JP2004338925A - 繊維強化紙管 - Google Patents

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Isao Kurata
功 倉田
Koichi Kishimoto
宏一 岸本
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Abstract

【課題】糸の巻圧による紙管の圧縮変形を抑え、長期の使用を可能として、紙管に対する経費を削減すると共に、省資源を図り、また、環境汚染の見地からも有効な繊維強化樹脂層にて補強された繊維強化紙管を提供する。
【解決手段】紙層を相互に接着して多層構造とされる紙管本体2を有する紙管1において、紙管本体2の中心より半径方向に沿って、紙管本体2の厚みTにおける中央部より外側に、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させて形成される繊維強化樹脂層10を配置する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般には、主として紡績糸、合成繊維などの製造工程や、編織準備工程などで糸巻き取り用ボビンとして使用される紙管に関し、特に、繊維強化樹脂層を備え補強された繊維強化紙管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、紡績糸、合成繊維などの糸巻き取り用ボビンとして紙管が使用されている(特許文献1、2を参照せよ)。図5に、斯かる紙管1の一例を示す。
【0003】
本例に示すように、紙管1は、通常、クラフト紙などをスパイラル状に多層に巻回し、各々の紙層を相互に接着して多層構造の紙管本体2を形成し、その表面にパーチメント紙やラッピング紙などの表面紙3を貼着して作製される。
【0004】
【特許文献1】
実開平6−63556号公報
【特許文献2】
実開平7−4469号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、合成繊維などを紙管に巻き取る場合などには、紙管1に巻き取られる繊維は高温状態にあり、紙管1に巻き取られた後冷却される。そのために、紙管1には、繊維による巻き締めが起こり、図6に示すように、糸の巻圧により紙管1の肉厚Tが△Eだけ減少し、外周面が変形することが知られている。
【0006】
従来、このように外径が変形した紙管1は、使用することができず廃棄されており、経済的に問題があるだけでなく、省資源、環境汚染の見地からも問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、糸の巻圧による紙管の圧縮変形を抑え、長期の使用を可能として、紙管に対する経費を削減すると共に、省資源を図り、また、環境汚染の見地からも有効な繊維強化樹脂層にて補強された繊維強化紙管を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る繊維強化紙管にて達成される。要約すれば、本発明は、紙層を相互に接着して多層構造とされる紙管本体を有する紙管において、
前記紙管本体の中心より半径方向に沿って、前記紙管本体の厚みにおける中央部より外側に、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させて形成される繊維強化樹脂層を配置したことを特徴とする繊維強化紙管である。
【0009】
本発明の一実施態様によると、前記繊維強化樹脂層の内径Dとし、前記紙管本体の外径をDとし、前記紙管本体の厚さをTとしたとき、
−T≦D≦D
となるように配置される。
【0010】
本発明の他の実施態様によると、前記繊維強化樹脂層の厚さは、前記紙管本体の厚さの1%〜40%である。
【0011】
本発明の他の実施態様によると、前記繊維強化樹脂層は、連続したテープ状或いはシート状とされる強化繊維に樹脂を含浸した繊維補強材を前記紙管本体に連続して螺旋状に巻き付けて形成される。
【0012】
本発明の他の実施態様によると、前記繊維補強材は、螺旋角度をαとしたとき、20°<α<90°にて、密巻き、或いは、所定のピッチ間隔にて巻き付けられる。
【0013】
本発明の他の実施態様によると、前記強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、有機繊維を、一種或いは複数種混入して使用され、前記マトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、合成ゴム或いはデンプンのりである。好ましくは、前記熱硬化性樹脂は、常温硬化型或は加熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂若しくはフェノール樹脂であり、前記熱可塑性樹脂は、酢酸ビニール、ポリビニールアルコールなどのビニル樹脂である。
【0014】
本発明の他の実施態様によると、前記強化繊維は、前記繊維強化樹脂層に次式で定義される繊維割合Vfにて、
繊維割合Vf(%)=(繊維の全体積)/(樹脂の全体積+繊維の全体積)
10〜99.9%含まれる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る繊維強化紙管を図面に則して更に詳しく説明する。
【0016】
実施例1
図1に、本発明に係る繊維強化紙管1の一実施例を示す。
【0017】
本実施例によると、図5を参照して説明した従来の紙管本体2の外周面に所定の厚さ(t)にて繊維強化樹脂層10が形成される。
【0018】
紙管本体2は、従来、合成繊維などの糸巻き取り用ボビンとして使用されているものであって、通常、クラフト紙などをスパイラル状に多層に巻回し、各々の紙層を相互に接着して、厚さ(T)の多層構造とされる。紙管本体2の外周面には表面紙3(図5)は貼着されていない。
【0019】
本実施例によれば、紙管本体2の外周面に形成される繊維強化樹脂層10は、図2に示すように、紙管本体2の外周面に、連続した繊維補強材11を螺旋状に巻き付けることにより形成される。
【0020】
繊維補強材11は、螺旋角度αにて、密巻き、或いは、所定のピッチ間隔にて、紙管本体2に、所定の厚さt(図1)となるまで往復して巻き付けられる。螺旋角度αは、20°<α<90°とされ、螺旋角度αが20°以下の場合には、圧縮強度が低下し、繊維強化樹脂層10を厚くしなければならなくなり、好ましくない。
【0021】
また、往復して巻き付ける場合に、往路及び復路において螺旋角度αは、互いに異なるものとすることができる。例えば、一方向(往路)への巻き付け時の螺旋角を+αとし、他方向(復路)への巻き付け時の螺旋角を、螺旋方向が逆とされる−αとすることができる。
【0022】
繊維補強材11は、連続したストランド状、テープ状、或いは、シート状とされる強化繊維fにマトリクス樹脂を含浸して形成される。繊維補強材11は、樹脂を含浸した状態で、その厚さをt、幅をwとしたとき、
≦1.0mm、2mm≦w≦500mm
とすることができる。通常、t=0.1〜0.5mm、w=2〜20mmとされる。
【0023】
勿論、紙管本体の幅(W)と同等の幅(w=W)に形成されたシート状の繊維補強材11を、図3に示すように、紙管本体2に1巻き以上巻き付けることによって、所定厚(t)の繊維強化樹脂層10を形成しても良い。
【0024】
本発明によれば、繊維強化樹脂層10は、紙管本体2の厚さ(T)に対し、1%〜40%の厚さ(t)となるように形成される。つまり、
0.01T≦t≦0.4T
とされる。
【0025】
繊維強化樹脂層10の厚さ(t)が紙管本体2の厚さ(T)に対し、1%未満であると、補強の効果がなく、40%を越えると、過剰補強となる場合が多く、コストアップにつながるといった問題がある。
【0026】
強化繊維としては、PAN系或いはピッチ系炭素繊維の他に、ガラス繊維、又は、アラミド、ナイロン、ポリエステル、PBOなどの有機繊維を、一種或いは複数種混入して使用される。又、マトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂とすることができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は加熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂を好適に使用し得る。又、熱可塑性樹脂としては、酢酸ビニル、ポリビニールアルコールなどのビニル樹脂を使用することができる。マトリクス樹脂として、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂以外に、合成ゴム若しくはデンプンのりも使用することができる。
【0027】
繊維補強材11における樹脂含浸量、即ち、次式で定義される繊維割合Vfは、10〜99.9%、好ましくは、40〜70%、通常60%程度とされる。
繊維割合Vf(%)=(繊維の全体積)/(樹脂の全体積+繊維の全体積)
【0028】
上述のようにして形成された繊維強化樹脂層の外周表面には、必要に応じて表面紙3が貼着される。
【0029】
実施例2
実施例1では、紙管本体2の外周面に所定の厚さ(t)にて繊維強化樹脂層10が形成されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
つまり、本発明によれば、図4に示すように、繊維強化樹脂層10は、厚さ(T)とされる多層構造の内部に形成しても良い。
【0031】
ただ、本発明の効果を十分に発揮させるには、繊維強化樹脂層10は、紙管本体厚さ(T)の中央部より外側に配置することが重要である。
【0032】
即ち、繊維強化樹脂層10の内径Dが、紙管本体2の外径をDとしたとき、D−T≦D≦D
となるように、配置される。
【0033】
もし、繊維強化樹脂層10の内径Dが、紙管本体厚さ(T)の中央部より内側に、即ち、D−T>D、の場合には、特に、紙管本体厚さ(T)が2.5mm以上とされる場合に紙管本体2の外周面が糸の巻圧により僅かに圧縮変形することが確認された。
【0034】
次ぎに、本発明の作用効果を立証するために、以下に示す具体的構成の繊維強化紙管1を作製し、試験した。
【0035】
具体例1
本具体例では、図1を参照して説明した繊維強化紙管1を作製した。
【0036】
紙管本体2としては、外径Dが105mm、厚さTが7mm、幅Wが20cmのものを使用した。
【0037】
繊維補強材11としては、強化繊維fとして平均径7μm、収束本数12000本のPAN系炭素繊維ストランドを用い、幅wが12mm、厚さtが0.5mmのテープ状の繊維補強材11を使用した。
【0038】
テープ状繊維補強材11に予めエポキシ樹脂を、上記繊維割合Vfで60%となるように含浸させ、螺旋角±88°で、上記紙管本体の外周表面に、厚さtが1.0mmとなるまで巻き付け、硬化した。
【0039】
テープ状繊維補強材11の樹脂硬化後の繊維強化紙管1の外径は、107cmであった。
【0040】
このようにして作製した繊維強化紙管1を合成繊維の製造工程に持ち込み糸巻き用ボビンとして使用したが、紙管表面が圧縮変形することはなかった。その後、10回使用しても、紙管表面の糸の巻圧による圧縮変形は、△Eが0.1mmであり、使用許容範囲内であった。
【0041】
一方、同時に使用した従来の、繊維強化樹脂層10を有していない紙管は、紙管表面が、図5にて、△E=1.5mmだけ圧縮変形してしまい、再使用は困難であった。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の繊維強化紙管は、紙層を相互に接着して多層構造とされる紙管本体を有する紙管において、紙管本体の中心より半径方向に沿って、紙管本体の厚みにおける中央部より外側に、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させて形成される繊維強化樹脂層を配置した構成とされるので、糸の巻圧による紙管の圧縮変形を抑えることができ、長期の使用を可能とし、従って、紙管に対する経費を削減すると共に、省資源を図り、また、環境汚染の見地からも有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る繊維強化紙管の一実施例の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る繊維強化紙管の製造方法の一実施例を説明する斜視図である。
【図3】本発明に係る繊維強化紙管の製造方法の他の実施例を説明する斜視図である。
【図4】本発明に係る繊維強化紙管の他の実施例の概略構成を示す断面図である。
【図5】従来の紙管の一例を示す斜視図である。
【図6】従来の紙管の外周面の変形を説明する断面図である。
【符号の説明】
1 紙管
2 紙管本体
3 表面紙
10 繊維強化樹脂層
11 繊維補強材

Claims (8)

  1. 紙層を相互に接着して多層構造とされる紙管本体を有する紙管において、
    前記紙管本体の中心より半径方向に沿って、前記紙管本体の厚みにおける中央部より外側に、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させて形成される繊維強化樹脂層を配置したことを特徴とする繊維強化紙管。
  2. 前記繊維強化樹脂層の内径Dとし、前記紙管本体の外径をDとし、前記紙管本体の厚さをTとしたとき、
    −T≦D≦D
    となるように配置されることを特徴とする請求項1の繊維強化紙管。
  3. 前記繊維強化樹脂層の厚さは、前記紙管本体の厚さの1%〜40%であることを特徴とする請求項1又は2の繊維強化紙管。
  4. 前記繊維強化樹脂層は、連続したテープ状或いはシート状とされる強化繊維に樹脂を含浸した繊維補強材を前記紙管本体に連続して螺旋状に巻き付けて形成されることを特徴とする請求項1、2又は3の繊維強化紙管。
  5. 前記繊維補強材は、螺旋角度をαとしたとき、20°<α<90°にて、密巻き、或いは、所定のピッチ間隔にて巻き付けられることを特徴とする請求項4の繊維強化紙管。
  6. 前記強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、有機繊維を、一種或いは複数種混入して使用し、前記マトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、合成ゴム或いはデンプンのりであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の繊維強化紙管。
  7. 前記熱硬化性樹脂は、常温硬化型或は加熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂若しくはフェノール樹脂であり、前記熱可塑性樹脂は、酢酸ビニール、ポリビニールアルコールなどのビニル樹脂であることを特徴とする請求項6の繊維強化紙管。
  8. 前記強化繊維は、前記繊維強化樹脂層に次式で定義される繊維割合Vfにて、
    繊維割合Vf(%)=(繊維の全体積)/(樹脂の全体積+繊維の全体積)
    10〜99.9%含まれることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の繊維強化紙管。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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