JP2004346343A - 高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法 - Google Patents
高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】鉄系素材からなる部品に高耐蝕性を有する均一なメッキ皮膜を形成できる高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法を提供する。
【解決手段】鉄系素材からなる部品の前処理をすべてアルカリ浴を用いて行う。最初にアルカリ脱脂剤を用いたアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ脱脂を行ったのち十分な水洗を行う。次に、アルカリ系洗浄剤によるアルカリ表面調整を行う。次にジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行う。上記前処理ののち、無電解ニッケルメッキ液により高耐蝕性を有する無電解ニッケルメッキ皮膜を形成する。
【選択図】 なし
【解決手段】鉄系素材からなる部品の前処理をすべてアルカリ浴を用いて行う。最初にアルカリ脱脂剤を用いたアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ脱脂を行ったのち十分な水洗を行う。次に、アルカリ系洗浄剤によるアルカリ表面調整を行う。次にジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行う。上記前処理ののち、無電解ニッケルメッキ液により高耐蝕性を有する無電解ニッケルメッキ皮膜を形成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄系素材からなる部品に、高耐蝕性を有するニッケルメッキを施すことができる高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄系素材は、安価であるため、種々の用途に広く用いられている。特に、SUMやSPCC等の鉄系素材からなる部品は、表面に多数の微細な欠陥(凹部)を有し、耐蝕性が劣る。鉄系素材からなる部品の耐蝕性を向上させるため、ニッケル電気メッキ、溶融亜鉛メッキ等の各種メッキが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、鉄系素材からなる形状の複雑な部品(例えば、ローレット加工部、ねじ部等を有する部品)の場合、ニッケル電気メッキや溶融亜鉛メッキでは、均一なメッキ層を形成して耐蝕性を高めることが困難であった。一方、無電解ニッケルメッキは、従来その前処理として酸による処理を行うものであり、均一なメッキ層を形成できるものの、耐蝕性が十分でなく、早期に錆が生じてしまうという未解決の課題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、鉄系素材からなる部品に高耐蝕性を有する均一なメッキ皮膜を形成できる高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法は、鉄系素材からなる部品を前処理したのち無電解ニッケルメッキを施す無電解ニッケルメッキ方法において、前記前処理は、アルカリ浴による洗浄を行ったのち水洗する工程と、ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、前記アルカリ浴による洗浄は、水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダとトリエタノールアミンとを少なくとも含むアルカリ液を用いてもよい。
【0007】
さらに、前記アルカリ浴による洗浄は、水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダとトリエタノールアミンとを少なくとも含む液による洗浄と、トリエタノールアミンを含まない水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダからなる液による洗浄とからなるものとしてもよい。
【0008】
また、前記無電解ニッケルメッキは、硫酸ニッケル六水和物と、オキシカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸のうちの少なくとも2種以上の酸と、次亜リン酸ナトリウム一水和物と、アンモニア水、水酸化ナトリウムまたはカリウムのいずれかと、応力緩和剤と、界面活性剤とからなるメッキ液を用いてもよい。
【0009】
【作用】
鉄系素材からなる部品に対し、アルカリ浴による洗浄を行ったのち水洗する工程と、ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄を行うことにより、従来の無電解ニッケルメッキ方法のように、メッキ前に酸処理を行う場合に比較して素地の粗化やスマットが発生しない。また、メッキ液との反応が早くなり、マイクロピットの少ない緻密なメッキ皮膜が形成され、付き廻り性も向上するため、耐蝕性が向上する。
【0010】
【発明の実施の形態】
鉄系素材からなる部品は、上述したように前処理に、酸による前処理を行うと、素地の粗化やスマットが発生する。そこで試行錯誤の結果、鉄系素材からなる部品に対し、前処理をすべてアルカリ性で行うと高耐蝕性を有する無電解ニッケルメッキ皮膜を形成できるという知見を得た。
【0011】
本発明は上記知見に基いてなされたものであって、鉄系素材からなる部品の前処理をすべてアルカリ浴を用いて行う。最初に高温タイプのアルカリ脱脂剤を用いたアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ脱脂を行ったのち十分な水洗を行い、ついで中温〜高温タイプのアルカリ脱脂剤を用いたアルカリ浴による洗浄を行ったのち十分な水洗を行う。
【0012】
次に表面層にある酸化物についてアルカリ系の洗浄剤を用いて錆取りを行う。この際に用いる洗浄剤としては、水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダとトリエタノールアミンとを少なくとも含む液を用いる。
【0013】
次にアミン化合物を取り除くため、アルカリ系の洗浄剤を用いてアルカリ表面調整を行う。
【0014】
この際に用いる洗浄剤としてはトリエタノールアミンを含まない水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダからなる液を用いる。
【0015】
次に、ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行う。
【0016】
上記前処理ののち、無電解ニッケルメッキ液により高耐蝕性を有する無電解ニッケルメッキ皮膜を形成する。
【0017】
無電解ニッケルメッキ液は、ニッケルイオン、錯化剤、還元剤を含む従来のメッキ液に対し、さらに、応力緩和剤、界面活性剤を加えることにより、メッキ皮膜の内部応力が6ターンまで弱い圧縮応力を維持し、付き廻り性も良好となり、耐蝕性が向上する。また、錯化剤の減量と界面活性剤の含有により外観も良好である。
【0018】
(実施例1)
鉄系素材からなる部品として、(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0019】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための1回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0020】
本工程における1回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0021】
(2)鉱物油、挽き物油等を除去するための2回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0022】
本工程における2回目のアルカリ脱脂は、中温〜高温タイプのアルカリ脱脂剤(ガルバ100、ヘンケルジャパン(株)製))を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0023】
(3)アルカリ浴で錆取りを行うためのアルカリ表面調整、つまりアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0024】
本工程におけるアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0025】
(4)上記(3)のアルカリ脱錆で用いたアミン化合物を除去するためのアルカリ表面調整を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0026】
本工程におけるアルカリ表面調整は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0027】
(5)ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行った。
【0028】
本工程におけるアルカリ活性は、成分が、ジエタノールアミン10g/L〜80g/L、好ましくは20g/L〜60g/L、水酸化ナトリウム10g/L〜70g/L、好ましくは20g/L〜50g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0029】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0030】
本工程における無電解ニッケルメッキは、成分が、ニッケルイオンと、そのニッケルイオンの錯化剤と、ニッケルイオンの還元剤と、PH調整剤とを含むメッキ液において、ニッケルイオンの供給源として硫酸ニッケル六水和物を用い、ニッケルイオンの錯化剤としてオキシカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸のうちから少なくとも2種以上を用い、ニッケルイオンの還元剤として次亜リン酸ナトリウム一水和物を用い、PH調整剤としてアンモニア水、水酸化ナトリウムまたはカリウムを用い、PH4.6を一定に維持し、応力緩和剤および界面活性剤を含むことを特徴とする。メッキ液の組成は、次のとおりである。
【0031】
(メッキ液の組成)
ニッケルイオン 0.08〜0.10mol/l
錯化剤 0.2〜0.3mol/l
還元剤 0.28〜0.34mol/l
応力緩和剤 0.01〜0.03ppm
界面活性剤 1.0〜3.0ppm
【0032】
上記メッキ液を用い、液温は85℃〜95℃、メッキ時間は15〜25分とした。評価結果は、表1、表2に示すとおり、すべて良好であった。
【0033】
(参考例1)
鉄系素材(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0034】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するためのアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0035】
本工程におけるアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0036】
(2)鉱物油、挽き物油等を除去するための低温から中温タイプの中性脱脂(酸脱脂)を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0037】
本工程における中性脱脂は、中温から高温タイプの中性脱脂剤(バンライズD−20、常盤化学(株))を用い、液温は30°〜50℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0038】
(3)アルカリ浴で錆取りを行うためのアルカリ表面調整、つまりアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0039】
本工程におけるアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0040】
(4)上記(3)のアルカリ脱錆で用いたアミン化合物を除去するためのアルカリ表面調整を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0041】
本工程におけるアルカリ表面調整は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0042】
(5)酸性浴で活性化を行うための酸活性を行った。
【0043】
本工程における酸活性は、成分が塩酸を1N液を用い、液温は常温、浸漬時間は1分〜2分とした。
【0044】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに対し、上述した実施例1と同様に無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0045】
評価結果は、表1のとおりで、耐蝕性がレイティングナンバー8未満であった。
【0046】
(実施例2)
鉄系素材(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0047】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するためのアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0048】
本工程におけるアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0049】
(2)アルカリ浴で錆取りを行うための1回目のアルカリ表面調整、つまり1回目のアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0050】
本工程における1回目のアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0051】
(3)アルカリ浴で錆取りを行うための2回目のアルカリ表面調整、つまり2回目のアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0052】
本工程における2回目のアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0053】
(4)上記(3)のアルカリ脱錆で用いたアミン化合物を除去するためのアルカリ表面調整を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0054】
本工程におけるアルカリ表面調整は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0055】
(5)ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行った。
【0056】
本工程におけるアルカリ活性は、成分が、ジエタノールアミン10g/L〜80g/L、好ましくは20g/L〜60g/L、水酸化ナトリウム10g/L〜70g/L、好ましくは20g/L〜50g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0057】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに対し、上記実施例1と同様に無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0058】
評価結果は、表1のとおりで、耐蝕性がレイティングナンバー8程度であった。
【0059】
(実施例3)
鉄系素材(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0060】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための1回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0061】
本工程における1回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0062】
(2)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための2回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0063】
本工程における2回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0064】
(3)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための3回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0065】
本工程における3回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0066】
(4)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための4回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0067】
本工程における4回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0068】
(5)ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行った。
【0069】
本工程におけるアルカリ活性は、成分が、ジエタノールアミン10g/L〜80g/L、好ましくは20g/L〜60g/L、水酸化ナトリウム10g/L〜70g/L、好ましくは20g/L〜50g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0070】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに対し、上記実施例1と同様に無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0071】
評価結果は、表1のとおりで、耐蝕性はレイティングナンバー8程度であった。
【0072】
(実施例4)
鉄系素材(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0073】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための1回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0074】
本工程における1回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0075】
(2)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための2回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0076】
本工程における2回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0077】
(3)アルカリ浴で錆取りを行うためのアルカリ表面調整、つまりアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0078】
本工程におけるアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は60℃〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0079】
(4)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するためのアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0080】
本工程におけるアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0081】
(5)ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行った。
【0082】
本工程におけるアルカリ活性は、成分が、ジエタノールアミン10g/L〜80g/L、好ましくは20g/L〜60g/L、水酸化ナトリウム10g/L〜70g/L、好ましくは20g/L〜50g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0083】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに対し、上記実施例1と同様にして無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0084】
評価結果は、表1のとおりで、耐蝕性はレイティングナンバー8程度であった。
【0085】
上述した実施例1〜実施例4(参考例1を含む)によって得られた無電解ニッケルメッキが施されたシャフトについて、耐蝕性について評価を行った結果を表1に示す。
【0086】
ここで、耐蝕性については、無電解ニッケルメッキ後に、塩水噴霧試験(5%NaCl・35℃・3時間)を行ったのち、レイティングナンバー法にて評価した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
(比較例1)
上記実施例1と同様の前処理を行ったのち、圧縮応力から引張り応力に変わるタイプのメッキ液を用いて無電解ニッケルメッキを施した。
【0090】
メッキ液は、ニッケルイオンとそのニッケルイオンの錯化剤と、ニッケルイオンの還元剤と、PH調整剤を含み、PH4.7からせり上がって行くタイプである。メッキ液の組成は、つぎのとおりである。
【0091】
(メッキ液の組成)
ニッケルイオン 0.08〜0.10mol/l
錯化剤 0.3〜0.4mol/l
還元剤 0.28〜0.34mol/l
評価結果は、表3に示すとおりである。
【0092】
【表3】
【0093】
(比較例2)
上記参考例1と同様の前処理を行ったのち、上記実施例1と同様のメッキ液を用いて、無電解ニッケルメッキを施した。
【0094】
評価結果は、表4に示すとおりである。
【0095】
【表4】
【0096】
(比較例3)
上記参考例1と同様の前処理を行ったのち、上記比較例1と同様のメッキ液を用いて無電解ニッケルメッキを施した。
【0097】
評価結果は、表5に示すとおりである。
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、鉄系素材からなる部品に無電解ニッケルメッキを施すには、メッキ前処理をすべてアルカリ性で行い、メッキ液については従来のメッキ液であるニッケルイオン、錯化剤、還元剤に加え、応力緩和剤、界面活性剤を加えることにより、次のような効果を奏する。
【0101】
応力が6ターンまで弱い圧縮応力を維持し、耐蝕性に寄与し、付き廻り性を向上させ耐蝕性に寄与し、錯化剤の減量と界面活性剤の含有により外観に寄与している。
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄系素材からなる部品に、高耐蝕性を有するニッケルメッキを施すことができる高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄系素材は、安価であるため、種々の用途に広く用いられている。特に、SUMやSPCC等の鉄系素材からなる部品は、表面に多数の微細な欠陥(凹部)を有し、耐蝕性が劣る。鉄系素材からなる部品の耐蝕性を向上させるため、ニッケル電気メッキ、溶融亜鉛メッキ等の各種メッキが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、鉄系素材からなる形状の複雑な部品(例えば、ローレット加工部、ねじ部等を有する部品)の場合、ニッケル電気メッキや溶融亜鉛メッキでは、均一なメッキ層を形成して耐蝕性を高めることが困難であった。一方、無電解ニッケルメッキは、従来その前処理として酸による処理を行うものであり、均一なメッキ層を形成できるものの、耐蝕性が十分でなく、早期に錆が生じてしまうという未解決の課題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、鉄系素材からなる部品に高耐蝕性を有する均一なメッキ皮膜を形成できる高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法は、鉄系素材からなる部品を前処理したのち無電解ニッケルメッキを施す無電解ニッケルメッキ方法において、前記前処理は、アルカリ浴による洗浄を行ったのち水洗する工程と、ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、前記アルカリ浴による洗浄は、水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダとトリエタノールアミンとを少なくとも含むアルカリ液を用いてもよい。
【0007】
さらに、前記アルカリ浴による洗浄は、水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダとトリエタノールアミンとを少なくとも含む液による洗浄と、トリエタノールアミンを含まない水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダからなる液による洗浄とからなるものとしてもよい。
【0008】
また、前記無電解ニッケルメッキは、硫酸ニッケル六水和物と、オキシカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸のうちの少なくとも2種以上の酸と、次亜リン酸ナトリウム一水和物と、アンモニア水、水酸化ナトリウムまたはカリウムのいずれかと、応力緩和剤と、界面活性剤とからなるメッキ液を用いてもよい。
【0009】
【作用】
鉄系素材からなる部品に対し、アルカリ浴による洗浄を行ったのち水洗する工程と、ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄を行うことにより、従来の無電解ニッケルメッキ方法のように、メッキ前に酸処理を行う場合に比較して素地の粗化やスマットが発生しない。また、メッキ液との反応が早くなり、マイクロピットの少ない緻密なメッキ皮膜が形成され、付き廻り性も向上するため、耐蝕性が向上する。
【0010】
【発明の実施の形態】
鉄系素材からなる部品は、上述したように前処理に、酸による前処理を行うと、素地の粗化やスマットが発生する。そこで試行錯誤の結果、鉄系素材からなる部品に対し、前処理をすべてアルカリ性で行うと高耐蝕性を有する無電解ニッケルメッキ皮膜を形成できるという知見を得た。
【0011】
本発明は上記知見に基いてなされたものであって、鉄系素材からなる部品の前処理をすべてアルカリ浴を用いて行う。最初に高温タイプのアルカリ脱脂剤を用いたアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ脱脂を行ったのち十分な水洗を行い、ついで中温〜高温タイプのアルカリ脱脂剤を用いたアルカリ浴による洗浄を行ったのち十分な水洗を行う。
【0012】
次に表面層にある酸化物についてアルカリ系の洗浄剤を用いて錆取りを行う。この際に用いる洗浄剤としては、水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダとトリエタノールアミンとを少なくとも含む液を用いる。
【0013】
次にアミン化合物を取り除くため、アルカリ系の洗浄剤を用いてアルカリ表面調整を行う。
【0014】
この際に用いる洗浄剤としてはトリエタノールアミンを含まない水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダからなる液を用いる。
【0015】
次に、ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行う。
【0016】
上記前処理ののち、無電解ニッケルメッキ液により高耐蝕性を有する無電解ニッケルメッキ皮膜を形成する。
【0017】
無電解ニッケルメッキ液は、ニッケルイオン、錯化剤、還元剤を含む従来のメッキ液に対し、さらに、応力緩和剤、界面活性剤を加えることにより、メッキ皮膜の内部応力が6ターンまで弱い圧縮応力を維持し、付き廻り性も良好となり、耐蝕性が向上する。また、錯化剤の減量と界面活性剤の含有により外観も良好である。
【0018】
(実施例1)
鉄系素材からなる部品として、(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0019】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための1回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0020】
本工程における1回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0021】
(2)鉱物油、挽き物油等を除去するための2回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0022】
本工程における2回目のアルカリ脱脂は、中温〜高温タイプのアルカリ脱脂剤(ガルバ100、ヘンケルジャパン(株)製))を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0023】
(3)アルカリ浴で錆取りを行うためのアルカリ表面調整、つまりアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0024】
本工程におけるアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0025】
(4)上記(3)のアルカリ脱錆で用いたアミン化合物を除去するためのアルカリ表面調整を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0026】
本工程におけるアルカリ表面調整は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0027】
(5)ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行った。
【0028】
本工程におけるアルカリ活性は、成分が、ジエタノールアミン10g/L〜80g/L、好ましくは20g/L〜60g/L、水酸化ナトリウム10g/L〜70g/L、好ましくは20g/L〜50g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0029】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0030】
本工程における無電解ニッケルメッキは、成分が、ニッケルイオンと、そのニッケルイオンの錯化剤と、ニッケルイオンの還元剤と、PH調整剤とを含むメッキ液において、ニッケルイオンの供給源として硫酸ニッケル六水和物を用い、ニッケルイオンの錯化剤としてオキシカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸のうちから少なくとも2種以上を用い、ニッケルイオンの還元剤として次亜リン酸ナトリウム一水和物を用い、PH調整剤としてアンモニア水、水酸化ナトリウムまたはカリウムを用い、PH4.6を一定に維持し、応力緩和剤および界面活性剤を含むことを特徴とする。メッキ液の組成は、次のとおりである。
【0031】
(メッキ液の組成)
ニッケルイオン 0.08〜0.10mol/l
錯化剤 0.2〜0.3mol/l
還元剤 0.28〜0.34mol/l
応力緩和剤 0.01〜0.03ppm
界面活性剤 1.0〜3.0ppm
【0032】
上記メッキ液を用い、液温は85℃〜95℃、メッキ時間は15〜25分とした。評価結果は、表1、表2に示すとおり、すべて良好であった。
【0033】
(参考例1)
鉄系素材(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0034】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するためのアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0035】
本工程におけるアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0036】
(2)鉱物油、挽き物油等を除去するための低温から中温タイプの中性脱脂(酸脱脂)を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0037】
本工程における中性脱脂は、中温から高温タイプの中性脱脂剤(バンライズD−20、常盤化学(株))を用い、液温は30°〜50℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0038】
(3)アルカリ浴で錆取りを行うためのアルカリ表面調整、つまりアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0039】
本工程におけるアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0040】
(4)上記(3)のアルカリ脱錆で用いたアミン化合物を除去するためのアルカリ表面調整を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0041】
本工程におけるアルカリ表面調整は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0042】
(5)酸性浴で活性化を行うための酸活性を行った。
【0043】
本工程における酸活性は、成分が塩酸を1N液を用い、液温は常温、浸漬時間は1分〜2分とした。
【0044】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに対し、上述した実施例1と同様に無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0045】
評価結果は、表1のとおりで、耐蝕性がレイティングナンバー8未満であった。
【0046】
(実施例2)
鉄系素材(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0047】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するためのアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0048】
本工程におけるアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0049】
(2)アルカリ浴で錆取りを行うための1回目のアルカリ表面調整、つまり1回目のアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0050】
本工程における1回目のアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0051】
(3)アルカリ浴で錆取りを行うための2回目のアルカリ表面調整、つまり2回目のアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0052】
本工程における2回目のアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0053】
(4)上記(3)のアルカリ脱錆で用いたアミン化合物を除去するためのアルカリ表面調整を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0054】
本工程におけるアルカリ表面調整は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは30g/L〜70g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0055】
(5)ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行った。
【0056】
本工程におけるアルカリ活性は、成分が、ジエタノールアミン10g/L〜80g/L、好ましくは20g/L〜60g/L、水酸化ナトリウム10g/L〜70g/L、好ましくは20g/L〜50g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0057】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに対し、上記実施例1と同様に無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0058】
評価結果は、表1のとおりで、耐蝕性がレイティングナンバー8程度であった。
【0059】
(実施例3)
鉄系素材(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0060】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための1回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0061】
本工程における1回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0062】
(2)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための2回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0063】
本工程における2回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0064】
(3)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための3回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0065】
本工程における3回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0066】
(4)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための4回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0067】
本工程における4回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0068】
(5)ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行った。
【0069】
本工程におけるアルカリ活性は、成分が、ジエタノールアミン10g/L〜80g/L、好ましくは20g/L〜60g/L、水酸化ナトリウム10g/L〜70g/L、好ましくは20g/L〜50g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0070】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに対し、上記実施例1と同様に無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0071】
評価結果は、表1のとおりで、耐蝕性はレイティングナンバー8程度であった。
【0072】
(実施例4)
鉄系素材(SUM24L)からなるシャフト(外径8mm、12mm)に対し、逐次下記(1)〜(6)の工程を実施して無電解ニッケルメッキを施した。
【0073】
(1)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための1回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0074】
本工程における1回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0075】
(2)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するための2回目のアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0076】
本工程における2回目のアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0077】
(3)アルカリ浴で錆取りを行うためのアルカリ表面調整、つまりアルカリ脱錆を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0078】
本工程におけるアルカリ脱錆は、成分が、グルコン酸ソーダ20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、トリエタノールアミン2g/L〜15g/L、好ましくは4g/L〜10g/L、水酸化ナトリウム20g/L〜90g/L、好ましくは40g/L〜60g/L、界面活性剤1g/L〜6g/L、好ましくは1g/L〜4g/Lのアルカリ浴を用い、液温は60℃〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0079】
(4)バフカス、粘りのある油、タップ油等を除去するためのアルカリ脱脂を行ったのち、十分な水洗を2回行った。
【0080】
本工程におけるアルカリ脱脂は、高温タイプのアルカリ脱脂剤(VJP6510、ヘンケルジャパン(株)製)を用い、液温は60°〜90℃、浸漬時間は3分〜8分とした。
【0081】
(5)ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄、つまりアルカリ活性を行った。
【0082】
本工程におけるアルカリ活性は、成分が、ジエタノールアミン10g/L〜80g/L、好ましくは20g/L〜60g/L、水酸化ナトリウム10g/L〜70g/L、好ましくは20g/L〜50g/Lのアルカリ浴を用い、液温は35℃〜70℃、浸漬時間は2分〜5分とした。
【0083】
(6)上記(1)〜(5)の前処理工程を終了した前記シャフトに対し、上記実施例1と同様にして無電解ニッケルメッキを行ったのち、十分な水洗を行い、ついで湯洗乾燥を行った。
【0084】
評価結果は、表1のとおりで、耐蝕性はレイティングナンバー8程度であった。
【0085】
上述した実施例1〜実施例4(参考例1を含む)によって得られた無電解ニッケルメッキが施されたシャフトについて、耐蝕性について評価を行った結果を表1に示す。
【0086】
ここで、耐蝕性については、無電解ニッケルメッキ後に、塩水噴霧試験(5%NaCl・35℃・3時間)を行ったのち、レイティングナンバー法にて評価した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
(比較例1)
上記実施例1と同様の前処理を行ったのち、圧縮応力から引張り応力に変わるタイプのメッキ液を用いて無電解ニッケルメッキを施した。
【0090】
メッキ液は、ニッケルイオンとそのニッケルイオンの錯化剤と、ニッケルイオンの還元剤と、PH調整剤を含み、PH4.7からせり上がって行くタイプである。メッキ液の組成は、つぎのとおりである。
【0091】
(メッキ液の組成)
ニッケルイオン 0.08〜0.10mol/l
錯化剤 0.3〜0.4mol/l
還元剤 0.28〜0.34mol/l
評価結果は、表3に示すとおりである。
【0092】
【表3】
【0093】
(比較例2)
上記参考例1と同様の前処理を行ったのち、上記実施例1と同様のメッキ液を用いて、無電解ニッケルメッキを施した。
【0094】
評価結果は、表4に示すとおりである。
【0095】
【表4】
【0096】
(比較例3)
上記参考例1と同様の前処理を行ったのち、上記比較例1と同様のメッキ液を用いて無電解ニッケルメッキを施した。
【0097】
評価結果は、表5に示すとおりである。
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、鉄系素材からなる部品に無電解ニッケルメッキを施すには、メッキ前処理をすべてアルカリ性で行い、メッキ液については従来のメッキ液であるニッケルイオン、錯化剤、還元剤に加え、応力緩和剤、界面活性剤を加えることにより、次のような効果を奏する。
【0101】
応力が6ターンまで弱い圧縮応力を維持し、耐蝕性に寄与し、付き廻り性を向上させ耐蝕性に寄与し、錯化剤の減量と界面活性剤の含有により外観に寄与している。
Claims (4)
- 鉄系素材からなる部品を前処理したのち無電解ニッケルメッキを施す無電解ニッケルメッキ方法において、
前記前処理は、
アルカリ浴による洗浄を行ったのち水洗する工程と、ジエタノールアミンを含むアルカリ浴による洗浄を行う工程と、を含むことを特徴とする高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法。 - 前記アルカリ浴による洗浄は、水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダとトリエタノールアミンとを少なくとも含むアルカリ液を用いることを特徴とする請求項1記載の高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法。
- 前記アルカリ浴による洗浄は、水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダとトリエタノールアミンとを少なくとも含む液による洗浄と、トリエタノールアミンを含まない水酸化ナトリウムとグルコン酸ソーダからなる液による洗浄とからなることを特徴とする請求項1記載の高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法。
- 前記無電解ニッケルメッキは、硫酸ニッケル六水和物と、オキシカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸のうちの少なくとも2種以上の酸と、次亜リン酸ナトリウム一水和物と、アンモニア水、水酸化ナトリウムまたはカリウムのいずれかと、応力緩和剤と、界面活性剤とからなるメッキ液を用いることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の高耐蝕性無電解ニッケルメッキ方法。
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