JP2004339572A - 有価金属の回収方法 - Google Patents

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Shigeo Hirayama
成生 平山
Koichi Numata
幸一 沼田
Shinya Kagei
慎也 蔭井
Hidetoshi Inoue
秀利 井上
Minoru Sakai
実 酒井
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Abstract

【課題】有価金属、特に希土類金属を実質的に酸化することなく、炭素含有量が低減した有価金属の回収方法を提供すること。
【解決手段】有価金属含有廃材から正極混入率12重量%以下の負極主体有価物を分離し、分離した該負極主体有価物を水素ガス雰囲気にて600℃以上で加熱して炭素を除去することを特徴とする有価金属の回収方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有価金属含有廃材から有価金属の回収方法に関し、より詳細には廃ニッケル−水素二次電池からニッケル、コバルト及び希土類金属等の有価金属を高純度で簡便かつ安価に回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
廃ニッケル−水素二次電池から有価金属であるニッケル、コバルト及び希土類金属等の有価金属を回収する方法として、廃ニッケル−水素二次電池を破砕、解砕、篩分し、粗粒部(プラスチック、鉄、発泡ニッケル等)と、細粒部(水酸化ニッケル、水素吸蔵合金)とに分離し、細粒部をアルカリ金属を含んだ硫酸で溶解し、コバルト含有ニッケル溶解液から不純物を除去した後、電解処理して金属ニッケル及びニッケル−コバルト合金を回収する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法は、ニッケル等の有価金属の回収工程が極めて複雑であるという問題がある。また、この方法では希土類金属が化合物になり、金属を回収するには、溶融塩電解、金属カルシウムを用いた還元が必要となる。
【0003】
有価金属含有廃材から有価金属の回収では、単に回収効率を上げることや上述した回収工程を複雑にしないこと以外に、回収される有価金属中の炭素含有量を少なくすることを考慮する必要があり、これにより回収される有価金属の用途が広くなるという利点がある。また、回収粉を溶融してしまうと、脱炭素ができないないという問題がある。
【0004】
従って、例えば特許文献2では、廃ニッケル−水素二次電池を破砕、解砕、篩分し、有価物を回収する有価物分別処理工程と、該有価物を酸化雰囲気中で加熱する酸化処理工程と、還元雰囲気中で加熱溶融して溶融金属とする還元−溶融工程からなる廃ニッケル−水素二次電池からの有価物の回収方法が開示され、上記酸化処理工程で含有炭素を酸化により除去することが試みられている。
【0005】
この方法では、高温で行われる酸化処理工程で確かに有価物中の炭素含有量は低減するが、同時に有価金属であるニッケル、コバルト及び希土類金属等が酸化されるため、効率的な有価金属の回収方法とはいい難い。
【0006】
このように従来の有価金属の回収方法では、廃ニッケル−水素二次電池等の有価金属含有廃材に含まれる炭素が回収後の有価金属中に残存し、またこの残存炭素量を酸化処理で低減すると、得られる有価金属も酸化されてしまい、所望の有価金属が得られなくなるという欠点がある。
【0007】
このため、回収した有価物を非酸化雰囲気で加熱して有価金属を脱炭素することも考えられるが、この場合でも正極混入量が多いと、正極から発生する酸素や水分で有価金属中の希土類金属等が酸化されるため、希土類金属の回収は前記のように複雑かつ高コスト化する。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−82371号公報
【特許文献2】
特開2000−67935号公報
【0009】
従って、本発明の目的は、有価金属、特に回収粉中の希土類金属の全てを実質的に酸化することなく回収し、かつ炭素含有量が低減した有価金属の回収方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、有価物回収工程で回収した正極活物質の混入率の少ない負極主体有価物を水素ガス雰囲気にて高温で加熱することにより、上記目的が達成できることを知見し、本発明に到達した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、有価金属含有廃材から正極混入率12重量%以下の負極主体有価物を分離し、分離した該負極主体有価物を水素ガス雰囲気にて600℃以上で加熱して炭素を除去し、さらに必要に応じて脱炭素した有価金属を加熱溶融して溶融金属とすることを特徴とする有価金属の回収方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
図1は、本発明の一実施形態を示し、有価金属含有廃材として廃ニッケル−水素二次電池を用いた例を示したフローチャートである。本発明に用いられる有価金属含有廃材として廃ニッケル−水素二次電池や、他の希土類元素を含む金属からなるリサイクル製品が挙げられる。
【0013】
この有価物回収工程は、従来の方法と同様に行えばよく、図示の通り有価金属含有廃材が廃ニッケル−水素二次電池の場合は、例えば該電池をせん断破砕機を用いて破砕し、解砕機を用いて湿式法で解砕を行い、篩等で分級する。篩の上に残った非分級物を磁力選別してプラスチック、紙等の非着磁物を除去した後、微量のプラスチック及び紙等を燃焼し除去する。
【0014】
この他に例えば電池の極板に発泡ニッケルを使用している場合は、極板をそのまま水素還元するか、あるいは不活性ガス雰囲気中で加熱処理して有価物を回収してもよい。
【0015】
このようにして得られる有価物は、有価金属含有廃材が廃ニッケル−水素二次電池の場合には、主として正極主体有価物及び水素吸蔵合金等の負極主体有価物を含み、この他に有機バインダーと所定量の炭素が含まれる。このような炭素源としては、SBR、カルボキシメチルセルロース(CMC)、テトラフルオロエチレン、カーボンブラック等である。
【0016】
本発明では、このようにして回収された負極主体有価物を用いる。この負極主体有価物は、正極混入率が12重量%(酸素量4.1g)以下、好ましくは2.5重量%(酸素量0.9g)以下であることが必要である。正極である水酸化ニッケル中には酸素が含まれており、これを加熱すると、希土類金属が酸化される。希土類金属は一旦酸化されると、水素ガス還元を行っても金属に戻らない。従って、正極混入率が12重量%を超えた負極主体有価物は、希土類金属(ミッシュメタル)の回収ができない。
【0017】
次いで、これらの物理的に分別回収された負極主体有価物を、水素ガス雰囲気にて600℃以上、好ましくは800〜1000℃で加熱処理し、有価物中に含まれる炭素を酸化して除去する(脱炭素工程)。加熱処理温度が800℃未満では、0.1重量%以下といった充分な脱炭素が行えない。
【0018】
このようにして脱炭素工程で炭素を除去された有価物、特に希土類金属を含む有価物は脱炭素工程での加熱停止、冷却により固体の金属として回収できる。
【0019】
使用用途によっては溶融金属として回収することが望ましい場合もあり、その際は脱炭素工程における加熱に引き続いて、又は一旦加熱を停止した後に、回収した有価金属の加熱を行って溶融金属として回収すればよい(溶融工程)。この溶融工程における加熱雰囲気は有価金属の酸化を抑制するために、アルゴン中等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0020】
溶融工程以外に、脱炭素工程で得られた粉末を加熱した溶融塩中に投入すると、比重の大きい金属と、比重の小さいスラグに分離するので、このようにして有価金属を回収することもできる。
【0021】
このような本発明の回収方法により、有価金属、特に希土類金属が効率良く、低廉に回収することが可能となる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明に係わる有価金属の回収方法の実施例を記載する。
【0023】
実施例
(有価物回収工程)
廃ニッケル−水素二次電池をせん断破砕機(Alpine A.G.製のRotoplel Cutting Mill)を用いて乾式の破砕を行った。次いで解砕機(Attriction Machine)を用いて湿式法で解砕を行い、その後篩(28メッシュ)で分級した。篩の上に残った非分級物を2000〜3000ガウスで磁力選別してプラスチック、紙等の非着磁物を除去した後、微量のプラスチック、紙等を燃焼除去した。燃焼後の残渣を振動ミル(川崎重工業株式会社製「T−100型」)を用いて粉砕し、篩(24メッシュ)で分級することにより、金属鉄と発泡ニッケルとを分離し、発泡ニッケルを24メッシュ以下の細粒部に濃縮しかつ回収した。
【0024】
一方、解砕機で湿式解砕及び分級により得られた28メッシュ篩下の分級物には、電池の活物質である水素吸蔵合金及び水酸化ニッケル等の有価物が濃縮されていた。このようにして得られた有価物を負極主体有価物及び正極主体有価物に大別した。
【0025】
このようにして得られた負極主体有価物について、負極主体有価物中の正極混入率別に負極主体有価物からの希土類金属の回収率を図2にプロットした。図2の結果から明らかなように、希土類金属を効率良く回収するには、正極混入率が12%以下であることが必要であることが判る。
【0026】
回収粉10gをロータリーキルンで1時間水素中で加熱した。温度条件は300℃、400℃、600℃、800℃、1000℃である。温度条件別に回収した希土類金属中の炭素量を図3にプロットした。図3の結果から明らかなように、希土類金属の炭素量を0.1重量%以下にするには、800℃以上の加熱が必要であることが判る。
【0027】
【発明の効果】
本発明の回収方法によって、有価金属、特に希土類金属が化合物としてではなく、金属として低廉に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態を示し、有価金属含有廃材として廃ニッケル−水素二次電池を用いた例を示したフローチャートである。
【図2】図2は正極混入率と希土類金属(ミッシュメタル)の回収率の関係を示すグラフである。
【図3】図3は加熱温度と回収粉の炭素含有量の関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 有価金属含有廃材から正極混入率12重量%以下の負極主体有価物を分離し、分離した該負極主体有価物を水素ガス雰囲気にて600℃以上で加熱して炭素を除去することを特徴とする有価金属の回収方法。
  2. 有価金属含有廃材から正極混入率12重量%以下の負極主体有価物を分離し、分離した該負極主体有価物を水素ガス雰囲気にて600℃以上で加熱して炭素を除去し、脱炭素した有価金属を加熱溶融して溶融金属とすることを特徴とする有価金属の回収方法。
  3. 有価金属含有廃材から正極混入率12重量%以下の負極主体有価物を分離し、分離した該負極主体有価物を水素ガス雰囲気にて600℃以上で加熱して炭素を除去し、脱炭素した有価金属を加熱した溶融塩中に投入し、比重の大きい金属と、比重の小さいスラグに分離することを特徴とする有価金属の回収方法。
  4. 上記有価金属含有廃材が廃ニッケル−水素二次電池である、請求項1〜3記載の有価金属の回収方法。
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