JP2004344164A - 男性不妊症の診断のための検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】PHGPxのヒトゲノム遺伝子変異と特発性男性不妊症(特に無精子症や高度乏精子症患者)との関連・遺伝子変異による蛋白の発現への影響について明らかにすること。
【解決手段】男性不妊症患者PHGPxゲノム遺伝子異常のPCR_TTGE法による遺伝子変異の検出、男性不妊症患者PHGPxゲノム遺伝子異常のシークエンス法による検討、男性不妊患者PHGPxの特定変異ゲノム遺伝子の病態との相関の解析、及び得られた変異におけるPHGPxの発現・機能に及ぼす影響についての検討等を行った結果、特定部位(プロモーター領域に存在する塩基)の変異と男性不妊症との相関から遺伝子診断、治療、新薬の研究に新規展開可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明はPHGPx遺伝子の変異に関係する疾患の検査方法、特に男性不妊症に関連する変異を有するPHGPx遺伝子を利用した男性不妊症に関連する遺伝子変異の検査法に関する。具体的には、PHGPx遺伝子(phospholipid−hydroperoxide glutathione peroxidase gene)のプロモーター領域の塩基配列中の変異、この変異の有無を指標とする男性不妊症に関連するPHGPx遺伝子変異を検査する方法、該検査方法に利用されるDNA断片、該DNA断片を含む試薬キット、さらには男性不妊症特異的な変異を有するPHGPx遺伝子のプロモーター領域を含む組換えDNA分子、これを含む形質転換体、さらには、PHGPx遺伝子変異を検査することによる以下のような用途(不妊症患者の不妊原因の判定。不妊症患者の不妊原因が、PHGPx遺伝子の発現能の低下と判定。不妊症発症リスクの判定。PHGPx遺伝子の発現能の判定)等に関する。
現在、結婚したカップルの約1割が不妊であり、さらに近年のストレス社会や、環境ホルモン等の問題により、不妊症例の割合は増加の傾向にある。不妊の原因の約半数は男性側にあると考えられている。
我が国における出生率は明らかに減少傾向にあり、不妊症の原因の約半数を占める男性不妊症の治療の進歩が期待されている。しかし、その治療成績はあまり良好とはいえない。この理由は、男性不妊症の原因の半数以上を占める特発性精子形成傷害の病因、病態がほとんど不明であり、理論的な治療がおこなわれていないからである。このため、精子形成機構の解明及び精子形成にかかわる遺伝子の同定が男性不妊症の診断や治療の進歩にも重要である。
近年のノックアウトマウスや発現遺伝子の解析から、精子形成に関わる遺伝子azoospermy factor gene(AZF)は、Y染色体・常染色体に広く存在していると考えられるようになっている。本発明の対象であるリン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(PHGPx)(EC1.11.1.12)は、酸化ストレスなどで生じた膜過酸化脂質を消去する酵素として見出された。本酵素には、ミトコンドリア型、非ミトコンドリア型、核型の3つのタイプが存在し、ひとつのゲノム遺伝子から3つのタイプが転写される。PHGPxは様々な臓器に広く存在するが、特に精巣に強い発現をしている(非特許文献1)。また精巣内では、特に後期精母細胞以降、精子形成細胞、精子に強い発現をしており(非特許文献2)、マウスやラットにおいては性成熟にしたがって、著しい発現上昇がみられ、精子形成に重要な役割を担っていることが推測されていた。本発明者等はこれまでにPHGPxのcDNAやゲノムのクローニングをおこない、さらにミトコンドリア型、非ミトコンドリア型のPHGPxの高発現細胞株を作製し、PHGPxの細胞内機能の解析を行っている(非特許文献1−15)。その結果、非ミトコンドリア型PHGPxは核において、リポキシゲナーゼ(非特許文献5)やシクロオキシゲナーゼ(非特許文献11)の活性化を抑制し、ロイコトリエン、プロスタグランジンの産生を抑制すること、ミトコンドリア型PHGPxはミトコンドリア電子伝達系から産生する活性酸素の消去を行い、ミトコンドリア機能の維持を行うこと(非特許文献6)、さらにミトコンドリア型PHGPxはミトコンドリアを経由するアポトーシスを抑制する抗アポトーシス因子であることを見出している(非特許文献9)。
精子のミトコンドリアはエネルギーの産生部位であり、精子の運動能に重要な役割を果たしていると考えられる。本発明者等は、ヒト精子のミトコンドリアにPHGPxが多量に存在すること、精子のPHGPxは過酸化水素や脂質ヒドロペルオキシドの消去に重要な役割を担っていることを明らかにした(非特許文献15)。このことから精子の運動能の低い男性不妊症患者精子のPHGPxの発現を抗PHGPx抗体により検討したところ、男性不妊症患者の約1割に著しいミトコンドリア型PHGPxの発現低下症をはじめて見出し、2001年に報告した(非特許文献15)。これらの患者はWHOの基準による分類から、いずれも重度な男性不妊症患者であるazozoosperimaに属し、このカテゴリー内では約3割を占めることが明らかとなった。このPHGPxの著しい発現低下症の精子の特徴は、ミトコンドリアの障害による運動能の低下と総精子数の著しい減少である。2002年には、イタリアのグループも同様に蛋白質化学的解析から、PHGPxの発現量の低下と男性不妊症の相関性を報告した(非特許文献17)。このようにミトコンドリア型PHGPxは精巣分化における抗アポトーシス因子であるとともに、精子ミトコンドリアの構造蛋白質(非特許文献16)・ミトコンドリア防御酵素として機能しており、精子形成に重要な役割を担っている。すなわち、PHGPxは新たに見出された精子形成に関わる遺伝子AZFのひとつである。
不妊症の患者はその原因が多種多様であることから、通常様々な検査を重ねることによりその原因を特定し、原因に適した治療方法を受けることになる。上記のように、PHGPxの発現低下は男性不妊の一因であることが知られている。しかしながら、PHGPxの発現は後期精母細胞以降の生殖細胞で特異的に認められること、また、その発現量は多いものではないことから、PHGPxの発現量を解析することは、患者に過度の負担を強いることになる上、技術的にも難しい。したがって、不妊症の原因がPHGPxの発現低下であることを簡単な検査で特定できる方法は現在までのところ知られていなかった。
以下に本明細書において引用した文献を列記する。
Imai H., Sumi D., Hanamoto A., Arai M., Sugiyama K., Chiba N., Kuchino Y. and Nakagawa Y. Molecular cloning and functional expression of cDNA for rat phospholipid Hydroperoxide glutathione peroxidase:3'-untranslated region of the gene is necessary for functional expression. J. Biochem. 118 1061-1067 (1995) Imai H., Sumi D., Sakamoto H., Hamamoto A., Arai M., Chiba N. and Nakagawa Y. Overexpression of phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase suppressed cell death due to oxidative damage in rat basophile leukemia cells(RBL-2H3). Biochem. Biophys. Res. Commun. 222 432-438 (1996) Arai M., Imai H., Sumi D., Imanaka T., Takano T., Chiba N. and Nakagawa Y. Import into Mitochondria of Phospholipid Hydroperoxide Glutathione Peroxidase Requires a Leader Seaquence Biochem. Biophys. Res. Commun. 227 433-439 (1996) Arai M., Imai H., Metori A. and Nakagawa Y. Preferential esterification of endogenously formed 5-hydroxyeicosatetraenoic acid to phospholipids in activated polymorphonuclear leukocyte. Eur. J. Biochem. 244 513-519 (1997) Imai H., Narashima K., Sakamoto H., Chiba N. and Nakagawa Y. Suppression of leukotoriene formation in RBL2H3 cells that overexpressed phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase. J. Biol. Chem. 273 1990-1997 (1998) Arai M., Imai H., Koumura T., Madoka Y., Emoto K., Umeda M., Chiba N. and Nakagawa Y. Mitochondrial phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase(PHGPx) play a major role in preventing oxidative injury to cells. J. Biol. Chem. 274 4924-4933 (1999) Chiba N., Imai H. and Nakagawa Y. Determination of 5-hydroperoxyeicosatetraenoic acid produced in rat basophilic leukemia cell line RBL2H3 by high-performance liquid chromatography with chemiluminescence detection. J. Chromatography B.728(1) 35-40 (1999) Chiba N., Imai H., Narashima K., Arai M., Oshima G., Kunimoto M. and Nakagawa Y. Cellular Glutathione Peroxidase as a Predominant Scavenger of Hydroperoxyeicosatetraenoic Acids in Rabbit Alveolar Marcrophages. Biochem Pharm. Bull 22(10) 1047-1051(1999) Nomura K., Imai H., Koumura T., Arai M., and Nakagawa Y. Mitochondrial phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase suppresses apoptosis mediated by a mitochondrial-death pathway. J. Biol. Chem. 274 28284 - 29302 (1999) Nomura K., Imai H., Koumura T., Kobayashi T. and Nakagawa Y. Mitochondrial phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase inhibits the release of cytochrome c from mitochondria by suppressing the peroxidation of cardiolipin in hypoglycemia-induced apoptosis. Biochem. J. 351 183-193 (2000) Sakamoto H., Imai H. and Nakagawa Y. Involvement of phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase in the modulation of prostaglandin D2 synthesis. J. Biol. Chem. 275 40028-40035(2000) Nakagawa Y. and Imai H. Novel functions of mitochondrial phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase (PHGPx) as anti-apoptotic factor -Mini review-. J. Health Science 46 869 11-14 (2000) Nomura K., Imai H., Koumura T. and Nakagawa Y. Involvement of mitochondrial phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidaseas an antiapoptotic factor. Biol. Signals Recept. Vol.10 81-92 (2001) Obata F., Ichikawa T., Imai H., Nakagawa Y., Komatsu H. and Ishihara K., Okayasu I. and Kusakabe T. Selenium-dependent glutathione peroxidase-GI is localized in basal granulated cells of rat stomach. Biomed Res. 22(1) 7-14 (2001) Imai H., Suzuki K., Ishizaka K., Ichinose S., Oshima H., Okayasu I., Emoto K., Umeda M. and Nakagawa Y. Failure of the expression of phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase (PHGPx) in the spermatozoa of human infertile males. Biology of Reproduction 64 674-683 (2001) Ursini F., Heim S., Kiess M., Maiorino M., Roveri A., Wissing J. and Flohe L. Dual function of the selenoprotein PHGPx during sperm maturation. Science 285(5432):1393-1396 (1999) Foresta C., Flohe L., Garolla A., Roveri A., Ursini F. and Maiorino M. Male Fertility Is Linked to the Selenoprotein Phospholipid Hydroperoxide Glutathione Peroxidase. Biol Reprod. 67(3):967-971 (2002)
上記に述べたように男性不妊症患者のうち、乏精子症患者には、精子でのPHGPxの蛋白質の発現量が著しく低下している患者が認められることが明らかとなったが、その発現低下の原因は全く明らかになっていない。また、精子の全くない無精子症やあるいは高度乏精子症で蛋白化学的に解析が不可能な患者においてはPHGPxの関与を解析することが不可能である。本発明の課題は、新たに見出されたAZF遺伝子のひとつであるPHGPxのヒトゲノム遺伝子変異と特発性男性不妊症(特に無精子症や高度乏精子症患者)との関連・遺伝子変異による蛋白の発現への影響について明らかにすることである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、男性不妊症患者PHGPxゲノム遺伝子異常のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による遺伝子変異の検出、男性不妊症患者PHGPxゲノム遺伝子異常の直接シークエンス法による検討、男性不妊症患者PHGPxの特定変異ゲノム遺伝子の病態との相関の解析、及び得られた変異におけるPHGPxの発現・機能に及ぼす影響についての検討等をおこない、その結果、特定部位の変異と男性不妊症との相関を見出し本発明を完成した。
つまり、本発明は、PHGPx遺伝子のプロモーター領域を含むDNAサンプルの塩基配列を解析することにより、不妊症の原因がPHGPxの発現低下であることを特定できることを明らかにしたものである。PHGPxの発現低下が不妊の原因であるということを特定できれば、不必要な検査を受ける必要がなくなり患者の負担を軽減できる上、例えばPHGPxを生理的な濃度で供与する手段(例えば、遺伝子治療等)を講じる等、不妊症の原因にあった適切な治療を患者に施すことが可能になる。本発明は、患者の負担が少ない簡便な方法であるので、不妊症の原因を診断する上で、第一選択肢となりうる。
本発明は、以下からなる発明を提供する。
1.配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を少なくとも含むリン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(以下PHGPx)遺伝子のプロモーター領域の塩基配列の変異の有無を指標にすることを特徴とする男性不妊症の診断のための検査方法。
2.配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を少なくとも含むPHGPx遺伝子の発現の減少を生じさせる変異の有無を指標とすることを特徴とする男性不妊症の診断のための検査方法。
3.PHGPx遺伝子中のプロモーター領域の変異が、以下の変異からなる群から選ばれる少なくとも1つの変異である前項1又は2に記載の検査方法。
(1)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基の変異
(2)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基の変異
(3)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基のアデニンが対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換している変異
(4)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基のシトシンが対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換している変異
(5)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基のアデニンが対立遺伝子の双方においてチミンに置換している変異
(6)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基のシトシンが対立遺伝子の双方においてチミンに置換している変異
4.前項3に記載の方法に用いられる検査用DNA断片。
5.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に用いられるプライマーである前項4のDNA断片。
6.配列番号1に記載のポリヌクレオチドの塩基番号752番目の塩基および/または779番目の塩基を含むDNA断片を増幅できることを特徴とする前項4または前項5のDNA断片。
7.配列番号1に記載のポリヌクレオチドの塩基番号752番目の塩基および/または779番目の塩基の変異を検出できることを特徴とする前項4または5のDNA断片。
8.配列番号2〜9の少なくとも1に表された塩基配列を含む前項6のDNA断片。
9.以下のDNA断片からなる群;
1)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基及び779番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片、
2)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基及び779番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片の相補配列からなるDNA断片、
3)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基及び779番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる配列からなるDNA断片、および
4)上記1)〜3)の配列のうち1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含むDNA断片;
から選ばれるDNA断片の少なくとも5つの連続した塩基配列からなるヌクレオチドを含むDNA断片。
10.前項4から9の何れか1項に記載のDNA断片の何れか1つを含む男性不妊症を診断するためのPHGPx遺伝子変異の検査用試薬キット。
11.前項9に記載のDNA断片が有する塩基配列の何れか一つを含む組換え用DNA。
12.前項11に記載のDNAを含む形質転換体。
13.男性不妊症患者のPHGPx遺伝子中のプロモーター領域の塩基配列を解析し、健常者の塩基配列と異なる部分を同定することを特徴とするPHGPx遺伝子の変異箇所の同定方法。
14.男性不妊症患者のPHGPx遺伝子中のプロモーター領域の塩基配列を解析し、健常者の塩基配列と異なる部分を同定し、該変異部分による遺伝子発現への影響を測定することを含むPHGPx遺伝子の変異箇所の同定方法。
15.配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を少なくとも含むPHGPx遺伝子のプロモーター領域の塩基配列を解析することを特徴とする、以下の用途からなる群から選ばれる少なくとも1つの用途のための検査方法。
1)不妊症患者の不妊原因の特定、
2)不妊症患者の不妊原因が、PHGPx遺伝子の発現量の低下であると特定、
3)不妊症発症リスクの特定、
4)PHGPx遺伝子の発現能の特定、および
5)上記1)〜4)の特定に基づく男性不妊症の診断。
16.被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基がチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、前項15に記載の検査方法。
17.配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9に記載のポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、前項16に記載の検査方法。
18.被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基がチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、男性不妊症の診断方法。
19.配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9に記載のポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、前項18に記載の診断方法。
20.被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基がチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、前項15に記載の検査方法。
21.増幅した断片を制限酵素BglIで切断することを特徴とする、前項20に記載の検査方法。
22.配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に記載のポリヌクレオチドを用いて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を増幅することを特徴とする、前項20又は21に記載の検査方法。
23.被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基がチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、男性不妊症の診断方法。
24.増幅した断片を制限酵素BglIで切断することを特徴とする、前項23に記載の診断方法。
25.配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に記載のポリヌクレオチドを用いて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を増幅することを特徴とする、前項23又は24に記載の診断方法。
26.被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換しているかどうかおよび/または該ポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、前項15に記載の検査方法。
27.被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換しているかどうかおよび/または該ポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、男性不妊症の診断方法。
28.被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかおよび/または該ポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、前項15に記載の検査方法。
29.被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかおよび/または該ポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、男性不妊症の診断方法。
30.被験者からDNAを得て、該DNAから配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5に記載のポリヌクレオチドを用いて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、該増幅されたDNA部分配列と配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9に記載のポリヌクレオチドを用いて該被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定し、他方、該増幅されたDNA部分配列を制限酵素BglIで切断することにより該被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする前項15に記載の検査方法。
31.被験者からDNAを得て、該DNAから配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5に記載のポリヌクレオチドを用いて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、該増幅された部分配列と配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9に記載のポリヌクレオチドを用いて該被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定し、他方、該増幅されたDNA部分配列を制限酵素BglIで切断することにより該被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする診断方法。
32.前項30に記載の検査方法で用いられる検査用キット。
33.前項31に記載の診断方法で用いられる診断用キット
本発明は、男性不妊症患者のPHGPx遺伝子のプロモーター領域に特有の変異が存在することを見出した。そして、PHGPx遺伝子上の男性不妊症に特有の変異が男性不妊症におけるPHGPx遺伝子変異の検査に有用であることを明らかにした。このことは、男性不妊症の遺伝子診断、また、その治療、新薬の研究において新規な展開を達成するものである。
(1)PHGPx遺伝子解析
本発明の1は、男性不妊症の可能性のある個体から、PHGPx遺伝子特にプロモーター領域を少なくとも含むDNAを抽出し、該PHGPx遺伝子、特にプロモーター領域の塩基配列中の男性不妊症に特有の変異を検出することを特徴とする男性不妊症に関連するPHGPx遺伝子変異の検出方法である。該検出方法を用いた男性不妊症の遺伝子診断方法も本発明の範囲に含まれる。
プロモーター領域を含むヒトのPHGPx遺伝子の部分塩基配列は、配列表の配列番号1に示した。以下、PHGPx遺伝子における塩基の位置を表わすとき、該遺伝子の転写開始点の塩基を+1として慣用の表示方法に従って表示する。配列番号1に記載の塩基配列において、PHGPx遺伝子の転写開始点に相当する塩基は、配列表の配列番号1の第1027番目のアデニン(以下、A又はaと表示する)である。したがって、例えばPHGPx遺伝子の−275番目及び−258番目の塩基は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列においてそれぞれ第752番目及び第779番目の塩基に相当する。
男性不妊症患者のPHGPx遺伝子のプロモーター領域の塩基配列中における変異を指標にし、特に該遺伝子における配列番号1に記載の塩基配列において752(−275)番目のアデニンおよび/または779(−258)番目のシトシン(以下C又はcと表示する)における変異は、男性不妊症に関連するPHGPx遺伝子上の変異の検査を可能とする。この変異の同定は、ダイレクトシークエンス法等で変異を直接測定することで検査可能である。
あるいは、当該変異はPHGPx遺伝子の発現に変異を生じるものであることから、制御下蛋白質のmRNAレベルでの転写量測定、又は制御下蛋白質の発現量をマーカー蛋白質の発現量を確認することで検査可能である。
検査における指標としては、PHGPx遺伝子のプロモーター領域の塩基配列、例えば以下における変異等が挙げられる
(1)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基の変異
(2)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779(−258)番目の塩基の変異
(3)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基のアデニンが対立遺伝子のいずれかにおいてチミン(以下、T又はtと表示する)に置換している変異
(4)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779(−258)番目の塩基のシトシンが対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換している変異
(5)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基のアデニンが対立遺伝子の双方においてチミンに置換している変異
(6)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779(−258)番目の塩基のシトシンが対立遺伝子の双方においてチミンに置換している変異
さらに、PHGPx遺伝子中のプロモーター領域の塩基配列の具体的な変異のうち特に好適な指標となる変異は、以下があげられる。
(7)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの塩基番号752(−275)番目の塩基の置換がチミンにホモに置換しているもの、
(8)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779(−258)番目の塩基の置換がチミンにホモに置換しているもの、
(9)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基の置換がチミンにホモに置換し、同時にPHGPx遺伝子中のプロモーター領域の塩基配列の塩基番号779(−258)番目の塩基の置換がチミンにホモに置換しているもの。
上記したPHGPx遺伝子の男性不妊症特有の変異の検査方法としては、(1)男性不妊症の可能性のある個体からDNAを精製し、(2)該DNAのPHGPx遺伝子のプロモーター領域をそれ自体既知の通常用いられる方法によって解析することによって行うことができる。
男性不妊症の可能性のある個体から精製するDNAは、すくなくともPHGPx遺伝子のプロモーター領域を含むものであれば如何なるものであってもよく、ゲノムDNAが好ましく用いられる。DNAを精製するために上記個体から取得される生体試料としては、生体から取得することが容易であり、PHGPx遺伝子を含むDNAを含有するものであれば如何なるものであってもよい。具体的には、体液、精液、血液に含まれる白血球細胞、毛髪、生体材料組織、手術切除組織等が用いられる。これらの生体試料からのDNAの取得は、それ自体既知の通常用いられる方法を用いて行うことができる。
かくして得られたDNAについて、PHGPx遺伝子のプロモーター領域の上記した変異を解析する方法としては、例えばA)PCR断片シークエンシング法、B)一本鎖高次構造多型法(SSCP法:Orita M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,86(8), 2766-2770(1989))、C)ヘテロ二本鎖変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法:Sheffield V. C., etal., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 86(1),232-236(1989))、D)インベーダー法(Griffin, T. J., et al., Trend Biotech, 18,77(2000))、E)SniPerTM法(Amersham pharmacia biotech)、F)タックマンPCR法(Livak K. J., Genel. Anal., 14,143(1999); Morris T., etal., J. Clin. Microbiol.,34, 2933(1996))、G)MALDI−TOF/MS法(Griffin T. J.,etal., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 96(11),6301-6(1999))、H)制限酵素長多型解析法(RFLP:Murray J. C., et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 80(19),5951-5955(1983))、I)DNAチップハイブリダイゼーション法(Kokoris K.,et al., J. Med. Genet., 36, 730(1999))、J)MasscodeTM法(Qiagen Genomics)等に例示される公知の方法から選択され得るが、これらに限定されるものではなく、遺伝子変異を検出する方法であれば、あらゆる手段を適用することができる。
解析法としては、取得したDNAを鋳型として、PHGPx遺伝子のプロモーター領域における上記の変異を含む断片をPCRにより増幅した後に、これを適当な方法によりシークエンシングして変異の有無を分析する。具体的には、例えばPHGPx遺伝子中のプロモーター領域の配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目と779(−258)番目の塩基の変異については、実施例に示すとおり、配列番号2のプライマーaと配列番号3のプライマーhを用いたLA−PCRにより増幅したah断片をシークエンスして変異の有無を解析する。ここで、用いられるプライマーとしては、PHGPx遺伝子の上記の変異部分を含むDNA断片を増幅し得るものが用いられ、プライマーaとプライマーhには限定されない。変異の検出には、上記の変異を含む部位に相補的な合成オリゴヌクレオチドを設定し、PCR産物とハイブリダイズさせ点変異を検出するのである。この場合のオリゴヌクレオチドは、長さ5〜50個で変異のターゲット部位を中心部に設計すればよい。
解析のためには、定量化分析のためのリアルタイムPCR法(Taq−Manプローブ法、Sunriseプライマー法、adjacent hybridization probe法、及びインターカレーション法)、mutant allele specific amplification(MASA)法、又は/及び、PCR−restriction fragment length polymorphism(PCR−RFLP)法等を利用して検出してもよい。
具体的には、例えばTaq−Manプローブ法では、PCRをTaq−Manプローブと組合せて用いる。Taq−Manプローブは、20−30塩基のオリゴヌクレオチドで、その5’末端をフルオレセイン系蛍光色素(レポーター色素)、3’末端をローダミン系蛍光色素(クエンチャー色素)により標識されている。反応はPCRの反応過程でPCRプライマー〔実施例ではForward Primerとして140A/T−28F(配列番号6)、Reverse Primerとして140A/T−178R(配列番号7)を用いた〕とともに、Taq−Manプローブ〔実施例では140A(配列番号8)、140T(配列番号9)を用いた〕が、標的DNAにアニールする。PCRの伸長反応とともに、TaqDNAポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性により、Taq−Manプローブの5’末端から加水分解がおこる。その結果、レポータ色素の遊離がおこりシグナルを発して、標的DNAの量を測定できるのである。
PCR−RFLPでは、遺伝子の変異が予測される標的領域をPCRで増幅し、正常配列の当該変異が起こり得る部位を認識する制限酵素(例えばBglI)で増幅産物を処理する。点突然変異の生じているDNAは切断されないので正常配列との差異をサイズの大きさとして電気泳動等で分析する。
本発明には、PHGPx遺伝子の上記変異を検出するために、変異を基礎にして設計された上記方法で用いられる全てのポリヌクレオチド、プライマー、あるいはプローブなどが含まれる(本明細書中では、これらを「検査用DNA断片」と称することがある)。また、これらの検査用DNA断片には、必要であれば適当な蛍光物質などにより修飾したものも含まれる。
本発明においては、上記変異に関する情報をもとに、既知遺伝子変異検出手段と組み合わせ、さらに各検出手段所望の検出試薬と前記選択される検査用DNA断片等を組合わせれば、好適な男性不妊症に関連するPHGPx遺伝子上の変異の検査用試薬キットが提供される。
(2)PHGPx遺伝子のプロモーター領域において男性不妊症特有の変異を有するポリヌクレオチド
上記(1)の検査法により指標とされる変異を有するPHGPx遺伝子のプロモーター領域のポリヌクレオチド(以下、これを単に「変異PHGPxポリヌクレオチド」と称することがある)は男性不妊症の患者が生体内に有しているPHGPx遺伝子のプロモーター領域と同様のものである可能性が極めて高いため、男性不妊症の研究に非常に有用である。
変異PHGPxポリヌクレオチドとしては、ヒトの配列として、PHGPx遺伝子中のプロモーター領域の塩基配列において、上記(1)の検査法により指標とされる変異を有するものが挙げられる。具体的な変異としては、例えば、以下の少なくとも5つのヌクレオチドからなる塩基配列を含むDNA断片が挙げられる。
1)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片、
2)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片と相補配列からなるDNA断片、
3)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる配列からなるDNA断片、
4)上記1)〜3)の配列のうち1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含むDNA断片。
さらに、好適な指標となるものは、以下のものがあげられる。
5)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基がチミンに置換された配列、
6)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基がチミンに置換された配列を含むDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる配列からなるDNA断片、
7)上記5)又は6)の配列のうち1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含むDNA断片。
このようなポリヌクレオチドとしては、PHGPx遺伝子のプロモーター領域の全長を含むものに限らず、少なくとも1つの上記変異を有するものであれば塩基数5〜100、5〜50、及び5〜30個等如何なるものでもよい。また、これらのポリヌクレオチドは、男性不妊症の個体から上記(1)に記載した方法により取得したDNAからPCRなどの方法により調製したものでもよいし、野生型のPHGPx遺伝子を有する個体から取得したDNAにそれ自体既知の通常用いられる方法により変異を導入して作製することもできる。さらには、化学合成により取得することもできる。
上記変異PHGPxポリヌクレオチドは、これを含む組換えベクターを作製し、遺伝子発現検査用などに用いられる。ベクターとしてはこれを導入する宿主内でPHGPxポリヌクレオチドが機能する(PHGPx遺伝子あるいはマーカー遺伝子が発現する)かどうかが判定されうるものであれば特に制限はない。また、プラスミドベクター、ファージベクターともに使うことができる。
具体的には、ZAP Express(ストラタジーン社製)、pSVK3(アマシャムファルマシアバイオテク社製)、pEGFP−C1(クロンテック社製)等が挙げられる。また、pMKITNeo(丸山和夫、細胞工学別冊8、新細胞工学実験プロトコール、259頁、秀潤社、1993年)等も好ましく用いられる。
ベクターへの変異PHGPxポリヌクレオチドの挿入は、該ポリヌクレオチド又はこれを含むDNA断片がプロモーター機能を発揮しうるかどうかを判定することを目的とするから、ベクター中のレポーター遺伝子(例えば実施例ではルシフェラーゼ系を用いた)の上流に、該レポーター遺伝子の発現を制御下におくように連結して行う。また、変異PHGPxポリヌクレオチドとレポーター遺伝子の間にコザック配列(Kozak M., Gene, 234, 187, (1999))を挿入したり、レポーター遺伝子の下流にタグとなるポリペプチドをコードするDNAを挿入した構造を有するベクターも好ましく用いられる。タグとなるポリペプチドとしては特に制限はないが、例えば、FLAGタグ(BioTechniques, 7, 580, (1989))等が挙げられる。
このようにして得られた本発明の組換えベクターは、リン酸カルシウム法(Science, 221, 551(1983))、DEAEデキストラン法(Science,215,166(1982))、電気パルス法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81,7161(1984))、インビトロパッケージング法(Proc. Natl. Acad. Sci.USA,72, 581(1975))、ウィルスベクター法(Cell, 37, 1053(1984))、あるいはリポフェクション法(Lipofection Reagent(GibcoBRL社製))等によって適当な宿主に導入される。
このとき、該組み換えベクターを導入する宿主としては、該ベクターが体内で複製可能であり、かつマーカー蛋白質等が生成されるものであれば特に限定されないが、例えば大腸菌、酵母、バキュロウィルス(節足動物多角体ウイルス)−昆虫細胞、動物細胞等が挙げられる。具体的には、大腸菌ではBL21、XL−2Blue(ストラタジーン社製)等、酵母では例えばSP−Q01(ストラタジーン社製)等、バキュロウィルスでは例えばAcNPV(J. Biol. Chem., 263, 7406(1988))とその宿主であるSf−9(J. Biol. Chem.,263, 7406(1988))等が挙げられる。また動物細胞としてはマウス繊維芽細胞C127(J. Viol., 26, 291(1978))やチャイニーズハムスター卵巣細胞CHO(Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 77, 4216(1980))やアフリカミドリザル腎臓由来細胞COS−7(ATCC CRL1651:アメリカン タイプ カルチャー コレクション)等が挙げられる。
上記したような組み換えベクターを用いる発現方法の他に、変異PHGPxポリヌクレオチドを宿主の染色体中に直接挿入する相同組換え技術(A. A. Vertes et al., Biosci. Biotechnol. Biochem.,57,2036(1993))、あるいはトランスポゾンや挿入配列(A. A. Vertes et al.,Molecular Microbiol., 11,739(1994))等を用いて発現させることができる。
組み換えベクターを導入した導入体は、それぞれに適した培地により培養される。培地中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物、ビタミン、血清及び耐性スクリーニングに用いられる薬剤などが含有される。具体的には、形質転換体の宿主が大腸菌の場合には、例えばLB培地(ナカライテスク社製)等、酵母の場合には、YPD培地(Genetic Engineering, 1, 117, Plenum Press(1979))等、宿主が昆虫細胞及び動物細胞の場合は、20%以下のウシ胎仔血清を含有するHam−12培地、MEM培地、DMEM培地、RPMI1640培地(SIGMA社製)等を挙げることができる。また、培養は通常温度20℃〜45℃、CO2濃度2〜10%の範囲で行うことが好ましい。培養時間は、宿主及び組み換えベクター等によって適宜選択することができるが、好ましくは12〜80時間である。さらに、必要に応じて通気、攪拌が行われる。これら以外の培地組成あるいは培養条件下でも導入宿主が生育し、挿入されたマーカー蛋白質等が生成されれば如何なるものであってもよい。
また、上記変異PHGPxポリヌクレオチドは、公知の無細胞蛋白質合成系等によってもマーカー蛋白質の発現を指標にその機能の判定をすることができる。無細胞蛋白質合成系に用いられる細胞抽出液として具体的には、大腸菌等の微生物、植物種子の胚芽、ウサギ網状赤血球等の細胞抽出液等、既知のものが用いられる。これらは市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には大腸菌抽出液は、Pratt J. M. et al., Transcription and Tranlation, Hames, 179-209, B. D. & Higgins S. J., eds, IRL Press, Oxford(1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。
市販の細胞抽出液としては、大腸菌由来のものは、E.coli S30 extract system (Promega社製)とRTS500 Rapid Tranlation System(Roche社製)等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate System(Promega社製)等、さらにコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM(TOYOBO社製、インビトロテック社)等が挙げられる。
抽出されたマーカー蛋白質は、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)等により分離し、適当な染色試薬、例えば、クマシーブリリアントブルー(CBB)等によりゲルを染色することにより確認することができる。
あるいは、ヒトPHGPx遺伝子変異を有するプロモーター領域と該プロモーター領域の作用により発現するレポーター遺伝子との融合体を用い、マウス精巣にインビボで遺伝子導入して、該レポーター遺伝子の発現を確認することにより、ヒトPHGPx遺伝子変異を有するプロモーター領域のインビボでの機能を試験することも可能である。かかる方法は、既に開示されているHuangらの方法に従って実施可能である(Huang Z. et al., FEBS Letters, 487, 248-251 (2000))。
以上説明したように、本発明は男性不妊症と遺伝子変異の関係を明らかにしたことから、この知識を利用すれば、(1)男性不妊症患者のPHGPx遺伝子中のプロモーター領域に相当する配列を解析し、健常者の配列と異なる部分を同定することを特徴とする男性不妊症に関連するPHGPx遺伝子変異の検査方法に用いられる変異箇所の同定方法や、(2)男性不妊症患者のPHGPx遺伝子中のプロモーター領域に相当する配列を解析し、健常者の配列と異なる部分を同定し、該変異部分による遺伝子発現への影響を測定することを含む男性不妊症に関連するPHGPx遺伝子変異の検査方法に用いられる変異箇所の同定方法、さらに(3)上記記載の検査法による男性不妊症の診断方法に応用可能である。加えて、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を少なくとも含むPHGPx遺伝子のプロモーター領域の塩基配列を解析することによって、該検査方法は以下の用途から選択される判定に有用である。1)不妊症患者の不妊原因の特定、2)不妊症患者の不妊原因が、PHGPx遺伝子の発現量の低下である特定、3)不妊症発症リスクの特定、4)PHGPx遺伝子の発現能の特定、5)上記1)〜4)の特定に基づく男性不妊症の診断。また、本発明による男性不妊症と特定遺伝子変異の関係の知見をもとにして、該変異が診断された患者に対して、当該変異部位を遺伝子治療的に修復する又は補完する手段を導入することは男性不妊症の治療法として有用である。特に、上記組換えベクターを利用した手段により、正常なPHGPx遺伝子の発現系を導入することは有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
また、以下の実施例において行なった全ての実験は北里大学倫理審査委員会の承認を受けて行なったものである。
実施例1
ヒトPHGPx遺伝子変異の検出
男性不妊症患者由来のゲノム試料について、第19番染色体上腕に存在する4型グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx4)であるPHGPx遺伝子異常の検出を、該遺伝子のプロモーター領域約1000bp、7つのエキソン及びイントロンを検討対照として、PCR_TTGE(PCR_Temporal Temperature Gradient Gel Electrophoresis)法により行った。すなわち、検査対象範囲のDNAをPCRにより増幅し、TTGE法にて遺伝子変異・欠失の有無について検出を行った。
ゲノム試料は、患者又は健常者の血液3mlから、GFX Genomic Blood DNA purification Kit(Amersham Pharmacia Biotech社)を用いて、使用説明書に基づき取得した。PCRに用いたプライマーは、図1のPHGPx遺伝子の構造を説明する模式図中に矢印で示した部分の塩基配列に基づいて設計し作成したものを用いた。その結果、PHGPx遺伝子のプロモーター領域に変異があると考えられた。
PCR−TTGE法により変異の可能性があると考えられたプロモーター領域について、不妊症患者53名及び健常者10名のゲノム試料から、その領域をPCRにより増幅し、ダイレクトシークエンス法を用いて配列の分析を行い、さらに詳細に遺伝子変異・欠失の同定を行った。まず、ゲノム試料を鋳型として、プロモーター領域の塩基配列に基づいて設計し作成したプライマーa及びhを用いてLA−PCR法により該ゲノムの部分配列を増幅した。得られた増幅産物から電気泳動法により目的とするDNA断片を分離し、さらにジーンエリュートアガローススピンカラム(GeneElute Agarose SPIN COLUMN、SIGMA)を用いて常法に従って抽出処理を行い、該DNA断片(以下、ahフラグメントという)を精製した。ahフラグメントを鋳型にして、さらに、プライマーc及びj、あるいはプライマーp及びeを用いてLA−PCR法を行い、cjフラグメント及びpeフラグメントを得た。
これらDNA断片の配列をダイレクトシークエンス法により分析した結果、不妊症患者のcjフラグメントにおいて、−629番、−578番又は−521番の塩基の少なくとも1つの塩基に一塩基遺伝子多型(Singlenucleotide polymorphism、SNP)が存在することが明らかになった。また、peフラグメントにおいて、−275(752)番目の塩基がAからTに、および/または−258(779)番目の塩基がCからTに置換しているものがあることを見出した。
さらに、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基および/または779(−258)番目の塩基のSNPについては、患者特異的に変異がみられた。このことから、PHGPx遺伝子のプロモーター領域の配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基および/または779(−258)番目の塩基のSNPが、男性不妊症と関連すると考えた。
配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基を含むpeフラグメントを増幅するために用いたプライマーを以下に示す(図1参照)。
プライマーa:cgctcgtgta atcccagct 配列番号2
プライマーh:accaaggtca ctggagcct 配列番号3
プライマーp:aggtaaataa gagttgggg 配列番号4
プライマーe:acagaattcc ggacttgtt gttggcgac 配列番号5
LA−PCRに用いた試薬を以下に示す。10×LA−PCRバッファーII(Mg2+無添加)、MgCl、dNTP Mixture及びTaKaRa LA TaqはTAKARA社より入手した。

ゲノム DNA 100ng
10×LA−PCR バッファーII(Mg2+無添加)
5μl
25mM MgCl 5μl
dNTP Mixture 8μl
25μM 5’プライマー 0.4μl
25μM 3’プライマー 0.4μl
TaKaRa LA Taq 0.5μl
PCR用滅菌水 適当量
全量50μl
PCRの運転条件を以下に示す。
94℃に1分間
98℃で20秒間、68℃で15分間のサイクルを14回
98℃で20秒間、68℃で15分+15秒間のサイクルを16回
最後に、72℃で10分間
実施例2
PHGPx遺伝子変異と男性不妊症との相関の解析
実施例1で増幅して得たpeフラグメントを用い、遺伝子変異の簡易検出法として、制限酵素断片長多型法(RFLP法)及びリアルタイム−PCR法を用いて、不妊症患者由来及び健常人由来のPHGPx遺伝子変異の検出を行い、該変異と男性不妊症との関連について解析を行った。
配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779(−258)番目の塩基の解析は、制限酵素BglIを用いてRFLP法により行った。779C(野生型)の場合は、BglIが779(−258)番目の塩基の手前でpeフラグメントを切断するので、153bpと55bpの2つのDNA断片が生じる。しかし、779(−258)番目の塩基がTに変異している場合は、BglIによる切断がおこらないため、208bpのままである。したがって、電気泳動によりDNA断片を分離し染色してRFLPパターンを得ることにより、点変異の有無が検出できる。図2に示したように、RFLPパターンにおいて153bpと55bpの各DNA断片を示す2つのバンドが得られた場合は、該変異がPHGPx対立遺伝子の双方に存在すると判定できる。一方、208bp、153bp及び55bpのDNA断片を示す3つのバンドが得られた場合は、該変異がPHGPx対立遺伝子の一方にのみ存在すると判定できる。
以下、PHGPx遺伝子のある位置の塩基が対立遺伝子の双方で同一であることを「ホモ」と称し、対立遺伝子で異なることを「ヘテロ」と称することがある。また、「ホモ」又は「ヘテロ」の塩基を、塩基を意味する記号A、T、C又はGと、記号/を用いて表わすことがある。例えばC/CとはPHGPx対立遺伝子の双方である位置の塩基がCであることを意味し、C/TとはPHGPx対立遺伝子においてある位置の塩基が一方の遺伝子ではCであり他方ではTであることを意味する。
上記方法により、健常者50名及び不妊症患者316名について779(−258)番目の塩基の解析を行った。その結果、779(−258)番目の塩基が対立遺伝子の双方でTに変異している(T/T)割合が、健常人と比較して不妊症患者で高いことが明らかになった(表1)。このことから、779(−258)番目の塩基におけるCからTへの変異がホモであることが、男性不妊症に関連すると考えられる。
Figure 2004344164
配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基の解析は、健常者50名及び不妊症患者313名について、Taq−manPCR法により常法に従って行った(Livak K. J., Genel. Anal.,14,143(1999); Morris T., et al., J. Clin. Microbiol., 34, 2933(1996))。用いたプライマー及びプローブを以下に示す。
フォワードプライマー 140A/T−28F:
tctgcgagtt ggagaaacca 配列番号6
リバースプライマー 140A/T−178R:
gcttgtgtct aggaggccgt 配列番号7
Taqman MGBプローブ 140A:
ctgcctcccg acgc 配列番号8
Taqman MGBプローブ 140T:
tgcctcccgt cgc 配列番号9
用いた試薬及び方法を以下に示す。10×PCR反応バッファー(Mg2+添加)、dNTP Mixutre及びTaq DNAポリメラーゼはBOEHRINGER MANNHEIM社より入手した。

抽出したPCR産物(100ng相当)
10×PCR反応バッファー(Mg2+添加) 10μl
dNTP Mixutre 2μl
25μM 5’プライマー 2μl
25μM 3’プライマー 2μl
Taq DNAポリメラーゼ 0.5μl
PCR用滅菌水 適当量
全量 100μl
PCRの運転条件を以下に示す。
94℃に4分間
94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で45秒間のサイクルを35回
72℃に10分間
結果を図3及び図4に示した。
図3上段は、PCR回数に応じた、752(−275)番目の塩基Aに対応する蛍光量を示したもので、正常の場合、対立遺伝子もAでA/Aであると、蛍光量が高く、ヘテロA/Tの場合、約半量の蛍光量となり、ホモ変異T/Tでは蛍光量は低い。 一方、同様に図3下段は、同じサンプルをPCR回数に応じた、752(−275)番目の塩基Tに対応する蛍光量を示したもので、T/T変異の場合、最も高い蛍光量を示し、ヘテロA/Tの場合、約半量の蛍光量となり、正常A/Aでは蛍光量が低く、この条件で、752(−275)番目の塩基のA及びTのホモ、ヘテロが同定できる。これを組み合わせたのが図4である。
図4は、各試料についての蛍光強度を示したもので、横軸に変異プローブ(mutantプローブ)の蛍光強度の強さ、縦軸に正常プローブ(normalプローブ)の蛍光強度の強さを示す。752(−275)番目の塩基がAからTへ変異している場合、mutantプローブに連結した蛍光物質の蛍光強度が強く観察されるがnormalプローブに連結した蛍光物質の蛍光強度は弱く観察される。図4に示したように、これら2種の各プローブに連結した蛍光物質の蛍光強度により、752(−275)番目の塩基が対立遺伝子の双方で正常である群(A/A)、双方で変異している群(T/T)、及び一方のみで変異している群(A/T)に、各試料を分類した。各群に分類された試料数の全試料数に対する割合を算出したところ、752(−275)番目の塩基がT/Tである割合が、健常人と比較して不妊症患者において高いことが明らかになった(表2)。このことから、752(−275)番目の塩基におけるAからTへの変異がホモであることが、男性不妊症に関連すると考えられる。
Figure 2004344164
さらに、752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基の変異と疾患との関係を分析した結果を表3に示す。表中、aa/ccとは、対立遺伝子の双方において、752(−275)番目の塩基がAであり(ホモ)、779(−258)番目の塩基がCである(ホモ)ことを意味する。aa/ccが野生型である。at/ctとは、752(−275)番目の塩基が対立遺伝子の一方においてAであり、他方においてはTに変異しており(ヘテロ)、779(−258)番目の塩基が一方においてCであり、他方においてはTに変異していることを。tt/ttとは、対立遺伝子の双方において、752(−275)番目の塩基と779(−258)番目の塩基が全てTに変異していることを意味する。aa/ctとは、752(−275)番目の塩基がAのホモであり、779(−258)番目の塩基がCとTのヘテロであることを意味する。at/ccとは、752(−275)番目の塩基がAとTのヘテロで、779(−258)番目の塩基がCのホモであることを意味する。tt/ctとは、752(−275)番目の塩基がTのホモで779(−258)番目の塩基がCとTのヘテロであることを意味する。at/ttとは、752(−275)番目の塩基がAとTのヘテロで779(−258)番目の塩基がTのホモであることを意味する。
表3に示したように、この2箇所がtt/ttである割合が、健常人では2%であるのに対して、男性不妊症患者では5.43%と高いことが明らかになった。このことから、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基が対立遺伝子の双方において全てTに変異していることは、男性不妊症と密接な関係があると考えられる。
Figure 2004344164
実施例3
tt/tt変異と精子数及び精巣のPHGPx遺伝子発現の解析
実施例2において、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基が対立遺伝子の双方において全てTに変異していることが、男性不妊症と密接に関連することが示唆されたことから、該変異と精子数との関係を分析した。
ゲノムタイプがtt/ttである男性不妊症患者は313人中、かつ精子中の精子のみられた男性不妊症患者では、19人中、9人が精液中に精子数、運動能の低い患者であった。残りの8名のうち4人が精液中の精子のいない患者でこのうち生検の検査を受けているのは4人であった。tt/ttである男性不妊症患者は、健常人に比べすべて運動能が低く、また精子数も低く、752(−275)番目の塩基と779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基が対立遺伝子の双方において全てTに変異していることが、精子数の減少に関連すると考えられた。
次に、精子の正常発生が認められている男性不妊症患者の精巣生検について、752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基の変異によるPHGPx mRNA発現への影響を検討した。検討はリアルタイムPCR分析により常法に従って行い、結果を図5に示した。PHGPx mRNAの発現は、ハウスキーピング遺伝子G3PDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)の発現に対する割合で示した。752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基のゲノムタイプがTT/TTである患者由来の試料(例数n=3)では、ゲノムタイプがAA/CC(例数n=6)の患者又はAT/CT(例数n=6)の患者由来の試料と比較して、有意にPHGPx mRNAの発現が低下していることが明らかになった。また、PHGPx mRNA低発現のコントロールとして用いたセルトリ細胞だけの不妊症患者(例数n=6)では、PHGPx mRNAの発現はほとんど認められなかった。これらから、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基の対立遺伝子双方におけるTへの変異が、PHGPx mRNAの発現の著しい低下に関連していると考えられる。
実施例4
PHGPx遺伝子の発現・機能への変異の影響についての検討
PHGPx遺伝子のプロモーター領域の変異と男性不妊症との関係が示唆されたことから、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基がそれぞれTに変異している変異体(T/T)のプロモーター活性の変動をルシフェラーゼアッセイ及びゲルシフトアッセイにより検討した。
(A)ルシフェラーゼアッセイによる細胞内でのプロモーター活性の解析
まずヒトPHGPx遺伝子の5’フランキング領域(flanking region)を得るために、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752Aと779Cを含む領域に基づいてプライマーを設計して作成した。
フォワードプライマー :tatgg taccg tccaa tcacg gtgaa ctca 配列番号10
リバースプライマー :atagg tacca gatct gtcgg ctttc cgcg 配列番号11
鋳型DNAとしては、男性不妊症患者又は健常人のゲノム試料(実施例1で取得したもの)100ngを用いた。PCRにより該領域の増幅を行った後、電気泳動を行い、ジーンエリュートアガローススピンカラムを用いてDNA断片を抽出した。DNA断片をKpnI、又はKpnIとXhoIで制限酵素処理し、さらに同様に抽出処理を行った。ホタルルシフェラーゼレポータベクターpGL3−Basic Vector(PROMEGA E1751)を用い、これにDNA断片を常法により挿入してベクターを構築し、該ベクターで大腸菌を形質転換した。形質転換された大腸菌の5mlをLuria−Broth培地で8時間前培養し、培養液の1mlを100mlのLuria−Broth培地に加え、12〜16時間培養した後、QLAGEN Plasmid Midi Kit(QLAGEN 12145)を用いてDNAを回収し、適当量の滅菌水に溶かしてOD260を測定し濃度を決定した。細胞数6×10のヒト血管内皮細胞由来細胞ECV304を用い、LIPOFECT AMINE PLUS(GIBCO BRL10964−021)を用いてホタルルシフェラーゼレポーターベクター(360ng)及びpRL−SV40(40ng)を細胞内に遺伝子導入した。遺伝子導入の24時間後に、細胞溶解剤100μlを加え、15分室温放置後に細胞を回収した。凍結融解処理を2回行った後に遠心処理し(12000rpmで2分間)、上清を分取した。上清10μlを96穴プレートに分注し、50μlのピッカジーンデュアル発光基質を加えて直ちにトップカウンターによりホタルルシフェラーゼ活性を測定した。
結果は図6に示した。図6の横軸は、酵素活性(IU)を示し、縦軸は各試料を表わす。図中、cont.はpGL3−Basic Vectorを導入した試料、hJは752(−275)番目の塩基と779(−258)番目の塩基がそれぞれA及びCである野生型のプロモーター領域を導入した試料、hjmは752(−275)番目の塩基と779(−258)番目の塩基をともにTに変異させたプロモーター領域を導入した試料を意味する。プロモーター領域に変異が導入された場合、レポーター遺伝子の発現が有意に低下した。このことから、752(−275)番目の塩基と779(−258)番目の塩基の変異はPHGPx遺伝子の発現を低下させると考えられる。
(B)ゲルシフトアッセイによるインビトロでのプロモーター活性の解析
ヒトPHGPx遺伝子プロモーター領域の配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基を含む領域からセンスプライマーとアンチセンスプライマーとを設計して作成した。作成したセンスプライマーは配列番号1に記載の塩基配列の第740番目から第774番目までの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、アンチセンスプライマーは該オリゴヌクレオチドの逆向き相補鎖である。これら2つのプライマーをアニーリングバッファー(100mM Tris/100mM MgCl/500mM NaCl)を用いて常法によりアニーリングさせ、2本鎖DNAプローブを調製した(以下、野生型DNAプローブという。)。得られた2本鎖DNAプローブの10pmolを〔γ−32P〕ATP(Amersham Pharmacia Biotech)、MEGALABEL DNA 5’−End Labering Kit(Takara)を用いて5’末端標識した後、G−25カラムを用いて遠心処理により精製し、標識2本鎖DNAプローブを得た(以下、標識野生型DNAプローブという。)。
また、ヒトPHGPx遺伝子プロモーター領域の752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基がTに変異したプロモーター領域から上記同様にDNAプローブを作製した(以下、変異型プローブという。)。変異型プローブは標識せずに使用した。
一方、PHGPx遺伝子プロモーター領域に結合する転写因子等の蛋白質として、マウスの精巣から核蛋白質を常法により調製して用いた。
標識野生型DNAプローブの1×10cpm、1mg/mL Poly〔dI−dC〕(SIGMA)1μL、5×HDKEバッファー〔100mM HEPES−KOH pH7.9、250mM KCl、5mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、25mM ジチオスレイトール(DTT)、2mg/mL 牛血清アルブミン(BSA)4μL〕及び核蛋白質5μgに滅菌水を加えて全量20μLの反応液を作製し、30分間氷中放置して反応させた。反応終了後、反応液に6×色素液を4μL加え、そのうち10μLを6%ポリアクリルアミドゲルにアプライして20mAで1.5時間電気泳動した。泳動後、BAS2000を用いて標識野生型DNAプローブと核蛋白質との結合を解析した。
この反応液に非標識野生型プローブ又は変異型プローブを、標準野生型プローブに対して25、50、100又は200倍量加えて同様に反応を行った。図7に示したように、非標識野生型プローブは、標識野生型DNAプローブと核蛋白質との結合を阻害したが、変異型プローブは該結合を阻害しなかった。すなわち、野生型DNAプローブは核蛋白質と結合するが、変異型プローブは結合しないことが明らかになった。このことから、プロモーター領域の配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基及び779(−258)番目の塩基のTへの変異が、転写因子等の遺伝子発現調節蛋白質のプロモーター領域への結合を減弱させ、ひいてはヒトPHGPx遺伝子の発現に影響するものと考えられる。
ヒトPHGPxゲノム配列におけるSNPの存在位置を示す模式図である。図中、*及び#はSNPの位置〔左から順に−629、−578、−521、−275(配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752)及び−258(配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目)〕を示す。矢頭はSNP解析のためのPCR用プライマーの設計に使用した塩基配列の位置を示し、矢頭の下に記載した数字及びアルファベットは各プライマーの名称である。図中、Eとはエキソンを意味する。 ヒトPHGPxゲノム配列における配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779(−258)番目の塩基の変異の検出をRFLP法で行った結果を示す電気泳動図である。各レーンは異なった試料を示す。 ヒトPHGPxゲノム配列における配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基の変異の検出をTaq−Man PCR法で行った結果を示す図である。上図及び下図はそれぞれ、752(−275)番目の塩基のAの塩基の量及び752(−275)番目の塩基のTの塩基の量を示している。 ヒトPHGPxゲノム配列における配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基の変異の検出をTaq−Man PCR法で行った結果を示す図である。各試料についての蛍光強度を示したもので、横軸に変異型プローブ(mutantプローブ)の蛍光強度の強さ、縦軸に野生型プローブの蛍光強度の強さを示す。 ヒトPHGPx遺伝子における配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)番目の塩基と779(−258)番目の塩基の2箇所の塩基が対立遺伝子の双方において全てTに変異している(TT/TT)ことが認められた男性不妊症患者の精巣生検において、PHGPx mRNAの発現が低下していたことを示す図である。 ヒトPHGPx遺伝子における配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752(−275)Aと779(−258)Cの2箇所の塩基を両方ともTに変異している(T/T)変異体プロモーター領域(hJm)を導入したレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子)の発現が、野生型プロモーター領域を導入したもの(hJ)と比較して有意に低下したことを示す図である。横軸は、酵素活性(IU)を示し、縦軸は各試料を表わす。図中、cont.はルシフェラーゼ遺伝子を導入しなかった陰性対照である。 ヒトPHGPx遺伝子プロモーター領域の非標識野生型プローブ(図中、human normalと表示)は、標識野生型DNAプローブ(図中、labeled human normal probeと表示)とマウス核蛋白質(図中、mouse testis nuclear extractと表示)との結合を阻害したが、変異型プローブ(図中、human mutantと表示)は該結合を阻害しなかったことを示す図である。

Claims (33)

  1. 配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を少なくとも含むリン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(以下PHGPx)遺伝子のプロモーター領域の塩基配列の変異の有無を指標にすることを特徴とする男性不妊症の診断のための検査方法。
  2. 配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を少なくとも含むPHGPx遺伝子の発現の減少を生じさせる変異の有無を指標とすることを特徴とする男性不妊症の診断のための検査方法。
  3. PHGPx遺伝子中のプロモーター領域の変異が、以下の変異からなる群から選ばれる少なくとも1つの変異である請求項1又は2に記載の検査方法。
    (1)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基の変異
    (2)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基の変異
    (3)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基のアデニンが対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換している変異
    (4)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基のシトシンが対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換している変異
    (5)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基のアデニンが対立遺伝子の双方においてチミンに置換している変異
    (6)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基のシトシンが対立遺伝子の双方においてチミンに置換している変異
  4. 請求項3に記載の方法に用いられる検査用DNA断片。
  5. ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に用いられるプライマーである請求項4のDNA断片。
  6. 配列番号1に記載のポリヌクレオチドの塩基番号752番目の塩基および/または779番目の塩基を含むDNA断片を増幅できることを特徴とする請求項4または請求項5のDNA断片。
  7. 配列番号1に記載のポリヌクレオチドの塩基番号752番目の塩基および/または779番目の塩基の変異を検出できることを特徴とする請求項4または5のDNA断片。
  8. 配列番号2〜9の少なくとも1に表された塩基配列を含む請求項6のDNA断片。
  9. 以下のDNA断片からなる群;
    1)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基及び779番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片、
    2)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基及び779番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片の相補配列からなるDNA断片、
    3)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基及び779番目の塩基の少なくとも1がチミンに置換された配列を含むDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる配列からなるDNA断片、および
    4)上記1)〜3)の配列のうち1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加された塩基配列を含むDNA断片;
    から選ばれるDNA断片の少なくとも5つの連続した塩基配列からなるヌクレオチドを含むDNA断片。
  10. 請求項4から9の何れか1項に記載のDNA断片の何れか1つを含む男性不妊症を診断するためのPHGPx遺伝子変異の検査用試薬キット。
  11. 請求項9に記載のDNA断片が有する塩基配列の何れか一つを含む組換え用DNA。
  12. 請求項11に記載のDNAを含む形質転換体。
  13. 男性不妊症患者のPHGPx遺伝子中のプロモーター領域の塩基配列を解析し、健常者の塩基配列と異なる部分を同定することを特徴とするPHGPx遺伝子の変異箇所の同定方法。
  14. 男性不妊症患者のPHGPx遺伝子中のプロモーター領域の塩基配列を解析し、健常者の塩基配列と異なる部分を同定し、該変異部分による遺伝子発現への影響を測定することを含むPHGPx遺伝子の変異箇所の同定方法。
  15. 配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を少なくとも含むPHGPx遺伝子のプロモーター領域の塩基配列を解析することを特徴とする、以下の用途からなる群から選ばれる少なくとも1つの用途のための検査方法。
    1)不妊症患者の不妊原因の特定、
    2)不妊症患者の不妊原因が、PHGPx遺伝子の発現量の低下であると特定、
    3)不妊症発症リスクの特定、
    4)PHGPx遺伝子の発現能の特定、および
    5)上記1)〜4)の特定に基づく男性不妊症の診断。
  16. 被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基がチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、請求項15に記載の検査方法。
  17. 配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9に記載のポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、請求項16に記載の検査方法。
  18. 被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基がチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、男性不妊症の診断方法。
  19. 配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9に記載のポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、請求項18に記載の診断方法。
  20. 被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基がチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、請求項15に記載の検査方法。
  21. 増幅した断片を制限酵素BglIで切断することを特徴とする、請求項20に記載の検査方法。
  22. 配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に記載のポリヌクレオチドを用いて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を増幅することを特徴とする、請求項20又は21に記載の検査方法。
  23. 被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基がチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、男性不妊症の診断方法。
  24. 増幅した断片を制限酵素BglIで切断することを特徴とする、請求項23に記載の診断方法。
  25. 配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に記載のポリヌクレオチドを用いて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの一部を増幅することを特徴とする、請求項23又は24に記載の診断方法。
  26. 被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換しているかどうかおよび/または該ポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、請求項15に記載の検査方法。
  27. 被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換しているかどうかおよび/または該ポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれかにおいてチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、男性不妊症の診断方法。
  28. 被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかおよび/または該ポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、請求項15に記載の検査方法。
  29. 被検者からDNAを得て、該DNAから配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、被検者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかおよび/または該ポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする、男性不妊症の診断方法。
  30. 被験者からDNAを得て、該DNAから配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5に記載のポリヌクレオチドを用いて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、該増幅されたDNA部分配列と配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9に記載のポリヌクレオチドを用いて該被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定し、他方、該増幅されたDNA部分配列を制限酵素BglIで切断することにより該被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする請求項15に記載の検査方法。
  31. 被験者からDNAを得て、該DNAから配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5に記載のポリヌクレオチドを用いて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目の塩基および/または779番目の塩基を少なくとも含む部分配列を増幅し、該増幅された部分配列と配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9に記載のポリヌクレオチドを用いて該被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの752番目のアデニンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定し、他方、該増幅されたDNA部分配列を制限酵素BglIで切断することにより該被験者のDNAにおいて配列番号1に記載のポリヌクレオチドの779番目のシトシンに相当する塩基が対立遺伝子のいずれにおいてもチミンに置換しているかどうかを同定することを特徴とする診断方法。
  32. 請求項30に記載の検査方法で用いられる検査用キット。
  33. 請求項31に記載の診断方法で用いられる診断用キット
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