JP2004348046A - ガラス基板 - Google Patents

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俊司 和田
Toshiyuki Sato
俊行 佐藤
Mitsuru Oizumi
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Abstract

【課題】ヤケが生じにくく、液晶表示パネルに好的なガラス基板を提供する。
【解決手段】液晶表示パネル100は、フロート法ソーダガラスから成る前面板ガラス111と、前面板ガラス111との間に液晶部104を封入すべく前面板ガラス111から例えば0.1〜0.2mmの間隔を隔てて配設された背面板ガラス112と、前面板ガラス111の内面上にパターン形成された表示電極113とを備える。前面板ガラス111は、そのボトム面の表面からの深さが深くなるほど酸化錫の濃度が小さくなり、且つボトム面からの深さが3μmより浅い範囲における酸化錫の濃度が1質量%以上である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス基板に関し、特に、液晶表示パネルに用いられるガラス基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液晶表示パネルに用いられるガラス基板としてフロート法で製造されたソーダライムガラスが多く用いられている。
【0003】
液晶表示パネルは、2枚のガラス基板と、その間に封入される液晶とから構成される。この液晶表示パネルに用いられる2枚のガラス基板の間隔(以下「セルギャップ」という。)は2〜6μm程度であるため、ガラス基板表面に「うねり」などの表面凹凸があるとセルギャップがばらつき、液晶表示面に濃淡のムラが生じる。
【0004】
この液晶表示面に生じる濃淡のムラを防ぐため、液晶表示パネルに用いられるガラス基板は、その内面のうねり量が0.2μm以下である必要がある。また、通常、このような表面平坦性を満たすガラス基板を得るためには、機械的な研磨処理がガラス基板表面には施される(たとえば、特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】
特開2002−72922号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のソーダライムガラスから成るガラス基板を空気中に放置しておくと、いわゆるヤケが発生するという問題がある。
【0007】
ヤケとは、ガラス基板の組成中に含まれるイオン(例えば、ナトリウムイオンやカルシウムイオン)がガラス表面において空気中の水蒸気及び炭酸ガスと反応して形成された炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどの化合物がガラス表面に固着し、ガラスの外観が徐々に白く曇る現象をいう。
【0008】
特に、ソーダライムガラスは、表面の組成より内部(バルク)の組成の方がヤケが発生し易いため、機械的な研磨の施された液晶表示パネル用のガラス基板は短期間の保管でもヤケが生じて、液晶表示面が曇るという問題がある。
【0009】
また、板厚が薄いガラス基板である程、その表面に生じた静電気がもたらす基板の厚み方向の電界強度が大きくなり、ガラス基板中のアルカリイオンがガラス基板の表面へ誘発されやすくなる結果、ヤケがさらに発生し易くなる。このため、表示される画像がぼやける、暗い等、不鮮明となることを抑制でき、画像を鮮明とすることができる液晶表示素子用のガラス基板として近年注目されている(板厚が0.45mmに満たないような)超薄板ガラス基板においてはヤケの発生による液晶表示面の曇りはさらに生じやすくなっている問題がある。
【0010】
さらに、ITOがパターンニングされた部分にヤケが発生すると、ITO膜特性に異常が発生したり、密着性が悪化して膜ハガレを生じる結果、断線や短絡という問題が生じるという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、ヤケが生じにくく、液晶表示パネルに好的なガラス基板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載のガラス基板は、フロート法ソーダガラスから成るガラス基板において、前記ガラス基板は、そのボトム面の表面からの深さが深くなるほど酸化錫の濃度が小さくなり、且つ前記ボトム面からの深さが3μmより浅い範囲における酸化錫の濃度が1質量%以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項1記載のガラス基板によれば、フロート法ソーダガラスから成るガラス基板は、そのボトム面の表面からの深さが深くなるほど酸化錫の濃度が小さくなり、且つボトム面からの深さが3μmより浅い範囲における酸化錫の濃度が1質量%以上であるので、ガラス基板にヤケを生じにくくすることができ、液晶表示パネルに好的なものとすることができる。
【0014】
請求項2記載のガラス基板は、請求項1記載のガラス基板において、前記ボトム面の表面のうねりが0.13μm未満となるようにボトム面に研磨処理を施したとき、前記ボトム面の表面の酸化錫の濃度が0.6質量%以上であることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載のガラス基板によれば、ボトム面の表面のうねりが0.13μm未満となるようにボトム面に研磨処理を施したとき、ボトム面のの表面の酸化錫の濃度が0.6質量%以上であるので、ガラス基板表面のうねりを原因としてセルギャップにばらつきがあったとしても液晶表示面に濃淡のムラが生じるのを防止し、且つヤケの発生により液晶表示面に曇りが生じるのを防止することができる。
【0016】
請求項3記載のガラス基板は、請求項1又は2記載のガラス基板において、前記ガラス基板の板厚が0.45mm未満であることを特徴とする。
【0017】
請求項3記載のガラス基板によれば、ガラス基板の板厚が0.45mm未満であっても、ヤケの発生により液晶表示面に曇りが生じるのを防止することができ、液晶表示パネルに好的な超薄板ガラス基板を提供することができる。
【0018】
請求項4記載のガラス基板は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス基板において、液晶表示パネルに用いられることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、フロート法ソーダガラスから成るガラス基板において、ガラス基板は、そのボトム面の表面からの深さが深くなるほど酸化錫の濃度が小さくなり、且つボトム面からの深さが3μmより浅い範囲における酸化錫の濃度が1質量%以上であると、ガラス基板にヤケを生じにくくすることができ、液晶表示パネルに好的なものとすることができることを見い出した。また、表面のうねりが0.13μm未満となるようにボトム面に研磨処理を施したとき、そ表面の酸化錫の濃度が0.6質量%以上であると、ガラス基板表面のうねりを原因としてセルギャップにばらつきがあったとしても液晶表示面に濃淡のムラが生じるのを防止し、且つヤケの発生により液晶表示面に曇りが生じるのを防止することができ、さらには、ガラス基板の板厚が0.45mm未満であっても、ヤケの発生により液晶表示面に曇りが生じるのを防止することができ、液晶表示パネルに好的な超薄板ガラス基板を提供することができることを見い出した。
【0020】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るガラス基板を図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るガラス基板を備える液晶表示パネルの要部の概略構造を示す断面図である。
【0023】
図1において、液晶表示パネル100は、本発明の実施の形態に係るガラス基板である前面板ガラス111と、前面板ガラス111に対して、例えば0.1〜0.2mmの間隔(以下「セルギャップ」という。)を隔てて配設された背面板ガラス112と、前記前面板ガラス111と前記背面板ガラス112の間に封入された液晶部104と、前面板ガラス111の内面(以下「ボトム面」という。)上にパターン形成されたITO導電膜から成る配線電極113とを備える。前面板ガラス111と背面板ガラス112とは、液晶部104を封入すべく、その外周縁においてエポキシ樹脂などの封止剤103(外周密閉部)により封着されている。
【0024】
前面板ガラス111は、フロート法によるソーダライムガラスからなるガラス基板であり、そのボトム面のうねりによるセルギャップのばらつきから生じる液晶表示面の濃淡のムラをなくすべく機械研磨が施されている。また、表示される画像がぼやける、暗い等、不鮮明となることを抑制でき、画像を鮮明とすべく、前面板ガラス111の板厚が薄く形成されている。
【0025】
具体的には、前面板ガラス111は、表面のうねりが0.13μm未満となるようにボトム面に研磨処理が施され、また、その板厚は0.45mm未満である。
【0026】
一般に、フロート法によるソーダライムガラスは、ガラス基板の組成中に含まれるイオン(例えば、ナトリウムイオンやカルシウムイオン)がガラス表面において空気中の水蒸気及び炭酸ガスと反応して形成された炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどの化合物がガラス表面に固着し、ガラスの外観が徐々に白く曇る現象(以下「ヤケ」という。)が発生し易い。
【0027】
さらに、ソーダライムガラスは、その表面の組成より内部(バルク)の組成の方が反応性が高く、ヤケが発生し易い。また、板厚が薄いガラス基板である程、その表面に生じた静電気がもたらす基板の厚み方向の電界強度が大きくなり、ガラス基板中のアルカリイオンがガラス基板の表面へ誘発されやすくなる結果、ヤケがさらに発生し易くなる。
【0028】
ヤケの生じる反応は酸化反応であるため、還元剤である酸化錫の濃度がこの反応が起こる前面板ガラス111のボトム面に一定量以上あるようにすると、ガラス基板にヤケを生じにくくすることができる。また、錫の存在が、前面板ガラス111中のアルカリ金属やアルカリ土類金属イオンが拡散する道筋を塞ぎ、前面板ガラス111のボトム面の表面への拡散を抑制することができる。
【0029】
図2に示すように、機械研磨により前面板ガラス111が作成されるガラス基板110は、ボトム面の表面からの深さが深くなるほど酸化錫の濃度が小さくなるが、ボトム面の表面からの深さが3μmより浅い範囲における酸化錫の濃度が1質量%以上であるとき、ガラス基板100にヤケを生じにくくすることができる。
【0030】
また、ガラス基板110のボトム面の表面のうねりが0.13μm未満となるようにボトム面に研磨処理を施し前面板ガラス111を形成したとき、ボトム面の表面の酸化錫の濃度が0.6質量%以上であるとき、ガラス基板110の表面のうねりを原因とするセルギャップのばらつきがあったとしても、液晶表示面に濃淡のムラが生じるのを防止し、且つヤケの発生により液晶表示面に曇りが生じるのを防止することができる。
【0031】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0032】
1.未研磨サンプルによる測定
未研磨サンプルとして、板厚0.40mmの日本板硝子社製UFF(登録商標)基板を実施例1として、板厚0.40mmの日本板硝子社製以外の市販のフロート板ガラスを比較例1として準備し、これらに対して酸化錫濃度測定と使用可能保管時間測定を行った。
【0033】
酸化錫濃度測定は、まず、サンプルを切断し、その切断面に導電処理として炭素蒸着を行い、その後、炭素蒸着が行われた切断面においてサンプルのボトム面から深さ方向に1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12μmの位置で、日本電子社製の波長分散型(WDX)検出器を用いて行った。
【0034】
波長分散型(WDX)検出器は、加速電圧を15KV、試料電流を2.5×10−7A、ビーム径を1μm、スキャン速度を8.4μΩ/分として設定した。
測定結果を図2に示す。図2において、■印は実施例1を示し、□印は比較例1を示す。
【0035】
図2から、実施例1及び比較例1は共に、ボトム面からの位置が浅い程酸化錫の濃度が高く、深くなる程低、ボトム面から3μmの位置までの酸化錫の濃度は、実施例1については1.0質量%以上であり、比較例1については1.0質量%未満となること、さらに、実施例1は比較例1に比べ、ボトム面の表面近傍の酸化錫の濃度が高いことがわかった。
【0036】
使用可能保管時間測定は、未研磨サンプルのボトム面に形成された配線電極としてのITO導電膜に対して外部から信号を送信しつつ、この信号をITO導電膜から外部に送信し、このITO導電膜から外部への信号送信開始の時刻から、ITO導電膜が断線してこの送信が途絶えるまでの時間(以下「使用可能保管時間」という。)を測定する。この測定は、温度30度、湿度80%で行った。尚、この断線や短絡は、ITOがパターンニングされた部分にヤケが発生し、ITO膜特性に異常が発生したり、密着性が悪化して膜ハガレを生じる結果生じる。
【0037】
この測定の結果、使用可能保管時間は、実施例1は320日であり、比較例1は70日であった。
【0038】
このことから、実施例1は比較例1に比べてかなり長く液晶表示用の基板として使用することができることがわかった。
【0039】
2.研磨サンプルによる測定
研磨サンプルとして、ボトム面のうねりを原因とするセルギャップのばらつきから液晶表示面に濃淡のムラが生じるのを防止すべく、ボトム面のうねりを0.13μm以下となるようにボトム面に後述する機械研磨を施した実施例2及び比較例2を準備し、上記と同様に酸化錫濃度測定と使用可能保管時間時間測定を行った。
【0040】
実施例2及び比較例2のボトム面の研磨は、具体的には、実施例2は、実施例1のボトム面を6μm程度研磨し、比較例2は、比較例1のボトム面を6μm研磨した。この機械研磨方法は、両面ラッピングマシンにより、自公転する樹脂製キャリアのホール内に収容されたガラス基板の面を鋳鉄製の一対の定盤で粒度♯1000のアルミナ砥粒研磨剤を用いて表面粗さ(Rmax)2μm程度にラッピングするものである。
【0041】
各サンプルの研磨面のうねり量は、WCA(ろ波中心線うねり)測定(JISB0610)により測定した。
【0042】
一般に、ガラス基板の表面は、微視的に見ると凹凸状態であり、波長が数mm程度の短い「粗さ」成分と、波長が数〜数十mmの「うねり」成分と、さらに波長が数十〜数百mmの「反り」成分とに分けて考えることができる。これらの成分のうち、セルギャップのばらつきに対して「うねり」成分が最も影響を与える。
【0043】
CA(ろ波中心線うねり)値は、表面を十分に洗浄して乾燥させたサンプルを東京精密社製の触針式表面粗さ測定器(商品名:サーフコム579A)の測定台に載せ、測定台を速度を3.0mm/秒で移動させながら、低域フィルタのカットオフ値を0.8mm、高域フィルタのカットオフ値を25mmとする測定器内蔵の位相補償2RC帯域フィルタを用いてろ波中心線うねり曲線を求め、ろ波中心線うねり曲線と測定長さから、測定器内蔵の算出装置によって算出される。
【0044】
このWCA(ろ波中心線うねり)測定の結果、実施例2のWCAは0.10μm、比較例2のWCAは0.11μmであった。
【0045】
測定結果を図3に示す。図3において、■印は実施例1を示し、□印は比較例1を示す。
【0046】
図3から、実施例2、比較例2共に、ボトム面からの位置が浅い程酸化錫の濃度が高く、深くなる程低くなること、また、ボトム面から1μmの位置までの酸化錫の濃度は、実施例2については0.6質量%以上であり、比較例2については0.5質量%未満となること、さらに、実施例2は比較例2に比べ、ボトム面の表面近傍の酸化錫の濃度が高いことがわかった。
【0047】
使用可能保管時間測定の結果、使用可能保管時間は、実施例2については90日であり、比較例2については50日であることがわかった。
【0048】
以上の結果より、実施例2は比較例2に比べてかなり長く液晶表示用の基板として使用することができることがわかった。
【0049】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、請求項1記載のガラス基板によれば、フロート法ソーダガラスから成るガラス基板は、そのボトム面の表面からの深さが深くなるほど酸化錫の濃度が小さくなり、且つボトム面からの深さが3μmより浅い範囲における酸化錫の濃度が1質量%以上であるので、ガラス基板にヤケを生じにくくすることができ、液晶表示パネルに好的なものとすることができる。
【0050】
請求項2記載のガラス基板によれば、ボトム面の表面のうねりが0.13μm未満となるようにボトム面に研磨処理を施したとき、ボトム面のの表面の酸化錫の濃度が0.6質量%以上であるので、ガラス基板表面のうねりを原因としてセルギャップにばらつきがあったとしても液晶表示面に濃淡のムラが生じるのを防止し、且つヤケの発生により液晶表示面に曇りが生じるのを防止することができる。
【0051】
請求項3記載のガラス基板によれば、ガラス基板の板厚が0.45mm未満であっても、ヤケの発生により液晶表示面に曇りが生じるのを防止することができ、液晶表示パネルに好的な超薄板ガラス基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るガラス基板を備える液晶表示パネルの要部の概略構造を示す断面図である。
【図2】非研磨サンプルの酸化錫の濃度測定結果を示すグラフである。
【図3】研磨サンプルの酸化錫の濃度測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
100 液晶表示パネル
103 封止剤
104 液晶部
110 ガラス基板
111 前面板ガラス
112 背面板ガラス
113 表示電極

Claims (4)

  1. フロート法ソーダガラスから成るガラス基板において、
    前記ガラス基板は、そのボトム面の表面からの深さが深くなるほど酸化錫の濃度が小さくなり、且つ前記ボトム面からの深さが3μmより浅い範囲における酸化錫の濃度が1質量%以上であることを特徴とするガラス基板。
  2. 前記ボトム面の表面のうねりが0.13μm未満となるように前記ボトム面に研磨処理を施したとき、前記ボトム面の表面の酸化錫の濃度が0.6質量%以上であることを特徴とする請求項1記載のガラス基板。
  3. 前記ガラス基板の板厚が0.45mm未満であることを特徴とする請求項1又は2記載のガラス基板。
  4. 液晶表示パネルに用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス基板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011016631A3 (ko) * 2009-08-07 2011-05-05 주식회사 엘지화학 전도성 기판 및 이의 제조 방법
WO2015049890A1 (en) * 2012-10-05 2015-04-09 Asahi Glass Company, Limited Strengthened glass and methods for making the same by using differential time

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