JP2004347130A - 軸受用保持器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本軸受用保持器1では、プレス成形した環板1aの表面の酸化物を、ふっ化処理12で金属ふっ化膜に置き換えることによって除去する。金属ふっ化膜は酸化物の生成も防止し、酸化物は確実に表面から除去されて、この表面に窒化処理される。窒化層Nが環板1aの表面に緻密且つ均一且つ十分に形成されている。従って、表面の平滑性が保たれ保持器1の油膜切れは防止される。緻密かつ均一であり平滑な窒化層Nを安定して形成できる。
【選択図】 図2
Description
上述の油膜切れの原因としては、以下のことが考えられる。すなわち、窒化処理の前処理で、表面の酸化物の除去が行われる。しかしながら、波形プレス保持器の形状は複雑であり、酸化物が残りやすく、それに加えて、除去後にも再度酸素の吸着や酸化作用が働くので、表面の酸化物を完全に除去できない。この状態で、窒化処理が行われると、窒化層は、酸化物が除去された部分には十分に、酸化物の残った部分には不十分に形成されて、その結果、窒化層にむらが生じていたり、クラックが多数形成されていた。不十分な窒化層の表面では、もともと平滑度が充分でなく、クラックの存在もあり、潤滑油が窒化層の最表面に保持され難く、よって、油膜が切れ易く、潤滑が不充分になると考えられる。
この構成によれば、窒化層を、表面に緻密に、且つむらなく均一に、且つ十分に形成できる。このような窒化層が形成された保持器では、油膜が切れることもなく、良好な潤滑性を維持できる。
その製造方法は、表面に窒化層が形成された鋼製軸受用保持器の製造方法において、窒化処理の前に、保持器の表面の酸化物を金属ふっ化膜に置き換えるふっ化処理を含む。
ふっ化処理に用いる活性化されたふっ素原子により、母材の鋼の表面に付着していた加工助剤等の異物が破壊等されて除去され、表面が浄化されると同時に、鋼表面の酸化皮膜のような不働態膜が、金属ふっ化膜に置き換えられる。このように置き換えられることによって、鋼の表面が金属ふっ化膜によって被覆保護された状態になり、後の窒化処理まで酸化物の生成が阻止されるので、確実に酸化物を除去できる。従って、表面に緻密、且つ均一、且つ十分な窒化層を形成することができる。
まず、本発明の保持器について説明する。図1は、本発明にかかる保持器の斜視図である。図2は、図1の保持器を備えた軸受である玉軸受の断面図である。図1及び図2を参照する。
また、本発明の保持器1は、後述する製造方法によって、環板1aの表面全体に、Fe3 Nを主成分とする窒化物が、その平均粒子径が1μm以下であるように、緻密且つ均一に積層された状態の窒化層Nが形成されている(後述する実施例の(1) 欄参照)。なお、窒化層Nは、少なくとも環板1aのポケットPを形成する部分に形成してあればよい。すなわち、窒化層Nを、凹湾部1bの内周面のみに形成してもよいし、上記内周面と他の部分とに形成してもよい。
本製造方法は、環板1aを形成する形成工程11と、形成された環板1aの表面の酸化物を金属ふっ化膜に置き換えるふっ化処理12と、窒化層Nを形成する窒化処理13と、環板1aを保持器1に組み立てる組立工程14とを備えている。
ふっ化処理12では、被処理品である成形品を、3ふっ化窒素(NF3 )、窒素等の混合気中に、所定のふっ化温度T1、例えば300℃〜400℃に所定時間(10分〜120分)保持する。その結果、成形品の表面の異物等は、ふっ化処理に用いる活性化されたふっ素原子によって破壊等されて除去され、表面が浄化されると同時に、鋼表面の酸化皮膜のような不働態膜が、金属ふっ化膜に置き換えられる。この際に、表面に形成される金属ふっ化膜は、不働態膜であるので、表面への酸素の吸着や酸化作用を防止し、次の窒化処理13まで酸化物の生成を阻止し、その結果、確実に酸化物を除去することができる。
ふっ化温度T1から窒化温度T2に、温度が昇温される過程で、被処理品表面の金属ふっ化膜は活性化膜となる。その結果、窒化処理13で、窒素は金属に速やかに深く浸透して、窒化層Nが形成される。その後、所定時間をかけて、冷却される。
窒化処理13での窒化温度T2及び保持時間は、窒化処理13で形成される窒化層Nの深さ等に応じて、所定値に設定されるのが好ましい。
窒化温度T2としては、480℃〜700℃であれば、表面に硬い窒化層を形成することができる。従って、潤滑性を向上することができる。
また、窒化層Nでは、摩擦が大きくなる虞がないので、油膜切れも生じ難く、より一層焼き付き難くすることができる。ちなみに、無潤滑状態での摩擦係数は0.24であり、従来のタフトライド処理品の0.54に対して2分の1以下となっている。なお、実験条件は、HRIDON式摩耗試験機にて、試験片(SPCC材)にボール(SUJ2材)を荷重200gf、速度100mm/秒、距離20mmで10往復させ、その際の動摩擦係数を測定し、各測定値の最大値の平均値を求めた。
このように本実施の形態の保持器1によれば、以下の作用効果を奏するものである。
保持器1は、鋼板製であるので、温度の高い環境でも、合成樹脂性の保持器に比べて、安心して使用することができる。例えば、エンジン等で使用される軸受でも使用できる。
特に、本実施の形態の窒化層Nは、均一に緻密に形成されているので、多孔質の部分がある従来の窒化層に比べて、表面がより一層硬く、耐摩耗性が良好である。
また、保持器1では、表面の硬い窒化層Nによって鋼板の機械的強度が改善される上に、内部の窒化されていない鋼板の部分によって柔軟性、靱性が維持されるため、耐衝撃性を備えて、保持器としての強度がより一層向上する。従って、この保持器1を備えた軸受Aの回転時に、保持器1が、転動体3から衝撃を受けても、衝撃に耐えることができ、切損する虞もなく、実用に適した保持器とすることができる。特に、本発明の製造方法によって形成された窒化層Nは、従来のタフトライド処理品に比べて、素材中心部分の硬さが低く(後述する実施例の(3) 欄参照)、その結果、内部の柔軟性、靱性がより一層向上して衝撃に耐えることができる。なお、ここでの保持器としての強度とは、単純な形状の試験片を測定して求められる材料自体の機械的強度でなく、保持器を実際に使用した際の強度であって、材料自体の強度に、柔軟性、靱性、耐衝撃性等が加味された強度である。
窒化処理13は、ガス窒化であるので、塩浴窒化のような環境汚染の心配がない。
また、従来の製造方法では、窒化処理の際の480℃〜700℃の温度域で、鋼材中のCr,Mn,Si,Al等の金属元素が殆ど酸化され、鋼材の表面に粒界酸化物が形成されていた。この粒界酸化物が障害となって、窒化処理が阻害され、その結果、鋼材の表面に窒化層を安定して形成できないでいた。これに対して、本発明では、ふっ化処理12で確実に酸化物を除去できるので、一定の窒化層Nを安定して形成することができる。窒化層の硬さも、従来のタフトライド処理品と同等で、表面硬さはビッカース硬さ450HVを維持している(後述する実施例(2) 参照)。
また、従来、ガス窒化の場合、熱伝達が遅く、被処理品の表面が十分に活性化するために長時間を要する場合があった。一方、本発明の方法では、被処理品の表面に形成された金属ふっ化膜は、窒化温度T2では、十分に活性化されているので、窒素は速やかに金属に浸透して、長時間をかけずに十分な窒化層Nが形成される。
なお、本発明の保持器及びその製造方法は、プレス成形された波形保持器以外にも、もみ抜き保持器や冠形打抜き保持器等に適用することができる。また、材質も炭素鋼に限定されず、ステンレス鋼や工具鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼にも適用できる。
また、本発明の軸受用保持器及びその製造方法は、上述の玉軸受以外にも、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、球面ころ軸受、針状ころ軸受等の種々の転がり軸受用の、あらゆる形状の保持器に適用することができる。
(1) 表面状態
[分析方法]
図8の斜視図に示すように、保持器1のポケットPを形成する部分の表面S1(転動体と接する部分)と、表面近傍の断面S2とを、走査形電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM─5400)を用いて分析した。
得られた顕微鏡像を図4〜図7に示す。図4は、実施例の保持器1の窒化層N表面の金属組織を表す写真である。図5は、比較例の保持器の窒化層表面の金属組織を表す写真である。図6は、実施例の保持器1の窒化層Nの断面の金属組織を表す写真である。図7は、比較例の保持器の窒化層の断面の金属組織を表す写真である。なお、図4〜図7は、倍率5000倍で得られた像を撮影したものであり、各図に寸法を示す尺度が写し込まれている。また、図6及び図7では、中央部から下方に表された白い部分が、保持器であり、それよりも上方に表された黒い部分は、撮影用部材である。
一方、比較例の窒化層表面では、図5に表されているように、粒子の大きさは様々で、粒子径が5μm程度のものも認められる。また、表面の凹凸は、実施例よりも大きく、また、図7では表面から内部にかけてクラックも認められる。
実施例の保持器の表面硬さを、ビッカース硬さで測定した。測定位置は、図8に示す保持器のポケットPを形成する部分の表面S1である。
[結果]
実施例の平均硬さ:619HV(試験荷重25gf)。
平均硬さ:451HV(試験荷重50gf)。
平均硬さ:370HV(試験荷重100gf)。
実施例の保持器の硬さを、表面からの距離の異なる複数箇所の断面位置で測定した。同様に、比較例についても測定した。なお、ビッカース硬さの試験荷重は、100gfである。
図13は、保持器の硬さと、表面からの距離との関係を示すグラフである。図13には、線Ha(─○─)で実施例を、線Hb(─■─)で比較例を示し、縦軸に硬さをビッカース硬さ(HV)で示し、横軸に表面からの距離(μm)を示す。
(4) 油の保持性
[試験方法]
実施例及び比較例の保持器表面の油の保持性を試験した。すなわち、平板状の試験片を作成し、作成した試験片の表面に、実施例に形成されたものと同様の窒化層及び比較例と同様の窒化層を形成した。各試験片の窒化層の表面に、潤滑油0.01ccを滴下する。滴下前の表面と、滴下後1時間を温度150℃で経過した表面とを、レーザ顕微鏡で比較し、表面の油膜状況を測定する。
観察された顕微鏡像を図9〜図12に示す。図9は、実施例の窒化層N表面の金属組織を表す写真であり、油滴下前の状態である。図10は、実施例の窒化層N表面の金属組織を表す写真であり、油滴下後の状態である。図11は、比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真であり、油滴下前の状態である。図12は、比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真であり、油滴下後の状態である。図9〜図12は、倍率500倍で得られた像を撮影したものである。
一方、比較例の窒化層では、図11と図12とで差は少なく、また図12にも縞模様は少ないので、油膜が充分に保持されていないことが判る。
(5) 耐焼き付き性(A):
次に、耐焼き付き性の試験結果を説明する。
上述の保持器1を軸受に適用して、下記条件下で寿命を測定した。ここでの寿命は、潤滑が停止された状態で、焼き付きが生じるまでの時間である。
[試験条件]
適用した軸受:深溝形玉軸受(呼び番号6305)。
ラジアル荷重:200Kgf。
回転数 :11000rpm。
潤滑条件 :回転前に、2サイクルエンジン用潤滑油を0.01cc滴下。
本発明実施品:平均寿命38.5分。
比較例 :平均寿命18.6分。
このように、本発明の保持器は、殆ど無潤滑に近い過酷な条件下でも、従来品に比べて約2倍の寿命を有している。
(5) の軸受を、さらに過酷な条件を課して寿命を測定した。
[試験条件]
ラジアル荷重:400Kgf。
回転数 :11400rpm。
潤滑条件 :回転前に2サイクルエンジン用潤滑油を0.005cc滴下。
本発明実施品:平均寿命6.1分。
比較例 :平均寿命3.9分。
このように、本発明の保持器は、さらに過酷な条件下でも、従来品に比べて約1.6倍の寿命を有している。
N 窒化層
Claims (1)
- 窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層が、鋼の表面から内側に向かって形成され、窒化層は、表面が硬く内部が柔らかい2層硬度分布を有することを特徴とする鋼製軸受用保持器。
Priority Applications (1)
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Cited By (3)
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JP2008265129A (ja) * | 2007-04-19 | 2008-11-06 | Nippon Plate Kk | 通信シート及び通信シート用プリンター用紙 |
WO2019022010A1 (ja) * | 2017-07-27 | 2019-01-31 | Ntn株式会社 | 転がり軸受用保持器および転がり軸受 |
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2004
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