JP3899153B2 - 発泡ポリウレタン製靴底及びその製造方法 - Google Patents

発泡ポリウレタン製靴底及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アウトソールの下面に滑り止め用の多数のクリートを備えた発泡ポリウレタン製靴底及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、踵部を含む靴底には多数のクリートが突設され、これらのクリートによって靴底の滑り止め機能つまり耐滑性の向上が図られている。発泡ポリウレタン製靴底の耐滑性は、発泡率つまり密度や硬度に左右され、合成ゴム製靴底の耐滑性よりも劣っている。このため、ミッドソールの発泡率を高くすると共に、アウトソールの発泡率を低く抑えた二重靴底では、耐摩耗性を向上させることができる反面で、アウトソールの耐滑性を低下させるため、靴底にゴム板を貼着したり、クリートの形状を改善したりして耐滑性を向上させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、靴底にゴム板を貼着した場合には、ゴム板によって発泡ポリウレタン製靴底の特長である軽量さが損われるという問題がある。また、クリートの形状を改善しても、靴底を成形した際に金型との接触等によって非発泡性のスキン層がクリートの接地面にできるため、このスキン層が耐滑性を低下させるという問題がある。
【0004】
一方、これらの問題を解決するため、図8に示すように低い発泡率を有するアウトソール1のクリート1a同士の間から、高い発泡率を有するミッドソール2のクリート2aを露出させることも考えられる。しかしこの場合には、ミッドソール2のクリート2aが容易に部分摩耗してしまい、結局のところ耐久性が低下する。
【0005】
また、図9に示すように低い発泡率を有するアウトソール3から、高い発泡率を有するミッドソール4の全てのクリート4aを露出させることもあり得る。しかしこの場合にも、耐滑性を向上させることが可能な反面で、クリート4aが極めて摩耗し易いという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、上述した問題点を解消し、耐摩耗性を損うことなく、耐滑性を向上させた発泡ポリウレタン製靴底及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る発泡ポリウレタン製靴底は、アウトソール材料と該アウトソール材料よりも高い発泡率を有するミッドソール材料とから成る発泡ポリウレタン製靴底であって、前記ミッドソール材料は、前記靴底には複数個のクリートを突設し、該クリートは、前記アウトソール材料から成り外部に向けて開口する中空孔を有するアウトソールクリートと、該アウトソールクリートの前記中空孔内に前記ミッドソール材料を隙間なく埋設したミッドソールクリートとにより形成し、前記ミッドソールクリートと前記アウトソールクリートによる接地面は同一平面に形成し、少なくとも前記ミッドソールクリートの接地面を粗面としたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る発泡ポリウレタン製靴底の製造方法は、アウトソール材料と該アウトソール材料よりも高い発泡率を有するミッドソール材料とから成る発泡ポリウレタン製靴底において、前記アウトソール材料により外部に向けて開口する中空孔を有する多数のアウトソールクリートを突設する工程と、前記ミッドソール材料を前記アウトソールクリートの前記中空孔内に隙間なく埋設し前記アウトソールクリートの接地面と同一平面の接地面のミッドソールクリートを成形する工程と、少なくとも前記ミッドソールクリートの接地面をスキン層を除去して粗面加工する工程とから成ることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を図1〜図7に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は甲被11を備えた実施例の一部を切欠した側面図、図2は底面図であり、甲被11はアウトソール12にミッドソール13を介して接着されている。踵部12aを有するアウトソール12は、発泡性を有する第1の発泡ポリウレタンにより成形され、ミッドソール13は第1の発泡ポリウレタンよりも高い発泡率を有する第2の発泡ポリウレタンにより成形されている。アウトソール12の下面には、外部に開放された中空孔14を有する多数のアウトソールクリート15が突設されている。この中空孔14にはミッドソールクリート16がミッドソール13の下面から一体にして埋設され、ミッドソールクリート16の接地面はアウトソールクリート15の接地面と略同一平面を形成するようにされ、更にこれらの接地面は粗面とされている。
【0010】
ここで、図3の部分拡大断面図に示すように、ミッドソール13の厚さはアウトソール12の厚さよりも大きくされ、アウトソールクリート15の中空孔14の周壁の厚みtは、好ましくは1mm以上とされている。そして、アウトソールクリート15の接地面積S1と、ミッドソールクリート16の接地面積S2と、ミッドソールクリート16の高さLとの間には、アウトソールクリート15の接地面を環状とし、ミッドソールクリート16の接地面を円形と仮定した場合に、S1>S2≧π・(L/2)2 という関係式が与えられている。これにより、アウトソールクリート15の耐摩耗性が保持されると共に、ミッドソールクリート16による耐滑性が与えられる。
【0011】
靴底を成形するための図示しない成型機には、図4の断面図に示すようにダミーモールド21、ベースモールド22そしてサイドモールド23、24が設けられている。ダミーモールド21は上下動及び反転動が自在とされ、その一端にはアウトソール12の上面を形成するための面21aと、アウトソール12の中空孔14を形成するための凸部21bとが設けられ、他端には甲被11を保持しミッドソール13の上面を形成するための図示しない面が設けられている。ベースモールド22は上下動自在とされ、その上面にはアウトソール12の下面を形成するための面22aと、ダミーモールド21の凸部21bを受け入れて、周囲に厚さtの周状空間を形成するための凹部22bとが形成されている。そして、サイドモールド23、24は水平方向へ開閉自在とされ、一方のサイドモールド24には第1の発泡ポリウレタンを射出するための射出口24aと、第2の発泡ポリウレタンを射出するための射出口24bとが設けられている。
【0012】
この靴底をダイレクト成形する際には、次のような工程が採用される。
【0013】
(1) 図4に示すように、ダミーモールド21をベースモールド22の上に降下させると共に、サイドモールド23、24を閉じる。
【0014】
(2) 第1の発泡ポリウレタンを射出口24aから射出し、アウトソールクリート15を有するアウトソール12を発泡成形する。
【0015】
(3) 所定時間の後にサイドモールド23、24を開き、ダミーモールド21を上昇させる。
【0016】
(4) ダミーモールド21を回転させ、上部に取り付けておいた甲被11付きのラストモールド21cを下側に位置させる。
【0017】
(5) 図5に示すように、ラストモールド21cを所定位置に降下させ、同時にベースモールド22を上昇させ、サイドモールド23、24を閉じる。
【0018】
(6) 第2の発泡ポリウレタンを射出口24bから射出し、アウトソールクリート15の中空孔14中にミッドソールクリート16を成形すると共にミッドソール13を発泡成形する。
【0019】
(7) 所定時間の後にサイドモールド23、24を開き、ラストモールド21cを上昇させる。
【0020】
(8) 図6に示すように、アウトソールクリート15とミッドソールクリート16の接地面に残存するスキン層15a、16aを図示しないバフ機や切削具等により切削し、更にこれらの接地面を粗面に加工する。
【0021】
そして、実施例の靴底と従来の通常の発泡ポリウレタン製靴底の耐滑性を、次のような条件に基づいて実験した。
【0022】
(a) 冷凍庫に平滑な氷を−30℃で24時間以上保管する。
(b) 気温20℃の室内に傾斜角度を任意に設定し得る歩行路を準備する。
(c) 冷凍庫から氷を取り出し歩行路に配置する。
(d) 氷を配置した1時間後に靴の着用者を氷の上に立たせ、歩行路の傾斜角度を変化させて耐滑性を求める。
【0023】
実施例の靴底の実験の結果は次のようになった。
Figure 0003899153
【0024】
一方、従来の靴底の実験の結果は次のようになった。
Figure 0003899153
【0025】
このように、実施例ではアウトソール12のアウトソールクリート15に中空孔14を設けると共に、ミッドソール13にはアウトソール12よりも高い発泡率を有する材料により中空孔14を埋めたミッドソールクリート16を設け接地面を粗面にしたので、ミッドソール13よりも低い発泡率を有するアウトソールクリート15によって耐摩耗性を保持できると共に、アウトソール12よりも高い発泡率を有するミッドソールクリート16によって耐滑性を向上させることが可能となる。
【0026】
なお、上述したアウトソールクリート15とミッドソールクリート16は図2に示すように矩体状としたが、図7に示すようにアウトソールクリート15’を矩体状とし、ミッドソールクリート16’を円柱状とするような変形も可能である。更に、中空孔14を設ける位置や大きさ、数は、床面、路面の状態などの目的や加工上の理由によって適宜選択することができる。
【0027】
また、ミッドソールクリート16の接地面をアウトソールクリート15の接地面から膨出させるようなベースモールドを使用すれば、耐摩耗性に優れたアウトソールクリート15のスキン層を除去する作業を省略することができる。この場合にはミッドソールクリート16の接地面のみを粗面とすればよい。
【0028】
そして、製造に際して射出成形を採用したが、ボアリングによるダイレクト成形や、甲被11を同時接着しないで、底だけを成形するユニット成形を採用することがもでき、またアウトソールをゴムにすることもでき、この際にはアウトソール12を予め成形しておくことが可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る発泡ポリウレタン製靴底及びその製造方法は、アウトソールクリートに中空孔を設けると共に、ミッドソールにはアウトソールよりも高い発泡率を有する材料によりこの中空孔を埋めるミッドソールクリートを設け、接地面を粗面にしたので比較的に低い発泡率を有するアウトソールクリートによって耐摩耗性を保持できると共に、比較的に高い発泡率を有するミッドソールクリートによって耐滑性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の一部を切欠した側面図である。
【図2】底面図である。
【図3】部分拡大断面図である。
【図4】アウトソールの製造工程の断面図である。
【図5】ミッドソールの製造工程の部分断面図である。
【図6】成型直後の甲被を備えた部分断面図である。
【図7】変形例の底面図である。
【図8】従来例の部分拡大断面図である。
【図9】従来例の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
11 甲被
12 アウトソール
13 ミッドソール
14 中空孔
15 アウトソールクリート
16 ミッドソールクリート
21 ダミーモールド
22 ベースモールド
23 サイドモールド

Claims (4)

  1. アウトソール材料と該アウトソール材料よりも高い発泡率を有するミッドソール材料とから成る発泡ポリウレタン製靴底であって、前記ミッドソール材料は、前記靴底には複数個のクリートを突設し、該クリートは、前記アウトソール材料から成り外部に向けて開口する中空孔を有するアウトソールクリートと、該アウトソールクリートの前記中空孔内に前記ミッドソール材料を隙間なく埋設したミッドソールクリートとにより形成し、前記ミッドソールクリートと前記アウトソールクリートによる接地面は同一平面に形成し、少なくとも前記ミッドソールクリートの接地面を粗面としたことを特徴とする発泡ポリウレタン製靴底。
  2. 前記ミッドソールクリートの接地面はスキン層を除去することにより粗面とした請求項1に記載の発泡ポリウレタン製靴底。
  3. 前記ミッドソールクリートの接地面を円形とした場合に、前記アウトソールクリートの接地面積を S1 、前記ミッドソールクリートの接地面積を S2 、前記ミッドソールクリートの高さをLとすると、 S1 S2 ≧π・(L/2) 2 なる関係式を有する請求項1に記載の発泡ポリウレタン製靴底。
  4. アウトソール材料と該アウトソール材料よりも高い発泡率を有するミッドソール材料とから成る発泡ポリウレタン製靴底において、前記アウトソール材料により外部に向けて開口する中空孔を有する多数のアウトソールクリートを突設する工程と、前記ミッドソール材料を前記アウトソールクリートの前記中空孔内に隙間なく埋設し前記アウトソールクリートの接地面と同一平面の接地面のミッドソールクリートを成形する工程と、少なくとも前記ミッドソールクリートの接地面をスキン層を除去して粗面加工する工程とから成ることを特徴とする発泡ポリウレタン製靴底の製造方法。
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