JP2004346193A - アクリル樹脂フィルム、及びこれが積層された成形品、車輌用部品 - Google Patents

アクリル樹脂フィルム、及びこれが積層された成形品、車輌用部品 Download PDF

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Abstract

【課題】種々のメタリック調の質感を有する樹脂成形品を得るためアクリル樹脂フィルム、及びこれが積層された成形品、車輌用部品を提供すること。
【解決手段】アクリル樹脂と、該アクリル樹脂100質量部に対して、金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウム0.01〜30質量部及びカーボンブラック0.001〜2質量部とを含有する、厚み10〜500μmのアクリル樹脂フィルムとする。側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂と、光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層をさらに有するのが好ましい。また、上記のようなアクリル樹脂フィルムが積層された成形品とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形品へのメタリック調の表面加飾用として好適なアクリル樹脂フィルム、およびそのアクリル樹脂フィルムが積層されたメタリック調外観を有する成形品、車輌用部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、樹脂成形品の表面加飾には、より高度な質感が要望され、特にメタリック塗装、湿式メッキ、乾式メッキ等による樹脂成形品表面へのメタリック調の質感付与は、自動車の外装部品、内装部品、家電製品、OA機器および雑貨類等多岐の工業用途に応用されている。
【0003】
従来、このような樹脂成形品表面へのメタリック調質感の付与の方法としては、樹脂成形品表面に直接,印刷,メッキ、金属蒸着等の表面加飾を施す方法以外に、樹脂成形品を構成する樹脂組成物中にアルミ系顔料、パール顔料等の高輝性顔料を練り込む方法、さらに塗装、メッキ、蒸着等を施した樹脂フィルムを樹脂成形品表面に積層する方法があり、特に様々な加飾を施した樹脂フィルムを積層する方法は、生産性、作業環境の自由度の広さから近年、様々な工業分野で用いられている。
【0004】
特開平11−245261号公報(特許文献1)には、アクリル樹脂フィルムに金属蒸着したインサートフィルムを用い、インサート成形にてメタリック調の質感を有する成形品を得る方法が記載されている。
【0005】
また、特開2000−86853号公報(特許文献2)には、アクリル樹脂組成物にアルミペーストを混入させた樹脂とアクリル樹脂をフィードブロック型多層ダイスに通して作製したシルバーメタリック色の積層フィルム、およびそれを用いたインモールド成形によるメタリック調の質感の成形品を得る方法が記載されている。
【0006】
また、特開2002−146054号公報(特許文献3)には、メタリック顔料を含有する特定の全光線透過率を有する加飾用アクリル樹脂フィルムおよびそれを用いた積層樹脂成形品が記載されている。
【0007】
一方、樹脂成形品に付与するメタリック調の質感の種類においては、樹脂成形品を工業部材として利用する際の用途あるいは利用者の嗜好に応じてアルミを模したシルバーメタリック調、鋼鉄を模したブラックメタリック調、真鍮を模したイエローメタリック調、金を模したゴールドメタリック調、あるいはメタリック調に様々な有彩色の色相を組み合わせたブルーメタリック調、レッドメタリック調等の様々な質感のメタリック調の樹脂成形品への付与が車輌外装部材、内装部材あるいは雑貨類を中心に強く要望されている。
【0008】
これら様々な質感のメタリック調を発現させる方法として、アルミ粉、鉄粉、真鍮粉等の金属粉、天然パールエッセンス等のパール顔料、塩基性炭酸鉛およびその二酸化チタンコート顔料、天然マイカ、合成マイカおよびその酸化金属被覆顔料等の高輝性顔料とカーボンブラック、チタンホワイト等の無彩色系顔料および/または様々な色相を有する有彩色系の顔料あるいは染料を組み合わせて、多彩な色相を有するメタリック調を発現させる技術が、印刷、塗装あるいは樹脂用着色剤の分野で広く応用されている。例えば、ホワイトメタリック調に関しては、パール顔料等を添加するだけで比較的容易にホワイトメタリック調を有するフィルムが得られるが、ゴールドメタリック、ブルーメタリック、イエローメタリック、シルバーメタリックなどは、金属粉とともに有彩色系の顔料あるいは染料を組み合わせて用いる必要があるため調色、賦形に熟練を要する。
【0009】
従来、上述のフィルムを用いた樹脂成形品表面への様々な質感のメタリック調を付与する場合、例えばメタリック調印刷フィルムを積層して使用する方法では、目的とする質感に適応したそれぞれ異なる印刷をフィルムに施す必要があり、また印刷後溶剤の影響でフィルム強度が低下し取り扱い性が低下する傾向がある。
【0010】
特開平11−245261号公報(特許文献1)の例のような金属蒸着層を有するアクリル樹脂フィルムを用いる場合では、実質的に蒸着する金属の種類を変えなければ異なる質感のメタリック調を発現させることは困難であり、また、金属蒸着フィルムを用いる場合は、これを樹脂成形品に積層するためのラミネート法あるいはインモールド成型法のような延伸加工によって金属蒸着層にクラックが発生しやすく、その為基材成形品の形状に制限が生じると言った欠点を有する。
【0011】
また、特開2000−86853号公報(特許文献2)の実施例には、アクリル組成物にアルミニウム顔料を添加した着色層と透明なアクリル樹脂層からなる多層フィルムを積層樹脂成形品として用いることが記載されているが、具体的にはアルミペーストを添加したシルバーメタリック調のフィルムが開示されているのみであり、ブルーメタリック、イエローメタリック等のフィルムを得る方法は開示されていない。
【0012】
また、特開2002−146054号公報(特許文献3)には、メタリック顔料を有する特定の全光線透過率を有するアクリル樹脂フィルムを用いて、基材となる樹脂の色相を変えることにより、種々の色調のメタリック成形品が得られることが開示されているが、種々の色調のメタリック成形品を得るためには、基材となる樹脂をいろいろと取り揃える必要があった。また、アクリル樹脂フィルムの全光線透過率の制約があるために、メタリック調が強い成形品外観のものが得られ難いために工業的利用価値が低い。
【0013】
上述のごとく、従来は種々のメタリック調外観を有するアクリル樹脂フィルムを用いて被覆された質感の異なるメタリック調樹脂成形品を、製造する方法は見出されておらず、これを実現させるための技術の開発が強く要望されていた。
【0014】
【特許文献1】
特開平11−245261号公報
【特許文献2】
特開2000−86853号公報
【特許文献3】
特開2002−146054号公報
【特許文献4】
特公昭62−19309号公報
【特許文献5】
特開昭63−77963号公報
【特許文献6】
特開平8−323934号公報
【特許文献7】
特開平7−149994号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、種々のメタリック調の質感を有する樹脂成形品を得るためアクリル樹脂フィルム、及びこれが積層された成形品、車輌用部品を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アクリル樹脂と、該アクリル樹脂100質量部に対して、金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウム0.01〜30質量部及びカーボンブラック0.001〜2質量部とを含有する、厚み10〜500μmのアクリル樹脂フィルムである。このようなアクリル樹脂フィルムは、成形品へ種々のメタリック調の質感を付与するのに好適なアクリル樹脂フィルムとなる。
【0017】
また、前記のアクリル樹脂フィルム上に、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)と、光重合開始剤(a−2)とを含む光硬化性樹脂組成物(A)の層を有するアクリル樹脂フィルムが好ましい。さらに、前記の光硬化性樹脂組成物(A)に無機微粒子(a−3)が含まれるのが好ましい。このような構成とすることで、成形品に優れた表面性状(硬度、耐候性、耐磨耗性等)を付与することができる。
【0018】
また、本発明は、前述のアクリル樹脂フィルムが基材樹脂に積層された成形品である。このような成形品は、メタリック調の質感を有する。特に、前述のアクリル樹脂フィルムを表面の少なくとも一部に配置された車輌用部品とすることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0020】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、公知のアクリル樹脂組成物から得ることができる。アクリル樹脂組成物としては特に限定されるものではないが、例えば特公昭62−19309号公報(特許文献4)、特開昭63−77963号公報(特許文献5)、特開平8−323934号公報(特許文献6)の特許請求の範囲や実施例で示されているアクリル樹脂組成物等を使用することができる。
【0021】
本発明で使用されるアクリル樹脂組成物の好ましい一例として、熱可塑性重合体(I)と、ゴム含有重合体(II)とを含むアクリル樹脂組成物が挙げられる。
【0022】
上記の熱可塑性重合体(I)は、メタクリル酸アルキルエステル50〜100質量%と、必要によりアクリル酸アルキルエステル0〜50質量%と、必要により共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49質量%とからなる単量体原料を含む樹脂組成物を重合して得られるものであり、その還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.1L/g以下のものである。
【0023】
熱可塑性重合体(I)の還元粘度が0.1L/g以下であると、アクリル樹脂フィルムを作製するための原料組成物が適度な溶融粘度となり良好な製膜性を有するようになる。また、熱可塑性重合体(I)の還元粘度が0.05L/g以上であることが好ましい。0.05L/gより高い場合は、製膜時および印刷時にアクリル樹脂フィルムの切れを抑制するのに十分な靭性を発現できる。
【0024】
熱可塑性重合体(I)を得るための単量体原料に含まれるメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が使用できるが、メタクリル酸メチルが最も好ましい。
【0025】
熱可塑性重合体(I)を得るための単量体原料に必要により含まれるアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が使用できる。単量体原料に占めるアクリル酸アルキルエステルの割合は0〜50質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜40質量%の範囲である。
【0026】
熱可塑性重合体(I)を得るための単量体原料に必要により含まれる共重合可能な他のビニル単量体としては、公知の単量体が使用できる。具体的には、アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが好ましく、これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使うことができる。
【0027】
熱可塑性重合体(I)を得るための単量体原料を含む樹脂組成物の重合方法は、特に限定されないが、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。なお、粘度を上記の範囲に調整するため、通常は連鎖移動剤を使用する。連鎖移動剤としては公知のものが使用できるが、好ましくはメルカプタン類である。連鎖移動剤の量は、上記の単量体原料に含まれる単量体の種類および組成等により適宜決めれば良い。
【0028】
上記のゴム含有重合体(II)は、内層であるアクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体原料を含む樹脂組成物を重合した1層又は2層以上の構造を有する弾性共重合体(II−A)と、外層であるメタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体原料を含む樹脂組成物をグラフト重合した1層又は2層以上の構造を有する硬質重合体(II−B)からなる、2層以上の多層構造を有するゴム含有重合体である。なお、主成分とは、単量体原料に含まれる成分のうち最も多い成分を意味する。
【0029】
弾性共重合体(II−A)を得るための単量体原料の主成分であるアクリル酸アルキルエステルとしては、公知のものを用いることができるが、そのうちアクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等が好ましい。
【0030】
また、弾性共重合体(II−A)を得るための単量体原料には、共重合可能な他のビニル単量体を含むことができる。共重合可能な他のビニル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリルなどが好ましく、これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使うことができる。
【0031】
上記のアクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のビニル単量体と比は、アクリル酸アルキルエステルが35〜100質量%、共重合可能な他のビニル単量体が0〜65質量%である。アクリル酸アルキルエステルを35質量%以上とすることで耐成形白化性が良好となる。更に好ましい使用範囲は50質量%以上である。
【0032】
弾性共重合体(II−A)を得るための単量体原料は、架橋性単量体をさらに含有する。架橋性単量体としては特に限定する必要は無いが、好ましくは、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ブタンジオール、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられ、これらは単独または組み合わせて用いることができる。架橋性単量体は、上記のアクリル酸アルキルエステル及び共重合可能な他のビニル単量体との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で使用される。耐成形白化性の点で0.1質量部以上、特に0.3質量部以上使用することが好ましい。10質量部より多い架橋性単量体の使用に関しては、弾性共重合体の特性上は特に問題ないが、10質量部より多くなると添加量に対する効果は小さくなるので10質量部以下が好ましい。
【0033】
弾性共重合体(II−A)は1層又は2層以上の構造とすることができる。2層以上の構造とする場合、上述のような各成分の配合比は、弾性共重合体(II−A)の各層を形成するための単量体原料を合計した全体として満たしていれば良い。すなわち、ハード芯構造を形成するために弾性共重合体(II−A)を2層構造にする場合は、その1層目を形成する単量体原料のアクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のビニル単量体との比を、アクリル酸アルキルエステルが35質量%以下となるようにすることもできる。例えば、特開平7−149994号公報(特許文献7)にあるような粒子径が0.2μm以下のハード芯構造の多層構造重合体を用いることができる。
【0034】
外層として、弾性共重合体(II−A)にグラフトさせる、硬質重合体(II−B)を得るための単量体原料の主成分であるメタクリル酸アルキルエステルは、単量体原料中に50質量%以上含まれるものであり、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロへキシル等が使用できる。
【0035】
さらに、硬質重合体(II−B)を形成するための単量体原料は、共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種を50質量%以下含むことができる。共重合可能な他のビニル単量体としては、特に限定されないが具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられ、これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使うことができる。
【0036】
硬質重合体(II−B)は、弾性共重合体(II−A)100質量部に対し10〜400質量部、好ましくは20〜200質量部となるようにグラフト重合されたものであり、1段の重合でも、2段以上でも良い。特に、硬質重合体(II−B)が、弾性共重合体(II−A)100質量部に対し10質量部未満であると、弾性共重合体(II−A)の凝集により透明性の悪化が起こり、好ましくない。
【0037】
上述のようなゴム含有重合体(II)の好ましい質量平均粒子径は0.05〜0.4μmである。なお、ゴム含有重合体(II)は、通常の乳化重合で得られる。質量平均粒子径が0.4μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.18μm以下とすることで透明性が良好となる。製膜性の観点から0.05μm以上の粒子径であることが好ましい。
【0038】
上記のアクリル樹脂組成物は、必要に応じて熱可塑性重合体(III)を含むことができる。熱可塑性重合体(III)は、メタクリル酸メチルを50〜100質量%含有し、必要によりこれと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種を0〜50質量%とからなる単量体原料を含む樹脂組成物を重合したものであり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.15L/gを超える熱可塑性重合体である。
【0039】
熱可塑性重合体(III)を使用することによって、製膜性が向上するため、特に高いレベルの厚み精度や製膜速度が必要となる場合に効果を示す。熱可塑性重合体(III)の還元粘度が0.15L/gを超えた範囲であると、厚み精度の良好なアクリル樹脂フィルムとなる。使用される熱可塑性重合体(III)の還元粘度は、通常0.15L/gを超えて2L/g以下、好ましくは、1.2L/g以下である。
【0040】
本発明に用いられる熱可塑性重合体(III)を形成するための単量体原料に必要により含まれるメタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物等を使用することができる。重合は乳化重合法によるのが好ましく、通常の乳化重合法および後処理方法により、重合体を粉末状で回収することができる。
【0041】
本発明で用いることができるアクリル樹脂組成物は、上述のような熱可塑性重合体(I)20〜94.5質量部およびゴム含有重合体(II)5.5〜80質量部からなり、成分(I)および成分(II)の合計が100質量部である。ただし、熱可塑性重合体(III)を併用する場合は、熱可塑性重合体(I)10〜94.4質量部、ゴム含有重合体(II)5.5〜80質量部および熱可塑性重合体(III)0.1〜10質量部からなり、成分(I)、成分(II)および成分(III)の合計が100質量部である。成分(III)を含む場合、その含有量を0.1質量部以上とすることで製膜性向上効果が発現し、10質量部以下とすることでアクリル樹脂組成物の粘度が適度なものとなり、製膜性、透明性の観点から好ましい。
【0042】
ゴム含有重合体(II)は5.5〜80質量部の範囲で使用されるが、特に、ゴム含有重合体(II)中の弾性共重合体(II−A)の割合は、成分(I)及び成分(II)、又は成分(I)、成分(II)及び成分(III)の合計の5〜72質量%であることが好ましい。弾性共重合体(II−A)の割合が5質量%以上であることが耐成形白化性、製膜性の観点から好ましく、さらに好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。また、弾性共重合体の割合が72質量%以下であることが透明性、製膜性の観点から好ましい。
【0043】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、金属酸化物で表面コートしたフレーク状の酸化アルミニウムを含有する。フレーク状の酸化アルミニウムにコートされている金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄等が挙げられる。金属酸化物の種類やコーティングする厚みによって、種々の色調を有するメタリック調の質感を有するアクリル樹脂フィルムが得られる。このような金属酸化物で表面コートしたフレーク状の酸化アルミニウムの質量平均粒子径は、5−30μmの範囲にあることが好ましい。5μm以上であれば取り扱い性が良好であり、30μm以下であればアクリル樹脂フィルムの機械的強度を保てる傾向となる。このような金属酸化物で表面コートしたフレーク状の酸化アルミニウムとしては、例えば、メルク株式会社製のシラリック(登録商標)を用いることができる。
【0044】
アクリル樹脂フィルム中の金属酸化物で表面コートしたフレーク状の酸化アルミニウムの含有量については、アクリル樹脂フィルムのメタリック調付与性と機械強度を考慮すると、アクリル樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上、30質量部以下であることが必要である。好ましくは0.01質量部以上、10質量部以下で、さらに好ましくは0.01質量部以上、5質量部以下である。0.01質量部以上で十分なメタリック調の質感が得られ、一方、30質量部以下でアクリル樹脂フィルムの製膜が可能となる靭性を有する。
【0045】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、カーボンブラックを含有する必要がある。カーボンブラックを含有することによって、メタリック調外観が極めて良好なアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
【0046】
カーボンブラックは公知のものを使用することができる。好ましくは、質量平均粒子径が10〜100μm、更に好ましくは15〜30μmのものが挙げられる。また、吸油量(ジブチルフタレイト)は50〜200cc/100gのものが好ましく、更に好ましくは50〜140cc/100gのものである。
【0047】
アクリル樹脂フィルムにおけるカーボンブラック含有量は、アクリル樹脂フィルムのメタリック調付与性と機械強度を考慮すると、アクリル樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上、2質量部以下であることが必要である。好ましくは0.001質量部以上、0.5質量部以下で、さらに好ましくは0.001質量部以上、0.1質量部以下である。0.001質量部以上で、良好なメタリック外観が得られ、一方、2質量部以下で、金属酸化物で表面コートしたフレーク状の酸化アルミニウム由来の良好なメタリック外観が得られる。
【0048】
このようなアクリル樹脂フィルムの厚みは10μm以上とされる。10μm以上であれば、2次加工に適用可能な強度が得られる。50μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。また、本発明のアクリル樹脂フィルムの厚みは500μm以下とされる。500μm以下であれば良好な製膜性が実現でき、安定した生産が可能となり、得られたアクリル樹脂フィルムの剛性を低く抑えられるため、良好なラミネート性等の2次加工性を実現できる。加えて、単位面積当たりの質量も低減できるため経済的にも好ましい。以上の観点から300μm以下がより好ましい。
【0049】
本発明のアクリル樹脂フィルムには、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、着色剤、艶消し剤を添加することができる。
【0050】
特に耐候性を付与するために、0.1〜5質量%の範囲で紫外線吸収剤を添加することが好ましい。使用される紫外線吸収剤の分子量は300以上であることが好ましく、特に好ましくは400以上である。分子量が300以上の紫外線吸収剤を使用することにより、射出成形金型内で真空・圧空成形を施す際に、紫外線吸収剤が揮発し、金型を汚染することが抑制される。
【0051】
紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系のものが特に好ましく使用でき、前者の具体例としては、チバスペシャリティケミカルズ社のチヌビン234(商品名)、旭電化工業社のアデカスタブLA−31(商品名)、後者の具体例としては、チバスペシャリティケミカルズ社のチヌビン1577(商品名)等が挙げられる。また、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)として、旭電化工業社のアデカスタブLA−57、LA67(それぞれ商品名)等を使用することもできる。
【0052】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法;カレンダー法等の方法により製造することができるが、経済性の観点から、Tダイと冷却ロールおよび巻き取り機を備えた押出製膜機を使用した溶融押出法により製造することが好ましい。使用するTダイは特に限定されないが、Tダイ内での溶融樹脂の流動性を安定化させる観点から、コートハンガータイプのTダイが好ましい。
【0053】
Tダイより溶融押出されたアクリル樹脂組成物は、冷却ロールを備えた引き取り機にてフィルム状に製膜される。溶融樹脂の冷却法としては特に限定されないが、1本の金属ロールに接触して製膜する方法;金属ロール、非金属ロールおよび金属ベルトから選ばれる複数のロールまたはベルトに挟持して製膜する方法を例示することができる。
【0054】
この中でもアクリル樹脂フィルム表面の鏡面性、深み感を得る上で、金属ロール、非金属ロールおよび金属ベルトから選ばれる複数のロールまたはベルトに挟持して製膜する方法が好ましく、特に、金属ロールを含む複数のロールで挟持する場合は、少なくともアクリル樹脂フィルムの有効面側が金属ロールに接する様に製膜することで、アクリル樹脂フィルム表面の鏡面性、深み感が得られる。なお、アクリル樹脂フィルムに印刷を施す場合、有効面に印刷を施すことで印刷抜けを著しく低減することができる。ここで、有効面とは、印刷を施す面のことである。
【0055】
上述のような本発明のアクリル樹脂フィルムにより、種々の色調を有するメタリック調のアクリル樹脂フィルムとなる。さらに、上述のアクリル樹脂フィルム上に後述するような層が形成されている構成とすることもできる。
【0056】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、上述のようなアクリル樹脂フィルムの片面に、金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウム及びカーボンブラックを含まない透明アクリル樹脂フィルムまたはシートを貼りあわせた構造とすることもできる。このようなアクリル樹脂フィルムは、メタリック外観にさらに深み感を有するようになる。
【0057】
アクリル樹脂フィルムに透明アクリル樹脂フィルムまたはシートを貼りあわせる方法としては、ドライラミネート、ウェットラミネート、ホットメルトラミネートなどでラミネートする方法等があげられる。また、加熱プレスラミネート法で行うこともできる。
【0058】
また、前述のアクリル樹脂組成物を溶融押出しながら同時に透明アクリル樹脂フィルムまたはシートと積層する方法、透明アクリル樹脂フィルムまたはシートを形成するための組成物を溶融押出しながら、同時にアクリル樹脂フィルムと積層する方法として、Tダイ等用いた押出ラミネート法等があげられる。さらに、前述のアクリル樹脂組成物と、透明アクリル樹脂フィルムまたはシートを形成するための組成物を同時に溶融押出しながら積層する方法として、フィードブロック法や多数マニホールド法などによりダイ内で接着させる方法や、一つのダイに複数のダイリップを設けダイ外で接着する方法等の共押出成形による方法があげられる。
【0059】
また、本発明のアクリル樹脂フィルムは、光硬化性樹脂組成物(A)の層を有する構造とすることもできる。光硬化性樹脂組成物(A)は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)および光重合開始剤(a−2)を含み、前記(a−1)以外の架橋性化合物を実質的に含まないものである。本発明の光硬化性樹脂組成物(A)においては、このようにポリマー側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する成分を導入したことにより、ポリマー側鎖間で架橋反応が進行するため、著しく良好な耐磨耗性、耐擦傷性が得られ、また反応性ビニル基を有する低分子量架橋性化合物を含有させる必要が無く、そのため表面粘着性が無く、保存安定性に優れる光硬化性のアクリル樹脂フィルムが得られるという利点を有する。
【0060】
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)としては、例えば、ガラス転移温度が25〜175℃、好ましくは30〜150℃の、ポリマー中にラジカル重合性不飽和基を有するものが挙げられる。具体的には、以下の化合物(1)〜(7)を重合または共重合させたものに対し、後述する方法(イ)〜(ヘ)によりラジカル重合性不飽和基を導入したものを用いることができる。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を表し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを表し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを表す。
(1) 水酸基を有する単量体:N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等
(2) カルボキシル基を有する単量体:(メタ)アクリル酸、アクリロイルオキシエチルモノサクシネート等
(3) エポキシ基を有する単量体:グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等
(4) アジリジニル基を有する単量体:2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−アジリジニルプロピオン酸アリル等
(5) アミノ基を有する単量体:(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等
(6) スルホン基を有する単量体:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等
(7) イソシアネート基を有する単量体:2,4−トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの等モル付加物のような、ジイソシアネートと活性水素を有するラジカル重合性単量体の付加物、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等。
【0061】
さらに、上記の化合物の重合体または共重合体のガラス転移温度を調節したり、光硬化性のアクリル樹脂フィルムの物性を調和させたりするために、上記の化合物と共重合可能な単量体と共重合させることもできる。そのような共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等のイミド誘導体、ブタジエン等のオレフィン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等を挙げることができる。
【0062】
上述の重合体または共重合体に、以下に述べる方法(イ)〜(ヘ)によりラジカル重合性不飽和基を導入することができる。
(イ) 水酸基を有する単量体(1)の重合体または共重合体の場合には、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体(2)等を縮合反応させる。
(ロ) カルボキシル基を有する単量体(2)、スルホン基を有する単量体(6)の重合体または共重合体の場合には、水酸基を有する単量体(1)等を縮合反応させる。
(ハ) エポキシ基を有する単量体(3)、イソシアネート基を有する単量体(7)、またはアジリジニル基を有する単量体(4)の重合体または共重合体の場合には、水酸基を有する単量体(1)又はカルボキシル基を有する単量体(2)等を付加反応させる。
(ニ) 水酸基またはカルボキシル基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には、エポキシ基を有する単量体(3)またはアジリジニル基を有する単量体(4)、あるいはイソシアネート基を有する単量体(7)、またはジイソシアネート化合物と水酸基含有アクリル酸エステル単量体との等モル付加物等を付加反応させる。
(ホ) アミノ基を有する単量体(5)の重合体または共重合体の場合には、カルボキシル基を有する単量体(2)等を縮合反応させる。
(ヘ) アミノ基を有する単量体(5)の重合体または共重合体の場合には、エポキシ基を有する単量体(3)またはアセトアセトキシ基を有する単量体等を付加反応させる。
【0063】
上記の反応は、微量のハイドロキノン等の重合禁止剤を加え、乾燥空気を送りながら行うことが好ましい。
【0064】
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)の側鎖のラジカル重合性不飽和基の量は、二重結合当量(側鎖ラジカル重合性不飽和基1個あたりの数平均分子量)が、仕込み値からの計算値で平均3000g/mol以下であることが、耐擦傷性、耐磨耗性向上の観点から好ましい。より好ましい二重結合当量の範囲は、平均1200g/mol以下であり、さらに好ましい範囲は、平均800g/mol以下である。
【0065】
このように、架橋に関与するラジカル重合性不飽和基を熱可塑性樹脂中に複数導入することにより、低分子量の架橋性化合物を使用する必要がなく、後述する長期間の保管や加熱成形時においても、表面粘着性を有することなく、効率的に硬化物性を向上することが可能となる。
【0066】
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)の数平均分子量は、5,000〜2,500,000の範囲が好ましく、10,000〜1,000,000の範囲がさらに好ましい。光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムをインサート又はインモールド成形する際に、金型離型性が良好になる点や、光硬化後のインサート又はインモールド成形品の表面硬度が向上する点から、数平均分子量は5,000以上であることが好ましい。一方、合成の容易さや外観の観点、また、アクリル樹脂フィルムとの密着性発現の観点から、数平均分子量は2,500,000以下であることが好ましい。
【0067】
また、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)はガラス転移温度が25〜175℃に調節されていることが好ましく、30〜150℃に調節されていることがさらに好ましい。インサート又はインモールド成形時の光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムの金型剥離性が良好になる点や、光硬化後のインサート又はインモールド成形品の表面硬度が向上する点から、ガラス転移温度は25℃以上であることが好ましい。一方、光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムの取り扱い性の観点からガラス転移温度は175℃以下であることが好ましい。
【0068】
また、得られる側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)のガラス転移温度を考慮すると、ホモポリマーとして高いガラス転移温度を有するものとなるビニル重合性単量体を使用することが好ましい。さらに、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)の耐候性向上の観点からは、ビニル重合性単量体として(メタ)アクリレート類を主成分として用いることが好ましい。
【0069】
また、後述するように、光硬化性樹脂組成物(A)中に無機微粒子(a−3)を添加する場合、無機微粒子(a−3)の表面の官能基(ヒドロキシル基,カルボキシル基,シラノール基等)と反応しうる基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン化シリル基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を分子内に有するビニル重合性単量体は、得られる光硬化性樹脂組成物の剛性、靱性、耐熱性等の物性をより向上させるように働くので、かかる官能基がラジカル重合可能なビニル重合性単量体成分の一部として含有されていてもよい。
【0070】
このような反応性の基を分子内に含有するビニル重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
光重合開始剤(a−2)としては、光照射によってラジカルを発生させる光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0072】
光ラジカル重合開始剤(a−2)としては、公知の化合物を用いることができ、特に限定はされないが、硬化時の黄変性や耐候時の劣化を考慮すると、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系のような分子内にアミノ基を含まない光ラジカル重合開始剤が良い。例えば、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドが好ましい。これらのうちには成形方法によっては一時的にその化合物の沸点以上の温度になることがあるので、その成形方法に応じて適切に選択すればよい。成形品の表面硬度を上げるため、n−メチルジエタノールアミンなどの酸素による重合硬化阻害を抑制する添加剤を添加しても良い。
【0073】
また、これらの光重合開始剤の外に、成形時の熱を利用しての硬化も考慮して、各種過酸化物を添加しても良い。光硬化性樹脂樹脂組成物(A)に過酸化物を含有させる場合には、150℃、30秒程度で硬化させる必要があるので、臨界温度の低い過酸化物、例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が好ましく用いられる。
【0074】
光ラジカル重合開始剤の添加量は、硬化後の残存量が耐候性に影響するため、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する化合物に対して5質量%以下が望ましく、特に硬化時の黄変に関連するアミノ系の光ラジカル重合開始剤は1質量%以下が望ましい。
【0075】
光硬化性樹脂組成物(A)には、さらに耐擦傷性や耐磨耗性を向上させる目的で、無機微粒子(a−3)を添加することができる。無機微粒子(a−3)は、得られる光硬化性樹脂組成物の層が透明となれば、その種類や粒子径、形態は特に制限されない。無機微粒子(a−3)の例としては、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、入手の容易さや価格面、得られる光硬化性樹脂組成物の層の透明性や耐磨耗性発現の観点から、特にコロイダルシリカが好ましい。
【0076】
コロイダルシリカは、通常の水性分散液の形態や、有機溶媒に分散させた形態で用いることができるが、(a−1)成分である側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂とともに均一かつ安定に分散させるためには、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカを用いることが好ましい。
【0077】
そのような有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、キシレン/ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等を例示することができる。なかでも、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)を溶解可能な有機溶媒を選択することが好ましい。また、後述するように、本発明の光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムを製造する際にこれらの有機溶媒は加熱乾燥させて揮発させるため、アクリル樹脂フィルムの主たる構成成分である樹脂成分のガラス転移温度より80℃以上高くない、好ましくは30℃以上高くない沸点を有する有機溶媒が、アクリル樹脂フィルム内に残存しにくく好ましい。
【0078】
有機溶媒に分散させた形態のコロイダルシリカとしては、分散媒に分散されている市販品、例えば、メタノールシリカゾルMA−ST、イソプロピルアルコールシリカゾルIPA−ST、n−ブタノールシリカゾルNBA−ST、エチレングリコールシリカゾルEG−ST、キシレン/ブタノールシリカゾルXBA−ST、エチルセロソルブシリカゾルETC−ST、ブチルセロソルブシリカゾルBTC−ST、ジメチルホルムアミドシリカゾルDBF−ST、ジメチルアセトアミドシリカゾルDMAC−ST、メチルエチルケトンシリカゾルMEK−ST、メチルイソブチルケトンシリカゾルMIBK−ST(以上商品名、日産化学社製)等を用いることができる。
【0079】
無機微粒子(a−3)の粒子径は、得られる光硬化性樹脂組成物の層の透明性の観点から、通常は200nm以下である。より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。
【0080】
無機微粒子(a−3)の添加量は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)の固形分100質量部に対して、無機微粒子固形分で5〜400質量部の範囲が好ましく、10〜200質量部の範囲が特に好ましい。無機微粒子(a−3)の添加量が5質量部未満の場合には、耐磨耗性向上効果が認められないことがあり、また添加量が400質量部を超える場合には、光硬化性樹脂組成物(A)の保存安定性が低下するばかりか、得られる光硬化性組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムの成形性が低下することがある。
【0081】
また、本発明で用いられる無機微粒子(a−3)としては、下記構造式(a3−1)で表されるシラン化合物によって、予め表面が処理されたものを用いてもよい。表面処理された無機微粒子の使用は、光硬化性樹脂組成物(A)の保存安定性がさらに良好となり、また得られる光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムの表面硬度および耐候性も良好となるので好ましい。
【0082】
SiR (OR (a3−1)
(上式中、RおよびRは、それぞれ、エーテル結合、エステル結合、エポキシ結合または炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、Rは水素原子またはエーテル結合、エステル結合、エポキシ結合もしくは炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、aおよびbは、それぞれ0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数である)
前記構造式(a3−1)で表されるシラン化合物のなかでも、下記構造式(a3−2)〜(a3−7)で表されるシラン化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0083】
SiR (OR (a3−2)
SiR (OCHCHOCO(R)C=CH4−n (a3−3)
CH=C(R)COO(CHSiR (OR3−n (a3−4)
CH=CHSiR (OR3−n (a3−5)
HS(CHSiR (OR3−n (a3−6)
【0084】
【化1】
Figure 2004346193
(上式中、RおよびRは、それぞれ、エーテル結合、エステル結合またはエポキシ結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素残基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表し、aおよびbは、それぞれ0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数であり、nは0〜2の整数であり、pは1〜6の整数である)
【0085】
前記構造式(a3−2)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシエチルトリエトキシシラン、アセトキシエチルトリエトキシシラン、ジエトキシエチルジメトキシシラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0086】
前記構造式(a3−3)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラキス(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、テトラキス(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリス(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0087】
前記構造式(a3−4)で表されるシラン化合物としては、例えば、β−アクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0088】
前記構造式(a3−5)で表されるシラン化合物としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0089】
前記構造式(a3−6)で表されるシラン化合物としては、例えば、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0090】
前記構造式(a3−7)で表されるシラン化合物としては、例えばp−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0091】
かかるシラン化合物は、無機微粒子(a−3)の固形分1モル部に対して、0〜3モル部の割合で使用することが好ましい。シラン化合物の使用量が3モル部を超える場合には、得られる光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムの耐磨耗性が低下することがある。
【0092】
シラン化合物で表面処理された無機微粒子は、市販品を利用したり、または公知の方法により無機微粒子を表面処理したりすることにより得ることができる。公知の表面処理方法としては、例えば、少量の水の存在下で、シラン化合物と無機微粒子を加熱攪拌することにより、処理することができる。
【0093】
無機微粒子(a−3)を、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)に添加する方法としては、予め側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)を合成後、無機微粒子を混合しても良いし、また側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)を構成するビニル重合性単量体と無機微粒子を混合した条件下で重合する方法等の任意の方法を選択することができる。
【0094】
本発明で用いられる光硬化性樹脂組成物(A)においては、必須成分の側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)および光重合開始剤(a−2)、さらに、必要に応じて使用することができる前述した無機微粒子(a−3)以外に、必要に応じて、増感剤、変性用樹脂、染料、顔料およびレベリング剤やハジキ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化安定剤等の添加剤を配合することができる。上記の増感剤は、光硬化反応を促進するものであって、その例としてはベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントン等が挙げられる。
【0095】
ただし、光硬化性樹脂組成物(A)は、前記側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)以外の架橋性化合物を実質的に含有すべきではない。特に、40℃において液体状の架橋性モノマー、オリゴマーや、数平均分子量2000以下の低分子量の架橋性モノマー、オリゴマーは実質的に含有するべきではない。特に、40℃において液体状の架橋性モノマー、オリゴマーや、数平均分子量2000以下の低分子量の架橋性モノマー、オリゴマーを含有すると、長期間の保管や加熱成形時において表面粘着性を有するようになり、印刷工程において不具合を生じたり、インサート成形又はインモールド成形時において金型を汚染したりする等の問題を生じることがある。より好ましくは、50℃において液体状の架橋性モノマー、オリゴマーを実質的に含有するべきではなく、さらに好ましくは60℃において液体状の架橋性モノマー、オリゴマーを実質的に含有するべきではない。なお、「実質的に含有しない」の表現は、光硬化性樹脂組成物(A)に含まれる、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)の固形分100質量部に対して、1質量%以下であることを意味する。
【0096】
本発明においては、上記の如き光硬化性樹脂組成物(A)を用いるため、光硬化性樹脂組成物の層をアクリル樹脂フィルム上に形成した場合にも、アクリル樹脂フィルムの表面は粘着性がなく、また表面の粘着性が時間と共に変化する等の現象も起こらず、ロール状態での保存安定性が良好となる。
【0097】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、上述したような光硬化性樹脂組成物の層を有することより、光硬化前の優れた成形性や保存安定性と、光硬化後の優れた表面性状(硬度、耐候性、耐磨耗性等)を高次元で両立しているアクリル樹脂フィルムとなる。後述するように、通常、本発明の光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムは、有機溶剤等の溶剤に光硬化性樹脂組成物(A)を混合、溶解させた溶液を、あらかじめ作製されたアクリル樹脂フィルム上に各種コート法によりコーティングした後に溶剤除去の為の加熱乾燥を行って製造する。この際、アクリル樹脂フィルム内に溶剤が多量に残存していると、光照射前の光硬化性樹脂組成物(A)の層表面が粘着性を有するようになり、印刷工程における歩留まりの低下や、ロール状態での保存安定性の低下、あるいはインサート成形又はインモールド成形時における金型汚染性の低下等の問題を生じる。また、光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムをインサート成形又はインモールド成形することによって得られたインサート成形品又はインモールド成形品を光硬化させても、耐擦傷性、耐薬品性、耐候性等の表面物性が劣ることがある。このような不具合を解決するには、アクリル樹脂フィルム中の溶剤量を出来るだけ少なくすることが好ましい。
【0098】
光硬化性樹脂組成物(A)の層を有する本発明のアクリル樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)と光重合開始剤(a−2)と、必要に応じて無機微粒子(a−3)を含む光硬化性樹脂組成物(A)を有機溶媒等の溶剤に十分に攪拌溶解させ、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷方法や、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、エアナイフコート法、コンマロールコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディッピングコート法等の公知のコート方法によりアクリル樹脂フィルム上にコーティングし、溶剤除去のための加熱乾燥を行う方法がある。
【0099】
光硬化性樹脂組成物(A)を攪拌溶解させる溶剤としては、光硬化性樹脂組成物(A)の各成分を溶解または均一に分散させ、且つアクリル樹脂フィルムの物性(機械的強度、透明性、等)に実用上甚大な悪影響を及ぼさず、さらにアクリル樹脂フィルムの主たる構成成分である樹脂成分のガラス転移温度より80℃以上高くない、好ましくは30℃以上高くない沸点を有している揮発性の溶剤が好ましい。そのような溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶剤;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、THF等のエーテル系溶剤;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸系溶剤;無水酢酸等の酸無水物系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤;エチルアミン、トルイジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶剤;チオフェン、ジメチルスホキシド等の硫黄含有溶剤;ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコール、2−アミノエタノール、アセトシアノヒドリン、ジエタノールアミン、モルホリン等の2種以上の官能基を有する溶剤;あるいは水等、各種公知の溶剤を適宜使用することができる。
【0100】
ここでアクリル樹脂フィルム内の残存溶剤に起因する不具合を解消し、且つ低コストで生産効率を向上させる目的でより短時間でアクリル樹脂フィルムを製造するためには、溶剤除去のための加熱乾燥条件を強化し乾燥を十分に行う必要がある。しかし、この時にアクリル樹脂フィルムを、アクリル樹脂フィルムの熱変形温度以上の温度で、連続して20秒間以上加熱乾燥させると、アクリル樹脂フィルムが僅かな張力でも引き伸ばされてしまい、アクリル樹脂フィルムの厚みが薄くなるばかりか、光硬化後の光硬化性樹脂組成物の層の耐擦傷性、表面硬度の低下等を招くことがある。
【0101】
光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムの加熱乾燥条件は、アクリル樹脂フィルムの熱変形温度を超えない範囲の温度で加熱乾燥させるか、またはアクリル樹脂フィルムの熱変形温度より高い温度で乾燥させる場合には、アクリル樹脂フィルムの熱変形温度+15℃以下、好ましくは+10℃以下とし、且つその温度での加熱乾燥時間を20秒以下、好ましくは10秒以下、さらに好ましくは5秒以下とするとよい。
【0102】
乾燥機としては、溶剤として可燃性有機溶剤を使用する場合には、安全性の点から蒸気による空気加熱式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方式及びノズルよりアクリル樹脂フィルムに吹き付ける方式等が用いることができる。乾燥機の形状は、アーチ式、フラット式等、目的に合わせて公知のものを選択して用いることができる。
【0103】
また、本発明のアクリル樹脂フィルムは、公知の樹脂シートと貼りあわされた構成とすることもできる。
【0104】
このような樹脂シートと貼りあわされたアクリル樹脂フィルムを得る方法としては、アクリル樹脂フィルムと樹脂シートを加熱し、境界面の熱融着により貼りあわせるラミネーション法、境界面に接着性の層を設けてアクリル樹脂フィルムと樹脂シートを貼りあわせるラミネーション法等の方法、あるいは樹脂シートとなる樹脂を押出成形する時、ダイスから出てきた溶融樹脂にアクリル樹脂フィルムを直接接触させ、境界面の熱融着により貼りあわせる方法等が挙げられる。
【0105】
なお、上記の樹脂シートとしては、公知の熱可塑性樹脂を用いた樹脂シートであれば特に限定されないが、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート(以降PC)樹脂、ABS樹脂、ABS/PC樹脂、塩化ビニル(以降PVC)樹脂、ポリエステル樹脂、または、これらを主成分とする樹脂が好ましい。ただし、ポリオレフィン樹脂等のアクリル樹脂に熱融着しない樹脂の場合においては、アクリル樹脂フィルムと樹脂シートの境界面に接着性の層を設けることで張りあわせる事が可能である。
【0106】
また、アクリル樹脂フィルムと樹脂シートの間に、着色層や印刷層をもうけることができる。
【0107】
樹脂シートの厚みは、用途に応じて替えられるため特に限定されないが、本発明のアクリル樹脂フィルムと貼りあわせられる範囲であり、かつ真空・圧空成形が可能な範囲であることが好ましい。具体的には、100μmから2mm程度のものが成形性の観点から好ましい。
【0108】
以上のような本発明のアクリル樹脂フィルムが積層された成形品を製造する方法としては、本発明のアクリル樹脂フィルムの、金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウムを含有する層が表面になるように真空・圧空成形することにより成形品を得ることができる。このような成形品は有彩色系のメタリック調の質感を有する成形品となる。
【0109】
また、アクリル樹脂フィルムを予め成形品の形状に真空・圧空成形、突き上げ成形等により加工し、これを射出成形用金型に配置後、基材樹脂を射出成形すると同時に成形品を成形する方法(インサート成形法);射出成形用金型キャビティー内でアクリル樹脂フィルムを真空・圧空成形した後、金型キャビティー内に基材樹脂を射出成形する方法(インモールド成形法)によっても、成形品を得ることができる。
【0110】
なお、成形品を構成する基材樹脂としては、アクリル樹脂フィルムとの接着性に優れるものであれば特に限定されないが、例えばアクリル樹脂、PC樹脂、ABS樹脂、ABS/PC樹脂、PVC樹脂、ポリエステル樹脂、または、これらを主成分とする基材樹脂が好ましい。ただし、ポリオレフィン樹脂等のアクリル樹脂に熱融着しない基材樹脂の場合においては、本発明のアクリル樹脂フィルムが基材樹脂と接する面に、接着性の層を設けることで積層する事が可能である。
【0111】
また、光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムを用いた場合は、成形品を金型内より取り出した後、光照射することにより成形品表面の光硬化性樹脂組成物を光硬化させることができる。照射する光としては、電子線、紫外線、γ線等を挙げることができる。照射条件は、光硬化性樹脂組成物(A)の光硬化特性に応じて定められるが、照射量は、通常500〜10,000mJ/cm程度である。これによって、光硬化性樹脂組成物(A)が硬化して硬質の被膜が表面に形成された成形品を得ることができる。このような成形品は耐磨耗性に優れるので自動車外装用途に好適である。
【0112】
本発明のアクリル樹脂フィルムが積層された成形品の工業的用途例としては、車輌内装部品(例えばインストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等)、車輌外装部品(例えばウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等);窓枠、サッシ等の建材部品;食器、玩具、ゲーム機等の雑貨;掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品;インテリア部材;船舶部材;パソコンハウジング、携帯電話ハウジング等の電子通信機等を例示することができる。特に、本発明のアクリル樹脂フィルムが少なくとも表面の一部に配置された上述の車輌内装部品や車輌外装部品等の車輌用部品、特に車輌外装部品は、耐磨耗性に優れており好適である。
【0113】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。また、実施例中の略号は以下のとおりである。
メチルメタクリレート MMA
ブチルアクリレート BA
アリルメタクリレート AMA
スチレン St
メチルアクリレート MA
t−ブチルハイドロパーオキサイド tBH
n−オクチルメルカプタン nOM。
【0114】
熱可塑性重合体(I)(III)、ゴム含有重合体(II)、およびアクリル樹脂フィルムについては、以下の試験法により諸物性を測定した。
1)熱可塑性重合体(I)(III)の還元粘度
重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定した。
2)ゴム含有重合体(II)の質量平均粒子径
乳化重合にて得られたゴム含有重合体(II)のポリマーラテックスの質量平均粒子径を大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定した。
3)アクリル樹脂フィルムの製膜性
Tダイ法にて厚み125μmのアクリル樹脂フィルムを製膜した後、5時間以上フィルムが切れなかったものを良好とした。
4)成形品の耐磨耗性
テーバー磨耗試験(片側500g荷重、CS−10F磨耗輪を用い、回転速度60rpm、試験回数500回で試験を実施)後の曇価を測定した。そして(試験後の曇価)−(試験前の曇価)で表される数値を耐磨耗性(%)として示した。なお、この数値が25以下のものは外観変化が少なく耐磨耗性に優れる。
【0115】
<実施例1>
a)ゴム含有重合体(II)の製造
反応容器に以下に示す(イ)を仕込み、攪拌を行いながら窒素雰囲気下80℃で200分間にわたって以下に示す原料(ロ)(重合体(II−A)用単量体原料)を連続的に添加し、その後さらに120分間重合を行い、弾性重合体(II−A)のラテックスを得た。
【0116】
この弾性重合体(II−A)のラテックスに、引き続いて以下に示す(ハ)を添加し、攪拌を行いながら窒素雰囲気下80℃で、以下に示す原料(ニ)(ゴム重合体(II−B)用単量体原料)を100分間にわたって連続的に添加し、その後さらに80℃で60分間連続して重合を行うことにより硬質重合体(II−B)を形成し、ゴム含有重合体(II)のラテックスを得た。ゴム含有重合体(II)の質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0117】
このゴム含有重合体(II)のラテックスに対して、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後乾燥してゴム含有重合体(II)を得た。
【0118】
Figure 2004346193
【0119】
b)熱可塑性重合体(III)の製造
反応容器に窒素置換したイオン交換水200部を仕込み、乳化剤オレイン酸カリウム1部、過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ。続いてMMA40部、BA10部、nOM0.005部を仕込み、窒素雰囲気下65℃にて3時間撹拌し、重合を完結させた。引き続いて、MMA48部、BA2部からなる単量体混合物を2時間にわたり滴下し、滴下終了後2時間保持を行い、重合を完結させて、熱可塑性重合体(III)のラテックスを得た。このラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加して重合体を酸凝析した後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状の熱可塑性重合体(III)を回収した。この熱可塑性重合体(III)の還元粘度ηsp/cは0.38L/gであった。
【0120】
c)アクリル樹脂フィルムの製造
上記の如くして得たゴム含有重合体(II)16部および熱可塑性重合体(III)1部と、熱可塑性重合体(I)としてのMMA/MA共重合体(MMA/MA=98/2、還元粘度0.06L/g)83部、チヌビン234(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)1.4部、アデカスタブLA67(商品名、旭電化工業製)0.3部、アデカスタブAO60(商品名、旭電化工業製、フェノール系抗酸化剤)0.1部と、金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウムとしてシラリックT60−10WNTSb(商品名、メルク(株)製)3部、カーボンブラック(商品名:MONARCH880、キャボット社製、質量平均粒子径:16μm)0.015部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで、40mmφの2軸スクリュー型押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度200℃〜260℃、ダイ温度250℃で溶融混練しペレット化した。このペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mmTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度200℃〜240℃、Tダイ温度250℃で、125μmの厚みのアクリル樹脂フィルムを製膜した。製膜性は良好であった。
【0121】
得られたアクリル樹脂フィルムを、真空引き機能を持つ金型で真空成形した。その後、成形したアクリル樹脂フィルムを金型に配した状態で、ABS樹脂(UMG ABS(株)製、商品名:ダイヤペットABSバルクサムTM25B 白色)を射出成形しインモールド成形品を得た。
【0122】
得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品は、良好なゴールドメタリック調の外観を示した。
【0123】
<実施例2>
金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウムとしてシラリックT60−10WNTC(商品名、メルク(株)製)を用いる以外は実施例1と同様に実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0124】
得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品は良好なシルバーメタリック調の外観を示した。
【0125】
<実施例3>
金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウムとしてシラリックT60−10WNTM(商品名、メルク(株)製)を用いる以外は実施例1と同様に実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0126】
得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品は良好なブルーメタリック調の外観を示した。
【0127】
<実施例4>
金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウム、およびカーボンブラックを用いずに、実施例1と同様の手法で透明なアクリル樹脂フィルムを製膜した。得られた透明なアクリル樹脂フィルムと、実施例1で得られたゴールドメタリック調の外観を有するアクリル樹脂フィルムを熱ラミネートした。
【0128】
得られたアクリル樹脂フィルムを用いて、透明なアクリル樹脂フィルムの層が表面となるように、実施例1と同様にして成形品を得た。
【0129】
得られた成形品は深み感を有するゴールドメタリック調の外観を示した。
【0130】
<実施例5〜7>
<側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)の製造>
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、メチルエチルケトン50部を入れ、80℃に昇温した。窒素雰囲気下でメチルメタクリレート79.9部、グリシジルメタクリレート20.1部およびアゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を3時間かけて滴下した。その後、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)80部とアゾビスイソブチロニトリル0.2部の混合物を加え、重合させた。4時間後、メチルエチルケトン74.4部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5部、トリフェニルホスフィン2.5部およびアクリル酸10.1部を加え、空気を吹き込みながら80℃で30時間攪拌した。その後、冷却した後、反応物をフラスコより取り出し、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)の溶液を得た。
【0131】
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)における単量体の重合率は99.5%以上であり、ポリマー固形分量は約35質量%、数平均分子量は約3万、ガラス転移温度は約105℃、二重結合当量は平均788g/molであった。
<コロイダルシリカ(無機微粒子(a−3))の製造>
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、固形分換算のモル部でIPA−ST(商品名、イソプロパノール分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業(株)製),シリカ粒子径=15nm)を1部、KBM503(商品名、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製),分子量=248)を0.1部、水を0.3部入れ、攪拌しながら湯浴の温度を75℃に上げ、その温度で2時間反応させることにより、イソプロパノール中に分散され、表面がシラン化合物で処理されたコロイダルシリカを得た。続いて、イソプロパノールを留去した後にトルエン(沸点110.6℃)を添加することを繰り返し、完全にイソプロパノールをトルエンに置換することにより、トルエン中に分散され、表面がシラン化合物で処理されたコロイダルシリカを得た。
<光硬化性樹脂組成物の製造>
固形分換算の質量部で、上記の側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)100部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤(a−2))3部、上記のコロイダルシリカ(無機微粒子(a−3))66部からなる光硬化性樹脂組成物を、プロペラ型ミキサーで攪拌して調製した。
<光硬化性樹脂層を有するアクリル樹脂フィルム、成形品の製造>
実施例1〜3で得られたアクリル樹脂フィルム上に光硬化性樹脂組成物をコンマロールコーターにて塗工幅250mmで塗工を行った。引き続いて、下記表1の温度条件に設定したトンネル型乾燥炉(巾800mm,高さ100mm,長さ8m,4つの乾燥ゾーン(1ゾーンの長さ2m)に分割,シートの動きに対して向流になるように熱風を送り込む方式)の中を、10m/分の速度で通過させて溶剤を揮発させ、厚さ8μmの光硬化性樹脂層を形成した。この時の各乾燥ゾーンの滞在時間を下記表1に示す。
【0132】
【表1】
Figure 2004346193
【0133】
続いて、幅200mmにスリットして20mの長さにABS製コアにロール状に巻き取った。
【0134】
この光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムを、光硬化性樹脂組成物の層が金型の内壁面に向き合うように金型内に配置し、次いで赤外線ヒーターにより温度350℃で10秒間予備加熱した後、さらに加熱を行いながら真空吸引することにより金型形状にアクリル樹脂フィルムを追従させた。
【0135】
次に、成形温度280〜300℃、金型温度40〜60℃の条件において、ポリカーボネート樹脂を基材樹脂として用いてインサート成形を行い、光硬化性樹脂組成物の層を有するアクリル樹脂フィルムが成形品表面に密着したインサート成形品を得た。
【0136】
次いで、紫外線照射装置を用いて、約700mJ/cmの紫外線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させ、インサート成形品を得た。
【0137】
得られた成形品は、それぞれ深み感を有するゴールドメタリック調、シルバーメタリック調、ブルーメタリック調の外観を示した。また、耐磨耗性に優れたものであった。
【0138】
<実施例8>
実施例4で得られたアクリル樹脂フィルムと、1mm厚のABSシート(「ダイヤペットABS SW7 白色」(三菱レイヨン社製;商品名))を、ゴールドメタリック調の外観を有するアクリル樹脂フィルム面がABSシートに接するように熱ラミネートして、アクリル樹脂フィルムを得た。このアクリル樹脂フィルムを用いて真空成形を行った。続いて不要部分を取り除いた後、アクリル樹脂フィルムを射出成形金型に装着して、ABS樹脂(UMG ABS(株)製、商品名:ダイヤペットABSバルクサムTM25B 白色)を射出成形しインサート成形品を得た。
【0139】
得られたインサート成形品は深み感を有するゴールドメタリック調の外観を示した。
【0140】
<実施例9〜11>
カーボンブラックの添加量を0.2質量部とする以外は、実施例1〜3と同様にそれぞれ実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0141】
得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品は、それぞれ実施例1〜3で得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品と比較して、やや黒味感を有するメタリック外観を示した。
【0142】
<実施例12〜14>
金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウムの添加量を6質量部とする以外は、実施例1〜3と同様にそれぞれ実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜は良好であった。
【0143】
得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品は、それぞれ実施例1〜3で得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品と比較して、輝度が高いメタリック外観を示した。
【0144】
<比較例1〜3>
カーボンブラックを用いない以外は実施例1〜3と同様に実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0145】
得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品は、それぞれ実施例1〜3で得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品と比較して、ホワイトメタリック調外観となり、それぞれゴールドメタリック調、シルバーメタリック調、ブルーメタリック調の外観を示さなかった。
【0146】
<比較例4〜6>
カーボンブラックの添加量を2.5質量部とする以外は実施例1〜3と同様に実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0147】
得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品は、それぞれ実施例1〜3で得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品と比較して、黒味が非常に強い外観となり、またメタリック調の外観を示さなかった。
【0148】
<比較例7〜9>
金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウムを用いない以外は実施例1〜3と同様に実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0149】
得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品はいずれもメタリック調の外観を示さなかった。
【0150】
<比較例10〜12>
金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウムの添加量を35質量部とする以外は実施例1〜3と同様に実施した。頻繁にフィルム切れが発生したためアクリル樹脂フィルムが得られなかった。
【0151】
<比較例13〜15>
カーボンブラックを用いない以外は実施例5〜7と同様に実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0152】
得られた光硬化性アクリル樹脂フィルム、及び成形品は、それぞれ実施例5〜7で得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品と比較して、ホワイトメタリック調外観となり、ゴールドメタリック調、シルバーメタリック調、ブルーメタリック調の外観を示さなかった。
【0153】
<比較例16〜18>
カーボンブラックの添加量を2.5質量部とする以外は実施例5〜7と同様に実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0154】
得られた光硬化性アクリル樹脂フィルム、及び成形品は、それぞれ実施例5〜7で得られたアクリル樹脂フィルム、及び成形品と比較して、黒味が非常に強い外観となり、またメタリック調の外観を示さなかった。
【0155】
<比較例19〜21>
金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウムを用いない以外は実施例5〜7と同様に実施しアクリル樹脂フィルムおよび成形品を得た。製膜性は良好であった。
【0156】
得られた光硬化性アクリル樹脂フィルム、及び成形品はいずれもメタリック調の外観を示さなかった。
【0157】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明のアクリル樹脂フィルムを用いることで種々のメタリック調の質感を有する成形品を提供することができる。これらの成形品は良好なメタリック感を有し、車輌内装部品あるいは車輌外装部品として特に有用である。

Claims (6)

  1. アクリル樹脂と、該アクリル樹脂100質量部に対して、金属酸化物で表面コートしたフレーク状酸化アルミニウム0.01〜30質量部及びカーボンブラック0.001〜2質量部とを含有する、厚み10〜500μmのアクリル樹脂フィルム。
  2. 請求項1に記載のアクリル樹脂フィルム上に、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)と、光重合開始剤(a−2)とを含む光硬化性樹脂組成物(A)の層を有するアクリル樹脂フィルム。
  3. 前記光硬化性樹脂組成物(A)が、無機微粒子(a−3)を含有する請求項2に記載のアクリル樹脂フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルムに、樹脂シートを貼り合わせた積層シート。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルムが基材樹脂に積層された成形品。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルムが表面の少なくとも一部に配置された車輌用部品。
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