JP2004344812A - 環状ノズル、環状ブラシ、しごき装置、これらを用いた塗装装置および塗装方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】白錆の発生を防止できる小口径パイプの塗装装置の開発。
【解決手段】パイプ1の外周面に塗布した塗料をしごき手段により膜厚を均一に形成する塗装装置であって、複数のノズルを有してパイプ全面にムラの無い塗料の塗布が可能な吐出口付き環状ノズル2と、塗料をパイプ全周に均一なしごきが可能な環状ブラシ3と、を備えたものである。
【選択図】 図2
【解決手段】パイプ1の外周面に塗布した塗料をしごき手段により膜厚を均一に形成する塗装装置であって、複数のノズルを有してパイプ全面にムラの無い塗料の塗布が可能な吐出口付き環状ノズル2と、塗料をパイプ全周に均一なしごきが可能な環状ブラシ3と、を備えたものである。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円形パイプの表面に薄く均一に塗装する塗装装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、線状物の塗装には、例えば特許文献1に示すような塗装装置が公知となっている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−249258号公報
【0004】
特許文献1記載の塗装装置は、電線の下地処理から塗装までの作業を自動機械化することにより、塗装むらのない確実な塗装を従来よりも格段に少ない工数で施行可能とするもので、そのために線材の表面の汚れ、油脂等の汚染物を除去する下地処理を行なう下地処理部と、同下地処理部にて処理された線材の表面に塗料を塗布する塗装部と、上記塗料が収容される塗料タンクと、塗装部への塗料の供給を制御する制御装置とを、上記線材に沿って、その長手方向に走行する走行装置に取付けて構成している。
【0005】
そして、その塗装部は、中央部に設けられた塗料室に塗料導入パイプから送給された塗料が充満しており、この塗料室内を送電線が移動することにより該送電線の表面全体に塗料が塗布され、そして同塗料室にて塗料が付着された送電線は次のブラシ部に入り、同ブラシ部のブラシによって、塗料が送電線の全周及び長手方向に沿って均一に延ばされる、というものである。
【0006】
ところが特許文献1記載の塗装装置は、対象が電線という半径の小さな物であるため、周方向の塗料の均一化にそれほど気を遣う必要がなく、単に塗料を溜めておく塗料室を設ける程度のものであった。
したがってかかる塗装装置をそのまま本発明が対象としている円形パイプの塗装に適用しても、塗料の薄くて均一な塗布には適していなかった。
【0007】
一方、パイプ状物の従来の塗装装置には、例えば、図26に示すようなものが知られていた。図26(a)に示すように、前処理工程100により湯洗等により被塗装パイプ表面の脱脂作業をして、100°C程度の加熱工程200により乾燥・前加熱を行い、塗布シャワーコート300による塗布と、均しローラ400によるしごきによる塗装工程で均一な塗装を行って、搬送・切断・結束工程500による処理を経て移送されるものである。
【0008】
このパイプ塗装処理手順を、図26(b)の作業の流れ図に沿って説明する。
パイプ塗装処理手順は、大きく、次の(1)〜(3)のステップから構成されている。
(1)まず、例えばラインスピード約100m/min、被塗装物たる円形パイプの外径が19mmφ〜30mmφで、パイプの長さ5.5mを、加熱工程により脱脂後の表面温度約85°Cで加熱処理するステップ(S100)。
(2)シャワーノズル3〜15mmφ、吐出量3〜5L/min、粘度13秒/HSによるシャワーコート300によって、最近はクロメート処理等の環境への影響が問題視されていることから、パイプ素材にZn(亜鉛)メッキでノンクロム処理剤の塗布を行なうステップ(S200)。
(3)パイプ表面に塗布された塗料は小鼓状の均しローラ2個を用いたしごきによって塗布層を膜厚3〜5μm等に均一化するステップ(S300)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術においては、塗装条件が膜厚2〜5μm等と薄く、ライン速度も約100m/min、パイプ口径19〜30mmφ、で直進送りと過酷な操業条件下で、パイプ素材はZnメッキされた後、塗布シャワーコート工程300において、吐出口1個の単純シャワーコート塗布によりノンクロム処理剤を塗布し、図26に示すような、小鼓状ローラ2個を垂直に立て中央部にパイプ径と合せた凹部形状を設けて、パイプの進行に合わせて2個のローラで挟み凹部でシゴいて膜厚の均一化を行っているが、塗装工程におけるシャワーコートでは管周の1部が未塗装になり易い等による塗布の不均一と、均しローラによるシゴキ精度の甘さが原因で発生する膜厚不均一による塗装欠陥によって白錆が発生するという問題があった。
また、一般的なシャワーコート方式のノズル(複数ノズルの場合も含む)による塗布方式では、塗料としてアスカZN(商標名)等のノンクロム処理剤(粘度13秒/IHS)を用いて塗布を行った場合、ノズルのみによるシャワーコート方式では、ライン速度が速いのでパイプ下部への回り込みが十分ではなく、塗布の不均一が発生することが判った。
また、ローラのシゴキについてもシゴキ精度の甘さがある、と言う問題点が摘出された。
【0010】
そこで、本発明は、円形パイプ全面にむらなく均一に塗布できるようにすると共に、パイプ全面に均一なシゴキを可能にしたことによって、塗膜が薄くて精度の高い均一な塗膜を実現して白錆の発生を防止できる塗装装置および塗装方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の環状ノズルの発明は、環状体をした塗料吐出用のノズルであって、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から通じる吐出スリットを半径方向内側全周に亘って設けたことを特徴とする。
このような構成により、円形パイプの全周360度に亘って未塗装部分のないように確実に塗装できる環状ノズルが簡単に得られる。
【0012】
請求項2記載の環状ノズルの発明は、環状体をした塗料吐出用のノズルであって、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から半径方向内側に複数の吐出口を設けたことを特徴とする。
このような構成により、円形パイプの全周360度に亘って未塗装部分のないように確実に塗装できしかも過剰塗料の量を少なく押さえられる環状ノズルが得られる。
請求項3記載の発明は、請求項3記載の環状ノズルにおいて、前記吐出口が、前記環状ノズルの軸方向に対して所定角度を有して設けられたことを特徴とする。
このような構成により、過剰塗料が環状ノズルの外に落下することで環状ノズルの汚れ防止が可能になり、手入れが簡単となる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の環状ノズルにおいて、前記ノズル数が2〜30個で、前記ノズルの傾斜角度が環状ノズルの軸方向に対して30°〜85°であることを特徴とする。
このような構成により、未塗装部分が確実になくなり、過剰塗料の量を少なく押さえられ、しかも手入れが簡単となる。
【0013】
請求項5記載の環状ブラシの発明は、環状体をした塗料ならし用のブラシであって、前記ブラシを前記環状体の半径方向内側に向けて該環状体内側に植設して成ることを特徴とする。
このような構成により、過剰塗料を確実にしごき落とすことができるようになる。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の環状ブラシにおいて、複数の弾性部材により揺動可能に保持して自由度を付加したことを特徴とする。
このような構成により、円形パイプが環状ブラシのセンターからずれて環状ブラシに到来しても、自動的にセンター合わせが行われるので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の環状ブラシにおいて、前記ブラシが0.2〜0.25mmφ程度の太さのナイロン又は馬毛であることを特徴とする。
このような構成により、質の高い仕上がりとなる。
【0014】
請求項8記載のしごき装置の発明は、請求項5〜7のいずれか1項記載の環状ブラシの2〜5段重ねから成ることを特徴とする。
このような構成により、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
請求項9記載の発明は、請求項8記載のしごき装置において、前記環状ブラシを取り付ける取付板のパイプ走行下流側に前記環状ブラシがくるように配置されることを特徴する。
このような構成により、環状ブラシでしごかれた塗料が取付板に付着することが無くなり、手入れが簡単になる。
【0015】
請求項10記載の塗装装置の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の環状ノズルと、請求項8又は9記載のしごき装置と、を備えたことを特徴とする。
このような構成により、白錆の原因となる膜厚不均一が解消され、したがって長年の使用においても白錆が発生することがなくなる。また、過剰塗料を少なくして有効に使用することができるようになる。
【0016】
請求項11記載の塗装方法の発明は、中心を開けて環状に配置された複数の吐出口の該中心を通して円形パイプを移動させている間に、前記複数の吐出口から前記円形パイプの全周に亘って塗料を吐出させ、その後下流で、半径方向内側に向けてブラシを環状内側に植設して成る環状ブラシの中心に円形パイプを通して該環状ブラシによって円形パイプ表面の塗料のしごきを行なうことにより、塗料塗布層を一定の膜厚に均一化することを特徴とする。
このような構成により、塗料塗布層を一定の薄い膜厚で均一化することができる。したがって、白錆の原因となる膜厚不均一が解消するので、長期の使用においても白錆が発生することがなくなる。
【0017】
以上のように、この塗装装置および塗装方法によれば、白錆の原因となる実塗装ラインの膜厚不均一を解消するので、長期の使用においても白錆が発生することがなくなり、しかも過剰塗料を少なくして塗料を有効に使用することができるようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
図1が本発明の第1の実施の形態たる塗装装置である。
図1において、1は被塗装物たる円形パイプであって、例えば、ビニールハウスなどで使用されるパイプで、パイプ素材は鉄パイプに亜鉛メッキを施された口径19〜30mmφ、パイプ長5.5m程度のパイプである。
200は本発明に係るスリット付き環状ノズルでノンクロム処理剤の塗料を円形パイプに塗装する塗装部を構成している。この塗装ノズルは従来のシャワー式と異なって、被塗装物たる円形パイプの円周360度に亘って塗料を吐出することができるスリットが形成されているので、「スリット付き環状ノズル」と呼んでいる。スリット付き環状ノズルについては後述する。
【0019】
3は本発明に係る環状ブラシであり、スリット付き環状ノズル200によってパイプ外周に塗布された塗料の膜厚をパイプ1の外周全周に均一にシゴいて均一化するものである。4はシゴキボックスで、中には前述の環状ブラシ3の3段構成となっている。環状ブラシについては後述する。
【0020】
5は単軸ロボットによるパイプ1の搬送手段であるが、実ラインではパイプ1は連続的に搬送され、塗装されるものである。本装置ではパイプ1を右から左方向(X軸方向)への送り制御を行う塗装ロボットで、パイプ1の進入位置をスリット付き環状ノズル200及び環状ブラシ3の中心に当たるように位置決めして、ボールネジ等を介した回転モータ、あるいは、リニアモータによるリニアロボット等によるX軸単軸方向へのパイプ1の位置、速度(例えば、塗装スピードMax60m/min等)の送り制御を行う。
【0021】
6は供給ポンプであって、前述のスリット付き環状ノズル200より所定の吐出量とタイミングで塗布できるようにスリット付き環状ノズル200へ塗料の供給を行う。7は塗料受け皿で、吐出口付き環状ノズル2の塗装作業に使われた余剰塗料が塗料受け皿7により回収されて再利用される。8はガイドレールで、単軸ロボット5によるパイプ1の正確な搬送を保証する。揺れ防止ローラ9はパイプ1の送り走行時のガタツキを防止して安定走行を図っている。
【0022】
このような塗装装置で円形パイプ1の全周に亘ってスリット付き環状ノズル200より塗料を塗布、環状ブラシ3でしごいた結果、図26のようなシャワー法の場合に生じた塗料の円形パイプの下部回り込み不足による未塗装部が生じなかった。
しかしながら、このようなことが可能になるのは、かなり高圧下で多量の塗料を360度スリットから吐出し続ける必要があり、過剰塗料が沢山生じてしまうという欠点があった。
【0023】
そこで本出願人は、過剰塗料を極力少なくおさえるようにするため、スリット付き環状ノズル200を改良した環状ノズルを考出し、これを第2の実施の形態たる塗装装置に使用した。
そこで、本発明のベストモードとしての第2の実施の形態たる塗装装置について説明する。
図2が本発明の第2の実施の形態たる塗装装置である。
図2において、この塗装装置全体は、パイプ1に塗料を吐出する後述する吐出口付き環状ノズル2、パイプ1上の過剰塗料を落とすシゴキボックス(例えば、後述する環状ブラシ3’の3段構成)4、パイプ1を図の右から左方向へ搬送する単軸ロボット5、環状ノズル2より所定の吐出量とタイミングで塗布できるように環状ノズル2へ塗料の供給を行う供給ポンプ6、環状ノズル2の塗装作業に使われた余剰塗料を回収して再利用するための塗料受け皿7、単軸ロボット5によるパイプ1の正確な搬送を保証するガイドレール8、パイプ1の送り走行時のガタツキを防止して安定走行を図る揺れ防止ローラ9で構成されている。
【0024】
このような塗装装置で円形パイプ1の全周に亘って吐出口付き環状ノズル2より塗料を吹き付け、環状ブラシ3’でしごいた結果、塗料が均一でしかも薄く塗布されることができた。
また、過剰塗料は第1の実施の形態と比べて激減した。
【0025】
次に、上記2つのラインに用いているスリット付き環状ノズル200、吐出口付き環状ノズル2、および環状ブラシ3並びに3’について詳しく説明する。
図3〜図5は図1のスリット付き塗装ノズル200について説明する図で、図3はスリット付き環状ノズルの分解斜視図、図4はスリット付き環状ノズルの組立後の全体の斜視図、図5はその正面図(a)と図(a)のA−A断面図(b)である。
【0026】
図3〜図5において、200はスリット付き環状ノズルで、共に環状に形成された本体部210と、この本体部210の溝の形成された側を覆う蓋部220から構成されている。
本体部210には、環の外側部211と内側部213との間に有底の環状溝212が軸に平行に掘られている。そして、外側部211からこの溝212に通じるように塗料を取り込む塗料流入パイプ214が外側部211の2箇所で貫通して取り付けられている。外部の供給ポンプ6(図1)からこの塗料流入パイプ214を介して送り込まれた塗料は、この環状溝212を通って、全周360度に行き渡る。
蓋部220には、環の外側部221とこの外側部221より若干低い位置に形成された内側部222(この差がスリット幅となる。)とから構成されている。
そこで、本体部210の外側部211に蓋部220の外側部221を合わせて図示のないねじで固定すれば、図4のようなスリット付き環状ノズル200が得られる。図4において、本体部210の内側部213と蓋部220の内側部222と間にスリット230が全周亘って形成されているのが見られる。
したがって、塗料が塗料流入パイプ214を介して中に送り込まれると、塗料は環状溝212を通って全周360度に行き渡るとともに、スリット230からスリット付き環状ノズル200の中心に向けて勢いよく吐出されることとなる。
【0027】
図5はスリット230の形成される構造を説明する図で、図5(a)におけるスリット付き環状ノズル200をA−A断面で見ると、図5(b)のように溝212を備えた本体部210と段状に形成された内側部222を備えた蓋部220とを合わせて固定した状態で、スリット230が全周に亘って形成される。
したがって、塗料を高圧下で流入すると、塗料は勢いよく環状ノズル200の溝212の中を通って360度全周に行き渡るとともに、蓋部220の外側部221と内側部222と段差により本体部210の内側部213と蓋部220の内側部222と間に形成される全周のスリット230から塗料を吐出する。
そこでスリット付き環状ノズル200の中心に被塗装物たる円形パイプを通過させれば、円形パイプの全周360度に亘って塗料が吹き付けられることとなり、シャワー法の場合に生じた塗料の円形パイプの下部回り込み不足による未塗装部が生じなくなる。
【0028】
このようにスリット付き環状ノズル200を用いると、従来のシャワー法と比べて円形パイプの円周360度に亘って塗料を均一に塗装することが可能となった。
しかしながら、このようなことが可能になるのは、かなり高圧下で多量の塗料を360度スリットから吐出し続ける必要があり、過剰塗料が沢山生じてしまうという欠点があった。
【0029】
そこで本出願人は、スリット付き環状ノズル200をさらに改良した吐出口付き環状ノズルを考出し、過剰塗料を極力少なくできるようにした。この吐出口付き環状ノズルは、被塗装物たる円形パイプの円周360度に亘って塗料を吐出する吐出口が多数埋め込まれているのが特徴である。
【0030】
図6〜図8は本出願人が考えた所定角度を有する吐出口付き環状ノズルで、図6は吐出口付き環状ノズルの分解斜視図、図7は吐出口付き環状ノズルの組立後の全体の斜視図、図8はその正面図(a)と図(a)のA−A断面図(b)である。
図6〜図8において、2は吐出口付き環状ノズルで、共に環状に形成された本体部21と、この本体部21の溝が形成された側を覆う蓋部22から構成されている。
本体部21には、環の外側部21aと内側部21cとの間に有底の環状溝21bが軸に平行に掘られている。外部からこの溝21bに塗料を取り込むためこの溝21bに通じる塗料流入パイプ23が外側部21aを貫通して設けられている。また、その溝21bの底から内側部21cを半径方向内側に斜めに貫通して吐出口20が多数設けられている。吐出口20は2〜30個が適切である。
【0031】
一方、蓋部22には、本体部21と接触する面にパッキン部22aが設けられている。そこで、本体部21に蓋部22のパッキン部22aを合わせてねじで固定すれば図7のような吐出口付き環状ノズル2が得られる。図7において、吐出口20が多数(図では8本)半径方向かつ環状ノズルの中心に吐出できる角度になっている。
図8(b)から判るように、各吐出口の角度が環状ノズル2の軸方向(すなわち、被加熱物たる円形パイプの走行方向)に対して垂直方向ではなくて、所定の角度(傾斜)をもっている点がもう1つの特徴である。実験によれば、傾斜角度は環状ノズルの軸方向に対して30°〜85°が適切であった。
【0032】
このように各吐出口20が所定の角度(傾斜)をもっているので、各吐出口20から被塗装物に向けて吐出された塗料の過剰分が下へ落下するとき、吐出口付き環状ノズル2の外側に落下するため、吐出口付き環状ノズル2の環状内側に溜まることがなくなり、汚れにくくなり、したがって手入れが簡単となる。
【0033】
このような吐出口付き環状ノズル2に塗料流入パイプ23から塗料を高圧下で流入すると、塗料は勢いよく環状ノズル2の溝21bの中を通って360度全周に行き渡るとともに、途中にある吐出口20から塗料が半径方向内側に吐出する。したがって、円形パイプの円周360度に亘って塗料を薄くかつ均一に塗装することが可能となった。
いろいろな塗装条件下で実験したが、図3〜図5のスリット付き環状ノズル200と同様満足のいく塗装ができた。膜厚が厚くなったり、溜まりが生じたり、逆に未塗装部が発生したりすることは無かった。また、塗料受け皿7(図2)に溜まった過剰塗料は、スリット付き環状ノズル200の塗料受け皿7(図1)に溜まった過剰塗料と比べると1/5以下であった。
【0034】
さらに、本出願人はこのような環状ノズルで塗布された塗料の過剰分をしごいて薄い均一な塗膜にする装置(以後、「しごき装置」と言う。)として環状ブラシ3および3’を考えた。
図9はその環状ブラシを説明する斜視図で、ブラシ側から見た斜視図(a)と、その反対側から見た斜視図である。
図9において、3は環状ブラシ装置で、環状体31の内周側に無数のブラシ32が植毛されている。ブラシの長さは環状体31の中心を通過する被塗装物たる円形パイプ1の外周に触れて若干曲がる程度の長さがよい。ブラシ32の材質は馬毛かナイロンで太さが0.20〜0.25mmφのものがよい。
そして環状体31の外周側に複数個のスプリング33の一端を取り付け、スプリング33の他端をここでは図示のない環状ブラシ調整部(図10参照)を介して筐体34に固定している。
筐体34の環状体31に対向する壁面中央には、被塗装物たる円形パイプを通過させる開口部34aが設けられている。
【0035】
図10は本発明に係る環状ブラシ装置を2種類示す図で、(a)は第1環状ブラシ装置、(b)は第2環状ブラシ装置のそれぞれ正面図(イ)と(イ)のA−A断面矢視図(ロ)を示している。
図10(a)において、3は環状ブラシ装置、31は環状体、32はブラシ、33はスプリング、34は筐体、35はストッパ、36は環状ブラシ調整部、34aは開口部である。図で矢印は塗装された円形パイプが通過する方向を示している。
環状ブラシ調整部36は、ネジの切ってある部分とスプリング33の端部を固定するスプリング固定部とから成るネジ棒36aと、このネジ棒36aのネジ部に螺合するネジが内側に切ってある調整つまみ36bと、ネジ棒36aをネジ棒36aの軸方向に移動可能に、半径方向に回転不可に内側に収納し、自身は筐体34の隅部に外側と内側を貫通して固定される座部36cとから構成される。
図では1箇所に示したが、実際は筐体34の4隅に設けられている。調整つまみ36bを一方向に回転させるとネジ棒36aは座部36cから露出してスプリング33を強く引き、逆方向に回転させると座部36c内に沈み込みスプリング33を緩める。そこで、被塗装物たる円形パイプが環状ブラシ装置3のブラシ32の空隙中心からずれて到来する場合に、これらの4個の環状ブラシ調整部36を使ってマニュアルにて環状ブラシ装置3内で環状体31を相対移動させれば、ブラシ32の空隙と円形パイプとを同心になるように調節することができる。
【0036】
図10(b)は本発明に係る第2環状ブラシ装置を示している。
図において、3’は第2環状ブラシ装置である。図10(a)の第1環状ブラシ装置と異なるところは、ストッパ35を省略し、かつ全体の配置を逆(すなわち、開口部34aのある筐体34の下流にブラシを配置)に置いた点である。その他の部品自体は同一である。
この装置の動作は図10(a)と原則同じである。すなわち、第2環状ブラシ装置3’を用いると、被塗装物たる円形パイプ1が環状ブラシ3のセンターからずれて環状ブラシ3に到来しても、自動的にセンター合わせが行われる(センタリング機能は後述。)ので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
ただ、図10(b)の第2環状ブラシ装置3’が優れているのは、ブラシ32が開口部34aのある筐体34の下流にあるので、円形パイプが高速で挿入されて環状体31およびブラシ32が押されても筐体34の壁面に接触するおそれがなく、その自由度が保たれることと、手入れが簡単となることである。
【0037】
図11は本発明に係るブラシ装置で円形パイプをしごく様子を示す縦断面図で、第1環状ブラシ装置(a)と第2環状ブラシ装置(b)の場合である。
図11(a)の第1環状ブラシ装置3の場合は、円形パイプ1が高速で挿入されると、環状体31およびブラシ32が押されて筐体34の壁面に接触するので第1環状ブラシ装置3の自由度が失われることとなる。また、ブラシ32でしごき落とされた余剰塗料Pは図11(a)のごとく開口部34aのある筐体34に付着して溜まるため、塗料を除去する定期的な手入れが必要となる。さらに、滞留した余剰塗料でブラシが押されて装置からはずれないようにするための押さえとしてストッパ35が必要である。
【0038】
これに対して、図11(b)の第2環状ブラシ装置3’の場合は、円形パイプが高速で挿入されて環状体31およびブラシ32が押されても筐体34の壁面に接触することがないので第2環状ブラシ装置3’の自由度は保たれる。
また、ブラシ32が円形パイプ1の塗料をしごいても過剰塗料が垂れないように塗料の量を供給しており、さらにラインスピード、ブラシの調整を行っているので過剰塗料が垂れることはないが、万一過剰塗料垂れたとしても環状ブラシ装置3’の筐体34の外に落下するので、特に筐体34に付着することが無く、装置の手入れが簡単となる。
したがって、円形パイプの移動速度によって異なるが、低速時(20m/min以下)であれば(a)の構造でよいが、それ以上の速度であれば(b)の方が便利である。さらに、装置の手入れまで考慮すると(b)の第2環状ブラシ装置3’の方が推奨される。
【0039】
次に、本発明に係る環状ブラシ装置のセンタリング機能について説明する。
図12は、本発明に係る環状ブラシ装置のセンタリング機能を説明する縦断面図で、第2環状ブラシ装置3’を用いた場合の例である。センタリング機能の説明は第2環状ブラシ装置3’の例で説明するが、第1環状ブラシ装置3の場合も全く同様のセンタリング機能を有することに変わりはない。
図12(a)のように第2環状ブラシ装置3’のブラシ32の開口部に上流から円形パイプ1が到来すると、ブラシ32の開口部中心と円形パイプ1の中心線が一致すれば均一なしごきが行われるので問題ない。しかしながら、円形パイプのたわみ、製造誤差や取り付け誤差等により実際は微妙に変位して到来することが多い。その場合、第2環状ブラシ装置3’が変位を解消する方向に360度の図示矢印のどの方向にも移動できるのが本発明に係る環状ブラシ装置の特徴である。
【0040】
その原理を図12(b)と(c)を用いて説明する。
図12(b)において、第2環状ブラシ装置3’のブラシ32の開口部に上流から円形パイプ1が到来する。このとき、第2環状ブラシ装置3’のブラシ32の開口部の中心c0から円形パイプ1の円の中心c1までのずれ量がt1であるとすると、スプリング33で付勢された第2環状ブラシ装置3’において、パイプ1がブラシの付け根近くに到来した側のブラシ32aにはパイプ1をセンターcに押し戻す押圧力が大きく働き、また、パイプが先端に着くか着かない程度のブラシ32bにはパイプ1をセンターcに押し戻す押圧力が生じないか生じても小さい。そしてパイプ1自体は半径方向には移動しないようにロボット(図1の5)で把持されているから、押圧力に応じた抗力がブラシに発生し、その抗力の合力によってあるスプリング33は延び、反対側のスプリング33は縮み、その結果、自動的にブラシ32の開口部中心c0と円形パイプ1の中心c1が一致する方向に移動して全ての抗力が等しくなった位置で安定する。そして各ブラシ32の長さと強度が揃えてあるので、ブラシ32の開口部中心と円形パイプ1の中心線が一致すれば、塗料の均一なしごきが行われることとなる。
このように本発明によれば、スプリング付勢された環状ブラシを採用することで、被塗装物たる円形パイプ1の中心c1が第2環状ブラシ3’の中心c0からずれて環状ブラシ3に到来しても、自動的にセンター合わせが行われるので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
【0041】
ここで、ベストモデルとしての塗装装置を開発するために、図1の第1の実施の形態たる塗装装置を用いて各種の実験を行ったので、その実験結果とその対策について述べる。
この場合の実験条件としては、塗装スピードMax60m/min、ブラシ段数3段(5段まで可能)、ブラシ材質は馬毛、パイプのプレヒートとして乾燥機で昇温、塗装時約75°Cで塗装を行った。しごき装置として環状ブラシを用いたが、ただし、スプリングによる揺動機構は用いなかった。
各種テストの結果を図13〜図18に示す。
【0042】
図13はブラシ段数と仕上がりを示す線図で、横軸はブラシ段数、縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。
線図によれば、ブラシ段数は1段では不良であるが、2段になると許容内となり、3段〜5段にすると優に近づく。また、それ以上段数を増やしても塗装スピードが遅くなるだけでそれほどの効果は上がらなかった。したがってブラシ段数は2〜5段がよい。
【0043】
図14はブラシ間隔と仕上がりの関係を示す線図で、横軸はブラシ間隔(mm)、縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。
線図によれば、ブラッシ間隔は50mm〜150mmの間隔ならば仕上がり評価は許容内を示しているので、ブラッシ間隔は50mmにすれば、装置の小型化、コストダウンになるので、これが推奨される。
【0044】
図15は、ブラシ内径と仕上がりの関係を示す線図で、横軸はブラシ径、縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。横軸のブラシ径の定義は、環状配置されたブラシの先端でできる空隙円形の直径とする(図20参照)。
また、しごき代Sの定義は、つぎのようにする。
S=(被塗装物たる円形パイプ外径−空隙円形の直径)/2
例えば、1)円形パイプの外径が22.2mm
空隙円形の直径が14mmの場合、しごき代S=4.1mmとなり、
2)円形パイプの外径が22.2mm
空隙円形の直径が15mmの場合、しごき代S=3.6mmとなる。
そこで、図15において、ナイロン0.2mmφの毛をブラシに用いたら、この結果、
(a)円形パイプの外径が22.2mmで、ブラシ内径が80mm、ブラシ先端の作る空隙円形の直径が14mm(すなわち、しごき代が4.1mm)の場合、仕上がり評価は許容内を示した。
(b)円形パイプの外径が22.2mmで、ブラシ内径が80mm、ブラシ先端の作る空隙円形の直径が15mm(すなわち、しごき代が3.6mm)の場合、仕上がり評価は許容内を示した。
(c)円形パイプの外径が22.2mmで、ブラシ内径が85mm、ブラシ先端の作る空隙円形の直径が15mm(すなわち、しごき代が3.6mm)の場合、仕上がり評価は許容内を示した。
したがって、ナイロン0.2mmφの場合、例えばリング径が14〜15mm、ブラシ内径80〜85mmの場合、しごき代が3.6mm〜4.1mmであれば良いので、そのようなしごき代となるパイプ径のしごきに適していることが判る。
【0045】
図16は、ブラシ材質と仕上がりの関係を示す線図で、横軸は各種材質で、馬毛、豚毛、0.15mm直径のナイロン、0.2mm直径のナイロン、0.25mm直径のナイロンとなっている。縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。
線図によれば、馬毛か0.2mm直径以上のナイロンが材質としては推奨されることが判る。
【0046】
図17は、塗布方法と仕上がりの関係を示す線図で、横軸は上ノズル1個、下ノズル1個、円形(環状)スリット。縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。
線図によれば、上ノズル1個の場合も、下ノズル1個の場合も、ノズル1個のみではライン速度が速くなるとパイプ全体への塗料の回り込みが不十分になった。これに対して、円形スリットでは評価は許容内であり、これが推奨されることが判る。
【0047】
図18は塗布膜の膜厚のバラツキ精度と各塗装装置の関係を示す線図で、横軸は図26の従来の塗装装置と図1の本発明の塗装装置、縦軸は膜厚のバラツキ精度(%)である。
線図によれば、膜厚のバラツキ精度は図26の従来の塗装装置だと25.6%であるが、図1の塗装装置を用いるとバラツキは15.3%と約半分にまで改善されることが判る。
【0048】
以上のテストの結果、(a)、ブラシ段数は3段必要であり、ブラシ間隔は50mm間隔程度が推奨される。(b)、ブラシ内径はシゴキ代3.6mm程度以下が適当とされる。(c)、ブラシ材質は太さが馬毛か0.2mmφ〜0.5mmφのナイロンが選定される。(d)、塗布方式はスリット付き環状ノズルを用いたが、仕上がりに関しては一般ノズル方式と差はないものの、一般ノズルではライン速度が速くなるとパイブ下部への供給が不十分になる。(e)、シゴキ速度は3段環状ブラシ方式としたが低速が好ましい、ということが判明した。
【0049】
以上より、スリット付き環状ノズルを用いたテストの結果、最終的な改善点として、
(1)、環状ブラシ3について、ブラシの自由度が無いので、これを改善する必要がある。
(2)、スリット付き環状ノズルによる塗料の吐出量が3L/minと多すぎるために、パイプ1の全周の吐出量のバラツキがあるので、塗布方式を改善する必要がある。
(3)、環状ブラシについてパイプ表面にスジ状の仕上がりが発生し易いので、環状ブラシ3の外径を大きくしたり、毛の長さを変更する等のブラシ接触力の適正化が必要である。
【0050】
(1)のブラシの自由度付与の改善:
これについては、請求項6のようにすることで解決した。すなわち、図10(a)および(b)の環状ブラシの図に示すように、環状ブラシ3、3’の4方向にスプリング30を配置して自由度を付加している。これによってパイプ1の挿入位置が若干ずれても中心に修正できるようにした。
更に、図10(a)の側面図のように、ブラシ32と取付板34の位置関係が、ブラシ32が上流だと、ブラシ32のしごいた塗料Pが取付板31に付着してしまうので、図10(b)のように位置関係を逆にして、取付板34の下流にブラシ32を配置することによって、ブラシ32のしごいた塗料Pが取付板31に付着することがなく、追従性が良くなりスムースなシゴキが可能になる。
【0051】
本発明の環状ブラシ3の最終仕様としては、以下に、パイプ口径22.2mmφ、ライン速度60〜80m/minとした時の、各数値を示している(なお、括弧内の数値は使用可能範囲を示している)。
環状ブラシ3のリング外径23は60〜80mmφ(通常、50〜100mmφの範囲)、ブラシ内径24は15mmφ、毛(ブラシ)の長さ25は19.5〜29.5mm(通常、14.5〜34.5mmの範囲)、シゴキ代26は3.6mm(通常、2.5〜4.5mmの範囲)、毛の材質は馬毛、又は、ナイロン(毛の太さは0.2〜0.25mmφ)、シゴキボックス4内で使用する環状ブラシ3の段数は3段(通常、2〜5段の範囲)、環状ブラシ3の間隔は50〜100mm(但し、間隔は特に規定しない)となる。
【0052】
(2)項目目の塗布方式の改善:
図19は(a)の吐出口付き環状ノズルと(b)のスリット付き環状ノズル200の各吐出状態を示す正面図、および中空パイプ1に塗料を吐出している(c)の吐出口付き環状ノズル2と(d)のスリット付き環状ノズル200の各側面図である。
図19(a)と(b)を比較して判るように、図19(a)の吐出口付き環状ノズル2においては、塗料P1は各吐出口20からそれぞれ環状ノズル2のセンター2cに向かって吐出され真っ直ぐ細長い柱状を保ったまま中空パイプ1に到達して中空パイプ10を塗装するので、塗料が途中で外れるといったことがなくなりほとんどの塗料が中空パイプ10の塗装に寄与する。したがって、塗料の吐出量に無駄が少なくなる。また、均一にかつ薄く塗装することができる。
これに対して、図19(b)のスリット付き環状ノズル200においては、塗料P3がスリット230からいきなりセンター2cに達するように勢いよる吐出させるので、塗料の一部が途中でコースを外れる分を加味したりするため、塗料に多量の無駄が生じる。図19(a)の吐出口付き環状ノズル2における過剰塗料の量をQP2とし、図19(b)のスリット付き環状ノズル200における過剰塗料の量をQP4とすると、QP2<QP4となる。
以上の点で、(b)のスリット付き環状ノズル200は製造がきわめて簡単で、また過剰塗料は回収して使えるので実用的には何ら問題はないが、(a)の所定の角度を有する吐出口付き環状ノズルの方がより好ましい。
したがって最終的に、図19(b)のスリット付き環状ノズル200に替えて、図19(a)の所定の角度を有する吐出口付き環状ノズル2を採用することによって、過剰な塗料の吐出を極力抑えることができ、また、塗料を複数のノズル20を介してパイプ1の全周に亙り均等に、バランスよく塗布することができる。
【0053】
本発明の最終的な吐出口付き環状ノズル2は、図6〜図8に示すような、パイプ1の全面に均一な塗布が可能なように複数のノズル20を配置した形状であって、最終仕様は、パイプ口径22.2mmφ、ライン速度60〜80m/minの動作条件の場合で以下の数値となる。(なお括弧内には、その他の条件で一般的に使用可能な範囲を示す)。
円形の外径21が100mmφ、内径22が60mmφ、ノズル20の口径が1.2mmφ(通常0.8〜2.0mmφの範囲)、ノズル20の本数は16個(通常、2〜30個の範囲)、ノズル20の吐出角度は55°(通常、30〜85°の範囲)、吐出量は1〜1.5L/min(通常、0.5〜3L/min)である。
【0054】
(3)項目目のブラシ接触力の適正化:
図20はブラシ接触力の適正化について説明する図で、(a)はしごき代が同じで、ブラシ長が異なる場合、(b)はブラシ長が同じで、しごき代が異なる場合をそれぞれ示している。しごき代Sの定義は、前述の如く、
S=(被塗装物たる円形パイプ外径−空隙円形の直径)/2
である。そして厳密に言えば、ブラシの毛は直角に曲がらないので若干異なるが、図20では、円形パイプ表面に接している毛の長さを判りやすく概略しごき代Sとして示している。
まず、図20(a)について説明する。
図20(a)は(a1)と(a2)とから成り、ブラシ長が(a1)は長く、(a2)は短かく、しごき代はいずれも同じである。また、いずれの図も上図と下図があり、上図は環状ブラシ3の正面図、下図は環状ブラシ3が円形パイプをしごいている状態の部分断面拡大図である。
このように、環状ブラシ3の外径23は、(a1)では大きく、毛(ブラシ)25の長さL1も長く、これに対して(a2)では外径23は小さくて、毛25の長さL2も短くし、ただしブラシの円形空隙の直径24(したがってしごき代S1)は等しくしたので、(a1)では毛の先端のモーメントが小さくなり、ブラシのパイプ1表面への接触力が小さくなるのに対して、(a2)では、毛が短かいため毛の先端のモーメントが大きくなり、ブラシのパイプ1表面への接触力が大きくなる。
このように、同じしごき代の場合には、毛の長さによって接触力を調節することができる。
したがって、塗料の粘度等の関係において、強い接触力が要求される場合には同じしごき代であれば毛は短めにするのがよいし、逆に弱い接触力が要求される場合には同じしごき代であれば毛は長めにするのがよいことになる。
【0055】
次に、図20(b)について説明する。
図20(b)は(b1)と(b2)とから成り、(b1)のしごき代S1は短く、(b2)のしごき代S2長く(S1<S2)、毛の長さはいずれも同じである。いずれの図も上図と下図があり、上図は環状ブラシ3の正面図、下図は環状ブラシ3が円形パイプをしごいている状態の部分断面拡大図である。
このように、環状ブラシ3の外径23は、(b1)では大きく、(b2)では小さくて、毛25の長さL1は等しいので、(b1)では毛の先端のモーメントが小さくなり、ブラシのパイプ1表面への接触力が小さくなるのに対して、(b2)では、毛が短かいため毛の先端のモーメントが(b1)の場合よりも大きくなり、ブラシのパイプ1表面への接触力が大きくなる。
このように、毛の長さが同じ場合は、しごき代によって接触力を調節することができる。
したがって、塗料の粘度等の関係において、強い接触力が要求される場合には同じ毛の長さであればしごき代を長くするのがよいし、逆に弱い接触力が要求される場合にはしごき代を短めにするのがよいことになる。
【0056】
以上の結果、得られた改良された吐出口付き環状ノズル2と環状ブラシ3’を備えた図2に示す塗装装置の動作は、小口径パイプ1を単軸ロボット5によって、例えば、塗装スピードMax60m/min等の速度で搬送して、所定角度を有する吐出口付き環状ノズル2の位置で供給ポンプ6から所定量(例えば、吐出量1〜1.5/min等)の塗料を供給して、吐出口付き環状ノズル2の複数のノズル20(例えば、16本構成の場合とする)から、吐出角度(例えば、55°)でパイプ1の全周に亙って万遍なく均一な塗布を行う。余剰塗料は塗料受け皿7内に落下して回収されストレーナ等を介して循環再利用される。
【0057】
次に、環状ブラシ3の3段構成(5段まで可能)によるシゴキボックス4において、それぞれリング外径が例えば、50〜100mmφ、ブラシ内径が15mmφ、馬毛の長さが14.5〜34.5mm、シゴキ代2.4〜4.5mmなどで、スプリング30により自由度を持たせ、ブラシ接触力の適正化も図られた環状ブラシ3により3段階のシゴキを行って均一な膜厚のシゴキを行い、薄膜化して、ムラのないパイプ塗布を行う。
【0058】
図21〜図25に以上の仕上がり評価による各種テスト結果を示す。
図21は塗布法改善効果を示す図であって、塗布方法をスリット付き環状ノズル(円形スリット)200は評価が良であるが、所定角度を有する吐出口付き環状ノズル2に代えることによって仕上がり評価が優へと向上する。
【0059】
図22はブラシ自由度の効果を示す図であり、スプリング30による自由度付加の場合には、無しの場合と比較して評価が良から優に向上する。
【0060】
図23は再現性の精度を示す図であり、本発明の塗装装置でブラシ内径15mmφ、リング外径70mmφで、ブラシに自由度を付与した場合、7回繰り返しても仕上がり評価を常に優であった。
【0061】
図24はシゴキ速度の影響を示す図であって、ブラシ内径15mmφ、リング外径70mmφで、円形(環状)ノズルの場合、シゴキ速度が20〜60m/分内では仕上がりは良好であることが判る。
【0062】
図25は実塗料での仕上がり確認を示す図であって、ブラシ内径15mmφ、リング外径70mmφで、ブラシに自由度を付与した場合、5回繰り返しても仕上がり評価を常に優であった。
【0063】
このように本実施の形態によれば、円形パイプ表面塗装において、従来の塗装装置における課題を見出し、その結果塗布方法とシゴキ方法に問題があると判断し、塗装装置をスリット付き環状ノズル方式と吐出口付き環状ノズルで構成して、試験した結果、最終的に塗装方式は吐出口付き環状ノズル方式、シゴキ装置は環状ブラシ法を採用を採用するのがベストであり、また、環状ブラシは材質を最適な馬毛を使用してシゴキ代3.6mm、毛長24.5mmとして、ブラシに自由度を付加した結果、従来の実塗装装置における塗布よりも膜厚のバラツキが少なく、再現性のあることが確認された。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から通じる吐出スリットを半径方向内側全周に亘って設けたので、円形パイプの全周360度に亘って未塗装部分のないように確実に塗装できる環状ノズルが簡単に得られる。
【0065】
請求項2記載の発明によれば、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から半径方向内側に延びる複数の吐出口を設けたので、円形パイプの全周360度に亘って未塗装部分のないように確実に塗装できしかも過剰塗料の量を少なく押さえられる環状ノズルが得られる。
【0066】
請求項3記載の環状ノズルの発明によれば、前記吐出口が、前記環状ノズルの軸方向に対して所定角度を有して設けられたので、過剰塗料が環状ノズルの外に溜まるようになり、手入れが簡単となる。
【0067】
請求項4記載の環状ノズルの発明によれば、ノズル数が2〜30個で、前記ノズルの傾斜角度が環状ノズルの軸方向に対して30°〜85°であるので、未塗装部分が確実になくなり、過剰塗料の量を少なく押さえられ、しかも手入れが簡単となる。
【0068】
請求項5記載の環状ブラシの発明によれば、ブラシを環状体の半径方向内側に向けて環状体内側に植設したので、過剰塗料を確実にしごき落とすことができるようになる。
請求項6記載の環状ブラシの発明によれば、複数の弾性部材により揺動可能に保持して自由度を付加したので、円形パイプ1が環状ブラシのセンターからずれて環状ブラシに到来しても、自動的にセンター合わせが行われるので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
請求項7記載の環状ブラシの発明によれば、ブラシが0.2〜0.25mmφ程度の太さのナイロン又は馬毛であので、質の高い仕上がりとなる。
【0069】
請求項8記載のしごき装置の発明によれば、請求項5〜7のいずれか1項記載の環状ブラシの2〜5段重ねから成るので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
【0070】
請求項9記載のしごき装置の発明によれば、請求項8記載のしごき装置において、前記環状ブラシを取り付ける取付板のパイプ走行下流側に前記環状ブラシがくるように配置されるので、環状ブラシでしごかれた塗料が取付板に付着することが無くなり、手入れが簡単になる。
【0071】
請求項10記載の塗装装置の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項記載の環状ノズルと、請求項8又は9記載のしごき装置と、を備えたので、白錆の原因となる膜厚不均一が解消され、したがって長期の使用においても白錆が発生することがなくなる。また、過剰塗料を少なくして有効に使用することができるようになる。
【0072】
請求項11記載の塗装方法の発明によれば、中心を開けて環状に配置された複数の吐出口の該中心を通して円形パイプを移動させている間に、前記複数の吐出口から前記円形パイプの全周に亘って塗料を吐出させ、その後下流で、半径方向内側に向けてブラシを環状内側に植設して成る環状ブラシの中心に円形パイプを通して該環状ブラシによって円形パイプ表面の塗料のしごきを行なうので、塗料塗布層を一定の薄い膜厚で均一化することができる。
したがって、白錆の原因となる膜厚不均一が解消するので、長期の使用においても白錆が発生することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態たる塗装装置である。
【図2】本発明の第2の実施の形態たる塗装装置である。
【図3】スリット付き環状ノズルの分解斜視図である。
【図4】スリット付き環状ノズルの組立後の全体の斜視図である。
【図5】スリット付き環状ノズルの正面図(a)と図(a)のA−A断面図(b)である。
【図6】吐出口付き環状ノズルの分解斜視図である。
【図7】吐出口付き環状ノズルの組立後の全体の斜視図である。
【図8】吐出口付き環状ノズルの正面図(a)と図(a)のA−A断面図(b)である。
【図9】環状ブラシを説明する斜視図で、ブラシ側から見た斜視図(a)と、その反対側から見た斜視図である。
【図10】本発明に係る環状ブラシ装置を2種類示す図で、(a)は第1環状ブラシ装置、(b)は第2環状ブラシ装置の、それぞれ正面図(イ)と断面図(ロ)である。
【図11】本発明に係るブラシ装置で円形パイプをしごく様子を示す縦断面図で、第1環状ブラシ装置(a)と第2環状ブラシ装置(b)の場合である。
【図12】本発明に係る環状ブラシ装置のセンタリング機能を説明する縦断面図である。
【図13】ブラシ段数と仕上がりを示す線図である。
【図14】ブラシ間隔と仕上がりの関係を示す線図である。
【図15】ブラシ内径と仕上がりの関係を示す線図である。
【図16】ブラシ材質と仕上がりの関係を示す線図である。
【図17】塗布方法と仕上がりの関係を示す線図である。
【図18】塗布膜の膜厚のバラツキ精度と各塗装装置の関係を示す線図である。
【図19】(a)吐出口付き環状ノズルと(b)スリット付き環状ノズルの各吐出状態を示す正面図、および(c)と(d)の各側面図である。
【図20】環状ブラシの適性接触力を示す図である。
【図21】塗布法改善効果を示す図である。
【図22】ブラシ自由度の効果を示す図である。
【図23】再現性の精度を示す図である。
【図24】シゴキ速度の影響を示す図である。
【図25】実塗料での仕上がり確認を示す図である。
【図26】パイプ状物の従来公知の塗装装置である。
【符号の説明】
1 被塗装物たる円形パイプ
200 第1実施の形態に係るスリット付き環状ノズル
2 第2実施の形態に係る吐出口付き環状ノズル
2c センター
20 吐出口
21 本体部
21a 外側部
21c 内側部
21b 有底環状溝
22 蓋部
22a パッキン部
23 塗料流入パイプ
3 本発明に係る第1環状ブラシ装置
3’ 本発明に係る第2環状ブラシ装置
31 環状体
32 ブラシ
33 スプリング
34 筐体
34a 開口部
35 ストッパ
4 シゴキボックス
5 単軸ロボットによるパイプの搬送手段
6 供給ポンプ
7 塗料受け皿
8 ガイドレール
9 揺れ防止ローラ
210 本体部
211 外側部
212 有底環状溝
213 内側部
214 塗料流入パイプ
220 蓋部
221 外側部
222 内側部
230 スリット
【発明の属する技術分野】
本発明は、円形パイプの表面に薄く均一に塗装する塗装装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、線状物の塗装には、例えば特許文献1に示すような塗装装置が公知となっている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−249258号公報
【0004】
特許文献1記載の塗装装置は、電線の下地処理から塗装までの作業を自動機械化することにより、塗装むらのない確実な塗装を従来よりも格段に少ない工数で施行可能とするもので、そのために線材の表面の汚れ、油脂等の汚染物を除去する下地処理を行なう下地処理部と、同下地処理部にて処理された線材の表面に塗料を塗布する塗装部と、上記塗料が収容される塗料タンクと、塗装部への塗料の供給を制御する制御装置とを、上記線材に沿って、その長手方向に走行する走行装置に取付けて構成している。
【0005】
そして、その塗装部は、中央部に設けられた塗料室に塗料導入パイプから送給された塗料が充満しており、この塗料室内を送電線が移動することにより該送電線の表面全体に塗料が塗布され、そして同塗料室にて塗料が付着された送電線は次のブラシ部に入り、同ブラシ部のブラシによって、塗料が送電線の全周及び長手方向に沿って均一に延ばされる、というものである。
【0006】
ところが特許文献1記載の塗装装置は、対象が電線という半径の小さな物であるため、周方向の塗料の均一化にそれほど気を遣う必要がなく、単に塗料を溜めておく塗料室を設ける程度のものであった。
したがってかかる塗装装置をそのまま本発明が対象としている円形パイプの塗装に適用しても、塗料の薄くて均一な塗布には適していなかった。
【0007】
一方、パイプ状物の従来の塗装装置には、例えば、図26に示すようなものが知られていた。図26(a)に示すように、前処理工程100により湯洗等により被塗装パイプ表面の脱脂作業をして、100°C程度の加熱工程200により乾燥・前加熱を行い、塗布シャワーコート300による塗布と、均しローラ400によるしごきによる塗装工程で均一な塗装を行って、搬送・切断・結束工程500による処理を経て移送されるものである。
【0008】
このパイプ塗装処理手順を、図26(b)の作業の流れ図に沿って説明する。
パイプ塗装処理手順は、大きく、次の(1)〜(3)のステップから構成されている。
(1)まず、例えばラインスピード約100m/min、被塗装物たる円形パイプの外径が19mmφ〜30mmφで、パイプの長さ5.5mを、加熱工程により脱脂後の表面温度約85°Cで加熱処理するステップ(S100)。
(2)シャワーノズル3〜15mmφ、吐出量3〜5L/min、粘度13秒/HSによるシャワーコート300によって、最近はクロメート処理等の環境への影響が問題視されていることから、パイプ素材にZn(亜鉛)メッキでノンクロム処理剤の塗布を行なうステップ(S200)。
(3)パイプ表面に塗布された塗料は小鼓状の均しローラ2個を用いたしごきによって塗布層を膜厚3〜5μm等に均一化するステップ(S300)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術においては、塗装条件が膜厚2〜5μm等と薄く、ライン速度も約100m/min、パイプ口径19〜30mmφ、で直進送りと過酷な操業条件下で、パイプ素材はZnメッキされた後、塗布シャワーコート工程300において、吐出口1個の単純シャワーコート塗布によりノンクロム処理剤を塗布し、図26に示すような、小鼓状ローラ2個を垂直に立て中央部にパイプ径と合せた凹部形状を設けて、パイプの進行に合わせて2個のローラで挟み凹部でシゴいて膜厚の均一化を行っているが、塗装工程におけるシャワーコートでは管周の1部が未塗装になり易い等による塗布の不均一と、均しローラによるシゴキ精度の甘さが原因で発生する膜厚不均一による塗装欠陥によって白錆が発生するという問題があった。
また、一般的なシャワーコート方式のノズル(複数ノズルの場合も含む)による塗布方式では、塗料としてアスカZN(商標名)等のノンクロム処理剤(粘度13秒/IHS)を用いて塗布を行った場合、ノズルのみによるシャワーコート方式では、ライン速度が速いのでパイプ下部への回り込みが十分ではなく、塗布の不均一が発生することが判った。
また、ローラのシゴキについてもシゴキ精度の甘さがある、と言う問題点が摘出された。
【0010】
そこで、本発明は、円形パイプ全面にむらなく均一に塗布できるようにすると共に、パイプ全面に均一なシゴキを可能にしたことによって、塗膜が薄くて精度の高い均一な塗膜を実現して白錆の発生を防止できる塗装装置および塗装方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の環状ノズルの発明は、環状体をした塗料吐出用のノズルであって、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から通じる吐出スリットを半径方向内側全周に亘って設けたことを特徴とする。
このような構成により、円形パイプの全周360度に亘って未塗装部分のないように確実に塗装できる環状ノズルが簡単に得られる。
【0012】
請求項2記載の環状ノズルの発明は、環状体をした塗料吐出用のノズルであって、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から半径方向内側に複数の吐出口を設けたことを特徴とする。
このような構成により、円形パイプの全周360度に亘って未塗装部分のないように確実に塗装できしかも過剰塗料の量を少なく押さえられる環状ノズルが得られる。
請求項3記載の発明は、請求項3記載の環状ノズルにおいて、前記吐出口が、前記環状ノズルの軸方向に対して所定角度を有して設けられたことを特徴とする。
このような構成により、過剰塗料が環状ノズルの外に落下することで環状ノズルの汚れ防止が可能になり、手入れが簡単となる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の環状ノズルにおいて、前記ノズル数が2〜30個で、前記ノズルの傾斜角度が環状ノズルの軸方向に対して30°〜85°であることを特徴とする。
このような構成により、未塗装部分が確実になくなり、過剰塗料の量を少なく押さえられ、しかも手入れが簡単となる。
【0013】
請求項5記載の環状ブラシの発明は、環状体をした塗料ならし用のブラシであって、前記ブラシを前記環状体の半径方向内側に向けて該環状体内側に植設して成ることを特徴とする。
このような構成により、過剰塗料を確実にしごき落とすことができるようになる。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の環状ブラシにおいて、複数の弾性部材により揺動可能に保持して自由度を付加したことを特徴とする。
このような構成により、円形パイプが環状ブラシのセンターからずれて環状ブラシに到来しても、自動的にセンター合わせが行われるので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の環状ブラシにおいて、前記ブラシが0.2〜0.25mmφ程度の太さのナイロン又は馬毛であることを特徴とする。
このような構成により、質の高い仕上がりとなる。
【0014】
請求項8記載のしごき装置の発明は、請求項5〜7のいずれか1項記載の環状ブラシの2〜5段重ねから成ることを特徴とする。
このような構成により、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
請求項9記載の発明は、請求項8記載のしごき装置において、前記環状ブラシを取り付ける取付板のパイプ走行下流側に前記環状ブラシがくるように配置されることを特徴する。
このような構成により、環状ブラシでしごかれた塗料が取付板に付着することが無くなり、手入れが簡単になる。
【0015】
請求項10記載の塗装装置の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の環状ノズルと、請求項8又は9記載のしごき装置と、を備えたことを特徴とする。
このような構成により、白錆の原因となる膜厚不均一が解消され、したがって長年の使用においても白錆が発生することがなくなる。また、過剰塗料を少なくして有効に使用することができるようになる。
【0016】
請求項11記載の塗装方法の発明は、中心を開けて環状に配置された複数の吐出口の該中心を通して円形パイプを移動させている間に、前記複数の吐出口から前記円形パイプの全周に亘って塗料を吐出させ、その後下流で、半径方向内側に向けてブラシを環状内側に植設して成る環状ブラシの中心に円形パイプを通して該環状ブラシによって円形パイプ表面の塗料のしごきを行なうことにより、塗料塗布層を一定の膜厚に均一化することを特徴とする。
このような構成により、塗料塗布層を一定の薄い膜厚で均一化することができる。したがって、白錆の原因となる膜厚不均一が解消するので、長期の使用においても白錆が発生することがなくなる。
【0017】
以上のように、この塗装装置および塗装方法によれば、白錆の原因となる実塗装ラインの膜厚不均一を解消するので、長期の使用においても白錆が発生することがなくなり、しかも過剰塗料を少なくして塗料を有効に使用することができるようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
図1が本発明の第1の実施の形態たる塗装装置である。
図1において、1は被塗装物たる円形パイプであって、例えば、ビニールハウスなどで使用されるパイプで、パイプ素材は鉄パイプに亜鉛メッキを施された口径19〜30mmφ、パイプ長5.5m程度のパイプである。
200は本発明に係るスリット付き環状ノズルでノンクロム処理剤の塗料を円形パイプに塗装する塗装部を構成している。この塗装ノズルは従来のシャワー式と異なって、被塗装物たる円形パイプの円周360度に亘って塗料を吐出することができるスリットが形成されているので、「スリット付き環状ノズル」と呼んでいる。スリット付き環状ノズルについては後述する。
【0019】
3は本発明に係る環状ブラシであり、スリット付き環状ノズル200によってパイプ外周に塗布された塗料の膜厚をパイプ1の外周全周に均一にシゴいて均一化するものである。4はシゴキボックスで、中には前述の環状ブラシ3の3段構成となっている。環状ブラシについては後述する。
【0020】
5は単軸ロボットによるパイプ1の搬送手段であるが、実ラインではパイプ1は連続的に搬送され、塗装されるものである。本装置ではパイプ1を右から左方向(X軸方向)への送り制御を行う塗装ロボットで、パイプ1の進入位置をスリット付き環状ノズル200及び環状ブラシ3の中心に当たるように位置決めして、ボールネジ等を介した回転モータ、あるいは、リニアモータによるリニアロボット等によるX軸単軸方向へのパイプ1の位置、速度(例えば、塗装スピードMax60m/min等)の送り制御を行う。
【0021】
6は供給ポンプであって、前述のスリット付き環状ノズル200より所定の吐出量とタイミングで塗布できるようにスリット付き環状ノズル200へ塗料の供給を行う。7は塗料受け皿で、吐出口付き環状ノズル2の塗装作業に使われた余剰塗料が塗料受け皿7により回収されて再利用される。8はガイドレールで、単軸ロボット5によるパイプ1の正確な搬送を保証する。揺れ防止ローラ9はパイプ1の送り走行時のガタツキを防止して安定走行を図っている。
【0022】
このような塗装装置で円形パイプ1の全周に亘ってスリット付き環状ノズル200より塗料を塗布、環状ブラシ3でしごいた結果、図26のようなシャワー法の場合に生じた塗料の円形パイプの下部回り込み不足による未塗装部が生じなかった。
しかしながら、このようなことが可能になるのは、かなり高圧下で多量の塗料を360度スリットから吐出し続ける必要があり、過剰塗料が沢山生じてしまうという欠点があった。
【0023】
そこで本出願人は、過剰塗料を極力少なくおさえるようにするため、スリット付き環状ノズル200を改良した環状ノズルを考出し、これを第2の実施の形態たる塗装装置に使用した。
そこで、本発明のベストモードとしての第2の実施の形態たる塗装装置について説明する。
図2が本発明の第2の実施の形態たる塗装装置である。
図2において、この塗装装置全体は、パイプ1に塗料を吐出する後述する吐出口付き環状ノズル2、パイプ1上の過剰塗料を落とすシゴキボックス(例えば、後述する環状ブラシ3’の3段構成)4、パイプ1を図の右から左方向へ搬送する単軸ロボット5、環状ノズル2より所定の吐出量とタイミングで塗布できるように環状ノズル2へ塗料の供給を行う供給ポンプ6、環状ノズル2の塗装作業に使われた余剰塗料を回収して再利用するための塗料受け皿7、単軸ロボット5によるパイプ1の正確な搬送を保証するガイドレール8、パイプ1の送り走行時のガタツキを防止して安定走行を図る揺れ防止ローラ9で構成されている。
【0024】
このような塗装装置で円形パイプ1の全周に亘って吐出口付き環状ノズル2より塗料を吹き付け、環状ブラシ3’でしごいた結果、塗料が均一でしかも薄く塗布されることができた。
また、過剰塗料は第1の実施の形態と比べて激減した。
【0025】
次に、上記2つのラインに用いているスリット付き環状ノズル200、吐出口付き環状ノズル2、および環状ブラシ3並びに3’について詳しく説明する。
図3〜図5は図1のスリット付き塗装ノズル200について説明する図で、図3はスリット付き環状ノズルの分解斜視図、図4はスリット付き環状ノズルの組立後の全体の斜視図、図5はその正面図(a)と図(a)のA−A断面図(b)である。
【0026】
図3〜図5において、200はスリット付き環状ノズルで、共に環状に形成された本体部210と、この本体部210の溝の形成された側を覆う蓋部220から構成されている。
本体部210には、環の外側部211と内側部213との間に有底の環状溝212が軸に平行に掘られている。そして、外側部211からこの溝212に通じるように塗料を取り込む塗料流入パイプ214が外側部211の2箇所で貫通して取り付けられている。外部の供給ポンプ6(図1)からこの塗料流入パイプ214を介して送り込まれた塗料は、この環状溝212を通って、全周360度に行き渡る。
蓋部220には、環の外側部221とこの外側部221より若干低い位置に形成された内側部222(この差がスリット幅となる。)とから構成されている。
そこで、本体部210の外側部211に蓋部220の外側部221を合わせて図示のないねじで固定すれば、図4のようなスリット付き環状ノズル200が得られる。図4において、本体部210の内側部213と蓋部220の内側部222と間にスリット230が全周亘って形成されているのが見られる。
したがって、塗料が塗料流入パイプ214を介して中に送り込まれると、塗料は環状溝212を通って全周360度に行き渡るとともに、スリット230からスリット付き環状ノズル200の中心に向けて勢いよく吐出されることとなる。
【0027】
図5はスリット230の形成される構造を説明する図で、図5(a)におけるスリット付き環状ノズル200をA−A断面で見ると、図5(b)のように溝212を備えた本体部210と段状に形成された内側部222を備えた蓋部220とを合わせて固定した状態で、スリット230が全周に亘って形成される。
したがって、塗料を高圧下で流入すると、塗料は勢いよく環状ノズル200の溝212の中を通って360度全周に行き渡るとともに、蓋部220の外側部221と内側部222と段差により本体部210の内側部213と蓋部220の内側部222と間に形成される全周のスリット230から塗料を吐出する。
そこでスリット付き環状ノズル200の中心に被塗装物たる円形パイプを通過させれば、円形パイプの全周360度に亘って塗料が吹き付けられることとなり、シャワー法の場合に生じた塗料の円形パイプの下部回り込み不足による未塗装部が生じなくなる。
【0028】
このようにスリット付き環状ノズル200を用いると、従来のシャワー法と比べて円形パイプの円周360度に亘って塗料を均一に塗装することが可能となった。
しかしながら、このようなことが可能になるのは、かなり高圧下で多量の塗料を360度スリットから吐出し続ける必要があり、過剰塗料が沢山生じてしまうという欠点があった。
【0029】
そこで本出願人は、スリット付き環状ノズル200をさらに改良した吐出口付き環状ノズルを考出し、過剰塗料を極力少なくできるようにした。この吐出口付き環状ノズルは、被塗装物たる円形パイプの円周360度に亘って塗料を吐出する吐出口が多数埋め込まれているのが特徴である。
【0030】
図6〜図8は本出願人が考えた所定角度を有する吐出口付き環状ノズルで、図6は吐出口付き環状ノズルの分解斜視図、図7は吐出口付き環状ノズルの組立後の全体の斜視図、図8はその正面図(a)と図(a)のA−A断面図(b)である。
図6〜図8において、2は吐出口付き環状ノズルで、共に環状に形成された本体部21と、この本体部21の溝が形成された側を覆う蓋部22から構成されている。
本体部21には、環の外側部21aと内側部21cとの間に有底の環状溝21bが軸に平行に掘られている。外部からこの溝21bに塗料を取り込むためこの溝21bに通じる塗料流入パイプ23が外側部21aを貫通して設けられている。また、その溝21bの底から内側部21cを半径方向内側に斜めに貫通して吐出口20が多数設けられている。吐出口20は2〜30個が適切である。
【0031】
一方、蓋部22には、本体部21と接触する面にパッキン部22aが設けられている。そこで、本体部21に蓋部22のパッキン部22aを合わせてねじで固定すれば図7のような吐出口付き環状ノズル2が得られる。図7において、吐出口20が多数(図では8本)半径方向かつ環状ノズルの中心に吐出できる角度になっている。
図8(b)から判るように、各吐出口の角度が環状ノズル2の軸方向(すなわち、被加熱物たる円形パイプの走行方向)に対して垂直方向ではなくて、所定の角度(傾斜)をもっている点がもう1つの特徴である。実験によれば、傾斜角度は環状ノズルの軸方向に対して30°〜85°が適切であった。
【0032】
このように各吐出口20が所定の角度(傾斜)をもっているので、各吐出口20から被塗装物に向けて吐出された塗料の過剰分が下へ落下するとき、吐出口付き環状ノズル2の外側に落下するため、吐出口付き環状ノズル2の環状内側に溜まることがなくなり、汚れにくくなり、したがって手入れが簡単となる。
【0033】
このような吐出口付き環状ノズル2に塗料流入パイプ23から塗料を高圧下で流入すると、塗料は勢いよく環状ノズル2の溝21bの中を通って360度全周に行き渡るとともに、途中にある吐出口20から塗料が半径方向内側に吐出する。したがって、円形パイプの円周360度に亘って塗料を薄くかつ均一に塗装することが可能となった。
いろいろな塗装条件下で実験したが、図3〜図5のスリット付き環状ノズル200と同様満足のいく塗装ができた。膜厚が厚くなったり、溜まりが生じたり、逆に未塗装部が発生したりすることは無かった。また、塗料受け皿7(図2)に溜まった過剰塗料は、スリット付き環状ノズル200の塗料受け皿7(図1)に溜まった過剰塗料と比べると1/5以下であった。
【0034】
さらに、本出願人はこのような環状ノズルで塗布された塗料の過剰分をしごいて薄い均一な塗膜にする装置(以後、「しごき装置」と言う。)として環状ブラシ3および3’を考えた。
図9はその環状ブラシを説明する斜視図で、ブラシ側から見た斜視図(a)と、その反対側から見た斜視図である。
図9において、3は環状ブラシ装置で、環状体31の内周側に無数のブラシ32が植毛されている。ブラシの長さは環状体31の中心を通過する被塗装物たる円形パイプ1の外周に触れて若干曲がる程度の長さがよい。ブラシ32の材質は馬毛かナイロンで太さが0.20〜0.25mmφのものがよい。
そして環状体31の外周側に複数個のスプリング33の一端を取り付け、スプリング33の他端をここでは図示のない環状ブラシ調整部(図10参照)を介して筐体34に固定している。
筐体34の環状体31に対向する壁面中央には、被塗装物たる円形パイプを通過させる開口部34aが設けられている。
【0035】
図10は本発明に係る環状ブラシ装置を2種類示す図で、(a)は第1環状ブラシ装置、(b)は第2環状ブラシ装置のそれぞれ正面図(イ)と(イ)のA−A断面矢視図(ロ)を示している。
図10(a)において、3は環状ブラシ装置、31は環状体、32はブラシ、33はスプリング、34は筐体、35はストッパ、36は環状ブラシ調整部、34aは開口部である。図で矢印は塗装された円形パイプが通過する方向を示している。
環状ブラシ調整部36は、ネジの切ってある部分とスプリング33の端部を固定するスプリング固定部とから成るネジ棒36aと、このネジ棒36aのネジ部に螺合するネジが内側に切ってある調整つまみ36bと、ネジ棒36aをネジ棒36aの軸方向に移動可能に、半径方向に回転不可に内側に収納し、自身は筐体34の隅部に外側と内側を貫通して固定される座部36cとから構成される。
図では1箇所に示したが、実際は筐体34の4隅に設けられている。調整つまみ36bを一方向に回転させるとネジ棒36aは座部36cから露出してスプリング33を強く引き、逆方向に回転させると座部36c内に沈み込みスプリング33を緩める。そこで、被塗装物たる円形パイプが環状ブラシ装置3のブラシ32の空隙中心からずれて到来する場合に、これらの4個の環状ブラシ調整部36を使ってマニュアルにて環状ブラシ装置3内で環状体31を相対移動させれば、ブラシ32の空隙と円形パイプとを同心になるように調節することができる。
【0036】
図10(b)は本発明に係る第2環状ブラシ装置を示している。
図において、3’は第2環状ブラシ装置である。図10(a)の第1環状ブラシ装置と異なるところは、ストッパ35を省略し、かつ全体の配置を逆(すなわち、開口部34aのある筐体34の下流にブラシを配置)に置いた点である。その他の部品自体は同一である。
この装置の動作は図10(a)と原則同じである。すなわち、第2環状ブラシ装置3’を用いると、被塗装物たる円形パイプ1が環状ブラシ3のセンターからずれて環状ブラシ3に到来しても、自動的にセンター合わせが行われる(センタリング機能は後述。)ので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
ただ、図10(b)の第2環状ブラシ装置3’が優れているのは、ブラシ32が開口部34aのある筐体34の下流にあるので、円形パイプが高速で挿入されて環状体31およびブラシ32が押されても筐体34の壁面に接触するおそれがなく、その自由度が保たれることと、手入れが簡単となることである。
【0037】
図11は本発明に係るブラシ装置で円形パイプをしごく様子を示す縦断面図で、第1環状ブラシ装置(a)と第2環状ブラシ装置(b)の場合である。
図11(a)の第1環状ブラシ装置3の場合は、円形パイプ1が高速で挿入されると、環状体31およびブラシ32が押されて筐体34の壁面に接触するので第1環状ブラシ装置3の自由度が失われることとなる。また、ブラシ32でしごき落とされた余剰塗料Pは図11(a)のごとく開口部34aのある筐体34に付着して溜まるため、塗料を除去する定期的な手入れが必要となる。さらに、滞留した余剰塗料でブラシが押されて装置からはずれないようにするための押さえとしてストッパ35が必要である。
【0038】
これに対して、図11(b)の第2環状ブラシ装置3’の場合は、円形パイプが高速で挿入されて環状体31およびブラシ32が押されても筐体34の壁面に接触することがないので第2環状ブラシ装置3’の自由度は保たれる。
また、ブラシ32が円形パイプ1の塗料をしごいても過剰塗料が垂れないように塗料の量を供給しており、さらにラインスピード、ブラシの調整を行っているので過剰塗料が垂れることはないが、万一過剰塗料垂れたとしても環状ブラシ装置3’の筐体34の外に落下するので、特に筐体34に付着することが無く、装置の手入れが簡単となる。
したがって、円形パイプの移動速度によって異なるが、低速時(20m/min以下)であれば(a)の構造でよいが、それ以上の速度であれば(b)の方が便利である。さらに、装置の手入れまで考慮すると(b)の第2環状ブラシ装置3’の方が推奨される。
【0039】
次に、本発明に係る環状ブラシ装置のセンタリング機能について説明する。
図12は、本発明に係る環状ブラシ装置のセンタリング機能を説明する縦断面図で、第2環状ブラシ装置3’を用いた場合の例である。センタリング機能の説明は第2環状ブラシ装置3’の例で説明するが、第1環状ブラシ装置3の場合も全く同様のセンタリング機能を有することに変わりはない。
図12(a)のように第2環状ブラシ装置3’のブラシ32の開口部に上流から円形パイプ1が到来すると、ブラシ32の開口部中心と円形パイプ1の中心線が一致すれば均一なしごきが行われるので問題ない。しかしながら、円形パイプのたわみ、製造誤差や取り付け誤差等により実際は微妙に変位して到来することが多い。その場合、第2環状ブラシ装置3’が変位を解消する方向に360度の図示矢印のどの方向にも移動できるのが本発明に係る環状ブラシ装置の特徴である。
【0040】
その原理を図12(b)と(c)を用いて説明する。
図12(b)において、第2環状ブラシ装置3’のブラシ32の開口部に上流から円形パイプ1が到来する。このとき、第2環状ブラシ装置3’のブラシ32の開口部の中心c0から円形パイプ1の円の中心c1までのずれ量がt1であるとすると、スプリング33で付勢された第2環状ブラシ装置3’において、パイプ1がブラシの付け根近くに到来した側のブラシ32aにはパイプ1をセンターcに押し戻す押圧力が大きく働き、また、パイプが先端に着くか着かない程度のブラシ32bにはパイプ1をセンターcに押し戻す押圧力が生じないか生じても小さい。そしてパイプ1自体は半径方向には移動しないようにロボット(図1の5)で把持されているから、押圧力に応じた抗力がブラシに発生し、その抗力の合力によってあるスプリング33は延び、反対側のスプリング33は縮み、その結果、自動的にブラシ32の開口部中心c0と円形パイプ1の中心c1が一致する方向に移動して全ての抗力が等しくなった位置で安定する。そして各ブラシ32の長さと強度が揃えてあるので、ブラシ32の開口部中心と円形パイプ1の中心線が一致すれば、塗料の均一なしごきが行われることとなる。
このように本発明によれば、スプリング付勢された環状ブラシを採用することで、被塗装物たる円形パイプ1の中心c1が第2環状ブラシ3’の中心c0からずれて環状ブラシ3に到来しても、自動的にセンター合わせが行われるので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
【0041】
ここで、ベストモデルとしての塗装装置を開発するために、図1の第1の実施の形態たる塗装装置を用いて各種の実験を行ったので、その実験結果とその対策について述べる。
この場合の実験条件としては、塗装スピードMax60m/min、ブラシ段数3段(5段まで可能)、ブラシ材質は馬毛、パイプのプレヒートとして乾燥機で昇温、塗装時約75°Cで塗装を行った。しごき装置として環状ブラシを用いたが、ただし、スプリングによる揺動機構は用いなかった。
各種テストの結果を図13〜図18に示す。
【0042】
図13はブラシ段数と仕上がりを示す線図で、横軸はブラシ段数、縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。
線図によれば、ブラシ段数は1段では不良であるが、2段になると許容内となり、3段〜5段にすると優に近づく。また、それ以上段数を増やしても塗装スピードが遅くなるだけでそれほどの効果は上がらなかった。したがってブラシ段数は2〜5段がよい。
【0043】
図14はブラシ間隔と仕上がりの関係を示す線図で、横軸はブラシ間隔(mm)、縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。
線図によれば、ブラッシ間隔は50mm〜150mmの間隔ならば仕上がり評価は許容内を示しているので、ブラッシ間隔は50mmにすれば、装置の小型化、コストダウンになるので、これが推奨される。
【0044】
図15は、ブラシ内径と仕上がりの関係を示す線図で、横軸はブラシ径、縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。横軸のブラシ径の定義は、環状配置されたブラシの先端でできる空隙円形の直径とする(図20参照)。
また、しごき代Sの定義は、つぎのようにする。
S=(被塗装物たる円形パイプ外径−空隙円形の直径)/2
例えば、1)円形パイプの外径が22.2mm
空隙円形の直径が14mmの場合、しごき代S=4.1mmとなり、
2)円形パイプの外径が22.2mm
空隙円形の直径が15mmの場合、しごき代S=3.6mmとなる。
そこで、図15において、ナイロン0.2mmφの毛をブラシに用いたら、この結果、
(a)円形パイプの外径が22.2mmで、ブラシ内径が80mm、ブラシ先端の作る空隙円形の直径が14mm(すなわち、しごき代が4.1mm)の場合、仕上がり評価は許容内を示した。
(b)円形パイプの外径が22.2mmで、ブラシ内径が80mm、ブラシ先端の作る空隙円形の直径が15mm(すなわち、しごき代が3.6mm)の場合、仕上がり評価は許容内を示した。
(c)円形パイプの外径が22.2mmで、ブラシ内径が85mm、ブラシ先端の作る空隙円形の直径が15mm(すなわち、しごき代が3.6mm)の場合、仕上がり評価は許容内を示した。
したがって、ナイロン0.2mmφの場合、例えばリング径が14〜15mm、ブラシ内径80〜85mmの場合、しごき代が3.6mm〜4.1mmであれば良いので、そのようなしごき代となるパイプ径のしごきに適していることが判る。
【0045】
図16は、ブラシ材質と仕上がりの関係を示す線図で、横軸は各種材質で、馬毛、豚毛、0.15mm直径のナイロン、0.2mm直径のナイロン、0.25mm直径のナイロンとなっている。縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。
線図によれば、馬毛か0.2mm直径以上のナイロンが材質としては推奨されることが判る。
【0046】
図17は、塗布方法と仕上がりの関係を示す線図で、横軸は上ノズル1個、下ノズル1個、円形(環状)スリット。縦軸は仕上がり評価である。仕上がり評価は4段階になっており、×は評価不可、△は評価不良、○+△は評価良、○は評価優である。
線図によれば、上ノズル1個の場合も、下ノズル1個の場合も、ノズル1個のみではライン速度が速くなるとパイプ全体への塗料の回り込みが不十分になった。これに対して、円形スリットでは評価は許容内であり、これが推奨されることが判る。
【0047】
図18は塗布膜の膜厚のバラツキ精度と各塗装装置の関係を示す線図で、横軸は図26の従来の塗装装置と図1の本発明の塗装装置、縦軸は膜厚のバラツキ精度(%)である。
線図によれば、膜厚のバラツキ精度は図26の従来の塗装装置だと25.6%であるが、図1の塗装装置を用いるとバラツキは15.3%と約半分にまで改善されることが判る。
【0048】
以上のテストの結果、(a)、ブラシ段数は3段必要であり、ブラシ間隔は50mm間隔程度が推奨される。(b)、ブラシ内径はシゴキ代3.6mm程度以下が適当とされる。(c)、ブラシ材質は太さが馬毛か0.2mmφ〜0.5mmφのナイロンが選定される。(d)、塗布方式はスリット付き環状ノズルを用いたが、仕上がりに関しては一般ノズル方式と差はないものの、一般ノズルではライン速度が速くなるとパイブ下部への供給が不十分になる。(e)、シゴキ速度は3段環状ブラシ方式としたが低速が好ましい、ということが判明した。
【0049】
以上より、スリット付き環状ノズルを用いたテストの結果、最終的な改善点として、
(1)、環状ブラシ3について、ブラシの自由度が無いので、これを改善する必要がある。
(2)、スリット付き環状ノズルによる塗料の吐出量が3L/minと多すぎるために、パイプ1の全周の吐出量のバラツキがあるので、塗布方式を改善する必要がある。
(3)、環状ブラシについてパイプ表面にスジ状の仕上がりが発生し易いので、環状ブラシ3の外径を大きくしたり、毛の長さを変更する等のブラシ接触力の適正化が必要である。
【0050】
(1)のブラシの自由度付与の改善:
これについては、請求項6のようにすることで解決した。すなわち、図10(a)および(b)の環状ブラシの図に示すように、環状ブラシ3、3’の4方向にスプリング30を配置して自由度を付加している。これによってパイプ1の挿入位置が若干ずれても中心に修正できるようにした。
更に、図10(a)の側面図のように、ブラシ32と取付板34の位置関係が、ブラシ32が上流だと、ブラシ32のしごいた塗料Pが取付板31に付着してしまうので、図10(b)のように位置関係を逆にして、取付板34の下流にブラシ32を配置することによって、ブラシ32のしごいた塗料Pが取付板31に付着することがなく、追従性が良くなりスムースなシゴキが可能になる。
【0051】
本発明の環状ブラシ3の最終仕様としては、以下に、パイプ口径22.2mmφ、ライン速度60〜80m/minとした時の、各数値を示している(なお、括弧内の数値は使用可能範囲を示している)。
環状ブラシ3のリング外径23は60〜80mmφ(通常、50〜100mmφの範囲)、ブラシ内径24は15mmφ、毛(ブラシ)の長さ25は19.5〜29.5mm(通常、14.5〜34.5mmの範囲)、シゴキ代26は3.6mm(通常、2.5〜4.5mmの範囲)、毛の材質は馬毛、又は、ナイロン(毛の太さは0.2〜0.25mmφ)、シゴキボックス4内で使用する環状ブラシ3の段数は3段(通常、2〜5段の範囲)、環状ブラシ3の間隔は50〜100mm(但し、間隔は特に規定しない)となる。
【0052】
(2)項目目の塗布方式の改善:
図19は(a)の吐出口付き環状ノズルと(b)のスリット付き環状ノズル200の各吐出状態を示す正面図、および中空パイプ1に塗料を吐出している(c)の吐出口付き環状ノズル2と(d)のスリット付き環状ノズル200の各側面図である。
図19(a)と(b)を比較して判るように、図19(a)の吐出口付き環状ノズル2においては、塗料P1は各吐出口20からそれぞれ環状ノズル2のセンター2cに向かって吐出され真っ直ぐ細長い柱状を保ったまま中空パイプ1に到達して中空パイプ10を塗装するので、塗料が途中で外れるといったことがなくなりほとんどの塗料が中空パイプ10の塗装に寄与する。したがって、塗料の吐出量に無駄が少なくなる。また、均一にかつ薄く塗装することができる。
これに対して、図19(b)のスリット付き環状ノズル200においては、塗料P3がスリット230からいきなりセンター2cに達するように勢いよる吐出させるので、塗料の一部が途中でコースを外れる分を加味したりするため、塗料に多量の無駄が生じる。図19(a)の吐出口付き環状ノズル2における過剰塗料の量をQP2とし、図19(b)のスリット付き環状ノズル200における過剰塗料の量をQP4とすると、QP2<QP4となる。
以上の点で、(b)のスリット付き環状ノズル200は製造がきわめて簡単で、また過剰塗料は回収して使えるので実用的には何ら問題はないが、(a)の所定の角度を有する吐出口付き環状ノズルの方がより好ましい。
したがって最終的に、図19(b)のスリット付き環状ノズル200に替えて、図19(a)の所定の角度を有する吐出口付き環状ノズル2を採用することによって、過剰な塗料の吐出を極力抑えることができ、また、塗料を複数のノズル20を介してパイプ1の全周に亙り均等に、バランスよく塗布することができる。
【0053】
本発明の最終的な吐出口付き環状ノズル2は、図6〜図8に示すような、パイプ1の全面に均一な塗布が可能なように複数のノズル20を配置した形状であって、最終仕様は、パイプ口径22.2mmφ、ライン速度60〜80m/minの動作条件の場合で以下の数値となる。(なお括弧内には、その他の条件で一般的に使用可能な範囲を示す)。
円形の外径21が100mmφ、内径22が60mmφ、ノズル20の口径が1.2mmφ(通常0.8〜2.0mmφの範囲)、ノズル20の本数は16個(通常、2〜30個の範囲)、ノズル20の吐出角度は55°(通常、30〜85°の範囲)、吐出量は1〜1.5L/min(通常、0.5〜3L/min)である。
【0054】
(3)項目目のブラシ接触力の適正化:
図20はブラシ接触力の適正化について説明する図で、(a)はしごき代が同じで、ブラシ長が異なる場合、(b)はブラシ長が同じで、しごき代が異なる場合をそれぞれ示している。しごき代Sの定義は、前述の如く、
S=(被塗装物たる円形パイプ外径−空隙円形の直径)/2
である。そして厳密に言えば、ブラシの毛は直角に曲がらないので若干異なるが、図20では、円形パイプ表面に接している毛の長さを判りやすく概略しごき代Sとして示している。
まず、図20(a)について説明する。
図20(a)は(a1)と(a2)とから成り、ブラシ長が(a1)は長く、(a2)は短かく、しごき代はいずれも同じである。また、いずれの図も上図と下図があり、上図は環状ブラシ3の正面図、下図は環状ブラシ3が円形パイプをしごいている状態の部分断面拡大図である。
このように、環状ブラシ3の外径23は、(a1)では大きく、毛(ブラシ)25の長さL1も長く、これに対して(a2)では外径23は小さくて、毛25の長さL2も短くし、ただしブラシの円形空隙の直径24(したがってしごき代S1)は等しくしたので、(a1)では毛の先端のモーメントが小さくなり、ブラシのパイプ1表面への接触力が小さくなるのに対して、(a2)では、毛が短かいため毛の先端のモーメントが大きくなり、ブラシのパイプ1表面への接触力が大きくなる。
このように、同じしごき代の場合には、毛の長さによって接触力を調節することができる。
したがって、塗料の粘度等の関係において、強い接触力が要求される場合には同じしごき代であれば毛は短めにするのがよいし、逆に弱い接触力が要求される場合には同じしごき代であれば毛は長めにするのがよいことになる。
【0055】
次に、図20(b)について説明する。
図20(b)は(b1)と(b2)とから成り、(b1)のしごき代S1は短く、(b2)のしごき代S2長く(S1<S2)、毛の長さはいずれも同じである。いずれの図も上図と下図があり、上図は環状ブラシ3の正面図、下図は環状ブラシ3が円形パイプをしごいている状態の部分断面拡大図である。
このように、環状ブラシ3の外径23は、(b1)では大きく、(b2)では小さくて、毛25の長さL1は等しいので、(b1)では毛の先端のモーメントが小さくなり、ブラシのパイプ1表面への接触力が小さくなるのに対して、(b2)では、毛が短かいため毛の先端のモーメントが(b1)の場合よりも大きくなり、ブラシのパイプ1表面への接触力が大きくなる。
このように、毛の長さが同じ場合は、しごき代によって接触力を調節することができる。
したがって、塗料の粘度等の関係において、強い接触力が要求される場合には同じ毛の長さであればしごき代を長くするのがよいし、逆に弱い接触力が要求される場合にはしごき代を短めにするのがよいことになる。
【0056】
以上の結果、得られた改良された吐出口付き環状ノズル2と環状ブラシ3’を備えた図2に示す塗装装置の動作は、小口径パイプ1を単軸ロボット5によって、例えば、塗装スピードMax60m/min等の速度で搬送して、所定角度を有する吐出口付き環状ノズル2の位置で供給ポンプ6から所定量(例えば、吐出量1〜1.5/min等)の塗料を供給して、吐出口付き環状ノズル2の複数のノズル20(例えば、16本構成の場合とする)から、吐出角度(例えば、55°)でパイプ1の全周に亙って万遍なく均一な塗布を行う。余剰塗料は塗料受け皿7内に落下して回収されストレーナ等を介して循環再利用される。
【0057】
次に、環状ブラシ3の3段構成(5段まで可能)によるシゴキボックス4において、それぞれリング外径が例えば、50〜100mmφ、ブラシ内径が15mmφ、馬毛の長さが14.5〜34.5mm、シゴキ代2.4〜4.5mmなどで、スプリング30により自由度を持たせ、ブラシ接触力の適正化も図られた環状ブラシ3により3段階のシゴキを行って均一な膜厚のシゴキを行い、薄膜化して、ムラのないパイプ塗布を行う。
【0058】
図21〜図25に以上の仕上がり評価による各種テスト結果を示す。
図21は塗布法改善効果を示す図であって、塗布方法をスリット付き環状ノズル(円形スリット)200は評価が良であるが、所定角度を有する吐出口付き環状ノズル2に代えることによって仕上がり評価が優へと向上する。
【0059】
図22はブラシ自由度の効果を示す図であり、スプリング30による自由度付加の場合には、無しの場合と比較して評価が良から優に向上する。
【0060】
図23は再現性の精度を示す図であり、本発明の塗装装置でブラシ内径15mmφ、リング外径70mmφで、ブラシに自由度を付与した場合、7回繰り返しても仕上がり評価を常に優であった。
【0061】
図24はシゴキ速度の影響を示す図であって、ブラシ内径15mmφ、リング外径70mmφで、円形(環状)ノズルの場合、シゴキ速度が20〜60m/分内では仕上がりは良好であることが判る。
【0062】
図25は実塗料での仕上がり確認を示す図であって、ブラシ内径15mmφ、リング外径70mmφで、ブラシに自由度を付与した場合、5回繰り返しても仕上がり評価を常に優であった。
【0063】
このように本実施の形態によれば、円形パイプ表面塗装において、従来の塗装装置における課題を見出し、その結果塗布方法とシゴキ方法に問題があると判断し、塗装装置をスリット付き環状ノズル方式と吐出口付き環状ノズルで構成して、試験した結果、最終的に塗装方式は吐出口付き環状ノズル方式、シゴキ装置は環状ブラシ法を採用を採用するのがベストであり、また、環状ブラシは材質を最適な馬毛を使用してシゴキ代3.6mm、毛長24.5mmとして、ブラシに自由度を付加した結果、従来の実塗装装置における塗布よりも膜厚のバラツキが少なく、再現性のあることが確認された。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から通じる吐出スリットを半径方向内側全周に亘って設けたので、円形パイプの全周360度に亘って未塗装部分のないように確実に塗装できる環状ノズルが簡単に得られる。
【0065】
請求項2記載の発明によれば、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から半径方向内側に延びる複数の吐出口を設けたので、円形パイプの全周360度に亘って未塗装部分のないように確実に塗装できしかも過剰塗料の量を少なく押さえられる環状ノズルが得られる。
【0066】
請求項3記載の環状ノズルの発明によれば、前記吐出口が、前記環状ノズルの軸方向に対して所定角度を有して設けられたので、過剰塗料が環状ノズルの外に溜まるようになり、手入れが簡単となる。
【0067】
請求項4記載の環状ノズルの発明によれば、ノズル数が2〜30個で、前記ノズルの傾斜角度が環状ノズルの軸方向に対して30°〜85°であるので、未塗装部分が確実になくなり、過剰塗料の量を少なく押さえられ、しかも手入れが簡単となる。
【0068】
請求項5記載の環状ブラシの発明によれば、ブラシを環状体の半径方向内側に向けて環状体内側に植設したので、過剰塗料を確実にしごき落とすことができるようになる。
請求項6記載の環状ブラシの発明によれば、複数の弾性部材により揺動可能に保持して自由度を付加したので、円形パイプ1が環状ブラシのセンターからずれて環状ブラシに到来しても、自動的にセンター合わせが行われるので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
請求項7記載の環状ブラシの発明によれば、ブラシが0.2〜0.25mmφ程度の太さのナイロン又は馬毛であので、質の高い仕上がりとなる。
【0069】
請求項8記載のしごき装置の発明によれば、請求項5〜7のいずれか1項記載の環状ブラシの2〜5段重ねから成るので、塗料の均一なしごきが行われるようになる。
【0070】
請求項9記載のしごき装置の発明によれば、請求項8記載のしごき装置において、前記環状ブラシを取り付ける取付板のパイプ走行下流側に前記環状ブラシがくるように配置されるので、環状ブラシでしごかれた塗料が取付板に付着することが無くなり、手入れが簡単になる。
【0071】
請求項10記載の塗装装置の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項記載の環状ノズルと、請求項8又は9記載のしごき装置と、を備えたので、白錆の原因となる膜厚不均一が解消され、したがって長期の使用においても白錆が発生することがなくなる。また、過剰塗料を少なくして有効に使用することができるようになる。
【0072】
請求項11記載の塗装方法の発明によれば、中心を開けて環状に配置された複数の吐出口の該中心を通して円形パイプを移動させている間に、前記複数の吐出口から前記円形パイプの全周に亘って塗料を吐出させ、その後下流で、半径方向内側に向けてブラシを環状内側に植設して成る環状ブラシの中心に円形パイプを通して該環状ブラシによって円形パイプ表面の塗料のしごきを行なうので、塗料塗布層を一定の薄い膜厚で均一化することができる。
したがって、白錆の原因となる膜厚不均一が解消するので、長期の使用においても白錆が発生することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態たる塗装装置である。
【図2】本発明の第2の実施の形態たる塗装装置である。
【図3】スリット付き環状ノズルの分解斜視図である。
【図4】スリット付き環状ノズルの組立後の全体の斜視図である。
【図5】スリット付き環状ノズルの正面図(a)と図(a)のA−A断面図(b)である。
【図6】吐出口付き環状ノズルの分解斜視図である。
【図7】吐出口付き環状ノズルの組立後の全体の斜視図である。
【図8】吐出口付き環状ノズルの正面図(a)と図(a)のA−A断面図(b)である。
【図9】環状ブラシを説明する斜視図で、ブラシ側から見た斜視図(a)と、その反対側から見た斜視図である。
【図10】本発明に係る環状ブラシ装置を2種類示す図で、(a)は第1環状ブラシ装置、(b)は第2環状ブラシ装置の、それぞれ正面図(イ)と断面図(ロ)である。
【図11】本発明に係るブラシ装置で円形パイプをしごく様子を示す縦断面図で、第1環状ブラシ装置(a)と第2環状ブラシ装置(b)の場合である。
【図12】本発明に係る環状ブラシ装置のセンタリング機能を説明する縦断面図である。
【図13】ブラシ段数と仕上がりを示す線図である。
【図14】ブラシ間隔と仕上がりの関係を示す線図である。
【図15】ブラシ内径と仕上がりの関係を示す線図である。
【図16】ブラシ材質と仕上がりの関係を示す線図である。
【図17】塗布方法と仕上がりの関係を示す線図である。
【図18】塗布膜の膜厚のバラツキ精度と各塗装装置の関係を示す線図である。
【図19】(a)吐出口付き環状ノズルと(b)スリット付き環状ノズルの各吐出状態を示す正面図、および(c)と(d)の各側面図である。
【図20】環状ブラシの適性接触力を示す図である。
【図21】塗布法改善効果を示す図である。
【図22】ブラシ自由度の効果を示す図である。
【図23】再現性の精度を示す図である。
【図24】シゴキ速度の影響を示す図である。
【図25】実塗料での仕上がり確認を示す図である。
【図26】パイプ状物の従来公知の塗装装置である。
【符号の説明】
1 被塗装物たる円形パイプ
200 第1実施の形態に係るスリット付き環状ノズル
2 第2実施の形態に係る吐出口付き環状ノズル
2c センター
20 吐出口
21 本体部
21a 外側部
21c 内側部
21b 有底環状溝
22 蓋部
22a パッキン部
23 塗料流入パイプ
3 本発明に係る第1環状ブラシ装置
3’ 本発明に係る第2環状ブラシ装置
31 環状体
32 ブラシ
33 スプリング
34 筐体
34a 開口部
35 ストッパ
4 シゴキボックス
5 単軸ロボットによるパイプの搬送手段
6 供給ポンプ
7 塗料受け皿
8 ガイドレール
9 揺れ防止ローラ
210 本体部
211 外側部
212 有底環状溝
213 内側部
214 塗料流入パイプ
220 蓋部
221 外側部
222 内側部
230 スリット
Claims (11)
- 環状体をした塗料吐出用のノズルであって、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から通じる吐出スリットを半径方向内側全周に亘って設けたことを特徴とする環状ノズル。
- 環状体をした塗料吐出用のノズルであって、内部に塗料給送用の環状通路を備え該環状通路から半径方向内側に複数の吐出口を設けたことを特徴とする環状ノズル。
- 前記吐出口が、前記環状ノズルの軸方向に対して所定角度を有して設けられたことを特徴とする請求項2記載の環状ノズル。
- 前記ノズル数が2〜30個で、前記ノズルの傾斜角度が環状ノズルの軸方向に対して30°〜85°であることを特徴とする請求項3記載の環状ノズル。
- 環状体をした塗料ならし用のブラシであって、前記ブラシを前記環状体の半径方向内側に向けて該環状体内側に植設して成ることを特徴とする環状ブラシ。
- 複数の弾性部材により揺動可能に保持して自由度を付加したことを特徴とする請求項5記載の環状ブラシ。
- 前記ブラシが0.2〜0.25mmφ程度の太さのナイロン又は馬毛であることを特徴とする請求項5又は6記載の環状ブラシ。
- 請求項5〜7のいずれか1項記載の環状ブラシの2〜5段重ねから成ることを特徴とするしごき装置。
- 前記環状ブラシを取り付ける取付板はパイプ走行下流側に前記環状ブラシがくるように配置されることを特徴する請求項8記載のしごき装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の環状ノズルと、請求項8又は9記載のしごき装置と、を備えたことを特徴とする塗装装置。
- 中心を開けて環状に配置された複数の吐出口の該中心を通して円形パイプを移動させている間に、前記複数の吐出口から前記円形パイプの全周に亘って塗料を吐出させ、その後下流で、半径方向内側に向けてブラシを環状内側に植設して成る環状ブラシの中心に円形パイプを通して該環状ブラシによって円形パイプ表面の塗料のしごきを行なうことにより、塗料塗布層を一定の膜厚に均一化することを特徴とする塗装方法。
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