JP2004356072A - イオン移動度検出器 - Google Patents
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Abstract
【課題】時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することが可能なイオン移動度検出器を提供すること。
【解決手段】ゲート電極31と電極35との間、即ちゲート電極31よりもイオン化室1側には、アパーチャ電極41が配置されている。アパーチャ電極41は、板状部材からなり、中心軸が集電極45の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極45の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室1の内部空間の断面積よりも小さい開口41aが形成されている。アパーチャ電極41は、電極35とゲート電極31とで挟持される。アパーチャ電極41は、電極35と接触することにより、当該電極35と電気的に接続され、電極35と同じ電位に保たれる。アパーチャ電極41に形成された開口41aの内径は、ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔以上に設定されている。
【選択図】 図2
【解決手段】ゲート電極31と電極35との間、即ちゲート電極31よりもイオン化室1側には、アパーチャ電極41が配置されている。アパーチャ電極41は、板状部材からなり、中心軸が集電極45の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極45の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室1の内部空間の断面積よりも小さい開口41aが形成されている。アパーチャ電極41は、電極35とゲート電極31とで挟持される。アパーチャ電極41は、電極35と接触することにより、当該電極35と電気的に接続され、電極35と同じ電位に保たれる。アパーチャ電極41に形成された開口41aの内径は、ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔以上に設定されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン移動度検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のイオン移動度検出器として、試料分子をイオン化するイオン化室と、イオン化室にてイオン化された試料分子が長手方向に移動するドリフト室と、イオン化室とドリフト室との間に設けられ、印加される電位が変化することによりイオン化された試料分子を通過させるゲート電極と、イオン化された試料分子を収集するための集電極と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5338931号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することが可能なイオン移動度検出器を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、時間分解能及び検出効率の低下の抑制を可能とするイオン移動度検出器について鋭意研究を行った結果、以下のような事実を新たに見出した。
【0006】
イオン化された試料分子は、イオン化室の空間断面積あるいは出口面積で制限されてドリフト室に入ることになる。そのため、イオン化室の空間断面積あるいは出口面積が大きいと、イオン化された試料分子の位置分布が拡がってしまい、ドリフト室の長手方向中心軸に直交する方向への分散が大きくなり、時間分解能及び検出効率が劣化してしまう。一方、イオン化室の空間断面積あるいは出口面積を小さくすると、イオン化室内における試料分子の挙動に乱れが生じたり、試料分子が効率良くイオン化されなかったり、イオン化された試料分子の一部しかドリフト室内に導入できなかったりして、時間分解能及び検出効率が劣化してしまう。
【0007】
また、試料分子にエネルギー線を照射してイオン化する場合、照射されたエネルギー線がドリフト室内にまで到達すると、ドリフト室内で中性化した試料分子がエネルギー線により再イオン化する惧れがある。エネルギー線がドリフト室内にまで到達すると、ドリフト室内で再イオン化した試料分子は、イオン化室内にてイオン化された試料分子とは異なる態様(飛行時間(TOF)、移動軌跡等)でドリフト室内を移動することになり、時間分解能の劣化を招いてしまう。
【0008】
ドリフト室の他端側には、通常、イオン化された試料分子を収集するための集電極が設けられるが、この集電極にエネルギー線が到達すると、集電極からの出力にノイズが発生する惧れがある。また、エネルギー線がドリフト室を構成する物質に到達し、当該物質からの二次電子放出が発生しやすくなり、放出された二次電子がイオン化された試料分子と反応し、中性化する惧れがある。これらの要因は、信号強度やS/Nの劣化を招いてしまう。
【0009】
試料分子をイオン化室内に導入する形態(試料分子の導入方向、キャリアガスの流れ方向等)によっては、イオン化された試料分子に慣性力(運動エネルギー)が与えられて、イオン化された試料分子の軌道の軌道が乱れる惧れがあり、時間分解能の劣化を招いてしまう。また、イオン化室内に導入された試料分子によりイオン化室内に試料分子の対流が生じると、イオン化された試料分子に余分な運動エネルギーを与えやすくなってしまう。更に、イオン化された試料分子の移動方向と反対方向に流れるドリフトガスがイオン化室内に流れ込むと、イオン化室内のガスの流れが乱れてしまい、イオン化室内の試料分子(イオン化された試料分子も含む)の挙動に悪影響を与えてしまう。
【0010】
これらの問題点等を考慮して、本発明者等は、イオン化室とゲート電極の間に、中心軸が集電極の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室の内部空間の断面積よりも小さい開口が形成されたアパーチャ電極を配置することを発案するに至った。そして、アパーチャ電極とゲート電極との間に所定の電位差を与える(陽イオンのイオン移動度を検出する場合には、アパーチャ電極にゲート電極の電位よりも高い電位を印加する。一方、陰イオンのイオン移動度を検出する場合には、アパーチャ電極にゲート電極の電位よりも低い電位を印加する。)ことにより、ゲート電極側からイオン化室側への電界の滲み込みが発生し、当該電界により、イオン化された試料分子を有効的に集電極の中心軸上に集めることが可能となることが判明した。
【0011】
かかる研究結果等を踏まえ、本発明に係るイオン移動度検出器は、試料分子をイオン化するイオン化室と、一端側がイオン化室に連通し、イオン化された試料分子が長手方向に移動するドリフト室と、イオン化室とドリフト室との間に設けられ、印加される電位が変化することによりイオン化された試料分子を通過させるゲート電極と、ドリフト室の他端側に設けられ、イオン化された試料分子を収集するための集電極と、を備えたイオン移動度検出器であって、ゲート電極よりもイオン化室側に設けられ、中心軸が集電極の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室の内部空間の断面積よりも小さい開口が形成されたアパーチャ電極を有しており、アパーチャ電極とゲート電極との間には、所定の電位差が与えられていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るイオン移動度検出器では、アパーチャ電極に形成された開口により、ゲート電極側からイオン化室側への電界の滲み込みが発生し、イオン化された試料分子が有効的に集電極の中心軸上に集められることとなる。これにより、イオン化された試料分子のドリフト室の長手方向中心軸に直交する方向への分散が小さくなる。また、イオン化室の空間断面積を小さくする必要がないので、上述したイオン化室内における試料分子の挙動に乱れが生じたり、試料分子が効率良くイオン化されなかったり、イオン化された試料分子の一部しかドリフト室内に導入できなかったりといった問題が生じるようなこともない。これらの結果、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができる。
【0013】
また、イオン化室に導入された試料分子にエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を更に有することが好ましい。このように構成した場合、アパーチャ電極により、エネルギー線照射手段から照射されたエネルギー線がドリフト室内にまで到達するのが制限されることとなり、ドリフト室内で中性化した試料分子が再イオン化するのを防ぐことができる。また、ドリフト室を構成する物質からの二次電子放出が発生し難くなり、イオン化された試料分子の中性化を防ぐことができる。これらの結果、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができると共に、信号強度やS/Nの劣化を抑制することができる。
【0014】
また、アパーチャ電極に形成された開口の内径は、ゲート電極とアパーチャ電極との間隔以上に設定されていることが好ましい。このように構成した場合、ゲート電極側からイオン化室側への電界の滲み込みを適切且つ効果的に発生させることができる。
【0015】
また、ゲート電極とアパーチャ電極との間に設けられたメッシュ状の補助電極を更に有しており、補助電極には、ゲート電極の電位とアパーチャ電極の電位との間の電位が印加されていることが好ましい。このように構成した場合、ゲート電極の電位が変化しても、ゲート電極側からイオン化室側への電界の安定した滲み込みを発生させることができる。
【0016】
また、ドリフト室の他端側に連通し、ドリフト室内にドリフトガスを導入するドリフトガス導入手段を更に有しており、アパーチャ電極の少なくとも端部は、ドリフトガスを透過することが好ましい。このように構成した場合、ドリフトガスの流れに乱れが発生するのを抑制することができ、イオン化された試料分子の移動に及ぼす悪影響を低減することができる。また、ドリフト室の内壁近傍に存在する中性化された試料分子を効果的に除去することもできる。
【0017】
また、アパーチャ電極は、メッシュ状とされていることが好ましい。このように構成した場合、ドリフトガスを確実に透過し得る構成のアパーチャ電極を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0018】
また、アパーチャ電極は、貫通孔を有する板状部材からなることが好ましい。このように構成した場合、ドリフトガスを確実に透過し得る構成のアパーチャ電極を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係るイオン移動度検出器について図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。図2は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図3は、図2におけるIII−III線に沿った断面図である。図4は、図3におけるIV−IV線に沿った断面図である。イオン移動度検出器IMS1は、図1に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。イオン化室1及びドリフト室21内の圧力は、大気圧相当である。なお、本第1実施形態に係るイオン移動度検出器IMS1は、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0021】
イオン化室1は、図2〜図4に示されるように、両端に開口3a,3bを有する筒状部材3(本実施形態においては、内周断面形状及び外周断面形状が矩形である角形の筒状部材を用いている。)内に形成されており、試料分子をイオン化する領域である。筒状部材3は、電気絶縁性材料からなる。イオン化室1(筒状部材3の内部空間)は、筒状部材3の一方の開口3aを通してドリフト室21に連通している。筒状部材3には、試料導入管5と、真空紫外ランプ7が設けられている。
【0022】
試料導入管5は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給源9及び試料分子を供給する試料分子供給源11に接続されており、試料導入管5の一端に形成された導入口13を通してイオン化室1に連通している。キャリアガス供給源9から供給されたキャリアガス及び試料分子供給源11から供給された試料分子は、混合された状態で、試料導入管5を通ってイオン化室1内に導入される。ここで、試料導入管5は、試料分子をイオン化室1内に導入する試料分子導入手段として機能する。なお、本実施形態において、キャリアガス供給源9と試料分子供給源11とは試料導入管5に対して直列に接続されているが、並列に接続されていてもよい。
【0023】
真空紫外ランプ7は、試料導入管5を通してイオン化室1に導入された試料分子に真空紫外光を照射する。真空紫外光が照射された試料分子は、イオン化されることとなる。ここで、真空紫外ランプ7は、イオン化室1に導入された試料分子にエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段として機能する。なお、真空紫外ランプ7としては、希ガス等を利用するエキシマランプやキャピラリ放電管、水素放電ランプを用いることができる。また、真空紫外ランプ7の代わりに、紫外線やX線を放出するD2ランプ、軟X線管や、多光子吸収によってイオン化させることができるUVレーザを用いることができる。
【0024】
真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向と試料導入管5を通した試料分子の導入方向とは、図1にも示されるように、互いに交差(本第1実施形態においては、直交)すると共に、ドリフト室21の長手方向中心軸Lと交差(本第1実施形態においては、直交)する方向に設定されている。なお、本第1実施形態においては、真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向、試料導入管5を通した試料分子の導入方向、及び、ドリフト室21の長手方向中心軸Lは一点で交差している。
【0025】
筒状部材3には、試料導入管5を通した試料分子の導入方向で見て導入口13と対向する位置に、導入された試料分子を排出するための排出口15が形成されている。イオン化室1は、排出口15を通して外部空間に連通している。
【0026】
筒状部材3の他方の開口3bは、電子捕集電極17により塞がれている。この電子捕集電極17は、試料分子がイオン化される際に発生する電子を捕集するためのものであり、所定の正の電位が印加されている。電子捕集電極17には、筒状部材3の他方の開口3bに内挿される突出部19が形成されている。
【0027】
ドリフト室21は、図2〜図4に示されるように、ドリフト管23内に形成されており、一端側がイオン化室1に連通し、イオン化室1内でイオン化された試料分子がその長手方向に移動する領域である。ドリフト管23は、複数のリング状の電極25と、複数のリング状の電気絶縁体27とを含んでおり、電極25と電気絶縁体27が交互に積層された構成となっている。即ち、電極25と電極25との間に電気絶縁体27が配置され、電極25と電極25とは電気絶縁体27により電気的に絶縁された状態にある。電極25及び電気絶縁体27は、ドリフト室21内にイオン化された試料分子を移動させるための電界を形成する電界形成手段として機能する。
【0028】
ドリフト管23の一端側には、ゲートシャッターとしてのゲート電極31が設けられている。ゲート電極31としては、ブラッドバリー−ニールセン・シャッター(Bradbury−Nielsen shutter)を用いることができる。ゲート電極31は、印加される電位が変化することによりイオン化された試料分子を通過させるものであり、一対の電極31aと電気絶縁性を有する枠部材32とを含んでいる。各電極31aは、基幹部と当該基幹部から交差する方向に伸びる複数の分岐部とを有した櫛歯形状を呈しており、枠部材32に互いに噛み合うように配置されている。上記一対の電極31a間の電位差を0とすることにより、イオン化された試料分子の通過が許容され、当該電位差を0より大きい所定の値とすることにより、イオン化された試料分子の通過が禁止される。したがって、ゲート電極31にパルス状の信号を供給し、所定の時間、一対の電極31a間の電位差を0とすることにより、当該所定の時間だけイオン化された試料分子がゲート電極31を通過することとなる。ゲート電極31により、イオン化室1とドリフト室21とが分離されることとなる。ゲート電極31には、電位を印加するためのリード部33がドリフト管23の径方向に突出して設けられている。
【0029】
ゲート電極31と筒状部材3との間には、略円板状の電極35が配置されている。電極35は、ドリフト管23を構成する電極25と同様の形状を有する外周部37と、当該外周部37から内側方向に伸びる基部39とを有している。基部39には、筒状部材3の一方の開口3aに連通する開口39aと、当該開口39aの外周寄りの位置に形成されたガス放出口39bが形成されている。外周部37にも、ガス放出口37aが形成されている。ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、電極35の基部39に形成された開口39a及び筒状部材3の一方の開口3aを通して、イオン化室1に連通している。また、ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、ガス放出口37a,39bを通して、外部空間に連通している。
【0030】
ドリフト管23の他端側には、導電性の基板43が設けられている。基板43には、イオン化された試料分子を収集するための集電極45(本実施形態においては、アノードとして機能する。)と、ドリフトガスをドリフト室21内に導入するドリフトガス導入管47が配置されている。
【0031】
集電極45は、円板状の部材であり、基板43に電気絶縁性を有するリング状の部材46を介して設けられた支持部材にネジ止めされることにより、基板43に配置されている。リング状の部材46以外に集電極45を基板43と電気的に絶縁する手段としては、集電極45のリード部をガラス等の電気絶縁材料で封着したり、Oリング止めをしたりしてもよい。集電極45としては、ファラデー・カップ等を用いることができる。集電極45は、その中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致するように設けられている。集電極45の電位は、基板43と同じ電位に保たれている。
【0032】
ドリフトガス導入管47は、ドリフトガスを供給するドリフトガス供給源51に接続されており、ドリフトガス導入管47の一端に形成された導入口49を通してドリフト室21の他端側に連通している。ドリフトガス供給源51から供給されたドリフトガスは、ドリフトガス導入管47を通り、ドリフト室21内におけるイオン化された試料分子の移動方向に見て集電極45より前方からドリフト室21内に導入される。即ち、集電極45は、ドリフトガスの流れ方向で見て、ドリフトガス導入管47の導入口49よりも下流に位置している。
【0033】
ドリフト室21の他端側には、メッシュ形状を呈したグリッド電極53が集電極45に対向して設けられている。このグリッド電極53は、電極25のうちの最も基板43に近い電極に電気的に接続されており、当該電極と同じ電位とされている。グリッド電極53は、ドリフト室21内に形成される電界がゲート電極31における電位のパルス状の変化により変動するのを抑制する。
【0034】
集電極45の外周側には、補助電極55が配置されている。補助電極55は、板状部材からなり、その中央部に集電極45の直径よりも若干大きい内径を有する開口57が形成されている。補助電極55は、開口57内に集電極45が位置するように、集電極45と同一平面内に設けられている。補助電極55の外周部分は、基板43と接しており、当該基板43と電気的に接続されている。これにより、補助電極55の電位は、基板43と同じ電位に保たれる。また、補助電極55の電位は、集電極45の電位と同じである。
【0035】
補助電極55には、複数の貫通孔が形成されている。ドリフトガス導入管47の導入口13から導入されるドリフトガスは、まず、基板43と補助電極55及び集電極45とで画成される空間内に流入する。その後、ドリフトガスは、補助電極55に形成された貫通孔、及び、補助電極55の内周と集電極45の外周との間隙を通って、ドリフト室21内を流れていく。基板43と補助電極55及び集電極45とで画成される空間は、ドリフトガスのバッファ領域として機能し、ドリフトガスの圧力や流れを緩和して平均化する。なお、補助電極55は、貫通孔を有する板状部材の他に、メッシュ状の部材としてもよい。
【0036】
ゲート電極31と電極35との間、即ちゲート電極31よりもイオン化室1側には、図5にも示されるように、アパーチャ電極41が配置されている。図5は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。
【0037】
アパーチャ電極41は、図6にも示されるように、板状部材からなり、中心軸が集電極45の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極45の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室1の内部空間の断面積よりも小さい開口41aが形成されている。アパーチャ電極41は、電極35とゲート電極31とで挟持される。アパーチャ電極41は、電極35と接触することにより、当該電極35と電気的に接続され、電極35と同じ電位に保たれる。アパーチャ電極41に形成された開口41aの内径は、ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔以上に設定されている。ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔は、例えば1.2mmであり、イオン化室1の内径は、例えば14mmであり、開口41aの内径は例えば8mmである。アパーチャ電極41は、板状部材の他に、図7に示されるように、メッシュ状の部材としてもよい。また、図8に示されるように、板状部材に複数の貫通孔41bを形成してもよい。
【0038】
ドリフト室21内に導入されたドリフトガスは、ドリフト室21内をイオン化室1方向に向かって流れ、ゲート電極31を通った後、アパーチャ電極41に形成された開口41aを通って、アパーチャ電極41と電極35とで画成される空間に入り、ガス放出口37a,39bから外部に排出される。ドリフト室21内におけるドリフトガスの流れ方向と、イオン化された試料分子の移動方向とは、反対方向となる。
【0039】
アパーチャ電極41がメッシュ状の部材である場合、あるいは、複数の貫通孔41bが形成されている場合、ドリフトガスの一部は、アパーチャ電極41を透過して、アパーチャ電極41と電極35とで画成される空間に入ることとなる。なお、アパーチャ電極41にドリフトガスを透過する構成を採用する場合、少なくともアパーチャ電極41の端部(ドリフト管23(ドリフト室21)の内壁近傍部分)がドリフトガスを透過する構成となっておればよく、アパーチャ電極41全体がドリフトガスを透過する構成となっている必要はない。
【0040】
電極25,35、電気絶縁体27、ゲート電極31、筒状部材3及び電子捕集電極17は、基板43と抑え板59とで挟持されている。抑え板59は、電極25、電気絶縁体27、ゲート電極31、筒状部材3及び電子捕集電極17を挟持した状態で、一端側が基板43に固定された支柱61の他端側に螺合するナット63により基板43に対して固定される。なお、電子捕集電極17は、抑え板59にネジ止めされている。
【0041】
ところで、基板43、電極25,35及び電子捕集電極17は、隣り合うもの同士が分圧抵抗(図示せず)により電気的に接続されている。分圧抵抗は、ブリーダ回路基板65上に形成された薄膜状の抵抗体であり、導電性を有するネジ67を通して基板43、電極25,35及び電子捕集電極17に電気的に接続される。このネジ67は、ブリーダ回路基板65を固定する機能も有している。そして、上述したように、電子捕集電極17に所定の正の電位を印加し、基板43を接地すると、図9及び図10に示されるように、イオン化室1からドリフト室21にわたって、電界が形成される。この電界により、イオン化された試料分子は、イオン化室1からドリフト室21に移動し、ドリフト室21内を集電極45に向けて移動する。なお、図9は、ドリフト室における電界分布とイオン化された試料分子の移動軌跡を示す図であり、図10は、イオン化室における電界分布とイオン化された試料分子の移動軌跡を示す図である。図9及び図10中、実線はイオン化された試料分子の移動軌跡を示し、一点鎖線はイオン化室1及びドリフト室21における電界電界の等電位面を示している。
【0042】
なお、図9と図10とでは、各電極25等に設定されている電位が異なっている。図9中、電極25、ゲート電極31及び基板43に設定されている電位(+)はそれぞれ、
ゲート電極31 :1.74kV
ゲート電極31の隣の電極25 :1.6kV
…
グリッド電極53が電気的に接続された電極25 :0.1kV
基板43 :0V
である。また、図10中、電極25、ゲート電極31及び基板43に設定されている電位(+)はそれぞれ、
電子捕集電極17 :1.5kV
電極35(アパーチャ電極41) :1.35kV
ゲート電極31 :1.25kV
である。図10から理解できるように、アパーチャ電極41に形成された開口41aにより、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みが発生している。
【0043】
続いて、上述した構成を有するイオン移動度検出器IMS1の測定原理を簡単に説明する。イオン化室1にてイオン化された試料分子(以下、単にイオンと称する)を、ゲート電極31にパルス状の電圧を印加して電位を変化させることで、図9にも示されるように、アパーチャ電極41に形成された開口41aを通ってドリフト室21内に導入する。このとき、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みにより、イオン化された試料分子が有効的に集電極45の中心軸(ドリフト室21の長手方向中心軸L)上に集められることとなる。ドリフト室21に導入されたパルス状のイオン群は、ドリフトガス導入管47より導入されたドリフトガスの分子の影響を受けることで時間的遅れを持って移動し、ドリフト室21内に形成されたほぼ均一の電界に沿って集電極45に到達する。集電極45に到達したイオン群はパルス状の電気信号として出力され、当該電気信号に基づいて、ゲート電極31から集電極45までの到達時間(飛行時間(TOF)、集電極45に到達したイオン群の量等が検出される。上記到達時間からイオン移動度を求めることができ、試料分子の同定が可能となる。また、電気信号の応答波形の積分値もしくはピーク値から、試料分子の定量が可能となる。
【0044】
以上のように、本第1実施形態によれば、アパーチャ電極41に形成された開口41aにより、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みが発生し、イオン化された試料分子が有効的に集電極45の中心軸(ドリフト室21の長手方向中心軸L)上に集められることとなる。これにより、イオン化された試料分子のドリフト室21の長手方向中心軸Lに直交する方向への分散が小さくなる。また、イオン化室1の空間断面積を小さくする必要がないので、イオン化室1内における試料分子の挙動に乱れが生じたり、試料分子が効率良くイオン化されなかったり、イオン化された試料分子の一部しかドリフト室21内に導入できなかったりといった問題が生じるようなこともない。これらの結果、イオン移動度検出器IMS1における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができる。
【0045】
また、本第1実施形態においては、アパーチャ電極41により、真空紫外ランプ7から照射された真空紫外光がドリフト室21内にまで到達するのが制限されることとなり、ドリフト室21内で中性化した試料分子が再イオン化するのを防ぐことができる。また、ドリフト室21を構成する物質(電極25や集電極45等)からの二次電子放出が発生し難くなり、イオン化された試料分子の中性化を防ぐことができる。これらの結果、イオン移動度検出器IMS1における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができると共に、信号強度やS/Nの劣化を抑制することができる。
【0046】
また、本第1実施形態において、アパーチャ電極41に形成された開口41aの内径は、ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔以上に設定されている。これにより、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みを適切且つ効果的に発生させることができる。
【0047】
また、本第1実施形態において、アパーチャ電極41の少なくとも端部は、ドリフトガスを透過する。これにより、ドリフトガスの流れに乱れが発生するのを抑制することができ、イオン化された試料分子の移動に及ぼす悪影響を低減することができる。また、ドリフト室21(ドリフト管23)の内壁近傍に存在する中性化された試料分子を効果的に除去することもできる。
【0048】
また、本第1実施形態において、アパーチャ電極41は、メッシュ状とされている。この場合、ドリフトガスを確実に透過し得る構成のアパーチャ電極41を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0049】
また、本第1実施形態において、アパーチャ電極41は、貫通孔41bを有する板状部材からなる。この場合、ドリフトガスを確実に透過し得る構成のアパーチャ電極41を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0050】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図12は、図11におけるXII−XII線に沿った断面図である。図13は、第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。第2実施形態のイオン移動度検出器IMS2は、真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向の点で第1実施形態のイオン移動度検出器IMS1と相違する。なお、本第2実施形態に係るイオン移動度検出器IMS2も、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0051】
イオン移動度検出器IMS2は、図11〜図13に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。
【0052】
真空紫外ランプ7は、筒状部材3の他方の開口3bを塞ぐように、当該開口3b内に挿入されて設けられている。真空紫外ランプ7及び抑え板59には、真空紫外ランプ7を内挿する貫通孔が形成されている。真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向は、試料導入管5を通した試料分子の導入方向と交差(本第2実施形態においては、直交)すると共に、ドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致する方向に設定されている。
【0053】
真空紫外ランプ7の前方には、イオン化室1に臨んで、電子捕集電極17に電気的に接続されたメッシュ状の電極71が設けられている。この電極71は、試料分子がイオン化される際に発生する電子を捕集するためのものであり、電子捕集電極17を通して所定の正の電位が印加されている。
【0054】
以上のように、本第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同じく、イオン移動度検出器IMS2における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができる。
【0055】
また、本第2実施形態においては、真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向がドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致する方向に設定されているものの、アパーチャ電極41により、真空紫外ランプ7から照射された真空紫外光がドリフト室21内にまで到達するのが制限されることとなる。このため、上述した第1実施形態と同様に、イオン移動度検出器IMS2における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができると共に、信号強度やS/Nの劣化を抑制することができる。
【0056】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図15は、図14におけるXV−XV線に沿った断面図である。図16は、第3実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。第3実施形態のイオン移動度検出器IMS3は、電極35がアパーチャ電極を兼ねる点で第1実施形態のイオン移動度検出器IMS1と相違する。なお、本第3実施形態に係るイオン移動度検出器IMS3も、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0057】
イオン移動度検出器IMS3は、図14〜図16に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。
【0058】
電極35の基部39に形成された開口39aは、その中心軸が集電極45の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極45の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室1の内部空間の断面積よりも小さい開口面積を有している。電極35の基部39に形成された開口39aの内径は、ゲート電極31と電極35(基部39)との間隔以上に設定されている。これにより、電極35の基部39がアパーチャ電極として機能し、電極35の基部39に形成された開口39aにより、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みが発生することとなる。
【0059】
以上のように、本第3実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、イオン移動度検出器IMS3における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができる。
【0060】
なお、ゲート電極31と電極35(基部39)との間隔は、第1実施形態におけるゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔に比して大きくなるため、開口39aの内径はアパーチャ電極41の開口41aと比較して大きくなってしまう。このため、イオン移動度検出器IMS3は、第1実施形態のイオン移動度検出器IMS1と比較すると、真空紫外ランプ7から照射された真空紫外光のドリフト室21内への到達を制限する作用や、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みが弱くなり、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制する効果は低くなってしまう。
【0061】
続いて、図17に基づいて、第3実施形態の変形例を説明する。図17は、第3実施形態に係るイオン移動度検出器の変形例に含まれるゲートシャッター周辺を示す断面図である。
【0062】
ゲート電極31と電極35の基部39(アパーチャ電極)との間には、メッシュ状の補助電極73が設けられている。補助電極73は、ゲート電極31の枠部材32と電気絶縁体75とで挟持されており、ゲート電極31及び電極35とは電気的に接続されていない。この補助電極73には、ゲート電極31の電位と電極35の電位との間の電位が印加されている。本実施形態においては、補助電極73には、ゲート電極31よりも高く且つ電極35よりも低い電位が印加されている。
【0063】
このように、ゲート電極31と電極35の基部39との間に補助電極73を配置し、この補助電極73にゲート電極31の電位と電極35の電位との間の電位が印加すると、イオン化された試料分子をゲート電極31を通過させるためにゲート電極31の電位を変化させても、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みを安定した発生させることができる。
【0064】
また、補助電極73を配置し、補助電極73を通して電界が滲み込んだ場合、補助電極73はゲート電極31よりも電極35の基部39(アパーチャ電極)に近接しているため、補助電極73を設けない場合に比して、アパーチャ径(開口39aの内径)を小さくすることができる。この結果、エネルギー線のドリフト室21内への侵入をより一層抑制することができる。
【0065】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔、イオン化室1の内径、及び、開口41aの内径等の値は、上述した値に限られるものではない。
【0066】
また、本実施形態においては、本発明を、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器IMSに適用しているが、これに限られることなく、試料分子を陰イオン化し、陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器にも本発明を適用することができる。陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器の場合、電位配置は、上記イオン移動度検出器IMSの電位配置とは逆の関係になる。また、GND(接地)の位置は、任意に設定することができる。そして、陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器の場合、アパーチャ電極には、ゲート電極よりも低い電位が印加されることとなる。
【0067】
また、第2実施形態においては、エネルギー線としての真空紫外光の照射方向をドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致する方向に設定しているが、これに限られるものではない。例えば、エネルギー線の照射方向をドリフト室21の長手方向中心軸Lから平行にオフセットして設定してもよい。この場合、エネルギー線のドリフト室21内への侵入をより一層抑制することができる。
【0068】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することが可能なイオン移動度検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。
【図6】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるアパーチャ電極の一例を説明するための斜視図である。
【図7】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるアパーチャ電極の一例を説明するための斜視図である。
【図8】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるアパーチャ電極の一例を説明するための斜視図である。
【図9】ドリフト室における電界分布とイオン化された試料分子の移動軌跡を示す図である。
【図10】イオン化室における電界分布とイオン化された試料分子の移動軌跡を示す図である。
【図11】第2実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図12】図11におけるXII−XII線に沿った断面図である。
【図13】第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。
【図14】第3実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図15】図14におけるXV−XV線に沿った断面図である。
【図16】第3実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。
【図17】第3実施形態に係るイオン移動度検出器の変形例に含まれるゲートシャッター周辺を示す断面図である。
【符号の説明】
1…イオン化室、3…筒状部材、5…試料導入管、7…真空紫外ランプ、17…電子捕集電極、21…ドリフト室、23…ドリフト管、25…電極、27…電気絶縁体、31…ゲート電極、35…電極、41…アパーチャ電極、41a…開口、43…基板、45…集電極、47…ドリフトガス導入管、65…ブリーダ回路基板、69…メッシュ状電極、73…補助電極、IMS1〜IMS3…イオン移動度検出器、L…ドリフト室の長手方向中心軸。
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン移動度検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のイオン移動度検出器として、試料分子をイオン化するイオン化室と、イオン化室にてイオン化された試料分子が長手方向に移動するドリフト室と、イオン化室とドリフト室との間に設けられ、印加される電位が変化することによりイオン化された試料分子を通過させるゲート電極と、イオン化された試料分子を収集するための集電極と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5338931号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することが可能なイオン移動度検出器を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、時間分解能及び検出効率の低下の抑制を可能とするイオン移動度検出器について鋭意研究を行った結果、以下のような事実を新たに見出した。
【0006】
イオン化された試料分子は、イオン化室の空間断面積あるいは出口面積で制限されてドリフト室に入ることになる。そのため、イオン化室の空間断面積あるいは出口面積が大きいと、イオン化された試料分子の位置分布が拡がってしまい、ドリフト室の長手方向中心軸に直交する方向への分散が大きくなり、時間分解能及び検出効率が劣化してしまう。一方、イオン化室の空間断面積あるいは出口面積を小さくすると、イオン化室内における試料分子の挙動に乱れが生じたり、試料分子が効率良くイオン化されなかったり、イオン化された試料分子の一部しかドリフト室内に導入できなかったりして、時間分解能及び検出効率が劣化してしまう。
【0007】
また、試料分子にエネルギー線を照射してイオン化する場合、照射されたエネルギー線がドリフト室内にまで到達すると、ドリフト室内で中性化した試料分子がエネルギー線により再イオン化する惧れがある。エネルギー線がドリフト室内にまで到達すると、ドリフト室内で再イオン化した試料分子は、イオン化室内にてイオン化された試料分子とは異なる態様(飛行時間(TOF)、移動軌跡等)でドリフト室内を移動することになり、時間分解能の劣化を招いてしまう。
【0008】
ドリフト室の他端側には、通常、イオン化された試料分子を収集するための集電極が設けられるが、この集電極にエネルギー線が到達すると、集電極からの出力にノイズが発生する惧れがある。また、エネルギー線がドリフト室を構成する物質に到達し、当該物質からの二次電子放出が発生しやすくなり、放出された二次電子がイオン化された試料分子と反応し、中性化する惧れがある。これらの要因は、信号強度やS/Nの劣化を招いてしまう。
【0009】
試料分子をイオン化室内に導入する形態(試料分子の導入方向、キャリアガスの流れ方向等)によっては、イオン化された試料分子に慣性力(運動エネルギー)が与えられて、イオン化された試料分子の軌道の軌道が乱れる惧れがあり、時間分解能の劣化を招いてしまう。また、イオン化室内に導入された試料分子によりイオン化室内に試料分子の対流が生じると、イオン化された試料分子に余分な運動エネルギーを与えやすくなってしまう。更に、イオン化された試料分子の移動方向と反対方向に流れるドリフトガスがイオン化室内に流れ込むと、イオン化室内のガスの流れが乱れてしまい、イオン化室内の試料分子(イオン化された試料分子も含む)の挙動に悪影響を与えてしまう。
【0010】
これらの問題点等を考慮して、本発明者等は、イオン化室とゲート電極の間に、中心軸が集電極の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室の内部空間の断面積よりも小さい開口が形成されたアパーチャ電極を配置することを発案するに至った。そして、アパーチャ電極とゲート電極との間に所定の電位差を与える(陽イオンのイオン移動度を検出する場合には、アパーチャ電極にゲート電極の電位よりも高い電位を印加する。一方、陰イオンのイオン移動度を検出する場合には、アパーチャ電極にゲート電極の電位よりも低い電位を印加する。)ことにより、ゲート電極側からイオン化室側への電界の滲み込みが発生し、当該電界により、イオン化された試料分子を有効的に集電極の中心軸上に集めることが可能となることが判明した。
【0011】
かかる研究結果等を踏まえ、本発明に係るイオン移動度検出器は、試料分子をイオン化するイオン化室と、一端側がイオン化室に連通し、イオン化された試料分子が長手方向に移動するドリフト室と、イオン化室とドリフト室との間に設けられ、印加される電位が変化することによりイオン化された試料分子を通過させるゲート電極と、ドリフト室の他端側に設けられ、イオン化された試料分子を収集するための集電極と、を備えたイオン移動度検出器であって、ゲート電極よりもイオン化室側に設けられ、中心軸が集電極の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室の内部空間の断面積よりも小さい開口が形成されたアパーチャ電極を有しており、アパーチャ電極とゲート電極との間には、所定の電位差が与えられていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るイオン移動度検出器では、アパーチャ電極に形成された開口により、ゲート電極側からイオン化室側への電界の滲み込みが発生し、イオン化された試料分子が有効的に集電極の中心軸上に集められることとなる。これにより、イオン化された試料分子のドリフト室の長手方向中心軸に直交する方向への分散が小さくなる。また、イオン化室の空間断面積を小さくする必要がないので、上述したイオン化室内における試料分子の挙動に乱れが生じたり、試料分子が効率良くイオン化されなかったり、イオン化された試料分子の一部しかドリフト室内に導入できなかったりといった問題が生じるようなこともない。これらの結果、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができる。
【0013】
また、イオン化室に導入された試料分子にエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を更に有することが好ましい。このように構成した場合、アパーチャ電極により、エネルギー線照射手段から照射されたエネルギー線がドリフト室内にまで到達するのが制限されることとなり、ドリフト室内で中性化した試料分子が再イオン化するのを防ぐことができる。また、ドリフト室を構成する物質からの二次電子放出が発生し難くなり、イオン化された試料分子の中性化を防ぐことができる。これらの結果、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができると共に、信号強度やS/Nの劣化を抑制することができる。
【0014】
また、アパーチャ電極に形成された開口の内径は、ゲート電極とアパーチャ電極との間隔以上に設定されていることが好ましい。このように構成した場合、ゲート電極側からイオン化室側への電界の滲み込みを適切且つ効果的に発生させることができる。
【0015】
また、ゲート電極とアパーチャ電極との間に設けられたメッシュ状の補助電極を更に有しており、補助電極には、ゲート電極の電位とアパーチャ電極の電位との間の電位が印加されていることが好ましい。このように構成した場合、ゲート電極の電位が変化しても、ゲート電極側からイオン化室側への電界の安定した滲み込みを発生させることができる。
【0016】
また、ドリフト室の他端側に連通し、ドリフト室内にドリフトガスを導入するドリフトガス導入手段を更に有しており、アパーチャ電極の少なくとも端部は、ドリフトガスを透過することが好ましい。このように構成した場合、ドリフトガスの流れに乱れが発生するのを抑制することができ、イオン化された試料分子の移動に及ぼす悪影響を低減することができる。また、ドリフト室の内壁近傍に存在する中性化された試料分子を効果的に除去することもできる。
【0017】
また、アパーチャ電極は、メッシュ状とされていることが好ましい。このように構成した場合、ドリフトガスを確実に透過し得る構成のアパーチャ電極を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0018】
また、アパーチャ電極は、貫通孔を有する板状部材からなることが好ましい。このように構成した場合、ドリフトガスを確実に透過し得る構成のアパーチャ電極を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係るイオン移動度検出器について図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。図2は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図3は、図2におけるIII−III線に沿った断面図である。図4は、図3におけるIV−IV線に沿った断面図である。イオン移動度検出器IMS1は、図1に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。イオン化室1及びドリフト室21内の圧力は、大気圧相当である。なお、本第1実施形態に係るイオン移動度検出器IMS1は、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0021】
イオン化室1は、図2〜図4に示されるように、両端に開口3a,3bを有する筒状部材3(本実施形態においては、内周断面形状及び外周断面形状が矩形である角形の筒状部材を用いている。)内に形成されており、試料分子をイオン化する領域である。筒状部材3は、電気絶縁性材料からなる。イオン化室1(筒状部材3の内部空間)は、筒状部材3の一方の開口3aを通してドリフト室21に連通している。筒状部材3には、試料導入管5と、真空紫外ランプ7が設けられている。
【0022】
試料導入管5は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給源9及び試料分子を供給する試料分子供給源11に接続されており、試料導入管5の一端に形成された導入口13を通してイオン化室1に連通している。キャリアガス供給源9から供給されたキャリアガス及び試料分子供給源11から供給された試料分子は、混合された状態で、試料導入管5を通ってイオン化室1内に導入される。ここで、試料導入管5は、試料分子をイオン化室1内に導入する試料分子導入手段として機能する。なお、本実施形態において、キャリアガス供給源9と試料分子供給源11とは試料導入管5に対して直列に接続されているが、並列に接続されていてもよい。
【0023】
真空紫外ランプ7は、試料導入管5を通してイオン化室1に導入された試料分子に真空紫外光を照射する。真空紫外光が照射された試料分子は、イオン化されることとなる。ここで、真空紫外ランプ7は、イオン化室1に導入された試料分子にエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段として機能する。なお、真空紫外ランプ7としては、希ガス等を利用するエキシマランプやキャピラリ放電管、水素放電ランプを用いることができる。また、真空紫外ランプ7の代わりに、紫外線やX線を放出するD2ランプ、軟X線管や、多光子吸収によってイオン化させることができるUVレーザを用いることができる。
【0024】
真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向と試料導入管5を通した試料分子の導入方向とは、図1にも示されるように、互いに交差(本第1実施形態においては、直交)すると共に、ドリフト室21の長手方向中心軸Lと交差(本第1実施形態においては、直交)する方向に設定されている。なお、本第1実施形態においては、真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向、試料導入管5を通した試料分子の導入方向、及び、ドリフト室21の長手方向中心軸Lは一点で交差している。
【0025】
筒状部材3には、試料導入管5を通した試料分子の導入方向で見て導入口13と対向する位置に、導入された試料分子を排出するための排出口15が形成されている。イオン化室1は、排出口15を通して外部空間に連通している。
【0026】
筒状部材3の他方の開口3bは、電子捕集電極17により塞がれている。この電子捕集電極17は、試料分子がイオン化される際に発生する電子を捕集するためのものであり、所定の正の電位が印加されている。電子捕集電極17には、筒状部材3の他方の開口3bに内挿される突出部19が形成されている。
【0027】
ドリフト室21は、図2〜図4に示されるように、ドリフト管23内に形成されており、一端側がイオン化室1に連通し、イオン化室1内でイオン化された試料分子がその長手方向に移動する領域である。ドリフト管23は、複数のリング状の電極25と、複数のリング状の電気絶縁体27とを含んでおり、電極25と電気絶縁体27が交互に積層された構成となっている。即ち、電極25と電極25との間に電気絶縁体27が配置され、電極25と電極25とは電気絶縁体27により電気的に絶縁された状態にある。電極25及び電気絶縁体27は、ドリフト室21内にイオン化された試料分子を移動させるための電界を形成する電界形成手段として機能する。
【0028】
ドリフト管23の一端側には、ゲートシャッターとしてのゲート電極31が設けられている。ゲート電極31としては、ブラッドバリー−ニールセン・シャッター(Bradbury−Nielsen shutter)を用いることができる。ゲート電極31は、印加される電位が変化することによりイオン化された試料分子を通過させるものであり、一対の電極31aと電気絶縁性を有する枠部材32とを含んでいる。各電極31aは、基幹部と当該基幹部から交差する方向に伸びる複数の分岐部とを有した櫛歯形状を呈しており、枠部材32に互いに噛み合うように配置されている。上記一対の電極31a間の電位差を0とすることにより、イオン化された試料分子の通過が許容され、当該電位差を0より大きい所定の値とすることにより、イオン化された試料分子の通過が禁止される。したがって、ゲート電極31にパルス状の信号を供給し、所定の時間、一対の電極31a間の電位差を0とすることにより、当該所定の時間だけイオン化された試料分子がゲート電極31を通過することとなる。ゲート電極31により、イオン化室1とドリフト室21とが分離されることとなる。ゲート電極31には、電位を印加するためのリード部33がドリフト管23の径方向に突出して設けられている。
【0029】
ゲート電極31と筒状部材3との間には、略円板状の電極35が配置されている。電極35は、ドリフト管23を構成する電極25と同様の形状を有する外周部37と、当該外周部37から内側方向に伸びる基部39とを有している。基部39には、筒状部材3の一方の開口3aに連通する開口39aと、当該開口39aの外周寄りの位置に形成されたガス放出口39bが形成されている。外周部37にも、ガス放出口37aが形成されている。ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、電極35の基部39に形成された開口39a及び筒状部材3の一方の開口3aを通して、イオン化室1に連通している。また、ドリフト室21(ドリフト管23の内部空間)は、ガス放出口37a,39bを通して、外部空間に連通している。
【0030】
ドリフト管23の他端側には、導電性の基板43が設けられている。基板43には、イオン化された試料分子を収集するための集電極45(本実施形態においては、アノードとして機能する。)と、ドリフトガスをドリフト室21内に導入するドリフトガス導入管47が配置されている。
【0031】
集電極45は、円板状の部材であり、基板43に電気絶縁性を有するリング状の部材46を介して設けられた支持部材にネジ止めされることにより、基板43に配置されている。リング状の部材46以外に集電極45を基板43と電気的に絶縁する手段としては、集電極45のリード部をガラス等の電気絶縁材料で封着したり、Oリング止めをしたりしてもよい。集電極45としては、ファラデー・カップ等を用いることができる。集電極45は、その中心軸がドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致するように設けられている。集電極45の電位は、基板43と同じ電位に保たれている。
【0032】
ドリフトガス導入管47は、ドリフトガスを供給するドリフトガス供給源51に接続されており、ドリフトガス導入管47の一端に形成された導入口49を通してドリフト室21の他端側に連通している。ドリフトガス供給源51から供給されたドリフトガスは、ドリフトガス導入管47を通り、ドリフト室21内におけるイオン化された試料分子の移動方向に見て集電極45より前方からドリフト室21内に導入される。即ち、集電極45は、ドリフトガスの流れ方向で見て、ドリフトガス導入管47の導入口49よりも下流に位置している。
【0033】
ドリフト室21の他端側には、メッシュ形状を呈したグリッド電極53が集電極45に対向して設けられている。このグリッド電極53は、電極25のうちの最も基板43に近い電極に電気的に接続されており、当該電極と同じ電位とされている。グリッド電極53は、ドリフト室21内に形成される電界がゲート電極31における電位のパルス状の変化により変動するのを抑制する。
【0034】
集電極45の外周側には、補助電極55が配置されている。補助電極55は、板状部材からなり、その中央部に集電極45の直径よりも若干大きい内径を有する開口57が形成されている。補助電極55は、開口57内に集電極45が位置するように、集電極45と同一平面内に設けられている。補助電極55の外周部分は、基板43と接しており、当該基板43と電気的に接続されている。これにより、補助電極55の電位は、基板43と同じ電位に保たれる。また、補助電極55の電位は、集電極45の電位と同じである。
【0035】
補助電極55には、複数の貫通孔が形成されている。ドリフトガス導入管47の導入口13から導入されるドリフトガスは、まず、基板43と補助電極55及び集電極45とで画成される空間内に流入する。その後、ドリフトガスは、補助電極55に形成された貫通孔、及び、補助電極55の内周と集電極45の外周との間隙を通って、ドリフト室21内を流れていく。基板43と補助電極55及び集電極45とで画成される空間は、ドリフトガスのバッファ領域として機能し、ドリフトガスの圧力や流れを緩和して平均化する。なお、補助電極55は、貫通孔を有する板状部材の他に、メッシュ状の部材としてもよい。
【0036】
ゲート電極31と電極35との間、即ちゲート電極31よりもイオン化室1側には、図5にも示されるように、アパーチャ電極41が配置されている。図5は、第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。
【0037】
アパーチャ電極41は、図6にも示されるように、板状部材からなり、中心軸が集電極45の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極45の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室1の内部空間の断面積よりも小さい開口41aが形成されている。アパーチャ電極41は、電極35とゲート電極31とで挟持される。アパーチャ電極41は、電極35と接触することにより、当該電極35と電気的に接続され、電極35と同じ電位に保たれる。アパーチャ電極41に形成された開口41aの内径は、ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔以上に設定されている。ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔は、例えば1.2mmであり、イオン化室1の内径は、例えば14mmであり、開口41aの内径は例えば8mmである。アパーチャ電極41は、板状部材の他に、図7に示されるように、メッシュ状の部材としてもよい。また、図8に示されるように、板状部材に複数の貫通孔41bを形成してもよい。
【0038】
ドリフト室21内に導入されたドリフトガスは、ドリフト室21内をイオン化室1方向に向かって流れ、ゲート電極31を通った後、アパーチャ電極41に形成された開口41aを通って、アパーチャ電極41と電極35とで画成される空間に入り、ガス放出口37a,39bから外部に排出される。ドリフト室21内におけるドリフトガスの流れ方向と、イオン化された試料分子の移動方向とは、反対方向となる。
【0039】
アパーチャ電極41がメッシュ状の部材である場合、あるいは、複数の貫通孔41bが形成されている場合、ドリフトガスの一部は、アパーチャ電極41を透過して、アパーチャ電極41と電極35とで画成される空間に入ることとなる。なお、アパーチャ電極41にドリフトガスを透過する構成を採用する場合、少なくともアパーチャ電極41の端部(ドリフト管23(ドリフト室21)の内壁近傍部分)がドリフトガスを透過する構成となっておればよく、アパーチャ電極41全体がドリフトガスを透過する構成となっている必要はない。
【0040】
電極25,35、電気絶縁体27、ゲート電極31、筒状部材3及び電子捕集電極17は、基板43と抑え板59とで挟持されている。抑え板59は、電極25、電気絶縁体27、ゲート電極31、筒状部材3及び電子捕集電極17を挟持した状態で、一端側が基板43に固定された支柱61の他端側に螺合するナット63により基板43に対して固定される。なお、電子捕集電極17は、抑え板59にネジ止めされている。
【0041】
ところで、基板43、電極25,35及び電子捕集電極17は、隣り合うもの同士が分圧抵抗(図示せず)により電気的に接続されている。分圧抵抗は、ブリーダ回路基板65上に形成された薄膜状の抵抗体であり、導電性を有するネジ67を通して基板43、電極25,35及び電子捕集電極17に電気的に接続される。このネジ67は、ブリーダ回路基板65を固定する機能も有している。そして、上述したように、電子捕集電極17に所定の正の電位を印加し、基板43を接地すると、図9及び図10に示されるように、イオン化室1からドリフト室21にわたって、電界が形成される。この電界により、イオン化された試料分子は、イオン化室1からドリフト室21に移動し、ドリフト室21内を集電極45に向けて移動する。なお、図9は、ドリフト室における電界分布とイオン化された試料分子の移動軌跡を示す図であり、図10は、イオン化室における電界分布とイオン化された試料分子の移動軌跡を示す図である。図9及び図10中、実線はイオン化された試料分子の移動軌跡を示し、一点鎖線はイオン化室1及びドリフト室21における電界電界の等電位面を示している。
【0042】
なお、図9と図10とでは、各電極25等に設定されている電位が異なっている。図9中、電極25、ゲート電極31及び基板43に設定されている電位(+)はそれぞれ、
ゲート電極31 :1.74kV
ゲート電極31の隣の電極25 :1.6kV
…
グリッド電極53が電気的に接続された電極25 :0.1kV
基板43 :0V
である。また、図10中、電極25、ゲート電極31及び基板43に設定されている電位(+)はそれぞれ、
電子捕集電極17 :1.5kV
電極35(アパーチャ電極41) :1.35kV
ゲート電極31 :1.25kV
である。図10から理解できるように、アパーチャ電極41に形成された開口41aにより、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みが発生している。
【0043】
続いて、上述した構成を有するイオン移動度検出器IMS1の測定原理を簡単に説明する。イオン化室1にてイオン化された試料分子(以下、単にイオンと称する)を、ゲート電極31にパルス状の電圧を印加して電位を変化させることで、図9にも示されるように、アパーチャ電極41に形成された開口41aを通ってドリフト室21内に導入する。このとき、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みにより、イオン化された試料分子が有効的に集電極45の中心軸(ドリフト室21の長手方向中心軸L)上に集められることとなる。ドリフト室21に導入されたパルス状のイオン群は、ドリフトガス導入管47より導入されたドリフトガスの分子の影響を受けることで時間的遅れを持って移動し、ドリフト室21内に形成されたほぼ均一の電界に沿って集電極45に到達する。集電極45に到達したイオン群はパルス状の電気信号として出力され、当該電気信号に基づいて、ゲート電極31から集電極45までの到達時間(飛行時間(TOF)、集電極45に到達したイオン群の量等が検出される。上記到達時間からイオン移動度を求めることができ、試料分子の同定が可能となる。また、電気信号の応答波形の積分値もしくはピーク値から、試料分子の定量が可能となる。
【0044】
以上のように、本第1実施形態によれば、アパーチャ電極41に形成された開口41aにより、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みが発生し、イオン化された試料分子が有効的に集電極45の中心軸(ドリフト室21の長手方向中心軸L)上に集められることとなる。これにより、イオン化された試料分子のドリフト室21の長手方向中心軸Lに直交する方向への分散が小さくなる。また、イオン化室1の空間断面積を小さくする必要がないので、イオン化室1内における試料分子の挙動に乱れが生じたり、試料分子が効率良くイオン化されなかったり、イオン化された試料分子の一部しかドリフト室21内に導入できなかったりといった問題が生じるようなこともない。これらの結果、イオン移動度検出器IMS1における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができる。
【0045】
また、本第1実施形態においては、アパーチャ電極41により、真空紫外ランプ7から照射された真空紫外光がドリフト室21内にまで到達するのが制限されることとなり、ドリフト室21内で中性化した試料分子が再イオン化するのを防ぐことができる。また、ドリフト室21を構成する物質(電極25や集電極45等)からの二次電子放出が発生し難くなり、イオン化された試料分子の中性化を防ぐことができる。これらの結果、イオン移動度検出器IMS1における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができると共に、信号強度やS/Nの劣化を抑制することができる。
【0046】
また、本第1実施形態において、アパーチャ電極41に形成された開口41aの内径は、ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔以上に設定されている。これにより、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みを適切且つ効果的に発生させることができる。
【0047】
また、本第1実施形態において、アパーチャ電極41の少なくとも端部は、ドリフトガスを透過する。これにより、ドリフトガスの流れに乱れが発生するのを抑制することができ、イオン化された試料分子の移動に及ぼす悪影響を低減することができる。また、ドリフト室21(ドリフト管23)の内壁近傍に存在する中性化された試料分子を効果的に除去することもできる。
【0048】
また、本第1実施形態において、アパーチャ電極41は、メッシュ状とされている。この場合、ドリフトガスを確実に透過し得る構成のアパーチャ電極41を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0049】
また、本第1実施形態において、アパーチャ電極41は、貫通孔41bを有する板状部材からなる。この場合、ドリフトガスを確実に透過し得る構成のアパーチャ電極41を簡易且つ低コストにて実現することができる。
【0050】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図12は、図11におけるXII−XII線に沿った断面図である。図13は、第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。第2実施形態のイオン移動度検出器IMS2は、真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向の点で第1実施形態のイオン移動度検出器IMS1と相違する。なお、本第2実施形態に係るイオン移動度検出器IMS2も、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0051】
イオン移動度検出器IMS2は、図11〜図13に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。
【0052】
真空紫外ランプ7は、筒状部材3の他方の開口3bを塞ぐように、当該開口3b内に挿入されて設けられている。真空紫外ランプ7及び抑え板59には、真空紫外ランプ7を内挿する貫通孔が形成されている。真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向は、試料導入管5を通した試料分子の導入方向と交差(本第2実施形態においては、直交)すると共に、ドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致する方向に設定されている。
【0053】
真空紫外ランプ7の前方には、イオン化室1に臨んで、電子捕集電極17に電気的に接続されたメッシュ状の電極71が設けられている。この電極71は、試料分子がイオン化される際に発生する電子を捕集するためのものであり、電子捕集電極17を通して所定の正の電位が印加されている。
【0054】
以上のように、本第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同じく、イオン移動度検出器IMS2における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができる。
【0055】
また、本第2実施形態においては、真空紫外ランプ7による真空紫外光の照射方向がドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致する方向に設定されているものの、アパーチャ電極41により、真空紫外ランプ7から照射された真空紫外光がドリフト室21内にまで到達するのが制限されることとなる。このため、上述した第1実施形態と同様に、イオン移動度検出器IMS2における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができると共に、信号強度やS/Nの劣化を抑制することができる。
【0056】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。図15は、図14におけるXV−XV線に沿った断面図である。図16は、第3実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。第3実施形態のイオン移動度検出器IMS3は、電極35がアパーチャ電極を兼ねる点で第1実施形態のイオン移動度検出器IMS1と相違する。なお、本第3実施形態に係るイオン移動度検出器IMS3も、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するものである。
【0057】
イオン移動度検出器IMS3は、図14〜図16に示されるように、イオン化室1と、ドリフト室21とを有している。
【0058】
電極35の基部39に形成された開口39aは、その中心軸が集電極45の中心軸と同軸上に位置し且つ集電極45の中心軸に垂直な面内におけるイオン化室1の内部空間の断面積よりも小さい開口面積を有している。電極35の基部39に形成された開口39aの内径は、ゲート電極31と電極35(基部39)との間隔以上に設定されている。これにより、電極35の基部39がアパーチャ電極として機能し、電極35の基部39に形成された開口39aにより、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みが発生することとなる。
【0059】
以上のように、本第3実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、イオン移動度検出器IMS3における時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することができる。
【0060】
なお、ゲート電極31と電極35(基部39)との間隔は、第1実施形態におけるゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔に比して大きくなるため、開口39aの内径はアパーチャ電極41の開口41aと比較して大きくなってしまう。このため、イオン移動度検出器IMS3は、第1実施形態のイオン移動度検出器IMS1と比較すると、真空紫外ランプ7から照射された真空紫外光のドリフト室21内への到達を制限する作用や、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みが弱くなり、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制する効果は低くなってしまう。
【0061】
続いて、図17に基づいて、第3実施形態の変形例を説明する。図17は、第3実施形態に係るイオン移動度検出器の変形例に含まれるゲートシャッター周辺を示す断面図である。
【0062】
ゲート電極31と電極35の基部39(アパーチャ電極)との間には、メッシュ状の補助電極73が設けられている。補助電極73は、ゲート電極31の枠部材32と電気絶縁体75とで挟持されており、ゲート電極31及び電極35とは電気的に接続されていない。この補助電極73には、ゲート電極31の電位と電極35の電位との間の電位が印加されている。本実施形態においては、補助電極73には、ゲート電極31よりも高く且つ電極35よりも低い電位が印加されている。
【0063】
このように、ゲート電極31と電極35の基部39との間に補助電極73を配置し、この補助電極73にゲート電極31の電位と電極35の電位との間の電位が印加すると、イオン化された試料分子をゲート電極31を通過させるためにゲート電極31の電位を変化させても、ゲート電極31側からイオン化室1側への電界の滲み込みを安定した発生させることができる。
【0064】
また、補助電極73を配置し、補助電極73を通して電界が滲み込んだ場合、補助電極73はゲート電極31よりも電極35の基部39(アパーチャ電極)に近接しているため、補助電極73を設けない場合に比して、アパーチャ径(開口39aの内径)を小さくすることができる。この結果、エネルギー線のドリフト室21内への侵入をより一層抑制することができる。
【0065】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、ゲート電極31とアパーチャ電極41との間隔、イオン化室1の内径、及び、開口41aの内径等の値は、上述した値に限られるものではない。
【0066】
また、本実施形態においては、本発明を、試料分子を陽イオン化し、陽イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器IMSに適用しているが、これに限られることなく、試料分子を陰イオン化し、陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器にも本発明を適用することができる。陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器の場合、電位配置は、上記イオン移動度検出器IMSの電位配置とは逆の関係になる。また、GND(接地)の位置は、任意に設定することができる。そして、陰イオン化した試料分子のイオン移動度を検出するイオン移動度検出器の場合、アパーチャ電極には、ゲート電極よりも低い電位が印加されることとなる。
【0067】
また、第2実施形態においては、エネルギー線としての真空紫外光の照射方向をドリフト室21の長手方向中心軸Lと一致する方向に設定しているが、これに限られるものではない。例えば、エネルギー線の照射方向をドリフト室21の長手方向中心軸Lから平行にオフセットして設定してもよい。この場合、エネルギー線のドリフト室21内への侵入をより一層抑制することができる。
【0068】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、時間分解能及び検出効率の劣化を抑制することが可能なイオン移動度検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るイオン移動度検出器の構成を説明するための概略斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。
【図6】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるアパーチャ電極の一例を説明するための斜視図である。
【図7】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるアパーチャ電極の一例を説明するための斜視図である。
【図8】第1実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるアパーチャ電極の一例を説明するための斜視図である。
【図9】ドリフト室における電界分布とイオン化された試料分子の移動軌跡を示す図である。
【図10】イオン化室における電界分布とイオン化された試料分子の移動軌跡を示す図である。
【図11】第2実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図12】図11におけるXII−XII線に沿った断面図である。
【図13】第2実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。
【図14】第3実施形態に係るイオン移動度検出器を示す縦断面図である。
【図15】図14におけるXV−XV線に沿った断面図である。
【図16】第3実施形態に係るイオン移動度検出器に含まれるイオン化室周辺を示す断面図である。
【図17】第3実施形態に係るイオン移動度検出器の変形例に含まれるゲートシャッター周辺を示す断面図である。
【符号の説明】
1…イオン化室、3…筒状部材、5…試料導入管、7…真空紫外ランプ、17…電子捕集電極、21…ドリフト室、23…ドリフト管、25…電極、27…電気絶縁体、31…ゲート電極、35…電極、41…アパーチャ電極、41a…開口、43…基板、45…集電極、47…ドリフトガス導入管、65…ブリーダ回路基板、69…メッシュ状電極、73…補助電極、IMS1〜IMS3…イオン移動度検出器、L…ドリフト室の長手方向中心軸。
Claims (7)
- 試料分子をイオン化するイオン化室と、
一端側が前記イオン化室に連通し、前記イオン化された試料分子が長手方向に移動するドリフト室と、
前記イオン化室と前記ドリフト室との間に設けられ、印加される電位が変化することにより前記イオン化された試料分子を通過させるゲート電極と、
前記ドリフト室の他端側に設けられ、前記イオン化された試料分子を収集するための集電極と、を備えたイオン移動度検出器であって、
前記ゲート電極よりも前記イオン化室側に設けられ、中心軸が前記集電極の中心軸と同軸上に位置し且つ前記集電極の中心軸に垂直な面内における前記イオン化室の内部空間の断面積よりも小さい開口が形成されたアパーチャ電極を有しており、
前記アパーチャ電極と前記ゲート電極との間には、所定の電位差が与えられていることを特徴とするイオン移動度検出器。 - 前記イオン化室に導入された前記試料分子にエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載のイオン移動度検出器。
- 前記アパーチャ電極に形成された前記開口の内径は、前記ゲート電極と前記アパーチャ電極との間隔以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン移動度検出器。
- 前記ゲート電極と前記アパーチャ電極との間に設けられたメッシュ状の補助電極を更に有しており、
前記補助電極には、前記ゲート電極の電位と前記アパーチャ電極の電位との間の電位が印加されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン移動度検出器。 - 前記ドリフト室の前記他端側に連通し、前記ドリフト室内にドリフトガスを導入するドリフトガス導入手段を更に有しており、
前記アパーチャ電極の少なくとも端部は、前記ドリフトガスを透過することを特徴とする請求項1に記載のイオン移動度検出器。 - 前記アパーチャ電極は、メッシュ状とされていることを特徴とする請求項5に記載のイオン移動度検出器。
- 前記アパーチャ電極は、貫通孔を有する板状部材からなることを特徴とする請求項5に記載のイオン移動度検出器。
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Cited By (2)
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2003
- 2003-05-30 JP JP2003155732A patent/JP2004356072A/ja not_active Withdrawn
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