JP2004350475A - 作業車両の伝動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来、乗用芝刈機などの作業車両では、道路などを走る場合、スリップや前輪のオーバーランといった車両の走行状態に関わらず、電動モータにより前後輪を共に駆動する構成となっているので、走行抵抗が大きく出力トルクが大きな電動モータを装備する必要が生じコスト高となったり、電力を過剰に消費して燃費が悪いという課題が有った。
【解決手段】エンジン1の回転動力を走行用の変速機2を介して後輪4へ伝達して駆動すると共に、同回転動力を車体に突設するPTO軸5へ伝達して駆動する。また同回転動力をバッテリ22へ伝達してこのバッテリ22を充電し、このバッテリ22に蓄えられた電力により可変モータ7を駆動して前記エンジン1から後輪4へ至る伝動経路とは異なる伝動経路で前輪6を駆動する。更に、前輪と後輪の回転数を検出するセンサ25,26,27を設け、後輪27の回転にあわせ前輪6の回転を制御する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、農業用、芝地管理用、建築運搬用等の作業車両の伝動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開2003−9607号公報に示されるように、エンジンと電動モータ(走行モータ102)を備えた所謂ハイブリッド型の農業用トラクタが知られいる。そして、前記公報のトラクタでは、エンジンと電動モータの回転のどちらか一方、或いは両者の回転を合成して前後輪を共に駆動して走行する構成となっている。
【0003】
また前記公報の農業用トラクタは、通常作業時はエンジンの駆動力で走行し、道路などの大きなトルクを必要としない場合には電動モータを駆動力で走行すると共に、この電動モータを駆動するバッテリの電圧が低下した時には前記エンジンの駆動により電気を充電する構成となっている。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−9607号公報(段落〔0031〕〜〔0039〕、〔図10〕〜〔図12〕)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報のトラクタでは、前述の通り、道路などを走る場合、スリップや前輪のオーバーランといった車両の走行状態に関わらず、電動モータにより前後輪を共に駆動する構成となっているので、走行抵抗が大きく出力トルクが大きな電動モータを装備する必要が生じコスト高となったり、電力を過剰に消費して燃費が悪いという課題が有った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記課題に鑑みて作業車両の伝動装置を以下のように構成した。
即ち、エンジン(1)の回転動力を走行用変速機(2)を介して後輪(4)へ伝達して駆動すると共に、同回転動力を車体に突設するPTO軸(5)へ伝達して駆動し、更に同回転動力をバッテリ(22)へ伝達してこのバッテリ(22)を充電し、前記バッテリ(22)に蓄えられた電力により可変モータ(7)を駆動し前記エンジン(1)から後輪(4)へ至る伝動経路とは異なる伝動経路で前輪(6)を駆動する作業車両の伝動装置とした。
(請求項1の作用)
以上のように構成した作業車両では、エンジン(1)の回転動力により、後輪(4)が駆動され、同回転動力により車体に突設するPTO軸(5)が駆動される。また、エンジン(1)の回転動力によりバッテリ(22)に電気を充電し、前記バッテリ(22)に蓄えられた電力により可変モータ(7)を駆動させて前記後輪(4)の伝動経路は異なる伝動経路で前輪(6)が駆動される。
【0007】
また請求項2の発明では、 前記エンジン(1)から後輪(4)へ至る伝動経路に後輪回転センサ(26,27)を設け、
前記可変モータ(7)から前輪(4)へ至る伝動経路に前輪回転センサ(25)を設け、
前記前後輪回転センサ(25,26,27)により予め設定されたスリップ状態を検出した時には、前記可変モータ(7)により前記前輪(6)を駆動して4WD駆動状態とし、前記両センサ(25,26,27)により予め設定されたスリップ状態を検出していない間には、前記前輪(6)から前記可変モータ(7)を駆動して前記バッテリ(22)を充電する制御手段(24)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の伝動装置とした。
(請求項2の作用)
以上のように構成した請求項2の発明では、前後輪回転センサ(25,26,27)により車両のスリップ状態が検出され、予め設定されたスリップ状態を検出された時には、制御手段(24)により前記可変モータ(7)により前記前輪(6)を駆動され車両は4WD駆動とする。また前記両センサ(25,26,27)により予め設定されたスリップ状態を検出していない間には、前記前輪(6)からの付き回りが前記可変モータ(7)へ伝達されて前記バッテリ(22)に電気を充電する。
【0008】
また請求項3の発明では、前記エンジン(1)から後輪(4)へ至る伝動経路に後輪回転センサ(26,27)を設け、
前記可変モータ(7)から前輪(4)へ至る伝動経路に前輪回転センサ(25)を設け、
前記前後輪回転センサ(25,26,27)により後輪(4)に対する前輪(6)のオーバーラン状態を検出した時には、前記前輪(6)から前記可変モータ(7)を駆動して前記バッテリ(22)を充電させる制御手段(24)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両の伝動装置とした。
(請求項3の作用)
以上のように構成した請求項3の発明では、前後輪回転センサ(25,26,27)により後輪(4)に対する前輪(6)のオーバーラン状態が検出され、このオーバーラン状態が検出された時には、制御手段(24)により前記前輪(6)からの回生駆動力、即ち付き回り動力が前記可変モータ(7)へ伝達されて前記バッテリ(22)に電気を充電する。
【0009】
【発明の効果】
これにより、請求項1の発明は、負荷の大きい後輪(4)とPTO軸(5)は、エンジン(1)によって駆動し、負荷の小さい前輪(6)は可変モータ(7)で独自に駆動するので、特に一般道路を走行するとき等、前記可変モータ(7)だけを駆動させて走行する場合に、前記公報のように前後輪を共に駆動するモータと比較して、同モータ(7)に掛かる負荷を極力小さくすることができるので、大きなトルクを必要とする高価なモータを必要とせず、生産、部品コストを低減することができる。また、前輪(6)をスリップ等の走行状態に合わせて独自に駆動することができ、車両の安全性、操作性を向上することができる。
【0010】
また請求項2の発明は、例えば負荷作業中や昇り坂走行等、前後輪(6,4)のスリップが大きいときは、可変モータ(7)によって前輪(6)を駆動して4WD走行とし、例えば平坦な作業地を単に移動するとき等、前後輪(6,4)のスリップが小さいときには、前輪(6)の回生回転で可変モータ(7)を駆動し、同モータ(7)を発電機として前記バッテリ(22)に電気を充電することで、前記バッテリ(22)の電力の減少を極力抑えて、前輪(6)を長時間に亘り駆動、更には回転制御することができる。
【0011】
また請求項3の発明は、路上走行中にブレーキを掛けたときや、対地作業機、例えばロータリ作業機から前方へ押されるような力(ダッシング)を受ける場合に、前輪(6)は後輪(4)に対してオーバーランの状態となるが、このようなときは、前記前輪(6)を回生制動することで適正な4WD状態やブレーキ時の急制動ができと共に、この回生エネルギーをバッテリ(22)の充電に有効利用してバッテリの電力の減少を極力抑えて、前輪(6)を長時間に亘り駆動、更に回転制御することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を乗用芝刈機に搭載した例について説明する。
乗用芝刈機は、図4に示すように、車体8前部のンネット10内にエンジン1及びバッテリ22、更には後述する前輪モータ7を内装し、このモータ下方にステアリングハンドル9で操向できる前輪6を設け、前記車体8の後部には後輪4及び操縦席11を設ける構成となっている。
【0013】
また前記ステアリングハンドル9の下方には、後述するPTO軸5の回転を入切操作するPTO入切スイッチ34を設け、またハンドル回動基部には、車両の旋回状態を検出する手段としてハンドル切角センサ29を設ける構成となっている。
【0014】
また、前記前輪6と後輪4との間には、クロスリンク12を有するリフト機構を設け、このリフト機構に作業機となるモーアデッキ13を装着すると共に、車体後部にはこのモーアデッキ13内のカッター15で刈取られた芝草を集草するコレクタ14を装着する構成となっている。そして、前記モーアデッキ13内のカッター15は、前記左右後輪4,4内側のPTO軸5から連動される。また前記モーアデッキ13とコレクタ14は、ブロワーを内装したシュータ16で連通する構成となっている。
【0015】
前記乗用芝刈機の伝動経路及び制御構成について図1に基づいて説明する。
前記PTO軸5の伝動経路は、前記エンジン1から動力上手側から順に、PTOクラッチ17、PTO変速機3と経てPTO軸5となっている。また前記PTOクラッチ17はコントローラ24の通電指令により切替制御弁のソレノイド30へ通電が成されて入切操作する構成となっている。
【0016】
また前記後輪4の伝動経路は、エンジン1から動力上手側から順に、走行クラッチ18、後輪用の走行変速機2、後輪デフ機構19等を経て左右の後輪4となっている。また前記走行クラッチ18はコントローラ24の通電指令により切替制御弁のソレノイド31へ通電が成されて入切操作する構成となっている。尚、前記走行変速機2は、HSTやCVTといった無段変速機となっている。
【0017】
また前記前輪6の伝動経路は、動力上手側から順に可変モータ式の前輪モータ7、前輪デフ機構21、左右の前輪6となっている。また前記前輪モータ7は、エンジン近傍に配置したバッテリ22の電力をインバータ23を経由して駆動する構成となっている。また前記インバータ23は、コントローラ24からの出力で内部スイッチを切替操作して前輪モータ7の出力回転数を制御する構成となっている。また前記バッテリ22は、エンジン1により駆動される発電機の電気を受けて充電すると共に、前記前輪モータ7を発電機として利用し前輪からの回生動力を受けても充電する構成となっている。
【0018】
また更に、前記前輪モータ7の動力下手側の伝動経路は、軽負荷走行を想定して、前輪クラッチ20を介して前記走行変速機2の上手側へも接続し後輪4も駆動可能な構成となっている。尚、前記前輪クラッチ20も、コントローラ24の通電指令により切替制御弁のソレノイド32へ通電が成されて入切操作する構成となっている。
【0019】
尚、図1に示す実線の矢印はギヤや駆動軸などの機械的連動機構を示し、点線の矢印はハーネス等に流れる電気の流れを示す。
また前記コントローラ24は、この発明の制御手段であって、図2に示すように、
この入力側に該インバータ23の他に、前輪6の回転を検出する前輪回転センサ25や、左右夫れ夫れの後輪4の回転を検出する左右後輪回転センサ26,27、後輪走行変速機2の変速位置を設定する変速位置設定器28、及びステアリングハンドル9の切れ角を検出するステアリング切れ角センサ29、PTO入切スイッチ34、バッテリ22のバッテリ残量センサ35、等を接続する構成となっている。また出力側には、走行変速機2の変速位置を切り替える変速用アクチュエータ33、前記インバータ内の各種スイッチ、前記PTOクラッチ17を入切操作する切替制御弁のソレノイド30、走行クラッチ18を入切操作する切替制御弁のソレノイド31、前輪クラッチ20を入切操作する切替制御弁のソレノイド32等を接続する構成となっている。
【0020】
以上のように構成した乗用芝刈機を二輪駆動走行形態(2WD)とするときは、走行クラッチ18の入として、エンジン1の回転動力を走行変速機2を介して後輪4へ伝達し駆動する。またこのとき前記カッター15を駆動するときは、前記PTO入切スイッチ34を入として、PTOクラッチ17を入りとしてエンジン1の回転動力をPTO変速装置3を介してPTO軸5へ伝達し伝動する。尚、この際、前記インバータ23の操作により前輪モータ7は駆動せず、エンジン1の回転動力でバッテリ22に電気を充電する。
【0021】
また乗用芝刈機を四輪駆動走行形態(4WD)とするときは、前記インバータ23の操作により前輪モータ7をバッテリ22の電気で駆動する。
詳しくは、図3のフローチャートに示すように、変速制御や各クラッチ18,20等の制御が行われる。
【0022】
最初に、前記乗用芝刈機の電源系がONされると、各種センサ25,26…の検出値がコントローラ24に読込まれる。同時に前記コントローラ24では左右後輪回転センサ26,27による検出回転数の平均値を算出する。
そして、前記ステアリング切れ角センサ29により車両の操舵状態を検出し、直進走行中のときは、前記左右後輪4の平均回転数を現在の後輪4の回転数としてセットする。また旋回中のときは旋回外側の後輪回転数、即ち左旋回中のときは、右後輪4の回転数を現在の後輪4の回転数としてセットし、右旋回中のときは、左後輪4の回転数を現在の後輪4の回転数としてセットする。
【0023】
このような後輪4の回転数のセットのもとに、2WD走行中か又は4WD走行中かの判別が行われて、2WDの走行中であるときは、スリップ状態、即ち前後輪6,4の回転数比が適正範囲内にあるか否かの判別が行なわれる。
スリップが小さくこの回転数比が2WD走行における適正範囲内にあるときは、前輪モータ7を発電機としてインバータ23を介してバッテリ22に電気を充電する。
【0024】
一方、前記前後輪6,4の回転数比が2WD走行における適正範囲外にあるときは、スリップ状態が検出されている場合と前輪6のオーバーランが検出されている場合とに区別され、スリップ状態が検出されている場合は、前記後輪4の回転の回転数に前輪6の回転数が同期するように規定時間に亘って前輪モータ7を駆動する。また前記前輪6のオーバーランが検出されている場合は、前輪6の回転数が後輪4の回転数に同期するように規定時間に亘って前輪モータ7を回生制動駆動、即ち前輪6に抵抗をかける。
【0025】
また、車両が4WDで走行しているときにも、前記同様、前輪6及び後輪4の回転数比が繰り返し検出され、スリップ状態を検出されている場合は、前記後輪4の回転数に前輪6の回転数が同期するように規定時間に亘って前輪モータ7の出力回転を制御する。また前記前輪6のオーバーランが検出されている場合は、前輪6の回転数が後輪4の回転数に同期するように規定時間に亘って前輪モータ7を回生制動駆動、即ち前輪6に抵抗をかける。
【0026】
これにより、負荷の大きい後輪4とPTO軸5は、エンジン1によって駆動し、負荷の小さい前輪6は電動式の前輪モータ7で独自に駆動するので、特に一般道路を走行するとき等、前記可変モータ7だけを駆動させて走行する場合に、前後輪を共に駆動する構成と比較して、同モータ7に掛かる負荷を極力小さくすることができるので、大きなトルクを必要とする高価なモータを必要とせず、生産、部品コストを低減することができる。また、前輪6をスリップ等の走行状態に合わせて独自に駆動することができ、車両の安全性、操作性を向上することができる。
【0027】
また例えば負荷作業中や昇り坂走行等、前後輪6,4のスリップが大きいときは、前輪モータ7によって前輪6を駆動して4WD走行とし、例えば平坦な作業地を単に移動するとき等、前後輪6,4のスリップが小さいときには、前輪6の回生回転で前輪モータ7を駆動し、同モータ7を発電機として前記バッテリ22に電気を充電することで、前記バッテリ22の電力の減少を極力抑えて、前輪6を長時間に亘り駆動、更には回転制御することができる。
【0028】
また更に路上走行中にブレーキを掛けたときや、対地作業機、例えばロータリ作業機から前方へ押されるような力(ダッシング)を受ける場合に、前輪6は後輪4に対してオーバーランの状態となるが、このようなときは、前記前輪6を回生制動することで適正な4WD状態やブレーキ時の急制動ができと共に、この回生エネルギーをバッテリ22の充電に有効利用してバッテリの電力の減少を極力抑えて、前輪6を長時間に亘り駆動、更に回転制御することができる。
【0029】
尚、この発明の別形態としては、作業車両として農業用トラクタ、散布作業車といった他の農作業車、フォークリフトやローダ作業車等、建築運搬作業車としても良し、バッテリに燃料電池を利用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用芝刈機の伝動機構を示す図。
【図2】制御ブロック図。
【図3】制御の概要を示すフローチャート。
【図4】乗用芝刈機の全体側面図。
【符号の説明】
1 エンジン
2 走行変速装置
3 PTO変速装置
4 後輪
5 PTO軸
6 前輪
7 前輪モータ
22 バッテリ
24 コントローラ
25 前輪回転センサ
26 左後輪回転センサ
27 右後輪回転センサ

Claims (3)

  1. エンジン(1)の回転動力を走行用変速機(2)を介して後輪(4)へ伝達して駆動すると共に、同回転動力を車体に突設するPTO軸(5)へ伝達して駆動し、更に同回転動力をバッテリ(22)へ伝達してこのバッテリ(22)を充電し、前記バッテリ(22)に蓄えられた電力により可変モータ(7)を駆動し前記エンジン(1)から後輪(4)へ至る伝動経路とは異なる伝動経路で前輪(6)を駆動する作業車両の伝動装置。
  2. 前記エンジン(1)から後輪(4)へ至る伝動経路に後輪回転センサ(26,27)を設け、
    前記可変モータ(7)から前輪(4)へ至る伝動経路に前輪回転センサ(25)を設け、
    前記前後輪回転センサ(25,26,27)により予め設定されたスリップ状態を検出した時には、前記可変モータ(7)により前記前輪(6)を駆動して4WD駆動状態とし、前記両センサ(25,26,27)により予め設定されたスリップ状態を検出していない間には、前記前輪(6)から前記可変モータ(7)を駆動して前記バッテリ(22)を充電する制御手段(24)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の伝動装置。
  3. 前記エンジン(1)から後輪(4)へ至る伝動経路に後輪回転センサ(26,27)を設け、
    前記可変モータ(7)から前輪(4)へ至る伝動経路に前輪回転センサ(25)を設け、
    前記前後輪回転センサ(25,26,27)により後輪(4)に対する前輪(6)のオーバーラン状態を検出した時には、前記前輪(6)から前記可変モータ(7)を駆動して前記バッテリ(22)を充電させる制御手段(24)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両の伝動装置。
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