面に保護層が設けられており、該保護層は、ケーブル支持部の両端部において外径が端に向かって小さくなっていくように層厚が傾斜的に薄くなっていることを特徴とするケーブルハンガー。 - 上記保護層が、メルトマスフローレート0.1〔g/10min〕〜100〔g/10min〕、平均粒子径100μm〜400μmの耐摩耗性を有する樹脂を粉体塗装することによって形成された層である、請求項1記載のケーブルハンガー。
- 上記樹脂が、高密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項2記載のケーブルハンガー。
- 上記第1の取付部が、吊架用線に沿って移動できない様に、回動可能に固定されている、請求項1記載のケーブルハンガー。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101020094B1 (ko) | 2009-06-10 | 2011-03-09 | (주)경일 | 개방형 조가선 행거용 취부공구 |
-
2003
- 2003-05-28 JP JP2003150895A patent/JP2004357385A/ja active Pending
Cited By (1)
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KR101020094B1 (ko) | 2009-06-10 | 2011-03-09 | (주)경일 | 개방형 조가선 행거용 취부공구 |
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