JP2004345971A - クロロゲン酸エステル誘導体を用いた抗インフルエンザウイルス剤 - Google Patents
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Abstract
【解決する手段】クロロゲン酸のエステル誘導体、好ましくはクロロゲン酸エチルエステルを抗ウイルス剤の有効成分として用いる。また、食品、飼料、医薬品、医薬部外品または日用品等の各種製品に上記クロロゲン酸のエステル誘導体を配合することによってインフルエンザの感染や発症の予防に有効な製品を調製する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は抗ウイルス剤に関する。より詳細には、本発明はインフルエンザウイルスの感染を抑制し、また感染したウイルスの増殖を抑制する作用を有する作用を有することによってインフルエンザの予防及び改善(治療)に有用な抗インフルエンザウイルス剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によって生じるウイルス感染性疾患の一つである。特にA型インフルエンザウイルスは、亜型がいくつもあるうえにこれらは遺伝子交雑や点変異等による抗原性の変化に伴って種々変化するという特徴を有するため、有効な予防・治療薬がなく、世界的規模で周期的に大流行を繰り返しているのが実情である。
【0003】
従来、インフルエンザの治療には、塩酸アマンタジン、塩酸リマンタジン、インターフェロン、またはリバビリンなどの化学療法剤が使用されている。しかし、これらの化学療法剤については、副作用、耐性ウイルスの出現の危険性、血清型相違による効果の喪失といった問題が指摘されている(例えば非特許文献1参照のこと)。このため、副作用がなく人体に安全でしかも効果の高い抗インフルエンザウイルス剤の開発が求められている。
【0004】
このような観点から今まで検討提案されている抗インフルエンザウイルス剤としては、茶ポリフェノールを有効成分とするもの(例えば特許文献1参照のこと)、茶サポニンを有効成分とするもの(例えば特許文献2参照のこと)、桂枝二越婢一湯などの特定の生薬を有効成分とするもの(例えば特許文献3参照のこと)を挙げることができる。
【0005】
ところで、クロロゲン酸やカフェー酸などのジヒドロキシケイ皮酸等には従来より、抗酸化作用、退色防止作用、活性酸素・フリーラジカル消去作用、抗癌作用、抗炎作用、紫外線吸収作用、皮膚老化防止作用、メラニン生成抑制作用、抗菌作用及び抗レトロウイルス作用があることが知られている。
【0006】
特に抗菌作用に関しては、例えば特許文献4等に、芳香環に2以上の水酸基のついたポリフェノール化合物(クロロゲン酸やカフェー酸など)が大腸菌などの細菌に対して抗菌作用を有することが記載されている。また、抗レトロウイルス作用に関しては、例えば特許文献5等にクロロゲン酸やカフェー酸等といったフェノール性化合物の2量体や多量体には逆転写酵素阻害活性があり、該活性に基づいて逆転写酵素作用で複製するレトロウイルス(例えばHIV)に対して抗ウイルス作用を発揮することが、また特許文献6等にクロロゲン酸と共通構造を有するカフェオイルキナ酸誘導体又はジカフェオイルキナ酸誘導体にB型肝炎ウイルスやレトロウイルスに対するDNA複製阻害作用があり、B型肝炎やレトロウイルス関連疾患(例えばAIDS)の治療薬として有用であることが記載されている。しかしながら、クロロゲン酸、特にクロロゲン酸のエステル誘導体にインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用があることについては一切知られていない。
【0007】
【非特許文献1】三淵一二編、微生物学、改訂第2版、151−175頁、南江堂、1993
【0008】
【特許文献1】特開平3−101623号公報
【0009】
【特許文献2】特開平11−19322242号公報
【0010】
【特許文献3】特開平6−199680号公報
【0011】
【特許文献4】特開2000−169307号公報
【0012】
【特許文献5】特開2000−217588号公報
【0013】
【特許文献6】特表2000−517323号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、新たに抗インフルエンザウイルス作用を有する物質を見いだし、該物質を有効成分とする新規な抗インフルエンザウイルス剤を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、抗インフルエンザウイルス剤の有効成分となる新たな物質を求めて日夜鋭意研究を重ねていたところ、クロロゲン酸、特にクロロゲン酸のエステル誘導体にインフルエンザウイルスに対する優れた抗ウイルス作用があることを見いだした。さらに当該クロロゲン酸エステル誘導体の抗ウイルス作用はインフルエンザウイルスの型(A型及びB型、A型の亜型)の別を問わず、種々のインフルエンザウイルスの型に効果があることを確認した。本発明は、こうした知見に基づいて完成したものである。
【0016】
すなわち、本発明は下記に掲げる抗インフルエンザウイルス剤である:
項1.クロロゲン酸のエステル誘導体を有効成分として含有する抗インフルエンザウイルス剤。
項2.クロロゲン酸のエステル誘導体がクロロゲン酸エチルエステルである項1に記載の抗インフルエンザウイルス剤。
項3.A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスの両方に対して、感染抑制作用と増殖抑制作用を有することを特徴とする項1または2に記載の抗インフルエンザウイルス剤。
項4.A型インフルエンザウイルスがAH1N1型またはAH3N2型である項3に記載の抗インフルエンザウイルス剤。
項5.インフルエンザウイルス感染の抑制またはインフルエンザ発症の予防に用いられる項1乃至4のいずれかに記載の抗インフルエンザウイルス剤。
項6.1乃至5のいずれかに記載する抗インフルエンザウイルス剤を含有する食品、飼料、医薬品、医薬部外品または日用品。
項7.インフルエンザウイルス感染の抑制またはインフルエンザ発症の予防に用いられる項6に記載する食品、飼料、医薬品、医薬部外品または日用品。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の抗インフルエンザウイルス剤はクロロゲン酸のエステル誘導体を有効成分とするものである。
【0018】
クロロゲン酸のエステル誘導体としては、具体的には、クロロゲン酸のキナ酸部の−COOHの水素原子がメチル基に置換されたクロロゲン酸メチルエステル、エチル基に置換されたクロロゲン酸エチルエステル、プロピル基に置換されたクロロゲン酸プロピルエステル、イソプロピル基に置換されたクロロゲン酸イソプロピルエステル、及びブチル基に置換されたクロロゲン酸ブチルエステル等を例示することができる。中でも好ましくはクロロゲン酸エチルエステルである。
【0019】
これらクロロゲン酸のエステル誘導体は、商業的に入手できるクロロゲン酸を出発原料として、常法のエステル化反応により製造することができる。具体的には例えば、クロロゲン酸を、アルコール及び酸(例えば硫酸、塩酸またはトリクロロ酢酸等)の存在下でインキュベートすることによってクロロゲン酸をエステル化することができる。なお、この場合、アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールまたはブチルアルコールを用いことによって、それぞれクロロゲン酸メチルエステル、クロロゲン酸エチルエステル、クロロゲン酸プロピルエステル、クロロゲン酸イソプロピルエステル、またはクロロゲン酸ブチルエステルを得ることができる。
【0020】
このようにして得られるクロロゲン酸のエステル誘導体、特にクロロゲン酸エチルエステルは、後記の実施例に示すようにインフルエンザウイルスに対して優れた増殖抑制作用並びに感染抑制作用を有する。またクロロゲン酸やその誘導体はポリフェノールとして多くの野菜や果実に含まれている成分であり、動物や人に対する安全性が高いことが知られている。これらのことから、クロロゲン酸のエステル誘導体、特にクロロゲン酸エチルエステルはインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤として食品、飼料、医薬部外品又は医薬品などの成分として用いることができ、これによりインフルエンザウイルス感染を抑制したり、該感染によって生じるインフルエンザの発症を予防したり、またその症状の緩和・改善に有効に使用することができる。
【0021】
またクロロゲン酸のエステル誘導体、特にクロロゲン酸エチルエステルは、後記の実施例に示すようにA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスのいずれに対しても優れた増殖抑制作用並びに感染抑制作用を発揮する。さらに、大規模な流行を繰り返すA型インフルエンザウイルスの亜型(AH1N1型、AH3N2型)のいずれに対しても優れた増殖抑制作用並びに感染抑制作用を発揮する。このことから、本発明のクロロゲン酸のエステル誘導体、特にクロロゲン酸エチルエステルは、インフルエンザウイルスの型に関わらず広くインフルエンザウイルスの感染を抑制したり、また該感染によって生じるインフルエンザの発症を予防しまたその症状を改善することができ、抗インフルエンザウイルス剤の有効成分として、また上記効果を有する食品、飼料、医薬部外品、医薬品、その他の製品(日用品)の成分として有用である。
【0022】
これらの食品、飼料、医薬部外品、医薬品、その他の製品(日用品)に配合されるクロロゲン酸のエステル誘導体の割合は、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用を有することを限度として特に制限されない。例えば食品、飼料、医薬部外品または医薬品の場合、通常、その単位投与(単位摂取)あたりにクロロゲン酸のエステル誘導体が、少なくとも0.001g含まれるような割合を目安として適宜調整配合することができる。
【0023】
特にクロロゲン酸のエステル誘導体を有効成分とする医薬品は、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤(インフルエンザの予防剤及び/または治療剤)として、インフルエンザウイルス感染の予防またはインフルエンザ発症の予防、並びに発症後はインフルエンザの症状の改善や治療に使用することができる。その投与量は、投与目的、患者(ヒトや非ヒト動物を含む)の年齢や症状に応じて適宜選択することができる。例えば、成体1日あたりの投与量として、通常0.001〜0.3gを挙げることができ、これを1〜数回に分けて投与することができる。また、鼻や喉に直接噴霧する場合は、クロロゲン酸のエステル誘導体を水で0.02〜1w/v%濃度に調整した液を数回噴霧することによって使用することができる。
【0024】
食品または飼料は、食品または飼料の通常の製造過程においてクロロゲン酸のエステル誘導体を一成分として添加配合することによって製造することができる。また、医薬品または医薬部外品は、クロロゲン酸のエステル誘導体を有効成分として用い、必要に応じて薬学的に許容される担体(例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤等)や添加剤(例えば、香料、矯味剤、着色料等)を配合して、常法に従って錠剤、粉末剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、舌下錠、トローチ、うがい薬、点鼻薬または噴霧剤などの各種の形態に製剤化することができる。
【0025】
食品、飼料、医薬部外品又は医薬品等の形態または種類としては、特に制限されず、任意の形態または種類をとることができるが、口や鼻孔から侵入してくるインフルエンザウイルスによる感染を抑制する目的で使用する場合は、有効成分として使用するクロロゲン酸のエステル誘導体が口内や喉粘膜に接触するような態様で使用されることが好ましい。かかる観点から、食品としてはドリンクなどの飲料形態、キャンディー、トローチまたはチューインガムなどのように口腔内で長く留まる態様の食品が好ましく、また医薬品または医薬部外品等としてはシロップ剤、舌下錠、トローチ、洗口液、口内清涼剤、うがい液、うがい薬、点鼻薬、喉噴霧剤、歯磨剤等といった形態のものが好ましい。
【0026】
また、本発明のクロロゲン酸のエステル誘導体は、上記食品、飼料、医薬部外品又は医薬品以外にも、抗インフルエンザウイルス効果を期待して、特にインフルエンザウイルス感染の抑制またはインフルエンザ発症の予防を目的として、日用品の成分に用いることもできる。例えば、加湿器の水への添加液として使用しても、またマスク、ガーゼ、包帯、タオル、ハンカチ、おしぼり、ティッシュ、ウエットティッシュ、手袋、下着、白衣、手術着、オムツ、寝装用品(布団、枕、シーツ、枕カバー、寝間着)に含浸または練り込んで使用することもできる。また、居間やトイレなどの生活空間に消臭や抗菌を目的として噴霧されるスプレーに配合して使用することも可能である。
【0027】
これら各種製品中におけるクロロゲン酸のエステル誘導体の含有量も、これらの製品がインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用を有することを限度として特に制限されず、前述する医薬品への配合割合を基準として調整することができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら制限されるものではない。
【0029】
製造例1
クロロゲン酸10.8gを99.5v/v%エチルアルコール1080mlに溶解し、これに36N硫酸を12ml添加して40℃で3時間振盪した(180rpm)。得られた反応液を酢酸エチルエステルで抽出し、該抽出液をハイポーラス型吸着樹脂カラムクロマトグラフィー(HP−20カラム:三菱化学(株)製)にかけ、波長330nmにおける吸光度を指標として溶出画分を分取した。得られた溶出画分を減圧濃縮し、さらにこれをエチルアルコールとエチルエーテルの混合溶媒を用いて再結晶することによって白色の粉末7g(収率約60%)を取得した。
【0030】
得られた粉末をLC−MS分析(ESIネガティブイオンモード)にかけて、検出された脱プロトン化分子の位置、並びに1H−NMRの結果から、当該粉末がクロロゲン酸エチルエステル(分子量382)であることを確認した。
【0031】
1H−NMR(270MHz、CD3OD):δppm:7.55(1H,d,16Hz)、6.9(1H,br S)、6.72(1H,br S)、6.57(1H,br S)、6.07(1H,d,16Hz)、5.23(1H,m)、4.13(3H,br S)、3.73(1H,br S)、2.2(2H,m)、1.88−2.03(2H,m)、1.25(3H,m)。
【0032】
実施例1 インフルエンザウイルスに対する増殖抑制作用
クロロゲン酸エチルエステル及びクロロゲン酸を用いて、インフルエンザウイルスに対する増殖抑制作用を調べた。なお、インフルエンザウイルスとして、A型のAH1N1型(A/島根/48/2002株)及びAH3N2型(A/島根/122/2002株)、並びにB型(B/島根/2/2002株)を用いた。
【0033】
まず、10%子牛血清を含むイーグルMEM培地で増殖させたMDCK(Madin−Darby Canine Kidney)細胞を12穴のマルチトレイで48時間培養して単一層を形成させ、次いでこれに一定量(200PFU/ml)のインフルエンザウイルスA型(AH1N1型、AH3N2型)またはB型の各株をそれぞれ20μl/穴の割合で添加して、35℃で60分間処理してウイルス感染させた。その後、上記12穴マルチトレイの各穴の培地を、クロロゲン酸エチルエステルまたはクロロゲン酸を100μl/mlの割合で含む維持培地で交換して、35℃で3日間培養した。
【0034】
そして培養3日目のインフルエンザウイルス量をプラーク法により測定した。なお、上記維持培地として、インフルエンザウイルスA型の場合は7%炭酸水素ナトリウム5ml、5%牛血清アルブミン8ml、トリプシン(2000単位)1ml、及び30%グルコース2mlを含むMEMダルベッコ培地(維持培地1)200mlを、またインフルエンザウイルスB型の場合は7%炭酸水素ナトリウム5ml、5%牛血清アルブミン8ml、及び30%グルコース2mlを含むMEMダルベッコ培地(維持培地2)200mlをそれぞれ用いた。
【0035】
また、対照試験として上記クロロゲン酸エチルエステルやクロロゲン酸をいずれも配合しないで同様に培養した試料についても同様にしてインフルエンザウイルス量をプラーク法を用いて計測した(コントロール)。
【0036】
クロロゲン酸エチルエステルまたはクロロゲン酸の添加によるインフルエンザウイルスの増殖抑制率(%)をそれぞれ下式より求め、これらのインフルエンザウイルスに対する増殖抑制活性を評価した。
【0037】
【数1】
【0038】
結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
この結果からわかるように、クロロゲン酸及びそのエステル誘導体であるクロロゲン酸エチルエステルにはいずれもインフルエンザウイルスに対する増殖抑制作用があることが示された。クロロゲン酸エチルエステルの増殖抑制作用はクロロゲン酸に比して顕著に高く、このことからクロロゲン酸をエステル化することによりインフルエンザウイルスに対する増殖抑制作用が増強することがわかった。
【0041】
さらに上記の結果から、クロロゲン酸エステル誘導体にはインフルエンザウイルスのA型(AH1N1型、AH3N2型)並びにB型の別に関わらず、広範囲に亘ってインフルエンザウイルスの増殖を抑制する作用があることがわかった。これらのことから、クロロゲン酸エステル誘導体はインフルエンザウイルスの型を問わず、広くインフルエンザウイルスの感染または感染による発症を予防しまたは治療する抗インフルエンザウイルス剤の有効成分として有用であると思われる。
【0042】
実施例2 インフルエンザウイルスに対する感染抑制作用
クロロゲン酸エチルエステルとクロロゲン酸について、インフルエンザウイルス(A型:[A/島根/48/2002株]、[A/島根/122/2002株]、B型:[B/島根/2/2002株])の感染抑制作用を調べた。
【0043】
具体的には、各インフルエンザウイルス(40PFU/ml)とクロロゲン酸エチルエステル(100ppm)水溶液またはクロロゲン酸(100ppm)水溶液とをそれぞれ等量混合して37℃で60分間反応させ、その後これをインフルエンザウイルス試料として、12穴組織培養用プレートの穴中で単層培養したMDCK細胞に0.2ml/穴の割合で接種し、35℃で60分間培養して該細胞に吸着させた。次いで、リン酸緩衝食塩水(pH8.0)で細胞を洗浄し、洗浄後、実施例1と同様に調製したインフルエンザ維持液体培地(インフルエンザウイルスA型に対しては維持培地1、インフルエンザウイルスB型に対しては維持培地2)をそれぞれの株に2ml/穴の割合で添加し、5%炭酸ガス孵卵器を用いて35℃で培養した。そして、細胞変性効果(CPE)の出現状況を観察し、当該CPEの出現を指標としてインフルエンザウイルスの感染性を評価した。なお、対照試験として、MDCK細胞に接種するインフルエンザウイルス試料として上記のインフルエンザウイルス試料に代えて各インフルエンザウイルス(40PFU/ml)とMEMダルベッコ液体培地(MEMダルベッコ液体培地200mlに7%炭酸水素ナトリウム水溶液5mlを含む)との等量混合物(コントロール試料)を用いて、同様にしてインフルエンザウイルスの感染性を評価した。
【0044】
その結果、上記コントロール試料及びクロロゲン酸を配合したインフルエンザウイルス試料を用いた場合は5%炭酸ガス孵卵器(35℃)での培養3日目にはCPEが出現したのに対し、クロロゲン酸エチルエステルを配合したインフルエンザウイルス試料を用いた場合は、培養3日目でもCPEの出現は観察されなかった。このことから、クロロゲン酸のエステル誘導体には、インフルエンザウイルスの型(A型:AH1N1型、AH3N2型、及びB型)の別にかかわらず、広範囲にわたってインフルエンザウイルスの感染を抑制する作用があること、すなわちクロロゲン酸のエステル誘導体は広範囲の型にわたりインフルエンザウイルスの感染を予防する作用があることがわかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、クロロゲン酸のエステル誘導体、特にクロロゲン酸エチルエステルを抗インフルエンザウイルス剤として有効利用することができる。当該抗インフルエンザウイルス剤は、野菜や果物に含まれているクロロゲン酸の誘導体であるため動物や人体に対して安全性が高く、副作用の心配なく使用することができる。このため、本発明の抗インフルエンザウイルス剤はインフルエンザの感染及び発症の予防または治療・改善を目的として、広く食品、飼料、医薬品(ヒト用、非ヒト動物用)、医薬部外品、日用品(雑品)等の製品に利用することができる。また、本発明の抗インフルエンザウイルス剤及び該抗インフルエンザウイルス剤を含有する上記各種の製品は、A型およびその亜型(AH1N1型、AH3N2型)、並びにB型といったインフルエンザウイルスの型の別を問わず、広くインフルエンザウイルスに対して抗ウイルス活性を有するため、インフルエンザの感染及び発症の予防により有効に利用することができる。
Claims (5)
- クロロゲン酸のエステル誘導体を有効成分として含有する抗インフルエンザウイルス剤。
- クロロゲン酸のエステル誘導体がクロロゲン酸エチルエステルである請求項1に記載の抗インフルエンザウイルス剤。
- A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスの両方に対して、感染抑制作用と増殖抑制作用を有することを特徴とする請求項1または2に記載の抗インフルエンザウイルス剤。
- A型インフルエンザウイルスがAH1N1型またはAH3N2型である請求項3に記載の抗インフルエンザウイルス剤。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載する抗インフルエンザウイルス剤を含有する食品、飼料、医薬品、医薬部外品または日用品。
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