JP2004344453A - 防滑靴底の製造方法及び同方法で製造される靴底を有する履物 - Google Patents
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Abstract
【課題】金型によって靴底本体と突起とが一体に成形される靴底において、防滑性向上のため突起のアンダカットを大きくしても無理なく金型で成形できるようにする。
【解決手段】アンダカットを有する突起3tを靴底本体3aと一体に金型成形するにあたり、金型10に、所定ストローク昇降可能な可動子11を挿設するとともに、金型10と可動子11の境界面xを跨って、突起形成用凹部12を設け、凹部12が境界面xによって分断されるようにする。そして靴底成形空間に靴底材料を充填して靴底本体3aと突起3tを一体に成形した後、可動子11が靴底3に引き摺られて上昇するようにし、開口部の面積を広くして脱型する。尚、凹部12を可動子11側だけに設け、可動子11が上昇すると凹部12の開口面積が広がるようにしても良い。
【選択図】 図3
【解決手段】アンダカットを有する突起3tを靴底本体3aと一体に金型成形するにあたり、金型10に、所定ストローク昇降可能な可動子11を挿設するとともに、金型10と可動子11の境界面xを跨って、突起形成用凹部12を設け、凹部12が境界面xによって分断されるようにする。そして靴底成形空間に靴底材料を充填して靴底本体3aと突起3tを一体に成形した後、可動子11が靴底3に引き摺られて上昇するようにし、開口部の面積を広くして脱型する。尚、凹部12を可動子11側だけに設け、可動子11が上昇すると凹部12の開口面積が広がるようにしても良い。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に食品加工場や水産加工場のように床面が滑り易い場所においても滑りにくい靴底の接地部を製造する製造技術及び防滑性の高い靴底構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、靴底の防滑性を高める技術として、例えばガラス繊維や珪砂等の充填材を靴底材料に充填して射出成形やプレス成形等で靴底を成形する技術が知られているが、このような技術では、靴底材料に充填材を均質に混ぜるために多数で複雑な工程を必要とする等の問題があるため、靴底の接地面側に設けられる複数の突起の形状として、接地面側の水平断面積が付根側の水平断面積より大きくなるような形状にすることで防滑性を高めるような技術が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
【特許文献1】
実公昭59−11616号公報第3図
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のような技術は、靴底本体と突起とを分割し、突起を予め別工程で作製するため、突起の形状の自由度は増すものの、工程数が多い分だけ製造コストが嵩むような不具合がある。
一方、靴底本体と突起を一体化すれば、工程数の削減が図られ、製造コストの低減も可能であるが、突起の接地面側の水平断面積が付根側の水平断面積より大きくなるような形状にしようとすると、金型を用いて成形する場合には突起がアンダカットとなる。この際、アンダーカットであっても、例えば突起の高さが低い場合や、傾斜角度が浅い(アンダカットが小さい)場合には、靴底材料の柔軟性により無理抜きにより脱型することが可能であるものの、突起の高さが高い場合や、傾斜角度が大きい(アンダカットが大きい)場合には、突起の柔軟性による変形量の限界以上となって、突起が破損する等により正常に脱型することが出来なくなる。
【0005】
そこで本発明は、射出成形、注入成形、熱プレス成形等の金型を用いて同一の靴底材料で靴底本体と突起とが一体に成形される靴底において、防滑性向上のため突起のアンダカットを大きくしても無理なく成形できるようにし、また、金型成形によってアンダカットの大きい防滑性の高い靴底構造を提供できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、靴底本体と、この靴底本体から接地面側に向けて突出する突起とを金型によって一体に成形し、この際、前記突起の接地側の水平断面積が突起の付根側の水平断面積より大きくなるようにした靴底の製造方法において、金型として、上昇可能な可動子が挿設してなり、突起形成用の凹部が、金型と可動子の境界面を跨るように設けられて境界面によって分断されたものを用い、金型に靴底材料を充填して靴底を形成した後、可動子を上昇させて靴底を脱型するようにした。
【0007】
ここで、突起の接地側の水平断面積が付根側の水平断面積より大きくなるような形態は、金型から脱型する際に突起がアンダカットとなるが、金型として、上昇可能な可動子が挿設され、突起形成用の凹部が、金型と可動子の境界面を跨るように設けられて境界面によって分断されたものを用いるようにし、金型に靴底材料を充填して靴底を形成した後、可動子を上昇させて靴底を脱型するようにすれば、脱型時に必要とされる突起の変形量が少なくて済むようになり、アンダカットが大きくても脱型が可能となる。
また、突起の接地側の水平断面積が付根側の水平断面積より大きくなるようにすることで、歩行時等に突起が屈曲しやすくなり、水平方向に急激な荷重がかかっても、突起の屈曲によって荷重が時間的に分散されて静止摩擦力を超えずらくなり、さらには突起が鋭角に形成されているので地面にひっかかるようになって防滑効果を高めることが出来ると思われるが、突起の具体的な形態は任意であり、例えば、突起の側面に直線状のテーパ角を与えて下向きに広がる形状にしても良く、下向きにキノコ状に広がる形状にしても良く、その他の形態で下方が広がる形状にしても良い。
また、金型の成形としては、流動性の靴底材料を金型内に充填する射出成形や注入成形、熱可塑性のシートを金型内で塑性変形させる熱プレス成形等のいずれでも良い。
更に、靴底本体とは、必ずしも靴底全体をカバーするものでなくても良く、靴底の一部を部分的にカバーするものでも良い。
【0008】
また本発明では、靴底本体と、この靴底本体から接地面側に向けて突出する突起とを金型によって一体に成形し、この際、前記突起の接地側の水平断面積が突起の付根側の水平断面積より大きくなるようにした靴底の製造方法において、金型として、突起形成用の凹部を有した上昇可能な可動子が挿設され、この可動子として、複数の分割体から構成されて上昇時に凹部の開口面積を広げる方向に開くようにされたものを用いるようにし、金型に靴底材料を充填して靴底を形成した後、可動子を上昇させて靴底を脱型するようにした。
【0009】
このように、金型として、突起形成用の凹部を有した上昇可能な可動子が挿設されるものを用いるとともに、この可動子を複数の分割体から構成して上昇時に凹部の開口面積を広げる方向に開くようにすれば、脱型時に突起のアンダカットを避けることが出来るようになり、大きなアンダカットでも無理なく脱型可能である。
ここで、上昇時に凹部の開口面積を広げることの出来る可動子の具体的構成は任意であるが、例えば可動子の挿設孔を上広がりのテーパ孔とし、可動子が上昇すると、複数の分割体が外側に開くようにすれば好適である。
尚、分割体の分割数等は任意であるが、分割数を多くすると分割体が破損しやすくなるので、分割数は2個とするのが良い。
【0010】
また本発明の製造方法によれば、前記突起が概ね円錐または多角錐の底部側部分の形状をしており、突起の接地面と突起の側面とのなす角度が80度以下である場合、突起の付根部分の水平断面積をS1、突起の接地面の面積をS2、突起の高さをHとした場合に、脱型の困難性の度合いを示す式:((S2/S1)×H)/(S2)1/2が0.7以上で、3以下の突起を有する靴底が得られるようになった。この数式の意味は、S2/S1が大きいほど、また扁平度合いの逆数を表わすH/(S2)1/2が大きいほど、脱型が難しくなることを表わすものである。
尚、この時の突起の高さHは、2〜10mm程度であることが耐久性や防滑性の観点より好ましい。
【0011】
ここで、例えば硬度80度(スプリング硬さ試験Aタイプ)以下の一般的な非発泡性の靴底材料の場合、従来の無理抜き方式では上記値を0.7以上にすることが極めて困難であったものであるが、本発明によると0.7以上にすることが容易に出来、防滑性をより高めることができる。
また、上記式の値が3を超えるようになると突起の耐久性が低下し実用性が損なわれがちになるため、3以下にすることが好ましい。
【0012】
また本発明は、前記製造方法により製造される靴底を有する履物に関する。このような履物としては、短靴や、長靴や、サンダルが挙げられる。短靴や長靴においては、別途作製した胛被に、上記方法により靴底を作製し、これを手貼りで貼り付けるようにしてもよいが、防滑靴底を射出成形によって成形する際に、胛被と一体になるようにすれば、より製造コストを抑えた靴とできる。
また、射出成形によって一体に成形される胴部と胛被部と靴底部からなる長靴においては、長靴の成形時に防滑靴底も同時成形する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係る靴の一例を示す全体図、図2は同靴の断面図、図3は同靴の靴底を製造するための金型と可動子の説明図、図4は図3のA−A線を断面にした説明図、図5は金型と可動子の他の構成例の説明図、図6は図5のB−B線を断面にした説明図、図7は突起の形状の各種例を示す説明図である。
【0014】
本発明に係る靴の製造技術は、射出成形、注入成形、熱プレス成形等の金型を用いて靴底本体と突起とが一体に成形される靴底において、防滑性向上のため突起のアンダカットを大きくしても無理なく金型で成形できるようにされ、防滑性の高い靴底構造を提供できるようにされている。
【0015】
すなわち、本発明に係る靴の一例は、図1、図2に示すように、胛被2と靴底3が一体化された靴1において、靴底本体3aから接地面側に向けて突出する突起3tと、靴底本体3aとが同一の靴底材料から一体に成形されており、また、この突起3tの形状は、突起3tの接地側gの水平断面積が、付根側hの水平断面積より大きくなるような形態にされている。
また、突起3tの高さはHである。
【0016】
そして、このように接地側gの水平断面積を、付根側hの水平断面積より大きくすることにより、歩行時等に突起3tが屈曲しやすくなって水平方向に急激な荷重をかけても、突起の屈曲によって荷重が時間的に分散されて静止摩擦力を超えずらくなり、さらには突起が鋭角に形成されているので、地面にひっかかるようになって防滑効果を高めることが出来るものと考えられる。
【0017】
次に、このような靴1の靴底3の製造方法について説明する。
ここで、図3及び図4は、本製造方法に使用される金型10の第1構成例の説明図であるが、この金型10には、所定ストローク昇降動可能な可動子11が挿設されるとともに、金型10と可動子11との境界面xを跨って突起形成用の凹部12が設けられ、この凹部12は、金型10と可動子11の境界面xで分断されるような形態とされている。すなわち、凹部12は、金型10と可動子11との境界面xを境に約半分が金型10側に、約半分が可動子11側に設けられている。
尚、図7(d)のような突起3tの場合は、境界面xを突起3tの長手方向に平行な面とすることは言うまでもないことである。
【0018】
そしてこの凹部12は、開口部側が小径で、内部側が大径の逆テーパ形状をしており、金型空隙部に靴底材料を充填して靴底3を成形したとき、凹部12内で成形される突起3tが脱型の際にアンダカットとなるような形状である。
そして、実施の態様の一つとして、可動子11をフリーな状態にしておいて、靴底3を脱型する時に可動子11が所定ストロークだけ靴底3に引き摺られて上昇するようにしておく。このことにより、可動子11の上昇に連れて凹部12の開口部の面積が広がることになり、突起3tが凹部12から抜けやすくなる。
また、他の実施の態様として、可動子11の下方に、不図示の押出し駆動源を設けて金型10より靴底3を脱型する時に可動子11を所定ストローク上昇させるようにし、脱型時に突起3tを凹部12内の接地面形成部15で押出すことで、突起3tが凹部12から抜けやすくなるようにする。
【0019】
また、本実施例では、図4に示すように、金型10と可動子11の開口縁部r付近をアール部とし、面取りしている。これは、金型から靴底3を脱型する時に開口縁部rに突起3tがひっかかるのを防止するためで、同部rを面取りすることによって、滑りを良くして靴底本体3aから突起3tがちぎれたり、突起3tが破損したりするのを抑制している。
【0020】
以上のような金型構造において、図3(a)や図4(a)に示す状態で金型の靴底成形のための空間に靴底材料を充填し、靴底材料を所望の靴底形状に固化して靴底本体3aと突起3tとを一体に成形する。この靴底成形用金型としては、射出成形用金型でも良く、熱プレス成形用金型でも良く、注入成形用金型でも良い。また、靴底材料としては、熱可塑性材料でも二液硬化性材料でも良く、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)や、サーモプラスチックラバー(TPR)や、ポリウレタン(PU)や、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)や、天然ゴム等を用いた一般的な非発泡性の靴底材料で硬度50〜80度(スプリング硬さ試験Aタイプ)のものが好適である。また、前記靴底材料に発泡剤を添加した発泡性の靴底材料の場合は、硬度60〜85度(スプリング硬さ試験Cタイプ)のものが好適である。
【0021】
材料が固化して得られた靴底3を脱型する際、図3(b)、図4(b)に示すように、可動子11が所定ストローク上昇する。すると、可動子11の上昇に連れて、凹部12の開口部の面積が広がることになり、突起3tが抜けやすくなって損傷しにくくなる。
こうして得られた靴底3には、境界面xによる筋が形成されてしまうが、防滑機能を重視した靴でありさほど気にならないものである。
【0022】
因みに、この金型構造の場合は、凹部12内が境界面xで分割されているため、凹部12内に靴底材料を充填する際、境界面xの隙間からエア抜きの効果が発揮され、未充填が起きにくくなるという副次的効果もある。
尚、こうして靴底3を成形するにあたり、靴底成形のための空間の上部に胛被2をセットしておき、靴底3を射出成形すると同時に胛被2に接合するようにしても良く、単独で成形した靴底3を手貼りで胛被2に貼り付けるようにしても良い。
【0023】
次に、金型構造の第2構成例について、図5及び図6に基づき説明する。
この金型10の場合も、金型10には所定ストローク昇降動可能な可動子11が挿設されるとともに、突起形成用凹部12はこの可動子11に設けられており、また、この可動子11は複数の分割体11a、11bから構成されている。そして、この可動子11は、金型10から上昇すると、凹部12の開口面積を広げることができるようにされている。
【0024】
例えば、図6に示すように、金型10には、開口部側に向けてテーパ状に径が広がるテーパ孔Tを設けて、このテーパ孔Tに、摺動して昇降可能な可動子11を挿設してあり、この可動子11を二分割して分割体11a、11bとするとともに、各分割体11a、11bの間に、スプリング13を挟装している。また、各分割体11a、11bの下端部に、ストッパ片14を設け、所定ストローク上昇した時点で、ストッパ片14がテーパ孔Tの下端縁部に係合するようにしている。
【0025】
このような金型構造において、図5(a)、図6(a)に示す状態で金型の靴底成形のための空間に靴底材料を充填する。そして、材料が固化して得られた靴底3を脱型しようとすると、可動子11は靴底3に引き摺られて持ち上がり、スプリング13の作用によって、図5(b)、図6(b)に示すように凹部12の開口面積が広がる。このため、突起3tのアンダーカット部が凹部12に干渉することなく、靴底3を容易に脱型することができる。
尚、スプリング13がなくても、突起3tが抜けようとする力で上昇した可動子11は開口面積を広げる方向に開くので、必ずしもスプリング13は必要ない。
また、可動子11は成形品と一緒に持ち上がるため、駆動源は必要でなく、脱型完了後、可動子11は自重あるいは不図示のスプリングあるいは手で押し下げる等により元の状態に復帰する。
【0026】
尚、本実施例では可動子11を二分割した分割体11a、11bのタイプを示しているが、三分割またはそれ以上の分割体としても良い。
また、前記例と同様に、分割の隙間からエア抜きの効果が発揮されるし、凹部12の開口縁部rにアール部を形成することにより、滑らかに靴底3を脱型することが可能である。
このようにして得られた靴底3には、金型10と可動子11の境界による筋と、可動子11a、11bの分割による筋が形成されてしまうが、防滑機能を重視した靴でありさほど気にならないものである。
【0027】
以上のような金型構造の第1構成例、第2構成例とも、突起3tの形状は、図7(a)に示すような断面丸型のものが好ましいが、(b)に示すような断面三角型でも良く、(c)に示すような断面正方型でも良く、(d)に示すような断面長方形でも良く、その他の形状でも良い。
【0028】
また、図7に示すような断面が丸型、三角型、四角型の突起3tを、傾かないように靴底3に一体に成形することが靴底3の耐久性や防滑性の面で好ましい。そのようにした時に、接地面と突起の側面とのなす角度が、突起3tの高さHにもよるが、突起の高さHが2〜10mm程度では、従来の無理抜きによる脱型法では80°程度が限界であった。しかし、本発明の可動子11を用いる方法によれば、80°以下で、突起の高さHが2mm以上、特に従来技術では無理と考えられていた突起の高さHが3mm以上のものも靴底3を金型から脱型できるという効果を得る。
【0029】
次に、以上のような金型の第1、第2構成例と従来の金型を使用して、突起3tのアンダーカット形状を変えて、射出成形によって靴底3と胛被2を一体に成形して靴を作製した結果について説明する。
尚、金型構造の第1構成例のものは、押出し駆動源のないものを用い、靴底材料としては、スプリング硬さ試験Aタイプの硬さが50度の非発泡性のポリ塩化ビニルを用いたものを使用した。
【0030】
まず、図7(a)に示すような断面丸型、すなわち、円錐の底面側の部分のような形状の突起3tにおいて、付根側hの直径が5mm(水平断面積S1が19.6mm2)、接地側gの直径が10mm(水平断面積S2が78.5mm2)、高さHが4mmの突起3tを形成したところ、従来の金型(通常の金型)では、突起3tがちぎれるような不具合があったが、第1、第2構成例の金型とも、突起3tの破損はなかった。
尚、このような突起3tの((S2/S1)×H)/(S2)1/2は、1.8であった。
【0031】
また、同じような断面丸型の突起3tにおいて、付根側hの直径が2.5mm(水平断面積S1が4.9mm2)、接地側gの直径が5mm(水平断面積S2が19.6mm2)、高さHが2mmの突起3tを形成したところ、従来の金型では、突起3tがちぎれたが、第1、第2構成例の金型とも、突起3tの破損はなかった。
尚、この突起3tの((S2/S1)×H)/(S2)1/2も、1.8であった。
【0032】
次に、同じような断面丸型の突起3tにおいて、付根側hの直径が6mm(水平断面積S1が28.3mm2)、接地側gの直径が7mm(水平断面積S2が38.5mm2)、高さHが3mmの突起3tを形成したところ、従来の金型では、突起3tがちぎれたが、第1、第2構成例の金型とも、突起3tの破損はなかった。
尚、この突起3tの((S2/S1)×H)/(S2)1/2は、0.66であった。
【0033】
次に、図7(d)に示すような断面長方形形状の突起3tにおいて、付根側hの長辺の長さが50mm、短辺の長さが4mm、接地側gの長辺の長さが50mm、短辺の長さが6mm、高さHが3mmの突起3tを形成したところ、従来の金型では、突起3tがちぎれたが、第1、第2構成例の金型とも、突起3tの破損はなかった。
【0034】
以上のことから、靴底3の硬さとしては柔らかい部類のAタイプ硬さが50度のものでも、従来の金型構造では、((S2/S1)×H)/(S2)1/2が0.7以上の突起を有する靴底の靴は得られなかったが、本発明の製造方法を用いた場合は0.7以上の値の突起を有する靴底の靴ができ、従来の方法では出来なかったアンダーカットの大きな突起を有する靴底の靴が出来ることが確認された。
尚、((S2/S1)×H)/(S2)1/2が3を超えるようになると、突起3t自体の耐久性が劣る傾向となるため3以下とすることが好ましい。
【0035】
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば靴底材料はマイクロカプセル等の発泡剤で発泡させたものでも良く、未発泡のものでも良い。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る靴底の製造方法は、アンダカットを有する突起を靴底本体と一体に成形するにあたり、金型に、上昇可能な可動子を挿設するとともに、突起形成用の凹部を、金型と可動子の境界面を跨るように設けて境界面によって分断するようにしたため、脱型時の突起の変形量が少なくて済むようになり、アンダカットが大きくても脱型が可能となる。
この結果、防滑性の高い靴を作製することが出来る。
また、金型に挿設した可動子に突起形成用の凹部を形成し、この可動子として、複数の分割体から構成して上昇時に凹部の開口面積が広がる方向に開くようにすれば、脱型時に突起のアンダカットを避けることが出来るようになり、大きなアンダカットでも無理なく脱型可能となり、防滑性の高い靴を作製することが出来る。
加えて、可動子と金型との合わせ面、あるいは分割した可動子の合わせ面より、靴底材料の充填時にエアが抜け、所望の突起の形状が得られる。
また、金型を切削してアンダーカットの突起成形用の凹部を形成する場合、傾斜角度の大きいものや、多角形状の凹部を形成することが困難であったが、本発明に使用する可動子と金型の組合せであれば、凹部を簡単に成形することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る靴の一例を示す全体図
【図2】同靴の断面図
【図3】同靴の靴底を製造するための金型と可動子の説明図
【図4】図3のA−A線を断面にした説明図
【図5】金型と可動子の他の構成例の説明図
【図6】図5のB−B線を断面にした説明図
【図7】突起の形状の各種例を示す説明図
【符号の説明】
1…靴、3…靴底、3a…靴底本体、3t…突起、10…金型、11…可動子、12…突起形成用凹部、g…接地面部、h…付根部、x…境界面。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に食品加工場や水産加工場のように床面が滑り易い場所においても滑りにくい靴底の接地部を製造する製造技術及び防滑性の高い靴底構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、靴底の防滑性を高める技術として、例えばガラス繊維や珪砂等の充填材を靴底材料に充填して射出成形やプレス成形等で靴底を成形する技術が知られているが、このような技術では、靴底材料に充填材を均質に混ぜるために多数で複雑な工程を必要とする等の問題があるため、靴底の接地面側に設けられる複数の突起の形状として、接地面側の水平断面積が付根側の水平断面積より大きくなるような形状にすることで防滑性を高めるような技術が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
【特許文献1】
実公昭59−11616号公報第3図
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のような技術は、靴底本体と突起とを分割し、突起を予め別工程で作製するため、突起の形状の自由度は増すものの、工程数が多い分だけ製造コストが嵩むような不具合がある。
一方、靴底本体と突起を一体化すれば、工程数の削減が図られ、製造コストの低減も可能であるが、突起の接地面側の水平断面積が付根側の水平断面積より大きくなるような形状にしようとすると、金型を用いて成形する場合には突起がアンダカットとなる。この際、アンダーカットであっても、例えば突起の高さが低い場合や、傾斜角度が浅い(アンダカットが小さい)場合には、靴底材料の柔軟性により無理抜きにより脱型することが可能であるものの、突起の高さが高い場合や、傾斜角度が大きい(アンダカットが大きい)場合には、突起の柔軟性による変形量の限界以上となって、突起が破損する等により正常に脱型することが出来なくなる。
【0005】
そこで本発明は、射出成形、注入成形、熱プレス成形等の金型を用いて同一の靴底材料で靴底本体と突起とが一体に成形される靴底において、防滑性向上のため突起のアンダカットを大きくしても無理なく成形できるようにし、また、金型成形によってアンダカットの大きい防滑性の高い靴底構造を提供できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、靴底本体と、この靴底本体から接地面側に向けて突出する突起とを金型によって一体に成形し、この際、前記突起の接地側の水平断面積が突起の付根側の水平断面積より大きくなるようにした靴底の製造方法において、金型として、上昇可能な可動子が挿設してなり、突起形成用の凹部が、金型と可動子の境界面を跨るように設けられて境界面によって分断されたものを用い、金型に靴底材料を充填して靴底を形成した後、可動子を上昇させて靴底を脱型するようにした。
【0007】
ここで、突起の接地側の水平断面積が付根側の水平断面積より大きくなるような形態は、金型から脱型する際に突起がアンダカットとなるが、金型として、上昇可能な可動子が挿設され、突起形成用の凹部が、金型と可動子の境界面を跨るように設けられて境界面によって分断されたものを用いるようにし、金型に靴底材料を充填して靴底を形成した後、可動子を上昇させて靴底を脱型するようにすれば、脱型時に必要とされる突起の変形量が少なくて済むようになり、アンダカットが大きくても脱型が可能となる。
また、突起の接地側の水平断面積が付根側の水平断面積より大きくなるようにすることで、歩行時等に突起が屈曲しやすくなり、水平方向に急激な荷重がかかっても、突起の屈曲によって荷重が時間的に分散されて静止摩擦力を超えずらくなり、さらには突起が鋭角に形成されているので地面にひっかかるようになって防滑効果を高めることが出来ると思われるが、突起の具体的な形態は任意であり、例えば、突起の側面に直線状のテーパ角を与えて下向きに広がる形状にしても良く、下向きにキノコ状に広がる形状にしても良く、その他の形態で下方が広がる形状にしても良い。
また、金型の成形としては、流動性の靴底材料を金型内に充填する射出成形や注入成形、熱可塑性のシートを金型内で塑性変形させる熱プレス成形等のいずれでも良い。
更に、靴底本体とは、必ずしも靴底全体をカバーするものでなくても良く、靴底の一部を部分的にカバーするものでも良い。
【0008】
また本発明では、靴底本体と、この靴底本体から接地面側に向けて突出する突起とを金型によって一体に成形し、この際、前記突起の接地側の水平断面積が突起の付根側の水平断面積より大きくなるようにした靴底の製造方法において、金型として、突起形成用の凹部を有した上昇可能な可動子が挿設され、この可動子として、複数の分割体から構成されて上昇時に凹部の開口面積を広げる方向に開くようにされたものを用いるようにし、金型に靴底材料を充填して靴底を形成した後、可動子を上昇させて靴底を脱型するようにした。
【0009】
このように、金型として、突起形成用の凹部を有した上昇可能な可動子が挿設されるものを用いるとともに、この可動子を複数の分割体から構成して上昇時に凹部の開口面積を広げる方向に開くようにすれば、脱型時に突起のアンダカットを避けることが出来るようになり、大きなアンダカットでも無理なく脱型可能である。
ここで、上昇時に凹部の開口面積を広げることの出来る可動子の具体的構成は任意であるが、例えば可動子の挿設孔を上広がりのテーパ孔とし、可動子が上昇すると、複数の分割体が外側に開くようにすれば好適である。
尚、分割体の分割数等は任意であるが、分割数を多くすると分割体が破損しやすくなるので、分割数は2個とするのが良い。
【0010】
また本発明の製造方法によれば、前記突起が概ね円錐または多角錐の底部側部分の形状をしており、突起の接地面と突起の側面とのなす角度が80度以下である場合、突起の付根部分の水平断面積をS1、突起の接地面の面積をS2、突起の高さをHとした場合に、脱型の困難性の度合いを示す式:((S2/S1)×H)/(S2)1/2が0.7以上で、3以下の突起を有する靴底が得られるようになった。この数式の意味は、S2/S1が大きいほど、また扁平度合いの逆数を表わすH/(S2)1/2が大きいほど、脱型が難しくなることを表わすものである。
尚、この時の突起の高さHは、2〜10mm程度であることが耐久性や防滑性の観点より好ましい。
【0011】
ここで、例えば硬度80度(スプリング硬さ試験Aタイプ)以下の一般的な非発泡性の靴底材料の場合、従来の無理抜き方式では上記値を0.7以上にすることが極めて困難であったものであるが、本発明によると0.7以上にすることが容易に出来、防滑性をより高めることができる。
また、上記式の値が3を超えるようになると突起の耐久性が低下し実用性が損なわれがちになるため、3以下にすることが好ましい。
【0012】
また本発明は、前記製造方法により製造される靴底を有する履物に関する。このような履物としては、短靴や、長靴や、サンダルが挙げられる。短靴や長靴においては、別途作製した胛被に、上記方法により靴底を作製し、これを手貼りで貼り付けるようにしてもよいが、防滑靴底を射出成形によって成形する際に、胛被と一体になるようにすれば、より製造コストを抑えた靴とできる。
また、射出成形によって一体に成形される胴部と胛被部と靴底部からなる長靴においては、長靴の成形時に防滑靴底も同時成形する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係る靴の一例を示す全体図、図2は同靴の断面図、図3は同靴の靴底を製造するための金型と可動子の説明図、図4は図3のA−A線を断面にした説明図、図5は金型と可動子の他の構成例の説明図、図6は図5のB−B線を断面にした説明図、図7は突起の形状の各種例を示す説明図である。
【0014】
本発明に係る靴の製造技術は、射出成形、注入成形、熱プレス成形等の金型を用いて靴底本体と突起とが一体に成形される靴底において、防滑性向上のため突起のアンダカットを大きくしても無理なく金型で成形できるようにされ、防滑性の高い靴底構造を提供できるようにされている。
【0015】
すなわち、本発明に係る靴の一例は、図1、図2に示すように、胛被2と靴底3が一体化された靴1において、靴底本体3aから接地面側に向けて突出する突起3tと、靴底本体3aとが同一の靴底材料から一体に成形されており、また、この突起3tの形状は、突起3tの接地側gの水平断面積が、付根側hの水平断面積より大きくなるような形態にされている。
また、突起3tの高さはHである。
【0016】
そして、このように接地側gの水平断面積を、付根側hの水平断面積より大きくすることにより、歩行時等に突起3tが屈曲しやすくなって水平方向に急激な荷重をかけても、突起の屈曲によって荷重が時間的に分散されて静止摩擦力を超えずらくなり、さらには突起が鋭角に形成されているので、地面にひっかかるようになって防滑効果を高めることが出来るものと考えられる。
【0017】
次に、このような靴1の靴底3の製造方法について説明する。
ここで、図3及び図4は、本製造方法に使用される金型10の第1構成例の説明図であるが、この金型10には、所定ストローク昇降動可能な可動子11が挿設されるとともに、金型10と可動子11との境界面xを跨って突起形成用の凹部12が設けられ、この凹部12は、金型10と可動子11の境界面xで分断されるような形態とされている。すなわち、凹部12は、金型10と可動子11との境界面xを境に約半分が金型10側に、約半分が可動子11側に設けられている。
尚、図7(d)のような突起3tの場合は、境界面xを突起3tの長手方向に平行な面とすることは言うまでもないことである。
【0018】
そしてこの凹部12は、開口部側が小径で、内部側が大径の逆テーパ形状をしており、金型空隙部に靴底材料を充填して靴底3を成形したとき、凹部12内で成形される突起3tが脱型の際にアンダカットとなるような形状である。
そして、実施の態様の一つとして、可動子11をフリーな状態にしておいて、靴底3を脱型する時に可動子11が所定ストロークだけ靴底3に引き摺られて上昇するようにしておく。このことにより、可動子11の上昇に連れて凹部12の開口部の面積が広がることになり、突起3tが凹部12から抜けやすくなる。
また、他の実施の態様として、可動子11の下方に、不図示の押出し駆動源を設けて金型10より靴底3を脱型する時に可動子11を所定ストローク上昇させるようにし、脱型時に突起3tを凹部12内の接地面形成部15で押出すことで、突起3tが凹部12から抜けやすくなるようにする。
【0019】
また、本実施例では、図4に示すように、金型10と可動子11の開口縁部r付近をアール部とし、面取りしている。これは、金型から靴底3を脱型する時に開口縁部rに突起3tがひっかかるのを防止するためで、同部rを面取りすることによって、滑りを良くして靴底本体3aから突起3tがちぎれたり、突起3tが破損したりするのを抑制している。
【0020】
以上のような金型構造において、図3(a)や図4(a)に示す状態で金型の靴底成形のための空間に靴底材料を充填し、靴底材料を所望の靴底形状に固化して靴底本体3aと突起3tとを一体に成形する。この靴底成形用金型としては、射出成形用金型でも良く、熱プレス成形用金型でも良く、注入成形用金型でも良い。また、靴底材料としては、熱可塑性材料でも二液硬化性材料でも良く、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)や、サーモプラスチックラバー(TPR)や、ポリウレタン(PU)や、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)や、天然ゴム等を用いた一般的な非発泡性の靴底材料で硬度50〜80度(スプリング硬さ試験Aタイプ)のものが好適である。また、前記靴底材料に発泡剤を添加した発泡性の靴底材料の場合は、硬度60〜85度(スプリング硬さ試験Cタイプ)のものが好適である。
【0021】
材料が固化して得られた靴底3を脱型する際、図3(b)、図4(b)に示すように、可動子11が所定ストローク上昇する。すると、可動子11の上昇に連れて、凹部12の開口部の面積が広がることになり、突起3tが抜けやすくなって損傷しにくくなる。
こうして得られた靴底3には、境界面xによる筋が形成されてしまうが、防滑機能を重視した靴でありさほど気にならないものである。
【0022】
因みに、この金型構造の場合は、凹部12内が境界面xで分割されているため、凹部12内に靴底材料を充填する際、境界面xの隙間からエア抜きの効果が発揮され、未充填が起きにくくなるという副次的効果もある。
尚、こうして靴底3を成形するにあたり、靴底成形のための空間の上部に胛被2をセットしておき、靴底3を射出成形すると同時に胛被2に接合するようにしても良く、単独で成形した靴底3を手貼りで胛被2に貼り付けるようにしても良い。
【0023】
次に、金型構造の第2構成例について、図5及び図6に基づき説明する。
この金型10の場合も、金型10には所定ストローク昇降動可能な可動子11が挿設されるとともに、突起形成用凹部12はこの可動子11に設けられており、また、この可動子11は複数の分割体11a、11bから構成されている。そして、この可動子11は、金型10から上昇すると、凹部12の開口面積を広げることができるようにされている。
【0024】
例えば、図6に示すように、金型10には、開口部側に向けてテーパ状に径が広がるテーパ孔Tを設けて、このテーパ孔Tに、摺動して昇降可能な可動子11を挿設してあり、この可動子11を二分割して分割体11a、11bとするとともに、各分割体11a、11bの間に、スプリング13を挟装している。また、各分割体11a、11bの下端部に、ストッパ片14を設け、所定ストローク上昇した時点で、ストッパ片14がテーパ孔Tの下端縁部に係合するようにしている。
【0025】
このような金型構造において、図5(a)、図6(a)に示す状態で金型の靴底成形のための空間に靴底材料を充填する。そして、材料が固化して得られた靴底3を脱型しようとすると、可動子11は靴底3に引き摺られて持ち上がり、スプリング13の作用によって、図5(b)、図6(b)に示すように凹部12の開口面積が広がる。このため、突起3tのアンダーカット部が凹部12に干渉することなく、靴底3を容易に脱型することができる。
尚、スプリング13がなくても、突起3tが抜けようとする力で上昇した可動子11は開口面積を広げる方向に開くので、必ずしもスプリング13は必要ない。
また、可動子11は成形品と一緒に持ち上がるため、駆動源は必要でなく、脱型完了後、可動子11は自重あるいは不図示のスプリングあるいは手で押し下げる等により元の状態に復帰する。
【0026】
尚、本実施例では可動子11を二分割した分割体11a、11bのタイプを示しているが、三分割またはそれ以上の分割体としても良い。
また、前記例と同様に、分割の隙間からエア抜きの効果が発揮されるし、凹部12の開口縁部rにアール部を形成することにより、滑らかに靴底3を脱型することが可能である。
このようにして得られた靴底3には、金型10と可動子11の境界による筋と、可動子11a、11bの分割による筋が形成されてしまうが、防滑機能を重視した靴でありさほど気にならないものである。
【0027】
以上のような金型構造の第1構成例、第2構成例とも、突起3tの形状は、図7(a)に示すような断面丸型のものが好ましいが、(b)に示すような断面三角型でも良く、(c)に示すような断面正方型でも良く、(d)に示すような断面長方形でも良く、その他の形状でも良い。
【0028】
また、図7に示すような断面が丸型、三角型、四角型の突起3tを、傾かないように靴底3に一体に成形することが靴底3の耐久性や防滑性の面で好ましい。そのようにした時に、接地面と突起の側面とのなす角度が、突起3tの高さHにもよるが、突起の高さHが2〜10mm程度では、従来の無理抜きによる脱型法では80°程度が限界であった。しかし、本発明の可動子11を用いる方法によれば、80°以下で、突起の高さHが2mm以上、特に従来技術では無理と考えられていた突起の高さHが3mm以上のものも靴底3を金型から脱型できるという効果を得る。
【0029】
次に、以上のような金型の第1、第2構成例と従来の金型を使用して、突起3tのアンダーカット形状を変えて、射出成形によって靴底3と胛被2を一体に成形して靴を作製した結果について説明する。
尚、金型構造の第1構成例のものは、押出し駆動源のないものを用い、靴底材料としては、スプリング硬さ試験Aタイプの硬さが50度の非発泡性のポリ塩化ビニルを用いたものを使用した。
【0030】
まず、図7(a)に示すような断面丸型、すなわち、円錐の底面側の部分のような形状の突起3tにおいて、付根側hの直径が5mm(水平断面積S1が19.6mm2)、接地側gの直径が10mm(水平断面積S2が78.5mm2)、高さHが4mmの突起3tを形成したところ、従来の金型(通常の金型)では、突起3tがちぎれるような不具合があったが、第1、第2構成例の金型とも、突起3tの破損はなかった。
尚、このような突起3tの((S2/S1)×H)/(S2)1/2は、1.8であった。
【0031】
また、同じような断面丸型の突起3tにおいて、付根側hの直径が2.5mm(水平断面積S1が4.9mm2)、接地側gの直径が5mm(水平断面積S2が19.6mm2)、高さHが2mmの突起3tを形成したところ、従来の金型では、突起3tがちぎれたが、第1、第2構成例の金型とも、突起3tの破損はなかった。
尚、この突起3tの((S2/S1)×H)/(S2)1/2も、1.8であった。
【0032】
次に、同じような断面丸型の突起3tにおいて、付根側hの直径が6mm(水平断面積S1が28.3mm2)、接地側gの直径が7mm(水平断面積S2が38.5mm2)、高さHが3mmの突起3tを形成したところ、従来の金型では、突起3tがちぎれたが、第1、第2構成例の金型とも、突起3tの破損はなかった。
尚、この突起3tの((S2/S1)×H)/(S2)1/2は、0.66であった。
【0033】
次に、図7(d)に示すような断面長方形形状の突起3tにおいて、付根側hの長辺の長さが50mm、短辺の長さが4mm、接地側gの長辺の長さが50mm、短辺の長さが6mm、高さHが3mmの突起3tを形成したところ、従来の金型では、突起3tがちぎれたが、第1、第2構成例の金型とも、突起3tの破損はなかった。
【0034】
以上のことから、靴底3の硬さとしては柔らかい部類のAタイプ硬さが50度のものでも、従来の金型構造では、((S2/S1)×H)/(S2)1/2が0.7以上の突起を有する靴底の靴は得られなかったが、本発明の製造方法を用いた場合は0.7以上の値の突起を有する靴底の靴ができ、従来の方法では出来なかったアンダーカットの大きな突起を有する靴底の靴が出来ることが確認された。
尚、((S2/S1)×H)/(S2)1/2が3を超えるようになると、突起3t自体の耐久性が劣る傾向となるため3以下とすることが好ましい。
【0035】
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば靴底材料はマイクロカプセル等の発泡剤で発泡させたものでも良く、未発泡のものでも良い。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る靴底の製造方法は、アンダカットを有する突起を靴底本体と一体に成形するにあたり、金型に、上昇可能な可動子を挿設するとともに、突起形成用の凹部を、金型と可動子の境界面を跨るように設けて境界面によって分断するようにしたため、脱型時の突起の変形量が少なくて済むようになり、アンダカットが大きくても脱型が可能となる。
この結果、防滑性の高い靴を作製することが出来る。
また、金型に挿設した可動子に突起形成用の凹部を形成し、この可動子として、複数の分割体から構成して上昇時に凹部の開口面積が広がる方向に開くようにすれば、脱型時に突起のアンダカットを避けることが出来るようになり、大きなアンダカットでも無理なく脱型可能となり、防滑性の高い靴を作製することが出来る。
加えて、可動子と金型との合わせ面、あるいは分割した可動子の合わせ面より、靴底材料の充填時にエアが抜け、所望の突起の形状が得られる。
また、金型を切削してアンダーカットの突起成形用の凹部を形成する場合、傾斜角度の大きいものや、多角形状の凹部を形成することが困難であったが、本発明に使用する可動子と金型の組合せであれば、凹部を簡単に成形することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る靴の一例を示す全体図
【図2】同靴の断面図
【図3】同靴の靴底を製造するための金型と可動子の説明図
【図4】図3のA−A線を断面にした説明図
【図5】金型と可動子の他の構成例の説明図
【図6】図5のB−B線を断面にした説明図
【図7】突起の形状の各種例を示す説明図
【符号の説明】
1…靴、3…靴底、3a…靴底本体、3t…突起、10…金型、11…可動子、12…突起形成用凹部、g…接地面部、h…付根部、x…境界面。
Claims (4)
- 靴底本体と、この靴底本体から接地面側に向けて突出する突起とを金型によって一体に成形し、この際、前記突起の接地側の水平断面積が突起の付根側の水平断面積より大きくなるようにした靴底の製造方法であって、金型として、上昇可能な可動子が挿設されてなり、突起形成用の凹部が、金型と可動子の境界面を跨るように設けられて境界面によって分断されたものを用い、金型に靴底材料を充填して靴底を形成した後、前記可動子を上昇させて靴底を脱型することを特徴とする防滑靴底の製造方法。
- 靴底本体と、この靴底本体から接地面側に向けて突出する突起とを金型によって一体に成形し、この際、前記突起の接地側の水平断面積が突起の付根側の水平断面積より大きくなるようにした靴底の製造方法であって、金型として、突起形成用の凹部を有した上昇可能な可動子が挿設されてなり、この可動子として、複数の分割体から構成されて上昇時に凹部の開口面積を広げる方向に開くようにされたものを用い、金型に靴底材料を充填して靴底を形成した後、前記可動子を上昇させて靴底を脱型することを特徴とする防滑靴底の製造方法。
- 前記突起が概ね円錐または多角錐の底部側部分の形状をしており、突起の接地面と突起の側面とのなす角度が80度以下である場合、突起の付根部分の水平断面積をS1、突起の接地面の面積をS2、突起の高さをHとした場合に、前記製造方法によって、((S2/S1)×H)/(S2)1/2が0.7以上、3以下の突起を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防滑靴底の製造方法。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により製造される靴底を有する履物。
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JP2003145805A JP2004344453A (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | 防滑靴底の製造方法及び同方法で製造される靴底を有する履物 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006230978A (ja) * | 2005-02-21 | 2006-09-07 | Hiroshima Kasei Ltd | 防滑靴底 |
-
2003
- 2003-05-23 JP JP2003145805A patent/JP2004344453A/ja active Pending
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