JP2004336695A - ダイバーシチアンテナ装置およびそれを備えた通信機 - Google Patents
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Abstract
【課題】回路が簡単で小型化が容易なダイバーシチアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ素子3a,3bをx方向に間隔を介し配置してx方向配列のアンテナ対4xを形成する。アンテナ素子3a,3cをy方向に間隔を介し配置してy方向配列のアンテナ対4yを形成する。x方向配列のアンテナ対4xとy方向配列のアンテナ対4yに兼用のアンテナ素子3aを、位相調整部7を介して合成部6に接続し、アンテナ素子3b,3cを、それぞれ、切り換え部8を介して合成部6に接続する。位相調整部7は、アンテナ素子3aの信号位相と、アンテナ素子3b,3cの信号位相とを互いに逆相とする構成を備える。切り換え部8は、アンテナ素子3b,3cの一方を合成部6に切り換え接続させる構成を有する。切り換え部8の切り換え動作によって、通信用として機能するアンテナ対が切り換わって、ダイバーシチアンテナ装置1の指向性が切り換わる。
【選択図】 図1
【解決手段】アンテナ素子3a,3bをx方向に間隔を介し配置してx方向配列のアンテナ対4xを形成する。アンテナ素子3a,3cをy方向に間隔を介し配置してy方向配列のアンテナ対4yを形成する。x方向配列のアンテナ対4xとy方向配列のアンテナ対4yに兼用のアンテナ素子3aを、位相調整部7を介して合成部6に接続し、アンテナ素子3b,3cを、それぞれ、切り換え部8を介して合成部6に接続する。位相調整部7は、アンテナ素子3aの信号位相と、アンテナ素子3b,3cの信号位相とを互いに逆相とする構成を備える。切り換え部8は、アンテナ素子3b,3cの一方を合成部6に切り換え接続させる構成を有する。切り換え部8の切り換え動作によって、通信用として機能するアンテナ対が切り換わって、ダイバーシチアンテナ装置1の指向性が切り換わる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波(電界)の放射パターンの指向性を切り換えることができるダイバーシチアンテナ装置およびそれを備えた通信機に関するものである。
【0002】
【背景技術】
図5にはダイバーシチアンテナ装置の一構成例が示されている(特許文献1参照)。このダイバーシチアンテナ装置20は、3つのアンテナ素子21a,21b,21cと、移相制御部22と、比較回路23と、給電制御装置24とを有して構成されている。
【0003】
アンテナ素子21a,21b,21cは例えばダイポールアンテナであり、当該アンテナ素子21a,21b,21cはそれぞれ正三角形の互いに異なる頂点位置に配置され、アンテナ素子21a,21b間の間隔と、アンテナ素子21b,21c間の間隔と、アンテナ素子21c,21a間の間隔とは全て等しく、ここでは、そのアンテナ素子間の間隔は、通信用として設定されている周波数帯の電波波長λの1/2となっている。
【0004】
それら各アンテナ素子21a,21b,21cにはそれぞれ別々の給電線路25(25a,25b,25c)の一端部が接続されており、これら給電線路25a,25b,25cの他端部は共通に移相制御部22に接続されている。移相制御部22は、アンテナ素子21a,21b,21cの中から2つのアンテナ素子を選択し、この選択した2つのアンテナ素子のそれぞれに設定の位相差(例えば120°)をもって給電する構成を備えている。
【0005】
その移相制御部22からの給電により2つのアンテナ素子で電界が励振されて放射され当該電界は空中で合成される。この合成電界によってダイバーシチアンテナ装置20の指向性が定まる。移相制御部22で選択されて給電される2つのアンテナ素子の組み合わせと、その選択された2つのアンテナ素子への信号の位相差の反転制御とによって、ダイバーシチアンテナ装置20は6パターンの指向性を持つことができる。なお、ダイバーシチアンテナ装置20は、受信に関しても、送信時と同様の6パターンの指向性を持つ。
【0006】
比較回路23は、指向性のパターンがそれぞれ異なる状態で受信した6つの受信信号を比較し、この比較により最も受信状態が良好な信号を選び出す。給電制御装置24は、その比較回路23の比較結果に基づいて、6つの指向性パターンの中から、通信に最適な指向性パターンを判断する。移相制御部22は、その給電制御装置24の判断結果に基づいて、最適と判断された指向性パターンを得るための給電対象の2つのアンテナ素子を選択し、かつ、それら2つのアンテナ素子への信号の位相差を制御して給電動作を行う。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−167807号公報
【特許文献2】
特開2000−278193号公報
【特許文献3】
特開2001−28509号公報
【特許文献4】
特開平8−335819号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、通信機には小型化の要求があり、これに伴ってアンテナ装置にも小型化が要求されている。ダイバーシチアンテナ装置20の構成では、アンテナ素子21a,21b,21cの中から2つのアンテナ素子を選択して給電するものであり、ダイバーシチブランチの数が3つ以上となる。このため、良好な受信が可能なアンテナ素子の組み合わせを選択するために必要な時間が長くなるという問題がある。また、切り換え回路も複雑となり大型となる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、ブランチ数が2つで、切り換え時間を短く保ちながら低仰角方向の利得が大きく、回路構成を簡略化できて小型化が容易なダイバーシチアンテナ装置およびそれを備えた通信機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明のダイバーシチアンテナ装置は、互いに直交するx方向とy方向のうちのx方向に沿って、対を成すアンテナ素子が間隔を介し基板に配列配置されてx方向配列のアンテナ対が形成され、また、それら対を成すアンテナ素子のうちの一方と、この一方のアンテナ素子とy方向に間隔を介して基板に配列配置された別のアンテナ素子とによってy方向配列のアンテナ対が形成されており、前記各アンテナ素子には、それぞれ、共通の合成部に接続するための別々の給電線路が接続されており、x方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子に接続している給電線路には信号の位相を調整する位相調整部が介設され、また、他の各アンテナ素子にそれぞれ接続している各給電線路のうちの何れか一つを合成部に切り換え接続させるための切り換え部が設けられており、前記位相調整部は、前記兼用のアンテナ素子の信号位相と、他のアンテナ素子の信号位相との位相差を180°に調整する構成と成し、切り換え部の切り換え動作によって合成部に切り換え接続されているアンテナ素子と、前記兼用のアンテナ素子とには互いに逆相の電界が励振して空中で合成される構成と成しており、切り換え部の切り換え動作に応じて、通信用として機能するアンテナ対が切り換わって、合成電界の指向性が切り換わることを特徴としている。また、この発明の通信機は、この発明において特有な構成を持つダイバーシチアンテナ装置が設けられていることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0012】
第1実施形態例のダイバーシチアンテナ装置は、図1(a)に示されるように基板2に配置される複数のアンテナ素子3a,3b,3cと、図1(b)に示すような回路とを有して構成されている。
【0013】
すなわち、第1実施形態例では、アンテナ素子3a,3b,3cは何れも同様な構成を持つモノポールアンテナであり、これらアンテナ素子3a,3b,3cのうちのアンテナ素子3a,3bは、図1(a)に示すx方向に間隔を介して配列配置されてx方向配列のアンテナ対4xを構成している。また、アンテナ素子3a,3cは、x方向に直交するy方向に間隔を介して配列配置されてy方向配列のアンテナ対4yを構成している。この第1実施形態例では、アンテナ素子3aはx方向配列のアンテナ対4xとy方向配列のアンテナ対4yに兼用のアンテナ素子と成している。また、x方向配列のアンテナ対4xを構成しているアンテナ素子3a,3b間の間隔と、y方向配列のアンテナ対4yを構成しているアンテナ素子3a,3c間の間隔とは等しく、その間隔は、通信用として設定された周波数帯の電波波長λの1/2、あるいは、ほぼλ/2となっている。つまり、アンテナ素子3aは直角二等辺三角形の直角の角部に配置され、その直角二等辺三角形の残りの角部にそれぞれアンテナ素子3b,3cが別々に配置されている。
【0014】
そのように配置された各アンテナ素子3a,3b,3cには、図1(b)に示すように、それぞれ別々の給電線路5a,5b,5cの一端部が接続されている。給電線路5aの他端部は合成部6に接続されており、この合成部6とアンテナ素子3aを接続する信号線路5aには位相調整部7が介設されている。また、給電線路5b,5cの各他端部はそれぞれ切り換え部8に接続されている。さらに、その切り換え部8は給電線路5dによって合成部6に接続されている。この合成部6は例えば通信機に設けられている通信用の高周波回路10に接続されている。
【0015】
切り換え部8は、給電線路5b,5cのうちの一方を合成部6に切り換え接続させる構成を有しており、ここでは、SPDT(Single Pole Double Throw)スイッチにより構成されている。そのスイッチには様々な構成のものがあり、ここでは、何れの構成のスイッチをも採用してよいが、その一例を挙げると、例えば、通信用に設定されている周波数帯が5GHzのマイクロ波帯である場合には、GaAs基板を利用したMMICを利用したスイッチがある。この切り換え部8の切り換え動作は、例えば通信機の制御装置11の後述するようなダイバーシチ制御動作によって制御される。
【0016】
この第1実施形態例では、給電線路5a〜5dは同じ構成の線路である。また、アンテナ素子3bと切り換え部8間を接続している給電線路5bの長さと、アンテナ素子3cと切り換え部8間を接続している給電線路5cの長さとは等しくなっており、給電線路5bが持つインピーダンス(電気長)と、給電線路5cが持つインピーダンス(電気長)とは等しく、あるいは、ほぼ等しくなっている。
【0017】
位相調整部7は、給電線路5aを通電する信号の位相を調整するものであり、この第1実施形態例では、合成部6からアンテナ素子3aに供給される送信用の信号と、合成部6から切り換え部8を介してアンテナ素子3b,3cに供給される送信用の信号との位相差が180°となるように(逆相となるように)、また、対を成すアンテナ素子3a,3b(アンテナ素子3a,3c)で受信された受信信号が互いに逆相である場合にそれら逆相の信号が合成部6に入力する位置では同相となるように、信号の位相を調整する。
【0018】
この位相調整部7によって、切り換え部8により合成部6に切り換え接続されているアンテナ素子3b(あるいはアンテナ素子3c)と、アンテナ素子3aとには、互いに逆相の信号が合成部6側から供給されることとなる。これにより、アンテナ素子3b(あるいはアンテナ素子3c)と、アンテナ素子3aとにはそれぞれ互いに逆相の電界が励振されて放射される。この逆相の電界が合成されてダイバーシチアンテナ装置1の電界放射パターンの指向性が定まる。
【0019】
図2には基板2の上方側から基板2の表面側を見たときのダイバーシチアンテナ装置1のアンテナ指向性(アンテナ利得特性)の一例が示されている。図2中の実線Xは、x方向配列のアンテナ対4xのアンテナ素子3a,3bによるアンテナ利得特性であり、点線Yは、y方向配列のアンテナ対4yのアンテナ素子3a,3cによるアンテナ利得特性である。
【0020】
つまり、x方向配列のアンテナ対4xを構成するアンテナ素子3a,3bが互いに逆相の電界を発生させている場合には、アンテナ素子3a,3b間の領域では、アンテナ素子3aの電界と、アンテナ素子3bの電界とは互いに打ち消し合うのでアンテナ利得は小さくなる。これに対して、アンテナ素子3a,3b間の領域よりもx方向に外側の領域で、アンテナ素子3aから放射された電界と、アンテナ素子3bから放射された電界とは強め合って、アンテナ利得が向上する。よって、アンテナ素子3a,3bが互いに逆相の電界を発生させている場合には、図2の実線Xに示されるように、ダイバーシチアンテナ装置1は、x方向に強い指向性を持つこととなる。なお、図2に示す点線Zは、モノポールアンテナ素子が1つしか設けられていない場合のアンテナ利得特性を表すものである。この点線Zと、実線Xとの比較からも分かるように、x方向に関しては、2つのアンテナ素子3a,3bの電界の合成によって、アンテナ素子が1つしか設けられていない場合に比べて、アンテナ利得が向上している。
【0021】
また、y方向配列のアンテナ対4yを構成するアンテナ素子3a,3cが互いに逆相の電界を発生させている場合には、アンテナ素子3a,3c間の領域で、アンテナ素子3aの電界と、アンテナ素子3cの電界とが互いに打ち消し合ってアンテナ利得が小さくなる。また、アンテナ素子3a,3c間の領域よりもy方向に外側の領域で、アンテナ素子3aから放射された電界と、アンテナ素子3cから放射された電界とは強め合ってアンテナ利得が向上する。よって、アンテナ素子3a,3cが互いに逆相の電界を発生させている場合には、図2の点線Yに示されるように、ダイバーシチアンテナ装置1はy方向に強い指向性を持つこととなる。そのy方向の指向性(アンテナ利得)は、2つのアンテナ素子3a,3cの電界の合成によって、アンテナ素子が1つしか設けられていない場合(図2の点線Z参照)よりも向上している。
【0022】
すなわち、このダイバーシチアンテナ装置1では、切り換え部8の切り換え動作によってアンテナ素子3bが合成部6に接続されている場合には、x方向配列のアンテナ対4xが通信用のアンテナ対として機能して、x方向に強いアンテナ指向性を示す。また、切り換え部8の切り換え動作によってアンテナ素子3cが合成部6に接続されている場合には、y方向配列のアンテナ対4yが通信用のアンテナ対として機能して、y方向に強いアンテナ指向性を示す。換言すれば、このダイバーシチアンテナ装置1では、切り換え部8の切り換え動作によって、アンテナ指向性を互いに直交するx方向とy方向の何れか一方に切り換えることができる。
【0023】
なお、ここまでのアンテナ指向性に関する説明では、アンテナ素子3a,3b,3cから電界が放射される送信の場合を例にして説明したが、受信のアンテナ指向性も同様である。例えば、アンテナ素子3a,3bの共振周波数を持つ電界がアンテナ素子3a,3bに到来すると、各アンテナ素子3a,3bはその電界を受信する。その電界が、例えば図1(b)の点線αに示すようにx方向からアンテナ素子3a,3bのそれぞれに互いに逆向きに入射した場合には、各アンテナ素子3a,3bの受信信号は互いに逆相となる。このようにアンテナ素子3a,3bの位置では、それらアンテナ素子3a,3bの受信信号は互いに逆相であるが、位相調整部7によって、アンテナ素子3a,3bの受信信号は同相となって合成部6に入力する。このため、アンテナ素子3a,3bの受信信号は合成部6で合成されて信号レベルは大きくなる。つまり、x方向配列のアンテナ対4xの受信に関して、x方向のアンテナ利得は大きくなる。
【0024】
これに対して、y方向から図1(b)の鎖線βに示すようにアンテナ素子3a,3b間の領域を通って電界が同じ向きでアンテナ素子3a,3bにそれぞれ到来すると、アンテナ素子3a,3bの受信信号は同相となる。このようにアンテナ素子3a,3bの位置では、それらアンテナ素子3a,3bの受信信号が同相であっても、位相調整部7によって、アンテナ素子3a,3bの受信信号は互いに逆相となって合成部6に入力するため、アンテナ素子3a,3bの受信信号は合成部6で互いに打ち消し合ってしまう。これにより、x方向配列のアンテナ対4xの受信に関しては、y方向のアンテナ利得は小さいものとなる。
【0025】
よって、アンテナ素子3a,3bの受信に関しても、アンテナ素子3a,3bの送信と同様に、x方向に強い指向性を持つこととなる。
【0026】
また、アンテナ素子3a,3cの受信に関しては、x方向からアンテナ素子3a,3c間の領域を通ってアンテナ素子3a,3cのそれぞれに当該アンテナ素子3a,3cの共振周波数を持つ電界が同じ向きで到来すると、アンテナ素子3a,3cの受信信号は同相となる。それらアンテナ素子3a,3cの受信信号は、位相調整部7によって互いに逆相の状態で合成部6に入力するので、当該アンテナ素子3a,3cの受信信号は合成部6で打ち消し合う。これに対して、アンテナ素子3a,3c間の領域よりも外側の領域をy方向に沿って通って電界がアンテナ素子3a,3cに到来すると、アンテナ素子3aの受信信号と、アンテナ素子3cの受信信号とは逆相となるが、当該アンテナ素子3a,3cの受信信号は、位相調整部7によって同相の状態で合成部6に入力するので、合成部6でアンテナ素子3a,3cの受信信号は強め合う。よって、アンテナ素子3a,3cの受信に関しても、アンテナ素子3a,3cの送信と同様に、y方向に強い指向性を持つこととなる。すなわち、ダイバーシチアンテナ装置1の受信に関しても、切り換え部8の切り換え動作によって、互いに直交するx方向とy方向の一方にアンテナ指向性を切り換えることができる。
【0027】
この第1実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1は上記のように構成されている。このダイバーシチアンテナ装置1は、様々な無線通信機に組み込むことが可能であり、何れの構成の無線通信機に組み込んでもよいが、ダイバーシチアンテナ装置1が組み込まれる通信機の例を挙げると、例えば、無線通信機能付きのパソコンや、無線通信機能付きのPCカードや、無線LANのアクセスポイント通信装置等がある。
【0028】
なお、この第1実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1を組み込んだ通信機の制御装置には、ダイバーシチアンテナ装置1の切り換え部8の切り換え動作を制御するダイバーシチ制御部が設けられることとなる。そのダイバーシチ制御部では、例えば次に示すようなダイバーシチ制御を行う。例えば、ダイバーシチ制御部は、x方向配列のアンテナ対4xによる無線通信の受信信号と、y方向配列のアンテナ対4yによる無線通信の受信信号とを高周波回路10を介し取り込み当該受信信号に基づいて、x方向配列のアンテナ対4xによる無線通信と、y方向配列のアンテナ対4yによる無線通信とのうち、より良好に無線通信を行うことができるのはどちらであるかを選択する。そして、ダイバーシチ制御部は、x方向配列のアンテナ対4xによる無線通信を選択した場合には切り換え部8をx方向配列のアンテナ対4x側に切り換え、y方向配列のアンテナ対4yによる無線通信を選択した場合には切り換え部8をx方向配列のアンテナ対4y側に切り換える。
【0029】
以下に、第2実施形態例を説明する。なお、この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0030】
ところで、トランスの一つとして、図3に示されるような構成を持つものがある。このトランス14は、一般的には平衡−不平衡変換に用いられるものであり、バラントランスと呼ばれている。このバラントランス14は、平衡側コイル15と、不平衡側コイル16とが電磁結合して成る構成を備えている。平衡側コイル15には中間タップ17が設けられており、この中間タップ17はグランドに接地される。不平衡側コイル16の一端側16aは外部の回路に接続され、他端側16bはグランドに接地される。
【0031】
このようなバラントランス14において、例えば、外部の回路から不平衡側コイル16の端部16aを介して信号が入力すると、不平衡側コイル16の信号通電に起因して平衡側コイル15に電圧が誘起され、これにより、平衡側コイル15の両端部15a,15bから、それぞれ、互いに逆相の信号が出力される。換言すれば、平衡側コイル15の両端部15a,15bのうちの一方側からは、不平衡側コイル16に入力した信号と同相の信号が出力され、他方側からは、その信号と180°位相がずれた信号(つまり、逆相の信号)が出力される。
【0032】
また上記とは反対に、両端部15a,15bからそれぞれ信号が平衡側コイル15に入力すると、不平衡側コイル16に電圧が誘起されて当該不平衡側コイル16から端部16aを通して信号が外部に出力される。この不平衡側コイル16の出力信号は、平衡側コイル15の端部15a側からの入力信号と、端部15b側からの入力信号とのうちの一方側の入力信号の位相を180°ずらした信号と、他方側の入力信号とを合成した信号となる。
【0033】
本発明者は、そのようなバラントランス14の平衡不平衡変換動作に着目した。つまり、バラントランス14は、例えば第1実施形態例に示した合成部6の機能と、位相調整部7の機能との両方の機能を備えていることに本発明者は気付いて、この第2実施形態例において特有な構成を考え出した。すなわち、この第2実施形態例では、第1実施形態例に示した合成部6および位相調整部7に代えて、図4に示されるように、バラントランス14を設けている。
【0034】
つまり、バラントランス14を構成する平衡側コイル15の一端側はアンテナ素子3a(つまり、x方向配列のアンテナ対4xとy方向配列のアンテナ対4yに兼用のアンテナ素子3a)に接続され、平衡側コイル15の他端側は給電線路5dを介して切り換え部8に接続されている。また、バラントランス14の不平衡側コイル16の一端側はグランドに接地され、他端側は例えば通信機の高周波回路10に接続される。
【0035】
切り換え部8は、x方向配列のアンテナ対4xを構成するアンテナ素子3bと、y方向配列のアンテナ対4yを構成するアンテナ素子3cとのうちの一方側を択一的にバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続させる構成と成す。この切り換え部8の切り換え動作は、第1実施形態例と同様に、例えば通信機の制御装置11のダイバーシチ制御動作により行われる。
【0036】
この第2実施形態例では、バラントランス14からアンテナ素子3aに至るまでの給電線路5aの電気長と、バラントランス14から切り換え部8を介しアンテナ素子3bに至るまでの電気長と、バラントランス14から切り換え部8を介しアンテナ素子3cに至るまでの電気長とが全て等しくなっている。
【0037】
第2実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1の上記以外の構成は第1実施形態例と同様である。この第2実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1も、第1実施形態例と同様に、様々な無線通信機に組み込むことができる。ただ、この第2実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1を備える無線通信機には、第1実施形態例で述べたようなダイバーシチ制御部が設けられることとなる。
【0038】
この第2実施形態例では、例えば、切り換え部8の切り換え動作によって、アンテナ素子3b,3cのうちのアンテナ素子3bがバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続されている場合には、高周波回路10側からバラントランス14に信号が入力した場合に、バラントランス14の平衡不平衡変換動作によって平衡側コイル15の両端部からそれぞれアンテナ素子3a,3bに向けて互いに逆相の信号が出力される。この信号供給によって、x方向配列のアンテナ対4xが無線通信用のアンテナ対として機能して、x方向に強い指向性をもって信号の無線送信を行う。
【0039】
また、上記同様に切り換え部8の切り換え動作によってアンテナ素子3bがバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続されている場合に、図4(a)に示す点線αのようなx方向からの信号到来に起因して各アンテナ素子3a,3bから互いに逆相の信号がバラントランス14の平衡側コイル15の両端部にそれぞれ入力した場合には、前述したようなバラントランス14の平衡不平衡変換動作(つまり、それら入力信号のうちの一方側の信号の位相を180°ずらした信号と、他方側の信号とを合成した信号を出力する動作)によって、バラントランス14は、同相信号の合成信号を出力することと等価に動作する。このことから、バラントランス14は、アンテナ素子3a,3bからの入力信号を強めて高周波回路10側に向けて出力する。
【0040】
さらに、切り換え部8の切り換え動作によって、アンテナ素子3b,3cのうちのアンテナ素子3cがバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続されている場合には、高周波回路10側からバラントランス14に信号が入力した場合に、バラントランス14の平衡不平衡変換動作によって平衡側コイル15の両端部からそれぞれアンテナ素子3a,3cに向けて互いに逆相の信号が出力される。この信号供給によって、y方向配列のアンテナ対4yが無線通信用のアンテナ対として機能して、y方向に強い指向性をもって信号の無線送信を行う。
【0041】
また、上記同様に切り換え部8の切り換え動作によってアンテナ素子3cがバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続されている場合に、y方向から互いに逆向きの信号到来に起因して各アンテナ素子3a,3cから互いに逆相の信号がバラントランス14の平衡側コイル15の両端部にそれぞれ入力した場合には、前述したようなバラントランス14の平衡不平衡変換動作(つまり、それら入力信号のうちの一方側の信号の位相を180°ずらした信号と、他方側の信号とを合成した信号を出力する動作)によって、バラントランス14は、同相信号の合成信号を出力することと等価に動作する。これにより、バラントランス14は、アンテナ素子3a,3cからの入力信号を強めて高周波回路10側に向けて出力する。
【0042】
なお、x方向配列のアンテナ対4xのアンテナ素子3a,3b、又は、y方向配列のアンテナ対4yのアンテナ素子3a,3cからそれぞれ同相の信号がバラントランス14に入力することがあるが、この場合には、バラントランス14の平衡不平衡変換動作によって、バラントランス14は、逆相信号の合成を行うことと等価になるので、互いの信号が相殺されて、バラントランス14の不平衡側コイル16から信号は出力されない。
【0043】
したがって、この第2実施形態例に示した構成を備えることによって、第1実施形態例と同様に動作することができる上に、合成部6および位相調整部7に代えてバラントランス14を設ける構成であるので、第1実施形態例よりも回路構成の簡略化を図ることができて装置の小型化を促進させることができる。
【0044】
なお、この発明は第1や第2の各実施形態例に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1と第2の各実施形態例では、アンテナ素子3a,3b,3cは図1(a)に示すような円筒状のモノポールアンテナであったが、例えば、誘電体基体にモノポールアンテナとして機能する導体パターンが形成されて成るチップ型のモノポールアンテナをアンテナ素子3a,3b,3cとして設けてもよいし、他の形態のアンテナをアンテナ素子3a,3b,3cとして設けてもよい。
【0045】
また、第1と第2の各実施形態例では、アンテナ素子間の間隔はλ/2、あるいは、ほぼλ/2であったが、アンテナ素子間の間隔をそれよりも短くしてもよい。第1と第2の各実施形態例のように、2つのアンテナ素子の電界を合成してアンテナ利得を向上させようとする場合には、それらアンテナ素子間の間隔はλ/2であることが望ましいとされているが、本発明者の実験では、アンテナ素子間の間隔をλ/2より短くしても、アンテナ利得を向上できるアンテナ素子間の間隔があることが確認されている。このことから、例えば、アンテナ素子間の間隔を、λ/2よりも短いがアンテナ利得向上を図ることができる適切な間隔に設定することで、ダイバーシチアンテナ装置1の小型化を促進させてもよい。
【0046】
【発明の効果】
アンテナ装置に対して、基板に近い低仰角方向のアンテナ利得向上が望まれている。本発明者の研究開発によれば、2つのアンテナ素子に互いに逆相の電界を励振させて当該逆相の電界の合成を利用することで、低仰角方向のアンテナ利得を向上できることが分かってきた。そのように逆相の電界を合成させると、アンテナ素子が1つしか設けられていない場合よりもアンテナ利得を向上できる方向が生じると共に、アンテナ利得が小さくなってしまう方向が生じてしまう。このため、この発明では、例えばモノポールアンテナの2組のアンテナ対を設けて、アンテナ利得が小さくなってしまう方向を2組のアンテナ対が互いに補い合える構成とした。つまり、この発明のダイバーシチアンテナ装置は、低仰角方向の全ての領域について良好な送受信が可能である。
【0047】
また、この発明では、x方向配列のアンテナ対と、y方向配列のアンテナ対とを設けている。例えば、それらx方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対とをそれぞれ別々のアンテナ素子で形成する場合には、4個のアンテナ素子が必要であるが、この発明では、x方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対とに兼用のアンテナ素子を設けたので、それらx方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対を形成するのに3個のアンテナ素子を設けるだけで済み、アンテナ素子の削減を図ることができる。
【0048】
さらに、位相調整部を利用して、対を成すアンテナ素子に互いに逆相の電界を励振させる構成の場合には、対を成すアンテナ素子にそれぞれ接続されている給電線路のうちの一方に位相調整部を設ける必要がある。例えば、仮に、対を成すアンテナ素子のうち、切り換え部に接続されているアンテナ素子側の給電線路に位相調整部を設ける構成とする場合には、切り換え部に接続されているx方向配列のアンテナ対側の給電線路と、y方向配列のアンテナ対側の給電線路との両方に位相調整部を設けなければならない。これに対して、この発明では、x方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子側の給電線路に位相調整部を設ける構成とすることにより、1つの位相調整部を設けるだけでよく、回路構成の簡略化を図ることができる。
【0049】
その上、この発明では、そのようにx方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子側の給電線路に位相調整部を設け、また、その兼用のアンテナ素子と対を成すアンテナ素子から合成部に至るまでの給電線路上に切り換え部を設ける構成とした。このため、例えば、位相調整部の電力損失と同程度の挿入損失を持つ例えばスイッチによって切り換え部を構成することによって、合成部から前記兼用のアンテナ素子に至るまでの電力損失と、合成部から切り換え部を通って他のアンテナ素子に至るまでの電力損失とを同様にすることができる。このため、送信時に合成部から前記兼用のアンテナ素子に至る信号レベルと、合成部から切り換え部を通ってその兼用のアンテナ素子と対を成すアンテナ素子に至る信号レベルとをほぼ同じ大きさにすることができる。これにより、対を成す各アンテナ素子に励振される電界の振幅をほぼ等しくすることができる。このため、対を成すアンテナ素子の合成の電界によるダイバーシチアンテナ装置のアンテナ指向性の制御が容易となる。なお、受信に関しても同様である。
【0050】
したがって、この発明の構成を備えることによって、低仰角方向のアンテナ指向性が強い上に、給電線路が短く部品点数が少なくて回路構成が簡単であり、また、電力損失を抑制できるダイバーシチアンテナ装置を提供することができる。
【0051】
また、合成部と位相調整部に代えて、バラントランスを設けたものにあっては、上記同様の優れた効果を持つことができる上に、合成部と位相調整部に代えてバラントランスを設けるだけでよいので、回路構成の更なる簡略化を図ることができる。これにより、ダイバーシチアンテナ装置のより一層の小型化を図ることが容易となる。
【0052】
この発明のダイバーシチアンテナ装置を備えた通信機にあっては、アンテナ効率を向上でき、また、低仰角方向の通信の信頼性を高めることができる。また、ダイバーシチアンテナ装置の小型化により、通信機の小型化を図ることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイバーシチアンテナ装置の一実施形態例を説明するための図である。
【図2】図1に示すダイバーシチアンテナ装置の指向性の一例を表したアンテナ利得特性のグラフである。
【図3】バラントランスを説明するためのモデル図である。
【図4】第2実施形態例を説明するための図である。
【図5】特許文献1に記載のダイバーシチアンテナ装置を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ダイバーシチアンテナ装置
2 基板
3a,3b,3c アンテナ素子
4x x方向配列のアンテナ対
4y y方向配列のアンテナ対
5a,5b,5c,5d 給電線路
6 合成部
7 位相調整部
8 切り換え部
14 バラントランス
15 平衡側コイル
16 不平衡側コイル
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波(電界)の放射パターンの指向性を切り換えることができるダイバーシチアンテナ装置およびそれを備えた通信機に関するものである。
【0002】
【背景技術】
図5にはダイバーシチアンテナ装置の一構成例が示されている(特許文献1参照)。このダイバーシチアンテナ装置20は、3つのアンテナ素子21a,21b,21cと、移相制御部22と、比較回路23と、給電制御装置24とを有して構成されている。
【0003】
アンテナ素子21a,21b,21cは例えばダイポールアンテナであり、当該アンテナ素子21a,21b,21cはそれぞれ正三角形の互いに異なる頂点位置に配置され、アンテナ素子21a,21b間の間隔と、アンテナ素子21b,21c間の間隔と、アンテナ素子21c,21a間の間隔とは全て等しく、ここでは、そのアンテナ素子間の間隔は、通信用として設定されている周波数帯の電波波長λの1/2となっている。
【0004】
それら各アンテナ素子21a,21b,21cにはそれぞれ別々の給電線路25(25a,25b,25c)の一端部が接続されており、これら給電線路25a,25b,25cの他端部は共通に移相制御部22に接続されている。移相制御部22は、アンテナ素子21a,21b,21cの中から2つのアンテナ素子を選択し、この選択した2つのアンテナ素子のそれぞれに設定の位相差(例えば120°)をもって給電する構成を備えている。
【0005】
その移相制御部22からの給電により2つのアンテナ素子で電界が励振されて放射され当該電界は空中で合成される。この合成電界によってダイバーシチアンテナ装置20の指向性が定まる。移相制御部22で選択されて給電される2つのアンテナ素子の組み合わせと、その選択された2つのアンテナ素子への信号の位相差の反転制御とによって、ダイバーシチアンテナ装置20は6パターンの指向性を持つことができる。なお、ダイバーシチアンテナ装置20は、受信に関しても、送信時と同様の6パターンの指向性を持つ。
【0006】
比較回路23は、指向性のパターンがそれぞれ異なる状態で受信した6つの受信信号を比較し、この比較により最も受信状態が良好な信号を選び出す。給電制御装置24は、その比較回路23の比較結果に基づいて、6つの指向性パターンの中から、通信に最適な指向性パターンを判断する。移相制御部22は、その給電制御装置24の判断結果に基づいて、最適と判断された指向性パターンを得るための給電対象の2つのアンテナ素子を選択し、かつ、それら2つのアンテナ素子への信号の位相差を制御して給電動作を行う。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−167807号公報
【特許文献2】
特開2000−278193号公報
【特許文献3】
特開2001−28509号公報
【特許文献4】
特開平8−335819号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、通信機には小型化の要求があり、これに伴ってアンテナ装置にも小型化が要求されている。ダイバーシチアンテナ装置20の構成では、アンテナ素子21a,21b,21cの中から2つのアンテナ素子を選択して給電するものであり、ダイバーシチブランチの数が3つ以上となる。このため、良好な受信が可能なアンテナ素子の組み合わせを選択するために必要な時間が長くなるという問題がある。また、切り換え回路も複雑となり大型となる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、ブランチ数が2つで、切り換え時間を短く保ちながら低仰角方向の利得が大きく、回路構成を簡略化できて小型化が容易なダイバーシチアンテナ装置およびそれを備えた通信機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明のダイバーシチアンテナ装置は、互いに直交するx方向とy方向のうちのx方向に沿って、対を成すアンテナ素子が間隔を介し基板に配列配置されてx方向配列のアンテナ対が形成され、また、それら対を成すアンテナ素子のうちの一方と、この一方のアンテナ素子とy方向に間隔を介して基板に配列配置された別のアンテナ素子とによってy方向配列のアンテナ対が形成されており、前記各アンテナ素子には、それぞれ、共通の合成部に接続するための別々の給電線路が接続されており、x方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子に接続している給電線路には信号の位相を調整する位相調整部が介設され、また、他の各アンテナ素子にそれぞれ接続している各給電線路のうちの何れか一つを合成部に切り換え接続させるための切り換え部が設けられており、前記位相調整部は、前記兼用のアンテナ素子の信号位相と、他のアンテナ素子の信号位相との位相差を180°に調整する構成と成し、切り換え部の切り換え動作によって合成部に切り換え接続されているアンテナ素子と、前記兼用のアンテナ素子とには互いに逆相の電界が励振して空中で合成される構成と成しており、切り換え部の切り換え動作に応じて、通信用として機能するアンテナ対が切り換わって、合成電界の指向性が切り換わることを特徴としている。また、この発明の通信機は、この発明において特有な構成を持つダイバーシチアンテナ装置が設けられていることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0012】
第1実施形態例のダイバーシチアンテナ装置は、図1(a)に示されるように基板2に配置される複数のアンテナ素子3a,3b,3cと、図1(b)に示すような回路とを有して構成されている。
【0013】
すなわち、第1実施形態例では、アンテナ素子3a,3b,3cは何れも同様な構成を持つモノポールアンテナであり、これらアンテナ素子3a,3b,3cのうちのアンテナ素子3a,3bは、図1(a)に示すx方向に間隔を介して配列配置されてx方向配列のアンテナ対4xを構成している。また、アンテナ素子3a,3cは、x方向に直交するy方向に間隔を介して配列配置されてy方向配列のアンテナ対4yを構成している。この第1実施形態例では、アンテナ素子3aはx方向配列のアンテナ対4xとy方向配列のアンテナ対4yに兼用のアンテナ素子と成している。また、x方向配列のアンテナ対4xを構成しているアンテナ素子3a,3b間の間隔と、y方向配列のアンテナ対4yを構成しているアンテナ素子3a,3c間の間隔とは等しく、その間隔は、通信用として設定された周波数帯の電波波長λの1/2、あるいは、ほぼλ/2となっている。つまり、アンテナ素子3aは直角二等辺三角形の直角の角部に配置され、その直角二等辺三角形の残りの角部にそれぞれアンテナ素子3b,3cが別々に配置されている。
【0014】
そのように配置された各アンテナ素子3a,3b,3cには、図1(b)に示すように、それぞれ別々の給電線路5a,5b,5cの一端部が接続されている。給電線路5aの他端部は合成部6に接続されており、この合成部6とアンテナ素子3aを接続する信号線路5aには位相調整部7が介設されている。また、給電線路5b,5cの各他端部はそれぞれ切り換え部8に接続されている。さらに、その切り換え部8は給電線路5dによって合成部6に接続されている。この合成部6は例えば通信機に設けられている通信用の高周波回路10に接続されている。
【0015】
切り換え部8は、給電線路5b,5cのうちの一方を合成部6に切り換え接続させる構成を有しており、ここでは、SPDT(Single Pole Double Throw)スイッチにより構成されている。そのスイッチには様々な構成のものがあり、ここでは、何れの構成のスイッチをも採用してよいが、その一例を挙げると、例えば、通信用に設定されている周波数帯が5GHzのマイクロ波帯である場合には、GaAs基板を利用したMMICを利用したスイッチがある。この切り換え部8の切り換え動作は、例えば通信機の制御装置11の後述するようなダイバーシチ制御動作によって制御される。
【0016】
この第1実施形態例では、給電線路5a〜5dは同じ構成の線路である。また、アンテナ素子3bと切り換え部8間を接続している給電線路5bの長さと、アンテナ素子3cと切り換え部8間を接続している給電線路5cの長さとは等しくなっており、給電線路5bが持つインピーダンス(電気長)と、給電線路5cが持つインピーダンス(電気長)とは等しく、あるいは、ほぼ等しくなっている。
【0017】
位相調整部7は、給電線路5aを通電する信号の位相を調整するものであり、この第1実施形態例では、合成部6からアンテナ素子3aに供給される送信用の信号と、合成部6から切り換え部8を介してアンテナ素子3b,3cに供給される送信用の信号との位相差が180°となるように(逆相となるように)、また、対を成すアンテナ素子3a,3b(アンテナ素子3a,3c)で受信された受信信号が互いに逆相である場合にそれら逆相の信号が合成部6に入力する位置では同相となるように、信号の位相を調整する。
【0018】
この位相調整部7によって、切り換え部8により合成部6に切り換え接続されているアンテナ素子3b(あるいはアンテナ素子3c)と、アンテナ素子3aとには、互いに逆相の信号が合成部6側から供給されることとなる。これにより、アンテナ素子3b(あるいはアンテナ素子3c)と、アンテナ素子3aとにはそれぞれ互いに逆相の電界が励振されて放射される。この逆相の電界が合成されてダイバーシチアンテナ装置1の電界放射パターンの指向性が定まる。
【0019】
図2には基板2の上方側から基板2の表面側を見たときのダイバーシチアンテナ装置1のアンテナ指向性(アンテナ利得特性)の一例が示されている。図2中の実線Xは、x方向配列のアンテナ対4xのアンテナ素子3a,3bによるアンテナ利得特性であり、点線Yは、y方向配列のアンテナ対4yのアンテナ素子3a,3cによるアンテナ利得特性である。
【0020】
つまり、x方向配列のアンテナ対4xを構成するアンテナ素子3a,3bが互いに逆相の電界を発生させている場合には、アンテナ素子3a,3b間の領域では、アンテナ素子3aの電界と、アンテナ素子3bの電界とは互いに打ち消し合うのでアンテナ利得は小さくなる。これに対して、アンテナ素子3a,3b間の領域よりもx方向に外側の領域で、アンテナ素子3aから放射された電界と、アンテナ素子3bから放射された電界とは強め合って、アンテナ利得が向上する。よって、アンテナ素子3a,3bが互いに逆相の電界を発生させている場合には、図2の実線Xに示されるように、ダイバーシチアンテナ装置1は、x方向に強い指向性を持つこととなる。なお、図2に示す点線Zは、モノポールアンテナ素子が1つしか設けられていない場合のアンテナ利得特性を表すものである。この点線Zと、実線Xとの比較からも分かるように、x方向に関しては、2つのアンテナ素子3a,3bの電界の合成によって、アンテナ素子が1つしか設けられていない場合に比べて、アンテナ利得が向上している。
【0021】
また、y方向配列のアンテナ対4yを構成するアンテナ素子3a,3cが互いに逆相の電界を発生させている場合には、アンテナ素子3a,3c間の領域で、アンテナ素子3aの電界と、アンテナ素子3cの電界とが互いに打ち消し合ってアンテナ利得が小さくなる。また、アンテナ素子3a,3c間の領域よりもy方向に外側の領域で、アンテナ素子3aから放射された電界と、アンテナ素子3cから放射された電界とは強め合ってアンテナ利得が向上する。よって、アンテナ素子3a,3cが互いに逆相の電界を発生させている場合には、図2の点線Yに示されるように、ダイバーシチアンテナ装置1はy方向に強い指向性を持つこととなる。そのy方向の指向性(アンテナ利得)は、2つのアンテナ素子3a,3cの電界の合成によって、アンテナ素子が1つしか設けられていない場合(図2の点線Z参照)よりも向上している。
【0022】
すなわち、このダイバーシチアンテナ装置1では、切り換え部8の切り換え動作によってアンテナ素子3bが合成部6に接続されている場合には、x方向配列のアンテナ対4xが通信用のアンテナ対として機能して、x方向に強いアンテナ指向性を示す。また、切り換え部8の切り換え動作によってアンテナ素子3cが合成部6に接続されている場合には、y方向配列のアンテナ対4yが通信用のアンテナ対として機能して、y方向に強いアンテナ指向性を示す。換言すれば、このダイバーシチアンテナ装置1では、切り換え部8の切り換え動作によって、アンテナ指向性を互いに直交するx方向とy方向の何れか一方に切り換えることができる。
【0023】
なお、ここまでのアンテナ指向性に関する説明では、アンテナ素子3a,3b,3cから電界が放射される送信の場合を例にして説明したが、受信のアンテナ指向性も同様である。例えば、アンテナ素子3a,3bの共振周波数を持つ電界がアンテナ素子3a,3bに到来すると、各アンテナ素子3a,3bはその電界を受信する。その電界が、例えば図1(b)の点線αに示すようにx方向からアンテナ素子3a,3bのそれぞれに互いに逆向きに入射した場合には、各アンテナ素子3a,3bの受信信号は互いに逆相となる。このようにアンテナ素子3a,3bの位置では、それらアンテナ素子3a,3bの受信信号は互いに逆相であるが、位相調整部7によって、アンテナ素子3a,3bの受信信号は同相となって合成部6に入力する。このため、アンテナ素子3a,3bの受信信号は合成部6で合成されて信号レベルは大きくなる。つまり、x方向配列のアンテナ対4xの受信に関して、x方向のアンテナ利得は大きくなる。
【0024】
これに対して、y方向から図1(b)の鎖線βに示すようにアンテナ素子3a,3b間の領域を通って電界が同じ向きでアンテナ素子3a,3bにそれぞれ到来すると、アンテナ素子3a,3bの受信信号は同相となる。このようにアンテナ素子3a,3bの位置では、それらアンテナ素子3a,3bの受信信号が同相であっても、位相調整部7によって、アンテナ素子3a,3bの受信信号は互いに逆相となって合成部6に入力するため、アンテナ素子3a,3bの受信信号は合成部6で互いに打ち消し合ってしまう。これにより、x方向配列のアンテナ対4xの受信に関しては、y方向のアンテナ利得は小さいものとなる。
【0025】
よって、アンテナ素子3a,3bの受信に関しても、アンテナ素子3a,3bの送信と同様に、x方向に強い指向性を持つこととなる。
【0026】
また、アンテナ素子3a,3cの受信に関しては、x方向からアンテナ素子3a,3c間の領域を通ってアンテナ素子3a,3cのそれぞれに当該アンテナ素子3a,3cの共振周波数を持つ電界が同じ向きで到来すると、アンテナ素子3a,3cの受信信号は同相となる。それらアンテナ素子3a,3cの受信信号は、位相調整部7によって互いに逆相の状態で合成部6に入力するので、当該アンテナ素子3a,3cの受信信号は合成部6で打ち消し合う。これに対して、アンテナ素子3a,3c間の領域よりも外側の領域をy方向に沿って通って電界がアンテナ素子3a,3cに到来すると、アンテナ素子3aの受信信号と、アンテナ素子3cの受信信号とは逆相となるが、当該アンテナ素子3a,3cの受信信号は、位相調整部7によって同相の状態で合成部6に入力するので、合成部6でアンテナ素子3a,3cの受信信号は強め合う。よって、アンテナ素子3a,3cの受信に関しても、アンテナ素子3a,3cの送信と同様に、y方向に強い指向性を持つこととなる。すなわち、ダイバーシチアンテナ装置1の受信に関しても、切り換え部8の切り換え動作によって、互いに直交するx方向とy方向の一方にアンテナ指向性を切り換えることができる。
【0027】
この第1実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1は上記のように構成されている。このダイバーシチアンテナ装置1は、様々な無線通信機に組み込むことが可能であり、何れの構成の無線通信機に組み込んでもよいが、ダイバーシチアンテナ装置1が組み込まれる通信機の例を挙げると、例えば、無線通信機能付きのパソコンや、無線通信機能付きのPCカードや、無線LANのアクセスポイント通信装置等がある。
【0028】
なお、この第1実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1を組み込んだ通信機の制御装置には、ダイバーシチアンテナ装置1の切り換え部8の切り換え動作を制御するダイバーシチ制御部が設けられることとなる。そのダイバーシチ制御部では、例えば次に示すようなダイバーシチ制御を行う。例えば、ダイバーシチ制御部は、x方向配列のアンテナ対4xによる無線通信の受信信号と、y方向配列のアンテナ対4yによる無線通信の受信信号とを高周波回路10を介し取り込み当該受信信号に基づいて、x方向配列のアンテナ対4xによる無線通信と、y方向配列のアンテナ対4yによる無線通信とのうち、より良好に無線通信を行うことができるのはどちらであるかを選択する。そして、ダイバーシチ制御部は、x方向配列のアンテナ対4xによる無線通信を選択した場合には切り換え部8をx方向配列のアンテナ対4x側に切り換え、y方向配列のアンテナ対4yによる無線通信を選択した場合には切り換え部8をx方向配列のアンテナ対4y側に切り換える。
【0029】
以下に、第2実施形態例を説明する。なお、この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0030】
ところで、トランスの一つとして、図3に示されるような構成を持つものがある。このトランス14は、一般的には平衡−不平衡変換に用いられるものであり、バラントランスと呼ばれている。このバラントランス14は、平衡側コイル15と、不平衡側コイル16とが電磁結合して成る構成を備えている。平衡側コイル15には中間タップ17が設けられており、この中間タップ17はグランドに接地される。不平衡側コイル16の一端側16aは外部の回路に接続され、他端側16bはグランドに接地される。
【0031】
このようなバラントランス14において、例えば、外部の回路から不平衡側コイル16の端部16aを介して信号が入力すると、不平衡側コイル16の信号通電に起因して平衡側コイル15に電圧が誘起され、これにより、平衡側コイル15の両端部15a,15bから、それぞれ、互いに逆相の信号が出力される。換言すれば、平衡側コイル15の両端部15a,15bのうちの一方側からは、不平衡側コイル16に入力した信号と同相の信号が出力され、他方側からは、その信号と180°位相がずれた信号(つまり、逆相の信号)が出力される。
【0032】
また上記とは反対に、両端部15a,15bからそれぞれ信号が平衡側コイル15に入力すると、不平衡側コイル16に電圧が誘起されて当該不平衡側コイル16から端部16aを通して信号が外部に出力される。この不平衡側コイル16の出力信号は、平衡側コイル15の端部15a側からの入力信号と、端部15b側からの入力信号とのうちの一方側の入力信号の位相を180°ずらした信号と、他方側の入力信号とを合成した信号となる。
【0033】
本発明者は、そのようなバラントランス14の平衡不平衡変換動作に着目した。つまり、バラントランス14は、例えば第1実施形態例に示した合成部6の機能と、位相調整部7の機能との両方の機能を備えていることに本発明者は気付いて、この第2実施形態例において特有な構成を考え出した。すなわち、この第2実施形態例では、第1実施形態例に示した合成部6および位相調整部7に代えて、図4に示されるように、バラントランス14を設けている。
【0034】
つまり、バラントランス14を構成する平衡側コイル15の一端側はアンテナ素子3a(つまり、x方向配列のアンテナ対4xとy方向配列のアンテナ対4yに兼用のアンテナ素子3a)に接続され、平衡側コイル15の他端側は給電線路5dを介して切り換え部8に接続されている。また、バラントランス14の不平衡側コイル16の一端側はグランドに接地され、他端側は例えば通信機の高周波回路10に接続される。
【0035】
切り換え部8は、x方向配列のアンテナ対4xを構成するアンテナ素子3bと、y方向配列のアンテナ対4yを構成するアンテナ素子3cとのうちの一方側を択一的にバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続させる構成と成す。この切り換え部8の切り換え動作は、第1実施形態例と同様に、例えば通信機の制御装置11のダイバーシチ制御動作により行われる。
【0036】
この第2実施形態例では、バラントランス14からアンテナ素子3aに至るまでの給電線路5aの電気長と、バラントランス14から切り換え部8を介しアンテナ素子3bに至るまでの電気長と、バラントランス14から切り換え部8を介しアンテナ素子3cに至るまでの電気長とが全て等しくなっている。
【0037】
第2実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1の上記以外の構成は第1実施形態例と同様である。この第2実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1も、第1実施形態例と同様に、様々な無線通信機に組み込むことができる。ただ、この第2実施形態例のダイバーシチアンテナ装置1を備える無線通信機には、第1実施形態例で述べたようなダイバーシチ制御部が設けられることとなる。
【0038】
この第2実施形態例では、例えば、切り換え部8の切り換え動作によって、アンテナ素子3b,3cのうちのアンテナ素子3bがバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続されている場合には、高周波回路10側からバラントランス14に信号が入力した場合に、バラントランス14の平衡不平衡変換動作によって平衡側コイル15の両端部からそれぞれアンテナ素子3a,3bに向けて互いに逆相の信号が出力される。この信号供給によって、x方向配列のアンテナ対4xが無線通信用のアンテナ対として機能して、x方向に強い指向性をもって信号の無線送信を行う。
【0039】
また、上記同様に切り換え部8の切り換え動作によってアンテナ素子3bがバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続されている場合に、図4(a)に示す点線αのようなx方向からの信号到来に起因して各アンテナ素子3a,3bから互いに逆相の信号がバラントランス14の平衡側コイル15の両端部にそれぞれ入力した場合には、前述したようなバラントランス14の平衡不平衡変換動作(つまり、それら入力信号のうちの一方側の信号の位相を180°ずらした信号と、他方側の信号とを合成した信号を出力する動作)によって、バラントランス14は、同相信号の合成信号を出力することと等価に動作する。このことから、バラントランス14は、アンテナ素子3a,3bからの入力信号を強めて高周波回路10側に向けて出力する。
【0040】
さらに、切り換え部8の切り換え動作によって、アンテナ素子3b,3cのうちのアンテナ素子3cがバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続されている場合には、高周波回路10側からバラントランス14に信号が入力した場合に、バラントランス14の平衡不平衡変換動作によって平衡側コイル15の両端部からそれぞれアンテナ素子3a,3cに向けて互いに逆相の信号が出力される。この信号供給によって、y方向配列のアンテナ対4yが無線通信用のアンテナ対として機能して、y方向に強い指向性をもって信号の無線送信を行う。
【0041】
また、上記同様に切り換え部8の切り換え動作によってアンテナ素子3cがバラントランス14の平衡側コイル15に切り換え接続されている場合に、y方向から互いに逆向きの信号到来に起因して各アンテナ素子3a,3cから互いに逆相の信号がバラントランス14の平衡側コイル15の両端部にそれぞれ入力した場合には、前述したようなバラントランス14の平衡不平衡変換動作(つまり、それら入力信号のうちの一方側の信号の位相を180°ずらした信号と、他方側の信号とを合成した信号を出力する動作)によって、バラントランス14は、同相信号の合成信号を出力することと等価に動作する。これにより、バラントランス14は、アンテナ素子3a,3cからの入力信号を強めて高周波回路10側に向けて出力する。
【0042】
なお、x方向配列のアンテナ対4xのアンテナ素子3a,3b、又は、y方向配列のアンテナ対4yのアンテナ素子3a,3cからそれぞれ同相の信号がバラントランス14に入力することがあるが、この場合には、バラントランス14の平衡不平衡変換動作によって、バラントランス14は、逆相信号の合成を行うことと等価になるので、互いの信号が相殺されて、バラントランス14の不平衡側コイル16から信号は出力されない。
【0043】
したがって、この第2実施形態例に示した構成を備えることによって、第1実施形態例と同様に動作することができる上に、合成部6および位相調整部7に代えてバラントランス14を設ける構成であるので、第1実施形態例よりも回路構成の簡略化を図ることができて装置の小型化を促進させることができる。
【0044】
なお、この発明は第1や第2の各実施形態例に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1と第2の各実施形態例では、アンテナ素子3a,3b,3cは図1(a)に示すような円筒状のモノポールアンテナであったが、例えば、誘電体基体にモノポールアンテナとして機能する導体パターンが形成されて成るチップ型のモノポールアンテナをアンテナ素子3a,3b,3cとして設けてもよいし、他の形態のアンテナをアンテナ素子3a,3b,3cとして設けてもよい。
【0045】
また、第1と第2の各実施形態例では、アンテナ素子間の間隔はλ/2、あるいは、ほぼλ/2であったが、アンテナ素子間の間隔をそれよりも短くしてもよい。第1と第2の各実施形態例のように、2つのアンテナ素子の電界を合成してアンテナ利得を向上させようとする場合には、それらアンテナ素子間の間隔はλ/2であることが望ましいとされているが、本発明者の実験では、アンテナ素子間の間隔をλ/2より短くしても、アンテナ利得を向上できるアンテナ素子間の間隔があることが確認されている。このことから、例えば、アンテナ素子間の間隔を、λ/2よりも短いがアンテナ利得向上を図ることができる適切な間隔に設定することで、ダイバーシチアンテナ装置1の小型化を促進させてもよい。
【0046】
【発明の効果】
アンテナ装置に対して、基板に近い低仰角方向のアンテナ利得向上が望まれている。本発明者の研究開発によれば、2つのアンテナ素子に互いに逆相の電界を励振させて当該逆相の電界の合成を利用することで、低仰角方向のアンテナ利得を向上できることが分かってきた。そのように逆相の電界を合成させると、アンテナ素子が1つしか設けられていない場合よりもアンテナ利得を向上できる方向が生じると共に、アンテナ利得が小さくなってしまう方向が生じてしまう。このため、この発明では、例えばモノポールアンテナの2組のアンテナ対を設けて、アンテナ利得が小さくなってしまう方向を2組のアンテナ対が互いに補い合える構成とした。つまり、この発明のダイバーシチアンテナ装置は、低仰角方向の全ての領域について良好な送受信が可能である。
【0047】
また、この発明では、x方向配列のアンテナ対と、y方向配列のアンテナ対とを設けている。例えば、それらx方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対とをそれぞれ別々のアンテナ素子で形成する場合には、4個のアンテナ素子が必要であるが、この発明では、x方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対とに兼用のアンテナ素子を設けたので、それらx方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対を形成するのに3個のアンテナ素子を設けるだけで済み、アンテナ素子の削減を図ることができる。
【0048】
さらに、位相調整部を利用して、対を成すアンテナ素子に互いに逆相の電界を励振させる構成の場合には、対を成すアンテナ素子にそれぞれ接続されている給電線路のうちの一方に位相調整部を設ける必要がある。例えば、仮に、対を成すアンテナ素子のうち、切り換え部に接続されているアンテナ素子側の給電線路に位相調整部を設ける構成とする場合には、切り換え部に接続されているx方向配列のアンテナ対側の給電線路と、y方向配列のアンテナ対側の給電線路との両方に位相調整部を設けなければならない。これに対して、この発明では、x方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子側の給電線路に位相調整部を設ける構成とすることにより、1つの位相調整部を設けるだけでよく、回路構成の簡略化を図ることができる。
【0049】
その上、この発明では、そのようにx方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子側の給電線路に位相調整部を設け、また、その兼用のアンテナ素子と対を成すアンテナ素子から合成部に至るまでの給電線路上に切り換え部を設ける構成とした。このため、例えば、位相調整部の電力損失と同程度の挿入損失を持つ例えばスイッチによって切り換え部を構成することによって、合成部から前記兼用のアンテナ素子に至るまでの電力損失と、合成部から切り換え部を通って他のアンテナ素子に至るまでの電力損失とを同様にすることができる。このため、送信時に合成部から前記兼用のアンテナ素子に至る信号レベルと、合成部から切り換え部を通ってその兼用のアンテナ素子と対を成すアンテナ素子に至る信号レベルとをほぼ同じ大きさにすることができる。これにより、対を成す各アンテナ素子に励振される電界の振幅をほぼ等しくすることができる。このため、対を成すアンテナ素子の合成の電界によるダイバーシチアンテナ装置のアンテナ指向性の制御が容易となる。なお、受信に関しても同様である。
【0050】
したがって、この発明の構成を備えることによって、低仰角方向のアンテナ指向性が強い上に、給電線路が短く部品点数が少なくて回路構成が簡単であり、また、電力損失を抑制できるダイバーシチアンテナ装置を提供することができる。
【0051】
また、合成部と位相調整部に代えて、バラントランスを設けたものにあっては、上記同様の優れた効果を持つことができる上に、合成部と位相調整部に代えてバラントランスを設けるだけでよいので、回路構成の更なる簡略化を図ることができる。これにより、ダイバーシチアンテナ装置のより一層の小型化を図ることが容易となる。
【0052】
この発明のダイバーシチアンテナ装置を備えた通信機にあっては、アンテナ効率を向上でき、また、低仰角方向の通信の信頼性を高めることができる。また、ダイバーシチアンテナ装置の小型化により、通信機の小型化を図ることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイバーシチアンテナ装置の一実施形態例を説明するための図である。
【図2】図1に示すダイバーシチアンテナ装置の指向性の一例を表したアンテナ利得特性のグラフである。
【図3】バラントランスを説明するためのモデル図である。
【図4】第2実施形態例を説明するための図である。
【図5】特許文献1に記載のダイバーシチアンテナ装置を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ダイバーシチアンテナ装置
2 基板
3a,3b,3c アンテナ素子
4x x方向配列のアンテナ対
4y y方向配列のアンテナ対
5a,5b,5c,5d 給電線路
6 合成部
7 位相調整部
8 切り換え部
14 バラントランス
15 平衡側コイル
16 不平衡側コイル
Claims (6)
- 互いに直交するx方向とy方向のうちのx方向に沿って、対を成すアンテナ素子が間隔を介し基板に配列配置されてx方向配列のアンテナ対が形成され、また、それら対を成すアンテナ素子のうちの一方と、この一方のアンテナ素子とy方向に間隔を介して基板に配列配置された別のアンテナ素子とによってy方向配列のアンテナ対が形成されており、前記各アンテナ素子には、それぞれ、共通の合成部に接続するための別々の給電線路が接続されており、x方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子に接続している給電線路には信号の位相を調整する位相調整部が介設され、また、他の各アンテナ素子にそれぞれ接続している各給電線路のうちの何れか一つを合成部に切り換え接続させるための切り換え部が設けられており、前記位相調整部は、前記兼用のアンテナ素子の信号位相と、他のアンテナ素子の信号位相との位相差を180°に調整する構成と成し、切り換え部の切り換え動作によって合成部に切り換え接続されているアンテナ素子と、前記兼用のアンテナ素子とには互いに逆相の電界が励振して空中で合成される構成と成しており、切り換え部の切り換え動作に応じて、通信用として機能するアンテナ対が切り換わって、合成電界の指向性が切り換わることを特徴とするダイバーシチアンテナ装置。
- 切り換え部に接続している各給電線路は、切り換え部からアンテナ素子に至るまでの長さが等しいことを特徴とする請求項1記載のダイバーシチアンテナ装置。
- アンテナ素子はモノポールアンテナであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のダイバーシチアンテナ装置。
- 合成部および位相調整部を設けるのに代えて、平衡側コイルと不平衡側コイルを有するバラントランスが設けられ、不平衡側コイルの一端側はグランドに接続され、他端側は外部の高周波回路に接続される構成と成し、平衡側コイルの一端側はx方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子に接続され、平衡側コイルの他端側は切り換え部に接続されており、その切り換え部は、当該切り換え部に接続されているアンテナ素子の何れか一つを前記平衡側コイルの他端側に切り換え接続させる構成と成していることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の指向性ダイバーシチアンテナ装置。
- 平衡側コイルの一端側からx方向配列のアンテナ対とy方向配列のアンテナ対に兼用のアンテナ素子に至るまでの給電線路の電気長と、平衡側コイルの他端側から切り換え部を介して他のアンテナ素子に至るまでのそれぞれの給電線路の電気長とが全て等しいことを特徴とする請求項4記載の指向性ダイバーシチアンテナ装置。
- 請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載のダイバーシチアンテナ装置が設けられていることを特徴とする通信機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003189663A JP2004336695A (ja) | 2003-03-11 | 2003-07-01 | ダイバーシチアンテナ装置およびそれを備えた通信機 |
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Country | Link |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008523671A (ja) * | 2004-12-09 | 2008-07-03 | エースリー‐アドバンスド、オートモーティブ、アンテナズ | 自動車用の小型アンテナ |
JP2008211342A (ja) * | 2007-02-23 | 2008-09-11 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 通信装置とその通信方法 |
JP2008306664A (ja) * | 2007-06-11 | 2008-12-18 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | アレーアンテナ装置、アレーアンテナの通信方法、リレー通信システム及びリレー通信方法 |
-
2003
- 2003-07-01 JP JP2003189663A patent/JP2004336695A/ja active Pending
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