JP2004356963A - D級増幅器 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な回路構成でありながら、精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも増幅し出力することができるD級増幅器を提供する。
【解決手段】パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiにアナログ音声信号を加算した加算信号を、補正回路2に含まれる第一の積分手段にて積分処理し、電力スイッチ手段3にて生じる歪を含む帰還信号efを、補正回路2に含まれる第二の積分手段にて積分処理する。積分処理された出力信号を補正回路2に含まれる比較器の入力部にそれぞれ入力させ、補正信号Vcを生成する。
【選択図】 図1
【解決手段】パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiにアナログ音声信号を加算した加算信号を、補正回路2に含まれる第一の積分手段にて積分処理し、電力スイッチ手段3にて生じる歪を含む帰還信号efを、補正回路2に含まれる第二の積分手段にて積分処理する。積分処理された出力信号を補正回路2に含まれる比較器の入力部にそれぞれ入力させ、補正信号Vcを生成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はD級増幅器に関し、特に、帰還補正回路を有するD級増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】
音声信号の電力増幅を高効率・低損失に行うことで機器の小型化を可能とする方式として、D級増幅が用いられている。また、デジタル化された音声信号を直接にパルス幅変調(以下ではPWMとも呼ぶ)信号に変換して、電力スイッチ手段に導く構成のD級増幅器が知られている。ここで、電力スイッチ手段は、通常、低電圧電源側に配置されるスイッチ素子とグランド(もしくは負電源)側に配置されるスイッチ素子とで構成されている。また、特許文献1,2には、このPWM変換を行うために使用される再量子化手段による丸め誤差をデルタシグマ変調を用いて低減する構成のD級増幅器の例が示されている。
【0003】
上記の公知の構成のD級増幅器により、精度の良いPWM信号を得ることが可能であり、これを精度良く電力スイッチ手段の出力に反映させることにより、増幅器出力として高品位な音声信号を得ることができる。しかしながら、電力スイッチ手段に供給される電源電圧が変動する場合、出力信号に歪が生じるという問題がある。定電圧回路を介して電力スイッチ手段に常に一定の電圧を供給するようにすれば、この出力信号の歪を低減することは可能であるが、電力スイッチ手段の消費する電力は比較的大きいため、この定電圧回路における電力損失も大きくなってしまう。そのため、音声信号の電力増幅を高効率且つ低損失で行えなくなるという別の問題が発生してしまう。
【0004】
また、特許文献3には、電力スイッチ手段からの出力信号をフィードバックさせることにより歪を補正するD級増幅器の例が示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−261347号公報
【特許文献2】
特開2001−292040号公報
【特許文献3】
特表2001−517393号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献3に開示されているD級増幅器による補正処理においては、以下に示すような問題が生じている。
【0007】
まず第一の問題として、補正の効果を向上させるためには、比較器に入力される台形波信号の精度を良くする必要があるが、そのためには、回路構成も複雑になってしまうという問題がある。
【0008】
また第二の問題として、エラー処理手段に入力されるパルス変調信号および状態フィードバック信号はパルス信号であるために、当該パルス信号から正常にエラー信号を作成することは非常に困難であり、当該エラー信号において残留パルスが除去しきれず、当該残留パルスに起因して十分な補正効果を得ることが困難であるという問題がある。この理由について説明する。
【0009】
パルス成分が大きく残留する場合には、これにより回路動作が制約を受けるため、つまり当該パルス成分が回路の非直線領域に入って歪むとエラー信号に歪が生じ、正しい補正動作ができなくなるため、エラー処理手段で生成されるエラー信号は、パルス変調信号と状態フィードバック信号との低周波成分の差を反映し、パルス成分を含まないことを理想とする。しかし実際には、エラー処理手段における状態フィードバック信号の位相回転は、ループ動作を不安定とするため、パルス成分を十分に減衰させるようなフィルタをかけることが困難である。一方、フィードバックの効果を十分に得るためにはエラー信号を十分に増幅して補正を行う必要があり、これにより残留パルス成分も同時に増幅されるという相反する結果となる。上記理由に基づき、残留パルスが起因して十分な補正効果(音声信号の歪の低減効果)を得ることが困難なのである。
【0010】
また、特許文献1〜3に開示されているような従来のD級増幅器においては、デジタル化された音声信号を直接PWM信号に変換しているので、アナログ音声信号を直接増幅することができない。よって、アナログ音声信号を一旦デジタル信号に変換するための回路の追加が必要になり、回路構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、簡易な回路構成でありながら、精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも増幅し出力することができるD級増幅器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係るD級増幅器は、パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、前記補正回路は、外部から入力されるアナログ信号を前記パルス変調信号に加算するための第一の加算手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明に係るD級増幅器は、パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、前記補正回路は、外部から入力されるアナログ信号を前記帰還信号に加算するための第二の加算手段を備えることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
<実施の形態1>
本実施の形態のD級増幅器が備える補正回路は、アナログ信号をパルス変調信号に加算した加算信号と電力スイッチ手段から出力される帰還信号とを積分し、比較器において、加算信号をリファレンス(基準)として、両積分された信号を比較することにより、当該比較に対応した出力信号を電力スイッチ手段に出力し、最終的に電力スイッチ手段で生ずる信号の歪を補正することができる回路である。
【0015】
図1に、本発明に係る帰還補正回路を備えたD級増幅器のブロック図を示す。
【0016】
図1に示すD級増幅器は、パルス変調手段1、補正回路2、電力スイッチ手段3、低域フィルタ(LPF)4、およびスピーカ7が直列的に接続されており、信号がパルス変調手段1からスピーカ7に向かって伝送される。また、電力スイッチ手段3から出力される信号の一部を補正回路2へ帰還させるため、帰還回路5が接続点N1と補正回路2との間に構成されている。
【0017】
パルス変調手段1には、デジタル音声信号が入力され、補正回路2には、アナログ音声信号が入力される。即ち、補正回路2は3つの入力部を有しており、アナログ音声信号、パルス変調手段1からの信号および帰還回路5からの帰還信号がそれぞれの入力部に入力する。
【0018】
また、パルス変調手段1は、デルタシグマ変調器101およびPWM変換器102を含む。
【0019】
上記構成において、各装置は以下に示す動作を行う。
【0020】
パルス変調手段1は、音声信号でパルス幅変調された2値パルス信号(以下ではPWM信号とも呼ぶ)を生成し出力するものである。また、デルタシグマ変調器101は、デジタル化された音声信号をデルタシグマ変調するものであり、PWM変換器102は、デルタシグマ変調された音声信号をPWM信号に変換するものである。
【0021】
また、補正回路2は、アナログ音声信号、PWM信号および帰還回路5からの帰還信号を受け、後述する第一の加算手段50によりアナログ音声信号をPWM信号に加算して加算信号を生成し、この加算信号を基準として帰還信号に含まれる電力スイッチ手段3における歪要因を補正し、当該補正した加算信号を出力するものである。
【0022】
また、電力スイッチ手段3は、例えば電源側に配置されるスイッチ素子とグラウンド側に配置されるスイッチ素子とで構成され、補正回路2から出力される歪要因補正後のPWM信号の値に応じ、電源とグラウンドとの間のスイッチング動作により電力増幅を行う。これにより、増幅器出力に接続される負荷すなわちスピーカ7への電力供給が可能となる。
【0023】
また、帰還回路5は、電力スイッチ手段3から出力される電力増幅された信号の振幅のレベル調整を行い、当該レベル調整された信号を補正回路2の入力部に与えるものである。ここで、上記振幅のレベル調整は、電力スイッチ手段3において振幅の歪が生じない場合に、電力スイッチ手段3にて増幅された信号を、パルス変調手段1から出力されるパルス変調信号の振幅と同等レベルまで、固定された減衰利得により減衰される。
【0024】
最後に、低域フィルタ4は、電力スイッチ手段3から出力される電力増幅された信号から、高周波成分を除去することにより音声信号を復調する。復調された音声信号は、スピーカ7へ出力され、音声として再生される。
【0025】
前述したように、電力スイッチ手段3は、電源とグラウンドとの間のスイッチング動作を行うため、電源電圧に変動がある場合、従来はこれがそのまま出力の振幅変調歪みとなっていた。本実施の形態においては、この電力スイッチ手段3の出力を帰還回路5を介し補正回路2により信号に補正を与えることで、この歪みが出力に現れることを抑制している。
【0026】
次に、本実施の形態のD級増幅器における補正の動作を担う補正回路2の内部構成を示すブロック図を図2に示す。
【0027】
以下、図2で示す補正回路2の構成を具体的に説明する。
【0028】
第一の加算手段50の出力部は、第一の減算手段20の「+」入力部に接続されている。
【0029】
第一の減算手段20の出力部は、第一の積分手段21の入力部に接続されており、当該第一の積分手段21の出力部は、比較器25の一方の入力部である「+」入力部に接続されている。
【0030】
また、第二の減算手段23の出力部は、第二の積分手段24の入力部に接続されており、当該第二の積分手段24の出力部は、比較器25の他方の入力部である「−」入力部に接続されている。
【0031】
さらに、第一の積分手段21の出力部は、当該第一の積分手段21と比較器25との間に存する接続点N2から分岐して利得調整手段22の入力部に接続されており、当該利得調整手段22の出力部は、接続点N3を介して、第一の減算手段20の「−」入力部と第二の減算手段23の「−」入力部とに、それぞれ接続されている。
【0032】
なお、第一の加算手段50は、2つの入力部を有しており、一方に入力部にはパルス変調手段1からのPWM信号が入力し、他方の入力部には、アナログ音声信号が入力される。第一の加算手段50は、これらの信号を加算することにより加算信号を生成し出力する。また、第二の減算手段23の「+」入力部は、帰還回路5の出力部と接続されている。さらに、比較器25の出力部は、電力スイッチ手段3の入力部に接続されている。
【0033】
上記構成において、第一の減算手段20、第一の積分手段21および利得調整手段22は、当該利得調整手段22を介する負帰還を備える積分回路を構成している。当該構成において、第一の減算手段20において第一の加算手段50からの加算信号と利得調整手段22からの出力信号との差をとり第一の差分信号を生成し、当該第一の差分信号を第一の積分手段21にて積分処理を行っている。つまり、第一の積分手段21により加算信号に基づいて積分処理を行いその低周波成分を強調するとともに、利得調整手段22を通した負帰還により低周波利得を適度に抑制して第一の積分手段21からの積分信号が回路の動作範囲を超えることを防止する動作を行う。
【0034】
また、第二の減算手段23および第二の積分手段24で構成される積分回路は、帰還回路5からの帰還信号に対して利得調整手段22からの出力信号を差し引いて第二の差分信号を生成し、当該第二の信号を積分処理するものであり、第二の積分手段24において帰還信号に基づく積分処理により帰還信号に含まれる低周波成分を強調するとともに、第二の減算手段23にて利得調整手段22からの出力信号と帰還回路からの帰還信号との減算処理を実行することにより、低周波成分を減殺して第二の積分手段24からの積分信号が回路の動作範囲を超えることを防止する動作を行う。
【0035】
さらに、比較器25は、第一の積分手段21からの積分信号波形と第二の積分手段24からの積分信号波形との比較を行い、その結果を2値のパルス信号からなる補正信号Vcとして出力する回路である。
【0036】
次に、補正回路2内における各箇所の信号波形の状態について説明する。
【0037】
まず、電力スイッチ手段3にて歪が生じない場合について説明する。図3は、当該場合における定常状態の補正回路2内の各箇所の波形を示す図である。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値を取っている。但し、図3においては、第一の加算手段50へのアナログ音声信号は入力されない場合について示している。
【0038】
図3においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0039】
また、図3においては、補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34、および第二の積分手段24においてパルス波形34に基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32が示されている。
【0040】
さらに、図3においては、比較器25において積分波形31と積分波形32との差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33が示されている。具体的には、積分波形31が積分波形32より高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31が積分波形32より低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0041】
パルス波形30は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34の振幅は、ほぼ0からVpow/Kとなり、帰還回路5は、当該パルス波形34の振幅がパルス変調手段1から出力されるパルス波形30の振幅と等しく(Vpow/K=Vsig)なるように設定されている。
【0042】
パルス波形30および34が図3の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31および積分波形32は図3に示したように生成され、さらに、比較器25にて出力される補正信号Vcは、パルス波形33のようになる。ここで定常状態において、パルス波形34は、比較器25で出力されるパルス波形33に対して、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δを伴うこととなる。
【0043】
図3は、つまり、定常状態において補正回路2が正常に動作することにより、電力スイッチ手段3にて歪が生じない場合には、帰還信号efであるパルス波形34は、PWM信号eiであるパルス波形30に対して時間遅延δをもつ相似波形となり、両パルス波形30,34の低周波成分は等しく音声信号に歪が生じず正常に信号が伝送することを示しているのである。
【0044】
ところで実際には、帰還信号efには、主に電力スイッチ手段3に起因する波形の歪が含まれる。この歪は帰還信号efの波形を変形させるため、帰還信号efの低周波成分はPWM信号eiの低周波成分に対して差異が生じることとなる。
【0045】
そこで、以下では、電力スイッチ手段3にて図4〜5に示す2パターンの態様の波形の歪が生じた場合に、本実施の形態のD級増幅器の補正回路2が正常に補正動作を行うことにより、定常状態で当該補正回路2内の各箇所における波形がどのように変化するかについて説明する。ここで、図4〜5において、縦軸は電圧値であり、横軸は時間を取っている。
【0046】
図4は、電力スイッチ電源電圧変動により、電力スイッチ手段3より出力されるパルスのパルス振幅が、電力スイッチ手段3にて電源から供給される標準電圧値Vpowよりも、ΔV1だけ増大する場合を示すものである(以下、第一の歪態様と称する)。
【0047】
ここで、図4(a)は、比較器25から出力される歪が生じる前の補正信号Vcのパルス波形を示しており、図4(b)は、図4(a)で示した補正信号Vcが電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第一の歪態様が発生し、その後の電力スイッチ手段3から出力出力信号のパルス波形を示している。
【0048】
さらに、図5は、電力スイッチ電源電圧変動により、電力スイッチ手段3より出力されるパルスのパルス振幅が、電力スイッチ手段3にて電源から供給される標準電圧値Vpowよりも、ΔV2だけ減少する場合を示すものである(以下、第二の歪態様と称する)。
【0049】
ここで、図5(a)は、比較器25から出力される歪が生じる前の補正信号Vcのパルス波形を示しており、図5(b)は、図5(a)で示した補正信号Vcが電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第二の歪態様が発生し、その後の電力スイッチ手段3から出力出力信号のパルス波形を示している。
【0050】
図4〜5を通してδは、電力スイッチ手段3にて生じる時間遅延を示している。
【0051】
上記2パターンの歪態様において、第一の歪態様では、低周波成分において信号レベルの増大という歪を発生していることとなり、第二の歪態様では、低周波成分において信号レベルの減少という歪を発生していることとなる。
【0052】
以下、上記の歪態様が生じた場合に、定常状態で当該補正回路2内の各箇所における波形がどのように変化するかについて説明する。
【0053】
まずはじめに、第一の歪態様の場合について説明する。図6は第一の歪態様の場合において補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0054】
図6においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0055】
また、図6においては、電力スイッチ手段3において第一の歪態様が発生し、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34a、および第二の積分手段24においてパルス波形34aに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32aが示されている。
【0056】
さらに、図6においては、比較器25において積分波形31と積分波形32aとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33aが示されている。具体的には、積分波形31が積分波形32aより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31が積分波形32aより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0057】
パルス波形30は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、第一の歪態様では、電源から供給される標準標準電圧値Vpowに対して+ΔV1の振幅の歪が生じる場合であるので、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34aの振幅は、ほぼ0から(Vpow+ΔV1)/Kとなり、当該パルス波形34aの振幅は、パルス変調手段1から出力されるパルス波形30の振幅と等しくならず、パルス波形34aの振幅の方がパルス波形30の振幅よりも、ΔV1/Kだけ大きくなる。
【0058】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形34aのパルス面積は、一周期分のパルス波形30のパルス面積と等しくなる。
【0059】
さて、パルス波形30,34aが図6の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31および積分波形32aは図6に示したように形成される。
【0060】
ここで、電力スイッチ手段3における第一の歪態様(図4)により、積分波形32aの平均値は、図3で示した歪がない場合に形成される積分波形32の平均値よりも増加する。これにより、積分波形31が積分波形32aを上回る期間が図3で示した歪のない場合と比べて減少する。
【0061】
従って、積分波形31および積分波形32aの差に基づいて比較器25にて出力される補正信号Vcはパルス波形33aのようになる。
【0062】
ここで、図6で示しているように、比較器25の通常の動作により、パルス波形33aのパルス幅は、パルス波形30のパルス幅よりも第一の歪態様の歪(ΔV1の振幅増大)に対応した分だけ狭くなる(つまり、パルス波形33aの”H”となる期間が図3に示した歪が生じない場合に比べて減少する)ように、生成される。
【0063】
これにより、図6に示すパルス幅のパルス波形33aが帰還され、再び電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第一の歪態様が発生し、パルス幅はそのままで振幅が正常値よりもΔV1だけ増加したとしても、パルス波形34aの一周期分のパルス面積は、パルス波形30の一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形33aとパルス波形34aとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図6により示されている。
【0064】
このように、電力スイッチ手段3において第一の態様の歪が生じる場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器25から出力されるパルス波形33aのパルス幅を上記のように、第一の態様の歪(つまりΔV1分の振幅の増大)に対応してパルス波形30のパルス幅よりも狭くすることにより、電力スイッチ手段3において発生する第一の歪態様の歪を補正して、定常状態では、パルス波形34aの一周期分のパルス面積をパルス波形30の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分とPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、両信号間における誤差がないこと、つまり、音声信号の歪を補正していることを示している。
【0065】
なおこの場合、積分波形32aの振幅が大きくなることも比較器25から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0066】
次に、第二の歪態様の場合について説明する。図7は第二の歪態様の場合において補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0067】
図7においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0068】
また、図7においては、電力スイッチ手段3において第一の歪態様が発生し、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34b、および第二の積分手段24においてパルス波形34bに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32bが示されている。
【0069】
さらに、図7においては、比較器25において積分波形31と積分波形32bとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33bが示されている。具体的には、積分波形31が積分波形32bより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31が積分波形32bより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0070】
パルス波形30は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、第二の歪態様では、電源から供給される標準標準電圧値Vpowに対して−ΔV2の振幅の歪が生じる場合であるので、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34bの振幅は、ほぼ0から(Vpow−ΔV2)/Kとなり、当該パルス波形34bの振幅は、パルス変調手段1から出力されるパルス波形30の振幅と等しくならず、パルス波形34bの振幅の方がパルス波形30の振幅よりも、ΔV2/Kだけ小さくなる。
【0071】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形34bのパルス面積は、一周期分のパルス波形30のパルス面積と等しくなる。
【0072】
さて、パルス波形30,34bが図7の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31および積分波形32bは図7に示したように形成される。
【0073】
ここで、電力スイッチ手段3における第二の歪態様(図5)により、積分波形32bの平均値は、図3で示した歪がない場合に形成される積分波形32の平均値よりも減少する。これにより、積分波形31が積分波形32bを上回る期間が図3で示した歪のない場合と比べて増大する。
【0074】
従って、積分波形31および積分波形32bの差に基づいて比較器25にて出力される補正信号Vcはパルス波形33bのようになる。
【0075】
ここで、図7で示しているように、比較器25の通常の動作により、パルス波形33bのパルス幅は、パルス波形30のパルス幅よりも第二の歪態様の歪(ΔV2の振幅減少)に対応した分だけ広くなる(つまり、パルス波形33bの”H”となる期間が図3に示した歪が生じない場合に比べて増加する)ように、生成される。
【0076】
これにより、図7に示すパルス幅のパルス波形33bが帰還され、再び電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第二の歪態様が発生し、パルス幅はそのままで振幅が正常値よりもΔV2だけ減少したとしても、パルス波形34dの一周期分のパルス面積は、パルス波形30の一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形33bとパルス波形34bとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図7により示されている。
【0077】
このように、電力スイッチ手段3において第二の態様の歪が生じる場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器25から出力されるパルス波形33bのパルス幅を上記のように、第二の態様の歪(つまりΔV2分の振幅の減少)に対応してパルス波形30のパルス幅よりも広くすることにより、電力スイッチ手段3において発生する第二の歪態様の歪を補正して、定常状態では、パルス波形34bの一周期分のパルス面積をパルス波形30の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分とPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、両信号間における誤差がないこと、つまり、音声信号の歪を補正していることを示している。
【0078】
なおこの場合、積分波形32bの振幅が小さくなることも比較器25から出力される補正信号Vcのパルス幅を拡げることに効果がある。
【0079】
以上が、本実施の形態における補正回路2がPWM信号eiを帰還に基づく補正を加えながら出力に伝達する動作を説明したものである。
【0080】
以上においては、パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiがほぼ無変調である場合について説明したが、変調がかけられる場合についても同様の補正が行われることは、以上の説明から容易に類推できる。
【0081】
また以上においては、パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiに対して、第一の加算手段50におけるアナログ音声信号の加算がなされない場合について説明したが、アナログ音声信号が加算される場合についても、同様に補正が行われる。この動作について、図8〜9を用いて以下で説明する。
【0082】
一般的に、アナログ音声信号は、周波数が20kHz程度以下の正弦波で表される。これに対して、パルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30の周波数は、700kHz程度である。従って、アナログ信号の波形は、近似的に、正または負の定数を表す直線になると考えられる(以下では、この定数をΔV3とし説明する。)。
【0083】
図8は、レベルが基準レベルに対して正であるアナログ音声信号が第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算されている場合に、補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0084】
また、図8においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31cが示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0085】
また、図8においては、レベルが基準レベルに対して正であるアナログ音声信号が第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算されている場合に、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34c、および第二の積分手段24においてパルス波形34cに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32cが示されている。
【0086】
さらに、図8においては、比較器25において積分波形31cと積分波形32cとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33cが示されている。具体的には、積分波形31が積分波形32cより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31cが積分波形32cより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0087】
さらに、図8においては、PWM信号eiとアナログ音声信号との加算信号であるパルス波形35cが示されている。
【0088】
パルス波形30cは、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34cの振幅は、ほぼ0からVpow/Kとなり、帰還回路5は、当該パルス波形34cの振幅がパルス変調手段1から出力されるパルス波形30cの振幅と等しく(Vpow/K=Vsig)なるように設定されている。
【0089】
従って、パルス波形35cは、ほぼΔV3からVsig+ΔV3までの振幅を持つことになる。
【0090】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形34cのパルス面積は、一周期分のパルス波形35cのパルス面積と等しくなる。
【0091】
さて、パルス波形30c,34c,35cが図8の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31cおよび積分波形32cは図8に示したように形成される。
【0092】
ここで、第一の加算手段50における+ΔV3のアナログ音声信号の加算により、積分波形31cの平均値は、図3で示したアナログ音声信号の加算がない場合に形成される積分波形31の平均値よりも増加する。これにより、積分波形31cが積分波形32cを上回る期間が図3で示したアナログ音声信号の加算のない場合と比べて増加する。
【0093】
この積分波形31cの増加分は、利得調整手段22を通して第一の減算器20に与えられることで、アナログ音声信号の加算による低周波成分レベルの上昇を打ち消すことになる。こうして、第一の積分器21の低周波成分への利得が十分大きければ、第一の減算器20の出力において、低周波成分レベルはほぼ完全に打ち消される。言い換えれば第一の減算器20の二つの入力における低周波成分のレベルが、ほぼ等しくなることとなる。
【0094】
よって、もしパルス変調手段1から出力されるPWM信号が無変調のデューティー50%の矩形波であった場合、利得調整回路22の出力信号の低周波成分のレベルは、アナログ音声信号のレベルにほぼ等しくなる。
【0095】
この利得調整回路22の出力信号は、第二の減算器23にて、帰還信号から差し引かれることとなるから、第二の積分器24の出力レベルは減少に向かう。このため、積分波形31cが積分波形32cを上回る期間、即ち比較器25の出力が”H”となる期間が長くなる。
【0096】
従って、積分波形31cおよび積分波形32cの差に基づいて比較器25にて出力される補正信号Vcはパルス波形33cのようになる。
【0097】
ここで、図8で示しているように、比較器25の通常の動作により、パルス波形33cのパルス幅は、パルス波形30のパルス幅よりもアナログ音声信号の加算(ΔV3の振幅増加)に対応した分だけ広くなる(つまり、パルス波形33cの”H”となる期間が図3に示したアナログ音声信号の加算がない場合に比べて増加する)ように、生成される。
【0098】
これにより、図8に示すパルス幅のパルス波形33cが帰還され、パルス波形34cの一周期分のパルス面積は、パルス波形35cの一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形33cとパルス波形34cとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図8により示されている。
【0099】
このように、アナログ音声信号が加算される場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器25から出力されるパルス波形33cのパルス幅を上記のように、アナログ音声信号の加算(ΔV3の振幅増大)に対応してパルス波形30のパルス幅よりも広くすることにより、定常状態では、パルス波形34cの一周期分のパルス面積をパルス波形35cの一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分と、アナログ音声信号を加算した後のPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、アナログ音声信号のPWM変調を行っていることを示している。
【0100】
従って、この補償PWM信号(補正信号)を、電力スイッチ手段3および低域フィルタを通してスピーカ7に出力することにより、アナログ音声信号が再生されることとなる。
【0101】
なおこの場合、積分波形32cの振幅が小さくなることも比較器25から出力される補正信号Vcのパルス幅を拡げることに効果がある。
【0102】
次に、PWM信号eiに加算されるアナログ音声信号が負である場合について説明する。
【0103】
図9は、レベルが基準レベルに対して負であるアナログ音声信号が第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算されている場合に、補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0104】
また、図9においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31dが示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0105】
また、図9においては、レベルが基準レベルに対して負であるアナログ音声信号が第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算されている場合に、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34d、および第二の積分手段24においてパルス波形34dに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32dが示されている。
【0106】
さらに、図9においては、比較器25において積分波形31dと積分波形32dとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33dが示されている。具体的には、積分波形31dが積分波形32dより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31dが積分波形32dより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0107】
さらに、図9においては、PWM信号eiとアナログ音声信号との加算信号であるパルス波形35dが示されている。
【0108】
パルス波形30は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34dの振幅は、ほぼ0からVpow/Kとなり、帰還回路5は、当該パルス波形34dの振幅がパルス変調手段1から出力されるパルス波形30の振幅と等しく(Vpow/K=Vsig)なるように設定されている。
【0109】
従って、パルス波形35dは、ほぼ−ΔV3からVsig−ΔV3までの振幅を持つことになる。
【0110】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形34dのパルス面積は、一周期分のパルス波形35dのパルス面積と等しくなる。
【0111】
さて、パルス波形30,34d,35dが図9の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31dおよび積分波形32dは図9に示したように形成される。
【0112】
ここで、第一の加算手段50における−ΔV3のアナログ音声信号の加算により、積分波形31dの平均値は、図3で示したアナログ音声信号の加算がない場合に形成される積分波形31の平均値よりも減少する。これにより、積分波形31dが積分波形32dを上回る期間が図3で示したアナログ音声信号の加算のない場合と比べて減少する。
【0113】
この積分波形31dの減少分は、利得調整手段22を通して第一の減算器20に与えられることで、アナログ音声信号の加算による低周波成分レベルの下降を打ち消すことになる。こうして、第一の積分器21の低周波成分への利得が十分大きければ、第一の減算器20の出力において、低周波成分レベルはほぼ完全に打ち消される。言い換えれば第一の減算器20の二つの入力における低周波成分のレベルが、ほぼ等しくなることとなる。
【0114】
よって、もしパルス変調手段1から出力されるPWM信号が無変調のデューティー50%の矩形波であった場合、利得調整回路22の出力信号の低周波成分のレベルは、アナログ音声信号のレベルにほぼ等しくなる。
【0115】
この利得調整回路22の出力信号は、第二の減算器23にて、帰還信号から差し引かれることとなるから、第二の積分器24の出力レベルは減少に向かう。このため、積分波形31dが積分波形32dを上回る期間、即ち比較器25の出力が”H”となる期間が短くなる。
【0116】
従って、積分波形31dおよび積分波形32dの差に基づいて比較器25にて出力される補正信号Vcはパルス波形33dのようになる。
【0117】
ここで、図9で示しているように、比較器25の通常の動作により、パルス波形33dのパルス幅は、パルス波形30のパルス幅よりもアナログ音声信号の加算(−ΔV3の振幅減少)に対応した分だけ広くなる(つまり、パルス波形33dの”H”となる期間が図3に示したアナログ音声信号の加算がない場合に比べて減少する)ように、生成される。
【0118】
これにより、図9に示すパルス幅のパルス波形33dが帰還され、パルス波形34dの一周期分のパルス面積は、パルス波形35dの一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形33dとパルス波形34dとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図9により示されている。
【0119】
このように、アナログ音声信号が加算される場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器25から出力されるパルス波形33dのパルス幅を上記のように、アナログ音声信号の加算(ΔV3の振幅減少)に対応してパルス波形30のパルス幅よりも狭くすることにより、定常状態では、パルス波形34dの一周期分のパルス面積をパルス波形35dの一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分と、アナログ音声信号を加算した後のPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、アナログ音声信号のPWM変調を行っていることを示している。
【0120】
従って、この補償PWM信号(補正信号)を、電力スイッチ手段3および低域フィルタを通してスピーカ7に出力することにより、アナログ音声信号が再生されることとなる。
【0121】
なおこの場合、積分波形32dの振幅が大きくなることも比較器25から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0122】
以上、説明したように、本実施の形態に係るD級増幅器は、簡易な回路構成でありながら、電源変動などの外乱の影響を排除し精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも再生し出力することができるという効果を有する。従って、デジタル音声信号およびアナログ音声信号の両方を取り扱う装置を経済的に提供することが可能となる。
【0123】
<実施の形態2>
本実施の形態の補正回路は、実施の形態1で説明した図1のD級増幅器に組み込まれるものであり、当該補正回路では、第一の積分手段からの信号と第二の積分手段からの信号とを、直接比較器にて比較するのではなく、減算手段にて、第一の積分手段からの信号と第二の積分手段からの信号との差を求めた後、減算手段出力信号(差分信号)と、当該差分信号をさらに第三の積分手段により積分し、その後反転手段により反転させた信号との間での比較を、比較器にて行うことで出力の補正信号を生成する。
【0124】
本実施の形態における、補正回路2の内部の構成を示すブロック図を図10に示す。以下、図10の構成を具体的に説明する。なお、図10において、図2と同様の要素については同一の符号を付してしてあるので、それらのここでの詳細な説明は省略する。
【0125】
図10において、第一の積分手段21の出力部は、接続点N2を介して、第三の第三の減算手段26の「+」入力部に接続されており、第二の積分手段24の出力部は、当該第三の減算手段26の「−」入力部に接続されている。さらに、第三の減算手段26の出力部は、接続点N11で分岐して、一方は比較器29の「+」入力部に接続されており、他方は、第三の積分手段27、反転手段28を介して比較器29の「−」入力部に接続される。
【0126】
なお、比較器29の出力部は、実施の形態1と同様、電力スイッチ手段3の入力部に接続されている。
【0127】
図10で示したように本実施の形態では、第一の積分手段21から出力される積分波形を、第二の積分手段24から出力される積分波形とを直接比較するのではなく、第三の減算手段26において当該両積分波形の差を求めた後、比較器29において、第三の減算手段26からの出力信号(差分信号)と、当該差分信号をさらに第三の積分手段27、反転手段28により積分・反転した信号との間の比較を行うことで、当該比較器29において補正信号Vcを形成する。
【0128】
ここで、第三の減算手段26からの差分信号には、(アナログ音声信号を加算された)PWM信号eiの低周波成分および帰還信号efの低周波成分の差を含んでおり、当該低周波成分の差が帰還信号efに含まれる誤差、つまり音声信号出力の歪を表しており、当該歪を比較器29において補正される。
【0129】
当該補正動作は、例えば比較器29の「−」入力部に固定の基準電位(Vsig/2)を接続すると、実施の形態1と同じ補正動作をすると考えられることからも明らかである。
【0130】
ところが本実施の形態では、比較器29の「−」入力部に固定の基準電位(Vsig/2)が接続されているのではなく、第三の減算手段26からの差分信号を積分、反転させる、Vsig/2を基準として動作する第三の積分手段27と反転手段28とが接続されているので、上記の補正効果に加えて以下に示す効果をさらに有することになる。
【0131】
つまり、第三の積分手段27において、第三の減算手段26からの差分信号に含まれる、PWM信号eiの低周波成分および帰還信号efの低周波成分の差(音声信号出力の歪)をさらに蓄積・強調し、その後反転手段28により反転処理を施すことにより、比較器29において当該強調された音声信号出力の歪みが第三の減算手段26から出力される差分信号に加えられることとなるので、より音声信号出力の歪を強調した形で比較器29にて当該歪に対応した補正信号Vcを生成することができ、実施の形態1に記載の補正回路よりもさらに高い補正効果を得ることができる。
【0132】
次に、補正回路2内における各箇所の信号波形の状態について説明する。
【0133】
まず、電力スイッチ手段3にて歪が生じない場合について説明する。図11は、当該場合における定常状態の補正回路2内の各箇所の波形を示す図である。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値を取っている。但し、図11においては、第一の加算手段50へのアナログ音声信号は入力されない場合について示している。
【0134】
図11においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形40、および第一の積分手段21においてパルス波形40に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形41が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0135】
また、図11においては、補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形44、および第二の積分手段24においてパルス波形44に基づいて生成される積分信号eo2の積分波形42が示されている。
【0136】
また、図11においては、第三の減算手段26において積分波形41から積分波形42を減算することにより生成される波形45、および第三の積分手段27、反転手段28において波形45を積分・反転することにより生成される積分波形46が示されている。
【0137】
さらに、図11においては、比較器29において波形45と積分波形46との差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33が示されている。具体的には、波形45が積分波形46より高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、波形45が積分波形46より低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0138】
パルス波形40は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形44の振幅は、ほぼ0からVpow/Kとなり、帰還回路5は、当該パルス波形44の振幅がパルス変調手段1から出力されるパルス波形40の振幅と等しく(Vpow/K=Vsig)なるように設定されている。
【0139】
パルス波形40および44が図11の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形41および積分波形42は図11に示したように生成される。また、第三の減算手段26および第三の積分手段27においても、ほぼVsig/2を基準に動作するものとすると、波形45,46のように生成される。
【0140】
従って、比較器29にて出力される補正信号Vcは、パルス波形43のようになる。ここで定常状態において、パルス波形44は、比較器29で出力されるパルス波形43に対して、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δを伴うこととなる。
【0141】
図11は、つまり、定常状態において補正回路2が正常に動作することにより、電力スイッチ手段3にて歪が生じない場合には、帰還信号efであるパルス波形44は、PWM信号eiであるパルス波形40に対して時間遅延δをもつ相似波形となり、両パルス波形40,44の低周波成分は等しく音声信号に歪が生じず正常に信号が伝送することを示しているのである。
【0142】
ところで実際には、帰還信号efには、主に電力スイッチ手段3に起因する波形の歪が含まれる。この歪は帰還信号efの波形を変形させるため、帰還信号efの低周波成分はPWM信号eiの低周波成分に対して差異が生じることとなる。
【0143】
電力スイッチ手段5にて生じる歪の態様として図4〜5で示した2パターンの態様を用いて、当該態様の歪が生じた場合に、本実施の形態のD級増幅器の補正回路2が正常に補正動作を行うことを説明する。
【0144】
以下、上記の歪態様が生じた場合に、定常状態で当該補正回路2内の各箇所における波形がどのように変化するかについて説明する。
【0145】
まずはじめに、第一の歪態様の場合について説明する。図12は第一の歪態様の場合において補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0146】
図12においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形40、および第一の積分手段21においてパルス波形40に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形41が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0147】
また、図12においては、電力スイッチ手段3において第一の歪態様が発生し、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形44a、および第二の積分手段24においてパルス波形44aに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形42aが示されている。
【0148】
また、図12においては、第三の減算手段26において積分波形41から積分波形42aを減算することにより生成される波形45a、および第三の積分手段27、反転手段28において波形45aを積分・反転することにより生成される積分波形46aが示されている。
【0149】
さらに、図12においては、比較器29において波形45aと積分波形46aとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形43aが示されている。具体的には、波形45aが積分波形46aより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、波形45aが積分波形46aより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0150】
パルス波形40は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、第一の歪態様では、電源から供給される標準標準電圧値Vpowに対して+ΔV1の振幅の歪が生じる場合であるので、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形44aの振幅は、ほぼ0から(Vpow+ΔV1)/Kとなり、当該パルス波形44aの振幅は、パルス変調手段1から出力されるパルス波形40の振幅と等しくならず、パルス波形44aの振幅の方がパルス波形40の振幅よりも、ΔV1/Kだけ大きくなる。
【0151】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形44aのパルス面積は、一周期分のパルス波形40のパルス面積と等しくなる。
【0152】
さて、パルス波形40,44aが図12の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形41および積分波形42aは図12に示したように形成される。
【0153】
ここで、電力スイッチ手段3における第一の歪態様(図4)により、積分波形42aの平均値は、図11で示した歪がない場合に形成される積分波形42の平均値よりも増加する。
【0154】
これにより、積分波形41および積分波形42aの差により第三の減算手段26にて生成される波形45aが、基準レベルであるVsig/2を上回る期間が減少する。これに対して、波形45aに基づいて第三の積分手段27および反転手段28により生成される積分波形46aは、平均的に基準レベルであるVsig/2を上回ることとなる。
【0155】
従って、波形45aおよび積分波形46aの差に基づいて比較器29にて出力される補正信号Vcはパルス波形43aのようになる。ここで、本実施の形態においては、補正信号Vcは、強調された音声信号出力の歪を補正することができる信号となっている。
【0156】
ここで、図12で示しているように、比較器29の通常の動作により、パルス波形43aのパルス幅は、パルス波形40のパルス幅よりも第一の歪態様の歪(ΔV1の振幅増大)に対応した分だけ狭くなる(つまり、パルス波形43aの”H”となる期間が図11に示した歪が生じない場合に比べて減少する)ように、生成される。
【0157】
これにより、図12に示すパルス幅のパルス波形43aが帰還され、再び電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第一の歪態様が発生し、パルス幅はそのままで振幅が正常値よりもΔV1だけ増加したとしても、パルス波形44aの一周期分のパルス面積は、パルス波形40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形43aとパルス波形44aとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図12により示されている。
【0158】
このように、電力スイッチ手段3において第一の態様の歪が生じる場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器29から出力されるパルス波形43aのパルス幅を上記のように、第一の態様の歪(つまりΔV1分の振幅の増大)に対応してパルス波形40のパルス幅よりも狭くすることにより、電力スイッチ手段3において発生する第一の歪態様の歪を補正して、定常状態では、パルス波形44aの一周期分のパルス面積をパルス波形40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分とPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、両信号間における誤差がないこと、つまり、音声信号の歪を補正していることを示している。
【0159】
なおこの場合、積分波形42aの振幅が大きくなり、波形45aの上辺の傾きが負となることも比較器29から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0160】
次に、第二の歪態様の場合について説明する。図13は第二の歪態様の場合において補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0161】
図13においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形40、および第一の積分手段21においてパルス波形40に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形41が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0162】
また、図13においては、電力スイッチ手段3において第一の歪態様が発生し、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形44b、および第二の積分手段24においてパルス波形44bに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形42bが示されている。
【0163】
また、図13においては、第三の減算手段26において積分波形41から積分波形42bを減算することにより生成される波形45b、および第三の積分手段27、反転手段28において波形45bを積分・反転することにより生成される積分波形46bが示されている。
【0164】
さらに、図13においては、比較器29において波形45bと積分波形46bとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形43bが示されている。具体的には、波形45bが積分波形46bより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、波形45bが積分波形46bより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0165】
パルス波形40は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、第二の歪態様では、電源から供給される標準標準電圧値Vpowに対して−ΔV2の振幅の歪が生じる場合であるので、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形44bの振幅は、ほぼ0から(Vpow−ΔV2)/Kとなり、当該パルス波形44bの振幅は、パルス変調手段1から出力されるパルス波形40の振幅と等しくならず、パルス波形44bの振幅の方がパルス波形40の振幅よりも、ΔV2/Kだけ小さくなる。
【0166】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形44bのパルス面積は、一周期分のパルス波形40のパルス面積と等しくなる。
【0167】
さて、パルス波形40,44bが図13の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形41および積分波形42bは図13に示したように形成される。
【0168】
ここで、電力スイッチ手段3における第二の歪態様(図5)により、積分波形42bの平均値は、図11で示した歪がない場合に形成される積分波形42の平均値よりも減少する。
【0169】
これにより、積分波形41および積分波形42bの差により第三の減算手段26にて生成される波形45bが、基準レベルであるVsig/2を上回る期間が増加する。これに対して、波形45bに基づいて第三の積分手段27および反転手段28により生成される積分波形46bは、平均的に基準レベルであるVsig/2を上回ることとなる。
【0170】
従って、波形45bおよび積分波形46bの差に基づいて比較器29にて出力される補正信号Vcはパルス波形43bのようになる。ここで、本実施の形態においては、補正信号Vcは、強調された音声信号出力の歪を補正することができる信号となっている。
【0171】
ここで、図13で示しているように、比較器29の通常の動作により、パルス波形43bのパルス幅は、パルス波形40のパルス幅よりも第二の歪態様の歪(ΔV2の振幅減少)に対応した分だけ狭くなる(つまり、パルス波形43bの”H”となる期間が図11に示した歪が生じない場合に比べて増加する)ように、生成される。
【0172】
これにより、図13に示すパルス幅のパルス波形43bが帰還され、再び電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第二の歪態様が発生し、パルス幅はそのままで振幅が正常値よりもΔV2だけ減少したとしても、パルス波形44bの一周期分のパルス面積は、パルス波形40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形43bとパルス波形44bとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図13により示されている。
【0173】
このように、電力スイッチ手段3において第二の態様の歪が生じる場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器29から出力されるパルス波形43bのパルス幅を上記のように、第二の態様の歪(つまりΔV2分の振幅の減少)に対応してパルス波形40のパルス幅よりも広くすることにより、電力スイッチ手段3において発生する第二の歪態様の歪を補正して、定常状態では、パルス波形44bの一周期分のパルス面積をパルス波形40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分とPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、両信号間における誤差がないこと、つまり、音声信号の歪を補正していることを示している。
【0174】
なおこの場合、積分波形42bの振幅が小さくなり、波形45bの上辺の傾きが正となることも比較器29から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0175】
以上が、本実施の形態における補正回路2がPWM信号eiを帰還に基づく補正を加えながら出力に伝達する動作を説明したものである。
【0176】
以上においては、パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiがほぼ無変調である場合について説明したが、変調がかけられる場合についても同様の補正が行われることは、以上の説明から容易に類推できる。
【0177】
また以上においては、パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiに対して、第一の加算手段50におけるアナログ音声信号の加算がなされない場合について説明したが、実施の形態1と同様に、アナログ音声信号が加算される場合についても補正が行われる。例えば、+ΔV3の正のアナログ音声信号が加算される場合の動作について以下で説明する。
【0178】
即ち、実施の形態1と同様に、第一の加算手段50における+ΔV3のアナログ音声信号の加算により、積分波形41aの平均値は、図11で示したアナログ音声信号の加算がない場合に形成される積分波形41の平均値よりも増加する。これにより、積分波形41aが積分波形42aを上回る期間が図11で示したアナログ音声信号の加算のない場合と比べて増加する。比較器29から出力されるパルス波形43aのパルス幅を、アナログ音声信号の加算(つまりΔV3分の振幅の増加)に対応してパルス波形40のパルス幅よりも広くすることにより、定常状態では、パルス波形44aの一周期分のパルス面積をパルス40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分と(アナログ音声信号を加算した後の)PWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、アナログ音声信号のPWM変調を行っていることを示している。
【0179】
従って、この補償PWM信号(補正信号)を、電力スイッチ手段3および低域フィルタを通してスピーカ7に出力することにより、アナログ音声信号が再生されることとなる。
【0180】
なおこの場合、積分波形42aの振幅が小さくなり、波形45aの上辺の傾きが正となることも比較器29から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0181】
以上では、+ΔV3の正のアナログ音声信号が加算される場合の動作について説明したが、−ΔV3の負のアナログ音声信号が加算される場合についても、同様に、アナログ音声信号へのPWM変調が行われる。
【0182】
以上、説明したように、本実施の形態に係るD級増幅器は、実施の形態1の効果に加えて、更に帰還の効果を高めることによりアナログ音声に対してもより忠実な増幅を行うことができるという効果を有する。
【0183】
図14は、図10に示される補正回路2を含むD級増幅器において、PWM信号を無変調とし、アナログ音声信号に周波数の異なる正弦波信号数種を与え、その振幅を変化した場合の増幅器出力の歪み率を計測した結果である。ここで、横軸は出力電力であり、縦軸は歪み率を取っている。
【0184】
図14において、◆印、□印、●印、×印は、アナログ音声信号である正弦波信号の周波数がそれぞれ400Hz、1kHz、5kHz、10kHzである場合に対応している。また、電源電圧値Vccは13.2V、PWM信号の周波数fswは705.6kHzであった。
【0185】
この結果から、出力が10W程度までであれば、歪み率は0.2%程度と小さいことが分かる。従って、本発明により、アナログ音声信号に対しても忠実度の高いD級増幅器を構成し得ることが明らかである。
【0186】
<実施の形態3>
本実施の形態の補正回路は、実施の形態1で説明した図1のD級増幅器に組み込まれるものであり、当該補正回路では、アナログ音声信号を、PWM信号にではなく、帰還信号に加算する。
【0187】
本実施の形態における、補正回路2の内部の構成を示すブロック図を図15に示す。以下、図15の構成を具体的に説明する。また、以下では、図2に示される補正回路の構成との比較により説明を行う。なお、図15において、図2と同様の要素については同一の符号を付してしてあるので、それらのここでの詳細な説明は省略する。
【0188】
図15において、第一の減算手段20の「+」入力部には、第一の加算手段50が接続されるのではなく、パルス変調手段1が直接接続されPWM信号eiが入力される。また、第二の減算手段23の「+」入力部には、PWM信号eiが直接入力されるのではなく、第二の加算手段51が接続される。第二の加算手段51は、2つの入力部を有しており、一方に入力部には、帰還回路5の出力部が接続され、他方の入力部には、アナログ音声信号が入力される。第二の加算手段51は、これらの信号を加算することにより加算信号を生成し出力する。
【0189】
なお、比較器25の出力部は、実施の形態1,2と同様、電力スイッチ手段3の入力部に接続されている。
【0190】
図15で示したように本実施の形態では、アナログ音声信号を、第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算するのではなく、第二の加算手段51において帰還信号efに加算する。
【0191】
実施の形態1において前述したように、第一の積分器21の低周波成分への利得が十分大きければ、第一の減算器20の出力において、低周波成分レベルはほぼ完全に打ち消される。言い換えれば第一の減算器20の二つの入力における低周波成分のレベルが、ほぼ等しくなることとなる。即ち、利得調整回路22の出力信号の低周波数成分のレベルは、PWM信号入力eiの低周波数成分のレベルにほぼ等しくなる。同様に、第二の積分器24の低周波成分への利得が十分大きければ、第二の減算器23の「+」入力部への入力信号の低周波数成分のレベルは、利得調整回路22の出力信号の低周波数成分のレベルにほぼ等しくなる。
【0192】
よって、もしパルス変調手段1から出力されるPWM信号が無変調のデューティー50%の矩形波であった場合、利得調整回路22の出力信号の低周波成分のレベルは、ほぼ基準レベル(Vsig/2)で一定となる。このため、第二の減算器23の「+」入力部への入力信号の低周波数成分のレベルも、帰還の作用を通して基準レベル(Vsig/2)で一定になるように調整されることとなる。
【0193】
このとき、第二の加算手段51により帰還信号ef入力にアナログ音声信号が加算されると、この帰還の作用は、第二の加算手段51からの出力信号を基準レベル(Vsig/2)で一定になるように働き、帰還信号の低周波数成分をアナログ音声信号入力と等しくなるようにする。これは即ち、アナログ音声信号入力を増幅して出力する動作となる。
【0194】
以上、説明したように、本実施の形態に係るD級増幅器は、実施の形態1と同様に、簡易な回路構成でありながら、電源変動などの外乱の影響を排除し精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも再生し出力することができるという効果を有する。従って、デジタル音声信号およびアナログ音声信号の両方を取り扱う装置を経済的に提供することが可能となる。
【0195】
なお、以上の説明においては、実施の形態1に係る図2の補正回路において、アナログ音声信号をPWM信号eiにではなく帰還信号efに加算させた例について説明した。しかし、実施の形態1に係る図2の補正回路に限らず、実施の形態2に係る図10の補正回路において、アナログ音声信号をPWM信号eiにではなく帰還信号efに加算させてもよい。これにより、実施の形態2と同様に、更に帰還の効果を高めることによりアナログ音声に対してもより忠実な増幅を行うことができる。
【0196】
また、以上の説明においては、アナログ音声信号を増幅する場合の動作を、便宜上、PWM信号eiを無変調のデューティー50%の矩形波として説明した。しかし、PWM信号eiにデジタル音声信号による変調がかけられていた場合にも、総合の変調度が100%を越えることがなければ、アナログおよびデジタル音声信号を加算して増幅することが可能である。
【0197】
また、以上の説明においては、出力段の構成をシングルエンドとしてきたが、本発明は互いに180度位相の異なる音声信号を出力する2つの出力段を備える、いわゆるBTL(Balanced Transformer−Less)構成にも適用することができる。すなわち、BTL構成の各出力段に対し本発明の補正回路を追加適用することにより、上記で説明した歪み改善効果を得ることができる。
【0198】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1に記載の発明に係るD級増幅器は、パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、前記補正回路は、外部から入力されるアナログ信号を前記パルス変調信号に加算するための加算手段を備えることを特徴とするので、簡易な回路構成でありながら、電源変動などの外乱の影響を排除し精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも再生し出力することができるという効果を有する。従って、デジタル音声信号およびアナログ音声信号の両方を取り扱う装置を経済的に提供することが可能となる。
【0199】
また、請求項4に記載の発明に係るD級増幅器は、パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、前記補正回路は、外部から入力されるアナログ信号を前記帰還信号に加算するための加算手段を備えることを特徴とするので、請求項1に記載の発明に係るD級増幅器と同様に、簡易な回路構成でありながら、電源変動などの外乱の影響を排除し精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも再生し出力することができるという効果を有する。従って、デジタル音声信号およびアナログ音声信号の両方を取り扱う装置を経済的に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のD級増幅器の回路構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における補正回路の構成を示すブロック図である。
【図3】歪とアナログ音声信号入力がない場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図4】第一の歪態様を示す図である。
【図5】第二の歪態様を示す図である。
【図6】第一の歪態様が生じた場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図7】第二の歪態様が生じた場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図8】正のアナログ音声信号を入力した場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図9】負のアナログ音声信号を入力した場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図10】実施の形態2における補正回路の構成を示すブロック図である。
【図11】歪とアナログ音声信号入力がない場合の実施の形態2における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図12】第一の歪態様が生じた場合の実施の形態2における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図13】第二の歪態様が生じた場合の実施の形態2における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図14】本発明の補正回路の補正効果を示す測定データ図である。
【図15】実施の形態3における補正回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 パルス変調手段、2 補正回路、3 電力スイッチ手段、4 低域フィルタ(LPF)、5 帰還回路、7 スピーカ、20 第一の減算手段、21 第一の積分手段、22 利得調整手段、23 第二の減算手段、24 第二の積分手段、25,29 比較器、26 第三の減算手段、27 第三の積分手段、28 反転手段、50 第一の加算手段、51 第二の加算手段、101 デルタシグマ変調器、102 PWM変換器。
【発明の属する技術分野】
本発明はD級増幅器に関し、特に、帰還補正回路を有するD級増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】
音声信号の電力増幅を高効率・低損失に行うことで機器の小型化を可能とする方式として、D級増幅が用いられている。また、デジタル化された音声信号を直接にパルス幅変調(以下ではPWMとも呼ぶ)信号に変換して、電力スイッチ手段に導く構成のD級増幅器が知られている。ここで、電力スイッチ手段は、通常、低電圧電源側に配置されるスイッチ素子とグランド(もしくは負電源)側に配置されるスイッチ素子とで構成されている。また、特許文献1,2には、このPWM変換を行うために使用される再量子化手段による丸め誤差をデルタシグマ変調を用いて低減する構成のD級増幅器の例が示されている。
【0003】
上記の公知の構成のD級増幅器により、精度の良いPWM信号を得ることが可能であり、これを精度良く電力スイッチ手段の出力に反映させることにより、増幅器出力として高品位な音声信号を得ることができる。しかしながら、電力スイッチ手段に供給される電源電圧が変動する場合、出力信号に歪が生じるという問題がある。定電圧回路を介して電力スイッチ手段に常に一定の電圧を供給するようにすれば、この出力信号の歪を低減することは可能であるが、電力スイッチ手段の消費する電力は比較的大きいため、この定電圧回路における電力損失も大きくなってしまう。そのため、音声信号の電力増幅を高効率且つ低損失で行えなくなるという別の問題が発生してしまう。
【0004】
また、特許文献3には、電力スイッチ手段からの出力信号をフィードバックさせることにより歪を補正するD級増幅器の例が示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−261347号公報
【特許文献2】
特開2001−292040号公報
【特許文献3】
特表2001−517393号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献3に開示されているD級増幅器による補正処理においては、以下に示すような問題が生じている。
【0007】
まず第一の問題として、補正の効果を向上させるためには、比較器に入力される台形波信号の精度を良くする必要があるが、そのためには、回路構成も複雑になってしまうという問題がある。
【0008】
また第二の問題として、エラー処理手段に入力されるパルス変調信号および状態フィードバック信号はパルス信号であるために、当該パルス信号から正常にエラー信号を作成することは非常に困難であり、当該エラー信号において残留パルスが除去しきれず、当該残留パルスに起因して十分な補正効果を得ることが困難であるという問題がある。この理由について説明する。
【0009】
パルス成分が大きく残留する場合には、これにより回路動作が制約を受けるため、つまり当該パルス成分が回路の非直線領域に入って歪むとエラー信号に歪が生じ、正しい補正動作ができなくなるため、エラー処理手段で生成されるエラー信号は、パルス変調信号と状態フィードバック信号との低周波成分の差を反映し、パルス成分を含まないことを理想とする。しかし実際には、エラー処理手段における状態フィードバック信号の位相回転は、ループ動作を不安定とするため、パルス成分を十分に減衰させるようなフィルタをかけることが困難である。一方、フィードバックの効果を十分に得るためにはエラー信号を十分に増幅して補正を行う必要があり、これにより残留パルス成分も同時に増幅されるという相反する結果となる。上記理由に基づき、残留パルスが起因して十分な補正効果(音声信号の歪の低減効果)を得ることが困難なのである。
【0010】
また、特許文献1〜3に開示されているような従来のD級増幅器においては、デジタル化された音声信号を直接PWM信号に変換しているので、アナログ音声信号を直接増幅することができない。よって、アナログ音声信号を一旦デジタル信号に変換するための回路の追加が必要になり、回路構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、簡易な回路構成でありながら、精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも増幅し出力することができるD級増幅器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係るD級増幅器は、パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、前記補正回路は、外部から入力されるアナログ信号を前記パルス変調信号に加算するための第一の加算手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明に係るD級増幅器は、パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、前記補正回路は、外部から入力されるアナログ信号を前記帰還信号に加算するための第二の加算手段を備えることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
<実施の形態1>
本実施の形態のD級増幅器が備える補正回路は、アナログ信号をパルス変調信号に加算した加算信号と電力スイッチ手段から出力される帰還信号とを積分し、比較器において、加算信号をリファレンス(基準)として、両積分された信号を比較することにより、当該比較に対応した出力信号を電力スイッチ手段に出力し、最終的に電力スイッチ手段で生ずる信号の歪を補正することができる回路である。
【0015】
図1に、本発明に係る帰還補正回路を備えたD級増幅器のブロック図を示す。
【0016】
図1に示すD級増幅器は、パルス変調手段1、補正回路2、電力スイッチ手段3、低域フィルタ(LPF)4、およびスピーカ7が直列的に接続されており、信号がパルス変調手段1からスピーカ7に向かって伝送される。また、電力スイッチ手段3から出力される信号の一部を補正回路2へ帰還させるため、帰還回路5が接続点N1と補正回路2との間に構成されている。
【0017】
パルス変調手段1には、デジタル音声信号が入力され、補正回路2には、アナログ音声信号が入力される。即ち、補正回路2は3つの入力部を有しており、アナログ音声信号、パルス変調手段1からの信号および帰還回路5からの帰還信号がそれぞれの入力部に入力する。
【0018】
また、パルス変調手段1は、デルタシグマ変調器101およびPWM変換器102を含む。
【0019】
上記構成において、各装置は以下に示す動作を行う。
【0020】
パルス変調手段1は、音声信号でパルス幅変調された2値パルス信号(以下ではPWM信号とも呼ぶ)を生成し出力するものである。また、デルタシグマ変調器101は、デジタル化された音声信号をデルタシグマ変調するものであり、PWM変換器102は、デルタシグマ変調された音声信号をPWM信号に変換するものである。
【0021】
また、補正回路2は、アナログ音声信号、PWM信号および帰還回路5からの帰還信号を受け、後述する第一の加算手段50によりアナログ音声信号をPWM信号に加算して加算信号を生成し、この加算信号を基準として帰還信号に含まれる電力スイッチ手段3における歪要因を補正し、当該補正した加算信号を出力するものである。
【0022】
また、電力スイッチ手段3は、例えば電源側に配置されるスイッチ素子とグラウンド側に配置されるスイッチ素子とで構成され、補正回路2から出力される歪要因補正後のPWM信号の値に応じ、電源とグラウンドとの間のスイッチング動作により電力増幅を行う。これにより、増幅器出力に接続される負荷すなわちスピーカ7への電力供給が可能となる。
【0023】
また、帰還回路5は、電力スイッチ手段3から出力される電力増幅された信号の振幅のレベル調整を行い、当該レベル調整された信号を補正回路2の入力部に与えるものである。ここで、上記振幅のレベル調整は、電力スイッチ手段3において振幅の歪が生じない場合に、電力スイッチ手段3にて増幅された信号を、パルス変調手段1から出力されるパルス変調信号の振幅と同等レベルまで、固定された減衰利得により減衰される。
【0024】
最後に、低域フィルタ4は、電力スイッチ手段3から出力される電力増幅された信号から、高周波成分を除去することにより音声信号を復調する。復調された音声信号は、スピーカ7へ出力され、音声として再生される。
【0025】
前述したように、電力スイッチ手段3は、電源とグラウンドとの間のスイッチング動作を行うため、電源電圧に変動がある場合、従来はこれがそのまま出力の振幅変調歪みとなっていた。本実施の形態においては、この電力スイッチ手段3の出力を帰還回路5を介し補正回路2により信号に補正を与えることで、この歪みが出力に現れることを抑制している。
【0026】
次に、本実施の形態のD級増幅器における補正の動作を担う補正回路2の内部構成を示すブロック図を図2に示す。
【0027】
以下、図2で示す補正回路2の構成を具体的に説明する。
【0028】
第一の加算手段50の出力部は、第一の減算手段20の「+」入力部に接続されている。
【0029】
第一の減算手段20の出力部は、第一の積分手段21の入力部に接続されており、当該第一の積分手段21の出力部は、比較器25の一方の入力部である「+」入力部に接続されている。
【0030】
また、第二の減算手段23の出力部は、第二の積分手段24の入力部に接続されており、当該第二の積分手段24の出力部は、比較器25の他方の入力部である「−」入力部に接続されている。
【0031】
さらに、第一の積分手段21の出力部は、当該第一の積分手段21と比較器25との間に存する接続点N2から分岐して利得調整手段22の入力部に接続されており、当該利得調整手段22の出力部は、接続点N3を介して、第一の減算手段20の「−」入力部と第二の減算手段23の「−」入力部とに、それぞれ接続されている。
【0032】
なお、第一の加算手段50は、2つの入力部を有しており、一方に入力部にはパルス変調手段1からのPWM信号が入力し、他方の入力部には、アナログ音声信号が入力される。第一の加算手段50は、これらの信号を加算することにより加算信号を生成し出力する。また、第二の減算手段23の「+」入力部は、帰還回路5の出力部と接続されている。さらに、比較器25の出力部は、電力スイッチ手段3の入力部に接続されている。
【0033】
上記構成において、第一の減算手段20、第一の積分手段21および利得調整手段22は、当該利得調整手段22を介する負帰還を備える積分回路を構成している。当該構成において、第一の減算手段20において第一の加算手段50からの加算信号と利得調整手段22からの出力信号との差をとり第一の差分信号を生成し、当該第一の差分信号を第一の積分手段21にて積分処理を行っている。つまり、第一の積分手段21により加算信号に基づいて積分処理を行いその低周波成分を強調するとともに、利得調整手段22を通した負帰還により低周波利得を適度に抑制して第一の積分手段21からの積分信号が回路の動作範囲を超えることを防止する動作を行う。
【0034】
また、第二の減算手段23および第二の積分手段24で構成される積分回路は、帰還回路5からの帰還信号に対して利得調整手段22からの出力信号を差し引いて第二の差分信号を生成し、当該第二の信号を積分処理するものであり、第二の積分手段24において帰還信号に基づく積分処理により帰還信号に含まれる低周波成分を強調するとともに、第二の減算手段23にて利得調整手段22からの出力信号と帰還回路からの帰還信号との減算処理を実行することにより、低周波成分を減殺して第二の積分手段24からの積分信号が回路の動作範囲を超えることを防止する動作を行う。
【0035】
さらに、比較器25は、第一の積分手段21からの積分信号波形と第二の積分手段24からの積分信号波形との比較を行い、その結果を2値のパルス信号からなる補正信号Vcとして出力する回路である。
【0036】
次に、補正回路2内における各箇所の信号波形の状態について説明する。
【0037】
まず、電力スイッチ手段3にて歪が生じない場合について説明する。図3は、当該場合における定常状態の補正回路2内の各箇所の波形を示す図である。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値を取っている。但し、図3においては、第一の加算手段50へのアナログ音声信号は入力されない場合について示している。
【0038】
図3においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0039】
また、図3においては、補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34、および第二の積分手段24においてパルス波形34に基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32が示されている。
【0040】
さらに、図3においては、比較器25において積分波形31と積分波形32との差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33が示されている。具体的には、積分波形31が積分波形32より高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31が積分波形32より低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0041】
パルス波形30は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34の振幅は、ほぼ0からVpow/Kとなり、帰還回路5は、当該パルス波形34の振幅がパルス変調手段1から出力されるパルス波形30の振幅と等しく(Vpow/K=Vsig)なるように設定されている。
【0042】
パルス波形30および34が図3の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31および積分波形32は図3に示したように生成され、さらに、比較器25にて出力される補正信号Vcは、パルス波形33のようになる。ここで定常状態において、パルス波形34は、比較器25で出力されるパルス波形33に対して、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δを伴うこととなる。
【0043】
図3は、つまり、定常状態において補正回路2が正常に動作することにより、電力スイッチ手段3にて歪が生じない場合には、帰還信号efであるパルス波形34は、PWM信号eiであるパルス波形30に対して時間遅延δをもつ相似波形となり、両パルス波形30,34の低周波成分は等しく音声信号に歪が生じず正常に信号が伝送することを示しているのである。
【0044】
ところで実際には、帰還信号efには、主に電力スイッチ手段3に起因する波形の歪が含まれる。この歪は帰還信号efの波形を変形させるため、帰還信号efの低周波成分はPWM信号eiの低周波成分に対して差異が生じることとなる。
【0045】
そこで、以下では、電力スイッチ手段3にて図4〜5に示す2パターンの態様の波形の歪が生じた場合に、本実施の形態のD級増幅器の補正回路2が正常に補正動作を行うことにより、定常状態で当該補正回路2内の各箇所における波形がどのように変化するかについて説明する。ここで、図4〜5において、縦軸は電圧値であり、横軸は時間を取っている。
【0046】
図4は、電力スイッチ電源電圧変動により、電力スイッチ手段3より出力されるパルスのパルス振幅が、電力スイッチ手段3にて電源から供給される標準電圧値Vpowよりも、ΔV1だけ増大する場合を示すものである(以下、第一の歪態様と称する)。
【0047】
ここで、図4(a)は、比較器25から出力される歪が生じる前の補正信号Vcのパルス波形を示しており、図4(b)は、図4(a)で示した補正信号Vcが電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第一の歪態様が発生し、その後の電力スイッチ手段3から出力出力信号のパルス波形を示している。
【0048】
さらに、図5は、電力スイッチ電源電圧変動により、電力スイッチ手段3より出力されるパルスのパルス振幅が、電力スイッチ手段3にて電源から供給される標準電圧値Vpowよりも、ΔV2だけ減少する場合を示すものである(以下、第二の歪態様と称する)。
【0049】
ここで、図5(a)は、比較器25から出力される歪が生じる前の補正信号Vcのパルス波形を示しており、図5(b)は、図5(a)で示した補正信号Vcが電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第二の歪態様が発生し、その後の電力スイッチ手段3から出力出力信号のパルス波形を示している。
【0050】
図4〜5を通してδは、電力スイッチ手段3にて生じる時間遅延を示している。
【0051】
上記2パターンの歪態様において、第一の歪態様では、低周波成分において信号レベルの増大という歪を発生していることとなり、第二の歪態様では、低周波成分において信号レベルの減少という歪を発生していることとなる。
【0052】
以下、上記の歪態様が生じた場合に、定常状態で当該補正回路2内の各箇所における波形がどのように変化するかについて説明する。
【0053】
まずはじめに、第一の歪態様の場合について説明する。図6は第一の歪態様の場合において補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0054】
図6においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0055】
また、図6においては、電力スイッチ手段3において第一の歪態様が発生し、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34a、および第二の積分手段24においてパルス波形34aに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32aが示されている。
【0056】
さらに、図6においては、比較器25において積分波形31と積分波形32aとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33aが示されている。具体的には、積分波形31が積分波形32aより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31が積分波形32aより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0057】
パルス波形30は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、第一の歪態様では、電源から供給される標準標準電圧値Vpowに対して+ΔV1の振幅の歪が生じる場合であるので、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34aの振幅は、ほぼ0から(Vpow+ΔV1)/Kとなり、当該パルス波形34aの振幅は、パルス変調手段1から出力されるパルス波形30の振幅と等しくならず、パルス波形34aの振幅の方がパルス波形30の振幅よりも、ΔV1/Kだけ大きくなる。
【0058】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形34aのパルス面積は、一周期分のパルス波形30のパルス面積と等しくなる。
【0059】
さて、パルス波形30,34aが図6の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31および積分波形32aは図6に示したように形成される。
【0060】
ここで、電力スイッチ手段3における第一の歪態様(図4)により、積分波形32aの平均値は、図3で示した歪がない場合に形成される積分波形32の平均値よりも増加する。これにより、積分波形31が積分波形32aを上回る期間が図3で示した歪のない場合と比べて減少する。
【0061】
従って、積分波形31および積分波形32aの差に基づいて比較器25にて出力される補正信号Vcはパルス波形33aのようになる。
【0062】
ここで、図6で示しているように、比較器25の通常の動作により、パルス波形33aのパルス幅は、パルス波形30のパルス幅よりも第一の歪態様の歪(ΔV1の振幅増大)に対応した分だけ狭くなる(つまり、パルス波形33aの”H”となる期間が図3に示した歪が生じない場合に比べて減少する)ように、生成される。
【0063】
これにより、図6に示すパルス幅のパルス波形33aが帰還され、再び電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第一の歪態様が発生し、パルス幅はそのままで振幅が正常値よりもΔV1だけ増加したとしても、パルス波形34aの一周期分のパルス面積は、パルス波形30の一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形33aとパルス波形34aとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図6により示されている。
【0064】
このように、電力スイッチ手段3において第一の態様の歪が生じる場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器25から出力されるパルス波形33aのパルス幅を上記のように、第一の態様の歪(つまりΔV1分の振幅の増大)に対応してパルス波形30のパルス幅よりも狭くすることにより、電力スイッチ手段3において発生する第一の歪態様の歪を補正して、定常状態では、パルス波形34aの一周期分のパルス面積をパルス波形30の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分とPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、両信号間における誤差がないこと、つまり、音声信号の歪を補正していることを示している。
【0065】
なおこの場合、積分波形32aの振幅が大きくなることも比較器25から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0066】
次に、第二の歪態様の場合について説明する。図7は第二の歪態様の場合において補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0067】
図7においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0068】
また、図7においては、電力スイッチ手段3において第一の歪態様が発生し、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34b、および第二の積分手段24においてパルス波形34bに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32bが示されている。
【0069】
さらに、図7においては、比較器25において積分波形31と積分波形32bとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33bが示されている。具体的には、積分波形31が積分波形32bより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31が積分波形32bより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0070】
パルス波形30は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、第二の歪態様では、電源から供給される標準標準電圧値Vpowに対して−ΔV2の振幅の歪が生じる場合であるので、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34bの振幅は、ほぼ0から(Vpow−ΔV2)/Kとなり、当該パルス波形34bの振幅は、パルス変調手段1から出力されるパルス波形30の振幅と等しくならず、パルス波形34bの振幅の方がパルス波形30の振幅よりも、ΔV2/Kだけ小さくなる。
【0071】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形34bのパルス面積は、一周期分のパルス波形30のパルス面積と等しくなる。
【0072】
さて、パルス波形30,34bが図7の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31および積分波形32bは図7に示したように形成される。
【0073】
ここで、電力スイッチ手段3における第二の歪態様(図5)により、積分波形32bの平均値は、図3で示した歪がない場合に形成される積分波形32の平均値よりも減少する。これにより、積分波形31が積分波形32bを上回る期間が図3で示した歪のない場合と比べて増大する。
【0074】
従って、積分波形31および積分波形32bの差に基づいて比較器25にて出力される補正信号Vcはパルス波形33bのようになる。
【0075】
ここで、図7で示しているように、比較器25の通常の動作により、パルス波形33bのパルス幅は、パルス波形30のパルス幅よりも第二の歪態様の歪(ΔV2の振幅減少)に対応した分だけ広くなる(つまり、パルス波形33bの”H”となる期間が図3に示した歪が生じない場合に比べて増加する)ように、生成される。
【0076】
これにより、図7に示すパルス幅のパルス波形33bが帰還され、再び電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第二の歪態様が発生し、パルス幅はそのままで振幅が正常値よりもΔV2だけ減少したとしても、パルス波形34dの一周期分のパルス面積は、パルス波形30の一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形33bとパルス波形34bとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図7により示されている。
【0077】
このように、電力スイッチ手段3において第二の態様の歪が生じる場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器25から出力されるパルス波形33bのパルス幅を上記のように、第二の態様の歪(つまりΔV2分の振幅の減少)に対応してパルス波形30のパルス幅よりも広くすることにより、電力スイッチ手段3において発生する第二の歪態様の歪を補正して、定常状態では、パルス波形34bの一周期分のパルス面積をパルス波形30の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分とPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、両信号間における誤差がないこと、つまり、音声信号の歪を補正していることを示している。
【0078】
なおこの場合、積分波形32bの振幅が小さくなることも比較器25から出力される補正信号Vcのパルス幅を拡げることに効果がある。
【0079】
以上が、本実施の形態における補正回路2がPWM信号eiを帰還に基づく補正を加えながら出力に伝達する動作を説明したものである。
【0080】
以上においては、パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiがほぼ無変調である場合について説明したが、変調がかけられる場合についても同様の補正が行われることは、以上の説明から容易に類推できる。
【0081】
また以上においては、パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiに対して、第一の加算手段50におけるアナログ音声信号の加算がなされない場合について説明したが、アナログ音声信号が加算される場合についても、同様に補正が行われる。この動作について、図8〜9を用いて以下で説明する。
【0082】
一般的に、アナログ音声信号は、周波数が20kHz程度以下の正弦波で表される。これに対して、パルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30の周波数は、700kHz程度である。従って、アナログ信号の波形は、近似的に、正または負の定数を表す直線になると考えられる(以下では、この定数をΔV3とし説明する。)。
【0083】
図8は、レベルが基準レベルに対して正であるアナログ音声信号が第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算されている場合に、補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0084】
また、図8においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31cが示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0085】
また、図8においては、レベルが基準レベルに対して正であるアナログ音声信号が第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算されている場合に、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34c、および第二の積分手段24においてパルス波形34cに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32cが示されている。
【0086】
さらに、図8においては、比較器25において積分波形31cと積分波形32cとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33cが示されている。具体的には、積分波形31が積分波形32cより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31cが積分波形32cより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0087】
さらに、図8においては、PWM信号eiとアナログ音声信号との加算信号であるパルス波形35cが示されている。
【0088】
パルス波形30cは、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34cの振幅は、ほぼ0からVpow/Kとなり、帰還回路5は、当該パルス波形34cの振幅がパルス変調手段1から出力されるパルス波形30cの振幅と等しく(Vpow/K=Vsig)なるように設定されている。
【0089】
従って、パルス波形35cは、ほぼΔV3からVsig+ΔV3までの振幅を持つことになる。
【0090】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形34cのパルス面積は、一周期分のパルス波形35cのパルス面積と等しくなる。
【0091】
さて、パルス波形30c,34c,35cが図8の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31cおよび積分波形32cは図8に示したように形成される。
【0092】
ここで、第一の加算手段50における+ΔV3のアナログ音声信号の加算により、積分波形31cの平均値は、図3で示したアナログ音声信号の加算がない場合に形成される積分波形31の平均値よりも増加する。これにより、積分波形31cが積分波形32cを上回る期間が図3で示したアナログ音声信号の加算のない場合と比べて増加する。
【0093】
この積分波形31cの増加分は、利得調整手段22を通して第一の減算器20に与えられることで、アナログ音声信号の加算による低周波成分レベルの上昇を打ち消すことになる。こうして、第一の積分器21の低周波成分への利得が十分大きければ、第一の減算器20の出力において、低周波成分レベルはほぼ完全に打ち消される。言い換えれば第一の減算器20の二つの入力における低周波成分のレベルが、ほぼ等しくなることとなる。
【0094】
よって、もしパルス変調手段1から出力されるPWM信号が無変調のデューティー50%の矩形波であった場合、利得調整回路22の出力信号の低周波成分のレベルは、アナログ音声信号のレベルにほぼ等しくなる。
【0095】
この利得調整回路22の出力信号は、第二の減算器23にて、帰還信号から差し引かれることとなるから、第二の積分器24の出力レベルは減少に向かう。このため、積分波形31cが積分波形32cを上回る期間、即ち比較器25の出力が”H”となる期間が長くなる。
【0096】
従って、積分波形31cおよび積分波形32cの差に基づいて比較器25にて出力される補正信号Vcはパルス波形33cのようになる。
【0097】
ここで、図8で示しているように、比較器25の通常の動作により、パルス波形33cのパルス幅は、パルス波形30のパルス幅よりもアナログ音声信号の加算(ΔV3の振幅増加)に対応した分だけ広くなる(つまり、パルス波形33cの”H”となる期間が図3に示したアナログ音声信号の加算がない場合に比べて増加する)ように、生成される。
【0098】
これにより、図8に示すパルス幅のパルス波形33cが帰還され、パルス波形34cの一周期分のパルス面積は、パルス波形35cの一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形33cとパルス波形34cとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図8により示されている。
【0099】
このように、アナログ音声信号が加算される場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器25から出力されるパルス波形33cのパルス幅を上記のように、アナログ音声信号の加算(ΔV3の振幅増大)に対応してパルス波形30のパルス幅よりも広くすることにより、定常状態では、パルス波形34cの一周期分のパルス面積をパルス波形35cの一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分と、アナログ音声信号を加算した後のPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、アナログ音声信号のPWM変調を行っていることを示している。
【0100】
従って、この補償PWM信号(補正信号)を、電力スイッチ手段3および低域フィルタを通してスピーカ7に出力することにより、アナログ音声信号が再生されることとなる。
【0101】
なおこの場合、積分波形32cの振幅が小さくなることも比較器25から出力される補正信号Vcのパルス幅を拡げることに効果がある。
【0102】
次に、PWM信号eiに加算されるアナログ音声信号が負である場合について説明する。
【0103】
図9は、レベルが基準レベルに対して負であるアナログ音声信号が第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算されている場合に、補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0104】
また、図9においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形30、および第一の積分手段21においてパルス波形30に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形31dが示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0105】
また、図9においては、レベルが基準レベルに対して負であるアナログ音声信号が第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算されている場合に、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形34d、および第二の積分手段24においてパルス波形34dに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形32dが示されている。
【0106】
さらに、図9においては、比較器25において積分波形31dと積分波形32dとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33dが示されている。具体的には、積分波形31dが積分波形32dより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、積分波形31dが積分波形32dより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0107】
さらに、図9においては、PWM信号eiとアナログ音声信号との加算信号であるパルス波形35dが示されている。
【0108】
パルス波形30は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形34dの振幅は、ほぼ0からVpow/Kとなり、帰還回路5は、当該パルス波形34dの振幅がパルス変調手段1から出力されるパルス波形30の振幅と等しく(Vpow/K=Vsig)なるように設定されている。
【0109】
従って、パルス波形35dは、ほぼ−ΔV3からVsig−ΔV3までの振幅を持つことになる。
【0110】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形34dのパルス面積は、一周期分のパルス波形35dのパルス面積と等しくなる。
【0111】
さて、パルス波形30,34d,35dが図9の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形31dおよび積分波形32dは図9に示したように形成される。
【0112】
ここで、第一の加算手段50における−ΔV3のアナログ音声信号の加算により、積分波形31dの平均値は、図3で示したアナログ音声信号の加算がない場合に形成される積分波形31の平均値よりも減少する。これにより、積分波形31dが積分波形32dを上回る期間が図3で示したアナログ音声信号の加算のない場合と比べて減少する。
【0113】
この積分波形31dの減少分は、利得調整手段22を通して第一の減算器20に与えられることで、アナログ音声信号の加算による低周波成分レベルの下降を打ち消すことになる。こうして、第一の積分器21の低周波成分への利得が十分大きければ、第一の減算器20の出力において、低周波成分レベルはほぼ完全に打ち消される。言い換えれば第一の減算器20の二つの入力における低周波成分のレベルが、ほぼ等しくなることとなる。
【0114】
よって、もしパルス変調手段1から出力されるPWM信号が無変調のデューティー50%の矩形波であった場合、利得調整回路22の出力信号の低周波成分のレベルは、アナログ音声信号のレベルにほぼ等しくなる。
【0115】
この利得調整回路22の出力信号は、第二の減算器23にて、帰還信号から差し引かれることとなるから、第二の積分器24の出力レベルは減少に向かう。このため、積分波形31dが積分波形32dを上回る期間、即ち比較器25の出力が”H”となる期間が短くなる。
【0116】
従って、積分波形31dおよび積分波形32dの差に基づいて比較器25にて出力される補正信号Vcはパルス波形33dのようになる。
【0117】
ここで、図9で示しているように、比較器25の通常の動作により、パルス波形33dのパルス幅は、パルス波形30のパルス幅よりもアナログ音声信号の加算(−ΔV3の振幅減少)に対応した分だけ広くなる(つまり、パルス波形33dの”H”となる期間が図3に示したアナログ音声信号の加算がない場合に比べて減少する)ように、生成される。
【0118】
これにより、図9に示すパルス幅のパルス波形33dが帰還され、パルス波形34dの一周期分のパルス面積は、パルス波形35dの一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形33dとパルス波形34dとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図9により示されている。
【0119】
このように、アナログ音声信号が加算される場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器25から出力されるパルス波形33dのパルス幅を上記のように、アナログ音声信号の加算(ΔV3の振幅減少)に対応してパルス波形30のパルス幅よりも狭くすることにより、定常状態では、パルス波形34dの一周期分のパルス面積をパルス波形35dの一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分と、アナログ音声信号を加算した後のPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、アナログ音声信号のPWM変調を行っていることを示している。
【0120】
従って、この補償PWM信号(補正信号)を、電力スイッチ手段3および低域フィルタを通してスピーカ7に出力することにより、アナログ音声信号が再生されることとなる。
【0121】
なおこの場合、積分波形32dの振幅が大きくなることも比較器25から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0122】
以上、説明したように、本実施の形態に係るD級増幅器は、簡易な回路構成でありながら、電源変動などの外乱の影響を排除し精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも再生し出力することができるという効果を有する。従って、デジタル音声信号およびアナログ音声信号の両方を取り扱う装置を経済的に提供することが可能となる。
【0123】
<実施の形態2>
本実施の形態の補正回路は、実施の形態1で説明した図1のD級増幅器に組み込まれるものであり、当該補正回路では、第一の積分手段からの信号と第二の積分手段からの信号とを、直接比較器にて比較するのではなく、減算手段にて、第一の積分手段からの信号と第二の積分手段からの信号との差を求めた後、減算手段出力信号(差分信号)と、当該差分信号をさらに第三の積分手段により積分し、その後反転手段により反転させた信号との間での比較を、比較器にて行うことで出力の補正信号を生成する。
【0124】
本実施の形態における、補正回路2の内部の構成を示すブロック図を図10に示す。以下、図10の構成を具体的に説明する。なお、図10において、図2と同様の要素については同一の符号を付してしてあるので、それらのここでの詳細な説明は省略する。
【0125】
図10において、第一の積分手段21の出力部は、接続点N2を介して、第三の第三の減算手段26の「+」入力部に接続されており、第二の積分手段24の出力部は、当該第三の減算手段26の「−」入力部に接続されている。さらに、第三の減算手段26の出力部は、接続点N11で分岐して、一方は比較器29の「+」入力部に接続されており、他方は、第三の積分手段27、反転手段28を介して比較器29の「−」入力部に接続される。
【0126】
なお、比較器29の出力部は、実施の形態1と同様、電力スイッチ手段3の入力部に接続されている。
【0127】
図10で示したように本実施の形態では、第一の積分手段21から出力される積分波形を、第二の積分手段24から出力される積分波形とを直接比較するのではなく、第三の減算手段26において当該両積分波形の差を求めた後、比較器29において、第三の減算手段26からの出力信号(差分信号)と、当該差分信号をさらに第三の積分手段27、反転手段28により積分・反転した信号との間の比較を行うことで、当該比較器29において補正信号Vcを形成する。
【0128】
ここで、第三の減算手段26からの差分信号には、(アナログ音声信号を加算された)PWM信号eiの低周波成分および帰還信号efの低周波成分の差を含んでおり、当該低周波成分の差が帰還信号efに含まれる誤差、つまり音声信号出力の歪を表しており、当該歪を比較器29において補正される。
【0129】
当該補正動作は、例えば比較器29の「−」入力部に固定の基準電位(Vsig/2)を接続すると、実施の形態1と同じ補正動作をすると考えられることからも明らかである。
【0130】
ところが本実施の形態では、比較器29の「−」入力部に固定の基準電位(Vsig/2)が接続されているのではなく、第三の減算手段26からの差分信号を積分、反転させる、Vsig/2を基準として動作する第三の積分手段27と反転手段28とが接続されているので、上記の補正効果に加えて以下に示す効果をさらに有することになる。
【0131】
つまり、第三の積分手段27において、第三の減算手段26からの差分信号に含まれる、PWM信号eiの低周波成分および帰還信号efの低周波成分の差(音声信号出力の歪)をさらに蓄積・強調し、その後反転手段28により反転処理を施すことにより、比較器29において当該強調された音声信号出力の歪みが第三の減算手段26から出力される差分信号に加えられることとなるので、より音声信号出力の歪を強調した形で比較器29にて当該歪に対応した補正信号Vcを生成することができ、実施の形態1に記載の補正回路よりもさらに高い補正効果を得ることができる。
【0132】
次に、補正回路2内における各箇所の信号波形の状態について説明する。
【0133】
まず、電力スイッチ手段3にて歪が生じない場合について説明する。図11は、当該場合における定常状態の補正回路2内の各箇所の波形を示す図である。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値を取っている。但し、図11においては、第一の加算手段50へのアナログ音声信号は入力されない場合について示している。
【0134】
図11においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形40、および第一の積分手段21においてパルス波形40に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形41が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0135】
また、図11においては、補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形44、および第二の積分手段24においてパルス波形44に基づいて生成される積分信号eo2の積分波形42が示されている。
【0136】
また、図11においては、第三の減算手段26において積分波形41から積分波形42を減算することにより生成される波形45、および第三の積分手段27、反転手段28において波形45を積分・反転することにより生成される積分波形46が示されている。
【0137】
さらに、図11においては、比較器29において波形45と積分波形46との差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形33が示されている。具体的には、波形45が積分波形46より高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、波形45が積分波形46より低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0138】
パルス波形40は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形44の振幅は、ほぼ0からVpow/Kとなり、帰還回路5は、当該パルス波形44の振幅がパルス変調手段1から出力されるパルス波形40の振幅と等しく(Vpow/K=Vsig)なるように設定されている。
【0139】
パルス波形40および44が図11の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形41および積分波形42は図11に示したように生成される。また、第三の減算手段26および第三の積分手段27においても、ほぼVsig/2を基準に動作するものとすると、波形45,46のように生成される。
【0140】
従って、比較器29にて出力される補正信号Vcは、パルス波形43のようになる。ここで定常状態において、パルス波形44は、比較器29で出力されるパルス波形43に対して、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δを伴うこととなる。
【0141】
図11は、つまり、定常状態において補正回路2が正常に動作することにより、電力スイッチ手段3にて歪が生じない場合には、帰還信号efであるパルス波形44は、PWM信号eiであるパルス波形40に対して時間遅延δをもつ相似波形となり、両パルス波形40,44の低周波成分は等しく音声信号に歪が生じず正常に信号が伝送することを示しているのである。
【0142】
ところで実際には、帰還信号efには、主に電力スイッチ手段3に起因する波形の歪が含まれる。この歪は帰還信号efの波形を変形させるため、帰還信号efの低周波成分はPWM信号eiの低周波成分に対して差異が生じることとなる。
【0143】
電力スイッチ手段5にて生じる歪の態様として図4〜5で示した2パターンの態様を用いて、当該態様の歪が生じた場合に、本実施の形態のD級増幅器の補正回路2が正常に補正動作を行うことを説明する。
【0144】
以下、上記の歪態様が生じた場合に、定常状態で当該補正回路2内の各箇所における波形がどのように変化するかについて説明する。
【0145】
まずはじめに、第一の歪態様の場合について説明する。図12は第一の歪態様の場合において補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0146】
図12においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形40、および第一の積分手段21においてパルス波形40に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形41が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0147】
また、図12においては、電力スイッチ手段3において第一の歪態様が発生し、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形44a、および第二の積分手段24においてパルス波形44aに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形42aが示されている。
【0148】
また、図12においては、第三の減算手段26において積分波形41から積分波形42aを減算することにより生成される波形45a、および第三の積分手段27、反転手段28において波形45aを積分・反転することにより生成される積分波形46aが示されている。
【0149】
さらに、図12においては、比較器29において波形45aと積分波形46aとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形43aが示されている。具体的には、波形45aが積分波形46aより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、波形45aが積分波形46aより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0150】
パルス波形40は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、第一の歪態様では、電源から供給される標準標準電圧値Vpowに対して+ΔV1の振幅の歪が生じる場合であるので、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形44aの振幅は、ほぼ0から(Vpow+ΔV1)/Kとなり、当該パルス波形44aの振幅は、パルス変調手段1から出力されるパルス波形40の振幅と等しくならず、パルス波形44aの振幅の方がパルス波形40の振幅よりも、ΔV1/Kだけ大きくなる。
【0151】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形44aのパルス面積は、一周期分のパルス波形40のパルス面積と等しくなる。
【0152】
さて、パルス波形40,44aが図12の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形41および積分波形42aは図12に示したように形成される。
【0153】
ここで、電力スイッチ手段3における第一の歪態様(図4)により、積分波形42aの平均値は、図11で示した歪がない場合に形成される積分波形42の平均値よりも増加する。
【0154】
これにより、積分波形41および積分波形42aの差により第三の減算手段26にて生成される波形45aが、基準レベルであるVsig/2を上回る期間が減少する。これに対して、波形45aに基づいて第三の積分手段27および反転手段28により生成される積分波形46aは、平均的に基準レベルであるVsig/2を上回ることとなる。
【0155】
従って、波形45aおよび積分波形46aの差に基づいて比較器29にて出力される補正信号Vcはパルス波形43aのようになる。ここで、本実施の形態においては、補正信号Vcは、強調された音声信号出力の歪を補正することができる信号となっている。
【0156】
ここで、図12で示しているように、比較器29の通常の動作により、パルス波形43aのパルス幅は、パルス波形40のパルス幅よりも第一の歪態様の歪(ΔV1の振幅増大)に対応した分だけ狭くなる(つまり、パルス波形43aの”H”となる期間が図11に示した歪が生じない場合に比べて減少する)ように、生成される。
【0157】
これにより、図12に示すパルス幅のパルス波形43aが帰還され、再び電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第一の歪態様が発生し、パルス幅はそのままで振幅が正常値よりもΔV1だけ増加したとしても、パルス波形44aの一周期分のパルス面積は、パルス波形40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形43aとパルス波形44aとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図12により示されている。
【0158】
このように、電力スイッチ手段3において第一の態様の歪が生じる場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器29から出力されるパルス波形43aのパルス幅を上記のように、第一の態様の歪(つまりΔV1分の振幅の増大)に対応してパルス波形40のパルス幅よりも狭くすることにより、電力スイッチ手段3において発生する第一の歪態様の歪を補正して、定常状態では、パルス波形44aの一周期分のパルス面積をパルス波形40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分とPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、両信号間における誤差がないこと、つまり、音声信号の歪を補正していることを示している。
【0159】
なおこの場合、積分波形42aの振幅が大きくなり、波形45aの上辺の傾きが負となることも比較器29から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0160】
次に、第二の歪態様の場合について説明する。図13は第二の歪態様の場合において補正が行われ定常状態となった補正回路2内の各箇所の波形の状態を示している。ここで、横軸は時間であり、縦軸は電圧値である。
【0161】
図13においては、補正回路2に入力されるパルス変調回路1からのPWM信号eiのパルス波形40、および第一の積分手段21においてパルス波形40に基づいて生成される積分信号eo1の積分波形41が示されている。ここでは、簡単のため、PWM信号eiがほぼ無変調である場合について示してある。
【0162】
また、図13においては、電力スイッチ手段3において第一の歪態様が発生し、本実施の形態のD級増幅器により補正され、定常状態となったときの補正回路2に入力される帰還回路5からの帰還信号efのパルス波形44b、および第二の積分手段24においてパルス波形44bに基づいて生成される積分信号eo2の積分波形42bが示されている。
【0163】
また、図13においては、第三の減算手段26において積分波形41から積分波形42bを減算することにより生成される波形45b、および第三の積分手段27、反転手段28において波形45bを積分・反転することにより生成される積分波形46bが示されている。
【0164】
さらに、図13においては、比較器29において波形45bと積分波形46bとの差により”H”、”L”(または「0」、「1」)の2値のパルスとして生成される補正信号Vcのパルス波形43bが示されている。具体的には、波形45bが積分波形46bより高いときは、”H”(または「1」)のパルスを発生し、波形45bが積分波形46bより低いときには”L”(または「0」)のパルスを発生する。
【0165】
パルス波形40は、ほぼ0からVsigまでの振幅を持つものとする。また、第二の歪態様では、電源から供給される標準標準電圧値Vpowに対して−ΔV2の振幅の歪が生じる場合であるので、電力スイッチ手段3にて電源から供給される電圧をVpowとし、帰還回路5における固定された減衰利得を1/Kとすると、帰還回路5から出力されるパルス波形44bの振幅は、ほぼ0から(Vpow−ΔV2)/Kとなり、当該パルス波形44bの振幅は、パルス変調手段1から出力されるパルス波形40の振幅と等しくならず、パルス波形44bの振幅の方がパルス波形40の振幅よりも、ΔV2/Kだけ小さくなる。
【0166】
ここで補正回路2の補正動作が正常に実行されると、定常状態において、一周期分のパルス波形44bのパルス面積は、一周期分のパルス波形40のパルス面積と等しくなる。
【0167】
さて、パルス波形40,44bが図13の状態であり、また、第一の積分手段21および第二の積分手段24が、利得調整手段22等の作用によりほぼVsig/2を基準に動作する場合には、積分波形41および積分波形42bは図13に示したように形成される。
【0168】
ここで、電力スイッチ手段3における第二の歪態様(図5)により、積分波形42bの平均値は、図11で示した歪がない場合に形成される積分波形42の平均値よりも減少する。
【0169】
これにより、積分波形41および積分波形42bの差により第三の減算手段26にて生成される波形45bが、基準レベルであるVsig/2を上回る期間が増加する。これに対して、波形45bに基づいて第三の積分手段27および反転手段28により生成される積分波形46bは、平均的に基準レベルであるVsig/2を上回ることとなる。
【0170】
従って、波形45bおよび積分波形46bの差に基づいて比較器29にて出力される補正信号Vcはパルス波形43bのようになる。ここで、本実施の形態においては、補正信号Vcは、強調された音声信号出力の歪を補正することができる信号となっている。
【0171】
ここで、図13で示しているように、比較器29の通常の動作により、パルス波形43bのパルス幅は、パルス波形40のパルス幅よりも第二の歪態様の歪(ΔV2の振幅減少)に対応した分だけ狭くなる(つまり、パルス波形43bの”H”となる期間が図11に示した歪が生じない場合に比べて増加する)ように、生成される。
【0172】
これにより、図13に示すパルス幅のパルス波形43bが帰還され、再び電力スイッチ手段3に入力され、当該電力スイッチ手段3にて第二の歪態様が発生し、パルス幅はそのままで振幅が正常値よりもΔV2だけ減少したとしても、パルス波形44bの一周期分のパルス面積は、パルス波形40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくなる。ここで、パルス波形43bとパルス波形44bとは、主に電力スイッチ手段3にて発生する時間遅延δが生じていることも図13により示されている。
【0173】
このように、電力スイッチ手段3において第二の態様の歪が生じる場合には、本実施の形態のD級増幅器により、比較器29から出力されるパルス波形43bのパルス幅を上記のように、第二の態様の歪(つまりΔV2分の振幅の減少)に対応してパルス波形40のパルス幅よりも広くすることにより、電力スイッチ手段3において発生する第二の歪態様の歪を補正して、定常状態では、パルス波形44bの一周期分のパルス面積をパルス波形40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分とPWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、両信号間における誤差がないこと、つまり、音声信号の歪を補正していることを示している。
【0174】
なおこの場合、積分波形42bの振幅が小さくなり、波形45bの上辺の傾きが正となることも比較器29から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0175】
以上が、本実施の形態における補正回路2がPWM信号eiを帰還に基づく補正を加えながら出力に伝達する動作を説明したものである。
【0176】
以上においては、パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiがほぼ無変調である場合について説明したが、変調がかけられる場合についても同様の補正が行われることは、以上の説明から容易に類推できる。
【0177】
また以上においては、パルス変調手段1から出力されるPWM信号eiに対して、第一の加算手段50におけるアナログ音声信号の加算がなされない場合について説明したが、実施の形態1と同様に、アナログ音声信号が加算される場合についても補正が行われる。例えば、+ΔV3の正のアナログ音声信号が加算される場合の動作について以下で説明する。
【0178】
即ち、実施の形態1と同様に、第一の加算手段50における+ΔV3のアナログ音声信号の加算により、積分波形41aの平均値は、図11で示したアナログ音声信号の加算がない場合に形成される積分波形41の平均値よりも増加する。これにより、積分波形41aが積分波形42aを上回る期間が図11で示したアナログ音声信号の加算のない場合と比べて増加する。比較器29から出力されるパルス波形43aのパルス幅を、アナログ音声信号の加算(つまりΔV3分の振幅の増加)に対応してパルス波形40のパルス幅よりも広くすることにより、定常状態では、パルス波形44aの一周期分のパルス面積をパルス40の一周期分のパルス面積とほぼ等しくする。このことは、帰還信号efの低周波成分と(アナログ音声信号を加算した後の)PWM信号eiの低周波成分とを、ほぼ等しくすることであり、アナログ音声信号のPWM変調を行っていることを示している。
【0179】
従って、この補償PWM信号(補正信号)を、電力スイッチ手段3および低域フィルタを通してスピーカ7に出力することにより、アナログ音声信号が再生されることとなる。
【0180】
なおこの場合、積分波形42aの振幅が小さくなり、波形45aの上辺の傾きが正となることも比較器29から出力される補正信号Vcのパルス幅を狭めることに効果がある。
【0181】
以上では、+ΔV3の正のアナログ音声信号が加算される場合の動作について説明したが、−ΔV3の負のアナログ音声信号が加算される場合についても、同様に、アナログ音声信号へのPWM変調が行われる。
【0182】
以上、説明したように、本実施の形態に係るD級増幅器は、実施の形態1の効果に加えて、更に帰還の効果を高めることによりアナログ音声に対してもより忠実な増幅を行うことができるという効果を有する。
【0183】
図14は、図10に示される補正回路2を含むD級増幅器において、PWM信号を無変調とし、アナログ音声信号に周波数の異なる正弦波信号数種を与え、その振幅を変化した場合の増幅器出力の歪み率を計測した結果である。ここで、横軸は出力電力であり、縦軸は歪み率を取っている。
【0184】
図14において、◆印、□印、●印、×印は、アナログ音声信号である正弦波信号の周波数がそれぞれ400Hz、1kHz、5kHz、10kHzである場合に対応している。また、電源電圧値Vccは13.2V、PWM信号の周波数fswは705.6kHzであった。
【0185】
この結果から、出力が10W程度までであれば、歪み率は0.2%程度と小さいことが分かる。従って、本発明により、アナログ音声信号に対しても忠実度の高いD級増幅器を構成し得ることが明らかである。
【0186】
<実施の形態3>
本実施の形態の補正回路は、実施の形態1で説明した図1のD級増幅器に組み込まれるものであり、当該補正回路では、アナログ音声信号を、PWM信号にではなく、帰還信号に加算する。
【0187】
本実施の形態における、補正回路2の内部の構成を示すブロック図を図15に示す。以下、図15の構成を具体的に説明する。また、以下では、図2に示される補正回路の構成との比較により説明を行う。なお、図15において、図2と同様の要素については同一の符号を付してしてあるので、それらのここでの詳細な説明は省略する。
【0188】
図15において、第一の減算手段20の「+」入力部には、第一の加算手段50が接続されるのではなく、パルス変調手段1が直接接続されPWM信号eiが入力される。また、第二の減算手段23の「+」入力部には、PWM信号eiが直接入力されるのではなく、第二の加算手段51が接続される。第二の加算手段51は、2つの入力部を有しており、一方に入力部には、帰還回路5の出力部が接続され、他方の入力部には、アナログ音声信号が入力される。第二の加算手段51は、これらの信号を加算することにより加算信号を生成し出力する。
【0189】
なお、比較器25の出力部は、実施の形態1,2と同様、電力スイッチ手段3の入力部に接続されている。
【0190】
図15で示したように本実施の形態では、アナログ音声信号を、第一の加算手段50においてPWM信号eiに加算するのではなく、第二の加算手段51において帰還信号efに加算する。
【0191】
実施の形態1において前述したように、第一の積分器21の低周波成分への利得が十分大きければ、第一の減算器20の出力において、低周波成分レベルはほぼ完全に打ち消される。言い換えれば第一の減算器20の二つの入力における低周波成分のレベルが、ほぼ等しくなることとなる。即ち、利得調整回路22の出力信号の低周波数成分のレベルは、PWM信号入力eiの低周波数成分のレベルにほぼ等しくなる。同様に、第二の積分器24の低周波成分への利得が十分大きければ、第二の減算器23の「+」入力部への入力信号の低周波数成分のレベルは、利得調整回路22の出力信号の低周波数成分のレベルにほぼ等しくなる。
【0192】
よって、もしパルス変調手段1から出力されるPWM信号が無変調のデューティー50%の矩形波であった場合、利得調整回路22の出力信号の低周波成分のレベルは、ほぼ基準レベル(Vsig/2)で一定となる。このため、第二の減算器23の「+」入力部への入力信号の低周波数成分のレベルも、帰還の作用を通して基準レベル(Vsig/2)で一定になるように調整されることとなる。
【0193】
このとき、第二の加算手段51により帰還信号ef入力にアナログ音声信号が加算されると、この帰還の作用は、第二の加算手段51からの出力信号を基準レベル(Vsig/2)で一定になるように働き、帰還信号の低周波数成分をアナログ音声信号入力と等しくなるようにする。これは即ち、アナログ音声信号入力を増幅して出力する動作となる。
【0194】
以上、説明したように、本実施の形態に係るD級増幅器は、実施の形態1と同様に、簡易な回路構成でありながら、電源変動などの外乱の影響を排除し精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも再生し出力することができるという効果を有する。従って、デジタル音声信号およびアナログ音声信号の両方を取り扱う装置を経済的に提供することが可能となる。
【0195】
なお、以上の説明においては、実施の形態1に係る図2の補正回路において、アナログ音声信号をPWM信号eiにではなく帰還信号efに加算させた例について説明した。しかし、実施の形態1に係る図2の補正回路に限らず、実施の形態2に係る図10の補正回路において、アナログ音声信号をPWM信号eiにではなく帰還信号efに加算させてもよい。これにより、実施の形態2と同様に、更に帰還の効果を高めることによりアナログ音声に対してもより忠実な増幅を行うことができる。
【0196】
また、以上の説明においては、アナログ音声信号を増幅する場合の動作を、便宜上、PWM信号eiを無変調のデューティー50%の矩形波として説明した。しかし、PWM信号eiにデジタル音声信号による変調がかけられていた場合にも、総合の変調度が100%を越えることがなければ、アナログおよびデジタル音声信号を加算して増幅することが可能である。
【0197】
また、以上の説明においては、出力段の構成をシングルエンドとしてきたが、本発明は互いに180度位相の異なる音声信号を出力する2つの出力段を備える、いわゆるBTL(Balanced Transformer−Less)構成にも適用することができる。すなわち、BTL構成の各出力段に対し本発明の補正回路を追加適用することにより、上記で説明した歪み改善効果を得ることができる。
【0198】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1に記載の発明に係るD級増幅器は、パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、前記補正回路は、外部から入力されるアナログ信号を前記パルス変調信号に加算するための加算手段を備えることを特徴とするので、簡易な回路構成でありながら、電源変動などの外乱の影響を排除し精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも再生し出力することができるという効果を有する。従って、デジタル音声信号およびアナログ音声信号の両方を取り扱う装置を経済的に提供することが可能となる。
【0199】
また、請求項4に記載の発明に係るD級増幅器は、パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、前記補正回路は、外部から入力されるアナログ信号を前記帰還信号に加算するための加算手段を備えることを特徴とするので、請求項1に記載の発明に係るD級増幅器と同様に、簡易な回路構成でありながら、電源変動などの外乱の影響を排除し精度良く音声信号の歪を低減することができ、且つ、デジタル音声信号だけではなくアナログ音声信号をも再生し出力することができるという効果を有する。従って、デジタル音声信号およびアナログ音声信号の両方を取り扱う装置を経済的に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のD級増幅器の回路構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における補正回路の構成を示すブロック図である。
【図3】歪とアナログ音声信号入力がない場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図4】第一の歪態様を示す図である。
【図5】第二の歪態様を示す図である。
【図6】第一の歪態様が生じた場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図7】第二の歪態様が生じた場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図8】正のアナログ音声信号を入力した場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図9】負のアナログ音声信号を入力した場合の実施の形態1における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図10】実施の形態2における補正回路の構成を示すブロック図である。
【図11】歪とアナログ音声信号入力がない場合の実施の形態2における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図12】第一の歪態様が生じた場合の実施の形態2における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図13】第二の歪態様が生じた場合の実施の形態2における補正回路の各箇所の波形の定常状態を示す図である。
【図14】本発明の補正回路の補正効果を示す測定データ図である。
【図15】実施の形態3における補正回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 パルス変調手段、2 補正回路、3 電力スイッチ手段、4 低域フィルタ(LPF)、5 帰還回路、7 スピーカ、20 第一の減算手段、21 第一の積分手段、22 利得調整手段、23 第二の減算手段、24 第二の積分手段、25,29 比較器、26 第三の減算手段、27 第三の積分手段、28 反転手段、50 第一の加算手段、51 第二の加算手段、101 デルタシグマ変調器、102 PWM変換器。
Claims (6)
- パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、
前記補正回路は、
外部から入力されるアナログ信号を前記パルス変調信号に加算するための第一の加算手段
を備えることを特徴とするD級増幅器。 - 前記補正回路は、
前記第一の加算手段からの加算信号に基づいて積分処理をする第一の積分手段と、
前記帰還信号に基づいて積分処理をする第二の積分手段と、
前記第一の積分手段からの第一の積分信号に対して利得の調整を行う利得調整手段と、
前記利得調整手段からの出力信号と前記加算信号との差を求めることにより第一の差分信号を生成し、当該第一の差分信号を前記第一の積分手段に出力する第一の減算手段と、
前記利得調整手段からの出力信号と前記帰還信号との差を求めることにより第二の差分信号を生成し、当該第二の差分信号を前記第二の積分手段に出力する第二の減算手段と、
前記第一の積分信号と前記第二の積分手段からの第二の積分信号とを比較し、当該比較に対応した前記補正信号を生成する比較器とを、
備えることを特徴とする請求項1に記載のD級増幅器。 - 前記補正回路は、
前記第一の加算手段からの加算信号に基づいて積分処理をする第一の積分手段と、
前記帰還信号に基づいて積分処理をする第二の積分手段と、
前記第一の積分手段からの第一の積分信号に対して利得の調整を行う利得調整手段と、
前記利得調整手段からの出力信号と前記加算信号との差を求めることにより第一の差分信号を生成し、当該第一の差分信号を前記第一の積分手段に出力する第一の減算手段と、
前記利得調整手段からの出力信号と前記帰還信号との差を求めることにより第二の差分信号を生成し、当該第二の差分信号を前記第二の積分手段に出力する第二の減算手段と、
前記第一の積分信号と前記第二の積分手段からの第二の積分信号との差を求める第三の減算手段と、
前記第三の減算手段から出力される第三の差分信号を積分処理する第三の積分手段と、
前記第三の積分手段からの第三の積分信号を反転させる反転手段と、
前記第三の差分信号と前記反転手段により反転させられた前記第三の積分信号とを比較し、当該比較に対応した前記補正信号を生成する比較器とを、
備えることを特徴とする請求項1に記載のD級増幅器。 - パルス変調信号を生成するパルス変調手段と、前記パルス変調信号を基準として帰還による帰還信号の補正を行う補正回路と、前記補正回路より出力される補正信号に基づいて電圧信号を生成する電力スイッチ手段とを有しており、前記帰還信号は前記電圧信号に基づく信号であるD級増幅器であって、
前記補正回路は、
外部から入力されるアナログ信号を前記帰還信号に加算するための第二の加算手段
を備えることを特徴とするD級増幅器。 - 前記補正回路は、
前記パルス変調信号に基づいて積分処理をする第一の積分手段と、
前記第二の加算手段からの加算信号に基づいて積分処理をする第二の積分手段と、
前記第一の積分手段からの第一の積分信号に対して利得の調整を行う利得調整手段と、
前記利得調整手段からの出力信号と前記パルス変調信号との差を求めることにより第一の差分信号を生成し、当該第一の差分信号を前記第一の積分手段に出力する第一の減算手段と、
前記利得調整手段からの出力信号と前記加算信号との差を求めることにより第二の差分信号を生成し、当該第二の差分信号を前記第二の積分手段に出力する第二の減算手段と、
前記第一の積分信号と前記第二の積分手段からの第二の積分信号とを比較し、当該比較に対応した前記補正信号を生成する比較器とを、
備えることを特徴とする請求項4に記載のD級増幅器。 - 前記補正回路は、
前記パルス変調信号に基づいて積分処理をする第一の積分手段と、
前記第二の加算手段からの加算信号に基づいて積分処理をする第二の積分手段と、
前記第一の積分手段からの第一の積分信号に対して利得の調整を行う利得調整手段と、
前記利得調整手段からの出力信号と前記パルス変調信号との差を求めることにより第一の差分信号を生成し、当該第一の差分信号を前記第一の積分手段に出力する第一の減算手段と、
前記利得調整手段からの出力信号と前記加算信号との差を求めることにより第二の差分信号を生成し、当該第二の差分信号を前記第二の積分手段に出力する第二の減算手段と、
前記第一の積分信号と前記第二の積分手段からの第二の積分信号との差を求める第三の減算手段と、
前記第三の減算手段から出力される第三の差分信号を積分処理する第三の積分手段と、
前記第三の積分手段からの第三の積分信号を反転させる反転手段と、
前記第三の差分信号と前記反転手段により反転させられた前記第三の積分信号とを比較し、当該比較に対応した前記補正信号を生成する比較器とを、
備えることを特徴とする請求項4に記載のD級増幅器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003152309A JP2004356963A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | D級増幅器 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2003152309A JP2004356963A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | D級増幅器 |
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Family Applications (1)
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JP2003152309A Pending JP2004356963A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | D級増幅器 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004356963A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006104075A1 (ja) * | 2005-03-28 | 2006-10-05 | Nec Corporation | アンプ装置 |
JP2010268211A (ja) * | 2009-05-14 | 2010-11-25 | Sharp Corp | 信号補正装置、音声処理装置及びパルス増幅方法 |
-
2003
- 2003-05-29 JP JP2003152309A patent/JP2004356963A/ja active Pending
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WO2006104075A1 (ja) * | 2005-03-28 | 2006-10-05 | Nec Corporation | アンプ装置 |
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