JP2004356297A - イオン注入装置、イオン注入装置におけるパーティクルの増加原因発生箇所を特定する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオン注入装置の有効使用効率および生産性を高めることを目的とする。
【解決手段】イオンビームを引き出すイオン源1、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出す質量分離磁石2、イオン注入に必要なエネルギを持つように前記イオンビームを加速させる加速管3、該イオンビームを収束させるQレンズ4、および該イオンビームに含まれる中性分子を除く偏向部5を含むビームラインと、前記イオンビームを照射する対象物が載置されているエンドステーション6と、を有するイオン注入装置に、前記エンドステーションのパーティクル数を測定するパーティクルモニタ装置17fと、前記ビームラインのパーティクル数を測定するパーティクルモニタ装置17(b、c、d、e、f)と、を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】イオンビームを引き出すイオン源1、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出す質量分離磁石2、イオン注入に必要なエネルギを持つように前記イオンビームを加速させる加速管3、該イオンビームを収束させるQレンズ4、および該イオンビームに含まれる中性分子を除く偏向部5を含むビームラインと、前記イオンビームを照射する対象物が載置されているエンドステーション6と、を有するイオン注入装置に、前記エンドステーションのパーティクル数を測定するパーティクルモニタ装置17fと、前記ビームラインのパーティクル数を測定するパーティクルモニタ装置17(b、c、d、e、f)と、を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、半導体基板の製作プロセスに用いられるイオン注入装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSIの高速化および低消費電力化が可能なSIMOX(Separation by IMplanted OXygen)基板を製造するための装置に、シリコンウエハに高エネルギに加速したイオンを注入するイオン注入装置がある。
【0003】
ここで、従来のイオン注入装置の概略構成を図9に示す。イオン注入装置は、イオンを発生させ、イオンビームを引き出すイオン源1と、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出す質量分離磁石2と、イオン注入に必要なエネルギを持つようにイオンビーム20を加速させる加速管3と、イオン注入する対象物10(例えば半導体基板)にイオンビーム20を収束させるQレンズ4と、イオンビーム20に含まれる中性分子を除く偏向部5と、注入される対象物10が載置されているエンドステーション6と、を有する。そして、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、およびエンドステーション6は、それぞれ接続管21(a、b、c、d、e)で接続されている。また、接続管21に接続されているイオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、そしてエンドステーション6までの経路は、気密連結されており、それらの内部は真空に保たれている。
【0004】
なお、以下の説明においてイオン源1からエンドステーション6に至るまでの経路(経路を構成する機器であるイオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5および接続管21)をビームラインと呼ぶこととする。
【0005】
また、イオン注入装置では、イオン注入のプロセス中にイオンビーム20の一部がビームラインおよびエンドステーション6を構成する機器と衝突して、そこからパーティクル(汚染粒子)が発生する。そして、このようにイオン注入のプロセス中に発生したパーティクルが対象物10(例えばウエハ)に付着すると、注入のためのイオンビーム20はパーティクルに遮られるため、イオンが充分に注入されない箇所が生じ、結果として不良品を発生させることとなる(例えば、酸素イオンを注入する場合には絶縁用二酸化珪素膜の絶縁不良が生じる)。特に、次世代、次々世代のウエハは、高密度化、微細化が進む傾向にあることから、プロセス中にウエハに付着するパーティクルにより受ける悪影響は大きくなる。したがって、イオン注入装置(ビームラインおよびエンドステーション)を、高いクリーン度に保つために、イオン注入装置内のパーティクルの発生状態を正確に把握する必要がある。
【0006】
従来のイオン注入装置には、エンドステーションの排気ラインにレーザ光の散乱を利用したパーティクルの数を測定するパーティクルモニタ装置を設置し、エンドステーション内のパーティクル数の増加を高精度に検知するものがある(例えば、特許文献1)。このイオン注入装置では、エンドステーション内のパーティクル数の増加を正確に把握することができる。
【特許文献1】
特開平9−43132号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、以下のような問題を有している。イオン注入装置のエンドステーションでのパーティクル数の増加は、エンドステーションだけで発生するパーティクルだけに限定できない。エンドステーションにおけるパーティクル数の増加には、エンドステーション内で発生したパーティクルが原因となる場合と、ビームラインで発生したパーティクルが原因となる場合(ビームラインで発生したパーティクルがイオンビームにのって下流のエンドステーションに到達する場合がある)とがあるからである。
【0008】
そのため、上記特許文献1の技術により、エンドステーション内のパーティクル数の増加を正確に把握して、エンドステーションに対して部品交換等の対策を施しても、パーティクル数が減少しない場合がある(ビームラインで発生したパーティクルが原因となる場合)。すなわち、上記特許文献1の技術は、パーティクルを起因とする不良品の発生を防ぐことができない場合があり、イオン注入装置の生産性を向上させることができない。
【0009】
また、上記特許文献1の技術により、エンドステーション内のパーティクル数の増加を把握した場合に、オペレータがエンドステーションおよびビームラインを点検してその発生箇所を特定するという方法も考えられる。しかしながら、上記方法により、パーティクル数の増加原因発生箇所を特定するためには、所定の作業時間が必要であり(イオン源、質量分離磁石、加速管、Qレンズ、偏向部、およびエンドステーションの全てを点検する必要がある)、イオン注入装置の有効使用効率を低下させてしまう。さらに、オペレータのスキルにより正常状態への回復処理の時間や精度にバラツキが生じるという問題も有している。
【0010】
そこで、本発明の目的は、イオン注入装置において、装置の有効使用効率および生産性を向上させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ビームラインおよびエンドステーションを有するイオン注入装置において、ビームラインおよびエンドステーションのそれぞれに、パーティクル数を測定する手段を設ける。
【0012】
例えば、本発明の一態様が適用されるイオン注入装置は、イオンビームを照射する対象物が載置されているエンドステーション部と、前記エンドステーション部に前記イオンビームを導くビームライン部と、を有して構成されている。そして、前記イオン注入装置に、前記エンドステーション部のパーティクル数を測定するエンドステーション部測定手段と、前記ビームライン部のパーティクル数を測定するビームライン部測定手段と、を設ける。また、前記ビームライン部は、前記イオンビームを引き出すイオン源、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出す質量分離磁石、イオン注入に必要なエネルギを持つように前記イオンビームを加速させる加速管、該イオンビームを収束させるQレンズ、および該イオンビームに含まれる中性分子を除く偏向部を含み、前記ビームライン部測定手段は、前記イオン源、前記質量分離磁石、前記加速管、前記Qレンズ、および前記偏向部のそれぞれのパーティクル数を測定することとしてもよい。
【0013】
このように、本一態様のイオン注入装置では、エンドステーション部だけでなく、ビームライン部にもパーティクル数を測定する手段を設けているため、
エンドステーション部およびビームライン部のそれぞれで測定されたパーティクル数を用いて、エンドステーション部で増加したパーティクル数の増加原因発生箇所を特定することができる。そのため、パーティクルの増加原因を解消させるための処理を迅速に行うことができる。また、パーティクルの増加原因発生箇所を特定することにより、パーティクルの増加原因を適切に解消させることができるため、パーティクルの増加を起因とする不良品の発生を防ぐことができる。
【0014】
また、前記イオン注入装置に、前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数が所定のしきい値を超えているか否かを検知する手段と、前記所定のしきい値を超えた場合に、イオンビームの注入を中断させる手段と、前記所定のしきい値を超えた場合に、前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数およびビームライン部測定手段が測定したパーティクル数を用いて、パーティクル数の増加原因発生箇所を特定する判断手段と、を設けるようにしてもよい。
【0015】
このように、本一態様では、イオン注入装置が測定したパーティクル数が所定のしきい値を超える場合に自動的にイオン注入を中断している。また、本一態様では、イオン注入装置が自動的にパーティクル数の増加原因発生箇所を特定している。したがって、パーティクル数の増加に起因する対象物の不良品の発生を迅速且つ確実に防ぐことができる。また、本一態様では迅速にパーティクル数の増加原因発生箇所を特定できる。
【0016】
また、前記イオン注入装置に、前記判断手段が特定した増加原因発生箇所がビームライン部にある場合に、前記イオンビームのビーム径を所定のビーム径に調整する手段と、前記判断手段が特定した増加原因発生箇所がエンドステーション部にある場合に、パーティクル増加原因を解消させるための処理の手順を表示する表示手段と、を設けるようにしてもよい。また、前記表示手段は、前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数に応じた増加原因を解消させるための処理の手順を表示することとしてもよい。
【0017】
このように、本一態様では、特定したパーティクルの増加原因発生箇所がビームライン部にある場合に、前記イオンビームのビーム径を所定のビーム径に調整している。したがって、ビームライン部にパーティクルの増加原因発生箇所がある場合、自動的にパーティクルの増加原因を解消させることができる(ビームライン部におけるパーティクルの発生は、何らかの理由で拡がったイオンビームがビームラインの内壁に照射されることによることが多いため、イオンビームを所定のビーム径に絞るようにすることでパーティクルの発生原因を解消できる)。また、本一態様では、特定したパーティクルの増加原因発生箇所がエンドステーション部にある場合に、パーティクル増加原因を解消させるための処理の手順を表示している。そのため、イオン注入装置のパーティクル増加原因を確実に解消させるようにオペレータを導くことができる。
【0018】
また、前記エンドステーション部測定手段および前記ビームライン部測定手段は、それぞれパーティクルのサイズを測定し、前記判断手段は、前記測定したパーティクルのサイズに基づいて交換する必要がある部品を特定し、該特定した部品名を前記表示手段に表示させることとしてもよい。
【0019】
このように、本一態様では、パーティクル増加原因を解消するために交換が必要な部品を特定し、該特定した部品名を表示している。そのため、オペレータが行う交換が必要な部品の点検作業時間を短縮させることができ、イオン注入装置を迅速に正常な運転可能状態の戻すことができる。
【0020】
このように、本発明によれば、イオン注入装置において、装置の有効使用効率および生産性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態が適用されたイオン注入装置の概略構成を示す図である。図示するように、第1の実施形態のイオン注入装置は、イオン源1と、質量分離磁石2と、加速管3と、Qレンズ4と、偏向部5と、エンドステーション6と、搬送ロボット7と、大気レーダ8と、メインコントローラ22と、コントローラ24(a、b、c、d)と、表示・操作部23と、を有する。また、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6は、それぞれ接続管21(a、b、c、d、e)で気密に接続されている(ビームラインおよびエンドステーション6の内部は真空に保たれている)。なお、上述した図9の従来のイオン注入装置と同じ構成については同一の符号を用いることとする。
【0023】
さて、図示するように、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6には、それぞれパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)が設置されている。そして、パーティクルモニタ装置17は、それぞれ、所定時間当たりのパーティクル数を所定の間隔で測定する。また、パーティクルモニタ装置17が測定したパーティクル数のデータは、それぞれの機器(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)を制御するコントローラ24(a、b、c、d)を介してメインコントローラ22に送信される。
【0024】
コントローラ24aは、イオン源1が行う動作を制御し、コントローラ24bは、質量分離磁石2が行う動作を制御するように構成されている。また、コントローラ24cは、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5が行う動作を制御し、コントローラ24dは、エンドステーション6が行う動作を制御するように構成されている。なお、図示する例では、コントローラ24cが、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5を制御するように構成されているが、特にこれに限定しない。例えば、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5のそれぞれにコントローラ24を設けるようにしてもよい。
【0025】
メインコントローラ22は、イオン注入装置全体を制御するように構成されている。具体的には、メインコントローラ22は、上記のコントローラ24(a、b、c、d)に各種の制御信号を送信して該コントローラ24(a、b、c、d)の動作を制御する。また、メインコントローラ22は、コントローラ24を介して、それぞれの機器(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)で測定されたパーティクル数を示すデータを受信する。そして、メインコントローラ22は、所定の間隔で送られてくるパーティクル数を示すデータに基づいて、エンドステーション6内のパーティクル数が増加したか否かについて検知し、かつパーティクル数の増加原因となった機器(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)を特定する。
【0026】
その後、メインコントローラ22は、パーティクル数が増加した原因を解消させるための処理を行う。例えば、メインコントローラ22は、イオンビーム20のビーム径を調整するようにイオン注入装置を制御する。また、例えば、メインコントローラ22は、表示・操作部23に、パーティクル増加の原因を解消させるための処理の手順を示す画面を表示させる。なお、メインコントローラ22の機能構成およびパーティクル数が増加した場合の具体的な処理については後段で詳細に説明する。
【0027】
表示・操作部23は、オペレータに対してイオン注入装置の操作画面を表示する表示装置と、オペレータからの運転操作命令の入力を受付けて、該受け付けたデータをメインコントローラ22に出力する入力装置を有して構成される。なお、表示・操作部23の有する表示装置および入力装置の具体的な構成について、本実施形態では特に限定しない。例えば、表示装置には、一般的な液晶パネル装置を用いることができる。また、入力装置には、表示装置の画面上に設けられたタッチパネルによりオペラータから運転操作命令の入力を受付けるタッチパネル方式のものを用いることができる。
【0028】
イオン源1には、プラズマ室(図示せず)があり、イオン源コイル(図示せず)による磁場印加、及び、ガス及びマイクロ波供給源(図示せず)からの、ビームガス及びマイクロ波が導入されプラズマが生成される。また、イオン源1には、高電圧が印加されている引き出し電極(図示せず)が配置さいる。そして、イオン源1は、引き出し電極により、その生成したプラズマからイオンビーム20を引き出し質量分離磁石2に放射する。
【0029】
質量分離磁石2は、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出すものであり(ここで不要なイオンは除かれる)、水平方向にイオンビーム20を偏向させるように構成されている。その後、イオンビーム20は、加速管3でイオン注入に必要なエネルギを持つように加速される。さらにイオンビーム20は、Qレンズ4によりイオン注入対象のターゲット付近に収束するように成形され、さらに、偏向部5により中性分子が除かれ、エンドステーション6の中のホルダ11に載置されているイオン注入ターゲットである対象物(例えばウエハ)10に照射される。
【0030】
エンドステーション6は、対象物10を載置するためのホルダ11と、ホルダ11を取付けたアーム12と、アーム12を回転させるための回転ディスク9とを有している。なお、回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12の構造については後述する。
【0031】
搬送ロボット7は、対象物10をエンドステーション6内のホルダ11に載置し、または、取り出すものであり、大気ローダ8は、搬送ロボット7に対して対象物10の出し入れを行うものである(例えば、イオン注入するための対象物10は、大気ローダ8によって搬送ロボット7に運ばれ、搬送ロボット7内が真空排気された後、対象物10はエンドステーション6内へと搬送される)。
【0032】
次に図2を用いて、エンドステーション6が有する、回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12の構造について説明する。図2は、エンドステーション6が有する、回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12を説明するための概略図である。回転ディスク9には、複数のアーム12が放射状に取付けられている。また、アーム12にはホルダ11が取付けられている(ホルダ11は回転ディスク9の周りに円周上に配列されている)。
【0033】
また、図示するように、対象物10は、ホルダ11上にピン13とストッパ14により固定されている。このピン13には、例えばシリコンなどを用いることができる。また、ストッパ14には、例えば石英により構成されているものを用いることができる。
【0034】
また、回転ディスク9は、回転するとともに、対象物10のイオン注入面と水平方向に往復運動できるように構成されおり、イオンビーム20が対象物10のイオン注入面の全体に照射されるように構成されている。
【0035】
続いて、本実施形態のイオン注入装置のビームラインおよびエンドステーション6に設置されているパーティクルモニタ装置17の設置位置について図3、図4を用いて説明する。図3は、エンドステーション6の側面図である。図示するようにエンドステーション6は、エンドステーション内部を真空状態にするための真空排気用の真空ポンプ15fおよび排気用配管16fを有している。そして、排気用配管16fには、パーティクルモニタ装置17fが接続されている。
【0036】
このパーティクルモニタ装置17fは、タイマを有しており(図示せず)、所定の間隔で単位時間当たりのパーティクル数を測定する。また、パーティクルモニタ装置17fは、上述したエンドステーション6を制御するコントローラ24dを介してメインコントローラ22に測定したパーティクル数および測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)を出力する。なお、本実施形態では、パーティクルモニタ装置17fの具体的な構成については特に限定しない。排気用配管16fの内部のパーティクル数が測定できるように構成されていればよい。例えば、このパーティクルモニタ装置17fには、レーザ光を発して、レーザ光の散乱を観測することで排気用配管16f内部のパーティクル数を測定するものを用いることができる。
【0037】
図4は、本実施形態のビームラインである加速管3、Qレンズ4、および偏向部5を側面から観た図である。図示するように加速管3、Qレンズ4、および偏向部5は、図3で示したエンドステーション6と同様に真空排気用の真空ポンプ15(c、d、e)および排気用配管16(c、d、e)をそれぞれ有している。また、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5は、エンドステーション6と同様に、排気用配管16(c、d、e)にパーティクルモニタ装置17(c、d、e)が接続されている。なお、図示しないが、ビームラインを構成するイオン源1および質量分離磁石2も、それぞれ、図4と同様の構成の真空ポンプ15(a、b)、排気用配管16(a、b)、およびパーティクルモニタ装置17(a、b)を有している。なお、本実施形態のパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)は、タイマにより予め設定された同じ時間にそれぞれパーティクル数を測定するように設定されているものとする。
【0038】
続いて、エンドステーション6でのパーティクル数の増加原因について説明する。エンドステーション6でのパーティクル数の増加原因には、エンドステーション6内で発生したパーティクルが原因となる場合と、ビームラインで発生したパーティクルが原因となる場合がある。
【0039】
エンドステーション6内で発生するパーティクル増加原因としては、例えば、対象物10またはエンドステーション6が有する部品(ピン13、ストッパ14等)が割れ、或いはクラックが入るような場合がある。そして、この場合には、イオン注入を中断して、エンドステーション6内の損傷した部品等を交換してパーティクル増加原因が解消させる必要がある。
【0040】
次に、ビームライン(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、ビーム偏向部5)で発生したパーティクルがエンドステーション6でのパーティクル数の増加原因になる場合を説明する。ビームラインの内壁には表面の酸化等によりパーティクルが付着していることが多い。そして、ビームラインの内壁には、通常イオンビーム20が当たらないように設定されている。しかし、何らかの理由でイオンビーム20が拡がってビームラインの内壁にイオンビーム20が当たることがある。この場合、ここからのパーティクルが発生し、この発生したパーティクルはイオンビーム20内のイオンで帯電して、注入のための電界によりイオンビーム20とともに加速される。こうして発生したパーティクルはイオンビーム20に乗って下流のエンドステーション6へ流れて行くため、エンドステーション6で観測されるパーティクル数が増える。そして、上記のようにビームラインでパーティクルが増加した場合には、パーティクル増加原因となったビームラインの機器を特定し、該特定した機器の内壁にイオンビーム20が当たらないようにイオンビーム20のビーム径を制御する必要がある(この場合にエンドステーション6内の部品等を交換してもパーティクル数の増加を解消させることはできない)。
【0041】
続いて、本実施形態のイオン注入装置のコントローラ24およびメインコントローラ22が有する機能について具体的に説明する。図5は、本実施形態が適用されるイオン注入装置のコントローラ24およびメインコントローラ22の機能構成を説明するための図である。
【0042】
最初にコントローラ24(a、b、c、d)の機能構成を説明する。図示するようにコントローラ24aは、制御部38aと、I/F部39aとを有する。I/F部39aは、イオン源1との間で、またはメインコントローラ22との間で行うデータの送受信を制御する。制御部38aは、イオン源1の動作を制御するための各種の制御信号を生成して、該制御信号をI/F部39aを介してイオン源1に出力する。
【0043】
また、制御部38aは、イオン源1のパーティクルモニタ装置17aが所定の間隔で出力するパーティクル数および該測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)を、I/F部39aを介して受信し、該受信したパーティクル数および該測定した時間を示すデータをI/F部39a経由でメインコントローラ22に出力する。
【0044】
また、コントローラ24bは、コントローラ24aと同様に制御部38bと、I/F部39bとを有する。そして、コントローラ24bの制御部38bは、質量分離磁石2の動作を制御し、かつ、パーティクルモニタ装置17bが所定の間隔で出力するパーティクル数および該測定した時間を示すデータを、I/F部39bを介して受信し、該受信したパーティクル数および該測定した時間を示すデータをI/F部39b経由でメインコントローラ22に出力する。
【0045】
同様に、コントローラ24cの制御部38cは、加速管3、Qレンズ4および偏向部5の動作を制御し、かつ、パーティクルモニタ装置17(c、d、e)がそれぞれ所定の間隔で出力するパーティクル数および該測定した時間を示すデータを、I/F部39cを介して受信し、該受信したパーティクル数および該測定した時間を示すデータをI/F部39c経由でメインコントローラ22に出力する。
【0046】
また、コントローラ24dの制御部38dは、エンドステーション6の動作を制御し、かつパーティクルモニタ装置17dが所定の間隔で出力するパーティクル数および該測定した時間を示すデータを、I/F部39dを介して受信し、該受信したパーティクル数および該測定した時間を示すデータをI/F部39d経由でメインコントローラ22に出力する。
【0047】
なお、コントローラ24(a、b、c、d)には、CPU(中央演算処理装置)と、CPUが実行するプログラムやデータを一時的に記憶する主記憶装置と、上記機能を実行するためのプログラムが予め記憶されているハードディスク等の補助記憶装置と、メインコントローラ22等の外部の装置とのデータの送受信の制御を行うインタフェースとを有する、一般的なコンピュータシステムを用いることができる。そして、制御部38およびI/F部39の機能は、上記CPUが、上記補助記憶装置に記憶されている各プログラム(制御プログラム、I/Fプログラム)を、上記主記憶装置にロードして実行することで実現することができる。また、上記コントローラ24(a、b、c、d)には、上記各機能を実現する専用の回路構成を有する専用装置を用いるようにしてもよい。
【0048】
続いて、メインコントローラ22の機能構成を説明する。メインコントローラ22は、I/F部30と、データ取得部31と、制御部32と、判断部33と、を有する。
【0049】
I/F部30は、コントローラ24(a、b、c、d)との間で、または表示・操作部23との間で行うデータの送受信を制御する。
【0050】
データ取得部31は、I/F部30を介してコントローラ24(a、b、c、d)が送信するパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)が測定したパーティクル数および測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)を取得する。また、データ取得部31は、それぞれの機器(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)で測定された上記取得したパーティクル数を、該取得した時間を示すデータと関連付けて記憶する。
【0051】
制御部32は、コントローラ24(a、b、c、d)を制御するための各種の制御信号をI/F部30を介してコントローラ24(a、b、c、d)に出力する。
【0052】
判断部33は、データ取得部31が記憶しているエンドステーション6のパーティクル数が所定のしきい値を超えたか否かを監視し、所定のしきい値を超えた場合には、制御部32にイオン注入を中断させる。
【0053】
さらに、判断部33は、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所を特定するためのデータが予め格納されている増加箇所特定TB35を有している。また、判断部33は、データ取得部31が記憶している各機器のパーティクル数および測定した時間を示すデータ(直近に測定されたデータとその前に測定されたデータ)に基づいてパーティクル数の増加状態を機器毎に算出する。そして、判断部33は、算出した増加状態および増加箇所特定TB35に格納されているデータに基づいて、パーティクルの増加原因発生箇所を特定する。その後、判断部33は、パーティクル数が増加した原因を解消させるための処理を行う。
【0054】
なお、メインコントローラ22には、CPU(中央演算処理装置)と、CPUが実行するプログラムやデータを一時的に記憶する主記憶装置と、上記機能を実行するためのプログラムが予め記憶されているハードディスク等の補助記憶装置と、コントローラ24等の外部の装置とのデータの送受信の制御を行うインタフェースとを有する、一般的なコンピュータシステムを用いることができる。そして、メインコントローラ22の各機能は、上記CPUが、上記補助記憶装置に記憶されている各プログラム(制御プログラム、I/Fプログラム、データ取得プログラム、判断プログラム)を、上記主記憶装置にロードして実行することで実現することができる。また、メインコントローラ22には、上記各機能を実現する専用の回路構成を有する専用装置を用いるようにしてもよい。
【0055】
続いて、メインコントローラ22が有する増加箇所特定TB35のデータ構造について説明する。図6は、増加箇所特定TB35のデータ構造の一例を模擬的に示した図である。図示するように、増加箇所特定TB35には、ビームライン(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5)およびエンドステーション6でのパーティクル数の増加状態を示すデータを格納するエントリ50(図示する例では、機器毎にパーティクル数が増加した状態に「1」を格納し、パーティクル数が増加していない状態に「0」を格納するものとする)と、エントリ50に格納されたデータに関連付けてパーティクル数増加原因発生箇所を特定するデータを格納するエントリ51と、を有している。
【0056】
例えば、エントリ50のケース1には、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5に「0」が格納されていて、エンドステーション6に「1」が格納されている。そして、エントリ50のケース1に関連付けられているエントリ51には、エンドステーション6を示すデータが格納されている。すなわち、増加箇所特定TB35は、上記のケース1の場合は、エンドステーション6で発生した原因によりパーティクル数が増加していることを特定するように構成されている(ケース1では、エンドステーション6だけでパーティクル数が増加しているため、パーティクル数の増加原因はエンドステーション6で発生しているものに特定できる)。
【0057】
また、例えば、エントリ50のケース2では、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、およびQレンズ4に「0」が格納されていて、偏向部5およびエンドステーション6に「1」が格納されている。そして、エントリ50のケース2に関連付けられているエントリ51には、偏向部5を示すデータが格納されている。すなわち、増加箇所特定TB35は、上記のケース2の場合は、偏向部5でパーティクル数が増加していることを特定するように構成されている(ケース2では、偏向部5およびイオン源1においてパーティクル数が増加して、偏向部5より上流の機器(Qレンズ4、加速管3等)では、パーティクルは増加していない。そのため、パーティクル数の増加原因は偏向部5で発生していると特定できる)。
【0058】
このように、本実施形態では、パーティクルの発生箇所の下流で測定するパーティクル数が増加するとういうイオン注入装置の特性を利用して、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所を特定するようにしている。
【0059】
続いて、本実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローについて説明する。図7は、本実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6でのパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローを説明するための図である。
【0060】
最初に、メインコントローラ22の制御部32は、表示・操作部23がオペレータから受け付けたイオン注入装置の運転開始の命令を、I/F部30を介して受信する。そして、制御部32は、コントローラ24(a、b、c、d)に対してイオン注入を開始の制御信号を送信して、イオン注入を開始させる(ステップ1)。
【0061】
続いて、イオン注入が開始されると、ビームラインおよびエンドステーション6に設置されたパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)は、所定の間隔で単位時間当たりのパーティクル数を測定し、該測定したパーティクル数を示すデータおよび該測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)を、コントローラ24(a、b、c、d)を介してメインコントローラ22に送信する。そして、メインコントローラ22のデータ取得部31は、パーティクル数を示すデータおよび該測定した時間を示すデータを取得して、測定された箇所(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)毎に、該取得した時間を示すデータと該測定したパーティクル数を示すデータとを関連付けて記憶する(ステップ2)。
【0062】
また、メインコントローラ22の判断部33は、所定のしきい値(以下において「増加判断しきい値」という)を有していて、データ取得部31が記憶しているエンドステーション6のパーティクル数「α」が該増加判断しきい値を超えているか否かの判断を行う。そして、判断部33は、エンドステーション6のパーティクル数「α」が該増加判断のしきい値を超えた場合には、エンドステーション6内のパーティクル数が増加していると判断してステップ4の処理に進む。一方、判断部33は、データ取得部31が記憶しているエンドステーション6のパーティクル数「α」が該増加判断しきい値を、超えない場合には、ステップ2に戻る(ステップ3)。なお、本実施形態では、「増加判断しきい値」の具体的な値について特に限定しない。
【0063】
ステップ4では、メインコントローラ22の判断部33は、エンドステーション6のパーティクル数が増加していることを示すデータを制御部32に出力する。そして、制御部32では、イオン注入の中断を指示する制御信号をコントローラ24(a、b、c、d)に送信して、イオン注入を中断させて、ステップ5の処理に進む。
【0064】
このように本実施形態では、エンドステーション6でのパーティクル数が増加していると判断された場合(上記増加判断しきい値を越えたパーティクル数が測定された場合)、イオン注入が自動的に中断されるように構成されている。そのため、パーティクル数の増加を起因とする不良品の発生を防止することができる。
【0065】
ステップ5では、判断部33は、エンドステーション6におけるパーティクル数の増加原因が、ビームライン(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5)にあるか否かの判断を行う。具体的には、判断部33は、データ取得部31において、それぞれの機器毎に測定時間と関連付けて記憶しているパーティクル数から機器毎のパーティクル数の増加状態を算出する(直近に取得したパーティクル数と、その前に取得したパーティクル数のデータの差分によりパーティクル数の状態を算出する)。そして、判断部33は、ビームラインでパーティクル数増加している場合(算出したパーティクル数の増加状態が、増加箇所特定TB35のエントリ50のケース1以外の場合)、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因がビームラインで発生していると判断し、ステップ6の処理に進む。一方、判断部22は、ビームラインでパーティクル数増加していない場合(算出したパーティクル数の増加状態が、増加箇所特定TB35のエントリ50のケース1の状態に該当する場合)、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因がエンドステーション6で発生していると判断し、ステップ8の処理に進む。
【0066】
ステップ6では、判断部33は、ステップ6で算出したパーティクル数の増加状態と、増加箇所特定TB35に格納されているデータからビームライン中でのパーティクル数の増加原因発生箇所を特定する(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5のいずれかを特定する)。例えば、上記算出したパーティクル数の増加状態が、イオン源1、質量分離磁石2および加速管3でパーティクル数増加しておらず、かつQレンズ4および偏向部5でパーティクル数が増加している場合には、増加箇所特定TB35のエントリ50に格納されているケース3に該当するため、パーティクル数の増加原因発生箇所をQレンズ4であると特定する。
【0067】
そして、判断部33は、特定した機器(例えばQレンズ4)のイオンビームを調整させる指示命令を制御部32に出力する(この場合、イオンビーム20が拡がって、特定した機器の内壁にイオンビーム20が照射されていたもの判断し、イオンビーム20のビーム径を所定のビーム径に絞るように指示命令を出力する)。制御部32は、特定した機器(例えばQレンズ4)でのイオンビーム径を所定にビーム径に絞るようにコントローラ24(a、b、c、d)を設定して、ステップ16の処理に進む(ステップ7)。
【0068】
なお、本実施形態において、イオンビーム20のビーム径を調整する方法については特に限定しない。例えば、増加原因発生箇所に加速管3が特定された場合には、イオン源1での加速を大きくするように制御することで加速管3を通過するイオンビーム20のビーム径を調整するようにしてもよい(この場合、イオンビーム20は、加速管3を素早く通過することとなり、加速管3の内壁に当たらなくなる)。また、例えば、イオン源1、質量分離磁石2、偏向部5の磁石電流を調整することにより、イオンビーム20のビーム径を狭めるように制御してもよい。
【0069】
ステップ5において、判断部33がビームラインでパーティクル数増加していないと判断した場合、判断部33は、ステップ3で用いたデータ取得部31が記憶しているエンドステーション6のパーティクル数「α」の値に応じて、パーティクルの増加原因を解消させるための具体的な処理の手順を特定する(ステップ8)。具体的には、判断部33に増加原因を判断するための所定の増加原因しきい値「a」、「c」を予め保持させておく(a>cとする)。なお、本実施形態において、所定の増加数判断しきい値「a」、「c」の具体的な数字については特に限定しないが、以下の3つの関係を満たしている値が定められているものとする。第1に「α<c」の場合は、エンドステーション6に載置されている対象物10がパーティクルによる影響を受けないものとする。第2に「c≦α≦a」の場合は、エンドステーション6に載置されている対象物10をエンドステーション6から取り出して洗浄することで、その対象物10に再度イオン注入しても不良品を発生しないものとする。また、第3に「α>a」の場合には、エンドステーション6に載置されている対象物10をエンドステーション6から取り出して洗浄してから、再度イオン注入したとしても不良品を発生する可能性が高いものとする。
【0070】
そして、判断部33は、算出した「α」が、上記の「c」より小さい場合(「α<c」を満たす場合)にはステップ9に進む。また、判断部33は、算出した「α」が、上記「c」から「a」の間の範囲内に属する場合(「c≦α≦a」を満たす場合)にはステップ11の処理に進む。さらに、判断部33は、算出した「α」が上記の「a」より大きい場合(「α>a」を満たす場合)にはステップ13に進む(ステップ8)。
【0071】
ステップ9では、判断部33は、制御部32に対して、エンドステーション6に載置されている対象物10をエンドステーション6から取り出させる処理を行わせる。具体的には、エンドステーション6に載置されている対象物10を搬送ロボット7で取り出して大気ローダ8に退避させておく。
【0072】
その後、判断部33は、パーティクルの増加原因を解消させるための具体的な処理(以下において「回復処理」という)の手順を、表示・操作部23に画面表示してステップ15の処理に進む(ステップ10)。なお、ステップ10で表示する回復処理とは、「エンドステーション6内のピン13およびストッパ14等の発塵部品を取替える処理、真空排気を行う処理、その後エンドステーション6から取り出した対象物10を再セットする処理」のことを云う(対象物10はパーティクルによる影響を受けていないため洗浄処理や交換を行う必要はない)。
【0073】
また、ステップ11では、判断部33は、制御部32に対して、エンドステーション6に載置されている対象物10をエンドステーション6から取り出させる処理を行わせる。具体的には、エンドステーション6に載置されている対象物10を搬送ロボット7で取り出して大気ローダ8からも搬出する。
【0074】
そして、判断部33は、回復処理の具体的な手順を、表示・操作部23の表示画面に表示してステップ15の処理に進む(ステップ12)。
ステップ12は、エンドステーション6に載置されていた対象物10をエンドステーション6から取り出して洗浄すれば、再度イオン注入しても不良品を発生しない場合における回復処理の手順表示である。そのため、ステップ10で表示した処理の手順に加えて、さらに、「対象物10を洗浄する処理、洗浄した対象物10をエンドステーション6に再搬入する処理」の手順について表示・操作部23に表示する。
【0075】
ステップ13では、上記のステップ12と同様の処理を行う。そして、判断部33は、回復処理の具体的な手順を、表示・操作部23の表示画面に表示してステップ15の処理に進む(ステップ14)。ステップ14は、エンドステーション6に載置されていた対象物10を洗浄しても、パーティクルの影響で不良品になる可能性が高い場合における回復処理の手順表示である。そのため、判断部33は、取り出した対象物10に代えて新たな対象物10をエンドステーション6にセットさせるようにオペレータを導く必要が有る。したがって、判断部33は、ステップ10で表示した手順に加えて、「エンドステーション6から搬出した対象物10に代えて、新たな対象物10をエンドステーションに搬入する処理」の手順を表示する。
【0076】
ステップ15では、上記回復処理完了を示すデータの入力を表示・操作部23がオペレータから受け付けるまで待機し、表示・操作部23が、オペレータからの上記回復処理完了を受け付けた場合には、制御部32に、その旨を示すデータを出力する。
【0077】
その後、制御部32は、表示・操作部23からの上記回復処理完了を示すデータの入力を受けて、コントローラ24を制御してイオンの再注入を開始する(ステップ16)。
【0078】
なお、上記のフローの説明では、ビームラインでパーティクル増加した場合(ステップ6、ステップ7)に、パーティクル数の増加原因である機器を特定して、該特定した機器でのイオンビーム20のビーム径を調整するようにしている。しかしながら、これはあくまで例示であり、ステップ9〜14で説明したように各機器で測定したパーティクル数に応じて実行する回復処理を変更するようにしてもよい。例えば、増加原因を特定したビームラインを構成する機器で測定したパーティクル数が特定の値より大きい場合には、表示・操作部23に特定した機器が有する部品を取替える処理を促す表示を行うようにしてもよい。
【0079】
このように、本実施形態によれば、エンドステーション6だけではなく、ビームラインを構成する機器にもパーティクルモニタ装置17を設けている。そのため、エンドステーション6で増加したパーティクルの増加原因となった機器を特定することができる。
【0080】
また、本実施形態では、特定したパーティクルの増加原因発生箇所がビームライン部にある場合に、前記イオンビームのビーム径を所定のビーム径に調整するようにしている。そのため、ビームラインで発生したパーティクル増加原因を装置自身が自動的に解消させることができる。さらに、本実施形態では、エンドステーション6で測定したパーティクルの数に応じた回復処理の手順を表示している。したがって、オペレータに対して、最適な回復処理を行わせるように導くことができる。そのため、オペレータのスキルに関係なく迅速かつ確実に通常状態に復帰させることができる(例えば、対象物10を洗浄する必要が無い場合に、オペレータが対象物10の洗浄処理を行う等の不要な処理の発生を防ぐことができる)。
【0081】
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態のイオン注入装置は、上記第1の実施形態のイオン注入装置にさらに、パーティクルの大きさを測定する手段と、該測定したパーティクルの大きさを用いてパーティクル増加の原因となった部品を特定する手段と、を設けるように構成したものである。なお、本発明の第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を用いることとする。
【0082】
さて、本発明の第2の実施形態のイオン注入装置の概略構成は、図1で示した第1の実施形態のものと同じである。また、本第2の実施形態のイオン注入装置のエンドステーション6が有する回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12の概略構成についても、図2で示した第1の実施形態のものと同じである。
【0083】
続いて、パーティクルモニタ装置17について説明する。本第2の実施形態のパーティクルモニタ装置17の設置位置は、図3、図4で示した第1の実施形態のものと同じである。そして、第2の実施形態では、エンドステーション6に設置されているイオン注入装置17fは、排気用配管16f内のパーティクル数を測定する手段に加えて、さらにパーティクルのサイズを測定する手段を有している。そして、パーティクルモニタ装置17fは、測定したパーティクルの数および測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)と、測定したパーティクルのサイズとをコントローラ24dを介してメインコントローラ22に出力するように構成されている。
【0084】
このように、本第2の実施形態において、パーティクルのサイズも測定するようにしたのは、測定したパーティクルのサイズを用いてパーティクルの発生原因となった部品を特定するためである。このパーティクルのサイズを用いてパーティクルの発生原因となった部品を特定するのは以下の原理による。
【0085】
一般的に材料によってイオンビームが照射されて発生するパーティクルのサイズ分布は異なっている。例えば、シリコンは単結晶或いは多結晶構造のためビームの熱によって歪が大きくなり易くクラックが入って飛散し易い。その結果、シリコンで構成された部品から発生するパーティクルのサイズは大きくなる傾向にある。一方、石英の場合は、ビームの熱によって軟化し歪が小さいのでクラックが入りにくい。その結果、石英で構成された部品から発生するパーティクルサイズは、小さくなる傾向にある。そのため、パーティクルの大きさを測定すれば、上記のパーティクルの性質を利用することでパーティクルを発生させている部品を特定することができる(例えば、測定したパーティクルのサイズを用いてシリコンで構成されている部品からパーティクルが発生していると特定する)。
【0086】
続いて、本第2の実施形態のコントローラ24およびメインコントローラ22の機能構成について説明する。本第2の実施形態のコントローラ24の機能は図5で示した第1の実施形態のものと同じである。また、メインコントローラ22の機能は、図5で示した第1の実施形態のものと判断部33およびデータ取得部31が有する機能が異なる以外は同じである。
【0087】
データ取得部31は、第1の実施形態のデータ取得部31が有する機能を有し、さらに、I/F部30を介してコントローラ24dが送信するパーティクルモニタ装置17fが測定したパーティクルのサイズを示すデータを取得する。そして、データ取得部31は、上記取得したパーティクルのサイズを、上述したパーティクル数および取得した時間を示すデータに関連付けて記憶する。
【0088】
また、判断部33は、第1の実施形態の判断部33の機能を有し、さらに、データ取得部31が記憶しているパーティクルのサイズを用いてパーティクル増加の原因となったエンドステーション6の部品の特定を行う。そして、判断部33は、特定した部品の交換を促すデータを表示・操作部23の表示画面に表示する。
【0089】
続いて、本第2の実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローについて説明する。図8は、本第2の実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローを説明するための図である。
【0090】
最初に上述した図7のステップ1と同じ処理を行い、イオン注入が開始される(ステップ10)。
【0091】
続いて、イオン注入が開始されると、ビームラインおよびエンドステーション6に設置されたパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)は、所定の間隔で単位時間当たりのパーティクル数を測定する。また、エンドステーション6に設置されたパーティクルモニタ装置17fは、さらに、パーティクルのサイズを測定する。そして、パーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)は、該測定したパーティクル数を示すデータおよび該測定した時間を示すデータを、コントローラ24(a、b、c、d)を介してメインコントローラ22に送信する(パーティクルモニタ装置17fは、測定したパーティクルサイズについても送信する)。そして、メインコントローラ22のデータ取得部31は、パーティクル数を示すデータおよび該測定した時間を示すデータを取得して、測定した箇所(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)毎に、該取得した時間を示すデータと該測定したパーティクル数を示すデータとを関連付けて記憶する。また、データ取得部31は、取得したエンドステーション6で測定されたパーティクルのサイズについても、該取得した時間を示すデータと関連づけて記憶する(ステップ11)。
【0092】
そして、上述の図7のステップ3〜ステップ8と同じ処理を行う(ステップ12〜ステップ17)。
【0093】
ステップ18(19、20)では、メインコントローラ22の判断部33が、データ取得部31が記憶しているパーティクルのサイズを用いて交換する必要がある部品の特定をする。具体的には、判断部33は、パーティクルのサイズに関連付けて交換が必要な部品名が格納されている交換部品特定DB(図示せず)を有していて、データ取得部31が記憶しているパーティクルのサイズと交換部品特定DBに格納されているデータに基づいて交換が必要な部品を特定して(例えば、ピン13の交換が必要であると特定する)、ステップ21(22、23)の処理に進む。その後、ステップ21(22、23)では、図7のステップ9(11、13)と同じ処理を行う。
【0094】
ステップ24(25、26)では、上述の図7で説明ステップ10(12、14)と同様に、判断部33は回復処理の手順を表示・操作部23に表示する。また、判断部33は、上記回復処理の手順を表示する際に、ステップ18(19、20)で特定した交換必要な部品名を表示する。その後、上述の図7で説明したステップ15〜16と同じ処理を行う(ステップ27、28)。
【0095】
このように、本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態のイオン注入装置の機能に加えて、さらに、エンドステーション6の交換が必要な部品を特定して、該部品名を表示・操作部23に表示させるように構成されている。そのため、オペレータに無駄なく部品交換を行わせるように導くことができる(使用できる部品が交換されることを防ぐことができる)。また、パーティクルの増加によりイオン注入装置の運転を中断した場合に、オペレータが行う交換が必要な部品の点検作業時間を短縮させることができる。したがって、迅速にイオン注入装置を正常な状態に復帰させることが可能となり、イオン注入装置の有効使用効率および生産性を向上させることができる。
【0096】
なお、本第2の実施形態の説明では、イオン注入装置のエンドステーション6だけでパーティクルのサイズを測定する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ビームライン(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5)において、パーティクルのサイズを測定するようにして、メインコントローラ22で、ビームラインの交換部品についても特定して、表示・操作部23に表示させるようにしてもよい。
【0097】
また、パーティクルのサイズにより特定する部品を、シリコンまたは石英で構成されているものを例に説明したが、金属で構成されている部品についても、同様に特定することができる。
【0098】
このように、本発明によれば、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所を的確に特定し、それに応じた適切な対策を行なうことができる。そのため、パーティクルの増加により発生する不良品の個数を大幅に減らすことができる。また、本発明によれば、パーティクル発生原因を迅速に解消させることができるため、イオン注入装置の有効使用効率を高めることができる。
【0099】
なお、本発明は以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、パーティクル増加に対する回復処理の手順を表示・操作部23に表示してオペレータの通知する例を説明しているが、表示・操作部23に通信手段を設けて、工場のホストに該回復処理の手順を表示するようにしてもよい。
【0100】
また、例えば、本実施形態では、エンドステーション6に回転ディスク9を設けてスキャンする方式のイオン注入装置について説明したが、回転ディスクを固定してイオンビームをスキャンする方式のイオン注入装置であってもよい。
【0101】
また、例えば、本実施形態では、エンドステーション6の排気用配管16fにパーティクルモニタ装置17fを接続してパーティクル数を測定する例を説明しているが、パーティクル測定装置17fをエンドステーション6内部のホルダ11の近傍に設けるようにしてもよい。
【0102】
また、本実施形態のイオン注入装置のイオン種類は、酸素イオンでも、ボロン、リン等の不純物イオンでもよい。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、イオン注入装置の有効使用効率および生産性を高めることがきる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態が適用されたイオン注入装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態のエンドステーション6が有する、回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12を説明するための概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態のエンドステーション6の側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の加速管3、Qレンズ4、および偏向部5の側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のコントローラ24およびメインコントローラ22の機能構成を説明するための図である。
【図6】本発明の第1実施形態の増加箇所特定TB35のデータ構造の一例を模擬的に示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローを説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローを説明するための図である。
【図9】従来のイオン注入装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1…イオン源、2…質量分離磁石、3…加速管、4…Qレンズ、5…偏向部、6…エンドステーション、7…搬送ロボット、8…大気ローダ、9…回転ディスク、10…対象物、11…ホルダ、12…アーム、13…ピン、14…ストッパ、15…真空ポンプ、16…排気用配管、17…パーティクルモニタ装置、20…イオンビーム、21…接続管、22…メインコントローラ、23…表示・操作部、24…コントローラ、30…I/F部、31…データ取得部、32…制御部、33…判断部、35…増加箇所特定TB、38…制御部、39…I/F部
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、半導体基板の製作プロセスに用いられるイオン注入装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSIの高速化および低消費電力化が可能なSIMOX(Separation by IMplanted OXygen)基板を製造するための装置に、シリコンウエハに高エネルギに加速したイオンを注入するイオン注入装置がある。
【0003】
ここで、従来のイオン注入装置の概略構成を図9に示す。イオン注入装置は、イオンを発生させ、イオンビームを引き出すイオン源1と、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出す質量分離磁石2と、イオン注入に必要なエネルギを持つようにイオンビーム20を加速させる加速管3と、イオン注入する対象物10(例えば半導体基板)にイオンビーム20を収束させるQレンズ4と、イオンビーム20に含まれる中性分子を除く偏向部5と、注入される対象物10が載置されているエンドステーション6と、を有する。そして、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、およびエンドステーション6は、それぞれ接続管21(a、b、c、d、e)で接続されている。また、接続管21に接続されているイオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、そしてエンドステーション6までの経路は、気密連結されており、それらの内部は真空に保たれている。
【0004】
なお、以下の説明においてイオン源1からエンドステーション6に至るまでの経路(経路を構成する機器であるイオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5および接続管21)をビームラインと呼ぶこととする。
【0005】
また、イオン注入装置では、イオン注入のプロセス中にイオンビーム20の一部がビームラインおよびエンドステーション6を構成する機器と衝突して、そこからパーティクル(汚染粒子)が発生する。そして、このようにイオン注入のプロセス中に発生したパーティクルが対象物10(例えばウエハ)に付着すると、注入のためのイオンビーム20はパーティクルに遮られるため、イオンが充分に注入されない箇所が生じ、結果として不良品を発生させることとなる(例えば、酸素イオンを注入する場合には絶縁用二酸化珪素膜の絶縁不良が生じる)。特に、次世代、次々世代のウエハは、高密度化、微細化が進む傾向にあることから、プロセス中にウエハに付着するパーティクルにより受ける悪影響は大きくなる。したがって、イオン注入装置(ビームラインおよびエンドステーション)を、高いクリーン度に保つために、イオン注入装置内のパーティクルの発生状態を正確に把握する必要がある。
【0006】
従来のイオン注入装置には、エンドステーションの排気ラインにレーザ光の散乱を利用したパーティクルの数を測定するパーティクルモニタ装置を設置し、エンドステーション内のパーティクル数の増加を高精度に検知するものがある(例えば、特許文献1)。このイオン注入装置では、エンドステーション内のパーティクル数の増加を正確に把握することができる。
【特許文献1】
特開平9−43132号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、以下のような問題を有している。イオン注入装置のエンドステーションでのパーティクル数の増加は、エンドステーションだけで発生するパーティクルだけに限定できない。エンドステーションにおけるパーティクル数の増加には、エンドステーション内で発生したパーティクルが原因となる場合と、ビームラインで発生したパーティクルが原因となる場合(ビームラインで発生したパーティクルがイオンビームにのって下流のエンドステーションに到達する場合がある)とがあるからである。
【0008】
そのため、上記特許文献1の技術により、エンドステーション内のパーティクル数の増加を正確に把握して、エンドステーションに対して部品交換等の対策を施しても、パーティクル数が減少しない場合がある(ビームラインで発生したパーティクルが原因となる場合)。すなわち、上記特許文献1の技術は、パーティクルを起因とする不良品の発生を防ぐことができない場合があり、イオン注入装置の生産性を向上させることができない。
【0009】
また、上記特許文献1の技術により、エンドステーション内のパーティクル数の増加を把握した場合に、オペレータがエンドステーションおよびビームラインを点検してその発生箇所を特定するという方法も考えられる。しかしながら、上記方法により、パーティクル数の増加原因発生箇所を特定するためには、所定の作業時間が必要であり(イオン源、質量分離磁石、加速管、Qレンズ、偏向部、およびエンドステーションの全てを点検する必要がある)、イオン注入装置の有効使用効率を低下させてしまう。さらに、オペレータのスキルにより正常状態への回復処理の時間や精度にバラツキが生じるという問題も有している。
【0010】
そこで、本発明の目的は、イオン注入装置において、装置の有効使用効率および生産性を向上させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ビームラインおよびエンドステーションを有するイオン注入装置において、ビームラインおよびエンドステーションのそれぞれに、パーティクル数を測定する手段を設ける。
【0012】
例えば、本発明の一態様が適用されるイオン注入装置は、イオンビームを照射する対象物が載置されているエンドステーション部と、前記エンドステーション部に前記イオンビームを導くビームライン部と、を有して構成されている。そして、前記イオン注入装置に、前記エンドステーション部のパーティクル数を測定するエンドステーション部測定手段と、前記ビームライン部のパーティクル数を測定するビームライン部測定手段と、を設ける。また、前記ビームライン部は、前記イオンビームを引き出すイオン源、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出す質量分離磁石、イオン注入に必要なエネルギを持つように前記イオンビームを加速させる加速管、該イオンビームを収束させるQレンズ、および該イオンビームに含まれる中性分子を除く偏向部を含み、前記ビームライン部測定手段は、前記イオン源、前記質量分離磁石、前記加速管、前記Qレンズ、および前記偏向部のそれぞれのパーティクル数を測定することとしてもよい。
【0013】
このように、本一態様のイオン注入装置では、エンドステーション部だけでなく、ビームライン部にもパーティクル数を測定する手段を設けているため、
エンドステーション部およびビームライン部のそれぞれで測定されたパーティクル数を用いて、エンドステーション部で増加したパーティクル数の増加原因発生箇所を特定することができる。そのため、パーティクルの増加原因を解消させるための処理を迅速に行うことができる。また、パーティクルの増加原因発生箇所を特定することにより、パーティクルの増加原因を適切に解消させることができるため、パーティクルの増加を起因とする不良品の発生を防ぐことができる。
【0014】
また、前記イオン注入装置に、前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数が所定のしきい値を超えているか否かを検知する手段と、前記所定のしきい値を超えた場合に、イオンビームの注入を中断させる手段と、前記所定のしきい値を超えた場合に、前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数およびビームライン部測定手段が測定したパーティクル数を用いて、パーティクル数の増加原因発生箇所を特定する判断手段と、を設けるようにしてもよい。
【0015】
このように、本一態様では、イオン注入装置が測定したパーティクル数が所定のしきい値を超える場合に自動的にイオン注入を中断している。また、本一態様では、イオン注入装置が自動的にパーティクル数の増加原因発生箇所を特定している。したがって、パーティクル数の増加に起因する対象物の不良品の発生を迅速且つ確実に防ぐことができる。また、本一態様では迅速にパーティクル数の増加原因発生箇所を特定できる。
【0016】
また、前記イオン注入装置に、前記判断手段が特定した増加原因発生箇所がビームライン部にある場合に、前記イオンビームのビーム径を所定のビーム径に調整する手段と、前記判断手段が特定した増加原因発生箇所がエンドステーション部にある場合に、パーティクル増加原因を解消させるための処理の手順を表示する表示手段と、を設けるようにしてもよい。また、前記表示手段は、前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数に応じた増加原因を解消させるための処理の手順を表示することとしてもよい。
【0017】
このように、本一態様では、特定したパーティクルの増加原因発生箇所がビームライン部にある場合に、前記イオンビームのビーム径を所定のビーム径に調整している。したがって、ビームライン部にパーティクルの増加原因発生箇所がある場合、自動的にパーティクルの増加原因を解消させることができる(ビームライン部におけるパーティクルの発生は、何らかの理由で拡がったイオンビームがビームラインの内壁に照射されることによることが多いため、イオンビームを所定のビーム径に絞るようにすることでパーティクルの発生原因を解消できる)。また、本一態様では、特定したパーティクルの増加原因発生箇所がエンドステーション部にある場合に、パーティクル増加原因を解消させるための処理の手順を表示している。そのため、イオン注入装置のパーティクル増加原因を確実に解消させるようにオペレータを導くことができる。
【0018】
また、前記エンドステーション部測定手段および前記ビームライン部測定手段は、それぞれパーティクルのサイズを測定し、前記判断手段は、前記測定したパーティクルのサイズに基づいて交換する必要がある部品を特定し、該特定した部品名を前記表示手段に表示させることとしてもよい。
【0019】
このように、本一態様では、パーティクル増加原因を解消するために交換が必要な部品を特定し、該特定した部品名を表示している。そのため、オペレータが行う交換が必要な部品の点検作業時間を短縮させることができ、イオン注入装置を迅速に正常な運転可能状態の戻すことができる。
【0020】
このように、本発明によれば、イオン注入装置において、装置の有効使用効率および生産性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態が適用されたイオン注入装置の概略構成を示す図である。図示するように、第1の実施形態のイオン注入装置は、イオン源1と、質量分離磁石2と、加速管3と、Qレンズ4と、偏向部5と、エンドステーション6と、搬送ロボット7と、大気レーダ8と、メインコントローラ22と、コントローラ24(a、b、c、d)と、表示・操作部23と、を有する。また、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6は、それぞれ接続管21(a、b、c、d、e)で気密に接続されている(ビームラインおよびエンドステーション6の内部は真空に保たれている)。なお、上述した図9の従来のイオン注入装置と同じ構成については同一の符号を用いることとする。
【0023】
さて、図示するように、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6には、それぞれパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)が設置されている。そして、パーティクルモニタ装置17は、それぞれ、所定時間当たりのパーティクル数を所定の間隔で測定する。また、パーティクルモニタ装置17が測定したパーティクル数のデータは、それぞれの機器(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)を制御するコントローラ24(a、b、c、d)を介してメインコントローラ22に送信される。
【0024】
コントローラ24aは、イオン源1が行う動作を制御し、コントローラ24bは、質量分離磁石2が行う動作を制御するように構成されている。また、コントローラ24cは、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5が行う動作を制御し、コントローラ24dは、エンドステーション6が行う動作を制御するように構成されている。なお、図示する例では、コントローラ24cが、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5を制御するように構成されているが、特にこれに限定しない。例えば、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5のそれぞれにコントローラ24を設けるようにしてもよい。
【0025】
メインコントローラ22は、イオン注入装置全体を制御するように構成されている。具体的には、メインコントローラ22は、上記のコントローラ24(a、b、c、d)に各種の制御信号を送信して該コントローラ24(a、b、c、d)の動作を制御する。また、メインコントローラ22は、コントローラ24を介して、それぞれの機器(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)で測定されたパーティクル数を示すデータを受信する。そして、メインコントローラ22は、所定の間隔で送られてくるパーティクル数を示すデータに基づいて、エンドステーション6内のパーティクル数が増加したか否かについて検知し、かつパーティクル数の増加原因となった機器(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)を特定する。
【0026】
その後、メインコントローラ22は、パーティクル数が増加した原因を解消させるための処理を行う。例えば、メインコントローラ22は、イオンビーム20のビーム径を調整するようにイオン注入装置を制御する。また、例えば、メインコントローラ22は、表示・操作部23に、パーティクル増加の原因を解消させるための処理の手順を示す画面を表示させる。なお、メインコントローラ22の機能構成およびパーティクル数が増加した場合の具体的な処理については後段で詳細に説明する。
【0027】
表示・操作部23は、オペレータに対してイオン注入装置の操作画面を表示する表示装置と、オペレータからの運転操作命令の入力を受付けて、該受け付けたデータをメインコントローラ22に出力する入力装置を有して構成される。なお、表示・操作部23の有する表示装置および入力装置の具体的な構成について、本実施形態では特に限定しない。例えば、表示装置には、一般的な液晶パネル装置を用いることができる。また、入力装置には、表示装置の画面上に設けられたタッチパネルによりオペラータから運転操作命令の入力を受付けるタッチパネル方式のものを用いることができる。
【0028】
イオン源1には、プラズマ室(図示せず)があり、イオン源コイル(図示せず)による磁場印加、及び、ガス及びマイクロ波供給源(図示せず)からの、ビームガス及びマイクロ波が導入されプラズマが生成される。また、イオン源1には、高電圧が印加されている引き出し電極(図示せず)が配置さいる。そして、イオン源1は、引き出し電極により、その生成したプラズマからイオンビーム20を引き出し質量分離磁石2に放射する。
【0029】
質量分離磁石2は、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出すものであり(ここで不要なイオンは除かれる)、水平方向にイオンビーム20を偏向させるように構成されている。その後、イオンビーム20は、加速管3でイオン注入に必要なエネルギを持つように加速される。さらにイオンビーム20は、Qレンズ4によりイオン注入対象のターゲット付近に収束するように成形され、さらに、偏向部5により中性分子が除かれ、エンドステーション6の中のホルダ11に載置されているイオン注入ターゲットである対象物(例えばウエハ)10に照射される。
【0030】
エンドステーション6は、対象物10を載置するためのホルダ11と、ホルダ11を取付けたアーム12と、アーム12を回転させるための回転ディスク9とを有している。なお、回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12の構造については後述する。
【0031】
搬送ロボット7は、対象物10をエンドステーション6内のホルダ11に載置し、または、取り出すものであり、大気ローダ8は、搬送ロボット7に対して対象物10の出し入れを行うものである(例えば、イオン注入するための対象物10は、大気ローダ8によって搬送ロボット7に運ばれ、搬送ロボット7内が真空排気された後、対象物10はエンドステーション6内へと搬送される)。
【0032】
次に図2を用いて、エンドステーション6が有する、回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12の構造について説明する。図2は、エンドステーション6が有する、回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12を説明するための概略図である。回転ディスク9には、複数のアーム12が放射状に取付けられている。また、アーム12にはホルダ11が取付けられている(ホルダ11は回転ディスク9の周りに円周上に配列されている)。
【0033】
また、図示するように、対象物10は、ホルダ11上にピン13とストッパ14により固定されている。このピン13には、例えばシリコンなどを用いることができる。また、ストッパ14には、例えば石英により構成されているものを用いることができる。
【0034】
また、回転ディスク9は、回転するとともに、対象物10のイオン注入面と水平方向に往復運動できるように構成されおり、イオンビーム20が対象物10のイオン注入面の全体に照射されるように構成されている。
【0035】
続いて、本実施形態のイオン注入装置のビームラインおよびエンドステーション6に設置されているパーティクルモニタ装置17の設置位置について図3、図4を用いて説明する。図3は、エンドステーション6の側面図である。図示するようにエンドステーション6は、エンドステーション内部を真空状態にするための真空排気用の真空ポンプ15fおよび排気用配管16fを有している。そして、排気用配管16fには、パーティクルモニタ装置17fが接続されている。
【0036】
このパーティクルモニタ装置17fは、タイマを有しており(図示せず)、所定の間隔で単位時間当たりのパーティクル数を測定する。また、パーティクルモニタ装置17fは、上述したエンドステーション6を制御するコントローラ24dを介してメインコントローラ22に測定したパーティクル数および測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)を出力する。なお、本実施形態では、パーティクルモニタ装置17fの具体的な構成については特に限定しない。排気用配管16fの内部のパーティクル数が測定できるように構成されていればよい。例えば、このパーティクルモニタ装置17fには、レーザ光を発して、レーザ光の散乱を観測することで排気用配管16f内部のパーティクル数を測定するものを用いることができる。
【0037】
図4は、本実施形態のビームラインである加速管3、Qレンズ4、および偏向部5を側面から観た図である。図示するように加速管3、Qレンズ4、および偏向部5は、図3で示したエンドステーション6と同様に真空排気用の真空ポンプ15(c、d、e)および排気用配管16(c、d、e)をそれぞれ有している。また、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5は、エンドステーション6と同様に、排気用配管16(c、d、e)にパーティクルモニタ装置17(c、d、e)が接続されている。なお、図示しないが、ビームラインを構成するイオン源1および質量分離磁石2も、それぞれ、図4と同様の構成の真空ポンプ15(a、b)、排気用配管16(a、b)、およびパーティクルモニタ装置17(a、b)を有している。なお、本実施形態のパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)は、タイマにより予め設定された同じ時間にそれぞれパーティクル数を測定するように設定されているものとする。
【0038】
続いて、エンドステーション6でのパーティクル数の増加原因について説明する。エンドステーション6でのパーティクル数の増加原因には、エンドステーション6内で発生したパーティクルが原因となる場合と、ビームラインで発生したパーティクルが原因となる場合がある。
【0039】
エンドステーション6内で発生するパーティクル増加原因としては、例えば、対象物10またはエンドステーション6が有する部品(ピン13、ストッパ14等)が割れ、或いはクラックが入るような場合がある。そして、この場合には、イオン注入を中断して、エンドステーション6内の損傷した部品等を交換してパーティクル増加原因が解消させる必要がある。
【0040】
次に、ビームライン(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、ビーム偏向部5)で発生したパーティクルがエンドステーション6でのパーティクル数の増加原因になる場合を説明する。ビームラインの内壁には表面の酸化等によりパーティクルが付着していることが多い。そして、ビームラインの内壁には、通常イオンビーム20が当たらないように設定されている。しかし、何らかの理由でイオンビーム20が拡がってビームラインの内壁にイオンビーム20が当たることがある。この場合、ここからのパーティクルが発生し、この発生したパーティクルはイオンビーム20内のイオンで帯電して、注入のための電界によりイオンビーム20とともに加速される。こうして発生したパーティクルはイオンビーム20に乗って下流のエンドステーション6へ流れて行くため、エンドステーション6で観測されるパーティクル数が増える。そして、上記のようにビームラインでパーティクルが増加した場合には、パーティクル増加原因となったビームラインの機器を特定し、該特定した機器の内壁にイオンビーム20が当たらないようにイオンビーム20のビーム径を制御する必要がある(この場合にエンドステーション6内の部品等を交換してもパーティクル数の増加を解消させることはできない)。
【0041】
続いて、本実施形態のイオン注入装置のコントローラ24およびメインコントローラ22が有する機能について具体的に説明する。図5は、本実施形態が適用されるイオン注入装置のコントローラ24およびメインコントローラ22の機能構成を説明するための図である。
【0042】
最初にコントローラ24(a、b、c、d)の機能構成を説明する。図示するようにコントローラ24aは、制御部38aと、I/F部39aとを有する。I/F部39aは、イオン源1との間で、またはメインコントローラ22との間で行うデータの送受信を制御する。制御部38aは、イオン源1の動作を制御するための各種の制御信号を生成して、該制御信号をI/F部39aを介してイオン源1に出力する。
【0043】
また、制御部38aは、イオン源1のパーティクルモニタ装置17aが所定の間隔で出力するパーティクル数および該測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)を、I/F部39aを介して受信し、該受信したパーティクル数および該測定した時間を示すデータをI/F部39a経由でメインコントローラ22に出力する。
【0044】
また、コントローラ24bは、コントローラ24aと同様に制御部38bと、I/F部39bとを有する。そして、コントローラ24bの制御部38bは、質量分離磁石2の動作を制御し、かつ、パーティクルモニタ装置17bが所定の間隔で出力するパーティクル数および該測定した時間を示すデータを、I/F部39bを介して受信し、該受信したパーティクル数および該測定した時間を示すデータをI/F部39b経由でメインコントローラ22に出力する。
【0045】
同様に、コントローラ24cの制御部38cは、加速管3、Qレンズ4および偏向部5の動作を制御し、かつ、パーティクルモニタ装置17(c、d、e)がそれぞれ所定の間隔で出力するパーティクル数および該測定した時間を示すデータを、I/F部39cを介して受信し、該受信したパーティクル数および該測定した時間を示すデータをI/F部39c経由でメインコントローラ22に出力する。
【0046】
また、コントローラ24dの制御部38dは、エンドステーション6の動作を制御し、かつパーティクルモニタ装置17dが所定の間隔で出力するパーティクル数および該測定した時間を示すデータを、I/F部39dを介して受信し、該受信したパーティクル数および該測定した時間を示すデータをI/F部39d経由でメインコントローラ22に出力する。
【0047】
なお、コントローラ24(a、b、c、d)には、CPU(中央演算処理装置)と、CPUが実行するプログラムやデータを一時的に記憶する主記憶装置と、上記機能を実行するためのプログラムが予め記憶されているハードディスク等の補助記憶装置と、メインコントローラ22等の外部の装置とのデータの送受信の制御を行うインタフェースとを有する、一般的なコンピュータシステムを用いることができる。そして、制御部38およびI/F部39の機能は、上記CPUが、上記補助記憶装置に記憶されている各プログラム(制御プログラム、I/Fプログラム)を、上記主記憶装置にロードして実行することで実現することができる。また、上記コントローラ24(a、b、c、d)には、上記各機能を実現する専用の回路構成を有する専用装置を用いるようにしてもよい。
【0048】
続いて、メインコントローラ22の機能構成を説明する。メインコントローラ22は、I/F部30と、データ取得部31と、制御部32と、判断部33と、を有する。
【0049】
I/F部30は、コントローラ24(a、b、c、d)との間で、または表示・操作部23との間で行うデータの送受信を制御する。
【0050】
データ取得部31は、I/F部30を介してコントローラ24(a、b、c、d)が送信するパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)が測定したパーティクル数および測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)を取得する。また、データ取得部31は、それぞれの機器(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)で測定された上記取得したパーティクル数を、該取得した時間を示すデータと関連付けて記憶する。
【0051】
制御部32は、コントローラ24(a、b、c、d)を制御するための各種の制御信号をI/F部30を介してコントローラ24(a、b、c、d)に出力する。
【0052】
判断部33は、データ取得部31が記憶しているエンドステーション6のパーティクル数が所定のしきい値を超えたか否かを監視し、所定のしきい値を超えた場合には、制御部32にイオン注入を中断させる。
【0053】
さらに、判断部33は、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所を特定するためのデータが予め格納されている増加箇所特定TB35を有している。また、判断部33は、データ取得部31が記憶している各機器のパーティクル数および測定した時間を示すデータ(直近に測定されたデータとその前に測定されたデータ)に基づいてパーティクル数の増加状態を機器毎に算出する。そして、判断部33は、算出した増加状態および増加箇所特定TB35に格納されているデータに基づいて、パーティクルの増加原因発生箇所を特定する。その後、判断部33は、パーティクル数が増加した原因を解消させるための処理を行う。
【0054】
なお、メインコントローラ22には、CPU(中央演算処理装置)と、CPUが実行するプログラムやデータを一時的に記憶する主記憶装置と、上記機能を実行するためのプログラムが予め記憶されているハードディスク等の補助記憶装置と、コントローラ24等の外部の装置とのデータの送受信の制御を行うインタフェースとを有する、一般的なコンピュータシステムを用いることができる。そして、メインコントローラ22の各機能は、上記CPUが、上記補助記憶装置に記憶されている各プログラム(制御プログラム、I/Fプログラム、データ取得プログラム、判断プログラム)を、上記主記憶装置にロードして実行することで実現することができる。また、メインコントローラ22には、上記各機能を実現する専用の回路構成を有する専用装置を用いるようにしてもよい。
【0055】
続いて、メインコントローラ22が有する増加箇所特定TB35のデータ構造について説明する。図6は、増加箇所特定TB35のデータ構造の一例を模擬的に示した図である。図示するように、増加箇所特定TB35には、ビームライン(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5)およびエンドステーション6でのパーティクル数の増加状態を示すデータを格納するエントリ50(図示する例では、機器毎にパーティクル数が増加した状態に「1」を格納し、パーティクル数が増加していない状態に「0」を格納するものとする)と、エントリ50に格納されたデータに関連付けてパーティクル数増加原因発生箇所を特定するデータを格納するエントリ51と、を有している。
【0056】
例えば、エントリ50のケース1には、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5に「0」が格納されていて、エンドステーション6に「1」が格納されている。そして、エントリ50のケース1に関連付けられているエントリ51には、エンドステーション6を示すデータが格納されている。すなわち、増加箇所特定TB35は、上記のケース1の場合は、エンドステーション6で発生した原因によりパーティクル数が増加していることを特定するように構成されている(ケース1では、エンドステーション6だけでパーティクル数が増加しているため、パーティクル数の増加原因はエンドステーション6で発生しているものに特定できる)。
【0057】
また、例えば、エントリ50のケース2では、イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、およびQレンズ4に「0」が格納されていて、偏向部5およびエンドステーション6に「1」が格納されている。そして、エントリ50のケース2に関連付けられているエントリ51には、偏向部5を示すデータが格納されている。すなわち、増加箇所特定TB35は、上記のケース2の場合は、偏向部5でパーティクル数が増加していることを特定するように構成されている(ケース2では、偏向部5およびイオン源1においてパーティクル数が増加して、偏向部5より上流の機器(Qレンズ4、加速管3等)では、パーティクルは増加していない。そのため、パーティクル数の増加原因は偏向部5で発生していると特定できる)。
【0058】
このように、本実施形態では、パーティクルの発生箇所の下流で測定するパーティクル数が増加するとういうイオン注入装置の特性を利用して、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所を特定するようにしている。
【0059】
続いて、本実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローについて説明する。図7は、本実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6でのパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローを説明するための図である。
【0060】
最初に、メインコントローラ22の制御部32は、表示・操作部23がオペレータから受け付けたイオン注入装置の運転開始の命令を、I/F部30を介して受信する。そして、制御部32は、コントローラ24(a、b、c、d)に対してイオン注入を開始の制御信号を送信して、イオン注入を開始させる(ステップ1)。
【0061】
続いて、イオン注入が開始されると、ビームラインおよびエンドステーション6に設置されたパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)は、所定の間隔で単位時間当たりのパーティクル数を測定し、該測定したパーティクル数を示すデータおよび該測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)を、コントローラ24(a、b、c、d)を介してメインコントローラ22に送信する。そして、メインコントローラ22のデータ取得部31は、パーティクル数を示すデータおよび該測定した時間を示すデータを取得して、測定された箇所(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)毎に、該取得した時間を示すデータと該測定したパーティクル数を示すデータとを関連付けて記憶する(ステップ2)。
【0062】
また、メインコントローラ22の判断部33は、所定のしきい値(以下において「増加判断しきい値」という)を有していて、データ取得部31が記憶しているエンドステーション6のパーティクル数「α」が該増加判断しきい値を超えているか否かの判断を行う。そして、判断部33は、エンドステーション6のパーティクル数「α」が該増加判断のしきい値を超えた場合には、エンドステーション6内のパーティクル数が増加していると判断してステップ4の処理に進む。一方、判断部33は、データ取得部31が記憶しているエンドステーション6のパーティクル数「α」が該増加判断しきい値を、超えない場合には、ステップ2に戻る(ステップ3)。なお、本実施形態では、「増加判断しきい値」の具体的な値について特に限定しない。
【0063】
ステップ4では、メインコントローラ22の判断部33は、エンドステーション6のパーティクル数が増加していることを示すデータを制御部32に出力する。そして、制御部32では、イオン注入の中断を指示する制御信号をコントローラ24(a、b、c、d)に送信して、イオン注入を中断させて、ステップ5の処理に進む。
【0064】
このように本実施形態では、エンドステーション6でのパーティクル数が増加していると判断された場合(上記増加判断しきい値を越えたパーティクル数が測定された場合)、イオン注入が自動的に中断されるように構成されている。そのため、パーティクル数の増加を起因とする不良品の発生を防止することができる。
【0065】
ステップ5では、判断部33は、エンドステーション6におけるパーティクル数の増加原因が、ビームライン(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5)にあるか否かの判断を行う。具体的には、判断部33は、データ取得部31において、それぞれの機器毎に測定時間と関連付けて記憶しているパーティクル数から機器毎のパーティクル数の増加状態を算出する(直近に取得したパーティクル数と、その前に取得したパーティクル数のデータの差分によりパーティクル数の状態を算出する)。そして、判断部33は、ビームラインでパーティクル数増加している場合(算出したパーティクル数の増加状態が、増加箇所特定TB35のエントリ50のケース1以外の場合)、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因がビームラインで発生していると判断し、ステップ6の処理に進む。一方、判断部22は、ビームラインでパーティクル数増加していない場合(算出したパーティクル数の増加状態が、増加箇所特定TB35のエントリ50のケース1の状態に該当する場合)、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因がエンドステーション6で発生していると判断し、ステップ8の処理に進む。
【0066】
ステップ6では、判断部33は、ステップ6で算出したパーティクル数の増加状態と、増加箇所特定TB35に格納されているデータからビームライン中でのパーティクル数の増加原因発生箇所を特定する(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、および偏向部5のいずれかを特定する)。例えば、上記算出したパーティクル数の増加状態が、イオン源1、質量分離磁石2および加速管3でパーティクル数増加しておらず、かつQレンズ4および偏向部5でパーティクル数が増加している場合には、増加箇所特定TB35のエントリ50に格納されているケース3に該当するため、パーティクル数の増加原因発生箇所をQレンズ4であると特定する。
【0067】
そして、判断部33は、特定した機器(例えばQレンズ4)のイオンビームを調整させる指示命令を制御部32に出力する(この場合、イオンビーム20が拡がって、特定した機器の内壁にイオンビーム20が照射されていたもの判断し、イオンビーム20のビーム径を所定のビーム径に絞るように指示命令を出力する)。制御部32は、特定した機器(例えばQレンズ4)でのイオンビーム径を所定にビーム径に絞るようにコントローラ24(a、b、c、d)を設定して、ステップ16の処理に進む(ステップ7)。
【0068】
なお、本実施形態において、イオンビーム20のビーム径を調整する方法については特に限定しない。例えば、増加原因発生箇所に加速管3が特定された場合には、イオン源1での加速を大きくするように制御することで加速管3を通過するイオンビーム20のビーム径を調整するようにしてもよい(この場合、イオンビーム20は、加速管3を素早く通過することとなり、加速管3の内壁に当たらなくなる)。また、例えば、イオン源1、質量分離磁石2、偏向部5の磁石電流を調整することにより、イオンビーム20のビーム径を狭めるように制御してもよい。
【0069】
ステップ5において、判断部33がビームラインでパーティクル数増加していないと判断した場合、判断部33は、ステップ3で用いたデータ取得部31が記憶しているエンドステーション6のパーティクル数「α」の値に応じて、パーティクルの増加原因を解消させるための具体的な処理の手順を特定する(ステップ8)。具体的には、判断部33に増加原因を判断するための所定の増加原因しきい値「a」、「c」を予め保持させておく(a>cとする)。なお、本実施形態において、所定の増加数判断しきい値「a」、「c」の具体的な数字については特に限定しないが、以下の3つの関係を満たしている値が定められているものとする。第1に「α<c」の場合は、エンドステーション6に載置されている対象物10がパーティクルによる影響を受けないものとする。第2に「c≦α≦a」の場合は、エンドステーション6に載置されている対象物10をエンドステーション6から取り出して洗浄することで、その対象物10に再度イオン注入しても不良品を発生しないものとする。また、第3に「α>a」の場合には、エンドステーション6に載置されている対象物10をエンドステーション6から取り出して洗浄してから、再度イオン注入したとしても不良品を発生する可能性が高いものとする。
【0070】
そして、判断部33は、算出した「α」が、上記の「c」より小さい場合(「α<c」を満たす場合)にはステップ9に進む。また、判断部33は、算出した「α」が、上記「c」から「a」の間の範囲内に属する場合(「c≦α≦a」を満たす場合)にはステップ11の処理に進む。さらに、判断部33は、算出した「α」が上記の「a」より大きい場合(「α>a」を満たす場合)にはステップ13に進む(ステップ8)。
【0071】
ステップ9では、判断部33は、制御部32に対して、エンドステーション6に載置されている対象物10をエンドステーション6から取り出させる処理を行わせる。具体的には、エンドステーション6に載置されている対象物10を搬送ロボット7で取り出して大気ローダ8に退避させておく。
【0072】
その後、判断部33は、パーティクルの増加原因を解消させるための具体的な処理(以下において「回復処理」という)の手順を、表示・操作部23に画面表示してステップ15の処理に進む(ステップ10)。なお、ステップ10で表示する回復処理とは、「エンドステーション6内のピン13およびストッパ14等の発塵部品を取替える処理、真空排気を行う処理、その後エンドステーション6から取り出した対象物10を再セットする処理」のことを云う(対象物10はパーティクルによる影響を受けていないため洗浄処理や交換を行う必要はない)。
【0073】
また、ステップ11では、判断部33は、制御部32に対して、エンドステーション6に載置されている対象物10をエンドステーション6から取り出させる処理を行わせる。具体的には、エンドステーション6に載置されている対象物10を搬送ロボット7で取り出して大気ローダ8からも搬出する。
【0074】
そして、判断部33は、回復処理の具体的な手順を、表示・操作部23の表示画面に表示してステップ15の処理に進む(ステップ12)。
ステップ12は、エンドステーション6に載置されていた対象物10をエンドステーション6から取り出して洗浄すれば、再度イオン注入しても不良品を発生しない場合における回復処理の手順表示である。そのため、ステップ10で表示した処理の手順に加えて、さらに、「対象物10を洗浄する処理、洗浄した対象物10をエンドステーション6に再搬入する処理」の手順について表示・操作部23に表示する。
【0075】
ステップ13では、上記のステップ12と同様の処理を行う。そして、判断部33は、回復処理の具体的な手順を、表示・操作部23の表示画面に表示してステップ15の処理に進む(ステップ14)。ステップ14は、エンドステーション6に載置されていた対象物10を洗浄しても、パーティクルの影響で不良品になる可能性が高い場合における回復処理の手順表示である。そのため、判断部33は、取り出した対象物10に代えて新たな対象物10をエンドステーション6にセットさせるようにオペレータを導く必要が有る。したがって、判断部33は、ステップ10で表示した手順に加えて、「エンドステーション6から搬出した対象物10に代えて、新たな対象物10をエンドステーションに搬入する処理」の手順を表示する。
【0076】
ステップ15では、上記回復処理完了を示すデータの入力を表示・操作部23がオペレータから受け付けるまで待機し、表示・操作部23が、オペレータからの上記回復処理完了を受け付けた場合には、制御部32に、その旨を示すデータを出力する。
【0077】
その後、制御部32は、表示・操作部23からの上記回復処理完了を示すデータの入力を受けて、コントローラ24を制御してイオンの再注入を開始する(ステップ16)。
【0078】
なお、上記のフローの説明では、ビームラインでパーティクル増加した場合(ステップ6、ステップ7)に、パーティクル数の増加原因である機器を特定して、該特定した機器でのイオンビーム20のビーム径を調整するようにしている。しかしながら、これはあくまで例示であり、ステップ9〜14で説明したように各機器で測定したパーティクル数に応じて実行する回復処理を変更するようにしてもよい。例えば、増加原因を特定したビームラインを構成する機器で測定したパーティクル数が特定の値より大きい場合には、表示・操作部23に特定した機器が有する部品を取替える処理を促す表示を行うようにしてもよい。
【0079】
このように、本実施形態によれば、エンドステーション6だけではなく、ビームラインを構成する機器にもパーティクルモニタ装置17を設けている。そのため、エンドステーション6で増加したパーティクルの増加原因となった機器を特定することができる。
【0080】
また、本実施形態では、特定したパーティクルの増加原因発生箇所がビームライン部にある場合に、前記イオンビームのビーム径を所定のビーム径に調整するようにしている。そのため、ビームラインで発生したパーティクル増加原因を装置自身が自動的に解消させることができる。さらに、本実施形態では、エンドステーション6で測定したパーティクルの数に応じた回復処理の手順を表示している。したがって、オペレータに対して、最適な回復処理を行わせるように導くことができる。そのため、オペレータのスキルに関係なく迅速かつ確実に通常状態に復帰させることができる(例えば、対象物10を洗浄する必要が無い場合に、オペレータが対象物10の洗浄処理を行う等の不要な処理の発生を防ぐことができる)。
【0081】
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態のイオン注入装置は、上記第1の実施形態のイオン注入装置にさらに、パーティクルの大きさを測定する手段と、該測定したパーティクルの大きさを用いてパーティクル増加の原因となった部品を特定する手段と、を設けるように構成したものである。なお、本発明の第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を用いることとする。
【0082】
さて、本発明の第2の実施形態のイオン注入装置の概略構成は、図1で示した第1の実施形態のものと同じである。また、本第2の実施形態のイオン注入装置のエンドステーション6が有する回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12の概略構成についても、図2で示した第1の実施形態のものと同じである。
【0083】
続いて、パーティクルモニタ装置17について説明する。本第2の実施形態のパーティクルモニタ装置17の設置位置は、図3、図4で示した第1の実施形態のものと同じである。そして、第2の実施形態では、エンドステーション6に設置されているイオン注入装置17fは、排気用配管16f内のパーティクル数を測定する手段に加えて、さらにパーティクルのサイズを測定する手段を有している。そして、パーティクルモニタ装置17fは、測定したパーティクルの数および測定した時間を示すデータ(例えば、測定開始時刻および測定終了時刻)と、測定したパーティクルのサイズとをコントローラ24dを介してメインコントローラ22に出力するように構成されている。
【0084】
このように、本第2の実施形態において、パーティクルのサイズも測定するようにしたのは、測定したパーティクルのサイズを用いてパーティクルの発生原因となった部品を特定するためである。このパーティクルのサイズを用いてパーティクルの発生原因となった部品を特定するのは以下の原理による。
【0085】
一般的に材料によってイオンビームが照射されて発生するパーティクルのサイズ分布は異なっている。例えば、シリコンは単結晶或いは多結晶構造のためビームの熱によって歪が大きくなり易くクラックが入って飛散し易い。その結果、シリコンで構成された部品から発生するパーティクルのサイズは大きくなる傾向にある。一方、石英の場合は、ビームの熱によって軟化し歪が小さいのでクラックが入りにくい。その結果、石英で構成された部品から発生するパーティクルサイズは、小さくなる傾向にある。そのため、パーティクルの大きさを測定すれば、上記のパーティクルの性質を利用することでパーティクルを発生させている部品を特定することができる(例えば、測定したパーティクルのサイズを用いてシリコンで構成されている部品からパーティクルが発生していると特定する)。
【0086】
続いて、本第2の実施形態のコントローラ24およびメインコントローラ22の機能構成について説明する。本第2の実施形態のコントローラ24の機能は図5で示した第1の実施形態のものと同じである。また、メインコントローラ22の機能は、図5で示した第1の実施形態のものと判断部33およびデータ取得部31が有する機能が異なる以外は同じである。
【0087】
データ取得部31は、第1の実施形態のデータ取得部31が有する機能を有し、さらに、I/F部30を介してコントローラ24dが送信するパーティクルモニタ装置17fが測定したパーティクルのサイズを示すデータを取得する。そして、データ取得部31は、上記取得したパーティクルのサイズを、上述したパーティクル数および取得した時間を示すデータに関連付けて記憶する。
【0088】
また、判断部33は、第1の実施形態の判断部33の機能を有し、さらに、データ取得部31が記憶しているパーティクルのサイズを用いてパーティクル増加の原因となったエンドステーション6の部品の特定を行う。そして、判断部33は、特定した部品の交換を促すデータを表示・操作部23の表示画面に表示する。
【0089】
続いて、本第2の実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローについて説明する。図8は、本第2の実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローを説明するための図である。
【0090】
最初に上述した図7のステップ1と同じ処理を行い、イオン注入が開始される(ステップ10)。
【0091】
続いて、イオン注入が開始されると、ビームラインおよびエンドステーション6に設置されたパーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)は、所定の間隔で単位時間当たりのパーティクル数を測定する。また、エンドステーション6に設置されたパーティクルモニタ装置17fは、さらに、パーティクルのサイズを測定する。そして、パーティクルモニタ装置17(a、b、c、d、e、f)は、該測定したパーティクル数を示すデータおよび該測定した時間を示すデータを、コントローラ24(a、b、c、d)を介してメインコントローラ22に送信する(パーティクルモニタ装置17fは、測定したパーティクルサイズについても送信する)。そして、メインコントローラ22のデータ取得部31は、パーティクル数を示すデータおよび該測定した時間を示すデータを取得して、測定した箇所(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5、エンドステーション6)毎に、該取得した時間を示すデータと該測定したパーティクル数を示すデータとを関連付けて記憶する。また、データ取得部31は、取得したエンドステーション6で測定されたパーティクルのサイズについても、該取得した時間を示すデータと関連づけて記憶する(ステップ11)。
【0092】
そして、上述の図7のステップ3〜ステップ8と同じ処理を行う(ステップ12〜ステップ17)。
【0093】
ステップ18(19、20)では、メインコントローラ22の判断部33が、データ取得部31が記憶しているパーティクルのサイズを用いて交換する必要がある部品の特定をする。具体的には、判断部33は、パーティクルのサイズに関連付けて交換が必要な部品名が格納されている交換部品特定DB(図示せず)を有していて、データ取得部31が記憶しているパーティクルのサイズと交換部品特定DBに格納されているデータに基づいて交換が必要な部品を特定して(例えば、ピン13の交換が必要であると特定する)、ステップ21(22、23)の処理に進む。その後、ステップ21(22、23)では、図7のステップ9(11、13)と同じ処理を行う。
【0094】
ステップ24(25、26)では、上述の図7で説明ステップ10(12、14)と同様に、判断部33は回復処理の手順を表示・操作部23に表示する。また、判断部33は、上記回復処理の手順を表示する際に、ステップ18(19、20)で特定した交換必要な部品名を表示する。その後、上述の図7で説明したステップ15〜16と同じ処理を行う(ステップ27、28)。
【0095】
このように、本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態のイオン注入装置の機能に加えて、さらに、エンドステーション6の交換が必要な部品を特定して、該部品名を表示・操作部23に表示させるように構成されている。そのため、オペレータに無駄なく部品交換を行わせるように導くことができる(使用できる部品が交換されることを防ぐことができる)。また、パーティクルの増加によりイオン注入装置の運転を中断した場合に、オペレータが行う交換が必要な部品の点検作業時間を短縮させることができる。したがって、迅速にイオン注入装置を正常な状態に復帰させることが可能となり、イオン注入装置の有効使用効率および生産性を向上させることができる。
【0096】
なお、本第2の実施形態の説明では、イオン注入装置のエンドステーション6だけでパーティクルのサイズを測定する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ビームライン(イオン源1、質量分離磁石2、加速管3、Qレンズ4、偏向部5)において、パーティクルのサイズを測定するようにして、メインコントローラ22で、ビームラインの交換部品についても特定して、表示・操作部23に表示させるようにしてもよい。
【0097】
また、パーティクルのサイズにより特定する部品を、シリコンまたは石英で構成されているものを例に説明したが、金属で構成されている部品についても、同様に特定することができる。
【0098】
このように、本発明によれば、エンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所を的確に特定し、それに応じた適切な対策を行なうことができる。そのため、パーティクルの増加により発生する不良品の個数を大幅に減らすことができる。また、本発明によれば、パーティクル発生原因を迅速に解消させることができるため、イオン注入装置の有効使用効率を高めることができる。
【0099】
なお、本発明は以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、パーティクル増加に対する回復処理の手順を表示・操作部23に表示してオペレータの通知する例を説明しているが、表示・操作部23に通信手段を設けて、工場のホストに該回復処理の手順を表示するようにしてもよい。
【0100】
また、例えば、本実施形態では、エンドステーション6に回転ディスク9を設けてスキャンする方式のイオン注入装置について説明したが、回転ディスクを固定してイオンビームをスキャンする方式のイオン注入装置であってもよい。
【0101】
また、例えば、本実施形態では、エンドステーション6の排気用配管16fにパーティクルモニタ装置17fを接続してパーティクル数を測定する例を説明しているが、パーティクル測定装置17fをエンドステーション6内部のホルダ11の近傍に設けるようにしてもよい。
【0102】
また、本実施形態のイオン注入装置のイオン種類は、酸素イオンでも、ボロン、リン等の不純物イオンでもよい。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、イオン注入装置の有効使用効率および生産性を高めることがきる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態が適用されたイオン注入装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態のエンドステーション6が有する、回転ディスク9、ホルダ11、およびアーム12を説明するための概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態のエンドステーション6の側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の加速管3、Qレンズ4、および偏向部5の側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のコントローラ24およびメインコントローラ22の機能構成を説明するための図である。
【図6】本発明の第1実施形態の増加箇所特定TB35のデータ構造の一例を模擬的に示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローを説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施形態が適用されるイオン注入装置のエンドステーション6のパーティクル数の増加原因発生箇所の特定とその対応処理のフローを説明するための図である。
【図9】従来のイオン注入装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1…イオン源、2…質量分離磁石、3…加速管、4…Qレンズ、5…偏向部、6…エンドステーション、7…搬送ロボット、8…大気ローダ、9…回転ディスク、10…対象物、11…ホルダ、12…アーム、13…ピン、14…ストッパ、15…真空ポンプ、16…排気用配管、17…パーティクルモニタ装置、20…イオンビーム、21…接続管、22…メインコントローラ、23…表示・操作部、24…コントローラ、30…I/F部、31…データ取得部、32…制御部、33…判断部、35…増加箇所特定TB、38…制御部、39…I/F部
Claims (8)
- イオンビームを照射する対象物が載置されているエンドステーション部と、前記エンドステーション部に前記イオンビームを導くビームライン部と、を有する該対象物にイオンを注入するイオン注入装置であって、
前記エンドステーション部のパーティクル数を測定するエンドステーション部測定手段と、
前記ビームライン部のパーティクル数を測定するビームライン部測定手段と、
を有すること
を特徴とするイオン注入装置。 - 請求項1に記載のイオン注入装置であって、
前記ビームライン部は、前記イオンビームを引き出すイオン源、質量と電荷との特定の比を持つイオンだけを取り出す質量分離磁石、イオン注入に必要なエネルギを持つように前記イオンビームを加速させる加速管、該イオンビームを収束させるQレンズ、および該イオンビームに含まれる中性分子を除く偏向部を含み、
前記ビームライン部測定手段は、前記イオン源、前記質量分離磁石、前記加速管、前記Qレンズ、および前記偏向部のそれぞれのパーティクル数を測定すること
を特徴とするイオン注入装置。 - 請求項1および2のいずれか一項に記載のイオン注入装置であって、
前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数が所定のしきい値を超えているか否かを検知する手段と、
前記所定のしきい値を超えた場合に、イオンビームの注入を中断させる手段と、
前記所定のしきい値を超えた場合に、前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数およびビームライン部測定手段が測定したパーティクル数を用いて、パーティクル数の増加原因発生箇所を特定する判断手段と、を有すること
を特徴とするイオン注入装置。 - 請求項3に記載のイオン注入装置であって、
前記判断手段が特定した増加原因発生箇所がビームライン部にある場合に、前記イオンビームのビーム径を所定のビーム径に調整する手段と、
前記判断手段が特定した増加原因発生箇所がエンドステーション部にある場合に、パーティクル数の増加原因を解消させるための処理の手順を表示する表示手段と、を有すること
を特徴とするイオン注入装置。 - 請求項4に記載のイオン注入装置であって、
前記表示手段は、前記エンドステーション部測定手段が測定したパーティクル数に応じた増加原因を解消させるための処理の手順を表示すること
を特徴とするイオン注入装置。 - 請求項4および5のいずれか一項に記載のイオン注入装置であって、
前記エンドステーション部測定手段および前記ビームライン部測定手段は、それぞれパーティクルのサイズを測定し、
前記判断手段は、前記測定したパーティクルのサイズに基づいて交換する必要がある部品を特定し、該特定した部品名を前記表示手段に表示させること
を特徴とするイオン注入装置。 - 請求項1、2、3、4、5および6のいずれか一項に記載のイオン注入装置であって、
前記対象物に注入するイオンとは酸素イオンであること
を特徴とするイオン注入装置。 - イオンビームを照射する対象物が載置されているエンドステーション部と、前記エンドステーション部に前記イオンビームを導くビームライン部と、を有する該対象物にイオンを注入するイオン注入装置におけるパーティクルの増加原因発生箇所を特定する方法であって、
前記エンドステーション部および前記ビームライン部のパーティクル数をそれぞれ測定するステップと、
前記測定したパーティクル数を用いてパーティクル数の増加原因発生箇所を特定するステップと、
前記特定した増加原因発生箇所のパーティクル増加原因を解消させるための処理の手順を表示するステップと、を実行すること
を特徴とする方法。
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