JP2004340266A - ころ軸受用保持器およびその製造方法 - Google Patents

ころ軸受用保持器およびその製造方法 Download PDF

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Yukihisa Tsumori
幸久 津森
Takuya Ozu
琢也 小津
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【課題】ころの収納本数を減らすことなく、もみ抜き保持器の柱部の強度を十分に確保して、その疲労寿命を延長することである。
【解決手段】ドリル加工によるポケット6の4隅におけるぬすみ7の形成を、柱部5の中心線5aを基準として行い、各柱部5の根元断面を矩形形状とすることにより、保持器1がころのピッチ円直径から大きく内径側へ偏って設計されるものであっても、柱部5の強度を制約する根元の断面積を大きくできるようにし、ころの収納本数を減らすことなく柱部5の強度を十分に確保して、保持器1の疲労寿命を延長できるようにした。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ころを収納するポケットを切削加工で形成するころ軸受用保持器と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
円周方向に柱部で区画された各ポケットを切削加工で形成するころ軸受用保持器(もみ抜き保持器)は、まず予備加工として、各ポケットの4隅で各柱部の根元となる部位にドリルでぬすみを形成したのち、各ポケットの4辺が切削加工で形成されている。従来、この予備加工のぬすみを形成する際には、図5(a)、(b)に示すように、ポケット6の中心線6aを基準として、ポケット6の4隅となる部位に、順次ドリル8を外径側から押し当ててぬすみ7を形成している。このため、ぬすみ7が形成された柱部5の根元断面は、内径側に狭まる台形形状となっている。
【0003】
このようなもみ抜き保持器には、柱部全体の断面も根元と同様に内径側が狭まる台形形状としたものや(例えば、特許文献1参照。)、柱部の側面を凹状の円弧面に形成したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
一方、ころ軸受用保持器には内輪案内で使用されるものがある。このような保持器は、内輪側にころ案内用の鍔を有するころ軸受に多く用いられ、その内径が内輪鍔との間で僅かな案内隙間を形成するように、ころのピッチ円直径を基準として内径側へ大きく偏らせて設計されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−213237号公報(第1図)
【特許文献2】
特開平11−218135号公報(第2−3頁、第2図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のもみ抜き保持器は、ぬすみの形成された柱部の根元断面が内径側へ狭まる台形形状となっているので、特に、内輪案内で使用されるものは、ころのピッチ円直径から大きく偏った内径側で柱部の根元幅が著しく狭くなって、柱部の強度を十分に確保できなくなり、疲労寿命が短くなる問題がある。このため、従来は、ころの収納本数を減らして、柱部の幅を全体的に広くするようにしており、同一の軸受寸法に対する定格荷重が小さく制約される問題があった。
【0007】
そこで、この発明の課題は、ころの収納本数を減らすことなく、もみ抜き保持器の柱部の強度を十分に確保して、その疲労寿命を延長することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明のころ軸受用保持器は、内輪と外輪の間に配列されるころを収納する複数のポケットが円周方向に柱部で区画され、前記各ポケットの4隅で前記各柱部の根元にぬすみが形成されて、前記各ポケットの4辺が切削加工で形成されたころ軸受用保持器において、前記ぬすみが形成された各柱部の根元断面を矩形形状とした構成を採用した。
【0009】
すなわち、ぬすみが形成された保持器の各柱部の根元断面を矩形形状とすることにより、保持器がころのピッチ円直径から大きく内径側へ偏って設計されるものであっても、各柱部根元断面の内径側の幅が狭まらないようにし、柱部の強度を制約する根元の断面積を大きく確保できるようにした。
【0010】
前記保持器は、内輪案内で使用されるものに好適である。
【0011】
また、この発明のころ軸受用保持器の製造方法は、内輪と外輪の間に配列されるころを収納する複数のポケットが円周方向に柱部で区画され、前記各ポケットの4隅で前記各柱部の根元にドリル加工でぬすみが形成されて、前記各ポケットの4辺が切削加工で形成されるころ軸受用保持器の製造方法において、前記ドリル加工によるぬすみの形成を、前記柱部の中心線を基準として行い、このぬすみが形成される各柱部の根元断面を矩形形状とする方法を採用した。
【0012】
すなわち、本発明の実施形態を説明する後の図4(a)、(b)に示すように、予備加工におけるぬすみ7の形成を、柱部5の中心線5aを基準として、ポケット6の4隅となる部位に、順次ドリル8を外径側から押し当てて行うようにすることにより、ぬすみ7が形成される柱部5の根元断面を矩形形状とし、柱部5の強度を制約する根元の断面積を大きく確保できるようにした。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図4に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1および図2は、本発明に係るもみ抜き保持器1を用いたころ軸受を示す。このころ軸受は、内輪2と外輪3の間に配列された複数のころ4が、円周方向に柱部5で区画された各ポケット6に収納され、その端面を内輪2の鍔2aで案内されるようになっている。保持器1は、その内径が内輪2の鍔2aとの間で僅かな隙間を形成して内輪2で案内されるように、ころ4のピッチ円直径Dを基準として内径側へ大きく偏らせて設計されている。
【0014】
前記ポケット6の4隅の各柱部5の根元には、ポケット6の4辺を切削加工するための予備加工であるぬすみ7が形成されており、図3(a)に示すように、ぬすみ7が形成された各柱部5の根元断面は、後述するドリル加工方法により、矩形形状に形成されている。図3(b)に示すように、各柱部5のその他の部分は、切削加工により側面が円弧状に形成されている。
【0015】
図4(a)、(b)は、前記ぬすみ7を形成するドリル加工方法を示す。このドリル加工方法では、ドリル8が柱部5の中心線5aを基準として、保持器1の外径側からポケット6の4隅となる部位に順次押し当てられ、柱部5の根元となる部位の断面が矩形形状に形成される。このドリル加工方法は、図5(a)、(b)に示した従来の方法と加工工数は同じであるが、加工部位が基準線である柱部5の中心線5aに近く、基準線からドリル8の移動量が少ないので、ドリル8の操作時間を短縮でき、かつ、その加工位置の設定精度も向上させることができる。
【0016】
上述した実施形態では、各柱部の根元以外の部分の側面を円弧状としたが、これらの根元以外の部分の断面は、台形形状や矩形形状としてもよい。また、本発明に係るころ軸受用保持器は、円筒ころ軸受用のものに限定されることはなく、円錐ころ軸受用のものにも適用することができる。
【0017】
【実施例】
実施例および比較例として、直径54mmのころを24本収納し、ころのピッチ円直径510mm、肉厚25mmの銅合金製(CAC301)もみ抜き保持器を用意した。実施例の保持器は、上記実施形態のもののように各柱部の根元断面が矩形形状で、その根元幅は10.524mmとされており、断面積は263.0mmである。比較例の保持器は、各柱部の根元断面が台形形状で、その根元幅は外径下底側12.888mm、内径上底側6.320mmとされており、断面積は240.0mmである。
【0018】
上記実施例と比較例の各保持器について、文献「金属材料疲労強度の設計資料」I(改定第2版、日本機械学会発行、p.38〜95)に記載された銅および銅合金の両振平面曲げS−N線図を用いて、疲労寿命を算出した。銅合金CAC301の破断強度σは44kgf以上であるので、σ=45kgfのS−N線図を採用した。
【0019】
両振平面曲げの応力σと、この応力σでの疲労寿命L(繰り返し数N)は、それぞれ次式で表される。
σ = M/Z (1)
L = k・σ α (2)
ここに、Mは曲げモーメント、Zは断面係数、k、αは定数である。
【0020】
また、上記S−N線図より、L=10のときのσは23kgf/mm、L=10のときのσは12.5kgf/mmと読み取れるので、これらの値を(2)式に代入することにより、α=7.55と求められる。
【0021】
一方、実施例の柱部根元の断面係数Zは462mm、比較例の柱部根元の断面係数Zは320mmであり、実施例の断面係数Zは比較例の約1.44倍となっている。これらの各断面係数Z、Zの値と定数αの値を(1)式と(2)式に代入して整理することにより、実施例と比較例のものの各疲労寿命L、Lはそれぞれ次式で表される。
= k・(M/462)−7.55 (3)
= k・(M/320)−7.55 (4)
(3)式および(4)式より、実施例と比較例のものの寿命比L/Lは次式のように求められる。
/L=16.0 (5)
したがって、実施例の保持器は、従来の比較例のものの約16倍の疲労寿命を有することが推定される。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、この発明のころ軸受用保持器は、ぬすみが形成された各柱部の根元断面を矩形形状とすることにより、保持器がころのピッチ円直径から大きく内径側へ偏って設計されるものであっても、各柱部根元断面の内径側の幅が狭まらずに、柱部の強度を制約する根元の断面積を大きくするようにしたので、ころの収納本数を減らすことなく、もみ抜き保持器の柱部の強度を十分に確保して、その疲労寿命を延長することができる。
【0023】
また、この発明のころ軸受用保持器の製造方法は、ドリル加工によるぬすみの形成を、柱部の中心線を基準として行うようにしたので、ぬすみが形成される柱部の根元断面を矩形形状として、柱部の強度を制約する根元の断面積を大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の保持器を用いたころ軸受を示す縦断面図
【図2】図1の保持器のポケット部分を示す平面図
【図3】aは図2のIIIa−IIIa線に沿った断面図、bは図2のIIIb−IIIb線に沿った断面図
【図4】aは図2のポケット4隅にぬすみを形成するドリル加工方法を説明する平面図、bはaの側面図
【図5】aはポケット4隅にぬすみを形成する従来のドリル加工方法を説明する平面図、bはaの側面図
【符号の説明】
1 保持器
2 内輪
2a 鍔
3 外輪
4 ころ
5 柱部
5a 中心線
6 ポケット
7 ぬすみ
8 ドリル

Claims (3)

  1. 内輪と外輪の間に配列されるころを収納する複数のポケットが円周方向に柱部で区画され、前記各ポケットの4隅で前記各柱部の根元にぬすみが形成されて、前記各ポケットの4辺が切削加工で形成されたころ軸受用保持器において、前記ぬすみが形成された各柱部の根元断面を矩形形状としたことを特徴とするころ軸受用保持器。
  2. 前記保持器が内輪案内で使用されるものである請求項1に記載のころ軸受用保持器。
  3. 内輪と外輪の間に配列されるころを収納する複数のポケットが円周方向に柱部で区画され、前記各ポケットの4隅で前記各柱部の根元にドリル加工でぬすみが形成されて、前記各ポケットの4辺が切削加工で形成されるころ軸受用保持器の製造方法において、前記ドリル加工によるぬすみの形成を、前記柱部の中心線を基準として行い、このぬすみが形成される各柱部の根元断面を矩形形状とすることを特徴とするころ軸受用保持器の製造方法。
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