JP2004340033A - ドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出する。
【解決手段】S2では掃気ポンプの駆動抵抗のサンプリング値の各々がメモリ内に記憶される。S4ではサンプリング値の平均値Tave(n)が算出され、S5で前回の平均値Tave(n−1)と今回の平均値Tave(n)との差が所定値X1より大きいと判定された場合は、潤滑油が劣化していると判定される。そして、S8でサンプリング値の標準偏差σTが所定値X3より大きいと判定された場合は、ピストンリングが劣化していると判定される。また、S11でサンプリング値の傾きATが所定値X4より大きいと判定された場合は、掃気ポンプに異物のかみ込みや焼き付きが発生していると判定される。
【選択図】 図4
【解決手段】S2では掃気ポンプの駆動抵抗のサンプリング値の各々がメモリ内に記憶される。S4ではサンプリング値の平均値Tave(n)が算出され、S5で前回の平均値Tave(n−1)と今回の平均値Tave(n)との差が所定値X1より大きいと判定された場合は、潤滑油が劣化していると判定される。そして、S8でサンプリング値の標準偏差σTが所定値X3より大きいと判定された場合は、ピストンリングが劣化していると判定される。また、S11でサンプリング値の傾きATが所定値X4より大きいと判定された場合は、掃気ポンプに異物のかみ込みや焼き付きが発生していると判定される。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライサンプ給油式エンジンの異常を判定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
レーシングカーの高出力エンジン等のように、エンジン内の各摺動部の負荷が大きく安定した潤滑油の供給を必要とするものには、ドライサンプ給油式が多く採用されている。この従来のドライサンプ給油式エンジンの一例が特許文献1に開示されている。この従来のエンジンにおいては、クランク室の外部に潤滑油を貯溜するタンクを設け、この潤滑油を供給ポンプによりエンジン内の各摺動部に供給するとともに、クランク室内の下部に落下した潤滑油を掃気ポンプによりタンク内に戻している。そして、クランク室内のブローバイガスを吸気管に還流するエンジン側還流通路と、タンク内のブローバイガスを吸気管に還流するタンク側還流通路と、新気をタンク内に導入する新気導入通路と、を設けている。これによって、潤滑油の劣化の防止を図っている。
【0003】
本発明は、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出できるドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置を提供することを目的とする。また、ポンプの異常検出装置の一例として、特許文献2,3に示すものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
実公平6−10110号公報
【特許文献2】
特開平8−219605号公報
【特許文献3】
特開2000−54836号公報
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、第1の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、クランク室外のタンク内に貯溜された潤滑油を供給ポンプによりエンジン本体の摺動部に供給し、クランク室内の潤滑油を掃気ポンプにより該タンク内に貯溜させるドライサンプ給油式エンジンの異常を判定する装置であって、掃気ポンプの駆動抵抗を検出する駆動抵抗検出手段と、該駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジンの異常を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、掃気ポンプの駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジンの異常を判定することにより、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出することができる。
【0007】
第2の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1の本発明に記載の装置であって、前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗が所定範囲内にない場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、掃気ポンプの駆動抵抗が所定範囲内にあるか否かを判定することにより、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出することができる。
【0009】
第3の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1または第2の本発明に記載の装置であって、前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗の時間変化の傾きが所定範囲内にない場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、掃気ポンプの駆動抵抗の時間変化の傾きが所定範囲内にあるか否かを判定することにより、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出することができる。
【0011】
第4の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜3の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗の変動量が所定値より大きい場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、掃気ポンプの駆動抵抗の変動量が所定値より大きいか否かを判定することにより、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出することができる。
【0013】
第5の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜4の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記潤滑油の温度を検出する温度検出手段を備え、前記判定手段は、該温度検出手段により検出した潤滑油の温度が所定値以上のときに、ドライサンプ給油式エンジンの異常を判定することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、潤滑油の温度が所定値以上のときに、ドライサンプ給油式エンジンの異常を判定することにより、潤滑油の粘度が安定した状態で異常判定を行うことができるので、異常判定精度を向上させることができる。
【0015】
第6の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜5の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記掃気ポンプはモータによって駆動され、前記駆動抵抗検出手段は、該モータに流れる電流に基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、モータに流れる電流に基づいて掃気ポンプの駆動抵抗を検出することにより、掃気ポンプの駆動抵抗を簡単な構成で検出することができる。
【0017】
第7の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜5の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記掃気ポンプはモータによって駆動され、前記駆動抵抗検出手段は、該モータの回転速度に基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、モータの回転速度に基づいて掃気ポンプの駆動抵抗を検出することにより、掃気ポンプの駆動抵抗を簡単な構成で検出することができる。
【0019】
第8の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜5の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記掃気ポンプは、ドライサンプ給油式エンジンあるいはモータによって駆動軸を介して駆動され、前記駆動抵抗検出手段は、該駆動軸の捩れに基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、駆動軸の捩れに基づいて掃気ポンプの駆動抵抗を検出することにより、掃気ポンプの駆動抵抗を簡単な構成で検出することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置を含む車両の構成の概略を示す図である。図1に示す構成を有する車両は、ドライサンプ給油式エンジン10、コントロールユニット40及び警告装置50を備えている。そして、ドライサンプ給油式エンジン10は、エンジン本体12、供給ポンプ14、タンク16及び掃気ポンプ18を備えている。
【0023】
供給ポンプ14は、タンク16内に貯溜されている潤滑油を吸い込んでメインギャラリへ供給する。このメインギャラリへ供給された潤滑油がエンジン本体12内の各摺動部に供給されて各摺動部の潤滑が行われる。各摺動部に供給された潤滑油は、その後、エンジン本体12のクランク室20内の下部へ落下する。
【0024】
掃気ポンプ18は、クランク室20内の下部へ落下した潤滑油を吸い込み、この潤滑油をタンク16内に貯溜させる。このとき、燃焼室26から漏れるブローバイガスも掃気ポンプ18により潤滑油とともに吸い込まれる。
【0025】
タンク16は、クランク室20外に設けられており、掃気ポンプ18から供給される潤滑油を貯溜する。このとき、掃気ポンプ18から供給される潤滑油にはブローバイガスが混ざっているため、タンク16内に設けられた気液分離デバイス22により潤滑油とブローバイガスとが分離されてから、潤滑油がタンク16内に貯溜される。一方、気液分離デバイス22により分離されたブローバイガスは、PCVバルブ24を介して吸気管28に還流される。以上の動作によって潤滑油の循環が行われる。
【0026】
また、掃気ポンプ18の出口には、潤滑油の温度を検出するための温度センサ32が設けられている。温度センサ32の検出信号は、コントロールユニット40に入力される。
【0027】
コントロールユニット40は、後述する方法によりドライサンプ給油式エンジン10の異常判定を行う。そして、コントロールユニット40は、ドライサンプ給油式エンジン10に異常が発生していると判定した場合は、異常発生を示す信号を警告装置50へ出力する。さらに、コントロールユニット40は、後述するように、掃気ポンプ18をモータにより駆動し、かつモータの回転速度の制御を行う場合は、モータの駆動制御も行う。
【0028】
警告装置50は、車室内に設けられており、表示装置52及び音声出力装置54を備えている。表示装置52は、エンジン警告灯56及び油圧警告灯58を備えており、ドライサンプ給油式エンジン10に異常が発生していると判定された場合は、警告灯の点灯によって操作者に異常を知らせる。音声出力装置54は、ドライサンプ給油式エンジン10に異常が発生していると判定された場合は、音声によって操作者に異常を知らせる。
【0029】
本実施形態においては、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出し、この検出した掃気ポンプ18の駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジン10の異常判定を行う。以下、掃気ポンプ18の駆動抵抗の検出方法について説明する。
【0030】
図2に示す構成は、回転速度制御ユニット42、モータ44及び電流センサ46を備えており、掃気ポンプ18をモータ44により駆動する場合を示している。回転速度制御ユニット42は、電源電圧とモータ44との間に設けられている。そして、回転速度制御ユニット42には、コントロールユニット40からのモータ44の目標回転速度に応じた制御指令値が入力され、この制御指令値に基づいてモータ44の回転速度の制御が行われる。電流センサ46は、モータ44に流れる電流を検出する。電流センサ46の検出信号は、コントロールユニット40に入力される。
【0031】
ここで、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変化に応じてモータ44に流れる電流も変化する。したがって、モータ44に流れる電流を電流センサ46により検出することで、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することができる。なお、モータ44に流れる電流に基づいて掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出するときは、モータ44がほぼ所定の定常駆動制御状態にあるとき、すなわち回転速度制御ユニット42に入力される制御指令値が所定の一定値であるときが好ましいが、モータ44が定常駆動状態にないときでも、モータ44に流れる電流及び回転速度制御ユニット42に入力される制御指令値に基づいて、掃気ポンプ18の駆動抵抗をコントロールユニット40内で検出することができる。
【0032】
また、モータ44の回転速度の制御を行わずにモータ44を駆動する場合は、回転速度制御ユニット42を省略して略一定の電源電圧をそのままモータ44に印加してもよい。この場合のモータ44は、ほぼ所定の定常駆動状態となる。
【0033】
さらに、回転速度制御ユニット42を省略してモータ44の回転速度の制御を行わない場合、あるいはモータ44の回転速度のフィードバック制御を行わない場合は、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変化に応じてモータ44の回転速度も変化する。したがって、これらの場合は、モータ44に流れる電流を電流センサ46により検出する代わりにモータ44の回転速度を回転速度センサにより検出することで、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出してもよい。このように、モータ44の回転速度に基づいても掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することができる。
【0034】
一方、図3に示す構成は、伝達機構34、駆動軸36及び歪センサ38を備えており、掃気ポンプ18をエンジン本体12内のクランク軸の回転を利用して駆動する場合を示している。伝達機構34は、例えばギヤやチェーンを用いてクランク軸のトルクの一部を駆動軸36へ伝達する。駆動軸36は掃気ポンプ18と連結されており、クランク軸のトルクの一部が伝達機構34及び駆動軸36を介して掃気ポンプ18に伝達されることで掃気ポンプ18が駆動される。歪センサ38は、駆動軸36に付けられており、駆動軸36の捩れを検出する。歪センサ38の検出信号は、図示しないスリップリングを介してコントロールユニット40に入力される。
【0035】
ここで、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変化に応じて駆動軸36の捩れも変化する。したがって、駆動軸36の捩れを歪センサ38により検出することで、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することができる。なお、駆動軸36の捩れに基づいて掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出するときは、ドライサンプ給油式エンジン10の出力トルクがほぼ所定の定常状態にあるときが好ましいが、ドライサンプ給油式エンジン10の出力トルクが定常状態にないときでも、駆動軸36の捩れ、スロットル開度及び機関回転速度に基づいて、掃気ポンプ18の駆動抵抗をコントロールユニット40内で検出することができる。
【0036】
同様に、掃気ポンプ18をモータ44により駆動する場合でも、掃気ポンプ18とモータ44とを連結する駆動軸の捩れに基づいて、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することができる。
【0037】
次に、コントロールユニット40内で実行されるドライサンプ給油式エンジン10の異常判定ルーチンについて、図4に示すフローチャートを用いて説明する。このルーチンは、ドライサンプ給油式エンジン10が始動されたときから停止されるときまで実行される。
【0038】
まずステップ(以下Sとする)1においては、温度センサ32により検出した潤滑油の温度が所定値以上(例えば80℃以上)であるか否かが判定される。S1の判定結果がNOの場合は、潤滑油の粘度が不安定であるため判定精度が低下するものと判断し、まだ異常判定を行わない。そして、この判定結果がYESになるまでS1の判定が繰り返される。一方、S1の判定結果がYESの場合はS2に進む。
【0039】
S2においては、掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値の各々をメモリ内に記憶し、その後S3に進む。ここでは、一例として、約10秒間における20点のサンプリング値をT1〜T20としてメモリ内に記憶するものとするが、メモリ内に記憶する駆動抵抗のサンプリング値の条件については任意に設定することができる。なお、掃気ポンプ18の駆動抵抗については、前述した方法により検出することができる。
【0040】
S3においては、車両が所定走行距離に達したか否かが判定される。ここでの所定走行距離については、例えば1000kmごとに設定される。S3の判定結果がNOの場合は、後述するS4〜S6による異常判定を行わずにS7に進む。
一方、S3の判定結果がYESの場合はS4に進む。また、ここでは、所定走行距離の代わりに所定時間経過したか否かを判定してもよい。この場合も判定結果がNOの場合はS7に進み、判定結果がYESの場合はS4に進む。
【0041】
S4においては、S2でメモリ内に記憶された掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20から、その平均値が算出される。算出された平均値は、Tave(n)としてメモリ内に記憶される。ここで、Tave(n)は今回メモリ内に記憶される平均値を示し、Tave(n−1)は前回メモリ内に記憶された平均値を示す。その後、S5に進む。
【0042】
S5においては、(Tave(n−1)−Tave(n))の値が所定値X1より大きいか否かが判定される。ここで、潤滑油が劣化してせん断抵抗が減少した場合は、潤滑油のせん断抵抗の減少に応じて掃気ポンプ18の駆動抵抗も減少する。したがって、図5に示すように、(Tave(n−1)−Tave(n))の値が所定値X1より大きいか否かを判定することにより、潤滑油の劣化判定を行うことができる。S5の判定結果がNOの場合は、潤滑油が劣化していないものと判定してS7に進む。一方、S5の判定結果がYESの場合は、潤滑油が劣化しているものと判定してS6に進む。
【0043】
なお、S5においては、(Tave(n−1)−Tave(n))の値が所定値X1より大きいか否かを判定する代わりに、平均値Tave(n)が所定値X2より小さいか否かを判定してもよく、この判定によっても潤滑油の劣化判定を行うことができる。この場合も判定結果がNOの場合はS7に進み、判定結果がYESの場合はS6に進む。さらに、これらの判定の際には、駆動抵抗のサンプリング値の平均値の代わりにサンプリング値自体を用いることもできる。
【0044】
S6においては、異常発生を示す信号を警告装置50へ出力して警告装置50内の油圧警告灯58を点灯させることにより、潤滑油が劣化していることを操作者に知らせる。その後、S7に進む。
【0045】
S7においては、S2でメモリ内に記憶された掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20から、その標準偏差σTが算出される。このように、掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20の標準偏差σTを算出することにより、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変動量を算出することができる。
その後、S8に進む。
【0046】
S8においては、S7で算出された標準偏差σTが所定値X3より大きいか否かが判定される。ここで、ピストンリングが摩耗してその機能が不安定になった場合は、ブローバイガスの漏れによってクランク室20内の圧力が変動し、その変動に応じて掃気ポンプ18の駆動抵抗も変動する。したがって、図6に示すように、標準偏差σTが所定値X3より大きいか否かを判定することにより、ピストンリングの劣化判定を行うことができる。S8の判定結果がNOの場合は、ピストンリングが劣化していないものと判定してS10に進む。一方、S8の判定結果がYESの場合は、ピストンリングが劣化しているものと判定してS9に進む。
【0047】
S9においては、異常発生を示す信号を警告装置50へ出力して警告装置50内のエンジン警告灯56を点灯させることにより、操作者にドライサンプ給油式エンジン10の異常を知らせる。その後、S10に進む。
【0048】
S10においては、S2でメモリ内に記憶された掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20から、その線形近似線の傾きATが算出される。その後、S11に進む。
【0049】
S11においては、S10で算出された傾きATが所定値X4より大きいか否かが判定される。ここで、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生した場合は、掃気ポンプ18の駆動抵抗が短時間のうちに増大する。したがって、図7に示すように、傾きATが所定値X4より大きいか否を判定することにより、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生しているか否かの判定を行うことができる。S11の判定結果がNOの場合は、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生していないものと判定してS2に戻り、S2以下の動作を繰り返す。一方、S11の判定結果がYESの場合は、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生しているものと判定してS12に進む。
【0050】
なお、S11においては、傾きATが所定値X4より大きいか否かを判定する代わりに、掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20が所定値X5より小さいか否かを判定してもよく、この判定によっても掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生しているか否かの判定を行うことができる。この場合も判定結果がNOの場合はS2に戻り、判定結果がYESの場合はS12に進む。
【0051】
S12においては、異常発生を示す信号を警告装置50へ出力して警告装置50内のエンジン警告灯56を点灯させることにより、操作者にドライサンプ給油式エンジン10の異常を知らせるとともに、警告装置50内の音声出力装置54により操作者に至急停車するように音声で指示する。そして、S2に戻り、S2以下の動作を繰り返す。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出し、この検出した掃気ポンプ18の駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジン10の異常判定を行うことにより、ドライサンプ給油式エンジン10の異常を早期に検出することができる。
【0053】
そして、掃気ポンプ18の駆動抵抗の距離または時間変化の傾きの低下量が所定値X1より大きいか否かを判定する、あるいは掃気ポンプ18の駆動抵抗が所定値X2より小さいか否かを判定することにより、潤滑油の劣化を早期に検出することができる。
【0054】
さらに、掃気ポンプ18の駆動抵抗の標準偏差σTを算出することにより、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変動量を算出している。そして、この算出した変動量が所定値X3より大きいか否を判定することにより、ピストンリングの摩耗を早期に検出することができる。
【0055】
また、掃気ポンプ18の駆動抵抗の時間変化の傾きの増大量が所定値X4より大きいか否かを判定する、あるいは掃気ポンプ18の駆動抵抗が所定値X5より大きいか否かを判定することにより、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生するのを早期に検出することができる。
【0056】
そして、本実施形態によれば、潤滑油の温度が所定値以上の場合に異常判定を行うことにより、潤滑油の粘度が安定した状態で異常判定を行うことができるので、異常判定の精度を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、モータ44に流れる電流、モータ44の回転速度または駆動軸36の捩れに基づいて掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することにより、掃気ポンプ18の駆動抵抗を簡単な構成で検出することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置を含む車両の構成の概略を示す図である。
【図2】掃気ポンプをモータにより駆動する場合の構成の概略を示す図である。
【図3】掃気ポンプをクランク軸の回転を利用して駆動する場合の構成の概略を示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるドライサンプ給油式エンジンの異常判定ルーチンを説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態におけるドライサンプ給油式エンジンの異常判定方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態におけるドライサンプ給油式エンジンの異常判定方法を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態におけるドライサンプ給油式エンジンの異常判定方法を説明する図である。
【符号の説明】
10 ドライサンプ給油式エンジン、12 エンジン本体、14 供給ポンプ、16 タンク、18 掃気ポンプ、20 クランク室、32 温度センサ、36 駆動軸、38 歪センサ、40 コントロールユニット、44 モータ、46 電流センサ、50 警告装置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライサンプ給油式エンジンの異常を判定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
レーシングカーの高出力エンジン等のように、エンジン内の各摺動部の負荷が大きく安定した潤滑油の供給を必要とするものには、ドライサンプ給油式が多く採用されている。この従来のドライサンプ給油式エンジンの一例が特許文献1に開示されている。この従来のエンジンにおいては、クランク室の外部に潤滑油を貯溜するタンクを設け、この潤滑油を供給ポンプによりエンジン内の各摺動部に供給するとともに、クランク室内の下部に落下した潤滑油を掃気ポンプによりタンク内に戻している。そして、クランク室内のブローバイガスを吸気管に還流するエンジン側還流通路と、タンク内のブローバイガスを吸気管に還流するタンク側還流通路と、新気をタンク内に導入する新気導入通路と、を設けている。これによって、潤滑油の劣化の防止を図っている。
【0003】
本発明は、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出できるドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置を提供することを目的とする。また、ポンプの異常検出装置の一例として、特許文献2,3に示すものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
実公平6−10110号公報
【特許文献2】
特開平8−219605号公報
【特許文献3】
特開2000−54836号公報
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、第1の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、クランク室外のタンク内に貯溜された潤滑油を供給ポンプによりエンジン本体の摺動部に供給し、クランク室内の潤滑油を掃気ポンプにより該タンク内に貯溜させるドライサンプ給油式エンジンの異常を判定する装置であって、掃気ポンプの駆動抵抗を検出する駆動抵抗検出手段と、該駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジンの異常を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、掃気ポンプの駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジンの異常を判定することにより、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出することができる。
【0007】
第2の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1の本発明に記載の装置であって、前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗が所定範囲内にない場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、掃気ポンプの駆動抵抗が所定範囲内にあるか否かを判定することにより、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出することができる。
【0009】
第3の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1または第2の本発明に記載の装置であって、前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗の時間変化の傾きが所定範囲内にない場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、掃気ポンプの駆動抵抗の時間変化の傾きが所定範囲内にあるか否かを判定することにより、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出することができる。
【0011】
第4の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜3の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗の変動量が所定値より大きい場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、掃気ポンプの駆動抵抗の変動量が所定値より大きいか否かを判定することにより、ドライサンプ給油式エンジンの異常を早期に検出することができる。
【0013】
第5の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜4の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記潤滑油の温度を検出する温度検出手段を備え、前記判定手段は、該温度検出手段により検出した潤滑油の温度が所定値以上のときに、ドライサンプ給油式エンジンの異常を判定することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、潤滑油の温度が所定値以上のときに、ドライサンプ給油式エンジンの異常を判定することにより、潤滑油の粘度が安定した状態で異常判定を行うことができるので、異常判定精度を向上させることができる。
【0015】
第6の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜5の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記掃気ポンプはモータによって駆動され、前記駆動抵抗検出手段は、該モータに流れる電流に基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、モータに流れる電流に基づいて掃気ポンプの駆動抵抗を検出することにより、掃気ポンプの駆動抵抗を簡単な構成で検出することができる。
【0017】
第7の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜5の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記掃気ポンプはモータによって駆動され、前記駆動抵抗検出手段は、該モータの回転速度に基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、モータの回転速度に基づいて掃気ポンプの駆動抵抗を検出することにより、掃気ポンプの駆動抵抗を簡単な構成で検出することができる。
【0019】
第8の本発明に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置は、第1〜5の本発明のいずれか1に記載の装置であって、前記掃気ポンプは、ドライサンプ給油式エンジンあるいはモータによって駆動軸を介して駆動され、前記駆動抵抗検出手段は、該駆動軸の捩れに基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、駆動軸の捩れに基づいて掃気ポンプの駆動抵抗を検出することにより、掃気ポンプの駆動抵抗を簡単な構成で検出することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置を含む車両の構成の概略を示す図である。図1に示す構成を有する車両は、ドライサンプ給油式エンジン10、コントロールユニット40及び警告装置50を備えている。そして、ドライサンプ給油式エンジン10は、エンジン本体12、供給ポンプ14、タンク16及び掃気ポンプ18を備えている。
【0023】
供給ポンプ14は、タンク16内に貯溜されている潤滑油を吸い込んでメインギャラリへ供給する。このメインギャラリへ供給された潤滑油がエンジン本体12内の各摺動部に供給されて各摺動部の潤滑が行われる。各摺動部に供給された潤滑油は、その後、エンジン本体12のクランク室20内の下部へ落下する。
【0024】
掃気ポンプ18は、クランク室20内の下部へ落下した潤滑油を吸い込み、この潤滑油をタンク16内に貯溜させる。このとき、燃焼室26から漏れるブローバイガスも掃気ポンプ18により潤滑油とともに吸い込まれる。
【0025】
タンク16は、クランク室20外に設けられており、掃気ポンプ18から供給される潤滑油を貯溜する。このとき、掃気ポンプ18から供給される潤滑油にはブローバイガスが混ざっているため、タンク16内に設けられた気液分離デバイス22により潤滑油とブローバイガスとが分離されてから、潤滑油がタンク16内に貯溜される。一方、気液分離デバイス22により分離されたブローバイガスは、PCVバルブ24を介して吸気管28に還流される。以上の動作によって潤滑油の循環が行われる。
【0026】
また、掃気ポンプ18の出口には、潤滑油の温度を検出するための温度センサ32が設けられている。温度センサ32の検出信号は、コントロールユニット40に入力される。
【0027】
コントロールユニット40は、後述する方法によりドライサンプ給油式エンジン10の異常判定を行う。そして、コントロールユニット40は、ドライサンプ給油式エンジン10に異常が発生していると判定した場合は、異常発生を示す信号を警告装置50へ出力する。さらに、コントロールユニット40は、後述するように、掃気ポンプ18をモータにより駆動し、かつモータの回転速度の制御を行う場合は、モータの駆動制御も行う。
【0028】
警告装置50は、車室内に設けられており、表示装置52及び音声出力装置54を備えている。表示装置52は、エンジン警告灯56及び油圧警告灯58を備えており、ドライサンプ給油式エンジン10に異常が発生していると判定された場合は、警告灯の点灯によって操作者に異常を知らせる。音声出力装置54は、ドライサンプ給油式エンジン10に異常が発生していると判定された場合は、音声によって操作者に異常を知らせる。
【0029】
本実施形態においては、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出し、この検出した掃気ポンプ18の駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジン10の異常判定を行う。以下、掃気ポンプ18の駆動抵抗の検出方法について説明する。
【0030】
図2に示す構成は、回転速度制御ユニット42、モータ44及び電流センサ46を備えており、掃気ポンプ18をモータ44により駆動する場合を示している。回転速度制御ユニット42は、電源電圧とモータ44との間に設けられている。そして、回転速度制御ユニット42には、コントロールユニット40からのモータ44の目標回転速度に応じた制御指令値が入力され、この制御指令値に基づいてモータ44の回転速度の制御が行われる。電流センサ46は、モータ44に流れる電流を検出する。電流センサ46の検出信号は、コントロールユニット40に入力される。
【0031】
ここで、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変化に応じてモータ44に流れる電流も変化する。したがって、モータ44に流れる電流を電流センサ46により検出することで、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することができる。なお、モータ44に流れる電流に基づいて掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出するときは、モータ44がほぼ所定の定常駆動制御状態にあるとき、すなわち回転速度制御ユニット42に入力される制御指令値が所定の一定値であるときが好ましいが、モータ44が定常駆動状態にないときでも、モータ44に流れる電流及び回転速度制御ユニット42に入力される制御指令値に基づいて、掃気ポンプ18の駆動抵抗をコントロールユニット40内で検出することができる。
【0032】
また、モータ44の回転速度の制御を行わずにモータ44を駆動する場合は、回転速度制御ユニット42を省略して略一定の電源電圧をそのままモータ44に印加してもよい。この場合のモータ44は、ほぼ所定の定常駆動状態となる。
【0033】
さらに、回転速度制御ユニット42を省略してモータ44の回転速度の制御を行わない場合、あるいはモータ44の回転速度のフィードバック制御を行わない場合は、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変化に応じてモータ44の回転速度も変化する。したがって、これらの場合は、モータ44に流れる電流を電流センサ46により検出する代わりにモータ44の回転速度を回転速度センサにより検出することで、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出してもよい。このように、モータ44の回転速度に基づいても掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することができる。
【0034】
一方、図3に示す構成は、伝達機構34、駆動軸36及び歪センサ38を備えており、掃気ポンプ18をエンジン本体12内のクランク軸の回転を利用して駆動する場合を示している。伝達機構34は、例えばギヤやチェーンを用いてクランク軸のトルクの一部を駆動軸36へ伝達する。駆動軸36は掃気ポンプ18と連結されており、クランク軸のトルクの一部が伝達機構34及び駆動軸36を介して掃気ポンプ18に伝達されることで掃気ポンプ18が駆動される。歪センサ38は、駆動軸36に付けられており、駆動軸36の捩れを検出する。歪センサ38の検出信号は、図示しないスリップリングを介してコントロールユニット40に入力される。
【0035】
ここで、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変化に応じて駆動軸36の捩れも変化する。したがって、駆動軸36の捩れを歪センサ38により検出することで、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することができる。なお、駆動軸36の捩れに基づいて掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出するときは、ドライサンプ給油式エンジン10の出力トルクがほぼ所定の定常状態にあるときが好ましいが、ドライサンプ給油式エンジン10の出力トルクが定常状態にないときでも、駆動軸36の捩れ、スロットル開度及び機関回転速度に基づいて、掃気ポンプ18の駆動抵抗をコントロールユニット40内で検出することができる。
【0036】
同様に、掃気ポンプ18をモータ44により駆動する場合でも、掃気ポンプ18とモータ44とを連結する駆動軸の捩れに基づいて、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することができる。
【0037】
次に、コントロールユニット40内で実行されるドライサンプ給油式エンジン10の異常判定ルーチンについて、図4に示すフローチャートを用いて説明する。このルーチンは、ドライサンプ給油式エンジン10が始動されたときから停止されるときまで実行される。
【0038】
まずステップ(以下Sとする)1においては、温度センサ32により検出した潤滑油の温度が所定値以上(例えば80℃以上)であるか否かが判定される。S1の判定結果がNOの場合は、潤滑油の粘度が不安定であるため判定精度が低下するものと判断し、まだ異常判定を行わない。そして、この判定結果がYESになるまでS1の判定が繰り返される。一方、S1の判定結果がYESの場合はS2に進む。
【0039】
S2においては、掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値の各々をメモリ内に記憶し、その後S3に進む。ここでは、一例として、約10秒間における20点のサンプリング値をT1〜T20としてメモリ内に記憶するものとするが、メモリ内に記憶する駆動抵抗のサンプリング値の条件については任意に設定することができる。なお、掃気ポンプ18の駆動抵抗については、前述した方法により検出することができる。
【0040】
S3においては、車両が所定走行距離に達したか否かが判定される。ここでの所定走行距離については、例えば1000kmごとに設定される。S3の判定結果がNOの場合は、後述するS4〜S6による異常判定を行わずにS7に進む。
一方、S3の判定結果がYESの場合はS4に進む。また、ここでは、所定走行距離の代わりに所定時間経過したか否かを判定してもよい。この場合も判定結果がNOの場合はS7に進み、判定結果がYESの場合はS4に進む。
【0041】
S4においては、S2でメモリ内に記憶された掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20から、その平均値が算出される。算出された平均値は、Tave(n)としてメモリ内に記憶される。ここで、Tave(n)は今回メモリ内に記憶される平均値を示し、Tave(n−1)は前回メモリ内に記憶された平均値を示す。その後、S5に進む。
【0042】
S5においては、(Tave(n−1)−Tave(n))の値が所定値X1より大きいか否かが判定される。ここで、潤滑油が劣化してせん断抵抗が減少した場合は、潤滑油のせん断抵抗の減少に応じて掃気ポンプ18の駆動抵抗も減少する。したがって、図5に示すように、(Tave(n−1)−Tave(n))の値が所定値X1より大きいか否かを判定することにより、潤滑油の劣化判定を行うことができる。S5の判定結果がNOの場合は、潤滑油が劣化していないものと判定してS7に進む。一方、S5の判定結果がYESの場合は、潤滑油が劣化しているものと判定してS6に進む。
【0043】
なお、S5においては、(Tave(n−1)−Tave(n))の値が所定値X1より大きいか否かを判定する代わりに、平均値Tave(n)が所定値X2より小さいか否かを判定してもよく、この判定によっても潤滑油の劣化判定を行うことができる。この場合も判定結果がNOの場合はS7に進み、判定結果がYESの場合はS6に進む。さらに、これらの判定の際には、駆動抵抗のサンプリング値の平均値の代わりにサンプリング値自体を用いることもできる。
【0044】
S6においては、異常発生を示す信号を警告装置50へ出力して警告装置50内の油圧警告灯58を点灯させることにより、潤滑油が劣化していることを操作者に知らせる。その後、S7に進む。
【0045】
S7においては、S2でメモリ内に記憶された掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20から、その標準偏差σTが算出される。このように、掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20の標準偏差σTを算出することにより、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変動量を算出することができる。
その後、S8に進む。
【0046】
S8においては、S7で算出された標準偏差σTが所定値X3より大きいか否かが判定される。ここで、ピストンリングが摩耗してその機能が不安定になった場合は、ブローバイガスの漏れによってクランク室20内の圧力が変動し、その変動に応じて掃気ポンプ18の駆動抵抗も変動する。したがって、図6に示すように、標準偏差σTが所定値X3より大きいか否かを判定することにより、ピストンリングの劣化判定を行うことができる。S8の判定結果がNOの場合は、ピストンリングが劣化していないものと判定してS10に進む。一方、S8の判定結果がYESの場合は、ピストンリングが劣化しているものと判定してS9に進む。
【0047】
S9においては、異常発生を示す信号を警告装置50へ出力して警告装置50内のエンジン警告灯56を点灯させることにより、操作者にドライサンプ給油式エンジン10の異常を知らせる。その後、S10に進む。
【0048】
S10においては、S2でメモリ内に記憶された掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20から、その線形近似線の傾きATが算出される。その後、S11に進む。
【0049】
S11においては、S10で算出された傾きATが所定値X4より大きいか否かが判定される。ここで、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生した場合は、掃気ポンプ18の駆動抵抗が短時間のうちに増大する。したがって、図7に示すように、傾きATが所定値X4より大きいか否を判定することにより、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生しているか否かの判定を行うことができる。S11の判定結果がNOの場合は、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生していないものと判定してS2に戻り、S2以下の動作を繰り返す。一方、S11の判定結果がYESの場合は、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生しているものと判定してS12に進む。
【0050】
なお、S11においては、傾きATが所定値X4より大きいか否かを判定する代わりに、掃気ポンプ18の駆動抵抗のサンプリング値T1〜T20が所定値X5より小さいか否かを判定してもよく、この判定によっても掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生しているか否かの判定を行うことができる。この場合も判定結果がNOの場合はS2に戻り、判定結果がYESの場合はS12に進む。
【0051】
S12においては、異常発生を示す信号を警告装置50へ出力して警告装置50内のエンジン警告灯56を点灯させることにより、操作者にドライサンプ給油式エンジン10の異常を知らせるとともに、警告装置50内の音声出力装置54により操作者に至急停車するように音声で指示する。そして、S2に戻り、S2以下の動作を繰り返す。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出し、この検出した掃気ポンプ18の駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジン10の異常判定を行うことにより、ドライサンプ給油式エンジン10の異常を早期に検出することができる。
【0053】
そして、掃気ポンプ18の駆動抵抗の距離または時間変化の傾きの低下量が所定値X1より大きいか否かを判定する、あるいは掃気ポンプ18の駆動抵抗が所定値X2より小さいか否かを判定することにより、潤滑油の劣化を早期に検出することができる。
【0054】
さらに、掃気ポンプ18の駆動抵抗の標準偏差σTを算出することにより、掃気ポンプ18の駆動抵抗の変動量を算出している。そして、この算出した変動量が所定値X3より大きいか否を判定することにより、ピストンリングの摩耗を早期に検出することができる。
【0055】
また、掃気ポンプ18の駆動抵抗の時間変化の傾きの増大量が所定値X4より大きいか否かを判定する、あるいは掃気ポンプ18の駆動抵抗が所定値X5より大きいか否かを判定することにより、掃気ポンプ18に異物のかみ込みや焼き付きが発生するのを早期に検出することができる。
【0056】
そして、本実施形態によれば、潤滑油の温度が所定値以上の場合に異常判定を行うことにより、潤滑油の粘度が安定した状態で異常判定を行うことができるので、異常判定の精度を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、モータ44に流れる電流、モータ44の回転速度または駆動軸36の捩れに基づいて掃気ポンプ18の駆動抵抗を検出することにより、掃気ポンプ18の駆動抵抗を簡単な構成で検出することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置を含む車両の構成の概略を示す図である。
【図2】掃気ポンプをモータにより駆動する場合の構成の概略を示す図である。
【図3】掃気ポンプをクランク軸の回転を利用して駆動する場合の構成の概略を示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるドライサンプ給油式エンジンの異常判定ルーチンを説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態におけるドライサンプ給油式エンジンの異常判定方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態におけるドライサンプ給油式エンジンの異常判定方法を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態におけるドライサンプ給油式エンジンの異常判定方法を説明する図である。
【符号の説明】
10 ドライサンプ給油式エンジン、12 エンジン本体、14 供給ポンプ、16 タンク、18 掃気ポンプ、20 クランク室、32 温度センサ、36 駆動軸、38 歪センサ、40 コントロールユニット、44 モータ、46 電流センサ、50 警告装置。
Claims (8)
- クランク室外のタンク内に貯溜された潤滑油を供給ポンプによりエンジン本体の摺動部に供給し、クランク室内の潤滑油を掃気ポンプにより該タンク内に貯溜させるドライサンプ給油式エンジンの異常を判定する装置であって、
掃気ポンプの駆動抵抗を検出する駆動抵抗検出手段と、
該駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗に基づいてドライサンプ給油式エンジンの異常を判定する判定手段と、を備えることを特徴とするドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置。 - 請求項1に記載のドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置であって、
前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗が所定範囲内にない場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とするドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置。 - 請求項1または2に記載のドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置であって、
前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗の時間変化の傾きが所定範囲内にない場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とするドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置。 - 請求項1〜3のいずれか1に記載のドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置であって、
前記判定手段は、前記駆動抵抗検出手段により検出した掃気ポンプの駆動抵抗の変動量が所定値より大きい場合は、ドライサンプ給油式エンジンに異常が発生していると判定することを特徴とするドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置。 - 請求項1〜4のいずれか1に記載のドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置であって、
前記潤滑油の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記判定手段は、該温度検出手段により検出した潤滑油の温度が所定値以上のときに、ドライサンプ給油式エンジンの異常を判定することを特徴とするドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置。 - 請求項1〜5のいずれか1に記載のドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置であって、
前記掃気ポンプはモータによって駆動され、
前記駆動抵抗検出手段は、該モータに流れる電流に基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とするドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置。 - 請求項1〜5のいずれか1に記載のドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置であって、
前記掃気ポンプはモータによって駆動され、
前記駆動抵抗検出手段は、該モータの回転速度に基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とするドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置。 - 請求項1〜5のいずれか1に記載のドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置であって、
前記掃気ポンプは、ドライサンプ給油式エンジンあるいはモータによって駆動軸を介して駆動され、
前記駆動抵抗検出手段は、該駆動軸の捩れに基づいて前記掃気ポンプの駆動抵抗を検出することを特徴とするドライサンプ給油式エンジンの異常判定装置。
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Cited By (2)
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JP2009203916A (ja) * | 2008-02-28 | 2009-09-10 | Honda Motor Co Ltd | オイル劣化判定装置 |
JP2010138817A (ja) * | 2008-12-11 | 2010-06-24 | Mitsubishi Motors Corp | エンジンのオイル循環システム |
-
2003
- 2003-05-15 JP JP2003137859A patent/JP2004340033A/ja active Pending
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