JP2004345602A - ヘリコプタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】胴体部2の上側におけるメインロータ3の下方に形成されメインロータ3の回転の向きまたは回転と反対向きに開口するスカッパ7と、胴体部2の下面に形成されスカッパ7と連通する開口穴9と、を備え、メインロータ3の回転により生じた旋回流により胴体部2内に空気の流れが生じるようにし、この空気によりトランスミッション4等の内部機器を冷却するようにした。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコプタに関し、詳細には小型ヘリコプタの内部機器を冷却する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヘリコプタは、エンジン等の原動機が搭載されており、この原動機の駆動力により機体の胴体部の上部に備えられたメインロータを回転させる。原動機とメインロータとの間にはトランスミッションが配され、これにより、メインロータの回転速度を変化させることができるようになっている。また、メインロータは、ロータ軸に接続され回転して揚力を発生するブレードを有する。
【0003】
ところで、メインロータが回転すると、ブレードの下方にはダウンウォッシュと呼ばれる吹き下ろしの風が生じ、ブレードの基端部より内側のロータ軸付近では吹き上がりの風が生じることが周知である。このダウンウォッシュを利用して、トランスミッションの内部を流通する冷媒を冷却するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このヘリコプタでは、冷媒として潤滑油が使用され、胴体部の外板の一部を冷却面として、胴体部の周囲の空気と熱交換を行うようになっている。
【0004】
また、ダウンウォッシュを利用して冷媒を冷却するものとして、エンジン用のラジエータを胴体部の上側に配したものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。このヘリコプタによれば、機体の前側下部にもラジエータが配され、ダウンウォッシュに加えて、前後進時の相対風を利用して冷媒を冷却するようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−20396号公報
【特許文献2】
特開2002−193193号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記各ヘリコプタでは、いずれも冷媒と空気とで熱交換を行う冷却回路を有するので、機体の胴体部内にこの冷却回路の設置スペースを確保することができ、且つ、冷却回路の重量が飛行性能等に多大な影響を及ぼさないことが条件となる。すなわち、これらの条件が満たされない小型の無人ヘリコプタ等には、機器の冷却回路を搭載することができないという問題点があった。冷却回路を搭載することができないと、トランスミッション等が過度に加温されることとなり、トランスミッション等に悪影響を及ぼすことは勿論のこと、トランスミッション等から放出される輻射熱により、電動アクチュエータ等のような他の周辺機器までもが過度に加熱されてしまうという問題も生ずる。
ここで、これらの問題点を解消するべく、冷却回路を搭載することなく、ダウンウオッシュや相対風をダクト等を用いて直接的に内部機器に案内することが考えられる。しかしながら、この構成としても、ダクト等の設置スペース、重量等の問題から、小型の無人ヘリコプタ等においては依然として不利である。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、胴体部の内部のスペースを消費したり、重量を増大させることなく、内部機器を効率よく冷却することのできるヘリコプタを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、原動機からの動力がトランスミッションを介して伝達されるロータ軸と、このロータ軸に胴体部の上方で接続されたブレードを有するメインロータを備えたヘリコプタにおいて、前記胴体部の上部において前記メインロータの下方に形成され、前記メインロータの回転の向きまたは該回転と反対の向きに開口する開口部を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、メインロータが回転すると、ブレードの下方にて吹き下ろしの風が発生し、ブレードの基端部の内側下方にて吹き上がりの風が発生する。これらの風は、メインロータのロータ軸の回転中心について旋回し、ブレードの回転の向きへ流れる旋回流である。
ここで、胴体部の上側におけるメインロータの下方には、メインロータの回転の向きまたはこれと反対の向きに開口する開口部が形成されている。すなわち、開口部が回転の向きに開口している場合は、旋回流により開口部から胴体部内の空気が吸引され、開口部が回転と反対の向きに開口している場合は、旋回流により開口部から胴体部内へ空気が押し込まれる。
【0010】
従って、胴体部内にメインロータの旋回流に起因する空気の流れが生じ、トランスミッションをはじめとする胴体部の内部機器はこの空気により冷却される。これにより、冷媒が流通する内部機器の冷却回路を設置して胴体部の内部のスペースを消費したり、機体の重量を増大させることなく、内部機器を効率よく冷却することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のヘリコプタにおいて、前記開口部を、上面視にて、前記ロータ軸の回転時における前記ブレードの基端の円弧軌跡より径方向内側となるように配したことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の作用に加え、ブレード基端部より内側では旋回流れを利用して冷却することにより、冷却のために付加する装置が小規模で済むので機体重量の増加を極めて少なくすることができ、機体への搭載重量を減少することができる。また、ブレードの基端の円弧軌跡より径方向内側に第1開口部を配することにより、ロータ軸の近傍に配されるトランスミッション等の内部機器に、直接的に冷却のための空気を供給することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のヘリコプタにおいて、前記開口部は、前記メインロータの回転の向きに開口していることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の作用に加え、開口部がメインロータの回転の向きに開口していることから、回転の向きに流れる旋回流により、胴体部内から開口部を通じて空気が吸引されることとなる。このように、胴体部内の空気が吸引されることから、胴体部内へ空気を押し込む場合に比べて、確実且つ定常的に胴体部内に空気が流通する。従って、胴体部の内部機器をさらに効率よく冷却することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項1から3のいずれか一項に記載のヘリコプタにおいて、前記開口部を、前記メインロータの回転方向に沿って複数形成したことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか一項の作用に加え、開口部が複数であるので、胴体部の内部を流通する空気量が増大する。さらに各開口部をメインロータの回転方向に沿ってほぼ等間隔に配置すれば、各開口部ごとの空気の流量がほぼ均一となるとともに、空気が回転中心について対称な流線を呈するので、胴体部内の安定的な空気の流れを実現することができる。従って、胴体部の内部機器の冷却をさらに効率よく行うことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項1から4のいずれか一項に記載のヘリコプタにおいて、前記胴体部の下面に、胴体内部に繋がる開口部を形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から4のいずれか一項の作用に加え、開口部が胴体部の下面と上部に形成されていることから、胴体部内では空気が上下方向にスムースに流れることとなる。すなわち、上部の開口部にて空気が胴体部内から吸引され、または胴体部外から押し込まれるときの抵抗が減少するとともに、胴体部の外側と同様の旋回流が生じる。胴体部の上側で生じた旋回流を損失することなく、そのまま胴体部内に生じる旋回流に利用することができ、内部機器の冷却効率が格段に向上する。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1から図5は本発明の一実施形態を示すもので、図1はメインロータによる吹き上げ、吹き下げの風の流れを示すヘリコプタの正面断面説明図、図2はメインロータによる吹き上げの風の範囲を示すヘリコプタの上面説明図、図3は胴体部内から各スカッパを通じて空気が導出される状態を示すヘリコプタの上面説明図、図4は胴体部内の空気の流れを示すヘリコプタの正面断面説明図、図5は前後進時における吹き上げの風の範囲を示すヘリコプタの上面説明図である。
【0020】
図1に示すように、このヘリコプタ1は、機体の胴体部2の上方にメインロータ3を備えている。このヘリコプタ1は、農薬散布等に使用される小型且つ無人のものであり、地上の操縦者によりコントローラ等を使用して遠隔操作される。尚、各図は、農薬散布用のアタッチメント等を省略して図示している。
【0021】
メインロータ3には、原動機としてのエンジンからの動力がトランスミッション4とロータ軸5を介して伝達される。本実施形態においては、ブレード6が、メインロータ3に回転中心について対称となるよう2つ設けられる。尚、これらの構成は従来公知のものであるので、ここでは詳述しない。
【0022】
機体の胴体部2の上部には、機体の内外を連通する開口部としてのスカッパ7が設けられる。本実施形態においては、メインロータ3の回転中心について対称となるように、2つのスカッパ7が設けられる。図2に示すように、各スカッパ7は、メインロータ3の回転の向きに開口しており、メインロータ3の回転時における各ブレード6の基端の円弧軌跡より径方向内側となるように配される。
【0023】
図1に示すように、胴体部2の内部にはロータ軸5に近接してトランスミッション4が配される。また、本実施形態においては、メインロータ3を制御するための電動アクチュエータ8がトランスミッション4に近接して、胴体部2の内部上側に配される。また、胴体部2の下面には、開口部としての開口穴9が形成される。
【0024】
以上のように構成されたヘリコプタ1では、メインロータ3が回転すると、図1に示すように、各ブレード6の下方にて吹き下ろしの風が発生し、各ブレードの基端部の内側下方にて吹き上がりの風が発生する。尚、図1では説明のため、ほぼ上下方向の矢印で吹き上がり及び吹き下ろしの風を図示している。これらの風は、図2に示すように、メインロータ3のロータ軸5の回転中心について旋回し、ブレード6の回転の向きに流れる旋回流である。
【0025】
ここで、胴体部2の上側におけるメインロータ3の下方には、メインロータ3の回転の向きに開口する各スカッパ7が形成されている。すなわち、胴体部2の上方にて回転に引きずられて流れる旋回流により、図3の矢印に示すように、胴体部2内から各スカッパを通じて空気が吸引されることとなる。このとき、各スカッパ7と連通する開口穴9が胴体部2に形成されていることから、図4に示すように、各スカッパ7から空気が吸引されるとともに、開口穴9から胴体部2内へ空気が導入される。
【0026】
従って、胴体部2内における各スカッパ7と開口穴9との間で、図4に示すようなメインロータ3の旋回流に起因する空気の流れが生じ、トランスミッション4、電動アクチュエータ8等の胴体部2の内部機器はこの空気により冷却される。これにより、冷媒が流通する内部機器の冷却回路を設置して胴体部2の内部のスペースを消費したり、機体の重量を増大させることなく、内部機器を効率よく冷却することができる。
【0027】
また、本実施形態のヘリコプタ1によれば、各スカッパ7をメインロータ4の回転の向きに開口するようにし、胴体部3内の空気が吸引されるようにしたので、胴体部3内へ空気を押し込む場合に比べて、確実且つ定常的に胴体部3内に空気が流通する。従って、胴体部3の内部機器を効率よく冷却することができる。
【0028】
また、本実施形態のヘリコプタ1によれば、ブレード6の基端の円弧軌跡より径方向内側に各スカッパ7を配することにより、軽量な冷却装置を提供できる。また、ロータ軸5の近傍に配されるトランスミッション4、電動アクチュエータ8等の内部機器に、直接的に冷却のための空気を供給することができ、ロータ軸5に近接する内部機器の冷却を支障なく行うことができる。
【0029】
尚、ヘリコプタ1が前後方向へ移動すると、吹き上げの風、吹き下ろしの風の範囲が、図5に示すように変化する。図5には、農薬散布時の通常の移動速度である前後約30km/hで移動した場合における吹き上げ風の範囲を図示している。本実施形態においては、図5に示すように、各スカッパ7は、ヘリコプタ1が時速約30kmで前後進した際にも、吹き上げ風の範囲に含まれるよう設置されている。これにより、ヘリコプタ1の移動時においても、内部機器の冷却効果を維持することができ、実用に際して極めて有利である。
【0030】
また、本実施形態のヘリコプタ1によれば、スカッパ7が複数であるので、胴体部2の内部を流通する空気量が、開口部が1つの場合に比して増大する。また、各スカッパ7はメインロータ3の回転方向に沿ってほぼ等間隔であるので、各スカッパ7ごとの空気の流量がほぼ均一となるとともに、空気が回転中心について対称な流線を呈するので、胴体部2内の安定的な空気の流れを実現することができる。従って、胴体部2の内部機器の冷却を効率よく行うことができる。
【0031】
また、本実施形態のヘリコプタ1によれば、開口穴9が胴体部2の下面に形成されており、各スカッパ7が胴体部2の上側に形成されていることから、胴体部2内では空気が上下方向にスムースに流れることとなる。すなわち、空気の流れ抵抗が減少するとともに、各スカッパ7にて空気が胴体部2内から吸引された向きに、図4に示すように、胴体部2の外側と同様の旋回流が生じる。これにより、胴体部2の上側で生じた旋回流のエネルギを大きく損失することなく、そのまま胴体部2内に生じる旋回流に利用することができ、内部機器の冷却効率が格段に向上する。
【0032】
尚、前記実施形態においては、ヘリコプタ1が無人用であるものを示したが、コックピットが胴体部2に形成された有人用であってもよいことは勿論である。
【0033】
また、前記実施形態においては、各スカッパ7がメインロータ3の回転の向きに開口するものを示したが、回転と反対の向きに開口するものであってもよい。この場合は、胴体部2の上側の旋回流により、空気が胴体部2の内部へ押し込まれることとなる。尚、スカッパ7の取付の方向は回転の向きに正対させる必要はなく、斜め上方を向いても、斜め下方を向いてもよいことは勿論である。
【0034】
また、前記実施形態においては、開口部としての各スカッパ8を2つ設置したものを示したが、開口部は1つであっても、3つ以上であってもよいことは勿論である。また、各スカッパ8をメインロータ3による吹き上げ風が生ずる範囲に配したものを示したが、開口部はメインロータ4の旋回流が生じる範囲であれば、吹き上げ風が生ずる範囲であっても、吹き下げ風が生じる範囲であってもよい。
【0035】
また、前記実施形態においては、胴体部2の下面に開口穴9を形成したものを示したが、開口穴9の位置はこれに限定されるものではないし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0036】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、胴体部内でメインロータの旋回流に起因する空気の流れが生じ、トランスミッションをはじめとする胴体部の内部機器はこの空気により冷却される。これにより、冷媒が流通する内部機器の冷却回路を設置して胴体部の内部のスペースを消費したり、機体の重量を増大させることなく、内部機器を効率よく冷却することができる。
【0037】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、ブレードの基端の円弧軌跡より径方向内側に開口部を配することにより、冷却のために付加する部分の重量を軽減できる。また、ロータ軸の近傍に配されるトランスミッション等の内部機器に、直接的に冷却のための空気を供給することができ、ロータ軸に近接する内部機器の冷却を支障なく行うことができる。
【0038】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の効果に加え、胴体部内の空気が吸引されることから、胴体部内へ空気を押し込む場合に比べて、確実且つ定常的に胴体部内に空気が流通し、胴体部の内部機器をさらに効率よく冷却することができる。
【0039】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか一項の効果に加え、胴体部の内部を流通する空気量が増大することは勿論、各開口部をメインロータの回転方向に沿ってほぼ等間隔に配置すれば、胴体部内部を流通する空気が回転中心について対称な流線を呈するので、胴体部内の安定的な空気の流れを実現することができる。従って、胴体部の内部機器の冷却をさらに効率よく行うことができる。
【0040】
請求項5に記載の発明によれば、開口部を胴体部の下面に形成したので、胴体部内では空気が上下方向にスムースに流れることとなる。さらに、これにより胴体部内においても胴体部の外側と同様の旋回流が生じ、胴体部の上側で生じた旋回流を損失することなく、そのまま胴体部内に生じる旋回流に利用することができるので、内部機器の冷却効率が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、メインロータによる吹き上げ、吹き下げの風の流れを示すヘリコプタの正面断面説明図である。
【図2】メインロータによる吹き上げの風の範囲を示すヘリコプタの上面説明図である。
【図3】胴体部内から各スカッパを通じて空気が導出される状態を示すヘリコプタの上面説明図である。
【図4】胴体部内の空気の流れを示すヘリコプタの正面断面説明図である。
【図5】前後進時における吹き上げの風の範囲を示すヘリコプタの上面説明図である。
【符号の説明】
1 ヘリコプタ
2 胴体部
3 メインロータ
4 トランスミッション
5 ロータ軸
6 ブレード
7 スカッパ
8 電動アクチュエータ
9 開口穴
Claims (5)
- 原動機からの動力がトランスミッションを介して伝達されるロータ軸と、このロータ軸に胴体部の上方で接続されたブレードを有するメインロータを備えたヘリコプタにおいて、
前記胴体部の上部において前記メインロータの下方に形成され、前記メインロータの回転の向きまたは該回転と反対の向きに開口する開口部を備えたことを特徴とするヘリコプタ。 - 前記開口部を、上面視にて、前記ロータ軸の回転時における前記ブレードの基端の円弧軌跡より径方向内側となるように配したことを特徴とする請求項1に記載のヘリコプタ。
- 前記開口部は、前記メインロータの回転の向きに開口していることを特徴とする請求項1または2に記載のヘリコプタ。
- 前記開口部を、前記メインロータの回転方向に沿って複数形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のヘリコプタ。
- 前記胴体部の下面に、胴体内部に繋がる開口部を形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のヘリコプタ。
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