JP2004346245A - 導電性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル樹脂{(A)成分}とポリフェニレンエーテル樹脂{(B)成分}との合計100重量部に対し、
相溶化剤{(C)成分} 0.1〜10重量部、
耐衝撃改良材{(D)成分} 5〜30重量部、
導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル{(E)成分}0.1〜15重量部、
無機フィラー{(F)成分} 0〜100重量部を配合し、かつ
次の▲1▼〜▲3▼のスペックを全て満たすことを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
▲1▼面衝撃強度が23℃において50J以上
▲2▼線膨張係数が1×10−4K−1以下
▲3▼体積抵抗率が1×109 Ωcm以下
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、機械的強度特に面衝撃強度、寸法安定性、塗装性に優れ、かつ、導電性や帯電防止性等の電気的性質にも優れ、電気・電子機器のみならず自動車用外装部品にも適した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気絶縁性である熱可塑性樹脂に導電性物質を混合し、導電性や帯電防止性等の特性を発揮せることは広く行われており、この目的のために各種の導電性物質が提案されている。一般に用いられる導電性物質としては、イオン性界面活性剤、非イオン性の界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤等の有機化合物の他に、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉末、金属酸化物等の無機物等が挙げられる。特に、少量の導電性物質の混合で高い導電性を得るために、カーボンブラックが使用されている。
【0003】
自動車用外装部品に関しては、導電性を付与した樹脂成形品に電気を流し、それと反対の電荷を付加した塗料を吹き付ける「静電塗装」が行われている。これは、成形品表面と塗料とに反対の電荷を持たせることによって互いに引き合う性質を利用し、塗料の成形品表面への付着率を向上させたものである。
他方、例えば、OA機器や電子機器では小型軽量化や高集積化、高精度化が進み、これに伴い、電気電子部品への塵やほこりの付着を極力低減させるという、導電性樹脂に対する市場からの要求は年々多くかつ厳しくなってきている。例えば、半導体に使われるICチップ、ICトレーや、ウエハー、コンピューターに使われるハードディスクの内部部品等は、その要求が一層厳しく、帯電防止性を付与し、塵やほこりの付着を完全に防止することが必要である。そのためには最適導電性が必要であり、高すぎても低すぎても満足しない。また、電磁波シールド性の付与も導電性が要求され、例えば、ノートパソコンのハウジング、PDAのハウジング、パチンコ部品の基盤、カメラシャッター、携帯電話のハウジング等がある。
【0004】
このような用途には、従来、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等のブレンド物に導電性を付与した、導電性樹脂組成物が使用されている。しかしながら、樹脂組成物に優れた導電性を付与するためには、多量のカーボンブラックを配合する必要があるため、樹脂組成物の機械的強度や流動性が低下するという欠点があった。
【0005】
これらの欠点を解消した樹脂組成物として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド等からなる樹脂組成物の不連続相の島側にカーボンブラック等の導電性物質を選択的に添加することにより、成形加工性、表面外観が改良されると記載されている(特許文献1)が、本発明者らの実験によれば、体積抵抗率が不満足であることが分かった。
【0006】
さらに、カーボンブラック等の充填剤を含有する熱可塑性樹脂(A)より溶融粘度が低く、(A)と相溶性があり充填剤の含有割合が熱可塑性樹脂(A)より少ない熱可塑性樹脂(B)を、(A)と(B)を一回の混練りにより射出成形することを特徴とする表面光沢の良好な導電性成形品の製造方法において、熱可塑性樹脂(A)及び(B)は、通常の射出成形で使用される熱可塑性樹脂であって、なかでもポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル−スチレン−共役ジエン共重合樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか又はそれらの混合物を好適に使用すること(特許文献2)が開示されている。
また、カーボンブラック、炭素繊維等の制電性充填材を含有する熱可塑性樹脂(A)と、それより溶融粘度が高く制電性充填材の含有割合が(A)より少ない熱可塑性樹脂(B)とから射出成形することを特徴とする制電性成形品の製造方法において、熱可塑性樹脂(A)及び(B)は、射出成形できるものであれば特に限定されず、なかでも、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル−スチレン−共役ジエン共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンの混練混合物等のポリマーアロイ等を好適に使用すること(特許文献3)が開示されている。しかし、それらの製造方法では熱可塑性樹脂(A)と(B)の混練不足のためか、射出成形時に溶融粘度の低い樹脂が樹脂の流動末端に層状に存在して、層状剥離が生じやすく、特に、面衝撃強度の低い成形品しか得ることができなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−204305号公報
【特許文献2】特開2000−317971号公報
【特許文献3】特開2002−248646号公報
【0008】
従来から衝撃強度の評価には、アイゾット衝撃強度やシャルピー衝撃強度が重視されている。しかし、自動車用外装部品に要求される衝撃強度は、歪み速度との関係でアイゾット衝撃強度やシャルピー衝撃強度との相関性は低かった。また、一般的に自動車外板に要求される衝撃強度は、JIS K7124やISO7765で規定されている面衝撃強度と相関性が高いといわれているが、本発明者等の実験では満足できる結果は得られなかった。従って、自動車外板に適した樹脂組成物を開発するには、衝撃強度の評価法も再検討すべき大きな課題であった。
また、自動車外板に使用される樹脂組成物の線膨張係数は、鋼板とのすきまをなるべく小さくするためにも低くする必要があり、ICトレーやカメラシャッター等もその品質上、線膨張係数を低くする必要があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の諸欠点を解消した、導電性熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的として鋭意検討した結果、後記MEP法により適切な面衝撃強度の評価が可能となり、本発明の特定組成物に到達したものである。すなわち、本発明の目的は、流動性に優れると共に、少なくとも▲1▼面衝撃強度、▲2▼線膨張係数及び▲3▼体積抵抗率が特定の要求を満足する導電性熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、ポリエステル樹脂{(A)成分}とポリフェニレンエーテル樹脂{(B)成分}との合計100重量部に対し、相溶化剤{(C)成分}0.1〜10重量部、耐衝撃改良材{(D)成分}5〜30重量部、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル{(E)成分}0.1〜15重量部、無機フィラー{(F)成分}0〜100重量部を配合し、かつ次の▲1▼〜▲3▼のスペックを全て満たすことを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物に存する。
▲1▼面衝撃強度が23℃において50J以上(但し、試験法はMEP法による)
▲2▼線膨張係数が1×10−4K−1以下(但し、試験法はASTMD696による)
▲3▼体積抵抗率が1×109 Ωcm以下{但し、体積抵抗率Rは、平板試験片(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、該両端面間の抵抗値(RL:単位Ω)を測定し、次式より算出した。
R=RL×AL/L
(式中、ALは、試験片の断面積(単位cm2 )を、Lは、試験片の長さ(単位cm)を意味する。)}
【0011】
【発明の実施の形態】
(A)成分:ポリエステル樹脂
(A)成分のポリエステル樹脂としては、例えば、通常の方法に従って、ジカルボン酸類又はその誘導体類、例えば低級アルキルエステル、酸ハライド、酸無水物等と、グリコール類又は二価フェノール類とを縮合させた熱可塑性ポリエステル樹脂が挙げられる。ジカルボン酸類は、芳香族ジカルボン酸又は脂肋族ジカルボン酸のいずれでもよい。具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p,p´−ジカルボキシジフェニルスルホン、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシプロピオン酸、p−カルボキシフェノキシ酪酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸又は2,7−ナフタリンジカルボン酸、又はこれらカルボン酸の混合物が挙げられる。
【0012】
グリコール類は、脂肪族グリコール類、脂環族グルコール類又は芳香族グリコール類のいずれでもよい。脂肪族グリコール類としては、炭素数が2〜12個の直鎖アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテングリコール、1,6−ヘキセングリコール、1,12−ドデカメチレングリコール等が挙げられる。脂環族グルコール類としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。また、芳香族グリコール類としては、p−キシリレングリコールが挙げられ、二価フェノール類としては、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン又はこれら化合物のアルキル置換誘導体が挙げられる。
【0013】
他の好ましい熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ラクトンの開環重合によるポリエステル樹脂も挙げられる。例えば、ポリピバロラクトン、ポリ(ε一カプロラクトン)等である。さらに他の好ましいポリエステル樹脂としては、溶融状態で液晶を形成するポリマー(Thermotropic Liquid Crystal Polymer,TLCP)として現在市販されている、イーストマンコタック社のX7G、ダートコ社のXyday(ザイダー)、住友化学社のエコノール、セラニーズ社のベクトラ等の液晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0014】
上に挙げた種々のポリエステル樹脂中でも、本発明において(A)成分として好ましく用いられるのは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンシメチレンテレフタレート)(PCT)等の熱可塑性ポリエステル樹脂、前示の液晶性ポリエステル樹脂等であり、最も好ましいのはポリブチレンテレフタレート(PBT)である。(A)成分のポリエステル樹脂としては、温度30℃のフェノールとテトラクロロエタンとの1対1(重量比)混合溶媒に溶解して測定した固有粘度が、0.4〜1.5dl/gの範囲のものが好ましく、さらに好ましくは0.6〜1.3dl/gの範囲のものである。
【0015】
(B)成分:ポリフェニレンエーテル樹脂
(B)成分のポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記の式(2)で表される構造を有する単独重合体又は共重合体である。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、Q1 は、各々、ハロゲン原子、第一級若しくは第二級のアルキル基、アリール基、アミノアルキル基、ハロ炭化水素基、炭化水素オキシ基又はハロ炭化水素オキシ基を表し、Q2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、第一級若しくは第二級のアルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基又はハロ炭化水素オキシ基を表す)
【0018】
式(2)において、Q1 及びQ2 の第一級アルキル基の好適な例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2,3−ジメチルブチル基、2−,3−若しくは4−メチルペンチル基又はヘプチル基である。第二級アルキル基の好適な例は、イソプロピル基、sec−ブチル基又は1−エチルプロピル基である。多くの場合、Q1 はアルキル基又はフェニル基、特に炭素数が1〜4個のアルキル基であり、Q2 は水素原子であるポリフェニレンエーテル重合体又は共重合体が選ばれる。
【0019】
ポリフェニレンエーテル重合体又は共重合体の具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−メチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリエチルフェノール共重合体、2,6−ジエチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジプロピルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体等が挙げられる。
【0020】
好適なポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなるものである。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組合せからなるランダム共重合体である。多くの好適な、単独重合体又はランダム共重合体が、特許及び文献に記載されている。例えば、分子量、溶融粘度及び/又は耐衝撃強度等の特性を改良する分子構成部分を含むポリフェニレンエーテルもまた好適である。
【0021】
本発明で使用するポリフェニレンエーテル樹脂は、クロロホルム中、温度30℃で測定した固有粘度が0.2〜0.8dl/gの範囲のものが好ましい。固有粘度が0.2dl/g未満では樹脂組成物の耐衝撃性が不足し、0.8dl/gを超えると成形性が不満足である。上記範囲のなかでも好ましい固有粘度は、0.2〜0.7dl/gの範囲であり、さらに0.25〜0.6dl/gの範囲のものが特に好ましい。
【0022】
(C)成分:相溶化剤
(C)成分の相溶化剤とは、(A)成分と(B)成分とが、その混合組成物中において相溶化した状態、すなわちミクロ形態上は、いづれか一方の成分相が他方の成分相中にミクロンオーダーで均一分散した状態を達成させるために必要な機能をもつ物質であれば特に制限はない。具体的な相溶化剤としては、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ヒドロキシル基等の官能基を導入したポリスチレン系樹脂;ポリエステルとポリスチレンとのグラフト体;ポリエステル−ポリフェニレンエーテルとのグラフト体;有機亜リン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0023】
これら相溶化剤の中では、面衝撃強度及び体積抵抗率向上効果の点で、有機亜リン酸エステル化合物が好ましく、下記一般式(1)で示される有機亜リン酸エステル化合物が特に好ましい。下記一般式(1)で示される有機亜リン酸エステル化合物は、熱安定性が優れ、キレート状置換基と芳香族置換基を併せ持つ構造を有することでリン原子の周りの電子状態や、立体規制状態が制御された有機亜リン酸化合物である。この有機亜リン酸化合物が良好な相溶化剤となる機構については不明であるが、従来から、有機亜リン酸化合物をエステル縮合剤として用い、ヒドロキシ化合物とカルボン酸から直接エステルを合成する反応は知られており{Yamazaki,Higashi: Advances in Polymer Science,38,1(1981)}、この反応をポリフェニレンエーテルの末端ヒドロキシ基と飽和ポリエステルの末端カルボキシル基に適用することで相溶性を改良し、かつ、優れた物性を有する熱可塑性樹脂組成物が得られたものと推測される。
【0024】
【化3】
【0025】
(式中、nは、1又は2を表し、Arは、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30のアリール基を表し、Rは、nが1の場合、置換基を有していてもよい、炭素数2〜18のアルキレン基又はアリーレン基を表し、nが2の場合、置換基を有していてもよい、炭素数4〜18のアルキルテトライル基を表す。Arは各々同じでも異なっていてもよく、また、Ar及びRの置換基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はハロゲン原子を含む置換基であってもよい。)
ここで、Arの具体例としては、置換基を有しない炭素数6〜30のアリール基である、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等;置換基を有する炭素数6〜30のアリール基である、2−、3−若しくは4−メチルフェニル基、2,4−若しくは2,6−ジメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2−、3−若しくは4−エチルフェニル基、2,4−若しくは2,6−ジエチルフェニル基、2,3,6−トリエチルフェニル基、2−、3−若しくは4−tert−ブチルフェニル基、2,4−若しくは2,6−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル基、2−、3−若しくは4−ノニルフェニル基等が挙げられる。
【0026】
また、Rの具体例としては、nが1の場合、置換基を有していてもよい、炭素数2〜18のアルキレン基又はアリーレン基である、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基又はヘキサメチレン基;1,2−フェニレン基等が挙げられ、また、nが2の場合、ペンタエリスリトールに由来する次の一般式(3)で示される、置換基を有していてもよい、炭素数4〜18のアルキルテトライル基等が挙げられる。
【0027】
【化4】
【0028】
(式中、Qは、各々、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。同一炭素又は別の炭素と結合するQは、各々同じでも異なっていてもよい。)
【0029】
ここで、一般式(1)で示される有機亜リン酸エステル化合物の一例について、以下に使用する命名法を説明する。すなわち、前記一般式(1)で、nが2を表し、Arが3個の置換基を有する炭素数15のアリール基である、2,6−ジ−ter−ブチル−4−メチルフェニル基を表し、Rが上記一般式(3)で示される8個のQが全て水素原子である炭素数5のアルキルテトライル基を表す場合、有機亜リン酸エステル化合物の正式名称は、「3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン」と呼ばれるが、以下においては「ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト」と呼称する命名法に準拠する。
【0030】
前記一般式(1)で、nが1の場合の有機亜リン酸エステル化合物の具体例を挙げると、(フェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(4−メチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジメチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(4−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,3−プロパンジオール)ホスファイト、(フェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(4−メチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジメチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(4−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,2−エタンジオール)ホスファイト、(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)(1,4−ブタンジオール)ホスファイトを挙げることができる。
【0031】
また、前記一般式(1)で、nが2の場合の有機亜リン酸エステル化合物の具体例を挙げると、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−メチルフェニル)ペンタリスリトールジホスファイト、ビス(3−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,3,6−トリメチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(3−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ビフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジナフチルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0032】
これらのうち、より好ましい(C)成分(相溶化剤)の有機亜リン酸エステル化合物としては、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0033】
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これら有機亜リン酸エステル化合物の分解(加水分解や熱分解等)により生じた化合物を含んでいてもよい。
【0034】
(D)成分:耐衝撃改良材
(D)成分の耐衝撃改良材とは、(A)成分及び(B)成分のいずれよりも曲げ弾性率が小さい熱可塑性樹脂をいう。具体的には、ゴム状重合体であり、ASTM D882に準拠して測定した引張弾性率が、490MPa以下のものが好ましい。
【0035】
(D)成分としてのゴム状重合体は、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体(d1)、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(d2)、ポリオレフィン系ゴム状共重合体(d3)等が好ましいものとして挙げられる。
【0036】
ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体(d1)を構成するビニル芳香族化合物として、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等であり、中でも好ましいのは、スチレンである。また、共役ジエンとして、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。
【0037】
ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体(d1)は、ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと共役ジエン化合物重合体ブロックBとからなる。ブロックA及びブロックBの配列は、線状構造のもの、又は分岐構造(ラジアルテレブロック)のもののいずれでもよいが、線状構造のものが好ましく、A−B−A型のトリブロック構造のものが特に好ましく、ジブロック構造のものを含んでいてもよい。また、ブロックA及びブロックBの一部に、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとのランダム共重合に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。ブロック共重合体(d1)において、ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜80重量%の範囲が好ましく、15〜60重量%の範囲が特に好ましい。
【0038】
ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(d2)は、上記ブロック共重合体(d1)の水素添加によって得られ、その共役ジエン化合物重合体ブロックBにおいて、脂肪族性不飽和結合が水素添加により減少したブロック共重合体である。耐衝撃改良材としては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックAにおいて、ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合の約25%以下が水素添加されていてもよく、一方、ブロックBにおいて脂肪族性不飽和結合のうち、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0039】
これらビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体(d1)及びブロック共重合体の水素添加物(d2)は、その分子量の目安としてのトルエン溶液粘度(温度25℃、濃度15重量%)の値が30〜0.01Pa・sの範囲にあるものが好ましい。この溶液粘度が30Pa・sより大きいと、樹脂組成物の成形性が劣り、また0.01Pa・sより小さいと、樹脂組成物の機械的強度が低下し、いずれも好ましくない。溶液粘度のより好ましい範囲は、10〜0.03Pa・sである。
【0040】
ポリオレフィン共重合体系ゴム(d3)は、エチレン−α−オレフィン共重合体系ゴム、エチレン・ブテンを主成分とする無定形ランダム共重合体ゴム、これらに非共役ジエンを共重合させたもの等が挙げられる。エチレンとα−オレフィンの重量比は通常90:10〜20:80であり、好ましくは75:25〜40:60の範囲のものである。共重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等の炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の直鎖状のα−オレフィンである。また、非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0041】
上記のポリオレフィン共重合体系ゴム(d3)は、原料の単量体を、塩化バナジウム、バナジウムオキシクロリド等のバナジウム化合物と、トリエチルアルミニウムセスキクロリド等の有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用い、重合させることによって製造することができる。このよう様な触媒系によって製造されたエチレン・プロピレン共重合体系ゴムは、一般に、ランダム性が良好なものであり、結晶性はほとんど示さず、結晶化度は0〜20%の範囲となる。
【0042】
上記のポリオレフィン共重合体系ゴム(d3)は、他の不飽和化合物をグラフト重合させて変性させたものであってもよい。変性用に使用される他の不飽和化合物としては、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル、無水イタコン酸、フマル酸等のα,β−脂肪族不飽和ジカルボン酸又は誘導体、並びに、エンド−ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の脂環式不飽和ジカルボン酸及びそれらの誘導体;グリシジル基と(メタ)アクリレート基とを同一分子内に有する化合物、グリシジルオキシ基とアクリルアミド基を同一分子内に持つ化合物、ブチルグリシジルマレート、エポキシ基を有する脂環式不飽和単量体等の含エポキシ不飽和化合物が挙げられる。これら他の不飽和化合物を、前記のポリオレフィン共重合体系ゴム(d3)にグラフト重合させるには、パーオキサイドを使用する方法、電離放射線を照射する方法、紫外線を照射する方法等のいずれかによることができる。
【0043】
(E)成分:導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル
(E)成分の導電性カーボンブラックとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、200ml/100g以上のものが好ましく、300ml/100g以上のものがより好ましい。この様な物性を備えたカーボンブラックとしては、ペイント等に着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは違って、微細な粒子が連なった形態のものである。好ましい導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等が挙げられる。
また、(E)成分の中空炭素フィブリルとしては、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが実質的に同心的に配置されている、本質的に円柱状のフィブリルである。さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmの範囲が好ましい。
このような(E)成分の中空炭素フィブリルは、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4,663,230号明細書等に詳細に記載されている。中空炭素フィブリルの製法は、後者の米国特許明細書に詳細に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケル含有粒子等の遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素等の炭素含有ガスと、850〜1200℃の高温で接触させ、熱分解によって生じた炭素を、遷移金属を起点として、繊維状に成長させる方法が挙げられる。(E)成分の中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタルシス社が、グラファイト・フィブリルという商品名で販売しており、容易に入手することができる。
【0044】
(F)成分:無機フィラー
主に線膨張係数の改良のため使用される(F)成分の無機フィラーには、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク等がある。
(F)成分のガラス繊維は、通常熱可塑性樹脂に使用されているものであればいずれも使用できるが、無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。ガラス繊維の直径は、好ましくは6〜20μmであり、より好ましくは9〜14μmである。繊維径が6μm未満では補強効果が不充分となり易く、20μmを超えると製品外観に悪影響を与えやすい。ガラス繊維は、好ましくは、長さ1〜6mmにカットされたチョップドストランド、ガラスミルドファイバーは長さ0.01〜0.5mmに粉砕されて市販されているもののいずれを用いてもよく、両者を混合して用いてもよい。本発明で使用されるガラス繊維は、樹脂との密着性を向上させる目的で、アミノシラン、エポキシシラン等のカップリング剤等による表面処理、又は取扱い性を向上させる目的で、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等による集束処理を施して使用してもよい。
【0045】
(F)成分の炭素繊維は、一般に、アクリル繊維、石油又は炭素系特殊ピッチ、セルロース繊維、リグニン、等を原料として焼成によって製造されたものであり、耐炎質、炭素質、黒鉛質等種々のタイプのものがあるが特に制限はない。炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)の平均は、好ましくは、10以上である。アスペクト比の平均が10未満であると導電性と強度、剛性が低下する。炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)の平均は、より好ましくは、50以上である。一般に炭素繊維の径は3〜15μmにあるため、このようなアスペクト比に調整するためには、チョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバー等いずれの形状のものも使用でき、また2種以上混合して用いることもできる。炭素繊維の表面は、本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいて、樹脂との親和性を増すために表面処理、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、酸化処理等が施されていてもよい。
【0046】
(F)成分のウォラストナイトは、通常SiO2 が50重量%以上、CaOが約47重量%、そのほかFe2 O3 、Al2 O3 等を含んでおり、ウォラストナイト原石を粉砕、分級した白色針状粉末である。ウォラストナイトの加重平均繊維長は5〜50μmで、全個数100%中繊維径0.5〜5μmの個数が70%以上であるウォラストナイトが好ましい。さらに、加重平均繊維長が20〜40μmで、全個数100%中繊維径1〜5μmの個数が70%以上であるウォラストナイトが好ましい。ウォラストナイトは,通常公知の表面処理剤のカップリング剤で表面処理してもよい。
【0047】
(F)成分のタルクは、層状構造を持った鱗片状の粒子であり、化学組成的には含水珪酸マグネシュウムであり、通常SiO2 を28〜35重量%、MgOを28〜35重量%、H2 Oを約5重量%含んでいる。その他少量成分としてFe2 O3 が0.03〜1.2重量%、Al2 O3 が0.05〜1.5重量%、CaOが0.05〜1.2重量%、K2 Oが0.2重量%以下、Na2 Oが0.2重量%以下等含有しており、比重は約2.7である。タルクの粒子径は1〜15μm、好ましくは1〜10μmである。タルクを原石から粉砕する際の製法は特に制限はないが、タルクの取り扱い性の点で凝集状態であるものが好ましく、脱気圧縮による製法が好ましい。
【0048】
導電性熱可塑性樹脂組成物
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、ミクロ形態が海−島構造を呈する。具体的には、(A)成分及び(B)成分のいずれか一方が連続相(海相)を構成し、他方が該連続相中に分散した不連続相(島相)を構成する、いわゆる海−島構造のミクロ形態を有する。このミクロ形態は、電子顕微鏡で容易に確認することができる。熱可塑性樹脂組成物のペレット又は成形品から、クライオ装置(REICHERT−NSSEI FCS)を装着した超ミクロトーム(ライカ社製ULTRACUT CUT)で、ダイヤモンドナイフを用いて−100℃で厚さ100nmの超薄切片を切り出した。切り出した切片を4酸化ルテニウム(RuO4 )で染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、型式:JEM1200EXII型)で観察することにより、各成分の分散している形態を観察することができる。樹脂成分のうち、(B)成分が(A)成分よりも濃色に観察され、(F)成分は樹脂成分に比べ重原子を多く含んでいるため暗色に観察され、(E)成分は無染色でやや暗色に観察される。さらに、4酸化オスミウム(OsO4 )で染色することにより、(D)成分中の共役ジエン系ゴム質重合体が最も濃く観察される。
【0049】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂からなる(A)成分とポリフェニレンエーテル樹脂からなる(B)成分の、どちらが海相でどちらが島相を構成しても構わない。さらに、耐衝撃性改良材の(D)成分も海相に存在しても、島相に存在しても構わない。しかし、流動性や面衝撃強度向上等の観点からは、(B)成分と(D)成分が島相を構成し、(A)成分が海相を構成してなるものが好ましい。さらに、導電性、面衝撃強度、線膨張係数向上等の観点からは、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル{(E)成分}が主に(A)成分中に存在し、無機フィラー{(F)成分}も主に(A)成分中に存在するミクロ形態を有するのが好ましい。ここで、「主に」とは、(E)成分及び(F)成分のそれぞれ半量以上が、好ましくは65%以上が、最も好ましくは85%以上が、(A)成分中に存在していることを意味する。すなわち、(E)成分と必要に応じ(F)成分とを併用し、上記のミクロ形態を有するように分散させることによって、熱可塑性樹脂組成物から、機械的強度、特に自動車の外板に必要な面衝撃強度や塗装性の優れた成形品が得られる。
【0050】
前記の(A)成分ポリエステル樹脂及び(B)成分ポリフェニレンエーテル樹脂を構成成分とする本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部中、(A)成分が5〜95重量部、好ましくは15〜90重量部、最も好ましくは25〜85重量部、(B)成分が95〜5重量部、好ましくは85〜15重量部、最も好ましくは75〜15重量部の範囲で配合されたものが好ましい。しかして、(B)成分が5重量部未満又は(A)成分が95重量部を超えると、線膨張率、面衝撃強度等が劣り、(B)成分が95重量部を超え又は(A)成分が5重量部未満であると、流動性、耐薬品性が不満足であり好ましくない。
【0051】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物では、上記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対し、(C)成分の相溶化剤0.1〜10重量部、(D)成分の耐衝撃改良材5〜30重量部、(E)成分の導電カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル0.1〜15重量部、並びに、必要に応じ(F)成分の無機フィラー0〜100重量部が配合される。(C)成分は、好ましくは0.1〜8重量部、より好ましくは0.1〜6重量部である。(C)成分が0.1重量部未満では面衝撃強度が劣り、10重量部を超えると外観に悪影響を与え好ましくない。(D)成分は、好ましくは7〜28重量部であり、より好ましくは10〜25重量部である。(D)成分が5重量部未満では、面衝撃強度が劣り、30重量部を超えると曲げ弾性率が低下するので好ましくない。(E)成分は、好ましくは0.5〜12重量部、より好ましくは1〜8重量部である。(E)成分が0.1重量部未満であると、導電性が劣り、15重量部を超えると機械的強度特に面衝撃強度、流動性等が劣り、いずれも好ましくない。(F)成分は、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部、最も好ましくは10〜30重量部の範囲から選ばれる。(F)成分が100重量部超過であると外観、面衝撃強度、流動性等が劣り好ましくない。特に、線膨張率の改善の観点からは、(F)成分が、ガラス繊維、ウォラストナイト及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、その配合量が、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対し、5〜50重量部であることが好ましい。
【0052】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物では、上記のような配合成分として適切なものを、適切な量配合することにより、少なくとも次のスペック▲1▼〜▲3▼を全て満たすことが必要である。
▲1▼面衝撃強度が23℃において50J以上(但し、試験法は下記「MEP法」による)
▲2▼線膨張係数が1×10−4K−1以下(但し、試験法はASTMD696による)
▲3▼体積抵抗率が1×109 Ωcm以下{但し、試験法は、平板状試験片(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、該両端面間の抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出する。}
【0053】
(MEP法)
試験片に、厚さ3mmで縦横150mm×150mmの、上下両表面が正方形である平板状成形品を使用して測定した。
測定に際して、試験片を、表面の正方形の1辺に沿う15mm幅の長方形部分、及び、該長方形と対向する1辺の頂点の一方をその頂点とし30mmの2辺を有する直角2等辺三角形隅部分の2箇所において、上下から挟持する治具で試験台に固定した。
試験は、固定された試験片の中央に錘(重量10kg、錘の先端R=50mm、材質S55C)を自由落下させ、落下距離を5cm単位で増減して、破壊の有無を観察した。試験片が破壊しない最大の落下距離を測定して、衝撃エネルギーを算出し、面衝撃強度(単位J)とする。
【0054】
しかして、(E)成分及び必要に応じ(F)成分が主に(A)成分中に存在する導電性熱可塑性樹脂組成物の調製方法は特に制限はないが、工業的観点からは、溶融・混練法が好ましい。
溶融混練の代表的な方法として、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練機の使用が挙げられる。例えば、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等が挙げられ、溶融混練機で溶融混練した後、粒状化する。具体的な方法としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を予め混合して、混練混練機の上流部分に一括投入し、溶融状態で反応させ、続けて混練混練機の中流以降の部分で(E)成分及び必要に応じ(F)成分を投入して溶融混練させる方法がある。又は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を混練混練機で溶融混練し粒状化した後、必要に応じ(F)成分と共に混練混練機の上流部分に一括投入し、溶融状態で混合させ、続けて混練混練機の中流以降の部分で(E)成分を投入して溶融混練させる方法等がある。さらに、(A)成分の一部又は全量と(E)成分とを予め溶融混合してマスターバッチを作成し、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と共にマスターバッチを混練混練機の上流部分に一括投入し、溶融状態で混合させ、続けて混練混練機の中流以降の部分で必要に応じ(F)成分を投入して溶融混練させる方法等も挙げられる。このような、(A)成分と(B)成分を溶融混練した後に、(E)成分及び必要に応じ(F)成分を添加することにより、所定のミクロ形態を有する導電性熱可塑性樹脂組成物を得ることが容易になる。さらに、(E)成分と(A)成分を予め溶融混練しマスターバッチとすることで、(E)成分が良好に分散した組成物とすることができ好ましい。また、適当な溶媒、例えば、ヘキサン、へプタン、べンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素、及びこれらの誘導体に、上記成分(A)〜(D)成分を添加し、溶融混練して本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を調製することも可能である。
【0055】
なお、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、他の各種樹脂添加剤を配合することができる。配合できる樹脂添加剤としては、例えば、着色剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填材、発泡剤、難燃剤、防錆剤等が挙げられる。これら各種樹脂添加剤は、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を調製する際の最終工程で配合するのが好ましい。
【0056】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、導電性や帯電防止性が要求される製品、例えばOA機器、電子機器、導電性包装用部品、帯電防止性包装用部品、静電塗装が適用される自動車用外板等の成形材料として好適に使用できる。これら製品を製造する際には、従来から知られている熱可塑性樹脂の成形法によることができる。成形法としては、例えば、射出成形法、中空成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法等が挙げられる。
【0057】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物の大きな用途として自動車外板等の自動車用外装部品が期待される。従来から、熱可塑性樹脂組成物開発時の衝撃強度の評価には、アイゾット衝撃強度やシャルピー衝撃強度が重視されてきた。しかし、自動車用外装部品に要求される衝撃強度は、歪み速度との関係でアイゾット衝撃強度やシャルピー衝撃強度と必ずしも充分な相関性がなかった。また、一般的に自動車外板に要求される衝撃強度は、JIS K7124やISO7765で規定されている面衝撃強度と相関性が高いといわれているが、本発明者等の実験では満足できる結果は得られなかった。そこで、衝撃強度の評価法について種々検討の結果、前記のMEP法で得られた面衝撃強度が、自動車用外装部品に要求される衝撃強度と相関性が高いことを見出し、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度評価法として採用した。そのような部品には、バンパー、フェンダー、ドアパネル、ホイールキャップ、ドアハンドル、フードバルジ、オーバーフェンダー、フューエルリッド、リアパネル、各種エアロパーツ等も含まれる。
【0058】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を、導電性の要求が厳しい用途、例えば半導体に使われるICチップ、ICトレーや、ウエハー、コンピューターに使われるハードディスクの内部部品等は、帯電防止性を付与し、塵やほこりの付着を完全に防止するために最適導電性が必要であり、高すぎても低すぎても満足しない。このような用途には、2×102 〜1×108 Ωcmの範囲の体積抵抗率が選ばれる。一方、電磁波シールド性の付与に導電性が要求される用途、例えば、ノートパソコンのハウジング、PDAのハウジング、パチンコ部品の基盤、カメラシャッター、携帯電話のハウジング等では、体積抵抗率が低くても問題はない。
【0059】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものではない。なお、以下に記載において、使用した各成分の物性等の詳細は、次のとおりであり、また、部及び%は、断りがない限り、重量部及び重量%を意味する。
【0060】
各成分
(A)成分/ポリエステル樹脂
ポリブチレンテレフタレート: 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のポリブチレンテレフタレート、ノバデュラン5020、温度30℃のフェノールとテトラクロロエタンとの1対1(重量比)混合液に溶解して測定した固有粘度1.20dl/g(以下、PBTと略記する)
なお、PBTは、120℃減圧式乾燥機で8時間乾燥したものを用いた。また、含水率は120ppmであった。
(B)成分/ポリフェニレンエーテル樹脂
ポリフェニレンエーテル樹脂: 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、30℃におけるクロロホルム中で測定した固有粘度が0.41dl/g(以下、PPEと略記する。)
【0061】
(C)成分/相溶化剤
有機亜リン酸エステル化合物: ビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、旭電化(株)製、アデカスタブPEP−36(以下、PEP36と略記する。)
(D)成分/耐衝撃改良材
ビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物の水素化ブロック共重合体: スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体、シェル化学社製、クレイトンG1651(以下、SEBSと略記する。)
【0062】
(E)成分/導電剤
(E1)導電性カーボンブラック: ライオン(株)製、ケッチェンブラックEC600JD、比表面積1270m2 /g、DBP吸油量495ml/100g
(E2)中空炭素フィブリル: ポリブチレンテレフタレート85重量%と、外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリル(グラファイト・フィブリルBN)15重量%とを含有するマスターバッチ(ハイペリオン・カタリシス社製、商品名:PBT/15BN)である。
(F)成分/無機フィラー
(F1)タルク: 富士タルク社製、KT300、平均粒子径1.5μm
(F2)ウォラストナイト: 川鉄鉱業社製、PH330、平均繊維径(D)2.2μm、平均繊維長(L)20.9μm、平均L/D=9.5
【0063】
評価試験
以下の実施例、比較例において、得られた組成物についての評価試験は、下記の方法で行った。
(1)流動性:MFR(単位:dg/min): JIS K7210に準拠し、温度280℃、荷重5kgとして測定した。
(2)曲げ弾性率(単位:MPa): ASTM D790に準拠して曲げ試験を行って測定した。
【0064】
(3)面衝撃強度(単位:J): (MEP法) 試験片に、厚さ3mmで縦横150mm×150mmの、上下両表面が正方形である平板状成形品を使用して測定した。
測定に際して、試験片を、表面の正方形の1辺に沿う15mm幅の長方形部分、及び、該長方形と対向する1辺の頂点の一方をその頂点とし30mmの2辺を有する直角2等辺三角形隅部分の2箇所において、上下から挟持する治具で試験台に固定した。
試験は、固定された試験片の中央に錘(重量10kg、錘の先端R=50mm、材質S55C)を自由落下させ、落下距離を5cm単位で増減して、破壊の有無を観察した。試験片が破壊しない最大の落下距離h(単位:m)を測定して、次式により衝撃エネルギー(単位:J)を算出し、面衝撃強度とする。
面衝撃強度=9.8(重力加速度)×10(錘の質量)×h
【0065】
(4)体積抵抗率(単位:Ωcm): 射出成形機(東芝機械社製、型式:IS−150、型締め力150トン)を使用し、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で平板状試験片(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)を作成し、下記のような方法で測定した。
試験片の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、テスターで該両端面間の抵抗値(RL:単位Ω)を測定し、体積抵抗率R(単位:Ωcm)を、次式より算出した。
R=RL×AL/L=RL×0.3
(式中、ALは、試験片の断面積(単位:cm2 )を、Lは、試験片の長さ(単位:cm)を意味する。)
(5)線膨張係数(単位:K−1): ASTM D696に準拠して線膨張係数を測定した。ただし、測定温度範囲は23〜80℃とした。
【0066】
[実施例1〜4]
(A)〜(D)成分を表−1に示す割合で秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合し、得られた混合物を二軸押出機(30mmφ)根本の第1ホッパーにフィードし、シリンダー温度230℃、スクリュ回転数300rpmの条件下で十分溶融・混練した溶融配合物100部に、同じ押出機の途中に設けた中間ホッパーより、表−1に示す量の、(E)成分又は(E)成分及び(F)成分をフィードし、十分混練して、ペレット化し、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を調製した。
この組成物を、射出成形機(住友ネスタール社製、型締め力75トン)によって、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で成形して、試験片を作成する。この試験片につき各種の評価試験を行い、結果を表−1に示す。表−1から実施例1〜4の組成物は、面衝撃強度、線膨張係数、導電性のバランスに優れ、本発明のスペックを満足するものであった。
【0067】
[実施例5]
(A)〜(F)成分を表−1に示す割合で秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合し、得られた混合物を二軸押出機(30mmφ)根本の第1ホッパーに一括フィードし、シリンダー温度230℃、スクリー回転数300rpmの条件下で十分混練して、ペレット化し、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を調製した。この組成物から、以下実施例1と全く同一条件で試験片を成形し、各種評価試験を行い、評価結果を表−1に示す。表−1から実施例5の組成物は、本発明のスペックを満足するものであった。
【0068】
また、各実施例で調整した組成物のペレットから、クライオ装置(REICHERT−NSSEI FCS)を装着した超ミクロトーム(ライカ社製ULTRACUT CUT)で、ダイヤモンドナイフを用いて−100℃で厚さ100nmの超薄切片を作成し、表面を4酸化ルテニウム(RuO4 )及び4酸化オスミウム(OsO4 )で染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、型式:JEM1200EXII型)によってミクロ形態を観察した結果、以下の点が判明した。
▲1▼実施例1〜4の組成物は、(A)成分を海相、(B)成分及び(D)成分を島相とし、(E)成分及び(F)成分は、(A)成分中に存在する。
▲2▼実施例5の組成物は、(A)成分を海相、(B)成分を島相とし、(E)成分は(A)成分中に存在し、(F)成分は(B)成分中に存在する。
【0069】
[比較例1、2]
(A)〜(C)成分又は(A)〜(D)成分を、表−1に示す割合で秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合し、以下、実施例5と同一条件でペレット化し、組成物を調製した。この組成物から、実施例5と全く同一条件で試験片を成形し、各種評価試験を行い、評価結果を表−1に示す。比較例1の組成物は、面衝撃強度、体積抵抗率の点で、所定のスペックを満足せず、比較例2の組成物は、線膨張係数、体積抵抗率の点で、所定のスペックを満足せず、いずれも、実施例1〜5の組成物に比較し劣るものであった。
【0070】
[比較例3]
(A)成分、(C)成分及び(D)成分を表−1に示す割合で秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合し、得られた混合物を二軸押出機(30mmφ)根本の第1ホッパーにフィードし、シリンダー温度230℃、スクリュ回転数300rpmの条件下で十分溶融・混練した溶融配合物100部に、同じ押出機の途中に設けた中間ホッパーより、表−1に示す量の(E)成分をフィードし、十分混練して、ペレット化し、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を調製した。この組成物から、実施例1と全く同一条件で試験片を成形し、各種評価試験を行い、評価結果を表−1に示す。比較例3の組成物は、面衝撃強度、線膨張係数、体積抵抗率の点で、所定のスペックを満足せず、実施例1〜5の組成物に比較し劣るものであった。
【0071】
[比較例4]
(A)成分、(B)成分及び(D)成分を表−1に示す割合で秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合し、得られた混合物を二軸押出機(30mmφ)根本の第1ホッパーにフィードし、シリンダー温度230℃、スクリュ回転数300rpmの条件下で十分溶融・混練した溶融配合物100部に、同じ押出機の途中に設けた中間ホッパーより、表−1に示す量の(E)成分をフィードし、十分混練して、ペレット化し、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を調製した。この組成物から、実施例1と全く同一条件で試験片を成形し、各種評価試験を行い、評価結果を表−1に示す。比較例4の組成物は、面衝撃強度、線膨張係数の点で、所定のスペックを満足せず、実施例1〜5の組成物に比較し劣るものであった。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおり顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。本発明によれば、機械的強度、特に面衝撃強度、寸法安定性に優れ、かつ、導電性や帯電防止性等の電気的性質にも優れ、電気・電子機器のみならず自動車外装部品にも適した導電性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
Claims (10)
- ポリエステル樹脂{(A)成分}とポリフェニレンエーテル樹脂{(B)成分}との合計100重量部に対し、相溶化剤{(C)成分}0.1〜10重量部、耐衝撃改良材{(D)成分}5〜30重量部、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル{(E)成分}0.1〜15重量部、無機フィラー{(F)成分}0〜100重量部を配合し、かつ次の▲1▼〜▲3▼のスペックを全て満たすことを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
▲1▼面衝撃強度が23℃において50J以上(但し、試験法はMEP法による)
▲2▼線膨張係数が1×10−4K−1以下(但し、試験法はASTMD696による)
▲3▼体積抵抗率が1×109 Ωcm以下{但し、体積抵抗率Rは、平板試験片(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、該両端面間の抵抗値(RL:単位Ω)を測定し、次式より算出した。
R=RL×AL/L
(式中、ALは、試験片の断面積(単位cm2 )を、Lは、試験片の長さ(単位cm)を意味する。)} - 体積抵抗率が2×102 〜1×108 Ωcmであることを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分及び(B)成分のいずれか一方が連続相(以下、「海相」という。)を構成し、他方が該連続相中に分散した不連続相(以下、「島相」という。)を構成する、海−島構造のミクロ形態を有することを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (B)成分と(D)成分が島相を構成し、(A)成分が海相を構成してなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (E)成分が主に(A)成分中に存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分の合計量100重量部中、(A)成分が5〜95重量部、(B)成分が95〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (F)成分がガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルクからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、その配合量が、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対し、5〜50重量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (F)成分が主に(A)成分中に存在することを特徴とする請求項7に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を、予め溶融混練させ、その溶融混練物に、(E)成分及び必要に応じ(F)成分を配合し混練させて得られたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
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