JP2004354151A - 変位計測システム - Google Patents

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Hisashi Yoshida
久 吉田
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Abstract

【課題】レーザビームが形成する平面の変動による影響を抑えるようにした変位計測システムを得る。
【解決手段】監視対象物である高架構造物1の橋脚5−1〜橋脚5−nにレベルセンサ21−1〜21−nをそれぞれ配設し、これらレベルセンサ21−1〜21−nと別に、不動点31上にもレベルセンサ32を設ける。各レベルセンサ21−1〜21−n、32は、それぞれ不動点11に配設されている回転レーザレベル12から水平方向に向けて放射されるレーザビームを受光し、受光位置の変位(レベル変位)を示す信号をホストコンピュータ42へ送信する。ホストコンピュータ42は、レベルセンサ32から送信される信号が示すレベル変位検出値Dcを用いて補正値hj(jは1〜nまでの整数)を算出する。ホストコンピュータ42はさらに、レベルセンサ21−1〜21−nから送信される各信号が示す各橋脚におけるレベル変位検出値Djを補正値hjでそれぞれ補正する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物などの不同沈下を監視するための変位計測システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
走査レーザ光を送光し、この走査レーザ光を複数の測定点で受光することによって各測定点におけるレベル変位を検出する変位計測システムが知られている(特許文献1参照)。変位計測システムは、回転するレーザビーム(走査レーザ光)を水平方向に放射する回転レーザレベルと、各測定点においてレーザビームの受光位置の鉛直方向の変化(レベル変位)をそれぞれ検出する複数のレベルセンサと、各レベルセンサによる検出結果を監視するコントローラとを有し、各レベルセンサが配設されている構造物のレベル変動を監視する。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−20808号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記システムでは、回転レーザレベルから放射されるレーザビームが形成する平面(すなわち、水平方向に対するレーザビームの放射方向角)が変動しないことが前提になる。レーザビームの放射方向角が変動すると、測定点にレベル変動が生じていないにもかかわらずレーザビームの受光位置が変化し、レベル変動が生じた場合と同様の監視結果が得られてしまう。とくに、回転レーザレベルから測定点までの距離が長くなると、レベルセンサで検出されるレベル変位が距離に比例して大きくなるので問題になりやすい。
【0005】
本発明は、レーザビームが形成する平面に変動があった場合でも、測定点の変位を正確に計測できる変位計測システムを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による変位計測システムは、第1の不動点に配設され、回転するレーザビームを射出する回転レーザビーム射出手段と、変位計測の対象物に配設され、レーザビームを受光して当該レーザビームが形成する平面と略直角方向における変位情報を示す信号を送出する第1の受光位置検出手段と、第1の不動点と異なる第2の不動点に配設され、レーザビームを受光して当該レーザビームが形成する平面と略直角方向における変位情報を示す信号を送出する第2の受光位置検出手段と、第2の受光位置検出手段からの信号が示す変位情報に基づいて第1の受光位置検出手段からの信号が示す変位情報を補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
請求項1に記載の変位計測システムにおいて、回転レーザビーム射出手段から第1の受光位置検出手段までの第1の距離と、回転レーザビーム射出手段から第2の受光位置検出手段までの第2の距離との比に応じて補正を行うように補正手段を構成してもよい。
請求項1または2に記載の変位計測システムにおいて、回転レーザビーム射出手段および第1の受光位置検出手段を結ぶ線と、回転レーザビーム射出手段および第2の受光位置検出手段を結ぶ線との挟角を所定範囲内にするとよい。
請求項1〜3のいずれかに記載の変位計測システムにおいて、補正手段による補正後の変位情報を変位計測値にするとよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による変位計測システムの全体構成図である。本実施の形態では、変位計測システムで鉄道や道路などの高架構造物1のレベル変位を監視する。この監視は、たとえば、高架構造物1の周辺で工事(近接施工工事)が行われる場合など、工事の影響による既存の高架構造物1の不同沈下などの発生の有無を調べるために行う。
【0008】
図1において、変位計測システムは、回転レーザレベル12と、n台の受光位置計測装置(レベルセンサ)21−1〜21−nと、受光位置計測装置32と、ホストコンピュータ42とを有する。回転レーザレベル12は、上記近接施工工事の影響による沈下や振動等を受けない不動点11に配設される。回転レーザレベル12は、水平方向(不動点11における重力方向と直角の方向)に向けてレーザビームを放射するとともに、このレーザビームを回転レーザレベル12の回りに360度回転させるように構成されている。レーザビームの波長は、たとえば、780nmの近赤外波長である。レーザビームの放射方向角(すなわち、レーザビームが形成する平面の角度)は、水平方向に対する角度偏差が、たとえば、±10(秒)以内となるように構成されている。なお、水平方向に対するレーザビームの放射方向角をδφと表すことにする。
【0009】
受光位置計測装置(レベルセンサ)21−1〜21−nは、高架構造物1のn本の橋脚5−1〜5−nにそれぞれ配設されている。受光位置計測装置21−1〜21−nは回転レーザレベル12からのレーザビームをそれぞれ受光し、鉛直方向の受光位置を示す信号を出力するように構成されている。受光位置を示す信号は、それぞれ通信ケーブル41を介してホストコンピュータ42へ送信される。なお、受光位置計測装置21−1〜21−nには、回転レーザレベル12による上記波長のレーザビームを受光するために適した受光素子および波長フィルタがそれぞれ備えられ、他の光源からの光の影響を受けないように構成されている。
【0010】
受光位置計測装置32は、上記近接施工工事の影響による振動等を受けない不動点31に配設される。不動点31は、回転レーザレベル12が配設される不動点11とは別に設けられている。受光位置計測装置32は、橋脚5−1〜5−nにそれぞれ配設されるレベルセンサと同様のレベルセンサで構成され、回転レーザレベル12からのレーザビームを受光し、鉛直方向の受光位置を示す信号を出力するように構成されている。受光位置を示す信号は、通信ケーブル33を介してホストコンピュータ42へ送信される。
【0011】
ホストコンピュータ42は、受光位置計測装置21−1〜21−nおよび受光位置計測装置32から送信される信号を受信し、受信信号が示す各測定点(この場合橋脚5−1〜5−nおよび不動点31)におけるレベル変位(変位計測値)を記録するとともに、レベル変位が管理限界値を超えた場合にはアラームを発信するように構成されている。レベル変位が小さい場合は、当該測定点の沈下等が管理値内であり、レベル変位が管理限界値を超えた場合は当該測定点に異常沈下等が発生したと考えられる。管理限界値は、許容されるレベル変位の上限であり、レベル変位の監視を開始する前にあらかじめ設定されている。
【0012】
一般に、上述した回転レーザレベル12では、光学部品、電気部品および機械部品などの各特性の経時変化や、回転レーザレベル12の周囲温度の変化に伴う各部品の特性変動などによって放射方向角が変動する。この角度変動をδθとすると、回転レーザレベル12によるレーザビームの放射方向角δBは次式(1)で表される。
【数1】
δB=δφ+δθ (1)
【0013】
放射方向角δφは、レーザビームの水平方向に対する定常的な偏差に対応し、放射方向角δθは、たとえば、昼夜間の温度差のように周囲環境の変化に起因する変動に対応する。変位計測システムは、レーザビームの受光位置の相対的変化を監視するので、定常的に生じている偏差δφよりも、方向角の変動δθの方が問題になりやすい。方向角の変動δθは、レーザビームが形成する平面の変動に相当する。
【0014】
図2は、上式(1)において定常的な偏差δφを0とした場合の鉛直方向のレベル変位δDを説明する図である。図2において、回転レーザレベル12からのレーザビームの放射方向角がδθ変動すると、距離Lを隔てた測定点では鉛直方向にδDのレベル変位が検出される。この場合のレベル変位δDは実際の測定点のレベル変位に関係なく検出されるので誤差といえる。レベル変位δDは、次式(2)で表される。
【数2】
δD={L×tan(δθ)} (2)
ただし、Lは回転レーザレベル12およびレベルセンサ(測定点)間の距離である。
【0015】
本発明は、レーザビームの放射方向角の変動δθによって生じるレベル変位δDの影響を抑えることに特徴を有する。
【0016】
図3は、図1の変位計測システムを上から見た図である。ただし、ホストコンピュータ42および通信ケーブル41、33は省略している。図3において、回転レーザレベル12から受光位置計測装置21−1までの距離をL1とする。回転レーザレベル12から受光位置計測装置21−2までの距離をL2とする。同様に、回転レーザレベル12から受光位置計測装置21−nまでの距離をLnとする。また、回転レーザレベル12から受光位置計測装置32までの距離をLcとする。
【0017】
ホストコンピュータ42は、受光位置計測装置32から送信される信号が示すレベル変位検出値Dcを用いて、次式(3)により補正値hj(jは1〜nまでの整数)を算出する。ここで、受光位置計測装置32は不動点31に配設されているため、受光位置計測装置32における実際のレベル変位は0であり、受光位置計測装置32で検出されるレベル変位検出値Dcは回転レーザレベル12の放射方向角の変動に起因するレベル変位に相当するという考えに基づく。
【数3】
hj=Dc×(Lj/Lc) (3)
ただし、補正値hjは、受光位置計測装置21−j(jは1〜nまでの整数)によるレベル変位検出値Djに対する補正値である。距離Ljは、回転レーザレベル12から受光位置計測装置21−j(jは1〜nまでの整数)までの距離である。上式(3)は、受光位置計測装置32で検出されるレベル変位検出値Dc(すなわち、レーザビームの放射方向角の変動δθによって生じる誤差)を、光位置計測装置21−j(jは1〜nまでの整数)で見込まれる誤差に距離Ljと距離Lcとの比に応じて換算するものである。
【0018】
ホストコンピュータ42は、各受光位置計測装置21−j(jは1〜nまでの整数)から送信される信号が示すレベル変位検出値Djと、上式(3)による補正値hjとを用いて、次式(4)により補正後のレベル変位検出値Dj’(jは1〜nまでの整数)を算出する。レベル変位検出値Dj’は、回転レーザレベル12の放射方向角δθの変動に起因する誤差を除外したものである。
【数4】
Dj’=Dj−hj (4)
【0019】
ホストコンピュータ42は、補正後のレベル変位検出値Dj’(jは1〜nまでの整数)のいずれかが管理限界値を超えた場合にアラームを発信する。これにより、工事施工者は、近接施工工事を中断して必要な措置をとる。
【0020】
以上説明した実施の形態についてまとめる。
(1)レベル変化の監視対象物である高架構造物1の橋脚5−1〜橋脚5−nに受光位置計測装置(レベルセンサ)21−1〜21−nをそれぞれ配設し、これらレベルセンサ21−1〜21−nと別に、不動点31上にもレベルセンサ32を設ける。各レベルセンサ21−1〜21−n、32は、それぞれ不動点11に配設されている回転レーザレベル12から水平方向に向けて放射されるレーザビームを受光し、受光位置の変位(レベル変位)を示す信号をホストコンピュータ42へ送信する。
【0021】
(2)ホストコンピュータ42は、レベルセンサ32から送信される信号が示すレベル変位検出値Dcを用いて、上式(3)により補正値hj(jは1〜nまでの整数)を算出する。ホストコンピュータ42はさらに、レベルセンサ21−1〜21−nから送信される各信号が示す各橋脚におけるレベル変位検出値Djを補正値hjでそれぞれ補正し、補正後のレベル変位検出値Dj’を記録する。
【0022】
(3)ホストコンピュータ42は、補正後のレベル変位検出値Dj’のいずれかが管理限界値を超えた場合にアラームを発信する。
【0023】
たとえば、回転レーザレベル12からレベルセンサ32までの距離Lcが40(m)、回転レーザレベル12によるレーザビームの放射方向角の変動δθが5(秒)の場合は、レベル変位δD(すなわち、レベルセンサ32で検出されるレベル変位検出値Dcは上式(2)により1(mm)である。この場合に回転レーザレベル12からの距離Ljが80(m)であるレベルセンサ21−jで見込まれる誤差hjは上式(3)により2(mm)となる。レベルセンサ21−jによるレベル変位検出値Djを補正値hjで補正することで、2(mm)分の誤差を除去できるので、回転レーザレベル12およびレベルセンサ21−jにおける物理的な仕様変更を行うことなく、システムのレベル検出精度を高めることができる。
【0024】
一般に、レベルセンサ21−jのレベル検出精度は±0.5(mm)である。上述したようにレーザビームの放射方向角の変動δθによる誤差が2(mm)あると、システムとしてのレベル検出精度が±2.5(mm)に低下する。しかしながら、本実施の形態では上記2(mm)分の誤差を除去することによって変位計測システムで±0.5(mm)のレベル検出精度を得ることが可能になる。この結果、従来は6(mm)程度が限界であった変位計測システムの管理限界値を3(mm)にすることも可能になる。
【0025】
回転レーザレベル12およびレベルセンサ32間の距離Lcは、少なくとも30(m)〜40(m)以上とするのが望ましい。この理由は、レーザビームの放射方向角の変動δθが5(秒)の場合に、レベルセンサ32で少なくとも当該レベルセンサ32のレベル検出精度より大きなレベル変位検出値Dcを得る必要があるからである。
【0026】
以上の説明では、ホストコンピュータ42および受光位置計測装置21−1〜21−n間、ホストコンピュータ42および受光位置計測装置32間をそれぞれケーブル41、33で通信する例を説明したが、電波や赤外線を用いた無線通信によって信号を送受信するようにしてもよい。
【0027】
レーザビームの水平方向に対する定常的な偏差(放射方向角δφ)が回転レーザレベル12の回り360度で一定でない(いわゆるオフセット誤差を有する)場合は、図3において回転レーザレベル12および受光位置計測装置21−1〜21−nをそれぞれ結ぶ各線と、回転レーザレベル12および受光位置計測装置32を結ぶ線との挟角がそれぞれ所定範囲内(たとえば、90度以内)となるようにするとよい。
【0028】
上述した説明では、鉛直方向のレベル変位を監視する例を説明したが、鉛直方向に対して直角の方向(水平方向)についてのレベル変位を監視してもよい。この場合には、回転レーザレベル12ならびに受光位置計測装置21−1〜21−n、受光位置計測装置32の設置方向をそれぞれ90度変更すればよい。
【0029】
特許請求の範囲における各構成要素と、発明の実施の形態における各構成要素との対応について説明する。第1の不動点は、たとえば、不動点11が対応する。回転レーザビーム射出手段は、たとえば、回転レーザレベル12によって構成される。対象物は、たとえば、橋脚5−1〜5−nが対応する。レーザビームが形成する平面と略直角方向は、たとえば、鉛直方向が対応する。第1の受光位置検出手段は、たとえば、受光位置計測装置(レベルセンサ)21−1〜21−nによって構成される。第2の不動点は、たとえば、不動点31が対応する。第2の受光位置検出手段は、たとえば、受光位置計測装置(レベルセンサ)32によって構成される。補正手段は、たとえば、ホストコンピュータ42によって構成される。第1の距離は、たとえば、距離L1〜Lnが対応する。第2の距離は、たとえば、距離Lcが対応する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0030】
【発明の効果】
本発明による変位計測システムでは、レーザビームが形成する平面に変動があった場合でも、測定点の変位を正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による変位計測システムの全体構成図である。
【図2】定常的な偏差を0とした場合の鉛直方向のレベル変位を説明する図である。
【図3】図1の変位計測システムを上から見た図である。
【符号の説明】
1…高架構造物、 11、31…不動点、
12…回転レーザレベル、
21−1〜21−n、32…受光位置計測装置(レベルセンサ)、
42…ホストコンピュータ

Claims (4)

  1. 第1の不動点に配設され、回転するレーザビームを射出する回転レーザビーム射出手段と、
    変位計測の対象物に配設され、前記レーザビームを受光して当該レーザビームが形成する平面と略直角方向における変位情報を示す信号を送出する第1の受光位置検出手段と、
    前記第1の不動点と異なる第2の不動点に配設され、前記レーザビームを受光して当該レーザビームが形成する平面と略直角方向における変位情報を示す信号を送出する第2の受光位置検出手段と、
    前記第2の受光位置検出手段からの信号が示す変位情報に基づいて前記第1の受光位置検出手段からの信号が示す変位情報を補正する補正手段とを備えることを特徴とする変位計測システム。
  2. 請求項1に記載の変位計測システムにおいて、
    前記補正手段は、前記回転レーザビーム射出手段から前記第1の受光位置検出手段までの第1の距離と、前記回転レーザビーム射出手段から前記第2の受光位置検出手段までの第2の距離との比に応じて前記補正を行うことを特徴とする変位計測システム。
  3. 請求項1または2に記載の変位計測システムにおいて、
    前記回転レーザビーム射出手段および前記第1の受光位置検出手段を結ぶ線と、前記回転レーザビーム射出手段および前記第2の受光位置検出手段を結ぶ線との挟角が所定範囲内であることを特徴とする変位計測システム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の変位計測システムにおいて、
    前記補正手段による補正後の変位情報を変位計測値とすることを特徴とする変位計測システム。
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