JP2004356023A - 複合基板、el素子の製造方法、および複合基板、el素子の製造装置 - Google Patents

複合基板、el素子の製造方法、および複合基板、el素子の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】誘電体印刷などにより巻込まれた塵、埃等の異物により生じた欠陥を、焼成後にその部分だけ処理することによって、発光異常点を防ぎ、歩留まりのよい複合基板の製造方法、複合基板、およびEL素子を提供する。
【解決手段】電気絶縁性を有する基板の一方の側に第1の電極層を形成する第1の工程と、前記第1の電極層上に粉体または粒体状のセラミックス材料を用いた厚膜グリーンを形成し、この厚膜グリーンを焼成して厚膜絶縁体層を形成する第2の工程と、焼成後前記厚膜絶縁体層の表面上に形成された凸部に、摩擦ヘッドを摺り合わせることで、前記凸部を除去する第3の工程とを有する構成の複合基板、EL素子の製造方法およびその製造装置とした。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚膜絶縁体と電極を有する複合基板およびこれを用いたエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)の製造方法、およびそれらの製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界の印加によって物質が発光する現象をエレクトロルミネセンス(EL)といい、この現象を用いた素子は液晶ディスプレイ(LCD)や時計のバックライトとして実用化されている。
【0003】
EL素子には粉末蛍光体を有機物やホウロウに分散させ、上下に電極を設けた構造をもつ分散型素子と、電気絶縁性の基板上に2つの電極と2つの薄膜絶縁体の間に挟む形で形成した薄膜蛍光体を用いた薄膜型の素子がある。また、それぞれについて、駆動方式により直流電圧駆動型、交流電圧駆動型がある。分散型EL素子は古くから知られており、製造が容易であるという利点があるが、輝度が低く寿命も短いのでその利用は限られていた。一方、薄膜型EL素子は高輝度、長寿命という特性を有することから、近年広く利用されている。
【0004】
従来の薄膜EL素子は、液晶ディスプレイやPDP等に用いられている青板ガラスなどの透明基板上に膜厚0.2μm〜1μm程度のITOなどからなり所定のストライプ状のパターンを有する透明電極層、薄膜透明第1絶縁体層、0.2μm〜1μm程度の膜厚の発光層、薄膜透明第2絶縁体層とが積層され、さらに透明電極層と直交するようにストライプ状にパターニングされたAl薄膜等の電極層が形成され、透明電極層と電極層で構成されるマトリックスで選択された特定の発光体に電圧を選択的に印加することにより特定画素の発光体を発光させ、その発光を基板側から取り出す。このような薄膜絶縁体層は発光層内を流れる電流を制限する機能を有し薄膜EL素子の絶縁破壊を抑えることが可能であり安定な発光特性が得られることに寄与し、この構造の薄膜EL素子は商業的にも広く実用化されている。
【0005】
しかしながら、このような薄膜EL素子は、絶縁体層が薄膜で形成されているため、大面積のディスプレイとしたとき、透明電極のパターンエッジの段差部や、製造工程で発生するゴミ等による薄膜絶縁体の欠陥を皆無にすることが難しく、局所的な絶縁耐圧の低下により発光層の破壊が生じることである。このような欠陥は、ディスプレイデバイスとして致命的な問題となるため、薄膜EL素子は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイと比較して、大面積のディスプレイとして広く実用化するためには大きな問題となっていた。
【0006】
このような薄膜絶縁体の欠陥が生じるという問題を解決するため、下記特許文献5(特公平7−44072公報)に基板として電気絶縁性のセラミック基板を用い、発光体下部の薄膜絶縁体のかわりに厚膜絶縁体を用いた薄膜EL素子が開示されている。このEL素子は従来の薄膜EL素子の構造とは異なり、発光体の発光を基板とは反対の上部側から取り出すため、透明電極層は上部に構成されている。
【0007】
この薄膜EL素子では厚膜誘電体層は数10μm 〜数100μm と薄膜絶縁体層の数100〜数1000倍の厚さに形成される。そのため、電極の段差や製造工程のゴミ等によって形成されるピンホールに起因する絶縁破壊が非常に少なく、高い信頼性と製造時の高い歩留まりを得ることができるという利点を有している。また、この厚膜誘電体層を用いることによって発光層に印加される実効電圧が降下する問題を生じるが、例えば前記特許文献5では鉛を含む複合ペロブスカイト高誘電率材料を誘電体層に用いることによりこの問題を改善している。
【0008】
このように、高誘電率の厚膜誘電体層を用いることにより、下部電極層のパターンエッジの段差部や、製造工程で発生するゴミ等による薄膜絶縁体の欠陥を回避し、局所的な絶縁耐圧の低下により発光層の破壊が生じるといった問題を解決することができる。
【0009】
しかしながら、厚膜誘電体層上に形成される発光層は数100nmと厚膜誘電体層の1/100程度の厚さしか有していない。このため、厚膜誘電体層は発光層の厚み以下のレベルでその表面が平滑でなければならないが、通常の厚膜工程で作製された誘電体表面を十分平滑にすることは困難であった。
【0010】
すなわち、厚膜誘電体層は本質的に粉体原料を用いたセラミックスで構成されるため、緻密に焼結させるためには通常30〜40%程度の体積収縮を生じる。通常のセラミックスが焼結時に3次元的に体積収縮して緻密化するのに対し、基板上に形成された厚膜誘電体層の場合、厚膜は基板に拘束されてているため、基板の面内方向には収縮できず、厚さ方向に1次元的にしか体積収縮できない。このため厚膜誘電体層の焼結は不十分なまま本質的に多孔質体となってしまう。さらに厚膜の表面粗さは、多結晶焼結体の結晶粒サイズ以下にはならないため、その表面はサブミクロンサイズ以上のの凹凸形状になる。
【0011】
このように誘電体層の表面の欠陥、あるいは膜質が多孔質であることや凹凸形状であると、その上に蒸着法やスパッタリング法で形成される発光層が表面形状に追随して均一に形成する事が出来ない。このため、このような基板の非平坦部に形成された発光層部には効果的に電界を印加できないために、有効発光面積が減少することや、膜厚の局所的な不均一性から発光層が部分的に絶縁破壊して発光輝度の低下を生じる問題があった。さらに、膜厚が局所的に大きく変動するため、発光層に印加される電界強度が局所的に大きくばらつき、明確な発光電圧しきい値が得られないという問題があった。
【0012】
このような問題を解決するために、下記特許文献6(特開平7−50197公報)では、ニオブ酸鉛からなる厚膜誘電体表面にゾルゲル法によって形成されるチタン酸ジルコン酸鉛等の高誘電率層を積層し表面の平坦性を改善する事が開示されている。
【0013】
しかしながら、下地となる厚膜誘電体層の表面性が十分に平坦でかつ高密度でなければ、前記のゾル−ゲル法を用いても十分な表面の平坦化は難しい。従来はEL素子前駆体(基板上に、パターニングされた下部電極、誘電体層を積層したもの)の製造過程において、100μm 程度の大きさの異物混入等により欠陥が発生したものは廃棄されていた。なぜならば、そのような欠陥が発生した場合、発光層が均一に積層されず、非発光点となるからである。
【0014】
異物混入に関しては、混入経路の遮断を徹底的に行うか、発生した場合は除去するのが一般的である。
【0015】
EL素子前駆体の製造過程において、所謂スクリーン印刷など厚膜プロセスを用いる場合では、異物混入経路の遮断を完全に行うのは難しい。また除去しようとしても、印刷乾燥後の状態では軟らかい樹脂バインダーが介在しており、綿棒や樹脂スパーテル等を用いても大きなキズが入ってしまう。これら異物のほとんどは有機物であり、焼成後は焼失してしまうが、その痕には火山の噴火したような、爆発したような大きな痕跡が残ってしまう。
【0016】
このような異物による欠陥を除去するため、焼成後基板表面全体を研磨除去する工程を加え、完全に研磨除去して平坦化するのは、高々数十ミクロン程度の誘電体層の膜厚から考えても実質的に不可能に近い。さらに、ゾルゲル平坦化層で表面性を向上させるプロセスにおいて、印刷乾燥後に各種処理をして大きな凹凸は除去できるが、焼成によるポア(大きさ数ミクロンの凹み、孔)は防げない。また焼成後の機械的研磨処理では、技術的に困難な点が多く、ムラ、キズや研磨材ペーストの汚染などの問題を解決するのは難しい。さらに、たとえ切削研磨加工自体が可能であっても、厚膜誘電体層の密度が十分に高くなければ、誘電体層内部の空孔部が表面に露出してしまう。
【0017】
また、下記特許文献4(特開昭64−63292号公報)には、誘電体表面をスパッタエッチング法、サンドブラスト法で処理する手法が記載されている。スパッタエッチングやサンドブラストに関しては、真空装置使用によるタクト時間の増加や、ブラストによる誘電体層静電破壊の問題を解決しなければならない。結局、誘電体層焼成後の処理は行わずに、誘電体ゾルゲル液を使用して複数回塗布、焼成を繰り返し行って所望の表面性を実現させているのが現状である。このため、依然として欠陥のある基板が一定の割合で現れてしまい、これが歩留まりを低下させる大きな要因となっていた。
【0018】
【特許文献1】
特開2001−250677号公報
【特許文献2】
特開2002−063987号公報
【特許文献3】
特開2002−280173号公報
【特許文献4】
特開昭64−63292号公報
【特許文献5】
特公平7−44072号公報
【特許文献6】
特開平7−50197公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、誘電体印刷などにより巻込まれた塵、埃等の異物により生じた欠陥を、焼成後にその部分だけ処理することによって、発光異常点を防ぎ、歩留まりのよい複合基板の製造方法、複合基板、およびEL素子を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、第一の誘電体層焼成後に欠陥部を検出し、表面から所定の高さの突起部分だけを除去することで達成される。処理は、例えば#4000以上の研磨フィルムで行う。
【0021】
すなわち、上記目的は以下の本発明の構成により達成される。
(1) 電気絶縁性を有する基板の一方の側に第1の電極層を形成する第1の工程と、
前記第1の電極層上に粉体または粒体状のセラミックス材料を用いた厚膜グリーンを形成し、この厚膜グリーンを焼成して厚膜絶縁体層を形成する第2の工程と、
焼成後前記厚膜絶縁体層の表面上に形成された凸部のみに、摩擦ヘッドを摺り合わせることで、前記凸部を除去する第3の工程と、
を有する複合基板の製造方法。
(2) 前記第3の工程における凸部は異物混入により生じた欠陥部位であり、高さ1μm 以上の凸部を有する上記(1)の複合基板の製造方法。
(3) 前記摩擦ヘッドが、研削剤を含まない上記(1)または(2)の複合基板の製造方法。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの方法で複合基板を形成し、
さらに前記厚膜絶縁体層上に発光層を形成する第4の工程と、
前記発光層上に第2の電極層を形成する第5の工程と、
を有するEL素子の製造方法。
(5) 電気絶縁性を有する基板の一方の側に第1の電極層が形成され、前記第1の電極層上に粉体または粒体状のセラミックス材料を用いた厚膜グリーンを焼成した厚膜絶縁体層が形成されている複合基板の製造装置であって、
前記厚膜絶縁体層の表面上に形成された凸部のみに、摩擦ヘッドを摺り合わせることで前記凸部を除去する複合基板の製造装置。
(6) 前記摩擦ヘッドが、研削剤を含まない上記(5)の複合基板の製造装置。
(7) 上記(5)〜(6)の複合基板上にはさらに発光層および第2の電極が形成されるEL素子の製造装置。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の複合基板における一実施形態は、電気絶縁性を有する基板上に、少なくとも電極層と厚膜法による厚膜グリーン層を有する複合基板前駆体を形成し、その後焼成して複合基板を得る複合基板の製造方法であって、焼成後の複合基板の異物混入により生じた欠陥部において、高さ1μm 以上の凸部のみを研削除去するものである。
【0023】
このような製造方法を用いることで、電気絶縁性を有する基板上に、少なくとも電極層と厚膜法による厚膜グリーン層を有する複合基板であって、焼成後の複合基板の異物混入により生じた欠陥部において、高さ1μm 以上の凸部のみが研削除去されている複合基板を得ることができる。
【0024】
このように、欠陥部において高さ1μm 以上の凸部を除去することにより、この複合基板を用いてEL素子を得た場合、EL発光欠陥を許容レベル以内に抑えることができ、今まで欠陥品として廃棄されていた基板も製品として再生することが可能となり、量産工程での歩留まりが飛躍的に向上する。
【0025】
図4に本発明の方法により製造される複合基板、これを用いたEL素子の基本構成を示す。本発明の方法により製造される複合基板は、電気絶縁性を有する基板11上に、所定のパターンを有する下部電極層12と、その上に厚膜法で形成された誘電体層13とを有する。また、このような複合基板を有するEL素子は、前記誘電体層13上にゾルゲル平坦化層14、薄膜絶縁体層15、発光層16、薄膜絶縁層17、透明電極18を有している。
【0026】
このうち、ゾルゲル平坦化層14、薄膜絶縁体層15、薄膜絶縁体層17は省略してもよいが、これらの層を備えることが好ましい。
【0027】
下部電極層と上部透明電極層はそれぞれストライプ状に形成され、互いに直交する方向に配置される。この下部電極層と上部透明電極層をそれぞれ選択し、両電極の直交部の発光層に選択的に電圧を印加することによって特定画素の発光を得ることが可能である。
【0028】
基板は電気絶縁性を有しその上に形成される下部電極層、誘電体層を汚染することなく、所定の耐熱強度を維持できるもので有れば特に限定されるものではない。
【0029】
具体的な材料としては、アルミナ(Al)、石英ガラス(SiO)、マグネシア(MgO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)等のセラミック基板や結晶化ガラスや、高耐熱ガラス等を用いてもよく、またホウロウ処理を行った金属基板等も使用可能である。
【0030】
これらのなかでも特にアルミナ基板が好ましく、熱伝導性が必要な場合にはベリリア、窒化アルミニウム、炭化シリコン等が好ましい。基板材料として厚膜絶縁体層と同じ組成物を用いた場合、熱膨張の違いによる反り、剥がれ現象等を生じないので好ましい。
【0031】
下部電極層は、複数のストライプ状のパターンを有するように形成され、その線幅が1画素の幅となりライン間のスペースは非発光領域となるため、極力ライン間のスペースを小さくしておくことが好ましく、目的とするディスプレイの解像度にもよるが、例えば線幅200〜500μm、スペース20μm程度が必要である。
【0032】
下部電極層の材料としては、高い導電性が得られ、かつ誘電体層形成時にダメージを受けず、さらに厚膜絶縁体層や発光層と反応性が低い材料が好ましい。このような下部電極層材料としては、Au、Pt、Pd、Ir、Ag等の貴金属や、Au−Pd、Au−Pt、Ag−Pd,Ag−Pt等の貴金属合金や、Ag−Pd−Cu等の貴金属を主成分とし非金属元素を添加した電極材料が誘電体層焼成時の酸化雰囲気に対する耐酸化性が容易に得られるため好ましい。また、ITOやSnO(ネサ膜)、ZnO−Al等の酸化物導電性材料を用いてもよく、あるいは、Ni,Cu等の卑金属を用い、厚膜絶縁体層を焼成するときの酸素分圧をこれらの非金属が酸化されない範囲に設定して用いることもできる。
【0033】
下部電極層の形成方法としては、スクリーン印刷法で直接パターンに印刷せず、全面に形成し、焼成後、通常のフォトリソグラフィーの手法を用いてエッチングで形成してもよいい。また、電極層の形成方法として、印刷法に限る必要はなく、スパッタ法、蒸着法、めっき法等の公知の技術を用いればよい。
【0034】
上記の複合基板前駆体は、通常の厚膜法により製造することができる。すなわち、例えばAl や結晶化ガラスなどの電気絶縁性を有するセラミック基板上に、PdやAg/Pdのような導体粉末にバインダーや溶媒を混合して作製された電極ペーストを、スクリーン印刷法等により所定のパターンに印刷する。
【0035】
この電極層を、例えばベルト炉にて大気中で800〜900℃(850℃)、10〜20分(15分)程度焼成することにより、電極層が形成される。
【0036】
次いで、その上に粉末状の誘電体材料に、必要によりバインダーと溶媒を混合して作製された厚膜ペーストを同様にスクリーン印刷法により印刷し、厚膜グリーン層を形成する。あるいは、厚膜ペーストをキャスティング成膜することによりグリーンシートを形成し、これを電極上に積層してもよい。
【0037】
焼成に先立って、基板表面の大きな凹凸を均すために、特開2001−250677号公報に記載された機械的プレス法や、特開2002−063987号公報に記載された温間静水圧プレス法による平坦化処理処理を行うことが望ましい。
【0038】
金型等を用いた機械的プレスによる場合、複合基板前駆体に加圧処理を施し、表面を平滑化する。加圧の方法として、大面積の金型を用いて複合基板をプレスする方法や、複合基板上の厚膜絶縁体層にロールを強く押しつけ、ロールの回転とともに複合基板を移動させる方法などが考えられる。加圧圧力としては、10〜5000トン/m 程度が好ましい。
【0039】
また、冷間/温間静水圧プレスを行う場合には、室温から300℃以下の温度で、圧力500〜6000kg/cm 、特に1000〜4000kg/cm が好ましい。加圧時間としては、予定圧力到達後の保持時間にして1〜30分間程度加圧すればよい。
【0040】
以上のようにして形成された厚膜グリーン層を、所定の時間と温度で乾燥した後、焼成する。
【0041】
厚膜グリーンの焼成条件は、その材料およびバインダーの種類に応じて適量決定すればよいが、通常、脱バインダー処理として、酸化性雰囲気中で350〜500℃にて5分〜10時間程度、脱バインダー処理後の焼成条件として650〜1200℃程度である。焼成温度が前記範囲未満であると、緻密化が不十分であり、前記範囲を超えると、電極層や基板との反応が起こりやすくなる。また、焼成時の温度保持時間は5分から1時間程度が好ましい。
【0042】
厚膜グリーン層が形成された基板を焼成した後、表面を観察して欠陥を検出する。欠陥が観察された場合、その大きさと、深さ、さらに欠陥の周縁部に形成される凸部の高さを評価する。
【0043】
ここで、欠陥の形成原因について、例えば、図1に示すように、厚膜グリーン基板1に、繊維屑等のゴミ2が付着した場合について検討を行う。なお、図1は厚膜グリーン基板のゴミ付着部を示す一部概略断面図である。ゴミなどの異物2が厚膜グリーン1上に付着すると、図2に示すように表面張力と、毛細管現象により、異物の周囲を包み込むように厚膜グリーン形成材料が盛り上がり、凸部3aを形成する。その後、この異物2が付着したまま厚膜グリーンを焼成すると、異物2の燃焼によって異物2の付着していた底部分の誘電体材料が吹き飛ばされ、凹部を形成する。このため、図3に示すように、周囲が凸部3aで囲まれた凹部3bからなる欠陥3が形成されることとなる。
【0044】
また、図2の状態の後、焼成前に冷間/温間静水圧プレス等のプレスにより平坦化処理する場合がある。この場合には、異物が厚膜グリーン内にほぼ埋没するため、焼成後、異物の燃焼により爆発したような痕跡を生じた場合、凹部はより大きな欠陥として残る。
【0045】
この欠陥3は、さらにその上にゾルゲル法、あるいはこれに近似した溶液塗布焼成法により形成される平坦化層によっては十分に平坦化することができない。特に、凸部3aの高さが所定の高さ以上、具体的には1μm 以上、特に2μm 以上の高さのものでは発光欠陥を生じてしまう。一方、本発明者らの検討によれば、凹部3bにも平坦化層、EL構成層である発光層等が形成されて、発光を生じることが確認されている。このため、凸部3aを適切に処理することで、欠陥3が生じた基板を十分に修復することができる。
【0046】
本発明における欠陥修復方法としては、発見された欠陥周囲の凸部、特に高さ1μm 以上の凸部を研削して、高さ1μm 未満、特に0.5μm 以下とすることにより行われる。ここで、凸部の高さとは、基板の平均表面となる位置から基板上に突出している部分の高さをいう。なお、JISに規定される最大高さRmaxとしてもよい。
【0047】
欠陥検出方法としては、基板表面を光学顕微鏡あるいは拡大レンズの装着されたCCDカメラと、ディスプレイ等を用いて目視により検出することができるが、量産工程ではこれに代えて画像処理装置により検出するようにしてもよい。
【0048】
研削方法としては、研磨フィルムや、研磨剤ないし研削剤を用いないバフ研削等により行うことができるが、これらの方法に限定されるものではなく、これと等価な手法であれば本発明を応用することが可能である。バフがけに研磨剤ないし研削剤を用いないのは、研磨剤・研削剤が基板に残存して汚染するのを防止するためである。
【0049】
研磨フィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂基材上に、炭化珪素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド、酸化セリウム等の研磨剤を担持させたものであり、通常、研磨剤の粒径によりフィルムの目の粗さ(メッシュ)が決められている。また、基材の厚さは特に限定されるものではないが、通常10〜100μm 程度である。その形状も、シート状、ディスク状、ロール状等があり、必要に応じて使い分けられている。
【0050】
本発明で用いることのできる研磨フィルムは、例えば日本マイクロコーティング(株)社製のものが挙げられ、研磨剤粒度3μm の#4000〜研磨剤粒度0.2μm の#20000までが好ましく、特に研磨剤粒度0.5μm の#10000〜研磨剤粒度0.3μm の#15000が好ましい。
【0051】
研磨フィルムは、例えばそのまま直に手に持つか、あるいは面出しのされた押圧治具に取り付けて、手作業で研削する手法に用いることができる。この他、各種研磨機構を応用して利用することができる。例えば、テープ方式においては、コンタクトロールを用い、このコンタクトロール側から被工作物に押圧するバックアップ方式と、コンタクトロールの対向方向から押圧するエアーナイフ方式とがある。さらに、研削作業自体にも、コンタクトロール自体を正/逆方向に交互に回動させるスピンドル方式や、コンタクトロールを軸方向に左右に揺動ないし摺動するオーシュレーション方式、さらに、大型のドラムにテープを供給し、このドラムを回転させることにより研削を行うドラム式などがある。
【0052】
本発明では局所的な修正作業を行うため、特に手作業、あるいはスピンドル、オーシュレーション方式が好ましい。
【0053】
バフ処理の方法としては、一般に金属部品、半導体部品の仕上げ研磨等に用いるバフ研磨に近似した手法を用いることが望ましい。バフ部材としてはフェルトや綿布等を円筒や円盤状に成形したバフ部材を高速回転させ、焼結後の誘電体層上の欠陥部位に、所定の圧力で圧接させながらバフがけすればよい。
【0054】
バフ処理の条件としては、用いるバフ部材の種類にもよるが、例えばフェルト、綿布等を円盤状や円筒状に成形したバフ部材を用いる場合、押圧時の圧力:0.1〜1kg/cm 、線速度:5〜50m/sec 程度である。なお、バフ部材の大きさとしては、円筒状に成形したもので、直径5〜30cm程度である。
【0055】
研削処理は、誘電体層欠陥部位の平坦化、平滑化を目的とし行われるものであり、その平均膜厚を変化させない程度に処理することが好ましい。すなわち、基板平均面以下の深さまで研削するのではなく、欠陥部位における凸部を除去しうる程度とすればよい。
【0056】
ここで、本発明方法に用いられる複合基板、EL素子の製造装置について説明する。図5は、本発明装置の第1の態様を示した外観斜視図である。この例では、円筒状の摩擦ヘッド21の端面、つまり円盤状の面を用いて処理を行う装置を示している。この端面は、被加工面となる基板に対して平行となるように配置されている。また、この摩擦ヘッドの少なくとも基板と接触する面には砥粒等の研磨剤は含まなくてよいが、砥粒を含有するものの方が欠陥部位における凸部を短時間で処理できる。ただし、砥粒による汚染に配慮し、砥粒の脱落のないものにすることが望ましい。
【0057】
図5において、x−y方向に移動可能なx−yテーブル20上に複合基板10が固定されている。この複合基板10の表面には、回転可能な支持軸22に支持された摩擦ヘッド21が矢印c方向に回転しながら押圧される。このため、摩擦ヘッド21と凸部を有する基板表面とが摺り合わされ、複合基板10表面の凸部は研削されるようにして平坦化される。なお、支持軸22は図示しない回転機構に接続され、摩擦ヘッド21を所定の回転数で回転させるとともに、基板10に対して一定の圧力で押圧できるようになっている。また、必要に応じて摩擦ヘッド自体が基板に対してx−y方向に自在に移動できるようにしてもよい。
【0058】
平坦化処理に当たっては凸部のみを効果的に平坦化処理できるように、x−yテーブルが駆動されるが、上記のように摩擦ヘッド21を移動させてもよいし、両者を相互に移動させるようにしてもよい。
【0059】
図6は本発明装置の第2の態様を示した概略側面図である。この例では、円筒状の摩擦ヘッド21の周面を用いて処理を行う装置を示している。また、この摩擦ヘッドの少なくとも基板と接触する面には砥粒等の研磨剤は含まなくてもよいが、と粒を含有するものの方が欠陥部位における凸部を短時間で処理できる。ただし、砥粒による汚染に配慮し、砥粒の脱落に配慮することが望ましい。
【0060】
図6において、y方向に移動可能なテーブル20a上に複合基板10が固定されている。この複合基板10の表面には、外枠24に支持された摩擦ヘッド21が矢印c方向に回転しながら押圧される。この場合も、摩擦ヘッドの周面と基板表面とが摺り合わされ、複合基板10表面の凸部は研削されるようにして平坦化される。
【0061】
なお、外枠24は支持軸22を介して駆動装置23に固定されていて、図示しない動力伝達装置により、摩擦ヘッド21を所定の回転数で回転させるとともに、基板10に対して一定の圧力で押圧できるようになっている。また、図示例では摩擦ヘッド21の幅は、基板10の幅と略同一であるように表現されているが、凸部の大きさに合わせたものとすればよい。テーブル20はy方向の移動のみ行えばよいようになっているが、摩擦ヘッド21の大きさにより、テーブルをx−y方向に移動させてもよい。また、矢印dで示すようように、支持軸22を左右に回動させることで、平坦化ムラを少なくすることもできる。
【0062】
これらの装置は平坦化処理を行うための機構の一例を示したにすぎず、上記方法を実現可能なものであれば図示例の構造に規制されるものではない。
【0063】
焼成後、上記処理を行い、さらにPZT等の誘電体平坦化層を、ゾルゲル法や、溶液塗布焼成法により形成し、表面を平坦化させるとさらに効果的である。この場合、通常のゾルゲル法により平坦化してもよいが、プロパンジオールなどのジオール類(OC(CHOH)の溶媒中に金属化合物を溶解させることにより作製されるものが好ましい。金属化合物原料として、金属アルコキシドがゾルゲル溶液作製にはよく用いられるが、金属アルコキシドは加水分解しやすいので、高密度溶液を作製する場合、原料の析出沈殿や溶液の同化を防ぐためにアセチルアセトネート化合物およびその誘導体を用いるのが好ましい。
【0064】
ゾルゲル平坦化層の膜厚としては、0.1〜5μm 、特に0.5μm 以上が好ましい。本発明によれば、欠陥部位の凸部の高さを規制しているので、ゾルゲル平坦化層の膜厚が2μm 以下、特に1μm 以下の比較的薄い場合でも効果があることが解っている。
【0065】
厚膜絶縁体層は、高誘電率でかつ高耐圧であることが必要であり、さらに基板の耐熱性を考慮して低温焼成可能な物質であることが要求される。
【0066】
厚膜絶縁体層を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、種々の誘電体材料を用いてよいが、例えば高誘電率系誘電体材料である、ペロブスカイト系強誘電体材料、すなわちチタン酸系複合酸化物(BaTiO ,PZT等)や、複合ペロブスカイト型リラクサー強誘電体(PMN,PWN,PFW等)、やタングステンブロンズ系強誘電体材料(PBN,SBN)等や、これらの複合材料が、高誘電率が得られるため、特にEL素子への応用に適している。
【0067】
厚膜ペーストの有機バインダーとしては、特に限定されるものではなく、セラミックス材のバインダーとして一般的に使用されているものの中から、適宜選択して使用すればよい。このような有機バインダーとしては、エチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられ、溶剤としては、α−ターピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン等が挙げられる。ペースト中の有機バインダーおよぴ溶剤の含有量は、特に限定されるものではなく、通常使用されている量、例えば有機バインダー1〜5質量%、溶剤10〜50質量%程度とすればよい。
【0068】
さらに、厚膜ペースト中には、必要に応じて各種分散材、可塑剤、絶縁体等の添加物が含有されていてもよい。
【0069】
厚膜絶縁体層の抵抗率としては、10 Ω・cm以上、特に1010 〜1018 Ω・cm程度である。
【0070】
また、比較的高い誘電率を有する物質であることが好ましく、その誘電率εとしては、好ましくはε=100〜10000程度である。膜厚としては、100μm 以下、特に5〜50μm が好ましく、さらには10〜40μm が好ましい。
【0071】
本発明の複合基板は、その上に発光層、他の絶縁層、他の電極層等の機能性膜を形成することにより、EL素子とすることができる。特に本発明の複合基板の厚膜絶縁体層に高誘電率材料を用いることで、良好な特性のEL素子を得ることができる。本発明の複合基板は焼結材料であるため、機能性膜である発光層を形成した後に加熱処理を行うようなEL素子にも適している。
【0072】
本発明の複合基板を用いてEL素子を得るには、誘電体層上に薄膜絶縁体層/発光層/薄膜絶縁体層/透明電極層の順で形成すればよい。
【0073】
発光層の材料としては、例えば、月刊ディスプレイ ’98 4月号 最近のディスプレイの技術動向 田中省作 p1〜10に記載されているような材料を挙げることができる。具体的には、赤色発光を得る材料として、ZnS、Mn/CdSSe等、緑色発光を得る材料として、ZnS:TbOF、ZnS:Tb等、青色発光を得るための材料として、SrS:Ce、(SrS:Ce/ZnS)n、CaGa:Ce、SrGa:Ce等を挙げることができる。
【0074】
また、白色発光を得るものとして、SrS:Ce/ZnS:Mn等が知られている。
【0075】
これらのなかでも、上記IDW(International Display Workshop)’97 X.Wu ”Multicolor Thin−Film Ceramic Hybrid EL Displays” p593 to 596 で検討されている、SrS:Ceの青色発光層を有するELに本発明を適用することにより特に好ましい結果を得ることができる。
【0076】
発光層の膜厚としては、特に制限されるものではないが、厚すぎると駆動電圧が上昇し、薄すぎると発光効率が低下する。具体的には、蛍光材料にもよるが、好ましくは100〜2000nm、特に300〜1500nm程度である。
【0077】
発光層の形成方法は、気相堆積法を用いることができる。気相堆積法としては、スパッタ法や蒸着法等の物理的気相堆積法や、CVD法等の化学的気相堆積法を挙げることができる。
【0078】
また、特に上記IDWに記載されているように、SrS:Ceの発光層を形成する場合には、HS雰囲気下、エレクトロンビーム蒸着法により形成すると、高純度の発光層を得ることができる。
【0079】
発光層の形成後、好ましくは加熱処理を行う。加熱処理は、基板側から電極層、絶縁層、発光層と積層した後に行ってもよいし、基板側から電極層、絶縁層、発光層、絶縁層、あるいはこれに電極層を形成した後にキャップアニールしてもよい。通常、キャップアニール法を用いることが好ましい。熱処理の温度は、好ましくは300〜基板の焼結温度、より好ましくは400〜900℃程度、処理時間は10〜600分、特に10〜180分程度である。アニール処理時の雰囲気としては、大気雰囲気中、N、Ar、He雰囲気中で行うことができる。また、600℃以上の高温で処理を行う場合には、N 、Ar、H 等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0080】
発光層の上下に形成される上部または下部薄膜絶縁体層は、前記したように省略してもよいがこれを有することが好ましい。
【0081】
この薄膜絶縁体層は、その機能として発光層と厚膜絶縁体層との間の界面の電子状態を調節し発光層への電子注入を安定化、効率化する事と、この電子状態が発光層の両面で対象的に構成することにより交流駆動時の発光特性の正負対称性を改善することが主要な目的であり、発光層誘電体層の役割である絶縁耐圧を保持する機能を考慮する必要はないため膜厚は小さくてよい。
【0082】
この薄膜絶縁体層は抵抗率として、10Ω・cm以上、特に1010〜1018Ω・cm程度が好ましい。また、比較的高い比誘電率を有する物質であることが好ましく、その比誘電率εとしては、好ましくはε=3以上である。この薄膜絶縁体層の構成材料としては、例えば酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化タンタル(Ta)、酸化イットリウム(Y)、ジルコニア(ZrO)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al)、等を用いることができる。また、薄膜絶縁体層を形成する方法としては、スパッタ法や蒸着法、CVD法を用いることができる。また、薄膜絶縁体層の膜厚としては、好ましくは10〜1000nm、特に好ましくは20〜200nm程度である。
【0083】
透明電極層は膜厚0.2μm〜1μmのITOやSnO(ネサ膜)、ZnO−Al等の酸化物導電性材料等が用いられる。透明電極層の形成方法としては、スパッタ法のほか蒸着法等の公知の技術を用いればよい。
【0084】
なお、上記した薄膜EL素子は単一発光層のみを有するが、本発明の薄膜EL素子は、このような構成に限定されるものではなく、膜厚方向に発光層を複数積層しても良いし、マトリックス状にそれぞれ種類の異なる発光層(画素)を組み合わせて平面的に配置するような構成としてもよい。
【0085】
本発明の薄膜EL素子は、焼成により得られる基板材料を用いることにより、高輝度の青色発光が可能な発光層も容易に得られ、しかも、発光層が積層される厚膜絶縁体層の表面が平坦、平滑であるため、高性能、高精細のカラーディスプレイを構成することもできる。また、比較的製造工程が容易であり、製造コストを低く抑えることができる。そして、効率の良い、高輝度の青色発光が得られることから、白色発光の素子としてカラーフィルターと組み合わせてもよい。
【0086】
カラーフィルター膜には、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いればよいが、EL素子の発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調整し、取り出し効率、色純度を最適化すればよい。
【0087】
本発明の薄膜EL素子は、通常、パルス駆動、交流駆動され、その印加電圧は、50〜300V程度である。
【0088】
なお、上記例では、複合基板の応用例として、薄膜EL素子について記述したが、本発明の複合基板はこのような用途に限定されるものではなく、種々の電子材料等に適用可能である。例えば、薄膜/厚膜ハイブリツド高周波用コイル素子等への応用が可能である。
【0089】
【実施例】
次に、実施例により本発明をより具体的に説明する。以下の実施例で用いたEL構造体は、複合基板の誘電体層表面に、薄膜法により下部絶縁層、発光層、上部絶縁層、上部電極を順次積層した構造を持つものである。
【0090】
〔実施例1〕
まず、下部電極としてレジネート金ペースト(ヘラウスRP2003/237−22%)ぺーストを、96%Al 基板上に1.5mm幅、ギャップ0.5mmのストライプ状のパターンに印刷し、110℃で数分間乾燥を行った後、850℃で15分焼成を行い、膜厚1μmの金電極を形成した。
【0091】
この下部電極が形成された基板上に、さらにスクリーン印刷法により誘電体ペーストを印刷し、厚膜グリーンを形成した。
【0092】
厚膜ペーストとしては、下記の誘電体ペーストを準備した。
【0093】
誘電体ペーストは平均粒径が約0.2〜0.3μmのPb(Mg1/3Nb2/3 )O −PbTiO 粉末原料に焼結助剤としてPbO−CuOを約7wt%添加したものを用い、バインダーとして、エチルセルロース(平均分子量20,000)5wt%と溶媒としてα−ターピネオール30〜50wt%、不飽和脂肪酸系分散剤0.5wt%、フタル酸エステル系可塑剤2wt%混合することにより作製した。
【0094】
これらの誘電体ペーストを、前記の電極のパターンを印刷焼成した基板上に4回印刷、乾燥を繰り返し最終的な焼成後で約20μmの膜厚となるように厚膜グリーンを形成した。
【0095】
印刷乾燥後、これら全体の構造をCIP(冷間静水圧プレス)にて、温度25℃、圧力500〜6000kg/cm の条件下で1分間加圧した。
【0096】
平坦化処理後、厚膜グリーンが形成された基板はベルト炉を用い、十分な空気を供給した雰囲気で850℃−20minの焼成を行った。
【0097】
この基板に、溶液塗布焼成法を用いて表面平坦化誘電体層であるPZT誘電体層を形成した。溶液塗布焼成法による誘電体層の形成方法として、以下の方法で作製したゾルゲル液をPZT前駆体溶液として基板にスピンコーティング法にて塗布し、700℃で15分間焼成した。
【0098】
基本的なゾルゲル液の作製方法は、8.49gの酢酸鉛三水和物と4.17gの1,3プロパンジオールを約2時間、加熱攪拌し、透明な溶液を得た。これとは別に、3.70gのジルコニウム・ノルマルプロポキシド70wt%1−プロパノール溶液と、1.58gのアセチルアセトンを乾燥窒素雰囲気中で30分間加熱攪拌し、これに3.14gのチタニウム・ジイソプロポキシド・ビスアセチルアセトネート75wt%2−プロパノール溶液と、2.32gの1,3プロパンジオールを加え、更に2時間加熱攪拌した。これら2つの溶液を80℃で混合し、乾燥窒素雰囲気中で2時間加熱攪拌し、褐色透明な溶液を作製した。この溶液を130℃で数分間保持することにより副生成物を取り除き、さらに3時間加熱攪拌することによりPZT前駆体溶液を作製した。
【0099】
この前駆体溶液を、n−プロパノールを用いて希釈して濃度調整を行い、スピンコーティングにより塗布し、焼成して前記厚膜上に膜厚0.7μm厚のPZT層を形成した。
【0100】
なお、この条件で形成されたPZT膜単独の比誘電率は600であり、誘電体層と溶液塗布焼成法によるPZT層の積層構造での誘電率は約3000であった。
【0101】
EL素子は、上記で作製された誘電体複合基板上に、スパッタリング法として薄膜絶縁層であるSi 薄膜を約500Å形成後、基板を200℃に加熱した状態でMnをドープしたZnSターゲットを用い、ZnS蛍光体薄膜を厚さ0.7μm となるよう電子ビーム蒸着法により形成し、真空中500℃で10分間熱処理した。次に、第2絶縁層としてSi 薄膜約500Aと第2電極としてITO薄膜を0.5μm スパッタリング法により順次形成することによりEL素子とした。
【0102】
上記EL素子前駆体における誘電体層製造過程において、直径換算で50μm 程度の繊維状の有機物異物が混入してしまったパネルを抽出した。抽出方法は、光学顕微鏡にて基板表面を検査し、直径換算で50μm 以上の異物による欠陥部位のあるものを抽出した。
【0103】
焼成後に#10000ラッピングフィルムで1μm 以上の高さの突起部だけを除去するように数回擦るように処理した。このとき、突起の高さは最大で2〜3μm 程度の部分も認められた。その結果、凸部の高さはJIS規定による最大高さRmax(以下Rmax)で1μm 未満にまで減少した。
【0104】
このEL素子前駆体を使用して上記のようにEL素子を作成し、発光レベルを確認した。発光特性は、得られた素子構造の印刷焼成電極、ITO透明電極から電極を引き出し、75Hzのパルス幅100μsの電界を印加して測定した。発光輝度は200Vで1000cd/m 程度であった。
【0105】
欠陥個所周辺のキズも低輝度時に輝線となったが、実用上問題ない発光レベルと判断できた。
【0106】
〔実施例2〕
実施例1において、有機物異物が混入してしまったパネルを、焼成後に#4000ラッピングフィルムで1μm 以上の高さの突起部だけを除去するように数回擦るように処理した。このとき、突起の高さは最大で2〜3μm 程度の部分も認められた。その結果、凸部の高さはRmaxで1μm 未満にまで減少した。
【0107】
このEL素子前駆体を使用してEL素子を作成し、発光レベルを確認した。欠陥個所周辺のキズも低輝度時に輝線となったが、実用上問題ない発光レベルと判断できた。
【0108】
〔実施例3〕
実施例1において、有機物異物が混入してしまったパネルを、研磨剤を使用しないバフ研磨で1μm 以上の高さの突起部だけを除去するように処理した。このとき、突起の高さは最大で2〜3μm 程度の部分も認められた。具体的なバフ研磨条件は、フェルトを主体とした回転ポリッシングディスク:直径10mm、長さ20mmを用い、回転数10000rpm 、線速度5〜50m/s、圧力0.1〜1kgf/cm の条件で数秒軽く押し当て誘電体欠陥部表面の凸部分を研削処理した。その結果、凸部の高さはRmaxで1μm 未満にまで減少した。
【0109】
このEL前駆体を使用してEL素子を作成し、発光レベルを確認した。実用上問題ない発光レベルと判断できた。
【0110】
〔比較例1〕
実施例1において、有機物異物が混入してしまったパネルを、何も処理せずにEL素子を作成した。このとき、異物の痕跡による突起の高さは最大で10μm 以上の部分も認められた。
【0111】
この素子を駆動して発光させたところ、有機物の痕跡部分の周縁部がリング状に非発光部位として明らかに認識でき、実用上問題のある発光欠陥レベルであることがわかった。
【0112】
〔比較例2〕
実施例1において、溶液塗布焼成法による第二の誘電体層製造過程において、有機物異物が混入してしまったパネルを、焼成後に#10000ラッピングフィルムで1μm 以上の高さの突起部だけを除去するように数回擦るように処理した。このとき、突起の高さは最大で10μm 以上の部分も認められた。その結果、凸部の高さはRmaxで1μm 未満にまで減少した。
【0113】
このEL前駆体を使用してEL素子を作成し、発光レベルを確認した。思ったような効果は得られず、実用上問題のあるレベルであった。
【0114】
本発明は、工程上、厚膜グリーンの焼成後に処理されるため、実際上問題となっている対象物の多くに効果がある。繊維屑などの異物である場合には、特に有効である。本発明のよる歩留まり向上率は10%以上であった。
【0115】
以上の結果から、本発明によれば、欠陥が生じたEL複合基板でも、発光特性上問題のないレベルにまで修復できることがわかる。また、研削処理は溶液塗布焼成法による平坦化層形成前の焼成基板に行うことが効果的であることがわかる。
【0116】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、従来にない簡単かつ低コストに厚膜絶縁体層の表面を平坦化し、薄膜発光素子に応用した場合に高い表示品質が得られる複合基板と、これを用いた薄膜EL素子の製造方法、製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合基板に付着した異物の状態を示す概略断面図である。
【図2】複合基板に付着した異物の状態を示す概略断面図である。
【図3】複合基板に付着した異物の状態を示す概略断面図である。
【図4】EL素子の基本構成を示した概略断面図である。
【図5】本発明装置の第1の態様を示す外観斜視図である。
【図6】本発明装置の第2の態様を示す概略正面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 異物
3 欠陥
3a 凸部
3b 凹部(底部)
11 基板
12 下部電極層
13 厚膜絶縁体層
14 ゾルゲル平坦化層
15 薄膜絶縁体層
16 発光層
17 薄膜絶縁層
18 透明電極
20 x−yテーブル
20a テーブル
21 摩擦ヘッド

Claims (7)

  1. 電気絶縁性を有する基板の一方の側に第1の電極層を形成する第1の工程と、
    前記第1の電極層上に粉体または粒体状のセラミックス材料を用いた厚膜グリーンを形成し、この厚膜グリーンを焼成して厚膜絶縁体層を形成する第2の工程と、
    焼成後前記厚膜絶縁体層の表面上に形成された凸部のみに、摩擦ヘッドを摺り合わせることで、前記凸部を除去する第3の工程と、
    を有する複合基板の製造方法。
  2. 前記第3の工程における凸部は異物混入により生じた欠陥部位であり、高さ1μm 以上の凸部を有する請求項1の複合基板の製造方法。
  3. 前記摩擦ヘッドが、研削剤を含まない請求項1または2の複合基板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかの方法で複合基板を形成し、
    さらに前記厚膜絶縁体層上に発光層を形成する第4の工程と、
    前記発光層上に第2の電極層を形成する第5の工程と、
    を有するEL素子の製造方法。
  5. 電気絶縁性を有する基板の一方の側に第1の電極層が形成され、前記第1の電極層上に粉体または粒体状のセラミックス材料を用いた厚膜グリーンを焼成した厚膜絶縁体層が形成されている複合基板の製造装置であって、
    前記厚膜絶縁体層の表面上に形成された凸部のみに、摩擦ヘッドを摺り合わせることで前記凸部を除去する複合基板の製造装置。
  6. 前記摩擦ヘッドが、研削剤を含まない請求項5の複合基板の製造装置。
  7. 請求項5〜6の複合基板上にはさらに発光層および第2の電極が形成されるEL素子の製造装置。
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WO2019187078A1 (ja) * 2018-03-30 2019-10-03 シャープ株式会社 表示デバイスの製造方法
WO2020044464A1 (ja) * 2018-08-29 2020-03-05 シャープ株式会社 基板製造方法、基板、及び表示装置

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