JP2004345902A - 石英ガラスの製造方法、石英ガラス、光学部品及び光ファイバ - Google Patents

石英ガラスの製造方法、石英ガラス、光学部品及び光ファイバ Download PDF

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Abstract

【課題】設定値のフッ素添加量を多孔質石英ガラス母材へ正確に添加できる方法、特に大型の石英ガラスにおいても均一にフッ素を添加可能とし、紫外線透過特性の良好なフッ素添加石英ガラスの提供。
【解決手段】多孔質石英ガラス母材1をフッ素化合物含有雰囲気下で加熱して多孔質石英ガラス母材中にフッ素を添加する工程Iの後、フッ素化合物含有雰囲気または不活性ガス雰囲気下でさらに高温で加熱して透明ガラス化する工程IIを有する石英ガラスの製造方法において、前記工程Iにおける多孔質石英ガラス母材の開気孔率が70%以上であることを特徴とする石英ガラスの製造方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種光源を用いる装置や半導体製造用装置等の光学部品等に用いられる紫外領域の透過特性が良好なフッ素含有石英ガラスの製造方法、該方法により得られたフッ素含有石英ガラス、該石英ガラスを用いて作製された光学部品及び光ファイバに関する。
【0002】
【従来の技術】
石英ガラスは、近赤外域から紫外域にわたる広い波長域において高い透過率を有する他、各種物理特性の温度変化が緩やかである等、光学材料として優れた特徴を有することから、光ファイバや光導波路等の光伝送媒体、各種光源を用いる装置や半導体製造用装置等の光学部品、材料として広く使用されている。
また石英ガラス中にフッ素を添加することにより屈折率が低下することから、光ファイバ、光導波路を形成する石英ガラスとして、フッ素添加石英ガラスが多用されている。さらにフッ素を添加することにより紫外域〜真空紫外域での透過特性の向上が可能であることがわかり、紫外及び真空紫外光源を用いる光学部品、あるいはフォトマスク等の基板として利用する検討が行われている。
【0003】
このフッ素添加石英ガラスの製法としては、SiCl,SiHCl等の原料ガスと共に、Hもしくは炭化水素等の燃焼ガス、O等の助燃性ガス及びAr,He等の不活性ガスをバーナに導入し、バーナ火炎中で原料ガスを加水分解もしくは熱酸化反応させることにより石英ガラス微粒子を生成させ、この石英ガラス微粒子を出発部材に堆積させることにより多孔質石英ガラス母材を作製し、得られた多孔質石英ガラス母材をフッ素化合物ガス含有雰囲気下で加熱処理することによりフッ素を添加し、さらに高温で加熱して透明ガラス化する方法が知られている。
このような従来技術においては、フッ素添加工程における雰囲気ガス中のフッ素化合物の分圧、処理温度、処理時間を同じにしても、多孔質母材の嵩密度により添加されるフッ素量に大きな差が生じることが知られており、これを利用して多孔質母材中に意識的に半径方向に嵩密度分布をつけることにより、添加されるフッ素量の母材半径方向の濃度分布、すなわち半径方向の屈折率分布を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、嵩密度分布を一定にすることにより半径方向のフッ素濃度分布及び屈折率分布を均一にする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特公平5−1221号公報
【特許文献2】
特公平6−65614号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した通り、従来技術においては、フッ素化合物含有ガス雰囲気下における加熱処理によって多孔質石英ガラス母材へフッ素を添加する場合に、石英ガラス母材の嵩密度がフッ素濃度に影響を及ぼしていることが知られていたが、例えば特許文献2に記載されているように嵩密度が一定となるように多孔質石英ガラス母材を作製し、フッ素化合物含有雰囲気下で加熱処理して透明ガラス化しても、得られた石英ガラスのフッ素含有量に変動が生じる場合があり、特に大型の石英ガラスを作製する場合においてその変動が顕著になる傾向があった。さらに近年では、光伝送媒体や光学部品用の石英ガラスでは大型化と共に、従来に増して高い屈折率制御性すなわちフッ素濃度分布制御性が要求されるようになり、従来技術において、例えば半導体製造装置等の光学部品とした紫外〜真空紫外領域での使用目的においては、屈折率変動が大きく要求特性を満たさなくなり、歩留を低下させたり、耐紫外線照射特性が低下する等の問題が生じる場合があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、設定値のフッ素添加量を多孔質石英ガラス母材へ正確に添加できる方法、特に大型の石英ガラスにおいても均一にフッ素を添加可能とし、紫外線透過特性の良好なフッ素添加石英ガラスの製造方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明者らが種々の調査を行った結果、同じ嵩密度の多孔質石英ガラス母材であっても、開気孔率に差があることが確認されると共に、この差は多孔質石英ガラス母材を作製するガラス微粒子堆積工程及び多孔質石英ガラス母材の熱処理工程での条件に依存することがわかり、さらに種々検討を行った結果、本発明に至った。
本発明は、多孔質石英ガラス母材をフッ素化合物含有雰囲気下で加熱して多孔質石英ガラス母材中にフッ素を添加する工程Iの後、フッ素化合物含有雰囲気または不活性ガス雰囲気下においてさらに高温で加熱して透明ガラス化する工程IIを有する石英ガラスの製造方法において、前記工程Iにおける多孔質石英ガラス母材の開気孔率が70%以上であることを特徴とする石英ガラスの製造方法を提供する。
本発明の方法において、多孔質石英ガラス母材をフッ素化合物含有雰囲気下で加熱して多孔質石英ガラス母材中にフッ素を添加する工程Iに先立ち、不活性ガスに加えて酸素、塩素または塩素化合物の内、少なくとも何れか1種以上を含む雰囲気下で加熱する工程IIIを含むことが好ましい。
また本発明は、前記製造方法によって製造された石英ガラスであって、OH基及び塩素含有量が1ppm以下、フッ素含有量が1000ppm以上10000ppm以下、断面内の80%以上の領域における屈折率の変動が5×10−5以下、ArFエキシマレーザを80mJ/cmのパワー密度で1×10ショット照射した際の透過率低下が1%以下であることを特徴とする石英ガラスを提供する。
さらに本発明は、前記石英ガラスを用いて作製された光学部品を提供する。
また本発明は、前記石英ガラスを用いて作製された光ファイバを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る石英ガラスの製造方法を模式的に説明する図であり、この図中符号1は多孔質石英ガラス母材、2は開気孔、3は閉気孔、4は石英ガラスである。
【0009】
本発明に係る石英ガラスの製造方法は、多孔質石英ガラス母材1をフッ素化合物含有雰囲気下で加熱して多孔質石英ガラス母材1中にフッ素を添加する工程Iの後、該多孔質石英ガラス母材1をフッ素化合物含有雰囲気または不活性ガス雰囲気下でさらに高温で加熱して透明ガラス化する工程IIを有し、前記工程Iにおける多孔質石英ガラス母材1の開気孔率を70%以上とすることを特徴としている。
【0010】
本発明の方法において、多孔質石英ガラス母材1を製造する方法は特に限定されず、光学用石英ガラス、特に光ファイバ製造用の多孔質石英ガラス母材を製造するために従来周知の方法、例えばOVD法(Outside Vapor Deposition Method)、VAD法(Vapor−phase Axial Deposition Method)等を用いることができる。
また、多孔質石英ガラス母材1に前記工程I及び工程IIを施すための装置は、従来より多孔質石英ガラス母材の透明ガラス化のために使用される加熱炉などの装置を用いることができる。
【0011】
加熱処理開始前の多孔質石英ガラス母材1は、ガラス微粒子が部分的に接合連結した状態にあり、図1(A)に示すように、気孔は殆どが開気孔2の状態である(状態A)。
加熱を開始すると、ガラス微粒子が接触する領域でネックを形成し、繋がり始めて開気孔2の一部がガラスに囲まれ、図1(B)に示すように、開口が閉塞して閉気孔3となり(状態B)、開気孔率が減少し始める。
そして、さらに高温になり、母材の焼結が進行すると、図1(C)に示すように、嵩密度の増加と共に開気孔2は閉気孔3となる(状態C)。
この際、加熱雰囲気が、ガラス構造中を拡散し易い分子径の小さな水素やヘリウム等の雰囲気であるか、または実質的な真空状態とすることによって閉気孔3を収縮させ、最終的には図1(D)に示すように、気孔のない透明な石英ガラス4とすることが可能となる(状態D)。
【0012】
ここで、状態Bにある多孔質石英ガラス母材1では、同一嵩密度であっても単位体積当たりに占める開気孔体積が異なっていると、多孔質石英ガラス母材1内へ拡散してガラス中に取り込まれるフッ素量が異なってくると考えられる。
なお、多孔質石英ガラス母材1の嵩密度や開気孔率が異なるという状態は、多孔質石英ガラス母材1の作製条件やその後の加熱処理履歴によって変わってくる。多孔質石英ガラス母材1作製条件としては、ガラス微粒子作製および多孔質石英ガラス母材堆積面の温度等が考えられ、例えばVAD法等の気相合成反応では、原料の流速、火炎形成に用いられる燃焼ガス、助燃性ガス、不活性ガスの流量と流速及び火炎温度、堆積温度及びその分布形状等により決定される。
【0013】
また、多孔質石英ガラス母材1の加熱処理として、フッ素含有ガス雰囲気での加熱処理に先立ち、塩素等のハロゲン含有ガス雰囲気下での加熱処理を実施してもよい。なお塩素含有雰囲気下での加熱処理は、可視〜赤外領域の透過特性を劣化させる水酸基、水分及び微量金属成分を除去する効果を有するが、逆に塩素は紫外領域の透過特性を悪化させるため、それを低減するために酸素を含有した雰囲気で処理を行う場合もある。なおこの処理の効果は、加熱処理温度を高温にするほど大きくなるが、その一方でガラスの凝集・収縮を招き、微粒子間のネック成長が進んで開気孔率が低下することがある。このような開気孔率の低下が生じた場合、次のフッ素含有ガス雰囲気下での加熱に際し、フッ素取り込み領域が少なくなるため、最終的に得られる石英ガラスのフッ素添加量が少なくなってしまう部分が生じ、均一にフッ素を添加できなくなる。
【0014】
本発明者らは前記のような検討を行った結果、最終的に得られる石英ガラス4のフッ素添加量を均一に添加させた大型の石英ガラス母材を作製するためには、フッ素含有雰囲気下での加熱開始時における開気孔率を70%以上とすることが有効であることを見いだした。
【0015】
フッ素含有雰囲気下での加熱開始時における多孔質石英ガラス母材1の開気孔率が70%未満であると、フッ素が多孔質石英ガラス母材1内に十分拡散侵入できず、十分なフッ素添加量が得られない、もしくは均一なフッ素濃度とするために非常に長時間を要する。
【0016】
また、多孔質石英ガラス母材1をフッ素化合物含有雰囲気下で加熱して、多孔質石英ガラス母材1中にフッ素を添加する工程における温度は、800℃以上1200℃以下であることが好ましく、800℃以上1100℃以下とすることがさらに好ましい。
フッ素化合物含有雰囲気下での処理温度が低すぎる場合は、フッ素化反応及びガラス内部へのフッ素の拡散が十分に行われない。また、温度が1200℃を超えると、フッ素化反応及びガラス内部へのフッ素の拡散は速くなるが、粘度の低下によりネックの成長も急速に進み、一部の領域(例えば母材外周部)にのみフッ素がドープされ、均一にフッ素がドープされなくなる。
【0017】
ここで用いられるフッ素化合物としては、CF、C等のフルオロカーボン、SF、SiF等から選択することが可能である。
【0018】
なお、嵩密度及び開気孔率の測定は、JIS R 1634「ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法」に準拠し、媒液としてはイオン交換水を用いて行った。また、嵩密度の低い多孔質ガラス母材の場合は、媒液に浸漬した際に崩れてしまい形状を保てないことがあったので、この場合は以下のような方法で求めた。
【0019】
嵩密度:多孔質石英ガラス母材1から直方体状に試料を切り出し、試料各辺の長さを測定して有効部体積Veを求め、また当該部分の質量Weを測定し、嵩密度ρbを次式(1)により算出した。
ρb=We/Ve ・・・(1)
【0020】
開気孔率:多孔質石英ガラス母材1から直方体状に試料を切り出し、試料各辺の長さを測定して有効部体積Veを求め、また当該部分の質量Weを測定する。石英ガラス4の真密度:2.203g/cmとして質量Weに相当する体積Vgを求め、VeとVgとの差が開気孔Vpに相当するとして開気孔率Pbを次式(2)より算出した。
Figure 2004345902
【0021】
さらに前記の石英ガラスの製造方法によって作製された石英ガラス4は、OH基含有量が1ppm以下、フッ素含有量が1000ppm以上10000ppm以下とすることが好ましく、また断面内の80%以上の領域におけるフッ素濃度変化が100ppm以下、屈折率変動が5×10−5以下であることが望ましい。
OH基含有量が1ppmより多い場合、もしくはフッ素含有量が1000ppm未満の場合、Fエキシマレーザ等の波長170nm以下の真空紫外光の透過特性が低下する。またフッ素濃度が10000ppmを超える場合、径方向のフッ素濃度変化が大きくなり、屈折率の均一性が低下し、レンズ等の光学部品への適用が困難になると共に、後工程で加熱処理を行った際に一部のフッ素がガラス構造から脱離して、E´センタ等のガラス欠陥が発生し易くなり、紫外領域の透過特性が低下することがある。
【0022】
本発明の方法によれば、多孔質石英ガラス母材1の外径が200mmφ、加熱後の透明な石英ガラス4の外径が100mmφといった大型の石英ガラス4であっても、中心部まで十分に、しかも均一にフッ素を添加することができ、特に紫外領域の光学特性に優れた石英ガラス4を作製することが可能となる。
【0023】
また本発明は、前記石英ガラス4を用いて作製したレンズ、プリズムなどの光学部品を提供する。この光学部品は、前記石英ガラス4を所望形状に切り出し、鏡面研磨して作製できる。
この光学部品は、前記石英ガラス4を用いて作製されたものなので、均一にフッ素が添加され、屈折率変動が小さく、特に紫外領域の光学特性に優れている。
【0024】
さらに本発明は、前記石英ガラス4を用いて作製したシングルモード光ファイバ、マルチモード光ファイバ、偏波保持型光ファイバなどの光ファイバを提供する。この光ファイバは、前記石英ガラス4、または前記石英ガラス4と別のガラス(コアや応力付与部など)とを組み合わせた透明ガラス母材を、光ファイバの製造において使用される従来公知の線引炉などのファイバ製造装置を用いて製造することができる。
この光ファイバは、前記石英ガラス4を用いて作製されたものなので、均一にフッ素が添加され、屈折率変動が小さく、特に紫外領域の光学特性に優れている。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
石英製の出発部材を用意し、SiClを10L/分、Arを20L/分の定量供給、Hを100〜200L/分、Oを50〜100L/分の範囲で調整してバーナに供給し、出発部材上にガラス微粒子を堆積させ、外径約200mmの多孔質石英ガラス母材(No.1〜8)を作製した。別途同じ条件で作製した多孔質石英ガラス母材の一部を切り出した試料(No.1〜8)の開気孔率を測定したところ、表1に示すように各々72〜100%であった。
次いで、前記多孔質石英ガラス母材をHe流量10L/分とした加熱炉内に吊り下げ、1000℃において0.5%のO含有He雰囲気下で2時間予備加熱した後、700〜1200℃の各温度においてSiFガスを0.1L/分の流量で炉内に導入してSiF含有雰囲気下で5時間処理し、さらに1430℃に昇温して3時間加熱し、透明な石英ガラスを得た。
得られた石英ガラス(No.1〜8)から、直径100mm、厚さ15mmで光学研磨を両面に施した試料を作製し、この石英ガラス中のフッ素濃度をラマン分光法にて測定したところ、試料の中央から外周に向かって90%の領域における最大フッ素濃度は8200〜8300ppm、濃度分布は100ppm以下であった。
試料面内の屈折率変化量を干渉計を用いて測定したところ、各試料とも80%以上の領域で5×10−5以下の変動量であった。
また、赤外分光法を用いて測定したOH基濃度は検出限界(約1ppm)以下であった。
前記の試料について紫外領域透過率を試料の中央部と外周部とで測定したところ、図2中の曲線Aのように、波長155nm以上の領域で50%以上となり、中央部と外周部の透過率の差は殆ど見られなかった。また、全ての試料で波長157nmにおける透過率は中心、外周部共に80%以上と良好であった。
さらに、ArFエキシマレーザを80mJ/cmのパワー密度で1×10ショット照射した際の透過率低下は1%以下であった。
【0027】
【表1】
Figure 2004345902
【0028】
[実施例2]
実施例1のNo.3と同様な多孔質石英ガラス母材を作製し、該多孔質石英ガラス母材を加熱炉内に吊り下げ、表2の試料No.9〜12に示す通り1000〜1150℃の各温度において0.5%のCl及びO含有He雰囲気下で2時間予備加熱した後、1100℃においてSiFガス濃度を100ppm〜1.2%としたHe雰囲気下で5時間処理した後、1430℃で3時間加熱した透明な石英ガラスを得た。
別途同じ条件で予備加熱を実施した多孔質石英ガラス母材を炉から取り出し、その一部を切り出した試料(No.9〜12)の開気孔率を測定したところ、表2に示すように各々70〜97%であった。
作製した石英ガラスから、直径100mm、厚さ15mmで光学研磨を両面に施した試料を作製し、この石英ガラス中のフッ素濃度をラマン分光法にて測定したところ、試料の中央から外周に向かって90%の領域における各試料(No.9〜12)の最大フッ素濃度は、雰囲気SiF濃度に応じて1500〜9500ppmとなったが、濃度分布は100ppm以内であった。試料面内の屈折率変化率を干渉計を用いて測定したところ、各試料とも80%以上の領域で5×10−5以下の変動量であった。
また、赤外分光法を用いて測定したOH基濃度は検出限界(約1ppm)以下であった。
前記の試料について紫外領域透過率を試料の中央部と外周部とで測定したところ、実施例1と同様な透過スペクトルが得られ、全ての試料で波長157nmにおける透過率は中心、外周部共に80%以上と良好であった。
さらに、ArFエキシマレーザを80mJ/cmのパワー密度で1×10ショット照射した際の透過率低下は1%以下であった。
【0029】
【表2】
Figure 2004345902
【0030】
[比較例]
多孔質石英ガラス母材を加熱炉内に吊り下げ、表2の試料No.13〜16に示す1200〜1300℃の各温度において0.5%のCl含有He雰囲気下で3時間予備加熱し、SiF濃度を1%とした以外は、実施例2と同じ条件として透明な石英ガラスを得た。
別途同じ条件で予備加熱まで実施した多孔質石英ガラス母材を炉から取り出し、その一部を切り出した試料(No.13〜16)の開気孔率を測定したところ、表2に示した通り各々15〜60%であった。
作製した石英ガラスから、直径100nm、厚さ15mmで光学研磨を両面に施した試料を作製した。この試料で赤外分光法を用いて測定したOH基濃度は検出限界(約1ppm)以下であった。
これらの試料のフッ素濃度をラマン分光法にて測定したところ、試料の最外周部では約9000ppmドープされていたが、予備加熱処理温度が高く、開気孔率が低下すると共にフッ素がドープされている領域が狭まり、1250℃以上で加熱した試料の中心部は約100ppm未満であり、ほとんどフッ素がドープされなかった。
また、これらの試料の屈折率変動量は1×10−4以上であった。
さらに、前記のサンプルについて紫外領域透過率を試料の中央部と外周部で測定したところ、フッ素がドープされていなかった中央部の透過率は、図2中の曲線Bに示す通り163nm以下の波長範囲では50%以下となった。
また、ArFエキシマレーザを80mJ/cmのパワー密度で1×10ショット照射した際の透過率低下は径方向によって変化し、最外層部では1%程度であったが、中心部では3%以上となった。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法によれば、大型の石英ガラスであっても中心部分まで十分に、しかも均一にフッ素を添加することができ、特に紫外領域の光学特性の優れた石英ガラスを製造することが可能となる。
また、本発明の方法により製造される石英ガラス、該石英ガラスを用いて作製される光学部品及び光ファイバは、フッ素が均一に添加され、屈折率変動が小さく、特に紫外領域の光学特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を説明するための概略図である。
【図2】本発明に係る実施例と比較例で作製した石英ガラスの紫外透過特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1…多孔質石英ガラス母材、2…開気孔、3…閉気孔、4…石英ガラス。

Claims (5)

  1. 多孔質石英ガラス母材をフッ素化合物含有雰囲気下で加熱して多孔質石英ガラス母材中にフッ素を添加する工程Iの後、フッ素化合物含有雰囲気または不活性ガス雰囲気下でさらに高温で加熱して透明ガラス化する工程IIを有する石英ガラスの製造方法において、前記工程Iにおける多孔質石英ガラス母材の開気孔率が70%以上であることを特徴とする石英ガラスの製造方法。
  2. 請求項1に記載の石英ガラスの製造方法において、多孔質石英ガラス母材をフッ素化合物含有雰囲気下で加熱して多孔質石英ガラス母材中にフッ素を添加する工程Iに先立ち、不活性ガスに加えて酸素、塩素または塩素化合物の内、少なくとも何れか1種以上を含む雰囲気下で加熱する工程IIIを含むことを特徴とする石英ガラスの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法によって製造された石英ガラスであって、OH基及び塩素含有量が1ppm以下、フッ素含有量が1000ppm以上10000ppm以下、断面内の80%以上の領域における屈折率の変動が5×10−5以下、ArFエキシマレーザを80mJ/cmのパワー密度で1×10ショット照射した際の透過率低下が1%以下であることを特徴とする石英ガラス。
  4. 請求項3に記載の石英ガラスを用いて作製された光学部品。
  5. 請求項3に記載の石英ガラスを用いて作製された光ファイバ。
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