JP2004339779A - トンネル坑内の換気方法及び換気装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】切削途中のトンネル坑T内の、切羽面Tfの近傍位置から坑口Tr方向に延在するように排気ダクト21を配設するとともに、坑口Trから切羽方向に延在するように給気ダクト11を配設し、給気ダクト11を用いて、トンネル坑T外から吸入した新鮮空気を、排気ダクト21の切羽方向端部側よりも坑口Tr側の所定位置から、トンネル坑Tの内壁面に沿って横断方向のうちの一方向に吹き出して給気するとともに、排気ダクト21を用いて、切羽方向端部側から吸入した切羽近傍位置の空気を、前記所定位置よりも坑口Tr側へと排気するようにした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル坑の切削途中において、このトンネル坑内を換気するための換気方法及び換気装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
切削途中のトンネル坑内、特に切羽の近傍位置においては、地山を切削することによって発生した多量の粉塵が存在している。トンネル坑内に粉塵が充満したままでは、作業環境上好ましくなく、また機械等の運転・保守にも悪影響を及ぼすおそれがあるため、粉塵を含んだ空気をトンネル坑外に排出するとともに、トンネル坑外の新鮮空気を取り入れて、換気を行う必要がある。これまでのトンネル坑内の換気方法は、空気を送り込む等してトンネル坑内の粉塵を希釈した後に、トンネル坑外へと排出することを基本としていた。しかしこうした換気方法では、粉塵が希釈されることで、切羽側等といった特定箇所への粉塵の充満は防止されるが、トンネル坑内全体に粉塵が拡散し易くなってしまう。すなわち、希釈されたとはいえ、粉塵がトンネル坑内全体に行き渡ってしまうので、作業環境の改善効果はさほど高いとは言えなかった。
【0003】
こうした従来の問題点を解決するものとして、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。この文献に記載の換気方法においては、切羽から坑口側に離間した位置から前記切羽に向けて新気を噴出させることにより、前記切羽近傍に、トンネル坑内を塞ぐようにエアカーテンを形成するとともに、前記切羽近傍の空気を吸引することにより、前記エアカーテンを前記切羽に向けて移動させつつ前記切羽近傍の空気を排出するようにしている。これにより、切羽において発生する粉塵を、エアカーテンによって切羽近傍に封じ込めてその飛散領域を狭めることができ、かつ、粉塵の吸引効率を高めることができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−349200号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、こうした換気方法においては、給気方向を切羽方向として、新気を切羽面に向けて吹き出すようにしている。このような給気方法であると、トンネル坑内の径方向(横断方向)において空気流の流速分布にムラが発生してしまい、万遍なく空気流を発生させることが困難であった。すなわち、均一な流れのエアカーテンを形成することは困難であり、トンネル坑内で発生した粉塵の拡散を的確に防止し得るものとは言えなかった。
【0006】
本発明者等は独自に鋭意検討した結果、給気方向を所定に設定して、トンネル坑内に旋回流を発生させれば、より均一な空気層を形成することができ、粉塵の拡散をより的確に防止し得ることを見出した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、トンネル坑内で発生した粉塵の拡散を防止して、作業環境を大幅に改善することのできるトンネル坑内の換気方法及び換気装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、トンネル坑の切削途中に該トンネル坑内を換気するための換気方法であって、前記トンネル坑内の切羽近傍位置から坑口方向に延在するように排気ダクトを配設するとともに、前記トンネル坑の坑口から切羽方向に延在するように給気ダクトを配設し、前記給気ダクトを用いて、前記トンネル坑外から吸入した新鮮空気を、前記排気ダクトの切羽方向端部側よりも坑口側であって、且つ前記排気ダクトの坑口方向端部側よりも切羽側の所定位置から、前記トンネル坑の内壁面に沿って横断方向のうちの一方向に吹き出して給気するとともに、前記排気ダクトを用いて、前記切羽方向端部側から吸入した前記切羽近傍位置の空気を、前記坑口方向端部側から坑口側へと排気することを特徴とする。
【0009】
このように、給気ダクトを用いて、トンネル坑外から吸入した新鮮空気を、排気ダクトの切羽方向端部側よりも坑口側であって、且つ排気ダクトの坑口方向端部側よりも切羽側の所定位置から、トンネル坑内の内壁面に沿って横断方向のうちの一方向に吹き出して給気するようにしているので、給気された新鮮空気は、トンネル坑の内壁面に沿って螺旋状に旋回しながら、切羽方向及び坑口方向の各々に向かって徐々に移動していく。こうした新鮮空気の旋回流によって、トンネル坑内には、坑内空間を切羽方向前方側と後方側とに仕切る空気の層が形成される。すなわち、こうした空気層が形成されることで、切羽近傍位置で発生した多量の粉塵は、坑口側へと拡散することが抑制され、切羽近傍位置に封じ込められる。
そして、粉塵を多量に含む切羽近傍位置の空気を、前記空気層の形成位置である前記所定位置よりも坑口側へと排気するようにしているので、切羽近傍位置の粉塵は迅速且つ的確に除去されて、特定の箇所に粉塵が充満することが防止される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトンネル坑内の換気方法であって、前記新鮮空気の給気量を、前記切羽近傍位置の空気の排気量よりも多く設定することを特徴とする。
【0011】
このように、新鮮空気の給気量を排気量よりも多く設定することで、より幅が厚い空気層を形成することができるとともに、切羽近傍位置の気流の流速分布のムラを少なくして、より均一な流れの空気層を形成することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、トンネル坑の切削途中に該トンネル坑内を換気するための換気装置であって、前記トンネル坑内の切羽近傍位置から坑口方向に延在するように配設され、切羽方向端部側に吸入口が形成されているとともに坑口方向端部側に排出口が形成されている排気ダクトと、前記排気ダクトに連結され、前記排気ダクト内の空気中に含まれる粉塵を除去する集塵機と、前記坑口から切羽方向に、前記吸入口と前記排出口との間の所定位置まで延在するように配設され、該所定位置における前記トンネル坑の内壁面に近接する位置に、該内壁面に沿った横断方向のうちの一方向に開口する吹出口が形成されている給気ダクトとを備え、前記給気ダクトを用いて、前記トンネル坑外から吸入した新鮮空気を、前記排気ダクトの切羽方向端部側よりも坑口側であって、且つ前記排気ダクトの坑口方向端部側よりも切羽側の所定位置から、前記トンネル坑の内壁面に沿って横断方向のうちの一方向に吹き出して給気するとともに、前記排気ダクトを用いて、前記切羽方向端部側から吸入した前記切羽近傍位置の空気を、前記坑口方向端部側から坑口側へと排気することを特徴とする。
【0013】
このようなトンネル坑内の換気装置を用いることで、請求項1又は請求項2に記載のトンネル坑内の換気方法を、好適に実施することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るトンネル坑内の換気方法及び換気装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1(a)及び(b)には、上半の切削途中である馬蹄形断面のトンネル坑Tを示す。これらの図においては、切羽面(切羽)を符号Tfとして、坑口を符号Trとして、各々図示している。このトンネル坑T内には、給気装置10と排気装置20とからなり、トンネル坑T内を換気するための換気装置1が設けられている。
【0015】
給気装置10は、トンネル坑T外の新鮮な空気(新鮮空気)をトンネル坑T内に給気するもので、坑口Trから切羽面Tfの方向(切羽方向)に延在するように配設された給気ダクト11と、給気ダクト11の延在方向途中に連結された給気用送風機12とを備えた構成とされている。また排気装置20は、切羽面Tfの近傍位置(切羽近傍位置)の粉塵を多量に含んだ空気を排気するもので、切羽近傍位置から坑口Trの方向(坑口方向)に延在するように配設された排気ダクト21と、排気ダクト21の延在方向途中に連結された送風集塵機(排気用送風機、集塵機)22とを備えた構成とされている。
【0016】
なおここでは、図1(b)に示すように、トンネル坑Tの内壁面上部側に近接する位置であって図中右側半分の位置に給気装置10が配置されるとともに、内壁面のうちの底面上であって図中左側半分の位置に排気装置20が配置されるようにしているが、トンネル坑T内の横断方向における配置はこれに限定されるものではない。但し後述するように、給気装置10からトンネル坑Tの内壁面に沿って新鮮空気の旋回流を発生させるので、その流れを妨げることがないような配置とする必要がある。そのため、給気装置10と排気装置20とは、横断方向に互いに所定距離離間するように、且つ互いに略平行となるようにして、配設されることが好ましい。
【0017】
給気ダクト11及び排気ダクト21は、ともに、中空箱形をなして長尺状に延在し、内部に空気を流すものである。給気ダクト11の坑口方向端部側には、坑外吸入口11aが形成されているとともに、切羽方向端部近傍位置には、吹出口11bが形成されている。また、排気ダクト21の切羽方向端部側には、吸入口21aが形成されているとともに、坑口方向端部側には、排出口21bが形成されている。
【0018】
給気ダクト11は、排気ダクト21における吸入口21aよりも坑口側であって排気口21bよりも切羽側である位置まで、つまりトンネル坑Tの延在方向における吸入口21aと排気口21bとの間の所定位置まで延在するようにして、配設されている。すなわち、吹出口11bはこの所定位置に位置しており、ここからトンネル坑T内に新鮮空気が給気される。
【0019】
吹出口11bは、給気ダクト11の切羽方向先端近傍位置における、給気ダクト11の延在方向側方のうちの一方に開口するように形成されている。上述したように、給気ダクト11はトンネル坑Tの内壁面上部側に近接する位置に配設されているため、この吹出口11bは、内壁面に沿った横断方向のうちの一方向に開口していることとなる。すなわち、吹出口11bから吹き出し給気された新鮮空気は、内壁面に沿って、トンネル坑T内の横断方向のうちの一方向に流れていくようにされている。
なお、新鮮空気を内壁面に沿って的確に流すことができるように、吹出口11bの開口方向を微調整できる微調整機構が設けられていれば、より好ましい。
【0020】
排気ダクト21は、移動架台あるいはレール等(図示省略)の上に載置されており、伸縮可能又は移動可能な構成とされている。このため、切羽側で発破作業を行う場合などには、少なくとも切羽方向先端側を、後方である坑口方向に退避させることができる。なお、伸縮可能な構成とする場合には、例えば複数のダクト部材を互いに入れ子式となるように連結すればよい。
【0021】
給気用送風機12は、給気ダクト11の延在方向途中に連結されている。この給気用送風機12を作動させることで、トンネル坑T外の新鮮空気を坑外吸入口11aから吸入し、この新鮮空気を吹出口11bへと送風することができる。
なおこの給気用送風機12は、給気ダクト11の途中に連結されていなくとも差し支えない。例えば坑口Trよりも外側、つまりトンネル坑T外の位置に設けられて、新鮮空気を直接吸入して給気ダクト11に送風するようにしてもよい。
【0022】
送風集塵機22は、排気ダクト21の延在方向途中に連結されている。この送風集塵機22を作動させることで、粉塵を多量に含んだ切羽近傍位置の空気を、吸入口21aから吸入して排出口21bへと送風することができるとともに、排気ダクト21内を流れる空気中に含まれる粉塵を、的確に除去することができる。すなわち送風集塵機22は、切羽面Tf側の空気を坑口Tr側まで送るための送風機としての機能と、排出前の空気中の粉塵を除去するための集塵機としての機能とを併せ持つ構成要素である。ここでは、トンネル坑T内の省スペース化を図る観点から、このように一体となった構成としているが、送風機と集塵機とを別個の構成としてもよいことは勿論である。
【0023】
こうした換気装置1を用いたトンネル坑T内の換気方法について、以下に説明する。
給気用送風機12を作動させることによって、トンネル坑T外からの新鮮空気は、坑外吸入口11aから給気ダクト11内に吸入され、給気用送風機12を経て、前記所定位置の吹出口11bへと送風される。そしてこの吹出口11bから、トンネル坑Tの内壁面に沿って横断方向のうちの一方向に吹き出され、トンネル坑T内に給気される。こうして給気された新鮮空気は、内壁面に沿って螺旋状に旋回しながら、切羽方向及び坑口方向の各々に向かって徐々に移動していく。図1においては、切羽方向に向かって流れる旋回流を、符号Fとして示している。こうした新鮮空気の旋回流によって、トンネル坑T内には、坑内空間を切羽方向前方側と後方側とに仕切る空気の層が形成される。すなわち、こうした空気層が形成されることで、切削により切羽近傍位置で発生した多量の粉塵は、切羽近傍位置からトンネル坑T内の坑口Tr側へと拡散することが抑制される。
【0024】
そして、排気用送風機22を作動させることによって、切羽近傍位置の粉塵を多量に含んだ空気は、吸入口21aから排気ダクト22内に吸入され、送風集塵機22を経て粉塵が除去された後に、排出口21bからトンネル坑T内の坑口Tr側へと排気される。このように切羽近傍位置の空気は、前記空気層の形成位置である前記所定位置よりも坑口Tr側まで送風されるので、切羽方向へと流れる旋回流Fとの干渉が防止された状態で排気される。また、切羽近傍位置の空気は、送風集塵機22によって粉塵が除去された後に、坑口Tr側へと排気されるので、坑口Tr側の空気が粉塵によって汚染されるおそれが殆どない。
【0025】
坑口Tr側への拡散が抑制されて切羽近傍位置に封じ込まれた粉塵は、排気装置20によって、迅速且つ的確に除去されて、トンネル坑T内の特定の箇所に粉塵が充満することが防止される。加えて、切羽近傍位置の空気は所定量づつ排気されていくので、切羽近傍位置は負圧となって、切羽方向へと流れる旋回流Fの流量は、坑口方向への旋回流の流量よりも多くなる。こうした旋回流Fによって、給気ダクト11の吹出口11bの位置、つまり前記所定位置から排気ダクト21の吸入口21aの位置までの区間内を、新鮮空気で満たすことができるとともに、粉塵の拡散をより的確に防止して、より確実に粉塵を封じ込めることができる。
【0026】
本発明者等は、トンネル坑T内の気流の流速分布に関して、コンピュータを用いたシミュレーションを行った。その結果について、図2乃至図5を用いて説明する。
本シミュレーションにおいては、給気ダクト11からの新鮮空気の給気量及び給気方向(吹き出し方向)を各々異ならせた3種類のケースについて、トンネル坑T内の気流の流速分布を各々計算した。なお、トンネル坑T内、給気ダクト11及び排気ダクト21の寸法条件は、図2(a)及び(b)に示す通りとした(単位は全てm)。また、図1において示した給気用送風機12及び送風集塵機22は、給気ダクト11及び排気ダクト21の各々と一体とみなしており、計算上は考慮していないので、図2における図示等は省略している。
【0027】
これら3種類のケース(第1ケース〜第3ケース)における給気量及び給気方向は、次の通りとした。
第1ケース: 188m3/分(切羽方向)
第2ケース: 375m3/分(切羽方向)
第3ケース: 1000m3/分(横断方向)
図2においては、各ケースにおける給気方向を矢印で示している。図中のC1は第1ケース、C2は第2ケース、C3は第3ケースを、各々示すものである。この図から解るように、第3ケースにおける給気方向が、本実施形態における給気方向と同一である。
なお、各ケースとも排気ダクト21からの排気量は共通で、750m3/分としている。
【0028】
各ケースにおける流速分布についてのシミュレーションの結果を、図3乃至図5に示す。これら各図に示しているのは、切羽面Tfから10mの位置を坑口方向に見た場合における流速分布図であり、坑口側から切羽方向へと流れる気流の流速分布を示している。これらの図においては、切羽側から坑口方向に流れる気流の図示は省略している。
【0029】
第1ケースのシミュレーションにおいては、図3に示すように、中央付近では概ね0.3〜0.6m/sの切羽方向への気流が発生している。また第2ケースのシミュレーションにおいては、図4に示すように、中央付近では概ね0.2〜0.7m/sの切羽方向への気流が発生しており、第1ケースの場合と比較して、全体的な流速はより速く、且つ流速分布のムラはより大きくなっている。そして、これら2つのケースに共通することは、排気ダクト11が配設されている図中左側半分の流速が、右側半分の流速よりも大幅に高くなっていることである。
【0030】
これら2つのケースにおいては、2つのことが考えられる。先ず第1に、新鮮空気を坑口方向に吹き出しているので、局部的には空気層を形成することができるものの、横断方向全域にわたってムラなく形成することは困難であると考えられる。そして第2に、新鮮空気の給気量よりも切羽近傍位置空気の排気量の方が多いので、負圧となったトンネル坑内には多量の新鮮空気が坑口から直接流入し、こうした新鮮空気が、給気ダクト11から給気される新鮮空気と干渉し、結果として流速分布のムラを大きくしていると考えられる。こうしたことから、空気層が安定して形成されるとは言い難く、粉塵の拡散を効果的に抑制することは困難と言える。
【0031】
これに対して、第3ケースのシミュレーションにおいては、図5に示すように、中央付近では概ね0.3〜0.6m/sの切羽方向への気流が発生しているとともに、流速分布のムラは大幅に緩和されて、左右の流速に大きな差はなくなっている。
【0032】
これは、先ず第1に、新鮮空気を横断方向に吹き出して内壁面に沿わせて旋回流を発生させているので、横断方向全域にわたって新鮮空気が万遍なく行き渡り、そのため流速分布のムラが少なく、より均一な流れの空気層が形成されると考えられる。そして第2に、切羽近傍位置の空気の排気量よりも新鮮空気の給気量の方が多くなるように設定されているので、新鮮空気が坑口からトンネル坑内に直接流入することは殆どなくなる。そのため、新鮮空気同士の干渉が殆どなくなるとともに、吹出口から坑口方向へと流れる旋回流の流量も多くすることができ、より幅の厚い空気層が形成されると考えられる。
【0033】
こうしたことから、旋回流を発生させるようにしてトンネル坑内に新鮮空気を吹き出すこと、及び新鮮空気の給気量を排気量よりも所定量多く設定することによって、幅厚の空気層がより安定して形成されると推定される。このように、幅の厚い空気層が安定して形成されることで、より効果的に粉塵の拡散を防止して、切羽近傍位置に封じ込めることができると言え、より大きな作業環境改善効果が期待できる。
【0034】
本実施形態に係るトンネル坑T内の換気方法及び換気装置においては、給気ダクト11を用いて、トンネル坑T外から吸入した新鮮空気を、吸入口21aと排出口21bとの間の所定位置の吹出坑11bから、トンネル坑Tの内壁面に沿って横断方向のうちの一方向に吹き出して給気するようにしている。このため、トンネル坑T内には新鮮空気の旋回流が発生し、坑内空間を切羽方向前方側と後方側とに仕切る空気層が形成され、切羽側で発生した多量の粉塵は、切羽近傍位置からトンネル坑T内の坑口Tr側へと拡散することが抑制される。そして、排気ダクト21を用いて、切羽方向端部側の吸入口21aから吸入した、粉塵を多量に含んだ切羽近傍位置の空気を、前記所定位置よりも坑口Tr側へと排気するようにしている。このため、切羽近傍位置の粉塵は迅速且つ的確に除去されて、特定の箇所に粉塵が充満することが防止される。
このように、給気した新鮮空気によって粉塵の拡散を防止し、切羽近傍位置といった特定箇所に粉塵を封じ込めておいて、その多量の粉塵を空気とともに坑口Tr側へと排気するようにしているので、トンネル坑T内を速やかに且つ的確に換気することができ、作業環境を大幅に改善することができる。
【0035】
また、新鮮空気の給気量を、切羽近傍位置の空気の排気量よりも多く設定すれば、より幅の厚い空気層を形成することができ、この空気層が形成された区間内を新鮮空気で満たすことができるとともに、切羽近傍位置の空気流の流速分布のムラを少なくして、より均一な流れの空気層を形成することができる。そのため、トンネル坑T内の大部分の区間内を新鮮空気で満たすことができるとともに、より効果的に粉塵の拡散を防止して、より確実に粉塵を切羽近傍位置に封じ込めることができる。これにより、更に的確に作業環境の改善を図りつつ、粉塵の除去効率を向上させることができるので、換気装置1を効率よく運転することができる。
【0036】
更に、排気装置20に送風集塵機22を設けて、切羽近傍位置の空気中に含まれる多量の粉塵を除去した後に、この切羽近傍位置の空気を坑口Tr側へと排気するようにしている。そのため、排出口21bよりも坑口Tr側の空気が粉塵によって汚染されるおそれは殆どなくなる。これにより、例えば坑口Tr側の後方作業箇所で、下半切削等の粉塵発生作業が行われたとしても、そこでの粉塵のみを希釈して坑口Tr外へと排出すればよいので、坑口Tr側の作業環境も大幅に改善することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るトンネル坑内の換気方法及び換気装置においては、上記の如き構成を採用しているので、トンネル坑内で発生した粉塵の拡散を防止して、粉塵を的確に除去することができ、作業環境を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトンネル坑内の換気装置の一実施形態を示す図であって、(a)はトンネル坑内全体を示す概略斜視図、(b)は(a)におけるA−A線断面矢視図である。
【図2】トンネル坑内の気流の流速分布に関するシミュレーションでの寸法条件を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図3】第1のケースのシミュレーションにおける、トンネル坑内の気流の流速分布を示す図であって、切羽面から10m坑口側の位置を坑口方向に見た横断面図である。
【図4】第2のケースのシミュレーションにおける、トンネル坑内の気流の流速分布を示す図であって、切羽面から10m坑口側の位置を坑口方向に見た横断面図である。
【図5】第3のケースのシミュレーションにおける、トンネル坑内の気流の流速分布を示す図であって、切羽面から10m坑口側の位置を坑口方向に見た横横断図である。
【符号の説明】
1 換気装置
10 給気装置
11 給気ダクト
11b 吹出口
12 給気用送風機
20 排気装置
21 排気ダクト
21a 吸入口
21b 排出口
22 送風集塵機(排気用送風機、集塵機)
T トンネル坑
Tf 切羽面
Tr 坑口
Claims (3)
- トンネル坑の切削途中に該トンネル坑内を換気するための換気方法であって、
前記トンネル坑内の切羽近傍位置から坑口方向に延在するように排気ダクトを配設するとともに、前記トンネル坑の坑口から切羽方向に延在するように給気ダクトを配設し、
前記給気ダクトを用いて、前記トンネル坑外から吸入した新鮮空気を、前記排気ダクトの切羽方向端部側よりも坑口側であって、且つ前記排気ダクトの坑口方向端部側よりも切羽側の所定位置から、前記トンネル坑の内壁面に沿って横断方向のうちの一方向に吹き出して給気するとともに、
前記排気ダクトを用いて、前記切羽方向端部側から吸入した前記切羽近傍位置の空気を、前記坑口方向端部側から坑口側へと排気することを特徴とするトンネル坑内の換気方法。 - 前記新鮮空気の給気量を、前記切羽近傍位置の空気の排気量よりも多く設定することを特徴とする請求項1に記載のトンネル坑内の換気方法。
- トンネル坑の切削途中に該トンネル坑内を換気するための換気装置であって、
前記トンネル坑内の切羽近傍位置から坑口方向に延在するように配設され、切羽方向端部側に吸入口が形成されているとともに坑口方向端部側に排出口が形成されている排気ダクトと、
前記排気ダクトに連結され、前記排気ダクト内の空気中に含まれる粉塵を除去する集塵機と、
前記坑口から切羽方向に、前記吸入口と前記排出口との間の所定位置まで延在するように配設され、該所定位置における前記トンネル坑の内壁面に近接する位置に、該内壁面に沿った横断方向のうちの一方向に開口する吹出口が形成されている給気ダクトとを備え、
前記給気ダクトを用いて、前記トンネル坑外から吸入した新鮮空気を、前記排気ダクトの切羽方向端部側よりも坑口側であって、且つ前記排気ダクトの坑口方向端部側よりも切羽側の所定位置から、前記トンネル坑の内壁面に沿って横断方向のうちの一方向に吹き出して給気するとともに、
前記排気ダクトを用いて、前記切羽方向端部側から吸入した前記切羽近傍位置の空気を、前記坑口方向端部側から坑口側へと排気することを特徴とするトンネル坑内の換気装置。
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