JP2004351467A - 条鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】疵が存在するとの誤認識が生じない条鋼製造方法の提供。
【解決手段】取鍋10及び鋳造装置12を経て、ビレットが得られる。このビレットの表面が、切削装置14によって切削される。切削により、ビレットから脱炭層が除去される。このビレットは加熱炉18で加熱され、粗列圧延機20、中間列圧延機24及び仕上列圧延機26によって圧延される。これにより、丸棒鋼が得られる。丸棒鋼は、探傷機によって検査される。検査には、漏洩磁束探傷法が採用される。この丸棒鋼は、ビレットの脱炭層に由来する脱炭層を備えていないので、脱炭層に起因するノイズ検知が生じない。この製造方法では、丸棒鋼に疵が存在してないにもかかわらず存在していると誤認識されることが防止される。
【選択図】 図1
【解決手段】取鍋10及び鋳造装置12を経て、ビレットが得られる。このビレットの表面が、切削装置14によって切削される。切削により、ビレットから脱炭層が除去される。このビレットは加熱炉18で加熱され、粗列圧延機20、中間列圧延機24及び仕上列圧延機26によって圧延される。これにより、丸棒鋼が得られる。丸棒鋼は、探傷機によって検査される。検査には、漏洩磁束探傷法が採用される。この丸棒鋼は、ビレットの脱炭層に由来する脱炭層を備えていないので、脱炭層に起因するノイズ検知が生じない。この製造方法では、丸棒鋼に疵が存在してないにもかかわらず存在していると誤認識されることが防止される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、丸棒鋼等の条鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
丸棒鋼の製造方法として、圧延による方法が広く知られている。この製造方法では、まず精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、ビレットが得られる。このビレットは、加熱炉によって加熱される。次に、このビレットに熱間圧延が施される。通常は、タンデムに並べられた粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による多段圧延が施される。この熱間圧延によってビレットは徐々に細径化し且つ長尺化して、丸棒鋼が得られる。
【0003】
丸棒鋼には、ビレットの疵に起因した表面疵や、圧延工程で発生した表面疵が存在する場合がある。疵の程度によっては、この疵が丸棒鋼の品質を低下させ、使用に支障を来すこともある。用途によっては、丸棒鋼の疵の有無が検査される。検査には、漏洩磁束探傷法が採用されている。
【0004】
図5は、従来の丸棒鋼2が示された断面図である。この丸棒鋼2は、表面に疵4を備えている。漏洩磁束探傷法では、まず丸棒鋼2が励磁される。この際、疵4の近傍において磁束が空間に漏洩する。この漏洩磁束が、センサで検知される。例えば、深さが0.1mmである疵4がある箇所では、センサの信号の強さが、他の箇所の約2倍となる。疵4が検知された場合、メーカーは丸棒鋼2を補修する。疵4の程度の激しい丸棒鋼2は、廃棄される。このような漏洩磁束探傷法は、特公昭53−21667号公報に開示されている。
【0005】
ビレット又はその素材である鋼塊は熱履歴を受けるので、化学反応によってその表面の炭素含有量が減少し、脱炭層が形成される。このビレットから得られた丸棒鋼2は、図5に示されるように、その表面に脱炭層6を備えている。この脱炭層6は、主としてビレットの脱炭層に由来する。
【0006】
【特許文献1】
特公昭53−21667号公報
【特許文献2】
特開2001−1001公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示されるように、脱炭層6の厚みは均一ではない。脱炭層6が、局所的に内部にまで深く食い込む箇所が存在することもある。図5において符号8で示されているのが、脱炭層6が深い箇所である。脱炭層6は中心近傍とは磁性特性が異なるので、脱炭層6が深い箇所8によっても磁束が漏洩する。漏洩により、センサでノイズが検知される。ノイズの検知により、丸棒鋼2に疵4が存在してないにもかかわらず、存在していると誤認識されることがある。誤認識された丸棒鋼2は、補修工程に回されたり、廃棄されたりする。誤認識は、丸棒鋼2の生産性又は歩留まりを低下させる。
【0008】
本発明の目的は、誤認識の生じない条鋼製造方法の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る条鋼製造方法は、
(1)精錬及び鋳造によってビレットが得られる準備工程、
(2)このビレットの表面部分が除去される除去工程
及び
(3)このビレットが圧延によって長尺化され、条鋼が得られる圧延工程
を含む。好ましくは、除去工程において、準備工程で発生した脱炭層が除去される。この条鋼製造方法では、疵が存在しない条鋼に疵が存在すると誤認識されることが抑制される。
【0010】
好ましくは、この条鋼製造方法は、圧延工程の後に、
(4)条鋼表面の疵の有無が漏洩磁束探傷法によって検査される検査工程
を含む。この製造方法では、検査工程におけるノイズの検知が抑制される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態にかかる条鋼製造方法のための製造設備が示された概念図である。この製造設備は、取鍋10、鋳造装置12、切削装置14、装入機16、加熱炉18、粗列圧延機20、フライングシャー22、中間列圧延機24、仕上列圧延機26、冷却床28、コールドシャー30、探傷機32及び研磨機34を備えている。
【0013】
図2は、図1の製造設備による条鋼製造方法が示されたフローチャートである。この製造方法では、まず、電気炉等で加熱された溶鋼が取鍋10に移され、この取鍋10において精錬される(STP1)。その後溶鋼は、鋳造装置12において塊状に鋳造される(STP2)。鋳造により、鋼塊が得られる。この鋼塊から分塊圧延等を経て、ビレットが得られる(STP3)。鋼塊及びビレットは高温であり、その表面は雰囲気の空気と化学反応を起こす。化学反応により、ビレットの表面に脱炭層が形成される。
【0014】
冷却後のビレットは、切削装置14へと搬送される。典型的な切削装置14は、ピーリングマシンである。ピーリングマシンでは、ビレットの外周面を相対的に回転するバイトにより、ビレットの表面が切削される。切削により、脱炭層が除去される(STP4)。切削に代えて、グラインダー等による研削により、脱炭層が除去されてもよい。
【0015】
次にビレットは、装入機16を通じて加熱炉18へと搬送される。この加熱炉18で、ビレットが過熱される(STP5)。ビレットは、熱間圧延に適した温度まで昇温する。次にビレットには、粗列圧延機20による圧延(STP6)が施される。粗列圧延により、ビレットは細径化しかつ長尺化する。粗列圧延により、母材が得られる。
【0016】
粗列圧延後の母材は、フライングシャー22に通される。このフライングシャー22では、圧延ラインを高速で移動中の母材が停止されることなく、切断が行われる(STP7)。切断により、所定長さの母材が得られる。
【0017】
次に母材は、中間列圧延機24による圧延(STP8)が施される。さらに母材には、仕上列圧延機26による圧延(STP9)が施される。粗列圧延機20、中間列圧延機24及び仕上列圧延機26により、いわゆる多段圧延がなされる。この多段圧延によりビレットが段階的に細径化し、かつ段階的に長尺化する。
【0018】
次に母材は、冷却床28に搬送される。冷却床28には多数の開口が設けられており、この開口から吹き出す空気によって母材が所定温度(例えば200℃程度)まで冷却される(STP10)。
【0019】
次に、母材はコールドシャー30(自動切断機)へと送られ、このコールドシャー30にて所定寸法に切断される(STP11)。こうして、丸棒鋼が得られる。丸棒鋼は、探傷機32へと搬送される。探傷機32により、丸棒鋼の疵の有無が検査される(STP12)。典型的には、漏洩磁束探傷法による検査がなされる。漏洩磁束探傷法では、センサによって漏洩磁束が検知される。
【0020】
検査において疵が検知された丸棒鋼は、研磨機34へと搬送される。丸棒鋼の表面は研磨機34によって研磨され、疵が修理される(STP13)。修理後の丸棒鋼が、出荷される(STP14)。疵の程度が大きくて修理が不可能な丸棒鋼は、廃棄される。検査において疵が検知された丸棒鋼は、そのまま出荷される(STP14)。
【0021】
図3は、図1の製造設備によって得られた丸棒鋼36が示された断面図である。この丸棒鋼36は、脱炭層38を備えている。この製造方法ではビレットの脱炭層は除去されるので、図3に示された脱炭層38はビレットの脱炭層に由来するものではない。この脱炭層38は、加熱工程(STP5)から圧延工程(STP6から9)において生じたものである。丸棒鋼36は、疵40を有する場合がある。
【0022】
図3と図5との対比から明らかなように、本発明に係る製造方法で得られた丸棒鋼36では、脱炭層38の厚みは小さい。しかも、この丸棒鋼36では、脱炭層38が内部にまで深く食い込んだ箇所(図5の符号8に相当)は存在しない。この丸棒鋼36が漏洩磁束探傷法による検査に供される場合、脱炭層38に起因するノイズの検知が生じない。この製造方法では、疵40が存在してないにもかかわらず存在していると誤認識されることが防止される。この製造方法では、修理工程への不要な搬送が防止される。この製造方法では、丸棒鋼36の誤った廃棄が防止される。この製造方法では、深さが0.1mm以上の疵40が確実に検知される。
【0023】
本発明の製造方法は、中炭素鋼又は高炭素鋼からなる丸棒鋼36の製造に特に適している。中炭素鋼及び高炭素鋼は炭素含有率が高いので、ビレットの段階で脱炭層が生じやすい。従って、この脱炭層に起因するノイズの検知が発生しやすい。ビレットの脱炭層が除去されることにより、中炭素鋼又は高炭素鋼からなる丸棒鋼36におけるノイズ検知が防止される。
【0024】
中炭素鋼からなる丸棒鋼36が得られる場合、除去工程(STP4)における除去厚みは、1.0mm以上3.0mm以下が好ましく、1.0mm以上2.0mm未満が特に好ましい。高炭素鋼からなる丸棒鋼36が得られる場合、除去工程(STP4)における除去厚みは、1.5mm以上5.0mm以下が好ましく、1.5mm以上3.0mm以下が特に好ましい。
【0025】
【実施例】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0026】
[実施例1]
中炭素鋼(S53C)からなるビレットを用意し、このビレットの表面部分をピーリングマシンで除去した。除去厚みは、0.5mmである。このビレットを用い、図1に示された製造設備にて、直径が35mmである丸棒鋼を得た。
【0027】
[実施例2から4]
除去厚みを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、丸棒鋼を得た。
【0028】
[比較例1]
ビレットの表面部分の除去を行わなかった他は実施例1と同様にして、丸棒鋼を得た。
【0029】
[実施例5]
高炭素鋼(SUJ2)からなるビレットを用意し、このビレットの表面部分をピーリングマシンで除去した。除去厚みは、0.5mmである。このビレットを用い、図1に示された製造設備にて、直径が35mmである丸棒鋼を得た。
【0030】
[実施例6から8]
除去厚みを下記の表1に示される通りとした他は実施例5と同様にして、丸棒鋼を得た。
【0031】
[比較例2]
ビレットの表面部分の除去を行わなかった他は実施例5と同様にして、丸棒鋼を得た。
【0032】
[評価]
漏洩磁束探傷法により、漏洩磁束を検知した。センサで検知された信号の一例が、図4に示されている。図4におけるP1は、深さが0.1mmである疵に起因する信号ピーク値である。図4におけるP2は、脱炭層に起因する信号ピーク値である。ピーク値P1に対するピーク値P2の比率が50%未満である場合を「A」とし、50%以上75%未満である場合を「B」とし、75%以上である場合を「C」とした。この結果が、下記の表1に示されている。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【0035】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明の製造方法によれば、脱炭層に起因する誤認識が防止される。この製造方法は、条鋼の生産性及び歩留まりの向上に寄与する。この製造方法により、深さが0.1mm以上の疵を有さない条鋼が効率よく製造されうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる条鋼製造方法のための製造設備が示された概念図である。
【図2】図2は、図1の製造設備による条鋼製造方法が示されたフローチャートである。
【図3】図3は、図1の製造設備によって得られた丸棒鋼が示された断面図である。
【図4】図4は、漏洩磁束探傷法の結果の一例が示されたグラフである。
【図5】図5は、従来の条鋼製造方法よって得られた丸棒鋼が示された断面図である。
【符号の説明】
10・・・取鍋
12・・・鋳造装置
14・・・切削装置
16・・・装入機
18・・・加熱炉
20・・・粗列圧延機
22・・・フライングシャー
24・・・中間列圧延機
26・・・仕上列圧延機
28・・・冷却床
30・・・コールドシャー
32・・・探傷機
34・・・研磨機
36・・・丸棒鋼
38・・・脱炭層
40・・・疵
【発明の属する技術分野】
本発明は、丸棒鋼等の条鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
丸棒鋼の製造方法として、圧延による方法が広く知られている。この製造方法では、まず精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、ビレットが得られる。このビレットは、加熱炉によって加熱される。次に、このビレットに熱間圧延が施される。通常は、タンデムに並べられた粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による多段圧延が施される。この熱間圧延によってビレットは徐々に細径化し且つ長尺化して、丸棒鋼が得られる。
【0003】
丸棒鋼には、ビレットの疵に起因した表面疵や、圧延工程で発生した表面疵が存在する場合がある。疵の程度によっては、この疵が丸棒鋼の品質を低下させ、使用に支障を来すこともある。用途によっては、丸棒鋼の疵の有無が検査される。検査には、漏洩磁束探傷法が採用されている。
【0004】
図5は、従来の丸棒鋼2が示された断面図である。この丸棒鋼2は、表面に疵4を備えている。漏洩磁束探傷法では、まず丸棒鋼2が励磁される。この際、疵4の近傍において磁束が空間に漏洩する。この漏洩磁束が、センサで検知される。例えば、深さが0.1mmである疵4がある箇所では、センサの信号の強さが、他の箇所の約2倍となる。疵4が検知された場合、メーカーは丸棒鋼2を補修する。疵4の程度の激しい丸棒鋼2は、廃棄される。このような漏洩磁束探傷法は、特公昭53−21667号公報に開示されている。
【0005】
ビレット又はその素材である鋼塊は熱履歴を受けるので、化学反応によってその表面の炭素含有量が減少し、脱炭層が形成される。このビレットから得られた丸棒鋼2は、図5に示されるように、その表面に脱炭層6を備えている。この脱炭層6は、主としてビレットの脱炭層に由来する。
【0006】
【特許文献1】
特公昭53−21667号公報
【特許文献2】
特開2001−1001公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示されるように、脱炭層6の厚みは均一ではない。脱炭層6が、局所的に内部にまで深く食い込む箇所が存在することもある。図5において符号8で示されているのが、脱炭層6が深い箇所である。脱炭層6は中心近傍とは磁性特性が異なるので、脱炭層6が深い箇所8によっても磁束が漏洩する。漏洩により、センサでノイズが検知される。ノイズの検知により、丸棒鋼2に疵4が存在してないにもかかわらず、存在していると誤認識されることがある。誤認識された丸棒鋼2は、補修工程に回されたり、廃棄されたりする。誤認識は、丸棒鋼2の生産性又は歩留まりを低下させる。
【0008】
本発明の目的は、誤認識の生じない条鋼製造方法の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る条鋼製造方法は、
(1)精錬及び鋳造によってビレットが得られる準備工程、
(2)このビレットの表面部分が除去される除去工程
及び
(3)このビレットが圧延によって長尺化され、条鋼が得られる圧延工程
を含む。好ましくは、除去工程において、準備工程で発生した脱炭層が除去される。この条鋼製造方法では、疵が存在しない条鋼に疵が存在すると誤認識されることが抑制される。
【0010】
好ましくは、この条鋼製造方法は、圧延工程の後に、
(4)条鋼表面の疵の有無が漏洩磁束探傷法によって検査される検査工程
を含む。この製造方法では、検査工程におけるノイズの検知が抑制される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態にかかる条鋼製造方法のための製造設備が示された概念図である。この製造設備は、取鍋10、鋳造装置12、切削装置14、装入機16、加熱炉18、粗列圧延機20、フライングシャー22、中間列圧延機24、仕上列圧延機26、冷却床28、コールドシャー30、探傷機32及び研磨機34を備えている。
【0013】
図2は、図1の製造設備による条鋼製造方法が示されたフローチャートである。この製造方法では、まず、電気炉等で加熱された溶鋼が取鍋10に移され、この取鍋10において精錬される(STP1)。その後溶鋼は、鋳造装置12において塊状に鋳造される(STP2)。鋳造により、鋼塊が得られる。この鋼塊から分塊圧延等を経て、ビレットが得られる(STP3)。鋼塊及びビレットは高温であり、その表面は雰囲気の空気と化学反応を起こす。化学反応により、ビレットの表面に脱炭層が形成される。
【0014】
冷却後のビレットは、切削装置14へと搬送される。典型的な切削装置14は、ピーリングマシンである。ピーリングマシンでは、ビレットの外周面を相対的に回転するバイトにより、ビレットの表面が切削される。切削により、脱炭層が除去される(STP4)。切削に代えて、グラインダー等による研削により、脱炭層が除去されてもよい。
【0015】
次にビレットは、装入機16を通じて加熱炉18へと搬送される。この加熱炉18で、ビレットが過熱される(STP5)。ビレットは、熱間圧延に適した温度まで昇温する。次にビレットには、粗列圧延機20による圧延(STP6)が施される。粗列圧延により、ビレットは細径化しかつ長尺化する。粗列圧延により、母材が得られる。
【0016】
粗列圧延後の母材は、フライングシャー22に通される。このフライングシャー22では、圧延ラインを高速で移動中の母材が停止されることなく、切断が行われる(STP7)。切断により、所定長さの母材が得られる。
【0017】
次に母材は、中間列圧延機24による圧延(STP8)が施される。さらに母材には、仕上列圧延機26による圧延(STP9)が施される。粗列圧延機20、中間列圧延機24及び仕上列圧延機26により、いわゆる多段圧延がなされる。この多段圧延によりビレットが段階的に細径化し、かつ段階的に長尺化する。
【0018】
次に母材は、冷却床28に搬送される。冷却床28には多数の開口が設けられており、この開口から吹き出す空気によって母材が所定温度(例えば200℃程度)まで冷却される(STP10)。
【0019】
次に、母材はコールドシャー30(自動切断機)へと送られ、このコールドシャー30にて所定寸法に切断される(STP11)。こうして、丸棒鋼が得られる。丸棒鋼は、探傷機32へと搬送される。探傷機32により、丸棒鋼の疵の有無が検査される(STP12)。典型的には、漏洩磁束探傷法による検査がなされる。漏洩磁束探傷法では、センサによって漏洩磁束が検知される。
【0020】
検査において疵が検知された丸棒鋼は、研磨機34へと搬送される。丸棒鋼の表面は研磨機34によって研磨され、疵が修理される(STP13)。修理後の丸棒鋼が、出荷される(STP14)。疵の程度が大きくて修理が不可能な丸棒鋼は、廃棄される。検査において疵が検知された丸棒鋼は、そのまま出荷される(STP14)。
【0021】
図3は、図1の製造設備によって得られた丸棒鋼36が示された断面図である。この丸棒鋼36は、脱炭層38を備えている。この製造方法ではビレットの脱炭層は除去されるので、図3に示された脱炭層38はビレットの脱炭層に由来するものではない。この脱炭層38は、加熱工程(STP5)から圧延工程(STP6から9)において生じたものである。丸棒鋼36は、疵40を有する場合がある。
【0022】
図3と図5との対比から明らかなように、本発明に係る製造方法で得られた丸棒鋼36では、脱炭層38の厚みは小さい。しかも、この丸棒鋼36では、脱炭層38が内部にまで深く食い込んだ箇所(図5の符号8に相当)は存在しない。この丸棒鋼36が漏洩磁束探傷法による検査に供される場合、脱炭層38に起因するノイズの検知が生じない。この製造方法では、疵40が存在してないにもかかわらず存在していると誤認識されることが防止される。この製造方法では、修理工程への不要な搬送が防止される。この製造方法では、丸棒鋼36の誤った廃棄が防止される。この製造方法では、深さが0.1mm以上の疵40が確実に検知される。
【0023】
本発明の製造方法は、中炭素鋼又は高炭素鋼からなる丸棒鋼36の製造に特に適している。中炭素鋼及び高炭素鋼は炭素含有率が高いので、ビレットの段階で脱炭層が生じやすい。従って、この脱炭層に起因するノイズの検知が発生しやすい。ビレットの脱炭層が除去されることにより、中炭素鋼又は高炭素鋼からなる丸棒鋼36におけるノイズ検知が防止される。
【0024】
中炭素鋼からなる丸棒鋼36が得られる場合、除去工程(STP4)における除去厚みは、1.0mm以上3.0mm以下が好ましく、1.0mm以上2.0mm未満が特に好ましい。高炭素鋼からなる丸棒鋼36が得られる場合、除去工程(STP4)における除去厚みは、1.5mm以上5.0mm以下が好ましく、1.5mm以上3.0mm以下が特に好ましい。
【0025】
【実施例】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0026】
[実施例1]
中炭素鋼(S53C)からなるビレットを用意し、このビレットの表面部分をピーリングマシンで除去した。除去厚みは、0.5mmである。このビレットを用い、図1に示された製造設備にて、直径が35mmである丸棒鋼を得た。
【0027】
[実施例2から4]
除去厚みを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、丸棒鋼を得た。
【0028】
[比較例1]
ビレットの表面部分の除去を行わなかった他は実施例1と同様にして、丸棒鋼を得た。
【0029】
[実施例5]
高炭素鋼(SUJ2)からなるビレットを用意し、このビレットの表面部分をピーリングマシンで除去した。除去厚みは、0.5mmである。このビレットを用い、図1に示された製造設備にて、直径が35mmである丸棒鋼を得た。
【0030】
[実施例6から8]
除去厚みを下記の表1に示される通りとした他は実施例5と同様にして、丸棒鋼を得た。
【0031】
[比較例2]
ビレットの表面部分の除去を行わなかった他は実施例5と同様にして、丸棒鋼を得た。
【0032】
[評価]
漏洩磁束探傷法により、漏洩磁束を検知した。センサで検知された信号の一例が、図4に示されている。図4におけるP1は、深さが0.1mmである疵に起因する信号ピーク値である。図4におけるP2は、脱炭層に起因する信号ピーク値である。ピーク値P1に対するピーク値P2の比率が50%未満である場合を「A」とし、50%以上75%未満である場合を「B」とし、75%以上である場合を「C」とした。この結果が、下記の表1に示されている。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【0035】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明の製造方法によれば、脱炭層に起因する誤認識が防止される。この製造方法は、条鋼の生産性及び歩留まりの向上に寄与する。この製造方法により、深さが0.1mm以上の疵を有さない条鋼が効率よく製造されうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる条鋼製造方法のための製造設備が示された概念図である。
【図2】図2は、図1の製造設備による条鋼製造方法が示されたフローチャートである。
【図3】図3は、図1の製造設備によって得られた丸棒鋼が示された断面図である。
【図4】図4は、漏洩磁束探傷法の結果の一例が示されたグラフである。
【図5】図5は、従来の条鋼製造方法よって得られた丸棒鋼が示された断面図である。
【符号の説明】
10・・・取鍋
12・・・鋳造装置
14・・・切削装置
16・・・装入機
18・・・加熱炉
20・・・粗列圧延機
22・・・フライングシャー
24・・・中間列圧延機
26・・・仕上列圧延機
28・・・冷却床
30・・・コールドシャー
32・・・探傷機
34・・・研磨機
36・・・丸棒鋼
38・・・脱炭層
40・・・疵
Claims (3)
- 精錬及び鋳造によってビレットが得られる準備工程と、
このビレットの表面部分が除去される除去工程と、
このビレットが圧延によって長尺化され、条鋼が得られる圧延工程と
を含む条鋼製造方法。 - 上記除去工程において、準備工程で発生した脱炭層が除去される請求項1に記載の条鋼製造方法。
- 上記圧延工程の後に、条鋼表面の疵の有無が漏洩磁束探傷法によって検査される検査工程をさらに含む請求項1又は請求項2に記載の条鋼製造方法。
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JP2003152191A JP2004351467A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 条鋼の製造方法 |
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JP2003152191A JP2004351467A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 条鋼の製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004351467A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009285698A (ja) * | 2008-05-30 | 2009-12-10 | Sanyo Special Steel Co Ltd | 条鋼の製造方法 |
JP2009297778A (ja) * | 2008-06-17 | 2009-12-24 | Sanyo Special Steel Co Ltd | 鋼材の疵不良の大量流出防止方法 |
-
2003
- 2003-05-29 JP JP2003152191A patent/JP2004351467A/ja active Pending
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