JP2004352387A - 被加工物の搬送制御方法及び搬送制御装置 - Google Patents

被加工物の搬送制御方法及び搬送制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】被加工物のライン速度を加工時間の臨界を越えた速度に増加するにあたって、十分な加工時間を確保すると共に、被加工物に安定した加工を施しうる、被加工物の搬送制御方法及び搬送制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の搬送制御方法は、中間体2をシール時間Tで封止する際に、第1のライン速度V1cから第2のライン速度V1aに増加するにあたって、シールローラ対10を制御することにより、シール速度Vを、非シール領域Aにおいて、第2のライン速度V1aの増加分に応じて加速すると共に、シール領域Aにおいて、第1のライン速度V1cに保持する。入口ローラ対13及び出口ローラ対14を制御することにより、中間体2の被シール速度Vを、少なくともシール領域Aにおいて、シール速度Vに一致させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造に用いられる長尺状の原反に対し、シール等の加工を施す際に、原反の搬送を制御する方法及びその装置に関し、特に、原反のライン速度を変更する場合、原反の速度及び位置を制御する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、生理用ナプキン等の吸収性物品の製造方法においては、まず、表面シート原反及び裏面シート原反を、それぞれ送りながらそれらの間に吸収体を挟んだ状態で重ね合わせ、連続した中間体を形成する。
次いで、図7に示すように、シール工程では、上流コンベヤ101及び下流コンベヤ102により中間体103を送りながら、一対のシールローラ104、104により、中間体103において吸収性物品同士が隣接する部分を封止する。
【0003】
このシール工程においては、上流コンベヤ101及び下流コンベヤ102のライン速度Vが、予め、時間当たりの製造個数に応じて設定されており、シールローラ104の接線速度V’がライン速度Vと同一に定められている。
そして、上流コンベヤ101及び下流コンベヤ102により中間体102をライン速度Vで搬送しながら、シールローラ104を接線速度V’で回転することにより、中間体103において封止部分106を形成する際、十分なシール時間を確保するようにしている。
【0004】
他方、近年、シールローラ104の駆動源にサーボ制御系のモータ107を用いた改良技術が提案されており、この改良技術は、シールローラ104の速度制御により、シールローラ104の接線速度V’を、非シール領域において、物品長さの変更に応じて加減速しつつ、シール領域において、上流コンベヤ101及び下流コンベヤ102の送り速度Vに一致させるものである。
【0005】
この改良技術に関連した技術文献には、例えば、以下に示すものがある。
特許文献1には、長尺状の被加工材料の送りローラを駆動するX軸モータ、加工機を駆動するY軸モータを用い、加工区間では、X軸モータ及びY軸モータを、送りローラと加工機との周速度(接線速度)が同一になるように制御し、非加工区間では、Y軸モータを、加工機の周速度が加工間隔に対応するように制御する技術が開示されている。
特許文献2には、連続した通板材のライン速度に対し、切断ドラムにおける切断刃の周速度を、周期的に加減速し、その加減曲線を正弦波とする技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−15783号公報
【特許文献2】
特開平11−197939号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図7に示すように、一般に、ライン速度Vとシール強度とは、ライン速度Vを大きくするほどシール強度が弱くなるという、反比例の関係にあるため、ライン速度Vが臨界速度Vを越えた場合、シール強度が不十分になる。
【0008】
そのため、上記従来のシール工程においては、上流コンベヤ101及び下流コンベヤ102のライン速度V及びシールローラ104の接線速度V’を、臨界速度Vより大きい速度に増加できず、生産効率を向上するには一定の限界があった。
もっとも、ライン速度V及び接線速度V’を臨界速度Vより大きくし、そのシール時間の不足分をシール圧力やシール温度の上昇により補い、シール強度を確保することも考えられる。
しかし、この場合、シール圧力やシール温度を上昇すると、シールローラ104に過度の応力又は熱応力が生じ、これが原因でシールローラ104が変形するおそれがある。
【0009】
他方、上記改良技術の場合にあっては、臨界速度Vより大きくしたライン速度Vの1サイクルタイムと、シールローラ104の1サイクルタイムとを同期させ、シールローラ104を、被シール領域において、ライン速度Vの増加分に応じて加速し、シール領域において、シール時間を充足する低速度に保持するように速度制御することも考えられる。
しかし、この場合、シール領域において、シールローラ104のシール部105と中間体103との間に速度差が生じるため、中間体103の表層部に応力が生じ、これが原因で中間体104が破損するおそれがある。
上記特許文献1、2の従来技術にあっても、加工機や切断ドラムのみをモータで制御する点で上記改良技術と共通しているため、上記同様の問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、被加工物のライン速度を加工時間の臨界を越えた速度に増加するにあたって、十分な加工時間を確保すると共に、被加工物に安定した加工を施しうる、被加工物の搬送制御方法及び搬送制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、長尺状の被加工物に所定の加工を施す加工ローラ、該加工ローラに対し上流側の該被加工物を搬送する上流搬送手段、及び該加工ローラに対し下流側の該被加工物を搬送する下流搬送手段を用い、該上流搬送手段及び該下流搬送手段により該被加工物を所定のライン速度で搬送しながら、該加工ローラを加工速度で回転しつつ該被加工物を所定の加工時間で加工する際に、該ライン速度について該加工時間を充足する第1のライン速度から該加工時間の臨界を越えた第2のライン速度に増加するにあたって、該加工速度及び該被加工物の速度を制御する方法であって、前記上流搬送手段と前記加工ローラとの間の前記被加工物を前記ライン速度と異なる速度で搬送可能な入口ローラ、及び前記加工ローラと前記下流搬送手段との間の前記被加工物を前記ライン速度と異なる速度で搬送可能な出口ローラを用い、前記加工ローラを制御することにより、前記加工速度を、記加工ローラの非加工領域において、前記第2のライン速度の増加分に応じて加速すると共に、前記加工ローラの加工領域において、前記第1のライン速度に保持し、前記入口ローラ及び前記出口ローラを制御することにより、前記入口ローラと前記出口ローラとの間における前記被加工物の被加工速度を、少なくとも前記加工領域において、前記加工速度に一致させることを特徴とする被加工物の搬送制御方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0012】
また、本発明は、長尺状の被加工物に所定の加工を施す加工ローラと、前記加工ローラに対し上流側の前記被加工物を搬送する上流搬送手段と、前記加工ローラに対し下流側の前記被加工物を搬送する下流搬送手段と、前記上流搬送手段と前記加工ローラとの間の前記被加工物を搬送する入口ローラと、前記加工ローラと前記下流搬送手段との間の前記被加工物を搬送する出口ローラと、前記加工ローラを可変的に駆動する第1の駆動源と、前記入口ローラ及び前記出口ローラを可変的に駆動する第2の駆動源と、前記第1の駆動源に対し、前記加工ローラの速度を、前記加工ローラの非加工領域において、前記第2のライン速度に応じて加速すると共に、前記加工ローラの加工領域において、前記第1のライン速度に保持する第1の速度指令を発し、前記第2の駆動源に対し、前記入口ローラ及び前記出口ローラの速度を、少なくとも前記加工領域において、前記加工速度に一致させる第2の速度指令を発する制御手段とを備えていることを特徴とする被加工物の搬送制御装置を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0013】
本発明によれば、加工速度及び被加工速度を、少なくとも加工領域において、第2のライン速度に保持したため、被加工物のライン速度を加工時間の臨界を越えた速度にしても、十分な加工時間を確保でき、また、被加工物に安定した加工を施すことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の被加工物の搬送制御方法及び搬送制御装置の好ましい一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の被加工物の搬送制御方法は、長尺状の中間体(被加工物)2を、上流コンベヤ(上流搬送手段)11及び下流コンベヤ(下流搬送手段)12により、ライン速度Vで搬送しながら、シールローラ対(加工ローラ)10をシール速度(加工速度)Vで回転しつつ中間体2をシール時間(所定の加工時間)Tで封止する際に、ライン速度Vについてシール時間Tを充足する第1のライン速度V1cからシール時間Tの臨界を越えた第2のライン速度V1aに増加するにあたって、シール速度V及び中間体2の速度を制御する方法である。
シールローラ対10を制御することにより、シール速度Vを、シールローラ対10の非シール領域(非加工領域)Aにおいて、第2のライン速度V1aの増加分に応じて加速すると共に、シールローラ対10のシール領域(加工領域)Aにおいて、第1のライン速度V1cに保持する。
入口ローラ対13及び出口ローラ対14を制御することにより、入口ローラ対13と出口ローラ対14との間における中間体2の被シール速度Vを、少なくともシール領域Aにおいて、シール速度Vに一致させる。
【0015】
かかる搬送制御方法は、吸収性物品の製造工程のうちのシール工程において実施されるものであり、その前工程では、表面シートの原反及び裏面シートの原反の間に吸収体を介在させてこれらを重ね合わせた中間体が形成されている(図示しない)。
まず、シール工程に用いられる搬送制御装置1を述べる。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の搬送制御装置1は、シールローラ対(加工ローラ)10、上流コンベヤ(上流搬送手段)11、下流コンベヤ(下流搬送手段)12、入口ローラ対(入口ローラ)13、出口ローラ対(出口ローラ)14、上流路増減機構(上流路増減手段)15、下流路増減機構(下流路増減手段)16、第1のサーボモータ(駆動源)21、第2のサーボモータ(第2の駆動源)22、第3のサーボモータ(第3の駆動源)23、コントローラ(制御手段)24等を備えている。以下、これらの構成等を具体的に説明する。
【0017】
シールローラ対10は、中間体2にシールを施すもので、同一のシールローラ10a、10aが一対をなして構成されている。シールローラ10aの外周面上には、シール部10bが凸状に形成されている。このシール部10bは、発熱するように構成されており、シールローラ対10の回転に伴い、他方のシール部10bと対向して接触するように配置されている。
【0018】
シールローラ10aの外径φは、吸収性物品3の基準物品長さLに応じて定められ、次の式(1)で示される。
φ=(L×n)/π …式(1)
(n:シールローラ10aの1回転につきシール回数)
本実施形態の場合、基準物品長さL=300[mm]、n=2(シール部10bの個数)、シールローラ10aの外径φ=190[mm]としている。
【0019】
上流コンベヤ11は、シールローラ対10に向けて中間体2を搬送するもので、シールローラ対10より上流側に配置されている。また、下流コンベヤ12は、シールローラ対10から送り出された中間体2を搬送するもので、シールローラ対10より下流側に配置されている。
【0020】
上流コンベヤ11は、搬送ベルト11a、駆動プーリ11b、複数の従動プーリ11c、テンションプーリ11d、バキューム機構11e等から構成されている。搬送ベルト11aは、駆動プーリ11b、従動プーリ11cに無端状に架けられており、その張力がテンションプーリ11dにより調整されている。下流コンベヤ12は、上流コンベヤ11と同じ構成である(対応する符号を付す)。
【0021】
入口ローラ対13は、上流コンベヤ11とシールローラ対10との間にあってシールローラ対10の入口近傍の中間体2を、上流コンベヤ11と異なった速度で独立して搬送するもので、駆動ローラ13a及び従動ローラ13bが一対をなして上流コンベヤ11とシールローラ対10との間に配置されている。
【0022】
出口ローラ対14は、シールローラ対10と下流コンベヤ12との間にあってシールローラ対10の出口近傍の中間体2を搬送するもので、シールローラ対10に対して入口ローラ対13と対称をなす構成である(対応する符号を付す)。入口ローラ対13及び出口ローラ対14は、これらの間にある中間体2をシールローラ対10のシール部10bの間に通過させるように配置されている。
【0023】
図1、図3又は図4に示すように、上流路増減機構15は、中間体2の上流経路長Sを、基準経路長Sに対して増減するもので、上流コンベヤ11と入口ローラ対13との間に配置されている。また、下流路増減機構16は、中間体2の下流経路長Sを、基準経路長Sに対して増減するもので、出口ローラ対14と下流コンベヤ12との間に配置されている。
【0024】
上流路増減機構15は、ボールネジ軸15a、駆動ギヤ15b、上流変位ローラ15c等から構成されている。駆動ギヤ15bは、ボールネジ軸15aにネジ結合しており、ボールネジ軸15aは、駆動ギヤ15bの回転に伴い、上下動するようになっている。上流変位ローラ15cは、ボールネジ軸に固定された軸に支持されており、ボールネジ軸15aと連動して上下動するようになっている。上流変位ローラ15cは、上流コンベヤ11と入口ローラ対13との間にある中間体2に当接し、V字状の上流経路を形成するようになっている。
下流路増減機構16は、上流路増減機構15と同じ構成である(対応する符号を付す)。
【0025】
第1のサーボモータ21は、歯車等の駆動伝達系21aを介して、それぞれのシールローラ10a、10aに連結され、シールローラ10a、10aを駆動するようになっている。
第2のサーボモータ22は、駆動伝達系22a、22bを介して、入口ローラ対13の駆動ローラ13a、出口ローラ対14の駆動ローラ14aにそれぞれ連結され、入口ローラ対13、出口ローラ対14をそれぞれ駆動するようになっている。
第3のサーボモータ23は、駆動伝達系23a、23bを介して、上流路増減機構15の駆動ギヤ15b、下流路増減機構16の駆動ギヤ16bにそれぞれ連結され、上流路増減機構15、下流路増減機構16をそれぞれ駆動するようになっている。
なお、上流コンベヤ11、下流コンベヤ12は、それぞれ、駆動伝達系25a、25bを介して、モータ25に連結され、そのモータ25から動力を受けるようになっている。
【0026】
コントローラ24は、第1、第2、第3のサーボモータ21、22、23とそれぞれ電気的に接続され、第1、第2、第3のサーボモータ21、22、23に、それぞれ、第1の速度指令、第2の速度指令、位置指令を発してフィードバック制御するように構成されている(詳細後述)。
【0027】
次に、本実施形態の搬送制御方法の詳細を搬送制御装置の作用と併せて説明する。
吸収性物品の生産効率の向上の観点から、生産速度Nの増加に伴って、中間体2の送り速度を、第1のライン速度V1cから第2のライン速度V1aに増加する。
【0028】
ここで、図5に示すように、第1のライン速度V1cは、シール時間Tを充足する速度であり、基準物品長さL、生産速度Nに応じて定められ、次の式(2)で示される。
1C[m/s]=L×N/(1000×60) …式(2)
(N:1分当たりの生産個数[個/min])
【0029】
基準物品長さLにつき、シール領域A(シール部10bが当接する領域)と非シール領域A(シール領域A以外の領域)との長さ比が、例えば、1:4(=0.2)の場合(図1参照)、シール時間Tは、次の式(3)で示される。
[s]=0.2×L/(1000×V1C)=0.2×60/N …式(3)
このシール時間Tは、十分なシール強度を確保する上で必要最小の時間であり、このシール時間Tより短いと、シール強度が不足する。
【0030】
また、第2のライン速度V1aは、次の式(4)で示される。
1a[m/s]=L×N/(1000×60) …式(4)
(N:1分当たりの生産個数[個/min])
本実施形態の場合、生産速度N=500[個/min]、生産速度N=600[個/min]とした場合、シール時間T=0.024[s]になる。
【0031】
図1、図2(b)に示すように、生産速度Nを増加しつつシール時間Tを確保するにあたって、まず、上流コンベヤ11及び下流コンベヤ12の送り速度を一定の第2のライン速度V1aにする。
【0032】
次いで、コントローラ24から第1、第2のサーボモータ21、22にそれぞれ第1、第2の速度指令を発し、シールローラ対10、入口ローラ対13及び出口ローラ対14を、それぞれ速度制御すると共に、コントローラ24から第3のサーボモータ23に位置指令を発し、上流路増幅機構15及び下流路増幅機構16を位置制御する。
【0033】
ここに、図2(b)(c)に示すように、「第1の速度指令」は、シールローラ対10の速度を制御する指令で、シールローラ対10の接線速度(シール速度Vに同じ)を、第1の加速度曲線Cv1に従って加減速させる。
【0034】
この第1の加速度曲線Cv1(図2(b)の実線で示す)は、第2のライン速度V1aより大きい最高速度Vmaxを上限とし、第1のライン速度V1cを下限とする範囲で、第1のライン速度V1cと同一になる定速期間が、シール時間Tを充足し、シールのタイミングと同期するように周期的に変化する曲線である。
【0035】
第1の加速度曲線Cv1における傾き(加速度)及び最高速度Vmaxは、第2のライン速度V1aに応じて定められてる。具体的には、加速度曲線Cv1の第2のライン速度V1aに対する相対速度(プラス、マイナス)の1周期の積分の合計値(図2(b):V曲線とV1a直線とで囲まれる面積の総和)が、第2のライン速度V1aと第1のライン速度V1cとの速度差に基づいて生じる距離に等しくなっている。
【0036】
また、図2(b)(c)に示すように、「第2の速度指令」は、入口ローラ対13及び出口ローラ対14の速度を同期して一体的に制御する指令で、入口ローラ対13及び出口ローラ対14の接線速度(被シール速度Vに同じ)を、第2の加速度曲線Cv2に従って加減速させる。
この第2の加速度曲線Cv2(図2(b)の点線で示す)は、第1の加速度曲線Cv1と同一であり、被シール速度Vは、シール速度Vと同一範囲で加減速しこれと同期する。
【0037】
上記第1、第2の速度指令に基づき、シールローラ対10、入口ローラ対13及び出口ローラ対14をそれぞれ速度制御した場合、シールローラ対10のシール速度V、中間体2の被シール速度Vは、それぞれ、第1、第2の加速度曲線Cv1v2に従って変化し、完全に一致する。
すなわち、シール速度V及び被シール速度Vは、シール領域Aにおいて、第1のライン速度V1cと等しくなり、非シール領域Aにおいて、第1のライン速度V1cから最高速度Vmaxにまで加速した後に第1のライン速度V1cにまで減速する。
【0038】
以上の点により、入口ローラ対13及び出口ローラ対14に速度差が生じず、この区間の中間体2は、一定の張力により張られた状態で送られる。
また、この区間の中間体2は、シールローラ対10との間に速度差をもたず、シールローラ対10と一体的に進み、シール領域A1において、安定した状態で封止され、非シール領域A2において、上流コンベヤ11上にある中間体2に対し、第2のライン速度V1aと第1のライン速度V1cとの速度差に基づいて生じる距離分だけ相対的に進む。
【0039】
図2(a)(b)、図3、図4に示すように、「位置指令」は、上流変位ローラ15cの上下位置P及び下流変位ローラ16cの上下位置Pを同期して一体的に制御する指令で、上流変位ローラ15cの上下位置Pを、第1の変位曲線Cp1に従って上下変位させると共に、下流変位ローラ16cの上下位置Pを、第2の変位曲線Cp2に従って上下変位させる。
【0040】
第1の変位曲線Cp1は、第2のライン速度V1aと被シール速度Vとの速度差により、上流経路長Sと基準経路長Sとの間に生じた変位量を、基準経路長Sにおいて最下位となる基準位置Pに対して増減した上下位置Pとして示し、その上下位置Pが周期的に変化する曲線である。第2の変位曲線Cp2についても同様である(対応する符号を付す)。
第1、第2の変位曲線Cp1、Cp2は、半周期分だけ時間的にずれており、上流側の上下位置Pの増加量及び減少量が、それぞれ、下流側の上下位置Pの減少量及び増加量と等しくなっている。
【0041】
この位置指令に基づいて上流路増幅機構15及び下流路増幅機構16を位置制御した場合、上流変位ローラ15cが、第1の変位曲線Cp1に従って上下動すると共に、下流変位ローラ16cが、第2の変位曲線Cp2に従って上下動する。
【0042】
以上の点により、図3に示すように、被シール速度Vが第2のライン速度V1aより大きい場合、上流コンベヤ11と入口ローラ対13との間における中間体2は、基準経路長Sにある中間体2より短くなるが、上流変位ローラ15cの上昇により上流経路長Sが減少し、上流コンベヤ11と入口ローラ対13との間に速度差がない場合における張力状態と同じになる。
【0043】
また、出口ローラ対14と下流コンベヤ12との間における中間体2は、基準経路長Sにある中間体2より長くなるが、下流変位ローラ16cの下降により下流経路長Sが増加し、出口ローラ対14と下流コンベヤ12との間に速度差がない場合における張力状態と同じになる。
【0044】
一方、図4に示すように、被シール速度Vが第2のライン速度V1aより小さい場合、上記の場合との比較において、上流変位ローラ15cと下流変位ローラ16cとの位置関係、及び上流経路長Sと下流経路長Sとの増減関係が、逆転する以外の点は同様である。
【0045】
そして、上流コンベヤ11と下流コンベヤ12との間における中間体2は、被シール速度Vの変化に関わらず、上流経路長Sの増減量と下流経路長Sの増減量とが互いに相殺し、常に一定の経路長に保持される。
【0046】
以上述べたように、本実施形態によれば、シール速度V及び被シール速度Vを、完全に一致させた状態で、非シール領域Aにおいて、第2のライン速度V1aの増加分に応じて加速し、シール領域Aにおいて、第2のライン速度V1aに保持させたため、生産速度Nの増加に伴って、中間体2のライン速度Vをシール時間Tの臨界を越えた速度にしても、十分なシール時間Tを確保できる。
【0047】
具体的には、図5に示すように、従来技術のライン速度Vとシール時間Tとの関係を示す関数f(図5の一点鎖線で示す)においては、ライン速度Vを、第1のライン速度V1c(生産速度N=500)から第2のライン速度V1a(生産速度N=600)に増加した場合、シール時間Tからシール時間T’に減少し、このシール時間T’では、シール強度が不足する。
これに対し、本実施形態のライン速度Vとシール時間Tとの関係を示す関数f(図5の実線で示す)においては、ライン速度Vを、第1のライン速度V1Cから第2のライン速度V1aに増加しても、シール時間Tがそのままシフトし、十分なシール強度を確保できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、シール速度V及び被シール速度Vを、シール領域Aにおいて、一致させたため、中間体2に安定したシールを施すことができる。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、被シール速度Vと第2のライン速度V1aとの速度差をもつ中間体2を、その速度差により生じる経路長の増減を調整して速度差がない場合における張力状態と同じになるように位置制御したため、上流コンベヤ11と下流コンベヤ12との間の中間体2を、あたかも、一定の第2のライン速度V1aで送った状態と同様に、安定して搬送することができる。
【0050】
本発明は、上記搬送制御方法及び搬送制御装置の実施形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、本発明の搬送制御方法は、吸収性物品のシール工程において実施されることが好ましいが、被加工物として、吸収性物品に限られず、加工時間に一定の期間を要する加工の対象とされる、長尺状の物品であれば特に限定されない。
【0051】
また、本発明の搬送制御方法及び搬送制御装置は、制御手段(コントローラ)の簡素化等の観点から、加工速度(シール速度)と被加工速度(被シール速度)とを一致させて制御することが好ましいが、これに限られず、少なくとも加工領域(シール領域)において、被加工速度が加工速度に一致していればよく、非加工領域(非シール領域)については、被加工速度の加速と上流経路長及び下流経路長の増減とが対応していれば足りる。
【0052】
さらに、本発明の搬送制御装置の上流路増減手段及び下流路増減手段は、上記実施形態で示した上流路増減機構及び下流路増減機構に限られず、上流経路長及び下流路経路長を増減可能な機構又は制御装置であればよく、例えば、低速搬送の被加工物(中間体)に対し、上流側の変位ローラと下流側の変位ローラとが、シーソーのように、一体的に上下動を交互に繰り返す機構であってもよい。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、被加工物のライン速度を加工時間の臨界を越えた速度に増加するにあたって、十分な加工時間を確保すると共に、被加工物に安定した加工を施しうる、被加工物の搬送制御方法及び搬送制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の搬送制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態の搬送制御方法において、時間軸(横軸)を基準に、(a)上下位置P、上下位置Pの関係、(b)ライン速度V、シール速度V、被シール速度Vの関係、(c)シールのタイミングを示すタイムチャートである。
【図3】本実施形態の搬送制御装置の要部(上流経路長Sが長く、下流経路長Sが短い場合)を示す図である。
【図4】本実施形態の搬送制御装置の要部(上流経路長Sが短く、下流経路長Sが長い場合)を示す図である。
【図5】ライン速度とシール時間との関係を示すグラフである。
【図6】従来の吸収性物品のシール工程に用いられる製造装置の概略構成を示す図である。
【図7】ライン速度とシール強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2 中間体(被加工物)
10 シールローラ対(加工ローラ)
11 上流コンベヤ(上流搬送手段)
12 下流コンベヤ(下流搬送手段)
13 入口ローラ対(入口ローラ)
14 出口ローラ対(出口ローラ)
15 上流路増減機構(上流路増減手段)
16 下流路増減機構(下流路増減手段)
21 第1のサーボモータ(第1の駆動源)
22 第2のサーボモータ(第2の駆動源)
23 第3のサーボモータ(第3の駆動源)
24 コントローラ(制御手段)
ライン速度
1C 第1のライン速度
1a 第2のライン速度
シール速度(加工速度)
被シール速度(被加工速度)
v1 第1の加速度曲線
v2 第2の加速度曲線
T、T シール時間
上流経路長
下流経路長
基準経路長

Claims (6)

  1. 長尺状の被加工物に所定の加工を施す加工ローラ、該加工ローラに対し上流側の該被加工物を搬送する上流搬送手段、及び該加工ローラに対し下流側の該被加工物を搬送する下流搬送手段を用い、該上流搬送手段及び該下流搬送手段により該被加工物を所定のライン速度で搬送しながら、該加工ローラを加工速度で回転しつつ該被加工物を所定の加工時間で加工する際に、該ライン速度について該加工時間を充足する第1のライン速度から該加工時間の臨界を越えた第2のライン速度に増加するにあたって、該加工速度及び該被加工物の速度を制御する方法であって、
    前記上流搬送手段と前記加工ローラとの間の前記被加工物を前記ライン速度と異なる速度で搬送可能な入口ローラ、及び前記加工ローラと前記下流搬送手段との間の前記被加工物を前記ライン速度と異なる速度で搬送可能な出口ローラを用い、
    前記加工ローラを制御することにより、前記加工速度を、記加工ローラの非加工領域において、前記第2のライン速度の増加分に応じて加速すると共に、前記加工ローラの加工領域において、前記第1のライン速度に保持し、
    前記入口ローラ及び前記出口ローラを制御することにより、前記入口ローラと前記出口ローラとの間における前記被加工物の被加工速度を、少なくとも前記加工領域において、前記加工速度に一致させることを特徴とする被加工物の搬送制御方法。
  2. 前記加工速度を、前記第2のライン速度より大きい速度を上限且つ前記第1のライン速度を下限とする範囲で周期的に加減速する加速度曲線に従って変化させ、前記被加工速度を、該加速度曲線に従って前記加工速度と同期させることを特徴とする請求項1記載の被加工物の搬送制御方法。
  3. 前記上流搬送手段と前記入口ローラとの間における前記被加工物の上流経路長を前記ライン速度に基づいて定められる基準経路長に対して増減可能な上流路増減手段、及び前記出口ローラと前記下流搬送手段との間における前記被加工物の下流経路長を該基準経路長に対して増減可能な下流路増減手段を用い、
    前記被加工速度が前記第2のライン速度より大きい場合、前記上流路増減手段により前記上流経路長を減少すると共に、前記下流路増減手段により前記下流経路長を増加し、
    前記被加工速度が前記第2のライン速度より小さい場合、前記上流路増減手段により前記上流経路長を増加すると共に、前記下流路増減手段により前記下流経路長を減少することを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の被加工物の搬送制御方法。
  4. 前記上流路増減手段及び前記下流路増減手段を制御することにより、前記上流経路長及び前記下流経路長を、一方の増加量及び減少量がそれぞれ他方の減少量及び増加量と等しくなるように、周期的に増減することを特徴とする請求項3記載の被加工物の搬送制御方法。
  5. 長尺状の被加工物に所定の加工を施す加工ローラと、
    前記加工ローラに対し上流側の前記被加工物を搬送する上流搬送手段と、
    前記加工ローラに対し下流側の前記被加工物を搬送する下流搬送手段と、
    前記上流搬送手段と前記加工ローラとの間の前記被加工物を搬送する入口ローラと、
    前記加工ローラと前記下流搬送手段との間の前記被加工物を搬送する出口ローラと、
    前記加工ローラを可変的に駆動する第1の駆動源と、
    前記入口ローラ及び前記出口ローラを可変的に駆動する第2の駆動源と、
    前記第1の駆動源に対し、前記加工ローラの速度を、前記加工ローラの非加工領域において、前記第2のライン速度に応じて加速すると共に、前記加工ローラの加工領域において、前記第1のライン速度に保持する第1の速度指令を発し、前記第2の駆動源に対し、前記入口ローラ及び前記出口ローラの速度を、少なくとも前記加工領域において、前記加工速度に一致させる第2の速度指令を発する制御手段とを備えていることを特徴とする被加工物の搬送制御装置。
  6. 前記上流搬送手段と前記入口ローラとの間における前記被加工物の上流経路長を前記第2のライン速度に基づいて定められる基準経路長に対して増減可能な上流路増減手段と、
    前記出口ローラと前記下流搬送手段との間における前記被加工物の下流経路長を前記基準経路長に対して増減可能な下流路増減手段と、
    前記上流路増減手段及び前記下流路増減手段を可変的に駆動する第3の駆動源とを備え、
    前記制御手段は、前記第3の駆動源に対し、前記上流経路長及び前記下流経路長を、前記上流搬送手段と前記入口ローラとの速度差、及び前記下流搬送手段と前記出口ローラとの速度差に応じて増減させる位置指令を発することを特徴とする請求項5記載の搬送制御装置。
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