JP2004347130A - 軸受用保持器 - Google Patents

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弘 上野
Kazuhisa Kajiwara
一寿 梶原
Akihiro Bun
明宏 文
Hideki Fujiwara
英樹 藤原
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Abstract

【課題】鋼板製保持器では、表面の酸化物が確実に除去されない状態で、窒化が行われ、窒化層が不十分な部分があるとともに、窒化層自体も平滑性に劣り、クラック等も存在する。このため潤滑油の保持が充分でなく、油膜切れが生じることがあった。
【解決手段】本軸受用保持器1では、プレス成形した環板1aの表面の酸化物を、ふっ化処理12で金属ふっ化膜に置き換えることによって除去する。金属ふっ化膜は酸化物の生成も防止し、酸化物は確実に表面から除去されて、この表面に窒化処理される。窒化層Nが環板1aの表面に緻密且つ均一且つ十分に形成されている。従って、表面の平滑性が保たれ保持器1の油膜切れは防止される。緻密かつ均一であり平滑な窒化層Nを安定して形成できる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、鋼製軸受用保持器に関する。
従来から、鋼製軸受用保持器には、強度の向上や摩耗防止を図る課題がある。この課題を解決するため、例えば、二輪車用エンジン、特に、2サイクルエンジンの、クランク軸受用の深溝型玉軸受では、いわゆる波形プレス保持器が使用され、この波形プレス保持器の表面に、いわゆるタフトライド処理と呼ばれる、塩浴窒化、ガス窒化等の窒化処理を含む表面処理が施されていた。また、窒化処理を施すと、潤滑性を向上できるという利点もある。
しかしながら、2サイクルエンジンのクランク軸受は、ガソリンに混合した潤滑油によって潤滑されるため、常に一定量の潤滑油が供給されるとは限らない。そのため、上述のように窒化処理によって潤滑性を高めた保持器であっても、油膜切れが生じることがあり、場合によっては、保持器と転動体との間で焼き付きを生じる虞もあった。
上述の油膜切れの原因としては、以下のことが考えられる。すなわち、窒化処理の前処理で、表面の酸化物の除去が行われる。しかしながら、波形プレス保持器の形状は複雑であり、酸化物が残りやすく、それに加えて、除去後にも再度酸素の吸着や酸化作用が働くので、表面の酸化物を完全に除去できない。この状態で、窒化処理が行われると、窒化層は、酸化物が除去された部分には十分に、酸化物の残った部分には不十分に形成されて、その結果、窒化層にむらが生じていたり、クラックが多数形成されていた。不十分な窒化層の表面では、もともと平滑度が充分でなく、クラックの存在もあり、潤滑油が窒化層の最表面に保持され難く、よって、油膜が切れ易く、潤滑が不充分になると考えられる。
そこで、本発明の目的は、上記の技術的課題を解決し、均一な窒化層によって、油膜切れが生じ難く、潤滑性の良い鋼製軸受用保持器を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明の鋼製軸受用保持器は、窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層が、鋼の表面から内側に向かって形成され、窒化層は、表面が硬く内部が柔らかい2層硬度分布を有することを特徴とする。
この構成によれば、窒化層を、表面に緻密に、且つむらなく均一に、且つ十分に形成できる。このような窒化層が形成された保持器では、油膜が切れることもなく、良好な潤滑性を維持できる。
この保持器は、例えば、以下の鋼製軸受用保持器の製造方法によって製造することができる。
その製造方法は、表面に窒化層が形成された鋼製軸受用保持器の製造方法において、窒化処理の前に、保持器の表面の酸化物を金属ふっ化膜に置き換えるふっ化処理を含む。
ふっ化処理に用いる活性化されたふっ素原子により、母材の鋼の表面に付着していた加工助剤等の異物が破壊等されて除去され、表面が浄化されると同時に、鋼表面の酸化皮膜のような不働態膜が、金属ふっ化膜に置き換えられる。このように置き換えられることによって、鋼の表面が金属ふっ化膜によって被覆保護された状態になり、後の窒化処理まで酸化物の生成が阻止されるので、確実に酸化物を除去できる。従って、表面に緻密、且つ均一、且つ十分な窒化層を形成することができる。
また、従来は、窒化処理の際、480℃〜700℃の温度域では、鋼材中のCr,Mn,Si,Alのような金属元素は、酸化されやすい。しかし、上記温度領域においては、これらの金属元素を完全に中性もしくは還元性に維持する雰囲気をつくることが困難なことから、上記金属元素は上記温度領域で殆ど酸化され、それによって窒化処理に際して鋼材の表面に粒界酸化物が形成され、この粒界酸化物が障害となって窒化処理が阻害される。結果として、鋼材の表面に窒化層を安定して形成できないでいた。
これに対して、上述の製造方法では、確実に酸化物を除去できるので、一定の窒化層を安定して形成することができる。すなわち、窒化処理の際、480℃〜700℃程度の温度で、窒素源を有するガス(例えばNH3 ガス)とH2 ガスとの混合ガスを炉内に導入することにより、上記H2 ガスによって、鋼材表面を被覆保護している金属ふっ化膜は破壊され除去される。これにより、浄化されて活性化した金属素地が現れ、この活性化した金属素地に窒化ガス(例えばNH3 ガス)中のN原子が作用し、内部に迅速に浸透拡散し、深い窒化層を均一に形成する。すなわち、鋼の表面から内側に向かってCrN,Fe2 N,Fe3 N,Fe4 N等の窒化物を含有する超硬質な化合物層(窒化層)が、均一に深く形成され、それに続いて硬質なN原子の拡散層が形成され、上記化合物層+拡散層が全窒化層を構成する。また、窒化層の硬さも、従来のタフトライド処理品と同等で、表面硬さはビッカース硬さ450HV(試験荷重50gf)を維持している。
上述の製造方法のふっ化処理に用いるふっ素系ガスとしては、NF3 ,BF3 ,CF3 ,HF,SF6 ,F2 の単独もしくは混合物からなるふっ素源成分をN2 等の不活性ガス中に含有させたガスが好適に用いられる。なかでも、安全性、反応性、コントロール性、取扱性等の点でNF3 が最も優れており、実用的である。このようなふっ素系ガスでは、効果の点から、NF3 等のふっ素源成分が0.05%〜20%(重量基準、以下同じ)の濃度に設定される。好ましいのは、3%〜5%の範囲内である。
以下、本発明の一実施の形態にかかる軸受用保持器及びその製造方法を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明の保持器について説明する。図1は、本発明にかかる保持器の斜視図である。図2は、図1の保持器を備えた軸受である玉軸受の断面図である。図1及び図2を参照する。
保持器1は、例えばSPCC材等の低炭素鋼板をプレス成形した一対の環板1aと、一対の環板1aを互いに固定する鋲2とを備えている。一対の環板1aは、対向して配置され、略円環状の保持器1を構成している。環板1aには、複数の凹湾部1bが等間隔に形成されており、凹湾部1bの間には、鋲着固定のための鋲孔(図示せず)が形成されている。凹湾部1bは、互いに対向して配置され、軸受Aの球状の転動体3を収容するポケットPを形成している。
保持器1は、ポケットPに保持された転動体3とともに、軸受Aの内輪4の外周面と、外輪5の内周面との間に設けられて、内外輪を相対回転可能に支持して、軸受Aを構成する。
また、本発明の保持器1は、後述する製造方法によって、環板1aの表面全体に、Fe3 Nを主成分とする窒化物が、その平均粒子径が1μm以下であるように、緻密且つ均一に積層された状態の窒化層Nが形成されている(後述する実施例の(1) 欄参照)。なお、窒化層Nは、少なくとも環板1aのポケットPを形成する部分に形成してあればよい。すなわち、窒化層Nを、凹湾部1bの内周面のみに形成してもよいし、上記内周面と他の部分とに形成してもよい。
保持器1は、例えば、以下のようにして製造される。すなわち、図3は本発明の製造方法の概略工程図である。以下、図3を参照して、本発明にかかる製造方法を説明する。
本製造方法は、環板1aを形成する形成工程11と、形成された環板1aの表面の酸化物を金属ふっ化膜に置き換えるふっ化処理12と、窒化層Nを形成する窒化処理13と、環板1aを保持器1に組み立てる組立工程14とを備えている。
形成工程11では、鋼板、例えばSPCC材によりプレス成形されて、環板1aの形状を有した成形品が形成される。
ふっ化処理12では、被処理品である成形品を、3ふっ化窒素(NF3 )、窒素等の混合気中に、所定のふっ化温度T1、例えば300℃〜400℃に所定時間(10分〜120分)保持する。その結果、成形品の表面の異物等は、ふっ化処理に用いる活性化されたふっ素原子によって破壊等されて除去され、表面が浄化されると同時に、鋼表面の酸化皮膜のような不働態膜が、金属ふっ化膜に置き換えられる。この際に、表面に形成される金属ふっ化膜は、不働態膜であるので、表面への酸素の吸着や酸化作用を防止し、次の窒化処理13まで酸化物の生成を阻止し、その結果、確実に酸化物を除去することができる。
窒化処理13では、ガス窒化が行われる。ここでの被処理品であるふっ化処理された成形品(表面が金属ふっ化膜で覆われている)は、所定の反応ガス、例えばNH3 単体からなるガスまたはNH3 と炭素源とからなる混合ガス(例えばRXガス)中に、所定の窒化温度T2に、所定時間(0.5時間〜5時間)保持される。
ふっ化温度T1から窒化温度T2に、温度が昇温される過程で、被処理品表面の金属ふっ化膜は活性化膜となる。その結果、窒化処理13で、窒素は金属に速やかに深く浸透して、窒化層Nが形成される。その後、所定時間をかけて、冷却される。
被処理品は、冷却終了まで、窒素ガス中に保持されており、表面に酸化物の生成が防止される。
窒化処理13での窒化温度T2及び保持時間は、窒化処理13で形成される窒化層Nの深さ等に応じて、所定値に設定されるのが好ましい。
窒化温度T2としては、480℃〜700℃であれば、表面に硬い窒化層を形成することができる。従って、潤滑性を向上することができる。
また、ふっ化処理12で被処理品の表面が活性化されるので、窒化温度T2を、従来の窒化層形成時に被処理品を保持する温度よりも低くすることができる。窒化温度T2が低くなる程に、窒化層Nの表面が平滑に形成される傾向があり、特に、上述のように窒化温度T2が480℃〜700℃であれば、この窒化温度T2で形成される窒化層Nの表面が、従来形成されたタフトライド処理品の窒化層の表面よりも平滑になる。窒化層Nの表面粗さは、未処理品、すなわち、研磨仕上げ面の粗さ(中心線平均粗さRa=0.7μm〜1.0μm、十点平均粗さRz=4.0μm〜7.0μm、最大高さRmax=4.5μm〜7.5μm)に対し、殆ど同じ値である。従来のタフトライド処理品の表面粗さは、Ra=1.5μm〜2.0μm、Rz=10.0μm〜15.0μm、Rmax=14.0μm〜18.0μmであるから、本発明の窒化層Nは、表面粗さが従来のタフトライド処理品に比べて小さく、また、かなり平滑性を増している。
さらに、窒化層Nが上述するように平滑且つ緻密であることに加え、クラックが殆どないため、窒化層Nの最表面での潤滑油の保持性がよく(後述する実施例の(4) 欄参照)、この点でも耐焼き付き性が向上している(実施例の(5) ,(6) 欄参照)。
また、窒化層Nでは、摩擦が大きくなる虞がないので、油膜切れも生じ難く、より一層焼き付き難くすることができる。ちなみに、無潤滑状態での摩擦係数は0.24であり、従来のタフトライド処理品の0.54に対して2分の1以下となっている。なお、実験条件は、HRIDON式摩耗試験機にて、試験片(SPCC材)にボール(SUJ2材)を荷重200gf、速度100mm/秒、距離20mmで10往復させ、その際の動摩擦係数を測定し、各測定値の最大値の平均値を求めた。
組立工程14では、窒化層Nの形成された一対の環板1aは、鋲2によって鋲着固定され、保持器1に組み立てられる。
このように本実施の形態の保持器1によれば、以下の作用効果を奏するものである。
保持器1は、鋼板製であるので、温度の高い環境でも、合成樹脂性の保持器に比べて、安心して使用することができる。例えば、エンジン等で使用される軸受でも使用できる。
また、窒化層Nは、以下詳述するように、強度の向上や摩耗防止を図ることができる上に、潤滑性を向上できるという利点もある。
特に、本実施の形態の窒化層Nは、均一に緻密に形成されているので、多孔質の部分がある従来の窒化層に比べて、表面がより一層硬く、耐摩耗性が良好である。
また、保持器1では、表面の硬い窒化層Nによって鋼板の機械的強度が改善される上に、内部の窒化されていない鋼板の部分によって柔軟性、靱性が維持されるため、耐衝撃性を備えて、保持器としての強度がより一層向上する。従って、この保持器1を備えた軸受Aの回転時に、保持器1が、転動体3から衝撃を受けても、衝撃に耐えることができ、切損する虞もなく、実用に適した保持器とすることができる。特に、本発明の製造方法によって形成された窒化層Nは、従来のタフトライド処理品に比べて、素材中心部分の硬さが低く(後述する実施例の(3) 欄参照)、その結果、内部の柔軟性、靱性がより一層向上して衝撃に耐えることができる。なお、ここでの保持器としての強度とは、単純な形状の試験片を測定して求められる材料自体の機械的強度でなく、保持器を実際に使用した際の強度であって、材料自体の強度に、柔軟性、靱性、耐衝撃性等が加味された強度である。
また、本実施の形態では、窒化層Nは、ふっ化処理12により酸化物が確実に除去された表面に、緻密に、且つむらなく均一に、且つ十分に形成されているので、潤滑油を表面に保持でき、油膜が切れることもなく、良好な潤滑性を維持できる。一方、従来のタフトライド処理による窒化層は、酸化物が残った表面に形成されており、この酸化物の残った表面には十分に形成されなかったので、不十分な窒化層であり、且つクラックが存在していたので、油膜が切れることがあった(後述する実施例の(1) ,(4) 欄参照)。
また、本発明の保持器1では、表面の窒化層自身が潤滑性を向上する効果を、緻密、且つ均一、且つ十分な窒化層Nとすることによって、より一層向上させることができるので、潤滑が行われ難い状況でも、上述の効果を高く維持できる。従って、潤滑が行われ難い状況の生じ易い用途、例えば、二輪車用2サイクルエンジンのクランク軸受に、この保持器1を適用すると、顕著な効果がある。ところで、潤滑性を向上する場合でも、油溜まりとなる凹部が表面に形成され、凹部に保持された潤滑剤が潤滑性を向上する場合には、潤滑が行われ難い状況では、効果を維持することが困難である。
また、本実施の形態の保持器の製造方法によれば、以下の作用効果を奏するものである。
窒化処理13は、ガス窒化であるので、塩浴窒化のような環境汚染の心配がない。
また、従来の製造方法では、窒化処理の際の480℃〜700℃の温度域で、鋼材中のCr,Mn,Si,Al等の金属元素が殆ど酸化され、鋼材の表面に粒界酸化物が形成されていた。この粒界酸化物が障害となって、窒化処理が阻害され、その結果、鋼材の表面に窒化層を安定して形成できないでいた。これに対して、本発明では、ふっ化処理12で確実に酸化物を除去できるので、一定の窒化層Nを安定して形成することができる。窒化層の硬さも、従来のタフトライド処理品と同等で、表面硬さはビッカース硬さ450HVを維持している(後述する実施例(2) 参照)。
また、窒化処理13は、ガス窒化であるので、反応ガスが活発に動き回り、被処理品表面に窒素分子が万遍なく行き渡り、入り込んだ部分にも、窒化層Nを均一に形成することができる。例えば、凹湾部1bの内周面や端縁部等にも、窒化層Nが形成される。従って、保持器全体として耐摩耗性が良好である。
また、従来、ガス窒化の場合、熱伝達が遅く、被処理品の表面が十分に活性化するために長時間を要する場合があった。一方、本発明の方法では、被処理品の表面に形成された金属ふっ化膜は、窒化温度T2では、十分に活性化されているので、窒素は速やかに金属に浸透して、長時間をかけずに十分な窒化層Nが形成される。
また、上述のように、窒化温度T2を、従来の窒化層形成時に被処理品を保持する温度よりも低くできるので、熱変形等の熱による影響も少なくすることができる。
なお、本発明の保持器及びその製造方法は、プレス成形された波形保持器以外にも、もみ抜き保持器や冠形打抜き保持器等に適用することができる。また、材質も炭素鋼に限定されず、ステンレス鋼や工具鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼にも適用できる。
また、上述の実施の形態では、保持器としての組立は、環板1aを窒化処理した後に行われていたが、これには限定されない。例えば、形成工程11の後に組立工程14を行ない、その後、組み立てられた保持器を被処理品として、ふっ化処理12及び窒化処理13を行ってもよい。
また、本発明の軸受用保持器及びその製造方法は、上述の玉軸受以外にも、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、球面ころ軸受、針状ころ軸受等の種々の転がり軸受用の、あらゆる形状の保持器に適用することができる。
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。
上述の本発明の軸受用保持器の製造方法により製作した保持器1の分析及び試験を行った。その結果を説明する。また、比較例として、従来の保持器の分析及び試験を同様に行った。比較例の保持器は、ふっ化処理せずに、従来の方法で酸化物を除去して、塩浴窒化した保持器である。
(1) 表面状態
[分析方法]
図8の斜視図に示すように、保持器1のポケットPを形成する部分の表面S1(転動体と接する部分)と、表面近傍の断面S2とを、走査形電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM─5400)を用いて分析した。
[結果]
得られた顕微鏡像を図4〜図7に示す。図4は、実施例の保持器1の窒化層N表面の金属組織を表す写真である。図5は、比較例の保持器の窒化層表面の金属組織を表す写真である。図6は、実施例の保持器1の窒化層Nの断面の金属組織を表す写真である。図7は、比較例の保持器の窒化層の断面の金属組織を表す写真である。なお、図4〜図7は、倍率5000倍で得られた像を撮影したものであり、各図に寸法を示す尺度が写し込まれている。また、図6及び図7では、中央部から下方に表された白い部分が、保持器であり、それよりも上方に表された黒い部分は、撮影用部材である。
実施例の窒化層N表面の粒子は、図4に表されているように、平均粒子径が1μm以下の微細な粒子である。また、その粒子の大きさもほぼ均一である。また、表面に大きな起伏は認められない。これらのことは、図6にも示されている。また、図6に示されている表面近傍の状況から、表面は緻密に形成されていることが判る。
一方、比較例の窒化層表面では、図5に表されているように、粒子の大きさは様々で、粒子径が5μm程度のものも認められる。また、表面の凹凸は、実施例よりも大きく、また、図7では表面から内部にかけてクラックも認められる。
(2) 表面硬さ:
実施例の保持器の表面硬さを、ビッカース硬さで測定した。測定位置は、図8に示す保持器のポケットPを形成する部分の表面S1である。
[結果]
実施例の平均硬さ:619HV(試験荷重25gf)。
平均硬さ:451HV(試験荷重50gf)。
平均硬さ:370HV(試験荷重100gf)。
(3) 断面の硬さ:
実施例の保持器の硬さを、表面からの距離の異なる複数箇所の断面位置で測定した。同様に、比較例についても測定した。なお、ビッカース硬さの試験荷重は、100gfである。
[結果]
図13は、保持器の硬さと、表面からの距離との関係を示すグラフである。図13には、線Ha(─○─)で実施例を、線Hb(─■─)で比較例を示し、縦軸に硬さをビッカース硬さ(HV)で示し、横軸に表面からの距離(μm)を示す。
実施例の窒化層Nは、表面近傍で硬さ約450HVであり、比較例の窒化層とほぼ同等である。また、実施例の窒化層Nは、表面から内部寄りの部分で、比較例の窒化層よりも硬さが低い。このことから、実施例の窒化層Nは、表面が硬く内部が柔らかい2層硬度分布を有し、しかも、実施例は、比較例よりも表面と内部との硬度差が大きいことがわかる。
従って、実施例は、比較例よりも良好な耐衝撃性を有すると考えられる。
(4) 油の保持性
[試験方法]
実施例及び比較例の保持器表面の油の保持性を試験した。すなわち、平板状の試験片を作成し、作成した試験片の表面に、実施例に形成されたものと同様の窒化層及び比較例と同様の窒化層を形成した。各試験片の窒化層の表面に、潤滑油0.01ccを滴下する。滴下前の表面と、滴下後1時間を温度150℃で経過した表面とを、レーザ顕微鏡で比較し、表面の油膜状況を測定する。
[結果]
観察された顕微鏡像を図9〜図12に示す。図9は、実施例の窒化層N表面の金属組織を表す写真であり、油滴下前の状態である。図10は、実施例の窒化層N表面の金属組織を表す写真であり、油滴下後の状態である。図11は、比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真であり、油滴下前の状態である。図12は、比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真であり、油滴下後の状態である。図9〜図12は、倍率500倍で得られた像を撮影したものである。
実施例の窒化層Nでは、図10に示されているように、潤滑油の存在を示す縞模様が全体に認められ、油膜が表面に保持されていることが判る。なお、このことは、滴下前の図9と滴下後の図10とを比較するとより一層明瞭である。
一方、比較例の窒化層では、図11と図12とで差は少なく、また図12にも縞模様は少ないので、油膜が充分に保持されていないことが判る。
従って、実施例の窒化層Nは、比較例に比べて潤滑油の保持性に優れていることが判る。
(5) 耐焼き付き性(A):
次に、耐焼き付き性の試験結果を説明する。
上述の保持器1を軸受に適用して、下記条件下で寿命を測定した。ここでの寿命は、潤滑が停止された状態で、焼き付きが生じるまでの時間である。
また、比較例として、従来の保持器の寿命を、同様にして測定した。
[試験条件]
適用した軸受:深溝形玉軸受(呼び番号6305)。
ラジアル荷重:200Kgf。
回転数 :11000rpm。
潤滑条件 :回転前に、2サイクルエンジン用潤滑油を0.01cc滴下。
[試験結果]
本発明実施品:平均寿命38.5分。
比較例 :平均寿命18.6分。
このように、本発明の保持器は、殆ど無潤滑に近い過酷な条件下でも、従来品に比べて約2倍の寿命を有している。
(6) 耐焼き付き性(B):
(5) の軸受を、さらに過酷な条件を課して寿命を測定した。
[試験条件]
ラジアル荷重:400Kgf。
回転数 :11400rpm。
潤滑条件 :回転前に2サイクルエンジン用潤滑油を0.005cc滴下。
[試験結果]
本発明実施品:平均寿命6.1分。
比較例 :平均寿命3.9分。
このように、本発明の保持器は、さらに過酷な条件下でも、従来品に比べて約1.6倍の寿命を有している。
なお、これら(5) ,(6) の試験は、通常の使用状態で想定されない過酷な条件が課された加速試験である。従って、本発明の保持器は、通常の使用で焼き付くことはない。
本発明にかかる軸受用保持器の斜視図である。 図1の軸受用保持器を備えた軸受の断面図である。 本発明の軸受用保持器の製造方法の概略工程図である。 本発明の保持器の窒化層表面の金属組織を表す写真である。 比較例の保持器の窒化層表面の金属組織を表す写真である。 本発明の保持器の窒化層の断面の金属組織を表す写真である。 比較例の保持器の窒化層の断面の金属組織を表す写真である。 図4〜図7の観察位置を説明するための保持器の斜視図である。 実施例の窒化層表面の金属組織を表す写真であり、油滴下前の状態を示す。 実施例の窒化層表面の金属組織を表す写真であり、油滴下後の状態を示す。 比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真であり、油滴下前の状態を示す。 比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真であり、油滴下後の状態を示す。 実施例と比較例の保持器の硬さと、表面からの距離との関係を示すグラフであり、縦軸に硬さをビッカース硬さ(HV)で示し、横軸に表面からの距離(μm)を示し、線Haで実施例の場合を示し、線Hbで比較例の場合を示す。
符号の説明
1 保持器
N 窒化層

Claims (1)

  1. 窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層が、鋼の表面から内側に向かって形成され、窒化層は、表面が硬く内部が柔らかい2層硬度分布を有することを特徴とする鋼製軸受用保持器。
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